A.第1実施例
A−1.端末装置100の構成
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、本発明の画像処理装置としての端末装置100の構成を示すブロック図である。端末装置100は、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォンなどの計算機であり、プロセッサとしてのCPU110と、DRAM(Dynamic Random Access Memoryの略)などの揮発性記憶装置120と、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置130と、液晶ディスプレイなどの表示部140と、マウスやキーボードなど操作部150と、外部装置と通信を行うためのインタフェースである通信インタフェース(IF)170と、を備えている。
通信IF170は、例えば、イーサネット(登録商標)規格に準拠したネットワークインタフェースを含み、該ネットワークインタフェースを介して、ローカルエリアネットワークLNに接続されている。これによって、端末装置100は、ローカルエリアネットワークLNを介して、印刷実行部としてのプリンタ300などの外部装置と通信可能に接続される。
揮発性記憶装置120は、CPU110が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域を提供する。不揮発性記憶装置130には、コンピュータプログラムPG1が格納されている。コンピュータプログラムPG1は、例えば、プリンタ300を制御するためのドライバプログラムである。コンピュータプログラムPG1は、例えば、プリンタ300の製造者が運用するサーバからダウンロードされる形態で提供されても良い。これに代えて、コンピュータプログラムPG1は、DVD−ROMなどに格納される形態で提供されてもよく、端末装置100の製造時に不揮発性記憶装置130に格納(インストール)される形態で提供されても良い。
CPU110は、コンピュータプログラムPG1を実行することにより、プリンタ300を制御して、プリンタ300に画像を印刷させるためのプリンタドライバとして機能する。具体的には、CPU110は、コンピュータプログラムPG1を実行することにより、後述する印刷処理を実行することができる。
プリンタ300は、例えば、インクを色材として用いて、インクジェット方式に従って、用紙などの被印刷媒体上に、画像を印刷する装置である。変形例としては、プリンタ300は、トナーを色材として用いるレーザ方式のプリンタであっても良い。本実施例のプリンタ300は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の4種類のインクを用いて、カラー印刷を行うインクジェットプリンタである。
A−2.印刷処理
図2は、印刷処理のフローチャートである。この画像処理は、端末装置100においてプリンタドライバが起動されて、該プリンタドライバに対して、ユーザから印刷指示が入力されたときに実行される。印刷指示は、該プリンタドライバによって表示部140に表示されるユーザインタフェース画面(UI画面)を介して、入力される。印刷指示は、各種の印刷に関連する条件を示す印刷条件情報、例えば、印刷の対象となる対象画像を示す対象画像データを指定する情報を含む。
S10では、CPU110は、CPU110は、印刷指示に含まれる情報によって指定される対象画像を示す対象画像データを取得する。本実施例の対象画像データは、文書作成ソフトや描画ソフトなどによって作成された画像データである。CPU110は、端末装置100の不揮発性記憶装置130に保存された対象画像データを、不揮発性記憶装置130から取得する。
本実施例で取得される対象画像データは、複数個の画素の値を含み、複数個の画素の値のそれぞれは、画素の色をRGB値で表す。すなわち、対象画像データは、RGB画像データである。1個の画素のRGB値は、例えば、赤(R)と緑(G)と青(B)との3個の成分値(以下、R値、G値、B値とも呼ぶ)を含んでいる。本実施例では、各成分値の階調数は、256階調である。なお、取得される対象画像データが、RGB画像データではない場合には、例えば、該対象画像データに対して、ラスタライズ処理や変換処理が実行されて、RGB画像データに変換される。
図3は、本実施例で用いられる対象画像の一例を示す図である。図3(A)には、名刺サイズの用紙に印刷されるべき対象画像OI1の一例が示されている。対象画像OI1内のオブジェクトの大部分は、名前、会社名、連絡先などを示す文字TXである可能性が高い。図3(B)には、L判サイズの用紙に印刷されるべき対象画像OI2の一例が示されている。L判サイズは、写真用の用紙に採用されるサイズであるので、対象画像OI2内のオブジェクトは、写真IMである可能性が高い。図3(C)には、A3またはA4サイズの用紙に印刷されるべき対象画像OI3の一例が示されている。これらのサイズは、ビジネス文書、広告、その他の一般的な書類に、広く用いられるので、対象画像OI2内のオブジェクトは、文字、描画、写真などの様々な種類のオブジェクトを含み得る。例えば、図3(C)の対象画像OI3は、下地BGと、文字TXと、写真IMと、を含んでいる。
S15では、CPU110は、用紙情報を取得する。印刷条件情報は、例えば、上記UI画面を介して、印刷指示とともに入力される。本実施例では、用紙情報は、対象画像を印刷すべき用紙の種類を示す情報であり、用紙のサイズを示す情報と、用紙の材質を示す情報を含む。本実施例にて想定される用紙のサイズは、名刺サイズと、L判サイズと、A4サイズと、A3サイズと、の4種類である。本実施例にて想定される用紙の材質は、普通紙と、光沢紙と、の2種類である。光沢紙は、普通紙と比較して、インクの滲みが発生し難い特徴を有する。
S20では、CPU110は、フィルタ選択テーブルFTを用いて、使用すべきフィルタ(使用フィルタとも呼ぶ)を決定する。図4は、フィルタ選択テーブルの一例を示す図である。フィルタ選択テーブルFTには、用紙の種類(サイズおよび/または材質)ごとに、後述する補正処理にて使用すべきフィルタが記録されている。
本実施例では、2種類のタイプと、3種類のサイズと、を組み合わせた計6種類のフィルタが用いられる。2種類のタイプは、「エッジ強調」と「平滑化」である。3種類のサイズは、「小」と「中」と「大」である。エッジ強調フィルタは、画像内のエッジを強調、鮮鋭化するエッジ強調処理のためのフィルタである。
図5は、エッジ強調フィルタの一例を示す図である。図5(A)、(B)、(C)には、サイズが「小」、「中」、「大」のエッジ強調フィルタが示されている。図5(A)の小エッジ強調フィルタFEsは、縦3個×横3個の画素のそれぞれに対応する補正係数(補正値とも呼ぶ)を規定している。すなわち、小エッジ強調フィルタFEsは、注目画素CPと、注目画素CPの周辺に位置する8個の周辺画素SPと、のそれぞれについて、対応する補正係数を規定している。例えば、小エッジ強調フィルタFEsでは、注目画素CPに対応する補正係数は、5であり、注目画素CPの上下左右に隣接する4個の周辺画素SPに対応する4個の補正係数は、−1であり、注目画素CPの左上、右上、左下、左上に位置する4個の周辺画素SPに対応する4個の補正係数は、0である。このように、フィルタは、注目画素CPに対応する補正係数に加えて、M個(Mは1以上の整数)の周辺画素SPのそれぞれについて、注目画素CPに対する相対的な位置と、対応する補正係数と、を規定した情報である、と言うことができる。
なお、小エッジ強調フィルタFEsを用いた補正では、注目画素CPと周辺画素SPとを含むフィルタ範囲内の9個の画素の値に、それぞれ、小エッジ強調フィルタFEsに規定される対応する係数を乗じて、9個の修正値が算出される。そして、該9個の修正値の和が、補正済みの注目画素CPの値として算出される。このことから解るように、対応する補正係数が0である周辺画素SPの値は、補正には用いられない。このために、小エッジ強調フィルタFEsでは、8個の周辺画素SPについて補正係数を規定しているが、補正に用いられる周辺画素SPの個数は、4個である。
図5(B)の中エッジ強調フィルタFEmは、縦3個×横3個の画素のそれぞれに対応する補正係数を規定している。すなわち、中エッジ強調フィルタFEmは、注目画素CPと、注目画素CPの周辺に位置する8個の周辺画素SPと、のそれぞれについて、対応する補正係数を規定している。例えば、中エッジ強調フィルタFEmでは、注目画素CPに対応する補正係数は、(16/4)であり、注目画素CPの上下左右に隣接する4個の周辺画素SPに対応する4個の補正係数は、(−2/4)であり、注目画素CPの左上、右上、左下、左上に位置する4個の周辺画素SPに対応する4個の補正係数は、(−1/4)である。中エッジ強調フィルタFEmでは、対応する補正係数が0である周辺画素SPは、存在しない。このために、中エッジ強調フィルタFEmでは、補正に用いられる周辺画素SPの個数は、8個である。
中エッジ強調フィルタFEmの複数個の補正係数(16/4)、(−2/4)、(−1/4)は、共通の分母である「4」を分母とする分数で表した場合に、その分子の絶対値16、2、1は、2の累乗数を含み、0と2の累乗数のいずれとも異なる値を含まない。換言すれば、中エッジ強調フィルタFEmの複数個の補正係数は、共通の分母である「4」を分母とする分数で表した場合に、その分子の絶対値は、少なくとも1つの2の累乗数を含み、0または2の累乗数で構成されている。2の累乗数は、2k(kは、0以上の整数)で表される数であり、1、2、4、8、16、32、64、128などである。この結果、中エッジ強調フィルタFEmを用いる補正処理の演算において、係数の分子と、対応する画素の値と、を乗ずる演算を、シフト演算によって実行できる。シフト演算は、例えば、コンピュータによる2進数の演算では、他の演算と比較して、演算速度が速いため、補正処理に必要な演算を高速化できる。さらに、中エッジ強調フィルタFEmでは、共通の分母である「4」も2の累乗数である。このために、さらに、補正処理に必要な演算を高速化できる。
図5(C)の大エッジ強調フィルタFElは、縦5個×横5個の画素のそれぞれに対応する補正係数を規定している。すなわち、大エッジ強調フィルタFElは、注目画素CPと、注目画素CPの周辺に位置する24個の周辺画素SPと、のそれぞれについて、対応する補正係数を規定している。例えば、大エッジ強調フィルタFElでは、注目画素CPに対応する補正係数は、(64/32)であり、24個の周辺画素SPに対応する24個の補正係数は、(8/32)、(−8/32)、(−4/32)、(−2/32)、(0/32)のいずれかである。大エッジ強調フィルタFElでは、対応する補正係数が0である周辺画素SPは、4隅の4個である。このために、大エッジ強調フィルタFElでは、補正に用いられる周辺画素SPの個数は、20個である。
大エッジ強調フィルタFElの複数個の補正係数(64/32)、(8/32)、(−8/32)、(−4/32)、(−2/32)は、共通の分母である「32」を分母とする分数で表した場合に、その分子の絶対値64、8、4、2は、2の累乗数を含み、0と2の累乗数のいずれとも異なる値を含まない。換言すれば、大エッジ強調フィルタFElの複数個の補正係数は、共通の分母である「32」を分母とする分数で表した場合に、その分子の絶対値は、少なくとも1つの2の累乗数を含み、0または2の累乗数で構成されている。この結果、中エッジ強調フィルタFEmと同様に、大エッジ強調フィルタFElを用いる補正処理の演算において、補正処理に必要な演算を高速化できる。さらに、中エッジ強調フィルタFEmと同様に、大エッジ強調フィルタFElでは、共通の分母である「32」も2の累乗数である。このために、さらに、補正処理に必要な演算を高速化できる。
ここで、フィルタのサイズは、補正に用いられる複数個の周辺画素SPのうちの注目画素CPから最も離れた最遠周辺画素FPと、注目画素CPと、の間の距離Dによって示すことができる。すなわち、最遠周辺画素FPと注目画素CPとの間の距離Dが大きいほど、フィルタのサイズが大きいと言うことができる。換言すれば、最遠周辺画素FPが注目画素CPから離れているほどフィルタのサイズが大きい。ここで、小エッジ強調フィルタFEsの距離Desは、1であり、中エッジ強調フィルタFEmの距離Demは、SQRT(2)であり、大エッジ強調フィルタFElの距離Delは、SQRT(5)である。ここで、SQRT(a)は、aの平方根を意味する。
なお、エッジ強調フィルタのサイズが大きいほど(すなわち、最遠周辺画素FPが注目画素CPから離れているほど)、補正のレベルが高くなり、エッジが強調される程度が大きくなる。
図6は、平滑化フィルタの一例を示す図である。平滑化フィルタは、画像を平滑化する平滑化処理のためのフィルタである。図6(A)、(B)、(C)には、サイズが「小」、「中」、「大」の平滑化フィルタが示されている。図6(A)の小平滑化フィルタFSsは、縦3個×横3個の画素のそれぞれに対応する補正係数を規定している。すなわち、小平滑化フィルタFSsは、注目画素CPと、注目画素CPの周辺に位置する8個の周辺画素SPとのそれぞれについて、対応する補正係数を規定している。例えば、小平滑化フィルタFSsでは、注目画素CPに対応する補正係数と、注目画素CPを囲む8個の周辺画素SPに対応する8個の補正係数は、いずれも(1/9)である。小平滑化フィルタFSsでは、対応する補正係数が0である周辺画素SPは、存在しない。
図6(B)の中平滑化フィルタFSmは、縦5個×横5個の画素のそれぞれに対応する補正係数を規定している。すなわち、中平滑化フィルタFSmは、注目画素CPと、注目画素CPの周辺に位置する24個の周辺画素SPと、のそれぞれについて、対応する補正係数を規定している。例えば、中平滑化フィルタFSmでは、注目画素CPと、中平滑化フィルタFSmの4隅に位置する4個の周辺画素SPと、中平滑化フィルタFSmの矩形の4辺の中央部分に位置する4個の周辺画素SPに対応する補正係数は、いずれも(1/9)である。そして、24個の周辺画素SPのうち、上述した4隅に位置する4個の周辺画素SPと4辺の中央部分に位置する4個の周辺画素SPとを除く、16個の周辺画素SPに対応する補正係数は、いずれも0である。このために、中平滑化フィルタFSmでは、補正に用いられる周辺画素SPの個数は、8個である。
図6(C)の大平滑化フィルタFSlは、縦7個×横7個の画素のそれぞれに対応する補正係数を規定している。すなわち、大平滑化フィルタFSlは、注目画素CPと、注目画素CPの周辺に位置する48個の周辺画素SPと、のそれぞれについて、対応する補正係数を規定している。例えば、大平滑化フィルタFSlでは、注目画素CPと、大平滑化フィルタFSlの4隅に位置する4個の周辺画素SPと、中平滑化フィルタFSmの矩形の4辺の中央部分に位置する4個の周辺画素SPに対応する補正係数は、いずれも(1/9)である。そして、48個の周辺画素SPのうち、上述した4隅に位置する4個の周辺画素SPと4辺の中央部分に位置する4個の周辺画素SPとを除く、40個の周辺画素SPに対応する補正係数は、いずれも0である。このために、大平滑化フィルタFSlでは、補正に用いられる周辺画素SPの個数は、8個である。
ここで、フィルタのサイズは、上述したエッジ強調フィルタと同様に、補正に用いられる複数個の周辺画素SPのうちの注目画素CPから最も離れた最遠周辺画素FPと、注目画素CPと、の間の距離Dによって示すことができる。ここで、小平滑化フィルタFSsの距離Dssは、SQRT(2)であり、中平滑化フィルタFSmの距離Dsmは、SQRT(8)であり、大平滑化フィルタFSlの距離Dslは、SQRT(18)である。
さらに、図6(B)の中平滑化フィルタFSmは、最遠周辺画素FPよりも注目画素CPに近い20個の周辺画素SPに、係数が「0」である16個の周辺画素SPを含む。同様に、図6(C)の大平滑化フィルタFSlは、最遠周辺画素FPよりも注目画素CPに近い44個の周辺画素SPに、係数が「0」である40個の周辺画素SPを含む。すなわち、最遠周辺画素FPよりも注目画素CPに近い一部の画素は、中平滑化フィルタFSmまたは大平滑化フィルタFSlを用いる補正処理に用いられない。この結果、補正処理の演算速度を高速化できる。
以上の説明から解るように、図5、図6に示す複数個のフィルタは、互いに異なるフィルタであるので、複数個の周辺画素SPと複数個の補正係数との組み合わせが、互いに異なる。例えば、注目画素CPに対する相対的な位置が特定の位置である周辺画素SPに対応する補正係数が、互いに異なる。具体的には、図5(A)の小エッジ強調フィルタFEsでは、注目画素CPに対する相対的な位置が右側に隣接する位置である周辺画素SPに対応する補正係数は、「−1」であり、図5(B)の中エッジ強調フィルタFEmでは、注目画素CPに対する相対的な位置が右側に隣接する位置である周辺画素SPに対応する補正係数は、「−2」であり、互いに異なっていることが解る。
以上の説明から解るように、小平滑化フィルタFSs、中平滑化フィルタFSm、大平滑化フィルタFSlは、いずれも補正に用いられる周辺画素SPの個数は9個であるが、最遠周辺画素FPと注目画素CPとの間の距離Dが異なるので、フィルタのサイズは互いに異なる(FSs<FSm<FSl)。
なお、平滑化フィルタのサイズが大きいほど(すなわち、最遠周辺画素FPが注目画素CPから離れているほど)、補正のレベルが高くなり、画像が平滑化される程度が大きくなる。
図4に示すように、用紙のサイズが名刺サイズである場合には、用紙の材質に拘わらずに、対象画像内の全ての領域について大エッジ強調フィルタFElが、使用フィルタとして決定される。用紙のサイズがL判サイズである場合には、用紙の材質に拘わらずに、対象画像内の全ての領域について小平滑化フィルタFSsが、使用フィルタとして決定される。
用紙のサイズがA4サイズである場合には、対象画像内の文字領域と写真領域とで、決定される使用フィルタが異なる。用紙のサイズがA4サイズである場合には、用紙の材質に拘わらずに、対象画像内の文字領域について中エッジ強調フィルタFEmが、使用フィルタとして決定され、対象画像内の写真領域について中平滑化フィルタFSmが、使用フィルタとして決定される。
用紙のサイズがA3サイズである場合には、対象画像内の文字領域と写真領域とで、決定される使用フィルタが異なり、さらに、用紙の材質によって、決定される使用フィルタが異なる。用紙のサイズがA3サイズである場合で、かつ、用紙が光沢紙である場合には、対象画像内の文字領域について小エッジ強調フィルタFEsが、使用フィルタとして決定され、対象画像内の写真領域について大平滑化フィルタFSlが、使用フィルタとして決定される。用紙のサイズがA3サイズである場合で、かつ、用紙が普通紙である場合には、対象画像内の文字領域について中エッジ強調フィルタFEmが、使用フィルタとして決定され、対象画像内の写真領域について中平滑化フィルタFSmが、使用フィルタとして決定される。
S25では、CPU110は、領域特定処理が必要か否かを判断する。領域特定処理は、対象画像データを解析することによって、対象画像内の各オブジェクトを示す領域を、オブジェクトの種類(例えば、文字と写真)ごとに特定する処理である。例えば、本実施例では、対象画像において、文字を示す文字領域と、写真を示す写真領域と、文字と写真を除いた下地を含む領域(下地領域と呼ぶ)と、が特定される。本実施例では、用紙のサイズが、名刺サイズまたはL判サイズである場合には、上述したように全領域に対して、同一のフィルタが用いられるので、領域特定処理を行う必要はない。用紙のサイズが、A4サイズまたはA3サイズである場合には、文字領域と写真領域とで異なるフィルタが用いられるので、領域特定処理を行う必要がある。このために、本実施例では、CPU110は、用紙のサイズが、名刺サイズまたはL判サイズである場合には、領域特定処理が必要でないと判断し、用紙のサイズが、A3サイズまたはA4サイズである場合には、領域特定処理が必要であると判断する。
領域特定処理が必要である場合には(S25:YES)、S30にて、CPU110は、領域特定処理を実行する。領域特定処理では、例えば、CPU110は、公知のエッジ検出フィルタを対象画像データに適用して、対象画像内のエッジを抽出して、エッジ量が基準より多い領域をオブジェクト領域として特定する。CPU110は、特定された1以上のオブジェクト領域のうち、文字としての特徴を有する領域を文字領域として特定し、写真としての特徴を有する領域を写真領域として特定する。CPU110は、1以上のオブジェクト領域のうち、テキストとしての特徴と写真としての特徴とのいずれも有しない領域を、下地領域として特定する。テキストとしての特徴は、例えば、色数が閾値TH1より少なく、かつ、下地色とは異なる色を有するオブジェクト画素の割合が閾値TH2より小さいことである。写真としての特徴は、例えば、色数が閾値TH2より多く、かつ、下地色とは異なる色を有するオブジェクト画素の割合が閾値TH2より大きいことである。なお、領域特定処理は、例えば、様々な公知の手法を採用することができ、公知の手法は、例えば、特開2013−030090号公報、特開平5−225378号公報、特開2002−288589号公報に開示されている。
S40では、CPU110は、対象画像データに対して補正処理を実行して補正済みの対象画像データ(本実施例ではRGB画像データ)を生成する。具体的には、CPU110は、用紙のサイズが名刺サイズまたはL判サイズである場合には、対象画像内の全ての画素を注目画素として、S20にて決定される1種類のフィルタを注目画素に適用して、注目画素の値を補正済みの値に変更する。
また、CPU110は、用紙のサイズがA4サイズまたはA4である場合には、2種類のフィルタを用いて補正処理を実行する。具体的には、CPU110は、対象画像内の複数個の画素のうち、文字領域内の画素が注目画素である場合には、S20にて文字領域について決定されるフィルタを注目画素に適用して、注目画素の値を補正済みの値に変更する。そして、CPU110は、対象画像内の複数個の画素のうち、写真領域内の画素が注目画素である場合には、S20にて写真領域について決定されるフィルタを注目画素に適用して、注目画素の値を補正済みの値に変更する。CPU110は、対象画像内の複数個の画素のうち、下地領域内の画素が注目画素である場合には、注目画素の値を変更しない。
なお、注目画素へのフィルタの適用は、以下のように行われる。CPU110は、注目画素CPと周辺画素SPとを含むフィルタ範囲内の(M+1)個の画素の値に、それぞれ、使用するフィルタに規定される対応する補正係数を乗じて、(M+1)個の修正値を算出する。そして、CPU110は、該(M+1)個の修正値の和を、補正済みの注目画素CPの値として算出する。このように、本実施例の補正処理では、注目画素CPの値と、周辺画素SPに対応付けられる複数個の補正係数を用いて注目画素CPの値が補正される。
S45では、CPU110は、補正済みの対象画像データに対して色変換処理を実行する。これによって、補正済の対象画像データの各画素のRGB値は、印刷用の複数個の色材に対応する複数個の成分値を含む色値に変換される。本実施例では、RGB値は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)、K(ブラック)の4個の成分値を含むCMYK値に変換される。色変換処理は、不揮発性記憶装置130に予め格納された色変換プロファイル(図示省略)を参照して実行される。色変換プロファイルは、RGB値とCMYK値との対応関係を規定する情報であり、具体的には、ルックアップテーブルである。
S50では、CPU110は、色変換処理後の対象画像データに対してハーフトーン処理を実行して、印刷画像データとしてのドットデータを生成する。ドットの形成状態を画素ごと、かつ、色材ごとに表すドットデータを生成する。ドットデータに含まれる各画素の値は、例えば、「大ドット」、「中ドット」、「小ドット」、「ドット無し」の4つのドットの形成状態のいずれかを示す。これに代えて、ドットデータに含まれる各画素の値は、「ドット有り」、「ドット無し」の2つのドットの形成状態のいずれかを示しても良い。
S55では、CPU110は、ドットデータを用いて印刷ジョブを生成する。例えば、CPU110は、ドットデータを、プリンタ300を用いて印刷を行う際に用いられる順番に並べ替える処理と、ドットデータにプリンタ制御コードやデータ識別コードを付加する処理と、を実行する。この結果、プリンタ300によって解釈可能な印刷ジョブが生成される。S60では、CPU110は、生成された印刷ジョブを、プリンタ300に送信する。プリンタ300は、端末装置100から送信された印刷ジョブに従って、印刷画像データ(ドットデータ)によって示される印刷画像を印刷する。
以上説明した本実施例によれば、用紙情報を用いて、複数個の補正処理(本実施例では使用するフィルタが互いに異なる)の中から実行すべき補正処理が選択される(S15、S25)。そして、用紙情報が第1種の用紙(例えば、名刺サイズの用紙)を示す場合に、第1の補正処理(例えば、大エッジ強調フィルタFElを用いる補正処理)が選択される。用紙情報が第2種の用紙(例えば、L判サイズの用紙)を示す場合に、第2の補正処理(例えば、小平滑化フィルタFSsを用いる補正処理)が選択される。そして、第1の補正処理は、複数個の第1の周辺画素(例えば、大エッジ強調フィルタFEl内に位置する周辺画素SP(図5(C)))に対応付けられる複数個の第1の補正係数(例えば、図5(C)の補正係数「−4/32」)を用いて注目画素CPの値を補正する処理である。第2の補正処理は、複数個の第2の周辺画素(例えば、小平滑化フィルタFSs内に位置する周辺画素SP(図6(A)))に対応付けられる複数個の第2の補正係数(例えば、図6(A)の補正係数「1」)を用いて注目画素CPの値を補正する処理である。そして、対象画像データに対して選択済みの補正処理を含む生成処理(S40〜S50)が実行されて、印刷画像を示す印刷画像データが生成される。CPU110は、該印刷画像データに従って、プリンタ300に印刷画像を用紙に印刷させる(S55、S60)。この結果、用紙の種類に応じた適切な補正処理を選択することができる。このために、用紙に適した見栄えの印刷画像を用紙に印刷できる。この結果、適切な補正処理を選択することで、印刷画像の見栄えを向上できる。
例えば、用紙のサイズによって、印刷画像の通常の観察距離は異なる。一般的には、用紙のサイズが大きいほど、該用紙に印刷される印刷画像の観察距離は、長くなる。例えば、用紙のサイズが名刺サイズやL判サイズである場合には、印刷画像の観察距離は、10cm〜15cm程度である。それに対して、用紙のサイズが名刺サイズやL判サイズよりも大きなA4サイズである場合には、印刷画像の観察距離は、30cm程度である。一方で、比較的短い観察距離で特定の印刷画像を観察した場合の見栄え(例えば、粒状性や鮮鋭さ)は、比較的長い観察距離で該特定の印刷画像を観察した場合の見栄えとは、異なり得る。これは、例えば、観察者の所定の視野範囲に入る画像のサイズが、観察距離が短いほど小さくなり、観察距離が短いほど大きくなることに起因する。
例えば、比較的長い観察距離では、自然な見栄えに見える画像であっても、比較的短い観察距離では、より細かい部分を視認しやすいので、ぼけた画像に見える場合がある。具体的には、観察距離が比較的短い名刺サイズやL判サイズでは、オブジェクトのエッジのぼけが目立ちやすいので、観察距離が比較的長いA4サイズやA3サイズと比較して、エッジの強度を高くすることが好ましい。このために、本実施例では、観察距離が比較的短い名刺サイズやL判サイズが用いられる場合で平滑化フィルタを用いる補正処理については、エッジの強度が高くなるようにするため、使用する平滑化フィルタサイズを、観察距離が比較的長いA4サイズやA3サイズが用いられる場合よりも小さくしている。また、エッジ強調フィルタを用いる補正処理では、観察距離が比較的長いA4サイズやA3サイズが用いられる場合よりもエッジの強度が高くなるように、使用するフィルタサイズをA4サイズやA3サイズが用いられる場合よりも大きくしている。これによって、通常の観察距離で観察した場合の見栄えを、用紙のサイズに応じて適正化することができる。一般的に言えば、平滑化フィルタを用いる補正処理については、用紙情報が、第1のサイズの用紙を示す場合には、第1のフィルタサイズのフィルタを用いて補正が行われ、用紙情報が、第1のサイズよりも大きな第2のサイズの用紙を示す場合には、第2のフィルタサイズよりも大きな第2のフィルタサイズのフィルタを用いて補正が行われることが好ましい。エッジ強調フィルタを用いる補正処理については、用紙情報が、第1のサイズの用紙を示す場合には、第1のフィルタサイズのフィルタを用いて補正が行われ、用紙情報が、第1のサイズよりも大きな第2のサイズの用紙を示す場合には、第2のフィルタサイズよりも小さな第2のフィルタサイズのフィルタを用いて補正が行われることが好ましい。これによって、用紙のサイズに応じて適切な補正処理が実行される。この結果、本実施例では、用紙のサイズによって異なり得る通常の観察距離で観察した場合の印刷画像の見栄えを向上し得る。
また、用紙のサイズによって、主要なオブジェクトが推定でき、該オブジェクトによって適切な補正処理が異なる場合がある。例えば、名刺サイズの用紙に印刷される画像は、文字が主要なオブジェクトであり、名刺サイズの用紙に印刷される画像は、写真が主要なオブジェクトである可能性が高い。文字が主要なオブジェクトである場合には、文字のエッジを強調して文字の見栄えを向上することが好ましいので、エッジ強調フィルタを用いた補正処理を行うことが好ましい。また、写真が主要なオブジェクトである場合には、写真の粒状性が目立つことを抑制し、かつ、モアレの発生を抑制するために、平滑化フィルタを用いた補正処理を行うことが好ましい。本実施例によれば、用紙のサイズが、名刺サイズである場合には、大エッジ強調フィルタFElが選択され、用紙のサイズが、L判サイズである場合には、小平滑化フィルタFSsが選択される。この結果、用紙のサイズに応じて異なる補正処理を行うことで、主要オブジェクトに適した補正処理が行われる可能性が高くなり、印刷画像の見栄えを向上し得る。
また、用紙の材質によって、インクの滲み方が異なる場合がある。例えば、用紙が普通紙である場合には、用紙が光沢紙である場合と比較して、インクの滲みの程度が大きくなる。この結果、用紙が普通紙である場合には、用紙が光沢紙である場合と比較して、インクの滲みによってエッジの強度が低下しやすい。このために、A3サイズの用紙が普通紙である場合には、A3サイズ用紙が光沢紙である場合と比較して、一段階、エッジの強度を高くするように、フィルタが決定される。具体的には、A3サイズの用紙が普通紙である場合には、A3サイズの用紙が光沢紙である場合と比較して、写真領域に対して適用される平滑化フィルタについては、フィルタのサイズが一段階小さくされる。また、A3サイズの用紙が普通紙である場合には、A3サイズの用紙が光沢紙である場合と比較して、文字領域に対して適用されるエッジ強調フィルタについては、フィルタのサイズが一段階大きくされる。また、写真領域については、過剰に平滑化処理を行うことで、画像処理の処理時間が増大することを抑制できる。本実施例では、A3サイズの用紙についてのみ、光沢紙と普通紙とで用いるフィルタを変えることで、平滑化処理の処理時間の低減が図られている。これは、A3サイズは、他の用紙のサイズと比較して大きいために、比較的大きなサイズのフィルタが用いられ、かつ、画素数が多いために処理時間が過大になりやすく、処理時間の増大を抑制する効果が大きいためである。
さらに、本実施例では、上述したように、各補正処理は、複数個の周辺画素SPの値と、対応する補正係数と、を用いて注目画素CPの値を変更する処理であるので、周辺画素SPの値と、複数個の補正係数と、を用いて、適切な補正処理を実行することができる。より具体的には、各補正処理は、図5、図6に示すいずれかのフィルタを用いて注目画素を変更する処理であり、異なる補正処理では、用いるフィルタが異なる。すなわち、第1の補正処理(例えば、用紙のサイズが名刺サイズである場合の補正処理)では、第1のフィルタ(例えば、図5(C)の大エッジ強調フィルタFEl)が用いられ、第2の補正処理(例えば、用紙のサイズがL判サイズである場合の補正処理)では、第2のフィルタ(例えば、図6(A)の小平滑化フィルタFSs)が用いられる。この結果、第1のフィルタと第2のフィルタとを用いて、第1の補正処理と第2の補正処理とを適切に実行できる。
さらに、本実施例の補正処理は、図6から解るように、画像を平滑化する平滑化処理を含む。したがって、用紙の種類に応じた適切な平滑化処理を実行することができる。また、本実施例の補正処理は、図6から解るように、画像のエッジを強調するエッジ強調処理を含む。したがって、用紙の種類に応じた適切なエッジ強調処理を実行することができる。
B.第2実施例
第2実施例では、フィルタ選択テーブルFTbが、第1実施例の図4のフィルタ選択テーブルFTと異なる。すなわち、図2のS20にて決定される使用フィルタが、第1実施例とは異なる部分がある。
図7は、第2実施例のフィルタ選択テーブルFTbの一例を示す図である。フィルタ選択テーブルFTbに示すように、第2実施例では、用紙のサイズが名刺サイズまたはL判サイズである場合に決定される使用フィルタは、第1実施例と同一である。
フィルタ選択テーブルFTbに示すように、第2実施例では、用紙のサイズがA3サイズまたはA4サイズである場合に決定される使用フィルタが、第1実施例と異なる。
用紙のサイズがA4サイズである場合には、対象画像内の文字領域と写真領域については、第1実施例と同一の使用フィルタに決定される。用紙のサイズがA4サイズである場合には、下地領域について、2種類の使用フィルタが決定される。具体的には、下地領域のうち、文字の近傍の領域を除いた領域については、中平滑化フィルタFSmが使用フィルタとして決定される。下地領域のうち、文字の近傍の領域については、中平滑化フィルタFSmよりもサイズが一段階だけ小さな小平滑化フィルタFSsが使用フィルタとして決定される。
用紙のサイズがA3サイズである場合で、かつ、用紙が光沢紙である場合には、対象画像内の文字領域と写真領域については、第1実施例と同一の使用フィルタに決定される。用紙のサイズがA3サイズである場合で、かつ、用紙が光沢紙である場合には、下地領域について、2種類の使用フィルタが決定される。具体的には、下地領域のうち、文字の近傍を除いた領域については、大平滑化フィルタFSlが使用フィルタとして決定される。下地領域のうち、文字の近傍の領域については、大平滑化フィルタFSlよりもサイズが一段階だけ小さな中平滑化フィルタFSmが使用フィルタとして決定される。
用紙のサイズがA3サイズである場合で、かつ、用紙が普通紙である場合には、対象画像内の文字領域と写真領域については、第1実施例と同一の使用フィルタに決定される。用紙のサイズがA3サイズである場合で、かつ、用紙が普通紙である場合には、下地領域について、2種類の使用フィルタが決定される。具体的には、下地領域のうち、文字の近傍の領域を除いた領域については、中平滑化フィルタFSmが使用フィルタとして決定される。下地領域のうち、文字の近傍の領域については、中平滑化フィルタFSmよりもサイズが一段階だけ小さな小平滑化フィルタFSsが使用フィルタとして決定される。
フィルタ選択テーブルFTbを用いて決定される使用フィルタを用いた補正処理を実現すべく、第2実施例では、用紙のサイズがA4サイズまたはA3サイズである場合に実行される図2のS40の補正処理が、第1実施例と異なる。用紙のサイズが名刺サイズまたはL判サイズである場合に実行される図2のS40の補正処理は、第1実施例と同じである。
図8は、第2実施例で、用紙のサイズがA4サイズまたはA3サイズである場合に実行される補正処理のフローチャートである。S100では、1個の注目画素CPが選択される。S105では、領域に応じたフィルタが選択される。すなわち、注目画素CPが属する領域が、文字領域、写真領域、下地領域のいずれであるかに応じて、S20にて決定されたフィルタが選択される。ここでは、用紙のサイズが、A3サイズで、かつ、光沢紙である場合を例にして説明する。この場合には、注目画素CPが文字領域内である場合には小エッジ強調フィルタFEsが選択され、注目画素CPが写真領域内である場合には大平滑化フィルタFSlが選択される。そして、注目画素CPが下地領域内である場合には、大平滑化フィルタFSlが選択される。下地領域については、このように、文字の近傍を除いた領域について決定された使用フィルタが選択される。
S110では、注目画素CPが下地領域内の画素であるか否かが判断される。注目画素CPが下地領域内の画素でない場合には(S110:NO)、S125に処理を進める。注目画素CPが下地領域内の画素である場合には(S110:YES)、S115にて、CPU110は、注目画素CPを中心としたフィルタ範囲内に、文字領域内に位置する文字画素があるか否かを判断する。
注目画素CPを中心としたフィルタ範囲内に文字画素がある場合には(S115:YES)、S120にて、CPU110は、文字の近傍の領域のためのフィルタ、すなわち、現在選択されているフィルタよりもサイズが一段階小さなフィルタを使用フィルタとして、新たに選択する。注目画素CPを中心としたフィルタ範囲内に文字画素がない場合には(S115:NO)、CPU110は、S120をスキップして、S125に処理を進める。
図9は、第2実施例における下地領域の補正の説明図である。図9には、対象画像の一部である部分対象画像POIの一例が図示されている。この部分対象画像POIは、文字TXの一部(下地領域の一部)と、下地BGの一部(下地領域)と、を含んでいる。注目画素CPが、図9の画素CP1である場合には、画素CP1を中心とする大平滑化フィルタFSlの範囲内に、文字TX(文字領域)を構成する文字画素はないので(S115:NO)、使用フィルタの再選択は行われない。注目画素CPが、図9の画素CP2である場合には、画素CP2を中心とする大平滑化フィルタFSlの範囲内に、文字TX(文字領域)を構成する文字画素はあるので(S115:YES)、使用フィルタは、大平滑化フィルタFSlから、中平滑化フィルタFSmに変更される。
S125では、CPU110は、フィルタ処理を実行する。すなわち、CPU110は、選択済みの使用フィルタを注目画素CPに適用して、注目画素CPの値を補正する。S130では、CPU110は、全ての画素を注目画素として処理したか否かを判断する。未処理の画素がある場合には(S130:NO)、CPU110は、S100に戻る。全ての画素が処理された場合には(S130:YES)、CPU110は、補正処理を終了する。
以上説明した第2実施例によれば、第1実施例と同様に、用紙の種類に応じた適切な補正処理を選択することができるので、用紙に適した見栄えの印刷画像を用紙に印刷できる。
第2実施例によれば、さらに、下地領域に対しても用紙のサイズに応じたフィルタを適用した補正処理が実行されるので、さらに、用紙に適した見栄えの印刷画像を用紙に印刷できる。
さらに、第2実施例によれば、下地領域内の複数個の画素のうちの文字TXの近傍の領域を除いた領域内の画素の値は、特定のフィルタ(例えば、大平滑化フィルタFSl)を用いて補正される(図8のS115にてNO、S125)。そして、下地領域内の複数個の画素のうちの文字TXの近傍の領域内の画素の値は、特定のフィルタよりも小さなサイズのフィルタ(例えば、中平滑化フィルタFSm)を用いて補正される。この結果、印刷画像において、下地BGと文字TXとの境界部分の見栄えが低下することを抑制できる。
仮に、下地領域のうちの文字の近傍の領域の画素に、過度に大きな大平滑化フィルタFSlが適用されると、フィルタ範囲内に、文字画素が含まれやすい。この場合には、補正処理によって、例えば、文字TXに沿った領域に、文字TXの色と下地の色との中間の色を持った画素が現れてしまう。さらに、このような状態で、文字TXにエッジ強調処理が施されると、鮮鋭化された文字のエッジの周囲に、このような中間の色を持った縁取りが現れ得る。この結果、文字TXの見栄えが低下する可能性がある。本実施例によれば、このような不都合を抑制することができる。
C.変形例
(1)上記第1実施例では、エッジ強調フィルタと平滑化フィルタとの両方について、複数個のサイズを準備して、用紙のサイズに応じて使用するフィルタのサイズを変えている(図4)。これに代えて、例えば、エッジ強調フィルタと平滑化フィルタとのうちの一方は、固定のサイズとして、他方についてのみ、用紙のサイズに応じて使用するフィルタのサイズを変えても良い。
上記第1実施例では、用紙のサイズに応じて使用するフィルタのサイズを変えているが、使用するフィルタのサイズを変えずに、使用するフィルタの種類だけを変えても良い。例えば、想定される用紙のサイズを、名刺サイズとL判サイズだけとし、用紙のサイズが名刺サイズである場合には、エッジ強調フィルタが選択され、用紙のサイズがL判サイズである場合には、平滑化フィルタが選択されても良い。この場合には、エッジ強調フィルタと平滑化フィルタとは、互いにサイズが等しく(例えば、縦3画素×横3画素)、補正係数だけが異なるフィルタであっても良い。
このように、一般的に言えば、媒体情報(例えば、用紙情報)が第1種の媒体(例えば、特定のサイズや材質の用紙)を示す場合に、第1の補正処理が選択され、媒体情報が第2種の媒体を示す場合に、第2の補正処理が選択されることが好ましい。
(3)上記実施例の平滑化フィルタ(図6)は、一例であり、これに限られない。例えば、図6の中平滑化フィルタFSmや大平滑化フィルタFSlは、フィルタ内に補正係数が0である周辺画素を規定している。これに代えて、中平滑化フィルタFSmは、例えば、縦5画素×横5画素の25個の画素に対応する全ての補正係数が(1/25)であるフィルタであっても良い。また、大平滑化フィルタFSlは、例えば、縦7画素×横7画素の49個の画素に対応する全ての補正係数が(1/49)であるフィルタであっても良い。また、小平滑化フィルタFSs、中平滑化フィルタFSm、大平滑化フィルタFSlは、サイズが異なる3種類のガウスフィルタであっても良い。
(4)上記実施例のエッジ強調フィルタ(図5)は、一例であり、これに限られない。図10は、変形例のエッジ強調フィルタの一例を示す図である。変形例では、図10(A)〜(C)の3種類のサイズのエッジ強調フィルタが採用される。図10(A)の小エッジ強調フィルタFEsは、図6(A)の実施例の小エッジ強調フィルタFEsと同一である。
図10(B)の中エッジ強調フィルタFEmbは、縦3個×横3個の画素のそれぞれに対応する補正係数を規定している。すなわち、中エッジ強調フィルタFEmbは、注目画素CPと、注目画素CPの周辺に位置する8個の周辺画素SPと、のそれぞれについて、対応する補正係数を規定している。例えば、中エッジ強調フィルタFEmbでは、注目画素CPに対応する補正係数は、5であり、注目画素CPの上下左右に隣接する4個の周辺画素SPに対応する4個の補正係数は、0であり、注目画素CPの左上、右上、左下、左上に位置する4個の周辺画素SPに対応する4個の補正係数は、−1である。中エッジ強調フィルタFEmbでは、対応する補正係数が0とは異なる周辺画素SPの個数は、4個である。このために、中エッジ強調フィルタFEmbでは、補正に用いられる周辺画素SPの個数は、4個である。
図10(C)の大エッジ強調フィルタFElbは、縦5個×横5個の画素のそれぞれに対応する補正係数を規定している。すなわち、大エッジ強調フィルタFElbは、注目画素CPと、注目画素CPの周辺に位置する24個の周辺画素SPと、のそれぞれについて、対応する補正係数を規定している。例えば、大エッジ強調フィルタFElbでは、注目画素CPに対応する補正係数は、5であり、24個の周辺画素SPのうち、上下左右の辺の中央に位置する4個の周辺画素SPに対応する4個の補正係数は、−1であり、残りの20個の周辺画素SPに対応する20個の補正係数は、0である。大エッジ強調フィルタFElbでは、対応する補正係数が0とは異なる周辺画素SPの個数は、4個である。このために、大エッジ強調フィルタFElbでは、補正に用いられる周辺画素SPの個数は、4個である。
フィルタのサイズは、実施例と同様に、補正に用いられる複数個の周辺画素SPのうちの注目画素CPから最も離れた最遠周辺画素FPと、注目画素CPと、の間の距離Dによって示すことができる。すなわち、最遠周辺画素FPと注目画素CPとの間の距離Dが大きいほど、換言すれば、注目画素CPが最遠周辺画素FPから離れているほど、フィルタのサイズが大きいと言うことができる。ここで、小エッジ強調フィルタFEsの距離Desは、1であり、中エッジ強調フィルタFEmbの距離Dembは、SQRT(2)であり、大エッジ強調フィルタFElbの距離Delbは、2である。
なお、変形例においても、エッジ強調フィルタのサイズが大きいほど(すなわち、最遠周辺画素FPが注目画素CPから離れているほど)、補正のレベルが高くなり、エッジが強調される程度が大きくなる。
(5)上記各実施例にて、想定される用紙のサイズや材質は一例であり、これに限られない。用紙のサイズは、他のサイズ、例えば、B5サイズ、B4サイズ、A2サイズを含んでも良い。用紙の材質は、さらに、厚紙、ラベルシートなどを含んでも良い。さらに、用紙情報は、用紙とは異なる材質の被印刷媒体、例えば、OHPシート、CD−ROMやDVD−ROMを含んでも良い。
(6)上記実施例では、用紙のサイズや材質を示す用紙情報は、UI画面を介してユーザによって入力される。これに代えて、プリンタ300は、例えば、用紙トレイに、用紙のサイズや材質を検出する用紙センサを備え、CPU110は、該用紙センサを用いて生成される用紙情報をプリンタ300から取得しても良い。用紙センサ310は、例えば、トレイ内における所定の位置に用紙が有るか否かを判定することで、用紙のサイズを検出するセンサであっても良い。また、用紙センサは、用紙の表面からの反射光の反射率や波長を測定することによって、光沢紙と普通紙とを含む複数種の用紙のうちのいずれであるかを検出するセンサであっても良い。
(7)上記実施例では、対象画像データは、文書作成ソフトや描画ソフトなどによって作成された画像データである。これに代えて、対象画像データは、スキャナやデジタルカメラなどにおいてイメージセンサを用いて原稿などの対象物を読み取ることによって生成される読取画像データであっても良い。
(8)図2の印刷処理を実現する印刷制御装置は、端末装置100に限らず、例えば、プリンタ300や複合機などに搭載された制御装置(CPUとメモリ)であっても良い。この場合には、例えば、プリンタ300の制御装置は、端末装置100から対象画像データを取得し、図2の印刷処理を実行し、プリンタ300にて印刷画像の印刷を行っても良い。
また、端末装置100やプリンタ300とネットワークを介して接続されたサーバが、図2の印刷制御処理を実行しても良い。この場合には、例えば、サーバは、端末装置100から対象画像データを取得して、図2の印刷制御処理を実行し、生成された印刷ジョブをプリンタ300に送信しても良い。サーバは、単体の計算機であっても良い。また、サーバは、ネットワークを介して互いに通信可能な複数個のコンピュータ(例えば、クラウドサーバ)であっても良い。この場合には、複数個のコンピュータは、印刷制御処理に要する機能を一部ずつ分担して、全体として、印刷制御処理を実行してもよい。この場合、複数個のコンピュータの全体が、印刷制御装置の例である。
(9)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。