I.導入
本発明は、がん(例えば、腎臓癌)の診断、モニタリング、及び治療のための方法を提供する。本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)を含む抗がん療法による治療により、バイオマーカー(例えば、免疫学的バイオマーカー、例えば、CD8+Teff細胞に関連する遺伝子(例えば、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1)、Th1ケモカイン(例えば、CXCL9、CXLC10、CXCL11、及びCXCL13)、NK細胞(例えば、GZMB、KLRK1、及びSLAMF7)、抗原提示(例えば、MHC−I)、及び免疫輸送分子(例えば、CCL2、CCL5、CCR5、CXCL1、CCR7、及びCXCL10))の発現レベルの変化が生じるという発見に少なくとも一部基づく。本発明は、本発明のバイオマーカーの発現レベルを検出及び比較することによって、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)による治療に対するがん(例えば、腎臓癌)を有する患者の応答をモニタリングするための方法を提供する。本発明はまた、本発明のバイオマーカーの発現レベルに基づいてVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)を患者に投与することによって、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者を治療するための方法を提供する。
II.定義
本明細書に記載の本発明の態様及び実施形態が、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途指示されない限り、複数の対象を含む。
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者に容易に知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
本明細書で使用される場合、「個体」、「患者」または「対象」という用語は、交換可能に使用され、治療が所望される任意の単一の動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、及び非ヒト霊長類などの非ヒト動物を含む)を指す。特定の実施形態では、本明細書の患者はヒトである。患者は、「がん患者」、即ち、がんに罹患しているか、またはがんに罹患する危険があるか、またはがんの1つ以上の症状に苦しむ患者であり得る。
「がん」及び「がん性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか、または説明する。この定義には、良性がん及び悪性がん、ならびに休眠腫瘍または微小転移が含まれる。がんの例としては、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリン産生腫瘍、及び島細胞癌を含む)、中皮腫、シュワン細胞腫(聴神経腫瘍を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、ならびに白血病またはリンパ系腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。かかるがんのより具体的な例には、腎臓癌(例えば、腎細胞癌腫(RCC)、例えば、転移性RCC)、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮系扁平上皮細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃(gastric)癌または胃(stomach)癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、肝臓癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メルケル細胞癌、菌状息肉腫、精巣癌、食道癌、胆管の腫瘍、頭頸部癌、及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ種(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(脳腫瘍と関連付けられるものなど)、及びメイグス症候群と関連付けられる異常な血管増殖が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんは腎臓癌である。特定の実施形態では、腎臓癌はRCC(例えば、mRCC)である。
「早期がん」または「早期腫瘍」とは、侵襲性もしくは転移性でないか、または0期、I期、もしくはII期がんとして分類されるがんを意味する。
「進行」がんは、元の部位または器官の外に、局所浸潤または転移のいずれかによって広がったがんである。
「不応性」がんは、化学療法剤などの抗腫瘍剤ががん患者に投与されているにもかかわらず進行するがんである。不応性がんの例は、白金不応性であるがんである。
「再発性」がんは、初期療法に応答した後に、初期の部位または遠位部位で再増殖したがんである。
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖と関連付けられる障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害はがんである。
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、悪性または良性にかかわらず、全ての腫瘍性細胞の成長及び増殖、ならびに全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。
「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及されるように相互排他的ではない。
「障害」とは、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害または疾患を含むがこれらに限定されない、治療から利益を受けることになる任意の状態である。
「検出」という用語は、直接的及び間接的検出を含む、任意の検出方法を含む。
本明細書で使用される「試料」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、及び/または生理学的特性に基づいて、特徴付けかつ/または識別される細胞及び/または他の分子実体を含有する、目的の患者及び/または個体から得られるか、またはそれに由来する組成物を指す。例えば、「疾患試料」という語句及びその変化形は、特徴付けられる細胞及び/または分子実体を含有することが予期されるか、または含有することが既知である、目的の患者から得られた任意の試料を指す。試料には、組織試料、初代または培養細胞または細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、組織抽出物、例えば、均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」という表現は、同義に使用され、全てのかかる名称は、子孫を含む。このため、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という語は、移行の数にかかわらず初代対象細胞及びそれ由来の培養物を含む。また、全ての子孫は、意図的なまたは想定外の突然変異に起因してDNA内容において厳密に同一でない場合があることが理解される。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングされたものと同じ機能または生物活性を有する変異子孫が含まれる。別個の指定が意図される場合には、それは文脈から明確となるであろう。
「バイオマーカー」及び「マーカー」という用語は、DNA、RNA、タンパク質、炭水化物、糖脂質、または細胞系分子マーカーを指すために本明細書では同義に使用され、患者の試料におけるその発現または存在は、標準的な方法(または本明細書に開示の方法)によって検出され得る。かかるバイオマーカーには、表2に示される遺伝子及びタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、マーカーは、細胞(例えば、CD8+T細胞、例えば、Tエフェクター(Teff)細胞)であってもよい。かかるバイオマーカーの発現は、VEGFアンタゴニストに感受性または応答性である患者から得られた試料において、参照レベル(例えば、患者、例えば、がんを有し、VEGFアンタゴニストへの応答性について試験されている患者の群/集団由来の試料におけるバイオマーカーの平均発現レベル;患者、例えば、がんを有し、VEGFアンタゴニストに応答しないとして特定された患者の群/集団由来の試料におけるバイオマーカーの平均発現レベル;前の時点で個体から以前に得られた試料におけるレベル;または原発腫瘍の状況でVEGFアンタゴニストによる事前治療を受け、現在転移を経験している場合がある患者由来の試料におけるレベルを含む)よりも高いまたは低いことが決定され得る。
本明細書で使用される「CD8A」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CD8Aを指す。本用語は、「全長」の処理されていないCD8A、及び細胞における処理から生じるCD8Aの任意の形態を包含する。本用語はまた、CD8Aの天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCD8Aの核酸配列は、配列番号1に示される。ヒトCD8Aによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。
本明細書で使用される「CD8B」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CD8Bを指す。本用語は、「全長」の処理されていないCD8B、及び細胞における処理から生じるCD8Bの任意の形態を包含する。本用語はまた、CD8Bの天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCD8Bの核酸配列は、配列番号3に示される。ヒトCD8Bによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号4に示される。
本明細書で使用される「EOMES」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然EOMES(エオメソデルミン(Eomesodermin))を指す。本用語は、「全長」の処理されていないEOMES、及び細胞における処理から生じるEOMESの任意の形態を包含する。本用語はまた、EOMESの天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトEOMESの核酸配列は、配列番号5に示される。ヒトEOMESによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号6に示される。
本明細書で使用される「GZMA」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然GZMA(グランザイムA)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないGZMA、及び細胞における処理から生じるGZMAの任意の形態を包含する。本用語はまた、GZMAの天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトGZMAの核酸配列は、配列番号7に示される。ヒトGZMAによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号8に示される。
本明細書で使用される「GZMB」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然GZMB(グランザイムB)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないGZMB、及び細胞における処理から生じるGZMBの任意の形態を包含する。本用語はまた、GZMBの天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトGZMBの核酸配列は、配列番号9に示される。ヒトGZMBによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号10に示される。
本明細書で使用される「IFNG」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然IFNG(インターフェロン、ガンマ)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないIFNG、及び細胞における処理から生じるIFNGの任意の形態を包含する。本用語はまた、IFNGの天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトIFNGの核酸配列は、配列番号11に示される。ヒトIFNGによってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号12に示される。
本明細書で使用される「PRF1」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然PRF1(パーフォリン1;孔形成タンパク質としても知られる)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないPRF1、及び細胞における処理から生じるPRF1の任意の形態を包含する。本用語はまた、PRF1の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトPRF1の核酸配列は、配列番号13に示される。ヒトPRF1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号14に示される。
本明細書で使用される「CXCL9」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CXCL9(ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド9)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないCXCL9、及び細胞における処理から生じるCXCL9の任意の形態を包含する。本用語はまた、CXCL9の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCXCL9の核酸配列は、配列番号15に示される。ヒトCXCL9によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号16に示される。
本明細書で使用される「CXCL10」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CXCL10(ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド10)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないCXCL10、及び細胞における処理から生じるCXCL10の任意の形態を包含する。本用語はまた、CXCL10の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCXCL10の核酸配列は、配列番号17に示される。ヒトCXCL10によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号18に示される。
本明細書で使用される「CXCL11」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CXCL11(ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド11)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないCXCL11、及び細胞における処理から生じるCXCL11の任意の形態を包含する。本用語はまた、CXCL11の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCXCL11の核酸配列は、配列番号19に示される。ヒトCXCL11によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号20に示される。
本明細書で使用される「CXCL13」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CXCL13(ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド11)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないCXCL13、及び細胞における処理から生じるCXCL13の任意の形態を包含する。本用語はまた、CXCL13の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCXCL13の核酸配列は、配列番号21に示される。ヒトCXCL13によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号22に示される。
本明細書で使用される「KLRK1」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然KLRK1(キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーK(カッパ)、メンバー1)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないKLRK1、及び細胞における処理から生じるKLRK1の任意の形態を包含する。本用語はまた、KLRK1の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトKLRK1の核酸配列は、配列番号23に示される。ヒトKLRK1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号24に示される。
本明細書で使用される「SLAMF7」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然SLAMF7(SLAMファミリーメンバー7)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないSLAMF7、及び細胞における処理から生じるSLAMF7の任意の形態を包含する。本用語はまた、SLAMF7の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトSLAMF7の核酸配列は、配列番号25に示される。ヒトSLAMF7によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号26に示される。
本明細書で使用される「CX3CR1」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CX3CR1(CXC3ケモカイン受容体1、当該技術分野ではフラクタルカイン受容体またはGタンパク質結合受容体13(GPR13)としても知られる)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないCX3CR1、及び細胞における処理から生じるCX3CR1の任意の形態を包含する。本用語はまた、CX3CR1の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCX3CR1の核酸配列は、配列番号27に示される。ヒトCX3CR1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号28に示される。
本明細書で使用される「CCL2」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CCL2(ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド2)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないCCL2、及び細胞における処理から生じるCCL2の任意の形態を包含する。本用語はまた、CCL2の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCCL2の核酸配列は、配列番号29に示される。ヒトCCL2によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号30に示される。
本明細書で使用される「CCL5」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CCL5(ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド5)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないCCL5、及び細胞における処理から生じるCCL5の任意の形態を包含する。本用語はまた、CCL5の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCCL5の核酸配列は、配列番号31に示される。ヒトCCL5によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号32に示される。
本明細書で使用される「CCR5」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CCR5(ケモカイン(C−Cモチーフ)受容体5)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないCCR5、及び細胞における処理から生じるCCR5の任意の形態を包含する。本用語はまた、CCR5の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCCR5の核酸配列は、配列番号33に示される。ヒトCCR5によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号34に示される。
本明細書で使用される「CX3CL1」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CX3CL1(ケモカイン(C−X3−Cモチーフ)リガンド1;当該技術分野ではフラクタルカインとしても知られる)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないCX3CL1、及び細胞における処理から生じるCX3CL1の任意の形態を包含する。本用語はまた、CX3CL1の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCX3CL1の核酸配列は、配列番号35に示される。ヒトCX3CL1によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号36に示される。
本明細書で使用される「CCR7」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CCR7(ケモカイン(C−Cモチーフ)受容体7)を指す。本用語は、「全長」の処理されていないCCR7、及び細胞における処理から生じるCCR7の任意の形態を包含する。本用語はまた、CCR7の天然に存在する変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を包含する。例示的なヒトCCR7の核酸配列は、配列番号37に示される。ヒトCCR7によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号38に示される。
本明細書で使用される「MHC−I」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然MHC−I(主要組織適合複合体I)を指す。ヒトMHC−Iは、ヒト白血球抗原I(HLA−I)とも称される。MHC−IまたはHLA−Iの発現レベルは、任意のHLA−I遺伝子もしくは偽遺伝子(例えば、HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−E、HLA−F、HLA−G、HLA−K、またはHLA−L)そのハプロタイプの発現レベルを決定することによって評定されてもよい。発現レベルは、遺伝子または偽遺伝子の全てまたは一部(例えば、MHC−Iアルファ鎖またはHLA−I組織適合抗原アルファ鎖)の検出によって評定することができる。
「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、一般に、同義に使用され、一般に、生体試料中のバイオマーカーの量を指す。「発現」とは、一般に、情報(例えば、遺伝子コード情報及び/またはエピジェネティック情報)が、細胞中に存在しかつそこで機能する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、または更にはポリヌクレオチド及び/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)を指してもよい。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド、またはポリヌクレオチド及び/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)の断片も、それらが選択的スプライシングによって生成された転写物もしくは分解された転写物に由来するか、または例えばタンパク質分解によるポリペプチドの翻訳後プロセシングに由来するかどうかにかかわらず、発現されたものと見なされるべきである。「発現遺伝子」は、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、その後、ポリペプチドに翻訳される遺伝子を含み、RNAに転写されるが、ポリペプチドに翻訳されない遺伝子(例えば、トランスファーRNA及びリボソームRNA)も含む。
「増加した発現」、「増加した発現レベル」、「増加したレベル」、「上昇した発現」、「上昇した発現レベル」、または「上昇したレベル」は、疾患もしくは障害(例えば、がん)に罹患していない個体(複数可)、内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)、または療法(例えば、VEGFアンタゴニストを含む抗がん療法)の実施前に得られた試料におけるバイオマーカーのレベルなどの対照と比べた、個体におけるバイオマーカーの発現の増加またはそのレベルの増加を指す。
「減少した発現」、「減少した発現レベル」、「減少したレベル」、「低下した発現」、「低下した発現レベル」、または「低下したレベル」は、疾患もしくは障害(例えば、がん)に罹患していない個体(複数可)、内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)、または療法(例えば、VEGFアンタゴニストを含む抗がん療法)の実施前に得られた試料におけるバイオマーカーのレベルなどの対照と比べた、個体におけるバイオマーカーの発現の減少またはそのレベルの減少を指す。いくつかの実施形態では、低下した発現は、発現がほとんどまたは全くない。
目的のタンパク質を「発現する」試料または細胞は、断片を含む、タンパク質をコードするmRNAまたはタンパク質が、試料または細胞中に存在することが決定されるものである。
個体への臨床的利益の増加に関連するバイオマーカーの「量」または「レベル」は、生体試料中で検出可能なレベルである。これらは、当業者に既知であり、また本明細書にも開示される方法によって測定され得る。評価されるバイオマーカーの発現レベルまたは量を使用して、治療への応答を判定することができる。
「に基づく」という語句は、本明細書で使用されるとき、1つ以上のバイオマーカーについての情報が、例えば治療決定、添付文書上で提供される情報、またはマーケティング/宣伝指針などを伝えるために使用されることを意味する。
「ハウスキーピングバイオマーカー」という用語は、典型的には全ての細胞型に同様に存在するバイオマーカーまたはバイオマーカーの群(例えば、ポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド)を指す。いくつかの実施形態では、ハウスキーピングバイオマーカーは「ハウスキーピング遺伝子」である。「ハウスキーピング遺伝子」は、本明細書において、その活性が細胞機能の維持に必須であるタンパク質をコードし、典型的には全ての細胞型に同様に存在する遺伝子または遺伝子の群を指す。
本明細書で使用される「増幅」は、一般に、所望の配列の複数のコピーを生成するプロセスを指す。「複数のコピー」とは、少なくとも2つのコピーを意味する。「コピー」は、鋳型配列に対する完全な配列相補性または同一性を必ずしも意味しない。例えば、コピーは、デオキシイノシンなどのヌクレオチド類似体、意図的な配列改変(鋳型にハイブリダイズ可能であるが相補的ではない配列を含むプライマーによって導入される配列改変など)、及び/または増幅中に生じる配列エラーを含み得る。
「多重PCR」という用語は、単一の反応で2つ以上のDNA配列を増幅させる目的で、1つ超のプライマーセットを使用して単一の源(例えば、個体)から得られた核酸上で行われる単一のPCR反応を指す。
本明細書で使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」技法とは、一般に、核酸、RNA、及び/またはDNAの微量の特定の片が、例えば、米国特許第4,683,195号に記載されているように増幅される手順を指す。概して、オリゴヌクレオチドプライマーを設計できるように、目的の領域またはそれを越える領域の末端から得られる配列情報を入手する必要があり、これらのプライマーは、増幅するテンプレートの逆鎖の配列と同一または同様となる。これらの2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅される材料の末端と一致し得る。PCRを用いて、特定のRNA配列、全ゲノムDNA由来の特定のDNA配列及び全細胞RNAから転写したcDNA、バクテリオファージ配列またはプラスミド配列などを増幅できる。概要については、Mullis et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263(1987)、及びErlich,ed.,PCR Technology,(Stockton Press,NY,1989)を参照されたい。本明細書で使用される場合、PCRは、既知の核酸(DNAまたはRNA)をプライマーとして使用することを含む、核酸試験試料を増幅する核酸ポリメラーゼ反応法の一例であると見なされるが、唯一の例ではなく、核酸の特定の片を増幅もしくは生成するために、または特定の核酸に相補的な核酸の特定の片を増幅もしくは生成するために、核酸ポリメラーゼを利用する。
「定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」または「qRT−PCR」は、PCR産物の量がPCR反応の各ステップで測定される、PCRの形態を指す。この技法は、例えば、Cronin et al.,Am.J.Pathol.164(1):35−42(2004)及びMa et al.,Cancer Cell 5:607−616(2004)を含む、様々な刊行物に記載されている。
「マイクロアレイ」という用語は、基質上のハイブリダイズ可能なアレイ要素、好ましくはポリヌクレオチドプローブの規則配置を指す。
「診断」という用語は、分子的または病理学的状態、疾患、または病態(例えば、がん)の特定または分類を指すために本明細書で使用される。例えば、「診断」は、特定のタイプのがんの特定を指してもよい。「診断」は、例えば病理組織的基準によるか、または分子特徴によるがんの特定のサブタイプの分類も指し得る(例えば、バイオマーカーのうちの1つまたはその組み合わせの発現を特徴とするサブタイプ(例えば、特定の遺伝子、または該遺伝子によりコードされるタンパク質))。
「腫瘍浸潤性免疫細胞」は、本明細書で使用される場合、腫瘍またはその試料中に存在する任意の免疫細胞を指す。腫瘍浸潤性免疫細胞には、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周辺免疫細胞、他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。かかる腫瘍浸潤性免疫細胞は、Tリンパ球(CD8+Tリンパ球及び/またはCD4+Tリンパ球など)、Bリンパ球、または顆粒球(例えば、好中球、好酸球、及び好塩基球)、単球、マクロファージ(例えば、CD68+/CD163+マクロファージ)、樹状細胞(例えば、指状嵌入樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む、他の骨髄系細胞であり得る。
「腫瘍細胞」は、本明細書で使用される場合、腫瘍またはその試料中に存在する任意の腫瘍細胞を指す。腫瘍細胞は、当該技術分野で既知であり、かつ/または本明細書に記載される方法を使用して、腫瘍試料中に存在し得る他の細胞、例えば間質細胞及び腫瘍浸潤性免疫細胞と区別され得る。
本明細書で使用される「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照試料」、「対照細胞」、または「対照組織」は、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、標準物、またはレベルを指す。一実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ患者または個体の身体の健康な及び/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、疾患細胞または組織に隣接する健康及び/または非疾患細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)であり得る。別の実施形態では、参照試料は、同じ患者または個体の身体の治療されていない組織及び/または細胞から得られる。更に別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者または個体ではない個体の身体の健康な及び/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。なお別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者または個体ではない個体の身体の治療されていない組織及び/または細胞から得られる。別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、療法(例えば、VEGFアンタゴニストを含む抗がん療法)の実施前に患者から得られる。
「相関する」または「相関すること」は、任意の方法によって、第1の分析またはプロトコルの性能及び/または結果を第2の分析またはプロトコルの性能及び/または結果と比較することを意味する。例えば、第2のプロトコルを行う際に第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用することができ、かつ/または第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用して、第2の分析もしくはプロトコルが行われるべきかを判定してもよい。ポリペプチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリペプチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが行われるべきかを判定してもよい。ポリヌクレオチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリヌクレオチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが行われるべきかを判定してもよい。
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法上の変形)とは、治療されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理過程中に行われ得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、病状の向上または寛解、及び回復または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体(例えば、抗VEGF抗体)は、疾患の発達を遅らせるか、または疾患もしくは障害の進行を減速させるために使用される。
本明細書で使用される場合、「投与すること」は、化合物(例えば、VEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体)または組成物(例えば、薬学的組成物、例えば、VEGFアンタゴニストを含む薬学的組成物)の投薬量を患者に付与する方法を意味する。本明細書に記載の方法で利用される組成物は、例えば、筋肉内に、静脈内に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、髄腔内に、鼻腔内に、腟内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹膜に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼内に、眼窩内に、硝子体内に(例えば、硝子体内注射により)、点眼により、経口的に、局所的に、経皮的に、吸入により、注射により、移植により、注入により、持続注入により、標的細胞を直接的に浸す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームに入れて、または脂質組成物に入れて、投与され得る。本明細書に記載の方法で利用される組成物はまた、全身または局所投与され得る。投与方法は、様々な要因(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて様々であり得る。
「治療有効量」は、哺乳動物において疾患または障害を治療または予防するための治療剤の量を指す。がんの場合、治療有効量の治療剤は、がん細胞の数を低減、原発腫瘍サイズを低減、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害(即ち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(即ち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍成長のある程度の阻害、及び/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。薬物が既存のがん細胞の成長の予防及び/またはそれらの殺滅を行うことができる限り、この薬物は細胞増殖抑制性かつ/または細胞毒性であり得る。がん治療に関して、インビボでの有効性は、例えば生存期間、疾患進行までの期間(TTP)、奏効率(例えば、完全奏効(CR)及び部分奏効(PR))、奏効期間、及び/または生活の質を評定することによって測定され得る。
「同時に」という用語は、投与の時間が少なくとも部分的に重複している、2つ以上の治療剤の投与を指すために本明細書で使用される。したがって、同時投与は、1つ以上の薬剤(複数可)の投与が、1つ以上の他の薬剤(複数可)の投与の中止後に続くときの投薬レジメンを含む。
「低減する」または「阻害する」とは、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。低減または阻害は、治療されている障害の症状、転移の存在もしくはサイズ、または原発腫瘍のサイズに対して言及し得る。
本明細書における治療剤の「固定」または「一定」用量は、ヒト患者に患者の体重(WT)または体表面積(BSA)に関係なく投与される用量を指す。固定または一定用量は、したがって、mg/kg用量またはmg/m2用量としてではなく、治療剤の絶対量として提供される。
本明細書における「負荷」用量は、一般に、患者に投与される治療剤の初期用量を含み、1つ以上のその維持用量(複数可)が続く。一般に、単一負荷用量が投与されるが、複数の負荷用量が本明細書で企図される。通常、投与される負荷用量(複数可)の量は、投与される維持用量(複数可)の量を超過し、かつ/または負荷用量(複数可)は、治療剤の所望の定常状態における濃度を、維持用量(複数可)を用いて達成することができるものよりも早く達成するように、維持用量(複数可)よりも頻繁に投与される。
本明細書における「維持」用量または「延長」用量は、治療期間にわたって患者に投与される治療剤の1つ以上の用量を指す。通常、維持用量は、ほぼ毎週、約2週毎、約3週毎、または約4週毎など、間をおいた治療間隔で投与される。
本発明との関連における「に応答性」という語句は、がん(例えば、腎臓癌、例えば、RCC、例えば、転移性RCC)に罹患している、それが疑われる、またはその傾向がある患者が、療法、例えば、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)への応答を示すことを示す。当業者であれば、容易に、本発明の方法に従ってVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)によって治療される人が応答を示すかどうかを決定する立場になれるであろう。例えば、応答は、腫瘍成長の減退及び/もしくは停止、腫瘍のサイズの低減、ならびに/または1つ以上のがんの症状の緩和など、がん由来の苦痛の減少を反映し得る。好ましくは、応答は、がんの転移性変換のインデックスまたはがんのインデックスの減少または減退、例えば、転移の形成の防止または転移の数もしくはサイズの低減を反映し得る。
「抗がん療法」という用語は、がんの治療において有用な療法を指す。抗がん療法剤の例には、細胞毒性剤、化学療法剤、成長阻害剤、放射線療法で使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及びがんを治療するための他の薬剤、例えば次の標的:PDGFR−β、BlγS、APRIL、BCMA受容体(複数可)、TRAIL/Apo2、他の生理活性及び有機化学薬剤などのうちの1つ以上に結合する抗CD20抗体、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、GLEEVEC(商標)(イマチニブメシル酸塩))、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、アンタゴニスト(例えば、中和抗体)が含まれるが、これらに限定される。これらの組み合わせも本発明に含まれる。
「抗血管新生剤」または「血管新生阻害剤」は、血管新生、脈管形成、または望ましくない血管透過性を直接的または間接的に阻害する、低分子量物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組換えタンパク質、抗体、またはその抱合体もしくは融合タンパク質を指す。抗血管新生剤には、血管新生因子またはその受容体の血管新生活性を妨害する薬剤が含まれることを理解されたい。例えば、抗血管新生剤は、上で定義した血管新生剤に対する抗体または他のアンタゴニスト、例えば、VEGF−AまたはVEGF−A受容体(例えば、KDR受容体またはFlt−1受容体)に対する抗体、GLEEVEC(商標)(メシル酸イマチニブ)などの抗PDGFR阻害剤である。抗血管新生剤には、天然の血管新生阻害剤、例えば、アンギオスタチン、エンドスタチンなども含まれる。例えば、Klagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217−39(1991);Streit and Detmar,Oncogene,22:3172−3179(2003)(例えば、悪性黒色腫における抗血管新生療法を列挙している表3);Ferrara&Alitalo,Nature Medicine 5(12):1359−1364(1999);Tonini et al.,Oncogene,22:6549−6556(2003)、及びSato Int.J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)を参照されたい。
本明細書で使用される「細胞毒性剤」という用語は、細胞の機能を阻害もしくは防止する物質、及び/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。本用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、例えば、メトトレキサート、アドリアミシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、ミトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば、核酸分解酵素、抗生物質、及び細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素的に活性な毒素などの毒素(その断片及び/または変異型を含む)、ならびに下に開示される様々な抗腫瘍剤または抗がん剤を含むことを意図する。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化学化合物を含む。化学療法剤の例には、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、没食子酸エピガロカテキン、サリノスポラミドA、カルフィルゾミブ、17−AAG(ゲルダナマイシン)、ラディシコール、乳酸脱水素酵素A(LDH−A)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スニチブ(sunitib)(SUTENT(登録商標)、Pfizer/Sugen)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、フィナスネート(finasunate)(VATALANIB(登録商標)、Novartis)、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、5−FU(5−フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Pfizer)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファニブ(SCH66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボクオン、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロメラミンを含む、エチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(トポテカン及びイリノテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む)、クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);副腎皮質ステロイド(プレドニゾン及びプレドニゾロンを含む);酢酸シプロテロン;フィナステリド及びデュタステリドを含む5α−還元酵素;ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタットドラスタチン;アルデスロイキン、タルクデュオカルマイシン(合成類似体のKW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン;クロラムブシル、クロマファジン(chlomaphazine)クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン(ranimnustine)などのニトロソウレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンω1I(AngewChem.Intl.Ed.Engl.33:183−186,1994);ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発色団)などの抗生物質、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン、メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU)などの抗代謝物;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルホミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン、マイタンシン及びアンサミトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンノール(mopidamnol)、ニトラエリン、ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.)、ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(パクリタキセル;Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE(登録商標)(発色団不含)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Ill.)、及びTAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル、ドキセタキセル(doxetaxel);Sanofi−Aventis);クロランブシル(chloranmbucil);GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン);6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体が挙げられる。
化学療法剤には、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標);タモキシフェンクエン酸塩を含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、ヨードキシフェン(iodoxyfene)、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、及びFARESTON(登録商標)(トレミフェンクエン酸塩)を含む、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)などの腫瘍へのホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤;副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、ホルメスタニ(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)、及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca);抗アンドロゲン薬、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;ブセレリン、トリプテレリン(tripterelin)、酢酸メドロキシプロゲステロン、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン、all−transレチノイン酸、フェンレチニド、及びトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);タンパク質キナーゼ阻害剤;脂質キナーゼ阻害剤;アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えば、PKC−アルファ、Ralf、及びH−Rasなどの、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの;VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤などのリボザイム;遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)、及びVAXID(登録商標)などのワクチン;PROLEUKIN(登録商標)、rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)などのトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体も含まれる。
化学療法剤には、抗体、例えば、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、及び抗体−薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も含まれる。本発明の化合物と組み合わせて薬剤としての治療可能性を有する追加のヒト化モノクローナル抗体には、アポリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ(cedelizumab)、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ(erlizumab)、フェルビズマブ(felvizumab)、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ(motovizumab)、ナタリズマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ(pascolizumab)、ペクフシツズマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、パキセリズマブ、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ、レスリビズマブ(reslivizumab)、レスリズマブ、レシビズマブ(resyvizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ、トラリズマブ(toralizumab)、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、及びインターロイキン−12p40タンパク質を認識するように遺伝子修飾された排他的にヒト配列の組換え完全長IgG1λ抗体である、抗インターロイキン−12(ABT−874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が含まれる。
化学療法剤には、EGFRに結合するか、または他の様式でそれと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を阻止または低減する化合物を指す「EGFR阻害剤」も含まれ、これは代替的に「EGFRアンタゴニスト」とも称される。かかる薬剤の例には、EGFRに結合する抗体及び小分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例には、MAb579(ATCC CRL HB8506)、MAb455(ATCC CRL HB8507)、MAb225(ATCC CRL8508)、MAb528(ATCC CRL8509)(米国特許第4,943,533号(Mendelsohn et al.)を参照されたい)、ならびにそれらの変異型、例えば、キメラ化225(C225またはセツキシマブ、ERBUTIX(登録商標))及び再成形ヒト225(H225)(WO96/40210(Imclone Systems Inc.)を参照されたい);IMC−11F8、完全ヒトEGFR標的抗体(Imclone);II型変異体EGFRに結合する抗体(米国特許第5,212,290号);米国特許第5,891,996号に記載されるEGFRに結合するヒト化抗体及びキメラ抗体;ならびにEGFRに結合するヒト抗体、例えば、ABX−EGFまたはパニツムマブ(WO98/50433(Abgenix/Amgen)を参照されたい);EMD55900(Stragliotto et al.Eur.J.Cancer 32A:636−640(1996));EGFR結合についてEGF及びTGF−アルファの両方と競合するEGFRに向けられたヒト化EGFR抗体EMD7200(マツズマブ)(EMD/Merck);ヒトEGFR抗体HuMax−EGFR(GenMab);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3、及びE7.6.3として知られ、US6,235,883に記載される完全ヒト抗体;MDX−447(Medarex Inc);ならびにmAb806またはヒト化mAb806(Johns et al.,J.Biol.Chem.279(29):30375−30384(2004))が挙げられる。抗EGFR抗体は、細胞毒性剤に抱合され、それにより免疫抱合体を生成し得る(例えば、EP659,439A2,Merck Patent GmbHを参照されたい)。EGFRアンタゴニストには、米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、及び同第5,747,498号、ならびに以下のPCT公開第WO98/14451号、WO98/50038、WO99/09016、及びWO99/24037に記載されている化合物などの小分子が挙げられる。特定の小分子EGFRアンタゴニストには、OSI−774(CP−358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)Genentech/OSI Pharmaceuticals);PD183805(CI1033、2−プロペンアミド、N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−(4−モルホリニル)プロポキシ]−6−キナゾリニル]−、ジヒドロクロリド、Pfizer Inc.);ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4−(3’−クロロ−4’−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca);ZM105180((6−アミノ−4−(3−メチルフェニル−アミノ)−キナゾリン、Zeneca);BIBX−1382(N8−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−N2−(1−メチル−ピペリジン−4−イル)−ピリミド[5,4−d]ピリミジン−2,8−ジアミン、Boehringer Ingelheim);PKI−166((R)−4−[4−[(1−フェニルエチル)アミノ]−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−フェノール);(R)−6−(4−ヒドロキシフェニル)−4−[(1−フェニルエチル)アミノ]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン);CL−387785(N−[4−[(3−ブロモフェニル)アミノ]−6−キナゾリニル]−2−ブチンアミド);EKB−569(N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キナゾリニル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブチンアミド)(Wyeth);AG1478(Pfizer);AG1571(SU5271、Pfizer);二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016またはN−[3−クロロ−4−[(3−フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]−6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]−2−フラニル]−4−キナゾリンアミン)が挙げられる。
化学療法剤には、「チロシンキナーゼ阻害剤」、例えば、前段落に記載のEGFR標的薬物;小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、Takedaから入手可能なTAK165;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤であるCP−724,714(Pfizer及びOSI);二重HER阻害剤、例えば、EGFRに優先的に結合するが、HER2及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB−569(Wyethから入手可能);ラパチニブ(GSK572016、Glaxo−SmithKlineから入手可能);経口HER2及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤;PKI−166(Novartisから入手可能);pan−HER阻害剤、例えば、カネルチニブ(CI−1033、Pharmacia);Raf−1阻害剤、例えば、Raf−1シグナル伝達を阻害するISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス薬剤ISIS−5132;非HER標的TK阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能);多標的チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能);VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能);MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI−1040(Pharmaciaから入手可能);キナゾリン、例えば、PD153035,4−(3−クロロアニリノ)キナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えば、CGP59326、CGP60261、及びCGP62706;ピラゾロピリミジン、4−(フェニルアミノ)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5−ビス(4−フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン;PD−0183805(Warner−Lamber);アンチセンス分子(例えば、HERコード核酸に結合するもの)、キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(tryphostin)(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK−787(Novartis/Schering AG);pan−HER阻害剤、例えば、CI−1033(Pfizer);Affinitac(ISIS3521、Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標));PKI166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI−1033(Pfizer);EKB−569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK−787(Novartis/Schering AG);INC−1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標);または以下の特許公開:米国特許第5,804,396号;WO1999/09016;WO1998/43960;WO1997/38983;WO1999/06378;WO1999/06396;WO1996/30347;WO1996/33978;WO1996/3397、及びWO1996/33980のいずれかに記載されているものが挙げられる。
化学療法剤には、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバクジマブ(bevacuzimab)、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エロチニブ(elotinib)、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、レナリドミド、レバミゾール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM−26、6−TG、トレミフェン、トレチノイン、全トランス型レチノイン酸(ATRA)、バルルビシン、ゾレドロネート、及びゾレドロン酸、ならびにこれらの薬学的に許容される塩も挙げられる。
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較して腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、酵素によってより活性な親形態へと活性化または変換され得る、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指す。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375−382,615th Meeting Belfast(1986)and Stella et al.,“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,”Directed Drug Delivery,Borchardt et al.,(ed.),pp.247−267,Humana Press(1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグには、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、Dアミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、任意選択で置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは任意選択で置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシン及び他の5−フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるがこれらに限定されず、これらは、より活性な細胞毒性遊離薬物へと変換され得る。本発明に使用するためのプロドラッグ形態に誘導体化することができる細胞毒性薬の例としては、上記の化学療法剤が挙げられるがこれらに限定されない。
「成長阻害剤」は、本明細書で使用されるとき、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞の成長及び/または増殖を阻害する化合物または組成物を指す。したがって、成長阻害剤は、S相における細胞の割合を著しく低減するものであってよい。成長阻害剤の例には、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。従来のM相遮断剤には、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばアントラサイクリン抗生物質ドキソルビシン((8S−シス)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキサピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン)、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。G1で停止させるこれらの薬剤はまた、S期での停止、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、及びara−CなどのDNAアルキル化剤にも及ぶ。さらなる情報は、Murakami et al.による“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”と題される“The Molecular Basis of Cancer,”Mendelsohn and Israel,eds.,Chapter1(WB Saunders:Philadelphia,1995)、特に、13ページで見い出すことができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、いずれもイチイ由来の抗がん薬である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone−Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体由来の微小管の構築を促進し、脱重合を阻止することによって微小管を安定させ、細胞内の有糸分裂の阻害をもたらす。
「放射線療法」は、正常に機能するか、または細胞を完全に破壊するその能力を制限するように細胞に十分な損傷を誘導するための指向性ガンマ線またはベータ線の使用を意味する。線量及び治療期間を決定するための当該技術分野で既知の方法が多く存在することが理解される。典型的な治療は、1回投与として与えられ、典型的な線量は、1日当たり10〜200単位(グレイ)の範囲である。
「薬学的製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される患者にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。
「薬学的に許容される担体」は、患者にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
「添付文書」という用語は、かかる治療薬の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症、及び/またはその使用に関する警告についての情報を含有する、治療剤製品のパッケージに通例含まれる指示書を指すように使用される。
「滅菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まない。
「製品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患もしくは障害(例えば、がん)の治療のための医薬品、または本明細書に記載のバイオマーカーを特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製造物(例えば、パッケージもしくは容器)またはキットである。ある特定の実施形態では、製造物またはキットは、本明細書に記載の方法を実行するためのユニットとして、推奨、流通、または販売される。
「小分子」という用語は、約2000ダルトン以下、好ましくは約500ダルトン以下の分子量を有する任意の分子を指す。
「標識」という単語は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドプローブなどの試薬または抗体に直接的または間接的に抱合または融合され、それが抱合または融合される試薬の検出を容易にする化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能(例えば、放射性同位標識または蛍光標識)であり得るか、または酵素標識の場合、検出可能である基質化合物もしくは組成物の化学改変を触媒し得る。この用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合すること(即ち、物理的に連結すること)によるプローブまたは抗体の直接的標識化、ならびに直接的に標識化される別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識化を包含することを意図する。間接的標識化の例には、蛍光標識化された二次抗体を使用した一次抗体の検出、及び蛍光標識化されたストレプトアビジンを用いて検出され得るようなビオチンを有するDNAプローブの末端標識化が含まれる。
「抗体」という用語は、本明細書で最も広義に使用され、それらが所望の生物活性を呈する限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を具体的に網羅する。
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から特定及び分離され、かつ/または回収された抗体である。その自然環境の汚染成分は、抗体の研究的、診断的、及び/または治療的使用を妨害するであろう物質であり、それらには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、抗体の95重量%超、及びいくつかの実施形態では、99重量%超になるまで、(2)例えば、スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーまたはシルバー染色を使用して、還元または非還元条件下でSDS−PAGEによって均質性が得られるまで、精製される。単離抗体には、組換え細胞内でインサイツの抗体が含まれるが、これは、抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在していないためである。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
「遮断」抗体または抗体「アンタゴニスト」は、それが結合する抗原の生物活性を阻害または低減する抗体である。例えば、VEGF特異的アンタゴニスト抗体は、VEGFに結合し、VEGFが血管内皮細胞増殖を誘発する能力を阻害する。好ましい遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性を完全に阻害する。
別途指示されない限り、「多価抗体」という表現は、3つ以上の抗原結合部位を含む抗体を表すために本明細書全体で使用される。多価抗体は、好ましくは、3つ以上の抗原結合部位を有するように操作され、一般には天然配列のIgMまたはIgA抗体ではない。
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの1つに割り当てられ得る。
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含む可変ドメインである免疫グロブリンの他方の部分と比較してより保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、及びCH3ドメイン(集合的に、CH)、ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含有する。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖可変ドメインは「VH」と称され得る。軽鎖可変ドメインは「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含む。
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントが抗体の間で配列において大きく異なることを指す。可変または「V」ドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの広がりにわたって均等には分布していない。代わりに、V領域は、各々9〜12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極度の可変性のより短い領域によって分離される15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変である範囲からなる。「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、例えば、概ねVLにおける残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、及び89〜97(L3)あたり、ならびに概ねVHにおける残基26〜35(H1)、49〜65(H2)、及び95〜102(H3)あたり(一実施形態では、H1は概ね残基31〜35あたり)からのアミノ酸残基(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))、ならびに/または「超可変ループ」からの残基(例えば、VLにおける残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、及び91−96(L3)、ならびにVHにおいて26〜32(H1)、53〜55(H2)、及び96〜101(H3)(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))を含む。天然重鎖及び軽鎖可変ドメインは各々、ベータシート構造を接続し、かつある場合には、その一部を形成するループを形成する、3つの超可変領域によって接続されたベータシート立体配置を主に採用する4つのFRを含む。各鎖内の超可変領域は、FRによって近接近し一緒に保持されており、他方の鎖の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照されたい)。したがって、HVR及びFR配列は、一般に、VH(またはVL)において次の配列中に出現する:FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への参加などの様々なエフェクター機能を呈する。
本明細書の目的での「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、あるいはアミノ酸配列変化を含有してもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列において同一である。
本明細書で使用される場合、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。概して、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVHにあり(H1、H2、H3)、3つがVLにある(L1、L2、L3)。天然抗体において、H3及びL3は、これらの6つのHVRのうちで最も高い多様性を呈し、特にH3が、抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al.,Immunity13:37−45(2000);Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology248:1−25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際には、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers−Casterman et al.,Nature363:446−448(1993);Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733−736(1996)を参照されたい。
ある数のHVR描写が本明細書で使用されており、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。代わりに、Chothiaは、構造的ループの位置に言及する(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の折衷物を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRのうちの各々に由来する残基が以下に記載される。
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24−36または24−34(L1)、46−56または50−56(L2)、及び89−97または89−96(L3)、ならびにVHにおいて、26−35(H1)、50−65または49−65(H2)、及び93−102、94−102、または95−102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat et al.(上記参照)に従って番号付けされる。
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列のセレクションにおいて最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列のセレクションは、可変ドメイン配列の下位群に由来する。一般に、この配列の下位群は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication91−3242,Bethesda MD(1991),vols.1−3にある下位群である。一実施形態では、VLについては、下位群は、Kabat et al.,(上記参照)における下位群カッパIである。一実施形態では、VHについては、下位群は、Kabat et al.,(上記参照)における下位群IIIである。
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、及びそれらの変形は、Kabat et al.(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用すると、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入断片(Kabatによる残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、「標準の」Kabatにより番号付けられた配列との抗体の配列の相同性領域でのアライメントによって所与の抗体について決定され得る。
Kabat番号付けシステムは、一般に、可変ドメイン内の残基(およそ軽鎖残基1〜107及び重鎖残基1〜113)に言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EU番号付けシステム」または「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基に言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.,(上記参照)で報告されているEU指標)。「KabatにあるようなEU指標」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書で別途指示されない限り、抗体の可変ドメイン中の残基番号への言及は、Kabat番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。本明細書で別途指示されない限り、抗体の定常ドメイン中の残基番号への言及は、EU番号付けシステム(例えば、米国仮出願第60/640,323号、EU番号付けに関する図面を参照されたい)による残基番号付けを意味する。
本明細書で別途示されない限り、可変ドメイン中のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.,(上記参照)に従って癌番号付けされる。
「全長抗体」、「無傷抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に定義される抗体断片ではなく、その実質的に無傷な形態にある抗体を指すように、本明細書において同義に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
抗体のパパイン消化は、各々、単一の抗原結合部位を持つ、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び容易に結晶化する能力を反映する名称を持つ、残った「Fc」断片を産生する。ペプシン処理は、F(ab’)2断片を生成し、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる。
本明細書の「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。本用語は、天然配列Fc領域及び変異型Fc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在することもあれば、しないこともある。本明細書で別途指定されない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載されている、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
「エフェクター機能」は、抗体アイソタイプにより異なる抗体のFc領域に帰せられる生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞毒性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化が挙げられる。
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合している1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似している「二量体」構造で会合し得るように、柔軟性ペプチドリンカーによって共有結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性ではあるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえも、抗原を認識してそれに結合する能力を有する。
Fab断片は、重鎖及び軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端への数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)2抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的結合もまた知られている。
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、それにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer−Verlag,New York,1994),pp.269−315を参照されたい。
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、VH−VLユニットがポリエピトープ特異性を有する(即ち、1つの生体分子上で2つの異なるエピトープに、または異なる生体分子上で各エピトープに結合することができる)、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体を具体的に網羅する。かかる多重特異性抗体には、全長抗体、2つ以上のVL及びVHドメインを有する抗体、抗体断片、例えば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、及びトリアボディ、共有結合または非共有結合した抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。「ポリエピトープ特異性」は、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合することができる能力を指す。「二特異性(dual specificity)」または「二重特異性(bispecificity)」は、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つの異なるエピトープに特異的に結合することができる能力を指す。しかしながら、二重特異性抗体とは対照的に、二特異性抗体は、アミノ酸配列が同一である2つの抗原結合アームを有し、各Fabアームにより2つの抗原を認識することができる。二特異性により、抗体は、高い親和性で単一のFabまたはIgG分子として2つの異なる抗原と相互作用することができるようになる。一実施形態に従うと、IgG1中の多重特異性抗体は、5μM〜0.001pM、3μM〜0.001pM、1μM〜0.001pM、0.5μM〜0.001pM、または0.1μM〜0.001pMの親和性で各エピトープと結合を形成する。「単一特異性」は、1つのエピトープのみに結合することができる能力を指す。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)(VH−VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を生成することができる。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。ダイアボディについては、例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444−6448(1993)においてより十分に記載されている。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)に記載されている。
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMという5つの主要な抗体クラスが存在し、これらのうちのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分けられ得る。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られた抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、自然発生変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。ある特定の実施形態では、かかるモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、選択過程は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、インビボでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するように更に改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。異なる決定基(エピトープ)に向けた異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらには他の免疫グロブリンが典型的に夾雑していないという点で有利である。
「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495−97(1975)、Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253−260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T cell Hybridomas563−681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628,1991;Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597,1992;Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310,2004;Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093,2004;Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472,2004;及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132,2004を参照されたい);及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全てを有するヒトまたはヒト様抗体を動物で産生するための技術(例えば、WO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741;Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551,1993;Jakobovits et al.,Nature 362:255−258,1993;Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33,1993;米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;及び同第5,661,016号;Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859,1994;Morrison,Nature 368:812−813,1994;Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845−851,1996;Neuberger,Nature Biotechnol.14:826,1996;ならびにLonberg et al.,Intern.Rev.Immunol.13:65−93,1995)を含む様々な技法によって作製され得る。
本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、所望の生物活性を呈する限り、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来する抗体、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である「キメラ」抗体、ならびにかかる抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体には、PRIMATIZED(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的の抗原で免疫化することによって産生された抗体由来である。
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
非ヒト(例えば、齧歯動物)抗体の「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体に由来する配列を最小限含有するキメラ抗体である。大部分は、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の抗体特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって代置される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって代置される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能を更に改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、典型的には2つの超可変ドメインの実質的に全てを含むことになる。ヒト化抗体は、任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含むことになる。更なる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522−525,1986;Riechmann et al.,Nature 332:323−329,1988;及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596,1992を参照されたい。
開始または参照ポリペプチド(例えば、参照抗体またはその可変ドメイン(複数可)/HVR(複数可))の「変異型」または「変異体」は、(1)開始または参照ポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有し、(2)天然または人工(人為的)突然変異誘発のいずれかを介して開始または参照ポリペプチドから誘導されたポリペプチドである。かかる変異型には、例えば、本明細書では「アミノ酸残基改変」と称される、目的のポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。このため、変異型HVRは、開始または参照ポリペプチド配列(ソース抗体または抗原結合断片のものなど)に関する変異型配列を含むHVRを指す。アミノ酸残基改変は、本文脈では、開始または参照ポリペプチド配列(参照抗体またはその抗原結合断片のものなど)における対応する位置にあるアミノ酸とは異なるアミノ酸を指す。最終変異型または突然変異構築物に到達するように、欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせることができるが、但し、その最終構築物が、所望の機能的特徴を保有することを条件とする。アミノ酸変化、例えば、グリコシル化部位の数または位置の変化も、ポリペプチドの翻訳後プロセスを改変し得る。
「野生型(WT)」もしくは「参照」配列または「野生型」もしくは「参照」タンパク質/ポリペプチドの配列、例えば、参照抗体のHVRまたは可変ドメインは、参照配列であってもよく、この参照配列から、突然変異の導入を介して変異型ポリペプチドが誘導される。一般に、所与の「野生型」配列は、自然において最も一般的な配列である。同様に、「野生型」遺伝子配列は、自然において最も一般的に見られる遺伝子についての配列である。突然変異は、天然のプロセスを介してまたは人為的手段を介して、「野生型」遺伝子(故に、それがコードするタンパク質)中に導入され得る。かかるプロセスの産物は、元の「野生型」タンパク質または遺伝子の「変異型」または「突然変異」形態である。
「参照抗体」は、本明細書で使用される場合、抗原結合配列が鋳型配列として働き、その際に本明細書に記載の基準に従う多様化が行われる、抗体またはその断片を指す。抗原結合配列は、概して、好ましくはフレームワーク領域を含む、抗体可変領域、好ましくは少なくとも1つのHVRを含む。
本明細書で使用される場合、「ライブラリ」は、複数の抗体もしくは抗体断片配列(例えば、抗VEGF抗体)、またはこれらの配列をコードする核酸を指し、これらの配列は、本発明の方法に従ってこれらの配列に導入される変異型アミノ酸の組み合わせにおいて異なる。
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一結合部位の間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途指示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)で表され得る。親和性は、本明細書に記載される方法を含む当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態は本明細書に記載される。
抗体の標的分子への結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープへの「特異的結合」またはそれ「に特異的に結合する」またはそれ「に特異的」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、分子の結合を対照分子の結合と比較して決定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似した対照分子、例えば、過剰な標識されていない標的との競合によって決定することができる。この場合、標識された標的のプローブへの結合が過剰な標識されていない標的によって阻害されると、特異的結合が示される。特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープへの「特異的結合」またはそれ「に特異的に結合する」またはそれ「に特異的」であるという用語は、本明細書で使用される場合、例えば、標的へのKdが、10−4M以下、または10−5M以下、または10−6M以下、または10−7M以下、または10−8M以下、または10−9M以下、または10−10M以下、または10−11M以下、または10−12M以下、あるいはKdが、10−4M〜10−6M、または10−6M〜10−10M、または10−7M〜10−9Mの範囲である分子によって呈され得る。当業者によって理解されるであろう通り、親和性とKd値とは反比例する。抗原に対する高い親和性は、低いKd値によって測定される。一実施形態では、「特異的結合」という用語は、分子が、いずれの他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する、結合を指す。
「親和性成熟」抗体とは、改変を有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の改変を有し、かかる改変により抗体の抗原に対する親和性が改善される抗体を指す。
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいて、参照抗体のその抗原への結合を50%以上遮断する抗体、及び逆に、競合アッセイにおいて、抗体のその抗原への結合を50%以上遮断する参照抗体を指す。
「免疫抱合体」は、細胞毒性剤を含むがこれに限定されない1つ以上の異種分子(複数可)に抱合される抗体である。
本明細書で使用される場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた、抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外である所望の結合特異性を有する(即ち、「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は、典型的に、少なくとも受容体またはリガンドの結合部位を含む連続したアミノ酸配列である。イムノアドヘシン中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG1、IgG2(IgG2A及びIgG2Bを含む)、IgG3、またはIgG4サブタイプ、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンから得られてもよい。Ig融合物は、好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の場所に、本明細書に記載されるポリペプチドまたは抗体のドメインの置換を含む。特に好ましい実施形態では、免疫グロブリン融合物は、IgG1分子のヒンジ、CH2、及びCH3、またはヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合物の作製に関しては、米国特許第5,428,130号も参照されたい。
「融合タンパク質」及び「融合ポリペプチド」は、一緒に共有結合した2つの部分を有するポリペプチドを指し、ここで、これらの部分のそれぞれは、異なる特性を有するポリペプチドである。この特性は、インビトロまたはインビボでの活性などの生物学的特性であり得る。この特性はまた、標的分子への結合、反応の触媒作用などの単純な化学的または物理的特性であり得る。これらの2つの部分は、単一のペプチド結合によって直接的に、またはペプチドリンカーを介して連結され得るが、互いのリーディングフレーム内にある。
本明細書で特定されるポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントが得られるように、配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、いずれの保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、候補配列内のアミノ酸残基が、比較されるポリペプチド内のアミノ酸残基と同一である割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための整列は、当業者が備えている技能の範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含め、アライメントを測定するための適切なパラメータを判定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用して生成される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、使用者用書類と共に、米国著作権局、Washington D.C.、20559に提出され、ここで、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に利用可能である。ALIGN−2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dで使用する場合はコンパイルすべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムにより設定されており、変動しない。
ALIGN−2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
式中、Xは、配列整列プログラムALIGN−2によってそのプログラムのAとBとの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解される。別途具体的に示されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN−2コンピュータプログラムを使用して得られる。
本明細書で同義に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼにより、または合成反応によりポリマーに組み込むことができる任意の基質であり得る。したがって、例えば、本明細書で定義されるポリヌクレオチドには、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域を含むDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、ならびに一本鎖及び二本鎖領域を含むRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖であり得るか、または一本鎖及び二本鎖領域を含み得るDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、RNAもしくはDNA、またはRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。かかる領域内の鎖は、同じ分子由来であり得るか、または異なる分子由来であり得る。これらの領域は、これらの分子のうちの1つ以上の全てを含み得るが、より典型的には、これらの分子のうちのいくつかの領域のみを含む。三重らせん領域の分子のうちの1つは、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的には、cDNAを含む。
ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの組み立て前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により中断され得る。ポリヌクレオチドは、例えば標識との抱合により、合成後に更に修飾され得る。他のタイプの修飾には、例えば、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上を類似体と置換する「キャップ」、ヌクレオチド間修飾、例えば、非電荷性結合(例えば、メチルホスホン酸塩、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)によるもの、及び電荷性結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)によるもの、懸垂部分、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシンなど)などを含むもの、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラーレンなど)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射活性金属、ホウ素、酸化金属など)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾結合(例えば、αアノマー核酸など)によるもの、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の未修飾形態が挙げられる。更に、糖内に通常存在するヒドロキシル基のうちのいずれかは、例えば、ホスホン酸基、リン酸基により置換されるか、標準保護基により保護されるか、もしくは活性化されて追加のヌクレオチドへの追加の結合を調製してもよく、または固体もしくは半固体支持体に抱合されてもよい。5′及び3′末端OHをリン酸化するか、またはアミンもしくは1〜20個の炭素原子の有機キャッピング基部分と置換することができる。他のヒドロキシルもまた、標準保護基に誘導体化されてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−または2’−アジド−リボース、炭素環糖の類似体、α−アノマー糖、アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、アクリル酸類似体、及びメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシド類似体を含む、当該技術分野において一般的に既知であるリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形態も含むことができる。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替連結基に置き換えられてもよい。これらの代替連結基には、リン酸塩がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、“(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)に置き換えられる実施形態が含まれるが、これらに限定されず、式中、各RまたはR’は、独立してHであるか、または置換もしくは非置換アルキル(1〜20C)(任意にエーテル(−O−)結合を含む)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジルである。ポリヌクレオチド内の全ての結合が同一である必要はない。前述の説明は、RNA及びDNAを含む、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに適用する。
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は、一般に、約250ヌクレオチド長未満であるが、必ずしもそうではない短い一本鎖ポリヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは合成であってもよい。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、相互排他的ではない。ポリヌクレオチドに関する上記の説明は、等しく完全にオリゴヌクレオチドに適用可能である。
「プライマー」という用語は、核酸にハイブリダイズすることができ、一般に遊離3’−OH基を提供することにより相補的核酸の重合を可能にする、一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、同義に使用され、外因性核酸が中に導入されている細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び継代の数に関わらずそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一ではない場合があるが、突然変異を含み得る。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが結合している別の核酸を運搬することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及びそれが導入される宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に結合している核酸の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
「単離された」核酸分子は、少なくとも1つの混入核酸分子から識別及び分離される核酸分子であり、この核酸分子は、通常、核酸の天然源と関連する。単離核酸分子は、それが天然にみられる形態または状況にあるもの以外のものである。単離された核酸分子は、したがって、天然細胞中に存在する核酸分子とは区別される。しかしながら、単離された核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なる染色体位置にある場合、通常は抗体を発現する細胞中に含有される核酸分子を含む。
「突然変異」は、野生型配列などの参照ヌクレオチド配列に対する、ヌクレオチド(複数可)の欠失、挿入、または置換である。
本明細書「コドンセット」は、所望の変異型アミノ酸をコードするために使用される異なるヌクレオチド三重項配列のセットを指す。オリゴヌクレオチドのセットは、例えば、コドンセットによって提供されるヌクレオチド三重項の全ての可能な組み合わせを表し、かつアミノ酸の所望の群をコードすることになる配列を含む、固相合成によって合成することができる。コドン表記の標準形態は、当業者に既知であり、本明細書に記載される、IUBコードのものである。コドンセットは、典型的には、斜体の3つの大文字、例えば、NNK、NNS、XYZ、DVKなどによって表される。ある特定の位置で選択されたヌクレオチドの「縮退」を有するオリゴヌクレオチドの合成、例えば、TRIMアプローチは、当該技術分野で周知である(Knappek et al.,J.Mol.Biol.296:57−86,1999);Garrard et al.,Gene128:103,1993)。ある特定のコドンセットを有するオリゴヌクレオチドのかかるセットは、市販の核酸合成機(例えば、Applied Biosystems,Foster City,CAから入手可能)を使用して合成するか、または商業的に得ることができる(例えば、Life Technologies,Rockville,MDから)。したがって、特定のコドンセットを有する合成されたオリゴヌクレオチドのセットは、典型的には、配列が異なる複数のオリゴヌクレオチドを含むことになり、この差は、全体の配列内でコドンセットによって確立される。オリゴヌクレオチドは、本明細書に従って使用される場合、可変ドメイン核酸鋳型へのハイブリダイゼーションを可能にし、かつ例えばクローニングプロセスに有用な制限酵素部位を含み得るがその必要はない配列を有する。
「対照配列」という表現は、特定の宿主生物における作動可能に連結したコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に好適な対照配列には、プロモーター、任意選択でオペレーター配列、及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれるときに「作動可能に連結」される。例えば、プレ配列または分泌リーダーのためのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合に、ポリペプチドのためのDNAに作動可能に連結され、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響する場合に、コード配列に作動可能に連結され、あるいはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように位置付けられる場合に、コード配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結される」は、連結されるDNA配列が連続的であり、分泌リーダーの場合には、連続的であり、かつ読み相(reading phase)にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは連続的である必要はない。連結は、簡便な制限部位でのライゲーションによって達成される。かかる部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが従来の慣例に従って使用される。
「血管内皮成長因子」または「VEGF」という用語は、Swiss Prot受託番号P15692、Gene ID(NCBI):7422によって例示されるような、血管内皮成長因子タンパク質Aを指す。「VEGF」という用語は、Swiss Prot受託番号P15692、Gene ID(NCBI):7422のアミノ酸配列を有するタンパク質、ならびにその相同体及びアイソフォームを包含する。「VEGF」という用語はまた、既知のアイソフォーム、例えば、VEGFのスプライスアイソフォーム、例えば、VEGF111、VEGF121、VEGF145、VEGF165、VEGF189、及びVEGF206を、VEGF165のプラスミン切断によって生成される110アミノ酸ヒト血管内皮細胞成長因子を含む、その天然のアレル形態及び処理形態と併せて包含し、これについては、Ferrara Mol.Biol.Cell.21:687,2010;Leung et al.,Science,246:1306.1989;及びHouck et al.,Mol.Endocrin.,5:1806,1991で説明されている。「VEGF」という用語は、マウス、ラット、または霊長類などの非ヒト種由来のVEGFも指す。場合により、特定の種由来のVEGFは、ヒトVEGFについてのhVEGF、マウスVEGFについてのmVEGFなどといった用語で示される。「VEGF」という用語はまた、165アミノ酸ヒト血管内皮細胞成長因子のアミノ酸8〜109または1〜109を含むポリペプチドの切断型を指すために使用される。VEGFのいずれのかかる形態への言及も、例えば、「VEGF109」、「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」、または「VEGF165」によって、本出願中で特定され得る。「切断された」天然VEGFについてのアミノ酸位置は、天然VEGF配列において示される通りに番号付けされる。例えば、切断された天然VEGFにおけるアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然VEGFにおける位置17(メチオニン)でもある。切断された天然VEGFは、KDR及びFlt−1受容体への結合親和性が天然VEGFに相当する。「VEGF変異型」という用語は、本明細書で使用される場合、天然VEGF配列における1つ以上のアミノ酸突然変異を含むVEGFポリペプチドを指す。任意選択で、この1つ以上のアミノ酸突然変異には、アミノ酸置換(複数可)が含まれる。本明細書に記載のVEGF変異型の短縮表記のために、数は、アミノ酸残基位置、及び推定の天然VEGFのアミノ酸配列を指すことが記される(Leung et al.,(上記参照)及びHouck et al.,(上記参照)に提供される)。別途指定されない限り、「VEGF」という用語は、本明細書で使用される場合、VEGF−Aを示す。
「VEGFアンタゴニスト」または「VEGF特異的アンタゴニスト」は、VEGFに結合する、VEGF発現レベルを低減する、または1つ以上のVEGF受容体へのVEGF結合、VEGFシグナル伝達、ならびにVEGF媒介性血管新生及び内皮細胞生存もしくは増殖を含むがこれらに限定されないVEGF生物活性を、中和する、遮断する、阻害する、無効化する、低減する、もしくはそれに干渉することができる分子を指す。例えば、VEGF生物活性を、中和する、遮断する、阻害する、無効化する、低減する、もしくはそれに干渉することができる分子は、1つ以上のVEGF受容体(VEGFR)(例えば、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、膜結合VEGF受容体(mbVEGFR)、または可溶性VEGF受容体(sVEGFR))に結合することによってその効果を発揮し得る。VEGF、抗VEGF抗体、及びその抗原結合断片に特異的に結合するポリペプチド、VEGFに特異的に結合することで1つ以上の受容体へのその結合を封鎖する受容体分子及び誘導体、融合タンパク質(例えば、VEGF−Trap(Regeneron))、ならびにVEGF121−ゲロニン(Peregrine)が、本発明の方法に有用なVEGF特異的アンタゴニストとして含まれる。VEGF特異的アンタゴニストはまた、VEGFポリペプチドのアンタゴニスト変異型、VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも断片に相補的なアンチセンス核酸塩基オリゴマー;VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも断片に相補的な小RNA;VEGFを標的化するリボザイム;VEGFに対するペプチボディ;及びVEGFアプタマーを含む。VEGFアンタゴニストはまた、VEGFR、抗VEGFR抗体、及びその抗原結合断片に結合するポリペプチド、ならびにVEGFRに結合することでVEGF生物活性(例えば、VEGFシグナル伝達)を、遮断する、阻害する、無効化する、低減する、もしくはそれに干渉する誘導体、または融合タンパク質を含む。VEGF特異的アンタゴニストはまた、VEGFまたはVEGFRに結合し、VEGF生物活性を、遮断する、阻害する、無効化する、低減する、もしくはそれに干渉することができる非ペプチド小分子を含む。したがって、「VEGF活性」という用語は、VEGFのVEGF媒介性生物活性を具体的に含む。ある特定の実施形態では、VEGFアンタゴニストは、VEGFの発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上、低減または阻害する。いくつかの実施形態では、VEGF特異的アンタゴニストによって阻害されるVEGFは、VEGF(8−109)、VEGF(1−109)、またはVEGF165である。
本明細書で使用される場合、VEGFアンタゴニストには、抗VEGFR2抗体及び関連する分子(例えば、ラムシルマブ、タニビルマブ、アフリベルセプト)、抗VEGFR1抗体及び関連する分子(例えば、イクルクマブ、アフリベルセプト(VEGF Trap−Eye;EYLEA(登録商標))、及びジブ−アフリベルセプト(VEGF Trap;ZALTRAP(登録商標))、二重特異性VEGF抗体(例えば、MP−0250、バヌシズマブ(VEGF−ANG2)、及びUS2001/0236388に開示されている二重特異性抗体)、抗VEGFアーム、抗VEGFR1アーム、及び抗VEGFR2のうちの2つの組み合わせを含む二重特異性抗体;抗VEGFA抗体(例えば、ベバシズマブ、セバシズマブ)、抗VEGFB抗体;抗VEGFC抗体(例えば、VGX−100)、抗VEGFD抗体;ならびに非ペプチド小分子VEGFアンタゴニスト(例えば、パゾパニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、スチバーガ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、テラチニブ、ドビチニグ(dovitinig)、セジラニブ、モテサニブ、スルファチニブ、アパチニブ、フォレチニブ、ファミチニブ、及びチボザニブ)が挙げられるが、これらに限定されない。
「抗VEGF抗体」は、十分な親和性及び特異性でVEGFに結合する抗体である。ある特定の実施形態では、抗体は、VEGFに対して十分に高い結合親和性を有することになり、例えば、抗体は、100nM〜1pMのKd値でhVEGFに結合し得る。抗体親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴系アッセイ(PCT出願公開第WO2005/012359号に記載されているようなBIAcore(登録商標)アッセイなど);酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);及び競合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA))によって決定されてもよい。
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患または状態の標的化及び干渉における治療剤として使用することができる。また、本抗体は、例えば、治療薬としてその有効性を評価するために、他の生物活性アッセイに供してもよい。かかるアッセイは、当該技術分野で既知であり、抗体に対する標的抗原及び意図される使用に依存する。例としては、HUVEC阻害アッセイ;腫瘍細胞成長阻害アッセイ(例えば、WO89/06692に記載される);抗体依存性細胞毒性(ADCC)及び補体媒介性細胞毒性(CDC)アッセイ(米国特許第5,500,362号);ならびにアゴニスト活性または造血アッセイ(WO95/27062を参照されたい)が挙げられる。抗VEGF抗体は、通常、VEGF−BまたはVEGF−Cなどの他のVEGF相同体、またはPlGF、PDGF、またはbFGFなどの他の成長因子に結合しない。一実施形態では、抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB 10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗VEGF抗体は、Prestaら(Cancer Res.57:4593−4599,1997)に従って生成される組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体であり、これには、ベバシズマブ(BV;AVASTIN(登録商標))として知られる抗体が挙げられるが、これに限定されない。
「rhuMAb VEGF」または「AVASTIN(登録商標)」としても知られる抗VEGF抗体「ベバシズマブ(BV)」は、Presta et al.(Cancer Res.57:4593−4599,1997)に従って生成される組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。これは、変異型ヒトIgG1フレームワーク領域と、ヒトVEGFのその受容体への結合を妨害するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1由来の抗原結合相補性決定領域とを含む。フレームワーク領域の大部分を含む、ベバシズマブのアミノ酸配列の約93%が、ヒトIgG1から誘導され、配列の約7%が、マウス抗体A4.6.1から誘導される。ベバシズマブは、分子量が約149,000ダルトンであり、グリコシル化される。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日発行の米国特許第6,884,879号に更に記載されており、その開示全体が参照により明示的に本明細書に組み込まれる。追加の好ましい抗体には、PCT出願公開第WO2005/012359号に記載されているG6またはB20シリーズ抗体(例えば、G6−31、B20−4.1)が含まれる。追加の好ましい抗体については、米国特許第7,060,269号、同第6,582,959号、同第6,703,020号;同第6,054,297号;WO98/45332;WO96/30046;WO94/10202;EP0666868B1;米国特許出願公開第2006009360号、同第20050186208号、同第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、及び同第20050112126;ならびにPopkov et al.(Journal of Immunological Methods 288:149−164,2004)を参照されたい。他の好ましい抗体には、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、191、K101、E103、及びC104を含むか、または代替的に残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、183、及びQ89を含む、ヒトVEGF上の機能エピトープに結合するものが含まれる。
VEGFアンタゴニストが「単独抗腫瘍剤」として投与される場合、これは、がんを治療するために投与される抗腫瘍剤でしかなく、即ち、化学療法などの別の抗腫瘍剤と組み合わせて投与されない。
「抗VEGF抗体をコードする核酸」は、抗体の重鎖及び軽鎖(またはその断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、これには、単一のベクターまたは別々のベクター中のかかる核酸分子(複数可)、及び宿主細胞中の1つ以上の場所に存在するかかる核酸分子(複数可)が含まれる。
免疫機能障害との関連での「機能障害」という用語は、抗原刺激への免疫応答性が低減した状態を指す。この用語には、抗原認識が生じ得るが、その後の免疫応答が感染または腫瘍成長の制御に無効である、「消耗」及び/または「アネルギー」の両方の共通要素が含まれる。
本明細書で使用される「機能障害性」という用語には、抗原認識に対する不応性または無応答性、具体的には、抗原認識を、増殖、サイトカイン産生(例えば、IL−2)、及び/または標的細胞殺滅などの下流T細胞エフェクター機能に翻訳する能力の障害も含まれる。
「アネルギー」という用語は、T細胞受容体を介して送達される不完全または不十分なシグナル(例えば、Ras活性化の不在下での細胞内Ca2+の増加)に起因する抗原刺激に対する無応答の状態を指す。T細胞アネルギーは、共刺激の不在下における抗原での刺激に際しても生じ得、結果的に細胞は、共刺激との関連においても、抗原によるその後の活性化に不応性になる。無応答状態はしばしば、インターロイキン2の存在により覆され得る。アネルギーT細胞は、クローン増殖を経ず、かつ/またはエフェクター機能を獲得しない。
「消耗」という用語は、多くの慢性感染及びがん発症中に生じる持続的TCRシグナル伝達に起因するT細胞機能障害の状態としてのT細胞消耗を指す。これは、不完全なまたは不十分なシグナル伝達を介してではなく、持続的シグナル伝達に起因するという点で、アネルギーとは区別される。これは、エフェクター機能不良、阻害性受容体の持続的発現、及び機能的エフェクターまたはメモリーT細胞とは異なる転写状態によって定義される。消耗は、感染及び腫瘍の最適な制御を妨げる。消耗は、外因性の負の制御性経路(例えば、免疫制御性サイトカイン)及び細胞内因性の負の制御性(共刺激)経路(PD−1、B7−H3、B7−H4など)の両方に起因し得る。
「T細胞機能を増強する」とは、持続したもしくは増幅された生物学的機能を有するようにT細胞を誘導するか、引き起こすか、もしくは刺激すること、または消耗されたもしくは不活性のT細胞を再生もしくは再活性化することを意味する。T細胞機能の増強の例としては、介入前のレベルと比較した、CD8+T細胞からのγインターフェロンの分泌の増加、増殖の増加、抗原応答性(例えば、ウイルス、病原体、または腫瘍のクリアランス)の上昇が挙げられる。一実施形態では、増強のレベルは、少なくとも50%、あるいは60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、または200%の増強である。この増強を測定する様式は、当業者に既知である。
「腫瘍免疫」とは、腫瘍が免疫認識及びクリアランスを回避するプロセスを指す。したがって、治療的概念として、腫瘍免疫は、かかる回避が減弱し、腫瘍が免疫系によって認識及び攻撃されるときに「治療される」。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍収縮、及び腫瘍クリアランスが挙げられる。
「免疫原性」とは、免疫応答を誘発する特定の物質の能力を指す。腫瘍は、免疫原性であり、腫瘍免疫原性の増強により、免疫応答による腫瘍細胞のクリアランスが支援される。
「プログラム死リガンド1」及び「PD−L1」という用語は、本明細書において、天然配列PD−L1ポリペプチド、ポリペプチド変異型、ならびに天然配列ポリペプチド及びポリペプチド変異型の断片(これらは、本明細書で更に定義される)を指す。本明細書に記載されるPD−L1ポリペプチドは、ヒト組織型から、もしくは別の源からなど、多様な源から単離されるか、または組換え法または合成法によって調製されたものであり得る。
「天然配列PD−L1ポリペプチド」は、対応する、自然界に由来するPD−L1ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
「PD−L1ポリペプチド変異型」またはその変化形は、本明細書に定義されるPD−L1ポリペプチド、一般的には活性PD−L1ポリペプチドが、本明細書に開示される天然配列PD−L1ポリペプチド配列のいずれかに対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有することを意味する。かかるPD−L1ポリペプチド変異型には、例えば、天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に1つ以上のアミノ酸残基が付加または欠失されたPD−L1ポリペプチドが含まれる。通常、PD−L1ポリペプチド変異型は、本明細書に開示される天然配列PD−L1ポリペプチド配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有する。通常、PD−L1変異型ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長であり、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、281、282、283、284、285、286、287、288、もしくは289アミノ酸長、またはそれ以上である。任意選択で、PD−L1変異型ポリペプチドは、天然PD−L1ポリペプチド配列と比較して1つ以下の保存的アミノ酸置換、あるいは天然PD−L1ポリペプチド配列と比較して2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以下の保存的アミノ酸置換を有する。
「PD−L1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD−1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するように、PD−L1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能が復元または増強される分子を指す。本明細書で使用される場合、PD−L1軸結合アンタゴニストは、PD−L1結合アンタゴニスト及びPD−1結合アンタゴニスト、ならびにPD−L1とPD−1との間の相互作用を妨害する分子(例えば、PD−L2−Fc融合)を含む。いくつかの実施形態では、PD−L1軸結合アンタゴニスト、PD−L1結合アンタゴニスト、またはPD−1結合アンタゴニストは、全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2013/019906号に記載されている任意のPD−L1軸結合アンタゴニスト、PD−L1結合アンタゴニスト、またはPD−1結合アンタゴニストであり得る。
「抗PD−L1抗体」及び「PD−L1に結合する抗体」という用語は、抗体がPD−L1を標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でPD−L1に結合することができる抗体を指す。一実施形態では、抗PD−L1抗体の、無関係の非PD−L1タンパク質への結合の程度は、例えばRIAにより測定されたときに、抗体の、PD−L1への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、抗PD−L1抗体は、異なる種由来のPD−L1の間で保存されているPD−L1のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,217,149号に記載のされている任意の抗PD−L1抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体はアテゾリズマブである。
「抗PD−1抗体」及び「PD−1に結合する抗体」という用語は、抗体がPD−1を標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でPD−1に結合することができる抗体を指す。一実施形態では、抗PD−1抗体の、無関係の非PD−1タンパク質への結合の程度は、例えばRIAにより測定されたときに、抗体の、PD−1への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、抗PD−1抗体は、異なる種由来のPD−1の間で保存されているPD−1のエピトープに結合する。
本明細書で使用される場合、「PD−L1結合アンタゴニスト」は、PD−L1と、PD−1及び/またはB7−1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する分子である。いくつかの実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1の、PD−1及び/またはB7−1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、抗PD−L1抗体及びその抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD−L1と、PD−1及び/またはB7−1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用に起因するシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1またはPD−1を介して、媒介性シグナル伝達、Tリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負のシグナルを低減し、その結果、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。いくつかの実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは抗PD−L1抗体である。特定の態様では、抗PD−L1抗体はYW243.55.S70である。別の特定の態様では、抗PD−L1抗体はMDX−1105である。なお別の特定の態様では、抗PD−L1抗体はMEDI4736(ドルバルマブ(druvalumab))である。なお別の特定の態様では、抗PD−L1抗体はMSB0010718C(アベルマブ)である。なお別の特定の態様では、抗PD−L1抗体は本明細書に記載のアテゾリズマブ(MPDL3280A)である。
本明細書で使用される場合、「PD−1結合アンタゴニスト」は、PD−1と、PD−L1及び/またはPD−L2などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する分子である。いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1のPD−L1及び/またはPD−L2への結合を阻害する。例えば、PD−1結合アンタゴニストは、抗PD−1抗体及びこれらの抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD−1と、PD−L1及び/またはPD−L2との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1またはPD−L1を介して、媒介性シグナル伝達、Tリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負のシグナルを低減し、その結果、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは抗PD−1抗体である。特定の態様では、PD−1結合アンタゴニストはMDX−1106(ニボルマブ)である。別の特定の態様では、PD−1結合アンタゴニストはMK−3475(ペンブロリズマブ)である。別の特定の態様では、PD−1結合アンタゴニストはCT−011(ピディリズマブ)である。別の特定の態様では、PD−1結合アンタゴニストはMEDI−0680(AMP−514)である。別の特定の態様では、PD−1結合アンタゴニストはPDR001である。別の特定の態様では、PD−1結合アンタゴニストはREGN2810である。別の特定の態様では、PD−1結合アンタゴニストはBGB−108である。別の特定の態様では、PD−1結合アンタゴニストはAMP−224である。
「個体応答」または「応答」は、減速及び完全阻止を含む、疾患進行(例えば、がん進行)のある程度の阻害;腫瘍サイズの減少;隣接する末梢器官及び/もしくは組織へのがん細胞浸潤の阻害(即ち、低減、減速、または完全停止);転移の阻害(即ち、低減、減速、または完全停止);疾患もしくは障害(例えば、がん)と関連付けられる1つ以上の症状のある程度の軽減;全生存及び無進行生存を含む生存の長さの増加もしくは延長、ならびに/または治療後の所定の時点における低下した死亡率を非限定的に含む、個体への利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価され得る。
医薬品による治療に対する患者の「有効な応答」または患者の「応答性」及び類似の単語は、がんなどの疾患もしくは障害の危険があるか、またはそれに罹患している患者に付与される臨床的または治療的利益を指す。一実施形態では、かかる利益には、生存期間(全生存期間及び/または無進行生存期間を含む)を延長すること、客観的奏効(完全奏効または部分奏効を含む)をもたらすこと、またはがんの徴候もしくは症状を改善することのうちのいずれか1つ以上が含まれる。一実施形態では、バイオマーカー(例えば、表2に列挙されるバイオマーカー)を使用して、バイオマーカーを発現しない患者と比べて医薬品による治療(例えば、VEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体を含む治療)に応答性である可能性が増加していると予測される患者を特定する。一実施形態では、バイオマーカー(例えば、例えばIHCを使用して決定される腫瘍浸潤性免疫細胞におけるCD8A発現)を使用して、バイオマーカーを同レベルで発現しない患者と比べて医薬品(例えば、抗VEGF抗体)による治療に応答性である可能性が増加していると予測される患者を特定する。一実施形態では、バイオマーカーの存在を使用して、バイオマーカーの存在を有しない患者と比べて医薬品による治療に応答する可能性がより高い患者を特定する。別の実施形態では、バイオマーカーの存在を使用して、患者が、バイオマーカーの存在を有しない患者と比べて医薬品による治療から利益を受ける可能性が増加するであろうことを決定する。
「奏効」は、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を含む測定可能な応答を指す。いくつかの実施形態では、「奏効率(ORR)」は、完全奏効(CR)率及び部分奏効(PR)率の合計を指す。
「完全奏効」または「CR」により、治療に応答したがんの全ての徴候の消滅(例えば、全ての標的病巣の消滅)が意図される。これは、必ずしもがんが治癒されたことを意味しない。
本明細書で使用される場合、「部分奏効」または「PR」は、治療に応答した、1つ以上の腫瘍もしくは病巣のサイズ、または身体内のがんの範囲の低下を指す。例えば、いくつかの実施形態において、PRは、ベースラインSLDを参照として、標的病変の長径和(SLD)における少なくとも30%の低減を指す。
「持続的応答」とは、治療の休止後の腫瘍成長の低下に対する持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の開始時のサイズと比較して同じサイズのままであるか、またはより小さくなり得る。いくつかの実施形態では、持続的応答は、治療期間と少なくとも同じか、治療期間の長さの少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、もしくは3.0倍か、またはそれ以上の期間を有する。
本明細書で使用される場合、「安定疾患」または「SD」は、治療開始以来の最小SLDを参照として、PRと言えるほどの十分な標的病変の収縮も、PDと言えるほどの十分な増加もないことを指す。
本明細書で使用される場合、「進行性疾患」または「PD」は、治療開始以来記録された最小SLD、または1つ以上の新たな病変の存在を参照として、標的病変のSLDの少なくとも20%の増加を指す。
「生存」という用語は、患者が生存していることを指し、全生存及び無進行生存を含む。
本発明との関連における「無進行生存」という用語は、治療にあたっている医師または研究者の評定により、患者の疾患が悪化しない、即ち、進行しない、治療中及び治療後の期間を指す。当業者であれば、患者の無進行生存は、似た状況の患者の対照群の平均または中間無進行生存期間と比較して、患者の疾患が進行しない期間がより長い場合に、改善または増強されることを理解するであろう。
本明細書で使用される場合、「全生存」(OS)は、特定の期間後に生きている可能性が高い、群における個体のパーセンテージを指す。
「生存延長」による意味は、治療されていない患者と比べて(即ち、医薬品によって治療されていない患者と比べて)、または指定されたレベルでバイオマーカーを発現しない患者と比べて、かつ/または認可されている抗腫瘍剤(例えば、抗VEGF抗体)によって治療された患者と比べて、治療された患者における全生存または無進行生存が増加することである。
「利益」という用語は、最も広義に使用され、任意の望ましい効果を指し、本明細書に定義される臨床的利益を特に含む。臨床的利益は、様々なエンドポイントを評定することによって測定され得、これらのエンドポイントは、例えば、減速及び完全阻止を含む、疾患進行のある程度の阻害;疾患の発作及び/もしくは症状の数の低減;病巣サイズの低減;隣接する末梢器官及び/もしくは組織への疾患細胞浸潤の阻害(即ち、低減、減速、または完全停止);疾患蔓延の阻害(即ち、低減、減速、または完全停止);疾患病変の退縮または除去につながり得るが必ずしもそうではない自己免疫応答の減少;障害と関連付けられる1つ以上の症状のある程度の軽減;治療後の無疾患提示、例えば、無進行生存の長さの増加;増加した全生存;より高い応答率;ならびに/または治療後の所定の時点における低下した死亡率である。
III.方法
一態様では、本発明は、1つ以上の免疫学的バイオマーカー(例えば、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7、MHC−I、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CCR7、CX3CL1)の発現レベルの変化及び/または免疫細胞(例えば、CD8+Teff細胞)の腫瘍浸潤が、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)を含む抗がん療法に対する患者応答と関連付けられるという予期せぬ発見に一部基づく。ある特定の実施形態では、かかるバイオマーカーの発現に従って患者の治療に対する応答をモニタリングする方法が提供される。他の実施形態では、かかるバイオマーカーの発現レベルまたは数に従う治療の方法が提供される。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニストを含む抗がん療法の利益を得る可能性が高いがん患者を特定する方法が提供される。いくつかの実施形態では、がん患者のためにVEGFアンタゴニストを含む抗がん療法を選択する方法が提供される。本発明は、がんを有する患者を治療するための方法も提供する。いくつかの事例では、本発明の方法は、本発明のバイオマーカーの発現レベルに基づいて、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)を含む抗がん療法を患者に施すことを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、VEGFアンタゴニストと組み合わせた第2の治療薬、例えば、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD−L1アンタゴニスト、例えば、アテゾリズマブ)を投与することを更に含む。
A.治療に対する応答のモニタリング、診断、予後、及び患者選択の方法
本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)に対する応答と相関するがん(例えば、腎臓癌)のバイオマーカー(例えば、免疫学的バイオマーカー)の特定、選択、及び使用に関する。この点において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法に対して感受性または応答性である患者を特定するために、本発明のバイオマーカーのうちの1つ以上の、その1つ以上のバイオマーカーについての参照レベル(複数可)と比べた発現プロファイル(複数可)を使用することに関する。いくつかの事例では、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)の投与は、参照レベル(複数可)に対する1つ以上のバイオマーカーの発現レベル(複数可)の決定及び/または比較に基づく。
本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)による治療に対するがん(例えば、腎臓癌)を有する患者の応答をモニタリングする方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定すること、及び試料における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、VEGFアンタゴニストによる治療に対する患者の応答をモニタリングすることを伴う。いくつかの実施形態では、発現レベルは、参照レベルと比べて増加する。例示的な免疫学的バイオマーカーのリストが以下で表2に示される。いくつかの実施形態では、本方法は、以下で表2に示されるバイオマーカーの発現レベルに基づいて、患者のためにVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を選択することを伴う。
表2.例示的な免疫学的バイオマーカー
他の実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)による治療から利益を得る可能性が高いがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を特定する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定すること、及び試料における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、患者を、VEGFアンタゴニストによる治療から利益を得る可能性が高いとして特定することを含む。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料における1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者は、VEGFアンタゴニストによる治療から利益を得る可能性が高い患者として特定される。いくつかの実施形態では、免疫学的バイオマーカーは表2に示される。他の実施形態では、免疫学的バイオマーカーはMHC−Iである。
別の実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)の診断または予後診断を行う方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定すること、及び試料における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、がんの診断または予後診断を行うことを伴う。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料における1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者が診断または予後診断される。いくつかの実施形態では、免疫学的バイオマーカーは表2に示される。他の実施形態では、免疫学的バイオマーカーはMHC−Iである。
更に別の実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者が、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定すること、及び試料における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、患者を、抗がん療法に応答する可能性が高い患者として特定することを含む。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料における1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者は、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いとして特定される。いくつかの実施形態では、免疫学的バイオマーカーは表2に示される。他の実施形態では、免疫学的バイオマーカーはMHC−Iである。
他の実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法の治療有効性を最適化する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定すること、及び試料における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照レベルと比較することを伴い、ここでは、参照レベルと比べた生体試料における1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法に応答する可能性が高い患者が特定される。いくつかの実施形態では、免疫学的バイオマーカーは表2に示される。他の実施形態では、免疫学的バイオマーカーはMHC−Iである。
なお更なる実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者のためにVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法を選択する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定すること、生体試料における1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを参照レベルと比較すること、及び1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルに基づいて、患者のためにVEGFアンタゴニストを含む抗がん療法を選択することを伴う。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料における1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)を使用して、抗がん療法が選択される。いくつかの実施形態では、免疫学的バイオマーカーは表2に示される。他の実施形態では、免疫学的バイオマーカーはMHC−Iである。
いくつかの実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)による治療に対するがんを有する患者の応答をモニタリングする方法を提供し、本方法は、抗がん療法の実施後の時点で患者から得られた生体試料において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定すること、ならびにCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、VEGFアンタゴニストによる治療に対する患者における応答をモニタリングすることを伴う。
他の実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)による治療から利益を得る可能性が高いがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を特定する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定すること、ならびに生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上の発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、患者を、VEGFアンタゴニストによる治療から利益を得る可能性が高いとして特定することを伴う。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者は、VEGFアンタゴニストによる治療から利益を得る可能性が高いとして特定される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
別の実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)の診断または予後診断を行う方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料におけるCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定すること、及び生体試料におけるCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、がんの診断または予後診断を行うことを伴う。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者が診断または予後診断される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
更に別の実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者が、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定すること、及び生体試料におけるCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上の発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、患者を、抗がん療法に応答する可能性が高い患者として特定することを含む。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者は、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いとして特定される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
他の実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法の治療有効性を最適化する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定すること、及び試料における生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上の発現レベルを参照レベルと比較することを伴い、ここでは、参照レベルと比べた生体試料における生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法に応答する可能性が高い患者が特定される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
なお更なる実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者のためにVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法を選択する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定すること、生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上の発現レベルを参照レベルと比較すること、ならびに参照レベルと比べた生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上の発現レベルに基づいて、患者のためにVEGFアンタゴニストを含む抗がん療法を選択することを伴う。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)を使用して、抗がん療法が選択される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7個)の発現レベルは、腫瘍微小環境中のCD8+Tエフェクター(Teff)細胞の存在と相関する。いくつかの実施形態では、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、または3個)の発現レベルは、腫瘍微小環境中のナチュラルキラー(NK)細胞の存在と相関する。CD8+Teff細胞及び/またはNK細胞の存在を検出する方法は、本明細書に記載され、例えば、腫瘍試料細胞に対するフローサイトメトリー分析(例えば、腫瘍生検における腫瘍浸潤性免疫細胞の分析)を含む。ある特定の実施形態では、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1個以上(例えば、1、2、3、または4個)の発現レベルは、腫瘍微小環境中のTh1ケモカインの存在と相関する。腫瘍微小環境中のTh1ケモカインの存在を検出する方法は、本明細書に記載され、例えば、腫瘍試料(例えば、腫瘍生検溶解物)に対する酵素結合免疫吸着アッセイ(「ELISA」)分析を含む。
先行する方法のうちのいずれかのある特定の実施形態では、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7個)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、または少なくとも6個の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CD8Aのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CD8Aのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、CD8Bのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CD8Bのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、EOMESのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、EOMESのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、GZMAのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、GZMAのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、GZMBのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、GZMBのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、IFNGのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、IFNGのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、PRF1のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、PRF1のレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。
先行する方法のうちのいずれかのある特定の実施形態では、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1個以上(例えば、1、2、3、または4個)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの少なくとも2個または少なくとも3個の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びCXCL13の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CXCL9のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL9のレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL10のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL10のレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL11のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL11のレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL13のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL13のレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、または3個)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの少なくとも2個(例えば、2個または3個)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、GZMB、KLRK1、及びSLAMF7の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、GZMBのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約9倍、約3倍〜約8倍、約4倍〜約7倍、約5倍〜約6倍)増加する。いくつかの実施形態では、GZMBのレベルは、参照レベルと比較して、約9倍以上(例えば、約9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、KLRK1のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約9倍、約3倍〜約8倍、約4倍〜約7倍、約5倍〜約6倍)増加する。いくつかの実施形態では、KLRK1のレベルは、参照レベルと比較して、約9倍以上(例えば、約9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、SLAMF7のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約9倍、約3倍〜約8倍、約4倍〜約7倍、約5倍〜約6倍)増加する。いくつかの実施形態では、SLAMF7のレベルは、参照レベルと比較して、約9倍以上(例えば、約9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、患者から得られた生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルは、参照レベルと比べて増加する(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上)。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、参照レベルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に得られた患者由来の生体試料における1個以上の遺伝子(例えば、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7)の発現レベルである。ある特定の実施形態では、参照レベルは、参照集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。ある特定の実施形態では、参照レベルは、1つ以上の遺伝子について事前に割り当てられた発現レベルである。いくつかの実施形態では、参照レベルは、前の時点で患者から得られた生体試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルであり、前の時点とは、抗がん療法の投与の後である。他の実施形態では、参照レベルは、次なる時点(例えば、VEGFアンタゴニストの投与後数分、数時間、数日、数週、数カ月、または数年)で患者から得られた生体試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
別の態様では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)による治療に対するがんを有する患者の応答をモニタリングする方法を提供し、本方法は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法の実施後の時点で患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを決定すること、及び生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを参照レベルと比較し、それによりVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法による治療に対する患者の応答をモニタリングすることを伴う。いくつかの実施形態では、患者から得られた生体試料における発現レベルは、参照レベルと比べて増加する。
他の実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)による治療から利益を得る可能性が高いがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を特定する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを決定すること、及び生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、患者を、VEGFアンタゴニストによる治療から利益を得る可能性が高いとして特定することを伴う。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者は、VEGFアンタゴニストによる治療から利益を得る可能性が高いとして特定される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
別の実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)の診断または予後診断を行う方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを決定すること、及び患者試料におけるMHC−Iの発現レベルを参照レベルと比較し、がんの診断または予後診断を行うことを伴う。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者が診断または予後診断される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
更に別の実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者が、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを決定すること、及び患者試料におけるMHC−Iの発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、患者を、抗がん療法に応答する可能性が高い患者として特定することを含む。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者は、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いとして特定される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
他の実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法の治療有効性を最適化する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを決定すること、及び患者試料におけるMHC−Iの発現レベルを参照レベルと比較することを伴い、ここでは、参照レベルと比べた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法に応答する可能性が高い患者が特定される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
なお更なる実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者のためにVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法を選択する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを決定すること、生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを参照レベルと比較すること、及び患者試料におけるMHC−Iの発現レベルに基づいて、患者のためにVEGFアンタゴニストを含む抗がん療法を選択することを伴う。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)を使用して、抗がん療法が選択される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、MHC−Iの発現レベルは、任意のヒト白血球抗原クラスI(HLA−I)遺伝子もしくは偽遺伝子(例えば、HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−E、HLA−F、HLA−G、HLA−K、またはHLA−L)またはそのハプロタイプの発現レベルを、本明細書に記載の検出方法のうちのいずれかによって決定することで評定される。いくつかの実施形態では、MHC−Iの発現レベルは、MHC−Iアルファ鎖またはHLA−I組織適合抗原アルファ鎖のタンパク質発現によって評定される。いくつかの実施形態では、MHC−Iの発現レベルは免疫組織化学によって決定される。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、参照レベルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に得られた患者由来の生体試料におけるMHC−Iの発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、参照集団におけるMHC−Iの発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、MHC−Iについて事前に割り当てられた発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、前の時点で患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルであり、前の時点とは、抗がん療法の実施の後である。他の実施形態では、参照レベルは、次なる時点(例えば、VEGFアンタゴニストの投与後数分、数時間、数日、数週、数カ月、または数年)で患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルである。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルは、参照レベルと比べて増加する(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上)。いくつかの実施形態では、患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルは、少なくとも約2倍増加する。
更なる態様では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)による治療に対するがんを有する患者の応答をモニタリングする方法を提供し、本方法は、抗がん療法の実施後の時点で患者から得られた生体試料における、次の遺伝子:CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルを決定すること、及び生体試料における、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法による治療に対する患者における応答をモニタリングすることを伴う。いくつかの実施形態では、患者から得られた生体試料における発現レベルは、参照レベルと比べて増加する。
他の実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)による治療から利益を得る可能性が高いがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を特定する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における、次の遺伝子:CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上(多例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルを決定すること、及び生体試料における、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、患者を、VEGFアンタゴニストによる治療から利益を得る可能性が高いとして特定することを伴う。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料における、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者は、VEGFアンタゴニストによる治療から利益を得る可能性が高いとして特定される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
別の実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)の診断または予後診断を行う方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における次の遺伝子:CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルを決定すること、及び生体試料におけるCCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルを参照レベルと比較し、それによりがんの診断または予後診断を行うことを伴う。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料におけるCCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者が診断または予後診断される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
更に別の実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者が、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における次の遺伝子:CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルを決定すること、及び生体試料におけるCCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルを参照レベルと比較し、それにより、患者を、抗がん療法に応答する可能性が高い患者として特定することを含む。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料におけるCCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者は、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いとして特定される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
他の実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法の治療有効性を最適化する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における次の遺伝子:CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルを決定すること、及び生体試料におけるCCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルを参照レベルと比較することを伴い、ここでは、参照レベルと比べた生体試料におけるCCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法に応答する可能性が高い患者が特定される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
なお更なる実施形態では、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者のためにVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法を選択する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料における次の遺伝子:CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルを決定すること、生体試料におけるCCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルを参照レベルと比較すること、及び参照レベルと比べた生体試料におけるCCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルに基づいて、患者のためにVEGFアンタゴニストを含む抗がん療法を選択することを伴う。いくつかの実施形態では、参照レベルと比べた生体試料におけるCCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)を使用して、抗がん療法が選択される。いくつかの実施形態では、変化は増加である。他の実施形態では、変化は減少である。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及びCXCL10の発現レベルが決定される。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、参照レベルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週、数カ月、または数年前)に得られた患者由来の生体試料における1個以上の遺伝子(例えば、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及び/またはCXCL10)の発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、参照集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、1つ以上の遺伝子について事前に割り当てられた発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、前の時点で患者から得られた生体試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルであり、前の時点とは、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法の実施の後である。他の実施形態では、参照レベルは、次なる時点で患者から得られた生体試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、患者から得られた生体試料におけるCCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及び/またはCXCL10のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルは、参照レベルと比べて増加する(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上)。
上記の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、患者由来の生体試料は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法の実施から約1〜約30日(例えば、約15〜約18日、例えば、15、16、17、または18日)後に得られる。いくつかの実施形態では、患者由来の生体試料は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん療法の実施から18日超(例えば、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、5週、6週、7週、8週以上)の後に得られる。
先行する方法のうちのいずれかのある特定の実施形態では、本発明の方法は、1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上)の追加用量のVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を、MHC−Iまたは1個以上の遺伝子(例えば、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、及び/またはCCR7)の発現レベルが参照レベルと比べて増加する患者に投与するステップを更に含む。
上記のバイオマーカーのうちのいずれかの存在及び/または発現レベルは、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片、及び/または遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の任意の好適な基準に基づいて、定性的及び/または定量的に評定され得る。当該技術分野で既知であり当業者によって理解されているかかるバイオマーカーを測定するための方法には、IHC、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液系アッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム解読、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(定量リアルタイムPCR(qRT−PCR)、ならびに例えば、分岐DNA、SISBA、TMA、及び同様のものなどの他の増幅型検出方法を含む)、RNA−Seq、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、全ゲノム解読(WGS)、ならびに/または遺伝子発現の逐次分析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、及び/または組織アレイ分析によって行われ得る多種多様なアッセイのうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al.eds.(Current Protocols In Molecular Biology,1995)、Units2(ノーザンブロット)、4(サザンブロット)、15(免疫ブロット)、及び18(PCR分析)に見出される。また、多重免疫アッセイ、例えば、Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から利用可能なものを使用してもよい。
先行する方法のうちのいずれかでは、バイオマーカーの発現レベルはタンパク質発現レベルであってもよい。ある特定の実施形態では、本方法は、生体試料を、バイオマーカーの結合を許容する条件下で、本明細書に記載のバイオマーカーに特異的に結合する抗体と接触させること、及び抱合体が抗体とバイオマーカーとの間で形成されるかどうかを検出することを含む。かかる方法は、インビトロまたはインビボ法であり得る。いくつかの事例では、VEGFアンタゴニストによる療法に適格である患者を選択するために、抗体、例えば、個体の選択のためのバイオマーカーが使用される。当該技術分野で既知であるかまたは本明細書で提供されるタンパク質発現レベルを測定する任意の方法が使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、フローサイトメトリー(例えば、蛍光活性化細胞分類(FACS(商標)))、ウェスタンブロット、ELISA、免疫沈降、IHC、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ、ドットブロット、免疫検出法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光法、質量分析、及びHPLCからなる群から選択される方法を使用して決定される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤性免疫細胞中で決定される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍細胞中で決定される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤性免疫細胞中及び/または腫瘍細胞中で決定される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、末梢血単核細胞(PBMC)中で決定される。
ある特定の実施形態では、試料中のバイオマーカータンパク質の存在ならびに/または発現レベル及び/もしくは量は、IHC及び染色プロトコルを使用して検査される。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を決定または検出する信頼性のある方法であることが示されている。本方法、アッセイ、及び/またはキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、バイオマーカーは、次の遺伝子:CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及びMHC−Iのタンパク質発現産物のうちの1個以上である。一実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、(a)抗体を用いた試料(患者から得られた腫瘍試料など)のIHC分析の実施、及び(b)試料中のバイオマーカーの発現レベルの決定を含む方法を使用して決定される。いくつかの実施形態では、IHC染色強度は、参照レベルと比べて決定される。いくつかの実施形態では、参照は参照値である。いくつかの実施形態では、参照は、参照試料(例えば、対照細胞株染色試料、非がん患者由来の組織試料、または目的のバイオマーカーについて陰性であることが決定される腫瘍試料)である。
本方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、バイオマーカーは、診断用抗体(即ち、一次抗体)を使用するIHCによって検出される。いくつかの実施形態では、診断用抗体は、ヒト抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、診断用抗体は、非ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、診断用抗体は、ラット、マウス、またはウサギ抗体である。いくつかの実施形態では、診断用抗体は、ウサギ抗体である。いくつかの実施形態では、診断用抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、診断用抗体は、直接標識される。他の実施形態では、診断用抗体は、間接標識される。
IHCは、形態染色及び/またはインサイツハイブリダイゼーション(例えば、FISH)などの追加の技法と組み合わせて行われてもよい。直接アッセイ及び間接アッセイという2つの一般的なIHC方法が利用可能である。第1のアッセイに従うと、抗体の標的抗原への結合は直接的に決定される。この直接アッセイには、更なる抗体相互作用なく可視化することができる、蛍光タグまたは酵素標識された抗体などの標識された試薬が使用される。典型的な間接アッセイでは、抱合されていない一次抗体が抗原に結合した後、標識された二次抗体が一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識に抱合される場合、発色基質または蛍光基質を添加して、抗原の可視化をもたらす。いくつかの二次抗体は一次抗体上で異なるエピトープと反応し得るため、シグナル増幅が生じる。
IHCに使用される一次及び/または二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識されることになる。多数の標識が利用可能であり、これらは、概して次のカテゴリーにグループ分けすることができる:(a)放射性同位体、例えば、35S、14C、1251、3H、及び131I;(b)コロイド金粒子;(c)希土類キレート(ユーロピウムキレート)、Texas Red、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリテリン(phycocrytherin)、フィコシアニン、もしくはSPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7などの市販のフルオロフォア、ならびに/または上記のうちいずれか1個以上の誘導体が挙げられるがこれらに限定されない、蛍光標識;(d)様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号がこれらのうちのいくつかの概説を提供している。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;例えば、米国特許第4,737,456号を参照)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。
酵素−基質の組合せの例には、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と基質としての水素ペルオキシダーゼ;アルカリホスファターゼ(AP)と発色基質としてのパラ−ニトフェニルホスフェート;及びβ−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)と発色基質(例えば、p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)または蛍光基質(例えば、4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシダーゼ)が挙げられる。これらの総説については、例えば、米国特許第4,275,149号及び同第4,318,980号を参照されたい。
標本は、手で、または自動染色機器(例えば、Ventana BenchMark XTまたはBenchmark ULTRA instrument)を使用して、調製され得る。このように調製された標本は、スライドガラスに載せされ、カバースリップをかぶせられ得る。その後、例えば、顕微鏡を使用して、スライド評価が決定され、当該技術分野で日常的に使用される染色強度基準が用いられ得る。一実施形態では、IHCを使用して腫瘍由来の細胞及び/または組織を検査するときには、染色は、腫瘍細胞(複数可)及び/または組織中で(試料中に存在し得る間質または周囲組織とは対照的である)決定または評定されることを理解されたい。いくつかの実施形態では、IHCを使用して腫瘍由来の細胞及び/または組織を検査するときには、染色は、腫瘍内または腫瘍周辺免疫細胞を含む腫瘍浸潤性免疫細胞中での決定または評定を含むことを理解されたい。いくつかの実施形態では、バイオマーカーの存在は、試料の0%超、試料の少なくとも1%、試料の少なくとも5%、試料の少なくとも10%、試料の少なくとも15%、試料の少なくとも15%、試料の少なくとも20%、試料の少なくとも25%、試料の少なくとも30%、試料の少なくとも35%、試料の少なくとも40%、試料の少なくとも45%、試料の少なくとも50%、試料の少なくとも55%、試料の少なくとも60%、試料の少なくとも65%、試料の少なくとも70%、試料の少なくとも75%、試料の少なくとも80%、試料の少なくとも85%、試料の少なくとも90%、試料の少なくとも95%、またはそれ以上においてIHCによって検出される。試料は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、例えば、病理学者によって、または自動画像分析によって採点され得る。
本方法のうちのいずれかの他の実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、核酸発現レベル(例えば、DNA発現レベルまたはRNA発現レベル(例えば、mRNA発現レベル)であり得る。核酸発現レベルを決定する任意の好適な方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、核酸発現レベルは、qPCR、rtPCR、RNA−seq、多重qPCRもしくはRT−qPCR、マイクロアレイ分析、遺伝子発現の逐次分析(SAGE)、MassARRAY技法、インサイツハイブリダイゼーション(例えば、FISH)、またはこれらに組み合わせを使用して決定される。
細胞におけるmRNAの評価のための方法は周知であり、これらには、例えば、遺伝子発現の逐次分析(SAGE)、全ゲノム解読(WGS)、相補的DNAプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイ(1つ以上の遺伝子に特異的な標識されたリボプローブを使用するインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、及び関連する技法など)、及び様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な相補的プライマーを使用するRT−PCR(例えば、qRT−PCR)、及び例えば、分岐DNA、SISBA、TMAなどといった他の増幅型検出方法など)が挙げられる。加えて、かかる方法は、生体試料中の標的mRNAのレベルを決定すること(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に検査することによって)を可能にする1つ以上のステップを含み得る。任意選択で、増幅された標的cDNAの配列が決定され得る。任意選択の方法は、マイクロアレイ技法によって組織または細胞試料中の標的mRNAなどのmRNAを検査または検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験組織試料由来の試験mRNA試料及び対照組織試料由来の対照mRNA試料は、逆転写され、標識されて、cDNAプローブを生成する。その後、プローブは、固体支持体に固定された核酸のアレイにハイブリダイズされる。アレイは、アレイの各メンバーの配列及び位置が分かるように構成される。例えば、発現がVEGFアンタゴニストを含む治療の臨床的利益の増加または低減と相関する遺伝子のセレクションが、固体支持体上でアレイ化されてもよい。特定のアレイメンバーとの標識されたプローブのハイブリダイゼーションにより、プローブが誘導された試料がその遺伝子を発現することが示される。
ある特定の実施形態では、第1の試料中のバイオマーカーの存在及び/または発現レベル/量は、第2の試料中の存在/不在及び/または発現レベル/量と比較して増加または上昇する。ある特定の実施形態では、第1の試料中のバイオマーカーの存在/不在及び/または発現レベル/量は、第2の試料中の存在及び/または発現レベル/量と比較して減少または低下する。ある特定の実施形態では、第2の試料は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。
本方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、患者から得られた試料は、抗がん療法、例えば、がんの治療、またはその症状の管理もしくは軽減のための療法の開始後に採集される。したがって、いくつかの実施形態では、試料は、化学療法剤の投与または化学療法レジメンの開始後に採集される。
ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、単一の試料であるか、または試験試料が得られるときとは異なる1つ以上の時点で得られる同じ患者もしくは個体に由来する組み合わせた複数の試料である。例えば、いくつかの実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるときよりも早い時点で同じ患者または個体から得られる。かかる参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、参照試料ががんの初期診断中に得られ、試験試料が後でがんが転移性となるときに得られる場合に有用であり得る。
ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者ではない1体以上の健康な個体に由来する組み合わせた複数の試料である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、その患者または個体ではない、疾患または障害(例えば、がん、例えば、腎臓癌)を有する1体以上の個体に由来する組み合わせた複数の試料である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、正常な組織に由来するプールされたRNA試料、または患者ではない1体以上の個体に由来するプールされた血漿もしくは血清試料である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、腫瘍組織に由来するプールされたRNA試料、または患者ではない疾患もしくは障害(例えば、がん)を有する1体以上の個体に由来するプールされた血漿もしくは血清試料である。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、上昇または増加した発現または数は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載のまたは当該技術分野で既知の方法などの方法によって検出された、バイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のうちのいずれかの全体的増加を指す。ある特定の実施形態では、上昇した発現または数は、増加が、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織における対応するバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量における増加を指す。いくつかの実施形態では、上昇した発現または数は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上を上回る全体的な増加を指す。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、低減した発現または数は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載の方法などの標準的な当該技術分野で既知の方法によって検出された、バイオマーカー(例えば、核酸(例えば、遺伝子またはmRNA)、または細胞)のレベルにおける、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のうちのいずれかの全体的な低減を指す。ある特定の実施形態では、低減した発現または数は、減少が、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織における対応するバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量における減少を指す。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、バイオマーカーの発現レベルまたは数は、組織試料、初代もしくは培養細胞もしくは細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙液、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培地、組織抽出物、例えば、均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物、またはこれらの任意の組み合わせにおいて検出される。
例えば、先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、既知の技法(例えば、フローサイトメトリーまたはIHC)を使用して、腫瘍浸潤性免疫細胞、腫瘍細胞、PBMC、またはこれらの組み合わせにおいて検出される。腫瘍浸潤性免疫細胞には、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周辺免疫細胞、またはこれらの任意の組み合わせ、及び他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。かかる腫瘍浸潤性免疫細胞は、Tリンパ球(CD8+Tリンパ球(例えば、CD8+Tエフェクター(Teff)細胞)及び/またはCD4+Tリンパ球(例えば、CD4+Teff細胞)など)、Bリンパ球、または顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、指状嵌入樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む、他の骨髄系細胞であり得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーについての染色は、膜染色、細胞質染色、またはこれらの組み合わせとして検出される。他の実施形態では、バイオマーカーの不在は、参照試料と比べた、試料における不在または無染色として検出される。
いくつかの実施形態では、患者から得られた試料は、抗がん療法、例えば、がんの治療、またはその症状の管理もしくは軽減のための療法の開始後に採集される。したがって、いくつかの実施形態では、試料は、化学療法剤の投与または化学療法レジメンの開始後に採集される。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、及び膵島細胞癌を含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、及び白血病またはリンパ性悪性疾患を有する。いくつかの実施形態では、がんには、腎臓癌(例えば、腎細胞癌腫(RCC)、例えば、転移性RCC)、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮系扁平上皮細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃(gastric)癌または胃(stomach)癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、肝臓癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メルケル細胞癌、菌状息肉腫、精巣癌、食道癌、胆管の腫瘍、頭頸部癌、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ種(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;移植後リンパ増殖性障害(PTLD);母斑症、浮腫(脳腫瘍と関連付けられるものなど)、またはメイグス症候群と関連付けられる異常な血管増殖が挙げられる。好ましい実施形態では、患者は、腎臓癌(例えば、RCC、例えば、mRCC)を有する。患者は、任意選択で、進行性、不応性、再発性、化学療法抵抗性、及び/または白金抵抗性型のがんを有してもよい。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、患者から得られた試料は、組織、全血、血漿、血清、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、試料は組織試料である。いくつかの実施形態では、組織試料は腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、腫瘍試料は、腫瘍浸潤性免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、またはこれらに任意の組み合わせを含む。先行する実施形態のうちのいずれかでは、腫瘍試料は、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、保管腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料であり得る。
特定の実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、がん細胞を含有するかまたはそれが疑われる生体試料において評定される。試料は、例えば、がん(例えば、腎臓癌、特に、腎細胞癌腫)に罹患している、それが疑われる、またはそれと診断された患者から得られた組織生検または転移性病変であってもよい。いくつかの実施形態では、試料は、腎臓組織、腎臓腫瘍の生検、分かっているもしくは疑われている転移性腎臓癌病変もしくは部位、または循環がん細胞、例えば、腎臓癌細胞を含むことが分かっているまたは疑われる血液試料、例えば、末梢血試料である。試料は、両方のがん細胞、即ち、腫瘍細胞及び非がん性細胞(例えば、リンパ球、例えば、浸潤性T細胞またはNK細胞などの末梢リンパ球)を含んでもよく、かつある特定の実施形態では、がん性細胞及び非がん性細胞の両方を含む。いくつかの実施形態では、細胞試料は、末梢CD8+T細胞の試料である。がん/腫瘍細胞を含む、組織切除片、生検、及び体液、例えば、血液試料を含む生体試料を得る方法は、当該技術分野で周知である。
B.治療方法
本発明は、がんを有する患者を治療するための方法も提供する。いくつかの事例では、本発明の方法は、本発明のバイオマーカーの発現レベルに基づいて、患者にVEGFアンタゴニストを投与することを含む。本VEGFアンタゴニスト、または本明細書に記載の他の抗がん剤(例えば、PD−L1軸結合アンタゴニストなどの「組成物」または「実施例」に記載されているもの)もしくは当該技術分野で既知のもののうちのいずれも、本方法において使用され得る。
いくつかの事例では、本方法は、抗がん療法の投与後の時点で患者から得られた生体試料におけるバイオマーカー(例えば、表2に列挙されるバイオマーカーなどの免疫学的バイオマーカー)の存在及び/または発現レベルを決定すること、生体試料における遺伝子のうちの1個以上の発現レベルを参照レベルと比較すること、ならびに発現レベルが発現レベルと比べて増加する場合に、VEGFアンタゴニストの患者への投与を継続することを伴う。遺伝子発現レベルは、本明細書に記載のまたは当該技術分野で既知の方法のうちのいずれかを使用して決定または比較され得る。本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)の投与による、がんに罹患している患者の無進行生存(PFS)及び/または全生存(OS)を改善するための方法に更に関する。本明細書に記載のバイオマーカーのうちのいずれの発現レベルまたは数も、当該技術分野で既知のならびに/または本明細書、例えば、上記のA節及び/もしくは実施例に記載のいずれの方法を使用して決定されてもよい。
いくつかの実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニス(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)によってがんを有する患者を治療する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定すること、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを参照レベルと比較すること、及び患者の1つ以上の遺伝子の発現レベルが参照レベルと比べて変化(例えば、増加または減少)する場合に、VEGFアンタゴニストを患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニストは、患者の1つ以上の遺伝子の発現レベルが参照レベルと比べて増加する場合に患者に投与される。
他の実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)によってがんを有する患者を治療する方法を提供し、本方法は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)の投与後の時点で患者から得られた生体試料において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定すること、及びCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを参照レベルと比較すること、及び患者の1つ以上の遺伝子の発現レベルが参照レベルと比べて増加する場合に、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)の患者への投与を継続することを含む。
ある特定の実施形態では、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7個)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7個)の発現レベルは、腫瘍微小環境中のCD8+Teff細胞の存在と相関する。ある特定の実施形態では、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1個以上(1、2、3、または4個)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1個以上(1、2、3、または4個)の発現レベルは、腫瘍微小環境中のTh1ケモカインの存在と相関する。いくつかの実施形態では、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、または3個)の存在が決定される。いくつかの実施形態では、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、または3個)の存在は、腫瘍微小環境中のナチュラルキラー(NK)細胞の存在と相関する。
いくつかの実施形態では、参照レベルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に得られた患者由来の生体試料における1個以上の遺伝子(例えば、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7)の発現レベルである。ある特定の実施形態では、参照レベルは、参照集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。ある特定の実施形態では、参照レベルは、1つ以上の遺伝子について事前に割り当てられた発現レベルである。いくつかの実施形態では、参照レベルは、前の時点で患者から得られた生体試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルであり、前の時点とは、抗がん療法の投与の後である。他の実施形態では、参照レベルは、次なる時点(例えば、VEGFアンタゴニストの投与後数分、数時間、数日、数週、数カ月、または数年)で患者から得られた生体試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
ある特定の実施形態では、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7個)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、または少なくとも6個の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CD8Aのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CD8Aのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、CD8Bのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CD8Bのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、EOMESのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、EOMESのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、GZMAのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、GZMAのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、GZMBのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、GZMBのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、IFNGのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、IFNGのレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、PRF1のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、PRF1のレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。
ある特定の実施形態では、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1個以上(例えば、1、2、3、または4個)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの少なくとも2個または少なくとも3個の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びCXCL13の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CXCL9のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL9のレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL10のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL10のレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL11のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL11のレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL13のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約7倍、約3倍〜約6倍、または約4倍〜約5倍)増加する。いくつかの実施形態では、CXCL13のレベルは、参照レベルと比較して、約7倍以上(例えば、約7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。
いくつかの実施形態では、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、または3個)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの少なくとも2個(例えば、2個または3個)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、GZMB、KLRK1、及びSLAMF7の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、GZMBのレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約9倍、約3倍〜約8倍、約4倍〜約7倍、約5倍〜約6倍)増加する。いくつかの実施形態では、GZMBのレベルは、参照レベルと比較して、約9倍以上(例えば、約9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、KLRK1のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約9倍、約3倍〜約8倍、約4倍〜約7倍、約5倍〜約6倍)増加する。いくつかの実施形態では、KLRK1のレベルは、参照レベルと比較して、約9倍以上(例えば、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。いくつかの実施形態では、SLAMF7のレベルは、参照レベルと比較して、約1倍〜約10倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約2倍〜約9倍、約3倍〜約8倍、約4倍〜約7倍、約5倍〜約6倍)増加する。いくつかの実施形態では、SLAMF7のレベルは、参照レベルと比較して、約9倍以上(例えば、9倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍以上)増加する。
いくつかの実施形態では、患者から得られた生体試料における、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルは、参照レベルと比べて増加する(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上)。
別の態様では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)によってがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を治療する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料においてMHC−Iの発現レベルを決定すること、生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを参照試料におけるMHC−Iの発現レベルと比較すること、及び参照試料におけるMHC−Iの発現レベルと比べて患者の試料において患者のMHC−Iの発現レベルが変化(例えば、増加または減少)する場合に、VEGFアンタゴニストを患者に投与することを伴う。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニストは、患者の試料におけるMHC−Iの発現レベルが参照レベルと比べて増加する場合に、患者に投与される。
別の態様では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)によってがんを有する患者を治療する方法を提供し、本方法は、VEGFアンタゴニストの投与後の時点で患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを決定すること、生体試料におけるMHC−Iの発現レベルを参照試料におけるMHC−Iの発現レベルと比較すること、及び患者のMHC−Iの発現レベルが参照試料におけるMHC−Iの発現レベルと比べて増加する場合に、VEGFアンタゴニストの患者への投与を継続すること、を伴う。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、参照レベルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週)、数カ月、または数年前)に得られた患者由来の生体試料におけるMHC−Iの発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、参照集団におけるMHC−Iの発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、MHC−Iについて事前に割り当てられた発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、前の時点で患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルであり、前の時点とは、抗がん療法の実施の後である。他の実施形態では、参照レベルは、次なる時点(例えば、VEGFアンタゴニストの投与後数分、数時間、数日、数週、数カ月、または数年)で患者から得られた生体試料におけるMHC−Iの発現レベルである。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、MHC−Iの発現レベルは、参照レベルと比べて増加する(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.1倍、約3.2倍、約3.3倍、約3.4倍、約3.5倍、約3.6倍、約3.7倍、約3.8倍、約3.9倍、約4倍、約4.1倍、約4.2倍、約4.3倍、約4.4倍、約4.5倍、約4.6倍、約4.7倍、約4.8倍、約4.9倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上)。いくつかの実施形態では、MHC−Iの発現レベルは、参照レベルと比べて少なくとも約2倍増加する。
他の実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)によってがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を治療する方法を提供し、本方法は、患者から得られた生体試料においてCCL2、CCL5、CCR7、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルを決定すること、発現レベルを参照レベルと比較すること、及び発現レベルが参照レベルと比べて変化(例えば、増加または減少)する場合に、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニストは、CCL2、CCL5、CCR7、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上の発現レベルが参照レベルと比べて患者の試料において増加する場合に、患者に投与される。いくつかの実施形態では、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及びCXCL10の発現レベルが決定される。
なお他の実施形態では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)によってがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を治療する方法を提供し、本方法は、VEGFアンタゴニストの投与後の時点で患者から得られた生体試料においてCCL2、CCL5、CCR7、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルを決定すること、発現レベルを参照レベルと比較すること、及び発現レベルが参照レベルと比べて増加する場合に、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)の患者への投与を継続することを含む。いくつかの実施形態では、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及びCXCL10の発現レベルが決定される。
いくつかの実施形態では、参照レベルは、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)の投与前(例えば、数分、数時間、数日、数週、数カ月、または数年前)に得られた患者由来の生体試料における1個以上の遺伝子(例えば、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及び/またはCXCL10)の発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、参照集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、1つ以上の遺伝子について事前に割り当てられた発現レベルである。他の実施形態では、参照レベルは、前の時点で患者から得られた生体試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルであり、前の時点とは、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)の投与の後である。他の実施形態では、参照レベルは、次なる時点で患者から得られた生体試料における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
いくつかの実施形態では、患者から得られた生体試料におけるCCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及び/またはCXCL10のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルは、参照レベルと比べて増加する(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上)。
別の態様では、本発明は、がんを有する患者を治療する方法を提供し、本方法は、抗がん剤の投与後の時点で患者から得られた腫瘍試料におけるT細胞の数(例えば、CD8+T細胞、例えば、末梢CD8+Teff細胞)を決定すること、腫瘍試料におけるT細胞の数(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)を参照試料におけるT細胞の数(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)と比較すること、及び患者の試料におけるT細胞(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)の数が参照試料と比べて増加する場合に、抗がん療法の実施を継続することによる。
いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、参照試料と比べて増加した数(例えば、少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.1倍、約3.2倍、約3.3倍、約3.4倍、約3.5倍、約3.6倍、約3.7倍、約3.8倍、約3.9倍、約4倍、約4.1倍、約4.2倍、約4.3倍、約4.4倍、約4.5倍、約4.6倍、約4.7倍、約4.8倍、約4.9倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上)のCD8+T細胞(例えば、末梢CD8+T細胞を有する。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体はベバシズマブである。
いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)またはVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)による療法は、好ましくは、無進行生存(PFS)及び/または全生存(OS)を含む生存を延長及び/または改善する。一実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)による療法は、治療されるがんのための認可されている抗腫瘍剤または標準治療の投与によって達成される生存と比べて、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%以上、生存を延長する。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、及び膵島細胞癌を含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、及び白血病またはリンパ性悪性疾患を有する。いくつかの実施形態では、がんには、腎臓癌(例えば、腎細胞癌腫(RCC)、例えば、転移性RCC)、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮系扁平上皮細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃(gastric)癌または胃(stomach)癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、肝臓癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メルケル細胞癌、菌状息肉腫、精巣癌、食道癌、胆管の腫瘍、頭頸部癌、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ種(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変性NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;移植後リンパ増殖性障害(PTLD);母斑症、浮腫(脳腫瘍と関連付けられるものなど)、またはメイグス症候群と関連付けられる異常な血管増殖が挙げられる。好ましい実施形態では、患者は、腎臓癌(例えば、RCC、例えば、mRCC)を有する。患者は、任意選択で、進行性、不応性、再発性、化学療法抵抗性、及び/または白金抵抗性型のがんを有してもよい。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、第2の治療薬を患者に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、免疫療法剤、細胞毒性剤、増殖阻害剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫療法剤はPD−L1軸結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD−L1軸結合アンタゴニストは、PD−L1結合アンタゴニスト、PD−1結合アンタゴニスト、及びPD−L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PD−L1軸結合アンタゴニストはPD−L1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは抗体である。いくつかの実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、YW243.55.S70、MDX−1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、活性化副刺激分子に向けたアゴニストと同時投与されてもよい。いくつかの実施形態では、活性化副刺激分子は、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127を含んでもよい。いくつかの実施形態では、活性化副刺激分子に向けたアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127に結合するアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、阻害性副刺激分子に向けたアンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、阻害性副刺激分子は、CTLA−4(CD152としても知られる)、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3、B7−H3、B7−H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼを含んでもよい。いくつかの実施形態では、阻害性副刺激分子に向けたアンタゴニストは、CTLA−4、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3、B7−H3、B7−H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。先行する実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニストは、更に、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)と共に投与されてもよい。
いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CTLA−4(CD152としても知られる)に向けたアンタゴニスト、例えば、遮断抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、イピリムマブ(MDX−010、MDX−101、またはYERVOY(登録商標)としても知られる)と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、トレメリムマブ(チシリムマブまたはCP−675,206としても知られる)と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、B7−H3に向けたアンタゴニスト(CD276としても知られる)、例えば、遮断抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、MGA271と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、TGF−ベータに向けたアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(metelimumab)(CAT−192としても知られる)、フレソリムマブ(fresolimumab)(GC1008としても知られる)、またはLY2157299と共に投与されてもよい。先行する実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニストは、更に、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)と共に投与されてもよい。
いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CD137に向けたアゴニスト(TNFRSF9、4−1BB、またはILAとしても知られる)、例えば、活性化抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、ウレルマブ(BMS−663513としても知られる)と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CD40に向けたアゴニスト、例えば、活性化抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CP−870893と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、OX40に向けたアゴニスト(CD134としても知られる)、例えば、活性化抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、抗OX40抗体(例えば、AgonOX)と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CD27に向けたアゴニスト、例えば、活性化抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CDX−1127と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、TIGITに向けたアンタゴニスト、例えば、抗TIGIT抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、インドールアミン−2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)に向けたアンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、IDOアンタゴニストは、1−メチル−D−トリプトファン(1−D−MTとしても知られる)である。先行する実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニストは、更に、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)と共に投与されてもよい。
いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、がんワクチンと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、がんワクチンは、ペプチドがんワクチンであり、これは、いくつかの実施形態では、個人化されたペプチドワクチンである。いくつかの実施形態では、ペプチドがんワクチンは、多価長鎖ペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチンである(例えば、Yamada et al.,Cancer Sci.104:14−21,2013を参照されたい)。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、アジュバントと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、TLRアゴニスト、例えば、Poly−ICLC(HILTONOL(登録商標)としても知られる)、LPS、MPL、またはCpG ODNを含む治療と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、腫瘍壊死因子(TNF)アルファと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、IL−1と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、HMGB1と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、IL−10アンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、IL−4アンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、IL−13アンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、HVEMアンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、ICOSアゴニストと共に、例えば、ICOS−L、またはICOSに向けたアゴニスト抗体の投与によって、投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CX3CL1を標的化する治療と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CXCL9を標的化する治療と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CXCL10を標的化する治療と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CCL5を標的化する治療と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、LFA−1またはICAM1アゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、セレクチンアゴニストと共に投与されてもよい。先行する実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニストは、更に、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)と共に投与されてもよい。
がんの予防または治療のためには、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)の用量は、上で定義される治療されるがんの種類、がんの重症度及び経過、抗体が予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、事前療法、患者の病歴及び薬物に対する応答、ならびに主治医の裁量に応じることになる。
いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体、及び任意の第2の治療薬、例えば、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD−L1結合アンタゴニスト))は、一度にまたは一連の治療にわたって患者に好適に投与され得る。1つの典型的な日用量は、上で言及した因子に応じて、約1μg/kg〜100mg/kg以上であり得る。病状に応じて数日以上にわたる反復投与については、治療は、一般的に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続される。かかる用量は、間欠的に、例えば、週に1回または3週に1回(例えば、患者が、例えば、約2〜約20回、または例えば、約6回のVEGFアンタゴニストの用量を受けるように)投与され得る。最初により高い負荷の用量、続いて1回以上のより低い用量が投与され得る。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であってもよい。この療法の進行は、従来の技法及びアッセイによって容易にモニタリングされる。
例えば、一般的な提案としては、ヒトに投与される治療有効量のVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体、及び任意の第2の治療薬、例えば、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD−L1結合アンタゴニスト))は、1回またはそれ以上の投与で、患者の体重1kgあたり約0.01〜約50mgの範囲となる。いくつかの実施形態では、使用される抗体は、例えば、約0.01mg/kg〜約45mg/kg、約0.01mg/kg〜約40mg/kg、約0.01mg/kg〜約35mg/kg、約0.01mg/kg〜約30mg/kg、約0.01mg/kg〜約25mg/kg、約0.01mg/kg〜約20mg/kg、約0.01mg/kg〜約15mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.01mg/kg〜約5mg/kg、または0.01mg/kg〜約1mg/kgであり、毎日、毎週、2週毎、3週毎、または毎月投与される。いくつかの実施形態では、抗体は15mg/kgで投与される。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であってもよい。一実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及び/またはPD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD−L1結合アンタゴニスト)は、21日周期の1日目(3週毎、q3w)に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約420mg、約500mg、約525mg、約600mg、約700mg、約800mg、約840mg、約900mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、または約1800mgの用量でヒトに投与される。
いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、3週毎(q3w)に1200mgで静脈内投与される。いくつかの実施形態では、ベバシズマブは、一度にまたは一連の治療にわたって固定用量で投与される。固定用量が投与される場合、好ましくは、用量は約5mg〜約2000mgの範囲である。例えば、固定用量は、約420mg、約525mg、約840mg、または約1050mgであってもよい。いくつかの実施形態では、ベバシズマブは、2週毎に10mg/kgで静脈内投与される。いくつかの実施形態では、ベバシズマブは、3週毎に15mg/kgで静脈内投与される。VEGFアンタゴニスト及び/またはPD−L1軸結合アンタゴニストの用量は、単回用量または複数回用量(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上の用量)として投与され得る。一連の用量が投与される場合、これらは、例えば、ほぼ毎週、ほぼ2週毎、ほぼ3週毎、またはほぼ4週毎に投与されてもよい。併用治療において投与される抗体の用量は、単独治療と比較して低減されてもよい。この療法の進行は、従来の技法によって容易にモニタリングされる。
VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)または任意の追加の治療薬(例えば、PD−L1軸結合アンタゴニスト)は、良好な医療行為と一致する様式で、製剤化、投薬、及び投与され得る。この背景で検討する因子には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に既知である他の因子が含まれる。VEGFアンタゴニストは、必須ではないが任意選択で、問題の障害を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤と共に製剤化及び/または同時投与される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するVEGFアンタゴニストの量、障害または治療の種類、及び上で考察された他の因子に応じる。これらは、一般に、本明細書に記載のものと同じ投薬量で、本明細書記載の投与経路によって、または本明細書に記載の投薬量の約1〜99%、または適切であると経験的/臨床的に決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
いくつかの実施形態では、先行する方法のうちのいずれも、追加の治療薬を投与することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、免疫療法剤、細胞毒性剤、増殖阻害剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)と同時投与される。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、同じ製剤の一部として投与される。他の実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)とは別に投与される。
いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、活性化副刺激分子に向けたアゴニストと同時投与される。いくつかの実施形態では、活性化副刺激分子は、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127を含んでもよい。いくつかの実施形態では、活性化副刺激分子に向けたアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127に結合するアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、阻害性副刺激分子に向けたアンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、阻害性副刺激分子は、CTLA−4(CD152としても知られる)、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3、B7−H3、B7−H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼを含んでもよい。いくつかの実施形態では、阻害性副刺激分子に向けたアンタゴニストは、CTLA−4、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3、B7−H3、B7−H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CTLA−4(CD152としても知られる)に向けたアンタゴニスト、例えば、遮断抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、イピリムマブ(MDX−010、MDX−101、またはYERVOY(登録商標)としても知られる)と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、トレメリムマブ(チシリムマブまたはCP−675,206としても知られる)と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、B7−H3に向けたアンタゴニスト(CD276としても知られる)、例えば、遮断抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、MGA271と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、TGF−ベータに向けたアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(metelimumab)(CAT−192としても知られる)、フレソリムマブ(fresolimumab)(GC1008としても知られる)、またはLY2157299と共に投与されてもよい。
いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CD137に向けたアゴニスト(TNFRSF9、4−1BB、またはILAとしても知られる)、例えば、活性化抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、ウレルマブ(BMS−663513としても知られる)と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CD40に向けたアゴニスト、例えば、活性化抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CP−870893と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、OX40に向けたアゴニスト(CD134としても知られる)、例えば、活性化抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、抗OX40抗体(例えば、AgonOX)と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CD27に向けたアゴニスト、例えば、活性化抗体と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CDX−1127と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、インドールアミン−2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)に向けたアンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、IDOアンタゴニストは、1−メチル−D−トリプトファン(1−D−MTとしても知られる)である。
いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、がんワクチンと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、がんワクチンは、ペプチドがんワクチンであり、これは、いくつかの実施形態では、個人化されたペプチドワクチンである。いくつかの実施形態では、ペプチドがんワクチンは、多価長鎖ペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチンである(例えば、Yamada et al.,Cancer Sci.104:14−21,2013を参照されたい)。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、アジュバントと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、TLRアゴニスト、例えば、Poly−ICLC(HILTONOL(登録商標)としても知られる)、LPS、MPL、またはCpG ODNを含む治療と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、腫瘍壊死因子(TNF)アルファと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、IL−1と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、HMGB1と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、IL−10アンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、IL−4アンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、IL−13アンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、HVEMアンタゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、ICOSアゴニストと共に、例えば、ICOS−L、またはICOSに向けたアゴニスト抗体の投与によって、投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CX3CL1を標的化する治療と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CXCL9を標的化する治療と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CXCL10を標的化する治療と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、CCL5を標的化する治療と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、LFA−1またはICAM1アゴニストと共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、セレクチンアゴニストと共に投与されてもよい。
先行する実施形態のうちのいずれも、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)の投与を更に伴ってもよい。例えば、VEGFアンタゴニストは、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)及び別の免疫療法剤と共に投与されてもよい。
化学療法剤は、投与される場合、通常、その結果分かった投薬量、または任意選択で、薬物の複合作用もしくは化学療法剤の投与に帰す副作用に起因して低下した投薬量で投与される。かかる化学療法剤の調製及び投薬スケジュールは、製造業者の指示に従ってまたは当業者によって経験的に決定されるように使用され得る。化学療法剤がパクリタキセルである場合、好ましくは、化学療法剤は、約130mg/m2〜200mg/m2(例えば、約175mg/m2)の用量で、例えば、3時間かけて、3週に1回、投与される。化学療法剤がカルボプラチンである場合、好ましくは、化学療法剤は、患者の先在腎機能または腎機能及び所望の血小板最下点に基づくカルバート式を使用して、カルボプラチンの用量を計算することによって投与される。腎排泄がカルボプラチンの主要な排除経路である。体表面積に基づく経験的な用量計算と比較して、この投薬処方を使用することにより、さもなければ過少投薬(平均以上の腎機能を有する患者において)または過剰投薬(腎機能障害を有する患者において)のいずれかを引き起こし得る前治療腎機能における患者の差を補償することが可能となる。単剤カルボプラチンを使用する4〜6mg/mL/分の標的AUCが、以前に試験された患者において最適な用量範囲を提供するようである。
上記の療法レジメンに加えて、患者は、腫瘍及び/またはがん細胞の外科的除去に供されてもよい。
上述のかかる併用療法は、併用投与(2つ以上の治療薬が同じまたは別々の製剤に含まれる)、ならびにVEGFアンタゴニストの投与が追加の治療薬または薬剤(例えば、PD−L1軸結合アンタゴニスト)の投与の前、それと同時、及び/またはその後に生じ得る、個別投与を包含する。一実施形態では、VEGFアンタゴニストの投与と追加の治療薬(例えば、PD−L1軸結合アンタゴニスト)の投与とは、互いの約1カ月以内、または約1、2、もしくは3週以内、または1、2、3、4、5、もしくは6日以内に生じる。
いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニスト及び第2の治療薬(例えば、PD−L1軸結合アンタゴニスト)の投与は、追加の治療薬または薬剤の投与の前、それと同時、及び/またはその後に生じ得る。一実施形態では、VEGFアンタゴニスト及び第2の治療薬(例えば、PD−L1軸結合アンタゴニスト)の投与と追加の治療薬の投与とは、互いの約1カ月以内、または約1、2、もしくは3週以内、または1、2、3、4、5、もしくは6日以内に生じる。
VEGFアンタゴニストまたは第2の治療薬(例えば、PD−L1軸結合アンタゴニスト)のいずれかが抗体(例えば、ベバシズマブまたはアテゾリズマブ)である実施形態では、投与される抗体は裸抗体であってもよい。投与されるVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及び第2の治療薬(例えば、PD−L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD−L1結合アンタゴニスト))は、細胞毒性剤と抱合され得る。好ましくは、抱合及び/またはそれが結合する抗原は、細胞によって取り込まれ、抱合体が結合するがん細胞の殺滅におけるその治療有効性の増大をもたらす。好ましい実施形態では、細胞毒性剤は、がん細胞中の核酸を標的化するか、またはそれに干渉する。かかる細胞毒性剤の例には、マイタンシノイド、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼ、及びDNAエンドヌクレアーゼが挙げられる。
本明細書に記載の方法で利用される組成物は、任意の好適な方法によって投与され得、これらの方法には、例えば、静脈内に、筋肉内に、皮下に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、髄腔内に、鼻腔内に、腟内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹膜に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼内に、眼窩内に、経口的に、局所的に、経皮的に、硝子体内に(例えば、硝子体内注射により)、点眼により、吸入により、注射により、移植により、注入により、持続注入により、標的細胞を直接的に浸す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームに入れて、または脂質組成物に入れて、が挙げられる。本明細書に記載の方法で利用される組成物はまた、全身または局所投与され得る。投与方法は、様々な要因(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて様々であり得る。いくつかの実施形態では、VEGFアンタゴニストは、静脈内に、筋肉内に、皮下に、局所的に、経口的に、経皮的に、腹腔内に、眼窩内に、移植により、吸入により、髄腔内に、脳室内に、または鼻腔内に投与される。投薬は、投与が短期または長期であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路、例えば、静脈内または皮下注入などの注入によるものであり得る。単回投与または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが本明細書で企図される。
別の態様では、がんに罹患している患者の治療に使用するための医薬品の製造における有効量のVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)の使用が本明細書で提供され、ここでは、患者から得られた生体試料は、参照レベルと比べて増加した、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、もしくはCXCL13、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを有することが決定されている。
更なる態様では、がんに罹患している患者の治療に使用するための医薬品の製造における有効量のVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)の使用が本明細書で提供され、ここでは、患者から得られた生体試料は、参照レベルと比べて増加したMHC−Iの発現レベルを有することが決定されている。
なお更なる態様では、がんに罹患している患者の治療に使用するための医薬品の製造における有効量のVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)の使用が本明細書で提供され、ここでは、患者から得られた生体試料は、参照レベルと比べて増加した、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルを有することが決定されている。
先行する方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、患者はヒト患者である。
IV.組成物
一態様では、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を含む抗がん剤が、がんにおける抗腫瘍作用を有するという発見に一部基づく。ある特定の実施形態では、VEGFアンタゴニストが提供される。これらの薬剤及びそれらの組み合わせは、例えば、本明細書に記載の方法のうちのいずれかの一部として、がんの治療に有用である。
いくつかの態様では、がんに罹患している患者の治療方法に使用するためのVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)が提供され、ここでは、患者から得られた生体試料は、参照レベルと比べて増加した、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、もしくはCXCL13、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを有することが決定されている。また、がんに罹患している患者の治療方法に使用するための有効量のVEGFアンタゴニストを含む組成物が提供され、ここでは、患者から得られた生体試料は、参照レベルと比べて増加した免疫遺伝子特性の発現レベルを有することが決定されており、この免疫遺伝子特性は、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、もしくはCXCL13、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)を含む。
他の態様では、がんに罹患している患者の治療方法に使用するためのVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)が提供され、ここでは、患者から得られた生体試料は、参照レベルと比べて増加したMHC−Iの発現レベルを有することが決定されている。また、がんに罹患している患者の治療方法に使用するための有効量のVEGFアンタゴニストを含む組成物が提供され、ここでは、患者から得られた生体試料は、参照レベルと比べて増加したMHC−Iの発現レベルを有することが決定されている。
更なる態様では、がんに罹患している患者の治療方法に使用するためのVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)が提供され、ここでは、患者から得られた生体試料は、参照レベルと比べて増加した、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1個以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の発現レベルを有することが決定されている。また、がんに罹患している患者の治療方法に使用するための有効量のVEGFアンタゴニストを含む組成物が提供され、ここでは、患者から得られた生体試料は、参照レベルと比べて増加した、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10から選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを有することが決定されている。
A.例示的なVEGFアンタゴニスト
本発明のVEGFアンタゴニストには、VEGFと結合する、VEGF発現レベルを低減する、またはVEGFの生物活性を中和する、遮断する、阻害する、無効化する、低減する、もしくはそれに干渉することができる任意の分子が含まれる。例示的なヒトVEGFは、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号P15692、Gene ID(NCBI):7422として示される。
いくつかの事例では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。いくつかの実施形態では、抗VEGF抗体は、「rhuMab VEGF」または「AVASTIN(登録商標)」としても知られるベバシズマブである。ベバシズマブは、Prestaら(Cancer Res.57:4593−4599,1997)に従って生成される組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。これは、変異型ヒトIgG1フレームワーク領域と、ヒトVEGFのその受容体への結合を妨害するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1由来の抗原結合相補性決定領域とを含む。フレームワーク領域の大部分を含む、ベバシズマブのアミノ酸配列の約93%が、ヒトIgG1から誘導され、配列の約7%が、マウス抗体A4.6.1から誘導される。ベバシズマブは、分子量が約149,000ダルトンであり、グリコシル化される。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日発行の米国特許第6,884,879号に更に記載されており、その開示全体が参照により明示的に本明細書に組み込まれる。追加の好ましい抗体には、PCT出願公開第WO2005/012359号に記載されているG6またはB20シリーズ抗体(例えば、G6−31、B20−4.1)が含まれる。追加の好ましい抗体については、米国特許第7,060,269号、同第6,582,959号、同第6,703,020号;同第6,054,297号;WO98/45332;WO96/30046;WO94/10202;EP0666868B1;米国特許出願公開第2006009360号、同第20050186208号、同第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、及び同第20050112126;ならびにPopkov et al.(Journal of Immunological Methods 288:149−164,2004)を参照されたい。他の好ましい抗体には、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、191、K101、E103、及びC104を含むか、または代替的に残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、183、及びQ89を含む、ヒトVEGF上の機能エピトープに結合するものが含まれる。
他の事例では、VEGFアンタゴニストは、抗VEGFR2抗体または関連する分子(例えば、ラムシルマブ、タニビルマブ、アフリベルセプト);抗VEGFR1抗体または関連する分子(例えば、イクルクマブ、アフリベルセプト(VEGF Trap−Eye;EYLEA(登録商標))、またはジブ−アフリベルセプト(ziv−aflibercept)(VEGF Trap;ZALTRAP(登録商標)));二重特異性VEGF抗体(例えば、MP−0250、バヌシズマブ(VEGF−ANG2)、またはUS2001/0236388に開示されている二重特異性抗体);抗VEGFアーム、抗VEGFR1アーム、及び抗VEGFR2のうちの2つの組み合わせを含む二重特異性抗体;抗VEGFA抗体(例えば、ベバシズマブ、セバシズマブ);抗VEGFB抗体;抗VEGFC抗体(例えば、VGX−100)、抗VEGFD抗体;または非ペプチド小分子VEGFアンタゴニスト(例えば、パゾパニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、スチバーガ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、テラチニブ、ドビチニグ(dovitinig)、セジラニブ、モテサニブ、スルファチニブ、アパチニブ、フォレチニブ、ファミチニブ、及びチボザニブ)である。
上に列挙された実施形態のうちのいずれかにおいて使用するためのかかるVEGFアンタゴニスト抗体、または本明細書に記載の他の抗体(例えば、VEGF発現レベルの検出のための抗VEGF抗体)は、以下のC節のi節〜vii節に記載の特徴の任意のものを、単独または組み合わせで有し得ることが、明示的に企図される。
B.例示的なPD−L1軸結合アンタゴニスト
本発明の方法に使用され得るPD−L1軸結合アンタゴニストは、PD−1結合アンタゴニスト、PD−L1結合アンタゴニスト、及びPD−L2結合アンタゴニストを含む。PD−1(プログラム死1)は、当該技術分野において「プログラム細胞死1」、「PDCD1」、「CD279」、及び「SLEB2」とも称される。例示的なヒトPD−1は、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号Q15116に示される。PD−L1(プログラム死リガンド1)は、当該技術分野において「プログラム細胞死1リガンド1」「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7−H」、及び「PDL1」とも称される。例示的なヒトPD−L1は、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号第Q9NZQ7.1号に示される。PD−L2(プログラム死リガンド2)は、当該技術分野において「プログラム細胞死1リガンド2」、「PDCD1LG2」、「CD273」、「B7−DC」、「Btdc」、及び「PDL2」とも称される。例示的なヒトPD−L2は、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号第Q9BQ51に示される。いくつかの実施形態では、PD−1、PD−L1、及びPD−L2は、ヒトPD−1、PD−L1、及びPD−L2である。
いくつかの事例では、PD−L1軸結合アンタゴニストはPD−L1結合アンタゴニストである。いくつかの事例では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。他の事例では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1のPD−1への結合を阻害する。また他の事例では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1のB7−1への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1のPD−1及びB7−1両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD−L1結合アンタゴニストは抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MDX−1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。
いくつかの事例では、PD−L1軸結合アンタゴニストはPD−1結合アンタゴニストである。例えば、いくつかの事例では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1のPD−L1への結合を阻害する。他の事例では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1のPD−L2への結合を阻害する。また他の事例では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1のPD−L1及びPD−L2両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD−1結合アンタゴニストは抗体である。いくつかの事例では、抗体は、MDX 1106(ニボルマブ)、MK−3475(ペンブロリズマブ)、CT−011(ピディリズマブ)、MEDI−0680(AMP−514)、PDR001、REGN2810、及びBGB−108からなる群から選択される。いくつかの事例では、PD−1結合アンタゴニストはFc融合タンパク質である。例えば、いくつかの事例では、Fc融合タンパク質はAMP−224である。
更なる態様では、本発明は、医薬品の製造または調製におけるPD−L1軸結合アンタゴニストの使用を提供する。一実施形態では、医薬品は、がんの治療用である。更なる実施形態では、医薬品は、腎臓癌(例えば、腎細胞癌腫(RCC)、例えば、転移性RCC(mRCC))に罹患している患者に有効量の医薬品を投与することを含む、がんを治療する方法において使用するためのものである。1つのかかる実施形態では、本方法は、例えば、以下に記載のような、有効量の少なくとも1つの追加の治療薬を個体に投与することを更に含む。
いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD−1リガンド結合パートナーはPD−L1及び/またはPD−L2である。別の実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1のその結合リガンドへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD−L1結合パートナーはPD−1及び/またはB7−1である。別の実施形態では、PD−L2結合アンタゴニストは、PD−L2のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD−L2結合リガンドパートナーはPD−1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、例えば、以下に記載のような、抗PD−1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態では、抗PD−1抗体は、MDX−1106(ニボルマブ)、MK−3475(ペンブロリズマブ)、CT−011(ピディリズマブ)、MEDI−0680(AMP−514)、PDR001、REGN2810、及びBGB−108からなる群から選択される。MDX−1106−04、ONO−4538、BMS−936558、またはニボルマブとしても知られるMDX−1106は、WO2006/121168に記載されている抗PD−1抗体である。ペンブロリズマブまたはランブロリズマブとしても知られるMK−3475は、WO2009/114335に記載されている抗PD−1抗体である。hBAT、hBAT−1、またはピディリズマブとしても知られるCT−011は、WO2009/101611に記載されている抗PD−1抗体である。いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD−L1またはPD−L2の細胞外またはPD−1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストはAMP−224である。B7−DCIgとしても知られるAMP−224は、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されているPD−L2−Fc融合可溶性受容体である。
いくつかの実施形態では、抗PD−1抗体はMDX−1106である。「MDX−1106」の代替名には、MDX−1106−04、ONO−4538、BMS−936558、及びニボルマブが挙げられる。いくつかの実施形態では、抗PD−1抗体はニボルマブ(CAS登録番号:946414−94−4)である。いくつかの実施形態では、抗PD−1抗体は、国際特許出願公開第WO2013/019906号に記載されている任意の抗PD−1抗体である。
いくつかの実施形態では、PD−L1軸結合アンタゴニストはPD−L2結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD−L2結合アンタゴニストは抗PD−L2抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態では、PD−L2結合アンタゴニストはイムノアドヘシンである。いくつかの実施形態では、PD−L2結合アンタゴニストは、国際特許出願公開第WO2013/019906号に記載されている任意のPD−L2結合アンタゴニストである。
いくつかの実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、例えば、以下に記載のような、抗PD−L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、PD−L1とPD−1との間、及び/またはPD−L1とB7−1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体はヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体はヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MDX−1105、及びMEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634に記載されている抗PD−L1である。BMS−936559としても知られるMDX−1105は、WO2007/005874に記載されている抗PD−L1抗体である。MEDI4736(デュルバルマブ)は、WO2011/066389及びUS2013/034559に記載されている抗PD−L1モノクローナル抗体である。本発明の方法に有用な抗PD−L1抗体、及びそれを作製するための方法の例は、参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許出願第WO2010/077634号、WO2007/005874、WO2011/066389、米国特許第8,217,149号、及びUS2013/034559に記載されている。
WO2010/077634A1及びUS8,217,149に記載されている抗PD−L1抗体が、本明細書に記載の方法において使用され得る。
本明細書の実施形態のうちのいずれにおいても、単離された抗PD−L1抗体は、ヒトPD−L1、例えば、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPD−L1、またはその変異型に結合し得る。
上に列挙された実施形態のうちのいずれかにおいて使用するためのかかるPD−L1軸結合アンタゴニスト抗体(例えば、抗PD−L1抗体、抗PD−1抗体、及び抗PD−L2抗体)、または本明細書に記載の他の抗体(例えば、PD−L1発現レベルの検出のための抗PD−L1抗体)は、以下のC節のi節〜vii節に記載の特徴の任意のものを、単独または組み合わせで有し得ることが、明示的に企図される。
C.抗体
i.抗体親和性
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体(例えば、抗VEGF抗体、抗PD−L1抗体、または抗PD−1抗体)は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10−8M以下、例えば、10−8M〜10−13M、例えば、10−9M〜10−13M)の解離定数(Kd)を有する。
一実施形態では、Kdは、放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一実施形態では、RIAは、目的の抗体及びその抗原のFabバージョンを用いて行われる。例えば、抗原についてのFabの溶液結合親和性は、Fabを、標識されていない抗原の滴定シリーズの存在下で最小濃度の(125I)で標識された抗原によって平衡化した後、抗Fab抗体でコーティングされたプレートを用いて結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881,1999を参照されたい)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸塩(pH9.6)中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、続いて、室温(約23℃)で2〜5時間、PBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンによってブロッキングする。非吸収性プレート(Nunc#269620)において、100pMまたは26pMの[125I]抗原を目的のFabの連続希釈物と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593−4599,1997における抗VEGF抗体、Fab−12の評定と一致して)。次に、目的のFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が達成されることを確実にするために、より長い期間(例えば、約65時間)継続し得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のため、捕捉プレートに移す。次に、溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT−20(商標);Packard)を添加し、プレートを10分間TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で計数する。20%以下の最大結合を付与する各Fabの濃度を競合結合アッセイにおける使用のために選択する。
別の実施形態に従うと、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)−2000またはBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイは、固定化抗原CM5チップを約10応答単位(RU)で用いて25℃で行われる。一実施形態では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5,BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化数。抗原をpH4.8の10mMの酢酸ナトリウムによって5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流量で注射し、カップリングされたタンパク質の約10応答単位(RU)を達成する。抗原の注射に続いて、1Mのエタノールアミンを注射して、未反応群をブロッキングする。動態測定のため、Fabの2倍連続希釈物(0.78nMから500nM)を、約25μl/分の流量で25℃で0.05%のポリソルベート20(TWEEN−20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中に注射する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Software、バージョン3.2)を使用して、会合センサグラム及び解離センサグラムを同時に適合させることによって、計算する。平衡解離定数(Kd)をkoff/konの比として計算する。例えば、Chen et al.,(J.Mol.Biol.293:865−881,1999を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによって会合速度が106M−1s−1を超過する場合には、会合速度は、ストップフローを装備した分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを有する8000−series SLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定した、漸増濃度の抗原の存在下におけるpH7.2のPBS中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域)の増減を測定する、蛍光消光技法の使用によって決定することができる。
ii.抗体断片
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗VEGF抗体)は抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、Fv、及びscFv断片、ならびに以下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.(Nat.Med.9:129−134,2003)を参照されたい。scFv断片に関する概説については、例えば、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer−Verlag,New York),pp.269−315(1994)を参照されたい。WO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)2断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.Nat.Med.9:129−134,2003及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448,1993を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.(Nat.Med.9:129−134,2003)に記載されている。
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む、抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)。
抗体断片は、既知の方法に従う、インタクトな抗体のタンパク分解、ならびに組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)の産生を含むが、これらに限定されない、様々な技法によって作製され得る。
iii.キメラ抗体及びヒト化抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗VEGF抗体)はキメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855,1984)に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えばサルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
ある特定の実施形態では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、非ヒト親抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるために、ヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、及びFR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意選択で、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むことになる。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,(Front.Biosci.13:1619−1633,2008)において概説されており、例えば、Riechmann et al.(Nature 332:323−329,1988);Queen et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033,1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.(Methods 36:25−34,2005)(特異性決定領域(SDR)移植について記載);Padlan,(Mol.Immunol.28:489−498,1991)(「リサーフェシング」について記載);Dall’Acqua et al.(Methods 36:43−60,2005)(「FRシャフリング」について記載);Osbourn et al.(Methods 36:61−68,2005)、及びKlimka et al.(Br.J.Cancer,83:252−260,2000)(FRシャフリングへの「誘導選択」アプローチについて記載)に更に記載されている。
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「最良適合」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296,1993);軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位集団のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285,1992;及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623,1993を参照されたい);ヒト成熟(体細胞変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619−1633,2008を参照されたい);ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678−10684,1997;及びRosok et al.J.Biol.Chem.271:22611−22618,1996を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。
iv.ヒト抗体
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体(例えば、抗VEGF抗体)はヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の技法を使用して産生することができる。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel,(Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74(2001)及びLonberg(Curr.Opin.Immunol.20:450−459,2008)に概して記載されている。
ヒト抗体は、抗原投与に応答して、インタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修正されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより調製され得る。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するかもしくは動物の染色体内にランダムに組み込まれているヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,(Nat.Biotech.23:1117−1125,2005)を参照されたい。例えば、XENOMOUSE(商標)技術を説明している米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号、HUMAB(登録商標)技術を説明している米国特許第5,770,429号、K−M MOUSE(登録商標)技術を説明している米国特許第7,041,870号、ならびにVELOCIMOUSE(登録商標)技術を説明している米国特許出願公開第2007/0061900号)も参照されたい。かかる動物により生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることにより更に修飾され得る。
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が説明されている。例えば、Kozbor,(J.Immunol.133:3001,1984);Brodeur et al.(Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63,Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.(J.Immunol.,147:86,1991)を参照されたい。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体も、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557−3562,2006に記載されている。更なる方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を説明する)及びNi,(Xiandai Mianyixue,26(4):265−268,2006)(ヒト−ヒトハイブリドーマを説明する)で説明されているものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein,(Histology and Histopathology,20(3):927−937,2005)及びVollmers and Brandlein,(Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185−91,2005)でも説明されている。
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。次いで、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法は、以下に記載される。
v.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体(例えば、抗VEGF抗体)は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を保有する抗体に関してかかるライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で既知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.(Methods in Molecular Biology 178:1−37,O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)で概説されており、例えば、McCafferty et al.(Nature 348:552−554,1990);Clackson et al.(Nature 352:624−628,1991);Marks et al.(J.Mol.Biol.222:581−597,1992);Marks and Bradbury,(Methods in Molecular Biology 248:161−175,Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhu et al.(J.Mol.Biol.338(2):299−310,2004);Lee et al.(J.Mol.Biol.340(5):1073−1093,2004);Fellouse,(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472,2004);及びLee et al.(J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132,2004)で更に説明されている。
ある特定のファージディスプレイ方法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別個にクローニングされ、ファージライブラリで無作為に組み換えられ、これが、次いで、Winter et al.(Ann.Rev.Immunol.,12:433−455,1994)に記載されているように抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして抗体断片をディスプレイする。免疫化源由来のライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、高親和性抗体を免疫原に提供する。あるいは、Griffiths et al.(EMBO J,12:725−734,1993)によって説明されるように、ナイーブレパートリーは、クローン化され(例えば、ヒトから)、いかなる免疫化も伴わずに、幅広い非自己抗原及び自己抗原に対する抗体の単一の源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter,(J.Mol.Biol.,227:381−388,1992)によって説明されているように、幹細胞由来の再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用することによっても合成的に作製されて、高度可変CDR3領域をコードし、インビトロでの再配列を達成することができる。ヒト抗体ファージライブラリを説明している特許公開には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書でヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
vi.多重特異性抗体
上記の態様のいずれか1つでは、本明細書に提供される抗体(例えば、抗VEGF抗体)は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体であり得る。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。ある特定の実施形態では、結合特異性の一方は、VEGFに対するものであり、他方は、任意の他の抗原、例えばPD−L1に対するものである。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、VEGFの2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体を使用して、VEGFを発現する細胞に細胞毒性剤を局所化することもできる。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製され得る。
多重特異性抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537,1983)、WO93/08829、及びTraunecker et al.EMBO J.10:3655,1991を参照されたい)、及び「ノブインホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体はまた、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電式ステアリング効果を遺伝子操作すること(例えば、WO2009/089004A1を参照されたい)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号及びBrennan et al.Science 229:81,1985を参照されたい)、二重特異性抗体を作製するためのロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al.J.Immunol.148(5):1547−1553,1992を参照されたい)、二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448,1993を参照されたい)、一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.J.Immunol.152:5368,1994)、ならびに例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60,1991)で説明されている三重特異性抗体を調製することによって作製されてもよい。
「オクトパス抗体」を含む3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体も、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
本明細書の抗体または断片には、PD−L1及び別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用Fab」または「DAF」も含まれる。本明細書の抗体または断片には、VEGF及び別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含むDAFも含まれる。
vii.抗体変異型
ある特定の実施形態では、本発明の抗体(例えば、抗VEGF抗体)のアミノ酸配列変異型が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異型は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによるか、またはペプチド合成により調製され得る。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内における、残基からの欠失、及び/またはそこへの挿入、及び/またはその置換が含まれる。最終構築物に到達するように、欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせることができるが、但し、その最終構築物が、所望の特徴、例えば、抗原結合性を有することを条件とする。
a.置換、挿入、及び欠失変異型
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異型が提供される。置換型突然変異誘発の目的とする部位は、HVR及びFRを含む。保存的置換は、表1において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表1において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載される通りである。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、その産物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングされ得る。
表1.例示的な好ましいアミノ酸置換
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
置換型変異型の1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。一般に、更なる研究のために選択される得られた変異型(複数可)は、親抗体と比べて、特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加及び/または免疫原性の低減)における変更(例えば、改善)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有することになる。例示的な置換型変異型は、例えば、本明細書に記載の技法などのファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して簡便に生成され得る親和性成熟抗体である。簡潔には、1つ以上のHVR残基が変異し、変異型抗体がファージにディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
改変(例えば、置換)は、HVRにおいて、例えば抗体親和性を改善するために行われ得る。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179−196,2008を参照されたい)、及び/または抗原と接触する残基で行われ得、結果として得られた変異型VHまたはVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、そこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.(Methods in Molecular Biology 178:1−37,O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)で説明されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが創出される。次いで、ライブラリがスクリーニングされ、所望の親和性を有する任意の抗体変異型を特定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4〜6つの残基)が無作為化されるHVR指向手法を伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを使用して、具体的に特定され得る。特に、CDR−H3及びCDR−L3が標的化されることが多い。
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書に提供されるような保存的置換)がHVR内で行われ得る。かかる改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であってもよい。上で提供される変異型VH及びVL配列の特定の実施形態では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つ、または3つ以下のアミノ酸置換を有するかのいずれかである。
突然変異誘発のために標的化され得る抗体の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells(Science,244:1081−1085,1989)によって説明されている「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基の残基または基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)が特定され、中性または負に荷電されたアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置き換えられ、抗体の抗原との相互作用が影響を受けたかどうかを決定する。更なる置換が最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接触点を特定するための抗原−抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接する残基が置換の候補として標的とされてもよく、または排除されてもよい。変異型がスクリーニングされて、それらが所望の特性を有するかどうかが決定され得る。
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異型には、酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端もしくはC末端の融合が挙げられ、これは抗体の血清半減期を増加させる。
b.グリコシル化変異型
ある特定の実施形態では、本発明の抗体を改変して、抗体がグリコシル化する程度を増加または減少させることができる。本発明の抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位を創出するかまたは除去するように、アミノ酸配列を改変することによって簡便に達成することができる。
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26−32,1997を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態では、特定の特性が改善された抗体変異型を作製するために、本発明の抗体中におけるオリゴ糖の修飾が行われ得る。
一実施形態では、Fc領域に結合した(直接的にまたは間接的に)フコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異型が提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%、または20%〜40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546で説明されているMALDI−TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸、上流または下流、即ち、294〜300位の間に位置してもよい。かかるフコシル化変異型は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号、同第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠乏」抗体変異型に関する公表文献の例には、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki et al.(J.Mol.Biol.336:1239−1249,2004);及びYamane−Ohnuki et al.(Biotech.Bioeng.87:614,2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例には、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533−545,1986);米国特許出願第2003/0157108A1号;及びWO2004/056312A1、特に実施例11)、及びアルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane−Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614,2004;Kanda,Y.et al.Biotechnol.Bioeng.94(4):680−688,2006;及びWO2003/085107)が挙げられる。
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異型が更に提供される。かかる抗体変異型は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及びUS2005/0123546に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異型も提供される。かかる抗体変異型は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異型は、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764に記載されている。
c.Fc領域変異型
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が、本発明の抗体のFc領域内に導入され、それによりFc領域変異型が生成され得る。Fc領域変異型は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
ある特定の実施形態では、本発明は、全てではないが、いくつかのエフェクター機能を有することにより、インビボでの抗体の半減期が重要ではあるが、ある特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要または有害である用途に望ましい候補となる抗体変異体を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/欠乏を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠く(故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,(Annu.Rev.Immunol.9:457−492,1991)の464ページの表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評定するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:7059−7063,1986、及びHellstrom,I et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:1499−1502,1985;米国特許第5,821,337号;Bruggemann et al.J.Exp.Med.166:1351−1361,1987を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCYTOTOX 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい))。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、または加えて、目的の分子のADCC活性は、体内で、例えば、Clynes et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:652−656,1998)に開示されているものなどの動物モデルにおいて、評定されてもよい。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができないためにCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評定するために、CDCアッセイが行われ得る(例えば、Gazzano−Santoro et al.J.Immunol.Methods 202:163,1996;Cragg et al.Blood.101:1045−1052,2003;及びCragg et al.Blood.103:2738−2743,2004を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定も、当該技術分野で既知の方法を使用して行われ得る(例えば、Petkova et al.Int’l.Immunol.18(12):1759−1769,2006を参照されたい)。
低減したエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号及び同第8,219,149号)。かかるFc突然変異体は、アラニンへの残基265及び297の置換を有するいわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位、及び327位のうちの2つ以上において置換を有するFc突然変異体を含む(米国特許第7,332,581号及び同第8,219,149号)。
FcRへの結合が改善または低減されたある特定の抗体変異型が説明されている(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604,2001を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、抗体変異型は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.(J.Immunol.164:4178−4184,2000)で説明されている、改変された(即ち、改善したまたは低減した)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす変化が、Fc領域になされる。
母体IgGの胎児への移入に関与する、増加した半減期及び新生児型Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587,1976;及びKim et al.J.Immunol.24:249,1994)が、米国特許出願公開第2005/0014934A1号で説明されている。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する、1つ以上の置換を内部に有するFc領域を含む。かかるFc変異体には、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものを含む(米国特許第7,371,826号)。
Fc変異型の他の例に関して、Duncan and Winter,(Nature 322:738−40,1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及びWO94/29351も参照されたい。
d.システイン操作された抗体変異型
ある特定の実施形態では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作された抗体、例えば、「thioMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じる。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が抗体の到達可能な部位に位置付けられ、それを使用して、抗体を他の部分、例えば、薬物部分またはリンカー−薬物部分に抱合させて、本明細書に更に記載されるように、免疫抱合体を作製することができる。ある特定の実施形態では、以下の残基のうちの任意の1つ以上を、システインで置換することができる:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号で説明されているように生成し得る。
e.抗体誘導体
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように更に修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、いずれの分子量のものであってもよく、分岐状であっても非分岐状であってもよい。抗体に結合したポリマーの数は異なり得、1つ超のポリマーが結合している場合、それらは同じ分子であることも異なる分子であることもできる。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件下である療法に使用されるかなどを含むが、これらに限定されない、考慮すべき事項に基づいて決定され得る。
別の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分の抱合体が提供される。一実施形態では、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kam et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600−11605,2005)。放射線は、いずれの波長のものであってもよく、通常の細胞を傷つけないが、抗体−非タンパク質性部分に隣接する細胞が殺滅される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含むが、これらに限定されない。
f.免疫抱合体
本発明は、化学療法剤もしくは薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体などの1つ以上の細胞毒性剤に抱合された、本明細書の抗体(例えば、抗VEGF抗体)を含む免疫抱合体も提供する。
一実施形態では、免疫抱合体は、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号及び同第5,416,064号、ならびに欧州特許第EP0425235B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号、及び同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号;Hinman et al.Cancer Res.53:3336−3342,1993;及びLode et al.Cancer Res.58:2925−2928,1998を参照されたい);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al.Current Med.Chem.13:477−523,2006;Jeffrey et al.Bioorganic&Med.Chem.Letters 16:358−362,2006;Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717−721(2005);Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829−834(2000);Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529−1532,2002;King et al.,J.Med.Chem.45:4336−4343,2002;及び米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル(larotaxel)、テセタキセル(tesetaxel)、及びオルタタキセル(ortataxel)などのタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065を含むがこれらに限定されない1つ以上の薬物に抱合されている抗体−薬物抱合体(ADC)である。
別の実施形態では、免疫抱合体は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むがこれらに限定されない酵素活性毒素またはその断片に抱合された、本明細書に記載される抗体を含む。
別の実施形態では、免疫抱合体は、放射性原子に抱合され、放射性抱合体を形成する、本明細書に記載される抗体を含む。放射性抱合体の産生には、様々な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性抱合体を検出のために使用する場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、MRI)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含み得る。
抗体及び細胞傷害性剤の抱合体は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6−ジイソシアネート)、及びビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)などの多様な二官能性タンパク質結合剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.(Science 238:1098,1987)で説明されているように調製することができる。炭素−14で標識された1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞毒性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.Cancer Res.52:127−131,1992;及び米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
本明細書の免疫抱合体またはADCは、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、ならびにSVSB(サクシニミジル−(4−ビニルスルホン)安息香酸塩)を含むが、これらに限定されない架橋剤試薬で調製されるかかる抱合体を明示的に企図するが、これらに限定されない。
D.薬学的製剤
本発明に従って使用されるVEGFアンタゴニストの治療製剤(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)は、所望の純度を有するアンタゴニストを、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態にある任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより、保管のために調製される。製剤に関する一般情報に関しては、例えば、Gilman et al.(eds.)The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th Ed.,Pergamon Press,1990;A.Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.,Pennsylvania,1990;Avis et al.(eds.)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker,New York,1993;Lieberman et al.(eds.)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York,1990;Lieberman et al.(eds.),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New York,1990;及びWalters(ed.)Dermatological and Transdermal Formulations(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),Vol 119,Marcel Dekker,2002を参照されたい。
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、受容者に対し、利用される用量及び濃度で非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
本明細書の製剤は、1つ超の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。かかる医薬品の種類及び有効量は、例えば、製剤中に存在するアンタゴニストの量及び種類、ならびに患者の臨床的パラメータに依存する。
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技法によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル及びポリ−(メチルメタシレート)マイクロカプセル内に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、及び名のカプセル)中、またはマクロ乳濁液中に取り込まれ得る。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980に開示されている。
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の好適な例には、アンタゴニストを含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、このマトリクスは、成型品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にある。持続放出性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγ−L−グルタミン酸エチルとのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
上記の製品のうちのいずれも、PD−L1軸結合アンタゴニストの代わりに、またはそれに加えて本明細書に記載される免疫抱合体を含み得ることを理解されたい。
E.診断用キット及び製品
疾患または障害(例えば、腎臓癌を含むがん)を有する個体または患者由来の試料中における本発明のバイオマーカー(例えば、本明細書、例えば、上文または実施例に記載の任意のバイオマーカー、例えば、表2に列挙されるバイオマーカー)の存在を決定するための1つ以上の試薬を含む診断用キットが本発明に提供される。いくつかの事例では、試料中のバイオマーカーの存在により、個体がVEGFアンタゴニストで治療される際の有効性のより高い可能性が示される。いくつかの事例では、試料中のバイオマーカーの不在により、疾患を有する個体がVEGF軸結合アンタゴニストで治療される際に有効である可能性が低いことが示される。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載されるがん患者をモニタリングまたは治療する方法のうちのいずれかを行うために使用され得る。任意選択で、キットには、個体が試料中にバイオマーカーを発現する場合に、キットを使用して、疾患または障害を治療するための医薬品(例えば、VEGFアンタゴニスト、例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を選択するための指示書が更に含まれてもよい。別の事例では、指示書は、個体が試料中にバイオマーカーを発現しない場合に、キットを使用して、VEGFアンタゴニスト以外の医薬品を選択するためのものである。
薬学的に許容される担体中のVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)と、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)が、バイオマーカー(例えば、本明細書、例えば、上文または実施例に記載の任意のバイオマーカー、例えば、表2に列挙されるバイオマーカー)の発現に基づいて疾患または障害(例えば、がん)を有する患者を治療するためのものであることを示す添付文書とを同封して含む製品もまた本明細書に提供される。治療方法には、本明細書に開示される治療方法のいずれかが含まれる。VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)を含む薬学的組成物と、この薬学的組成物が、バイオマーカー(例えば、本明細書、例えば、上文または実施例に記載の任意のバイオマーカー、例えば、表2に列挙されるバイオマーカー)の発現に基づいて疾患または障害(例えば、がん)を有する患者を治療するためのものであることを示す添付文書とをパッケージ中に組み合わせて含む製品を製造するための方法に関する発明も更に提供される。
製品は、例えば、容器、及び容器上のまたは容器に関連するラベルまたは添付文書を含んでもよい。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、がんの医薬品を活性薬剤として含む組成物を保持または収容し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈用溶液袋またはバイアルであり得る)。
製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸干渉食塩水、リンガー溶液、及び/またはデキストロース溶液などの薬学的に許容される希釈緩衝液を含む第2の容器を更に含んでもよい。製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでもよい。
本発明の製品はまた、例えば添付文書の形態で、組成物が本明細書のバイオマーカー(複数可)の発現レベルに基づいてがんを治療するために使用されることを示す情報も含む。添付文書またはラベルは、紙面、または電子媒体上、例えば、磁気記録媒体(例えば、フロッピーディスク)、CD−ROM、汎用シリアルバス(USB)フラッシュドライブ、及び同様のものなどの任意の形態をとってもよい。ラベルまたは添付文書はまた、キットまたは製品中の薬学的組成物及び投与剤形に関する他の情報も含み得る。
実施例1:材料及び実験方法
A.試験設計
実施例1〜4に記載するIb相試験の目標は、以前に治療されていない進行性転移性腎細胞癌腫(mRCC)を有する患者に3週(q3w)毎に静脈内注入によって同時投与するときのヒトのモノクローナルの操作された抗VEGF抗体であるベバシズマブと組み合わせた抗PD−L1抗体アテゾリズマブの安全性及び忍容性を評価することであった。治療は、患者が研究者の意見による臨床的利益を経験する限り(即ち、許容できない毒性または疾患進行に起因する症状の悪化がない限り)、継続した。偽性進行が疑われた場合または応答がまちまちである証拠があった場合には、研究者の判断で患者に試験治療を受け続けることを許可した。試験目的には、腫瘍、ならびにベバシズマブ及びアテゾリズマブの投与と関連付けられる血中薬物動態マーカーの評価と、治療の組み合わせの抗腫瘍活性の予備評定が含まれた。
安全性評価(臨床面及び研究面)をスクリーニング時及び試験全体で行った。最終評価は最終投薬から30日後に行った。有害事象(AE)の発生率、性質、及び重症度を、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)、バージョン4.0に従って格付けした。
あらゆる評価可能または測定可能な疾患をスクリーニング時に記録し、各腫瘍評価時に再評価した。腫瘍評価を、2、4、6、8、12、及び16周期目の終了時、または臨床的に必要なときに行った。評定を、薬物投与周期の最終週の間、次の周期の治療開始前に行った。疾患進行以外の理由で試験治療を中止した患者は、患者が疾患進行を経験するか、更なる全身がん療法を開始するか、または死亡するまで、12週毎に腫瘍評定を受け続けた。
プロトコルで定義された用量制限毒性(DLT)基準には、標準等級≧3または4の血液学的毒性及び非血液学的毒性が含まれた。標識したq3w用量のベバシズマブと組み合わせて投与した推奨される2相用量のアテゾリズマブによって投与薬を開始したところ、DLTは報告されなかった。
B.患者
患先行する全身療法を受けていない進行性または転移性RCCを有した患者が、Ib相試験の本コホートへの参加対象であった。患者は、最低18歳であり、血液及び末端器官機能が十分であり、Eastern Cooperative Oncology Groupの一般状態が0または1であることが求められた。疾患は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)に従って測定可能である必要があった。既知の初発中枢神経系(CNS)悪性腫瘍または症候性CNS転移、自己免疫疾患の病歴もしくは危険、またはヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎、またはC型肝炎の感染を有する患者は除外した。抗CTLA−4、抗PD−1、もしくは抗PD−L1治療抗体または経路標的化剤による事前治療を受けた患者、及び試験開始前の特定の期間内に全身性免疫刺激剤または全身性免疫抑制性医薬品によって治療された患者も除外した。
試験中の10名の患者のうち6名から、治療後の両時点で十分な生存腫瘍細胞を有する生検が得られた。6対(即ち、治療中の両時点で同じ患者から得られた生検)のうち、7つが腎臓病変、4つが腹/胸壁、1つが肺病変、1つがリンパ節、5つが非公開の病変に由来した。
C.PD−L1、CD8、及びMHC−Iについての免疫組織化学分析
厚さ4μmのホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)組織切片を、ジアミノベンジジンによってシグナルを可視化し、4.3mg/mlの濃度を使用した自動染色プラットフォーム(BenchMark;Ventana)上で、抗ヒトPD−L1ウサギモノクローナル抗体(クローンSP142;Ventana,Tucson,AZ)を用いてPD−L1について染色し、切片はヘマトキシリンで対比染色した。PD−L1発現を腫瘍細胞及び腫瘍浸潤性免疫細胞上で評価した。腫瘍細胞については、PD−L1陽性腫瘍細胞の集団を腫瘍細胞の総数のパーセンテージとして推定し、腫瘍細胞は、典型的には、細胞質の染色の可変的に強い成分をもって膜性染色を示した。所与の腫瘍試料中のPD−L1陽性腫瘍細胞の分布は、典型的には、極めて限局性であり、固形凝集として成長している腫瘍においては、PD−L1陽性腫瘍細胞は、悪性細胞は、悪性細胞と腫瘍浸潤性免疫細胞を含む間質との間の界面で最も一般的に観察された。腫瘍浸潤性免疫細胞については、腫瘍を占有しているPD−L1陽性腫瘍浸潤性免疫細胞のパーセンテージを決定した。マクロファージ及び樹状細胞などの明確に認識できる細胞質を有する腫瘍浸潤性免疫細胞は、PD−L1について膜性染色パターンを示した。これは、細胞質が少量しかない小型のリンパ形態の細胞について決定するためにはより困難であった。PD−L1陽性腫瘍浸潤性免疫細胞は、典型的には、腫瘤の周辺に向けて、腫瘤を切断している間質帯において、間質中で分散した単細胞として、または腫瘍浸潤性免疫細胞凝集中で、腫瘤の周辺に向けてサイズが様々な凝集として見られた。標本を、エリアあたりの細胞の1%未満、1%以上5%未満、5%以上10%未満、または10%がPD−L1陽性である場合に、それぞれ、IHC0、1、2、または3と採点した。複数の標本を有する患者におけるPD−L1 IHCスコアは、最高スコアに基づいた。CD8(クローンSP16(Epitomics))IHCを、CC1抗原回復及びOMNIMAP(商標)(Ventana)検出技術を使用してDiscovery XT autostainer(Ventana)上で行った。
全てのMHC−I IHCステップをVentana Discovery XT自動プラットフォーム(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)上で実行した。切片を、Cell Conditioner 1で標準時間処理した後、1:5000希釈の一次抗体MHC Class I(EP1395Y,Novus,カタログ番号NB110−57201)中で60分間37℃でインキュベートした。結合した抗体を、OMNIMAP(商標)抗ウサギHRP検出キット、続いてDAB(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)によって検出した。切片をヘマトキシリンII(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)で4分間、青味溶液で4分間対比染色した後、脱水しカバースリップをかぶせた。MHC−Iを低度、中等度、高度に内因性発現しているヒト細胞ペレットを、陽性対照として並行して使用した。ウサギモノクローナル(Clone DA1E,Cell Signaling Technology,カタログ番号3900S)アイソタイプ抗体を使用して、陰性対照を処理した。腫瘍細胞中のMHC−I染色を、H採点システムを使用して採点した。簡潔には、腫瘍細胞膜の染色強度に、それぞれ、低、中、または高3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)シグナル強度に対応する、0、1、2、または3の数値を割り当てた。全腫瘍面積に対して、異なる染色強度の細胞のパーセンテージを視覚評価によって決定した。最終スコアは、以下の通り、膜強度スコアに所与の腫瘍試料中に存在する各集団についての面積パーセンテージを乗じることによって計算した:1×(1の%+細胞)+2×(2の%+細胞)+3×(3の%+細胞)=Hスコア。2名の別の病理医が症例を採点した。採点ブラケットは、100以下、101〜200、及び201〜300のスコアとして定義し、一致は、同じブラケット内に入る個別のスコアとして定義した。いずれの不一致も症例の共通レビュー時に解決した。
D.二色及び三色免疫組織化学及び全スライドデジタル分析
FFPE腫瘍組織の連続した厚さ4μmの切片を、Ventana Benchmark XTまたはBenchmark Ultra自動プラットフォーム(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)を使用する以下の研究室で開発したIHCアッセイによって染色した:Ki67/CD8、PDPN/CD34/ASMA、及びCD163/CD68。
Ki67/CD8アッセイについて、切片をCell Conditioner 1で64分間処理した。その後、切片を一次抗体Ki67(30−9、RTU、Ventana)中で4分間37℃でインキュベートした。結合した一次抗体をOptiView DAB IHC検出キット(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)によって検出した。続いて、スライドを1:100希釈の一次抗体抗CD8(SP239、Spring Biosciences)中で60分間37℃でインキュベートした。結合した一次抗体をUltraView Universal AP Red検出キット(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)によって検出した。切片をヘマトキシリンII(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)で4分間、青味溶液で4分間対比染色した後、脱水しカバースリップをかぶせた。
PDPN/CD34/ASMAアッセイについて、切片をCell Conditioner 1で32分間処理した。その後、切片を一次抗体抗ポドプラニン(D2−40、RTU、Ventana)中で16分間37℃でインキュベートした。結合した一次抗体をOptiView DAB IHC検出キット(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)によって検出した。続いて、スライドを一次抗体抗CD34(QBEnd/10;RTU、Ventana)中で16分間37℃でインキュベートした。結合した抗体をiView Blue Plus検出キット(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)によって検出した。最後に、スライドを一次抗体抗平滑筋アクチン(「SMActin」)(1A4;RTU、Ventana)中で16分間37℃でインキュベートした。結合した抗体をUltraView Universal AP Red検出キット(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)によって検出した。切片をヘマトキシリンII(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)で4分間、青味溶液で4分間対比染色した後、脱水しカバースリップをかぶせた。
CD163/CD68アッセイについて、切片をCell Conditioner 1で32分間処理し、一次抗体抗CD163(MRQ−26、RTU、Ventana)中で8分間37℃でインキュベートした。結合した一次抗体をOptiView DAB IHC検出キット(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)によって検出した。続いて、スライドを一次抗体抗CD68(KP−1、RTU、Ventana)中で8分間37℃でインキュベートした。結合した一次抗体をUltraView Universal AP Red検出キット(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)によって検出した。切片をヘマトキシリンII(Ventana Medical Systems;Tucson,AZ)で4分間、青味溶液で4分間対比染色した後、脱水しカバースリップをかぶせた。適切な陰性対照及び陽性対照を既知の方法に従って処理した。
全スライドベースのIHC染色した対象物の検出及び分類のためのアルゴリズムはMatlabで作製された。明視野染色のアンミキシングの後、IHC染色した対象物を細胞候補として検出した。全ての細胞候補について、量的特徴を抽出した。その後、教師あり機械学習を使用して、候補を様々な細胞クラス(例えば、CD8+/Ki67−細胞)に分類した。真偽染色した対象物のグラウンドトゥルースギャラリー(病理医により提供)を使用して、分類方法を訓練した。最後に、分類した細胞及び腫瘍面積(デジタルスライドアノテーションを介して病理医により提供)を報告し、品質管理(QC)画像を病理審査のために生成した。自動デジタルスライド分析の結果を以下のように腫瘍面積について報告した:Ki67−/CD8+及びKi67+/CD8+細胞密度(1mm2あたりの細胞計数の数)、CD68+/CD163+及びCD68+/CD163−被覆面積のパーセント(全腫瘍面積との関連の被覆面積)、CD34+/αSMA−及びCD34+/αSMA+血管密度(1mm2あたりの血管計数)。
E.FFPE腫瘍組織からのRNA単離
RNA単離を、Schleifmanら(PLoS One 8:e74231,2014)によって説明されているように行った。簡潔には、腫瘍FFPE切片をマクロ解剖して、腫瘍性組織を富化し、腫瘍溶解緩衝液及びプロテイナーゼKを使用して組織を溶解させて、核酸を完全消化及び放出させた。High Pure FFPE RNA Micro Kit(Roche Applied Sciences,Indianapolis,IN)を製造業者のプロトコルに従って使用して、RNAを単離した。QIAAMP(登録商標)DNA FFPE Tissue Kit(Qiagen,Hilden,Germany)を製造業者のプロトコルに従って使用して、DNAを単離した。RNA及びDNAは、分析を行うまで280uCで保管した。
F.Fluidigm及びNanostring発現分析
遺伝子発現分析を、BioMark HD(商標)real−time PCR Platform(Fluidigm)を使用して、Schleifmanら(PLoS One 8:e74231,2014)によって説明されているように行った。発現パネルにおける全てのTAQMAN(登録商標)アッセイは、FAM(商標)色素染色したTAQMAN(登録商標)小溝結合剤(MGB)プローブを使用し、4つの参照細胞SP2、GUSB、TMEM55B、及びVPS33Bを含め、受注生産または特注設計のいずれかでLife Technologiesから注文した。4つの参照遺伝子(SP2、GUSB、TMEM55B、及びVPS33B)についてのCt値の幾何中央値を各試料について計算し、以下のようにデルタCt(ΔCt)法を使用して発現レベルを決定した:Ct(標的遺伝子)2GeoMedian Ct(参照遺伝子)。試験中の患者全体の中央mRNA発現レベル(免疫チップ(immunochip)(iChip)によって測定)をカットオフとして使用して、高発現対低発現のカテゴリー化を導いた。P値をt検定によって決定した。
NanoString遺伝子発現データを、R/Bioconductorパッケージ「NanoStringQCPro」を使用して処理した。原数値を陽性対照計数によって調整した後、プローブ及びレーン特異的バックグラウンドを陰性対照及びブランク測定の両方に基づいて計算した。バックグラウンドを補正した後、計数を、log2変換し、ハウスキーピング遺伝子発現(TMEM55B、VPS33B、TBP、及びTUBB)によって正規化した。
G.TCRスクリーニング
TCRβレパートリーの増幅及びシークエンシングを、Adaptive BiotechnologiesにてKlingerら(PLoS One 8:e74231,2013)によって説明されているように行った。
H.フローサイトメトリー
CD3、CD8、HLA−DR、及びKi−67発現についての全血フローサイトメトリーを、確立されているプロトコルに従ってLabCorp中央研究所で行った。末梢血単核細胞(PBMC)をPrecision Bioservicesで単離し、凍結保存した試料をフラクタルカイン受容体発現の分析及び腫瘍特異的T細胞の検出のためにGenentechに輸送した。PBMCを解凍し、一晩置き、細胞の少量のアリコートを抗HLA−A2−FITC(BB7.2、BD)及び抗CD45−APC−H7(2D1、BD)で染色して、HLA−A2の状態を決定した。残りの細胞を、HLA−A
*0201/ペプチドデキストラマー及びペンタマー(Immudex及びProimmune、表1参照)の混合物によって10分間室温で染色し、続いて抗CD3−BV510(UCHTI、Biolegend)、抗CD8−A700(RPA−T8、BD)、抗CD4−PE−Cy7(RPA−T4、eBioscience)、抗CD45RA−eVolve605(HI100、eBioscience)、抗CCR7−BV421(G043H7、Biolegend)、抗CX3CR1−PerCP−eFluor710(2A9−1、eBioscience)、及びFixable Viability Dye eFluor780(eBioscience)によって30分間氷上で染色した。試料を2回洗浄した後、データを取得し、FACSDIVA(商標)v8ソフトウェアを実行するBD FACSARIA(商標)上で選別した。50,000個のCD8
+T細胞中最低10個のデキストラマー陽性事象が腫瘍特異的応答であるとみなされた。表3は、フローサイトメトリーに使用したデキストラマーのリストを示す。
表3.フローサイトメトリーのためのデキストラマー
I.統計分析
アテゾリズマブ及びベバシズマブを1つ超の用量で21日毎に静脈内投与によって受けたRCC患者10名全員からのデータを使用して、ベースライン特性及び有害事象率を決定した。有効性をRECIST v1.1に従って評定した。最も良く確認された全客観的奏効率は、研究者によって報告された評定から導出された。客観的奏効率(ORR)は、完全または部分奏効の最良の全客観的奏効を有する患者の数を、ベースライン腫瘍評定を有する患者の総数で除したものとして定義した。
カットオフ日に生存し、疾患進行を経験しなかった患者を、最終腫瘍評定時に打ち切りとした。奏効期間をカプラン・マイヤー法によって得た。全AE、治療に関連するAE、及びグレード3〜4のAEの要約が、10名全ての患者から提供された。
実施例2:遺伝子発現分析により、ベバシズマブ単剤療法及びベバシズマブとアテゾリズマブとの併用療法と関連付けられるバイオマーカーを特定する
第1b相臨床試験を行い、本試験においては、事前に治療されていないmRCCを有する10名の患者に、C1D1にベバシズマブの単回用量を与え、続いて3週毎のアテゾリズマブとベバシズマブとの併用投与をC2D1に開始した。患者コホートのベースライン人口統計を表4に示す。RECIST v1.1を使用して、患者10名中4名で部分奏効(PR)が観察され、同時に、更に5名の患者は、安定疾患(SD)が延長した(図1及び2)。この小さいコホートで観察された臨床活性は、それまでにいずれの単剤療法によって得られた活性よりも高かった。奏効期間は達成されず、奏効期間の中央値は4.2カ月であった。
表4.ベースライン人口統計
安全性、忍容性、及び臨床活性に加えて、上記の第Ib相試験の1つの重要な目的は、組み合わせた活性の機序を評価することであった。試験設計には、ベバシズマブが局所腫瘍微小環境に与える影響を具体的に調査するためのベバシズマブによる導入期間、続くアテゾリズマブを使用する免疫チェックポイント阻止による併用療法を含めた。腫瘍生検及び血液を、治療前、ベバシズマブ後15〜18日、及びアテゾリズマブ及びベバシズマブの併用治療を開始した後4〜6週で採取した。
ベバシズマブ単剤療法または併用療法と関連付けられる腫瘍マーカーを特定するために、90遺伝子PCR系Fluidigmパネル及び800遺伝子カスタムNanoStringパネルの両方を使用して、遺伝子発現分析を行った(図3及び4)。VEGF下流シグナル伝達活性を反映する新脈管構造と関連付けられる遺伝子が全患者において両治療時点で顕著に減少し(図3)、ベバシズマブの抗血管新生活性が確認された。驚くべきことに、治療前の時点とベバシズマブ治療のみの時点との比較により、増加したTh1ケモカイン(CXCL9、CXLC10、CXCL11、及びCXCL13)(治療前のレベルと比べて約0.7倍〜6.9倍の範囲)、CD8Tエフェクターマーカー(CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1)(治療前のレベルと比べて約0.4倍〜6.2倍の範囲)、及びNK細胞マーカー(GZMB、KLRK1、及びSLAMF7)(治療前のレベルと比べて約0.7倍〜8.2倍の範囲)の遺伝子発現が明らかとなった(図3)。ベバシズマブ治療により、患者6名中4名がTh1シグナル伝達に関する遺伝子特性の顕著な増加を示した。重要なことに、個々の患者レベルでは、これらの特性はVEGF依存性特性の減少度とは関連しなかった。IHCによるFasL発現は、RCCを含むいくつかのがんにおいて免疫細胞に対する可能性のある障壁として説明されている(Motz et al.Nat.Med.20:607−615,2014)。本試験では、ベバシズマブまたは併用治療によるFasL遺伝子発現の一貫した変化は観察されなかった。全体として、これらの差異は、ベバシズマブ治療のみにより、腫瘍微小環境中の最も顕著な治療誘導性改変を反映するTh1関連特性による腫瘍免疫微小環境の調節が生じることを示す。
実施例3:両治療時点におけるベバシズマブ単剤療法または併用療法後の血管及び免疫応答のバイオマーカーの特性評価
腫瘍中で観察された免疫及び血管遺伝子発現変化を確認するために、治療前及び治療中の組織における免疫及び血管タンパク質発現変化を免疫組織化学によって評価した。血管内壁の内皮細胞のマーカーであるCD31の減少が観察された(図5及び6)。アルファ平滑筋アクチン(αSMA)を用いた内皮細胞の別のマーカーであるCD34の二色染色により、未熟または不安定な血管(CD34+/αSMA−)が主にベバシズマブ治療の影響を受けたことが示され(図7及び8)、これは、他の公開されている報告と一致した(例えば、Gasparini et al.Nat.Clin.Pract.Oncol.2:562−577,2005を参照されたい)。内皮細胞中の形態的変化も併用治療について明らかであり、イピルミマブ(ipilumimab)及びベバシズマブ治療後の転移性黒色腫における発見と一致した(例えば、Hodi et al.Cancer Immunol.Res.2:632−642,2014を参照されたい)。加えて、CD68+/CD163−マクロファージではなくCD68+/CD163+マクロファージの状況的局在が、ベバシズマブ療法によって大きな影響を受けなかった成熟した血管ではなく未熟な血管に隣接して、治療中の4名の患者において観察された(図7、9、及び10)。理論に束縛されるものではないが、1つの可能性のある説明は、不安定な血管に局在したマクロファージがベバシズマブによって引き起こされる炎症及び血管誘導性変化に応答している可能性があるということである。マクロファージは、VEGFの分泌により脈管化を促進することが示されており(Lamagna et al.J.Leukoc.Biol.80:705−713,2006)、VEGF転写産物発現が治療中に腫瘍において上方調節された(図11)。
腫瘍内CD8+T細胞の増加が、1名を除いて全ての患者において併用治療後に顕著であった(図5、6、及び12)。しかしながら、IFN−γ応答遺伝子であるPD−L1の上方調節は、PRを示した患者1名において免疫組織化学によって検出されたたけであった(図5)。逆に、また予想外に、MHC−I染色の同時増加がベバシズマブ及び併用治療の両方の後に観察された(図5及び6)。抗VEGF抗体療法によるMHC−Iの調節は、これまでに説明されておらず、CD8+T細胞の増加と一貫しては関連しなかった。これまでの研究で、低酸素症がHIF−1αを介したMHC−I発現の増加に関係することが発見されている(Ghosh et al.Mol.Cell.Biol.33:2718−2731,2013)。
併用療法の際のCD8+T細胞密度の増加が増強された腫瘍内増殖または増加した輸送に起因したのかどうかに取り組むために、増殖マーカーであるKi67によるCD8の二色免疫組織化学染色を用いた。Ki67+/CD8+細胞とKi67−/CD8+細胞との割合は治療中変化しないままであり(図7、13、14A〜14C、15A〜15C、及び16A〜16C)、CD8+T細胞の増加が、増強された主要な増殖に起因するのではなく、増殖性CD8+T細胞の増加した輸送及び浸潤に起因したことが示唆された。
実施例4:併用療法後の抗原特異的T細胞応答の特性評価
腫瘍内CD8+T細胞の上昇が増加した輸送に起因したかどうかを確認するために、末端部の細胞集団をフローサイトメトリーによって表現型分析した。既に説明されているRCC腫瘍抗原ペプチドを含有するHLA−A2デキストラマー(表1)を使用して、抗原特異的T細胞が患者の血中に存在するかどうか、及びこれらの細胞集団が治療によって変化したかどうかを決定した。10名の患者のうち、2名のHLA−A2陽性患者しか治療前の時点でDex−APCチャネル中の細胞について陽性ではなかった(図19)。これら2名の患者のうち、患者6のみが腫瘍内CD8+T細胞の増加を示した。興味深いことに、Dex−APC陽性染色は、併用治療後の時点までに、患者6については少なくとも3倍減少したが、腫瘍内CD8+T細胞の増加を示さなかった患者2については認められなかった。これらの変化により、RCC抗原特異的T細胞が末端部から腫瘍中に輸送されることが示され得る。
遺伝子発現データによっても、いくつかの他のケモカイン及びケモカイン受容体が治療中に患者の腫瘍中で増加したことが示された(図20)。最も顕著な変化は、炎症または低酸素環境において活性化された内皮細胞の膜上で発現されることが知られているフラクタルカイン(CX3CL1)で生じた(Szukiewicz et al.Mediators Inflamm.2013:437576,2013;Umehara et al.Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:34−40,2004)。
フラクタルカインの受容体CX3CR1は、アームのあるCD8+T細胞(パーフォリン+/グランザイムB+)上で発現されることが示されている(Nishimura et al.J.Immunol.168:6173−6180,2002)。本試験では、CX3CR1は、併用治療後に末梢CD8+T細胞上で上方調節された(図13)。更に、デキストラマー陽性細胞の大部分(図19)もCX3CR1を発現した(患者2及び6について、それぞれ84%及び100%;図16A及び16C)。腫瘍中のフラクタルカイン及び他のケモカインとCD8+T細胞上のCX3CR1との治療中の一致した上方調節により、CD8+T細胞の増加した腫瘍浸潤についての機序が示唆される。
T細胞受容体(TCR)シークエンシングを腫瘍に行い、一致したPBMCからCD8+T細胞を選別して、治療誘導性のT細胞レパートリーの変化及びT細胞の腫瘍への輸送を調査した。患者3及び6についてのTILからの上位のクローンを治療前と治療中とで比較すると、一部のクローンが治療中に保持されたことが示された(図21A〜21C、及び22)。ベバシズマブ単独に続いて現れたクローンがあったが、他のクローンは併用療法の後でしか出現しなかった。治療前の腫瘍中では検出されたが治療中の腫瘍では検出されなかったクローンもあった。要するに、腫瘍内T細胞組成におけるこれらの動的な変化により、抗腫瘍T細胞応答が治療中に発展していることが示唆される。
選別した末梢CD8+T細胞からのTCR配列の評価により、上位のクローンの多くが治療前の試料と治療中の試料との間で維持されたが、PBMCに見出されるクローンと治療中のTILとの間でいくらかの重複もあった(図23A及び23B)。具体的には、腫瘍内CD8+T細胞が治療中に増加しなかった患者である患者2のPBMCとTILとの間でクローンは共有されなかった。患者3及び6については、PBMCとTILとの間で類似した頻度で存在するクローンがいくつかあった。Adaptive Public Clone Databaseのブラストにより、上位のPBMCクローンのいくつかはウイルス抗原を認識する可能性が高いことが明らかとなったが、これらのクローンのいくつかしかTIL中で検出されず、これにより、腫瘍抗原特異的T細胞が腫瘍中に移行している可能性があることが更に示唆された(図24)。治療中のTILにおける上位のクローンの大部分は、血中でははるかに低いレベルで存在し、一方で血中で最も優勢なクローンは、腫瘍中では検出されない。TILと比較してPBMCでは上位のクローンの相対的割合が維持されないため、このことにより、併用治療によって誘導された腫瘍中のCD8+T細胞の増加が、選択的輸送機序を介して生じることが示唆され得る。浸潤に偏りがなく、腫瘍中の抗原特異的T細胞の保持がある可能性もある。
他の実施形態
上述の発明は、明確な理解を目的として、図解及び例により、ある程度詳細に記載されたが、これらの説明及び例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。