A.実施形態:
A−1.装置構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1(および後述する図6,7)のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1(および後述する図6,7)のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を、面方向と呼ぶものとする。
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という)102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
図1に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの外周の4つの角部周辺には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びるボルト孔109を構成している。各ボルト孔109にはボルト22が挿入されており、各ボルト22および図示しないナットによって燃料電池スタック100は締結されている。
また、図1から図3に示すように、各発電単位102のZ軸方向回りの外周辺の付近には、各発電単位102を上下方向に貫通する孔が形成されており、各発電単位102に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、複数の発電単位102にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために各発電単位102に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給する共用ガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する共用ガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態の燃料電池スタック100には、酸化剤ガス導入マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162が、それぞれ1つのみ存在している。また、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給する共用ガス流路である燃料ガス導入マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス導入マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する共用ガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態の燃料電池スタック100には、燃料ガス導入マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172が、それぞれ1つのみ存在している。また、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。図2および図3に示すように、下側のエンドプレート106には、4つの流路用貫通孔107が形成されている。4つの流路用貫通孔107は、それぞれ、酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
(ガス通路部材27等の構成)
図2および図3に示すように、燃料電池スタック100は、さらに、下側のエンドプレート106に対して複数の発電単位102とは反対側(すなわち、下側)に配置された4つのガス通路部材27を備える。4つのガス通路部材27は、それぞれ、酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172と上下方向に重なる位置に配置されている。各ガス通路部材27は、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107に連通する孔が形成された本体部28と、本体部28の側面から分岐した筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。なお、各ガス通路部材27の本体部28とエンドプレート106との間には、絶縁シート26が配置されている。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。また、図6は、図4および図5のVI−VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、図7は、図4および図5のVII−VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ軸方向回りの周縁部には、上述した各マニホールド161,162,171,172として機能する連通孔108を構成する孔や、各ボルト孔109を構成する孔が形成されている。
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
電解質層112は、Z方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な層である。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、Z方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、Z方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。燃料極116は、例えば、Niと酸化物イオン伝導性セラミックス粒子(例えば、YSZ)とからなるサーメットにより形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。
図4〜図6に示すように、空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する孔である。図6に示すように、Z軸方向視で、孔131の外形線は略矩形である。孔131は、X軸方向に互いに対向する第1の内周面IP1および第2の内周面IP2を有する。孔131の外形線の内、第1の内周面IP1により構成される部分および第2の内周面IP2により構成される部分は、Y軸方向に略平行な直線状部分を有している。また、図4および図6に示すように、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108に連通すると共に空気室166を構成する孔131の第1の内周面IP1に開口する酸化剤ガス供給連通流路132と、酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108に連通すると共に空気室166を構成する孔131の第2の内周面IP2に開口する酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。本実施形態では、空気極側フレーム130に、3本の酸化剤ガス供給連通流路132と、3本の酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。
図4,図5および図7に示すように、燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する孔である。図7に示すように、Z軸方向視で、孔141の外形線は略矩形である。孔141は、X軸方向に互いに対向する第3の内周面IP3および第4の内周面IP4を有する。孔141の外形線の内、第3の内周面IP3により構成される部分および第4の内周面IP4により構成される部分は、Y軸方向に略平行な直線状部分を有している。また、図5および図7に示すように、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108に連通すると共に燃料室176を構成する孔141の第3の内周面IP3に開口する燃料ガス供給連通流路142と、燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108に連通すると共に燃料室176を構成する孔141の第4の内周面IP4に開口する燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。本実施形態では、燃料極側フレーム140に、1本の燃料ガス供給連通流路142と、1本の燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。
図4〜図6に示すように、空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の凸部である集電体要素135が空気極側集電体134として機能する。また、空気極側集電体134とインターコネクタ150との一体部材は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電体134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
図4,5,7に示すように、燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。なお、燃料極側集電体144のうち、燃料極116に接触している部分が電極対向部145であり、インターコネクタ150に接触している部分がインターコネクタ対向部146であり、燃料極116とインターコネクタ150とのいずれにも接触していない部分が連接部147である。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2,4,6に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29、本体部28、および、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、図3,5,7に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29、本体部28、および、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2,4,6に示すように、酸化剤ガス排出連通流路133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3,5,7に示すように、燃料ガス排出連通流路143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
なお、上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各発電単位102では、空気極側フレーム130の孔131における酸化剤ガス供給連通流路132が開口する第1の内周面IP1と酸化剤ガス排出連通流路133が開口する第2の内周面IP2との対向方向(X軸方向)と、燃料極側フレーム140の孔141における燃料ガス供給連通流路142が開口する第3の内周面IP3と燃料ガス排出連通流路143が開口する第4の内周面IP4との対向方向(X軸方向)とが、略同一方向である。また、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108と燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108とが、上記対向方向の同じ側(X軸正方向側)に配置され、酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108と燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108とが、上記対向方向の同じ側(X軸負方向側)に配置されている。そのため、各発電単位102の空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(図6に示すように、X軸負方向)と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(図7に示すように、X軸正方向)とが、略反対方向(互いに対向する方向)となる。すなわち、本実施形態の発電単位102(燃料電池スタック100)は、カウンターフロータイプのSOFCである。
A−3.空気極側集電体134および燃料極側集電体144の詳細構成:
図8は、図6のX1部分における集電体要素135と電極対向部145との配置関係を示すXY断面図である。図8では、上下方向視(Z方向視)における集電体要素135と電極対向部145との配置関係が分かるようにするため、集電体要素135が点線で示されており、電極対向部145が実線で示されている。図9は、図6および図7のIX−IXの位置における発電単位102のYZ断面構成を示す説明図であり、図10は、図6および図7のX−Xの位置における発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
また、以下の説明では、A方向において複数の部材Bが均等間隔に並ぶことには、部材B同士の離間距離が完全に同一である形態に限らず、部材B同士の離間距離のバラツキが±1(mm)以下である形態も含まれる。また、A方向における部材(または部材のある部分、以下同様)Bと部材Cとの離間距離とは、部材Bのうちの部材Cに最も近い端を通り、かつ、A方向に直交する平面と、部材Cのうちの部材Bに最も近い端を通り、かつ、A方向に直交する平面との間の最短距離をいう。また、A方向における部材B同士の配置間隔とは、一の部材BのA方向の中心を通り、かつ、A方向に直交する平面と、A方向において該一の部材Bと隣り合う他の部材BのA方向の中心を通り、かつ、A方向に直交する平面との間の最短距離(ピッチ間隔)をいう。
(空気極側集電体134の構成)
図6および図8に示すように、上下方向視で、空気極側集電体134が有する各集電体要素135の形状は略矩形状である。具体的には、集電体要素135の形状は、略長方形状であり、上述した酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの主たる流れ方向(X方向)の寸法が、該流れ方向に直交する方向(Y方向)の寸法より長い。以下、集電体要素135の長辺に沿った方向(X方向)を、長辺方向といい、集電体要素135の短辺に沿った方向(Y方向)を、短辺方向という。また、集電体要素135の長辺方向の寸法を、長辺幅135Xといい、集電体要素135の短辺方向の寸法を、短辺幅135Yという。なお、短辺幅135Yは、5(mm)以下であることが好ましい。なお、長辺方向および短辺方向は、特許請求の範囲における第2の方向に相当する。
また、複数の集電体要素135は、短辺方向に均等間隔で並ぶように配置されている。図6では、短辺方向(Y方向)に36個の集電体要素135が均等間隔で並ぶように配置されている。図9にも示すように、本実施形態では、集電体要素135同士の短辺方向の第2の離間距離135DYは、短辺幅135Yより長い。また、集電体要素135同士の短辺方向の第2の配置間隔135PYは、短辺幅135Yより長い。
また、複数の集電体要素135は、長辺方向に均等間隔で並ぶように配置されている。図6では、長辺方向(X方向)に6個の集電体要素135が均等間隔で並ぶように配置されている。図10にも示すように、本実施形態では、集電体要素135同士の長辺方向の第1の離間距離135DXは、長辺幅135Xより短い。また、集電体要素135同士の長手方向の第1の配置間隔135PXは、長辺幅135Xと略同一である。
(燃料極側集電体144の構成)
図7および図8に示すように、上下方向視で、燃料極側集電体144が有する各電極対向部145の形状は略矩形形状である。具体的には、電極対向部145の形状は、略長方形状であり、集電体要素135のX方向の寸法が、集電体要素135のY方向の寸法より長い。そのため、集電体要素135のX方向が長辺方向であり、集電体要素135のY方向が短辺方向である。以下、電極対向部145の長辺方向の寸法を、長辺幅145Xといい、電極対向部145の短辺方向の寸法を、短辺幅145Yという。
また、複数の電極対向部145は、短辺方向に均等間隔で並ぶように配置されている。図7では、短辺方向(Y方向)に9個の電極対向部145が均等間隔で並ぶように配置されている。図9にも示すように、本実施形態では、電極対向部145同士の短辺方向の第5の離間距離145DYは、電極対向部145の短辺幅145Yより長い。また、電極対向部145同士の短辺方向の第5の配置間隔145PYは、電極対向部145の短辺幅145Yより長く、電極対向部145の短辺幅145Yの略2倍である。
また、複数の電極対向部145は、長辺方向に並ぶように配置されている。図7では、長辺方向(X方向)に12個の電極対向部145が均等間隔で並ぶように配置されている。本実施形態では、長辺方向において互いに第3の離間距離145DX1で並ぶ2つの電極対向部145を含む電極対向部対が、複数対、第4の離間距離145DX2で並ぶように配置されている。図10にも示すように、本実施形態では、電極対向部145同士の長辺方向の離間距離145DX1,145DX2は、電極対向部145の長辺幅145Xより短い。また、一対の電極対向部145同士の長手方向の第3の配置間隔145PX1は、電極対向部145の長辺幅145Xと略同一であり、電極対向部対同士の第4の配置間隔145PX2は、電極対向部145の長辺幅145Xより長い。
(集電体要素135と電極対向部145との配置関係)
(1)1つの電極対向部145に対する集電体要素135の配置
図8および図9に示すように、複数の集電体要素135には、上下方向視で、電極対向部145に重なる集電体要素135(以下、「重複集電体要素135A」という)と、電極対向部145に重ならない集電体要素135(以下、「非重複集電体要素135B」という)とが含まれる。本実施形態では、全ての電極対向部145のそれぞれに対して、上下方向視で該電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数は2つずつである。また、全ての重複集電体要素135Aについて、上下方向視で、重複集電体要素135Aの短辺方向(Y方向)の全体が、1つの電極対向部145に重なっている。より具体的には、上下方向視で、重複集電体要素135Aの短辺方向の両側が、1つの電極対向部145の短辺方向の両側より内側に位置している(図8参照)。また、上下方向視で、短辺方向に互いに隣り合う2つの電極対向部145の間の空間に重なる非重複集電体要素135Bの数は、2つである。すなわち、短辺方向において重複集電体要素135Aと非重複集電体要素135Bとが同数(2つ)ずつ交互に並ぶように配置されている。
また、複数の重複集電体要素135Aは、短辺方向の両端に位置する重複集電体要素135Aを除き、次の関係が成り立っている。一の重複集電体要素135Aと、該一の重複集電体要素135Aに対して短辺方向の一方側において該一の重複集電体要素135Aに最も近い位置に配置された一方側の重複集電体要素135Aとの離間距離を一方側離間距離とする。また、一の重複集電体要素135Aと、該一の重複集電体要素135Aに対して短辺方向の他方側において該一の重複集電体要素135Aに最も近い位置に配置された他方側の重複集電体要素135Aとの離間距離を他方側離間距離とする。一方側離間距離と他方側離間距離とは互いに異なっている。例えば、図9において、紙面左端から2つ目の重複集電体要素135Aを、一の重複集電体要素135Aとし、紙面左端から1つ目の重複集電体要素135Aを、一方側(Y軸負方向側)の重複集電体要素135Aとし、紙面左端から3つ目の重複集電体要素135A(紙面左から5つ目の集電体要素135)を、他方側(Y軸正方向側)の重複集電体要素135Aとする。このとき、一方側離間距離はΔL1であり、他方側離間距離はΔL2であり、両者は異なる。換言すれば、共通の電極対向部145に重なる2つの重複集電体要素135A同士の第6の離間距離ΔL1(第2の離間距離135DYと同じ)に対して、互いに異なる電極対向部145にそれぞれ重なる2つの重複集電体要素135A同士の第7の離間距離ΔL2の方が長い(例えば、第2の離間距離135DYの2倍以上)。なお、第7の離間距離ΔL2は、第6の離間距離ΔL1の1.5倍以上であることが好ましく、さらには、第6の離間距離ΔL1の2倍以上であることがより好ましい。
また、空気極114の短辺方向(Y方向)の幅(L1)に対する、空気極114に接触する集電体要素135の短辺方向の合計幅(M1)の割合は、30%以上である。合計幅(M1)は、複数の集電体要素135のそれぞれが空気極114と接触する領域の短辺方向の幅(本実施形態では、短辺幅135Yと同じ)の合算値であり、空気極114と空気極側集電体134との間における導通可能領域の短辺方向の合計幅を意味する。また、上下方向視で、集電体要素135の矩形状における最小の辺の長さ(短辺幅135Y)は、電極対向部145の矩形状における最小の辺の長さ(長辺幅145Xまたは短辺幅145Y)より短い。
この場合、空気極114は、特許請求の範囲における第1の電極に相当し、空気極側集電体134は、特許請求の範囲における第1の集電部材に相当し、集電体要素135は、特許請求の範囲における第1の凸部に相当する。また、燃料極116は、特許請求の範囲における第2の電極に相当し、燃料極側集電体144は、特許請求の範囲における第2の集電部材に相当し、電極対向部145は、特許請求の範囲における第2の凸部に相当する。また、重複集電体要素135Aは、特許請求の範囲における重複凸部に相当し、非重複集電体要素135Bは、特許請求の範囲における非重複凸部に相当する。
(2)1つの集電体要素135に対する電極対向部145の配置
図8および図10に示すように、全ての電極対向部145のそれぞれは、上下方向視で、集電体要素135に重なっている。本実施形態では、全ての集電体要素135のそれぞれに対して、上下方向視で該集電体要素135に重なる電極対向部145の数は2つずつである。また、全ての電極対向部145について、上下方向視で、集電体要素135の長辺方向(X方向)における電極対向部145の全体が、1つの集電体要素135に重なっている。より具体的には、上下方向視で、長辺方向における電極対向部145の両側が、1つの集電体要素135の長辺方向の両側より内側に位置している(図8参照)。なお、また、上下方向視で、長辺方向に互いに隣り合う2つの集電体要素135の間の空間に重なる電極対向部145の数は、0(ゼロ)である。
また、複数の電極対向部145は、上記長辺方向の両端に位置する電極対向部145を除き、次の関係が成り立っている。一の電極対向部145と、該一の電極対向部145に対して長辺方向の一方側において該一の電極対向部145に最も近い位置に配置された一方側の電極対向部145との離間距離を一方側離間距離とする。また、一の電極対向部145と、該一の電極対向部145に対して長辺方向の他方側において該一の電極対向部145に最も近い位置に配置された他方側の電極対向部145との離間距離を他方側離間距離とする。一方側離間距離と他方側離間距離とは互いに異なっている。例えば、図10において、紙面左端から2つ目の電極対向部145を、一の電極対向部145とし、紙面左端から1つ目の電極対向部145を、一方側(X軸負方向側)の電極対向部145とし、紙面左端から3つ目の電極対向部145を、他方側(X軸正方向側)の電極対向部145とする。このとき、一方側離間距離はΔL3(第3の離間距離145DX1)であり、他方側離間距離はΔL4(第4の離間距離145DX2)であり、両者は異なる。換言すれば、共通の集電体要素135に重なる2つの電極対向部145同士の第8の離間距離ΔL3に対して、互いに異なる集電体要素135にそれぞれ重なる2つの電極対向部145同士の第9の離間距離ΔL4の方が長い。なお、第9の離間距離ΔL4は、第8の離間距離ΔL3の1.5倍以上であることが好ましく、さらには、第8の離間距離ΔL3の2倍以上であることがより好ましい。
また、上記長辺方向における燃料極116の幅(L2)に対する、燃料極116に接触する電極対向部145の長辺方向の合計幅(M2)の割合は、40%以上である。合計幅(M2)は、複数の電極対向部145のそれぞれが燃料極116と接触する領域の長辺方向の幅(本実施形態では、長辺幅145Xと同じ)の合算値であり、燃料極116と燃料極側集電体144との間における導通可能領域の長辺方向の合計幅を意味する。
この場合、燃料極116は、特許請求の範囲における第1の電極に相当し、燃料極側集電体144は、特許請求の範囲における第1の集電部材に相当し、電極対向部145は、特許請求の範囲における第1の凸部に相当する。また、空気極114は、特許請求の範囲における第2の電極に相当し、空気極側集電体134は、特許請求の範囲における第2の集電部材に相当し、集電体要素135は、特許請求の範囲における第2の凸部に相当する。また、電極対向部145は、特許請求の範囲における重複凸部に相当する。
A−4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各発電単位102は、単セル110と、空気極側集電体134と、燃料極側集電体144とを備える。空気極側集電体134は、空気極114側に配置され、空気極114の表面に接触する複数の集電体要素135を有する。燃料極側集電体144は、燃料極116側に配置され、燃料極116の表面に接触する複数の電極対向部145を有する。複数の電極対向部145の少なくとも1つは、上下方向視で該電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数が1つまたは2つである。
本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各発電単位102は、上述した構成であるため、以下に説明するように、集電体要素135の突出長さのバラツキを原因とする単セル110への曲げ応力の発生を緩和することができる。図11は、比較例1の発電単位102aにおける集電体要素135と電極対向部145との配置関係を示すYZ断面図であり、図12は、比較例2の発電単位102bにおける集電体要素135と電極対向部145との配置関係を示すYZ断面図である。
まず、空気極側集電体134が有する複数の集電体要素135について、空気極114側への突出長さが互いに同一になるように空気極側集電体134を形成することは困難であり、集電体要素135ごとに突出長さのバラツキが生じる。なお、空気極側集電体134の集電体要素135の形成方法として、切削加工やプレス加工など様々な公知の方法を採用することができるが、特にプレス加工を採用した場合に集電体要素135の突出長さのバラツキが生じやすい。
ここで、図11に示すように、比較例1の発電単位102aでは、上下方向視で1つの電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数が3つである。このように、1つの電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数が3つ以上である場合、重複集電体要素135Aの突出長さのバラツキによって、単セル110に曲げ応力(例えば3点曲げ応力や4点曲げ応力)が発生しやすくなる。比較例1の発電単位102aでは、3つの重複集電体要素135Aが空気極114に接触し、3つの重複集電体要素135Aと電極対向部145との間に単セル110が挟み込まれる。そして、例えば、3つの重複集電体要素135Aのうち、中央に位置する重複集電体要素135Aの突出長さが、他の2つの重複集電体要素135Aの突出長さより長い場合、単セル110は、中央に位置する重複集電体要素135Aの接触箇所を可動支点とする3点曲げ応力を受けることになる。単セル110が曲げ応力を受けると、例えば単セル110が損傷(割れ等)し、発電単位102aの発電性能が低下するおそれがある。なお、単セル110における非重複集電体要素135Bの接触箇所は、単セル110の背後に電極対向部145が存在しない。このため、重複集電体要素135Aの接触箇所への押圧力は、非重複集電体要素135Bの接触箇所への押圧力に比べて大きい。このため、特に、重複集電体要素135Aの接触箇所において、集電体要素135の突出長さのバラツキを原因とする単セル110への曲げ応力の影響が大きい。
これに対して、本実施形態によれば、上下方向視で1つの電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数が2つである(図8および図9参照)。このため、3つ以上の重複集電体要素135Aが単セル110に接触することに原因とする曲げ応力の発生が抑制される。すなわち、集電体要素135の突出長さのバラツキを原因とする単セル110への曲げ応力の発生を緩和することができる。しかも、本実施形態では、全ての電極対向部145のそれぞれに対して、上下方向視で該電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数は2つずつである。このため、単セル110の全体にわたって、集電体要素135の突出長さのバラツキを原因とする単セル110への曲げ応力の発生を緩和することができる。
また、本実施形態では、以下に説明するように、電極対向部145の突出長さのバラツキを原因とする単セル110への曲げ応力の発生をも抑制することができる。上述したように、上下方向視で1つの集電体要素135に重なる電極対向部145の数は2つずつである(図8および図10参照)。このため、3つ以上の電極対向部145が単セル110に接触することに原因とする曲げ応力の発生が抑制される。しかも、本実施形態では、全ての集電体要素135のそれぞれに対して、上下方向視で該集電体要素135に重なる電極対向部145の数は2つずつである。このため、単セル110の全体にわたって、電極対向部145の突出長さのバラツキを原因とする単セル110への曲げ応力の発生を緩和することができる。
また、上記実施形態では、上下方向視で、重複集電体要素135Aの短辺方向の全体が、1つの電極対向部145に重なっている(図8および図9参照)。ここで、図12に示すように、比較例2の発電単位102bでは、上下方向視で、重複集電体要素135Aの短辺方向の一部分が、電極対向部145の短辺方向の両側より外側にはみ出している。このような構成の比較例2の発電単位102bでは、そのはみ出した重複集電体要素135Aと電極対向部145の端部との間に挟まれる単セル110の部位に応力が集中することによって下方向への強い押圧力を受ける。これにより、単セル110への曲げ応力が発生しやすくなる。これに対して、本実施形態では、上下方向視で、重複集電体要素135Aの短辺方向の全体が、1つの電極対向部145に重なっている。これにより、上下方向視における電極対向部145に対する重複集電体要素135Aのはみ出しを原因とする単セル110への曲げ応力の発生を緩和することができる。しかも、上下方向視で、重複集電体要素135Aの短辺方向の両側が、1つの電極対向部145の短辺方向の両側より内側に位置している(図8参照)。これにより、上下方向視における電極対向部145に対する重複集電体要素135Aのはみ出しを原因とする単セル110への曲げ応力の発生をより確実に抑制することができる。
上述したように、図9に示す構成では、電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数が2つである。しかし、仮に、紙面左端から3つ目の重複集電体要素135Aを、紙面左端から2つ目の重複集電体要素135Aに近づけて第7の離間距離ΔL2を短くすると、単セル110において3つ以上の重複集電体要素135Aの接触箇所が互いに近づくことによって、単セル110に曲げ応力が発生しやすくなる。これに対して、上記実施形態では、共通の電極対向部145に重なる2つの重複集電体要素135A同士の第6の離間距離ΔL1に対して、互いに異なる電極対向部145にそれぞれ重なる2つの重複集電体要素135A同士の第7の離間距離ΔL2の方が長い(図9参照)。これにより、第7の離間距離ΔL2が第6の離間距離ΔL1以下である構成に比べて、集電体要素135の突出長さのバラツキを原因とする単セル110への曲げ応力の発生を緩和することができる。また、仮に、図9の構成において、全ての電極対向部145のそれぞれに対して、上下方向視で該電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数は1つずつであるとして、単セル110において重複集電体要素135A同士の離間距離を一律長くすれば、集電体要素135の突出長さのバラツキを原因とする単セル110への曲げ応力の発生を緩和することができる。しかし、集電体要素135の本数が少ない分だけ、単セル110と空気極側集電体134との導通面積が減少し、燃料電池スタック100の発電性能が低下するおそれがある。これに対して、本実施形態では、上下方向視で該電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数は2つであり、かつ、共通の電極対向部145に重なる2つの重複集電体要素135A同士の第6の離間距離ΔL1に対して、互いに異なる電極対向部145にそれぞれ重なる2つの重複集電体要素135A同士の第7の離間距離ΔL2の方が長い。このため、単セル110と空気極側集電体134との導通面積の減少を抑制することができる。すなわち、本実施形態によれば、空気極114と空気極側集電体134との間の導通面積の減少を抑制しつつ、単セル110に曲げ応力が発生することを抑制することができる。
また、本実施形態では、複数の集電体要素135には、少なくとも、2つの重複集電体要素135Aと、該2つの重複集電体要素135Aの間に配置された非重複集電体要素135Bとが含まれる。ここで、図9の構成において、仮に、紙面左端から3つ目および4つ目の集電体要素135(紙面左端から1つ目および2つ目の非重複集電体要素135B)が無い構成とする。このような集電体要素135の数が少ない構成では、単セル110と空気極側集電体134との導通面積が減少し、燃料電池スタック100の発電性能が低下するおそれがある。一方、図9の構成において、仮に、集電体要素135の数は減らさずに、紙面左端から1つ目の電極対向部145(燃料極側集電体144)と2つ目の電極対向部145との間には、新たに電極対向部145を追加し、その追加された電極対向部145が上下方向視で紙面左端から3つ目および4つ目の集電体要素135に重なる構成とする。このような構成であれば、単セル110と空気極側集電体134との導通面積の減少は抑制されるが、3つ以上の重複集電体要素135Aが互いに近い位置に配置されるため、3つ以上の重複集電体要素135Aの突出長さのバラツキによって、単セル110に曲げ応力が発生しやすくなる。これに対して、本実施形態によれば、複数の集電体要素135には、少なくとも、2つの重複集電体要素135Aと、該2つの重複集電体要素135Aの間に配置された非重複集電体要素135Bとが含まれる。これにより、重複集電体要素135Aの間に非重複集電体要素135Bが配置されない構成に比べて、単セル110(空気極114)と空気極側集電体134との間の導通面積を増大させつつ、単セル110に曲げ応力が発生することを抑制することができる。
また、凸部(集電体要素135および電極対向部145)の上下方向視の形状が矩形状である場合、凸部の矩形状の最小の辺の長さが短いほど、該凸部から単セル110への応力が特定箇所に集中するため、単セル110への曲げ応力が大きくなりやすい。そこで、本電気化学反応単位によれば、集電体要素135の矩形状における最小辺の長さ(短辺幅135Y)は、電極対向部145の矩形状における最小辺の長さ(短辺幅145Y)より短い。そして、矩形状における最小の辺の長さが短い集電体要素135が、上下方向視で共通の電極対向部145に重なる数が1つまたは2つである。これにより、矩形状における最小の辺の長さが短い方の凸部による単セル110への曲げ応力を抑制することができる。しかも、集電体要素135の短辺幅135Yは、5(mm)以下であるため、単セル110のうち、該集電体要素135の短辺側との接触部位に応力が集中することにより、単セル110に大きな曲げ応力が発生しやすい。これに対して、本実施形態によれば、単セル110への曲げ応力を抑制できるため、このような該幅寸法が5(mm)以下の凸部と単セルとが接触する構成に対して特に有効である。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態において、集電部材(第1の集電部材、第2の集電部材)として、空気極側集電体134および燃料極側集電体144を例示し、凸部(第1の凸部、第2の凸部)として、集電体要素135および電極対向部145を例示した。このように集電部材および凸部は、例えば次のいずれかの構成であってもよい。
(1)集電部材は、電極から離間した離間部と該離間部から電極側に突出して該電極に接触する柱状の突出部とを有する構成(例えば空気極側集電体134)であり、凸部は、該突出部(例えば集電体要素135)である構成であるとしてもよい。
(2)集電部材は、電極(例えば燃料極116)と、該電極と対向する対向部材(例えばインターコネクタ150)との間の離間距離の変化に追随する構成(例えば燃料極側集電体144)であり、凸部は、該集電部材のうち電極に接触する部分(例えば電極対向部145)である構成であるとしてもよい。より具体的には、集電部材は、電極と対向部材との間の離間距離の変化に追随するように弾性変形する弾性体であり、凸部は、該弾性体のうち電極に接触する部分である構成であるとしてもよい。この構成において、凸部は、電極に接触する部分全体が変位する構成であるとしてもよいし、一端が固定端とされると共に他端が自由端とされた片持ち状の形状であり、自由端側が変位可能である構成であるとしてもよい。
上記実施形態では、全ての電極対向部145のそれぞれに対して、上下方向視で該電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数は2つずつであったが、これに限らない。例えば、全ての電極対向部145のそれぞれに対して、上下方向視で該電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数は1つずつであるとしてもよい。また、複数の電極対向部145に、上下方向視で重なる重複集電体要素135Aの数が1つである電極対向部145と、上下方向視で重なる重複集電体要素135Aの数が2つである電極対向部145とが混在するとしてもよい。さらに、複数の電極対向部145に、上下方向視で重なる重複集電体要素135Aの数が3つ以上である電極対向部145が含まれるとしてもよい。
また、上記実施形態では、全ての集電体要素135のそれぞれに対して、上下方向視で該集電体要素135に重なる電極対向部145の数は2つずつであったが、これに限らない。例えば、全ての集電体要素135のそれぞれに対して、上下方向視で重なる電極対向部145の数は1つずつであるとしてもよい。また、複数の集電体要素135に、上下方向視で重なる電極対向部145の数が1つである集電体要素135と、上下方向視で重なる電極対向部145の数が2つである集電体要素135とが混在するとしてもよい。さらに、複数の集電体要素135に、上下方向視で重なる電極対向部145の数が3つ以上である集電体要素135が含まれるとしてもよい。要するに、複数の第2の凸部の少なくとも1つは、第1の方向視で第2の凸部に重なる第1の凸部である重複凸部の数が1つまたは2つであればよい。
また、上記実施形態では、上下方向視で1つの電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数が1つまたは2つであるとともに、上下方向視で1つの集電体要素135に重なる電極対向部145の数も1つまたは2つであるとしたが、これに限らず、例えば、上下方向視で1つの電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数が1つまたは2つである一方で、上下方向視で1つの集電体要素135に重なる電極対向部145の数も3つ以上であるとしてもよいし、上下方向視で1つの電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数が3つ以上であるとともに、上下方向視で1つの集電体要素135に重なる電極対向部145の数も1つまたは2つであるとしてもよい。
上記実施形態の発電単位102または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、電気化学反応単位として、カウンターフロータイプの発電単位102を例示したが、これに限らず、酸化剤ガスの主たる流れ方向と燃料ガスの主たる流れ方向とが交差するクロスフロータイプの構成や、酸化剤ガスの主たる流れ方向と燃料ガスの主たる流れ方向とが同じ方向であるコフロータイプの構成でもよい。また、上記実施形態では、複数の集電体要素135(複数の電極対向部145)は、少なくとも一の方向に均等間隔で並ぶように配置されるとしたが、これに限らず、複数の集電体要素135の少なくとも一部が、一の方向に不均一な間隔で並ぶように配置されるとしてもよいし、また、複数の集電体要素135の少なくとも一部が、一の方向に対して側方に外れた位置に配置されるとしてもよい。
また、上記実施形態において、集電体要素135同士の短辺方向の第2の離間距離135DYは、集電体要素135の短辺幅135Y以下であるとしてもよい。また、上記実施形態において、集電体要素135同士の短辺方向の第2の配置間隔135PYは、集電体要素135の短辺幅135Y以下であるとしてもよい。また、上記実施形態において、集電体要素135同士の長辺方向の第1の離間距離135DXは、集電体要素135の長辺幅135X以上であるとしてもよい。また、集電体要素135同士の長手方向の第1の配置間隔135PXは、集電体要素135の長辺幅135Xより長いとしてもいいし、集電体要素135の長辺幅135Xより短いとしてもよい。
また、上記実施形態では、集電体要素135や電極対向部145の上下方向視の形状は、長方形状であるとしたが、これに限らず、長方形以外の矩形状(例えば正方形状)であるとしてもよいし、矩形以外の多角形状や円形状であるとしてもよい。
また、上記実施形態において、電極対向部145同士の短辺方向の第5の離間距離145DYは、電極対向部145の短辺幅145Y以下であるとしてもよい。また、上記実施形態において、電極対向部145同士の短辺方向の第5の配置間隔145PYは、電極対向部145の短辺幅145Y以下であるとしてもよい。
また、上記実施形態において、電極対向部145同士の長辺方向の離間距離145DX1,145DX2は、電極対向部145の長辺幅145X以上であるとしてもよい。また、一対の電極対向部145同士の長手方向の第3の配置間隔145PX1は、電極対向部145の長辺幅145Xより広くしてもよいし、電極対向部145の長辺幅145Xより狭くてもよい。また、電極対向部対同士の第4の配置間隔145PX2は、電極対向部145の長辺幅145X以下であるとしてもよい。
また、上記実施形態において、上下方向視で、重複集電体要素135Aの短辺方向の一部分が、電極対向部145の短辺方向の両側より外側にはみ出しているとしてもよい。また、上下方向視で、電極対向部145の長辺方向の一部分が、集電体要素135の長辺方向の両側より外側にはみ出しているとしてもよい。
また、上記実施形態において、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102について、複数の第2の凸部の少なくとも1つは、第1の方向視で第2の凸部に重なる第1の凸部である重複凸部の数が1つまたは2つである必要はなく、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの発電単位102について、複数の第2の凸部の少なくとも1つは、第1の方向視で第2の凸部に重なる第1の凸部である重複凸部の数が1つまたは2つであれば、該発電単位102について、第1の凸部の突出長さのバラツキを原因とする単セルへの曲げ応力の発生を緩和することができる。
上記実施形態では、共通の電極対向部145に重なる2つの重複集電体要素135A同士の第6の離間距離ΔL1に対して、互いに異なる電極対向部145にそれぞれ重なる2つの重複集電体要素135A同士の第7の離間距離ΔL2の方が長いとしているが、これに限らず、第7の離間距離ΔL2は、第6の離間距離ΔL1以下であるとしてもよい。また、上記実施形態では、共通の集電体要素135に重なる2つの電極対向部145同士の第8の離間距離ΔL3に対して、互いに異なる集電体要素135にそれぞれ重なる2つの電極対向部145同士の第9の離間距離ΔL4の方が長いとしているが、これに限らず、第9の離間距離ΔL4は、第8の離間距離ΔL3以下であるとしてもよい。
上記実施形態では、2つの重複集電体要素135Aの間に、2つの非重複集電体要素135Bが配置されていたが(図9参照)、これに限らず、2つの重複集電体要素135Aの間に、1つ、または、3つ以上の非重複集電体要素135Bが配置されているとしてもよい。また、2つの重複集電体要素135Aの間に、非重複集電体要素135Bが存在しないとしてもよい。また、上記実施形態では、複数の電極対向部145の全てが上下方向視で集電体要素135に重なるとしたが、複数の電極対向部145の一部は、集電体要素135に重ならないとしてもよい。
また、上記実施形態では、1つの電極対向部145に重なる重複集電体要素135Aの数と、2つの重複集電体要素135Aの間に位置する非重複集電体要素135Bの数とが同数(2つ)であったが、これに限らず、1つの電極対向部145(第2の凸部)に重なる重複集電体要素135A(重複凸部)の数と、2つの重複集電体要素135Aの間に位置する非重複集電体要素135B(非重複凸部)の数より多くてもよいし、少なくてもよい。前者の構成であれば、電極対向部145同士を互いに近い位置に配置することができる分だけ、燃料極側集電体144と単セル110(燃料極116)との導通面積を広く確保する(接触密度を高くする)ことができる。後者の構成であれば、重複集電体要素135A同士の離間距離が長くなるため、集電体要素135の突出長さのバラツキを原因とする単セル110への曲げ応力の発生を緩和することができる。なお、上記実施形態のように、2つの重複凸部と、該2つの重複凸部の間に配置される非重複凸部とは、一の方向に連続して並ぶように配置されていることが好ましい。
また、上記実施形態では、ボルト孔109が、各マニホールド用の連通孔108とは独立して設けられているが、独立したボルト孔109を設けず、各マニホールド用の連通孔108がボルト孔としても用いられるとしてもよい。また、上記実施形態において、空気極114と電解質層112との間に中間層が配置されていてもよい。また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位および電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様に、複数の第2の凸部の少なくとも1つは、第1の方向視で第2の凸部に重なる第1の凸部である重複凸部の数が1つまたは2つである構成にすれば、該発電単位102について、第1の凸部の突出長さのバラツキを原因とする単セルへの曲げ応力の発生を緩和することができる。