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JP2020111469A - リール、及びリールの製造方法 - Google Patents

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JP2020111469A
JP2020111469A JP2020004511A JP2020004511A JP2020111469A JP 2020111469 A JP2020111469 A JP 2020111469A JP 2020004511 A JP2020004511 A JP 2020004511A JP 2020004511 A JP2020004511 A JP 2020004511A JP 2020111469 A JP2020111469 A JP 2020111469A
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隆 窪田
Takashi Kubota
隆 窪田
尊則 飯塚
Takanori IIZUKA
尊則 飯塚
美智雄 磯
Michio Iso
美智雄 磯
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Toray Industries Inc
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Abstract

【課題】異物付着が少なく、気温の変動による巻きずれやしわの発生を抑制したリール、及びリールの製造方法を提供する。【解決手段】樹脂製コア、及び前記樹脂製コアに巻回されたポリオレフィン微多孔膜を含むリールであって、前記樹脂製コアの線膨張係数が1×10−5〜1×10−4であり、前記ポリオレフィン微多孔膜の表裏を合わせた際のTD方向における静摩擦係数が0.6以上であり、前記ポリオレフィン微多孔膜の巻回における、スリット後の断面積換算の巻取張力が、前記ポリオレフィン微多孔膜のMD方向における弾性率に対し0.15〜0.60%であるリール、及びリールの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、リール、及びリールの製造方法に関するものである。
微多孔膜は、ろ過膜、透析膜などのフィルター、電池用や電解コンデンサー用のセパレータなどの種々の分野に用いられる。これらの中でも、ポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン微多孔膜は、耐薬品性、絶縁性、機械的強度などに優れ、シャットダウン特性を有するため、近年、二次電池用セパレータとして広く用いられている。
一方、二次電池、例えばリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いため、パーソナルコンピュータ、携帯電話などに用いる電池として広く使用されている。また、リチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用電源としても期待されている。
リチウムイオン二次電池の製造拠点も世界各国で必要とされており、寒冷地帯や温暖地帯による製造拠点も増えている。セパレータとして用いられるポリオレフィン微多孔膜においても、コアに巻回されリールとした状態での寒冷地への搬送が増え、気温が著しく低い場所への搬送でも品質や性能を保証が要求されている。特にリールにおける巻きずれやしわがあった場合は、電池として用いた場合に短絡が起こるため、巻きずれやしわが発生しないリールは種々の検討が行われている。また、安全のためにリールに異物付着がないことが望ましく、リール用のコアには紙粉が発生する紙製コアから樹脂製コアへの需要が高まっている。しかし、樹脂製コアを用いた場合、寒冷地への搬送の際には気温差でコアが収縮するため、到着するまでに巻きずれやしわの発生があり、寒冷地への搬送が困難であった。
国際公開第2015/083705号 特開2016−44184号公報 特開2016−191045号公報
しかし、特許文献1では、ポリオレフィン微多孔膜で巻きずれ、しわのない優れた外観を持つ捲回体に関して記載はあるが、コアから発生する異物付着や、優れた外観を得られた後に、気温差がある場所へ搬送した際の巻きずれやしわの抑制方法については記載も示唆もされていない。
特許文献2では、コアの素材として熱膨張係数が小さいことが好ましいことが記載され、長期保存試験として40℃での加速試験で検討がなされているが、寒冷地への送付で起こる問題については記載も示唆もされていない。
特許文献3では、巻取張力における記載はあるものの、MD弾性率の違いからの適した巻取張力については記載も示唆もされていない。
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決するためになされたものであり、異物付着が少なく、気温の変動による巻きずれやしわの発生を抑制したリール、及びリールの製造方法を提供することにある。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
樹脂製コア、及び前記樹脂製コアに巻回されたポリオレフィン微多孔膜を含むリールであって、前記樹脂製コアの線膨張係数が1×10−5〜1×10−4であり、前記ポリオレフィン微多孔膜の表裏を合わせた際のTD方向における静摩擦係数が0.6以上であり、前記ポリオレフィン微多孔膜の巻回における、スリット後の断面積換算の巻取張力が、前記ポリオレフィン微多孔膜のMD方向における弾性率に対し0.15〜0.60%であるリール。
〔2〕
前記樹脂製コアがABS樹脂を含む〔1〕に記載のリール。
〔3〕
前記MD方向における弾性率が500MPa以上である〔1〕または〔2〕に記載のリール。
〔4〕
前記ポリオレフィン微多孔膜のTD方向における引張強度に対するMD方向における引張強度の比(MD引張強度/TD引張強度)が0.8〜1.6である〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載のリール。
〔5〕
前記リールにおける前記ポリオレフィン微多孔膜の巻長が、リールにおける幅1mあたりの質量が20kg/m以下となる巻長である〔1〕〜〔4〕のいずれか一に記載のリール。
〔6〕
前記リールにおける前記ポリオレフィン微多孔膜の幅が20mm以上200mm以下である〔1〕〜〔5〕のいずれか一に記載のリール。
〔7〕
〔1〕〜〔6〕のいずれか一に記載のリールの製造方法であって、
前記ポリオレフィン微多孔膜を前記樹脂製コアに巻回する、巻回工程を含み、
前記巻回工程における、スリット後の断面積換算の巻取張力が、前記ポリオレフィン微多孔膜のMD方向における弾性率に対し、0.15〜0.60%であるリールの製造方法。
本発明によれば、異物付着が少なく、かつ寒冷地への搬送等の気温の変動による状態変化が少なく、巻きずれやしわの発生を抑制したリール、及びリールの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
本発明の実施形態にかかるリールは、樹脂製コア、及び前記樹脂製コアに巻回されたポリオレフィン微多孔膜を含むリールであって、前記樹脂製コアの線膨張係数が1×10−5〜1×10−4であり、前記ポリオレフィン微多孔膜の表裏を合わせた際のTD方向における静摩擦係数が0.6以上であり、前記ポリオレフィン微多孔膜の巻回における、スリット後の断面積換算の巻取張力が、前記ポリオレフィン微多孔膜のMD方向における弾性率に対し0.15〜0.60%である。
コアに紙製コアを用いたリールは紙粉発生による異物付着が起こり易いが、本発明の実施形態にかかるリールであれば、コアに樹脂製コア(以下単にコアと称する場合がある)を用いているため、異物付着を抑制し得る。また、気温の低下により樹脂製コアが収縮しても、巻回したポリオレフィン微多孔膜(以下単に微多孔膜と称する場合がある)が樹脂製コアの収縮に追従して収縮し、巻きずれやしわが起こりにくい。これは、ポリオレフィン微多孔膜の巻回における巻取張力を特定の範囲とし、静摩擦係数を0.6以上とすることにより初めて得られる効果である。
なお、静摩擦係数は一般的に1を超えないが、本発明の実施形態ではポリオレフィン微多孔膜の表裏を合わせた際のTD方向における静摩擦係数が1を超えた。それは、構造制御にて緻密な凹凸構造による、ポリオレフィン微多孔膜同士の相互作用を利用しており、一般的な静摩擦係数と異なっている。
[1]樹脂製コア
本発明の実施形態において、コアとは、ポリオレフィン微多孔膜を巻回するための、すなわち巻き取るための円筒状または円柱状の管または芯をいう。
コアの形状は公知の形状でかまわない。例えば、微多孔膜を巻回する巻取部および軸を通すための軸受部を連結部(スポ−ク)で連結した円筒形のものであってもよい。
樹脂製コアには、線膨張係数1×10−5〜1×10−4/Kとなる樹脂製コアを使用する必要がある。
線膨張係数が1×10−4/Kを超える場合、例えば、加工場所からの気温差が20℃以上低い場所に輸送や保管された場合等、樹脂製コアの温度の低下による収縮によりコア径が小さくなりすぎ、ポリオレフィン微多孔膜が巻き形状を保てず、巻きずれやしわが発生する。
線膨張係数が1×10−5/Kを下回る場合、コアとしての強度が弱い、価格が高い等のデメリットが生じやすい。
本発明の実施形態にかかるリールにおいて、樹脂製コアは、コアの一部または全部が樹脂部材よりなる。樹脂製コアの全てを樹脂部材で構成してもよいし、一部に金属部材、ファイバー素材を用いていてもよいが、全てを樹脂部材で構成することが好ましい。
樹脂製コアは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの樹脂(プラスチック)を含むことが好ましく、取り扱い性の点からABS樹脂(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、PS(ポリスチレン)、PE(ポリエチレン)、ベークライト等の熱可塑性樹脂を含むことがより好ましく、ABS樹脂を含むことが更に好ましい。
[2]ポリオレフィン微多孔膜の構造及び物性
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の好ましい実施態様としては次の物性がある。
(1)静摩擦係数
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、膜同士の静摩擦係数は0.6以上であり、好ましくは0.8以上である。ここで、膜同士の静摩擦係数とは、ポリオレフィン微多孔膜の一方の表面(おもて面)とその反対側の表面(裏面)とを正対させ(重ね合わせ)てTDに動かすよう測定した静摩擦係数をいう。静摩擦係数を上記範囲とすることで、ポリオレフィン微多孔膜の巻回体を作製した際に、しわや端面の飛び出しがない巻姿の良好なポリオレフィン微多孔膜を提供することができる。静摩擦係数が0.6未満であると、低温時に巻きずれが起こる。また、ポリオレフィン微多孔膜表裏のグリップ力を確保することができ、製膜後の微多孔膜をスリットする際に高速で搬送時しても捲回体の巻き出し部においてすべりが発生しにくく、蛇行を抑制することができる。なお、静摩擦係数は後述する測定方法で測定した値をいう。
(MD方向における弾性率)
MD方向における弾性率(MPa)は、幅10mmの短冊状試験片を用いて、ASTM D882に準拠した方法により測定する。具体的には、引張張力2〜3N間で微多孔膜に張力を加えた時に得られる弾性率を、試験前のサンプル断面積で除することで求めることができる。このようにして求めたポリオレフィン微多孔膜のMD方向の弾性率は、好ましくは500MPa以上であり、より好ましくは800MPa以上であり、さらに好ましくは1000MPa以上で、このようなMD方向の弾性率を有することにより、巻き取りや搬送時に速度が加速される際や唐突な張力差、張力変動によるフィルムとしての変形を抑えることができ、良好な平面性を保持したままリールへと加工できる。
(引張強度)
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜のMD方向の引張強度(引張破断強度)の下限は、好ましくは100MPa以上であり、より好ましくは150MPa以上である。さらに好ましくは200MPa以上である。
ポリオレフィン微多孔膜のMD方向の引張強度の上限は、500MPa以下であることが好ましい。引張強度が上記範囲にある場合、ポリオレフィン微多孔膜の巻回における、スリット後の断面積換算の巻取張力を、ポリオレフィン微多孔膜のMD方向における弾性率に対し0.15〜0.60%とすることで、低温時に樹脂製コアの収縮に追従してポリオレフィン微多孔膜が収縮し、巻きずれやしわが起こりにくいリールとすることができる。
また、高い張力が掛かった場合も膜が破断しにくく、高い耐久性を有する。例えば、引張強度が上記範囲にある微多孔膜を電池用セパレータとして用いた場合、電池作製時や使用時における短絡を抑制するとともに、高い張力をかけてセパレータを巻回することが可能となり、電池の高容量化を図ることができる。また、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に多孔質層などを塗布する工程においては、塗工不良等の発生を抑制できる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜のTD方向の引張強度の下限は、特に限定されないが、例えば、100MPa以上であり、好ましくは180MPa以上であり、より好ましくは200MPa以上である。TD方向の引張強度の上限は、特に限定されないが、例えば、500MPa以下である。
また、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜において、TD方向における引張強度に対するMD方向における引張強度の比(MD引張強度/TD引張強度)の下限は、0.8以上であることが好ましく、より好ましくは1.0以上である。MD引張強度/TD引張強度の上限は、1.6以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜のTD引張強度、及びMD引張強度/TD引張強度のうち少なくとも1つが上記の範囲にある場合、引張強度が優れているため、高い強度や耐久性が要求される用途に好適に用いることができる。また、セパレータの捲回方向は通常MD方向であることから、MD引張強度/TD引張強度は上記範囲内であることが好ましい。
なお、MD引張強度およびTD引張強度については、ASTM D882に準拠した方法により測定した値である。
(膜厚)
ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。膜厚の下限は、特に限定されないが、例えば、3μm以上である。膜厚が上記範囲にある場合、ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレータとして使用した際、電極サイズを大きくすることができ、電池容量を向上させることができる。
(透気抵抗度)
ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度は、30秒/100cm以上800秒/100cm以下である。また、電池用セパレータとして用いる場合の透気抵抗度の上限は、好ましくは400秒/100cm以下であり、より好ましくは300秒/100cm以下である。透気抵抗度が上記範囲にある場合、電池用セパレータとして用いた際、イオン透過性に優れ、電池のインピーダンスが低下し電池出力が向上する。透気抵抗度は、ポリオレフィン微多孔膜を製造する際の延伸条件などを調節することにより、上記範囲とすることができる。
(空孔率)
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、20%以上60%以下であることが好ましい。電池用セパレータとして用いる場合、空孔率は、好ましくは30%以上50%以下である。空孔率が上記範囲にある場合、高い電解液の保持量と高いイオン透過性を確保することができ、電池のレート特性を向上させることができる。空孔率は、製造過程において、ポリオレフィン樹脂の構成成分の配合割合や延伸倍率などにより調製される。
(コーティングフィルム)
ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に、ポリオレフィン樹脂以外の他の多孔質層を積層して積層ポリオレフィン多孔質膜(コーティングフィルム)としてもよい。他の多孔質層としては、特に限定されないが、例えば、バインダーと無機粒子とを含む無機粒子層をコーティングにより積層してもよい。
多孔質層の厚みは、1〜5μmの範囲に設定でき、1〜4μmが好ましく、1〜3μmがより好ましい。多孔質層の厚みがこのような厚みを有することで、十分な多孔質層の形成効果(絶縁性や強度の向上効果等)が得られ、製品ばらつきを抑えて生産性を向上でき、また電極に対する接着性が確保できる。多孔層の厚みが5μm以下であれば、巻き嵩や積層による嵩を抑えることができ、電池の高容量化に適している。さらに、カールが大きくなるのを防ぎ、電池組み立て工程での生産性の向上に寄与することができる。
無機粒子層を構成するバインダー成分としては、特に限定されず、公知の成分を用いることができ、摩擦係数制御によるブロッキング抑制の観点から、例えば、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などを用いることが好ましい。
無機粒子層を構成する無機粒子としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、チタニア、アルミナ、ベーマイト、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ素などを用いることができる。無機粒子の粒径(D50)は摩擦係数を制御する観点から0.001μm〜2μmの範囲が好ましい。
また、積層ポリオレフィン多孔質膜としては、多孔質化した前記バインダー樹脂がポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に積層されたものであってもよい。
例えば、以下のようにして多孔質層をポリオレフィン微多孔膜上に形成することができる。まず、バインダー樹脂を溶解でき且つ水と混和可能な溶剤でバインダー樹脂を溶解した樹脂溶液と無機粒子を主成分とするワニスを調製する。次に、このワニスをポリオレフィン微多孔膜に塗布法を用いて塗膜を積層する。続いて湿潤環境下に置き、溶剤を相分離させ、さらに水浴(凝固浴)に投入してバインダー樹脂を凝固させることによって、目的の多孔質層を形成できる。
前記ワニスを塗布する方法としては、例えば、ディップ・コート法、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、マイヤーバーコート法、パイプドクター法、ブレードコート法およびダイコート法などが挙げられ、これらの方法は単独であるいは組み合わせて行うことができる。また、ワニスは塗工時まで極力外気に触れないように密閉保管すること好ましい。
[3]ポリオレフィン樹脂
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜に用いられるポリオレフィン樹脂は、ポリエチレンを主成分とするのが好ましい。透過性と突刺強度を向上させる為には、ポリオレフィン樹脂全体を100質量%として、ポリエチレンの割合が50質量%以上であるのが好ましく、ポリプロピレンを組み合わせても良い。
ポリエチレンはエチレンの単独重合体のみならず、他のα−オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。α-オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が挙げられる。
ここで、ポリエチレンの種類としては、密度が0.94g/cmを超えるような高密度ポリエチレン、密度が0.93〜0.94g/cmの範囲の中密度ポリエチレン、密度が0.93g/cmより低い低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられるが、突刺強度を高くするためには、高密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
高密度ポリエチレンの重量平均分子量(以下、Mwという)は1×10以上、より好ましくは2×10以上であることが好ましい。高密度ポリエチレンのMwの上限は好ましくはMwが8×10、より好ましくはMwが7×10である。Mwが上記範囲であれば、製膜の安定性と最終的に得られる優れた引張強度とを両立することができる。
超高分子量ポリエチレンは、エチレンの単独重合体のみならず、他のα−オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。エチレン以外の他のα−オレフィンは上記と同じでよい。超高分子量ポリエチレンを添加することによって、引張強度を向上させることができる。超高分子量ポリエチレンのMwとしては、2×10以上4×10未満であることが好ましい。Mwが2×10以上4×10未満の超高分子量ポリエチレンを使用することで、孔およびフィブリルを微細化することが可能であるため、膜表面を緻密な凹凸構造にすることが可能である。
ポリプロピレン樹脂の種類は、特に限定されず、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィン及びジオレフィンとの共重合体(プロピレン共重合体)の少なくとも一方、あるいはこれらの混合物のいずれでも良いが、機械的強度及び貫通孔径の微小化等の観点から、プロピレンの単独重合体を用いることが好ましい。ポリオレフィン樹脂全体に対するポリプロピレン樹脂の含有量は、例えば0質量%以上20質量%以下であり、耐熱性の観点から、好ましくは質量3%以上15質量%以下である。
低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、シングルサイト触媒により製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体、重量平均分子量1000〜4000の低分子量ポリエチレンを添加すると、低温でのシャットダウン機能を付与され、電池用セパレータとしての特性を向上させることができる。
また、ポリエチレンにポリプロピレンを添加すると、ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレータとして用いた場合にメルトダウン温度を向上させることができる。ポリプロピレンの種類は、単独重合体のほかに、ブロック共重合体、ランダム共重合体も使用することができる。ブロック共重合体、ランダム共重合体には、プロピレン以外の他のα−エチレンとの共重合体成分を含有することができ、当該他のα−エチレンとしては、エチレンが好ましい。
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(以下Mwという)は1×10以上であるのが好ましい。Mwが1×10未満では延伸時に破断が起こりやすくなるおそれがある。
その他、ポリオレフィン微多孔膜には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤や帯電防止剤、紫外線吸収剤、さらにはブロッキング防止剤や充填材等の各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリエチレン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤や熱安定剤の種類および添加量を適宜選択することは微多孔膜の特性の調整又は増強として重要である。
[4]ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
次に、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の製造方法を具体的に説明するが、この態様に限定されるものではない。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、以下の(a)〜(e)の工程を含む(湿式延伸)ことが好ましい。
(a)重量平均分子量2×10以上4×10未満の超高分子量ポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂と可塑剤とを溶融混練してポリオレフィン溶液を調製する工程
(b)工程(a)にて得られたポリオレフィン溶液を押出機より押し出して押出物を形成し、押出物の表裏の冷却速度がともに250℃/分以上かつ、表裏の冷却速度差が15℃/秒以上となるように冷却してゲル状シートを成形する工程
(c)工程(b)にて得られたシートを、縦方向(機械方向)および横方向(機械方向と直角方向)に同時又は逐次延伸する工程
(d)工程(c)にて得られた延伸膜から可塑剤を抽出する工程
(e)工程(d)にて得られた微多孔膜を乾燥する工程。
各工程は、原料の調製工程から微多孔膜の巻き取り工程までを含めて連続的に定常的に行う製法を採っている。
工程(c)〜(e)の以前、途中、以降に再延伸、親水化処理、除電処理等の他の工程を追加することもできる。
(a)ポリオレフィン溶液の調製
ポリオレフィン樹脂を、可塑剤に加熱溶解させたポリオレフィン溶液を調製する。可塑剤としては、ポリエチレンを十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されない。比較的高倍率の延伸を可能とするために、溶剤は室温で液体であるのが好ましい。液体溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。液体溶剤の含有量が安定なゲル状シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。溶融混練状態では、ポリエチレンと混和するが室温では固体の溶剤を液体溶剤に混合してもよい。このような固体溶剤として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等が挙げられる。ただし、固体溶剤のみを使用すると、延伸ムラ等が発生する恐れがある。
ポリオレフィン樹脂と可塑剤との配合割合はポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計を100質量%として、押出物の成形性を良好にする観点から、ポリオレフィン樹脂10〜50質量%が好ましい。ポリオレフィン樹脂の含有量の下限は、さらに好ましくは20質量%である。ポリオレフィン樹脂の含有量の上限はさらに好ましくは40質量%であり、より好ましくは35質量%である。ポリオレフィン樹脂の含有量が10質量%以上である場合、シート状に成形する際にダイの出口でスウエルやネックインが小さいために、シートの成形性および製膜性が良好となる。また、ポリオレフィン樹脂の含有量が50質量%以下の場合、厚み方向の収縮が小さいために、成形加工性および製膜性が良好となる。ポリオレフィン樹脂の含有量がこの範囲であると可塑化効果による結晶化の進行が良好となるために、膜表裏の結晶構造が制御しやすくなるために、後述する製膜方法によって、膜の表裏の摩擦係数の制御も可能となる。
液体溶剤(可塑剤)の粘度は40℃において20〜200cStであることが好ましい。40℃における液体溶剤の粘度を20cSt以上とすれば、ダイからポリオレフィン溶液を押し出したシートの厚みが不均一になりにくい。一方、液体溶剤の粘度を200cSt以下とすれば液体溶剤の除去が容易である。
ポリオレフィン溶液の均一な溶融混練は、特に限定されないが、高濃度のポリオレフィン溶液を調製したい場合、押出機、特に二軸押出機中で行うことが好ましい。必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤等の各種添加材をポリオレフィン溶液に添加してもよい。特にポリエチレンの酸化を防止するために酸化防止剤を添加することが好ましい。
押出機中では、ポリオレフィン樹脂が完全に溶融する温度で、ポリオレフィン溶液を均一に混合する。溶融混練温度は、使用するポリオレフィン樹脂によって異なるが、下限は(ポリオレフィン樹脂の融点+10℃)が好ましく、さらに好ましくは(ポリオレフィン樹脂の融点+20℃)である。溶融混練温度の上限は(ポリオレフィン樹脂の融点+120℃)とするのが好ましく、さらに好ましくは(ポリオレフィン樹脂の融点+100℃)である。ここで、融点とは、JIS K7121(1987)に基づき、DSCにより測定した値をいう(以下、同じ)。例えば、具体的には、ポリエチレン組成物は約130〜140℃の融点を有するので、溶融混練温度の下限は140℃が好ましく、さらに好ましくは160℃、最も好ましくは170℃である。ポリエチレン組成物の溶融混練温度の上限は250℃が好ましく、230℃、最も好ましくは200℃である。
また、ポリオレフィン溶液にポリプロピレンを含む場合の溶融混練温度は190〜270℃が好ましい。
樹脂の劣化を抑制する観点から溶融混練温度は低い方が好ましいが、上述の温度よりも低いとダイから押出された押出物に未溶融物が発生し、後の延伸工程で破膜等を引き起こす原因となる場合があり、上述の温度より高いと、ポリオレフィンの熱分解が激しくなり、得られる微多孔膜の物性、例えば、突刺強度、引張強度等が劣る場合がある。
二軸押出機のスクリュー長さ(L)と直径(D)の比(L/D)は良好な加工混練性と樹脂の分散性・分配性を得る観点から、20〜100が好ましい。前記比の下限はより好ましくは35である。前記比の上限は、より好ましくは70である。L/Dを20以上にすると、溶融混練が十分となる。L/Dを100以下にすると、ポリオレフィン溶液の滞留時間が増大し過ぎない。混練する樹脂の劣化を防ぎながら良好な分散性・分配性を得る観点から、二軸押出機のシリンダ内径は40〜100mmであるのが好ましい。
(b)押出物の形成およびゲル状シートの成形
押出機で溶融混練したポリオレフィン溶液を直接に、あるいはさらに別の押出機を介して、ダイから押出して、最終製品の微多孔膜の厚みが3〜30μmになるように成形して押出物を得る。
得られた押出物を冷却することによりゲル状シートが得られ、冷却により、溶剤によって分離されたポリエチレンのミクロ相を固定化することができる。冷却工程においてゲル状シートを結晶化終了温度以下まで冷却するのが好ましい。
押出物の冷却方法としては、冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法、キャスティングドラム等を用いる方法等があるが、目的とする冷却速度および冷却速度差を得るためには、キャスティングドラムを用いる方法が好ましい。また、キャスティングドラムを用いた上で冷風や冷却水その他冷却媒体、冷媒で冷却したロールなどを併用することもできる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、単層に限定されるものではなく、さらにいくつかの微多孔膜(層)を積層した積層体にしてもよい。追加して積層される層には、上述したようにポリエチレンの他に、本発明の効果を損なわない程度にそれぞれ所望の樹脂を含んでいてもよい。膜を積層体とする方法としては、従来の方法を用いることができるが、例えば、所望の樹脂を必要に応じて調製し、これらの樹脂を別々に押出機に供給して所望の温度で溶融させ、ポリマー管あるいはダイ内で合流させて、目的とするそれぞれの積層厚みでスリット状ダイから押出しを行う等して、積層体を形成する方法がある。
(c)ゲル状シートの延伸
延伸倍率は、ゲル状シートの厚さによって異なるが、いずれの方向でも3倍以上に延伸することが好ましい。縦方向の延伸は好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上で行うことが好ましい。また、縦方向の延伸の上限は好ましくは12倍、より好ましくは10倍で行うことが好ましい。縦方向の延伸が5倍以上であると、延伸配向により高いMD強度およびMD弾性率を付与することができる。また、縦方向の延伸が12倍以下であると、膜表面の凹凸が潰れて表面が平滑となることを防ぐことができる。
横方向の延伸は好ましくは4倍以上が好ましい。横方向の延伸の上限は好ましくは15倍であり、より好ましくは12倍である。横方向の延伸倍率が4倍以上であると、延伸配向によって一層高い強度を付与することができる。また、上記のゲル状シートを組み合わせることで表面の凹凸の緻密な構造を得ることができる。
また、横方向の延伸倍率が10倍以下であれば、延伸による破れが発生しにくく、さらに延伸により膜表面の凹凸が潰れて表面が平滑となることを防ぐことができる。
縦延伸と横延伸を総合した面積倍率では、20倍以上が好ましい。延伸温度はポリオレフィン樹脂の融点以下にするのが好ましく、より好ましくは、(ポリオレフィン樹脂の結晶分散温度Tcd)〜(ポリオレフィン樹脂の融点)の範囲である。延伸温度がゲル状シートの融点以下であると、ポリオレフィン樹脂の溶融が防がれ、延伸によって分子鎖を効率的に配向せしめることが可能となる。また、延伸温度がポリオレフィン樹脂の結晶分散温度以上であれば、ポリオレフィン樹脂の軟化が十分であり、延伸張力が低いために、製膜性が良好となり、延伸時に破膜しにくく高倍率での延伸が可能となる。
具体的には、ポリエチレン樹脂の場合は約90〜100℃の結晶分散温度を有するので、縦延伸温度は好ましくは80℃以上である。ポリエチレン樹脂を用いた場合の縦延伸温度の上限は好ましくは130℃であり、より好ましくは125℃であり、最も好ましくは120℃である。結晶分散温度TcdはASTM D 4065に従って測定した動的粘弾性の温度特性から求める。または、結晶分散温度TcdはNMRから求める場合もある。
以上のような延伸によりゲル状シートに形成された高次構造に開裂が起こり、結晶相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成し、表面の凹凸の緻密な構造を得ることができる。
(d)延伸膜からの可塑剤の抽出(洗浄)
次に、延伸膜中に残留する溶剤を、洗浄溶剤を用いて抽出・除去、すなわち洗浄する。
ポリオレフィン相と溶媒相とは分離しているので、溶剤の除去により微多孔膜が得られる。洗浄溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、三フッ化エタン、C14、C16等の鎖状フルオロカーボン、C等の環状ハイドロフルオロカーボン、COCH、COC等のハイドロフルオロエーテル、COCF、COC等のパーフルオロエーテル等の易揮発性溶剤が挙げられる。これらの洗浄溶剤は低い表面張力(例えば、25℃で24mN/m以下)を有する。低い表面張力の洗浄溶剤を用いることにより、微多孔を形成する網状構造が洗浄後に乾燥時に気−液界面の表面張力により収縮するのが抑制され、高い空孔率および透過性を有する微多孔膜が得られる。これらの洗浄溶剤はポリオレフィン樹脂の溶解に用いた溶剤に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いる。
洗浄方法は、延伸膜を洗浄溶剤に浸漬し抽出する方法、延伸膜に洗浄溶剤をシャワーする方法、またはこれらの組み合わせによる方法等により行うことができる。
洗浄溶剤の使用量は洗浄方法により異なるが、一般にゲル状シート100質量部に対して300質量部以上であるのが好ましい。洗浄温度は15〜30℃でよく、必要に応じて80℃以下に加熱する。この時、溶剤の洗浄効果を高める観点、得られる微多孔膜の物性の横方向および/または縦方向の微多孔膜物性が不均一にならないようにする観点、微多孔膜の機械的物性および電気的物性を向上させる観点から、洗浄溶剤に浸漬している時間は長ければ長い方が良い。
上述のような洗浄は、洗浄後の微多孔膜中の残留溶剤が1質量%未満になるまで行うのが好ましい。
(e)微多孔膜の乾燥
洗浄後、洗浄溶剤を乾燥して除去する。乾燥の方法は特に限定されないが、加熱乾燥法、風乾法等により乾燥する。乾燥温度は、ポリエチレン組成物の結晶分散温度Tcd以下であることが好ましく、特に、(Tcd−5℃)以下であることが好ましい。乾燥は、微多孔膜の乾燥質量を100質量%として、残存洗浄溶剤が5質量%以下になるまで行うのが好ましく、3質量%以下になるまで行うのがより好ましい。乾燥が不十分であると、後の熱処理で微多孔膜の空孔率が低下し、透過性が悪化する。
一般的に、突刺強度等の機械的強度および弾性率を向上させるために、洗浄乾燥後にさらに縦方向、または横方向に延伸を行う。縦方向は1.0倍〜3.0倍程度の延伸(以下、再延伸という)を行う。また、再延伸における横延伸は縦方向の延伸の1.3倍〜1.8倍行う。再延伸を上記範囲で延伸することで、表面の凹凸構造の緻密性が向上する。延伸しすぎた場合は、凹凸構造が潰され、表面が平滑となる。
一方、本発明の実施形態において、延伸後の延伸膜または微多孔膜を熱固定処理及び/または熱緩和処理してもよい。熱固定処理、熱緩和処理によって結晶が安定化し、ラメラ層が均一化され、細孔径が大きく、強度に優れた微多孔膜を作製できる。熱固定処理は、ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂の結晶分散温度以上〜融点以下の温度範囲内で行う。熱固定処理は、テンター方式、ロール方式又は圧延方式により行う。ただし、熱固定温度が融点以上である場合、表面の微細な凹凸構造が潰され、表面が平滑となる。
熱緩和処理方法としては、例えば特開2002−256099号公報に開示の方法を利用できる。
(f)マザーロールを巻き取る工程
以上説明した各工程が終了したあと、コアに微多孔膜を巻き取ってマザーロールを得る。コアには、特に限定されないが強度や異物発生の観点で、樹脂製コアや金属性、強化炭素繊維のコアを用いることが好ましい。マザーロールにおける巻取張力の下限は搬送中のばたつきによるシワや巻きずれを抑制できれば特に限定しない。巻取張力の上限については、できる限り低いことが後工程の搬送性を維持するのに好ましいが特に限定されない。
[5]リールの製造
本発明の実施形態にかかるリールの製造方法は、上記リールの製造方法であって、ポリオレフィン微多孔膜を樹脂製コアに巻回する、巻回工程を含み、巻回工程における、スリット後の断面積換算の巻取張力が、上記ポリオレフィン微多孔膜のMD方向における弾性率に対し、0.15〜0.60%である。
巻回工程は、ポリオレフィン微多孔膜をマザーロールとした後マザーロールをスリット(裁断)するスリット工程を含む。ポリオレフィン微多孔膜をスリット工程により目的の幅に加工後に、巻回工程に供し、樹脂製コアに巻き取り、リールを製造することができる。
スリット後の断面積換算の巻取張力(スリット張力)は、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚とスリット後の幅の積から、スリット後の断面積を算出し、巻取張力をスリット後の断面積で除することにより算出できる。
巻き取り条件については、上述したポリオレフィン微多孔膜のMD方向における弾性率に対して0.15〜0.60%のスリット張力で巻き取る必要がある。好ましくは0.20〜0.60%であり、さらに好ましくは0.25〜0.60%である。
0.15%を下回る場合、低温に晒された際のコアの収縮による変形に追従できず、巻きずれやしわが発生する。通常、ポリオレフィン微多孔膜には残留応力が働き、巻きずれやしわを抑制するが、温度が低温の場合は、残留応力による巻き形状の保持はほぼ機能せず、加工時の弾性率に対する張力が重要である。
0.60%を超える場合、フィルムの平面性が悪化する。コアに巻き続けることで、フィルムの形状が部分的に変形する。部分的に変化された箇所が積層されることでリールとした際に平面性が悪くなる。特に、巻長が長いまたは、加工幅が広いほど平面性が悪化しやすい。近年の加工技術向上による、生産効率アップのための広幅化および長尺化を行うリールでは、平面性が悪化しやすく、ポリオレフィン微多孔膜はセパレータ用途としての使用した場合、搬送中に弛みによる破膜、塗工を行う場合での塗工ムラの原因となる。
加工時の温度は10℃〜30℃内が好ましく、上記範囲内であれば搬送環境と大きな差が生じにくく、経時でのしわや巻きずれが発生しにくい。
リールにおけるポリオレフィン微多孔膜の巻長は、リールにおける幅1mあたりの質量が、20kg/m以下となる巻長が好ましい。巻長は、18kg/m以下がより好ましく、16kg/m以下が更に好ましい。上記範囲の質量を超える巻長となった場合、低温に晒された場合に巻きずれが起こりやすくなる。
リールにおけるポリオレフィン微多孔膜の幅の下限は特に限定しないが、加工性から20mm以上が好ましい。幅の上限は200mm以下が好ましい。200mmを超える場合、使用する樹脂製コアの質量が重く、ハンドリング性が悪くなる。
(リチウムイオン二次電池)
本実施形態にかかるリールにおけるポリオレフィン微多孔膜は、リチウムイオン二次電池のセパレータとして好適に用いることができる。本実施形態によるポリオレフィン微多孔膜およびコーティングフィルムをセパレータに用いることにより、電池特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
<製膜例1>
質量平均分子量(Mw)が2.5×10の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)30質量%と、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン(HDPE)70質量%とからなるポリエチレン(PE)組成物100質量部に、添加剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.375質量部をドライブレンドし、混合物を得た。
得られた混合物28.5質量部を強混練タイプの二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン71.5質量部を供給し、210℃の温度で溶融混練して、混合物28.5質量%、流動パラフィン71.5質量%の割合のポリオレフィン溶液を調製した。
得られたポリオレフィン溶液を、二軸押出機からTダイに供給し、シート状成形体となるように押し出した。押し出した成形体を、35℃に温調した冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートを延伸温度120℃で7倍になるようにロール方式で縦延伸を行い、引き続いてテンターに導き、延伸倍率9倍、延伸温度116℃にて横延伸を実施した。延伸後の膜を25℃に温調した塩化メチレンの洗浄槽内にて洗浄し、流動パラフィンを除去した。洗浄した膜を60℃に調整された乾燥炉で乾燥し、テンター内にて129.5℃で1.55倍延伸し、同温度で3.2%の熱緩和を行った後に同温度で40秒間熱固定処理することにより、厚さ16.5μmの微多孔膜(膜1)を得てマザーロールとした。
<製膜例2〜4>
膜2は膜1と同様の製法により表1の条件で得た。
膜3は、ゲル状シートをテンターで同時二軸延伸を行った以外は膜1と同様の製法により、表1の条件で得た。
膜4は膜3と同様の製法により表1の条件で得た。
<製膜例5〜6>
膜5は、膜1と同様の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)と、高密度ポリエチレン(HDPE)とを主成分に用いてポリオレフィン組成物A及びBを調製し、作製した。その配合比は表2に記載する。
その他に、内側の層(A層)を形成するポリオレフィン組成物Aには、Mwが1.6×10、Mw/Mnが5.2でΔHmが114.0J/gのポリプロピレン樹脂(PP)とHDPEを使用した。
また、表層(B層)を形成するポリオレフィン組成物Bには、表2に記載の含有量になるようにUHMWPEとHDPEを使用した。
さらに、HDPEとPPとの混合物100質量部、及びUHMWPEとHDPEとの混合物100質量部に、添加剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.375質量部をそれぞれドライブレンドし、ポリオレフィン組成物A及びBを得た。
得られたポリオレフィン組成物A及びBを、それぞれ強混練タイプの二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィンを供給し、スクリュー回転数Nsを180rpmに保持しながら、溶融混練して、ポリオレフィン溶液AおよびBを調製した。流動パラフィンは、ポリオレフィン溶液Aはポリオレフィン組成物Aを30質量%、流動パラフィン70質量%の割合で調製し、溶融温度は210℃とした。ポリオレフィン溶液Bはポリオレフィン組成物Bを30質量%、流動パラフィン70質量%の割合で調製し、溶融温度は210℃とした。
得られたポリオレフィン溶液AおよびBを二軸押出機から多層ダイに供給し、表2に記載の比率の積層比でシート状成形体となるように押し出した。押し出した成形体を、35℃に温調した冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。その後はゲル状シートをテンターで同時二軸延伸を行った以外は膜1と同様の製法により、表2の条件で得た。
膜6は、膜5と同様の製法により、表2の条件で得た。
<製膜例7>
製膜例6で得られた膜6のマザーロールにワニスをディップ・コートした。ワニスは、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(VdF‐HFP共重合体(重量平均分子量150万))50体積部と、粒径(D50)1.0μmのアルミナ粒子50体積部とを、有効成分が10質量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンに加えてディスパーで攪拌したのち、ダイノーミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製ダイノーミルマルチラボ(1.46L容器、充填率80%、φ0.5mmアルミナビーズ))を用いて、流量11kg/hr、周速10m/sの条件下で3回処理し、作製した。
得られたワニスを膜6の両面にディップ・コートし、塗布後の膜を、N−メチル−2−ピロリドンを10質量%含有する水溶液に30秒浸漬させ、純水で洗浄した後、50℃の熱風乾燥炉を通過させ乾燥して最終厚み8.5μm(片面当たりの塗膜厚は各1.5μm)のコーティング膜(膜7)を得た。
<製膜例8>
製膜例6で得られた膜6のマザーロールにワニスをグラビア塗工法にてコートした。ワニスは、ポリビニルアルコール(平均重合度1,700、ケン化度99%以上)、粒径(D50)0.5μmのアルミナ粒子、イオン交換水をそれぞれ6:54:40の質量比率で配合し、酸化ジルコニウムビーズ(東レ株式会社製、“トレセラム”(登録商標)ビーズ、直径0.5mm)と共にポリプロピレン製の容器に入れ、ペイントシェーカー(株式会社東洋精機製作所製)で6時間分散させ、次いで、濾過限界5μmのフィルターで濾過し、得た。
得られたワニスを膜6の片面にグラビア塗工法にて塗布し、50℃の熱風乾燥炉を10秒間通過させることで乾燥して、最終厚み9.5μm(塗工膜4.0μm)のコーティング膜(膜8)を得た。
得られた膜1〜8について、以下に説明する測定方法および評価方法での結果を表3に記載した。
Figure 2020111469
Figure 2020111469
Figure 2020111469
<実施例1>
得られた膜1のマザーロールを幅100mm、長さ1500mにスリットし、樹脂製コアとして表4に記載のプラ1(内径152.4mm、外径200.0mm)に巻き取った。この際に、室温20℃、巻取張力(スリット張力(断面積換算))は3.0MPaで巻き取った。
<実施例2〜9、比較例1〜3>
実施例1と同様の方法にて表5に記載の条件でリールを得た。なお、得られたリールについて、以下に説明する測定方法および評価方法での結果を表5に記載した。
(測定方法および評価方法)
各実施例および比較例のポリオレフィン微多孔膜を、次の方法で測定および評価した。
<巻取張力>
巻取張力は巻き取り軸に加わるトルクから算出した。事前に日本電産シンポ株式会社製プッシュブルゲージを使用し、軸トルクと張力における検量線を作成した。実際に加わるトルクから検量線を基に巻取張力(N/m)を算出した。
<膜厚>
ポリオレフィン微多孔膜の95mm×95mmの範囲内における5点の膜厚(μm)を接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック)により測定し、平均値を求めた。測定は3回実施し、平均値を算出した。
<MD方向の弾性率>
幅10mmの短冊状試験片を用いて、ASTM D882に準拠した方法により島津製作所製万能試験機を用いて弾性率を測定した。この試験片の引張張力2〜3N間での弾性率を、試験前のサンプル断面積で除することでMD方向の弾性率(MD弾性率(MPa))を求めた。測定は3回実施し、平均値を算出した。
<目付>
目付(g/m)は、25cmのポリオレフィン微多孔膜の質量を測定し、算出した。
<静摩擦係数>
JIS K7125(1999)に準拠して、試験方向をポリオレフィン微多孔膜のTD方向とし、ポリオレフィン微多孔膜の表裏を組み合わせて測定した。ただし、滑り片の相対速度を100mm/min、補助板の質量を5g、滑り片の全質量を200gとした。測定は3回実施し、平均値を算出した。
<透気抵抗度:ガーレー値>
JIS P−8117の王研式試験機法に準拠して、透気度計(旭精工株式会社製、EGO−1T)による透気抵抗度(sec/100cm)を測定した。測定は3回実施し、平均値を算出した。
<空孔率>
空孔率は、微多孔膜の質量w1と、それと組成の同じポリマーで作製した空孔のない、幅及び長さが同じ膜の質量w2(幅、長さ、組成の同じポリマー)とを測定し、以下の式によって、算出した。w1およびw2の測定は3回実施し、平均値を算出した。
空孔率(%)=(w2−w1)/w2×100
<引張強度>
MD方向およびTD方向の引張強度(MPa)を、幅10mmの短冊状試験片を用いて、ASTM D882に準拠した方法により島津製作所製万能試験機を用いて測定した。この試験片の破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除することで求めた。測定は3回実施し、平均値を算出し、MD引張強度(MPa)、TD引張強度(MPa)とした。また、MD引張強度(MPa)、TD引張強度(MPa)よりMD/TD引張強度比を求めた。
<幅1mあたりのフィルム質量>
リールにおける幅1mあたりのフィルム質量はリールとした際の巻長と目付との積より算出した。
<低温時の巻き姿評価>
表5に記載の温度に設定した恒温槽内に巻きずれがない(フィルム端面の最大段差0.2mm未満)リールを横向きに5時間静置した。その後、巻きずれの発生有無を確認し、フィルム端面の段差が0.5mm未満となったものを「OK」、0.5mm以上となったものを「巻きずれ」と評価した。
Figure 2020111469
Figure 2020111469

Claims (7)

  1. 樹脂製コア、及び前記樹脂製コアに巻回されたポリオレフィン微多孔膜を含むリールであって、前記樹脂製コアの線膨張係数が1×10−5〜1×10−4であり、前記ポリオレフィン微多孔膜の表裏を合わせた際のTD方向における静摩擦係数が0.6以上であり、前記ポリオレフィン微多孔膜の巻回における、スリット後の断面積換算の巻取張力が、前記ポリオレフィン微多孔膜のMD方向における弾性率に対し0.15〜0.60%であるリール。
  2. 前記樹脂製コアがABS樹脂を含む請求項1に記載のリール。
  3. 前記MD方向における弾性率が500MPa以上である請求項1または2に記載のリール。
  4. 前記ポリオレフィン微多孔膜のTD方向における引張強度に対するMD方向における引張強度の比(MD引張強度/TD引張強度)が0.8〜1.6である請求項1〜3のいずれか一項に記載のリール。
  5. 前記リールにおける前記ポリオレフィン微多孔膜の巻長が、前記リールにおける幅1mあたりの質量が20kg/m以下となる巻長である請求項1〜4のいずれか一項に記載のリール。
  6. 前記リールにおける前記ポリオレフィン微多孔膜の幅が20mm以上200mm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のリール。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のリールの製造方法であって、
    前記ポリオレフィン微多孔膜を前記樹脂製コアに巻回する、巻回工程を含み、
    前記巻回工程における、スリット後の断面積換算の巻取張力が、前記ポリオレフィン微多孔膜のMD方向における弾性率に対し、0.15〜0.60%であるリールの製造方法。
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