以下、本発明の一形態に係る実施の形態を説明する。本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
本願明細書において、「XおよびYは、それぞれ独立して」とは、XおよびYが同一であってもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
本願明細書において、「置換されたまたは無置換の」または「置換されたもしくは無置換の」とは、化合物が水素原子に代えて他の置換基を有してもよいことを意味する。
本願明細書において、「アジン環構造」とは、アジン環、ジアジン環またはトリアジン環等の6員環構造、またはこれを一部に含む縮合環構造を意味する。
<化合物>
本発明の一形態は、下記一般式(1)で表される化合物に関する。
一般式(1)中、
L1、L2およびL3は、それぞれ独立して、単結合、置換されたもしくは無置換の2価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の2価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)を表し;
Eは、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)を表し;
Fは、下記一般式(f1)、(f2)または(f3)で表される基であり、
一般式(f1)、(f2)および(f3)中、L4は、それぞれ独立して、単結合、置換されたもしくは無置換の2価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の2価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)を表し、Ar1は、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)を表し;
Rは、それぞれ独立して、シアノ基、フルオロ基、置換されたもしくは無置換のアルキル基、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)を表し;
kは、それぞれ独立して、0以上2以下の整数を表し;
lは、0以上3以下の整数を表し;
mは、それぞれ独立して、0以上4以下の整数を表し;
nは、1以上5以下の整数を表す。
本発明者らは、上記構成によって課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
本発明の一形態に係る化合物は、2位に置換基を有するカルバゾール基またはインドロカルバゾール基と、p−ターフェニレン基を有する。p−ターフェニレン基は、両端に置換基を有し、少なくとも一方の置換基は、メタ位に存在する。さらに、p−ターフェニレン基が有する置換基は、さらに少なくとも一つのm−フェニレン基を有する。このような構成により、取りうるコンフォメーション数が多くなり、分子の凝集が生じ難くなる。よって、ガラス転移温度が低くなり、結晶化も生じ難くなる。その結果、高い溶解度を有し、溶液から析出し難く、溶液のポットライフも長くなる。また、溶剤を除去する乾燥工程において、比較的低いガラス転移温度のために、当該化合物を含む膜中において当該化合物分子が熱運動することが比較的容易である。そのため、揮発性不純物分子が通り抜けられる空隙が生じ易く、揮発性不純物分子の拡散および除去が容易となる。よって、有機EL素子の発光効率および発光寿命が向上する。当該化合物は、HOMOが局在するユニットとして、カルバゾール基またはインドロカルバゾール基を有する。また、当該化合物は、LUMOが局在するユニットとして、p−ターフェニレン基を有する。そのため、当該化合物は、HOMO/LUMOレベルおよび電子と正孔とのキャリア移動度のバランスが良好となる。その結果、当該化合物を含む層内の電荷の再結合箇所および励起子の生成箇所が分散され、その負荷も分散されるため、有機EL素子の寿命が向上する。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
上記一般式(1)において、L1、L2、L3、L4、E、Ar1およびRを構成しうる芳香族炭化水素環基は、特に制限されない。前記芳香族炭化水素環基は、例えば炭素数6以上30以下の芳香族炭化水素環基である。炭素数6以上30以下の芳香族炭化水素環基は、炭素数6以上30以下の1つ以上の芳香族炭化水素環を含む炭素環を有する炭化水素(芳香族炭化水素)環由来の基である。また、芳香族炭化水素環基が2以上の環を含む場合、2以上の環は互いに単結合で結合または縮合していてもよい。また、これら芳香族炭化水素環基に存在する1以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。
芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環は、特に限定されない。具体的には、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アントラセン、アズレン、ヘプタレン、アセナフタレン、フェナレン、フルオレン、フェナントレン、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン等が挙げられる。
上記一般式(1)において、L1、L2、L3、L4、E、Ar1およびRを構成しうる芳香族複素環基は、特に制限されない。前記芳香族複素環基は、例えば環形成原子数6以上30以下の芳香族複素環基である。環形成原子数6以上30以下の芳香族複素環基は、1個以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S))を有し、残りの環原子が炭素原子(C)である1以上の芳香族環を含む環形成原子数6以上30以下の環(芳香族複素環)由来の基である。また、芳香族複素環基が2以上の環を含む場合、2以上の環は互いに単結合で結合または縮合していてもよい。また、これら芳香族複素環基に存在する1以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。ただし、上記一般式(1)において、芳香族複素環基は、アジン環構造を有することはない。
ここで、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば単環、縮合環、環集合)を有する化合物において、環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子の結合手を終端する水素原子)や、環が置換基によって置換される場合、当該置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。例えば、カルバゾリル基は、環形成原子数が13である。
上記一般式(1)において、芳香族複素環基を構成する芳香族複素環は、特に限定されない(ただし、アジン環構造を有する基を除く)。例えば、π電子不足系芳香族複素環、π電子過剰系芳香族複素環、およびπ電子不足系芳香族複素環とπ電子過剰系芳香族複素環とを混合したπ電子不足系−π電子過剰系混合芳香族複素環が挙げられる。
π電子不足系芳香族複素環の具体例としては、ベンゾキノン、クマリン、アントラキノン、フルオレノン等が挙げられる。
π電子過剰系芳香族複素環の具体例としては、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、カルバゾール、インドロカルバゾール等が挙げられる。
π電子不足系−π電子過剰系混合芳香族複素環の具体例としては、イミダゾール、インダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、イミダゾリノン、ベンズイミダゾリノン、ジアザジベンゾチオフェン、キサントン、チオキサントン等が挙げられる。
上記一般式(1)において、Rを構成しうるアルキル基は、特に制限されない。前記アルキル基は、例えば炭素数1以上30以下の、直鎖、分岐状または環状のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−tert−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1以上8以下の直鎖、分岐状または環状のアルキル基が好ましい。
上記一般式(1)において、L1、L2、L3、L4、E、Ar1およびRを構成しうる芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基は、それぞれ独立して、他の置換基によって置換されていてもよい。また、Rを構成しうるアルキル基は、それぞれ独立して、他の置換基によって置換されていてもよい。
これら他の置換基は、特に限定されない。例えば、シアノ基、フルオロ基、無置換のアルキル基、無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または無置換の1価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)が挙げられる。
ここで、他の置換基を構成しうるアルキル基は、Rにおける説明と同様であるため、説明を省略する。
また、他の置換基を構成しうる、芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)は、L1、L2、L3、L4、E、Ar1およびRにおける説明と同様であるため、説明を省略する。
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
上記一般式(2)中、L1、L2、L3、F、E、Rおよびmは、それぞれ上記一般式(1)と同様である。
上記一般式(2)で表される化合物によって、溶解度がより向上し、溶液からの析出がより生じ難くなり、溶液のポットライフがより長くなる。また、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
以下、上記一般式(1)で表される化合物を具体的に例示する。ただし、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
上記1から11の化合物の中でも、化合物1および2から選択されることが特に好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物は、ワイドギャップ材料であることが好ましい。ここで、ワイドギャップ材料とは、HOMO−LUMOエネルギーギャップが3.0eV以上である材料をいう。
上記一般式(1)で表される化合物において、HOMO−LUMOエネルギーギャップは、特に制限されないが、3.1eV以上6.0eV以下であることが好ましい。また、HOMO−LUMOエネルギーギャップは、3.2eV以上6.0eV以下であることがより好ましい。
なお、上記一般式(1)で表される化合物の製造方法は、特に限定されず、公知の合成方法を含む種々の製造方法を用いることができる。
上記一般式(1)で表される化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料(本願明細書において、有機EL素子用材料とも称する)として用いられることが好ましい。これより、有機EL素子用材料は、上述の一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物は、高い有機EL素子の発光効率および発光寿命を実現することができる。この理由は、前述のように、当該化合物は、低いガラス転移温度、ならびに良好なHOMO/LUMOレベルおよびバランスのとれた電子と正孔とのキャリア移動度を有するからであると推測される。当該化合物を含む有機EL素子用材料は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層の材料として使用可能である。これらの中でも、発光層の材料として使用することが好ましい。
また、上記一般式(1)で表される化合物は、溶液から析出し難く、溶液のポットライフも長い。この理由は、前述のように、当該化合物は、コンフォメーション数が大きいために非晶性が高く、結晶化が生じ難いからであると推測される。よって、当該化合物は、湿式成膜法を用いた場合であっても、高い有機EL素子の発光効率および発光寿命を実現することができる。
<組成物>
本発明の他の一形態は、上記一般式(1)で表される化合物に加え、他の化合物をさらに含む、組成物に関する。
上記一般式(1)で表される化合物は、上述のように、高い有機EL素子の効率および寿命を実現することができる。そして、本発明の一形態に係る組成物は、当該化合物を含む。当該組成物を含む有機EL素子用材料は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層の材料として使用可能である。これらの中でも、発光層の材料として使用することが好ましい。また、上記一般式(1)で表される化合物は、溶液から析出し難く、溶液のポットライフも長くなる。そして、本発明の一形態に係る組成物は、当該化合物を含む。当該組成物は、湿式成膜法を用いた場合であっても、高い有機EL素子の発光効率および発光寿命を実現することができる。
他の化合物としては、特に制限されず、有機EL素子の有機層形成材料として公知の化合物を適宜採用することができる。これらの中でも、発光材料、上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体またはアジン環誘導体であることが好ましい。
本発明の一形態に係る組成物における、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、当該組成物の総質量に対して、5質量%以上95質量%以下であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、溶解度がより向上し、溶液からの析出がより生じ難くなり、溶液のポットライフがより長くなる。また、有機EL素子の発光効率および発光寿命が向上する。
以下、好ましい他の化合物である発光材料、上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体、アジン環誘導体について、詳細を説明する。
(発光材料)
本発明の一形態に係る組成物は、発光材料をさらに含むことが好ましい。
発光材料としては、高い発光機能を有するものであれば、特に限定されず、有機蛍光分子、白金族金属元素を含む有機金属錯体からなる燐光発光材料(以下、燐光発光性白金族金属錯体とも称する)、量子ドットなどを用いることができる。
発光材料は、発光効率の観点から、燐光発光性白金族金属錯体が好ましい。白金族金属元素とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)および白金(Pt)の総称を表す。これらの中でも、燐光発光性イリジウム錯体であることがより好ましい。
燐光発光性白金族金属錯体としては、特に制限されない。例えば、下記一般式L1〜L26からなる群から選択される少なくとも一つのリガンドを有することが好ましい。
一般式L1〜L26中、
X1〜X13は、それぞれ独立して、炭素または窒素であり;
Xは、BR’、NR’、PR’、O、S、Se、C=O、S=O、SO2、CR’R’’、SiR’R’’およびGeR’R’’からなる群から選択され;
R’およびR’’は、縮合または結合して環を形成してもよく;
Ra、Rb、RcおよびRdは、1から可能な最大置換数まで存在してもよく、または存在しなくてもよく;
R’、R’’、Ra、Rb、RcおよびRdは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、シリル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アシル基、カルボニル基、カルボン酸基、エステル基、ナイトライト基、イソニトリル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルフォニル基、ホスフィノ基およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;
Ra、Rb、RcおよびRdの2つの隣接する置換基は、縮合または結合して環を形成してもよく、または多座配位子を形成してもよい。
以下、上記一般式L1〜L26で表されるリガンドを有する燐光発光性白金族金属錯体を具体的に例示する。ただし、燐光発光性白金族金属錯体はこれら具体例に限定されない。
上記燐光発光性白金族金属錯体の中でも、化合物D1が好ましい。
燐光発光性白金族金属錯体は、上記示した具体例の化合物に制限されない。例えば、米国特許出願公開第2016/0093808号明細書の段落0105〜0113、特表2014−509067号公報等に記載の公知の燐光発光性白金族金属錯体も参照により本発明に組み入れることができる。また、これらの参照文献に記載の燐光発光性白金族金属錯体は、本願明細書の補正の根拠としても使用することができる。
上記組成物における発光材料の含有量は、ホスト材料として機能する、上記一般式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.5質量部以上50質量部以下であることが好ましい。また、当該含有量は、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、2質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。また、上記組成物が上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール環誘導体およびアジン環誘導体の少なくとも一方をさらに含む場合、上記組成物における発光材料の含有量は、上記組成物がホスト材料として機能する、上記一般式(1)で表される化合物と、(ホスト材料として機能する)上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール環誘導体および(ホスト材料として機能する)アジン環誘導体の少なくとも一方との合計100質量部に対して、0.5質量部以上50質量部以下であることが好ましい。また、当該含有量は、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、2質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。上記範囲であると、組成物の溶解度がより向上し、溶液からの析出がより生じ難くなり、溶液のポットライフがより長くなる。また、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
(一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体)
本発明の一形態に係る組成物は、上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体をさらに含むことが好ましい。すなわち、上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体とを含む、組成物であることが好ましい。
本発明の一形態に係る組成物は、上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体をさらに含有することで、分子の凝集抑制効果をより高め、また電子と正孔とのキャリア移動度のバランスを改善することができる。よって、組成物の溶解度がより向上し、溶液からの析出がより生じ難くなり、溶液のポットライフがより長くなる。また、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
また、上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体は、本発明の一形態に係る組成物の内で発光材料を除いて、上記一般式(1)で表される化合物よりも浅いHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital、最高被占軌道)が分布する。よって、膜中の分子の凝集を抑制しつつ、さらに正孔注入性および正孔輸送性の少なくとも一方が高いものとなる。さらに、それらの正孔注入性および正孔輸送性の少なくとも一方は上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体の組成比を制御することで容易に連続的に変調することができる。特に発光層内での正孔量や膜厚方向に対する正孔密度プロファイルの制御が容易になる。これらの結果、本発明の一形態に係る組成物が上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体を含有することで、湿式成膜法により作製する有機EL素子の性能(特に、正孔注入性および正孔輸送性)がより向上する。その結果、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体は、下記一般式(C1)で表される化合物であることが好ましい。下記一般式(C1)で表される化合物は、窒素原子(N)を含む複素環構造(含窒素複素環式化合物)の9位のNにR21が結合する構造を有する。
上記一般式(C1)中、R21は、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)である。
上記一般式(C1)において、R21を構成しうる、芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)は、それぞれ上記一般式(1)における説明と同様であるため、説明を省略する。
Y1〜Y8は、それぞれ独立して、C(R22)である。C(R22)中のCは、炭素原子を示す。また、C(R22)中のR22は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、またはアジン環構造を有しない有機基であれば特に制限されない。これらの中でも、水素原子、重水素原子、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)であることが好ましい。なお、Y1〜Y8において、C(R22)中のR22を構成しうる、芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)は、それぞれ上記一般式(1)における説明と同様であるため、説明を省略する。
R21および1つ以上のR22、ならびに2つ以上のR22は、それぞれ独立して、互いに縮合または結合して環構造を形成していてもよい。
また、一般式(C1)で表される化合物は、一般式(C1)で表される構造がそれぞれのR21またはR22を介して結合してなる多量体であってもよい。
また、R21およびR22を構成しうる芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基は、それぞれ独立して、他の置換基によって置換されていてもよい。
これら他の置換基としては、特に限定されない。例えば、重水素原子、無置換のアルキル基、無置換のアルコキシ基、無置換のアリールオキシ基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)、無置換のアルキル基を有するアルキルアミノ基、シアノ基、アルキル基で置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、またはアルキル基で置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基等が挙げられる。また、他の置換基は、無置換の芳香族炭化水素環と無置換の芳香族複素環とが単結合で結合している基でもよい。
ここで、R21およびR22において、他の置換基を構成しうる、アルキル基、芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基は、上記一般式(1)における説明と同様であるため、説明を省略する。
R21およびR22における他の置換基において、アルコキシ基は、特に制限されない。前記アルコキシ基は、例えば炭素数1以上30以下の直鎖または分岐状のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3−エチルペンチルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1以上8以下の直鎖もしくは分岐状のアルコキシ基が好ましい。
R21およびR22における他の置換基において、アリールオキシ基は、特に制限されない。前記アリールオキシ基は、例えば環形成原子数6以上30以下のアリールオキシ基である。アリールオキシ基は、ヘテロ原子を含んでもよい(ただし、アジン環構造を有する基を除く)。アリールオキシ基は、環形成原子数6以上30以下の単環または縮合多環アリールオキシ基である。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基等が挙げられる。
R21およびR22における他の置換基において、アルキル基を有するアルキルアミノ基は、特に制限されない。前記アルキル基を有するアルキルアミノ基は、例えば炭素数1以上30以下の直鎖または分岐状のアルキル基を有するアルキルアミノ基である。具体的には、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−イソブチルアミノ基、N−sec−ブチルアミノ基、N−tert−ブチルアミノ基、N−ペンチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基等のN−アルキルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−ジイソブチルアミノ基、N,N−ジペンチルアミノ基、N,N−ジヘキシルアミノ基等のN,N−ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
上記一般式(C1)で表される化合物としては、特に制限されないが、好ましい一例としては、下記一般式(C2)で表される化合物が挙げられる。ここで、下記一般式(C2)で表される化合物は、上記一般式(C1)において、R22は、互いに結合して環構造を形成してなる化合物の一例である。
上記一般式(C2)において、Qは、下記一般式で表される環構造を有する縮合環結合であり、
R21は、上記一般式(C1)における説明と同様である。
R221は、それぞれ独立して、重水素原子、置換されたもしくは無置換のアルキル基、置換されたもしくは無置換のアルコキシ基、置換されたもしくは無置換のアリールオキシ基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)、置換されたもしくは無置換のアルキルアミノ基、シアノ基、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)を表し、
R222は、それぞれ独立して、重水素原子、置換されたもしくは無置換のアルキル基、置換されたもしくは無置換のアルコキシ基、置換されたもしくは無置換のアリールオキシ基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)、置換されたもしくは無置換のアルキルアミノ基、シアノ基、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)を表し、
bは、それぞれ独立して、0以上4以下の整数を表し、
cは、0以上2以下の整数を表す。
ここで、R221およびR222を構成しうる、アルキル基、芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)は、上記一般式(1)における説明と同様であるため、説明を省略する。また、R221およびR222を構成しうる、アルコキシ基、アリールオキシ基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)およびアルキルアミノ基は、上記一般式(C1)における説明と同様であるため、説明を省略する。
上記一般式(C2)において、R21、1つ以上のR221および1つ以上のR222のうち少なくとも2つの基が、互いに縮合または結合して環構造を形成していてもよい。
なお、上記一般式(C2)で表される化合物は、置換基R21、R221およびR222を示さない以下の5つのコア構造(a)〜(e)のいずれも有することができる。
以下、上記一般式(C2)で表される化合物を具体的に例示する。ただし、本発明の一形態に係る組成物に含まれうる、上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体は、これら具体例に限定されるものではない。
上記一般式(C1)で表される化合物としては、特に制限されないが、好ましい一例としては、下記一般式(C5)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(C5)中、
R21は、それぞれ独立して、上記一般式(C1)における説明と同様であり、
R223は、それぞれ独立して、重水素原子、置換されたもしくは無置換のアルキル基、置換されたもしくは無置換のアルコキシ基、置換されたもしくは無置換のアリールオキシ基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)、置換されたもしくは無置換のアルキルアミノ基、シアノ基、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)を表し、
R224は、それぞれ独立して、重水素原子、置換されたもしくは無置換のアルキル基、置換されたもしくは無置換のアルコキシ基、置換されたもしくは無置換のアリールオキシ基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)、置換されたもしくは無置換のアルキルアミノ基、シアノ基、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)を表し、
dは、それぞれ独立して、0以上4以下の整数を表し、
eは、それぞれ独立して、0以上3以下の整数を表す。
ここで、R223およびR224を構成しうる、アルキル基、芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)は、上記一般式(1)における説明と同様であるため、説明を省略する。また、R223およびR224を構成しうる、アルコキシ基、アリールオキシ基(ただし、アジン環構造を有する基を除く)およびアルキルアミノ基は、上記一般式(C1)における説明と同様であるため、説明を省略する。
上記一般式(C5)において、R21、1つ以上のR223および1つ以上のR224のうち少なくとも2つの基が、互いに縮合または結合して環構造を形成していてもよい。
上記一般式(C5)で表される化合物は、下記一般式(C6)で表される化合物であることが好ましい。
上記一般式(C6)中、R21、R223、R224、dおよびeは、それぞれ上記一般式(C5)と同様である。
以下、上記一般式(C5)で表される化合物を具体的に例示する。ただし、一般式(C5)で表される化合物はこれら具体例に限定されない。
上記化合物の中でも、化合物H2−35が好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体は、上記示した具体例の化合物に制限されない。例えば、US2016/009388号明細書の段落0095〜0104、特開2014−509067号公報等に記載の公知のカルバゾール誘導体も参照により本発明に組み入れることができる。また、これらの参照文献に記載のカルバゾール誘導体は、本願明細書の補正の根拠としても使用することができる。
上記組成物における一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体の含有量は、ホスト材料として機能する、当該カルバゾール誘導体自身と、(ホスト材料として機能する)上記一般式(1)で表される化合物との合計100質量%に対して、好ましくは5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。
また、上記組成物が後述する(ホスト材料として機能する)アジン環誘導体をさらに含む場合、上記組成物における一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体の含有量は、当該カルバゾール誘導体自身と、(ホスト材料として機能する)上記一般式(1)で表される化合物と、(ホスト材料として機能する)アジン環誘導体との合計100質量%に対して、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。この際、当該組成物におけるアジン環誘導体の含有量は、ホスト材料として機能する、アジン環誘導体と、(ホスト材料として機能する)上記一般式(1)で表される化合物と、(ホスト材料として機能する)上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体自身との合計100質量%に対して、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。
上記範囲であると、組成物の溶解度がより向上し、溶液からの析出がより生じ難くなり、溶液のポットライフがより長くなる。また、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
本発明の一形態に係る組成物が一般式(1)で表される以外のカルバゾール誘導体をさらに含む場合、一般式(1)で表される化合物のHOMOレベル(HOMO0)と、一般式(1)で表される以外のカルバゾール誘導体のHOMO(HOMOCz)との差(ΔHOMO)(正孔トラップ深さ)は、以下の数式(1)で求められる。ここで、HOMO0と、HOMOCzとは共にマイナス領域の数値、すなわち負の値である。
ΔHOMOは、好ましくは0.05eV以上1.0eV以下であり、より好ましくは0.10eV以上0.8eV以下であり、さらに好ましくは0.15eV以上0.7eV以下である。ここで、HOMO0と、HOMOCzとの好ましい関係を図1に示す。上記範囲であると、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
(アジン環誘導体)
本発明の一形態に係る組成物は、アジン環誘導体をさらに含むことが好ましい。すなわち、上記一般式(1)で表される化合物と、アジン環誘導体とを含む、組成物であることが好ましい。
本願明細書において、「アジン環誘導体」とは、アジン環、ジアジン環、トリアジン環等の6員環構造、またはこれを一部に含む縮合環構造を有する、含窒素芳香環を有する化合物を表す。
本発明の一形態に係る組成物は、アジン環誘導体を含有することで、分子の凝集抑制効果をより高め、また電子と正孔とのキャリア移動度のバランスを改善することができる。よって、組成物の溶解度がより向上し、溶液からの析出がより生じ難くなり、溶液のポットライフがより長くなる。また、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
また、アジン環誘導体は、環形成原子として窒素原子(N)を含む6員環の複素環構造(アジン環構造)を有する。このため、アジン環誘導体によって、本発明の一形態に係る組成物の内で深いLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital、最低空軌道)が分布する。よって、膜中の分子の凝集を抑制しつつ、さらに電子注入性および電子輸送性の少なくとも一方が高いものとなる。さらに、それらの電子注入性および電子輸送性アジン環誘導体の組成比を制御することで容易に連続的に変調することができる。特に発光層内での電子量や膜厚方向に対する電子密度プロファイルの制御が容易になる。これらの結果、本発明の一形態に係る組成物がアジン環誘導体を含有することで、湿式成膜法により作製する有機EL素子の性能(特に、電子注入性および電子輸送性の少なくとも一方)がより向上する。その結果、有機EL素子の発光効率および発光寿命の少なくとも一方がより向上する。
アジン環誘導体は、下記一般式(A1)で表される化合物であることが好ましい。
上記一般式(A1)において、Z1〜Z6は、それぞれ独立して、C(R31)または窒素原子である。また、Z1〜Z6の少なくとも1つは、窒素原子である。すなわち、上記一般式(A1)で表される化合物は、窒素原子(N)を含む6員環の複素環化合物(含窒素複素環式化合物)を示す。Z1〜Z6において、C(R31)中のCは炭素原子を示す。
ここで、C(R31)中のR31は、水素原子、重水素原子、または有機基であれば特に制限されない。これらの中でも、水素原子、重水素原子、置換されたもしくは無置換のアルキル基、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基であることが好ましい。
R31を構成しうる、アルキル基および芳香族炭化水素環基は、上記一般式(1)における説明と同様であるため、説明を省略する。
R31を構成しうる芳香族複素環基は、特に制限されない。前記芳香族複素環基は、例えば環形成原子数6以上30以下の芳香族複素環基である。環形成原子数6以上30以下の芳香族複素環基は、1個以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S))を有し、残りの環原子が炭素原子(C)である1以上の芳香族環を含む環形成原子数6以上30以下の環(芳香族複素環)由来の基である。また、芳香族複素環基が2以上の環を含む場合、2以上の環は互いに単結合で結合または縮合していてもよい。また、これら芳香族複素環基に存在する1以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。
芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、例えば、π電子不足系芳香族複素環、π電子過剰系芳香族複素環、π電子不足系芳香族複素環とπ電子過剰系芳香族複素環とを混合したπ電子不足系−π電子過剰系混合芳香族複素環が挙げられる。
π電子不足系芳香族複素環の具体例としては、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、ナフチリジン、アクリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、ベンゾイソキノリン、フェナンスリジン、フェナントロリン、ベンゾキノン、クマリン、アントラキノン、フルオレノン等が挙げられる。
π電子過剰系芳香族複素環の具体例としては、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、カルバゾール、インドロカルバゾール等が挙げられる。
π電子不足系−π電子過剰系混合芳香族複素環の具体例としては、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、インダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、イミダゾリノン、ベンズイミダゾリノン、イミダゾピリジン、イミダゾピリミジン、イミダゾフェナンスリジン、ベンズイミダゾフェナンスリジン、アザジベンゾフラン、アザカルバゾール、アザジベンゾチオフェン、ジアザジベンゾフラン、ジアザカルバゾール、ジアザジベンゾチオフェン、キサントン、チオキサントン等が挙げられる。
なお、2つ以上のR31は、互いに縮合または結合して環構造を形成していてもよい。
また、一般式(A1)で表される化合物は、一般式(A1)で表される構造がそれぞれのR31を介して結合してなる多量体であってもよい。
また、R31中の各置換基は、他の置換基によって置換されていてもよい。R31中の各置換基を置換しうる他の置換基としては、有機基であれば特に限定されない。他の置換基としては、例えば、重水素原子、無置換のアルキル基、無置換のアルコキシ基、無置換のアリールオキシ基、無置換のアルキル基を有するアルキルアミノ基、シアノ基、無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または無置換の1価の芳香族複素環基が挙げられる。また、他の置換基は、無置換の芳香族炭化水素環と無置換の芳香族複素環とが互いに単結合で結合している基でもよい。
R31中の各置換基を置換しうる、アルキル基、アルコキシ基、アルキル基を有するアルキルアミノ基および芳香族炭化水素環基は、上記一般式(1)および一般式(C1)における説明と同様であるため、説明を省略する。また、R31中の各置換基を置換しうる芳香族複素環基は、R31における説明と同様であるため、説明を省略する。
R31中の各置換基を置換しうるアリールオキシ基は、特に制限されない。前記アリールオキシ基は、例えば環形成原子数6以上30以下のアリールオキシ基である。アリールオキシ基は、ヘテロ原子を含んでもよい。アリールオキシ基は、環形成原子数6以上30以下の単環または縮合多環アリールオキシ基である。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基等が挙げられる。
アジン環誘導体の好ましい例としては、下記一般式(A2−1)〜(A2−5)で表される化合物が挙げられる。
一般式(A2−1)〜(A2−5)中、Arは、それぞれ独立して、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基である。
一般式(A2−1)〜(A2−5)中のArを構成しうる、芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基は、それぞれ上記一般式(1)および上記一般式(A2)における説明と同様であるため、説明を省略する。
一般式(A2−1)〜(A2−5)において、芳香族炭化水素環基が2以上の環を含む場合、2以上の環は、互いに縮合していてもよい。また、2以上の環が単結合で直接結合している炭化水素環集合基の形態であってもよい。
アジン環誘導体の好ましい一例は、下記一般式(A3)で表される化合物である。
上記一般式(A3)において、Tは、下記一般式で表される環構造を有する縮合環結合であり、
Z1、Z3およびZ5は、それぞれ独立して、CHまたはNであり、ただし、Z1、Z3およびZ5の少なくとも1つはNであり;
R31は、上記一般式(A1)と同様であり;
R32は、それぞれ独立して、重水素原子、置換されたもしくは無置換のアルキル基、置換されたもしくは無置換のアルコキシ基、置換されたもしくは無置換のアリールオキシ基、置換されたもしくは無置換のアルキル基を有するアルキルアミノ基、シアノ基、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基を表し;
R33は、それぞれ独立して、重水素原子、置換されたもしくは無置換のアルキル基、置換されたもしくは無置換のアルコキシ基、置換されたもしくは無置換のアリールオキシ基、置換されたもしくは無置換のアルキル基を有するアルキルアミノ基、シアノ基、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基を表し;
R34は、それぞれ独立して、重水素原子、置換されたもしくは無置換のアルキル基、置換されたもしくは無置換のアルコキシ基、置換されたもしくは無置換のアリールオキシ基、置換されたもしくは無置換のアルキル基を有するアルキルアミノ基、シアノ基、置換されたもしくは無置換の1価の芳香族炭化水素環基、または置換されたもしくは無置換の1価の芳香族複素環基を表し;
fおよびgは、それぞれ独立して、0以上4以下の整数を表し;
hは、0以上5以下の整数を表し;
iは、0以上2以下の整数を表す。
ここで、R32、R33およびR34中の各置換基は、上述のR31を構成しうる各置換基と同様の定義であるため、説明を省略する。
上記一般式(A3)のいくつかの実施形態において、Z1、Z3およびZ5は、全てNである。また、いくつかの実施形態において、R32、R33およびR34は重水素原子、無置換の炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素環基、または無置換の環形成原子数6以上30以下の1価の芳香族複素環基である。そして、いくつかの実施形態において、R31は水素原子または重水素原子である。
上記一般式(A3)において、1つ以上のR31、1つ以上のR32、1つ以上のR33および1つ以上のR34うち少なくとも2つの基が、互いに縮合または結合して環構造を形成していてもよい。
本発明の一形態のアジン環誘導体は、例えば、以下の化合物が挙げられる。
一般式A2−1で表されるトリアジン化合物においては、トリアジン環に結合する3つのArがそれぞれ互いに異なる構造であることがより好ましい。このような構造とすることで、化合物の結晶性を低下させることができ、化合物の溶解性を高めることができる。
一般式A2−2、A2−3、A2−4、およびA2−5で表される化合物の具体例としては、一般式A2−1の例示化合物において、トリアジン環をピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリジン環にそれぞれ置き換えた化合物等が挙げられる。
キナゾリン化合物およびキノリン化合物の具体例としては、一般式A2−1の例示化合物において、トリアジン環をキナゾリン環、キノリン環にそれぞれ置き換えた化合物等が挙げられる。
これらアジン環誘導体の中でも、化合物Az1が好ましい。
アジン環誘導体は、上記に具体例の化合物に制限されない。例えば、米国特許出願公開第2016/0093808号明細書の段落0078〜0094、特表2013−535830号公報、特表2018−524797号公報、米国特許出願公開第2017/0346020号明細書、米国特許出願公開第2017/0309829号明細書等に記載の公知のアジン環誘導体も参照により本発明に組み入れることができる。また、これらの参照文献に記載のアジン環誘導体は、本願明細書の補正の根拠としても使用することができる。
上記組成物におけるアジン環誘導体の含有量は、ホスト材料として機能する、当該アジン環誘導体自身と、(ホスト材料として機能する)上記一般式(1)で表される化合物との合計100質量%に対して、5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、15質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。上記範囲であると、組成物の溶解度がより向上し、溶液からの析出がより生じ難くなり、溶液のポットライフがより長くなる。また、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
本発明の一形態に係る組成物が後述のアジン環誘導体をさらに含む場合、一般式(1)で表される化合物のLUMOレベル(LUMO0)と、アジン環誘導体のLUMO(LUMOAzine)との差(ΔLUMO)(電子トラップ深さ)は、以下の数式(2)で求められる。ここで、LUMO0と、LUMOazineとは共にマイナス領域の数値、すなわち負の値である。
ΔLUMOは、好ましくは0.05eV以上1.0eV以下であり、より好ましくは0.05eV以上0.5eV以下であり、さらに好ましくは0.05eV以上0.3eV以下である。ここで、LUMO0と、LUMOazineとの好ましい関係を図2に示す。上記範囲であると、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
(好ましい組成物の例)
本発明の一形態に係る組成物は、上述のように、上記一般式(1)で表される化合物と、上記(C5)で表される化合物と、を含むことが好ましい。この際、化合物1および2の少なくとも一方と化合物H2−35とを含むことがよりさらに好ましい。ここで、これらの組成物は、上記の燐光発光性白金族金属錯体をさらに含むことが特に好ましい。これらの組成物を用いることで、溶解度がより向上する。そして、溶液からの析出がより生じ難くなり、溶液のポットライフがより長くなる。また、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。この場合、化合物1および2の少なくとも一方と化合物H2−35と化合物D1とを含むことが極めて好ましい。
また、本発明の一形態に係る組成物は、上記一般式(1)で表される化合物と、上記アジン環誘導体と、を含むことが好ましい。これらの中でも、上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(A1)で表される化合物と、を含むことがより好ましい。この際、化合物1および2の少なくとも一方と化合物Az1とを含むことがよりさらに好ましい。ここで、これらの組成物は、上記の燐光発光性白金族金属錯体をさらに含むことが特に好ましい。これらの組成物を用いることで、溶解度がより向上する。そして、溶液からの析出がより生じ難くなり、溶液のポットライフがより長くなる。また、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
本発明者らは、上記化学式(1)で表される化合物と、上記アジン環誘導体と、上記の燐光発光性白金族金属錯体とを含む組成物によって有機EL素子の発光効率および発光寿命が向上するメカニズムを以下のように推定している。
一般的に、従来のカルバゾール誘導体に代表される正孔輸送性ホスト材料と、従来のアジン環誘導体に代表される電子輸送性ホスト材料と、燐光発光性白金族金属錯体と、を組合せた有機層(発光層)の場合、当該有機層内での正孔と電子の電荷分布(キャリアプロファイル)を整えることは困難である。従来のカルバゾール誘導体およびアジン環誘導体の正孔輸送性および電子輸送性がそれぞれ強すぎるからである。このため、当該有機層内における再結合分布(プロファイル)および励起子生成分布(プロファイル)の少なくとも一方が局所集中することで、寿命が短くなり易い。
一方、図3で示されるように、上記化学式(1)で表される化合物のLUMO(LUMO0)は、通常、アジン環誘導体のLUMO(LUMOazine)よりも浅い。また、図3で示されるように、上記化学式(1)で表される化合物のHOMO(HOMO0)は、通常、従来のカルバゾール誘導体のHOMO(HOMOCz)よりも深い。また、上記化学式(1)で表される化合物の正孔移動度は、通常、従来のカルバゾール誘導体よりも低い。
このため、上記化学式(1)で表される化合物を従来のカルバゾール誘導体等の正孔輸送性ホスト材料の代わりに用い、当該化合物と、アジン環誘導体等の電子輸送性ホスト材料と、燐光発光性白金族金属錯体と、を組合せた発光層の場合には、以下のような機構が発現すると推測される。
まず、上記の組成物から構成される有機層内では、電子は、最も深いアジン環誘導体のLUMO(LUMOazine)に一度トラップされる。しかし、トラップされた電子は、上記化学式(1)で表される化合物のLUMO(LUMO0)にデトラップ(detrap、脱トラップ)され移動を再開する。このため、当該有機層内では電子は、LUMOazineとLUMO0の間でのトラップ−デトラップの繰り返しによって移動し、電子移動度が低下する。また、上記の組成物から構成される有機層内では、正孔は燐光発光性白金族金属錯体のHOMO(HOMOMC)にトラップされる。そして、トラップされた正孔は、上記化学式(1)で表される化合物のHOMO(HOMO0)にデトラップされ移動を再開する。このとき、トラップ深さ(HOMO0−HOMOMC)が大きくデトラップの確率が非常に低いこと、および上記化学式(1)で表される化合物の正孔移動度が低いことの少なくとも一方のために、当該有機層内で、正孔移動度が著しく低下する。これより、電子は、当該有機層内のアノードに近い側(例えば、電子輸送層に近い側)に高濃度に蓄積する。一方、正孔は、当該有機層内のカソードに近い側(例えば、正孔輸送層に近い側)に高濃度に蓄積する。その結果、キャリア再結合は両者の中間領域にかけて緩やかに起きることとなる。そして、当該有機層(発光層)内での再結合分布(プロファイル)および励起子生成分布(プロファイル)の少なくとも一方が極めて良好に分散される。これより、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
本発明の一形態に係る組成物は、上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(C5)で表される化合物と、上記アジン環誘導体と、を含むことが好ましい。また、上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(C5)で表される化合物と、上記一般式(A1)で表される化合物と、を含むことがさらに好ましい。この際、化合物1または2と、化合物H2−35と、化合物Az1とを含むことがよりさらに好ましい。上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(C5)で表される化合物と、上記アジン環誘導体と、を含む組成物を用いることで、溶解度がより向上する。そして、溶液からの析出がより生じ難くなり、溶液のポットライフがより長くなる。また、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。特に、有機EL素子の駆動電圧がより低下し、消費電力がより低減されることから、発光効率の向上効果が顕著となる。ここで、これらの組成物は、上記の燐光発光性白金族金属錯体をさらに含むことが特に好ましい。燐光発光性白金族金属錯体により、有機EL素子の発光効率および発光寿命をより向上させることができる。この場合、化合物1または2と、化合物H2−35と、化合物Az1と、化合物D1とを含むことが特に好ましい。
本発明者らは、上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(5)で表される化合物と、上記アジン環誘導体と、上記の燐光発光性白金族金属錯体とを含む組成物によって有機EL素子の発光効率および発光寿命が向上するメカニズムを以下のように推定している。
上記一般式(1)で表される化合物と、上記アジン環誘導体と、上記の燐光発光性白金族金属錯体とを含む組成物についての推定メカニズムの説明で述べたように、従来のカルバゾール誘導体等の正孔輸送性ホスト材料と、従来のアジン環誘導体等の電子輸送性ホスト材料と、燐光発光性白金族金属錯体と、を組合せた有機層(発光層)の場合、当該有機層内における再結合分布(プロファイル)および励起子生成分布(プロファイル)の少なくとも一方が局所集中することで寿命が短くなり易い。
また、図4で示すように、LUMO0は、通常、LUMOazineよりも浅い。また、HOMO0は、通常、HOMOCzよりも深い。また、上記一般式(1)で表される化合物の正孔移動度は、通常、上記カルバゾール環誘導体よりも低い。
このため、上記一般式(1)で表される化合物を、一般式(5)で表される化合物等の正孔輸送性ホスト材料と、アジン環誘導体等の電子輸送性ホスト材料と上記の燐光発光性白金族金属錯体と、を組合せた発光層に追加的に添加した場合には、以下のような機構が発現すると推測される。
まず、上記の組成物から構成される有機層内では、電子は、最も深いLUMOazineに一度トラップされる。しかし、トラップされた電子は、LUMO0にデトラップされ移動を再開する。このため、当該有機層内では電子は、LUMOazineとLUMO0の間でのトラップ−デトラップの繰り返しによって移動し、電子移動度が低下する。これらの点は、図3を参照して説明した、上記一般式(1)で表される化合物と、上記アジン環誘導体と、上記の燐光発光性白金族金属錯体と、を含む組成物についての推定メカニズムと同様である。
また、本実施態様では、正孔はHOMOMCにトラップされる。そして、トラップされた正孔は、HOMOCzにデトラップされ移動を再開する。さらに、当該有機層内には、上記一般式(1)で表される化合物が一定量以上の比率で存在する。ここで、図4で示すように、上記一般式(1)で表される化合物は、上記一般式(5)で表される化合物と比較して、より深いHOMO0を有し、また、より低い正孔移動度を有する。これより、当該有機層内の正孔移動度は、上記一般式(1)で表される化合物が存在しない場合、すなわち、上記一般式(5)で表される化合物等の正孔輸送性ホスト材料と、上記アジン環誘導体等の電子輸送性ホスト材料と、上記の燐光発光性白金族金属錯体と、を組合せた従来の有機層(発光層)の場合と比べて低下する。
これより、電子は、当該有機層内のアノードに近い側(例えば、電子輸送層に近い側)に高濃度に蓄積する。一方、正孔は、当該有機層内のカソードに近い側(例えば、正孔輸送層に近い側)に高濃度に蓄積する。その結果、キャリア再結合は両者の中間領域にかけて緩やかに起きることとなる。そして、当該有機層(発光層)内での再結合分布(プロファイル)および励起子生成分布(プロファイル)の少なくとも一方が極めて良好に分散される。これより、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
なお、上述したように、ホスト材料として上記一般式(1)で表される化合物および上記アジン環誘導体のみを用い、発光材料として上記の燐光発光性白金族金属錯体を用いる組成物に係る実施形態を採用した場合、本発明の高い効果が奏される。しかしながら、ホスト材料として上記一般式(1)で表される化合物、上記一般式(5)で表される化合物および上記アジン環誘導体を用い、発光材料として上記の燐光発光性白金族金属錯体を用いる組成物に係る実施形態を採用した場合、本発明の効果はより高まる。正孔移動度の低下が好適な程度となり、発光寿命を向上させる効果に加えて駆動電圧の低電圧化(低消費電力化)をも満足させるからである。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
なお、上記説明した各組成物において、上記化学式(1)で表される化合物がワイドギャップ材料であることが好ましい。当該材料を用いることで、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
なお、上記説明した各組成物の調製方法は、特に制限されない。例えば、これらの組成物は、上記化学式(1)で表される化合物と、任意に用いられる他の化合物とを混合することで調製することができる。混合の順序は特に制限されず、また混合方法、混合条件も特に限定されず、公知の調製方法を含む種々の調製方法を用いることができる。
本発明の一形態に係る組成物は、有機EL素子用材料として用いられることが好ましい。すなわち、有機EL素子用材料は、本発明の一形態に係る組成物を含むことが好ましい。
<液状組成物>
本発明のその他の形態は、上記一般式(1)で表される化合物、またはこれと他の化合物とを含む組成物と、溶剤とを含む、液状組成物に関する。液状組成物としては、上記好ましい組成物の例に挙げた組成物と、溶剤とを含むことが好ましい。
また、溶剤としては、特に限定されないが、大気圧(101.3kPa、1atm)における沸点が100℃以上350℃以下である溶剤であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一形態は、上記一般式(1)で表される化合物またはこれと他の化合物とを含む組成物と、大気圧における沸点が100℃以上350℃以下である溶剤とを含む、液状組成物である。溶剤の大気圧における沸点は、150℃以上320℃以下であることがより好ましく、180℃以上300℃以下であることがさらに好ましい。溶剤の大気圧における沸点が上記範囲であると、湿式成膜法、特にインクジェット(ink jet)印刷法における成膜性や工程性が向上する。その結果、有機EL素子の発光効率および発光寿命ならびに製造工程における利便性(作業能率または歩留まり)の少なくとも一方がより向上する。
大気圧における沸点が100℃以上350℃以下である溶剤は、特に制限されず、公知の溶剤を適宜採用することができる。以下に、大気圧における沸点が100℃以上350℃以下である溶剤を具体的に例示するが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
炭化水素系溶剤としては、オクタン(octane)、ノナン(nonane)、デカン(decane)、ウンデカン(undecane)、ドデカン(dodecane)等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、エチルベンゼン(ethylbenzene)、n−プロピルベンゼン(n−propylbenzene)、iso−プロピルベンゼン(iso−プロピルベンゼン(n−propylbenzene)、メシチレン(mesitylene)、n−ブチルベンゼン(n−butylbenzene)、sec−ブチルベンゼン(sec−butylbenzene)、1−フェニルペンタン(1−phenylpentane)、2−フェニルペンタン(2−phenylpentane)、3−フェニルペンタン(3−phenylpentane)、フェニルシクロペンタン(phenylcyclopentane)、フェニルシクロヘキサン(phenylcyclohexane)、2−エチルビフェニル(2−ethylbiphenyl)、3−エチルビフェニル(3−ethylbiphenyl)等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、1,4−ジオキサン(1,4−dioxane)、1,2−ジエトキシエタン(1,2−diethoxyethane)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(diethyleneglycoldimethylether)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(diethyleneglycoldiethylether)、アニソール(anisole)、エトキシベンゼン(ethoxybenzene)、3−メチルアニソール(3−Methylanisole)、m−ジメトキシベンゼン(m−dimethoxybenzene)等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、2−ヘキサノン(2−hexanone)、3−ヘキサノン(3−hexanone)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、2−ヘプタノン(2−heptanone)、3−ヘプタノン(3−heptanone)、4−ヘプタノン(4−heptanone)、シクロヘプタノン(cycloheptanone)等が挙げられる。エステル系溶剤としては、酢酸ブチル(butylacetate)、プロピオン酸ブチル(butylpropionate)、酪酸ブチル(heptylbutyrate)、プロピレンカーボネート(propylenecarbonate)、メチルベンゾエート(安息香酸メチル)(methylbenzoate)、エチルベンゾエート(ethylbenzoate)、1−プロピルベンゾエート(1−propylbenzoate)、1−ブチルベンゾエート(1−butylbenzoate)等が挙げられる。ニトリル系溶剤としては、ベンゾニトリル(benzonitrile)、3−メチルベンゾニトリル(3−methylbenzonitrile)等が挙げられる。アミド系溶剤としては、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide)、N−メチルピロリドン(methylpyrrolidone)等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒が好ましく、メチルベンゾエートがより好ましい。これらの溶剤は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
液状組成物が、上記一般式(1)で表される化合物および溶剤のみを含む場合、液状組成物中の当該化合物の濃度は、特に限定されず、用途に応じて適宜調整可能である。ただし、塗布容易性等の観点から、当該化合物の濃度は、溶剤の総質量に対して、好ましくは0.05質量%以上10質量%以下となるように調整される。また、当該化合物の濃度は、溶剤の総質量に対して、より好ましくは0.1質量%以上6質量%以下となるように調整される。上記範囲であると、塗布法で成膜する場合の有機薄膜の必要膜厚確保が容易となり、且つ、溶液からの析出がより生じ難く、溶液のポットライフがより長くなるともに、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
液状組成物が、上記一般式(1)で表される化合物と他の化合物とを含む組成物および溶剤を含む場合、液状組成物中の当該組成物の濃度は、特に限定されず、用途に応じて適宜調整可能である。ただし、塗布容易性等の観点から、当該組成物の濃度は、溶剤の総質量に対して、好ましくは0.05質量%以上10質量%以下となるように調整される。また、当該化合物の濃度は、溶剤の総質量に対して、より好ましくは0.1質量%以上6質量%以下となるように調整される。上記範囲であると、上記範囲であると、溶液からの析出がより生じ難く、溶液のポットライフがより長くなるとともに、有機EL素子の発光効率および発光寿命がより向上する。
なお、上記液状組成物の調製方法は、特に制限されない。例えば、当該液状組成物は、上記一般式(1)で表される化合物と、任意に用いられる他の化合物と、溶剤とを混合することで調製することができる。混合の順序は特に制限されず、また混合方法、混合条件も特に限定されず、公知の調製方法を含む種々の調製方法を用いることができる。
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明のさらなる他の一形態は、上記一般式(1)で表される化合物を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。より詳細には、当該形態は、一対の電極と、前記一対の電極の間に配置された、当該化合物またはこれと他の化合物とを含む組成物を含む有機層とを備える、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図5は、本発明の一形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の模式図である。以下、図5を参照して、本発明の一形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子について、詳細に説明する。
図5に示すように、本発明の一形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)100は、基板110と、基板110上に配置された第1電極120と、第1電極120上に配置された正孔注入層130と、正孔注入層130上に配置された正孔輸送層140と、正孔輸送層140上に配置された発光層150と、発光層150上に配置された電子輸送層160と、電子輸送層160上に配置された電子注入層170と、電子注入層170上に配置された第2電極180とを備える。
ここで、上記一般式(1)で表される化合物は、第1電極120と第2電極180との間に配置されたいずれかの有機層の中に含まれうる。上記一般式(1)で表される化合物と他の化合物とを含む組成物は、例えば、第1電極120と第2電極180との間に配置されたいずれかの有機層の中に含まれうる。
具体的には、上記一般式(1)で表される化合物は、正孔輸送性および電子輸送性のいずれにも優れる観点から、正孔注入材料として正孔注入層130に含まれうる。また、正孔輸送材料として正孔輸送層140に含まれてもよく、発光層材料(ホスト)として発光層150に含まれてもよい。さらに、電子輸送材料として電子輸送層160に含まれてもよく、電子注入材料として電子注入層170に含まれてもよい。当該化合物は、より好ましくは、正孔注入層130、正孔輸送層140、または発光層150に含まれる。さらに好ましくは、発光層150に含まれる。一般式(1)で表される化合物と、他の化合物とを含む組成物は、正孔輸送性および電子輸送性のいずれにも優れる観点から、正孔注入材料として正孔注入層130に含まれうる。また、正孔輸送材料として正孔輸送層140に含まれてもよく、発光層材料(ホスト)として発光層150に含まれてもよい。さらに、電子輸送材料として電子輸送層160に含まれてもよく、電子注入材料として電子注入層170に含まれてもよい。当該組成物は、より好ましくは、正孔注入層130、正孔輸送層140、または発光層150に含まれる。さらに好ましくは、発光層150に含まれる。
また、上記一般式(1)で表される化合物を含む有機層は、湿式成膜法によって形成されることが好ましく、塗布法によって形成されることがより好ましい。塗布法の具体的としては、スピンコート(spin coat)法、キャスティング(casting)法、マイクログラビアコート(micro gravure coat)法、グラビアコート(gravure coat)法、バーコート(bar coat)法、ロールコート(roll coat)法、ワイアーバーコート(wire bar coat)法、ディップコート(dip coat)法、スプレーコート(spry coat)法、スクリーン(screen)印刷法、フレキソ(flexographic)印刷法、オフセット(offset)印刷法、インクジェット(ink jet)印刷法等が挙げられる。これらの中でも、生産性の観点から、インクジェット(ink jet)印刷法が好ましい。
塗布法で用いる塗布液は、上記の液状組成物であることが好ましい。よって、塗布液の詳細については、上記の液状組成物の説明と同様である。
なお、乾式成膜法、塗布法の手順、条件、装置等は、特に限定されず、公知の乾式成膜法、塗布法と同様の手順、条件、装置等を適宜採用することができる。
なお、上記一般式(1)で表される化合物を含む有機層以外の層の成膜方法については、特に限定されない。このような有機層以外の層は、例えば、真空蒸着法等の乾式成膜法にて成膜されてもよく、塗布法等の湿式成膜法にて成膜されてもよい。
基板110は、一般的な有機EL素子で使用される基板を使用することができる。例えば、基板110は、ガラス(glass)基板、シリコン(silicon)基板などの半導体基板、または透明なプラスチック(plastic)基板等であってもよい。
基板110上には、第1電極120が形成される。第1電極120は、陽極であることが好ましい。当該第1電極120は、金属、合金、または導電性化合物等のうち仕事関数(物質内にある電子を一個外へ取り出すのに必要な最小エネルギー)が大きいものによって形成されることが好ましい。例えば、第1電極120は、透明性および導電性に優れる酸化インジウムスズ(In2O3−SnO2:ITO)、酸化インジウム亜鉛(In2O3−ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等によって透過型電極として形成されてもよい。また、第1電極120は、上記透明導電膜に対して、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などを積層することによって反射型電極として形成されてもよい。
第1電極120上には、正孔注入層130が形成される。正孔注入層130は、第1電極120からの正孔の注入を容易にする層である。正孔注入層130の膜厚は、特に制限されないが、10nm以上1000nm以下であることが好ましい。また、当該膜厚は、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。
正孔注入層130以外の有機層が上記一般式(1)で表される化合物を含む場合、正孔注入層130は、公知の正孔注入材料等、公知の材料のみから形成されていてもよい。
公知の正孔注入材料としては、例えば、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(poly(ether ketone)−containg triphenylamine:TPAPEK)、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(4−isopropyl−4’−methyldiphenyliodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate:PPBI)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−[4−(フェニル−m−トリル−アミノ)−フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン(N,N’−diphenyl−N,N’−bis−[4−(phenyl−m−tolyl−amino)−phenyl]−biphenyl−4,4’−diamine:DNTPD)、銅フタロシアニン(copper phthalocyanine)、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylamine:m−MTDATA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(N,N’−di(1−naphthyl)−N,N’−diphenylbenzidine:NPB)、4,4’,4”−トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(diphenylamino)triphenylamine:TDATA)、4,4’,4”−トリス(N,N−2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N,N−2−naphthylphenylamino)triphenylamine:2−TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(polyaniline/dodecylbenzenesulphonic acid)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/poly(4−styrenesulfonate):PEDOT/PSS)、およびポリアニリン/10−カンファースルホン酸(polyaniline/10−camphorsulfonic acid)等を挙げることができる。
正孔注入層130上には、正孔輸送層140が形成される。正孔輸送層140は、正孔を輸送する機能を備えた層である。正孔輸送層140の膜厚は、特に制限されないが、10nm以上150nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層140以外の有機層が上記一般式(1)で表される化合物を含む場合、正孔輸送層140は、公知の正孔輸送材料等、公知の材料のみから形成されてもよい。
公知の正孔輸送材料としては、例えば、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(1,1−bis[(di−4−tolylamino)phenyl]cyclohexane:TAPC)、N−フェニルカルバゾール(N−phenylcarbazole)およびポリビニルカルバゾール(polyvinylcarbazole)などのカルバゾール(carbazole)誘導体、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(N,N’−bis(3−methylphenyl)−N,N’−diphenyl−[1,1−biphenyl]−4,4’−diamine:TPD)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N−carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、ならびにN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(N,N’−di(1−naphthyl)−N,N’−diphenylbenzidine:NPB)等を挙げることができる。
また、国際公開第2011/159872号、米国特許出願公開第2016/0315259号明細書等に記載の正孔輸送材料も用いることもできる。
正孔輸送層140上には、発光層150が形成される。発光層150は、蛍光、りん光等によって光を発する層である。発光層150の膜厚は、特に制限されないが、10nm以上60nm以下であることが好ましい。
発光層150に含まれる発光材料は、三重項励起子からの発光(すなわち、りん光発光)が可能な発光材料であることが好ましい。このような場合、有機EL素子100の発光効率および発光寿命をより向上させることができる。
発光層150は、上記化学式(1)で表される化合物を含むことが特に好ましく、これを含む組成物を含むことがより好ましい。
発光層150以外の有機層が上記一般式(1)で表される化合物を含む場合、発光層150は、上記一般式(1)で表される化合物を含まず、公知の発光材料等、公知の材料のみから形成されていてもよい。
発光層150は、ホスト材料として、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(tris(8−quinolinato)aluminium:Alq3)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(4,4’−bis(carbazol−9−yl)biphenyl:CBP)、ポリ(n−ビニルカルバゾール)(poly(n−vinyl carbazole):PVK)、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(9,10−di(naphthalene)anthracene:ADN)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N−carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(1,3,5−tris(N−phenyl−benzimidazol−2−yl)benzene:TPBI)、3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン(3−tert−butyl−9,10−di(naphth−2−yl)anthracene:TBADN)、ジスチリルアリーレン(distyrylarylene:DSA)、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(4,4’−bis(9−carbazole)2,2’−dimethyl−bipheny:dmCBP)等の公知の材料を含んでもよい。
発光層150は、ドーパント材料として、例えば、ペリレン(perylene)およびその誘導体、ルブレン(rubrene)およびその誘導体、クマリン(coumarin)およびその誘導体、4−ジシアノメチレン−2−(p−ジメチルアミノスチリル)−6−メチル−4H−ピラン(4−dicyanomethylene−2−(pdimethylaminostyryl)−6−methyl−4H−pyran:DCM)およびその誘導体、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジネート]ピコリネートイリジウム(III)(bis[2−(4,6−difluorophenyl)pyridinate]picolinate iridium(III):FIrpic)、ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(bis(1−phenylisoquinoline)(acetylacetonate)iridium(III):Ir(piq)2(acac))、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(tris(2−phenylpyridine)iridium(III):Ir(ppy)3)、トリス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)などのイリジウム(Ir)錯体、オスミウム(Os)錯体、白金錯体等の公知の材料を含んでもよい。
発光層150は、発光材料として、量子ドット等のナノ粒子を含んでよい。量子ドットは、I−VI族系列の半導体、III−V族系列の半導体またはIV−IV族系列の半導体で構成されるナノ粒子である。上記半導体としては、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnSe、ZnS、PbS、PbSe、HgS、HgSe、HgTe、CdHgTe、CdSeXTe1−X、GaAs、InAsおよびInP等が挙げられる。ただし、上記半導体は、これらに限定されるものではない。また、量子ドット等のナノ粒子の直径は、特に限定されないが、1nm以上20nm以下であることが好ましい。また、量子ドット等のナノ粒子は、単一コア構造を有していてもよいし、コアの表面上にシェルが被覆された、いわゆるコア/シェル構造を有していてもよい。
発光層150上には、電子輸送層160が形成される。電子輸送層160は、電子を輸送する機能を備えた層である。電子輸送層160の膜厚は、特に制限されないが、15nm以上50nm以下であることが好ましい。
電子輸送層160以外の有機層が上記一般式(1)で表される化合物を含む場合、電子輸送層160は、上記一般式(1)で表される化合物を含まず、公知の電子輸送材料等、公知の材料のみから形成されていてもよい。
公知の電子輸送材料としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(tris(8−quinolinato)aluminium:Alq3)、および含窒素芳香環を有する化合物等を挙げることができる。含窒素芳香環を有する化合物の具体例としては、例えば、1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン(1,3,5−tri[(3−pyridyl)−phen−3−yl]benzene)のようなピリジン(pyridine)環を含む化合物、2,4,6−トリス(3’−(ピリジン−3−イル)ビフェニル−3−イル)−1,3,5−トリアジン(2,4,6−tris(3’−(pyridin−3−yl)biphenyl−3−yl)−1,3,5−triazine)のようなトリアジン(triazine)環を含む化合物、2−(4−(N−フェニルベンゾイニダゾリル−1−イル−フェニル)−9,10−ジナフチルアントラセン(2−(4−(N−phenylbenzoimidazolyl−1−yl−phenyl)−9,10−dinaphthylanthracene)のようなイミダゾール(imidazole)環を含む化合物等を挙げることができる。また、(8−キノリノラト)リチウム(Liq)((8−quinolinato)lithium:Liq)およびKLET−03(ケミプロ化成株式会社製)の混合物等も挙げることができる。
電子輸送層160上には、電子注入層170が形成される。電子注入層170は、第2電極180からの電子の注入を容易にする機能を備えた層である。電子注入層170の膜厚は、特に制限されないが、0.3nm以上20nm以下であることが好ましい。
電荷注入層170以外の有機層が上記一般式(1)で表される化合物を含む場合、電子注入層170は、上記一般式(1)で表される化合物を含まず、公知の電子注入輸送材料等、公知の材料のみから形成されていてもよい。
電子注入層170は、例えば、(8−キノリノラト)リチウム((8−quinolinato)lithium:Liq)およびフッ化リチウム(LiF)等のリチウム(lithium)化合物、塩化ナトリウム(NaCl)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li2O)、または酸化バリウム(BaO)等の公知の材料で形成されてもよい。
電子注入層170上には、第2電極180が形成される。第2電極180は、陰極であることが好ましい。第2電極180は、金属、合金、または導電性化合物等のうち仕事関数が小さいものによって形成されることが好ましい。例えば、第2電極180は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)等の金属、またはアルミニウム−リチウム(Al−Li)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)等の合金で反射型電極として形成されてもよい。また、第2電極180は、上記金属材料の20nm以下の薄膜、酸化インジウムスズ(In2O3−SnO2)および酸化インジウム亜鉛(In2O3−ZnO)などの透明導電膜によって透過型電極として形成されてもよい。
このように、本発明の一形態に係る有機EL素子100は、上記一般式(1)で表される化合物を含む有機層を有する。これより、電流効率、発光寿命に優れる有機EL素子を湿式成膜法によって製造することが可能となる。
ここで、有機層の好ましい態様は、上記組成物の好ましい態様と同様である。すなわち、有機層は、上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体とを含むことが好ましい。この際、有機層が発光層であり、上記化学式(1)で表される化合物と、上記カルバゾール誘導体と、上記の燐光発光性白金族金属錯体とを含むことがより好ましい。また、有機層は、上記一般式(1)で表される化合物と、上記アジン環誘導体とを含むことが好ましい。この際、有機層が発光層であり、上記化学式(1)で表される化合物と、上記アジン環誘導体と、上記の燐光発光性白金族金属錯体とを含むことがより好ましい。そして、有機層は、上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(1)で表される化合物以外のカルバゾール誘導体と、上記アジン環誘導体とを含むことがより好ましい。この際、有機層が発光層であり、上記化学式(1)で表される化合物と、上記カルバゾール誘導体と、上記アジン環誘導体と、上記の燐光発光性白金族金属錯体とを含むことがより好ましい。
ここで、有機層中の各成分の好ましい含有量は、上記組成物の好ましい態様と同様である。
なお、本発明の一形態に係る有機EL素子の積層構造は、上記の例示に限定されない。本発明の一形態に係る本実施形態に係る有機EL素子は、他の公知の積層構造にて形成されてもよい。例えば、有機EL素子は、図5における正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層のうちの1層以上が省略されてもよく、また、追加で他の層を備えていてもよい。また、有機EL素子の各層は、それぞれ単層で形成されてもよく、複数層で形成されてもよい。
例えば、有機EL素子は、励起子または正孔が電子輸送層に拡散することを防止するために、発光層と電子輸送層との間に正孔阻止層をさらに備えていてもよい。なお、正孔阻止層は、例えば、オキサジアゾール(oxadiazole)誘導体、トリアゾール(triazole)誘導体、または、フェナントロリン(phenanthroline)誘導体等によって形成することができる。
以下、本発明について、さらに詳細な実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これら実施例に限定されない。
<合成例1>
(化合物1aの合成)
窒素雰囲気下、三口フラスコに3−ブロモ−1,1’:3’,1’’−ターフェニル(1mol,309.2g)、4−クロロフェニルボロン酸(1.05eq. 1.05mol,164.2g)、トルエン(2L)、およびエタノール(200ml)を入れ、撹拌して溶解させた。
次いで、炭酸カリウム(K2CO3)2M水溶液(1.5eq. 750ml)を加えた。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(3mol%,30mmol,34.7g)を加えて、70℃で12時間撹拌した。
室温に冷却し、セライト(celite)(登録商標)を用いて濾過し、純水で2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルパッドを通して濾過して、濃縮した。
これをトルエン:ヘキサン(2ml:10ml/1g)から再結晶を3回行い、真空乾燥(50℃、12時間)を行い、白色固体の目的物(化合物1a)を得た。化合物1aの収量は、153.7gであり、その収率は45%であった。
(化合物1bの合成)
窒素雰囲気下、三口フラスコに化合物1a(129mmol,44.0g)、ビスピナコラートジボロン(1.05eq. 142mmol,36.1g)、酢酸カリウム(2eq. 258mmol,25.3g)、および1,4−ジオキサン(258ml)を入れ、撹拌して分散させた。
次いで、酢酸パラジウム(2mol%,2.58mmol,579mg)、およびX−Phos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル)(4mol%,5.16mmol,2.46g)を加えて、80℃で10時間撹拌した。
室温に冷却後、トルエン(300ml)で希釈し、セライト(celite)(登録商標)を用いて濾過し、純水で3回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルパッドを通して濾過して、濃縮した。
これをヘキサン(10ml/1g)から再結晶を行い、真空乾燥(50℃、12時間)を行い、白色固体の目的物(化合物1b)を得た。化合物1bの収量は、43.9gであり、その収率は、79%であった。
(化合物1cの合成)
窒素雰囲気下、三口フラスコに(4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ボロン酸((4−(9H−carbazol−9−yl)phenyl)boronic acid)(210mmol,60.3g)、1−ブロモ−2−ニトロベンゼン(1−bromo−2−nitrobenzene)(1.0eq. 200mmol,40.4g)、トルエン(800ml)、およびエタノール(200ml)を入れ、撹拌して溶解させた。
次いで、炭酸カリウム(K2CO3)2M水溶液(1.5eq. 150ml)を加えた。その後、Pd(PPh3)4(3mol%,6mmol,6.93g)を加えて、70℃で6時間撹拌した。
室温に冷却後、トルエン(1L)で希釈し、セライト(celite)(登録商標)を用いて濾過し、純水で3回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルパッドを通して濾過して、濃縮した。
これをトルエン:エタノール(3ml:7ml/1g)から2回再結晶を行い、淡黄色固体の目的物(化合物1c)を得た。化合物1cの収量は、64.1gであり、その収率は、88%であった。
(化合物1dの合成)
窒素雰囲気下、三口フラスコに化合物1c(175mmol,63.8g)、トリフェニルホスフィン(3.0eq. 525mmol,137.7g)、およびo−ジクロロベンゼン(525ml)を入れ、撹拌して、分散させた。その後、150℃で10時間撹拌した。
室温に冷却後、メタノール(2L)で希釈し、沈殿を析出させた。次いで30分間超音波照射を行った。析出固体を濾過で回収し、真空乾燥(50℃、20時間)を行い、粗体を得た。
これをテトラヒドロフランに溶解させ、シリカゲルショートカラムを通じて原点不純物を除去した。さらに活性炭を用いて着色不純物を吸着除去させ、濾過して、濃縮を行った。次いでトルエンから再結晶を行い、淡黄色固体(化合物1d)を得た。化合物1dの収量は、27.3gであり、その収率は、47%であった。
(化合物1eの合成)
窒素雰囲気下、三口フラスコに化合物1d(80mmol,26.6g)、3−ブロモ−3’−クロロ−1,1’−ビフェニル(1.2eq. 96mmol,25.7g)、キシレン(320ml)、およびナトリウムtert−ブトキシド(2eq. 160mmol,15.4g)を入れ、撹拌して溶解させた。
次いで、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)(2mol%,1.6mmol,1.47g)、およびトリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(8mol%,6.4mmol,1.86g)を加えて、130℃で6時間撹拌した。
室温に冷却後、セライト(celite)(登録商標)を用いて濾過した。次いでシリカゲルパッドを通して濾過して、濃縮した。
これをシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:ヘキサン=4:6)で精製した。さらに酢酸エチル:ヘキサン(4ml:6ml/1g)で再結晶を行い、白色固体(化合物1e)を得た。化合物1eの収量は、24.5gであり、その収率は、59%であった。
(化合物1の合成)
窒素雰囲気下、三口フラスコに化合物1e(15mmol,7.79g)、化合物1b(16.5mmol,7.13g)、トルエン(150ml)、およびエタノール(15ml)を入れ、撹拌して溶解させた。
次いで、炭酸カリウム(K2CO3)2M水溶液(1.5eq. 11.3ml)を加えた。その後、酢酸パラジウム(3mol%,0.45mmol,101mg)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(S−Phos)(4.5mol%,0.68mmol,279mgを加えて、80℃で8時間撹拌した。
室温に冷却後、トルエン(200ml)で希釈し、セライト(celite)(登録商標)を用いて濾過して、純水で2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルパッドを通して濾過し、濃縮した。
これをシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:ヘキサン=5:5)で精製し、さらに酢酸エチルで分散洗浄を行い、白色固体(化合物1)を得た。化合物1の収量は、8.40gであり、その収率は、71%であった。
<合成例2>
(化合物2aの合成)
窒素雰囲気下、三口フラスコに化合物1d(50mmol,16.6g)、3−ブロモヨードベンゼン(5.0eq. 250mmol,70.7g)、炭酸カリウム(2eq. 100mmol,13.8g)、およびヨウ化銅(CuI)(5mol%,2.5mmol,476mgを入れ、撹拌して分散させた。その後、180℃で10時間撹拌した。
室温に冷却後、トルエン(500ml)で希釈し、セライト(celite)(登録商標)を用いて濾過した。次いでシリカゲルパッドを通して濾過して、濃縮した。
これをシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:ヘキサン=4:6)で精製した。さらに酢酸エチル:ヘキサン=4ml:6ml/1gで再結晶を行い、白色固体(化合物2a)を得た。化合物2aの収量は、18.8gであり、その収率は、77%であった。
(化合物2の合成)
窒素雰囲気下、三口フラスコに化合物2a(15mmol,7.31g)、化合物2a(16.5mmol,7.13g)、トルエン(150ml)、およびエタノール(15ml)を入れ、撹拌して溶解させた。
次いで、炭酸カリウム(K2CO3)2M水溶液(1.5eq. 11.3ml)を加えた。その後、酢酸パラジウム(3mol%,0.45mmol,101mg)、o−トリルホスフィン(4.5mol%,0.68mmol,207mg)を加えて、80℃で8時間撹拌した。
室温に冷却後、トルエン(200ml)で希釈し、セライト(celite)(登録商標)を用いて濾過して、純水で2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルパッドを通して濾過して、濃縮した。
これをシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:ヘキサン=5:5)で精製した。さらに酢酸エチルで分散洗浄を行い、白色固体(化合物2)を得た。化合物2の収量は、8.13gであり、その収率は、76%であった。
<比較例化合物C1および化合物Cz3の合成>
反応スキームを変更し、対応する試薬を変更したこと以外は、合成例1と同様にして比較例化合物C1および化合物Cz3を得た。
<溶解性評価>
サンプル固体試料50mgを無色透明のサンプル瓶に入れ、溶媒として安息香酸メチルを500mg入れた。室温にて超音波照射を20分間行い、目視にてサンプル固体の残存有無を確認した。サンプル固体の残存が有れば、少量ずつ溶媒追加と超音波照射とを繰り返し、完全に溶解した時点での溶媒量から溶解度を算出した。結果を表1に示す。
<溶液のポットライフ評価>
サンプル固体試料50mgを無色透明のサンプル瓶に入れ、溶媒として安息香酸メチルを1.0g入れた。150℃に加熱し、サンプル固体を完全に溶解させ、5質量%の溶液を調製した。その後、室温まで冷却して観察を開始し、結晶等の析出固体が目視で確認されるまでの時間(h)をポットライフとして測定した。結果を表1に示す。
<HOMOおよびLUMO値の測定>
1.測定サンプルの作製
(1)溶剤の安息香酸メチルの重量に対して、サンプルの固形分濃度を4質量%となるように調製した。
(2)ITO基板および石英基板のそれぞれに、上記(1)で調製したサンプル溶液をスピンコート法によって乾燥膜厚が50nmになるように塗布し、10−1Pa以下の真空下において120℃にて1時間加熱、その後10−1Pa以下の真空下において室温まで冷却して、薄膜層を形成した。
2.HOMO値の測定
上記(2)で作製したITO基板上の薄膜サンプルについて、大気中光電子分光装置AC−3(理研計器株式会社製)を用いてHOMO値を測定した。
3.LUMO値の測定
上記(2)で作製した石英基板上の薄膜サンプルについて、分光光度計 U−3900(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて紫外可視吸収スペクトルの吸収端からエネルギーギャップ値(Eg)を測定し、以下の数式(3)からLUMO値を算出した。
測定結果を表2に示す。
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
示差走査熱量測定装置 DSC6220(セイコーインスツル株式会社製)を用いて、サンプル約5mgを、−50℃から300℃の範囲においては昇温速度10℃/min、300℃から−50℃の範囲においては冷却速度−50℃/minで走査測定する工程を3回繰り返した。2回目以降の走査の熱量曲線からガラス転移温度(Tg)を求めた。測定結果を表2に示す。
<有機EL素子の作製>
(実施例1)
まず、第1電極(陽極)として、ストライプ(stripe)状の酸化インジウムスズ(ITO)が膜厚150nmにて成膜されたITO付きガラス基板を用意した。このガラス基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(poly(3,4−ethylene dioxythiophene)/poly(4−styrene sulfonate):PEDOT/PSS)(Sigma−Aldrich製)を、乾燥膜厚が30nmになるようにスピンコート法にて塗布し、正孔注入層を形成した。
次に、正孔注入層上に、溶剤としてアニソールと、溶剤の重量に対して3質量%の下記繰返し構造を有する正孔輸送性ポリマー(HTP1)(重量平均分子量Mw=400,000,PDI(Mw/Mn)=2.7)と、溶剤の重量に対して0.6質量%の下記構造の低分子化合物AD1とから成る正孔輸送層塗布溶液を乾燥膜厚が125nmになるようにスピンコート法にて塗布した。10−1Pa以下の真空下において230℃にて1時間加熱した。その後10−1Pa以下の真空下において室温まで冷却して、正孔輸送層を形成した。
次いで、正孔輸送層上に、発光層用インク(ホスト材料として、化合物1および化合物Az1、ならびにドーパント材料として、化合物TEG(トリス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジンイリジウム)を含む安息香酸メチル溶液)をスピンコート法によって乾燥膜厚が50nmになるように塗布した。10−1Pa以下の真空下において120℃にて1時間加熱した。その後10−1Pa以下の真空下において室温まで冷却して、発光層を正孔輸送層上に形成した。
発光層用インクの組成は、溶剤の安息香酸メチルの重量に対して、化合物1の固形分濃度を2.64質量%、化合物Az1の固形分濃度を1.32質量%、および化合物TEGの固形分濃度を0.4質量%となるように調製した。
次に、発光層上に、KLET−03(ケミプロ化成株式会社製)および(8−キノリノラト)リチウム(Liq)を真空蒸着装置にて8:2の重量比となるように共蒸着し、膜厚30nmの電子輸送層を形成した。
また、電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着装置にて蒸着し、膜厚1nmの電子注入層を形成した。
さらに、電子注入層上に、アルミニウム(Al)を真空蒸着装置にて蒸着し、膜厚100nmの第2電極(陰極)を形成した。
その後、水分濃度1ppm以下および酸素濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス中で、乾燥剤付きのガラス製の封止管と紫外線硬化型樹脂とを用いて封止し、有機EL素子を作製した。
(実施例2)
ホスト材料として、化合物1に代えて化合物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
(実施例3)
発光層用インクの組成を、以下のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
発光層用インクの組成は、溶剤の安息香酸メチルに対して、化合物1の固形分濃度を1.33質量%、化合物Cz1(H2−35)の固形分濃度を1.33質量%、化合物Az1の固形分濃度を1.33質量%、および化合物TEGの固形分濃度を0.4質量%となるように調製した。
反応スキームを変更し、対応する試薬を変更したこと以外は、合成例1と同様にして化合物Cz1(H2−35)を得た。
(実施例4)
ホスト材料として、化合物1に代えて化合物2を用いたこと以外は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
(比較例1)
発光層用インクの組成を、以下のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
発光層用インクの組成は、溶剤の安息香酸メチルに対して、化合物Cz1の固形分濃度を2.64質量%、化合物Az1の固形分濃度を1.32質量%、および化合物TEGの固形分濃度を0.4質量%となるように調製した。
(比較例2)
ホスト材料として、化合物Cz1に代えて化合物Cz2を用いたこと以外は、比較例1と同様にして有機EL素子を作製した。
反応スキームを変更し、対応する試薬を変更したこと以外は、合成例1と同様にして、化合物Cz2を得た。
(比較例3)
ホスト材料として、化合物Cz1に代えて化合物Cz3を用いたこと以外は、比較例1と同様にして有機EL素子を作製した。
(比較例4)
ホスト材料として、化合物Cz1に代えて比較例化合物C1を用いたこと以外は、比較例1と同様にして有機EL素子を作製した。
<有機EL素子の評価>
下記方法に従って、駆動電圧、電流効率および耐久性(発光寿命)を評価した。
直流定電圧電源(株式会社キーエンス製、ソースメータ(source meter))を用いて、有機EL素子に対して0Vから20Vまで印可電圧を連続的に変化させて有機EL素子に通電して発光させた。発光時の輝度を輝度測定装置(Topcom製、SR−3)にて測定した。
ここで、有機EL素子の面積から単位面積あたりの電流値(電流密度)を計算し、輝度(cd/m2)を電流密度(A/m2)にて除算することで、電流効率(cd/A)を算出した。なお、電流効率は、電流を発光エネルギーへ変換する効率(変換効率)を示し、電流効率が高いほど有機EL素子の性能が高いことを示す。
また、発光寿命(耐久性)は、初期輝度が6,000cd/m2となる電流値において連続駆動し、時間経過とともに減衰する発光輝度が初期輝度の80%になるまでの時間を「LT80(h)」として測定した。
結果を下記表3に示す。なお、表3中、電流効率は、比較例1の有機EL素子の電流効率を100とした場合の相対値として表す。また、発光寿命(耐久性)は、比較例1の有機EL素子のLT80(h)を100とした場合の相対値として表す。
表3の結果から、アジン環誘導体Az1と組み合わせるホストとして、一般式(1)で表される化合物を用いた実施例1および2は、従来一般的に用いられる正孔輸送性ホスト材料であるカルバゾール環誘導体を用いた比較例1〜4と比べて、発光効率および発光寿命が優れることが分かる。
また、一般式(1)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物とを併用することで、発光効率および発光寿命が優れることに加えて、駆動電圧が顕著に低下しており、消費電力においてより優れることが分かる。
以上、本発明について実施形態および実施例を挙げて説明したが、本発明は特定の実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。