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JP2018154617A - 移植のための臓器又は組織の長期維持方法 - Google Patents

移植のための臓器又は組織の長期維持方法 Download PDF

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JP2018154617A JP2018034339A JP2018034339A JP2018154617A JP 2018154617 A JP2018154617 A JP 2018154617A JP 2018034339 A JP2018034339 A JP 2018034339A JP 2018034339 A JP2018034339 A JP 2018034339A JP 2018154617 A JP2018154617 A JP 2018154617A
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Takashi Tsuji
孝 辻
正充 大島
Masamitsu Oshima
正充 大島
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Abstract

【課題】本発明は、移植のための臓器又は組織の機能を維持したまま、長期間保存することを可能とする技術を提供することを課題とする。また、この技術を利用して、温虚血と再灌流に伴う組織障害を抑制し、心停止ドナー由来の臓器を移植に適合する水準にまで回復させる技術を提供することをさらなる課題とする。【解決手段】灌流液による灌流を用いる、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、次の各ステップ;(a)前記「臓器又は組織」に、前記灌流液を流入させるための灌流液流入用カニューレを接続するステップ、(b)前記「臓器又は組織」から、前記灌流液を流出させるための灌流液流出用カニューレを接続するステップ、(c)酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含む灌流液を、前記臓器又は組織内へ灌流するステップ、を含む、維持方法等を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、主として移植のための臓器又は組織を、臓器又は組織の機能を維持したまま長期間保存するための維持方法及び臓器又は組織の摘出方法に関する。また、本発明は移植のための臓器又は組織に関する。
病気や事故による臓器の不可逆的な機能不全に対する治療として、現在は主に臓器移植が行われている。免疫抑制剤や移植技術の進展によって、移植件数が増加し、その成功率は飛躍的に上昇しているものの、慢性的な臓器不足が移植医療の深刻な問題となっている(非特許文献1)。この臓器不足に対応するために、移植動物の臓器を移植する方法や免疫学的な拒絶反応が起こりにくい遺伝子改変動物の開発(非特許文献2、3)、さらに臓器の機能を人工物で代替することを目指した人工臓器の開発が進められているものの(非特許文献4)、どの技術開発も成体臓器の機能を代替するまでには至っていない。
移植に供するドナー臓器が不足するのは、提供される臓器の数だけではなく、摘出した臓器を移植可能な状態で保存できる時間が短いことも大きな原因の1つとなっている。そのため摘出した臓器を生体外で長期間移植可能な状態で保存するための技術の開発が進められている。現在もっとも広く用いられている方法は、細胞の代謝を抑制するために臓器内血液を低温の臓器保存液に置き換えてから、低温の保存液に浸漬する単純冷却法である。また、保存している臓器内の老廃物の除去を目的として、臓器内血管網に低温の臓器保存液を灌流させながら低温で浸漬保存する灌流冷却保存法があり、最近欧米で治験が進められている(非特許文献5)。
しかし、これらの方法で保存した臓器の安全使用限界は、一般に腎臓が60時間、肝臓が20時間と考えられており、更なる保存期間の延長技術が求められていた。
また、上記の問題の他に、ドナー臓器数の不足が生じる他の要因としては、ドナー登録者の過半数が心停止により死亡してしまうために、提供できる臓器が限られる点がある。心停止ドナーからの臓器移植は、脳死ドナーからの臓器移植と異なり、心停止から臓器の摘出保存までに、臓器への血流が停止する期間、すなわち「温虚血」の期間が生じる。温虚血状態の臓器又は組織では、ATPの枯渇による細胞の膨化障害やヒポキサンチンをはじめとした老廃物の蓄積が生じる。細胞内に蓄積したヒポキサンチンは、臓器又は組織への血流再開時には酸素化された灌流液によって急速に代謝される。この過程で、大量の活性酸素が生じることで組織障害を引き起こすとともに、細胞から分泌されるサイトカイン等によって、臓器移植を受けたレシピエントに全身性の急性ショックを惹起することもある。
温虚血と再灌流に伴う臓器又は組織の障害により、温虚血の状態が数分間続くと臓器移植不適応になるため、現在、病院外での予期しない心停止によって死亡したドナー由来の臓器の移植適応率は10%以下にすぎず、さらにその移植生着率は70%程度に留まっている。(非特許文献6)
すなわち、心停止ドナー由来臓器の移植適応率は、脳死ドナー由来臓器の移植適応率と比較して非常に低い水準に留まっており、ドナー臓器数の拡大のため、心停止ドナーからの臓器提供を可能にする技術開発が望まれている。
Lechler RI. et al.: Nat. Med. 11(6): 605, 2005 Eventov−Friedman S. et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 102(8): 2928, 2005 Yang YG. et al.: Nat. Rev. Immunol. 7(7): 519, 2007 Malchesky PS. et al.: Artif. Organs. 30(9): 655, 2006 Moers C. et al.: N. Engl. J. Med. 360(1): 7, 2009 Fondevila C, et al.: Am. J. Transplant. 12: 162−170, 2012
本発明は、移植のための臓器又は組織の機能を維持したまま、長期間保存することを可能とする技術を提供することを課題とする。また、この技術を利用して、温虚血と再灌流に伴う組織障害を抑制し、心停止ドナー由来の臓器又は組織を移植に適合する水準にまで回復させる技術を提供することをさらなる課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、移植のための臓器又は組織を、酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含む灌流液を用いて灌流することにより、臓器又は組織の障害を有意に抑制した状態で長期間維持できることを見出した。
また、本発明者らは、灌流時の臓器又は組織の温度を所定の範囲に保つことにより、さらに有意に臓器又は組織の障害を抑制できることを見出した。
さらに、本発明者らは、心停止によって温虚血状態となった臓器又は組織に対して、酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含む灌流液を用いて灌流することにより、一旦温虚血状態となった臓器又は組織を、心停止前の臓器又は組織に近い状態にまで回復させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、灌流液による灌流を用いる、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、次の各ステップ;(a)前記「臓器又は組織」に、前記灌流液を流入させるための灌流液流入用カニューレを接続するステップ、(b)前記「臓器又は組織」から、前記灌流液を流出させるための灌流液流出用カニューレを接続するステップ、(c)酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含む灌流液を、前記臓器又は組織内へ灌流するステップ、を含む、維持方法を提供する。
ここで、本発明による移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法の一実施形態においては、前記ステップ(c)において、前記酸素運搬体が赤血球であることを特徴とする。
本発明による移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法の一実施形態においては、前記ステップ(c)における灌流液を循環させることを特徴とする。
本発明による移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法の一実施形態においては、さらに次のステップ、(d)前記ステップ(c)の前に、酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含む灌流液を前記「臓器又は組織」に灌流させて前記「臓器又は組織」を洗浄し、かつ、その後、当該洗浄に用いた灌流液を取り除くステップ、をさらに含むことを特徴とする。
本発明による移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法の一実施形態においては、前記ステップ(c)において、前記「臓器又は組織」は、生体内において前記「臓器又は組織」に連続している第二の「臓器又は組織」と共に摘出されており、前記第二の「臓器又は組織」を固定することによって前記「臓器又は組織を」吊り下げた状態で灌流を行うことを特徴とする。
本発明による移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法の一実施形態においては、前記ステップ(c)において、前記「臓器又は組織」を、その少なくとも一部が浮力を受けるように液体に浸漬させることを特徴とする。
本発明による移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法の一実施形態においては、前記ステップ(c)において、前記「臓器又は組織」の温度が、4℃〜37℃に維持された状態におかれていることを特徴とする。
本発明による移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法の一実施形態においては、前記血液凝固阻害剤がヘパリンであることを特徴とする。
本発明による移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法の一実施形態においては、前記「臓器又は組織」が、肝臓、腎臓、膵臓、心臓、肺、胃、精巣、卵巣、眼球からなる群より選択される「臓器又は組織」であることを特徴とする。
また、本発明の別の形態によれば、哺乳類の臓器又は組織を移植のために長期維持するための前記「臓器又は組織」の摘出方法であって、以下のステップ、(f)前記「臓器又は組織」を前記哺乳類から摘出するステップと、(g)前記ステップ(f)より前に、前記哺乳類に、血液凝固阻害剤を投与するステップと、を含み、前記哺乳類は、非ヒトまたはヒト(但し、脳死患者であるヒトに限る)である、摘出方法を提供する。
さらに、本発明の別の形態によれば、移植のための哺乳類の臓器又は組織であって、前記「臓器又は組織」は哺乳類から摘出されたものであり、前記「臓器又は組織」中の血液が、酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含む灌流液によって置換されたことを特徴とする、臓器又は組織を提供する。
本発明に係る臓器又は組織の長期維持方法によれば、移植のための臓器又は組織を、酸素運搬体および血液凝固阻害剤を添加した灌流液を用いて灌流することにより、臓器摘出後の臓器等の障害を有意に抑制した状態で長期間維持することができる。また、灌流時の臓器又は組織の温度を所定の範囲に保つことにより、さらに有意に臓器又は組織の障害を抑制した状態で長期間維持することができる。さらに、心停止後の臓器又は組織を、酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を添加した灌流液を用いて灌流することによって、温虚血により障害をうけ移植不可能となった臓器又は組織の構造及び機能を、移植可能な状態にまで回復させることができる。これにより、移植のための臓器又は組織の機能を維持したまま長時間保存し、良好な状態で移植に供することができる。
図1は、本発明の一実施形態である、灌流回路の概略図を示す。 図2は、屠殺直後のラットの肝臓を、灌流液中の赤血球濃度条件を変えて48時間灌流した場合の、灌流液中のALT活性の上昇を比較したグラフを示す。 図3は、屠殺直後のラットの肝臓の組織の染色像、及び、屠殺直後のラットの肝臓を、灌流液中の赤血球濃度条件を変えて48時間灌流した後の、組織の染色像を示す。 図4は、屠殺直後のラットの肝臓を、灌流中の肝臓の温度条件を変えて灌流した場合の、灌流液中のALT活性の上昇を比較したグラフを示す。 図5は、屠殺直後のラットの肝臓の組織の染色像、及び、屠殺直後のラットの肝臓を、灌流中の肝臓の温度条件を変えて灌流した後の、組織の染色像を示す。 図6は、本発明の一実施形態である、肝臓の洗浄の概略図を示す。 図7は、本発明の一実施形態である、温虚血モデルラットの肝臓を、赤血球添加灌流液又は赤血球非添加灌流液を用いて48時間灌流した場合の、灌流液中のALT活性の上昇を比較したグラフを示す。 図8は、図7における、灌流回路による灌流開始以前の、肝臓の洗浄時における灌流液中のALT活性を比較したグラフを示す。 図9は、本発明の一実施形態である、温虚血モデルラットの肝臓を、赤血球添加灌流液で48時間灌流した後の組織の染色像を示す。 図10は、本発明の一実施形態である、温虚血モデルラットの肝臓を、赤血球非添加灌流液で48時間灌流した後の組織の染色像を示す。 図11は、本発明の一実施形態である、温虚血モデルラットの肝臓を、赤血球添加灌流液又は赤血球非添加灌流液を用いて48時間灌流した場合の、灌流液中のアルブミン量を比較した図を示す。 図12は、本発明の一実施形態である、温虚血モデルラットの肝臓を、赤血球添加灌流液又は赤血球非添加灌流液を用いて48時間灌流した場合の、灌流液中のアルブミン量を比較した図を示す。 図13は、本発明の一実施形態である、赤血球添加灌流液又は赤血球非添加灌流液を用いて48時間灌流した温虚血モデルラットの肝臓、及び屠殺直後のラットの肝臓を用いて、アンモニア負荷試験を行った際の尿素合成能の測定結果のグラフを示す。 図14は、本発明の一実施形態である、赤血球添加灌流液又は赤血球非添加灌流液を用いて48時間灌流した温虚血モデルラット、及び屠殺直後のラットの肝臓内血管網を、蛍光色素を含むゼラチンで固化した場合の組織像を示す。 図15は、温虚血モデルラットの肝臓を用いて、レシピエントのラットに対して異所性移植を行う場合の模式図を示す。 図16は、温虚血モデルラットの肝臓を、様々な方法で灌流または保存した後に、異所性移植を行った場合の、レシピエントラットの生存率を示すグラフである。 図17は、温虚血モデルラットの肝臓を、様々な方法で灌流または保存した後に、異所性移植を行った場合の、移植後の肝臓の組織像を示す。 図18は、温虚血モデルラットの肝臓をレシピエントラットに異所性移植した後に、ホスト肝臓を部分切除し、ホスト肝臓へと繋がる門脈を結紮する場合の模式図を示す。 図19は、温虚血モデルラットの肝臓を異所性に移植した後に、ホスト肝臓を部分切除し、ホスト肝臓へとつながる門脈を結紮した場合の、レシピエントラットの生存率を示すグラフである。 図20は、温虚血モデルラットの肝臓を異所性に移植した後に、ホスト肝臓を部分切除し、ホスト肝臓へとつながる門脈を結紮した場合の、ホスト肝臓及び移植肝臓の重量の変化を測定したグラフを示す。 図21は、ホスト肝臓を部分切除し、ホスト肝臓へとつながる門脈を結紮した後、1週間経過後のホスト肝臓及び移植肝臓の組織像を示す。 図22は、ホスト肝臓を部分切除し、ホスト肝臓へとつながる門脈を結紮した後、1週間経過後のホスト肝臓及び移植肝臓の免疫染色像(アルブミン、BrdU)、及び、一定視野範囲内の肝細胞(hepatocyte)数またはBrdU陽性肝細胞(BrdU positive hepatocyte)数を表すグラフを示す。
<臓器又は組織の長期維持方法>
本発明の第一の形態は、灌流液による灌流を用いる、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、次の各ステップ;(a)前記「臓器又は組織」に、前記灌流液を流入させるための灌流液流入用カニューレを接続するステップ、(b)前記「臓器又は組織」から、前記灌流液を流出させるための灌流液流出用カニューレを接続するステップ、(c)赤血球及び血液凝固阻害剤を含む灌流液を、前記臓器又は組織内へ灌流するステップ、を含むことを特徴とする。
本発明において、臓器又は組織の「長期維持」とは、移植のための臓器又は組織の機能を維持したまま、すなわち移植可能な状態を維持したまま長期間維持することであり、その方法は特に限定されない。例えば、移植のための臓器又は組織を赤血球及び血液凝固阻害剤を含む灌流液を用いて灌流することにより、臓器摘出後の臓器又は組織の障害を有意に抑制した状態で長期間維持することができる。
なお、本発明の、灌流液による灌流を用いる、移植のための哺乳類の臓器又は組織の維持方法は、臓器又は組織の代謝を維持することによって臓器又は組織の機能を回復させるものでもあり、灌流液を培養液として用いた臓器又は組織の培養と捉えることもできる。
本発明において、臓器又は組織の「移植」とは、臓器又は組織のドナーからレシピエントに臓器又は組織を移し植えることであり、移植の種類は特に限定されない。移植の種類は、例えば、ドナーとレシピエントの関係による分類では、自家移植、同系移植、同種移植、異種移植等が挙げられる。また、例えば、ドナーの状態による分類では、生体移植、脳死移植、心停止移植等が挙げられる。
本発明において、「臓器又は組織」とは、灌流に用いることができる臓器又は組織であれば特に限定されず、例えば、心臓、肝臓、腎臓、肺、膵臓、胃、小腸、大腸、精巣、卵巣、眼球、歯とその周囲組織、毛髪とその周囲組織等が挙げられる。
本発明において、「臓器又は組織」は、ドナーが非ヒトである場合には、移植のための臓器又は組織に灌流液流入用カニューレ及び灌流液流出用カニューレを接続し、灌流を開始した後に臓器又は組織を摘出した臓器又は組織でもよく、ドナーがヒトである場合には、移植のための臓器又は組織を摘出した後で、灌流液流入用カニューレ及び灌流液流出用カニューレを接続し、灌流を開始した臓器又は組織であってもよい。
本発明において、「灌流液」とは、当業者が、対象とする哺乳類の種類や臓器又は組織の種類に応じて、公知の組成又はそれに準ずる組成を適宜選択することができる。例えば、細胞の生存に必要な糖類やアミノ酸などの栄養素が含まれているものであればよく、一般的な細胞培養に用いる培養液、又は臓器保存に用いられる保存液等を用いることができ、その組成については特に限定されない。また、灌流液には、例えば糖質(グルコース、トレハロース、ラフィノース)、造粘剤(HES、デキストラン)、抗酸化剤(N−アセチルシステイン、アロプリノール、グルタチオン)、血管拡張剤(ニトログリセリン)、サイトカイン・成長因子(IGF、FGF、EGF、HGF)を含んでいてもよい。
本発明において、臓器又は組織の「灌流」とは、移植のための臓器又は組織の血管に灌流液流入及び流出用のカニューレ等のチューブを連結し、血流と同様に臓器又は組織内へ灌流液を流入及び流出させることをいう。灌流する臓器が肝臓である場合は、例えば、門脈から灌流液を流入させ、肝上部下大静脈から流出させることができるが、肝動脈から灌流液を流入させる経路を用いることもできる。肝臓以外の臓器を用いる場合であっても、当業者は灌流液の流入及び流出に用いるため適当な血管を選択し、灌流に用いることができる。
本発明において、「哺乳類」は、特に限定されず、本発明に係る維持方法はあらゆる哺乳動物の臓器又は組織に利用できる。本発明に係る方法で維持した臓器又は組織を移植に用いる場合、哺乳類は、臓器又は組織を移植する対象(レシピエント)に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、イヌ、ネコ、ラット、マウス等を挙げることができる。ドナーがヒトである場合、臓器又は組織は、主として脳死ドナーの臓器又は組織が用いることができるが、これに限定されず、心停止ドナーの臓器又は組織であっても用いることができる。さらに、遺伝子組換え技術等により、非ヒト哺乳類の生体内で培養した、ヒトへの移植のための臓器又は組織を用いる場合等にも、本発明に係る長期維持方法を用いることができる。
本発明において、「カニューレ」は、血管に挿入するためのチューブ等であれば特に限定されず、臓器又は組織の種類や大きさ、灌流液の組成等に応じて適宜選択することができる。
本発明の第一の形態において、ドナーとなる哺乳類の心停止前に血液凝固阻害剤を投与することが好ましい。哺乳類の心停止前に血液凝固阻害剤を投与することによって、心停止後に臓器又は組織の血管内で血液が凝固することを抑制し、灌流開始後に臓器又は組織で起こりうる循環不全を予防することができる。しかしながら、心停止前に血液凝固阻害剤を投与しなくとも、灌流液に含まれる血液凝固阻害剤による循環不全予防効果を十分に得ることができる。
本発明において、「血液凝固阻害剤」とは、血液の凝固系に作用して凝固を阻害する作用を有する物質であれば特に限定されず、例えば、ヘパリン、ワルファリン、アセノクマロール、フェニンジオン等が挙げられる。心停止前に血液凝固阻害剤を投与する場合、投与方法は特に限定されず、例えば、血液凝固阻害剤がヘパリンであれば静脈内に投与することができ、血液凝固阻害剤がワルファリン、アセノクマロール、フェニンジオン等であれば経口投与することができる。また、血液凝固阻害剤の静脈内投与と経口投与を併用することもできる。例えば、心停止前にヘパリンを静脈内投与する場合には、20〜4000unitsの範囲で投与することが好ましく、40〜2500unitsの範囲で投与することがさらに好ましい。
また、臓器又は組織の灌流に用いられる灌流液に含まれる血液凝固阻害剤の量は、当業者が、哺乳類や臓器の種類に応じて適宜選択することができる。例えば灌流液に含まれる血液凝固剤がヘパリンである場合には、灌流液に含まれるヘパリンの量は、灌流液1Lあたり2500〜80000unitsの範囲であることが好ましく、灌流液1Lあたり40000〜60000unitsの範囲であることがさらに好ましい。
本発明において、灌流液へ酸素運搬体を添加する方法は特に限定されず、灌流液を調製した後に添加してもよく、灌流液の調製と同時に添加してもよい。また、一実施形態において、灌流液中の溶存酸素濃度を一定に保つことによって、添加した酸素運搬体の機能を長期間維持したまま灌流を行うことができる。灌流液中の溶存酸素を一定に保つための方法は特に限定されず、例えば、簡易型動物細胞培養装置(ABLE, Tokyo, Japan)を用いて灌流液中の溶存酸素濃度を6.5〜7.5mg/Lに維持することができる。
本発明において、「酸素運搬体」とは、酸素と結合することによって酸素を運搬する機能をもつものであれば特に限定されない。例えば、赤血球、パーフルオロカーボン、ヘモグロビン小胞体、人工赤血球等を用いることができる。
なお、本発明において、「赤血球」を「酸素運搬体」として用いる場合には、「赤血球」は灌流液へ添加できるものであれば特に限定されず、様々な哺乳類由来の赤血球を用いることができる。例えば、赤血球を採取する動物として、ヒト、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、イヌ、ネコ、ラット、マウス等を挙げることができる。臓器又は組織を移植するレシピエントがヒトである場合、移植による拒絶反応を抑制する観点から、赤血球はレシピエント自身から採取したものを用いることが好ましい。また、レシピエント自身から採取した赤血球を用いない場合であっても、移植による拒絶反応を抑制する観点から、レシピエントと同じ血液型の赤血球を用いることが好ましい。また、赤血球の調製方法も特に限定されず、例えば哺乳類から採取した血液を、培養液を用いて希釈し、遠心した後、血漿成分を洗浄することによって調製することができる。
本発明において、灌流液中の酸素運搬体の濃度は、対象となる臓器又は組織や、使用する酸素運搬体の種類に応じて、当業者は適宜設定することができる。例えば、「赤血球」を酸素運搬体として用いる場合には、灌流液中の赤血球濃度は、灌流液1Lあたり0.5×1011cells〜50.0×1011cellsであることが好ましく、灌流液1Lあたり1.0×1011cells〜50.0×1011cellsであることがさらに好ましく、灌流液1Lあたり2.0×1011cells〜50.0×1011cellsであることが最も好ましい。灌流液中の赤血球濃度が、灌流液1Lあたり0.5×1011cells未満であると臓器の酸素供給量が足りず、臓器内の細胞の壊死が起こり、灌流液1Lあたり50.0×1011cellsを越えると灌流時に赤血球の梗塞により臓器障害が起こりうる。
本発明において、臓器又は組織の灌流は、臓器又は組織の温度を4℃〜37℃の状態を維持しながら行うことができ、臓器又は組織の温度を15℃〜33℃の状態を維持しながら行われることが好ましく、20℃〜25℃の状態を維持しながら行われることが最も好ましい。臓器又は組織の灌流は、臓器又は組織の温度が4℃未満であると低温障害による臓器の機能不全が生じ、37℃を越えると肝障害値の上昇が認められる。
本発明において、灌流中の臓器又は組織を一定の温度に維持する方法は特に限定されず、例えば、臓器又は組織を浮遊させている液体の温度を所望の温度に維持しながら灌流をおこなうことによって、臓器又は組織を一定の温度に維持することができる。好ましくは、臓器又は組織に灌流させている灌流液の温度を室温(25℃)〜37℃に維持し、臓器又は組織を浮遊させている液体の温度を20℃〜25℃に維持することによって、臓器又は組織の温度を所望の温度に維持することができる。
灌流中の臓器又は組織を一定の温度に維持するための装置は特に限定されず、例えば、ヒーター等を用いて臓器又は組織が入っている容器に外部から温度変化を与えてもよく、灌流液自体の温度を管理するための装置等を用いて、灌流液に直接温度変化を与えてもよい。
本発明において、「灌流液を循環させる」とは、臓器又は組織に接続した灌流液流出用カニューレから流出した灌流液を、廃棄することなく灌流液流入用カニューレを通じて再び臓器又は組織に流入させ、これを繰り返すことをいう。
本発明において、灌流液を臓器又は組織に灌流させて、臓器又は組織を「洗浄」するとは、臓器又は組織の血管へ灌流液を流入/流出させ、流出させた灌流液を循環させずに取り除くことをいう。灌流液を用いて臓器又は組織を洗浄することにより、心停止によって血流が停止した臓器又は組織に蓄積した活性酸素、細胞の自己融解物、微小血栓等を除去し、これらによって引き起こされる臓器又は組織の障害を軽減することができる。
本発明に係る維持方法では、生体内において臓器又は組織に連続している第二の臓器又は組織と共に摘出された臓器又は組織を用いることができる。かかる構成によれば、灌流を行う際に、当該第二の臓器又は組織を固定して、灌流する臓器又は組織を吊り下げることができるので、灌流する臓器又は組織に損傷を与えることなく、臓器又は組織の隅々にまで灌流液を行き渡らせることができる。
第二の臓器又は組織は、生体内において臓器又は組織に連続した臓器又は組織であることが好ましく、生体内において臓器又は組織の上部に連続した臓器又は組織であることがより好ましい。かかる臓器又は組織を用いて吊り下げれば、生体内での構成に類似した環境で臓器又は組織を灌流することができる。ここで、生体内の構成に類似した環境とは、臓器又は組織が容器の内面等の硬質な材料から圧迫を受けることなく、自然な形状を維持できる環境を意味する。従来の臓器又は組織の灌流は、シャーレ等の容器に臓器又は組織を載置して行われていたため、シャーレに接する部分の血管が圧迫され、灌流液が十分に行き渡らなかった。上記の形態によれば、臓器又は組織を吊り下げて、生体内での構成に類似した環境で灌流するので、臓器又は組織全体に灌流液を行き渡らせることができる。
また、第二の臓器又は組織を固定する場合、第二の臓器又は組織は損傷を受けても差支えないので、支持管を挿入する、クリップで挟む、縫合糸で縫うなどの方法でしっかりと固定することができる。例えば、灌流する臓器が肝臓である場合、生体内ではその上部に横隔膜が連続し、当該横隔膜は肋骨に接続している。従って、横隔膜のみ、あるいは横隔膜と肋骨を、第二の臓器又は組織として用いることができる。哺乳動物から肝臓を摘出する際に横隔膜を一緒に摘出すれば、当該横隔膜を固定することにより、肝臓を生体内に近い環境で吊り下げることができる。横隔膜に加えて肋骨も一緒に摘出すれば、肋骨を固定することができるので、より安定的に吊り下げることが可能である。
第二の臓器又は組織のその他の例としては、腎臓や膵臓を灌流する場合には、これらの臓器の表面に付着する脂肪組織;消化器系の臓器を灌流する場合には、上流に隣接する臓器(具体的には、小腸を灌流する場合の胃や十二指腸、大腸を培養する場合の小腸);歯とその周囲組織を灌流する場合の顎骨、歯槽骨、歯根骨、歯肉;毛髪とその周囲組織を灌流する場合の表皮、真皮、脂肪組織、等が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明に係る維持方法は、その灌流工程において、臓器又は組織を、その少なくとも一部が浮力を受けるように液体に浸漬させて行うことが好ましい。そうすることで、臓器又は組織の少なくとも一部が浮力を受けることとなり、単に吊り下げる場合と比較して、さらに生体内の構成に近い環境を作り出すことができ、臓器又は組織の隅々まで灌流液を行き渡らせることができる。臓器又は組織は、少なくともその30%が液体中に存在する状態が好ましく、より好ましくは50%、さらに好ましくは80%、最も好ましくは、全体が液体中に存在する状態とする。
臓器又は組織の浸漬用の液体は、灌流液と同様に、哺乳類及び臓器等の種類によって当業者が適宜選択することができ、灌流液と同一の組成であっても異なった組成であってもよい。
本発明による維持方法においては、臓器又は組織を臓器固定用灌流容器に固定した状態で灌流を行うことが好ましい。臓器固定用灌流容器に固定する臓器又は組織は、生体内において移植のための臓器又は組織に連続している第二の臓器又は組織と共に摘出された臓器又は組織を用いることができる。臓器固定用灌流容器には、移植のための臓器を、前記第二の臓器又は組織によって吊り下可能な懸垂手段が設けられている。臓器固定用灌流容器内は、液体で満たすことができ、臓器又は組織が浮力を受けるようにその少なくとも一部を浸漬させられる構成となっている。臓器固定用灌流容器は、どのような素材であってもよいが、例えばガラスやアクリルを用いて作製することもできる。臓器固定用灌流容器において、移植のための臓器又は組織を、前記第二の臓器又は組織によって吊り下げることで固定し、移植のための臓器又は組織を液体に浸漬させた状態で灌流を行うことによって、灌流する臓器又は組織に損傷を与えることなく、臓器又は組織の隅々にまで灌流液を行き渡らせることができる。
すなわち、本発明は一実施形態において、酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含んだ灌流液と、前記臓器又は組織に灌流液を流入させるための灌流液流入用カニューレと、前記臓器又は組織から灌流液を流出させるための灌流液流出用カニューレと、を備える、臓器又は組織の維持装置、とすることもできる。
また、前記維持装置は、一実施形態において、前記臓器又は組織を吊り下げる懸垂手段を備えていてもよい。さらに、前記維持装置は、前記臓器又は組織を吊り下げた状態で、前記臓器又は組織の少なくとも一部を臓器又は組織浸漬用の液体に浸漬させることができる容器をさらに備えていてもよい。
本発明において、臓器又は組織の損傷度合の測定方法は特に限定されず、対象となる臓器又は組織に応じて当業者が適宜選択することができる。例えば、対象となる臓器又は組織が肝臓である場合には、肝障害酵素(ALT)活性、組織学的解析、胆汁産生量の測定、アルブミン合成量の測定、アンモニア負荷試験による尿素合成の測定、肝臓内毛細血管網の解析等によって肝臓の損傷度合いを測定することができる。
<臓器又は組織の摘出方法>
本発明の第二の形態は、哺乳類の臓器又は組織を、移植のために長期維持するための臓器又は組織の摘出方法であって、以下のステップ、(f)前記「臓器又は組織」を前記哺乳類から摘出するステップと、(g)前記ステップ(f)より前に、前記哺乳類に、血液凝固阻害剤を投与するステップと、を含み、前記哺乳類は、非ヒトまたはヒト(但し、脳死患者であるヒトに限る)であることを特徴とする。本発明の第一の形態において使用された用語は、第二の形態においても同義で用いられているので、ここでは説明を省略する。
本発明の第二の形態において、ドナーの心停止前に血液凝固阻害剤を投与することによって、心停止後に臓器又は組織の血管内で血液が凝固することを抑制し、灌流開始後に臓器又は組織で起こりうる循環不全を予防することができる。
本発明の第二の形態における、血液凝固阻害剤の投与方法は特に限定されず、例えば、血液凝固阻害剤がヘパリンであれば静脈内に投与することができ、血液凝固阻害剤がワルファリン、アセノクマロール、フェニンジオン等であれば経口投与することができる。また、血液凝固阻害剤の静脈内投与と経口投与を併用することもできる。血液凝固阻害剤の投与量についても特に限定されず、血液凝固阻害剤を投与する哺乳類の種類や週齢、体重等に応じて当業者が適宜調製することができる。
本発明において、移植のための臓器又は組織をドナーから摘出するタイミングは特に限定されない。例えば、ドナーが非ヒトである場合には、移植のための臓器又は組織に灌流液流入用カニューレ及び灌流液流出用カニューレを接続し、灌流を開始した後に臓器又は組織を摘出してもよく、ドナーがヒトである場合には、移植のための臓器又は組織を摘出した後で、灌流液流入用カニューレ及び灌流液流出用カニューレを接続し、灌流を開始してもよい。
<移植のための哺乳類の臓器又は組織>
本発明の第三の形態は、移植のための哺乳類の臓器又は組織であって、前記「臓器又は組織」は哺乳類から摘出されたものであり、前記「臓器又は組織」中の血液が、酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含む灌流液によって置換されたことを特徴とする。本発明の第一の形態において使用された用語は、第三の形態においても同義で用いられているので、ここでは説明を省略する。
本発明の第三の形態における、臓器又は組織中の血液を、酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含む灌流液によって置換する方法は特に限定されず、例えば、臓器又は組織内に灌流液を灌流させることによって置換することができる。
なお、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
第一の、第二のなどの用語が種々の要素を表現するために用いられる場合があるが、これらの要素はそれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第一の要素を第二の要素と記し、同様に、第二の要素は第一の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、しかしながら、本発明はいろいろな形態により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。
(1)灌流液の調製
<赤血球の調製>
本実施例においては、本発明の一実施の態様として、赤血球を酸素運搬体として用いた試験例を示す。ヒト赤血球濃厚液は、日本赤十字血液センターから、輸血等に使用できない血液の譲渡依頼書のもと、分与を受けた。前記ヒト赤血球濃厚液50mlにL−15培地(SIGMA)を200ml加え、2000rpm、5分間の遠心操作を行った。遠心後、沈殿した赤血球成分以外の上清を除去し、L−15培地(SIGMA)を全量が250mlになるように加えた。この操作を2回繰り返すことにより、臓器又は組織の灌流に用いるヒト赤血球を調製した。
<灌流液の調製>
灌流に用いる灌流液は、L−15培地(SIGMA)に、10%ウシ胎児血清(FBS;Gibco,New York,US)、100U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、0.25μg/ml アンホテリシンB(nacalai tesque, Kyoto, Japan)、50μg/ml ゲンタマイシン硫酸塩(Wako, Osaka, Japan)、2mM L−アラニル・L−グルタミン、50units/ml ヘパリン(Wako, Osaka, Japan)及び3μg/ml シクロスポリンAを添加して調製した。
上記のように調製された灌流液を、本実施例において、「赤血球非添加灌流液」という。また、赤血球非添加灌流液に、ヒト赤血球を5.0×1011cells/Lとなるように添加した灌流液を、本実施例において「赤血球添加灌流液」という。
(2)温虚血モデルラットの作製
8週齢Wistarラット(日本エスエルシー)を、ジエチルエーテル(Wako)を充満させたデシケーターに入れ、吸引麻酔を行った。25G注射針(Terumo,Tokyo,Japan)と1mlシリンジ(Terumo)を用いて、終濃度25000U/mlとなるように調製したヘパリンナトリウム(Wako)溶液100μlを、吸引麻酔を行ったラットの陰茎静脈に注射した。注射を行ったラットを5分間静置し、ヘパリンナトリウム溶液を全身に行き渡らせた後、頚椎脱臼により屠殺した。本実施例においては、頸椎脱臼による屠殺の時点を、心停止の開始時点とした。屠殺したラットを、細胞培養用インキュベーター(SANYO, Tokyo, Japan)を用いて1時間、室温(25℃)〜37℃で静置した。インキュベート後のラットを、本実施例において温虚血モデルラットとした。
なお、ラットの管理および操作はアメリカ国立衛生研究所の実験動物指針に従って行った。また、全ての実験は、東京理科大学の実験動物管理委員会の許可の上、実施した。
(3)灌流回路の構築
本実施例において用いた灌流回路1の概略図を図1に示した。図1中、第一の容器30及び第二の容器31に入った灌流液を、簡易型動物細胞培養装置20(ABLE, Tokyo, Japan)によって、灌流液の温度および灌流液中の溶存酸素量を一定に維持した。第一の容器30に入った灌流液を、ペリスタルティックポンプ40(IWAKI/AGC TECHNO GLASS, Chiba, Japan)を用いて、臓器固定用灌流容器10に入っている、灌流の対象となる臓器又は組織へ流入/流出するようにした。流出させた灌流液は、第二の容器31に回収するようにした。第二の容器31に回収した灌流液は、再度ペリスタルティックポンプ41を用いて第一の容器30に戻るようにした。臓器又は組織から流出した灌流液を経時的に採取するため、臓器又は組織と第二の容器31をつなぐチューブの一部に、灌流液回収ポート50を設置した。以上の回路を、本実施例において用いる灌流回路とした。
(4)灌流液中の最適な赤血球濃度の検討
8週齢Wistarラット(日本エスエルシー)を、ジエチルエーテル(Wako)を充満させたデシケーターに入れ、吸引麻酔を行った。25G注射針(Terumo, Tokyo, Japan)と1mlシリンジ(Terumo)を用いて、終濃度25000U/mlとなるように調製したヘパリンナトリウム(Wako)溶液100μlを、前記ラットの下大静脈に注射した。注射を行ったラットを5分間静置し、ヘパリンナトリウム溶液を全身に行き渡らせた後、頚椎脱臼により屠殺した。屠殺後直ちに、肝臓を後述する(6)に記載の方法で摘出し、灌流回路に接続して灌流を行った。すなわち、本条件検討においては、温虚血モデルラットの肝臓ではなく、屠殺直後のラットの肝臓を用いている。
灌流液には、(1)の方法で調製した赤血球非添加灌流液、赤血球非添加灌流液に(1)の方法で調製したヒト赤血球をそれぞれ0.5×1011cells/L、2.0×1011cells/L、5.0×1011cells/Lとなるように添加した灌流液を用意し、これらを用いた。灌流中、簡易型動物細胞培養装置を用いて、灌流液の温度を37℃に維持し、また、灌流液中の溶存酸素は全て6.77mg/Lに維持した。灌流中、臓器固定用灌流容器内部のL−15培地を22℃に維持することにより、肝臓の温度を22℃に維持した。灌流中、ペリスタルティックポンプを用いて、それぞれの灌流液の流速を11ml/分とした。灌流回路における灌流中、肝臓から流出した灌流液は、灌流液回収ポートから4時間毎にサンプリングした。灌流液回収ポートからサンプリングした灌流液を、1800rpm、3分間遠心し、上清を回収した。上清中のALT活性は、トランスアミナーゼCIIテストワコー(Wako)を用いて、添付されている使用書に従い測定した。
また、灌流後開始48時間後の肝臓は、直ちに4%パラホルムアルデヒド―リン酸緩衝液を15分間灌流させることにより、固定を行った。灌流による固定を行った肝臓を、組織片に切り分けた後に、4%パラホルムアルデヒド―リン酸緩衝液に24時間浸漬し、さらに固定を行った。浸漬による固定を行った前記組織片を、エタノール溶液による脱水、キシレンによる透徹の後、パラフィンに置換し、包埋した。包埋した試料は厚さ5μmに薄切し、常法に従いHE染色を実施した。染色した試料はAxioCamMRc5(Carl Zeiss, Jene, Germany)を設置したAxio Imager A1(Carl Zeiss)にて検鏡し、Axio Vision Rel.4.7 (Carl Zeiss)を用いて画像を取得した。
それぞれの赤血球濃度条件において得られたALT活性の比較を、図2に示した。図2に示すとおり、驚くべきことに、ヒト赤血球の濃度依存的にALT活性の上昇が抑制されることがわかり、本実施例においては、ヒト赤血球を5.0×1011cells/Lとなるように添加した灌流液を用いて灌流を行った群において、ALT活性の上昇が最も抑制されることがわかった。
また、それぞれの赤血球濃度条件において灌流を行った後の肝臓の組織像を図3に示した。図3に示すとおり、ヒト赤血球を0.5×1011cells/Lとなるように添加した灌流液を用いて灌流を行った群においては、一部に類洞拡張と広範性の肝実質細胞の死滅がみられ、ヒト赤血球を2.0×1011cells/Lとなるように添加した灌流液を用いて灌流を行った群においては軽微な類洞拡張および部分的な肝実質細胞の死滅がみられ、ヒト赤血球を5.0×1011cells/Lとなるように添加した灌流液を用いて灌流を行った群においては屠殺直後の肝臓とほぼ同等の類洞構造の保持、ならびに肝実質細胞の生存がみられた。すなわち、赤血球濃度依存的な肝臓の組織障害の抑制がみられ、本実施例においては、ヒト赤血球を5.0×1011cells/Lとなるように添加した灌流液を用いて灌流を行った群において、最も組織障害が抑制されていることがわかった。
すなわち、移植のための臓器又は組織を、ヒト赤血球を5.0×1011cells/Lとなるように添加した灌流液を用いて灌流を行うことにより、摘出後の臓器又は組織の障害を最も有意に抑制することができ、これにより、臓器又は組織の機能を維持したまま長時間保存できることがわかった。
(5)灌流時の最適な温度条件の検討
8週齢Wistarラット(日本エスエルシー)を、ジエチルエーテル(Wako)を充満させたデシケーターに入れ、吸引麻酔を行った。25G注射針(Terumo, Tokyo, Japan)と1mlシリンジ(Terumo)を用いて、終濃度25000U/mlとなるように調製したヘパリンナトリウム(Wako)溶液100μlを、前記ラットの下大静脈に注射した。注射を行ったラットを5分間静置し、ヘパリンナトリウム溶液を全身に行き渡らせた後、頚椎脱臼により屠殺した。屠殺後直ちに、肝臓を後述する(6)に記載の方法で摘出し、灌流回路に接続して灌流を行った。すなわち、本条件検討においては、温虚血モデルラットの肝臓ではなく、屠殺直後のラットの肝臓を用いている。
灌流液は、(1)に記載の方法で調製した赤血球添加灌流液を用いた。灌流中、簡易型動物細胞培養装置を用いて、灌流液の温度を37℃に維持し、また、灌流液中の溶存酸素は全て6.77mg/Lに維持した。灌流中、臓器固定用灌流容器内部のL−15培地を37℃、33℃、又は22℃に維持することにより、肝臓の温度をそれぞれの温度に維持した。灌流中、ペリスタルティックポンプを用いて、赤血球添加灌流液の流速を11ml/分とした。灌流回路における灌流中、肝臓から流出した赤血球添加灌流液は、灌流液回収ポートから4時間毎にサンプリングした。灌流液回収ポートからサンプリングした灌流液を、1800rpm、3分間遠心し、上清を回収した。灌流液上清中のALT活性は、トランスアミナーゼCIIテストワコー(Wako)を用いて、添付されている使用書に従い測定した。
37℃で灌流した肝臓は灌流開始から20時間後、33℃で灌流した肝臓は灌流開始から32時間後、22℃で潅流した肝臓は灌流開始から48時間後に固定を行った。固定は、肝臓を4%パラホルムアルデヒド―リン酸緩衝液を用いて15分間灌流させることにより行った。灌流による固定を行った肝臓を、組織片に切り分けた後に、4%パラホルムアルデヒド―リン酸緩衝液に24時間浸漬し、さらに固定を行った。浸漬による固定を行った前記組織片を、エタノール溶液による脱水、キシレンによる透徹の後、パラフィンに置換し、包埋した。包埋した試料は厚さ5μmに薄切し、常法に従いHE染色を実施した。染色した試料はAxioCamMRc5(Carl Zeiss, Jene, Germany)を設置したAxio Imager A1(Carl Zeiss)にて検鏡し、Axio Vision Rel.4.7(Carl Zeiss)を用いて画像を取得した。
それぞれの温度条件において得られたALT活性の比較を、図4に示した。図4に示すとおり、驚くべきことに、肝臓を22℃に維持しながら灌流を行った群では、ALT活性の上昇が最も抑制されることがわかった。
また、それぞれの温度条件において灌流を行った後の肝臓の組織像を図5に示した。図5に示すとおり、37℃で灌流を行った場合、灌流開始から20時間が経過した時点において、肝実質細胞の壊死や類洞構造の崩壊が認められた。また、33℃で灌流を行った場合、より長期間の組織構造の維持効果が認められたものの、灌流開始から32時間が経過した時点において肝実質細胞の壊死や類洞構造の崩壊が認められた。しかし、22℃で灌流を行った場合、灌流開始から48時間が経過した時点においても、屠殺直後の肝臓とほぼ同等の類洞構造が認められると共に、肝臓内の血管網構造も高く保存されていることがわかった。
すなわち、移植のための臓器又は組織を22℃に維持しながら灌流を行うことにより、臓器又は組織の障害を最も有意に抑制することができ、これにより、臓器又は組織の機能を維持したまま長時間保存できることがわかった。
(6)赤血球添加灌流液を用いた肝臓の灌流
<温虚血モデルラットの肝臓の洗浄及び肝臓の摘出>
実験には、(2)に記載の方法により作成した、温虚血モデルラットを用いた。温虚血モデルラットの腹部を切開し、肝下部下大静脈を左腎静脈分岐部まで剥離し、右腎静脈、左腎静脈、腰静脈を絹製縫合糸No.7(Natume)を用いてそれぞれ結紮した。左腎静脈分岐部より尾側の肝下部下大静脈に絹製縫合糸No.4(Natume)を通し、結紮用ループを1箇所作った。門脈を結合組織から剥離し固有肝動脈、幽門静脈、脾静脈の順に絹製縫合糸No.7(Natume)を通し、結紮した。門脈に絹製縫合糸No.4(Natume)を、間隔をあけて2本通し、結紮用ループを2箇所作った。簡易型動物細胞培養装置によって、赤血球添加灌流液の温度を37℃、赤血球添加灌流液中の溶存酸素を6.77mg/Lに維持した。ペリスタルティックポンプを用いて、灌流液流入用カニューレに11ml/minで赤血球添加灌流液を流しておき、門脈を半切して前記灌流液流入用カニューレを差し込んだ。次いで、直ちに肝下部下大静脈を結紮用ループより下部で切断し、赤血球添加灌流液を切断部から流出させた。2つの門脈結紮用ループを結紮して灌流液流入用カニューレを門脈に固定し、灌流液流入用カニューレの挿入部分を適量のアロンアルファA(Daiichi Sankyo, Tokyo, Japan)で固定した。
肋骨を切開して肝上部下大静脈に絹製縫合糸No.4(Natume)を通し、結紮用ループを2箇所作製した。右心房を半切した後、肝下部下大静脈に設置したループを結紮した。半切した右心房部分に灌流液流出用カニューレを差し込み、肝上部下大静脈の結紮用ループ2箇所を結紮して灌流液流出用カニューレを固定し、結紮部位、灌流液流出用カニューレの挿入部位をアロンアルファA(Daiichi Sankyo)で固定した。総胆管を半切して胆汁流出用カニューレを差し込み、アロンアルファA(Daiichi Sankyo)で固定した。横隔膜を露出し、左右の横隔動・静脈を絹製縫合糸No.7(Natume)で結紮した。肝臓周囲の器官、結合組織を切除後、肋骨と横隔膜を肝臓に連結したまま背面から肝臓を切り離し、摘出した。
摘出した肝臓を臓器固定用灌流容器に運搬し、肋骨を臓器固定用灌流容器付属の固定具に固定することによって肝臓全体を吊り下げ、臓器固定用灌流容器内部にL−15培地を満たした。肝臓を、肋骨と横隔膜で吊り下げた状態でL−15培地に浮遊させた。臓器固定用灌流容器内部のL−15培地を22℃に維持することにより、浮遊させた肝臓の温度を22℃に維持した。
赤血球添加灌流液を肝臓に流入させてから100分間は、肝臓の血管内の洗浄を行った。本実施例における、肝臓の洗浄を行うための装置の概略図を、図6に示した。図6中、摘出した肝臓を、臓器固定用灌流容器11に固定した。第一の容器32に入った赤血球添加灌流液を、灌流液流入用カニューレを通じて肝臓に流入させ、灌流用流出用カニューレを通じて肝上部下大静脈から流出させた。肝上部下大静脈から流出させた赤血球添加灌流液は、第一の容器32へ循環させずに取り除き、全て第二の容器33に回収した。前記100分間の洗浄中、肝臓から流出した赤血球添加灌流液を、灌流液流出用カニューレに接続しているチューブの一部に設置した灌流液回収ポート51から10分毎にサンプリングした。
<灌流回路における灌流>
前記100分間の肝臓の洗浄後、肝臓を(3)に記載の灌流回路に接続した。簡易型動物細胞培養装置によって、赤血球添加灌流液の温度を37℃、赤血球添加灌流液中の溶存酸素を6.77mg/Lに維持した。灌流中、臓器固定用灌流容器内部のL−15培地を22℃に維持することにより、浮遊させた肝臓の温度を22℃に維持した。灌流回路に接続された肝臓に、ペリスタルティックポンプ(IWAKI/AGC TECHNO GLASS, Chiba, Japan)を用いて、前記赤血球添加灌流液を11ml/分で流入させた。灌流回路における灌流中、肝臓から流出した赤血球添加灌流液は灌流液回収ポートから4時間毎にサンプリングした。
(7)赤血球非添加灌流液を用いた肝臓の灌流
(6)と同様の工程を、赤血球非添加灌流液を用いて行った。
(8)肝臓の組織障害の解析
<肝障害酵素(ALT)活性の解析>
(6)及び(7)の実験において、血管内の洗浄中および灌流回路における灌流中において、灌流液回収ポートからサンプリングした灌流液を、1800rpm、3分間遠心し、上清を回収した。灌流液上清中のALT活性は、トランスアミナーゼCIIテストワコー(Wako)を用いて、添付されている使用書に従い測定した。
灌流開始後48時間までの結果について、赤血球添加灌流液を用いた群と赤血球非添加灌流液を用いた群で得られた結果の比較を、図7に示した。図7中、灌流回路による灌流開始前(0分以前)の、肝臓の洗浄中における灌流液中のALT活性の測定グラフの拡大図を図8に示した。図7に示すように、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った場合のALT活性は、灌流回路による灌流開始後48時間において57units/Liverに達した。一方、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った場合のALT活性は、灌流回路による灌流開始後48時間において32units/Liverに留まった。また、図8に示すように、100分間の血管内洗浄中にサンプリングを行った、肝臓から流出した灌流液のALT活性についても、赤血球非添加灌流液を用いた群では17units/Liverに達したのに対し、赤血球添加灌流液を用いた群では12units/Liverに留まった。
以上の結果から、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った群では、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った群と比較して、明らかな肝臓の組織障害抑制効果がみられることが分かった。
<組織学的解析>
(6)及び(7)の実験において、48時間灌流した後の肝臓を、直ちに4%パラホルムアルデヒド―リン酸緩衝液を15分間灌流させることにより、固定を行った。灌流による固定を行った肝臓を、組織片に切り分けた後に、4%パラホルムアルデヒド―リン酸緩衝液に24時間浸漬し、さらに固定を行った。浸漬による固定を行った前記組織片を、エタノール溶液による脱水、キシレンによる透徹の後、パラフィンに置換し、包埋した。包埋した試料は厚さ5μmに薄切し、常法に従いHE染色を実施した。染色した試料はAxioCamMRc5(Carl Zeiss, Jene, Germany)を設置したAxio Imager A1(Carl Zeiss)にて検鏡し、Axio Vision Rel.4.7 (Carl Zeiss)を用いて画像を取得した。
赤血球添加灌流液を用いて灌流した肝臓のHE染色像を図9に示し、赤血球非添加灌流液を用いて灌流した肝臓のHE染色像を図10に示した。図9及び図10は、それぞれ肝臓の1枚の切片について、倍率1倍から倍率40倍まで、1枚の画像の異なる部位の拡大像を示した。
図9及び図10中、倍率10倍から倍率40倍までの組織像は、倍率1倍の組織像中の、枠線で囲いを入れた部分の拡大図である。図9及び図10の倍率40倍の組織像では、それぞれ門脈域、肝実質、中心静脈の拡大図を示している。図9に示すとおり、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った場合、灌流回路による灌流開始後48時間における肝臓の組織において、ある程度の類洞の拡張が見られるものの、肝実質細胞の生存は多くみられた。一方、図10に示すとおり、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った場合、灌流回路による灌流開始後48時間における肝臓の組織において、門脈域周囲で正常な染色像がみられるにとどまり、広汎性の壊死像と類洞部分の拡張が認められた。
以上の結果から、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った場合、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った場合と比較して、肝臓の広汎性壊死領域の縮小、類洞拡張の抑制効果がみられることがわかった。
<アルブミン合成量の測定1>
(6)及び(7)の実験において、灌流液回収ポートから経時的に採取した灌流液を、1800rpm、3分間遠心して上清を回収した。灌流液上清中のアルブミン濃度の測定はレビス アルブミン−ラット(shibayagi, Gunma, Japan)を用いて、添付されている使用書に従いELISA法により測定を行った。
灌流回路における灌流開始から48時間後までの、灌流液中のアルブミン濃度の推移を図11に示した。図11に示す通り、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った場合、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った場合と比較して、肝臓のアルブミン合成能が有意に高く維持されていることが示された。
<アルブミン合成量の測定2>
(6)及び(7)の実験において、灌流液回収ポートから経時的に採取した灌流液を、1800rpm、3分間遠心して上清を回収した。灌流液上清中のアルブミン濃度の測定はrat albumin quantitation kit(Bethyl, Montgomery, USA)を用いてELISA法による測定を行った。96wellマルチプレートに1次抗体のSheep anti−Rat Albumin Antibody Affinity Purified(1:200)を固相化し、1%BSAでブロッキングを行った後、サンプルを添加した。2次抗体としてSheep anti−Rat Albumin Antibody HRP Conjugated(1:30000)を用いて抗体反応を行った後、TMB(Bethyl)による発色を行い、VersaMax(Molecular Devices)を用いて吸光度を検出することによりアルブミンの濃度を定量的に測定した。
灌流回路における灌流開始から48時間後までの、灌流液中のアルブミン濃度の推移を図12に示した。図12に示す通り、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った場合、48時間の灌流中に合成されたアルブミン量は10.3±1.3μg/mLに達したのに対し、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った場合、48時間の灌流中に合成されたアルブミン量は3.5±1.0μg/mLに留まった。すなわち、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った場合、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った場合と比較して、肝臓のアルブミン合成能が有意に高く維持されていることが示された。
<アンモニア負荷試験による尿素合成能の測定>
(6)及び(7)の実験において、48時間の灌流後の肝臓に、門脈からKrebs−Henseleit Bufferを11ml/分の速度で2時間灌流し、臓器内の血液及び灌流液を洗浄した。次に、1mMオルニチン塩酸塩、1mM塩化アンモニウムを添加したKrebs−Henseleit Bufferを11ml/分で30分間灌流してアンモニア負荷試験を行い、肝上部下大静脈から流出するKrebs−Henseleit Bufferを経時的に採取した。また、屠殺後直ちに、肝臓を(6)に記載の方法で摘出し、灌流回路に接続した肝臓についても、上記と同様にアンモニア負荷試験を実施し、肝上部下大静脈から流出するKrebs−Henseleit Bufferを継時的に採取した。30分間のアンモニア負荷試験終了後、再びKrebs−Henseleit Buffer を送液して臓器内の溶液を洗浄し、Krebs−Henseleit Bufferを経時的に採取した。採取したKrebs−Henseleit Bufferを1800rpm, 3分間遠心分離して上清を回収し、F−kit 尿素/アンモニア(JK International,Tokyo,Japan)を用いて、添付された仕様書に従い尿素量を測定した。
採取したKrebs−Henseleit Bufferに含まれる尿素量の継時的な変化を、図13に示した。図13に示すとおり、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った場合、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った場合と比較して、アンモニア負荷による尿素の合成量が有意に高く維持されており、屠殺直後の肝臓と比較しても約60%の尿素の合成量を維持していることが示された。
すなわち、アルブミン合成量及びアンモニア負荷試験による尿素合成能の測定の結果から、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った場合、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った場合と比較して、肝臓の代謝機能が有意に高く維持されることがわかった。
<肝臓内血管網の解析>
(6)及び(7)の実験において、48時間の灌流後の肝臓を、直ちに生理食塩水によって灌流し、臓器内の赤血球または灌流液を洗浄した。洗浄後、25mlのFITCにより標識されたゼラチンを灌流させたのちに氷温化に置くことにより、臓器内血管網内でゼラチンを固化させた。ゼラチンの固化後、臓器を0.5%パラホルムアルデヒド―リン酸緩衝液に浸漬させて固定を行った。その後、OCTコンパウンドを用いて凍結包埋した。作成した凍結ブロックは厚さ100μmに切片化し、デオキシコール酸ナトリウムで処理をした後にヘキストを含む4%パラホルムアルデヒド―リン酸緩衝液にて固定した。また、屠殺後直ちに、肝臓を(6)に記載の方法で摘出した肝臓についても、前記と同様の処理を行った。封入剤で封入した後、共焦点レーザー顕微鏡LSM780(Carl Zeiss)を用いてZ−stackにより画像を取得した。
それぞれの肝臓の切片における蛍光像を図14に示した。図14に示すとおり、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った場合、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った場合と比較して、蛍光色素の血管外への漏出が少なく、血管構造が高度に維持されていることがわかった。
すなわち、肝臓内血管網の解析から、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った場合、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った場合と比較して、肝臓の血管構造が屠殺直後の肝臓に近い状態にまで回復していることがわかった。
(9)異所性肝移植による虚血臓器の生着評価
<異所性肝移植>
異所性肝移植のドナーとしては、心停止後90分間、細胞培養用インキュベーターを用いて室温で静置した以外は、(2)に記載の方法と同様の方法で作成した温虚血モデルラットを用いた。前記温虚血モデルラットを用いて、(6)に記載の方法で肝臓の摘出および灌流を行った。灌流後、門脈のカニューレを外し、新しい灌流用チューブを接続させ、ヘパリン非添加の赤血球入り灌流液(5.0x1011cells/L)500mlを用いて灌流を行った。灌流の間に、レシピエントの13週齢のWistarラット(SLC)を、ジエチルエーテル(Wako)を充満させたデシケーターに移動させて吸引麻酔した。Isoflurane濃度4%の麻酔環境下に設定しラットを開腹した。右腎動脈を露出させ、右腎静脈から剥離し、クリップを用いてこれらの血流を遮断させた後に、切断した。切断部にはカフを装着した。肝下部下大静脈をハーフクランプし右腎静脈を切断し、右腎を摘出した。灌流を途絶えさせることなくドナー肝を術場に設置し、その肝下部下大静脈をレシピエントの右腎静脈と端側吻合を行った。次に、ドナー肝の肝動脈とレシピエントの右腎動脈をカフ法による吻合を行った。吻合後肝動脈、肝下部下大静脈の再灌流を行い、門脈に接続されているカニューレを外した後に、ドナー肝の門脈とレシピエントの門脈を端側吻合し、吻合後門脈の再灌流を行った。陰茎静脈から輸液を2ml注入した。胆管ステントを空腸に挿入し吻合固定し、腹膜、皮膚の縫合をし、閉腹を行った。本実施例における異所性肝移植の概略図を図15に示す。
<異所性肝移植による虚血臓器の生着評価>
本発明の方法によって灌流を行った臓器または組織が、移植に用いることができることを明らかにするために、下記の第1〜3群において、異所性肝移植による臓器の生着評価を行った。
第1群:本発明の方法を用いて灌流を行った肝臓について、上記の方法で異所性肝移植を行った(本明細書において、赤血球添加群ともいう)。
第2群:90分間の温虚血状態を経たラットの肝臓(すなわち、(2)に記載の温虚血モデルラットの作成方法において、細胞培養用インキュベーターによるインキュベート時間を90分としたラットの肝臓)を用いて、UW液(Viaspan, Astellas Parma Inc., Japan)を臓器保存液として用いた冷温下での浸透保存を100分間行った後、異所性肝移植を行った(本明細書において、UW保存群ともいう)。UW液を保存液として用いた冷温下での浸透保存は、現在の移植医療で一般的に行われている、移植用臓器の保存方法である。
第3群:赤血球非添加灌流液を用いて肝臓の灌流を行ったこと以外は、第1群と同様に異所性肝移植を行った(本明細書において、赤血球非添加群ともいう)。
各群における、移植7日目までのラットの生存率を図16に示した。
図16に示すとおり、UW保存群においては、移植後7日間のラットの生存率は40%であり、赤血球非添加群においては、移植後7日間のラットの生存率は60%であった。一方、驚くべきことに、赤血球添加群においては、移植後7日間におけるラットの生存率は100%であった。また、移植臓器の外観所見からも、赤血球添加群においては移植を行った臓器はホストの血流により維持されており、生体へ生着していることが示された。
さらに、経過観察中に死亡した個体についてHE染色による組織解析を行った。その結果、UW保存群では肝実質細胞の消失と組織の線維化、リンパ球の浸潤が確認され、赤血球非添加群においても赤血球の滞留や核の染色性が見られていない箇所が確認されたことから、組織の壊死が起きた可能性が示唆された。一方で、赤血球添加群においては移植7日後の組織解析の結果から、移植臓器は門脈域のグリソン鞘の拡大が一部で認められるものの、組織像は生体肝臓と同様の生存細胞と類洞構造が認められ、移植肝の生着が示された。これらの組織解析の結果を、図17に示す。
すなわち、本発明の方法によれば、一旦温虚血状態に陥った臓器を、安全に移植可能な状態に維持および/または回復できることが示された。従来、一旦温虚血状態に陥った臓器を移植に用いることは極めて困難であると考えられていたため、本実施例の結果は驚くべき結果であるといえる。
(10)肝切除・肝門脈結紮による移植臓器の生理的肝機能の解析
<異所性肝移植を行ったラットの肝切除・肝門脈結紮>
(9)に記載の方法で異所性肝移植を行い、移植後7日間が経過した個体について、ジエチルエーテル(Wako)を充満させたデシケーターに移動させて吸引麻酔した。Isoflurane濃度4%の麻酔環境下に設定しラットを開腹した。ホスト肝臓の左葉、左中葉、右中葉をそれぞれの分葉箇所に絹製縫合糸No.4を用いて結紮を行い、血流を途絶えさせた後に切除した。その後、ホスト肝臓へ繋がる門脈を絹製縫合糸No.4を用いて結紮し、腹膜、皮膚の縫合をし、閉腹を行った。本実施例における肝門脈結紮の概略図を図18に示す。
<移植臓器における生理的肝機能の解析>
移植臓器が正常な肝機能を有していることを明らかとするために、ホスト肝臓の部分肝切除とホスト肝臓へと繋がる門脈の結紮により肝機能を低下させ、移植臓器による機能の代替が可能であるか評価した。従来の臓器保存技術を用いて移植を行ったUW保存群と、赤血球を添加せずに移植臓器の灌流を行った赤血球非添加群においては、ホスト肝臓の機能を低下させた後に全例で死亡が確認された(図19)。これに対して、本発明の方法を用いて移植臓器の灌流を行った赤血球添加群においては5例中5例の生存例が認められた(図19)。以上の結果から、本発明の方法を用いて灌流を行った臓器は、個体の生存に必要な臓器の機能を維持していることが明らかとされた。
また、移植肝臓の生体内での機能を評価するために、赤血球添加群において、肝再生能を解析した。移植後7日におけるホスト肝(部分肝切除前)の重量の平均値は9.27g、移植肝臓の重量の平均値は3.386gであった。ホスト肝の重量の平均値は、70%部分肝切除により3.26gへ減少した。ホスト肝の部分肝切除後7日間の経過観察の後、ホスト臓器と移植臓器の双方を摘出し重量を測定した。その結果、ホスト肝臓の重量の平均値は3.28gとほとんど変化していなかったが、移植肝臓の重量の平均値は8.24gまで増加していた(図20)。
以上の結果から、本発明の方法は、一旦温虚血状態に陥った臓器の移植利用を可能とする技術であるだけでなく、生存に必要な生理機能を持つ臓器へと蘇生させ得る技術であることも示された。
さらに、移植肝における肝重量の増大が、正常な肝再生過程を経ているかを判断するために、ホスト肝臓の部分肝切除及び門脈結紮後、1週間経過後の肝臓について、HE染色による組織解析と、免疫染色によるアルブミンおよびBrd−Uの発現解析を行った。図21および図22に示すとおり、ホスト肝の部分切除前の移植肝においては、肝臓の正常組織と同等の組織構造は見られるものの、アルブミンの発現はほぼ確認されていなかった。しかし、ホスト肝臓の肝機能低下に伴い、移植肝の肝細胞索の構造変化と類洞構造の拡張が確認された。また、ホスト肝の部分切除後7日目の移植肝においては、明確にアルブミンの産生量が上昇していることが確認された。さらに、ホスト肝の部分切除後7日目の移植肝においては、Brd−U陽性細胞(すなわち、細胞分裂が起きている細胞)は全細胞数に対して47.7%を占めたことから、細胞増殖による肝の再生が示された。
以上の結果から、本発明の方法によって灌流を行った肝臓を移植に用いた場合、移植した肝臓は、ホスト肝の肝機能低下に対応して、正常な肝機能の回復および重量の増加を示すことがわかった。
実験データは、ピアソンの積率相関係数をIBM SPSS Statistics Base(SPSS株式会社、東京、日本)を用いて解析した。各実験データの統計学的有意差は、Unpaired Student’s−t検定を用いて解析した。解析はCommon Gateway Interface Program(twk, Saint John’s University, Minnesota, USA)を用いて行った。
(11)結論
以上の結果から、驚くべきことに、赤血球添加灌流液を用いて、移植のための臓器を灌流した場合、極めて高い組織障害抑制効果がみられることがわかった。すなわち、赤血球添加灌流液を用いて、移植のための臓器又は組織を灌流することにより、摘出後の臓器又は組織の障害を有意に抑制することができ、これにより、臓器又は組織の機能を維持したまま長時間維持できることがわかった。
また、心停止によって温虚血状態となった肝臓に対して、赤血球添加灌流液を用いて灌流することにより、肝障害の発生を抑制できるとともに、心停止直後の肝臓に近い状態にまで肝実質細胞および類洞構造を回復させることができることがわかった。
さらに、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った肝臓を移植に用いたところ、従来の臓器保存技術を用いて保存を行った肝臓や、赤血球非添加灌流液を用いて灌流を行った肝臓を移植に用いた場合と比較して、ホストに対する極めて高い生着率を示した。また、赤血球添加灌流液を用いて灌流を行った肝臓を移植に用いた場合、正常な機能と構造を有する肝臓として働き得ることも示された。
これらの結果から、本発明は、心停止患者由来の臓器又は組織を移植に適合する水準に維持および/または回復させる技術として、極めて有用であることが示された。もちろん、本発明は、心停止患者由来の臓器又は組織だけでなく、例えば脳死患者由来の臓器など、様々な状態の臓器又は組織へと有用に用いられ得ることは言うまでもない。
1…灌流回路;10、11…臓器固定用灌流容器;20…簡易型動物細胞培養装置;30、31、32、33…容器;40、41…ペリスタルティックポンプ;50、51…灌流液回収ポート


Claims (11)

  1. 灌流液による灌流を用いる、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、
    次の各ステップ;
    (a)前記「臓器又は組織」に、前記灌流液を流入させるための灌流液流入用カニューレを接続するステップ、
    (b)前記「臓器又は組織」から、前記灌流液を流出させるための灌流液流出用カニューレを接続するステップ、
    (c)酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含む灌流液を、前記臓器又は組織内へ灌流するステップ
    を含む、維持方法。
  2. 請求項1に記載の、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、
    前記ステップ(c)において、前記酸素運搬体が赤血球である、
    維持方法。
  3. 請求項1又は2に記載の、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、
    前記ステップ(c)における灌流液を循環させることを特徴とする、
    維持方法。
  4. 請求項3に記載の、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、さらに次のステップ、
    (d)前記ステップ(c)の前に、酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含む灌流液を前記「臓器又は組織」に灌流させて前記「臓器又は組織」を洗浄し、かつ、その後、当該洗浄に用いた灌流液を取り除くステップ、
    をさらに含むことを特徴とする、
    維持方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、
    前記ステップ(c)において、前記「臓器又は組織」は、生体内において前記「臓器又は組織」に連続している第二の「臓器又は組織」と共に摘出されており、
    前記第二の「臓器又は組織」を固定することによって前記「臓器又は組織を」吊り下げた状態で灌流を行うことを特徴とする、
    維持方法。
  6. 請求項5に記載の、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、
    前記ステップ(c)において、前記「臓器又は組織」を、その少なくとも一部が浮力を受けるように液体に浸漬させることを特徴とする、
    維持方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、
    前記ステップ(c)において、前記「臓器又は組織」の温度が、4℃〜37℃に維持された状態におかれていることを特徴とする、
    維持方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、
    前記血液凝固阻害剤がヘパリンであることを特徴とする、
    維持方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の、移植のための哺乳類の臓器又は組織の長期維持方法であって、
    前記「臓器又は組織」が、肝臓、腎臓、膵臓、心臓、肺、胃、精巣、卵巣、眼球からなる群より選択される、
    維持方法。
  10. 哺乳類の臓器又は組織を移植のために長期維持するための前記「臓器又は組織」の摘出方法であって、以下のステップ、
    (f)前記「臓器又は組織」を前記哺乳類から摘出するステップと、
    (g)前記ステップ(f)より前に、前記哺乳類に、血液凝固阻害剤を投与するステップと、を含み、
    前記哺乳類は、非ヒトまたはヒト(但し、脳死患者であるヒトに限る)である、
    摘出方法。
  11. 移植のための哺乳類の臓器又は組織であって、
    前記「臓器又は組織」は哺乳類から摘出されたものであり、
    前記「臓器又は組織」中の血液が、酸素運搬体及び血液凝固阻害剤を含む灌流液によって置換されたことを特徴とする
    臓器又は組織。


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