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JP2020181073A - 膜付きレンズ、レンズユニットおよびカメラモジュール - Google Patents

膜付きレンズ、レンズユニットおよびカメラモジュール Download PDF

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JP2020181073A
JP2020181073A JP2019083707A JP2019083707A JP2020181073A JP 2020181073 A JP2020181073 A JP 2020181073A JP 2019083707 A JP2019083707 A JP 2019083707A JP 2019083707 A JP2019083707 A JP 2019083707A JP 2020181073 A JP2020181073 A JP 2020181073A
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章 稲葉
Akira Inaba
章 稲葉
孝行 杉目
Takayuki SUGIME
孝行 杉目
雄輔 馬場
Yusuke Baba
雄輔 馬場
秀樹 篠原
Hideki Shinohara
秀樹 篠原
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Abstract

【課題】高耐熱反射防止膜の表面凹凸形状の高さとピッチとを最適に調整できるとともに、高耐熱反射防止膜の密着性を高めることもできる膜付きレンズ、レンズユニットおよびカメラモジュールを提供する。【解決手段】本発明の膜付きレンズ13(14−17)は、鏡筒に設けられるとともに、その表面上に反射防止膜30が形成されて成る。反射防止膜30は高耐熱反射防止膜として設けられ、レンズ13(14−17)の表面には、高耐熱反射防止膜30の表面形状を制御して高耐熱反射防止膜30の光学的性能を調整するための凹凸部80が設けられる。高耐熱反射防止膜30上には撥水膜50Aまたは親水膜50Bが設けられてもよい。【選択図】図7

Description

本発明は、特に自動車等の車両に搭載される車載カメラに設けられる膜付きレンズ、レンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
近年、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
レンズユニットを構成するレンズの表面には、一般に、その透過率を高めるために反射防止膜が設けられるが、特にレンズユニットのレンズ群を構成する各レンズとして樹脂製のものが使用される場合には、レンズが温度変化によって膨縮し易いため、反射防止膜も、高温に強く、レンズの膨張収縮(熱変形)に追従できるものが望まれる。
そのため、特に樹脂製のレンズにおいては、反射防止膜として、反射率が極めて低いとともにレンズの熱変形にも追従できる耐熱性の優れた反射防止膜(以下、本明細書中では、「高耐熱反射防止膜」と称する)が使用される場合がある。
特開2013−231993号公報
ところで、このような高耐熱反射防止膜は、一般に塗布によって形成され、その製法等に起因してその表面が必然的に凹凸形状を成すようになる。このような表面の凹凸形態は、反射率の低下や、特に斜めから入射する光に対する入射角度依存性の低下に寄与し得る。すなわち、高耐熱反射防止膜の表面の凹凸形状は、平滑な表面と比べて、光の入射角度が変動した際にも光の反射をし難くする(入射角度依存性が低い反射防止膜を実現する)。具体的には、高耐熱反射防止膜に入射する光は、凹凸面内で反射を繰り返しながら高耐熱反射防止膜中へと取り込まれていき、高耐熱反射防止膜外への反射が抑制される。
しかしながら、高耐熱反射防止膜は、その表面の凹凸形状の高さやピッチを最適に調整することが難しい。また、高耐熱反射防止膜は、下地基材であるレンズに対して帯電により結合しているだけであるため、その密着性も十分とは言い難い。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、高耐熱反射防止膜の表面凹凸形状の高さとピッチとを最適に調整できるとともに、高耐熱反射防止膜の密着性を高めることもできる膜付きレンズ、レンズユニットおよびカメラモジュールを提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、鏡筒に設けられるとともに、その表面上に反射防止膜が形成されて成る膜付きレンズであって、
前記反射防止膜が高耐熱反射防止膜として設けられ、
前記レンズの表面には、前記高耐熱反射防止膜の表面形状を制御して前記高耐熱反射防止膜の光学的性能を調整するための凹凸部が設けられることを特徴とする。
上記構成において、「高耐熱反射防止膜」は、当該高耐熱反射防止膜中の体積率が5〜74%である複数の無機粒子と、隣り合う前記無機粒子の間に形成され、体積率が65%以下である空気層と、前記無機粒子または前記無機粒子および前記空気層をバインディングし、前記無機粒子よりも低いヤング率を有し、体積率が5〜95%である、有機化合物、無機化合物および無機高分子のいずれかと、を備える。あるいは、「高耐熱反射防止膜」は空隙を有する微粒子積層薄膜からなり、この微粒子積層薄膜は、電解質ポリマーと微粒子とが交互に吸着されてレンズに積層状態で結合されている。このような形態で反射防止膜が形成されることにより、その高耐熱反射防止膜の表面は、必然的に凹凸形態を成すようになる。
このような表面の凹凸形態は、平滑な表面と比べて、光の入射角度が変動した際(例えば光が光軸に対して角度を成して斜めから入射した際)にも光の反射をし難くする(入射角度依存性が低い反射防止膜を実現する)。すなわち、高耐熱反射防止膜に入射する光は、凹凸面内で反射を繰り返しながら高耐熱反射防止膜中へと取り込まれていき、高耐熱反射防止膜外への反射が抑制される。
また、このような高耐熱反射防止膜は、所望の屈折率により決定される膜厚を、反射光の位相と入射光の位相とが重なって互いに打ち消し合うように可視光線の波長λの1/4の倍数に設定する(例えば100nm)ことにより、優れた反射防止特性を実現し得る。
つまり、上記構成の高耐熱反射防止膜は、前述した凹凸形態に伴う光の取り込みによる反射抑制効果と、膜厚を可視光線の波長λの1/4の倍数に設定することに伴う反射抑制効果との相乗効果により、従来の反射防止膜と比べて優れた反射防止特性(高い光透過率)を有する。そして、高耐熱反射防止膜は、この相乗効果と相俟って、前述した無機粒子、空気層および化合物の組成形態あるいは微粒子積層薄膜形態を成して形成されることにより、柔軟性および可撓性を有するとともに耐熱性に優れたものとなり、その結果、高温時における高耐熱反射防止膜のひび割れ等を防止できる。この場合、特に、空気層(空隙)は、隣り合う無機粒子の間に形成されているため、高耐熱反射防止膜が形成されているレンズが温度変化によって膨張したり収縮したりしても、高耐熱反射防止膜がそれに追随できる。そのため、高耐熱反射防止膜が破壊されてしまうことを防止できる。
以上のような優れた反射防止特性に寄与する高耐熱反射防止膜表面の前記凹凸形態は、従来においては、その高さやピッチを最適に調整することが難しかったが、上記構成の本発明によれば、レンズの表面に、高耐熱反射防止膜の表面形状を制御して高耐熱反射防止膜の光学的性能を調整するための凹凸部が設けられるため、この凹凸部により高耐熱反射防止膜の表面形態に影響を及ぼすことができ、具体的には例えば高耐熱反射防止膜の表面形態をレンズ表面の前記凹凸部の形状に応じた形状にすることが可能となり、高耐熱反射防止膜表面の凹凸形態の高さとピッチとを前記凹凸部により最適に調整できるようになる。
したがって、所望の光学的条件に適するようにレンズ表面の凹凸部を形成して高耐熱反射防止膜の凹凸形態の高さとピッチとを最適化すれば、所望の度合いまで反射率および入射角依存性を低下させることが可能になる(例えば、入射角依存性に関しては、光軸と平行に入射する直線光と光軸に対して角度を成す斜光との光路差を平均化して相殺することも可能となる)。また、高耐熱反射防止膜の表面凹凸形態を調整し得るレンズ表面のこのような凹凸部は、そのアンカー効果(レンズと高耐熱反射防止膜との凹凸同士の係合)によってレンズに対する高耐熱反射防止膜の密着性を高めることもできる。
以上から分かるように、上記構成における本発明のレンズ表面の凹凸部は、高耐熱反射防止膜の凹凸形態の高さとピッチとを調整できるようにし、それにより、高耐熱反射防止膜の光学的性能を調整するためのものである。言い換えると、レンズ表面の凹凸部は、高耐熱反射防止膜との協働により所望の反射防止特性を実現するためのものであり、それ自体が光学的機能を有するものではない。そのため、レンズ表面の凹凸部は、それ自体が光学的機能を有さないように例えばその高さ(深さ)が70nmに設定される。しかしながら、レンズ表面の凹凸部がそれ自体で光学的機能を有していても構わない。
なお、上記構成において、「レンズの表面」とは、物体側を向くレンズの表面と、像側を向くレンズの表面の両方を含む。また、上記構成において、レンズ表面の凹凸部は、例えばレンズが樹脂製の場合には、レンズを成形する金型に凹凸を加工することにより形成されてもよく、あるいは、レンズがガラス製の場合には、レンズの表面上にエッチング等により形成されてもよい。
また、本発明の上記構成において、レンズの表面の凹凸部上に形成される高耐熱反射防止膜の表面は、レンズの表面の凹凸部の形状にほぼ沿う凹凸形態を有するようになるが、レンズの表面の凹凸部は、高耐熱反射防止膜表面の凹凸形態を構成する凸部同士の頂点間距離の平均値(P)が100〜400nm(好ましくは150〜300nm)となるように、あるいは、高耐熱反射防止膜表面の凹凸形態を構成する凸部の高さの平均値(H)が30〜120nm(好ましくは50〜100nm)となるように、あるいはさらには、H/Pが0.3〜1.3となるように形成されることが好ましい。
H/Pを0.3〜1.3に設定することにより、高耐熱反射防止膜表面の凹凸形態の凹部に水滴を含む異物がとどまってしまうことを効果的に防止できる。また、高耐熱反射防止膜表面の凹凸形態を構成する凸部同士の頂点間距離の平均値(平均ピッチP)を可視光線の波長よりも小さくなる400nm以下に設定することにより、可視光線全体にわたって良好な反射防止特性を発揮できるとともに、凹部に水滴を含む異物がとどまってしまうことを効果的に防止できる。また、平均ピッチPを100nm以上に設定することにより、前述した水滴の流動性を高めることができる。また、100〜400nmの平均ピッチPに加えて(または平均ピッチPとは無関係に)、凸部の平均高さHを50〜200nmに設定することにより、レンズ表面の凹凸部と高耐熱反射防止膜表面の凹凸形態とから構成される凹凸構造が反射防止膜としての前述した機能を効果的に果たすことができるようになる。
なお、高耐熱反射防止膜を構成する粒子の粒径が小さければ小さいほど粒子は凝集し易く、凝集塊が積み重なることで凹凸が形成されることから、高耐熱反射防止膜を構成する粒子が凝集し易くなるようにする(粒径を調整する)ことで、高耐熱反射防止膜の表面に凹凸形態が形成され易くなるが、本発明のように高耐熱反射防止膜の表面形状を制御して高耐熱反射防止膜の光学的性能を調整するための凹凸部をレンズ表面に設ければ、このような粒径等の調整を行なわずして所望の凹凸形態(所望の高さおよびピッチ)を高耐熱反射防止膜表面で実現できる。
また、本発明の上記構成では、反射防止膜上に撥水膜または親水膜が設けられてもよい。レンズ表面の凹凸部に起因して前述したような凹凸形態を成す表面を有する反射防止特性の優れた高耐熱反射防止膜上に撥水膜または親水膜を設けることにより、撥水膜または親水膜の撥水性能または親水性能を向上させることができる。すなわち、高耐熱反射防止膜上に設けられた撥水膜または親水膜は、高耐熱反射防止膜の表面の凹凸形態にほぼ沿う形状を成してその表面が凹凸形態を有するようになり、そのため、ある状況において、この凹凸形態の表面上に付着する水滴は、凹凸形態を構成する凹部を跨ぐように凸部間に載置される(凸部の頂部によって支持される)ように位置されることとなり、それにより、膜と水滴との間の接触摩擦抵抗が小さくなり、水滴の流動性が高まる。このとき、水滴と膜との間で凹部内に存在する空気層が水滴の流動促進に寄与する。その結果、例えば車載カメラの露出レンズとして膜付きレンズが使用される場合には、走行中に受ける風力によって水滴がレンズ表面上から除去され易くなり、レンズを通じた視認性を向上させることができる。あるいは、他の状況では、撥水膜または親水膜の凹凸形態の表面上に付着する水滴は、凹凸形態を構成する凹部に入り込むように凸部間にわたって延在して位置されることとなり、それにより、膜と水滴との間の接触面積が大きくなり、水滴が撥水膜または親水膜の撥水効果または親水効果を受け易くなる(水滴と撥水膜または親水膜との間の接触面積を十分に確保して撥水作用または親水作用を水滴に対して効率的に及ぼすことができる)。その結果、撥水作用下においては、水滴の球状化を促して撥水性を高め、視認性を向上させることができるとともに、親水作用下においては、レンズ面に付着する細かい水滴を親水膜上にわたって拡げて薄い水膜とし、レンズ面に滞留させることなく防曇に寄与し得る(温度の急激な変化に伴ってレンズに結露(曇り)が生じることを抑制し、視認性の低下を防止できる)。
また、上記構成において、高耐熱反射防止膜上に形成される撥水膜または親水膜は、高耐熱反射防止膜のための保護膜として作用し得る。すなわち、耐擦傷性に弱い高耐熱反射防止膜を撥水膜または親水膜によって保護することができ、膜強度を高めることができる。
なお、上記構成において、高耐熱反射防止膜を伴う膜付きレンズは、ガラス製であってもよく、あるいは、樹脂製であってもよい。しかしながら、前述したように、高耐熱反射防止膜は、レンズの熱変形にも追従できる耐熱性の優れた性質を有するため、温度変化によって膨張収縮し易い樹脂レンズにおいて特に好適である。また、上記構成では、高耐熱反射防止膜が親水膜を伴ってあるいは伴うことなく更にレンズ裏面に設けられてもよい。
また、上記構成において、撥水膜としては、フッ素系の材料(例えば、メルク株式会社が提供する商品名「WR4」など)を使用することができる。一方、親水膜としては、一般に、アクリル系等(例えば、アクリルポリマー;大阪有機化学工業株式会社が提供している「LAMBIC」など)の有機系親水膜、シリカ系等の無機系親水膜、チタン系等の光触媒を挙げることができる。また、このような撥水膜および親水膜は、例えば、テーピングによるマスキングを伴ってまたは伴うことなく、蒸着、塗布、スプレー、ディッピング法等によって形成することもできるが、膜の密着強度を高めるという観点では、撥水膜および親水膜を蒸着によって形成することが好ましい。
また、上記構成において、親水膜とは、親水性を有する薄膜のことであり、親水膜に対する水滴の接触角が40度以下となるものをいう。これに対し、撥水膜とは、撥水性を有する薄膜のことであり、撥水膜に対する水滴の接触角が90度以上となるものをいい、この点で親水膜と区別される。この場合、接触角の測定は、静滴法(A・half−angle・Method)を用いるものとし、膜の形成されたレンズ面に、レンズ面の影響を受けにくいように2.5マイクロリットルの水滴を滴下し、液滴の左右端点を結ぶ曲面は直線と見做して、水滴の接触角を測定するものとする。
また、上記構成において、高耐熱反射防止膜は、親水膜および撥水膜も含めて、レンズの少なくとも光学的に有効な範囲内に設けられる。そのため、上記構成における「レンズの表面」なる用語は、レンズ面の周辺部(周端面)も含み得る。高耐熱反射防止膜は、屈折率が低く、反射率が極めて低いとともに、反射率の入射角度依存性も低いため、レンズ表面の周辺部にも高耐熱反射防止膜を設ければ、レンズ周辺光量の増大に大きく寄与し得る(したがって、広角レンズに好適である)。
また、本発明の上記構成では、撥水膜の平均膜厚が高耐熱反射防止膜の平均膜厚の5%〜150%、または、親水膜の平均膜厚が高耐熱反射防止膜の平均膜厚の5%〜150%であることが好ましい。このような膜厚関係に設定すれば、撥水膜または親水膜の膜厚と高耐熱反射防止膜の膜厚とをほぼ同レベルにして、撥水膜または親水膜を高耐熱反射防止膜の凹凸形状にうまく追従させることができ、したがって、撥水膜または親水膜の表面形状を、撥水性能または親水性能を向上させることができる有効な凹凸形状とすることができる。
また、本発明は、前記膜付きレンズを有するレンズユニット、および、このレンズユニットを有するカメラモジュールも提供する。このようなレンズユニットおよびカメラモジュールによっても前述した膜付きレンズと同様の作用効果を得ることができる。
本発明の膜付きレンズ、レンズユニットおよびカメラモジュールによれば、高耐熱反射防止膜の表面形状を制御して高耐熱反射防止膜の光学的性能を調整するための凹凸部がレンズの表面に設けられるため、高耐熱反射防止膜の表面凹凸形状の高さとピッチとを最適に調整できるとともに、高耐熱反射防止膜の密着性を高めることもできる。
本発明の一実施の形態に係るレンズユニットの概略断面図である。 図1のレンズユニットを備えるカメラモジュールの概略断面図である。 図1のレンズユニットを構成するレンズ表面上に形成される高耐熱反射防止膜の構造を概念的に示す要部拡大断面図である。 空隙を有する微粒子積層薄膜からなる他の高耐熱反射防止膜の構造を概念的にかつ段階的に示す要部拡大断面図である。 図3または図4に示される構造形態を成す高耐熱反射防止膜の表面形状を概念的に示す要部断面図であり、(a)はレンズの表面上に凹凸部がない場合の断面図、(b)はレンズの表面上に凹凸部がある場合の断面図である。 図5の(b)のA部の拡大断面図である。 凹凸部を有するレンズ表面上に設けられる高耐熱反射防止膜および撥水膜または親水膜の積層構造を概念的に示す要部拡大断面図である。 (a)は、撥水膜または親水膜の表面の凹凸形状を構成する凹部を跨ぐように凸部間に水滴が付着した状態を概念的に示す要部拡大断面図、(b)は、凹凸形状を構成する凹部に入り込むように凸部間にわたって水滴が延在して位置された状態を概念的に示す要部拡大断面図である。 レンズの表面から突出する凸部を有する凹凸部の様々な形態を示す図である。 レンズの表面から穿設される溝状の凹部を有する凹凸部の様々な形態を示す図である。 レンズの表面上における図10に示される凹部の配置形態の一例を示す平面図である。 レンズの表面上における図9に示される凸部の配置形態の一例を示す平面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
なお、以下で説明される本実施の形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。なお、以下で説明する図1および図2において複数のレンズについてはハッチングを省略している。
図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施の形態のレンズユニット11は、例えば樹脂製または金属製の円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の段付きの内側収容空間S内に配置されるガラス製又は樹脂製の複数のレンズ、例えば、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、第4のレンズ16および第5のレンズ17から成る5つのレンズと、図示しない絞り部材とを備えている。絞り部材は、透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
鏡筒12に固定されて支持されている複数のレンズ13,14,15,16,17は、それぞれの光軸を一致させた状態で配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。このうち、最も像側(内側収容空間Sの最も内奥側)に位置される2つの第4および第5のレンズ16,17は例えば貼り合わせレンズであってもよい。
鏡筒12の物体側の端部(図1において上端部)には、当該端部を径方向内側にカシメてなるカシメ部23が設けられており、このカシメ部23によってレンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ13が鏡筒12の物体側の端部に固定されている。
また、鏡筒12の像側の端部(図1において下端部)には、第5のレンズ17よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部24が設けられている。この内側フランジ部24とカシメ部23とにより、鏡筒12内にレンズ群Lを構成する複数のレンズ13,14,15,16,17と絞り部材とが保持されている。
最も物体側に位置される第1のレンズ13の外周面には、当該レンズ13の像側部分に径が小さくなった縮径部が設けられ、当該縮径部にシール部材としてのOリング26が設けられ、レンズ13の外周面と鏡筒12の内周面との間を、鏡筒12の物体側端部で封止した状態となっている。これにより、レンズユニット11の物体側の端部から鏡筒12内に水や塵埃等の微粒子が浸入するのを防止している。
鏡筒12は、その内径および外径が物体側から像面側に向かって段階的に小さくなっている。すなわち、鏡筒12は、第1および第2のレンズ13,14を収容保持する大径部12Aと、第3〜第5のレンズ15,16,17を収容保持する小径部12Bとを有する。また、このような鏡筒12の段付き形状に対応して、レンズ13,14,15,16,17は、物体側から像面側に向かうにつれて、外径が小さくなっている。基本的に、レンズ13,14,15,16,17のそれぞれの外径と、鏡筒12の各レンズ13,14,15,16,17が支持(保持)される部分のそれぞれの内径とが略等しくなっている。なお、鏡筒12の外周面には、鏡筒12を車載カメラに設置する際に用いられる外側フランジ部25が鏡筒12の外周面に鍔状に設けられている。
また、本実施の形態において、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ13は、物体側および像側のそれぞれに外表面(「レンズの表面」)を有する。すなわち、第1のレンズ13は、物体側を向くレンズ表面13aと、像側を向くレンズ裏面13bとを有する。また、第1のレンズ13は、本実施の形態では樹脂から形成されており、少なくともレンズ表面13a上に反射防止膜30が形成されて成る膜付きレンズとなっている。なお、以下では、膜付きレンズとしての第1のレンズ13についてその成膜形態を説明するが、レンズ群Lを構成する他のレンズ14,15,16,17が同様又は類似の成膜形態を有する膜付きレンズとして形成されてもよい。
また、本実施の形態において、第1のレンズ13のレンズ表面13a上に形成される反射防止膜30は、以下で更に詳しく説明する高耐熱反射防止膜として設けられる。また、本実施の形態では、第1のレンズ13のレンズ裏面13bにも高耐熱反射防止膜30が設けられる。そして、本実施の形態では、レンズ表面13aに設けられる高耐熱反射防止膜30上に更に撥水膜50Aが形成される。しかしながら、別の実施態様では、外部に露出されてもされなくてもよい第1のレンズ13のレンズ表面13aに設けられる高耐熱反射防止膜30上に親水膜50B(図1に括弧書きで示される)が形成されてもよく、また、第1のレンズ13のレンズ裏面13bに設けられる高耐熱反射防止膜30上に親水膜50Bが形成されてもよい。また、第1のレンズ13のレンズ裏面13bに高耐熱反射防止膜30が設けられなくても構わない。また、レンズ群Lを構成する他のレンズ14,15,16,17のレンズ表面および/またはレンズ裏面に高耐熱反射防止膜30が設けられ、この耐熱反射防止膜30上に親水膜50Bが設けられてもよい。なお、本実施の形態では、高耐熱反射防止膜30が第1のレンズ13のレンズ表面13a上に直接に形成されているものとする。
また、図2には、以上のような構成を成すレンズユニット11を有する本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図が示されている。図示のように、このカメラモジュール300は、フィルタ100が装着された図1のレンズユニット11を含んで構成される。
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子)304を備えている。
上ケース301は、レンズユニット11の物体側の端部を露出させるとともに他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面12aとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
パッケージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、CCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
第1のレンズ13のレンズ表面13aおよびレンズ裏面13bに形成される高耐熱反射防止膜30は、当該高耐熱反射防止膜30中の体積率が5〜74%である複数の無機粒子と、隣り合う前記無機粒子の間に形成され、体積率が65%以下である複数の空気層(体積率0%を含まず、空気層は高耐熱反射防止膜30に必須の構成要素である)と、前記無機粒子または前記無機粒子および前記空気層をバインディングし、前記無機粒子よりも低いヤング率を有し、体積率が5〜95%である、有機化合物、無機化合物および無機高分子のいずれかと、を備えている。以下、これについて詳しく説明する。
図3は、高耐熱反射防止膜30が形成されて成るレンズ13(あるいは、14−17も)の光入射面付近の要部拡大断面図である。図示のように、高耐熱反射防止膜30は、複数の無機粒子31と、バインダ32と、複数の空気層(空隙)33とを含む。無機粒子31の粘弾性はバインダ32の粘弾性と異なる。具体的には、無機粒子31のヤング率は50GPa以上である。バインダ32のヤング率は5GPa以下である。
高耐熱反射防止膜30は、異なる粘弾性を有する複数の組成物を含有する。そのため、高耐熱反射防止膜30は、高い強度と高い可撓性とを有する。樹脂からなるレンズ13(あるいは、14−17も)は、熱により膨張する。バインダ32のヤング率は低いため、高耐熱反射防止膜30の可撓性が高くなる。そのため、レンズ13(あるいは、14−17も)が熱により膨張しても、高耐熱反射防止膜30は割れにくい。一方、無機粒子31のヤング率は50GPa以上である。無機粒子31は、高耐熱反射防止膜30の強度を向上し、高耐熱反射防止膜30の表面に傷が形成されるのを抑制する。
バインダ32は、光透過性を有し、複数の無機粒子31を含有する。前述のように、バインダ32のヤング率は5GPa以下である。バインダ32は、有機化合物または無機化合物である。バインダ32は例えば樹脂である。樹脂は、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ジアリルアミン重合体、マレイン酸−ジアリルアミン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂、フルオロアクリレート、フッ素ポリマー等の1種または2種以上からなる。フッ素ポリマーは、例えば、フルオロオレフィン類(フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオキソール等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等である。バインダ32の屈折率は、1.35以下であり、好ましい屈折率は1.30以下である。
また、バインダ32は、無機高分子、例えば、珪素化合物あるいはその加水分解物もしくはその重縮合物であってもよい。珪素化合物は、例えば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、無機粒子の表面を修飾する。これにより、有機溶媒中における無機粒子の分散安定性が向上し、無機粒子の凝集および沈降が抑制される。
無機粒子31は、例えば、無機酸化物や、無機フッ化物である。無機酸化物はたとえば、酸化セリウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化珪素、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ビスマスである。無機フッ化物はたとえば、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウムである。複数の無機粒子31は、上記無機酸化物および無機フッ化物の中から選択される1種または2種以上を含む。
好ましくは、無機粒子31は、酸化アルミニウムおよび/または酸化珪素である。酸化アルミニウムおよび酸化珪素の屈折率は、いずれも低い。酸化アルミニウムの屈折率は1.7〜1.9であり、酸化珪素の屈折率は1.4〜1.7である。そのため、高耐熱反射防止膜30の屈折率を低くすることができる。
無機粒子31の粒径が大きすぎると、無機粒子31が光を散乱しやすくなる。さらに、高耐熱反射防止膜30の膜厚にばらつきが生じる。したがって、無機粒子31の好ましい平均粒径は、100nm以下である。平均粒径の好ましい下限値は8nmである。粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による写真画像から任意に抽出された100個の無機粒子の粒径を測定し、その平均値を求めることにより決定される。
また、高耐熱反射防止膜30中の無機粒子31の体積率は、5〜74%である。また、高耐熱反射防止膜30中のバインダ32の体積率は、5〜95%である。高耐熱反射防止膜30中の空気層の体積率は65%以下である。
無機粒子31の体積率が小さすぎれば、高耐熱反射防止膜30の強度が低下する。また、無機粒子31の体積率が大きすぎれば、高耐熱反射防止膜30の可撓性が低下する。一方、バインダ32の体積率が小さすぎれば、高耐熱反射防止膜30の可撓性が低下する。また、バインダ32の体積率が大きすぎれば、高耐熱反射防止膜30の強度が低下する。
無機粒子31の体積率が5〜74%であり、かつ、バインダ32の体積率が5〜95%であり、空気層が65%以下であれば、高耐熱反射防止膜30は可撓性および強度を有する。そのため、高耐熱反射防止膜30には傷が付きにくく、かつ、高温時に樹脂からなるレンズが熱膨張しても、高耐熱反射防止膜30はひび割れしにくい。
高耐熱反射防止膜30は、湿式プロセスにより形成される。より具体的には、高耐熱反射防止膜30は、高耐熱反射防止膜30を構成する塗布液をレンズ13(あるいは、14−17も)の表面に塗布することにより形成される。塗布液を塗布する方法は、たとえば、インクジェットプリンティング法、スプレー法、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷等である。
以下、製造方法の一例として、ディップコート法により反射防止膜を形成する方法を説明する。
高耐熱反射防止膜30の組成を含有する塗布液を準備する。塗布液で使用される溶媒はたとえば、テトロヒドラフラン(tetrahydrofuran:THF)や、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide:DMF)である。溶媒は、これらの物質に限定されない。溶媒は水でもよい。溶媒が有機溶媒である場合、好ましい有機溶媒の沸点は30℃〜250℃である。有機溶媒の沸点が低すぎる場合、有機溶媒の揮発速度が速すぎる。そのため、高耐熱反射防止膜30の膜厚が均一になりにくい。一方、有機溶媒の沸点が高すぎると、有機溶媒が揮発しにくい。そのため、高耐熱反射防止膜30が形成されにくい。好ましい有機溶媒の沸点は50℃〜150℃である。
塗布液の粘度及び表面張力は、低い方が好ましい。塗布液の好ましい粘度は10(mPa・s)以下であり、更に好ましくは1(mPa・s)以下である。塗布液の好ましい表面張力は70(mN/m)以下であり、更に好ましくは20(mN/m)以下である。レンズ13(あるいは、14−17も)を挟持した挟持部材を塗布液で満たされたディップ槽から引き上げるときに、挟持部材から塗布液を速やかに排出するためである。塗布液の粘度および表面張力の物性を制御するために、塗布液に界面活性剤などを添加してもよい。
塗布液において、無機粒子31の100重量部に対するバインダ32の重量部は、1〜100であり、溶媒の重量部は2000〜100000である。この場合、形成された高耐熱反射防止膜30内の無機粒子31の体積率は5〜70%になり、バインダ32の体積率は30〜95%になる。
次に、レンズ13(あるいは、14−17も)を挟持部材で挟持し、塗布液を入れたディップ槽に浸漬する。
次に、浸漬されたレンズ13(あるいは、14−17も)を、一定の速度でディップ槽から引き上げる。これにより、レンズ13(あるいは、14−17も)の表面に塗布液が塗布される。引き上げる速さは、レンズ13(あるいは、14−17も)表面に形成する高耐熱反射防止膜30の厚さに応じて変更される。
次に、レンズ13(あるいは、14−17も)に塗布された塗布液を乾燥する。引き上げられたレンズ13(あるいは、14−17も)所定の温度でベークしてもよい。
これにより高耐熱反射防止膜30が形成される。
高耐熱反射防止膜30内では、無機粒子31同士が接触する。隣り合う無機粒子31の間に、空気層33が形成される。前述のように、高耐熱反射防止膜30中の無機粒子31の体積率は、5〜74%であり、70%未満でもよい。バインダ32の体積率は5〜95%であり、95%未満でもよい。空気層33の体積率が大きすぎれば、高耐熱反射防止膜30の強度が低下する。そのため、高耐熱反射防止膜30A中の空気層33の体積率は65%以下である。
空気層33は、例えば、塗布液内の前述の無機粒子31に対するバインダ32の比率に応じて形成される。塗布液内の無機粒子100重量部に対する好ましいバインダ32の重量部は、1〜100である。この場合、塗布液を乾燥した後、高耐熱反射防止膜30A内に空気層33が形成される。
空気層33は屈折率が低いため、高耐熱反射防止膜30の屈折率は低下する。そのため、光の反射がさらに抑制される。
このような構成により、高耐熱反射防止膜30は、柔軟性および可撓性を有するとともに耐熱性に優れたものとなり、その結果、高温時における高耐熱反射防止膜のひび割れ等を防止できる。この場合、特に、空気層(空隙)33は、隣り合う無機粒子31,31間に形成されているため、高耐熱反射防止膜30が形成されているレンズ13(あるいは、14−17も)が温度変化によって膨張したり収縮したりしても、高耐熱反射防止膜30がそれに追随できる。そのため、高耐熱反射防止膜30が破壊されてしまうことを防止できる。
図4は、図3に示した高耐熱反射防止膜30を、その見方を代えてより詳細に示したものであり、基本的に、図3に示す高耐熱反射防止膜30と同様のものであるが、以下の説明では、図4に示す高耐熱反射防止膜を高耐熱反射防止膜30Aとしてその構造および成膜方法を説明する。この高耐熱反射防止膜30Aは空隙を有する微粒子積層薄膜からなり、この微粒子積層薄膜は、電解質ポリマー(バインダ)および微粒子が交互に吸着され、アルコール性シリカゾル生成物を接触させることにより、レンズと微粒子および微粒子同士が結合していることを特徴とする。
このような微粒子積層薄膜(高耐熱反射防止膜)30Aは、以下のようにして形成される。図4に示すように、レンズ13(あるいは、14−17も)上には空隙64を有する微粒子積層薄膜30Aが形成される。微粒子積層薄膜30Aは、電解質ポリマー62(例えばバインダ)および微粒子63を交互に吸着させ、且つ、アルコール性シリカゾル生成物65(例えばバインダ)を介して、レンズ13(あるいは、14−17も)と微粒子63および微粒子63と微粒子63とが結合するように構成される。以下、微粒子積層薄膜30Aの各成分について説明する。
微粒子積層薄膜30Aの形成に用いる微粒子は、溶液に分散されている状態で平均一次粒子径が、2〜100nmであることが微粒子積層薄膜30Aの透明性を得るために好ましく、微粒子積層薄膜30Aの光学機能の確保の観点から、2〜40nmがより好ましく、2〜20nmが最も好ましい。
ここで使用し得る微粒子としては無機微粒子が挙げられる。好ましくは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物が、透明性の観点から好適に選ばれる。
ここで使用する電解質ポリマーとしては、荷電を有する官能基を主鎖または側鎖に持つ高分子を用いることができる。この電解質ポリマー溶液は、微粒子の表面電荷と反対または同じ符号の電荷の電解質ポリマーを、水、有機溶媒または水溶性の有機溶媒と水の混合溶媒に溶解したものである。
アルコール系シリカゾルとしては、4、3、2官能のアルコキシシラン、およびこれらアルコキシシラン類の縮合物、加水分解物、シリコーンワニス等が使用できる。アルコール性シリカゾル生成物は、少なくとも1種類以上の、下記の一般式で表わされる低級アルキルシリケートを、メタノールおよびエタノールのうちのいずれかの中で加水分解して調製したアルコール性シリカゾルを含むことが好ましい。
(OR)nSi(R4−n (n=1〜4) ・・・(1)
(式中、Rはメチル基又はエチル基を示す。Rは非加水分解性の有機基を示す。)
また、レンズ13(あるいは、14−17も)は、そのまま用いるか、またはそれらの表面にコロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、紫外線照射、オゾン処理、アルカリや酸等による化学的エッチング処理、シランカップリング処理等によって、極性を有する官能基を導入してレンズの表面電荷をマイナス若しくはプラスする。
ここで、空隙を有する微粒子積層薄膜30Aを生成するためには、例えばディップコート法を用いる。微粒子積層薄膜30Aは、以下の工程(1)〜(3)を順に実施することにより形成できる(図4参照)。
(1)レンズ13(あるいは、14−17も)上に、電解質ポリマー溶液または微粒子分散液のいずれかを接触または塗布する工程により、電解質ポリマー62または微粒子63の層を形成する(図4(a))。
(2)電解質ポリマー溶液を接触または塗布させた後のレンズ13(あるいは、14−17も)上に該電解質ポリマー溶液の電解質ポリマーと反対電荷を有する微粒子の分散液を接触または塗布する工程、または微粒子分散液を接触または塗布させた後のプラスチック基材上に該微粒子分散液の微粒子と反対電荷を有する電解質ポリマーの溶液を接触または塗布する工程により、微粒子63または電解質ポリマー62の層を形成する(図4(b))。
(3)電解質ポリマー溶液または微粒子を接触または塗布させた後のレンズ13(あるいは、14−17も)上に、アルコール性シリカゾル生成物65を接触または塗布する工程により、アルコール性シリカゾル生成物65を介してレンズ13(あるいは、14−17も)と微粒子63、および微粒子63同士を結合させる(図4(c))。
このような構成により、高耐熱反射防止膜30Aは、柔軟性および可撓性を有するとともに耐熱性に優れたものとなり、その結果、高温時における高耐熱反射防止膜のひび割れ等を防止できる。この場合、特に、空隙64の存在により、高耐熱反射防止膜30Aが形成されているレンズ13(あるいは、14−17も)が温度変化によって膨張したり収縮したりしても、高耐熱反射防止膜30Aがそれに追随できる。そのため、高耐熱反射防止膜30Aが破壊されてしまうことを防止できる。
なお、上述のような高耐熱反射防止膜30、30Aは、125℃以上の耐熱性を有するとともに、樹脂のレンズ13(あるいは、14−17も)の熱膨張率に近い熱膨張率を有するものを選択することが好ましい。
また、図4に示される微粒子積層薄膜(高耐熱反射防止膜)30Aの形成工程では、膜の定着性を高めるためにアルコール性シリカゾル生成物65が使用されたが、無論、アルコール性シリカゾル生成物65を用いることなく高耐熱反射防止膜30Aを形成することができる。その場合には、例えば、BET法で測定した平均一次粒子径が8nmの数珠状シリカ微粒子が分散したシリカ水分散液(日産化学工業(株)社製、商品名:スノーテックス(ST)OUP、シリカゾル)をpHは調整せずに濃度を1質量%に調整した負の電荷を有する微粒子分散液として用い、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA、アルドリッチ社製)を0.1質量%、pH10に調整した水溶液を電解質ポリマー溶液として用いる。そして、レンズ13(あるいは、14−17も)のそれぞれを、電解質ポリマー溶液に1分間浸漬後にリンス用の超純水を1分間シャワーする工程(a)、および、微粒子分散液に1分間浸漬後にリンス用の超純水を1分間シャワーする工程(b)をこの順に施す。その後、工程(a)1回と工程(b)1回を順に行なうことを1サイクルとして、このサイクル数を微粒子交互積層回数とし、微粒子交互積層回数を4回行なった後、25℃で24時間乾燥する。これにより、レンズ13(あるいは、14−17も)表面に微粒子積層膜30Aが形成される。すなわち、この製法は、レンズ13(あるいは、14−17も)の表面に電解質ポリマー溶液(バインダ溶液)を接触させた後にリンスする第1の工程、この第1の工程後、レンズ13(あるいは、14−17も)の表面に負の電荷を有する微粒子の分散液を接触させた後にリンスする第2の工程、および、第1の工程と第2の工程とを交互に繰り返して微粒子積層膜を形成する第3の工程を含むとともに、随意的には、微粒子積層膜に電解質ポリマー溶液(バインダ溶液)を接触させた後にリンスする更なる工程を含み、それにより、図4(c)の工程が排除される。
以上のような形態で反射防止膜30(あるいは30A)が形成されることにより、その高耐熱反射防止膜30の表面は、図5の(a)に示されるように必然的に凹凸形状を成すようになるが、本実施の形態では、図5の(b)に示されるように、高耐熱反射防止膜30のこのような表面凹凸形状を制御して高耐熱反射防止膜30の光学的性能を調整するための凹凸部80がレンズ13(14−17)の表面に設けられる。なお、図3および図4には、便宜上、凹凸部80が示されない。
レンズ13(14−17)の表面に設けられるこのような凹凸部80によって図5の(b)に示されるように高耐熱反射防止膜30の表面の凹凸形態C1に影響を及ぼすことができ、具体的には、例えば高耐熱反射防止膜30の表面の凹凸形態C1をレンズ13(14−17)の表面の凹凸部80の形状に応じた形状にすることが可能となり、高耐熱反射防止膜30の表面の凹凸形態C1の高さHとピッチPとを凹凸部80により最適に調整できるようになる。
レンズ13(14−17)の表面の凹凸部80は、高耐熱反射防止膜30の凹凸形態C1の高さHとピッチPとを調整できるようにし、それにより、高耐熱反射防止膜30の光学的性能を調整するためのものである。言い換えると、凹凸部80は、高耐熱反射防止膜30との協働により所望の反射防止特性を実現するためのものであり、それ自体が光学的機能を有するものではない。そのため、凹凸部80は、それ自体が光学的機能を有さないように例えばその高さ(深さ)X(図5の(b)参照)が70nmに設定される。しかしながら、凹凸部80がそれ自体で光学的機能を有していても構わない。
なお、レンズ13(14−17)の表面のこのような凹凸部80は、例えばレンズ13(14−17)が本実施の形態のように樹脂製の場合には、レンズ13(14−17)を成形する金型に凹凸を加工することにより形成されてもよく、あるいは、レンズ13(14−17)がガラス製の場合には、レンズ13(14−17)の表面上にエッチング等により形成されてもよい。
凹凸部80に起因して形成(調整)される高耐熱反射防止膜30のこのような表面の凹凸形態C1は、平滑な表面と比べて、光の入射角度が変動した際にも光の反射をし難くする(入射角度依存性が低い反射防止膜を実現する)。すなわち、図5(b)のA部の拡大図である図6に示されるように、高耐熱反射防止膜30に入射する光70は、凹凸形態C1を構成する凸部30aおよび凹部30bの凹凸面内で反射を繰り返しながら高耐熱反射防止膜30中へと取り込まれていき、高耐熱反射防止膜30外への反射が抑制される。また、このような高耐熱反射防止膜30は、所望の屈折率により決定される膜厚を、反射光の位相と入射光の位相とが重なって互いに打ち消し合うように可視光線の波長λの1/4の倍数に設定する(例えば100nm)ことにより、優れた反射防止特性を実現し得る。
つまり、上記構成の高耐熱反射防止膜30は、凹凸形態C1に伴う光の取り込みによる反射抑制効果と、膜厚を可視光線の波長λの1/4の倍数に設定することに伴う反射抑制効果との相乗効果により、従来の反射防止膜と比べて優れた反射防止特性(高い光透過率)を有する。そして、高耐熱反射防止膜30は、この相乗効果と相俟って、前述した無機粒子、空気層および化合物の組成形態あるいは微粒子積層薄膜形態を成して形成されることにより、柔軟性および可撓性を有するとともに耐熱性に優れたものとなり、その結果、高温時における高耐熱反射防止膜のひび割れ等を防止できる。この場合、特に、空気層(空隙)33,64は、隣り合う無機粒子の間に形成されているため、高耐熱反射防止膜30が形成されているレンズが温度変化によって膨張したり収縮したりしても、高耐熱反射防止膜30がそれに追随できる。そのため、高耐熱反射防止膜30が破壊されてしまうことを防止できる。
そして、本実施の形態においては、さらに、このような凹凸形態C1を成す表面を有する反射防止特性の優れた高耐熱反射防止膜30上に撥水膜50Aまたは親水膜50Bを所定の厚さ(例えば100nm)で設けることにより、撥水膜50Aまたは親水膜50Bの撥水性能または親水性能を向上させることができる。すなわち、高耐熱反射防止膜30上に設けられた撥水膜50Aまたは親水膜50Bは、図7に示されるように、高耐熱反射防止膜30の表面の凹凸形態C1にほぼ沿う形状を成してその表面が凸部50aと凹部50bとを有する凹凸形態C2を有するようになり、そのため、ある状況において、この凹凸形態C2の表面上に付着する水滴90は、図8の(a)に示されるように、凹凸形態を構成する凹部50bを跨ぐように凸部50a間に載置される(凸部50aの頂部Tによって支持される)ように位置されることとなり、それにより、膜50A(50B)と水滴90との間の接触摩擦抵抗が小さくなり、水滴90の流動性が高まる。このとき、水滴90と膜50A(50B)との間で凹部50b内に存在する空気層85が水滴90の流動促進に寄与する。その結果、例えば車載カメラの露出レンズ(第1のレンズ)として膜付きレンズ13が使用される場合には、走行中に受ける風力によって水滴90がレンズ表面上から除去され易くなり、レンズ13を通じた視認性を向上させることができる。あるいは、他の状況では、図8の(b)に示されるように、撥水膜50Aまたは親水膜50Bの凹凸形態C2の表面上に付着する水滴90は、凹凸形態を構成する凹部50bに入り込むように凸部50a,50a間にわたって延在して位置されることとなり、それにより、膜50A(50B)と水滴90との間の接触面積が大きくなり、水滴90が撥水膜50Aまたは親水膜50Bの撥水効果または親水効果を受け易くなる(水滴90と撥水膜50Aまたは親水膜50Bとの間の接触面積を十分に確保して撥水作用または親水作用を水滴90に対して効率的に及ぼすことができる)。その結果、撥水作用下においては、水滴90の球状化を促して撥水性を高め、視認性を向上させることができるとともに、親水作用下においては、レンズ面に付着する細かい水滴90を親水膜上にわたって拡げて薄い水膜とし、レンズ面に滞留させることなく防曇に寄与し得る(温度の急激な変化に伴ってレンズに結露(曇り)が生じることを抑制し、視認性の低下を防止できる)。
なお、本実施の形態において、撥水膜50Aとしては、フッ素系の材料(例えば、メルク株式会社が提供する商品名「WR4」など)を使用することができる。一方、親水膜50Bとしては、一般に、アクリル系等(例えば、アクリルポリマー;大阪有機化学工業株式会社が提供している「LAMBIC」など)の有機系親水膜、シリカ系等の無機系親水膜、チタン系等の光触媒を挙げることができる。また、このような撥水膜50Aおよび親水膜50Bは、例えば、テーピングによるマスキングを伴ってまたは伴うことなく、蒸着、塗布、スプレー、ディッピング法等によって形成することもできるが、膜の密着強度を高めるという観点では、撥水膜50Aおよび親水膜50Bを蒸着によって形成することが好ましい。一方、これらの膜50A(50B)の下地となる高耐熱反射防止膜30は、親水膜50Aおよび撥水膜50Bも含めて、レンズ13(14−17)の少なくとも光学的に有効な範囲内に設けられる。
また、本実施の形態において、高耐熱反射防止膜30および撥水膜50Aまたは親水膜50Bの下地となるレンズ13(14−17)の表面の凹凸部80は、高耐熱反射防止膜30の表面の凹凸形態を構成する凸部30a,30a同士の頂点間距離(凸部30aの配置ピッチ)P(図6および図7参照)の平均値が100〜400nm(好ましくは150〜300nm)となるように、あるいは、凸部30aの高さH(図6および図7参照)の平均値が30〜120nm(好ましくは50〜100nm)となるように、あるいはさらには、H/Pが0.3〜1.3となるように、その形状、配置形態、各種寸法(幅、高さXなど)等が設定される。また、このようなピッチPおよび高さHの寸法設定は、高耐熱反射防止膜30上に形成される撥水膜50Aおよび親水膜50Bの表面の凹凸形態C2についても当てはまる。特に、本実施の形態では、撥水膜50Aの平均膜厚が高耐熱反射防止膜30の平均膜厚の5%〜150%に設定され、また、親水膜50Bの平均膜厚が高耐熱反射防止膜30の平均膜厚の5%〜150%に設定される。このような膜厚関係に設定すれば、撥水膜50Aまたは親水膜50Bの膜厚と高耐熱反射防止膜30の膜厚とをほぼ同レベルにして、撥水膜50Aまたは親水膜50Bを高耐熱反射防止膜30の凹凸形状にうまく追従させることができ、したがって、撥水膜50Aまたは親水膜50Bの表面形状を、撥水性能または親水性能を向上させることができる有効な凹凸形状とすることができる。
このようなピッチPおよび高さHの寸法設定を可能にし得る凹凸部80の配置形成形態の一例が図9〜図12に示されている。
図9の(a)〜図9の(d)に示される凹凸部80は、レンズ13(14−17)の表面から突出する凸部80A,80B,80C,80Dを有する。この場合、凹凸部80の凹部は、レンズ13(14−17)の表面によって形成されることになる。具体的には、図9の(a)に示される凸部80Aは円柱または四角柱として形成され、図9の(b)に示される凸部80Bは砲弾状に形成され、図9の(c)に示される凸部80Cは円錐状に形成される。また、図9の(d)に示される凸部80Dは、正方形の上端面80Daと、正方形の下端面80Dbと、上端へ向けて先細るテーパ状の側面80Dcとを有する角柱状に形成される。
一方、図10の(a)〜図10の(d)に示される凹凸部80は、レンズ13(14−17)の表面から穿設される溝状の凹部80E,80F,80G,80Hを有する。この場合、凹凸部80の凸部は、レンズ13(14−17)の表面によって形成されることになる。具体的には、図10の(a)に示される凹部80Eは、平面状の下端面80Ebと、レンズ13(14−17)の表面から下端面80Ebへと延びる傾斜面80Eaとを有し、下端面80Ebへ向かって先細っている。また、図10の(b)に示される凹部80Fは、線状に延びる下端縁80Fbと、レンズ13(14−17)の表面から下端縁80Fbへと延びる傾斜面80Faとを有し、下端縁80Fbへ向かって先細るV字溝として形成される。さらに、図10の(c)に示される凹部80Gは、断面が放物線状を成す凹陥溝として形成される。また、図10の(d)に示される凹部80Hは、平面状の下端面80Hbと、レンズ13(14−17)の表面から下端面80Ebへと垂直に延びる側面80Eaとを有する。
図11には、レンズ13(14−17)の表面上における図10に示される凹部80E,80F,80G,80Hの配置形態の一例が平面図で示される。図11の(a)では、凹部80E,80F,80G,80Hが格子状に延びるラインL1に沿って延在している。この場合、これらのラインL1の全てが凹部80E,80F,80G,80Hのうちのいずれか1つのみによって形成されてもよく、あるいは、凹部80E,80F,80G,80Hのうちの2つ以上の組み合わせによってこれらの格子状のラインL1が形成されてもよい。また、図11の(b)では、複数の同心円Caに沿って凹部80E,80F,80G,80Hが延在している。この場合も先と同様に、これらの同心円Caの全てが凹部80E,80F,80G,80Hのうちのいずれか1つのみによって形成されてもよく、あるいは、凹部80E,80F,80G,80Hのうちの2つ以上の組み合わせによってこれらの同心円Caが形成されてもよい。さらに、図11の(c)では、凹部80E,80F,80G,80Hが放射状に延びるラインL2に沿って延在している。この場合も、これらのラインL2の全てが凹部80E,80F,80G,80Hのうちのいずれか1つのみによって形成されてもよく、あるいは、凹部80E,80F,80G,80Hのうちの2つ以上の組み合わせによってこれらの放射状のラインL2が形成されてもよい。
図12には、レンズ13(14−17)の表面上における図9に示される凸部80A,80B,80C,80Dの配置形態の一例が平面図で示される。図12の(a)では、凸部80A,80B,80C,80Dが格子状に延びるラインL1に沿って所定の間隔を隔てて設けられている。この場合、これらのラインL1の全てが凸部80A,80B,80C,80Dのうちのいずれか1つのみによって形成されてもよく、あるいは、凸部80A,80B,80C,80Dのうちの2つ以上の組み合わせによってこれらの格子状のラインL1が形成されてもよい。また、図12の(b)では、複数の同心円Caに沿って凸部80A,80B,80C,80Dが所定の間隔を隔てて設けられている。この場合も先と同様に、これらの同心円Caの全てが凸部80A,80B,80C,80Dのうちのいずれか1つのみによって形成されてもよく、あるいは、凸部80A,80B,80C,80Dのうちの2つ以上の組み合わせによってこれらの同心円Caが形成されてもよい。さらに、図12の(c)では、凸部80A,80B,80C,80Dが放射状に延びるラインL2に沿って所定の間隔を隔てて設けられている。この場合も、これらのラインL2の全てが凸部80A,80B,80C,80Dのうちのいずれか1つのみによって形成されてもよく、あるいは、凸部80A,80B,80C,80Dのうちの2つ以上の組み合わせによってこれらの放射状のラインL2が形成されてもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、高耐熱反射防止膜30の表面形状を制御して高耐熱反射防止膜30の光学的性能を調整するための凹凸部80がレンズ13(14−17)の表面に設けられるため、この凹凸部80により高耐熱反射防止膜30の表面形態に影響を及ぼすことができ、具体的には例えば高耐熱反射防止膜30の表面形態をレンズ表面の凹凸部80の形状に応じた形状にすることが可能となり、高耐熱反射防止膜表面の凹凸形態C1の高さHとピッチPとを凹凸部80により最適に調整できるようになる。したがって、所望の光学的条件に適するようにレンズ表面の凹凸部80を形成して高耐熱反射防止膜30の凹凸形態C1の高さHとピッチPとを最適化すれば、所望の度合いまで反射率および入射角依存性を低下させることが可能になる(例えば、入射角依存性に関しては、光軸と平行に入射する直線光と光軸に対して角度を成す斜光との光路差を平均化して相殺することも可能となる)。また、高耐熱反射防止膜30の表面凹凸形態C1を調整し得るレンズ表面のこのような凹凸部80は、そのアンカー効果(レンズ13(14−17)と高耐熱反射防止膜30との凹凸同士の係合)によってレンズ13(14−17)に対する高耐熱反射防止膜30の密着性を高めることもできる。
また、本実施の形態のようにレンズ表面の凹凸部80に起因して前述したような凹凸形態C1を成す表面を有する反射防止特性の優れた高耐熱反射防止膜30上に撥水膜50Aまたは親水膜50Bを設ければ、撥水膜50Aまたは親水膜50Bの撥水性能または親水性能を向上させることができる。また、この場合、高耐熱反射防止膜30上に形成される撥水膜50Aまたは親水膜50Bは、高耐熱反射防止膜30のための保護膜として作用し得る。すなわち、耐擦傷性に弱い高耐熱反射防止膜30を撥水膜50Aまたは親水膜50Bによって保護することができ、膜強度を高めることができる。
また、本実施の形態において、レンズ13(14−17)の表面の凹凸部80は、高耐熱反射防止膜30の表面の凹凸形態C1を構成する凸部30a,30a同士の頂点間距離Pの平均値が100〜400nm(好ましくは150〜300nm)となるように、あるいは、凸部30aの高さHの平均値が30〜120nm(好ましくは50〜100nm)となるように、あるいはさらには、H/Pが0.3〜1.3となるように形成されている。このようにH/Pを0.3〜1.3に設定すると、高耐熱反射防止膜表面の凹凸形態C1の凹部30bに水滴を含む異物がとどまってしまうことを効果的に防止できる。また、高耐熱反射防止膜30の表面の凸部30a,30a同士の頂点間距離Pの平均値(平均ピッチP)を可視光線の波長よりも小さくなる400nm以下に設定すると、可視光線全体にわたって良好な反射防止特性を発揮できるとともに、凹部30bに水滴を含む異物がとどまってしまうことを効果的に防止できる。また、平均ピッチPを100nm以上に設定することにより、前述した水滴の流動性を高めることができる。また、100〜400nmの平均ピッチPに加えて(または平均ピッチPとは無関係に)、凸部30aの平均高さHを50〜200nmに設定することにより、レンズ表面の凹凸部80と高耐熱反射防止膜表面の凹凸形態C1とから構成される凹凸構造が反射防止膜としての前述した機能を効果的に果たすことができるようになる。
また、本実施の形態では、高耐熱反射防止膜30が樹脂からなるレンズ13(14−17)の表面に直接に形成されているため、高耐熱反射防止膜30が柔軟性及び可撓性を持ち、その結果、高温時における高耐熱反射防止膜30のひび割れを防止できる。この場合、高耐熱反射防止膜30を形成する空気層は、隣り合う複数の無機粒子の間に形成されている(例えば、中空シリカ微粒子の中空部分などといった部位に形成されていない)ため、高耐熱反射防止膜30が形成されているレンズが温度変化によって膨張したり収縮したりしても、高耐熱反射防止膜30がそれに追随できる(これに対し、空気層が例えば中空シリカ微粒子の中空部分などといった部位に形成されて硬いシリカの殻の内部に閉じ込められていると、高耐熱反射防止膜が形成されている基材が温度変化によって膨張したり収縮したりした際に、高耐熱反射防止膜がそれに追随できない)。そのため、高耐熱反射防止膜30が破壊されてしまう可能性がない。
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、鏡筒、凹凸部などの形状は、前述した実施の形態に限定されない。また、レンズ上における高耐熱反射防止膜の形成形態は、前述した機能を有しさえすれば、どのような形態であっても構わない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施の形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施の形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
11 レンズユニット
12 鏡筒
13,14,15,16,17 レンズ(膜付きレンズ)
30 高耐熱反射防止膜
30a 凸部
50A 撥水膜
50B 親水膜
80 凹凸部
300 カメラモジュール

Claims (9)

  1. 鏡筒に設けられるとともに、その表面上に反射防止膜が形成されて成る膜付きレンズであって、
    前記反射防止膜が高耐熱反射防止膜として設けられ、この高耐熱反射防止膜は、当該高耐熱反射防止膜中の体積率が5〜74%である複数の無機粒子と、隣り合う前記無機粒子の間に形成され、体積率が65%以下である空気層と、前記無機粒子または前記無機粒子および前記空気層をバインディングし、前記無機粒子よりも低いヤング率を有し、体積率が5〜95%である、有機化合物、無機化合物および無機高分子のいずれかと、を備え、
    前記レンズの表面には、前記高耐熱反射防止膜の表面形状を制御して前記高耐熱反射防止膜の光学的性能を調整するための凹凸部が設けられることを特徴とする膜付きレンズ。
  2. 鏡筒に設けられるとともに、その表面上に反射防止膜が形成されて成る膜付きレンズであって、
    前記反射防止膜が高耐熱反射防止膜として設けられ、この高耐熱反射防止膜は空隙を有する微粒子積層薄膜からなり、この微粒子積層薄膜は、電解質ポリマーと微粒子とが交互に吸着されてレンズに積層状態で結合されており、
    前記レンズの表面には、前記高耐熱反射防止膜の表面形状を制御して前記高耐熱反射防止膜の光学的性能を調整するための凹凸部が設けられることを特徴とする膜付きレンズ。
  3. 前記高耐熱反射防止膜の表面は、前記レンズの表面の前記凹凸部の形状にほぼ沿う凹凸形態を有し、この凹凸形態を構成する凸部同士の頂点間距離の平均値が100〜400nmとなるように前記レンズの表面の前記凹凸部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の膜付きレンズ。
  4. 前記高耐熱反射防止膜の表面は、前記レンズの表面の前記凹凸部の形状にほぼ沿う凹凸形態を有し、この凹凸形態を構成する凸部の高さの平均値が30〜120nmとなるように前記レンズの表面の前記凹凸部が形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の膜付きレンズ。
  5. 前記高耐熱反射防止膜の表面は、前記レンズの表面の前記凹凸部の形状にほぼ沿う凹凸形態を有し、この凹凸形態を構成する凸部同士の頂点間距離の平均値をP、凸部の高さの平均値をHとすると、H/Pが0.3〜1.3となるように前記レンズの表面の前記凹凸部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の膜付きレンズ。
  6. 前記反射防止膜上に撥水膜または親水膜が設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の膜付きレンズ。
  7. 前記撥水膜または前記親水膜は、前記高耐熱反射防止膜の表面の前記凹凸形態にほぼ沿う形状を成して設けられることを特徴とする請求項6に記載の膜付きレンズ。
  8. 複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられたレンズ群と、このレンズ群が収納される鏡筒とを備えるレンズユニットであって、
    前記レンズ群を構成するレンズの少なくとも1つが請求項1から7のいずれか1項に記載の膜付きレンズであることを特徴とするレンズユニット。
  9. 請求項8に記載のレンズユニットを備えることを特徴とするカメラモジュール。
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