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JP2021016368A - デハロコッコイデス属細菌の培養方法、及びデハロコッコイデス属細菌用培地 - Google Patents

デハロコッコイデス属細菌の培養方法、及びデハロコッコイデス属細菌用培地 Download PDF

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雅子 伊藤
Masako Ito
雅子 伊藤
陽 高畑
Akira Takahata
陽 高畑
佳仁 内野
Yoshihito Uchino
佳仁 内野
敦司 山副
Atsushi Yamazoe
敦司 山副
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Taisei Corp
National Institute of Technology and Evaluation NITE
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Taisei Corp
National Institute of Technology and Evaluation NITE
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Abstract

【課題】新規なデハロコッコイデス属細菌の培養方法、特に、水素ガス濃度を低くした培養方法と、この培養方法に用いる培地を提供すること。
【解決手段】ピルビン酸又はその塩を含む培地を用いるデハロコッコイデス(Dehalococcoides)属細菌の培養方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、デハロコッコイデス属細菌の培養方法、及びデハロコッコイデス属細菌用培地に関する。
微生物を用いる浄化技術は、排水処理における活性汚泥法や嫌気処理法などに広く利用されている。また、近年では、有害化学物質で汚染された土壌や地下水を微生物により浄化する技術(バイオレメディエーション)が、環境負荷および浄化コストの小さい浄化方法として着目されている。
テトラクロロエチレン(PCE)やトリクロロエチレン(TCE)などの塩素化エチレン類は、安価で油に対する洗浄力の強い溶剤として、金属産業、半導体産業、ドライクリーニング店など幅広い分野で使用されている。その一方、塩素化エチレン類による土壌や地下水汚染について多くの報告があり、社会問題となっている。
塩素化エチレン類のバイオレメディエーションには、「テトラクロロエチレン(PCE)→トリクロロエチレン(TCE)→シス−1,2−ジクロロエチレン(cis−DCE)→塩化ビニルモノマー(VCM)→エチレン」という還元的脱塩素化反応により塩素化エチレン類を無害化する嫌気性脱塩素化菌が用いられている。
嫌気性脱塩素化菌の一種であるデハロコッコイデス(Dehalococcoides)属細菌は、cis−DCE以降の脱塩素化を進行できることが報告されている唯一の細菌である。すなわち、塩素化エチレン類のバイオレメディエーションにおいて、処理対象土壌中にデハロコッコイデス属細菌が存在しないと、cis−DCEまでしか脱塩素化できない。また、デハロコッコイデス属細菌が存在していたとしても、環境中でのデハロコッコイデス属細菌の菌体量は非常に少なく、その増殖速度も遅いため、浄化期間が長期化するという問題がある。
このような問題を解決するため、デハロコッコイデス属細菌を人為的に培養して増加させ、浄化対象とする環境に導入して浄化を促進させる方法(バイオオーグメンテーション)が期待されている。本発明者らは、特許文献1において、国内で初めて、デハロコッコイデス・エスピーUCH007株(NITE P−1471、以下、UCH007株ともいう)を単離し、このUCH007株を用いる塩素化エチレン類の浄化方法を提案している。これまで、デハロコッコイデス属細菌は、電子供与体として水素のみを利用するとされている(非特許文献1)。そのため、これまでデハロコッコイデス属細菌の培養は、水素の存在下のみで行われている。しかし、水素を用いる培養は、培養スケールが大きくなるほど多くの水素を使用するため、取り扱い時に爆発等の危険性が高まるという問題がある。
特開2014−108061号公報
新規なデハロコッコイデス属細菌の培養方法、特に、水素ガス濃度を低くした培養方法と、この培養方法に用いる培地を提供することを課題とする。
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.ピルビン酸又はその塩を含む培地を用いることを特徴とするデハロコッコイデス(Dehalococcoides)属細菌の培養方法。
2.培養雰囲気下における水素ガス濃度が10体積%以下であることを特徴とする1.に記載の培養方法。
3.前記デハロコッコイデス属細菌が、受託番号NITE P−1421として寄託されたUCH007株またはその変異株であることを特徴とする1.または2.に記載の培養方法。
4.ピルビン酸又はその塩を含むことを特徴とするデハロコッコイデス属細菌用の培地。
5.溶存水素濃度が0.16ppm以下であることを特徴とする4.に記載の培地。
本発明のデハロコッコイデス属細菌の培養方法は、ピルビン酸又はその塩を用いることを特徴とし、これまでに知られていない新規なものである。ピルビン酸は、炭素源として作用するのみならず、電子供与体としても作用することができる。従来、デハロコッコイデス属細菌の培養時における電子供与体としては、水素のみが知られていたが、本発明の培養方法は、ピルビン酸が電子供与体として作用することにより、水素ガスが不要となり、水素ガスを用いるより培地作製時の危険性が減少する。
実験1における、水素非存在下で、デハロコッコイデス属細菌純粋株を様々な基質を使用して培養した後の、塩素化エチレン類濃度を示すグラフ。 実験2で、培地量15LでTCEを分解したときの塩素化エチレン類の経時変化を示すグラフ。
本発明は、ピルビン酸又はその塩を含む培地を用いることを特徴とするデハロコッコイデス(Dehalococcoides)属細菌の培養方法と、この培養に用いるピルビン酸又はその塩を含むデハロコッコイデス属細菌用培地に関する。
・デハロコッコイデス属細菌
デハロコッコイデス属細菌は、塩素化エチレン類および塩素化エタン類を脱塩素化する能力を有する。デハロコッコイデス属細菌であっても、その種類により分解可能な塩素化エチレン類は異なる。本発明で培養するデハロコッコイデス属細菌は特に制限されないが、培養したデハロコッコイデス属細菌をバイオオーグメンテーション等で塩素化エチレン類の浄化に利用する場合は、塩素化エチレン類をエチレンまで完全に脱塩素化できる菌株であることが好ましく、一例として、デハロコッコイデス・エスピー(Dehalococcoides sp.)UCH007株またはその変異株が挙げられる。なお、本明細書において、変異株とは、16S rRNA遺伝子の塩基配列が、98%以上の相同性を有する株を意味する。16S rRNA遺伝子の相同性は、99%以上であることが好ましく、99.5%以上であることがより好ましく、100%であることがさらに好ましい。
UCH007株は、受託番号NITE P−1471として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8(郵便番号292−0818))に、2012年11月22日付で寄託されている。
UCH007株の菌学的性質は、以下のとおりである。
(a)形態学的性状
非運動性、胞子非形成、円盤状形態(光学顕微鏡での観察は困難)。
(b)培地の一例
絶対嫌気。電子供与体として水素、電子受容体としてTCEあるいはcis−DCE、炭素源として酢酸塩を使用する。bicarbonate buffer。pH7.2。H/COの混合ガス(80:20)で培地・培養容器内をガス置換する。
(c)生理学的特徴
絶対嫌気性。脱ハロゲン呼吸によりエネルギーを獲得する。電子供与体として水素を利用、電子受容体として塩素化エチレン類を利用。
トリクロロエチレン(TCE)、シス−1,2−ジクロロエチレン(cis−DCE)、1,1−ジクロロエチレン(1,1−DCE)、塩化ビニルモノマー(VCM)の脱塩素化能を有する。炭素源として酢酸塩を資化。ビタミンB12要求性。高濃度の硫化物(還元剤として使用)に感受性。
増殖温度:30℃。
至適pH:7.2±0.3。
本発明において、デハロコッコイデス属細菌は、単独で培養してもよく、分離した純粋株を他の菌を含むバイオコンソーシア(複合微生物系)として共培養することができる。例えば、スルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属細菌と共培養することが好ましい。スルフロスピリラム属細菌は、デハロコッコイデス属細菌の脱塩素化反応を促進する能力を備えており、デハロコッコイデス属細菌と共培養することにより、デハロコッコイデス属細菌の脱塩素化によるエネルギー獲得を助け、デハロコッコイデス属細菌の増殖を促進することができる。スルフロスピリラム属細菌としては、スルフロスピリラム・エスピー(Sulfurospirillum sp.)UCH001株(以下、UCH001株ともいう)、スルフロスピリラム・エスピー(Sulfurospirillum sp.)UCH003株(以下、UCH003株ともいう)のいずれか、または両方、もしくは、これらの変異株が挙げられる。
UCH001株、UCH003株は、それぞれ受託番号NITE P−1419、NITE P−1470として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8(郵便番号292−0818))に、2012年11月22日付で寄託されている。
UCH001株、UCH003株の形態学的性状、培地上の特徴、生理学的特徴は以下のとおりであり、両株で共通している。
(a)形態学的性状
湾曲又はらせん状桿菌。
鞭毛を有する。運動性を有する。胞子非形成。
(b)培地の一例
絶対嫌気。フマル酸塩、乳酸塩、酢酸塩を使用する。bicarbonate buffer。pH7.2。H/COの混合ガス(80:20)で培地・培養容器内をガス置換する。
(c)生理学的特徴
嫌気性。硝酸塩やフマル酸等を電子受容体とする呼吸によりエネルギーを獲得する。電子供与体として水素、ギ酸、ピルビン酸、乳酸などを利用。炭素源として酢酸塩等を資化。
増殖温度:30℃
生育pH:pH7.2
・培養方法
本発明の培養方法は、ピルビン酸又はその塩を含む培地を用いることを特徴とする。
培養は、静置培養、振盪培養等の各種培養法により行うことができる。培養法、温度、pH、期間等の培養条件は、培養するデハロコッコイデス属細菌に応じて、適宜選択することができる。例えば、通常、培養温度は25℃以上35℃以下、pHは6.5〜7.5の範囲、培養期間は2ヶ月程度である。
デハロコッコイデス属細菌は、絶対嫌気性である。上記したように、従来、デハロコッコイデス属細菌は、電子供与体として利用できるのは水素のみであるとされているため、H/COの混合ガス雰囲気下において培養されている。しかし、本発明の培養方法が用いるピルビン酸は、電子供与体としても作用するため、水素ガスを用いることなく培養することができる。なお、本発明の培養方法は、水素ガスを用いる必要はないが、従来の培養方法と同じく、H/COの混合ガスを使用することもできる。ただし、水素は、爆発の危険性があるため、水素ガスを使用する場合は、その使用量は少ないほうが好ましく、培養雰囲気化における水素ガス濃度は10体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましく、水素ガスを使用しないことが最も好ましい。水素ガスを使用しない場合、pH緩衝剤として重炭酸塩を用いる際はN/COの混合ガス、重炭酸塩以外のpH緩衝剤を用いる際はNガスを使用することができる。混合ガスにおけるNとCOの体積比は、特に制限されないが、70:30〜90:10であることが好ましい。
培養においては、培地調製時、試薬添加時、菌液接種時、サンプリング時等に、極力空気(酸素)の混入を減らすことが重要である。例えば、揮発しやすい塩素化エチレン類等の試薬の追加や菌液の接種に用いる滅菌済み注射器は、予め滅菌窒素ガスを用いたガス置換処理をするか、あるいは還元剤で満たし空気の泡を完全に追い出す処理をしておくことが好ましい。また、加熱できないビタミン溶液等はガス置換とフィルター滅菌処理を行うが、滅菌用フィルターについても、予め滅菌窒素ガスを用いたガス置換処理をするか、あるいは予め内部を還元剤で満たし空気を追い出した後、さらに、ガス置換したビタミン溶液を通し還元剤を追い出す処理をしておくことが好ましい。還元剤としては、還元型グルタチオン、硫化鉄、硫化ナトリウムとL−システインとDL−ジチオトレイトールの組み合わせ、クエン酸塩またはニトリロ三酢酸塩と錯体化したチタン(III)等を使用することができる。これらの中で、加熱処理した還元型グルタチオンが還元状態の持続性に優れるため好ましい。
・培地
本発明の培養方法に用いる培地は、ピルビン酸又はその塩を含むことを特徴とする。この培地は、ピルビン酸又はその塩を含めばよく、電子供与体源、炭素源、窒素源、無機塩、微量元素、酵母エキス等を含むことができ、固体培地及び液体培地のいずれであってもよい。
ピルビン酸は炭素源及び電子供与体として作用する。本発明の培養方法は、ピルビン酸以外の炭素源として、メタノールやエタノール等のアルコール類、酢酸、乳酸などの有機酸類を含むことができる。ただし、全炭素源に対するピルビン酸の割合が60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが更に好ましく、100重量%であることが最も好ましい。
窒素源としては、例えば、ペプトン、カシトン、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、各種アミノ酸等が挙げられる。
無機塩としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
微量元素としては、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ホウ素、ニッケル、モリブデン等が挙げられる。
上記に例示した炭素源、窒素源、無機塩、微量元素は1種でもよく、2種以上を適宜組み合わせてもよい。
さらに、本発明の微生物の増殖を促進するための栄養源として、シアノコバラミン等のビタミン、酵母エキス、麦芽エキス等を適量添加してもよい。
デハロコッコイデス属細菌の培養に際しては、培養するデハロコッコイデス属細菌の特性に応じて、1種または2種以上の塩素化エチレン類を混合して培地に添加することができる。塩素化エチレン類としては、PCE、TCE、cis−DCE、VCMのいずれか、またはそれらを複数含む組み合わせであることが好ましい。
ここで、上記したように、ピルビン酸は電子供与体としても作用する。水素ガスの常温常圧における溶解度は1.6ppmである。水素ガス濃度が低い条件で培養した場合、培地中の溶存水素濃度は低く、例えば、水素ガス濃度が10体積%以下、5体積%以下のとき、溶存水素濃度はそれぞれ0.16ppm以下、0.08ppm以下となる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
「実験1:デハロコッコイデス属細菌が炭素源として資化し、電子供与体として利用できる有機物の検討」
デハロコッコイデス属細菌が単独で、水素非存在下で、炭素源及び電子供与体として使用できる有機物について検討を行った。
使用した重炭酸塩緩衝培地(He, J., Ritalahti, K.M., Yang, K.L., Koenigsberg, S.S. & Loffler, F.E. "Detoxification of vinyl chloride to ethene coupled to growth of an anaerobic bacterium. " Nature (2003) Jul 3, 424: p62-65.の培地を一部改変)の組成を表1に示す。この重炭酸塩緩衝培地の調製は、特許第6103518号の実施例2と同様に行った。
cis−1,2−ジクロロエチレンストック溶液は、遮光バイアル瓶に20mlの蒸留水とスターラーバーを入れ、Nガスで置換し、PTFEライナーゴム栓とアルミシールで密栓してオートクレーブ後、ガスタイトシリンジを使って3μlのcis−1,2−ジクロロエチレン(cis−DCE)を入れ、終夜攪拌することによって調製した。
/CO(80/20)混合ガスをN/CO(80/20)混合ガスとし、酢酸ナトリウムに代えて他の基質とした以外は、特許第6103518号の実施例2と同様の条件で、水素(電子供与体)と酢酸ナトリウム(炭素源)に代わる基質を検討した。使用した基質は、乳酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、リンゴ酸二ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、グルコース、グルタル酸二ナトリウム、エタノール、メタノール、クエン酸三ナトリウム、2−ケトグルタル酸一ナトリウム、フマル酸二ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、クロトン酸(いずれも最終濃度5mM)である。培地調製後、別途培養していたUCH007株の培養液を、窒素ガス置換処理した注射器を使って、培地の100分の1量を植菌し、30℃で52日間静置培養を行った。
培養後の塩素化エチレン類の濃度をGCMS(島津製作所製 GCMS−QP2010 Ultra)により定量した。塩素化エチレン類濃度を図1に示す。
ピルビン酸ナトリウムを基質とした場合のみ、cis−DCEが検出されず、塩素化エチレン類の脱塩素化が進行し、デハロコッコイデス属細菌が増加していることが確認できた。これは、デハロコッコイデス属細菌がピルビン酸ナトリウムを電子供与体として利用したためである。
「実験2:本発明を用いることにより、デハロコッコイデス属細菌を大容量で培養できることを示す実験」
本発明は、デハロコッコイデス属細菌の培養に従来必要だった水素が不要であり、爆発の危険がなく安全な培養を可能とするものである。ここでは、汚染した地下水等に浄化菌を導入する際に必要となる培養液量を、実際に水素を使わず、安定的に大きな容器を用いて培養できるかどうか確認を行った。
培地調製には大量の嫌気性ガスを必要するが、製造に時間もコストもかかるN/COのような混合ガスよりも入手しやすい安価なNガスを使用した。また、Nガスを使うために、培地のpH緩衝剤として重炭酸塩は使用せず、3−Morpholinopropanesulfonic acid(MOPS)を使用した(培地のpH還元剤として重炭酸塩を使う場合は、培養容器の気相部分に二酸化炭素が含まれないとpHがアルカリ側にシフトしやすくなり、培地のpHが不安定となる)。さらに、安定的に嫌気状態を維持するために、培養容器として気密性の高いビア樽を使用し、還元剤として培地に5mMの還元型グルタチオンを加えて、ガス置換とオートクレーブ滅菌を行った。加えて、ビタミンの1つとして添加するシアノコバラミン(ビタミンB12)が最終濃度25μg/Lであることが好ましいとする文献情報(He, J., Holmes, V.F., Lee, P.K., Alvarez-Cohen, L. "Influence of Vitamin B12 and Cocultures on the Growth of Dehalococcoides Isolates in Defined Medium." Appl. Environ. Microbiol. (2007) 73: p2847-2853.)に従い、適量を添加した。
大量培養用の培養容器として、管頭部(蓋)に菌液やガスの採取が可能なサンプリングポートを設ける改造を行った5ガロンのビア樽(コーネリアスタイプ)を使用した。
サンプリングポートは、ビア樽の蓋に12φmm程度の穴を開け、エイブル株式会社製のナット締め付け式φ12電極口(品番:C00000−C005)及びブチルゴム製O−リングを使って隔壁のネジ口を設け、そこに日電理化硝子株式会社製の凍結乾燥用ブチルゴム栓・B(大)を装着し、エイブル株式会社製φ12袋ナット(品番:C00000−C008)で締め付けて固定することで製作した。滅菌済み注射器を用いてブチルゴム栓に注射針を穿刺することで菌液やガスの採取を行った。
上記で蓋を改造した5ガロンのビア樽からなる培養容器に、表6に示す還元型グルタチオンを含む培地を10L、15L又は18L入れたものをそれぞれ作製した。なお、表6に示す組成は、蒸留水1Lあたりに対する組成である。還元型グルタチオンを含む培地調製の手順は以下の通り行った。(1)培地をビア樽に入れて、1時間、窒素ガス置換を行った。(2)オートクレーブ滅菌(121℃、20分間)した。(3)オートクレーブ直後から1時間窒素ガス置換した後、さらに、容器を氷水に浸し、容器全体の温度が室温以下になるまで(30分程度)ガス置換した。(4)予め滅菌窒素ガスを用いたガス置換処理した注射器を使い、無菌的かつ嫌気的に、表4に示すビタミン溶液(ビタミンB12は培地添加後に最終濃度25μg/Lになるように変更した)と、TCE又はcis−DCEのストック溶液を加えた。
培地調製後、別途培養していたUCH007株とUCH001株の共培養液を、窒素ガス置換処理した注射器を使って、培地の100分の1量を植菌し、室温で静置培養を開始した。培養中、定期的に培養液中の塩素化エチレン類の濃度を、キャピラリーカラム(Agilent J&W GCカラム DB−624、0.32mm×30m)とFIDを装備したガスクロマトグラフィー(モデル6890N、Agilent Technologies社)を用いて、ヘッドスペース法にて定量した。
実験2では、培地に添加する塩素化エチレン類の種類がTCE、cis−DCEのいずれの場合でも、また、培地量が10L、15L、18Lのいずれの場合でも、デハロコッコイデス属細菌を安定的に培養できることが確認された。一例として、TCEを使った培地量15Lの場合の塩素化エチレン類の濃度の経時変化を図2に示す。

Claims (5)

  1. ピルビン酸又はその塩を含む培地を用いることを特徴とするデハロコッコイデス(Dehalococcoides)属細菌の培養方法。
  2. 培養雰囲気下における水素ガス濃度が10体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の培養方法。
  3. 前記デハロコッコイデス属細菌が、受託番号NITE P−1421として寄託されたUCH007株またはその変異株であることを特徴とする請求項1または2に記載の培養方法。
  4. ピルビン酸又はその塩を含むことを特徴とするデハロコッコイデス属細菌用の培地。
  5. 溶存水素濃度が0.16ppm以下であることを特徴とする請求項4に記載の培地。
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