以下、本開示における典型的な実施形態について説明する。
<概要>
眼科OCT解析装置は、眼科用OCT装置によって取得された被検眼の画像データを処理して被検眼の解析結果を得るために用いられてもよい(例えば、図1参照)。眼科OCT解析装置は、画像データを解析処理するための解析処理部を備えてもよい。さらに、眼科OCT解析装置は、眼科用OCT装置の装置本体と一体化された装置であってもよいし、眼科用OCT装置の装置本体とは別に設けられた装置であってもよい。また、眼科OCT解析装置として、汎用のパーソナル・コンピュータが用いられてもよい。また、解析処理部としては、例えば、CPU等のプロセッサが用いられてもよい。被検眼の画像データは、例えば、被検眼に照射された測定光と参照光によるOCT信号に基づいて取得されてもよい。なお、眼科OCT解析装置には、眼科用OCT装置によって取得された画像データを処理して解析結果を得るための眼科解析プログラムが用いられてもよい。
解析結果としては、被検眼に関する解析パラメータが取得されてもよく、解析パラメータとしては、例えば、画像データを解析して得られる物理量であってもよいし、画像データを解析して得られる物理量を符号化したパラメータであってもよい。
被検眼の画像データとしては、例えば、眼底の画像データであってもよいし、前眼部の画像データであってもよい。なお、眼底の画像データとしては、例えば、眼底の篩状板領域を少なくとも含む乳頭部の画像データであってもよいし、眼底の黄斑部を少なくとも含む画像データ、眼底のRahe gapとRahe gapの周辺を少なくとも含む画像データであってもよい。もちろん、眼底上の部位は、これらに限定されない。
<第1の解析結果の取得>
解析処理部は、例えば、眼科用OCT装置によって取得された第1のOCT画像データを処理して第1の解析結果を取得してもよい。第1のOCT画像データは、被検眼の偏光特性を示す画像データであってもよい。また、第1のOCT画像データは、眼科用OCT装置から出力されるOCT信号に基づいて取得された画像データであってもよい。
第1のOCT画像データを取得するための眼科用OCT装置としては、例えば、PS−OCT装置であってもよい。なお、PS−OCT装置としては、被検眼に照射された測定光と参照光によるOCT信号であり互いに直交する偏光成分を持つ複数のOCT信号を取得するためのPS−OCT光学系を備える構成であってもよい。
第1のOCT画像データとしては、偏光特性を示すOCTデータ(以下、PSOCTデータ)が異なる位置に関して並べられたBスキャンPSOCT画像データであってもよい。また、第1のOCT画像データとしては、深さ方向に直交する方向に関する二次元範囲においてPSOCTデータが並べられた3次元PS画像データであってもよい。
第1のOCT画像データとしては、3次元PS画像データに基づく正面PS画像データ(エンフェイスPS画像データ)であってもよく、例えば、3次元PS画像データの深さ方向全体に基づく正面PS画像データであってもよいし、3次元PS画像データの深さ方向の一部に基づく正面PS画像データであってもよい。演算手法としては、深さ方向における輝度値の積算処理であってもよいし、他の手法(例えば、ヒストグラム演算、最大値抽出等)であってもよい。
解析処理部は、例えば、第1のOCT画像データとして眼底領域の偏光特性を示す画像データを処理して眼底領域に関する第1の解析結果を取得してもよい。眼底領域としては、例えば、篩状板領域であってもよいし、篩状板を含む乳頭部領域であってもよいし、黄斑領域、Rahe gapとRahe gap周辺の少なくともいずれかの領域であってもよい。もちろん眼底領域としては、これらの領域に限定されてない。
この場合、第1の解析結果としては、偏光特性に関する解析結果であってもよく、例えば、眼底領域の複屈折性に関する情報(複屈折情報)、眼底領域の偏光非一様性(DOPU)情報、眼底領域の偏光軸回転(Axis-Orientation)情報、の少なくともいずれかであってもよい。なお、これらの情報の算出方法については、当業者に周知の技術を採用できるので説明を省略する。また、これに限定されず、第1の解析結果は、眼底領域の偏光特性を示す画像データに基づいて得られる眼底領域の形態に関する解析結果であってもよく、眼底領域の位置情報、眼底領域の少なくとも一つの層の厚み情報の少なくともいずれかであってもよい。また、第1の解析結果は、眼底領域の密度情報であってもよく、例えば、神経線維層の密度情報であってもよい。
解析処理部は、例えば、第1の解析結果として眼底領域の動径方向と円周方向の少なくともいずれかに関する解析パラメータを得てもよい。なお、この場合、眼底領域上に設定された基準位置を中心とする動径方向と円周方向の少なくともいずれかに関する解析パラメータが得られてもよい。なお、異なる動径方向に関して解析パラメータが取得されてもよく、少なくとも上下左右の4方向に関して解析パラメータが取得されてもよい。この場合、異なる円周方向に関して解析パラメータが取得されてもよい。
なお、眼底領域の複屈折情報としては、例えば、動径方向における複屈折性の変化であってもよく、変化量、変化率、又は局所的な変化における曲率であってもよい。また、眼底領域の位置情報としては、眼底領域の形状情報であってもよく、例えば、動径方向における眼底領域の形状変化であってもよく、眼底領域の傾き、形状変化量、形状変化率、又は局所的な変化における曲率であってもよい。形状変化は、例えば、眼底領域の深さ方向の位置変化であってもよい。この場合、位置情報は、絶対な位置情報として算出されてもよいし、相対的な位置情報として算出されてもよい。
解析処理部は、第1の解析結果として眼底領域の等方性に関する解析結果を取得してもよい。この場合、解析処理部は、例えば、眼底領域に関する解析パラメータを取得し、取得された解析パラメータに基づいて眼底領域の等方性(不等方性)を求めてもよい。等方性を求めるベースとなる解析パラメータとしては、眼底領域に関する解析パラメータであってもよい。この場合、解析パラメータは、動径方向と円周方向の少なくともいずれかに関する解析パラメータの変化を示す変化情報として得られてもよい。
なお、眼底領域上の複数の領域に関する解析パラメータが動径方向と円周方向の少なくともいずれかに関して比較されることで、等方性が求められてもよい。なお、複数の領域としては、眼底領域上に設定された基準位置を中心として設定されてもよい。
なお、上記解析は、眼底領域として篩状板領域が設定され、篩状板を解析する場合に特に有利である。篩状板の解析は、被検眼の緑内障診断において重要な部位であり、篩状板領域に対して上記解析が行われることで、緑内障診断のための信頼性の高い結果が得られる。
なお、篩状板領域に関して相対的な位置情報を得る場合、開口部と篩状板との間の動径方向における距離変化であってもよいし、開口部と篩状板との間の距離に関する動径方向での変化率であってもよいし、当該変化率の局所的な曲率であってもよい。
解析処理部は、例えば、第1の解析結果として眼底領域の偏光解消度を取得してもよい。眼底領域としては、例えば、強膜の偏光解消度を得てもよく、乳頭部周辺における強膜の偏光解消度が得られてもよい。また、眼底領域としては、眼底のRahe gap周辺における偏光解消度が得られてもよい。
<第2の解析結果の取得>
解析処理部は、例えば、眼科用OCT装置によって取得され第2のOCTデータを処理して第2の解析結果を取得してもよい。第2のOCTデータは、第1のOCT画像データとは異なる画像データであってもよい。第2のOCT画像データは、眼科用OCT装置から出力されるOCT信号に基づいて取得された画像データであってもよい。
第2のOCT画像データを取得するための眼科用OCT装置としては、例えば、第1のOCT画像データを取得するための眼科用OCT装置と同一の眼科用OCT装置(例えば、PSOCT装置)であってもよい。この場合、第2のOCTデータは、第1のOCT画像データを得る際に取得された第2のOCTデータ(例えば、第1のOCT画像データの基礎となるOCT画像データ)であってもよいし、別タイミングで取得された第2のOCTデータであってもよい。
また、第2のOCT画像データを取得する眼科用OCT装置としては、第1のOCT画像データを取得するための眼科用OCT装置とは別の眼科用OCT装置であってもよい。この場合、眼科用OCT装置は、被検眼に照射された測定光と参照光によるOCT信号を取得するためのOCT光学系を備える眼科用OCT装置であってもよい。
第2のOCT画像データとしては、PSOCTデータとは異なる第2のOCTデータが異なる位置に関して並べられたBスキャン第2OCT画像データであってもよい。また、第2のOCT画像データとしては、深さ方向に直交する方向に関する二次元範囲において第2のOCTデータが並べられた3次元第2OCT画像データであってもよい。
第2のOCT画像データとしては、3次元OCT画像データに基づく正面第2OCT画像データ(エンフェイス第2OCT画像データ)であってもよく、例えば、3次元第2OCT画像データの深さ方向全体に基づく正面第2OCT画像データであってもよいし、3次元第2OCT画像データの深さ方向の一部に基づく正面第2OCT画像データであってもよい。演算手法としては、深さ方向における輝度値の積算処理であってもよいし、他の手法(例えば、ヒストグラム演算、最大値抽出等)であってもよい。
第2のOCT画像データとしては、例えば、被検眼の反射強度特性を示すOCT画像データ、被検眼のOCTアンジオ画像データ(例えば、OCTモーションコントラスト画像データ)、被検眼のドップラー特性を示すドップラーOCT画像データであってもよい。
OCTアンジオ画像データは、例えば、同一位置に関して時間的に異なる少なくとも2つのOCT信号が処理されることによって、取得されてもよい。OCTアンジオ画像データは、被検眼の血管領域を画像化したOCT画像データであってもよい。この場合、血管領域が輝度値として表現された画像データであってもよい。また、ドップラーOCT画像データは、ドップラ―OCTによって取得されてもよい。
解析処理部は、被検眼のOCTアンジオ画像データを処理して第2の解析結果を取得してもよい。この場合、第2の解析結果として被検眼の血管領域に関する解析パラメータが取得されてもよい。解析パラメータとしては、血管像の強度、血管密度(例えば、3次元密度、特定の層の血管密度)であってもよい。その他、血管面積、血管体積、血管径、血管蛇行度等が、解析パラメータとして取得されてもよい。
なお、OCTアンジオ画像データに基づく第2の解析結果としては、眼底の強膜に関する解析結果であってもよく、例えば、乳頭部周辺における強膜に関する解析結果が得られてもよい。
<統合解析結果の取得>
解析処理部は、例えば、第1の解析結果と第2の解析結果を統合処理することによって統合解析結果を取得してもよい。統合解析結果として、例えば、解析パラメータ、各領域(セクション)での解析パラメータの比較結果、解析マップ、解析チャートが取得されてもよい。なお、統合解析結果は、表示部、プリンタ、外部サーバーの少なくともいずれかに出力されてもよい。
この場合、統合解析結果としては、例えば、第1のOCT画像データに基づく第1の解析パラメータと第2のOCT画像データに基づく第2の解析パラメータとを統合した統合解析パラメータ(例えば、第1の解析パラメータと第2の解析パラメータの代表値)であってもよい。
また、統合解析結果としては、例えば、第1のOCT画像データに基づく第1の解析マップと第2のOCT画像データに基づく第2の解析マップとを統合した統合解析マップ(例えば、各マップの各位置における解析パラメータの代表値)であってもよい。
また、統合解析結果としては、例えば、第1のOCT画像データに基づく第1の解析チャートと第2のOCT画像データに基づく第2の解析チャートとを統合した統合解析チャート(例えば、各解析チャートのセクションでの解析パラメータの代表値)であってもよい。この場合、統合解析チャートにおける各セクションでの解析パラメータを、動径方向と円周方向の少なくともいずれかに関して比較し、大きな変化が検出されたセクション間の境界を強調表示するようにしてもよい。
なお、統合解析結果の取得において、代表値を求める場合、第1の解析結果と第2の解析結果との重み付けの係数が異なってもいてもよいし、同じ係数であってもよい。
上記のようにして、第1のOCT画像データに基づく第1の解析結果と、第2のOCT画像データに基づく第2の解析結果を統合した統合解析結果を得ることで、信頼性の高い解析結果を得ることができる。結果として、検者は、統合解析結果を用いて良好な診断を行うことができる。
なお、統合解析は、検出が比較的に難しい篩状板領域の解析において特に有利である。篩状板の解析は、被検眼の緑内障診断において重要な部位であり、篩状板領域に対し統合解析が行われることで、緑内障診断のための信頼性の高い結果が得られる。
なお、上記説明において、解析マップは、例えば、各位置での解析パラメータの二次元的な分布を示す解析マップであってもよい。解析チャートとしては、例えば、複数の領域(セクション)に応じて解析パラメータの代表値を示す解析チャートとして表現されてもよい。
解析処理部は、例えば、第1の解析結果と第2の解析結果として互いに共通する解析パラメータを取得してもよい。共通する解析パラメータとしては、例えば、眼底領域の位置情報であってもよい。
なお、統合解析に際し、解析処理部は、例えば、第1のOCT画像データを処理して第1の解析結果として眼底領域の位置情報を取得し、第2のOCT画像データを処理して第2の解析結果として、第1の解析結果を得た眼底領域と同一の眼底領域の位置情報を取得てもよい。この場合、解析処理部は、例えば、第1のOCT画像データに基づく位置情報と、第2のOCT画像データに基づく位置情報とを統合処理することによって統合解析結果を得てもよい。同一の眼底領域としては、例えば、篩状板領域であってもよいし、篩状板を含む乳頭部領域であってもよいし、黄斑領域であってもよい。もちろん眼底領域としては、これらの領域に限定されてない。
解析処理部は、例えば、第1の解析結果と第2の解析結果の一致度に基づいて統合解析結果を得てもよい。この場合、例えば、第1の解析結果と第2の解析結果の一致度としては、第1の解析結果を複数の領域に関して取得したときの異なる領域間での相対的な比較結果(例えば、差分、比率)と、第2の解析結果を複数の領域に関して取得したときの異なる領域間での相対的な比較結果(例えば、差分、比率)と、の間の一致度が求められてもよい。この場合、一致度が高いほど、信頼性の高い結果として扱われてもよい。
例えば、動径方向に関して相対的な比較結果が取得されてもよいし、円周方向に関して相対的な比較結果が取得されてもよい。また、相対的な比較結果に限定されず、各解析結果の絶対値の大小に関する一致度が求められてもよい。
なお、統合解析は、第1の解析結果に関して行われてもよい。解析処理部は、例えば、第1の解析結果として眼底の篩状板の複屈折性及び強膜の偏光解消度を取得し、篩状板の複屈折性に関する第1の解析結果と強膜の偏光解消度に関する第1の解析結果を統合処理することによって第2の統合解析結果を得てもよい。これによって、篩状板と強膜を統合した解析が可能となり、信頼性の高い結果が得られる。
なお、解析処理部は、例えば、第1の解析結果と第2の解析結果を同時に表示部に表示してもよい。この場合、第1の解析結果と第2の解析結果の表示形態は、同一の表示形態であってもよいし、異なる表示形態であってもよい。各解析結果の表示形態としては、例えば、解析パラメータ、各領域(セクション)での解析パラメータの比較結果、解析マップ、解析チャートであってもよい。
<篩状板解析における基準位置の設定>
解析処理部は、例えば、第1のOCT画像データと第2のOCT画像データの少なくともいずれかを処理して眼底の乳頭部の開口部の重心を求めてもよい。解析処理部は、例えば、篩状板領域における解析パラメータの変化を、重心を中心として求めてもよい。これによって、篩状板領域の解析における基準位置を規定できる。
篩状板領域上に設定された基準位置としては、開口部の重心であってもよい。解析パラメータの変化は、例えば、重心を中心とする動径方向と周方向の少なくともいずれかに関して求められてもよい。もちろん、これに限定されず、他の位置が基準位置として設定されてもよい。
<分割領域に関する代表値の取得>
解析処理部は、例えば、第1の解析結果及び第2の解析結果に関してそれぞれ眼底領域上に設定された基準位置を中心とする少なくとも4つの分割領域に関する解析パラメータの代表値を取得してもよい。解析処理部は、例えば、分割領域において取得された第1の解析結果及び第2の解析結果に関する代表値に基づいて統合解析結果を得てもよい。この場合、統合解析結果としては、眼底領域上に設定された基準位置を中心とする少なくとも4つの分割領域に関してそれぞれ第1の解析結果(例えば、第1の解析パラメータ)と第2の解析結果(例えば、第2の解析パラメータ)とを統合した統合解析結果(例えば、統合解析パラメータ)が取得されてもよい。
この場合、代表値とは、例えば、基準位置から等距離の円内ないし二つの円に挟まれた領域における平均値、メディアン、分散値、最大値、最小値、PV値のいずれかであってもよい。
この場合、解析処理部は、例えば、少なくとも4つの領域における解析パラメータの代表値を複数算出し、複数の代表値同士で周方向に関する変化パターンが一致しているかに応じて信頼性に関する解析パラメータ(例えば、解析値)を増減してもよい。
この場合、解析処理部は、例えば、得られた篩状板に関する解析パラメータが、多項式にてフィットして解析してもよい。
上記の少なくとも4つの分割領域としては、少なくともNasal、Temporal、Superior、Inferiorの4つの領域であってもよい。この場合、少なくともNasal、Temporalの領域とSuperior、Inferiorの領域では、フィッティングの関数系を異ならせてもよい。また、フィッティングの関数系は、Nasal、Temporalの領域では動径方向に極値を持たず、Superior、Inferiorの領域では動径方向に極値を持っていてもよい。
また、分割領域に関する解析パラメータの代表値は、動径方向に関して比較されてもよいし、円周方向に関して比較されてもよい。比較手法としては、例えば、代表値間の差分、比率であってもよい。
なお、眼底領域としては、例えば、篩状板領域であってもよいし、篩状板を含む乳頭部領域であってもよいし、黄斑領域であってもよい。もちろん眼底領域としては、これらの領域に限定されてない。
<PS-OCTを用いたRahe gapの解析>
解析処理部は、例えば、例えば、第1のOCT画像データとしてRahe gap周辺の偏光特性を示す画像データを処理してRahe gap周辺に関する第1の解析結果を取得してもよい。なお、Rahe gapとは、視神経乳頭から黄斑部に向けて結ばれる直線の延長の近傍に形成される部分(黄斑部よりも耳側)であり、神経線維層の上下方向の境界ともいえる。第1の解析結果は、解析パラメータ、各領域(セクション)での解析パラメータの比較結果、解析マップ、解析チャートが取得されてもよく、これらが出力されてもよい。この場合、Rahe gapを境界とする解釈結果が出力されてもよい。
この場合、例えば、解析処理部は、第1の解析結果として、Rahe gap周辺の偏光特性に関する解析結果を取得してもよい。偏光特性としては、前述したように、複屈折情報、偏光非一様性(DOPU)情報、偏光軸回転情報の少なくともいずれかであってもよい。解析処理部は、第1の解析結果として、Rahe gap周辺での視神経線維層の密度情報であってもよい。
例えば、解析処理部は、Rahe gapを境界として、Rahe gapよりも上側の解析結果と、Rahe gapよりも下側の解析結果とを取得してもよい。さらに、解析処理部は、Rahe gapを境界として、各解析結果を比較処理してもよい。比較処理としては、差分、比率を求めてもよいし、対称性、一致度を求めるようにしてもよい。
例えば、Rahe gapよりも上側の偏光軸回転情報と、Rahe gapよりも下側の偏光軸回転情報の一致度を求めてもよい。この場合、緑内障の早期においては、被検眼眼底の変化が非対称に進行すると言われている。そこで、偏光軸回転情報の一致度を求めることで、眼底の微小な変化を検出可能であり、緑内障の進行を早期に検出できる。例えば、偏光軸の向きが大きく異なった場合、緑内障が早期進行していると判断可能である。
なお、解析処理部は、例えば、例えば、第2のOCT画像データとしてRahe gap周辺の画像データを処理してRahe gap周辺に関する第2の解析結果を取得してもよい。さらに、解析処理部は、例えば、Rahe gap周辺に関する第1の解析結果と第2の解析結果を統合処理することによって統合解析結果を取得してもよい。
なお、解析処理部は、Rahe gapでの解析結果と、乳頭周辺の形状情報(構造情報)と、隅角情報とを統合して、緑内障の程度を判定してもよい。
なお、解析処理部は、例えば、例えば、第1のOCT画像データを解析処理してRahe gapを検出し、Rahe gapに関する第1の解析結果を取得してもよい。第1の解析結果としては、例えば、Rahe gapの偏光特性に関する解析結果、Rahe gapの形状に関する解析結果であってもよい。
なお、上記実施形態に示した各手法につき、独立して実施されてもよいし、連動して実施されてもよい。例えば、<第1の解析結果の取得>、<PS-OCTを用いたRahe gapの解析>に示した少なくとも一つの手法につき、<第2の解析結果の取得>、<統合解析結果の取得>とは独立して実施可能であり、<第1の解析結果の取得>、<PS-OCTを用いたRahe gapの解析>に示した他の手法とも独立して実施可能である。
<実施例>
以下、本実施例の眼科OCT解析装置について図面を用いて説明する。図1に示す眼科OCT解析装置(以下、OCT解析装置)10は、OCT装置1によって取得された画像データ(例えば、偏光特性を示す第1のOCT画像データ、偏光特性とは異なる特性を示す第2のOCT画像データ)を解析処理して被検眼の解析結果を得る。
OCT解析装置1は、例えば、制御部70を備える。制御部70は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)71、ROM72、RAM73、等で実現される。ROM72には、例えば、OCT装置1によって取得された画像データを処理するための解析処理プログラム、OCT装置1の動作を制御して画像データ(例えば、偏光特性を示す第1のOCT画像データ、偏光特性とは異なる特性を示す第2のOCT画像データ)を得るためのプログラム、初期値等が記憶される。RAM73は、例えば、各種情報を一時的に記憶する。
制御部70には、図1に示すように、例えば、記憶部(例えば、不揮発性メモリ)74、操作部76、および表示部75等が電気的に接続されている。記憶部74は、例えば、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、着脱可能なUSBメモリ等を記憶部74として使用することができる。
操作部76には、検者による各種操作指示が入力される。操作部76は、入力された操作指示に応じた信号をCPU71に出力する。操作部76には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかのユーザーインターフェイスを用いればよい。
表示部75は、装置1の本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。例えば、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)のディスプレイを用いてもよい。表示部75は、例えば、OCT装置1によって取得された画像データ、又は解析結果等を表示する。
なお、本実施例のOCT解析装置10には、例えば、OCT装置1が接続されている。なお、OCT解析装置10は、例えば、OCT装置1と同一の筐体に収納された一体的な構成であってもよいし、別々の構成であってもよい。制御部70は、接続されたOCT装置1から画像データを取得してもよい。制御部70は、OCT装置1によって取得された画像データを記憶媒体を介して取得してもよい。
図2は、OCT装置1の一例を示す図である。被検物は、眼の眼底である。実施例の装置は、干渉信号における互いに直交する偏光成分を異なる検出器にて検出可能な構成を有する。
光コヒーレンストモグラフィー(OCT)装置1は、波長掃引式OCT(SS−OCTHwepTHource-OCT)を基本的構成とし、波長可変光源102、干渉光学系(OCT光学系)100、演算制御器(演算制御部)70と、を含む。その他、OCT装置1には、メモリ72、モニタ75、図示無き正面像観察系及び固視標投影系が設けられる。演算制御器(以下、制御器(制御部))70は、波長可変光源102、干渉光学系100、メモリ72、モニタ75に接続されている。
OCT光学系100には、SS−OCT方式が用いられ、光源102として出射波長を時間的に高速で変化させる波長可変光源(波長走査型光源)が用いられる。光源102は、例えば、レーザ媒体、共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたフィルタが挙げられる。
本実施例では、瞬間輝線幅が短く、共振器長が短い光源としてAXSUN社のTUNABLE LASER が用いられる(例えば、λc=1060nm、Δλ=110nm、δλ=0.055nm、共振器長~14mm)。このような波長可変光源は、例えば、米国公開2009/0059971号に記載されている。
カップラー(スプリッタ)104は、光分割器として用いられ、光源102から出射された光を測定光(測定光)と参照光に分割する。サーキュレータ103はカップラー104からの光を光ファイバー105に導光し、光ファイバー105からの光を光ファイバー119に導光する。なお、サーキュレータ103は、カップラーであってもよい。
OCT光学系100は、測定光学系106によって測定光を眼Eの眼底Efに導く。OCT光学系100は、参照光学系110に参照光を導く。OCT光学系100は、眼底Efによって反射された測定光と参照光との干渉、によって取得される干渉信号光を検出器(受光素子)120に受光させる。
測定光学系106には、光遅延路300、光ファイバー105、光スキャナ108、及び対物レンズ系が順次設けられている。
光遅延路300は、基準光路300aと迂回光路300bを有し、互いに光路長差を持つ少なくとも2つの光を生成させるために設けられている。例えば、測定光路に光遅延路300が配置された場合、測定光は、光遅延路300に形成された基準光路300aと迂回光路300bによって、互いに光路長差を持つ少なくとも2つの測定光として形成される。迂回光路300bは、基準光路300aより光路長が長いので、迂回光路300bを通過する測定光は、基準光路を通過する測定光に対し光学的遅延(光路長差)が生じる。このようにして、光路長差を持つ複数の測定光が被検物の同一位置に照射される。
光遅延路300は、例えば、第1偏光ビームスプリッタ302、第1光反射部材304、第2光反射部材306、第2偏光ビームスプリッタ308を備え、測定光を2つの光路に分割し、一方の測定光に対して他方の測定光の光路長を遅延させる。第1偏光ビームスプリッタ302は、光源102からの測定光を基準光路300a(第1測定光路)と迂回光路300b(第2測定光路)に分割する。第2偏光ビームスプリッタ308は、基準光路300aと迂回光路300bを合成する(図2参照)。
第1光反射部材304、第2反射部材306として、例えば、全反射ミラー、プリズムなどの光学部材が用いられる。光遅延路300を形成する光学部材は、図2のように互いに離れた光学配置であってもよいし、プリズム等により一体化された光学配置であってもよい。
第1偏光ビームスプリッタ302は、光源102からの光を垂直偏光成分と水平偏光成分に分割し、一方の偏光成分の光を透過させ、他方の偏光成分の光を反射する特性を持つ。第1光反射部材304、第2反射部材306は、第1偏光ビームスプリッタ302によって分割された光の一方を反射し、光結合部材308に戻す。第2偏光ビームスプリッタ308は、垂直偏光と水平偏光に分割された光を結合させる特性を持つ。第2偏光ビームスプリッタ308によって結合された後、結果的に、偏光成分が互いに直交する2つの測定光がそれぞれ被検眼に照射される(光ファイバー105等の影響により両者の偏光成分は、変更されるかもしれないが、偏光成分が互いに直交するという関係は変わらない)。
上記のようにして光遅延路300は、偏光成分が互いに直交すると共に光路長差を持つ2つの測定光を生成する。2つの測定光は、サーキュレータ103、光ファイバー105を介して光スキャナ108に向かう。2つの測定光は、光スキャナ108によって反射方向が変えられる。光スキャナ108によって偏向された光は、対物レンズ系によって平行ビームとなって眼Eに入射し、眼底Ef上に入射される。2つの測定光は、眼底Ef上の同一位置に照射される。
光スキャナ108は、眼底Ef上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させる。光スキャナ108は、瞳孔と略共役な位置に配置される。光スキャナ108は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構によって任意に調整される。
光源102から出射された光束は、その反射(進行)方向が変化され、眼底上で任意の方向に走査される。光スキャナ108としては、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられる。
制御器70は、光スキャナ108の駆動を制御することにより、眼底Efの深さ方向に対して垂直な方向(横断方向)に測定光を走査させる。各測定光の眼底Efからの後方散乱光(反射光)は、対物レンズ系、光スキャナ108、光ファイバー105、サーキュレータ103、光ファイバー119を経て、ビームスプリッタ350に達する。そして、後方散乱光は、ビームスプリッタ350にて参照光と合波されて干渉する。
参照光学系110は、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系110は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラー104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。参照光学系110は、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー)によって形成され、カップラー104からの光を反射光学系により反射することにより再度カップラー104に戻し、検出器120に導いてもよい。
本装置は、測定光と参照光との光路長差を調整するためにOCT光学系100に配置された光学部材の少なくとも一部を光軸方向に移動させる。例えば、参照光学系110は、参照光路中の光学部材を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を調整する構成を有する。光路長差を変更するための構成は、測定光路中に配置されてもよい。測定光路中に配置された光学部材(例えば、光ファイバーの端部)が光軸方向に移動される。
ビームスプリッタ350は、干渉信号光を2つに分割する。ビームスプリッタ350によって分割された光路の一方には、偏光ビームスプリッタ360が配置され、他方には、偏光ビームスプリッタ365が配置されている。偏光ビームスプリッタ360、365は、入射された干渉信号光を、互いに直交する偏光成分(垂直偏光成分、水平偏光成分)に分割する。
検出器120は、垂直偏光検出器120Vと水平偏光検出器120Hを持ち、スペクトル信号における垂直偏光成分と水平偏光成分を別々に検出可能な構成を持つ。
垂直偏光検出器120Vと水平偏光検出器120Hは、それぞれ、第1受光素子(120Va、120Ha)と第2受光素子(120Vb、120Hb)からなる平衡検出器(Balanced Detector)にて構成されるのが有利である。検出器120(平衡検出器)は、第1受光素子からの干渉信号と第2受光素子からの干渉信号との差分を得て、干渉信号に含まれる不要なノイズを削減する。各受光素子は、受光部が一つのみからなるポイントセンサであって、例えば、アバランシェ・フォト・ダイオードが用いられる。
垂直偏光検出器120Vは、偏光ビームスプリッタ360、365によって分割された垂直偏光成分を,第1受光素子120Va、第2受光素子120Vbにより平衡検出を行う。水平偏光検出器120Hは、偏光ビームスプリッタ360、365によって分割された水平偏光成分を,第1受光素子120Ha、第2受光素子120Hbにより平衡検出を行う。
垂直偏光検出器120Vと水平偏光検出器120Hによって受光される干渉信号光は、それぞれ、偏光成分が互いに直交すると共に光路長差を持つ2つの測定光に対応する干渉信号光を含んでいる。
光源102により出射波長が変化されると、これに対応する干渉信号光が検出器120に受光され、結果的に、スペクトル信号として検出器120によって検出される。制御器70は、光源102からのトリガ信号を得て、取得するスペクトル信号と光スキャナ108を制御する。
垂直偏光検出器120Vと水平偏光検出器120Hによって検出される各スペクトル信号は、被検物に照射された2つの測定光のうち、垂直偏光成分を持つ測定光に基づいて形成された第1スペクトル信号と、水平偏光成分を持つ測定光に基づいて形成された第2スペクトル信号と、を含む。第1スペクトル信号と第2スペクトル信号は、光路長差を持つため、スペクトルによって形成される干渉縞の粗密が異なる。
制御器70は、偏光成分が異なる2つのスペクトル信号を処理して、互いに直交する偏光成分に関する深さ情報DV、DHを得る。
制御器70は、垂直偏光検出器120Vによって検出された垂直偏光成分を持つスペクトル信号を処理して垂直深さ情報DVを得る。垂直深さ情報DVは、第1スペクトル信号に対応する第1垂直深さ情報DV1と、第2スペクトル信号に対応する第2垂直深さ情報DV2を含む。第1垂直深さ情報DV1は、互いに偏光成分が直交する測定光における一方の測定光に基づいて形成された深さ情報であり、第2垂直深さ情報DV2は、互いに偏光成分が直交する測定光における他方の測定光に基づいて形成された深さ情報である。
制御器70は、水平偏光検出器120Hによって検出された水平偏光成分を持つスペクトル信号を処理して水平深さ情報DHを得る。水平深さ情報DHは、第1スペクトル信号に対応する第1水平深さ情報DH1と、第2スペクトル信号に対応する第2水平深さ情報DH2を含む。第1水平深さ情報DH1は、互いに偏光成分が直交する測定光における一方の測定光に基づいて形成された深さ情報であり、第2水平深さ情報DH2は、互いに偏光成分が直交する測定光における他方の測定光に基づいて形成された深さ情報である。
<断層画像の取得>
制御器70は、光スキャナ108の駆動を制御し、眼底Ef上で測定光を横断方向に走査させる。制御器70は、各走査位置での深さ情報を順次並べることにより眼底断層画像を形成させる。
図3A、図3Bは、多重スペクトル信号に基づいて取得された断層画像データを示す例であり、図3Aは、垂直偏光成分に関する断層画像データであり、図3Bは、水平偏光成分に関する断層画像データである。なお、フーリエ解析によって取得された断層画像データには、実像とミラーイメージ(虚像)が含まれるが、図3A、図3Bは、実像のみを抽出した画像である。
制御器70は、互いに直交する偏光成分に関する深さ情報DV、DHに関してそれぞれ、走査方向に関して並べることにより互いに直交する偏光成分に関する断層画像データTV、THを得る。断層画像データTV、THは、深さ方向に分離された眼底Efの複数の断層像を含む。なお、断層画像データは、各深さ情報における実虚成分の絶対値を求めることにより形成される。各断層像は、眼底Ef上の同一の走査位置に関して取得された断層像である。
断層画像データTVは、第1垂直深さ情報DV1に基づく第1垂直断層像TV1、第2垂直深さ情報DV2に基づく第2垂直断層像TV2を含む。断層画像データTHは、第1水平深さ情報DH1に基づく第1水平断層像TH1、第2水平深さ情報DH2に基づく第2水平断層像TH2を含む。
制御器70は、上記のように取得された断層画像データTV、THから第1垂直断層像TV1、第2垂直断層像TV2、第1水平断層像TH1、第2水平断層像TH2のいずれかを抽出し、モニタ75の画面上に断層像を表示する。制御器70は、断層画像データTV、THを連続的に取得し、動画の断層像を表示するようにしてもよい。
<偏光検出>
制御器70は、垂直深さ情報DVと水平深さ情報DHを用いて眼底Efの複屈折特性を求める。スペクトル信号をフーリエ解析した後の各深さ情報における実部と虚部の情報が用いられる。
制御器70は、垂直深さ情報DVから第1垂直深さ情報DV1を得ると共に、水平深さ情報DHから第1水平深さ情報DH1を得る。制御器70は、偏光成分が互いに直交する第1垂直深さ情報DV1と第1水平深さ情報DH1に基づいて第1の偏光状態を得る。
制御器70は、垂直深さ情報DVから第2垂直深さ情報DV2を得ると共に、水平深さ情報DHから第2水平深さ情報DH2を得る。制御器70は、偏光成分が互いに直交する第2垂直深さ情報DV2と第2水平深さ情報DH2に基づいて第2の偏光状態を得る。
制御器70は、第1の偏光状態と第2の偏光状態に基づいて、眼底表面を基準として眼底Efのある位置における複屈折特性を得る。制御部70は、複屈折特性を深さ方向に関して求めることにより、深さ方向に関する眼底Efの複屈折特性分布を示す偏光深さ情報を得る。
制御器70は、各位置での偏光深さ情報を走査方向に関して並べることにより、ある切断面での眼底Efの複屈折分布(例えば、偏光深さ情報画像)を求める。制御部70は、求められた複屈折分布をモニタ75上に表示する。
なお、制御器70は、光スキャナ108の駆動を制御し、眼底Ef上で測定光を二次元的に走査することにより3次元データを得てもよい。制御部70は、各位置における偏光深さ情報を得ることにより、眼底Ef上の二次元的な複屈折分布を示すマップを得る。制御部70は、得られたマップをモニタ75上に表示する。なお、偏光特性を求める具体的手法については、例えば、特開2013−148482号公報を参照されたい。
以下、上記実施形態に示した解析処理の一例について説明する。
PS-OCTデータを得たとする。これは例えば被検眼に照射される2種類の偏光と、被検眼から散乱され戻る際の2つの偏光に相当した4つの3次元OCT断層像である(例えば、前述の第1垂直断層像TV1の3次元断層像、第2垂直断層像TV2の3次元断層像、第1水平断層像TH1の3次元断層像、第2水平断層像TH2の3次元断層像)。これらをジョーンズマトリクスOCT断層像と呼ぶ。なお、ジョーンズマトリクスOCT断層像から強度OCT像への変換処理が行われることによって、強度OCT断層像が取得されてもよい。
4つのジョーンズマトリクスOCT断層像からは、各種の演算によって、例えば強度OCT断層像、偏光非一様性(DOPU)断層像、複屈折(RetardationまたはBirefringence)断層像、偏光軸回転(Axis-Orientation)断層像といった量が求められる。これ以外にも、ミュラーマトリクス変換により、偏光解消(Depolarization)を検出することも可能である。
このようなジョーンズマトリクスOCT断層像の信号解析により、少なくとも篩状板に対し開口を持つ二次元面を同定する。これは次のような方法によればよい。
まず得られたジョーンズマトリクスOCT断層像を、画像処理によってセグメンテーションを行い各層に分離する。その際、上記のジョーンズマトリクスOCT断層像から得られる各種信号分布を援用してもよい。
例えば網膜色素上皮(RPE)は組織によって偏光状態がスクランブルされるので、偏光解消度(Depolarization)または偏光の非一様性(DOPU)などによって特徴的に検出されることが知られている。RPEは信号強度が高いため精度が高く検出できる点で有利である。
例えば、図4のように強度OCT断層像と、DOPU断層像の各点での信号強度を2値化処理によって特定の閾値の上下で分離することで、図5のような断層像を得ることにより、強度OCT断層像上でRPEを層別することができる(図6)。
或いは、OCT以外の装置例えば眼底カメラなどとの相関を重視して、ブルッフ膜の検出によってもよい。眼底カメラでは視神経乳頭周辺のブルッフ膜は境界が明瞭な白色信号として映り、色の境界部分として開口を認識しやすい。すなわち、OCT像で検出された開口部分と眼底カメラで検出された開口部分とが一致するようになり、しかし通常OCT画像では、ブルッフ膜とRPEはいずれも高輝度で表示されるので、強度OCT像からは分離し難い。これを例えば、高輝度領域を強度OCTから閾値処理などによって求め、前記DOPUによってRPEを分離し、残った部分をブルッフ膜として検出するのでも良い。
或いは、後に述べるように、強膜は複屈折性を持つので強膜を検出し他との境界を求めてもよい。通常、隣り合うRPEが明瞭に映るので、強膜を選択的に特定しなくても層別が行えるが、例えば網膜色素変性症の患者においてはRPEが消失している場合もあり、その際は複屈折断層像を用いるとよい。
強度OCT断層像から、公知のセグメンテーション処理手法によって層別する方法でも勿論よい。このような方法は、例えば、特開2016-055122に記載された手法が用いられてもよい。或いは複数枚数の断層像を撮影した場合は、それらに対し統計処理をし、信号の強度分布の統計による層別を行っても良い。すなわち、位置を固定で信号強度のヒストグラムをとると、ノイズの影響で信号はある強度の周りに正規分布をするが、異なる組織ではその強度ないしは正規分布の偏差(分散と言い換えても可)が異なっていれば、ある閾値を設けてこれらを分離することが出来る。勿論、これらの方法に限定されず、例えば上記方法の組合せであってもよい。
このように、少なくとも2つの層が検出できれば、その境界部分として1つの2次元面を定義することができる。そしてそれは、少なくとも網膜神経乳頭周辺には網膜層が存在しないので、篩状板に対し開口を持つことになる。病態によって、特定の層は歪んだり、消失したりすることがあるため、例えば治療前後で変化しないものや、明瞭に検出できるもの、などの基準から、これらは任意に選んでよい。
深さ方向をZ、それと垂直な方向をそれぞれX、Y方向と定め、同定した面の深さZがX、Yに対して如何に変化するかの関数Z=U(X、Y)として、これを表す。このとき、ノイズの影響を除くため、境界が滑らかに繋がるように適宜スムージング処理を行ってもよい。例えば、X、Yそれぞれで相隣り合う両側の画素同士との間で平均を取り、これを中央の画素での値とすることで実現してもよいし、同じ箇所の信号を多数回撮影し、平均化してもよい。これを3次元的に表示すると、例えば図7のようになる。
次に、検出された特定の面は少なくとも篩状板に対し開口しているので、開口部分を滑らかに補間するような仮想面を考え、これを元に基準を定める。このとき、再現性を得るために一意的に形状が決まることが望ましく、これは例えば、開口部分の形状を境界条件とする次のポアッソン方程式
の解として得ることで実現できる。境界条件を決めたときにポアッソン方程式の解が一意であることは、微分方程式の文献(例えば、James Brown and Ruel Churchill, Fourier Series and Boundary Value Problems, 8th Edition (McGraw-Hill Companies, Inc., New York, NY, 2011))などに記載されており、これはUが極大値と極小値を持たない条件と等価である。
そしてこれを求める場合には、開口部分をグリッドに区切り、差分方程式の形で数値的に解く方法が考えられる。すなわち、深さ方向にZ軸を取り、面の表面形状の分布をX、Yの値によってZ=U(X、Y)として記述するものとする。開口部分を一辺がΔsの正方形のグリッドに分割することで、開口内の各点での高さはZi,j=U(Xi、Yj)として指定できる(図8、図9)。差分方程式で記述したポアッソン方程式は、次の形となる。
或いはZi,jについてこれを解いて
としてもよい。
検出した開口部における境界でのZの値を与えると、相隣り合うグリッドでのZの高さに関する条件が順次求まっていくので、これにより点の数ぶんの連立1次方程式が得られる。多変数の連立1次方程式を解く方法は多数知られているが、例えば行列を用いたガウス・ザイデル法や、変分を元に誤差を小さくしていくSOR法などが知られており、これにより各点での形状を決めることができる。勿論、グリッドの切り方もこれに限られることはなく、これ以外の方法によっても良い。例えば、XとYとでグリッドの辺の長さを変えたりしてもよい。
結果として、図10に示すような開口内での補間形状分布が得られる。ただし縦方向のスケールは変更し拡大して描いてある。これは例えば2次元断層像に反映して描けば、図11のような分布となる。
更に開口での重心を求めるには、次の方法によっても良い。すなわち、適当な選び原点O(X、Y)=(0,0)とし、前記グリッド内の全ての点について(Xi、Yi)の平均をとったものをG(Xmean、Ymean)として求める。これが重心Gであり、これを改めて原点と選び直せば、各点の位置は重心を中心にして再定義したものとなる(図12参照)。
例えば固視点を変更できるOCT装置の場合、特定の固視位置に被検眼を誘導して同じ位置で撮影が行えるため、Z軸の方向をOCTのビームの軸方向(Aスキャン方向)と一致しているとして定義してもよいが、例えば上記で求めた補間された面の法線を算出し、X、Y軸とともにZ軸も再定義すれば更によい。例えば上記で検出した原点におけるX、Y方向の傾き
を求め、(-fx、-fy)として求めてもよい。前述の断層像が全てこの軸を含む内にあったとして、この軸を反映して描いたものは図13のようになる。以降は全て、この軸を基準にした座標系で議論を進めることにする。
このような軸Jの取り直しによって画素そのものも影響を受けるため、例えば任意の座標におけるOCT信号値が、軸の取り直し前での二つ以上の画素に部分的に共通部を持ってしまうことが起こりうる。その時も、重なり量に応じた重み付け平均などの処理を求めることで、その点での物理量を近似しうる。
ところで、NFLの周囲でのOCT信号により求めた物理量は、NFL周囲の組織の機械強度とよく相関することが知られている。例えば、非特許文献[http://www.arvo.org/webs/am2016/sectionpdf/GL/Session_143.pdf]などにその記載があり、例えば篩状板に関する複屈折断層像の値はその例である。
篩状板を選択的に検出するために、OCT強度断層像によってセグメンテーションを行っても良いし、上記セグメンテーションの部分で述べたのと同様の方法を用い、複屈折断層像を援用しても良い。これは篩状板が繊維状の組織であるため、比較的大きな複屈折性を持つことによる。複屈折断層像をある閾値で2値化すると図14のような分布が得られる。篩状板以外の領域にも分布してしまうのは、強膜も同様の複屈折性を持つためであるが、強度OCT断層像と合わせ二つの領域の区別は容易に行える(図15)。すなわち、高輝度に検出されるRPEと接触し連続している領域は強膜であるし、前記補間によって求めた面よりも深い位置に、離れて存在しているのが篩状板であるとして区別できる。或いは、先に定義した軸と、高複屈折値の位置の交点を求めそこから検索をスタートし、中空の領域を複数持つ連続した領域として検出してもよい。結果として、図16のような分布が3次元的に求められ、これを篩状板として採用してもよい。
そしてこのように篩状板は元来偏光依存性を持つが、健常眼であればその分布は上記で定めた中心軸に対しほぼ等方的であるのに対し、篩状板が圧迫されるなどにより篩状板に負荷が加わると、この分布には非等方性が現れてくる。負荷によって生じる歪を、前眼部に複屈折断層像を用いることで検出した例には、例えば次の非特許文献[
201610311916231980__________P___________________________APH_5
. 2014 May 1; 5(5): 1391-1402. Yamanari et al.(2014)]があるが、上記による分布も、篩状板が応力を受けることでの歪を可視化したものと考えることができる。
先に定めた軸に対し、動径方向、周方向への分布として複屈折断層像の分布の非等方性を求めることで、上記の非等方性がどのような応力の掛かり方によるものなのかを特定することができる。これは例えば、先に定めた軸に対して複屈折断層像の3次元分布がXi、Yj、ZkにおいてRi,j,k=B(Xi、Yj、Zk) で求められているとすると、円筒座標への変換
によって、各点での複屈折断層像の分布R(r、φ、Zk)を決定することができる。これを、例えば篩状板の軸方向への所定の厚みについて平均化すると、例えば図17のような分布が得られる。各方向と値は1にスケールしてあるとする。ここで分布が滑らかでないのは、測定信号にはノイズが乗るためで、これは偏光を用いたOCTでは特に顕著である。
従って、これを多項式フィットして扱いやすいようにしてもよい。多項式フィットの方法としては、円柱座標系での表示に適したものとしてツェルニケ多項式があり、各次数のツェルニケ多項式と上記分布との積を開口面内で積分することで、重ね合わせの係数を求めるようにしてもよい。例えば36次までなど、高次成分を除いてフィットさせることで、スパイクノイズの影響を小さくすることができる。結果として、図18のような滑らかな分布にすることができる。中心すなわちr=0の近傍は、相対的に少ない画素からの情報となってしまうので、これを除いてフィッティングを行ってもよい。
鳥瞰図によって示したが、図19の如く2次元の等高線プロットによって示してもよい。図19と同じ分布を、白色ほど値が大きく、黒色ほど値が小さくなるようにしている。
上記の例では、物理量として篩状板の複屈折断層像の値としたが、これに限るものではない。例えば乳頭周辺強膜の血管像の3次元強度であってもよいし、その密度分布であってもよい。これは、NFL周辺が圧迫により強膜形状が歪むことで、例えば血管の凝集度が上がったり、血流の通りやすさが変わったり、或いはその結果として、局所的に新生血管が発生したりするためである。
強膜領域を選択的に検出するためには、OCT強度断層像によってセグメンテーションを行っても良いし、上記セグメンテーションの部分で述べたのと同様の方法を用い、複屈折断層像を援用しても良い。先の篩状板の検出で述べた方法により、篩状板を先に検出して、残った領域として検出してもよいし、DOPU断層像によりRPEを選択的に検出し、これと隣接する連続領域として検出してもよい。
強膜領域において、例えば先に定めた軸周りに、特定の半径(1mmなど)内で血管の分布を求めることで、中空円筒様内の領域での血管の分布A(r、φ、Z)が求められる。これを動径方向位置と周方向位置を定めて深さ(Z)方向の総強度を求めることによって、すなわち
を行って、rとφだけの関数としてもよい。ここに、Zmin、Zmaxは強膜信号のある上下限であり、上式は積分で書いているが、実用上これを離散和に直して計算してもよい。また、方向のみが問題である場合には、これを更にr方向にも積分してφだけの関数としてもよい。例えば更に周方向を複数に分割し、図20のようにこの領域に枝分かれした血管1つしかない場合にてこれを計算すれば、この中空円筒様領域を深さ方向に向けて見た時の図21のような分布が得られ、枝分かれ部で血管の密度が高いという計算結果を得ることができる。
血管の同定は、例えば同じ箇所を複数回撮影し、求めた振幅や位相あるいはその両方を考慮してOCT信号同士の差分をとっても良いし、複数回撮影しそのスペックルパターンの統計解析によってもよい。血流がある箇所ではスペックルパターンが異なるので、例えばその分散を調べて閾値処理をすることで、血管のみを同定できる。
強膜領域では、ここに述べた血管の他に、偏光解消度を見ても良い。これは組織が圧迫を受けて繊維構造が乱れることで、偏光がスクランブルされる度合いが大きくなるためと考えることができる。考える領域の定め方、平均の取り方などは上記の血管の場合と同様であるので省略する。
また、物理量としては、篩状板の形状そのものに注目してもよい。負荷が加わると、篩状板が変形して非等方な反りを生じることが知られている。例えば、[Lamina Cribrosa Morphology in Glaucoma KI-HO PARK(2016.ISER)]を参照。
篩状板の表面形状は、先に示したセグメンテーションの方法と同様に検出してもよい。検出後、ノイズの影響を除くためにスムージングを施してもよい。多項式フィットによるものでも勿論よい。特に篩状板は表面に凹凸が多数あるため、反りのようなマクロな変形を問題にするときはフィッティングの効果が大きい。或いは、篩状板の厚みに注目してもよい。篩状板は力が加わることで薄くなる。
このようにして複数の物理量のr、φ依存性を得たが、rが0から最大値まで変化するのに伴って物理量が同じ量だけ変化する場合であっても、rに比例して大きくなるのと、rが小さい時は緩やかな変化で、rが大きくなると急激に大きくなるのとでは応力の掛かり方は異なっていると考えられる。
従って、これら求められた物理量をr方向に微分した、「変化率」に注目してもよい。同様の理由から、応力は局所的に曲率が大きいほど大きいと考えられ、物理量の「変化率」を更にr方向に微分した、変化の「加速度」に注目してもよい。
また更に、上記では平均する操作を用いたが、これに限定されない。極めて大きい振幅のスパイクノイズが発生する場合は、これを除去する目的でメディアンを用いた方がよい。或いは、メディアン操作と平均操作の中間、すなわち最小と最大から数点を除いての平均、といった操作でもよい。
また、例えば上記で多項式フィットした際の、実測とフィッティング形状との間の乖離(分散)に着目するのもよい。特定の方向で分散が大きいということは、そこに特異な性質があるということであって、例えば極めて大きな変化が存在する場合などが考えられる。同様の理由から、最大値と最小値に注目するのもよい。
或いは、方向によって多項式のフィットの良し悪しが異なる場合は、領域を複数のエリアに区切り、フィッティングの関数系を変更してもよい。例えばフーリエ級数展開によって近似してもよいし、その他の関数系、例えばルジャンドル陪多項式などを用いてもよい。
また、例えば血管検出のときなどに、表面の反射成分が乗ってしまい、方向によっては偽信号がバイアスされてしまうことがありうる。これを除く目的で、PV値=(最大値―最小値)に注目するのでも良い。このような相対値とすることで、バイアス同士が相殺し影響を取り除くことができる。或いは、各方向の値から最小値やメディアンなどをオフセットすることで、同様の効果を得ても良い。
例えば早期の緑内障の病変を診断するにあたっては、構造の変化に先んじて機能の変化が生じてしまうため、早期診断が必要とされている。従って、できるだけ多くの情報を、高い確度を持って得ることが重要視される。例えば形状の変化に注目しただけでは変化が微小であった場合にこれを見逃す可能性が高い。例えば強度像の形状に着眼した特許文献[特開2013-153844]はBowing Angleと呼ばれる角度情報に注目したものであるが、一般にはOCTの分解能以上の情報を得ることができない。
一方で偏光OCTを用いて、位相レベルの情報量を多くしたとしても、一般に偏光OCTではノイズの影響を受けやすく、絶対値による診断の精度すなわち確度という観点からは課題が大きい。
これを領域ごとの相対値比較つまりは方向による変化のパターンに注目し比較することで、それぞれの欠点をお互いに相殺し、信頼に足る結果を得ることができる。
以下に、例を用いて説明する。例えば正常眼圧緑内障(NTG)と高眼圧緑内障(HTG)ではNasal方向、Temporal方向、Superior方向、Inferior方向における影響の現れ方が異なることが知られている。例えば篩状板の表面形状を見ると、NTGではSuperior-Inferior方向で陥凹が大きく、Nasal-Temporal方向で陥凹が小さい。HTGではNasal-Temporal方向、Superior-Inferior方向いずれも陥凹が大きい。すなわち、正常眼と、NTG眼、HTG眼を比較すると、図22〜図24に示すような、形態の変化が生じている。尚、スケールは誇張して描いている。
従って、それぞれについて等高線表示すると表面形状は図25〜図27のようになり、それぞれの様態に特徴的な変形のパターン・異方性があることが判る。
ここで、一般に偏光OCTの結果はノイズに弱いが、これは各点ごとに絶対的な値を求めようとした場合であって、場所ごとの相対値を求めるならば比較的正確な結果が得られるという点に着目する。値のバラツキは解の不安定性と言われるもので、値の小さな数値による逆行列演算などを繰り返すことで生じるものだからである。
先に述べた通り、複数の物理量を測定した結果のこのようなパターンに注目することで、より確度の高い結果を得ることができる。例えば、偏光により複屈折断層像を得て、これも同様に動径方向と周方向とで分布を求めたとする。これは応力による歪を反映したものとなるが、ここで任意の物体に機械的な力が働く時、形状変化が急峻に起こった箇所ほど応力が集中していることは周知の事実である。従って、例えば複屈折断層像より図28の複屈折分布を得たとすると、先の篩状板の形状変化を動径方向に2回微分した「局所的な曲率」とのパターンの一致を見ることで、結果がよく説明され、信頼性が増す。
本実施例では、図29に示すNTGの場合の2回微分と比較することで、Superior-Inferior方向で変化が大きく、Nasal-Temporal方向で値が平坦であるというパターンがよく一致することが判る。
従って、先の篩状板表面形状が同じくNTGのものに近ければ、複屈折断層像による結果は補強され、表面形状だけから議論をするよりも高い確度でNTGということができる。一方で、先の篩状板表面形状が正常眼やHTGのものに近いのに、複屈折断層像から同結果を得たとすれば、篩状板表面形状だけからNTGであると判断するのは危険であると判断することが可能である。
上記は形状の局所変化と複屈折断層像について論じたが、もちろんこれに限定されない。圧迫されている箇所は強膜の血流の大小が異なると考えられ、同様にSuperior-Inferior方向で変化が大きく、Nasal-Temporal方向で値が平坦であるというパターンが現れるならば確度は更に高いということになる。
同様に、圧迫により線維走行が乱れることを考え、DOPU断層像によって強膜での偏光のスクランブルの様子を見て、これもSuperior-Inferior方向で変化が大きく、Nasal-Temporal方向で値が平坦であるというパターンが現れるならば確度は更に高いということになる。
このように結果のパターンの一致を次々と見ていくことで、診断の確度を論じることができ、確度を持って正常/病変の診断をすべきなのか、確度が低いため再度撮影を行った方が良いかの判断尺度とすることができる。
なお、両者の結果は完全には一致しない。より定量的に一致度を見るならば、次のようにして類似度の大小を論じても良い。
例えば領域をn=1、2、・・・、Nとし、それぞれの領域での二つの物理量をPn、Qnとすると
なる計算で相関係数は求められる。これは完全に一致している場合を1に規格化してあるため、この一致度をそれぞれの物理量に対して求め、その結果に応じて結果の信頼度に反映してもよい。例えば複数の結果同士Γの積を取る方法が考えられるが、もちろん、相関の度合いによって重み付けを変えても足し合わせるのでもよい。
動径方向の中心は特異な点となりやすいため、これを除いて議論しても良い。また、図は円形の領域において全て信号が得られている(ケラレがない)場合を想定したが、このような状況は稀であり、実際には一部がケラれていたりする場合もある。従って、少なくとも信号が得られている領域の内接円と、中心から所定の割合を除いた中抜け領域(図30)において、一致度を議論するのもよい。
更に、上記は周方向の分割数は一般の場合を議論したが、注目するのはパターン・異方性であるので、これらの物理量を、r=0の軸を中心に、例えばNasal、Temporal、Superior、Inferiorの4領域に分けて、代表値にて取り扱うのもよい。勿論、4領域に限定する必要はないが、4領域程度が扱いやすい。例えばNasal方向への水平断方向をφ=0として、-45°〜45°をNasal領域、45°〜135°をSuperior領域、-45°〜-135°をInferior領域、残りの領域をTemporal領域と定めてもよい。
そして代表値としては、領域内に含まれる全ての値の平均や、メディアン、分散値、最大・最小値、PV値のいずれであってもよい。
更に、前述のように方向によりこれらの物理量の変化の仕方は異なっている。物理量は多項式によるフィッティングを行うのが良いが、ある方向には一致が良いが、別の方向では一致が悪いという状況が生じうる。そのため、フィッティングの度合いが良くなるように、各領域でフィッティングの関数を変えるのもよい。緑内障の場合は、図22〜26のような変化を生じるので、Superior-Inferior方向は極値を持つ関数で、Nasal-Temporal方向は極値を持たない関数でフィッティングするのもよい。
このように、パターンが複数の物理量の間で類似するかどうかを見ることで上記結果が理に適ったものかどうかを論じることができ、診断に役立てることができる。これは強度OCT断層像だけからでは不足した情報量を補い、かつPS-OCTの難点であった確度の低さを克服するものである。
また、篩状板の検出においては再現性が問題であったが、上記によれば3次元像から一意的に定まる面を定義して軸を決定するため、再現性よく上記を行うことができる。
なお、PS−OCT装置としての光学系としては、特開2013−148482号公報に記載された光学系を用いたが、これに限定されず、被検眼の偏光特性を示すOCT画像データを取得可能なPS−OCT装置であれば、これに限定されない。
なお、本実施形態の装置を、以下の方法を実施するために用いてもよい。
(1)偏光を用いた少なくとも2断面からなる3次元眼科用OCTの解析方法であって、OCTの信号から、
篩状板と、
篩状板よりも浅い位置で、少なくとも篩状板に対し開口している2次元面と、
を同定する手段と、
該開口部を補間することで得られる曲面を生成する処理部と、を持ち、
前記処理部は該曲面上の開口部の重心を求める演算処理を行い、眼底における物理量の
前記重心を中心とした動径方向と周方向への変化を解析し表示することを特徴とする。
(2) 物理量は、強膜の血管像の強さないし血管像の3次元密度、または特定層の血管像の密度であることを特徴とする(1)記載の方法
(3) 物理量は、強膜の偏光解消度であることを特徴とする(1)記載の方法。
(4) 物理量は、該曲面から断層像の深さ方向に測った篩状板の表面との距離差ないしその動径方向への変化率、ないし変化の局所曲率であることを特徴とする(1)記載の方法。
(5) 物理量は、篩状板に入射する光線の偏光遅延量差ないしその動径方向への変化率、ないし変化の局所曲率であることを特徴とする(1)記載の方法
(6) 篩状板ないし少なくとも篩状板に対し開口している2次元面の同定が、
強度信号と入射光線の偏光遅延量差の解析によることを特徴とする(1)〜(5)記載の方法
(7) 篩状板ないし少なくとも篩状板に対し開口している2次元面の同定が、強度信号と強膜領域の入射光線の偏光解消度の解析によることを特徴とする(1)〜(5)記載の方法
(8) 前記開口部の補間は、前記開口部を境界として表面形状が極小値ないし極大値を
持たない条件から決定されることを特徴とする(1)〜(7)記載の方法
(9) 前記重心を中心とした少なくとも4つの領域(Nasal、Temporal、Superior、Inferior)に分けて前記4つの領域における物理量の代表値を表示することを特徴とする(1)〜(8)の方法。なお、ここで代表値とは、前記重心から等距離の円内ないし二つの円に挟まれた領域における平均値、メディアン、分散値、最大値、最小値、PV値 のいずれかである。
(10) 前記重心を中心とした少なくとも4つの領域(Nasal、Temporal、Superior、Inferior)に分けて前記4つの領域における物理量の代表値を複数算出し、前記複数の代表値同士で周方向に関する変化パターンが一致しているかに応じて信頼性に関する数値を増減し表示に反映することを特徴とする、(1)〜(9)の方法。
(11) 得られた篩状板に関する物理量を、多項式にてフィットして解析することを特徴とする、(1)〜(10)の方法。
(12) 前記重心を中心とした少なくとも4つの領域(Nasal、Temporal、Superior、Inferior)に分けて解析する際に、少なくともNasal、Temporalの領域とSuperior、Inferiorの領域とではフィッティングの関数系を異なるものとすることを特徴とする、(11)の方法。
(13) 前記フィッティングの関数系は、Nasal、Temporalの領域では動径方向に極値を持たずSuperior、Inferiorの領域では動径方向に極値を持つものを含むことを特徴とする、(12)の方法。
なお、(2)〜(14)に記載された方法は、必ずしも(1)の方法に限定されるものではなく、独立して実施されてもよい。また、重心に関して篩状板上に設定された基準位置であれば、必ずしも上記重心に限定されない。