以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。ここで、図1に示す空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向、つまり車両装着時の方向が指定されている。即ち、図1に示す空気入りタイヤ1は、車両装着時に車両の内側に向く側が車両装着方向内側となり、車両装着時に車両の外側に向く側が車両装着方向外側となる。なお、車両装着方向内側及び車両装着方向外側の指定は、車両に装着した場合に限らない。例えば、リム組みした場合に、タイヤ幅方向において、車両の内側及び外側に対するリムの向きが決まっているため、空気入りタイヤ1は、リム組みした場合、タイヤ幅方向において、車両装着方向内側及び車両装着方向外側に対する向きが指定される。また、空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向を示す装着方向表示部(図示省略)を有する。装着方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部4に付されたマークや凹凸によって構成される。例えば、ECER30(欧州経済委員会規則第30条)が、車両装着状態にて車両装着方向外側となるサイドウォール部4に装着方向表示部を設けることを義務付けている。また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、主に乗用車に用いられる空気入りタイヤ1になっている。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4及びビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その外周表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面は、主に走行時に路面と接触し得る面であって、トレッド面10として構成されている。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、且つ、タイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示省略)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、例えば、ポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20°〜30°)で複数並設されたコード(図示省略)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、例えば、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示省略)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、例えば、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維からなり、コードの角度はタイヤ周方向に対して±5°の範囲内になっている。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7全体を覆うように配置された構成、または、例えば2層の補強層を有し、タイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、タイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成、或いは、例えば2層の補強層を有し、各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成であってもよい。即ち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、例えば幅が10mm程度の帯状のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
図2は、図1に示す空気入りタイヤ1のトレッド部2の平面図である。トレッド部2のトレッド面10は、タイヤ周方向に沿って延在する3本の主溝31がタイヤ幅方向に並んで形成されている。3本の主溝31は、車両装着方向における最も内側に位置する内側最外主溝33と、車両装着方向における最も外側に位置する外側最外主溝34と、タイヤ幅方向において内側最外主溝33と外側最外主溝34との間に配設されるセンター主溝32と、を有している。このうち、センター主溝32は、タイヤ赤道面CL上に位置しており、内側最外主溝33は、タイヤ赤道面CLよりも車両装着方向内側に位置し、外側最外主溝34は、タイヤ赤道面CLよりも車両装着方向外側に位置している。
また、内側最外主溝33と外側最外主溝34とは、共に接地領域のタイヤ幅方向における両最外端である接地端Tよりも、タイヤ幅方向内側に配設されている。図2では、接地端Tをタイヤ周方向に連続して示している。接地領域は、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みし、且つ、規定内圧を充填すると共に規定荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面10が乾燥した平坦な路面と接地する領域である。この場合における規定リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、規定内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、規定荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
トレッド面10に形成される主溝31は、全て溝幅が4mm以上16mm以下の範囲内で、溝深さが6mm以上15mm以下の範囲内になっている。また、各主溝31は、内側最外主溝33の溝幅Winが4mm以上8mm以下の範囲内になっており、センター主溝32の溝幅Wceが6mm以上14mm以下の範囲内になっており、外側最外主溝34の溝幅Woutが8mm以上16mm以下の範囲内になっている。
また、内側最外主溝33と外側最外主溝34とは、内側最外主溝33の溝幅Winと、外側最外主溝34の溝幅Woutとが、Win<Woutの関係となっており、詳しくは、内側最外主溝33の溝幅Winと外側最外主溝34の溝幅Woutとは、(Wout/Win)≧1.4の関係になっている。なお、内側最外主溝33の溝幅Winと外側最外主溝34の溝幅Woutとは、1.6≦(Wout/Win)≦2.2の範囲内であるのが好ましい。
また、トレッド面10には、3本の主溝31によって、4列の陸部20が画成されている。4列の陸部20は、内側センター陸部21と、外側センター陸部22と、内側ショルダー陸部23と、外側ショルダー陸部24と、を有している。このうち、内側センター陸部21は、センター主溝32と内側最外主溝33との間に位置し、タイヤ幅方向における両側がセンター主溝32と内側最外主溝33とよって画成される陸部20になっている。また、外側センター陸部22は、センター主溝32と外側最外主溝34との間に位置し、タイヤ幅方向における両側がセンター主溝32と外側最外主溝34とによって画成される陸部20になっている。また、内側ショルダー陸部23は、内側最外主溝33のタイヤ幅方向外側に位置し、タイヤ幅方向における内側が内側最外主溝33によって画成される陸部20になっている。また、外側ショルダー陸部24は、外側最外主溝34のタイヤ幅方向外側に位置し、タイヤ幅方向における内側が外側最外主溝34によって画成される陸部20になっている。これらの陸部20は、全てタイヤ周方向に延びるリブ状の陸部20として形成されている。
また、4列の陸部20のうち、内側最外主溝33を介して隣り合う2列の陸部20である内側センター陸部21と内側ショルダー陸部23とには、タイヤ周方向に延びると共に、溝幅が主溝31の溝幅よりも狭い溝幅で形成される周方向細溝36が、それぞれ形成されている。つまり、内側センター陸部21には、内側最外主溝33のタイヤ幅方向内側に配置される周方向細溝36である内側周方向細溝37が形成されており、内側ショルダー陸部23には、内側最外主溝33のタイヤ幅方向外側に配置される周方向細溝36である外側周方向細溝38が形成されている。
このうち、内側周方向細溝37は、内側センター陸部21のタイヤ幅方向における中央付近に配置されている。また、外側周方向細溝38は、内側ショルダー陸部23のタイヤ幅方向における中央の位置よりも内側最外主溝33寄りの位置に配置されており、車両装着方向内側の接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に配置されている。これらの周方向細溝36は、溝幅が1.5mm以上3mm以下の範囲内になっている。
図3は、図2のA−A矢視図であり、内側最外主溝33と周方向細溝36の模式図である。2つの周方向細溝36は、共に周方向細溝36と内側最外主溝33との距離Lsubと、周方向細溝36の溝深さHsubとの関係が、Lsub>Hsubになっている。つまり、内側周方向細溝37は、内側周方向細溝37と内側最外主溝33との距離Lsubと、内側周方向細溝37の溝深さHsubとの関係がLsub>Hsubになっており、外側周方向細溝38は、外側周方向細溝38と内側最外主溝33との距離Lsubと、外側周方向細溝38の溝深さHsubとの関係がLsub>Hsubになっている。なお、この場合における周方向細溝36と内側最外主溝33との距離Lsubは、周方向細溝36の開口部のエッジのうち内側最外主溝33側に位置するエッジと、内側最外主溝33の開口部のエッジのうち周方向細溝36側に位置するエッジとのタイヤ幅方向における距離になっている。
また、周方向細溝36は、周方向細溝36の溝深さHsubが、周方向細溝36に対して最も近い主溝31の溝深さHgの50%以上100%以下の範囲内で、且つ、3mm以上になっている。つまり、外側周方向細溝38との距離が最も近い主溝31は内側最外主溝33であるため、外側周方向細溝38は、溝深さHsubが、内側最外主溝33の溝深さHgの50%以上100%以下の範囲内で、且つ、3mm以上になっている。また、内側周方向細溝37は、内側周方向細溝37に対して最も近い主溝31が内側最外主溝33である場合は、内側周方向細溝37の溝深さHsubは、内側最外主溝33の溝深さHgの50%以上100%以下の範囲内で、且つ、3mm以上になる。また、内側周方向細溝37に対して最も近い主溝31がセンター主溝32である場合は、内側周方向細溝37の溝深さHsubは、センター主溝32の溝深さHg(図示省略)の50%以上100%以下の範囲内で、且つ、3mm以上になる。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、これらのように内側センター陸部21と内側ショルダー陸部23とに周方向細溝36が形成されることにより、トレッド面10におけるタイヤ赤道面CLにより車両装着方向外側の領域よりも、タイヤ赤道面CLより車両装着方向内側の領域の方が、周方向溝30の数が多くなっている。この場合における周方向溝30は、タイヤ周方向の延びる溝であり、主溝31と周方向細溝36とを含む溝を指している。つまり、タイヤ赤道面CLより車両装着方向外側の領域には、周方向溝30としては外側最外主溝34が1本配設されるのに対し、タイヤ赤道面CLより車両装着方向内側の領域には、周方向溝30として1本の内側最外主溝33と2本の周方向細溝36との合計3本が配設されている。このため、トレッド面10におけるタイヤ赤道面CLより車両装着方向外側の領域よりも、タイヤ赤道面CLより車両装着方向内側の領域の方が、周方向溝30の数が多くなっている。
なお、タイヤ赤道面CL上に周方向溝30が位置する場合、タイヤ赤道面CL上の周方向溝30は、車両装着方向外側の領域の周方向溝30にも、車両装着方向内側の領域の周方向溝30にも含めない。このため、車両装着方向外側の領域の周方向溝30と、車両装着方向内側の領域の周方向溝30の数を比較する際には、本実施形態におけるセンター主溝32は、どちらの領域の周方向溝30にも含めない。
また、内側ショルダー陸部23と外側ショルダー陸部24とには、それぞれにタイヤ幅方向に延びるラグ溝40が複数設けられている。即ち、内側ショルダー陸部23には、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40として内側ショルダーラグ溝41が設けられ、外側ショルダー陸部24には、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40として外側ショルダーラグ溝42が設けられている。このうち、内側ショルダーラグ溝41は、タイヤ幅方向内側の端部が、内側ショルダー陸部23に形成される外側周方向細溝38に接続され、タイヤ幅方向外側の端部が、トレッド部2のトレッド面10のタイヤ幅方向外側端であるデザインエンドEで開口している。また、外側ショルダーラグ溝42は、タイヤ幅方向内側の端部が、外側ショルダー陸部24内で終端し、タイヤ幅方向外側の端部がデザインエンドEで開口している。これらの内側ショルダーラグ溝41と外側ショルダーラグ溝42とは、それぞれタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に傾斜している。
ここで、デザインエンドEは、接地端Tのタイヤ幅方向外側であってトレッド部2のタイヤ幅方向最外側端をいい、トレッド部2において溝が形成されるタイヤ幅方向最外側端である。図2では、デザインエンドEをタイヤ周方向に連続して示している。即ち、トレッド部2は、乾燥した平坦な路面において、接地端TよりもデザインエンドE側の領域は、通常路面に接地しない領域となる。
それぞれ複数設けられる内側ショルダーラグ溝41と外側ショルダーラグ溝42とは、互いに数が異なっており、内側ショルダーラグ溝41は、外側ショルダーラグ溝42よりも数が多くなっている。換言すると、内側ショルダー陸部23と外側ショルダー陸部24とは、ラグ溝40を境とするピッチの数が、外側ショルダー陸部24よりも内側ショルダー陸部23の方が多くなっている。なお、内側ショルダー陸部23と外側ショルダー陸部24とのピッチ数は、内側ショルダー陸部23のピッチ数が64ピッチ以上で、外側ショルダー陸部24のピッチ数との差が8ピッチ以上であるのが好ましい。
さらに、内側ショルダー陸部23には、トレッド部2のタイヤ幅方向における外側端(デザインエンドE)付近に、凹部45が配設されている。凹部45は、円形状のディンプル形状に形成されており、隣り合う内側ショルダーラグ溝41同士の間に、複数が形成されている。本実施形態では、凹部45は、隣り合う内側ショルダーラグ溝41同士の間に4つが設けられており、4つの凹部45は、タイヤ幅方向に2列、タイヤ周方向に2列の配置形態で設けられている。
また、陸部20には、複数のサイプ60が形成されている。ここで、サイプ60とは、トレッド面10に形成された切り込みであり、一般に1.5mm未満のサイプ幅及び4mm以上のサイプ深さを有しており、タイヤ接地面にて閉塞する。サイプ幅は、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、陸部20の踏面におけるサイプ60の開口幅の最大値として測定される。タイヤ接地面は、空気入りタイヤ1が規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときの、空気入りタイヤ1と平板との接触面として定義される。
サイプ60としては、内側最外主溝貫通サイプ61と、外側最外主溝貫通サイプ62と、センターサイプ63と、内側ショルダーサイプ64と、外側ショルダーサイプ65とが設けられている。このうち、内側最外主溝貫通サイプ61は、タイヤ周方向に傾斜しつつタイヤ幅方向に延び、内側最外主溝33を跨いで形成されるサイプ60になっている。つまり、内側最外主溝貫通サイプ61は、内側ショルダー陸部23における外側周方向細溝38よりもタイヤ幅方向内側の位置から、内側センター陸部21における内側周方向細溝37のタイヤ幅方向外側の位置にかけて、内側最外主溝33を貫通して形成されている。
また、外側最外主溝貫通サイプ62は、タイヤ周方向に傾斜しつつタイヤ幅方向に延び、外側最外主溝34を跨いで形成されるサイプ60になっている。詳しくは、外側最外主溝貫通サイプ62は、外側センター陸部22におけるタイヤ幅方向内側端部の位置から、外側ショルダー陸部24における外側最外主溝34の近傍の位置にかけて、外側最外主溝34を貫通して形成されている。この外側最外主溝貫通サイプ62は、外側センター陸部22に形成される部分は、両端部が、外側センター陸部22を画成するセンター主溝32と外側最外主溝34とにそれぞれ接続されると共に、外側センター陸部22内でタイヤ周方向に屈曲している。また、外側最外主溝貫通サイプ62における外側ショルダー陸部24に形成される部分は、一端が外側最外主溝34に接続され、他端が外側ショルダー陸部24内で終端している。
また、センターサイプ63は、内側センター陸部21における内側周方向細溝37とセンター主溝32との間の領域に、タイヤ周方向に傾斜しつつタイヤ幅方向に延びて形成されており、一端がセンター主溝32に接続され、他端が内側センター陸部21内で終端している。また、内側ショルダーサイプ64は、内側ショルダー陸部23における内側周方向細溝37よりもタイヤ幅方向外側の領域に、タイヤ周方向に傾斜しつつタイヤ幅方向に延びて形成されており、両端が内側ショルダー陸部23内で終端している。また、外側ショルダーサイプ65は、外側ショルダー陸部24に、タイヤ周方向に傾斜しつつタイヤ幅方向に延びて形成されており、両端が外側ショルダー陸部24内で終端している。
これらのように構成される空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、トレッド面10のうち下方側に位置して路面に対向する部分が路面に接触しながら、当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド面10と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド面10と路面との間の水が主溝31やラグ溝40等に入り込み、これらの溝でトレッド面10と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド面10は路面に接地し易くなり、トレッド面10と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
また、雪上路面を走行する際には、空気入りタイヤ1は路面上の雪をトレッド面10で押し固めると共に、路面上の雪が主溝31やラグ溝40に入り込むことにより、これらの雪も溝内で押し固める状態になる。この状態で、空気入りタイヤ1に駆動力や制動力が作用したり、車両の旋回によってタイヤ幅方向への力が作用したりすることにより、溝内の雪に対して作用するせん断力である、いわゆる雪柱せん断力が発生し、雪柱せん断力によって空気入りタイヤ1と路面との間で抵抗が発生することにより、駆動力や制動力を雪上路面に伝達することができ、車両は雪上路面での走行が可能になる。
また、雪上路面を走行する際には、主溝31やラグ溝40、サイプ60のエッジ効果も用いて走行する。つまり、雪上路面を走行する際には、主溝31やラグ溝40のエッジや、サイプ60のエッジが雪面に引っ掛かることによる抵抗も用いて走行する。これにより、トレッド面10は、摩擦力やエッジ効果によって雪上路面との間の抵抗が大きくなり、空気入りタイヤ1を装着した車両の走行性能を確保することができる。
さらに、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、内側最外主溝33の溝幅Winと、外側最外主溝34の溝幅Woutとが、Win<Woutの関係になっており、内側最外主溝33の溝幅Winよりも、外側最外主溝34の溝幅Woutの方が大きくなっている。これにより、雪上路面の走行時に旋回をする際に、路面上に積もっている雪を、外側最外主溝34によって排除することができる。
つまり、車両の旋回時は、遠心力によって車両には旋回方向における外側に向けた力が作用するため、車両の旋回時には、旋回半径方向における内側に位置する車輪よりも、旋回半径方向における外側に位置する車輪に、より大きな荷重が作用する。このため、車両の旋回時における操縦安定性を確保するには、大きな荷重が作用しても横滑りが発生し難くなるようにするために、旋回半径方向外側に位置する車輪と路面とのグリップ力が重要になる。
旋回半径方向外側に位置する車輪に用いられる空気入りタイヤ1と、路面との関係について説明すると、空気入りタイヤ1と路面との間には、空気入りタイヤ1が路面に対して旋回半径方向における外側に向かう方向の力が作用する。即ち、旋回半径方向外側に位置する車輪に用いられる空気入りタイヤ1と路面との間には、車両装着方向外側に向かう方向の力が作用し、路面から空気入りタイヤ1に対しては、車両装着方向内側に向かう方向の力が作用する。
また、雪上路面は、車両が走行することによって押し固められた雪の上に、押し固められていない雪が積もっていることが多い。このため、雪上路面での走行時に旋回をする際には、旋回時に重要となる旋回半径方向外側に位置する車輪に用いられる空気入りタイヤ1に対して、押し固められていない雪が積もった路面が、車両装着方向における外側から内側に向かって相対移動しながら走行をすることになる。その際に、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、内側最外主溝33の溝幅Winよりも、外側最外主溝34の溝幅Woutの方が大きくなっている。このため、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、押し固められずに路面上に積もっている雪を、外側最外主溝34内により多く入り込ませることができ、外側最外主溝34によって、この雪を排除することができる。
図4は、雪上路面での旋回時における主溝31と周方向細溝36の作用について示す模式図である。図4は、トレッド面10に形成される主溝31と周方向細溝36の作用を説明するために、トレッド面10が図面上の下側を向き、路面100に対向する状態で図示した要部断面図になっている。雪105が積もった路面100上を車両が旋回走行する場合は、路面100は、旋回方向外側の車輪に用いられる空気入りタイヤ1のトレッド面10に対して、車両装着方向における内側方向へ相対移動しようとするため、路面100上の雪105は、トレッド面10における車両装着方向外側寄りに位置する外側最外主溝34に入り込み易くなる。
外側最外主溝34に入り込んだ雪105は、当該外側最外主溝34付近に作用する荷重によって圧雪される。これにより、路面100上の雪105と外側最外主溝34内との間で雪柱せん断力が発生し、空気入りタイヤ1と路面100との間でタイヤ幅方向の抵抗を発生させることができる。その際に、外側最外主溝34は、溝幅Woutが内側最外主溝33の溝幅Winよりも大きいため、外側最外主溝34には多くの雪105が入り込む。これにより、外側最外主溝34は、より大きな雪柱せん断力を発生させることができ、空気入りタイヤ1と路面100との間で、タイヤ幅方向の大きな抵抗を発生させることができる。
また、外側最外主溝34に入り込んだ雪105は、空気入りタイヤ1の回転に伴い、トレッド面10の円周上における接地領域以外の位置に移動した際に、空気入りタイヤ1の遠心力等により外側最外主溝34から排出される。具体的には、外側最外主溝34に入り込んだ雪105は、空気入りタイヤ1の回転に伴い、接地領域よりも車両の進行方向における後方に移動した際に、外側最外主溝34から排出される。これにより、路面100上の雪105は、トレッド面10の接地領域から接地領域外に外側最外主溝34によって排雪される。その際に、外側最外主溝34は、溝幅Woutが内側最外主溝33の溝幅Winよりも大きいため、多くの雪105を路面100上から排雪することができる。
車両の旋回時には、このように圧雪されていない多くの雪105が排雪された路面100は、さらに車両装着方向における内側方向へ相対移動する。外側最外主溝34の車両装着方向内側には、内側最外主溝33と、2本の周方向細溝36が配設されているため、多くの雪105が排雪された路面100が、車両装着方向における内側方向へ相対移動した際には、内側最外主溝33と周方向細溝36とは、エッジ効果を発揮することができる。つまり、雪面に対する主溝31や周方向細溝36のエッジ効果は、圧雪されていない雪105よりも、圧雪された雪105の方が大きな効果を発揮することができる。このため、圧雪されていない多くの雪105が外側最外主溝34により排雪され、圧雪された雪面が露出した路面100が、内側最外主溝33や周方向細溝36に対向した際には、内側最外主溝33や周方向細溝36は、路面100に対して大きなエッジ効果を発揮することができる。これにより、空気入りタイヤ1は、内側最外主溝33や周方向細溝36のエッジ効果によって、路面100との間でタイヤ幅方向の大きな抵抗を発生させることができる。
その際に、内側最外主溝33と2本の周方向細溝36とは、内側最外主溝33のタイヤ幅方向における両側に2本の周方向細溝36を配置する形態で設けられている。このため、雪105が圧雪された路面100に対してエッジ効果を発揮しつつ、外側最外主溝34によって排雪されなかった雪105を内側最外主溝33によって排雪したり、内側最外主溝33によって雪柱せん断力を発生させたりすることができる。これにより、タイヤ赤道面CLより車両装着方向内側の領域でも圧雪されていない雪105の排雪を行って、エッジ効果を効果的に発揮させたり、雪柱せん断力を発生させたりすることができ、空気入りタイヤ1と路面100との間で、タイヤ幅方向の大きな抵抗を発生させることができる。
また、トレッド面10における、タイヤ赤道面CLより車両装着方向内側の領域には、タイヤ赤道面CLより車両装着方向外側の領域よりも多くの周方向溝30が形成されているため、車両装着方向内側の領域では大きなエッジ効果を発揮しつつ、車両装着方向外側の領域の陸部20の剛性を確保することができる。これにより、乾燥した路面や雪上路面等の路面状況に関わらず、操縦安定性を確保することができる。
さらに、タイヤ赤道面CLより車両装着方向内側の領域は、内側最外主溝33の溝幅Winを外側最外主溝34の溝幅Woutよりも小さくして、内側最外主溝33のタイヤ幅方向における両側に2本の周方向細溝36を配置することにより、周方向溝30が多くなることに伴ってタイヤ幅方向における陸部20の幅が小さくなり過ぎることを抑制することができる。これにより、車両装着方向内側の領域においても、極力陸部20の剛性を確保することができ、より確実に、路面状況に関わらず操縦安定性を確保することができる。換言すると、効果的に周方向溝30を配置することにより、従来よりも少ない溝本数で雪上性能を確保することができるため、陸部20の低下を抑制することができ、路面状況に関わらず操縦安定性を確保することができる。これらの結果、空気入りタイヤ1と路面100との間で発生するタイヤ幅方向の大きな抵抗により、横滑りを抑制することができ、雪上路面での操縦安定性を向上させることができる。
また、陸部20の剛性の低下を抑制し、路面状況に関わらず操縦安定性を確保することができるため、いわゆるサマータイヤでの使用頻度が多い、ドライ路面での操縦安定性を確保することができる。また、タイヤ赤道面CLよりも車両装着方向内側の領域に位置する周方向溝30の数を多くする際に、周方向溝30を周方向細溝36のみで構成するのではなく、内側最外主溝33も用いるため、濡れた路面を走行する際における排水性を、内側最外主溝33によって確保することができる。これらの結果、ドライ路面やウェット路面での操縦安定性を低下させることなく、雪上路面での操縦安定性を向上させることができる。
また、内側最外主溝33と外側最外主溝34と周方向細溝36とにより、雪上路面での操縦安定性を確保できるため、サマータイヤを装着した車両で雪上路面を走行する際に、駆動輪のみにタイヤチェーンを装着した場合でも、タイヤチェーンを装着していない車輪の横滑りを抑制することができる。例えば、車両が前輪駆動車である場合に、駆動輪である前輪のみにタイヤチェーンを装着し、駆動輪ではない後輪にはタイヤチェーンを装着しない場合でも、後輪の横滑りを抑制することができる。この結果、空気入りタイヤ1がサマータイヤであり、タイヤチェーンを装着しない車輪がある車両で雪上路面を走行する場合においても、操縦安定性を向上させることができる。
また、内側最外主溝33の溝幅Winが、4mm以上8mm以下の範囲内であるため、陸部20の剛性を大きく低下させることなく、接地時に雪柱せん断力を発揮したり、圧雪されていない雪を排雪したりすることができる。また、外側最外主溝34の溝幅Woutが、8mm以上16mm以下の範囲内であるため、陸部20の剛性を大きく低下させることなく、より多くの雪を外側最外主溝34で排雪し、内側最外主溝33や周方向細溝36でのエッジ効果を確保することができる。さらに、内側最外主溝33の溝幅Winと外側最外主溝34の溝幅Woutとが、(Wout/Win)≧1.4の関係であるため、内側最外主溝33や周方向細溝36で効果的にエッジ効果を発揮させるための排雪を、外側最外主溝34によってより確実に行うことができる。これらの結果、より確実に雪上路面での操縦安定性を向上させることができる。
また、内側最外主溝33の溝幅Winと外側最外主溝34の溝幅Woutとを、1.6≦(Wout/Win)≦2.2の範囲内にした場合には、タイヤ赤道面CLより車両装着方向外側と車両装着方向内側とで、陸部20の剛性をバランス良く確保することができる。つまり、内側最外主溝33の溝幅Winと外側最外主溝34の溝幅Woutとが、(Wout/Win)<1.6である場合は、内側最外主溝33の溝幅Winに対して外側最外主溝34の溝幅Woutが狭すぎるため、タイヤ赤道面CLより車両装着方向外側に位置する陸部20の剛性が、タイヤ赤道面CLより車両装着方向内側に位置する陸部20の剛性に対して大きくなり過ぎる可能性がある。この場合、タイヤ赤道面CLより車両装着方向内側に位置する陸部20が、タイヤ赤道面CLより車両装着方向外側に位置する陸部20に対して摩耗し易くなり、偏摩耗が発生する可能性がある。また、内側最外主溝33の溝幅Winと外側最外主溝34の溝幅Woutとが、(Wout/Win)>2.2である場合は、内側最外主溝33の溝幅Winに対して外側最外主溝34の溝幅Woutが広すぎるため、外側最外主溝34に隣接する陸部20のタイヤ幅方向における幅が狭くなってしまい、当該陸部20の剛性が低くなり過ぎる可能性がある。この場合、操縦安定性を効果的に向上させ難くなる可能性がある。
これに対し、内側最外主溝33の溝幅Winと外側最外主溝34の溝幅Woutとを、1.6≦(Wout/Win)≦2.2の範囲内にした場合は、外側最外主溝34の溝幅Woutを、内側最外主溝33の溝幅Winに対して適切な範囲内で広くすることができる。これにより、タイヤ赤道面CLより車両装着方向外側に位置する陸部20の剛性を、車両装着方向内側に位置する陸部20の剛性に対して適切な範囲内でバランス良く確保することができる。この結果、より確実に雪上路面での操縦安定性を向上させることができる。
また、周方向細溝36と内側最外主溝33との距離Lsubと、周方向細溝36の溝深さHsubとの関係が、Lsub>Hsubであるため、周方向細溝36を設けることに起因する陸部20の剛性の低下を抑制することができる。つまり、周方向細溝36と内側最外主溝33との距離Lsubと、周方向細溝36の溝深さHsubとの関係が、Lsub≦Hsubである場合は、陸部20における内側最外主溝33と周方向細溝36とで区画される部分のタイヤ幅方向における幅が狭すぎ、この部分の剛性が低くなり過ぎる可能性がある。この場合、陸部20の剛性が低くなり過ぎることに起因して、車両旋回時の操縦安定性を向上させるのが困難になったり、陸部20における剛性が低い部分が摩耗し易くなることに起因して、偏摩耗が発生し易くなったりする可能性がある。
これに対し、周方向細溝36と内側最外主溝33との距離Lsubと、周方向細溝36の溝深さHsubとの関係が、Lsub>Hsubである場合は、陸部20における内側最外主溝33と周方向細溝36とで区画される部分のタイヤ幅方向における幅を確保することができ、この部分の剛性を確保することができる。これにより、内側最外主溝33のタイヤ幅方向における両側に周方向細溝36を設けた場合でも、周方向細溝36を設けることに起因する陸部20の剛性の低下を抑制することができ、操縦安定性を向上させるのが困難になったり、偏摩耗が発生し易くなったりすることを抑制することができる。この結果、偏摩耗を発生させることなく、より確実に雪上路面での操縦安定性を向上させることができる。
また、周方向細溝36は、周方向細溝36の溝深さHsubが、周方向細溝36に対して最も近い主溝31の溝深さの50%以上100%以下で、且つ、3mm以上であるため、周方向細溝36を設けることによるエッジ効果を、より確実に発揮することができる。つまり、周方向細溝36の溝深さHsubが、主溝31の溝深さの50%未満であったり、3mm未満であったりする場合は、周方向細溝36の溝深さHsubが浅すぎるため、周方向細溝36を設けても、陸部20における周方向細溝36によって区画される部分が、車両旋回時に倒れ込み難くなり、エッジ効果を発揮し難くなる可能性がある。
ここで、トレッド面10に溝を形成することによるエッジ効果について説明すると、トレッド面10に溝を形成すると、溝によって区画される陸部20に対して溝幅方向の力が作用した際に、この力によって陸部20は溝幅方向に多少倒れ込む。陸部20が倒れ込むと、倒れ込んだ陸部20は接地範囲が小さくなるため、この陸部20は、接地している部分の接地圧が高くなる。即ち、陸部20が倒れ込んだ場合は、接地圧が局所的に高くなるため、この高い圧力によって、雪に対して大きな力を作用させることができ、大きなエッジ効果を発揮することができる。周方向細溝36の溝深さHsubが浅すぎる場合は、陸部20における周方向細溝36によって区画される部分が、車両旋回時に倒れ込み難くなるため、雪上路面に対して大きな接地圧で接地し難くなり、エッジ効果を発揮し難くなる可能性がある。
これに対し、周方向細溝36の溝深さHsubが、周方向細溝36に対して最も近い主溝31の溝深さの50%以上100%以下で、且つ、3mm以上である場合は、陸部20における周方向細溝36によって区画される部分を、車両旋回時に倒れ込み易くさせることができる。これにより、路面100に対する陸部20の接地圧を局所的に高めることができ、周方向細溝36を設けることによるエッジ効果を、高い接地圧によってより確実に発揮することができる。この結果、より確実に雪上路面での操縦安定性を向上させることができる。
また、内側ショルダーラグ溝41は、外側ショルダーラグ溝42よりも数が多いため、タイヤ赤道面CLより車両装着方向内側に位置する陸部20のエッジ効果を向上させることができる。これにより、雪上路面でのトラクション性能や制動性能を確保することができ、雪上性能を向上させることができる。また、外側ショルダーラグ溝42は、内側ショルダーラグ溝41よりも数が少ないため、外側ショルダー陸部24の剛性を確保することができる。これにより、車両旋回時に大きな荷重が作用し易く、剛性の確保が重要な外側ショルダー陸部24の剛性を確保することができるため、より確実に操縦安定性を向上させることができる。これらの結果、より確実に雪上路面での操縦安定性を向上させることができる。
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、主溝31は3本が形成され、陸部20は4列が設けられているが、主溝31や陸部20は、これ以外の数で設けられていてもよい。即ち、主溝31は3本以上が形成され、陸部20は4列以上が設けられていればよい。主溝31や陸部20の数は、目的とする性能等に基づいて、適宜設定されるのが好ましい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、内側周方向細溝37は、内側センター陸部21のタイヤ幅方向における中央付近に配置されているが、内側周方向細溝37は、内側センター陸部21の中央付近以外の位置に配置されていてもよい。内側周方向細溝37は、例えば、内側センター陸部21のタイヤ幅方向における中央よりも、内側最外主溝33寄りの位置に配置されていてもよい。内側周方向細溝37を、内側最外主溝33寄りの位置に配置した場合は、内側センター陸部21は、内側最外主溝33より車両装着方向内側の部分よりも、車両装着方向外側の部分の方が剛性が高くなるため、車両の旋回時における操縦安定性を、より確実に向上させることができる。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、内側周方向細溝37と内側最外主溝33との距離Lsubと、外側周方向細溝38と内側最外主溝33との距離Lsubとの相対関係については特に規定していないが、これらの距離Lsubの相対関係を規定してもよい。例えば、外側周方向細溝38と内側最外主溝33との距離Lsubよりも、内側周方向細溝37と内側最外主溝33との距離Lsubの方が大きくなるようにしてもよい。内側周方向細溝37と内側最外主溝33との距離Lsubを、外側周方向細溝38と内側最外主溝33との距離Lsubよりも大きくした場合は、内側ショルダー陸部23における外側周方向細溝38と内側最外主溝33との間の部分の剛性よりも、内側センター陸部21における内側周方向細溝37と内側最外主溝33との間の部分の剛性の方が高くなるため、車両の旋回時における操縦安定性を、より確実に向上させることができる。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、主溝31や周方向細溝36は、全てタイヤ周方向に沿って延びているが、主溝31や周方向細溝36は、厳密にタイヤ周方向に沿って延びていなくてもよい。主溝31や周方向細溝36は、タイヤ周方向に延びつつ、タイヤ幅方向に振幅するジグザグ状、或いは波状の形状で形成されていてもよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、陸部20は全てリブ状に形成されているが、陸部20は、隣り合う主溝31同士の間にラグ溝40が設けられることにより、陸部20がタイヤ周方向に分割される、いわゆるブロック状の形状で形成されていてもよい。
〔実施例〕
図5は、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例及び比較例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、雪上路面を走行した際のフィーリングである雪上フィーリングについての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが185/65R15サイズの空気入りタイヤ1をJATMA標準リムのリムホイールにリム組みして、空気圧をJATMAで規定される最高空気圧に調整し、排気量が1200ccの前輪駆動(フロントエンジン・フロントドライブ)の試験車両に装着してテスト走行をすることにより行った。試験項目である雪上フィーリングの評価方法は、雪上に作られたテストコースを試験車両によって走行した際のテストドライバーによる官能評価を実施し、評価結果を、後述する従来例を100とする指数で表した。指数の数値が大きいほど雪上路面での操縦安定性が高く、雪上フィーリングが優れていることを示している。
評価試験は、従来の空気入りタイヤ1の一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜4と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1、2との7種類の空気入りタイヤについて行った。これらの空気入りタイヤ1のうち、従来例の空気入りタイヤは、外側最外主溝34の溝幅Woutと内側最外主溝33の溝幅Winとが同じ大きさになっており、タイヤ赤道面CLより車両装着方向外側の領域と車両装着方向内側の領域とで周方向溝30の数が同じ数になっており、陸部20には周方向細溝36は設けられていない。
また、比較例1の空気入りタイヤは、タイヤ赤道面CLより車両装着方向外側の領域よりも車両装着方向内側の領域の方が、周方向溝30の数が多くなっているものの、内側最外主溝33の溝幅Winが外側最外主溝34の溝幅Woutよりも大きくなっており、周方向細溝36が、タイヤ幅方向における両側のショルダー(Sh)陸部に配置されている。また、比較例2の空気入りタイヤは、周方向細溝36が、内側ショルダー(Sh)陸部23と内側センター(Ce)陸部21とに配置されているものの、タイヤ赤道面CLより車両装着方向内側の領域よりも、車両装着方向外側の領域の方が周方向溝30の数が多くなっている。
これらに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜4は、全て外側最外主溝34の溝幅Woutが内側最外主溝33の溝幅Winよりも大きくなっており、タイヤ赤道面CLより車両装着方向外側の領域よりも車両装着方向内側の領域の方が、周方向溝30の数が多くなっており、周方向細溝36が、内側ショルダー(Sh)陸部23と内側センター(Ce)陸部21とに配置されている。さらに、実施例1〜4に係る空気入りタイヤ1は、外側最外主溝34の溝幅Woutと内側最外主溝33の溝幅Winとの比率や、周方向細溝36と内側最外主溝33との距離Lsubと周方向細溝36の溝深さHsubとの大きさの相対関係、内側ショルダー陸部23のピッチ数と外側ショルダー陸部24のピッチ数との相対関係が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図5に示すように、実施例1〜4に係る空気入りタイヤ1は、従来例や比較例1、2に対して、雪上フィーリングが向上することが分かった。つまり、実施例1〜4に係る空気入りタイヤ1は、雪上路面での操縦安定性を向上させることができる。