本発明の実施形態に係る燃料配管構造は、自動二輪車、自動三輪車、バギー車等の鞍乗型車両に設けられる。この鞍乗型車両の燃料配管構造は、燃料タンクに貯留された燃料を内燃機関に供給する燃料ホースの配管に関するものである。
内燃機関は、燃料を燃焼させて動力を取り出す機関である。内燃機関は、車体フレームに支持される並列2気筒の内燃機関である。車体フレームは、鞍乗型車両の骨格を構成するものである。
スロットルボディは、内燃機関の後部に形成される吸気ポートに接続されている。エアークリーナーは、吸入した空気に含まれる異物を取り除くための装置である。エアークリーナーは、内燃機関の上方に配置され、燃焼用の空気をスロットルボディに供給する。エアークリーナーで清浄化された空気は、上方から下方に流れ、スロットルボディに流入する。つまり、この内燃機関は、所謂ダウンドラフト形式の吸気系を備えている。
燃料タンクは、内燃機関に供給する燃料を貯留するための部材である。燃料タンクは、エアークリーナーの上方に配置されている。燃料タンクは、その後部と車体フレームとの間に設けられる支持軸を中心として上下方向に回動可能に支持されている。燃料タンクは、エアークリーナーを覆う閉じた状態と、エアークリーナーを露出させる開いた状態との間で回動可能に構成されている。
燃料供給部は、スロットルボディに支持され、燃料をスロットルボディまたはスロットルボディよりも下流側に供給する。例えば、燃料供給部は、エアークリーナーからスロットルボディに送られた清浄空気に向けて燃料を噴射する。
燃料ポンプは、燃料を燃料タンクから燃料供給部に送るための装置である。燃料ポンプは、燃料タンクの内部に設けられている。燃料タンクを閉じた状態において、燃料ポンプは、平面から見て支持軸よりも前方、且つ燃料供給部よりも後方に配置されている。
燃料ポンプは、燃料ホースを介して燃料供給部に接続されている。燃料ホースは、燃料ポンプの上流側接続部と燃料供給部の下流側接続部との間に接続されている。燃料タンクを閉じた状態で、上流側接続部と下流側接続部とは、側面から見て、上下方向に同じ高さ、または上下方向に近接して配置されている。
燃料ホースは、第1流路部と、第2流路部と、を含んでいる。燃料タンクを閉じた状態で、燃料ホース(第1,第2流路部)は、略水平姿勢で配置されている。第1流路部は、上流側接続部から後方に伸長し、第1屈曲部で向きを変えて車幅方向一方に伸長する。第2流路部は、第2流路部の下流端に第2屈曲部を介して連なり、第2屈曲部で向きを変えて前方に伸長する。第2流路部の下流端は、下流側接続部に接続される。
並列2気筒の内燃機関は車幅方向に狭いため、内燃機関の後方の空間も狭くなる。燃料タンクを閉じた状態で、燃料ホースの接続先である上流側接続部と下流側接続部とは、同じ高さ(または上下方向に近接し)、且つ前後方向に近接して配置されることになる。燃料タンクを上方に回動させて開いた状態にすると、燃料ポンプも燃料タンクと一体となって上方に回動する。したがって、上流側接続部は下流側接続部よりも上方に移動し、燃料ホースは複数の屈曲部で捩れて上下方向に長くなるように変位する。
本実施形態に係る鞍乗型車両の燃料配管構造では、燃料タンクを閉じた状態で、燃料ポンプから後方に延びた燃料ホースは、車幅方向に横断し、燃料ポンプよりも前方に位置する燃料供給部に接続される。燃料ポンプの後方を経由するように燃料ホースを迂回させることで、上流側接続部と下流側接続部とが近接していても、燃料ホースの長さを十分に長く確保することができる。また、このように燃料ホースを迂回させることにより燃料ホースに形成された第1屈曲部および第2屈曲部といった複数の屈曲部により、燃料タンクの開閉に伴う燃料ホースの捩れを分散して吸収することができ、燃料ホースに局所的に負荷が集中することを防止することができる。また、燃料ポンプを囲むように燃料ホースを迂回させることで、燃料ホースの迂回経路を小さい領域内に収めることができる。これにより、内燃機関の後方にABSユニット、冷却水リザーバータンク、電装部品等が互いに接近して配置されている場合でも、燃料ホースを十分に長くし、複数の屈曲部により燃料ホースの捩れを分散吸収するように燃料ホースを適切に迂回させることができる。以上により、本実施形態に係る鞍乗型車両の燃料配管構造によれば、内燃機関の後方に複数の部品を互いに接近させて配置しながらも、燃料タンク回動時に燃料ホースに局所的に負荷が集中することを防止することができ、燃料ホースの耐久性の低下を抑制することができる。また、内燃機関の周辺に配置された他の部品のレイアウトの変更を行うことなく、燃料ホースを配管することができる。
以下、本発明の実施例に係る鞍乗型車両の燃料配管構造について説明する。
図1ないし図4を参照して、鞍乗型車両の一例としての自動二輪車1の全体構成について説明する。図1は自動二輪車1を示す側面図である。図2は自動二輪車1の要部を示す側面図である。図3は自動二輪車1の要部を示す正面図である。図4は自動二輪車1の要部を示す平面図である。図5は自動二輪車1の要部を示す斜視図である。図6は自動二輪車1の燃料配管構造5を示す側面図である。なお、以下の説明において、前、後、左、右、上および下の方向は、自動二輪車1のシート32に着座した運転者を基準とする。
図1に示すように、自動二輪車1は、車体フレーム2と、車体カバー3と、エンジン4と、を備えて概略構成されている。車体フレーム2は、自動二輪車1の骨格を構成する。車体カバー3は、車体フレーム2等を覆うように設けられる。エンジン4は、車体フレーム2に搭載されている。
図2ないし図5に示すように、車体フレーム2は、ヘッドパイプ10と、左右一対のメインフレーム11と、左右一対のピボットフレーム12と、左右一対のシートレール13と、左右一対のサイドフレーム14と、を含んでいる。
ヘッドパイプ10は、車両の前部上側に配置され、ステアリングシャフト(図示せず)を回転可能に支持している。ステアリングシャフトは、ブラケット(図示せず)を介して左右一対のフロントフォーク15を支持している(図1参照)。フロントフォーク15の下端部には前輪16が回転可能に支持され、フロントフォーク15の上端部にはハンドルバー17が支持されている(図1参照)。
左右一対のメインフレーム11は、ヘッドパイプ10から左右方向(車幅方向)に分岐して後斜め下方に延びている。メインフレーム11は、円形断面を有する上下一対のメインパイプ11U,11Dで構成されている。左右一対のメインパイプ11Uの上側には、燃料タンク30が設けられている。燃料タンク30は、エンジン4に供給するための燃料(例えばガソリン)を貯留している。なお、詳細は後述するが、燃料タンク30は、その後部と車体フレーム2との間に設けられる支持軸64c(図2参照)を中心として上下方向に回動可能に支持されている。
メインフレーム11には、左右一対のロアーパイプ20と、アッパーパイプ21と、アッパープレート22と、ロアープレート23とが連結されている。一対のロアーパイプ20は、それぞれ、メインパイプ11Dの前端部から後斜め下方に向けて伸長している。アッパーパイプ21は、ヘッドパイプ10の後方で一対のメインパイプ11Uの間に架け渡して設けられている(図4参照)。ロアーパイプ20とアッパーパイプ21とは、円形断面を有するパイプで構成されている。アッパープレート22は、ヘッドパイプ10の上端部と一対のメインパイプ11Uとアッパーパイプ21との間に架け渡して設けられている。ロアープレート23は、ヘッドパイプ10の下端部と一対のメインパイプ11Dと一対のロアーパイプ20との間に架け渡して設けられている。アッパープレート22とロアープレート23とは、略板状に形成されている。
左右一対のピボットフレーム12は、それぞれ、メインフレーム11の後部に連結され、メインフレーム11から下方に延びている(図2参照)。図1に示すように、左右一対のピボットフレーム12の間には、ピボット軸12aを介してスイングアーム18が上下方向に揺動可能に支持されている。スイングアーム18の後端部には、後輪19が回転可能に支持されている。ピボットフレーム12の上部とスイングアーム18との間には、リヤサスペンション31が架け渡して設けられている。
図2に示すように、左右一対のシートレール13は、それぞれ、ピボットフレーム12の上端部(メインフレーム11の後部)に連結され、後斜め上方に延びている。左右一対のシートレール13の間には、フレームブリッジ13aが架け渡されて設けられている。左右一対のサイドフレーム14は、それぞれ、ピボットフレーム12の上部とシートレール13の後部との間に架け渡して設けられている。シートレール13とサイドフレーム14とは、円形断面を有するパイプで構成されている。
左右一対のシートレール13の上側には、運転者が着座するためのシート32が設けられている(図1参照)。シート32は、燃料タンク30の後方に連なるように設けられている。シート32の下方には、様々な電気部品に電力を供給するバッテリー33が配置されている(図2および図5参照)。
図1に示すように、車体カバー3は、アッパーカウル3aと、アンダーカウル3bと、左右一対のシートカウル3cと、含んでいる。アッパーカウル3aは、フロントフォーク15の上部を覆うように設けられている。アンダーカウル3bは、アッパーカウル3aの下端に連結され、エンジン4の一部を覆うように設けられている。左右一対のシートカウル3cは、メインフレーム11とシートレール13とサイドフレーム14とを覆うように設けられている。シートカウル3cは、アッパーカウル3aの上部に連結され、燃料タンク30とシート32との下端に沿って後方に延びている。
図2および図3に示すように、内燃機関の一例としてのエンジン4は、並列2気筒エンジンであって、メインパイプ11Dの下方に配置されている。エンジン4は、で、メインフレーム11、ピボットフレーム12およびロアーパイプ20等に支持されている。また、エンジン4は、ピボット軸12aを介してスイングアーム18と共締めされ、車体フレーム2の構造部材として機能する(図1参照)。
クランクケース40の内部には、クランクシャフト(図示せず)が回転可能に設けられている。各シリンダー41の内部には、コンロッド(図示せず)を介してクランクシャフトに連結されるピストン(図示せず)が設けられている。なお、2本のシリンダー41は略同一構造であるため、以下の説明では、主に1本のシリンダー41およびその周辺の部材について説明する。
クランクケース40の後部上方には、ABS(Antilock Brake System)ユニット34が配置されている(図6参照)。ABSユニット34は、ブレーキ操作時に前輪16および後輪19のロックを抑制する装置である。ABSユニット34は、平面から見て一対のメインフレーム11の間に対応する領域に配置されている(図4参照)。
シリンダー41は、クランクケース40の上面にて前方に傾いた姿勢で設けられている。シリンダー41の上部には、シリンダーヘッド53が設けられ、シリンダーヘッド53の上部には、ヘッドカバー54が設けられている。
シリンダー41(ヘッドカバー54)の上方には、空気に含まれる異物を取り除くためのエアークリーナー42が配置されている。エアークリーナー42は、側面から見て燃料タンク30とシリンダー41との間に配置されている(図4参照)。
図6に示すように、シリンダーヘッド53の後部には、スロットルボディ44を接続する吸気ポート43が形成されている。スロットルボディ44は、エアークリーナー42の後部の直下に配置されている。スロットルボディ44は、アウトレットチューブ52を介してエアークリーナー42に接続されている。このエンジン4は、清浄空気を上方から下方に流してスロットルボディ44に供給する所謂ダウンドラフト形式の吸気系を備えている。
スロットルボディ44の下流側には、インジェクター55が支持されている。インジェクター55は、燃料ホース80を介して燃料タンク30に接続されている。インジェクター55は、燃料をスロットルボディ44(またはスロットルボディ44の下流側)に供給する。
図2に示すように、シリンダーヘッド53の前部には、排気管46を接続する排気ポート45が形成されている。排気管46は、Uターンして後方に伸長している。なお、2本のシリンダー41から伸長した2本の排気管46の後部は、1本に合流して排気マフラー47に接続されている。
ここで、エンジン4の作用について簡単に説明する。清浄空気は、エアークリーナー42からスロットルボディ44に流入する。インジェクター55は、スロットルボディに送られた清浄空気に向けて燃料を噴射する。空気と燃料とを混合した混合気は、吸気ポート43を介してシリンダー41内に供給される。エンジン4は、混合気をシリンダー41内で燃焼させてピストンを往復運動させる。ピストンの往復運動は、クランクシャフトの回転運動に変換され、ドライブチェーン等(図示せず)を介して後輪19を回転させる。燃焼後の排気ガスは、排気管46を通して排気マフラー47から外部に排気される。
ところで、自動二輪車1は、エアークリーナー42のフィルター交換等、メンテナンス性を考慮して、燃料タンク30を車体フレーム2に回動可能に支持させている。また、自動二輪車1は、並列2気筒のエンジン4を採用することで車幅を小さく(狭く)構成されている。このような車幅方向に狭い自動二輪車1では、エンジン4の後方において一対のメインフレーム11に囲まれた空間Sも狭くなる(図5参照)。狭い空間Sでは燃料ホース80の両端の接続部分が近接して配置される。このため、燃料タンク30の回動に伴う燃料ホース80の変形が局所的に集中することのないように燃料ホース80の迂回経路を適切に設定することが困難であった。そこで、本実施例に係る自動二輪車1は、エンジン4の後方の狭い空間Sにおいて、燃料タンク30の回動に伴う燃料ホース80の変形が局所的に集中することを防止する燃料配管構造5を備えている。
図6に示すように、自動二輪車1の燃料配管構造5は、車体フレーム2、エンジン4、エアークリーナー42、燃料タンク30、左右一対のスロットルボディ44、左右一対のインジェクター55、デリバリーパイプ56、燃料ポンプ70と、を備えている。これらの部材は、自動二輪車1を構成する部材であるが、本実施例では、燃料配管構造5を構成する部材でもある。以下、燃料配管構造5の説明に先立ち、エアークリーナー42、燃料タンク30、スロットルボディ44、インジェクター55、デリバリーパイプ56および燃料ポンプ70の構造について説明する。
まず、主に図6を参照して、エアークリーナー42について説明する。エアークリーナー42は、燃焼用の空気をスロットルボディ44に供給するために設けられている。エアークリーナー42は、クリーナーケース50の内部をダーティサイドとクリーンサイドとに区画するフィルター(図示せず)を含んでいる。
クリーナーケース50は、例えば、合成樹脂製で略直方体状に形成されている。クリーナーケース50は、平面から見て前方から後方に向けて徐々に幅方向に狭く形成されている(図4参照)。クリーナーケース50の両側面と一対のメインフレーム11との間には、ケーブル等を配線するための隙間が形成されている。クリーナーケース50は、上下方向に分割可能に構成されている。フィルターは、クリーナーケース50の上部と下部との合せ面Fに取り付けられている。
クリーナーケース50の前面上側には、取付片50aが前方に突き出した状態で設けられている。取付片50aは、アッパープレート22から後方に延びるアッパーブラケット22aにボルトB1で固定されている(図4参照)。クリーナーケース50の前面下側には、外気をダーティサイドに取り込むためのインレットチューブ51が設けられている。インレットチューブ51は、前後方向に延びる姿勢で設けられている。クリーナーケース50の後部には、クリーンサイドに通じる2つのアウトレットチューブ52が左右方向に並んで設けられている。アウトレットチューブ52は、上下方向に延びる姿勢で設けられている。
クリーナーケース50の上面には、エンジン4を制御するためのECU48(Engine Control Unit)が取り付けられている。ECU48は、ハーネス48a(図4参照)を介してABSユニット34やインジェクター55等の電子機器に接続されている。ECU48は、燃料の噴射や点火のタイミング等を制御する。クリーナーケース50の後面には、ハーネス48aを通すための配線溝50bが凹む状態で形成されている(図4参照)。
次に、主に図6を参照して、燃料タンク30について説明する。燃料タンク30は、例えば、薄肉の板金製で、前後方向に長い箱状に形成されている。燃料タンク30は、メインフレーム11の前端部からシートレール13の前端部まで伸長している(図2参照)。
燃料タンク30は、外側本体部60の内側に内側凹部61を有している。外側本体部60と内側凹部61との間には、燃料を貯留する貯留空間62が構成されている。
外側本体部60は、燃料タンク30の外形を構成している。外側本体部60は、一対のメインフレーム11の間隔よりも僅かに幅広く形成されている(図3および図4参照)。内側凹部61は、一対のメインフレーム11の間に対応する領域で外側本体部60の下面から上方に窪む状態に形成されている。内側凹部61は、外側本体部60の下面の前側略半分において略直方体状に凹んだ状態で形成されている。貯留空間62は、正面から見て略アーチ状の断面を成す空間である。貯留空間62は、内側凹部61の左右両側、後側および上側を覆うように形成されている。
燃料タンク30の前端部は、前側タンクブラケット63を介してアッパープレート22にボルトB2で固定されている(図2も参照)。なお、前側タンクブラケット63とアッパープレート22との間には、ゴムクッション(図示せず)が挟まれている。
図5および図6に示すように、燃料タンク30の後端部は、後側タンク支持機構64を介してフレームブリッジ13aに取り付けられている。後側タンク支持機構64は、タンク支持ブラケット64aに対して支持軸64cを中心に回転可能に支持される回動ブラケット64bを含んでいる。タンク支持ブラケット64aと回動ブラケット64bとは、例えば、金属製で略U字状に形成されている。タンク支持ブラケット64aは、フレームブリッジ13aの上面に複数のボルトB3で固定されている。回動ブラケット64bは、燃料タンク30の後端面に複数のボルトB4で固定されている。なお、タンク支持ブラケット64aとフレームブリッジ13aとの間には、ゴムクッション(図示せず)が挟まれている。
燃料タンク30は、前側タンクブラケット63のボルトB2を取り外した状態で、支持軸64cを中心に回動する(図2の矢印参照)。燃料タンク30は、エアークリーナー42を覆う閉じた状態(図6参照)と、エアークリーナー42を露出させる開いた状態(図9参照)との間で回動可能に構成されている。燃料タンク30を開いた状態にすることで、エアークリーナー42等のメンテナンスを行うことが可能になる。
なお、図5に示すように、フレームブリッジ13aには、燃料タンク30内で気化した燃料(蒸発燃料)を吸着するキャニスター49が吊り下げられている。キャニスター49は、フレームブリッジ13aにタンク支持ブラケット64aと共締めされている。
次に、図5ないし図8を参照して、左右一対のスロットルボディ44、左右一対のインジェクター55およびデリバリーパイプ56について説明する。図7は燃料配管構造5を示す平面図である。図8は燃料配管構造5の一部を示す底面図である。なお、一対のスロットルボディ44は略同一構造であるため、以下、主に1つのスロットルボディ44について説明する。これと同様の理由で、以下、主に1つのインジェクター55について説明する。
スロットルボディ44は、その内部に設けられたスロットルバルブ(図示せず)によって、エアークリーナー42から吸気ポート43に供給される清浄空気の量を調整する装置である。スロットルボディ44は、略円筒状に形成され、吸気ポート43に接続されている(図6参照)。また、スロットルボディ44は、クリーナーケース50から下方に延びるアウトレットチューブ52に接続されている(図6参照)。つまり、スロットルボディ44は、吸気ポート43とエアークリーナー42との間に設けられている。スロットルボディ44(スロットルバルブ)には、ハンドルバー17のスロットル(図示せず)から延びるスロットルケーブル44aが接続されている(図4参照)。スロットルバルブは、スロットルの開度に応じて開閉される。
インジェクター55は、スロットルボディ44の後下部に接続されている。インジェクター55は、ECU48に制御され、燃料を吸気ポート43に向けて噴射する装置である。ECU48は、スロットルの開度に応じてインジェクター55からの燃料の噴射量や噴射タイミングを制御する。
デリバリーパイプ56は、一対のインジェクター55を介して、燃料をスロットルボディ44(またはスロットルボディ44の下流側)に導くための流路を構成している。デリバリーパイプ56は、左右一対のインジェクター55に架け渡されるように左右方向(車幅方向)に長く形成されている。デリバリーパイプ56は、左右一対のインジェクター55の上部後側に接続されている。なお、インジェクター55とデリバリーパイプ56とが請求項でいう「燃料供給部」の具体例である。
デリバリーパイプ56には、燃料ホース80を接続するための下流側接続部74が一体に形成されている。下流側接続部74は、デリバリーパイプ56の中央よりも右寄りに形成されている。下流側接続部74は、デリバリーパイプ56から後方に向けて延びた状態で設けられている。
次に、図6ないし図8を参照して、燃料ポンプ70について説明する。燃料ポンプ70は、圧力をかけて燃料を送り出す電動式のポンプである。燃料ポンプ70は、燃料タンク30の内部(貯留空間62)に設けられている(図6参照)。燃料ポンプ70は、内側凹部61よりも後方に配置されている。燃料ポンプ70は、ポンプ取付板70aを介して外側本体部60の底面に取り付けられている。燃料ポンプ70は、ポンプ取付板70aに対して起立姿勢で設けられている。
燃料ポンプ70の下面には、上流側接続部71が設けられている(図8参照)。上流側接続部71は、燃料ポンプ70の左前側に設けられている。上流側接続部71は、左方向(車幅方向他方)に向けて延びた状態で設けられている。
燃料ポンプ70は、燃料ホース80を介してデリバリーパイプ56に接続されている。燃料ポンプ70は、貯留空間62に貯留された燃料を燃料タンク30からインジェクター55に送る装置である。燃料ホース80は、燃料ポンプ70の上流側接続部71とデリバリーパイプ56の下流側接続部74との間に接続されている。
次に、図6ないし図9を参照して、自動二輪車1の燃料配管構造5について説明する。図9は燃料配管構造5を示す側面図であって、燃料タンク30を開いた状態を示している。なお、以下の説明では、主に燃料タンク30を閉じた状態を基準として説明する。なお、以下の説明で、「上流」および「下流」並びにこれらに類する用語は、燃料の供給方向(流れる方向)における「上流」および「下流」並びにこれらに類する概念を指す。
図6に示すように、エンジン4、スロットルボディ44、インジェクター55およびデリバリーパイプ56は、側面から見てメインフレーム11(メインパイプ11D)の下方に配置されている。スロットルボディ44、インジェクター55およびデリバリーパイプ56は、シリンダー41の後方の空間Sに配置されている。エアークリーナー42は、側面から見てエンジン4の上方に配置されている。燃料タンク30は、側面から見てエアークリーナー42の上方、且つメインフレーム11(メインパイプ11U)の上方に配置されている。燃料タンク30の内側凹部61には、エアークリーナー42の上部が嵌り込んでいる。燃料ポンプ70は、側面から見てメインフレーム11(メインパイプ11U)の上方に配置されている。燃料ポンプ70の上流側接続部71とデリバリーパイプ56の下流側接続部74とは、側面から見て上下方向に近接して配置されている。正確には、上流側接続部71は、下流側接続部74よりも僅かに上方に配置されている。シリンダー41の後方の空間Sは狭いため、上流側接続部71と下流側接続部74とは、上下方向に近接し、且つ前後方向に近接して配置されることになる。
エアークリーナー42は、平面から見て一対のメインフレーム11の間に配置されている(図4参照)。図7に示すように、スロットルボディ44、インジェクター55およびデリバリーパイプ56は、平面から見て一対のメインフレームの間に(車幅方向中央付近)に配置されている。燃料ポンプ70は、平面から見て一対のメインフレームの間に対応する領域(車幅方向中央付近)に配置されている。燃料ポンプ70は、平面から見て支持軸64cよりも前方、且つデリバリーパイプ56等よりも後方に配置されている。つまり、燃料ポンプ70は、デリバリーパイプ56等と後側タンク支持機構64との間に配置されている。
ここで、図9に示すように、燃料タンク30を上方に回動させて開いた状態にすると、燃料ポンプ70も燃料タンク30と一体となって上方に回動する。したがって、上流側接続部71は、下流側接続部74よりも上方に引き離される。すなわち、上流側接続部71と下流側接続部74との間隔(直線距離)は、燃料タンク30を閉じた状態では短く(図6参照)、燃料タンク30を開いた状態では長くなる。このため、両接続部71,74の間を結ぶ燃料ホース80は、燃料タンク30の開閉(回動)を許容可能な長さに形成される必要がある。
図6ないし図8を参照して、燃料ホース80について説明する。燃料ホース80は、例えば、弾性変形可能な合成樹脂材料で形成されている。燃料ホース80の上流端は、上流側継手部72を介して上流側接続部71に接続されている。燃料ホース80の下流端は、下流側継手部73を介して下流側接続部74に接続されている。
上流側継手部72は、上流側外管72aの左端部から後方に延びる上流側内管72bを含んでいる。つまり、上流側継手部72は、L字状に形成されている。燃料ポンプ70の上流側接続部71は、上流側外管72aの内部に挿入された状態で固定されている。上流側内管72bは、燃料ホース80の上流端の内部に挿入された状態で固定されている。
下流側継手部73は、上流側継手部72と同じL字状の部材である。下流側継手部73は、下流側外管73aの後端部から右方向に延びる下流側内管73bを含んでいる。インジェクター55の下流側接続部74は、下流側外管73aの内部に挿入された状態で固定されている。下流側内管73bは、燃料ホース80の下流端の内部に挿入された状態で固定されている。
燃料ホース80は、上流から下流に向かって順番に第1流路部81と第2流路部82とで一体に形成されている。
図7および図8に示すように、第1流路部81の上流端は、上流側継手部72の上流側内管72bに接続されている。第1流路部81は、上流側継手部72(上流側接続部71)から後方に僅かに伸長している。第1流路部81は、後方に伸長した後、第1屈曲部81aで向きを変えて右方向(車幅方向一方)に伸長している。第1流路部81は、第1屈曲部81aで緩やかに且つ全体的に見て略直角に曲がっている。上流側継手部72の上流側内管72bおよび第1屈曲部81aは、それぞれ、左側のメインフレーム11に近接した位置に設けられている(図7参照)。第1流路部81は、平面から見て燃料ポンプ70の後側を横断するように配管されている。
第2流路部82は、第1流路部81の下流端に第2屈曲部82aを介して連なった状態で設けられている。第2流路部82は、第2屈曲部82aで向きを変えて前方に伸長している。第2流路部82は、第2屈曲部82aで緩やかに且つ全体的に見て略直角に曲がっている。第2屈曲部82aは、右側のメインフレーム11に近接した位置に設けられている(図7参照)。第2流路部82は、平面(底面)から見て上流側接続部71と略同じ位置まで延びている。
第2流路部82は、第2屈曲部82aから前方に伸長した後、第3屈曲部82bで左方向(車幅方向他方)に向きを変えている。第2流路部82は、第3屈曲部82bで緩やかに且つ全体的に見て略直角に曲がっている。第3屈曲部82bは、右側のメインフレーム11に近接した位置に設けられている(図7参照)。第2流路部82の下流端は、下流側継手部73の下流側内管73b(下流側接続部74)に接続されている。下流側内管73bは、平面(底面)から見て上流側接続部71よりも僅かに前方に配置されている。
図6に示すように、上流側接続部71、上流側継手部72、第1流路部81(第1屈曲部81a)、第2流路部82(第2屈曲部82a)、下流側継手部73および下流側接続部74は、略同じ高さに配置されている。つまり、燃料ホース80は、略水平姿勢で配置されている。正確には、燃料ホース80は、上流から下流に向けて僅かに下り勾配になるように設けられている。更に正確には、第1流路部81は略水平に設けられ、第2流路部82は後方(上流側)から前方(下流側)に向けて僅かに下り勾配になるように設けられている。
図7および図8に示すように、燃料ホース80は、平面(底面)から見て燃料ポンプ70の周りに略矩形環状に配管されている。燃料ホース80は、平面(底面)から見て一対のメインフレーム11の間で、且つ燃料ポンプ70を囲むように配置されている。燃料ホース80の左右方向の範囲(左右幅)は、左右一対のメインフレーム11の間隔と略同一またはそれよりも小さく形成されている(図7参照)。また、燃料ホース80の前後方向の範囲(前後長さ)は、燃料ポンプ70の前後長さ(直径)と略同一に形成されている。なお、燃料ホース80の前後長さは、ポンプ取付板70aの前後長さ(直径)よりも小さく形成されている。
図9に示すように、燃料タンク30を閉じた状態から開いた状態に回動させると、燃料ホース80は、3箇所の屈曲部81a,82a,82bで捩れて上下方向に長くなるように変位する。詳細には、第1流路部81は、第1屈曲部81aと第2屈曲部82aとで捩れ、左側(上流側)から右側(下流側)に向けて下方に傾斜した姿勢に変位する。つまり、第1流路部81は、捩れを2箇所に分散させて姿勢を変更する。一方、第2流路部82は、第2屈曲部82aと第3屈曲部82bとで捩れ、後方から前方に向けて下方に更に傾斜した姿勢に変位する。つまり、第2流路部82は、捩れを2箇所に分散させて傾斜角度を増加させる。
以上説明した本実施例に係る自動二輪車1の燃料配管構造5では、燃料タンク30を閉じた状態で、燃料ポンプ70から後方に延びた燃料ホース80が車幅方向に横断し、燃料ポンプ70よりも前方に位置するデリバリーパイプ56に接続する構成とした。すなわち、燃料ホース80は、インジェクター55から離れる方向に延びた後に、燃料ポンプ70を回り込んでインジェクター55に接近する方向に延びる。燃料ポンプ70の後方を経由するように燃料ホース80を迂回させることで、上流側接続部71と下流側接続部74とが近接していても、燃料ホース80の長さを十分に長く確保することができる。また、本実施例に係る自動二輪車1の燃料配管構造5では、燃料ホース80が3つの屈曲部81a,82a,82bで捩れることで、燃料タンク30の開閉に追従する構成とした。この構成により、3つの屈曲部81a,82a,82bは、燃料タンク30の開閉に伴う燃料ホース80の捩れを分散して吸収するため、燃料ホース80(各屈曲部81a,82a,82b)に作用する負荷を分散することができる。以上により、各接続部71,74をコンパクトに配置しなければならない場合でも、燃料ホース80が必要な長さに形成され、燃料タンク30の回動(開閉)時に燃料ホース80の捩れが分散吸収されるため、燃料ホース80に局所的に負荷が集中することを防止でき、燃料ホース80の耐久性が低下することを抑制することができる。
また、本実施例に係る自動二輪車1の燃料配管構造5では、燃料ホース80は、燃料ポンプ70の周囲にまとまって配管されるため、例えば、エンジン4の周辺に配置された部品(ABSユニット34、キャニスター49、冷却水のリザーバータンク(図示せず)等)との干渉を防止することができる。したがって、ABSユニット34等、エンジン4の周辺の部品のレイアウトの変更を行うことなく、燃料ホース80を配管することができる。また、狭い車幅(空間S)を最大限に活かして燃料ホース80を燃料タンク30の開閉に必要な長さに構成することができる。
また、回動機構を有しない上流側継手部72および下流側継手部73を用いた場合でも、複数の屈曲部81a,82a,82bにより、燃料ホース80の捩れを十分に吸収することができる。したがって、上流側継手部72および下流側継手部73として回動機構を有していない小型の継手を採用することができ、多数の部品が接近して配置されている場所において、燃料配管構造5をコンパクトに形成することができる。
本実施例に係る自動二輪車1の燃料配管構造5では、上流側接続部71が左方向(車幅方向他方)に延び、下流側接続部74が後方に延びる構成とした。これにより、燃料ホース80を無理に曲げることなく、燃料ホース80を上流側接続部71と下流側接続部74とに接続することができる。
本実施例に係る自動二輪車1の燃料配管構造5では、下流側接続部74をデリバリーパイプ56と一体化されている。これにより、例えば、別途、コネクタを介して下流側接続部74をデリバリーパイプ56に接続する場合に比べて、部品点数を削減することができる。また、コネクタが省略されるため、デリバリーパイプ56の長さを短縮することもできる。
なお、本実施例に係る自動二輪車1の燃料配管構造5は、上流側接続部71を下流側接続部74よりも僅かに上方に配置していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、上流側接続部71と下流側接続部74とは、側面から見て上下方向に同じ高さに配置されていてもよい。また、上流側接続部71は左方向(車幅方向他方)に延びていたが、これに限らず、右方向に延びていてもよい。また、上流側接続部71は、平面から見て前方または後方に傾いていてもよい。これと同様に、下流側接続部74も、平面から見て左側または右側に傾いていてもよい。
また、本実施例に係る自動二輪車1の燃料配管構造5では、燃料ホース80が2つの継手部72,73を介して2つの接続部71,74の間に接続されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、上流側継手部72と下流側継手部73の少なくとも一方を省略してもよい。
また、本実施例に係る自動二輪車1の燃料配管構造5では、燃料ホース80が燃料ポンプ70の周りに略矩形環状に配管されていたが、燃料ホース80を燃料ポンプ70の周りに三角形環状、台形環状、円環状、半月型環状等に配管してもよい。
また、本実施例に係る自動二輪車1では、並列2気筒のエンジン4を搭載していたが、本発明はこれに限定されない。本発明は並列2気筒以外のエンジン、例えば単気筒、または3気筒以上のエンジンを備えた鞍乗型車両にも適用することができる。2気筒以外のエンジンを搭載した鞍乗型車両であっても、車両の車幅が狭い場合には、本発明を適用することにより、燃料ホース80の耐久性を向上させる等、上述した作用効果を得ることができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う鞍乗型車両の燃料配管構造もまた本発明の技術思想に含まれる。