感染性疾患などの疾患及び病態に対するワクチン接種は、対象を、1つの組成物(プライミング組成物)で免疫化し、後続して異なる組成物(追加免疫組成物)で免疫化する計画を含んでいる。しかしながら、現在の二重ワクチン接種計画は、CD4及びCD8T細胞応答の両方、ならびに多くの疾患及び病態に対する十分な保護を提供する体液性免疫を適切には誘導していない。
対照において、体液性免疫応答及び細胞性免疫応答、CD4及びCD8Tリンパ球免疫応答の両方を含む免疫応答を誘導し、1つ以上の抗原に対する完全な適応免疫応答を提供する、改善された二重免疫化計画のための組成物及び方法が本明細書において提供される。したがって、本明細書に記載される組成物は、ワクチンとして開発され、配合されてもよい。したがって、記載される方法は、体液性免疫応答及び細胞性免疫応答の両方の誘導が、臨床成績を改善するか、または最適な利益のために必要とされる、癌及び感染性疾患などの異なる疾患、障害、ならびに病態を治療し、予防する(すなわち、生物学的、臨床的、及び/または統計的に有意な様式で、発生及び再発の可能性またはリスクを低下させる)ために有用である。
それを必要とする対象に、同時または任意の順序で順次投与される2つの免疫原性組成物が本明細書において提供される。免疫原性組成物のうちの少なくとも1つは、免疫原に対する特異的体液性(すなわち、抗体応答)及び/または特異的CD4T細胞応答(メモリーCD4T細胞応答を含み得る)を誘導し、免疫原性組成物のうちの少なくとも1つは、免疫原に特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)応答を含み得る特異的CD8T細胞応答を誘導する。特定の実施形態において、2つの免疫原性組成物のうちの一方は、特異的体液性及び/または特異的CD4T細胞応答を誘導するのにより有効であってもよく、2つの免疫原性組成物のうちの他方は、特異的CD8T細胞応答を誘導するのにより有効であってもよい。
一方の免疫原性組成物は、対象となる指定抗原に特異的な免疫応答を誘導することができる、少なくとも1つの免疫原を含む。この免疫原性組成物は、免疫原及び指定抗原に特異的な免疫応答の誘導を亢進するか、またはそのために必要とされ得るアジュバントを更に含んでもよい。第2の免疫原性組成物は、免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む。組み換え発現ベクターは、免疫原をコードするヌクレオチド配列に作動的に連結された少なくとも1つの制御配列を更に含み、故に、組み換え発現ベクターは、免疫原の発現を指示することができる。特定の具体的な実施形態において、組み換え発現ベクターは、ベクター粒子(例えば、ウイルスベクター粒子)中に組み込まれる。本明細書に更に記載するように、免疫原は、指定抗原の免疫原性断片であってもよく、全長指定抗原(もしくはその免疫原性バリアント)または1つ以上の免疫原性断片を含むか、あるいは全長指定抗原(もしくはその免疫原性バリアント)を含む融合タンパク質であってもよい。
本明細書において提供される他の特定の実施形態において、第2の免疫原は、いずれかの免疫原性組成物中に含まれる。第2の免疫原は、第1の免疫原が特異的免疫応答を誘導する指定抗原と同一であっても、異なってもよい指定抗原に対する、免疫応答を誘導することができる。別の特定の実施形態において、第1の免疫原は、特異的CD4T細胞免疫応答を誘導し、特異的抗体応答も誘導してもよく、第2の免疫原は、少なくとも1つのCD8T細胞免疫応答を誘導する。特定の具体的な実施形態において、免疫化される対象は、組み換え発現ベクターによる第2の免疫原の発現を介して、第2の免疫原のみで免疫化されることが意図される。したがって、第1の免疫原を含む(アジュバントを更に含み得る)免疫原性組成物は、第2の免疫原を欠き、組み換え発現ベクターは、第1の免疫原をコードし、第2の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む。
本明細書に記載される免疫原性組成物及び方法は、感染性疾患、特に満足の行くワクチンまたは感染後治療が利用可能ではない感染性疾患(例えば、HIV及びHSV−2などのウイルス感染症、ならびにマラリアなどの寄生虫感染症)を予防または治療するために有用であり得る。他の実施形態において、本明細書に記載される免疫原性組成物及び方法は、癌及び悪性腫瘍を治療するため、かつ/またはその発生の可能性を低下させるために使用され得る。
免疫原性組成物、該免疫原性組成物を含む調製物、及び該調製物及び組成物を使用する方法の様々な実施形態を、以下に詳細に記載する。
免疫原性組成物
協調免疫化計画において使用されるとき、特異的な適応免疫応答を誘導するために有用である、異なる免疫原性組成物が本明細書に記載される。一方の免疫原性組成物は、少なくとも1つの免疫原を含み、生理学的に好適な(すなわち、薬学的に許容されるか、または好適な)アジュバントを更に含んでもよい。この第1の免疫原性組成物中に含まれる免疫原は、典型的には単離された免疫原であり、これはその天然環境から単離されたものであっても、組み換え産生されたものであってもよい。参照を容易にするため、第1の免疫原性組成物中に存在する免疫原は、本明細書では単離された/組み換え免疫原と呼ぶ。第2の異なる組成物は、免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む。第2の免疫原性組成物もまた、アジュバントを更に含んでもよい。第1の組成物及び第2の組成物の両方がアジュバントを含む場合、各組成物中に含まれるアジュバントは同一であっても、異なってもよい。
対象への2つの異なる組成物の投与は、少なくとも1つの免疫原に対する、及びそれぞれの対象となる抗原(本明細書では指定抗原とも呼ばれる)に対する特異的免疫応答を誘導する。特異的免疫応答としては、体液性免疫応答(すなわち、特異的抗体応答)ならびに細胞性免疫応答(CD4T細胞応答及びCD8T細胞応答を含む)が挙げられ、各応答は、免疫原に特異的なものであるため、対象となる指定抗原に特異的なものとなる。本明細書で言及される免疫原性調製物は、これらの2つの免疫原性組成物を含み、これらは、本明細書では便宜上、第1の免疫原性組成物及び第2の免疫原性組成物と呼ばれ得る。したがって、一実施形態において、免疫原性調製物は、(a)指定抗原に特異的な免疫応答を誘発することができる少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原を含む、少なくとも1つの免疫原性組成物と、(b)少なくとも1つの免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む、少なくとも1つの第2の免疫原性組成物とを含む。この調製物の免疫原性組成物は、対象に、同時または任意の順序で順次投与されて、免疫原に特異的な免疫応答及びそれぞれの指定抗原に特異的な免疫応答を誘導し得る。免疫原性組成物及びこの組成物の使用のそれぞれは、本明細書に詳細に記載される。
各免疫原性組成物は、少なくとも1つの生理学的に(もしくは薬学的に)許容されるか、または好適な賦形剤を更に含んでもよい。薬学的組成物における使用が当業者に既知である、任意の生理学的もしくは薬学的に好適な賦形剤または担体(すなわち、活性成分の活性と干渉しない無毒性材料)が、本明細書に記載される免疫原性組成物中に用いられ得る。例示的な賦形剤としては、タンパク質の安定性及び統合性を維持する希釈剤及び担体が挙げられる。治療的使用のための賦形剤は周知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21stEd.Mack Pub.Co.,Easton,PA(2005))に記載され、本明細書に詳細に記載される。
免疫原は指定抗原と同一であってもよく、つまり、免疫原は指定抗原の例示的な全長アミノ酸配列を含むか、または該例示的な全長指定抗原と高パーセントの同一性を共有し、指定抗原の機能的特徴(例えば、特異的免疫応答を誘導する能力)を保持する、そのバリアントを含んでもよい。あるいは、免疫原は、指定抗原の免疫原性断片であってもよい。指定抗原のバリアントまたは断片である免疫原は、対象において、統計的、臨床的、及び/または生物学的に有意な様式で、免疫応答(例えば、体液性応答(すなわち、B細胞応答)もしくは細胞媒介応答(すなわち、T細胞応答(細胞傷害性Tリンパ球応答を含む))または体液性応答及び細胞媒介応答の両方を誘導する能力を呈する。対象となる指定抗原ならびにそれらの指定抗原の免疫原性断片及び免疫原性バリアントは、本明細書に詳細に記載される。
少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物に関して、免疫原は、宿主細胞中で組み換え産生され、その後、分子生物学及びタンパク質単離の技術分野において通例実施される方法に従って、宿主細胞から単離された、もしくは宿主細胞培養物から単離された(すなわち、本来の宿主細胞環境から取り除かれた)ポリペプチドまたはペプチドであってもよい。免疫原が、本明細書及び当該技術分野において記載される方法、ならびに当業者が精通している方法に従って組み換え産生されるとき、免疫原は組み換え免疫原と呼ばれ得る。あるいは、免疫原は、例えば、ウイルス、細菌、寄生虫、真菌、または腫瘍細胞などの天然源から単離されても、取り除かれてもよい。1つ以上の免疫原及び抗原を天然源から単離させるための方法は当該技術分野において記載され、また、当該技術分野において通例実施される方法及び技術を使用して、当業者によって容易に経験的に決定され得る。
本明細書に記載するように、第2の免疫原性組成物中に含まれる組み換え発現ベクターは、少なくとも1つの免疫原をコードするヌクレオチド配列(本明細書ではポリヌクレオチド配列とも呼ばれる)を含む。組み換え発現ベクターは、ベクターが免疫原の発現を指示することができるように、コードするヌクレオチド配列に作動的に連結された少なくとも1つの制御配列を更に含む。組み換え発現ベクターによってコードされ、発現される免疫原は指定抗原と同一であってもよく、つまり、免疫原は指定抗原の例示的な全長アミノ酸配列を含むか、または該例示的な全長指定抗原と高パーセントの同一性を共有し、指定抗原の機能的特徴(例えば、特異的免疫応答を誘導する能力)を保持する、そのバリアントを含んでもよい。あるいは、コードされた免疫原は、指定抗原の免疫原性断片であってもよい。指定抗原のバリアントまたは断片である免疫原は、対象において、統計的、臨床的、及び/または生物学的に有意な様式で、免疫応答(例えば、体液性応答(すなわち、B細胞応答)もしくは細胞媒介応答(すなわち、T細胞応答(細胞傷害性Tリンパ球応答を含む))または体液性応答及び細胞媒介応答の両方を誘導する能力を呈する。対象となる指定抗原ならびにそれらの指定抗原の免疫原性断片及び免疫原性バリアントは、本明細書に詳細に記載される。
特定の実施形態において、組み換え発現ベクターは、ベクター粒子(例えば、ウイルスベクター粒子または細胞粒子)中に組み込まれる。組み換え発現ベクターまたはベクターを含むベクター粒子は、粒子が標的細胞に導入される(すなわち、送達される)ことを可能にする様式で構築される。特定の実施形態において、標的細胞は抗原提示細胞である。より具体的な実施形態において、標的細胞は、樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞である。その後、免疫原は標的細胞中で発現され、その免疫原または断片が抗原提示細胞の表面上に提示され、免疫原に特異的な免疫応答、及びそれによりそれぞれの指定抗原に特異的な免疫応答を誘導する。
他の実施形態において、少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原を含む(アジュバントを更に含み得る)免疫原性組成物は、少なくとも1つの追加の免疫原(すなわち、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の免疫原とも換言され得る、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の免疫原))を更に含む。特定の実施形態において、免疫原性組成物は、多価の免疫原性組成物を形成する、2つ以上の単離された/組み換え免疫原(すなわち、少なくとも2つの免疫原)を含み得る。2つ以上の免疫原がアジュバントと組み合わされる例において、免疫原性組成物は、アジュバントとともに別個に配合された各免疫原を含んでもよく、その後、アジュバント化された免疫原が組み合わされて、免疫原性組成物を形成する。あるいは、2つ以上の免疫原が、アジュバントとともに配合されてもよい。特定の具体的な実施形態において、追加の免疫原のうちのそれぞれ(例えば、第2、第3などの免疫原)は、第1の免疫原と同一の指定抗原に対する免疫応答を誘導し得る。他の特定の実施形態において、追加の免疫原のうちのそれぞれ(例えば、第2、第3などの免疫原)は、それぞれ異なる(例えば、第2、第3などの)指定抗原に特異的な免疫応答を誘導し得る。
特定の代替的実施形態において、多価の免疫原性組成物は、少なくとも2つの免疫原を含む細胞可溶化物、細胞小器官、または細胞上清を含み得る。例えば、微生物から取得された免疫原などの、それらの本来の環境から取り除かれた免疫原は、2つ以上の免疫原が免疫原性組成物中に提示されるように、微生物から部分的に単離され得る。同様に、腫瘍細胞から取得された免疫原は、2つ以上の腫瘍関連抗原が免疫原性組成物中に提示されるように、腫瘍細胞から部分的に単離され得る。
組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物に関して、ヌクレオチド配列は、1つよりも多い免疫原、例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の免疫原(すなわち、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の免疫原)をコードし得る。特定の具体的な実施形態において、追加の免疫原のうちのそれぞれ(例えば、第2、第3などの免疫原)は、第1の免疫原と同一の指定抗原に対する免疫応答を誘導し得る。他の特定の実施形態において、追加の免疫原のうちのそれぞれ(例えば、第2、第3などの免疫原)は、それぞれ異なる(例えば、第2、第3などの)指定抗原に特異的な免疫応答を誘導し得る。
特定の実施形態において、少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原を含む一方の免疫原性組成物(第1の免疫原性組成物とも呼ばれる)(この組成物は、アジュバントを更に含み得る)は、免疫原に特異的であるため、指定抗原に特異的である、CD4T細胞応答を誘導することができ、免疫原及び指定抗原に対する体液性応答(すなわち、特異的抗体応答または抗原特異的抗体応答)もまた誘導し得る。免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む、他方の免疫原性組成物(または第2の免疫原性組成物)は、免疫原に特異的なCD8T細胞応答を誘導することができ、故に、指定抗原に特異的なCD8T細胞応答を誘導することができる。本明細書に詳細に記載するように、免疫原は、免疫原に特異的なCD4T細胞応答及びCD8T細胞応答を誘導することができるエピトープ(複数可)を含む、1つ以上の免疫原性領域を有する。
他の特定の実施形態において、免疫原性調製物が提供され、少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原(便宜上、第1の免疫原と呼ばれる)を含む第1の免疫原性組成物は、少なくとも1つの追加の単離された/組み換え免疫原を更に含み得る。他の実施形態において、第2の異なる免疫原性組成物中に含まれる組み換え発現ベクターは、第1の免疫原をコードしてもよく、少なくとも1つの追加の免疫原をコードしてもよい。更なる他の代替的実施形態において、第1の免疫原性組成物は、少なくとも2つの単離された/組み換え免疫原を含み、第2の免疫原性組成物は、第1の免疫原及び少なくとも1つの追加の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを含む。
2つ以上の免疫原に特異的な免疫応答の誘導が所望される特定の実施形態において、少なくとも1つの免疫原が、少なくとも1つの特異的体液性及び/またはCD4T細胞応答を含む免疫応答を誘導することができ、少なくとも1つの追加の免疫原が、少なくとも1つの特異的CD8T細胞免疫反応を含む免疫応答を誘導することができる。したがって、一実施形態において、(a)第1の単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物(第1の免疫原性組成物とも呼ばれ得る)(この組成物は、アジュバントを更に含み得る)と、(b)第1の免疫原及び第2の免疫原の発現をコードし、指示する組み換え発現ベクターを含む第2の免疫原性組成物とを含む、免疫原性調製物が本明細書において提供され、少なくとも第2の免疫原は、特異的CD8T細胞応答を誘導することができる。特定の実施形態において、少なくとも2つの免疫原のうちのそれぞれは、同一の指定抗原に対する免疫応答を誘導する能力を有する。あるいは、少なくとも2つの免疫原のうちのそれぞれは、異なる指定抗原(便宜上、それぞれ第1及び第2の指定抗原などとも呼ばれる)に特異的な免疫応答を誘導する能力を有する。
免疫原及び指定抗原
本方法において使用される、及び本明細書に記載される用途のための、一方の免疫原性組成物中に含まれる単離された免疫原及び/もしくは組み換え免疫原であり得る免疫原、ならびに/または第2の免疫原性組成物中に含有される組み換え発現ベクターによってコードされる免疫原は、特異的免疫応答の誘導が所望される任意の免疫原を含む。特定の実施形態において、免疫原は、対象となる指定抗原の例示的な全長アミノ酸配列を含むか、または免疫原は、それぞれの指定抗原の免疫原性断片であってもよい。他の特定の実施形態において、免疫原は指定抗原のバリアントを含んでもよく、このバリアントは例示的な全長指定抗原と高パーセントの同一性を共有し、例示的なアミノ酸配列を含む指定抗原と実質的に同一のレベルの免疫原性を呈する(すなわち、バリアントは、例示的な抗原または野生型抗原の免疫原性と比較して、統計的、臨床的、及び/または生物学的に有意な程度まで、免疫原性のレベルを保持する)。具体的には、指定抗原の免疫原性断片またはバリアントである免疫原は、統計的、臨床的、または生物学的に有意な様式で、対象において、体液性免疫応答(すなわち、特異的抗体の発現をもたらすB細胞応答)または細胞媒介応答(すなわち、CD4T細胞応答及び/もしくはCD8T細胞応答であり、細胞傷害性Tリンパ球応答を含む))、あるいは体液性応答及び細胞媒介応答の両方を誘導する能力を保持する。対象となる指定抗原、ならびにそれらの免疫原性断片及び免疫原性バリアントは、本明細書に詳細に記載される。
本明細書に詳細に記載するように、免疫原は、対象において、指定抗原に特異的な免疫応答を誘導することができる、少なくとも1つの免疫原性領域または免疫原性エピトープを含む。特定の一実施形態において、免疫原は、免疫原が、抗体応答、CD4T細胞応答、及びCD8T細胞応答のうちの任意の1つ以上を誘導することができるような1つ以上の免疫原性領域を含み、各応答は免疫原に特異的なものであるため、それぞれの指定抗原に特異的なものとなる。したがって、免疫原性領域は、抗体応答、CD4T細胞応答、及びCD8T細胞応答のうちの1つ以上を誘導する、少なくとも1つのエピトープ(すなわち、1つ以上のエピトープ)を含む。
細胞媒介免疫応答としては、細胞傷害性Tリンパ球応答が挙げられ、この応答は、細胞(例えば、腫瘍細胞、細菌細胞、ウイルス、寄生虫、もしくは真菌細胞)、あるいは免疫原またはそれぞれの指定抗原を産生もしくは発現する感染性粒子(例えば、ウイルス粒子)を破壊または損傷させ得る。体液性応答もしくは細胞媒介免疫応答、またはその両方が免疫化された対象にとって有益である、疾患または障害に関連する任意の抗原を、免疫原として使用することができる。
多くの疾患及び障害に関連する抗原は、当該技術分野において周知である。対象となる抗原(すなわち、指定抗原)は、疾患もしくは障害に関連することが既知であっても、当該技術分野において既知であり、実施される任意の方法によって疾患もしくは障害に関連する抗原として特定されていてもよい。例えば、ある患者が患っているある種類の癌に関連する抗原(腫瘍関連抗原など)は既知であり得、当該技術分野において実施される様々な方法のうちのいずれかによって腫瘍自体から特定され得る。特定の実施形態において、指定抗原は、癌細胞(すなわち、腫瘍細胞)に由来する腫瘍関連抗原(本明細書では、腫瘍抗原とも呼ばれる)であり、1つ以上のそのような腫瘍抗原は、癌の免疫療法治療にとって有用であり得る。非限定的な例として、腫瘍関連抗原は、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、中皮腫、卵巣癌、または黒色腫に由来し得る。これら及び追加の腫瘍関連抗原は、本明細書及び当該技術分野において記載される。
特定の実施形態において、免疫原は指定抗原であり、腫瘍または悪性腫瘍に由来する全長タンパク質を含む。他の特定の実施形態において、免疫原は、そのようなタンパク質からの1つ以上のエピトープを含有する1つ以上の免疫原性断片を含む。更なる他の実施形態において、免疫原は、全長指定抗原を含むか、または腫瘍細胞に由来する指定抗原の1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含む。他の実施形態において、2つ以上の指定抗原に対する免疫応答の誘導において使用するために免疫原性組成物が調製されるとき、融合ポリペプチドは、2つ以上の指定抗原のうちのそれぞれについて、全長抗原またはその1つ以上の免疫原性断片の任意の組み合わせを含み得る。例として、融合ポリペプチドは、1つの腫瘍関連抗原から取得された1つ以上の免疫原性断片を含んでもよく、第2の異なる腫瘍関連抗原取得された1つ以上の免疫原性断片を更に含んでもよい。融合タンパク質は、免疫原性ポリペプチドまたはペプチドに加えて、対象となる免疫原に対する免疫応答を亢進する、少なくとも1つのポリペプチドまたはペプチド(免疫学の技術分野において担体タンパク質と呼ばれることもある)を含んでもよい。
例示的な腫瘍関連抗原または腫瘍細胞由来抗原としては、MAGE1、3、及びMAGE4(または国際特許出願公開第99/40188号に開示されるものなどの他のMAGE抗原);PRAME;BAGE;RAGE,Lage(NY ESO1としても知られる);SAGE;及びHAGEが挙げられる(例えば、国際特許出願公開第99/53061号、またはGAGE(Robbins et al.,Curr.Opin.Immunol.8:628−36(1996)、Van den Eynde et al.,Int.J.Clin.Lab.Res.27:81−86(1997)、Van den Eynde et al.,Curr.Opin.Immunol.9:648−93(1997)、Correale et al.,J.Natl.Cancer Inst.89:293(1997)を参照されたい)。腫瘍抗原のこれらの非限定的な例は、黒色腫、肺癌、肉腫、及び膀胱癌などの幅広い腫瘍型において発現される。例えば、米国特許第6,544,518号も参照されたい。前立腺癌腫瘍関連抗原としては、例えば、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺酸性リン酸、NKX3.1、及び前立腺の6回膜貫通上皮抗原(STEAP)(Hubert et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA96 14523−28,1999)が挙げられる。例えば、Reiter et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA95:1735−40,1998、Nelson,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA96:3114−19(1999)、国際公開第98/12302号、米国特許第5,955,306号、同第5,840,871号、及び同第5,786,148号、国際特許出願公開第98/20117号、同第00/04149号、同第98/137418号も参照されたい。
他の腫瘍関連抗原としては、Plu−1(J.Biol.Chem.274:15633−45,1999)、HASH−1、HasH−2、Cripto(Salomon et al.,Bioessays199,21:61−70、米国特許第5,654,140号)、及びCriptin(米国特許第5,981,215号)が挙げられる。更に、腫瘍抗原は、全長ゴナドトロピンホルモン放出ホルモン(GnRH、国際特許出願公開第95/20600号)などの自己ペプチドホルモン、多くの癌の治療において有用である短鎖10アミノ酸長ペプチドであってもよい。
腫瘍抗原としては、HER−2/neu発現などの腫瘍関連抗原発現を特徴とする癌に由来する腫瘍抗原が挙げられる。対象となる腫瘍関連抗原としては、メラニン細胞−黒色腫系列抗原MART−1/Melan−A、gp100、gp75、mda−7、チロシナーゼ、及びチロシナーゼ関連タンパク質などの系列特異的腫瘍抗原が挙げられる。例示的な腫瘍関連抗原としては、p53、Ras、c−Myc、細胞質セリン/スレオニンキナーゼ(例えば、A−Raf、B−Raf、及びC−Raf、サイクリン依存性キナーゼ)、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A10、MAGE−A12、MART−1、BAGE、DAM−6、−10、GAGE−1、−2、−8、GAGE−3、−4、−5、−6、−7B、NA88−A、MART−1、MC1R、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、ART−4、CAMEL、CEA、Cyp−B、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC2、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)、TRK受容体、PRAME、P15、RU1、RU2、SART−1、SART−3、ウィルムス腫瘍抗原(WT1)、AFP、β−カテニン/m、カスパーゼ−8/m、CEA、CDK−4/m、ELF2M、GnT−V、G250、HSP70−2M、HST−2、KIAA0205、MUM−1、MUM−2、MUM−3、ミオシン/m、RAGE、SART−2、TRP−2/INT2、707−AP、アネキシンII、CDC27/m、TPI/mbcr−abl、BCR−ABL、インターフェロン制御因子4(IRF4)、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RARα、腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサー1(TACSTD1)TACSTD2、受容体チロシンキナーゼ(例えば、上皮増殖因子受容体(EGFR)(特に、EGFRvIII)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR))、細胞質チロシンキナーゼ(例えば、srcファミリー、syk−ZAP70ファミリー)、インテグリン結合キナーゼ(ILK)、転写STAT3、STAT5、及びSTAT6のシグナルトランスデューサー及びアクチベーター、低酸素誘導因子(例えば、HIF−1α及びHIF−2α)、核内因子−カッパB(NF−κB)、ノッチ受容体(例えば、ノッチ1−4)、c−Met、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)、WNTタンパク質(Wnt1、Wnt2、Wnt2B、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8A、Wnt8B、Wnt9A、Wnt9B、Wnt10A、Wnt10B、Wnt11、Wnt16を含む、分泌脂質修飾シグナリング糖タンパク質のファミリー)、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、及びそれらの制御サブユニット、PMSA、PR−3、MDM2、メソテリン、腎細胞癌−5T4、SM22−アルファ、炭酸脱水酵素I(CAI)及びIX(CAIX)(G250としても知られる)、STEAD、TEL/AML1、GD2、プロテアーゼ3、hTERT、肉腫転座切断点、EphA2、ML−IAP、EpCAM、ERG(TMPRSS2ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、GD3、フコシルGM1、メソテリアン、PSCA、sLe、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GLoboH、NY−BR−1、RGs5、SART3、STn、PAX5、OY−TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP−4、SSX2、XAGE1、B7H3、レグマイン、TIE2、Page4、MAD−CT−1、FAP、MAD−CT−2、fos関連抗原1、ならびにイディオタイプのうちの任意の1つ以上に由来するか、またはそれ(ら)を含む腫瘍抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
免疫原はまた、テロメラーゼ酵素、サバイビン、メソテリン、変異ras、bcr/abl再構成、Her2/neu、変異もしくは野生型p53、チトクロムP450 1B1、及び異常発現したイントロン(N−アセチルグルコサミン転移酵素−Vなど)などの、腫瘍細胞中で変異した遺伝子、または正常な細胞と比較して、腫瘍細胞中で異なるレベルで転写された遺伝子に由来するエピトープペプチドのエピトープ領域を含む腫瘍抗原;骨髄腫及びB−細胞リンパ腫において特有のイディオタイプを生成する免疫グロブリン遺伝子のクローン再構成;ヒトパピローマウイルスタンパク質E6及びE7などの、オンコウイルスのプロセスに由来するエピトープペプチドのエピトープ領域を含む腫瘍抗原;エプスタイン・バーウイルスタンパク質LMP2;癌胎児抗原及びアルファ−胎児タンパク質などの、腫瘍選択的発現を有する非変異癌胎児性タンパク質も含む。例えば、Boon et al.,Ann.Rev.Immunol.12:337−65(1994)、Renkvist et al.,Cancer Immunol.Immunother.50:3−15(2001)も参照されたい。
他の実施形態において、免疫原は、ウイルス、真菌、寄生虫、及び細菌などの、病原微生物もしくは日和見病原微生物(本明細書では感染性疾患微生物とも呼ばれる)から取得されるか、またはそれに由来する。特定の実施形態において、そのような微生物に由来する免疫原は、選択された指定抗原である全長タンパク質を含む。他の特定の実施形態において、免疫原は、そのようなタンパク質からの1つ以上のエピトープを含有する1つ以上の免疫原性断片を含む。更なる他の実施形態において、免疫原は、微生物に由来するタンパク質の1つ、2つ、またはそれ以上の免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含む。更なる他の実施形態において、免疫原は、全長指定抗原を含むか、または微生物に由来する指定抗原の1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含む。他の実施形態において、感染性疾患微生物の2つ以上の指定抗原に対する免疫応答の誘導において使用するために免疫原性組成物が調製されるとき、融合ポリペプチドは、2つ以上の指定抗原のうちのそれぞれについて、全長抗原またはその1つ以上の免疫原性断片の任意の組み合わせを含み得る。例として、融合ポリペプチドは、1つの微生物抗原(すなわち、ウイルス、細菌、寄生虫、または真菌性抗原)から取得された1つ以上の免疫原性断片を含んでもよく、第2の異なる微生物抗原(すなわち、第2の異なるウイルス、細菌、寄生虫、または真菌性抗原)取得された1つ以上の免疫原性断片を更に含んでもよい。融合タンパク質は、免疫原性ポリペプチドまたはペプチドに加えて、対象となる免疫原に対する免疫応答を亢進する、少なくとも1つのポリペプチドまたはペプチド(免疫学の技術分野において担体タンパク質と呼ばれることもある)を含んでもよい。
抗原が、本明細書に記載される免疫原性組成物において指定抗原及び免疫原としての使用が企図され、本明細書に記載されるベクター及びベクター粒子によってコードされる例示的な病原生物としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、A型、B型、及びC型インフルエンザ、水胞性口内炎ウイルス(VSV)、水胞性口内炎ウイルス(VSV)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むブドウ球菌種、ならびに肺炎連鎖球菌を含む連鎖球菌種が挙げられる。当業者によって理解されるように、本明細書に記載される免疫原として使用される、これら及び他の病原微生物に由来するタンパク質は当該技術分野において既知であり、そのようなタンパク質(及びそれらの種)のアミノ酸配列ならびにタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、出版物及びGENBANK、Swiss−Prot、及びTrEMBLなどの公共データベースにおいて特定することができる。
免疫原であり得、本明細書に記載するように使用され得る、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来する抗原は、HIVビリオン構造タンパク質(例えば、gp120、gp41、p17、p24)、プロテアーゼ、逆転写酵素、またはtat、rev、nef、vif、vpr、及びvpuによってコードされるHIVタンパク質のうちのいずれかを含む。HIVタンパク質及びそれらの免疫原性断片は当業者に周知であり、いくつかの公共データベースのうちのいずれかに見出すことができる(例えば、Vider−Shalit et al.,AIDS23(11):1311−18(2009)、Watkins,Mem.Inst.Oswaldo Cruz.103(2):119−29(2008)、Gao et al.,Expert Rev.Vaccines(4Suppl):S161−68(2004)を参照されたい)。(例えば、Klimstra et al.,2003.J.Virol.77:12022−32、Bernard et al.,Virology276:93−103(2000)、Byrnes et al.,J.Virol.72:7349−56(1998)、Lieberman et al.,AIDS Res Hum.Retroviruses13(5):383−92(1997)、Menendez−Arias et al.,Viral Immunol.11(4):167−181(1998)も参照されたい。
本明細書に記載される組成物において免疫原としての使用が企図され、本明細書に記載されるベクター及びベクター粒子によってコードされる、単純ヘルペスウイルス(例えば、HSV1及びHSV2)に由来する抗原としては、HSV後期遺伝子から発現されるタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子の後期群は、主にビリオン粒子を形成するタンパク質をコードする。そのようなタンパク質としては、ウイルスカプシドを形成する(UL)からの5つのタンパク質、UL6、UL18、UL35、UL38、ならびに主要カプシドタンパク質UL19、UL45、及びUL27が挙げられ、これらのうちのそれぞれが、本明細書に記載される免疫原として使用され得る(例えば、McGeoch et al.,Virus Res.117:90−104(2006)、Mettenleiter et al.,Curr.Opin.Microbiol.9:423−29(2006)を参照されたい)。本明細書において免疫原としての使用が企図される他の例示的なHSVタンパク質としては、ICP27(H1、H2)、糖タンパク質B(gB)、及び糖タンパク質D(gD)タンパク質が挙げられる。HSVゲノムは少なくとも74個の遺伝子を含み、それぞれが、T細胞応答(CTL応答を含む)、B細胞応答、またはCTL応答及びB細胞応答の両方を誘導するための免疫原として潜在的に使用され得るタンパク質をコードする。
ヒトにおける(例えば、Corey et al.,“Genital Herpes,”,Sexually Transmitted Diseases,Holmes et al.,eds.(McGraw−Hill,New York,1999)285−312を参照されたい)及び動物モデルにおける(例えば、Parr et al.,J.Virol.72:2677(1998)を参照されたい)HSV−2に対する保護免疫応答は、適切なHSV−2ワクチン配合物が望ましく、取得可能な目的であることを示唆する。過去40年間、不活性化全HSV調製物及びアジュバントとともに配合されたサブユニットHSVタンパク質を使用する一連のHSVワクチンヒト治験が、米国及び欧州において行われている。いくつかの短期研究において、これらのワクチンによる中程度の治療効果が観察されたものの、より長い経過観察ウィンドウでの適切な対照治験からの結果は、ほとんどが残念なものであった(例えば、Rajcani et al.,Folia Microbiol.(Praha)51:67(2006)を参照されたい)。
欧州では、1960年代及び1970年代、ホルムアルデヒド不活性化HSV(Eli Lilly治験)または熱不活性化HSV(Lupidon H治験)による大規模な臨床治験が行われた。重症度及びHSV再発の頻度の改善が報告されたものの、プラセボ対照及び二重盲検であったのは、これらの治験の小部分集合のみであった。更に、これらのワクチンは、長期的な治療効果は与えなかった。1980年代の母胎−胎児HSV−2伝染研究は、HSV−2血清陽性の女性の乳幼児が、出産前にHSV−2に感染した女性に対して、より低い伝染リスクを持つことを実証し、これはHSV−2糖タンパク質gD及びgBに対する中和抗体(nAb)が保護を与え得ることを示唆した(例えば、Koelle et al.,Clin.Microbiol.Rev.16:96(2003)を参照されたい)。これらのHSV−2糖タンパク質に対してnAbを生成するように設計され、1990年代の米国でのGlaxo−SmithKline及びChironによる治験は、gDを単独で有するか、または3つの異なるアジュバント(ミョウバン、MF−59(水中油型)、及びモノホスホリルリピドA(MPL))とともに配合されたgBを有する、組み換えサブユニットワクチンを試験した。これらのワクチンは、血清陰性の個体においてHSV−2特異的nAbを、HSV−1血清陽性の個体おいて交差反応性nAbを、誘発または追加免疫した(例えば、Burke,Rev.Infect.Dis.13Suppl11:S906−S911(1991)を参照されたい)。しかしながら、標的レベルの体液性免疫原性に到達したにも関わらず、これらのワクチンは男性において治療効果を示さず、女性における有効性は一過性にすぎず、これは抗HSV nAbが不十分であること、及びHSVワクチンの成功には、強力なT細胞免疫を生成する必要がある可能性が高いことを示唆した(例えば、Corey et al.,JAMA282:331(1999)、Stanberry,et al.,N.Engl.J.Med.347:1652(2002)を参照されたい)。
既に行われたHSVワクチン治験は、nAbがHSV−2感染症からヒトを保護するのに十分ではない可能性があることを示し、データは、HSV−2特異的T細胞がウイルス感染、伝染、及び再活性化を低下させる上で非常に重要な役割を果たすことを示唆した(例えば、上記のCorey et al.,JAMA(1999)を参照されたい)。例えば、T細胞機能を欠損する個体は、HSV−2感染症の延長したより重度のエピソード、及びHSV−2病変の縦断的生検研究において、CD8T細胞の浸潤と相関するウイルスクリアランスを有する(例えば、Koelle et al.,J.Clin.Invest.101:1500(1998)を参照されたい)。追加のHSV研究は、動物モデルにおいて、1型ヘルパーT細胞(Th1)応答が保護的であったこと(例えば、Koelle,et al.,J.Immunol.166:4049(2001)、Zhu,et al.,J.Exp.Med.204:595(2007)を参照されたい)、重症度及びHSV−2再活性化の頻度がHSV特異的T細胞の頻度に逆相関したこと、ならびに性器病変へのHSV−2特異的CTLの浸潤がウイルスクリアランスと相関したこと(例えば、Koelle et al.,J.Infect.Dis.169:956(1994)、Koelle et al.,J.Clin.Invest.110:537(2002)、上記のKoelle et al.,J.Clin.Invest.(1998)を参照されたい)を示している。これらの発見は、CD8及びTh1CD4T細胞応答を粘膜HSV−2クリアランスと関係付けたサブユニットワクチン研究からのデータと一貫するものである(例えば、Posavad et al.,Nat.Med.4:381(1998)を参照されたい)。更に、HSV−2特異的CD8T細胞は、性器ヘルペスの回復後、長期にわたって真皮−上皮接合部で検出されている(例えば、Cattamanchi et al.,Clin.Vaccine Immunol.15:1638(2008)を参照されたい)。
本明細書に記載される本免疫原性組成物及び方法の特定の実施形態において、使用が企図されるサイトメガロウイルス(CMV)に由来する抗原としては、CMV構造タンパク質、ウイルス複製の最初期相及び初期相中に発現されるウイルス抗原、糖タンパク質I及びIII、カプシドタンパク質、コートタンパク質、低マトリクスタンパク質pp65(ppUL83)、p52(ppUL44)、IE1及びIE2(UL123及びUL122)、UL128−UL150からの遺伝子クラスターからのタンパク質産生物(Rykman,et al.,J.Virol.2006Jan;80(2):710−22)、外被糖タンパク質B(gB)、gH、gN、及びpp150が挙げられる。当業者によって理解されるように、本明細書に記載される免疫原として使用するためのCMVタンパク質は、GenBank、Swiss−Prot、及びTrEMBLなどの公共データベースにおいて特定され得る(例えば、Bennekov et al.,Mt.Sinai J.Med.71(2):86−93(2004)、Loewendorf et al.,J.Intern.Med.267(5):483−501(2010)、Marschall et al.,Future Microbiol.4:731−42(2009)を参照されたい)。
特定の実施形態おいて、使用が企図されるエプスタイン・バーウイルス(EBV)に由来する抗原としては、EBV溶解性タンパク質gp350及びgp110;エプスタイン・バー核内抗原(EBNA)−1、EBNA−2、EBNA−3A、EBNA−3B、EBNA−3C、EBNA−リーダータンパク質(EBNA−LP)を含む潜伏周期感染中に産生されるEBVタンパク質;ならびに潜伏膜タンパク質(LMP)−1、LMP−2A、及びLMP−2B(例えば、Lockey et al.,Front.Biosci.13:5916−27(2008)を参照されたい)が挙げられる。
本明細書に記載される免疫原としての使用が企図される呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に由来する抗原としては、RSVゲノムによってコードされる11のタンパク質のうちのいずれか、つまり、NS1、NS2、N(ヌクレオカプシドタンパク質)、M(マトリクスタンパク質)SH、G及びF(ウイルスコートタンパク質)、M2(第2のマトリクスタンパク質)、M2−1(伸長因子)、M2−2(転写制御)、RNAポリメラーゼ、ならびにリン酸化タンパク質P、またはそれらの免疫原性断片が挙げられる。
免疫原としての使用が企図される水胞性口内炎ウイルス(VSV)に由来する抗原としては、VSVゲノムによってコードされる5つの主要タンパク質のうちのいずれか1つ、つまり、大型タンパク質(L)、糖タンパク質(G)、核タンパク質(N)、リン酸化タンパク質(P)、及びマトリクスタンパク質(M)、ならびにそれらの免疫原性断片が挙げられる(例えば、Rieder et al.,J.Interferon Cytokine Res.(2009)(9):499−509、Roberts et al.,Adv.Virus Res.(1999)53:301−19を参照されたい)。
特定の実施形態において、使用が企図されるインフルエンザウイルスに由来する抗原としては、赤血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、マトリクスタンパク質M1及びM2、NS1、NS2(NEP)、PA、PB1、PB1−F2、ならびにPB2が挙げられる。例えば、Nature437(7062):1162−66を参照されたい。
ウイルス抗原である免疫原の例としては、アデノウイルスポリペプチド、アルファウイルスポリペプチド、カリシウイルスポリペプチド(例えば、カリシウイルスカプシド抗原)、コロナウイルスポリペプチド、ジステンパーウイルスポリペプチド、エボラウイルスポリペプチド、エンテロウイルスポリペプチド、フラビウイルスポリペプチド、肝炎ウイルス(AE)ポリペプチド(B型肝炎コア抗原または表面抗原、C型肝炎ウイルスE1もしくはE2糖タンパク質、コア、または非構造タンパク質)、ヘルペスウイルスポリペプチド(本明細書に論じるもの、及び単純ヘルペスウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質を含む)、感染性腹膜炎ウイルスポリペプチド、白血病ウイルスポリペプチド、マールブルグウイルスポリペプチド、オルソミクソウイルスポリペプチド、パピローマウイルスポリペプチド、パラインフルエンザウイルスポリペプチド(例えば、赤血球凝集素及びノイラミニダーゼポリペプチド)、パラミクソウイルスポリペプチド、パルボウイルスポリペプチド、ペスチウイルスポリペプチド、ピコルナウイルスポリペプチド(例えば、ポリオウイルスカプシドポリペプチド)、ポックスウイルスポリペプチド(例えば、ワクシニアウイルスポリペプチド)、狂犬病ウイルスポリペプチド(例えば、狂犬病ウイルス糖タンパク質G)、レオウイルスポリペプチド、レトロウイルスポリペプチド、ならびにロタウイルスポリペプチドも挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態において、細菌抗原が指定抗原として選択されてもよく、細菌抗原またはその免疫原性断片もしくはバリアントが免疫原として使用されてもよい。特定の実施形態において、対象となる細菌抗原は分泌ポリペプチドであり得る。他の特定の実施形態において、免疫応答を誘導するための免疫原として有用であり得る細菌抗原としては、細菌の外細胞表面上に露出されるポリペプチドの部分(複数可)を有する抗原が挙げられる。細胞表面上に露出されるポリペプチド免疫原の部分は、宿主中の免疫細胞及び/または抗体にとって到達可能であり、故に、組み換え発現ベクターによってコードされ、本明細書に記載される免疫原を含む免疫原性組成物(アジュバントを更に含み得る)中に含まれる、有用な免疫原であり得る。
免疫原としての使用が企図される、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むブドウ球菌種に由来する抗原としては、Agr系、Sar及びSae、Arl系、Sar相同体(Rot、MgrA、SarS、SarR、SarT、SarU、SarV、SarX、SarZ、及びTcaR)、Srr系、ならびにTRAPなどの病原性制御因子が挙げられる。免疫原としての役割を果たし得る他のブドウ球菌タンパク質としては、Clpタンパク質、HtrA、MsrR、アコニターゼ、CcpA、SvrA、Msa、CfvA、及びCfvBが挙げられる(例えば、Staphylococcus:Molecular Genetics,2008Caister Academic Press,Ed.Jodi Lindsayを参照されたい)。黄色ブドウ球菌の2つの種(N315及びMu50)のゲノムは配列決定されており、例えば、PATRIC(PATRIC:The VBI PathoSystems Resource Integration Center,Snyder et al.,Nucleic Acids Res.(2007)35:401−406)などで公的に入手可能である。当業者によって理解されるように、免疫原としての使用のためのブドウ球菌タンパク質はまた、GenBank、Swiss−Prot、及びTrEMBLなどの他の公共データベースおいても特定され得る。
本明細書に記載される特定の実施形態において、免疫原としての使用が企図される肺炎連鎖球菌に由来する抗原としては、ニューモリシン、PspA、コリン結合タンパク質A(CbpA)、NanA、NanB、SpnHL、PavA、LytA、Pht、及びピリンタンパク質(RrgA、RrgB、RrgC)が挙げられる。肺炎連鎖球菌の免疫原性タンパク質もまた、当該技術分野において既知であり、免疫原としての使用が企図される(例えば、Zysk et al.,Infect.Immun.2000 68(6):3740−43を参照されたい)。肺炎連鎖球菌の毒性株の完全なゲノム配列は配列決定されており(例えば、Tettelin H,et al.,Science(2001)293(5529):498−506を参照されたい)、当業者によって理解されるように、本明細書に記載される組成物中に使用するための肺炎連鎖球菌タンパク質はまた、GenBank、Swiss−Prot、及びTrEMBLなどの他の公共データベースにおいても特定され得る。本開示に従う免疫原にとって特に対象となるタンパク質としては、肺炎球菌の表面に露出されることが予想される病原性因子及びタンパク質が挙げられる(例えば、上記のTettelin et al.、Frolet et al.,BMC Microbiol.(2010)Jul12;10:190、Rigden,et al.,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.(2003)38(2):143−68、Jedrzejas,Microbiol.Mol.Biol.Rev.(2001)65(2):187−207を参照されたい)。
免疫原として使用され得る細菌抗原の例としては、アクチノミセスポリペプチド、バチルスポリペプチド、バクテロイデスポリペプチド、ボルデテラポリペプチド、バルトネラポリペプチド、ボレリアポリペプチド(例えば、ボレリア・ブルグドルフェリOspA)、ブルセラポリペプチド、カンピロバクターポリペプチド、キャプノサイトファーガポリペプチド、クラミジアポリペプチド、コリネバクテリウムポリペプチド、コクシエラポリペプチド、デルマトフィルスポリペプチド、エンテロコッカスポリペプチド、エーリキアポリペプチド、エシェリキアポリペプチド、フランシセラポリペプチド、フソバクテリウムポリペプチド、ヘモバルトネラポリペプチド、ヘモフィルスポリペプチド(例えば、B型ヘモフィルス・インフルエンザエ外膜タンパク質)、ヘリコバクターポリペプチド、クレブシエラポリペプチド、L型細菌ポリペプチド、レプトスピラポリペプチド、リステリアポリペプチド、マイコバクテリアポリペプチド、マイコプラズマポリペプチド、ナイセリアポリペプチド、ネオリケッチアポリペプチド、ノカルジアポリペプチド、パスツレラポリペプチド、ペプトコッカスポリペプチド、ペプトストレプトコッカスポリペプチド、肺炎球菌ポリペプチド(すなわち、肺炎連鎖球菌ポリペプチド)(本明細書の記載を参照されたい)、プロテウスポリペプチド、シュードモナスポリペプチド、リケッチアポリペプチド、ロシャリメアポリペプチド、サルモネラポリペプチド、シゲラポリペプチド、ブドウ球菌ポリペプチド、A群連鎖球菌ポリペプチド(例えば、化膿性連鎖球菌Mタンパク質)、B群連鎖球菌(ストレプトコッカス・アガラクチア)ポリペプチド、トレポネーマポリペプチド、及びエルシニアポリペプチド(例えば、エルシニア・ペスチスF1及びV抗原)が挙げられるが、これらに限定されない。
免疫原であり得る真菌性抗原の例としては、アブシジアポリペプチド、アクレモニウムポリペプチド、アルテルナリアポリペプチド、アスペルギルスポリペプチド、バシジオボラスポリペプチド、ビポラリスポリペプチド、ブラストミセスポリペプチド、カンジダポリペプチド、コクシジオイデスポリペプチド、コニディオボラスポリペプチド、クリプトコッカスポリペプチド、クルバラリア(Curvalaria)ポリペプチド、エピデルモフィトンポリペプチド、エクソフィアラポリペプチド、ゲオトリクムポリペプチド、ヒストプラズマポリペプチド、マヅレラポリペプチド、マラセチアポリペプチド、ミクロスポルムポリペプチド、モニリエラポリペプチド、モルチエレラポリペプチド、ムコールポリペプチド、ペシロマイセスポリペプチド、ペニシリウムポリペプチド、フィアレモニウムポリペプチド、フィアロフォラポリペプチド、プロトテカポリペプチド、シュードアレシェリアポリペプチド、シュードミクロドキウムポリペプチド、フィチウムポリペプチド、リノスポリジウムポリペプチド、リゾプスポリペプチド、スコレバシジウムポリペプチド、スポロトリクスポリペプチド、ステムフィリウムポリペプチド、トリコフィトンポリペプチド、トリコスポロンポリペプチド、及びキシロヒファポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
寄生原虫抗原の例としては、バベシアポリペプチド、バランチジウムポリペプチド、ベスノイチアポリペプチド、クリプトスポリジウムポリペプチド、エイメリアポリペプチド、エンセファリトゾーンポリペプチド、エントアメーバポリペプチド、ジアルジアポリペプチド、ハモンジアポリペプチド、ヘパトゾーンポリペプチド、イソスポーラポリペプチド、リーシュマニアポリペプチド、微胞子虫ポリペプチド、ネオスポラポリペプチド、ノゼマポリペプチド、腸トリコモナスポリペプチド、プラスモジウムポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。寄生蠕虫抗原の例としては、アカントケイロネマポリペプチド、アエルロシトロンギルスポリペプチド、アンシロストーマポリペプチド、アンギオストロンギルスポリペプチド、アスカリスポリペプチド、ブルギアポリペプチド、ブノストムムポリペプチド、キャピラリアポリペプチド、カベルチアポリペプチド、クーペリアポリペプチド、クレノソマポリペプチド、ディクチオカウルスポリペプチド、ジオクトフィーマポリペプチド、ジペタロネーマポリペプチド、ジフィロボスリウムポリペプチド、ジプリジウムポリペプチド、ジロフィラリアポリペプチド、ドラクンクルスポリペプチド、エンテロビウスポリペプチド、フィラロイデスポリペプチド、ヘモンクスポリペプチド、ラゴキルアスカリスポリペプチド、ロアポリペプチド、マンソネラポリペプチド、ムエレリウスポリペプチド、ナノフィエタスポリペプチド、ネカトールポリペプチド、ネマトジルスポリペプチド、エソファゴストムポリペプチド、オンコセルカポリペプチド、オピストルキスポリペプチド、オステルタギアポリペプチド、パラフィラリアポリペプチド、パラゴニムスポリペプチド、パラスカリスポリペプチド、フィサロプテラポリペプチド、プロトストロンギルスポリペプチド、セタリアポリペプチド、スピロセルカポリペプチド、スピロメトラポリペプチド、ステファノフィラリアポリペプチド、ストロンギロイデスポリペプチド、ストロンギルスポリペプチド、テラジアポリペプチド、トキサスカリスポリペプチド、トキソカラポリペプチド、トリキネラポリペプチド、トリコストロンギルスポリペプチド、トリチュリスポリペプチド、ウンシナリアポリペプチド、及びウケレリアポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。(例えば、スポロゾイト周囲熱帯熱マラリア原虫(PfCSP))、スポロゾイト表面タンパク質2(PfSSP2)、肝臓ステート抗原1のカルボキシル末端(PfLSA1c−term)、及び輸出タンパク質1(PfExp−1)、ニューモシスチスポリペプチド、サルコシスティスポリペプチド、シストソーマポリペプチド、タイレリアポリペプチド、トキソプラズマポリペプチド、ならびにトリパノソーマポリペプチド。
外寄生虫抗原の例としては、ノミ;マダニ(カタダニ及びヒメダニを含む);ユスリカ、蚊、スナバエ、ブヨ、ウシアブ、ノサシバエ、メクラアブ、ツェツェバエ、サシバエ、ハエ幼虫症を引き起こすハエ、ヌカカなどのハエ;アリ;クモ、シラミ;ダニ;ならびにトコジラミ及びサシガメなどのナンキンムシからのポリペプチド(保護抗原及びアレルゲンを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
体液性応答(すなわち、B細胞応答)もしくは細胞媒介応答(細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を含む)のいずれか、またはその両方の免疫応答の誘導はまた、緑膿菌、結核菌、ライ菌、及びリステリア・イノキュアなどの追加の生物の食菌または殺菌に寄与し得る。CTL免疫応答は、緑膿菌、結核菌、ライ菌、及びリステリア・イノキュアの殺菌に寄与する(例えば、2010年6月23日にインターネット上で公開されたOykhman et al.,J.Biomed.Biotechnol.(2010:249482)を参照されたい)。したがって、本明細書に記載される免疫原性組成物に有用であり、組み換え発現ベクター及びベクターを含むベクター粒子によってコードされ得る免疫原はまた、これらの細菌に由来し得る。細菌種のうちのいずれか1つの細菌ゲノムによってコードされ、細菌によって発現される多数のポリペプチドのアミノ酸配列は、当該技術分野及び公的に利用可能なタンパク質配列データベースにおいて容易に特定され得る。(例えば、Stover et al.,Nature406:95(2000)も参照されたい)。
本明細書に記載される免疫原は、真菌または寄生虫から取得されても、それらに由来してもよい。CTL免疫応答を含む免疫応答を誘導する例示的な寄生虫としては、マンソン住血吸虫、赤痢アメーバ、トキソプラズマ原虫、及び熱帯熱マラリア原虫(例えば、上記のOykhmanを参照されたい)が挙げられる。したがって、これらの寄生虫に由来するか、またはそれらから取得されるタンパク質抗原は、それぞれの寄生虫に対する免疫応答を誘導するための免疫原として有用であり得る。免疫原はまた、クリプトコッカス・ネオフォルマンス及びカンジダ・アルビカンス(例えば、上記のOykhmanを参照されたい)を非限定的に含む真菌種から取得されても、それらに由来してもよい。
免疫原性ポリペプチド(例えば、本明細書及び/もしくは当該技術分野において記載される腫瘍関連抗原または微生物抗原のうちのいずれか)のうちの少なくとも1つの免疫原性断片を含むポリペプチドが免疫原として使用されてもよく、本明細書に記載される組み換え発現ベクターによってコードされてもよい。免疫原性断片は、少なくとも1つのT細胞エピトープまたは少なくとも1つのB細胞エピトープを含む。免疫原性断片は、少なくとも6、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100個、またはそれ以上の隣接アミノ酸の免疫原性ポリペプチドからなり得る。免疫原性断片は、上述の範囲内の任意の数の隣接アミノ酸を含み得るため、例えば、免疫原性断片は、6〜10、10〜15、15〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100の間、またはそれ以上の隣接アミノ酸の免疫原性ポリペプチドとなる。免疫原性断片は、直鎖状エピトープを形成する十分な数の隣接アミノ酸を含んでもよく、かつ/または断片が、その断片が由来する全長ポリペプチドと同一の(もしくは十分に類似した)3次元の立体構造で折り畳まれて、非直鎖状エピトープ(複数可)(当該技術分野において、立体構造エピトープとも呼ばれる)を呈することを可能にする十分な数の隣接アミノ酸を含んでもよい。免疫原性断片が全長ポリペプチドと同等の立体構造に折り畳まれるかどうかを評価するためのアッセイとしては、例えば、タンパク質が天然エピトープもしくは折り畳まれていないエピトープに特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体と反応する能力、他のリガンド結合機能の保持、及びプロテアーゼによる消化に対するポリペプチド断片の感受性または抵抗性(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY(2001)を参照されたい)が挙げられる。したがって、例として、ポリペプチド断片の3次元立体構造は、全長ポリペプチドに特異的に結合する抗体の結合能力及び結合レベルが、断片についても全長ポリペプチドについても実質的に同一である(すなわち、例示的な全長抗原または野生型の全長抗原の免疫原性と比較して、統計的、臨床的、及び/もしくは生物学的に十分な程度、結合レベルが保持されている)とき、全長ポリペプチドに十分に類似している。
対象となるポリペプチドまたはその免疫原性断片の3次元構造の決定は、その免疫原性断片が全長ポリペプチド中に見出されるアミノ酸の空間的位置付けを保持するかどうかを決定するための通例の方法論によって実行され得る。例えば、Bradley et al.,Science309:1868−71(2005)、Schueler−Furman et al.,Science310:638(2005)、Dietz et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA103:1244(2006)、Dodson et al.,Nature450:176(2007)、Qian et al.,Nature450:259(2007)を参照されたい。細胞膜を横断することが既知であるか、または考えられる、ポリペプチドの膜貫通セグメント及び膜トポロジーを予想するために有用であるソフトウェアツール、例えば、PSORTまたはPSORT II、及びSpscan(Wisconsin Sequence Analysis Package,Genetics Computer Group)もまた、当該技術分野において利用可能である(例えば、Nakai et al.,Trends Biochem.Sci.24:34−36(1999)を参照されたい)。
上記の技術とは別個に、またはそれと組み合わせて、対象となる指定抗原の例示的なアミノ酸配列を考慮して、当業者は、ポリペプチド抗原の潜在的なエピトープを特定することができる(例えば、Jameson and Wolf,Comput.Appl.Biosci.4:181−86(1988)を参照されたい)。別の例として、Hopp及びWoodsは、ポリペプチド領域の親水性とそれらの抗原性との間の密接した相関性の経験的実証に基づく親水性法を記載する(例えば、Hopp,Pept.Res.6:183−90(1993)、Hofmann et al.,Biomed.Biochim.Acta46:855−66(1987)を参照されたい)。B細胞またはT細胞エピトープを特定するためのコンピュータプログラムも利用可能である。EPIPLOTと呼ばれるBASICプログラムは、13の異なる尺度を使用して、柔軟性、親水性、及び抗原性プロファイルを計算し、プロットすることによって、それらの一次構造からタンパク質中のB細胞抗原部位を予想する(例えば、Menendez et al.,Comput.Appl.Biosci.6:101−105(1990)を参照されたい)。Van Regenmortel,Methods:a companion to Methods in Enzymology,9:465−472(1996)、Pellequer et al.,“Epitope predictions from the primary structure of proteins,”,Peptide antigens:a practical approach(ed.G.B.Wisdom),pp.7−25;Oxford University Press,Oxford(1994)、Van Regenmortel,“Molecular dissection of protein antigens”,Structure of antigens(ed.M.H.V.Van Regenmortel),Vol.1,pp.1−27.CRC Press,Boca Raton(1992)なども参照されたい。
免疫原として使用され得る指定抗原のT細胞エピトープはまた、Rammensee,et al.(Immunogenetics50:213−219(1999))、もしくはParker,et al.(上記)によって開発されたアルゴリズムに基づくペプチドモチーフ検索プログラムを使用しても、またはDoytchinova and Flower in Immunol.Cell Biol.80(3):270−9(2002)、Blythe et al.,Bioinformatics18:434−439(2002)、Guan et al.,Applied Bioinformatics2:63−66(2003)、Flower et al.,Applied Bioinformatics1:167−176(2002)、Mallios,Bioinformatics17:942−48(2001)、Schirle et al.,J.Immunol.Meth.257:1−16(2001)に記載されるものなどの方法を使用しても特定することができる。
本明細書に記載される免疫原及び方法において、免疫原として使用され得る指定微生物抗原または指定腫瘍抗原のエピトープ領域はまた、当該技術分野において記載される。例として、例えば、Lamb et al.,Rev.Infect.Dis.Mar−Apr:Suppl2:s443−447(1989)、Lamb et al.,EMBO J.6:1245−49(1987)、Lamb et al.,Lepr.Rev.Suppl2:131−37(1986)、Mehra et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA83:7013−27(1986)、Horsfall et al.,Immunol.Today12:211−13(1991)、Rothbard et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.155:143−52(1990)、Singh et al.,Bioinformatics17:1236−37(2001)、DeGroot et al.,Vaccine19:4385−95(2001)、DeLalla et al.,J.Immunol.163:1725−29(1999)、Cochlovius et al.,J.Immunol.165:4731−41(2000)、Consogno et al.,Blood101:1039−44(2003)、Roberts et al.,AIDS Res.Hum.Retrovir.12:593−610(1996)、Kwok et al.,Trends Immunol.22:583−88(2001)、Novak et al.,J.Immunol.166:6665−70(2001)を参照されたい。
エピトープ領域を特定するための追加の方法としては、Hoffmeister et al.,Methods29:270−281(2003)、Maecker et al.,J.Immunol.Methods255:27−40(2001)に記載される方法が挙げられる。エピトープを特定するためのアッセイは、本明細書に記載され、当業者にとって既知であり、それらには、例えば、Current Protocols in Immunology,Coligan et al.(Eds),John Wiley&Sons,New York,NY(1991)に記載されるものが挙げられる。
対象となる指定抗原の免疫原性領域及び/またはエピトープの特定は、当業者によって通例実施される方法及び技術を使用して、当業者によって、ならびに/またはコンピュータ分析及びコンピュータモデル化によって容易に経験的に決定され得る。例として、経験的方法としては、特定の長さの隣接アミノ酸のタンパク質を含むポリペプチド断片を合成すること、または1つ以上のプロテアーゼを使用することによって断片を生成して、その後、当該技術分野において通例実施される多数の結合アッセイもしくは免疫アッセイ法のうちのいずれか1つを使用して、その断片の免疫原性を決定することが挙げられる。ある断片に特異的に結合する抗体(ポリクローナル、モノクローナル、またはその抗原結合断片)の能力を決定するための例示的な方法としては、ELISA、放射免疫アッセイ、免疫ブロット、競合的結合アッセイ、蛍光標示式細胞分取器分析(FACS)、及び表面プラズモン共鳴が挙げられるが、これらに限定されない。
T細胞及びB細胞エピトープの配列は、公的に利用可能なデータベースから取得することができる。例えば、T細胞定義腫瘍抗原を含むペプチドデータベースは、インターネット上で、Cancer Immunityによって出資され、定期的に更新されるペプチドデータベースにおいて見出すことができる(cancerimmunity(dot)org/peptidedatabase/Tcellepitopes.htmを参照されたい)。National Institute of Allergy and Infectious Diseasesによって支援される別の利用可能なデータベースは、B細胞及びT細胞エピトープを検索するためのツールを提供し、エピトープ分析ツールを提供する(Immune Epitope Database and Analysis Resource at immunoepitope(dot)orgを参照されたい)。
抗原特異的T細胞株またはクローン、例えば、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ウイルス特異的もしくは細菌特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が入手可能である特定の例において、これらの細胞を使用して、特定の抗原によって調製された標的細胞を使用して関連するエピトープの存在をスクリーニングすることができる。そのような標的は、CTLによる溶解について標的細胞を感作させるのに使用される、ランダムまたは選択された合成ペプチドライブラリーを使用して調製され得る。T細胞株またはクローンが入手可能である場合に、関連するエピトープを特定するための別のアプローチは、組み換えDNA方法論を使用することである。CTL感受性標的からの遺伝子またはcDNAライブラリーがまず調製され、非感受性標的細胞へとトランスフェクトされる。これは、CTLエピトープを含有するペプチドのタンパク質前駆体をコードする遺伝子の特定及びクローニングを可能にする。このステップにおける第2のステップは、関連するクローニングされた遺伝子から切断された遺伝子を調製して、少なくとも1つのCTLエピトープをコードする領域を狭めることである。遺伝子が大きすぎない場合、このステップは任意である。第3のステップは、例えば、5〜10個の残基だけ重複する、約10〜20アミノ酸長の合成ペプチドを調製することであり、これらを使用して、標的をCTLについて感作させる。ペプチド(複数可)が関連するエピトープを含有することが示されるとき、所望される場合には、そのエピトープを含有する最小サイズのペプチドを確立するために、より小さなペプチドが調製されてもよい。これらのエピトープは、典型的には、CTLエピトープについて9〜10個の残基中、ヘルパーTリンパ球(HTL)エピトープについて最大20または30残基中に含有されるが、必ずしもそうではない場合もある。
あるいは、エピトープは、特定の主要組織適合抗原(MHC)分子によって非共有結合されるペプチドの直接的溶出、その後、溶出したペプチドのアミノ酸配列決定によって定義され得る(例えば、Engelhard et al.,Cancer J.2000May;6Suppl3:S272−80を参照されたい)。簡潔に述べると、溶出したペプチドはHPLCなどの精製法を使用して分離され、個々の画分が、CTL溶解の標的を感作させるか、またはHTL中のサイトカイン分泌の増殖を誘導する、それらの能力について試験される。画分がペプチドを含有すると特定された場合、それは更に精製され、配列分析へと提出される。ペプチド配列はまた、タンデム質量分析を使用しても決定することができる。その後、合成ペプチドが調製され、CTLまたはHTLとともに試験されて、正確な配列及びペプチドが特定されていることが実証される。
エピトープはまた、Th応答を誘発する潜在性を有するペプチドモチーフを検索する、Tsitesプログラムなどのコンピュータ分析を使用しても特定することができる(例えば、Rothbard and Taylor,EMBO J.7:93−100,1988、Deavin et al.,Mol.Immunol.33:145−155,1996を参照されたい)。マウス及びヒトのクラスIまたはクラスIIのMHCに結合するのに適切なモチーフを有するCTLペプチドは、BIMAS(Parker et al.,J.Immunol.152:163,1994)及び他のHLAペプチド結合予想分析に従って特定され得る。簡潔に述べると、例えば、微生物構成成分もしくは抗原、または腫瘍細胞構成成分もしくは腫瘍抗原からのタンパク質配列が、MHC結合モチーフの存在について試験される。各MHC対立遺伝子について存在するこれらの結合モチーフは、典型的には9〜10残基長であるMHCクラスI結合ペプチドについて、通常2(または3)及び9(または10)の位置で保存されたアミノ酸残基である。その後、MHC結合モチーフを担持する配列を含む合成ペプチドが調製され、後続して、そのようなペプチドは、MHC分子に結合するそれらの能力について試験される。MHC結合アッセイは、多数の空の(非占有の)MHC分子を発現する細胞(細胞性結合アッセイ)を使用するか、または精製されたMHC分子を使用するかのいずれかで実施され得る。その後、最後に、MHC結合ペプチドは、インビトロでヒトリンパ球を使用するか、またはインビボでHLA遺伝子導入動物を使用するかのいずれかで、ナイーブ個体においてCTL応答を誘導するそれらの能力について試験される。これらのCTLは、ペプチド感作された標的細胞、及びウイルス感染した細胞または腫瘍細胞などの抗原を天然処理する標的を使用して試験される。免疫原性を更に確認するために、ペプチドは、HLA A2遺伝子導入マウスモデル及び/または様々なインビトロ刺激アッセイのいずれかを使用して試験されてもよい。
特定の実施形態において、免疫原は、それぞれの免疫原について当該技術分野において既知であり、入手可能であるアミノ酸配列中に、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、または欠失を有する指定抗原のポリペプチド種を含む。アミノ酸の保存的置換は周知であり、ポリペプチド中に天然に存在し得るか、またはポリペプチドが組み換え産生されるときに導入され得る。アミノ酸置換、欠失、及び付加は、周知であり、かつ通例実施される変異原性法を使用してポリペプチド中に導入され得る(例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY2001)を参照されたい)。オリゴヌクレオチド指定部位特異的(またはセグメント特異的)変異誘発手順を用いて、所望される置換、欠失、または挿入に従って変化した特定のコドンを有する変化したポリヌクレオチドをもたらすことができる。免疫原として使用され得る指定抗原の欠失または切断バリアントはまた、所望される欠失に隣接する、簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位を使用することによっても構築することができる。制限に後続して、オーバーハングが充填され、DNAが再連結され得る。あるいは、アラニンスキャニング変異誘発、エラープローンポリメラーゼ連鎖反応変異誘発、及びオリゴヌクレオチド特異的変異誘発などのランダム変異誘発技術を使用して、免疫原ポリペプチドバリアントを調製してもよい(例えば、上記のSambrook et al.を参照されたい)。特定の指定抗原(またはそのポリペプチド断片)の種(またはバリアント)は、当該技術分野において既知である例示的なアミノ酸配列のうちのいずれかと少なくとも85%、90%、95%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド免疫原を含む。
これらのポリペプチド免疫原バリアントは、それぞれの指定抗原の1つ以上の生物活性または機能を保持する。具体的には、指定抗原のバリアントである免疫原は、統計的、臨床的、または生物学的に有意な様式で、対象において、免疫応答(例えば、体液性応答(すなわち、B細胞応答)、細胞媒介応答(すなわち、T細胞応答(細胞傷害性Tリンパ球応答を含む))、または体液性応答及び細胞媒介応答の両方を誘導する能力を保持する。当該技術分野において、ポリペプチド中に変異を導入するために通例実施される多くの分子生物学、タンパク質発現、ならびにタンパク質単離技術及び方法を考慮すると、ポリペプチド断片の調製、断片及びバリアントの単離、ならびに所望される生物活性を有するそれらの免疫原ポリペプチドバリアント及び断片の分析は、過度の実験法なしで容易に行われ得る。
当業者に既知である様々な判断基準は、ペプチドまたはポリペプチド中の特定の位置で置換されているアミノ酸が保存的である(または類似している)かどうかを示す。例えば、類似したアミノ酸または保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似したアミノ酸は、以下のカテゴリ、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、ヒスチジン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖を有するベータを有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)に含まれ得る。分類がより困難であると考えられるプロリンは、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(例えば、ロイシン、バリン、イソロイシン、及びアラニン)と特性を共有する。特定の状況において、グルタミン酸についてのグルタミンの置換及びアスパラギン酸についてのアスパラギンの置換は、グルタミン及びアスパラギンがそれぞれグルタミン酸及びアスパラギン酸のアミド誘導体であるという点で、類似した置換であると考えられる。当該技術分野において理解されるように、2つのポリペプチド間の「類似性」は、ポリペプチドのアミノ酸配列、及びそれに対する保存されたアミノ酸置換物を、第2のポリペプチドの配列と比較することによって(例えば、GENEWORKS、Align、BLASTアルゴリズム、または本明細書に記載され、当該技術分野において実施される他のアルゴリズムを使用して)決定される。
天然免疫原性断片について本明細書に記載するように、それぞれのバリアントが非バリアントポリペプチドまたは断片と同等の立体構造に折り畳まれるかどうかを評価するためのアッセイとしては、例えば、タンパク質が天然エピトープもしくは折り畳まれていないエピトープに特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体と反応する能力、リガンド結合機能の保持、及びプロテアーゼによる消化に対する変異体タンパク質の感受性または抵抗性が挙げられる(上記のSambrook et al.を参照されたい)。そのようなバリアントは、本明細書に記載される方法、または当業者によって通例実施される当該技術分野において既知の他の方法に従って特定、特性評価、及び/または作製され得る。
本明細書に記載される免疫原性組成物中に含まれる単離された/組み換え免疫原は、分子生物学及び/またはポリペプチド精製の技術分野において通例実施される様々な方法及び技術に従って産生され、調製され得る。対象となる免疫原を組み換え産生するために使用される発現ベクターの構築は、例えば、Sambrookら(1989and2001editions;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY)及びAusubelら(Current Protocols in Molecular Biology(2003)を参照されたい)に記載される、制限エンドヌクレアーゼ消化、連結、形質転換、プラスミド精製、及びDNA配列決定の標準技術を含むが、これらに限定されない、当該技術分野において既知である多数の好適な分子生物工学技術のうちのいずれかを使用して達成することができる。効率的な転写及び翻訳を取得するために、各組み換え発現構築物中のポリヌクレオチド配列は、リーダー配列、及び特に免疫原をコードするヌクレオチド配列に作動的に連結されたプロモーターなどの少なくとも1つの適切な発現制御配列(制御配列とも呼ばれる)を含む。
宿主細胞が組み換え発現ベクターで遺伝子操作されて、組み換え技術によって、免疫原(複数可)またはそれ(ら)の断片もしくはバリアントが産生される。本明細書に記載されるポリペプチド及び融合ポリペプチドのうちのそれぞれは、適切なプロモーターの制御下、哺乳類細胞、酵母菌、細菌、昆虫、または他の細胞中で発現され得る。細胞を含まない翻訳系を用いても、DNA構築物に由来するRNAを使用してそのようなタンパク質を産生することができる。原核生物宿主及び真核生物宿主とともに使用するための適切なクローニング及び発現ベクターは、例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor,New York,(2001)によって記載される。
一般に、対象となる免疫原を産生するために有用な組み換え発現ベクターは、複製の起点、宿主細胞の形質転換を可能にする選択可能なマーカー(例えば、大腸菌のアンピシリン抵抗性遺伝子及び出芽酵母TRP1遺伝子)、ならびに下流構造配列の転写を指示する、高度に発現された遺伝子に由来するプロモーターを含む。プロモーターは、とりわけ、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)などの解糖酵素、α因子、酸ホスファターゼ、または熱ショックタンパク質をコードするオペロンに由来し得る。異種構造配列は、翻訳開始配列及び終了配列によって適切な相において組み立てられる。
任意で、所望される特徴(例えば、発現された組み換え産生物の精製を単純化する特徴)を与えるペプチドまたはポリペプチドをもたらすために、免疫原をコードするヌクレオチド配列を有するフレーム中に異種配列を挿入してもよい。そのような特定ペプチドは、ポリヒスチジンタグ(hisタグ)もしくはFLAG(登録商標)エピトープタグ、ベータ−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、GST、またはXPRESS(商標)エピトープタグ(Invitrogen Life Technologies,Carlsbad,CA)など(例えば、米国特許第5,011,912、Hopp et al.,(Bio/Technology6:1204(1988)を参照されたい)を含む。親和性配列は、例えば、pBAD/His(Invitrogen)においてもたらされるヘキサ−ヒスチジンタグなどのベクターによって供給されてもよい。あるいは、親和性配列は、合成的に追加されるか、または核酸コード配列を組み換え生成するために使用されるプライマー中に(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して)操作されるかのいずれかであり得る。
記載される組み換え発現構築物を含有する宿主細胞は、発現構築物(例えば、クローニングベクター、シャトルベクター、または発現構築物)で遺伝子操作(形質導入、形質転換、またはトランスフェクト)され得る。ベクターまたは構築物は、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態であり得る。操作された宿主細胞は、必要に応じて、プロモーターを活性化させるか、形質転換を選択するか、またはコード−ヌクレオチド配列を増幅するために修飾された従来の栄養培地中で培養され得る。温度、pHなどの特定の宿主細胞のための培養条件の選択及び維持は、当業者にとって容易に明らかとなるであろう。好ましくは、宿主細胞は培養中で持続的に増殖するように適合されて、ポリペプチドの産生のための当該技術分野で確立された方法論に従って、細胞株をもたらし得る。特定の実施形態において、細胞株は不死細胞株であり、これは、対数期増殖に従って、培養中で反復して(生存可能でありながら少なくとも10回)継代培養され得る細胞株を指す。
有用な細菌発現構築物は、発現ベクターに、機能性プロモーターを用いて操作可能な読み取り相に、好適な翻訳開始シグナル及び終了シグナルとともに、所望される免疫原をコードする構造DNA配列を挿入することによって構築される。構築物は、1つ以上の表現型選択可能マーカー及び1つの複製の起点を含んで、ベクター構築物の維持、及び望ましい場合、宿主内の増幅の提供を確保し得る。形質転換のための好適な原核生物宿主としては、大腸菌、バチルス・スブチリス、サルモネラ・チフィリウム、及びシュードモナス属、ストレプトマイセス属、及びブドウ球菌属内の様々な種が挙げられるが、他のものもまた、選択次第で用いられてもよい。任意の他のプラスミドまたはベクターは、それらが宿主中で複製可能かつ生存可能である限り、使用されてもよい。故に、例えば、対象となる免疫原または指定抗原をコードするヌクレオチド配列は、ポリペプチドを発現させるための様々な組み換え発現構築物のうちのいずれか1つに含まれ得る。そのようなベクター及び構築物としては、染色体DNA配列、非染色体DNA配列、及び合成DNA配列、例えば、細菌プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母菌プラスミド;プラスミドとファージDNAとの組み合わせに由来するベクター;ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、及び仮性狂犬病などのウイルスDNAが挙げられる。しかしながら、それが宿主中で複製可能かつ生存可能である限り、任意の他のベクターを使用して、組み換え発現構築物を調製してもよい。
適切なDNA配列(複数可)は、様々な手順によってベクターに挿入され得る。一般に、DNA配列は、当該技術分野において既知の手順によって、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(複数可)に挿入される。クローニング、DNA単離、増幅、及び精製のための標準技術、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどに関与する酵素反応ための標準技術、ならびに様々な分離技術は当業者に既知であり、彼らによって一般的に用いられているものである。多数の標準技術が、例えば、Ausubelら(Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publ.Assoc.Inc.&John Wiley&Sons,Inc.,2003))、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.,(Cold Spring Harbor Laboratory2001))、Maniatisら(Molecular Cloning,(Cold Spring Harbor Laboratory1982))、及び他に記載される。
発現ベクター中でポリペプチド免疫原をコードするDNA配列は、少なくとも1つの適切な発現制御配列(例えば、プロモーターまたは制御されたプロモーター)に作動的に連結されて、mRNA合成を指示する。そのような発現制御配列の代表的な例としては、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌lacまたはtrp、ファージラムダPLプロモーター、及び原核生物もしくは真核生物細胞またはそれらのウイルスにおいて遺伝子の発現を制御することが既知である他のプロモーターが挙げられる。プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコール転移酵素)ベクターまたは選択可能なマーカーを有する他のベクターを使用して、任意の所望される遺伝子から選択され得る。特定の細菌プロモーターとしては、lacI、lacZ、T3、T5、T7、gpt、ラムダPR、PL、及びtrpが挙げられる。真核生物プロモーターとしては、CMV最初期、HSVチミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウイルスからのLTR、及びマウスメタロチオネイン−Iが挙げられる。適切なベクター及びプロモーターの選択、ならびに少なくとも1つの免疫原をコードするヌクレオチド配列に作動的に連結された、少なくとも1つのプロモーターまたは制御されたプロモーターを含む特定の組み換え発現構築の調製は、十分に当業者のレベルの範囲内である。
誘導可能な制御されたプロモーター及び/または厳密に制御されたプロモーターの設計及び選択は、当該技術分野において既知であり、特定の宿主細胞及び発現系(例えば、Guzman et al.,J.Bacteriology177:4121−30(1995)、Smith et al.,J.Biol.Chem.253:6931−33(1978)、Hirsh et al.,Cell11:545−50(1977)に記載される、大腸菌アラビノースオペロン(PbadまたはPara)を参照されたい、Stratagene(La Jolla,CA)から入手可能なPET発現系(米国特許第4.952,496号を参照されたい)、tet制御発現系(Gossen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:5547−51(1992)、Gossen et al.,Science268:1766−69(1995))に依存し、pLP−TRE2受容体ベクター(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)は、CLONTECHのCreator(商標)Cloning Kitとともに使用するために設計される)、例えば、Sauer,Methods14:381−92(1998)、Furth,J.Mamm.Gland Biol.Neoplas.2:373(1997)も参照されたい)、例えば、Cascio,Artif.Organs25:529(2001)を参照されたい)。
免疫原をコードする核酸配列は、バキュロウイルスシャトルベクターへとクローニングされ得、これがその後、バキュロウイルスと組み換えられて、例えば、Sf9宿主細胞を感染させるのに使用される組み換えバキュロウイルス発現構築物を生成する(例えば、Baculovirus Expression Protocols,Methods in Molecular Biology Vol.39,Richardson,Ed.(Human Press1995)、Piwnica−Worms,“Expression of Proteins in Insect Cells Using Baculoviral Vectors,”Section II,Chapter16,Short Protocols in Molecular Biology,2ndEd.,Ausubel et al.,eds.,(John Wiley&Sons1992)を参照されたい)。
単離され、精製する組み換え免疫原のために使用され得る方法としては、例として、培養培地に組み換え免疫原を分泌する好適な宿主/ベクター系から上清を取得し、その後、商業的に入手可能なフィルタを使用してその培地を濃縮することが挙げられ得る。濃縮後、濃縮物は、親和性マトリクスまたはイオン交換樹脂などの、単一の好適な精製マトリクスまたは一連の好適なマトリクスに適用され得る。1つ以上の逆相HPLCステップを用いて、組み換えポリペプチドを更に精製してもよい。これらの精製方法はまた、免疫原または指定抗原をその天然環境から単離させるときにも用いることができる。
本明細書に記載される単離された/組み換え免疫原のうちの1つ以上の大規模な産生のための方法としては、適切な培養条件を維持するために監視され、制御される、バッチ細胞培養が挙げられる。免疫原の精製は、本明細書及び当該技術分野に記載され、国内外の規制当局の法及びガイドラインに適合する方法に従って実行され得る。
アジュバント及びアジュバント組成物
本明細書に記載するように、免疫原性組成物は、免疫原に対する、及びそのそれぞれの指定抗原に対する免疫応答を亢進する(または改善する、増大する)(すなわち、アジュバントの投与の不在下での特異的免疫応答のレベルと比較して、統計的、生物学的、または臨床的に有意な様式で、免疫原及び指定抗原に対する特異的免疫応答のレベルを増加させる)ことが意図される少なくとも1つのアジュバントを更に含み得る。特定の実施形態において、免疫原性組成物は、単離され得る、かつ/または組み換えられ得る少なくとも1つの免疫原と、少なくとも1つのアジュバントとを含む。
他の特定の実施形態において、少なくとも1つの免疫原をコードする組み換え発現ベクターを含み、免疫原の発現を指示することができる免疫原性組成物は、アジュバントを更に含む。他の特定の実施形態において、少なくとも1つの免疫原を含む免疫原性組成物及び組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物の両方は、アジュバントを更に含む。更なる他の実施形態において、組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物とアジュバントを組み合わせる代わり、またはこの免疫原性組成物と同時にアジュバントを投与する代わりに、アジュバントはより後の時間に投与され、ベクターを含む免疫原性組成物とは異なる経路及び/または異なる部位によって投与されてもよい。アジュバントが、組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物の投与後に投与される場合、アジュバントは、免疫原性組成物の投与の18時間後、24時間後、36時間後、72時間後、または1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、または7日(1週間)後に投与される。免疫応答のレベルを決定するための方法及び技術は、本明細書に詳細に論じられ、当該技術分野において通例実施されるものである。
免疫原性組成物中に含まれ、本明細書に記載される方法において使用され得る例示的なアジュバントとしては、以下のものが挙げられるが、これらに必ずしも限定されない。これらの方法において使用され得るアジュバントとしては、免疫原(複数可)及びそれぞれの指定抗原(複数可)に特異的な、体液性応答、細胞性応答、または体液性応答及び細胞性応答の両方を亢進するために有用なアジュバントが挙げられる。細胞性免疫応答は、免疫原及びそのそれぞれの指定抗原に特異的な、CD4T細胞応答(メモリーCD4T細胞応答を含み得る)及びCD8T細胞応答を含む。細胞性応答はまた、免疫原に対する(あるいは免疫原(複数可)を担持または発現する細胞もしくは粒子に対する)細胞傷害性T細胞応答(CTL応答)を含み得る。所望されるアジュバントは、応答の定性的形態に悪影響を与え得る免疫原の立体構造的変化を引き起こすことなく、免疫原に対する応答を増大させる。好適なアジュバントとしては、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)などのアルミニウム塩、もしくは他のアルミニウム含有アジュバント;非限定的な例として、無毒性モノホスホリルリピドAなどの無毒性リピドA関連アジュバント(例えば、Tomai et al.,J.Biol.Response Mod.6:99−107(1987)、Persing et al.,Trends Microbiol.10:s32−s37(2002)を参照されたい);本明細書に記載されるGLA;3De−O−アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)(例えば、英国特許出願第GB2220211号を参照されたい);QS21及びQuilAなどの、南米において見られるキラヤ・サポナリア・モリナ木の樹皮から単離されたトリテルペングリコシドまたはサポニンを含むアジュバント(例えば、Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(eds.Powell and Newman,Plenum Press,NY,1995)内のKensilら、米国特許第5,057,540を参照されたい)が挙げられる。他の好適なアジュバントとしては、任意でモノホスホリルリピドAなどの免疫刺激剤と組み合わせた、水乳濁剤中の油(スクアレンまたはピーナツ油など)(例えば、Stoute et al.,N.Engl.J.Med.336,86−91(1997)を参照されたい)が挙げられる。別の好適なアジュバントは、CpG(例えば、Klinman,Int.Rev.Immunol.25(3−4):135−54(2006)、米国特許第7,402,572号、欧州特許第772 619号を参照されたい)である。
本明細書に記載するように、好適なアジュバントは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、または硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩である。そのようなアジュバントは、MPLもしくは3−DMP、QS21、重合体もしくは単量体アミノ酸(ポリグルタミン酸もしくはポリリジンなど)などの他の特定の免疫刺激剤あり、またはなしで使用することができる。別のクラスの好適なアジュバントは、水中油型乳濁剤配合物(本明細書では安定な水中油型乳濁剤とも呼ばれる)である。そのようなアジュバントは、任意で、ムラミルペプチド(例えば、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn− −グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)、N−アセチルグルクサミニル(glucsaminyl)−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソグル−L−Ala−ジパルミトイルプロピルアミド(DTP−DPP)theramide(商標))などの他の特定の免疫刺激剤、または他の細菌細胞壁構成成分とともに使用することができる。水中油型乳濁剤は、(1)モデル110Yマイクロ流動化装置(Microfluidics,Newton Mass.)などのマイクロ流動化装置を使用してサブミクロンの粒子中に配合された、5%のスクアレン、0.5%のTween80、及び0.5%のSpan85(任意で様々な量のMTP−PEを含有)を含有するMF59(国際公開第90/14837号)と、(2)サブミクロンの乳濁剤へとマイクロ流動化されるか、ボルテックスされて、より大きい粒径の乳濁剤が生成されるかのいずれかである、10%のスクアレン、0.4%のTween80、5%のプルロニックブロックポリマーL121、及びthr−MDPを含有するSAFと、(3)2%のスクアレン、0.2%のTween80、ならびにモノホスホリピド(monophosphorylipid)A(MPL)、トレハロースダイマイコレート(TDM)、及び細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))からなる群からの1つ以上の細菌細胞壁構成成分を含有するRibiアジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem,Hamilton,MT)とを含む。また、上記のように、好適なアジュバントは、Stimulon(商標)(QS21,Aquila,Worcester,Mass.)、またはそれから生成された粒子(ISCOM(免疫刺激複合体)及びISCOマトリクスなど)などのサポニンアジュバントを含む。他のアジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(CFA)(非ヒト用途にとっては好適であるが、ヒト用途には不適である)及びフロイント不完全アジュバント(IFA)が挙げられる。他のアジュバントとしては、インターロイキン(IL−1、IL−2、及びIL−12)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、ならびに腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカインが挙げられる。
本明細書に記載するように、アジュバントは、無毒性リピドA関連(またはリピドA誘導体)アジュバントであり得る。特定の一実施形態において、アジュバントは、Toll様受容体(TLR)アゴニストとしての役割を果たすその能力に基づいて選択される。例として、TLR4アゴニストとしての役割を果たし、本明細書に記載される組成物中で使用され得る無毒性リピドA関連アジュバントは、DSLPとして特定されるものである。DSLP化合物は、それらが、グルコース及びアミノ置換グルコースから選択される2つの単糖基の連結によって形成される二糖(DS)基を含有するという特徴を共有し、二糖は、リン酸(P)基及び複数のリピド(L)基の両方に化学結合される。より具体的には、二糖は、それぞれが6個の炭素を有する2つの単糖単位から形成されるものとして可視化され得る。二糖において、単糖のうちの一方が還元末端を形成し、他方の単糖が非還元末端を形成する。便宜上、従来の炭水化物の番号付け命名法に従って、還元末端を形成する単糖の炭素は、位置1、2、3、4、5、及び6に位置するものとして表される一方で、非還元末端を形成する単糖の炭素の対応する炭素は、1’、2’、3’、4’、5’、及び6’に位置するものとして表される。DSLPにおいて、非還元末端の位置1の炭素は、エーテル(−O−)基またはアミノ(−NH−)基のいずれかを通して、還元末端の位置6’の炭素に連結される。リン酸基は、好ましくは非還元末端の4’炭素を通して、二糖に連結される。リピド基のうちのそれぞれは、アミド(−NH−C(O)−)連結鎖またはエステル(−O−C(O)−)連結鎖のいずれかを通して、二糖に連結され、そこでカルボニル基がリピド基に連結される。二糖は、アミド基またはエステル基、すなわち非還元末端の位置2’、3’、及び6’、ならびに還元末端の位置1、2、3、及び4に連結され得る位置7を有する。
リピド基は、少なくとも6個の炭素、好ましくは少なくとも8個、及びより好ましくは少なくとも10個の炭素を有し、いずれの場合も、リピド基は、24個以下の炭素、22個以下の炭素、または20個以下の炭素を有する。一実施形態において、リピド基はまとめて、60〜100個の炭素、好ましくは70〜90個の炭素を提供する。リピド基は炭素及び水素原子のみからなってもよく、すなわち、それはヒドロカルビルリピド基であってもよく、あるいはそれは1個のヒドロキシル基を含有してもよく、すなわち、それはヒドロキシル置換リピド基であってもよく、あるいはそれは、転じて、エステル基のカルボニル(−C(O)−)を通してヒドロカルビルリピド基またはヒドロキシル置換リピド基に連結されるエステル基を含有してもよく、すなわち、エステル置換リピドである。ヒドロカルビルリピド基は、飽和されても、不飽和であってもよく、ヒドロカルビルリピド基は、隣接する炭素原子との間に1つの二重結合を有する。
DSLPは、3個、または4個、または5個、または6個、または7個のリピド基を含む。一態様において、DSLPは3〜7個のリピド基を含む一方で、別の態様において、DSLPは4〜6個のリピドを含む。一態様において、リピド基は独立して、ヒドロカルビルリピド、ヒドロキシル置換リピド、及びエステル置換リピドから選択される。一態様において、位置1、4’、及び6’は、ヒドロキシルで置換される。一態様において、単糖単位はそれぞれ、グルコサミンである。DSLPは、遊離酸形態または塩形態、例えば、アンモニア塩であってもよい。
特定の実施形態において、DSLP上のリピドは以下によって記載され、位置3’は−O−(CO)−CH2−CH(Ra)(−O−C(O)−Rb)で置換され、位置2’は−NH−(CO)−CH2−CH(Ra)(−O−C(O)−Rb)で置換され、位置3は−O−(CO)−CH2−CH(OH)(Ra)で置換され、位置2は−NH−(CO)−CH2−CH(OH)(Ra)で置換され、Ra及びRbのそれぞれはデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシルから選択され、これらの用語のそれぞれは飽和ヒドロカルビル基を指す。一実施形態において、Raはウンデシルであり、Rbはトリデシルであり、このアジュバントは、例えば、米国特許出願公開第2008/0131466号において「GLA」として記載されるものである。Raがウンデシルであり、Rbがトリデシルである化合物は、例えば、Avanti Polar LipidからPHAD(商標)アジュバントとして入手可能なもののように、立体化学的に定義された形態で使用され得る。
一態様において、DSLPは、3D−MPLとして知られる天然由来の化合物の混合物である。3D−MPLアジュバントは、医薬品等級で、GlaxoSmithKline CompanyからそれらのMPL(商標)アジュバントとして商業的に生産される。3D−MPLは、科学及び特許文献において詳細に記載されており、例えば、Vaccine Design:the subunit and adjuvant approach,Powell M.F.and Newman,M.J.eds.,Chapter21Monophosphoryl Lipid A as an adjuvant:past experiences and new directions by Ulrich,J.T.and Myers,K.R.,Plenum Press,New York(1995)及び米国特許第4,912,094を参照されたい。
別の態様において、DSLPアジュバントは、(i)非還元末端グルコサミンのヘキソサミン位置1と還元末端グルコサミンのヘキソサミン位置6との間のエーテル連結鎖を通して還元末端グルコサミンに連結した、還元末端グルコサミンを有するジグルコサミン骨格と、(ii)非還元末端グルコサミンのヘキソサミン位置4に結合したO−ホスホリル基と、(iii)最大6個の脂肪酸アシル鎖とを含むものとして記載することができ、脂肪酸アシル鎖のうちの1つは、エステル連結鎖を通して還元末端グルコサミンの3−ヒドロキシに結合され、脂肪酸アシル鎖のうちの1つは、アミド連結鎖を通して非還元末端グルコサミンの2−アミノに結合され、エステル連結鎖を通して12個超の炭素原子のアルカノイル鎖に連結されたテトラデカノイル鎖を含み、かつ脂肪酸アシル鎖のうちの1つは、エステル連結鎖を通して非還元末端グルコサミンの3−ヒドロキシに結合され、エステル連結鎖を通して12個超の炭素原子のアルカノイル鎖に連結されたテトラデカノイル鎖を含む。例えば、米国特許出願公開第2008/0131466号を参照されたい。
別の態様において、アジュバントは、米国特許出願公開第2010/0310602号に記載されるような、6個のリピド基を有する合成二糖であってもよい。
別の態様において、DSLPアジュバントは化学式(I)によって記載され、グルコピラノシルリピドA(GLA)と呼ばれ、
式中、部分A1及びA2は独立して、水素、ホスフェート、及びリン酸塩の群から選択される。ナトリウム及びカリウムは、リン酸塩の例示的な対イオンである。部分R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は独立して、C
3−C
23によって表される、3〜23個の炭素を有するヒドロカルビルの群から選択される。更なる明瞭さのため、ある部分が、複数の構成員を有する特定の群「から独立して選択される」とき、第1の部分に選択される構成員は、いかなる場合でも第2の部分に選択される構成員の選択に影響を与えたり、限定したりしないことが理解されるべきであることが説明される。R
1、R
3、R
5、及びR
6が連結される炭素原子は不斉であり、故に、RまたはS立体化学のいずれかで存在し得る。一実施形態において、それらの炭素原子の全てがR立体化学である一方で、別の実施形態において、それらの炭素原子の全てがS立体化学である。「ヒドロカルビル」とは、もっぱら水素及び炭素から形成された化学部分を指し、炭素原子の配置は直鎖または分岐鎖、非環式または環式であり得、隣接する炭素原子間の結合は、もっぱら単結合であり得、つまり、飽和ヒドロカルビルを提供し、あるいは、任意の2つの隣接する炭素原子の間に存在する二重または三重結合が存在して、すなわち、不飽和ヒドロカルビルを提供し得、ヒドロカルビル基中の炭素原子の数は、3〜24個の炭素原子である。ヒドロカルビルはアルキルであり得、代表的な直鎖アルキルとしては、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルなどを含む、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどが挙げられる一方で、分岐鎖アルキルとしては、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチルなどが挙げられる。代表的な飽和環式ヒドロカルビルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる一方で、不飽和環式ヒドロカルビルとしては、シクロペンテニル及びシクロヘキセニルなどが挙げられる。不飽和ヒドロカルビルは、隣接する炭素原子(ヒドロカルビルが非環式である場合、それぞれ「アルケニル」または「アルキニル」と呼ばれ、ヒドロカルビルが少なくとも部分的に環式である場合、それぞれシクロアルケニ(cycloalkeny)及びシクロアルキニルと呼ばれる)との間に少なくとも1つの二重または三重結合を含有する。代表的な直鎖及び分岐鎖アルケニルとしては、エチレニル、プロピレニル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブチレニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニルなどが挙げられる一方で、代表的な直鎖及び分岐鎖アルキニルとしては、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−メチル−1−ブチニルなどが挙げられる。式(I)のアジュバントは、当該技術分野において既知である合成方法、例えば、参照によって本明細書に組み込まれるPCT国際公開第2009/035528号、及びそのそれぞれもまた参照によって本明細書に組み込まれる第2009/035528号において特定される出版物において論じられる合成方法論によって取得することができる。アジュバントのうちの特定のものはまた、商業的にも取得することができる。
DSLPアジュバントは、当該技術分野において既知である合成方法、例えば、参照によって本明細書に組み込まれるPCT国際公開第2009/035528号、及びそのそれぞれもまた参照によって本明細書に組み込まれる第2009/035528号において特定される出版物において論じられる合成方法論によって取得することができる。化学的に合成されたDSLPアジュバント、例えば、式(I)のアジュバントは実質的に均一な形態で調製することができ、これは、存在するDSLP分子、例えば、式(I)の化合物に関して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%純粋である調製物を指す。所与のアジュバント調製物の純度の決定は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、質量分析、及び/または核磁気共鳴分析などによって、適切な分析化学方法論に精通している者によって容易に行われ得る。天然源から取得されるDSLPアジュバントは典型的には、化学的に純粋な形態では容易に作製されず、故に、合成的に調製されたアジュバントが、本明細書に記載される組成物及び方法における使用にとって好ましいアジュバントである。既に論じたように、アジュバントのうちの特定のものは商業的に取得することができる。1つのそのようなDSLPアジュバントは、Avanti Polar Lipids,Alabaster ALのカタログにおいて特定される、製品番号699800であり、以下、E10との組み合わせでE1を参照されたい。
様々な実施形態において、アジュバントは、式(I)の化学構造を有するが、部分A1、A2、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、これらの部分について既に提供された選択肢の部分集合から選択され、それらの部分集合は、以下、E1、E2などによって特定される。
E1:A1はホスフェートまたはリン酸塩であり、A2は水素である。
E2:R1、R3、R5、及びR6はC3−C21アルキルであり、R2及びR4はC5−C23ヒドロカルビルである。
E3:R1、R3、R5、及びR6はC5−C17アルキルであり、R2及びR4はC7−C19ヒドロカルビルである。
E4:R1、R3、R5、及びR6はC7−C15アルキルであり、R2及びR4はC9−C17ヒドロカルビルである。
E5:R1、R3、R5、及びR6はC9−C13アルキルであり、R2及びR4はC11−C15ヒドロカルビルである。
E6:R1、R3、R5、及びR6はC9−C15アルキルであり、R2及びR4はC11−C17ヒドロカルビルである。
E7:R1、R3、R5、及びR6はC7−C13アルキルであり、R2及びR4はC9−C15ヒドロカルビルである。
E8:R1、R3、R5、及びR6はC11−C20アルキルであり、R2及びR4はC12−C20ヒドロカルビルである。
E9:R1、R3、R5、及びR6はC11アルキルであり、R2及びR4はC13ヒドロカルビルである。
E10:R1、R3、R5、及びR6はウンデシルであり、R2及びR4はトリデシルである。
特定の実施形態において、E2〜E10までのうちのそれぞれは、実施形態E1と組み合わされ、かつ/またはE2〜E9までのヒドロカルビル基は、アルキル基、好ましくは直鎖アルキル基である。DSLPアジュバント、例えば、式(I)のアジュバントは、任意でコアジュバントとともに薬学的組成物中に配合され得、これらのそれぞれは以下に論じられる。この点に関して、米国GLAアジュバントのための水性配合物(AF)及び安定乳濁剤配合物(SE)などの配合物を提供する、米国特許公開第2008/0131466号への言及がなされ、これらの配合物は、式(I)のアジュバントのうちのいずれにも使用することができる。特定の具体的な実施形態において、免疫原性組成物はGLAを含み、GLAアジュバント(式Iを参照されたい)は、安定な水中油型乳濁剤(SE)(GLA/SEまたはGLA−SE)中に配合され、その後、少なくとも1つの免疫原と組み合わされる。
任意で、以下及び本明細書に詳細に記載するように、非限定的な例として、アルミニウム塩及びDSLPアジュバント、アルミニウム塩及びQS21、DSLPアジュバント及びQS21、ならびにアルムナ(alumna)アルミニウム塩、QS21、及びMPLまたはGLAを一緒になどの、2つ以上の異なるアジュバントが同時に使用されてもよい。また、任意でアルミニウム塩、QS21、及びMPL、ならびにこれらの全ての組み合わせのうちのいずれかと組み合わせて、フロイント不完全アジュバント(例えば、Chang et al.,Advanced Drug Delivery Reviews32,173−186(1998)を参照されたい)が使用されてもよい。
特定の実施形態において、DSLPアジュバント、例えば、式(I)のアジュバントは、任意でコアジュバントとともに、医薬品(またはアジュバント組成物)中に配合されてもよく、これらのそれぞれは以下に論じられるか、または本明細書に記載されるか、もしくは当該技術分野において入手可能である任意の他のアジュバントである。この点に関して、米国GLAアジュバントのための水性配合物(AF)及び安定乳濁剤配合物(SE)などの配合物を提供する、米国特許公開第2008/0131466号への言及がなされ、これらの配合物は、式(I)のアジュバントのうちのいずれに関しても使用することができる。
本明細書において提供するように、式(I)のアジュバントなどのDSLPアジュバントは、本明細書でコアジュバントと呼ばれる第2のアジュバントと組み合わせて使用することができる。3つの例示的な実施形態において、コアジュバントは送達系であってもよく、それは免疫増強剤であってもよく、それは送達系及び免疫増強剤の両方として機能する組成物であってもよい(例えば、O’Hagan et al.,Pharm.Res.21(9):1519−30(2004)を参照されたい)。コアジュバントは、Toll様受容体ファミリー生体分子の構成員を介して機能する免疫増強剤であってもよい。例えば、コアジュバントは、その一次作用様式について、TLR4アゴニスト、またはTLR8アゴニスト、またはTLR9アゴニストのいずれかとして選択されてもよい。あるいはまたは追加で、コアジュバントは、その担体特性について選択されてもよく、例えば、コアジュバントは、乳濁剤、リポソーム、微粒子、またはミョウバンであってもよい。
一実施形態において、コアジュバントはミョウバンであり、この用語はリン酸アルミニウム(AlPO4)及び水酸化アルミニウム(Al(OH)3)などのアルミニウム塩を指す。ミョウバンがコアジュバントとして使用される場合、ミョウバンは、免疫原性組成物(または免疫原性組成物を含む調製物)の1用中量に、約100〜1,000μg、または200〜800μg、または300〜700μg、または400〜600μgの量で存在し得る。式(1)のアジュバントは典型的には、ミョウバンの量未満の量で存在し、様々な特定の実施形態において、式(1)のアジュバントは、重量に基づいて、ミョウバンの重量に対して0.1〜1%、または1〜5%、または1〜10%、または1〜100%で存在する。
特定の一実施形態において、アジュバントは、ワクチンまたは免疫原性組成物中で使用するのに十分なアジュバント化特性を有する乳濁剤である。そのような乳濁剤としては、水中油型乳濁剤が挙げられる。フロイント不完全アジュバント(IFA)は、1つのそのようなアジュバントである。別の好適な水中油型乳濁剤は、スクアレンと、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(Tween(商標)80界面活性剤としても知られる)と、ソルビタントリオレートとを含有するMF−59(商標)アジュバントである。スクアレンは、本来サメの肝油から取得される天然の有機化合物であるが、アマランス種、米糠、コムギ胚芽、及びオリーブを含む植物源(主に野菜油)からも入手可能である。他の好適なアジュバントは、Montanide(商標)ISA50V(鉱物油系アジュバントである)、Montanide(商標)ISA206、及びMontanide(商標)IMS1312を含む、Montanide(商標)アジュバント(Seppic Inc.,Fairfield NJ)である。鉱物油がコアジュバント中に存在し得るものの、一実施形態において、本明細書に記載される免疫原性組成物の油構成成分(複数可)は、全て代謝可能な油である。
本明細書に記載される方法の実施においてコアジュバントとして使用され得る免疫増強剤の例としては、MPL(商標)、MDP及び誘導体、オリゴヌクレオチド、二本鎖RNA、代替的な病原体関連分子パターン(PAMPS)、サポニン、小分子免疫増強剤(SMIP)、サイトカイン、ならびにケモカインが挙げられる。
一実施形態において、コアジュバントは、GlaxoSmithKlineから商業的に入手可能な(当初ImmunoChem Research,Inc.Hamilton,MTによって開発された)MPL(商標)アジュバントである。例えば、Ulrich and Myers,Chapter21from Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach,Powell and Newman,eds.Plenum Press,New York(1995)を参照されたい。MPL(商標)アジュバントに関連して、本明細書に記載される組成物及び方法においてコアジュバントとしての使用に好適であるのは、AS02(商標)アジュバント及びAS04(商標)アジュバントである。AS02(商標)アジュバントは、MPL(商標)アジュバント及びQS−21(商標)アジュバント(本明細書において他で論じるサポニンアジュバント)の両方を含有する水中油型乳濁剤である。AS04(商標)アジュバントは、MPL(商標)アジュバント及びミョウバンを含有する。MPL(商標)アジュバントは、LPSを弱酸及び塩基加水分解で処理し、その後、修飾されたLPSを精製することによって、サルモネラ・ミネソタR595のリポ多糖(LPS)から調製される。
別の実施形態において、コアジュバントは、キラヤ・サポナリア木種の樹皮に由来するものなどのサポニン、または修飾サポニン(例えば、米国特許第5,057,540号、同第5,273,965号、同第5,352,449号、同第5,443,829号、及び同第5,560,398号を参照されたい)である。Antigenics,Inc.Lexington,MAによって販売される製品QS−21(商標)アジュバントは、式(I)のアジュバントとともに使用され得る、例示的なサポニン含有コアジュバントである。サポニンに関連した代替的なコアジュバントは、当初Iscotec(Sweden)によって開発され、典型的には、全てが蜂巣様構造へと形成された、キラヤ・サポナリアまたは合成類似体に由来するサポニン、コレステロール、及びリン脂質から形成される、ISCOM(商標)ファミリーのアジュバントである。
更に別の実施形態において、コアジュバントは、コアジュバントとして機能するサイトカインである(例えば、Lin et al.,Clin.Infect.Dis.21(6):1439−49(1995)、Taylor,Infect.Immun.63(9):3241−44(1995)、及びEgilmez,Chap.14,Vaccine Adjuvants and Delivery Systems,John Wiley&Sons,Inc.(2007)を参照されたい)。様々な実施形態において、サイトカインは、例えば、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(例えば、Change et al.,Hematology9(3):207−15(2004)、Dranoff,Immunol.Rev.188:147−54(2002)、及び米国特許第5,679,356号を参照されたい);あるいはI型インターフェロン(例えば、インターフェロン−α(IFN−α)もしくはインターフェロン−β(IFN−β))またはII型インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ(IFN−γ)(例えば、Boehm et al.,Ann.Rev.Immunol.15:749−95(1997)、及びTheofilopoulos et al.,Ann.Rev.Immunol.23:307−36(2005)を参照されたい)などのインターフェロン;インターロイキン−1α(IL−1α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−2(IL−2)(例えば、Nelson,J.Immunol.172(7):3983−88(2004)を参照されたい)を特に含むインターロイキン;インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−12(IL−12)(例えば、Portielje et al.,Cancer Immunol.Immunother.52(3):133−44(2003)、及びTrinchieri,Nat.Rev.Immunol.3(2):133−46(2003)を参照されたい);インターロイキン−15(Il−15)、インターロイキン−18(IL−18);胎児肝チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L)、または腫瘍壊死因子α(TNFα)であってもよい。式(I)のアジュバントなどのDSLPアジュバントは、ワクチン抗原と組み合わせる前にサイトカインとともに共配合されてもよく、抗原、DSLPアジュバント(例えば、式(I)のアジュバント)、及びサイトカインコアジュバントは、別個に配合されてから組み合わされてもよい。
特定の実施形態において、(単離され得る、かつ/または組み換えられ得る)免疫原を含む免疫原性組成物、及びアジュバントがともに配合される。他の特定の実施形態において、免疫原性組成物が2つ以上の免疫原を含む場合、アジュバントが各免疫原と別個に配合されても、2つ以上の免疫原がアジュバントとともに配合されて、単一免疫原性組成物を形成してもよい。2つ以上の免疫原が対象に投与されることが意図され、かつ免疫原がアジュバントと別個に配合される場合、各組成物が組み合わされて、単一免疫原性組成物を形成してもよい。
他の特定の実施形態において、免疫原を含む免疫原性組成物、または免疫原をコードする組み換え発現ベクターもしくはベクターを含むベクター粒子を含む組成物は、アジュバントを含有するバイアルとは別個のバイアルにパッケージングされ、供給される。免疫原性組成物及びアジュバントのそれぞれは、本明細書に詳細に記載される、薬学的に許容される(すなわち、生理学的に好適または許容される)賦形剤(複数可)と組み合わされてもよい。典型的には、意図される治療用途を示す適切な標識が、各組成物とともにパッケージングされる。アジュバント及び/または賦形剤の選択は、免疫原、組み換え発現ベクター、及び/もしくはベクター粒子の安定性;投与経路;投薬スケジュール;ワクチン接種される種に対するアジュバントの有効性に依存する。ヒトにおける投与について、薬学的に許容されるアジュバントは、関係する規制機関によってヒト投与が承認されているか、承認可能なものである。例えば、本明細書に論じられ、当該技術分野において既知であるように、フロイント完全アジュバントはヒト投与には好適ではない。
免疫学的組成物及び本明細書に記載される方法における使用に有用であるアジュバントは、アジュバントが投与される対象にとって生理学的または薬学的に好適なアジュバントである。アジュバント組成物は、少なくとも1つのアジュバント(すなわち、1つ以上のアジュバント)と、任意で、少なくとも1つの生理学的または薬学的に好適な(または許容される)賦形剤とを含む。薬学的組成物における使用が当業者に既知である、任意の生理学的または薬学的に好適な賦形剤または担体(すなわち、活性成分の活性と干渉しない無毒性材料)を、本明細書に記載されるアジュバント組成物中に用いることができる。例示的な賦形剤としては、アジュバントの構成成分(複数可)の安定性及び統合性を維持する希釈剤及び担体が挙げられる。治療的使用のための賦形剤は周知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21stEd.Mack Pub.Co.,Easton,PA(2005))に記載され、本明細書に詳細に記載される。
組み換え発現ベクター
一実施形態において、免疫原に対する、及びそのそれぞれの指定抗原に対する免疫応答を誘導する少なくとも1つの免疫原をコードするポリヌクレオチド配列を含む、組み換え発現ベクターが提供される。免疫原の効率的な転写及び翻訳を取得するために、各ベクター中のコードするポリヌクレオチド配列は、コードするポリヌクレオチド配列(複数可)に作動的に連結される、少なくとも1つの適切な発現制御配列(制御発現配列または特徴とも呼ばれる)(例えば、プロモーター、エンハンサー、リーダー)を含み、これは本明細書に詳細に記載される。故に、これらの組み換え発現ベクターは、組み換え発現ベクターまたは組み換え発現ベクターを含有するベクター粒子で形質転換、形質導入、またはトランスフェクトされている任意の適切な宿主細胞中での免疫原の発現を指示するため、または少なくとも2つの免疫原の同時発現を指示するために提供される。
本明細書に記載される組み換え発現ベクターは、1つ以上の免疫原(すなわち、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つの免疫原など)をコードしてもよく、これらの免疫原は、本明細書に詳細に記載される。特定の実施形態において、感染性微生物(例えば、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫)からの少なくとも1つ、2つ、もしくは3つ、またはそれ以上の免疫原が、組み換え発現ベクターによってコードされ得る。感染性疾患微生物から取得される免疫原及び指定抗原は、本明細書に詳細に記載される。例として、免疫原は、UL19もしくはgD(またはこれらの免疫原性バリアント)などのHSV−2タンパク質であっても、HSV−2タンパク質の免疫原性断片または領域であってもよい。別の特定の実施形態において、本明細書に記載される組み換え発現ベクターは、少なくとも1つ、2つ、3つ、もしくはそれ以上の腫瘍関連抗原またはそれらの免疫原性をコードしてもよい。これらの腫瘍関連抗原は、本明細書に詳細に記載され、例えば、腎細胞癌抗原、前立腺癌抗原(例えば、前立腺酸性ホスファターゼ、前立腺特異的抗原、NKX3.1、及び前立腺特異的膜抗原)、中皮腫抗原、膵臓癌抗原、黒色腫抗原、乳癌抗原、結腸直腸癌抗原、肺癌抗原、卵巣癌抗原、または本明細書または当該技術分野において記載される任意の癌もしくは腫瘍関連抗原からの腫瘍関連抗原であってもよい。
組み換え発現ベクターは、本明細書に記載される免疫原のうちのいずれか1つ以上の発現のために使用され得る。特定の実施形態において、組み換え発現ベクターは、免疫応答(すなわち、特異的体液性応答(すなわち、B細胞応答)ならびに/または特異的細胞薬用免疫応答(これは免疫原特異的CD4及び/もしくはCD8T細胞応答を含み得、このCD8T細胞応答は細胞傷害性T細胞(CTL)応答を含み得る)の誘導)を誘導する、適切な細胞(例えば、抗原提示細胞、すなわち、樹状細胞などの、その細胞表面上にペプチド/MHC複合体を呈する細胞)または組織(例えば、リンパ組織)に送達される。したがって、組み換え発現ベクターは、例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、または樹状細胞特異的TREなどのリンパ組織特異的転写制御要素(TRE)もまた含み得る。リンパ組織特異的TREは、当該技術分野において既知である(例えば、Thompson et al.,Mol.Cell.Biol.12,1043−53(1992)、Todd et al.,J.Exp.Med.177,1663−74(1993)、Penix et al.,J.Exp.Med.178:1483−96(1993)を参照されたい)。
特定の一実施形態において、組み換え発現ベクターは、プラスミドDNAまたはコスミドDNAである。本明細書に記載される免疫原をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含有するプラスミドDNAまたはコスミドDNAは、当該技術分野において周知である標準技術を使用して容易に構築される。ベクターゲノムは、典型的には、プラスミド形態で構築され得、これはその後、パッケージングまたは産生細胞株へとトランスフェクトされ得る。プラスミドは一般に、細菌中でのプラスミドの複製に有用な配列を含む。そのようなプラスミドは、当該技術分野において周知である。更に、原核生物の複製起点を含むベクターはまた、その発現が薬物抵抗性などの検出可能または選択可能なマーカーを与える遺伝子を含み得る。典型的な細菌薬物抵抗性産生物は、アンピシリンまたはテトラサイクリンに対する抵抗性を与えるものである。正確なヌクレオチド配列がプラスミド中に組み込まれていることを確認するための分析のために、プラスミドが大腸菌中で複製され、精製され、制限エンドヌクレアーゼ消化によって分析され得る、かつ/またはそのヌクレオチド配列が従来の方法によって決定され得る。
他の特定の実施形態において、組み換え発現ベクターはウイルスベクターである。例示的な組み換え発現ウイルスベクターとしては、レンチウイルスベクターゲノム、ポックスウイルスベクターゲノム、ワクシニアウイルスベクターゲノム、アデノウイルスベクターゲノム、アデノウイルス関連ウイルスベクターゲノム、ヘルペスウイルスベクターゲノム、及びアルファウイルスベクターゲノムが挙げられる。ウイルスベクターは、生きたもの、弱毒化されたもの、複製条件的なもの、または複製欠損のものであってもよく、典型的には、非病原性(不完全)複製能があるウイルスベクターである。
例として、特定の一実施形態において、ウイルスベクターがワクシニアウイルスベクターゲノムである場合、対象となる免疫原をコードするポリヌクレオチドは、ワクシニアウイルスベクターの非必須部位に挿入され得る。そのような非必須部位は、例えば、Perkus et al.,Virology152:285(1986)、Hruby et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA80:3411(1983)、Weir et al.,J.Virol.46:530(1983)に記載される。ワクシニアウイルスとの使用が好適なプロモーターとしては、P7.5(例えば、Cochran et al.,J.Virol.54:30(1985)を参照されたい)、P11(例えば、Bertholet,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:2096(1985)を参照されたい)、及びCAE−1(例えば、Patel et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:9431(1988)を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。高度に弱毒化されたワクシニア株は、ヒトにおける使用がより許容され、それらには、Lister、特定のゲノム欠失を含有するNYVAC(例えば、Guerra et al.,J.Virol.80:985−98(2006)、Tartaglia et al.,AIDS Research and Human Retroviruses8:1445−47(1992)を参照されたい)、またはMVA(例えば、Gheradi et al.,J.Gen.Virol.86:2925−36(2005)、Mayr et al.,Infection3:6−14(1975)を参照されたい)が挙げられる。Huら(癌療法のためのベクターとしての、ヤバ様疾患ウイルスの使用を記載する、J.Virol.75:10300−308(2001))、米国特許第5,698,530号及び同第6,998,252号も参照されたい。例えば、米国特許第5,443,964号も参照されたい。それぞれの全体が参照によって組み込まれる、米国特許第7,247,615号及び同第7,368,116号も参照されたい。
特定の実施形態において、アデノウイルスベクターまたはアデノウイルス関連ウイルスベクターが、対象となる免疫原を発現させるために使用され得る。いくつかのアデノウイルスベクター系及び該ベクターを投与する方法が記載されている(例えば、Molin et al.,J.Virol.72:8358−61(1998)、Narumi et al.,Am J.Respir.Cell Mol.Biol.19:936−41(1998)、Mercier et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101:6188−93(2004)、米国特許第6,143,290号、同第6,596,535号、同第6,855,317号、同第6,936,257号、同第7,125,717号、同第7,378,087号、同第7,550,296号を参照されたい)。
レトロウイルスベクターゲノムとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、エコトロピックレトロウイルス、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及び組み合わせ(例えば、Buchscher et al.,J.Virol.66:2731−39(1992)、Johann et al.,J.Virol.66:1635−40(1992)、Sommerfelt et al.,Virology176:58−59(1990)、Wilson et al.,J.Virol.63:2374−78(1989)、Miller et al.,J.Virol.65:2220−24(1991)、Miller et al.,Mol.Cell Biol.10:4239(1990)、Kolberg,NIH Res.4:43 1992、Cornetta et al.,Hum.Gene Ther.2:215(1991)を参照されたい)に基づくものを挙げることができる。
より具体的な一実施形態において、組み換え発現ウイルスベクターはレンチウイルスベクターゲノムである。ゲノムは、ヒト遺伝子両方用途のために特定されているものを含む、多数の好適な入手可能なレンチウイルスゲノム系ベクターのうちのいずれかに由来し得る(例えば、Pfeifer et al.,Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.2:177−211(2001)を参照されたい)。好適なレンチウイルスベクターゲノムとしては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)、HIV−2、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ感染性貧血ウイルス、サル免疫不全ウイルス(SIV)、及びマエディ/ビスナウイルスに基づくものが挙げられる。レンチウイルスの望ましい特徴は、それらが分裂細胞及び非分裂細胞の両方を感染させ得ることであるが、標的細胞は分裂細胞及である必要も、分裂が刺激される必要もない。一般に、ゲノム及び外被糖タンパク質は異なるウイルスに基づくため、結果として得られるウイルスベクター粒子は偽型化されている。ベクターゲノムの安全性特徴が、望ましく組み込まれる。安全性特徴は、自己不活性化LTR及び非組み込みゲノムを含む。例示的なベクターは、パッケージングシグナル(psi)、Rev応答要素(RRE)、スプライス供与体、スプライス受容体、中央ポリプリントラクト(cPPT)、及びWPRE要素を含有する。特定の例示的な実施形態において、ウイルスベクターゲノムは、HIV−1ゲノムまたはSIVゲノムなどのレンチウイルスゲノムからの配列を含む。ウイルスゲノム構築物は、レンチウイルスの5’及び3’LTRからの配列を含み得、特にレンチウイルスの5’LTR、ならびにレンチウイルスの不活性化または自己不活性化3’LTRからのR及びU5配列を含み得る。LTR配列は、任意の種の任意のレンチウイルスからのLTR配列であり得る。例えば、それらは、HIV、SIV、FIV、またはBIVからのLTR配列であってもよい。典型的には、LTR配列はHIV LTR配列である。
ベクターゲノムは、不活性化または自己不活性化3’LTRを含み得る(例えば、これらの両方の全体が組み込まれる、Zufferey et al.,J.Virol.72:9873,1998、Miyoshi et al.,J.Virol.72:8150,1998を参照されたい)。自己不活性化ベクターは一般に、ベクター組み込み中に5’LTR中に複写される、3’長末端反復(LTR)からのエンハンサー配列及びプロモーター配列の欠失を有する。一例において、3’LTRのU3要素は、そのエンハンサー配列の欠失、TATAボックス、Sp1及びNF−カッパB部位を含有する。自己不活性化3’LTRの結果として、侵入及び逆転写に続いて生成されるプロウイルスは不活性化5’LTRを含むであろう。理論的根拠は、ベクターゲノムの可動化のリスク及び付近の細胞性プロモーターに対するLTRの影響を低下させることによって、安全性を改善することである。自己不活性化3’LTRは、当該技術分野において既知である任意の方法によって構築され得る。
任意で、レンチウイルス5’LTRからのU3配列は、異種プロモーター配列などのウイルス構築物中のプロモーター配列で置換されてもよい。これは、パッケージング細胞株から回収されるウイルスの力価を増加させることができる。エンハンサー配列もまた、含まれてもよい。パッケージング細胞株中でウイルスRNAゲノムの発現を増加させる、任意のエンハンサー/プロモーターの組み合わせが使用され得る。一例において、CMVエンハンサー/プロモーター配列が使用される(例えば、米国特許第5,385,839号及び同第5,168,062号を参照されたい)。
特定の実施形態において、挿入変異誘発のリスクは、レンチウイルスベクターゲノムを組み込みが不完全であるように構築することによって最小化される。非組み込みベクターゲノムを産生するための様々なアプローチが探究され得る。これらのアプローチは、変異(複数可)を、pol遺伝子のインテグラーゼ酵素構成成分へと操作して、それが不活性インテグラーゼを有するタンパク質をコードするようにすることを必要とする。ベクターゲノム自体が修飾されて、例えば、一方もしくは両方の結合部位を変異または欠失させること、あるいは欠失または修飾を通して3’LTR近位ポリプリントラクト(PPT)を非機能性にすることによって、組み込みが予防され得る。更に、非遺伝子的アプローチが利用可能であり、これらは、インテグラーゼの2つ以上の機能を阻害する薬理学的薬剤を含む。アプローチは相互排他的ではなく、つまり、それらのうちの2つ以上を同時に使用することができる。例えば、インテグラーゼ及び結合部位が非機能性であってもよく、インテグラーゼ及びPPT部位が非機能性であってもよく、結合部位及びPPT部位が非機能性であってもよく、それらの全てが非機能性であってもよい。
インテグラーゼは、ウイルス二本鎖平滑末端化DNAの切断に関与し、その末端を、染色体標的部位の二本鎖中の5’−リン酸に連結させる。インテグラーゼは、3つの機能ドメイン、つまり、亜鉛結合モチーフ(HHCC)を含有するN−末端ドメインと、触媒コア及び保存されたDD35Eモチーフ(HIV−1中のD64、D116、E152)を含有する中央ドメインコアと、DNA結合特性を有するC−末端ドメインとを有する。インテグラーゼ中に導入された点変異は、正常な機能を妨害するのに十分である。多くのインテグラーゼ変異が構築され、特性評価されている(例えば、Philpott and Thrasher,Human Gene Therapy18:483,2007、Apolonia,Thesis submitted to University College London,April2009,pp,82−97、Engelman et al.,J.Virol.69:2729,1995、Nightingale et al.,Mol.Therapy,13:1121,2006を参照されたい)。インテグラーゼタンパク質をコードする配列を欠失または変異させて、好ましくは逆転写酵素活性または核内標的化を有意には損なわずに、タンパク質を不活性にし、それにより、標的細胞ゲノムへのプロウイルスの組み込みのみを予防してもよい。許容される変異は、インテグラーゼ触媒作用、鎖転移、att部位への結合、宿主染色体DNAへの結合、及び他の機能を低下させ得る。例えば、HIVまたはSIVインテグラーゼの残基35でのアスパラギン置換に対する単一のアスパラギン酸は、ウイルスDNA組み込みを完全に消失させる。インテグラーゼの欠失は、一般にC−末端ドメインに限定される。残基235〜288のコード配列の欠失は、有用な非機能性インテグラーゼをもたらす(例えば、Engelman et al.,J.Virol.69:2729,1995を参照されたい)。更なる例として、変異、例えば、Asp64(残基数はHIV−1のものが与えられるが、他のレンチウイルスまたはレトロウイルスからのインテグラーゼの対応する残基数は当業者によって容易に決定され得る)(例えば、D64E、D64V)、Asp116(例えば、D116N)、Asn120(例えば、N120K)、Glu152、Gln148(例えば、Q148A)、Lys156、Lys159、Trp235(例えば、W235E)、Lys264(例えば、K264R)、Lys266(例えば、K266R)、Lys273(例えば、K273R)が生成され得る。他の変異が構築され、組み込み、導入遺伝子発現、及び任意の他の望ましいパラメータについて試験され得る。これらの機能のためのアッセイは、周知である。変異は、部位特異的変異誘発及び核酸配列の化学合成を含む様々な技術のうちのいずれかによって生成され得る。1つの変異が作製されても、インテグラーゼ中にこれらの変異のうちの1つ以上が存在してもよい。例えば、インテグラーゼは、2つのアミノ酸、3つのアミノ酸、4つのアミノ酸などで変異を有し得る。
あるいはまたはインテグラーゼ変異体(複数可)の使用と組み合わせて、U3及びU5における結合部位(att)もまた、変異されてもよい。インテグラーゼはこれらの部位に結合し、3’−末端ジヌクレオチドはベクターゲノムの両末端で切断される。CAジヌクレオチドは後退した3’末端に位置し、CAはプロセシングのために必要とされ、ヌクレオチドの変異は宿主染色体への組み込みを遮断する。CAジヌクレオチドのAは組み込みに最も重要なヌクレオチドであり、ゲノムの両末端での変異は最良の結果をもたらす(例えば、Brown et al.,J.Virol.73:9011(1999)を参照されたい)。一例証において、各末端のCAはTGに変化する。他の例証において、各末端のCAは、一方の末端でTGに、及び他方の末端でGTに変化する。他の例証において、各末端のCAは欠失され、他の例証において、CAのAは各末端で欠失される。
組み込みはまた、3’LTRの近位に位置する、ポリプリントラクト(PPT)の変異または欠失によっても阻害され得る(例えば、国際公開第2009/076524号を参照されたい)。PPTは、プラス鎖DNA合成ためのプライマー結合部位としての役割を果たし得る約15個のヌクレオチドのポリプリン配列である。この例において、PPTの変異または欠失は、逆転写プロセスを標的化する。特定の機構によって拘束されることを望むものではないが、PPTを変異または欠失させることによって直鎖状DNAの産生は急激に低下し、本質的に1−LTR DNA環のみが産生される。組み込みは直鎖状二本鎖DNAベクターゲノムを必要とし、組み込みはそれなしでは本質的に除去される。本明細書に述べるように、PPTは、変異または欠失によって非機能性にされてもよい。典型的には、約15ntのPPT全体が欠失されるが、いくつかの実施形態において、14nt、13nt、12nt、11nt、10nt、9nt、8nt、7nt、6nt、5nt、4nt、3nt、及び2ntのより短い欠失が作製されてもよい。変異が作製される場合、典型的には、特にPPTの5’半分において複数の変異が作製される(例えば、McWilliams et al.,J.Virol.77:11150,2003を参照されたい)が、最初の4つの塩基における一重及び二重変異も依然として転写を低下させる。PPTの3’末端で作製された変異は一般に、より劇的な影響を有する(例えば、Powell et al.,J.Virol.70:5288,1996を参照されたい)。
ベクターゲノムを非組み込み性にするためのこれらの異なるアプローチは、個々でも、組み合わせでも使用することができる。1つ以上のアプローチの使用は、重複した機構を通して絶対安全なベクターを構築するために使用され得る。故に、PPT変異または欠失は、att部位変異もしくは欠失と、またはインテグラーゼ変異と組み合わせることができるか、あるいはPPT変異もしくは欠失は、att部位変異もしくは欠失及びインテグラーゼ変異の両方と組み合わせることができる。同様に、att部位変異もしくは欠失及びインテグラーゼ変異は、互いに、またはPPT変異もしくは欠失と組み合わせることができる。
本明細書に記載するように、レンチウイルスベクター構築物は、哺乳類細胞中での発現のためのプロモーターを含有する。本明細書に詳細に論じられるプロモーターとしては、例えば、ヒトユビキチンCプロモーター(UbiC)、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV)、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターが挙げられる。U3領域は、すぐ上流にPPT(ポリプリントラクト)配列を含み得る。特定の具体的な実施形態において、少なくとも3つの異なる(3’末端での)U3領域のうちのいずれか1つが、レンチウイルスベクター中に含まれ得る(米国第20120328655号の配列番号21〜23を参照されたい)。構築物は、U3領域中に欠失を含有する。SIN構築物は、U3中に約130ヌクレオチドの欠失を有し(例えば、Miyoshi,et al.J.Virol.72:8150,1998、Yu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA83:3194,1986を参照されたい)、これがTATAボックスを取り除き、それにより、LTRプロモーター活性を消失させる。構築物703及び704中の欠失は、レンチウイルスベクターからの発現を増加させる(例えば、Bayer et al.,Mol.Therapy16:1968,2008を参照されたい)。更に、構築物704は、ベクターの組み込みを減少させる3’PPTの欠失を含有する(例えば、国際公開第2009/076524号を参照されたい)。それぞれの全体が参照によって組み込まれる、米国特許出願第12/842,609号及び国際特許出願公開第2011/011584号(国際特許出願第PCT/US10/042870号)も参照されたい。
制御発現配列
本明細書に記載するように、組み換え発現ベクターは、少なくとも1つの制御発現配列を含む。特定の実施形態において、組み換え発現ベクターがウイルスベクターゲノムを含む場合、特定の標的細胞中で、少なくとも1つの免疫原の発現が所望される。典型的には、例えば、レンチウイルスベクターにおいて、免疫原をコードするポリヌクレオチド配列は、5’LTR配列と3’LTR配列との間に位置する。更に、コードするヌクレオチド配列(複数可)は、好ましくは、特定の様式で免疫原の発現を制御する他の遺伝子もしくは制御配列または特徴、例えば、プロモーターまたはエンハンサーを含む転写制御配列と、機能的な関係性で、作動的に連結される。特定の例において、有用な転写制御配列は、時間的及び空間的の両方で、活性に関して高度に制御されるものである。コードされたポリペプチドの発現の制御に使用され得る発現制御要素は当該技術分野において既知であり、誘導性プロモーター、恒常性プロモーター、分泌シグナル、エンハンサー、及び他の制御配列が挙げられるが、これらに限定されない。
免疫原をコードするポリヌクレオチド及び任意の他の発現可能配列は、典型的には内部プロモーター/エンハンサー制御配列と機能的関係性にある。レンチウイルスベクター構築物に関して、「内部」プロモーター/エンハンサーは、ウイルスベクター中、5’LTR配列と3’LTR配列との間に位置し、対象となるコードするポリヌクレオチド配列に作動的に連結されるものである。内部プロモーター/エンハンサーは、それが機能的関係性にある遺伝子の発現を増加させることが既知である、任意のプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーの組み合わせであり得る。「機能的関係性」及び「作動的に連結」とは、プロモーター及び/またはエンハンサーが適切な分子に接触すると対象となる配列が発現されるように、配列が、プロモーター及び/またはエンハンサーに関して正確な位置及び配向にあることを非限定的に意味する。
内部プロモーター/エンハンサーの選択は、免疫原の所望される発現パターン及び既知のプロモーター/エンハンサーの特定の特性に基づく。故に、内部プロモーターは恒常活性型である。使用され得る恒常性プロモーターの非限定的な例としては、ユビキチンのためのプロモーター(例えば、米国特許第5510474号、国際公開第98/32869号を参照されたい)、CMV(例えば、Thomsen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:659,1984、米国特許第5168062号を参照されたい)、ベータ−アクチン(Gunning et al.1989Proc.Natl.Acad.Sci.USA84:4831−4835)、ならびにpgk(例えば、Adra et al.1987Gene60:65−74、Singer−Sam et al.1984Gene32:409−417、及びDobson et al.1982Nucleic Acids Res.10:2635−2637を参照されたい)が挙げられる。
あるいは、プロモーターは組織特異的プロモーターであってもよい。いくつかの実施形態において、プロモーターは標的細胞特異的プロモーターである。例えば、プロモーターは、CD11c、CD103、TLR、DC−SIGN、BDCA−3、DEC−205、DCIR2、マンノース受容体、デクチン−1、Clec9A、MHCクラスIIを含む樹状細胞によって発現された任意の産生物由来のものであってもよい。更に、プロモーターは、免疫原の誘導性発現を可能にするように選択され得る。テトラサイクリン応答系、lacオペレーター−リプレッサー系を含む、いくつかの誘導性発現のための系、ならびにヒートショック、金属イオン(メタロチオネインプロモーターなど)、インターフェロン、低酸素、ステロイド(プロゲステロンもしくはグルココルチコイド受容体プロモーターなど)、放射線(VEGFプロモーター)を含む様々な環境的または生理学的変化に対して応答性であるプロモーターが当該技術分野において既知である。プロモーターの組み合わせを使用して、免疫原をコードするポリヌクレオチド配列のそれぞれの所望される発現を取得してもよい。当業者は、対象となる生物または標的細胞におけるポリヌクレオチド配列の所望される発現パターンに基づいて、プロモーターを選択することができるであろう。
ウイルスベクターゲノムを含む組み換え発現ベクターは、少なくとも1つのRNAポリメラーゼIIまたはIII応答プロモーターを含み得る。このプロモーターは、対象となるポリヌクレオチド配列に作動的に連結され得、終了配列にも連結され得る。更に、1つ以上のRNAポリメラーゼIIまたはIIIプロモーターが組み込まれてもよい。RNAポリメラーゼII及びIIIプロモーターは、当業者に周知である。好適な範囲のRNAポリメラーゼIIIプロモーターは、例えば、Paule and White,Nucleic Acids Res.,Vol.28,pp1283−1298(2000)に見出すことができる。RNAポリメラーゼIIまたはIIIプロモーターはまた、RNAポリメラーゼIIまたはIIIに下流RNAコード配列の転写を指示し得る、任意または操作されたDNA断片の合成も含み得る。更に、ウイルスベクターゲノムの一部として使用されるRNAポリメラーゼIIまたはIII(Pol IIまたはIII)プロモーター(複数可)は、誘導性であり得る。任意の好適な誘導性PolIIまたはIIIプロモーターを、本明細書に記載される方法とともに使用することができる。特に適したPolIIまたはIIIプロモーターとしては、Ohkawa and Taira,Human Gene Therapy,11:577−585(2000)及びMeissner et al.,Nucleic Acids Res.,29:1672−1682(2001)に提供されるテトラサイクリン応答プロモーターが挙げられる。
対象となるポリヌクレオチド配列の発現を増加させる内部エンハンサーもまた、ウイルスベクターゲノムを含む組み換え発現ベクター中に存在し得る。例えば、CMVエンハンサー(例えば、Boshart et al.,Cell41:521,1985)が使用され得る。HIV、CMVなどのウイルスゲノム中、及び哺乳類ゲノム中の多くのエンハンサーは特定され、特性評価されている(例えば、GenBankなどの公的に利用可能なデータベースを参照されたい)。エンハンサーは、異種プロモーターと組み合わせて使用することができる。当業者は、所望される発現パターンに基づいて、適切なエンハンサーを選択することができるであろう。
ウイルスベクターゲノムを含む組み換え発現ベクターの、特定の標的細胞への送達を標的化する場合、ベクターゲノムは通常、標的細胞によって認識され、対象となる配列に作動的に連結されるプロモーターと、ウイルス構成成分(ベクターがウイルスベクターである場合)と、本明細書に論じる他の配列とを含有する。プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合及び転写の発生を可能にする核酸配列によって形成される発現制御要素である。プロモーターは、誘導性であっても、恒常性であっても、一時的に活性であっても、組織特異的であってもよい。誘導性プロモーターの活性は、生物因子または非生物因子の存在または不在によって誘導される。誘導性プロモーターは、それらが作動的に連結される遺伝子の発現が、生物の発達、その製造特定の段階、または特定の組織においてオンまたはオフに切り替えられ得るため、遺伝子操作において有用なツールであり得る。誘導性プロモーターは、化学的に制御されたプロモーター及び物理的に制御されたプロモーターとしてグループ化され得る。典型的には、化学的に制御されたプロモーターとしては、アルコール制御されたプロモーター(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)遺伝子プロモーター)、テトラサイクリン制御されたプロモーター(例えば、テトラサイクリン応答プロモーター)、ステロイド制御されたプロモーター(例えば、ラットグルココルチコイド受容体(GR)系プロモーター、ヒトエストロゲン受容体(ER)系プロモーター、ガ・エクジソン受容体系プロモーター、及びステロイド/レチノイド/甲状腺受容体スーパーファミリーに基づくプロモーター)、金属制御されたプロモーター(例えば、メタロチオネイン遺伝子系プロモーター)、ならびに病態形成関連プロモーター(例えば、シロイヌナズナ及びトウモロコシ病原体関連(PR)タンパク質系プロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、物理的に制御されたプロモーターの例としては、温度制御されたプロモーター(例えば、ヒートショックプロモーター)及び光制御されたプロモーター(例えば、ダイズSSUプロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例示的なプロモーターは、他に、例えば、米国特許商標局のデータベースを検索することによって特定され得る特許及び公開特許出願において記載される。
当業者は、特定の状況に基づいて、適切なプロモーターを選択することができるであろう。多くの異なるプロモーター、及び発現されるポリヌクレオチド配列にプロモーターを作動的に連結させるための方法が、当該技術分野において周知である。天然プロモーター配列及び多くの異種プロモーターの両方を使用して、パッケージング細胞及び標的細胞における発現を指示することができる。異種プロモーターは典型的には、天然プロモーターと比較して、それらが一般に所望されるタンパク質のより大きな転写及びより高い収率を可能にするために使用される。
プロモーターは、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトルウイルス、B型肝炎ウイルス、及びサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから取得されてもよい。プロモーターはまた、例えば、異種哺乳類プロモーター、例えば、アクチンプロモーターもしくは免疫グロブリンプロモーター、ヒートショックプロモーター、または通常天然配列に関連するプロモーター(但し、そのようなプロモーターが標的細胞と適合することを条件とする)であってもよい。一実施形態において、プロモーターは、ウイルス発現系において天然に存在するウイルスプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、樹状細胞特異的プロモーターである。樹状細胞特異的プロモーターは、例えば、CD11cプロモーターであり得る。
転写は、ベクター(複数可)にエンハンサー配列を挿入することによって増加させることができる。エンハンサーは、典型的には、プロモーターにその転写を増加させるように作用する、通常約10〜300塩基対長のDNAのシス作用性要素である。現在、哺乳類遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ−胎児タンパク質、及びインスリン)から、ならびに真核生物細胞ウイルスからの多くのエンハンサー配列が既知である。例としては、複製起点の後期側上のSV40エンハンサー(塩基対100〜270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側上のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、位置5’または3’で、ベクター中、抗原特異的ポリヌクレオチド配列にスプライスされ得るが、好ましくは、プロモーターからの部位5’に位置する。
発現ベクターはまた、転写の終了のため、及びmRNAの安定化のために必要とされる配列も含有し得る。これらの配列は、5’、及び時折3’、真核生物の未翻訳領域、またはウイルスDNAもしくはcDNAにおいてしばしば見出され、当該技術分野において周知である。
ウイルスベクターゲノムを含む組み換え発現構築物はまた、追加の遺伝要素を含有してもよい。構築物に含まれ得る要素の種類は決して限定されず、特定の結果を達成するように選択され得る。例えば、標的細胞中への組み換え発現ベクターまたはウイルスゲノムの核内侵入を促進するシグナルが含まれてもよい。そのようなシグナルの一例は、HIV−1フラップシグナルである。標的細胞中のプロウイルス組み込み部位の特性評価を促進する、追加の制御配列が含まれてもよい。例えば、tRNAアンバーサプレッサー配列が構築物中に含まれてもよい。例えば、ニワトリβ−グロビンからのインスレーター配列もまた、ウイルスゲノム構築物中に含まれてもよい。この要素は、メチル化及びヘテロクロマチン化効果のため、標的細胞中に組み込まれたプロウイルスをサイレンシングする確率を低下させる。更に、インスレーターは、内部エンハンサー、プロモーター、及び外因性ポリヌクレオチド配列を、染色体上の組み込み部位の周囲のDNAからの正または負の位置的効果から遮蔽し得る。更に、ベクターゲノムを含む組み換え構築物は、対象となる遺伝子の発現を亢進するように設計された1つ以上の遺伝要素を含有してもよい。例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス応答要素(WRE)が、構築物中に置かれてもよい(例えば、Zufferey et al.1999.J.Virol.74:3668−81、Deglon et al.,2000.Hum.Gene Ther.11:179−90を参照されたい)。
組み換え発現ベクターがウイルスベクターゲノムである場合、ウイルスベクターゲノムは典型的には、ウイルスベクターゲノム構築物を産生するためのパッケージングまたは産生細胞株へとトランスフェクトされ得る、プラスミド形態で構築される。プラスミドは一般に、細菌中でのプラスミドの複製に有用な配列を含む。そのようなプラスミドは、当該技術分野において周知である。更に、原核生物の複製起点を含むベクターはまた、その発現が薬物抵抗性などの検出可能または選択可能なマーカーを与える遺伝子を含み得る。典型的な細菌薬物抵抗性産生物は、アンピシリンまたはテトラサイクリンに対する抵抗性を与えるものである。
特定の構成において、組み換え発現ベクターは、1つ以上の刺激因子または免疫調節因子をコードするポリヌクレオチド配列を含有する。例示的な刺激分子または免疫調節分子としては、GM−CSF、IL−2、IL−4、IL−6、IL−7、IL−15、IL−21、IL−23、TNFα、B7.1、B7.2、4−1BB、CD40リガンド(CD40L)、薬物誘導性CD40(iCD40)などが挙げられる。これらのポリヌクレオチドは典型的には、樹状細胞中でのコード配列の発現を指示する1つ以上の制御要素の制御下にある。特定の他の実施形態において、免疫原と免疫調節因子または免疫刺激因子との両方をコードするヌクレオチド配列の発現を指示し、それを含む、組み換え発現ベクターが含まれる。一実施形態において、免疫原と、例えばGM−CSFとの両方をコードするヌクレオチド配列の発現を指示し、それを含む、組み換え発現ベクターが含まれる。
樹状細胞の成熟は、ワクチン接種の成功に寄与する(例えば、Banchereau et al.,Nat.Rev.Immunol.5:296−306(2005)、Schuler et al.,Curr.Opin.Immunol.15:138−147(2003)、Figdor et al.,Nat.Med.10:475−480(2004)を参照されたい)。成熟は、抗原捕獲に能動的に関与する細胞からのDCを、T細胞プライミングに特化した細胞へと形質転換させ得る。例えば、CD4−ヘルパーT細胞上のCD40LによるCD40の会合は、DC成熟にとって非常に重要なシグナルであり、CD8+T細胞の強力な活性化をもたらす。そのような刺激分子はまた、成熟因子または成熟刺激因子とも呼ばれ得る。
免疫チェックポイントは、癌において機能的な細胞性免疫の活性化に対する著しい障壁を呈し、CTLA4及びプログラム死−1(PD−1)を含むT細胞上の阻害リガンドに特異的なアンタゴニスト抗体は、診療所において評価されている標的剤の例である。慢性感染症及び癌における著しい耐性機構は、抗レベルのPD−1を発現させる抗原特異的T細胞の機能的消耗である。治療的免疫化の効力が、免疫チェックポイント制御と組み合わせることによって著しく亢進されることが示されているため、非限定的な例として、免疫チェックポイントを阻害するための代替的なアプローチは、プログラム死(PD)リガンドの1または2(PD−L1/L2)の発現または活性を阻害することであることが当業者によって認識され得る。阻害を達成するための1つの方法は、レンチウイルスベクターゲノムなどの、1つ以上の関連する分子をコードするウイルスベクターゲノムで形質導入されたDCにおける、PD−L1/L2の発現を阻止するRNA分子(本明細書に記載されるものなど)の発現によるものである。DCの成熟、または免疫チェックポイント、例えば、PD−1リガンドなどの特定の要素の発現は、MHC IIなどの表面マーカーの上方制御のフローサイトメトリー分析によって、ならびに、例えば、本明細書に記載される技術及び方法を実行することによる、発現されたケモカイン及びサイトカインのプロファイリングによって、特性評価され得る。
所望される免疫原を発現する細胞の特定を可能にするために、検出可能な産生物、通常タンパク質をコードする配列が含まれてもよい。例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光マーカータンパク質が、対象となる(すなわち、少なくとも1つの免疫原をコードする)ポリヌクレオチド配列とともに、組み換え発現構築物中に組み込まれる。他の例において、タンパク質は抗体によって検出可能であり得るか、あるいはタンパク質は基質に作用して、検出可能な産生物をもたらす酵素であり得るか、またはトランスフェクトもしくは形質導入された標的細胞の選択を可能にする、例えば、ハイグロマイシン抵抗性などの薬物抵抗性を与える、タンパク質産生物であり得る。典型的な選択遺伝子は、当該技術分野において既知であるものの中でもとりわけ、例えば、ネオマイシン、メトトレキサート、ブラスティサイジンなどの真核生物細胞における使用が好適である抗生物質もしくは他の毒素に対する抵抗性を与えるか、栄養素要求欠損を補うか、あるいは培地に与えられていない非常に重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。選択可能なマーカーは、任意で別個のプラスミド上に存在し、コトランスフェクションによって導入され得る。
本明細書に記載されるベクター粒子に関して、免疫原をコードするポリヌクレオチド配列、及び本明細書に記載される外被分子をコードする配列のうちの2つ以上、または1つ以上のDC成熟因子、パッケージング細胞における所望されるベクター粒子の産生に必要とされる免疫調節因子もしくは刺激因子を含む、1つ以上の多シストロン発現単位が使用されてもよい。多シストロンベクターの使用は、必要とされる核酸分子の総数を低下させ、故に、複数のベクターゲノムからの協調発現に関連する可能性のある困難を回避し得る。多シストロンベクターにおいて、発現される様々な要素は、1つ以上のプロモーター(及び必要に応じて他の発現制御要素)に作動的に連結される。いくつかの構成において、多シストロンベクターは、対象となる少なくとも1つ(すなわち、1つ以上)の免疫原をコードする配列と、レポーター産生物をコードする配列と、1つ以上のベクター粒子構成成分をコードする配列とを含む。組み換え構築物が免疫原をコードするポリヌクレオチドを含む特定の実施形態において、構築物は任意でDC成熟因子をコードする。特定の他の実施形態において、多シストロンベクターは、免疫原、DC成熟因子、及び発現ベクターがウイルス発現ベクターである場合、任意でウイルス構成成分のうちのそれぞれをコードするポリヌクレオチド配列を含む。更なる他の実施形態において、多シストロンベクターは少なくとも2つ以上の免疫原の発現を指示し、それらをコードする。
多シストロン発現ベクター中で発現される各構成成分は、例えば、内部リボソーム侵入部位(IRES)要素またはウイルス2A要素によって分離されて、様々なタンパク質が同一のプロモーターから別個に発現することを可能にしてもよい。IRES要素及び2A要素は、当該技術分野において既知である(例えば、米国特許第4,937,190号、de Felipe et al.2004.Traffic5:616−626を参照されたい)。一実施形態において、口蹄疫ウイルス(FMDV)、馬鼻炎Aウイルス(ERAV)、及びゾセア・アシグナウイルス(TaV)(例えば、Szymczak et al.2004 Nat.Biotechnol.22:589−594を参照されたい)からの2A様配列と連結されたフューリン切断部位配列(RAKR)(例えば、Fang et al.2005Nat.Biotech.23:584−590を参照されたい)などのオリゴヌクレオチドが、多シストロンベクター中の遺伝要素を分離させるために使用される。特定の多シストロンベクターの有効性は、標準プロトコルを使用して、遺伝子のそれぞれの発現を検出することによって容易に試験され得る。
特定の一例証において、ウイルスベクターゲノムは、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー/プロモーター配列;HIV5’LTRからのR及びU5配列;パッケージング配列(ψ);HIV−1フラップシグナル;内部エンハンサー;内部プロモーター;対象となる遺伝子;ウッドチャック肝炎ウイルス応答要素;tRNAアンバーサプレッサー配列;そのエンハンサー配列が欠失したU3要素;ニワトリβ−グロビンインスレーター;ならびに3’HIV LTRのR及びU5配列を含む。いくつかの例証において、ベクターゲノムは、インタクトなレンチウイルス5’LTR及び自己不活性化3’LTR(例えば、Iwakuma et al.Virology15:120,1999を参照されたい)を含む。
ベクターゲノムの構築は、例えば、Sambrookら(1989and2001editions;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY)、Coffinら(Retroviruses.Cold Spring Harbor Laboratory Press,N.Y.(1997))、及び“RNA Viruses:A Practical Approach”(Alan J.Cann,Ed.,Oxford University Press,(2000)(上述のそれぞれの全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載される、制限エンドヌクレアーゼ消化、連結、形質転換、プラスミド精製、及びDNA配列決定の標準技術を含むが、これらに限定されない、当該技術分野において既知である任意の好適な遺伝子工学技術を使用して達成することができる。
哺乳類細胞中での一過性発現のために構築されたベクターもまた、使用することができる。一過性発現は、宿主細胞が発現ベクターの多くの複写を蓄積し、転じて、発現ベクター中の免疫原特異的ポリヌクレオチドによってコードされる高レベルのポリペプチドを合成するように、宿主細胞中で効率的に複製することができる発現ベクターの使用を伴う。例えば、上記のSambrook et al.,pp.16.17−16.22,1989を参照されたい。ポリペプチドの発現への適応に好適な他のベクター及び方法は当該技術分野において周知であり、特定の状況に容易に適合される。
本明細書において提供される教示及び当該技術分野における知識を使用することによって、当業者は、特定の発現系の有効性が、パッケージング細胞に、レポータータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターをトランスフェクトし、好適な技術を使用して発現を測定すること、例えば、緑色蛍光タンパク質接合体からの蛍光を測定することによって試験され得ることを認識することができるであろう。他の好適なレポーター遺伝子は、当該技術分野において周知である。
免疫原をコードするポリヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターは、免疫原を産生するために使用され得る。組み換え発現ベクターは、プロモーターまたはエンハンサーなどの、免疫原をコードするポリヌクレオチドに作動的に連結された少なくとも1つの制御発現配列を含む。発現ベクターのそれぞれは、それぞれの免疫原の組み換え産生のために、適切な宿主細胞を形質転換、トランスデューサー、またはトランスフェクトするために使用され得る。免疫原の産生のために好適な宿主細胞としては、原核生物、酵母菌、及び高等真核生物細胞(例えば、CHO及びCOS)が挙げられる。免疫原はそれぞれ、タンパク質の技術分野において既知であり、通例実施される様々な単離方法(例えば、濾過、ダイアフィルトレーション、クロマトグラフィー(親和性クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィーを含む)、及び分取電気泳動)のいずれか1つを使用して、それぞれの宿主細胞または宿主細胞培養物から単離され得る。特定の実施形態において、本明細書に記載するように、その後、単離された免疫原は、薬学的に好適な賦形剤と配合されて、免疫原性組成物をもたらし得る。
ポリペプチドを組み換え産生するための特定の方法は一般に周知であり、通例使用される。例えば、分子生物学の手順は、Sambrookら(Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1989、Sambrook et al.,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,(2001)も参照されたい)に記載される。DNA配列決定は、Sangerら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA74:5463(1977))ならびにAmersham International plc配列決定ハンドブック(及びそれに対する改善を含む)において記載されるように実行され得る。
ベクター粒子
別の実施形態において、ベクター粒子が提供される。ベクター粒子は、少なくとも1つの免疫原をコードするポリヌクレオチド配列を含む、本明細書に記載される組み換え発現ベクターのうちのいずれか1つを含む。特定の他の実施形態において、ベクター粒子は、特異的免疫応答を誘導する少なくとも1つの免疫原をコードするポリヌクレオチド配列を含む、1つの組み換え発現ベクター(第1の組み換え発現ベクターとも呼ばれる)を含む組み換え発現系を含む。(本明細書に記載される)少なくとも1つの免疫原をコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達するための方法もまた、本明細書において提供される。特定の実施形態において、標的細胞は抗原提示細胞である免疫細胞であり、より具体的な実施形態において、及び本明細書に記載する場合、標的細胞は樹状細胞である。そのような方法は、標的細胞を、ポリヌクレオチドを送達するビヒクルと接触させること(すなわち、相互作用を可能にすること)を含む。本明細書に記載するように、組み換え発現ベクターは、少なくとも2つの免疫原をコードし、それらの発現を指示する多シストロンであってもよい。本明細書に詳細に記載する特定の実施形態において、ポリヌクレオチドを送達するための方法は、対象に、免疫原をコードするポリヌクレオチド配列を含有する組み換え発現ベクターを含むベクター粒子を投与することによって、細胞を接触させることを含む。ベクター粒子、組み換え発現ベクター、ポリヌクレオチド、及び免疫原は、本明細書に詳細に記載される。
特定の実施形態において、ベクター粒子はウイルスベクター粒子であり、他の特定の実施形態において、ベクター粒子は、例えば、リステリア・モノサイトゲネス、サルモネラ菌種、マイコバクテリウム・ボビス、大腸菌、赤痢菌種、及びエルシニア菌種などの細菌に由来する粒子である(例えば、Paterson,Semin.Immunol(2010)22:183、Loessner,Expert Opin.Biol.Ther.(2004)4:157、Daudel,Expert Rev.Vaccines(2007)6:97を参照されたい)。例示的なウイルスベクター粒子としては、レンチウイルスベクターゲノムを含むレンチウイルスベクター粒子、ポックスウイルスベクターゲノムを含むポックスウイルスベクター粒子、ワクシニアウイルスベクターゲノムを含むワクシニアウイルスベクター粒子、アデノウイルスベクターゲノムを含むアデノウイルスベクター粒子、アデノウイルス関連ウイルスベクターゲノムを含むアデノウイルス関連ウイルスベクター粒子、ヘルペスウイルスベクターゲノム(例えば、単純ヘルペスウイルスIもしくはII)を含むヘルペスウイルスベクター粒子、またはアルファウイルスベクターゲノムを含むアルファウイルスベクター粒子が挙げられる。
より具体的な一実施形態において、ベクター粒子は、(上記に詳述する)レンチウイルスベクターゲノムを含むレンチウイルスベクター粒子である。特に、少なくとも1つの免疫原をコードする配列を樹状細胞(DC)に送達するためのレンチウイルスベクター粒子(ビリオン、レンチウイルス粒子とも呼ばれ得る)を使用することによって、細胞を標的化し、DCを標的化するための方法及び組成物が本明細書において提供される。レンチウイルスベクター粒子は、シンドビスウイルスE2に由来する外被糖タンパク質バリアントと、対象となる配列を含むゲノムを含む組み換え発現構築と、任意で他の構成成分とを含む。糖タンパク質バリアントは、基準シンドビスウイルス株であるHRからの糖タンパク質と比較して、ヘパラン硫酸塩に対する結合の低下を呈する。外被糖タンパク質は、レンチウイルスベクター粒子による樹状細胞の感染を促進する。感染を「促進する」とは、本明細書で使用される場合、形質導入を促進することと同一であり、単独で、または他の分子と協調して作用する、偽型化されたレトロウイルスまたはレンチウイルス粒子の、標的細胞への受容体媒介侵入の促進または亢進における、外被糖タンパク質の役割を指す。
一般に、レンチウイルスベクター粒子は、機能的ベクター粒子を生成するために必要とされる構成成分をともにコードする、1つ以上のプラスミドベクター及び/または組み込まれた要素を含有する細胞株によって産生される。これらのレンチウイルスベクター粒子は典型的には複製能がなく、すなわち、それらは単回の感染のみ可能である。ほとんどの場合、産生細胞染色体へと安定して組み込まれた、複数のプラスミドベクターまたは個々の発現カセットが、レンチウイルスベクター粒子を生成する様々な遺伝子構成成分を分離するために利用されるが、レンチウイルス構成成分の全てを有する単一のプラスミドベクターが使用されてもよい。一例証において、パッケージング細胞株は、LTR、シス作用性パッケージング配列、及び対象となる配列(すなわち、1つの免疫原をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列)を含むウイルスベクターゲノムを含有する1つ以上のプラスミドと、ウイルスの酵素的及び構造的構成成分(例えば、gag及びpol)をコードする少なくとも1つのプラスミドと、アルボウイルス外被糖タンパク質をコードする少なくとも1つのプラスミドとでトランスフェクトされる。ウイルス粒子は細胞膜を通して出芽し、典型的には対象となる配列を含有する2つのRNAゲノムを含むコアと、樹状細胞を標的化するアルボウイルス外被糖タンパク質とを含む。特定の実施形態において、アルボウイルス糖タンパク質はシンドビスウイルスE2糖タンパク質であり、糖タンパク質は、基準株HRからのE2と比較して、ヘパラン硫酸塩に対する結合の低下を有するように操作される。これは通常、HR E2糖タンパク質配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸変化を伴う。同様に、E2糖タンパク質は、樹状細胞に対する標的化特異性を増加させるように操作されてもよい。
理論によって拘束されることを望むものではないが、細胞表面へのウイルス粒子の結合はエンドサイトーシスを誘導し、ウイルスをエンドソームへと運び、膜融合を引き起こし、ウイルスコアの細胞質ゾルへの侵入を可能にすると考えられる。レンチウイルスベクター粒子の組み込みを利用する特定の実施形態について、産生物の逆転写及びその核への遊走後、ウイルスのゲノムは標的細胞ゲノムへと組み込まれ、対象となる配列が標的細胞のゲノムへと組み込まれる。しかしながら、挿入変異誘発の確率を低下させ、指定免疫原(複数可)の一過性発現を促進するために、他の実施形態は、非組み込みレンチウイルスベクター粒子(すなわち、標的細胞ゲノムへと組み込まれないもの)を利用するが、代わりに、対象となる配列をエピソームから発現させる。いずれの例においても、その後、感染したDCは対象となる配列(例えば、免疫原及び任意で刺激分子)を発現させる。その後、免疫原は樹状細胞によってプロセシングされ、T細胞及びB細胞に提示され得、抗原特異的免疫応答を生成する。上記の特定のパスウェイは、樹状細胞が抗原特異的免疫応答を刺激することができる限り、必要とされない。
ウイルス粒子を、本明細書に記載される免疫原性組成物において対象に投与して、予防的または治療的効果をもたらすことができる。樹状細胞の感染及び免疫原産生物の発現の後、産生物に対して免疫応答が生成される。
樹状細胞(DC)は、免疫応答の開始及び制御に必須である抗原提示細胞である。DCは2つのパスウェイに沿って発達し得、1つのパスウェイは単球に依存せず、第2のパスウェイは単球に由来する(Mo−DC)。血中単球は、GM−CSF及びIL−4とともに培養すると、樹状形態及び適応免疫を開始する強度の能力を得(例えば、Bender et al.,J.Immunol.Methods196(2):121(1996)、Sallusto et al.,J.Exp.Med.179(4),1109(1994)を参照されたい)、これは、ヒトにおけるインビボの場合も含む(例えば、Dhodapkar,et al.,J.Clin.Invest104(2),173(1999)、Schuler−Thurner,et al.,J.Immunol.165(6):3492(2000)を参照されたい)。より有効な免疫原特異的T細胞応答は、ベクター粒子ワクチン、具体的には、エクソビボ細胞操作の必要なく、インビボで免疫原をMo−DCへと直接効率的に送達するレンチウイルスベクター粒子系を使用することによって達成され得る。ヒトMo−DCは、高レベルの2つのC型レクチン、マンノース受容体(MMR)、及びDC特異的細胞間接着分子−3結合ノンインテグリン(DC−SIGN)を発現する。本明細書に詳細に記載するように、免疫原の発現は、DC−SIGNを標的化するように操作された組み換えレンチウイルスベクターを使用して、Mo−DCに標的化され得る。
DC−SIGNに選択的に結合する、操作されたシンドビスウイルス(SIN)糖タンパク質からなるDC−SIGN標的化外被、SVGmuは、記載の通りに修飾されている(本明細書の記載及び米国特許出願第12/842,609号、国際特許出願公開第2011/011584号を参照されたい)。レンチウイルスベクターは、マウスにおける単一免疫化後、高度に機能的なCD8T細胞免疫応答を誘導した(例えば、Dai,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A(2009)、Yang,et al.,Nat.Biotechnol.26(3),326(2008)を参照されたい)。この原型は、2つの主要な修飾によって著しく進歩している。本明細書に記載されるレンチウイルスベクターは、天然SINに基づく糖タンパク質外被(SINvar1と呼ばれる)、DC−SIGN受容体によって真皮DCを感染させることが既知であるアルボウイルス(例えば、Gardner,et al.,J.Virol.74(24),11849(2000)、Klimstra,et al.,J.Virol.77(22),12022(2003)を参照されたい)(遍在するヘパラン硫酸塩受容体への結合を予防するように修飾される(例えば、Klimstra et al.,J.Virol.72(9),7357(1998)を参照されたい))を含む。SINvar1外被は、親SVGmu外被と比較して、増加した生産性及びインビボ機能を与える。ベクターはまた、それを非機能性にする変異体インテグラーゼ(polD64V)(例えば、Apolonia,et al.,Mol.Ther.15(11),1947(2007)を参照されたい)と、LTRのU3領域(最大attまで)及び3’LTRポリプリントラクト(PPT)が欠失したベクター骨格との組み合わせによって、重複的に組み込み能がない。故に、無能となったインテグラーゼに加えて、ベクター骨格の組成物が、染色体組み込みの鋳型ではない、感染したDC中で単一LTR逆転写エピソームdsDNA環をもたらす全長ベクターゲノム(自己不活性化変異)の転写を予防する(例えば、Bayer,et al.,Mol.Ther.16(12):1968(2008)、Breckpot et al.,J.Virol.(2010)、Ma et al.,Mol.Ther.10(1):139(2004)を参照されたい)。Revを除く、制御タンパク質及びアクセサリータンパク質の全てを含む親HIVゲノムの約75%が、DC−NILVから取り除かれている。単回注射後、DC−NILVは、高度に強固な腫瘍抗原特異的CD8T細胞応答を誘導する。レンチベクターワクチン接種の効力は、少なくとも一部にはTLR3及びTLR7パターン認識受容体の会合に依存する(例えば、Beignon et al.,J.Virol.(2009)、上記のBreckpot et al.を参照されたい)。
追加の実施形態において、レンチウイルスベクター粒子は、米国特許第8,323,662号に記載されるように産生され得る。具体的には、外被糖タンパク質が高度にマンノシル化されるように、パッケージング系を使用してレンチウイルスベクターが産生され得る。本開示の一態様は、(a)マンノシダーゼ阻害剤、好ましくはマンノシダーゼI阻害剤と、(1)外因性抗原をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターゲノム、(2)DC−SIGNを発現する細胞に優先的に結合するアルファウイルス糖タンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び(3)VpxなどのSAMHD1阻害剤をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスパッケージング細胞とを含む培養培地中で培養することと、(b)DC−SIGNを発現する細胞に優先的に結合する偽型化されたレンチウイルスベクター粒子を単離させることとを含む、偽型化されたレンチウイルスベクター粒子を生成する方法を提供する。本明細書に記載される実施形態のうちのいくつかまたはいずれかにおいて、Vpxタンパク質は、SIVmac Vpxと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。
ウイルスベクター外被
節足動物媒介ウイルス(アルボウイルス)は、カなどの感染した節足動物ベクターによって、ヒト、ウマ、またはトリなどの宿主に伝染するウイルスである。アルボウイルスは、正極性の一本鎖RNAゲノム及び糖タンパク質含有外被を有する、アルファウイルス及びフラビウイルスを含むウイルス亜科に更に分けられる。例えば、デング熱ウイルス、黄熱ウイルス、及びウエストナイルウイルスは、フラビウイルス科に属し、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、及びベネズエラウマ脳炎ウイルスは、アルファウイルス科の構成員である(例えば、Wang et al.,J.Virol.66,4992(1992)を参照されたい)。シンドビスウイルスの外被は、2つの膜貫通糖タンパク質(例えば、Mukhopadhyay et al.Nature Rev.Microbiol.3,13(2005)を参照されたい)、つまり、融合に対して応答性であると考えられるE1、及び細胞結合に対して応答性であると考えられるE2を含む。シンドビスウイルス外被糖タンパク質は、オンコレトロウイルス及びレンチウイルスを含む他のレトロウイルスを偽型化させることが既知である。
本明細書に論じるように、アルボウイルス外被糖タンパク質を使用して、レンチウイルス系ベクターゲノムを偽型化させることができる。「偽型化された」レンチウイルスとは、レンチウイルスゲノムとは異なるウイルスによってコードされる1つ以上の外被糖タンパク質を有する、レンチウイルス粒子である。外被糖タンパク質は、本明細書に記載するように、修飾されても、変異されても、操作されてもよい。
シンドビスウイルス及び他のアルファウイルスの外被は、ウイルス粒子膜のリピド二重層中に組み込まれ、典型的には2つの糖タンパク質E1及びE2の複数の複写を含む。各糖タンパク質は膜貫通領域を有し、E2は約33個の残基細胞質ドメインを有する一方で、E1の細胞質側末端は非常に短い(約2個の残基)。E1及びE2の両方は、膜貫通領域中またはその付近に結合したパルミチン酸を有する。E2はまず、フューリンまたは他のCa2+依存性セリンプロテアーゼによって、E2と、E3と呼ばれる小糖タンパク質とに切断される前駆体タンパク質として合成される。E2をコードする配列とE1をコードする配列との間に位置するのは、6Kと呼ばれるタンパク質をコードする配列である。E3及び6Kは、それぞれE2及びE1糖タンパク質を膜へと移動させる役割を果たすシグナル配列である。シンドビスウイルスゲノムにおいて、シンドビス外被タンパク質のコード領域は、E3、E2、6K、及びE1をコードする配列を含む。本明細書で使用される場合、アルボウイルスウイルスの「外被」は少なくともE2を含み、E1、6K、及びE3もまた含んでもよい。株HRであるシンドビスウイルスの例示的な外被糖タンパク質は、米国第20120328655号に開示される。特定の具体的な代替的実施形態において、E3/E2糖タンパク質(米国第US20120328655号に開示されるように、E3配列は配列番号20の残基1〜65に対応する)またはそのバリアント(残基62〜65はRSKRである)が、偽型化されたウイルス外被中に組み込まれてもよい。他のアルボウイルスの外被糖タンパク質の配列は、GenBankなどの公的に利用可能なデータベースに見出すことができる。例えば、デング熱ウイルス糖タンパク質をコードする配列は、受入番号GQ252677.1(とりわけGenBank)及びNCBIのウイルス変種データベースに見出すことができ(GenBank受入番号及びウイルス変種データベースは、外被糖タンパク質配列について、参照により組み込まれる)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス外被糖タンパク質をコードする例示的な配列は、受入番号NP_040824.1(外被糖タンパク質の配列について、参照により組み込まれる)に見出すことができる。
アルファウイルス、及び特にシンドビスウイルスの、樹状細胞上の細胞受容体(複数可)は、現在のところ決定的には特定されていないものの、1つの受容体は、DC−SIGNであるようである(例えば、Klimstra et al.,J.Virol.77:12022,2003を参照されたい)。「結合(attachment)」、「結合(binding)」、「標的化」などの用語の使用は互換的に使用され、シンドビスウイルス外被糖タンパク質と細胞構成成分との間の相互作用の機構を示すことは意図されない。DC−SIGN(樹状細胞特異的ICAM−3(細胞内接着分子3)−結合ノンインテグリン、CD209としても知られる)は、材料の急速な結合及びエンドサイトーシスが可能であるC型レクチン様受容体である(例えば、Geijtenbeek et al.Annu.Rev.Immunol.22:33−54,2004を参照されたい)。E2は、DC−SIGNを通して、ウイルスを樹状細胞へと標的化するようである。本明細書に示すように、DC−SIGNを発現する細胞は、DC−SIGNを発現しない同質遺伝子細胞よりも良好に(少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍良好に)シンドビスウイルスE2で偽型化されたウイルスベクター粒子によって形質導入される。E2糖タンパク質がいかにウイルス感染を促進するのかについての機構は、可能性としてはDC−SIGNへの直接結合、または立体構造またはいくらかの他の機構を変化させることを通して、DC−SIGNに関与しているようである。実際の機構に関わらず、E2による標的化は、DC−SIGN、すなわち樹状細胞を発現する細胞にとって、優先である。
シンドビスウイルスまた、ヘパラン硫酸塩を介して結合するようである(例えば、Klimstra et al.,J.Virol.72:7357,1998、Burmes et al.,J.Virol.72:7349,1998を参照されたい)。ヘパラン硫酸塩及び他の細胞表面グルコサミノグリカンは、ほとんどの細胞型の表面上に見出されるため、ヘパラン硫酸塩とシンドビス外被糖タンパク質との間の相互作用を低下させることが望ましい。これは、シンドビスウイルス外被のヘパラン硫酸塩への結合を減少させること、もしくはシンドビスウイルス外被の樹状細胞への結合を増加させること、例えば、結合活性を増加させること、またはこれらの両方によって達成することができる。結果として、他の細胞型によって発現され得、外被がDC−SIGNに特異的な場合ですら発生し得る、他の分子に対する非特異的結合が低下し、改善された特異性は、所望される免疫応答を低下させ得る副作用、または他の細胞型の非特異的形質導入に関連する副作用などの所望されない副作用を回避する役割を果たし得る。あるいは、またはDC−SIGNを発現する細胞の比較的特異的な形質導入の利点に加えて、シンドビスウイルス外被E2糖タンパク質で偽型化されたウイルス粒子は、VSV−Gなどの糖タンパク質で偽型化されたウイルス粒子を超える他の利点をもたらし得る。そのような利点の例としては、補体媒介溶解の低下及び/または神経細胞標的化の低下が挙げられ、これらの両方は、VSV−G偽型化ウイルス粒子の投与に関連するものと考えられている。
様々な例証において、レンチウイルスベクター粒子は、DC−SIGNを発現する細胞に特異的に結合し、低下または抑止されたヘパラン硫酸塩に対する結合を有する。つまり、シンドビスウイルス外被E2糖タンパク質は、他の細胞型に対して、DC−SIGNを発現する樹状細胞に、ウイルスを優先的に指示するように修飾されてもよい。糖タンパク質が外被タンパク質としてのそれらの機能を維持するが、所望される結合特異性、結合活性、または結合レベルを有するように、他の研究の中でもとりわけ、構造研究及び分子モデル化から取得された情報に基づいて、外被タンパク質、特にE2及びE1糖タンパク質のバリアント配列が設計され、生成される。各糖タンパク質について候補となるバリアント配列を作製し、後述する方法または当該技術分野において既知の他の方法を使用してアッセイして、最も望ましい特徴を有する外被糖タンパク質を特定することができる。
シンドビスE2の特定のバリアント配列は、配列番号1と比較して、残基160で少なくとも1つのアミノ酸変化を有する。残基160は、欠失しているか、グルタミン酸以外のアミノ酸に変化している。変化は、最も一般的には少なくとも1つのアミノ酸の置換であるが、あるいは、1つ以上のアミノ酸の付加または欠失であってもよい。好ましくは、任意の追加のアミノ酸は数が少なく、安全性を損ない得る抗原エピトープ(例えば、赤血球凝集素タグ配列)を含まない。2つ以上の変化が存在する場合、それらは、ともに同一の種類(例えば、置換)であっても、異なる種類(例えば、置換及び欠失)であってもよい。複数の変化がタンパク質配列中に散在しても、隣接して位置してもよい。
例として、バリアント配列は、配列番号1の約残基50〜約残基180の領域に少なくとも1つのアミノ酸変化を含む。この領域内にあるのは、ヘパラン硫酸塩への結合に関与するアミノ酸である。E2の正味正電荷を低下させることによって、ヘパラン硫酸塩との静電相互作用を低下させ、ヘパラン硫酸塩への結合の減少をもたらすことができる。この領域内の候補となる正電荷のアミノ酸としては、残基63、70、76、84、97、104、129、131、133、139、148、149、159のリジン及び残基65、92、128、137、157、170、172のアルギニンが挙げられる(例えば、Bear et al.,Virology347:183−190,2006を参照されたい)(配列番号1を参照されたい)。これらのアミノ酸のうちの少なくともいくつかは、ヘパラン硫酸塩へのE2結合に直接関係付けられる。正味正電荷は、リジンもしくはアルギニンを欠失させること、またはリジンもしくはアルギニンを中性もしくは負電荷のアミノ酸で置換することによって低下させることができる。例えば、これらのリジン及びアルギニンのうちの1つ以上は、グルタミン酸またはアスパラギン酸で置換されてもよい。特定の実施形態は、リジン70、76、または159の少なくとも1つの置換を有する。E2糖タンパク質の例示的なアミノ酸配列は、配列番号3〜16に説明される。E2がE3を有するポリタンパク質として発現される場合、天然E3/E2切断部位に隣接して位置するリジンは維持され、つまり、認識配列及び切断部位は変化しない。あるいは、天然エンドペプチダーゼ切断部位配列は、配列認識で異なるエンドペプチダーゼに置換される。
E2の特定のバリアントはまた、樹状細胞への結合に正の影響を与える方法で修飾される。HR基準配列中の残基160に見出されるグルタミン酸の変化は、樹状細胞への結合改善させる(例えば、Gardner et al.,J.Virol.74,11849,2000を参照されたい)。残基160欠失または残基160の置換などの変化は、特定のバリアント中に見出される。特定のバリアントにおいて、非荷電のアミノ酸がGluについて置換され、他のバリアントにおいて、非酸性アミノ酸がGluについて置換される。典型的には、Glu160が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、またはイソロイシンを含む小アミノ酸または脂肪族アミノ酸のうちの1つで置換される。
他のバリアントは、2つ以上のアミノ酸変化を含む。典型的には、これらのバリアントにおいて、変化のうちの1つはGlu160であり、残りの変化(複数可)は、配列番号1の残基約50〜約180にまたがる領域内のリジン及びアルギニンのうちの1つ以上の変化である。バリアントのうちの特定のものは、Glu160の非酸性残基への変化またはその欠失、及びリジン70、リジン76、もしくはリジン159の非塩基性アミノ酸での1つ以上の変化を含む。いくつかの特定のバリアントは、Glyに対するGlu160、Gluに対するLys70、及びGluに対するLys159と、Glyに対するGlu160、Gluに対するLys70、76、及び159と、Glu160の欠失ならびにGluに対するLys70及び159と、Glu160の欠失及びGluに対するLys70、76、及び159とを含む。(例えば、配列番号3〜16を参照されたい。)
特定の実施形態において、E2タンパク質は、少なくともE3との融合、またはリーダー配列との融合において、まずポリタンパク質として発現される。リーダー配列がE3または別の配列であるかどうかに関わらず、ウイルス外被中のE2は、E3または他のリーダー配列を含まないべきである。換言すると、E2は、好ましくはE3/E2融合タンパク質(例えば、SVGmuと呼ばれるE3/E2融合タンパク質)ではない。特定の実施形態において、E2は、E3−E2−6K−E1ポリタンパク質の一部として発現される。シンドビスウイルスはポリタンパク質の一部としてE2を天然に発現し、E3/E2、E2/6K、及び6K/E1の接合部領域は、エンドペプチダーゼによって認識され、切断される配列を有する。通常、E3/E2接合部は、残基65と残基66との間のフューリンまたはフューリン様セリンエンドペプチダーゼによって切断される。フューリンは、2つのアミノ酸によって分離される対アルギニン残基に対する特異性を有する。フューリンによるE3/E2切断を維持するために、残基62〜66(RSKRS、配列番号26)は、2つのアミノ酸分離を有する2つのアルギニン残基及びセリン残基を維持するべきである。あるいは、E3/E2フューリン切断配列または他の切断配列のうちのいずれかの代わりに、異なる切断配列が使用されてもよい。認識部位及び切断部位は、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ(例えば、カテプシンD、キモシン、HIVプロテアーゼ)、システインエンドペプチダーゼ(ブロメライン、パパイン、カルパイン)、メタロエンドペプチダーゼ(例えば、コラゲナーゼ、サーモリシン)、セリンエンドペプチダーゼ(例えば、キモトリプシン、第IXa因子、第X因子、トロンビン、トリプシン)、ストレプトキナーゼを非限定的に含む、エンドペプチダーゼについて組み込まれ得る。これらの酵素の認識部位配列及び切断部位配列は、周知である。
既に言及したもの以外のE2中のアミノ酸もまた、変化され得る。一般に、バリアントE2配列は、基準E2配列に対して少なくとも80%の配列アミノ酸同一性を有するか、またはそれは、少なくとも82%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、または少なくとも98%の配列同一性を有してもよい。バリアント糖タンパク質は、E2を含む外被を有するウイルス粒子による樹状細胞の感染を促進する能力などの、生物学的機能を呈するべきである。実験により、ウイルス組み立て、細胞表面への結合、及び感染の様々な態様において重要な役割を有するようである外被糖タンパク質の領域が特定されている。バリアントを作製する場合、以下の情報をガイドラインとして使用することができる。E2の細胞質側末端(約残基408〜415)は、ウイルス組み立てにとって重要である(例えば、その全体が組み込まれる、West et al.J.Virol.80:4458−4468,2006を参照されたい)。他の領域は、二次構造の形成に関与(約残基33〜53)し、輸送及びタンパク質安定性に関与(約残基86〜119)する(例えば、その全体が組み込まれる、Navaratmarajah et al.,J.Virol.363:124−147,2007を参照されたい)。バリアントは、膜を貫通する領域、約残基370〜380の疎水性特徴を保持し得る。バリアントは、一方または両方のN−連結された糖鎖付加部位残基NIT(残基196〜198)及びNFT(残基318〜320)を保持してもよく、パルミトイル化される部位(C−396、C416、及びC417)のうちの1つ以上を保持してもよい(例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Strauss et al.,Microbiol.Rev.58,491−562,1994;pp.499−509を参照されたい)。他方、E2の多くの領域は有害事象なしで変化され得る。例えば、E2中の多くの異なる位置でのトランスポゾンの挿入は、依然として生ウイルスをもたらした(例えば、上記のNavaratmarajahを参照されたい)。
特定の実施形態において、タグペプチドは、E3、6K、またはE1タンパク質中に組み込まれてもよい。いくつかの目的のために、タグはE2中に組み込まれてもよいが、タグは、ヒト患者への投与のための産生物における使用は望ましくない。短い配列(例えば、5〜30個のアミノ酸)であるタグペプチドは、外被発現及びウイルス粒子中でのその存在の検出を促進するために使用することができる。検出目的のために、タグ配列は、典型的には抗体または化学物質により検出可能であるだろう。タグの別の用途は、ウイルス粒子の精製の促進である。タグの結合パートナーを含有する基質を使用して、ウイルスを吸着することができる。ウイルスの溶出は、結合パートナーからタグをずらす部分で処理することによって達成することができるか、またはタグ配列が切断可能配列を有する連結鎖にある場合、適切なエンドペプチダーゼで処理が、ウイルスの放出を簡便に可能にする。(例えば、QiaGEN(登録商標)カタログ、第Xa因子プロテアーゼ系を参照されたい)。タグペプチドを取り除くことは、動物対象におけるウイルス粒子の使用の安全性の目的のために、一般に望ましい。タグが取り除かれない場合、タグに対する免疫応答が発生し得る。
好適なタグとしては、非限定的に、とりわけ、それに対する抗体が商業的に入手可能であるFLAG(DYKDDDDK)(配列番号35)(その全体が組み込まれる、米国特許第4,703,004号)、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、グルタチオン−S−転移酵素、ポリ(His)(その全体が組み込まれる、米国特許第4,569,794号)、チオレドキシン、HA(ヘマグルチニン)−タグが挙げられる。ポリ(His)は、ニッケルまたはコバルトなどの結合金属イオンを含有する親和性培地上に吸着され、低pH培地で溶出され得る。
ベクター粒子を評価して、樹状細胞を標的化するウイルス中に組み込まれる外被糖タンパク質の特異性を決定することができる。例えば、骨髄細胞の混合個体群を対象から取得し、インビトロで培養してもよい。あるいは、DC−SIGNを発現するか、または発現しない同質遺伝子細胞株を取得し、使用してもよい。組み換えウイルスを、骨髄細胞の混合個体群または同質遺伝子細胞株に投与し、培養された細胞中で、ウイルス中に組み込まれるレポーター遺伝子の発現をアッセイすることができる。特定の実施形態は、細胞の混合個体群が別個の部分に分割され、その後、減少する量のウイルス(例えば、各部分において、2倍、5倍、10倍少ないウイルス)とともに別個にインキュベートされる、限界希釈分析を用いてもよい。いくつかの実施形態において、混合細胞個体群中の感染した細胞のうちの少なくとも約50%、または少なくとも約60%、70%、80%、もしくは90%、または少なくとも約95%が、DC−SIGNを発現する樹状細胞である。特定の実施形態において、感染した樹状細胞対感染した非樹状細胞(または非DC−SIGN発現細胞)の比率は、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約8:1、少なくとも約9:1、少なくとも約10:1、少なくとも約20:1、少なくとも約30:1、少なくとも約40:1、少なくとも約50:1、少なくとも約100:1、少なくとも約200:1、少なくとも約500:1、少なくとも約1000:1、少なくとも約5000:1、少なくとも約10,000:1、またはそれ以上である。限界希釈について、より大きな選択性は、典型的にはより高い希釈(すなわち、より少ない量)の投入ウイルスで見られる。
偽型化されたウイルス粒子の活性は、様々な技術のいずれかによって決定することができる。例えば、感染効率(IU、感染単位)を測定するための好ましい方法は、細胞にウイルス粒子を投与し、ベクターゲノム中でコードされる産生物の発現を測定することによる。アッセイされ得る任意の産生物が使用され得る。1つの簡便な種類の産生物は、緑色を蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光タンパク質である。使用され得る他の産生物としては、細胞表面(例えば、抗体結合による検出)上で発現されるタンパク質、酵素などが挙げられる。産生物が抗原であり、細胞が樹状細胞である場合、感染性/活性は、免疫応答を決定することによって評価することができる。更に、哺乳動物における副作用を確認することが可能である。樹状細胞を特異的に標的化する能力はまた、例えば、後述する細胞培養物において直接試験することができる。
本明細書に記載されるウイルス粒子を含むベクター粒子も調製され、それらの選択性及び/または標的細胞膜の透過を促進するそれらの能力について試験され得る。修飾されていない糖タンパク質を有する外被を有するウイルス粒子を、比較のための対照として使用することができる。簡潔に述べると、外被糖タンパク質の受容体を発現する細胞は、標準感染アッセイを使用して、ウイルスによって感染される。指定の時間後、例えば、感染の48時間後、細胞を採取し得、ウイルスによって感染した細胞のパーセンテージを、例えば、フローサイトメトリーによって決定し得る。選択性は、ウイルスによって感染した細胞のパーセンテージを計算することによって点数化され得る。同様に、バリアント外被糖タンパク質の、ウイルス力価に対する影響は、ウイルスによって感染した細胞のパーセンテージを、対応する野生型(未修飾)外被糖タンパク質を含むウイルスによって感染した細胞のパーセンテージで割ることによって定量化することができる。特に好適なバリアントは、選択性と感染性力価との最良の組み合わせを有するであろう。バリアントが選択されると、ウイルス濃縮アッセイを実行して、これらのウイルスが活性を損なわずに濃縮され得ることを確認し得る。ウイルス上清が採取され、超遠心分離法によって濃縮される。ウイルスの力価は、ウイルス原液の限界希釈、及び外被糖タンパク質の受容体を発現する細胞の感染によって、上記のウイルスによって発現される産生物の発現を測定して、決定することができる。
レンチウイルスベクター粒子の標的細胞への侵入は、別の種類の活性評価である。BlaM−Vpr(ベータ−ラクタマーゼVpr)融合タンパク質が、HIV−1ウイルス透過を評価するために使用されており、BlaMとシンドビスウイルス外被糖タンパク質(E1またはE2/E1融合タンパク質など)との融合を使用して、標的細胞への融合及び透過を促進する上での外被タンパク質の有効性を評価することができる。例えば、パッケージング細胞に、ウイルス要素BlaM−Vprを含む1つ以上のベクター及び対象となるバリアント外被(及び適切な場合、親和性分)を一過的にトランスフェクトすることによって、ウイルス粒子が調製され得る。結果として得られるウイルスを使用して、分子を発現する細胞を感染させることができる標的化分子(または親和性分子)は遊離結合阻害剤(抗体など)の存在下または不在下で特異的に結合する。その後、細胞はCO2非依存性培地で洗浄され、CCF2顔料(Aurora Biosciences,San Diego,CA)が充填され得る。室温でインキュベートして、切断反応を完了させた後、細胞はパラホルムアルデヒドによって固定され、フローサイトメトリー及び顕微鏡によって分析され得る。青色細胞の存在はウイルスの細胞質への透過を示し、遮断抗体が添加される場合、より少ない青色細胞が予想される(例えば、Cavrois et al.,Nat.Biotechnol.20:1151−54,2002を参照されたい)。
透過が低pHに依存するものであるかどうかを調査するため、及び所望されるpH依存性を有する外被糖タンパク質を特定するために、NH4ClまたはpHを変化させる他の化合物が感染ステップに添加され得る(NH4Clは、エンドソームの酸性区画を中和する)。NH4Clの場合、青色細胞の消失は、ウイルスの透過が低pH依存性であることを示すであろう。更に、活性がpH依存性であることを確認するために、塩化アンモニウム、クロロキン、コンカナマイシン、バフィロマイシンAl、モネンシン、ニゲリシンなどなどの向リソソーム剤が、インキュベーション緩衝液に添加されてもよい。これらの薬剤は、エンドソーム区画内のpHを上昇させる(例えば、Drose et al.,J.Exp.Biol.200,1−8,1997を参照されたい)。これらの薬剤の阻害効果は、ウイルス融合及び侵入に対するpHの役割を明らかにするであろう。異なる融合性分子を呈するウイルス間の異なる侵入動態が比較され、最も好適なものが特定の用途に選択され得る。
PCR系侵入アッセイを利用して、逆転写を監視し、ウイルス侵入の動態の指標としてウイルスDNA合成の動態を測定することができる。例えば、特定の外被タンパク質分子を含むウイルス粒子を、293T細胞、DC、及びその外被タンパク質分子の適切な結合パートナー(受容体)を発現するように操作されているか、またはそれを天然に発現する任意の他の細胞などの標的細胞とともにインキュベートする。直後または(感染を発生させるための)時間増分後のいずれかで、未結合のウイルスを取り除き、一定分量の細胞をウイルス核酸について分析する。これらの一定分量からDNAを抽出し、一般に半定量的アッセイでの、LTR特異的プライマーでプライミングされた増幅分析に供する。LTR特異的DNA産生物の出現は、ウイルス侵入の成功を示す。
ウイルスベクター粒子でのウイルス感染後、免疫原が、標的樹状細胞によって発現される。エクソビボで接触させられた場合、標的樹状細胞は、例えば、注射によって患者に再度移され、そこで、所望される抗原に対する免疫応答を生成し得る免疫細胞と相互作用する。好ましい実施形態において、組み換えウイルスが患者に注射され、それはそこで、標的化された樹状細胞をインサイチュで形質導入する。その後、樹状細胞は、治療される疾患または障害に関連する特定の抗原を発現し、患者は疾患または障害に対する有効な免疫応答を開始することができる。
ウイルスベクターゲノムは、1つ以上の免疫原をコードするポリヌクレオチド配列を含有し得、標的樹状細胞の形質導入時、細胞に送達される各免疫原に対する免疫応答を生成し得る。いくつかの実施形態において、免疫原は単一の疾患または障害に関連する。他の実施形態において、免疫原は複数の疾患または障害に関連する。
ベクター粒子のうちのいくつかにおいて、DCの成熟を活性化及び/または刺激するDC成熟因子は、対象となる免疫原をコードする配列と組み合わせて送達される。特定の代替的実施形態において、DCは、ベクター粒子の送達前、それと同時、またはその後のDC成熟因子の送達によって活性化される。DC成熟因子は、ベクター粒子の投与とは別個に提供されてもよい。
本明細書に記載するように、1つ以上の免疫調節因子またはDC成熟因子は、ベクター粒子中に含有され、粒子が樹状細胞に侵入した後またはそれが樹状細胞を感染させた後に発現される1つ以上の配列によってコードされ得る。免疫調節因子をコードする配列はまた、パッケージング細胞株中で1つ以上の免疫原をコードするベクター粒子でコトランスフェクトされる別個のベクター中に提供されてもよい。
本明細書に記載される方法は、対象における養子免疫療法に使用することができる。上記の通り、免疫応答が所望される免疫原が特定される。所望される免疫原(複数可)をコードするポリヌクレオチドが取得され、ベクター粒子中にパッケージングされる。標的樹状細胞が患者から取得され、所望される免疫原をコードするポリヌクレオチドを含有するベクター粒子で形質導入される。その後、樹状細胞は患者に再度移される。
ベクター粒子(例えば、本明細書に記載されるウイルスベクター粒子)は、インビボで注射されてもよく、そこで粒子は、DCを感染させ、対象となる免疫原をコードするヌクレオチド配列を送達する。ウイルス粒子の量は、少なくとも3×106の感染単位(IU)であり、少なくとも1×107のIU、少なくとも3×107のIU、少なくとも1×108のIU、少なくとも3×108のIU、少なくとも1×109のIU、または少なくとも3×109のIUであり得る。選択された間隔で、レシピエントのリンパ器官からのDCを使用して、ベクター粒子中に含まれる組み換え発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によって同時発現される場合、例えば、GFPまたはルシフェラーゼなどのマーカー発現を観察することによって、発現を測定することができる。核酸観察技術及び逆転写酵素(RT)活性の測定を使用して、ベクター粒子がレンチウイルスベクター粒子である場合、ベクター粒子の体内分布を分析することができる。ベクター粒子(レンチウイルスベクター粒子を含む)で治療されるレシピエントの、末梢血単核細胞、リンパ節、脾臓、または悪性もしくは標的病原体に感染した組織からのT細胞は、抗原刺激に対する応答の大きさ及び耐久性から測定され得る。上皮細胞及びリンパ球細胞などの、DC以外の組織細胞は、インビボ遺伝子送達の特異性について分析され得る。
免疫応答
本明細書に記載するように、免疫原に対する免疫応答を誘導するための方法が提供される。免疫応答に関与する免疫系の細胞は一般に免疫細胞と呼ばれ、リンパ球及び非リンパ系細胞(アクセサリー細胞など)を含む。リンパ球は、外来性抗原を特異的に認識し、それらに応答する細胞であり、アクセサリー細胞は、特定の抗原に特異的ではないが、免疫応答の認知相及び活性化相に関与するものである。例えば、単核貪食細胞(マクロファージ)、他の白血球細胞(例えば、好中球、好酸球、好塩基球を含む顆粒球)、及び樹状細胞は、免疫応答の誘導においてアクセサリー細胞として機能する。外来性抗原によるリンパ球の活性化は、抗原を除去するように機能する多数の効果器機構の誘導または誘発をもたらす。効果器機構に影響を与えるか、またはそれらに関与する単核貪食細胞などのアクセサリー細胞はまた、効果器細胞とも呼ばれる。
リンパ球の主要なクラスとしては、大型顆粒リンパ球である、Bリンパ球(B細胞)、Tリンパ球(T細胞)、及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。B細胞は、抗体を産生することができる。Tリンパ球は、ヘルパーT細胞(CD4+(本明細書及び当該技術分野においてCD4とも呼ばれる))及び細胞溶解性または細胞傷害性T細胞(CD8+(本明細書及び当該技術分野においてCD8とも呼ばれる))に更に細分される。ヘルパー細胞は、B細胞及びマクロファージを含むT細胞及び他の細胞の増殖及び分化を促進するサイトカインを分泌し、動員し、炎症性白血球細胞を活性化させる。制御T細胞またはサプレッサーT細胞と呼ばれるT細胞の別の亜群は、免疫系の活性化を能動的に抑制し、病理学的自己反応性、つまり自己免疫疾患を予防する。
本明細書に記載される免疫応答を誘導するための方法は、様々な種類のT細胞(すなわち、Tリンパ球)に関与する細胞媒介免疫応答を誘導するために有用である。細胞媒介応答において、様々な種類のTリンパ球が、いくつかの機構によって抗原を除去する役割を果たす。例えば、特定の抗原を認識することができるヘルパーT細胞は、サイトカインなどの可溶性メディエーターを放出して、免疫系の追加の細胞を動員して免疫応答に関与させることによって、応答し得る。また、細胞傷害性T細胞は、抗原を特異的に認識することができ、抗原担持細胞または粒子に結合し、それらを破壊または損傷させることによって、応答し得る。本明細書に記載される免疫応答を誘導するための方法はまた、本明細書及び当該技術分野においてB細胞応答とも呼ばれる体液性応答も誘導し得る。体液性応答は、抗原(または免疫原)に特異的に結合する抗体の産生を含む。抗体は、形質細胞として知られる分化したBリンパ球によって産生される。
免疫応答が誘導されるかどうか、及び宿主または対象において誘導される免疫応答の種類は、本明細書に記載され、当業者が精通しているであろう任意の数の周知の免疫学的方法によって決定され得る。本明細書に記載するように、免疫応答の存在及びレベルを決定するための方法及び技術としては、例えば、蛍光共鳴エネルギー転移、蛍光偏光、時間分解蛍光共鳴エネルギー転移、シンチレーション近接アッセイ、レポーター遺伝子アッセイ、蛍光消光酵素基質、発色酵素基質及び電気化学ルミネセンス、免疫アッセイ(酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ、免疫ブロット、免疫組織化学など)、表面プラズモン共鳴、レポーター遺伝子を使用するものなどの細胞系アッセイ、ならびに機能性アッセイ(例えば、免疫機能及び免疫応答性を測定するアッセイ)が挙げられる。
そのようなアッセイとしては、可溶性抗体、サイトカイン(例えば、IFN−γ、IL−2、IL−4、IL−10、IL−12、IL−6、IL−23、TNF−α、及びTGF−β)などの可溶性メディエーター、リンホカイン、ケモカイン、ホルモン、増殖因子など、ならびに他の可溶性小ペプチド、炭水化物、ヌクレオチド、及び/もしくは脂質メディエーターの存在ならびにレベルのインビボまたはインビトロ決定が挙げられるが、これらに限定される必要はない。免疫アッセイはまた、免疫系の細胞の機能的または構造的特性の変化、例えば、細胞増殖、運動性の変化、特異的遺伝子発現または細胞溶解性挙動などの特化した活性の誘導;刺激に応答した樹状細胞の成熟などの細胞成熟;Th1応答とTh2応答との間の関係性の変化;表面抗原発現プロファイルの変化またはアポトーシス(プログラムされた細胞死)の発生を含む免疫系の細胞による細胞分化を分析することによって、細胞活性化状態の変化を決定することも含む。これら及び類似したアッセイを実行するための手順は、例えば、Lefkovits(Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques,1998)に見出すことができる。Current Protocols in Immunology;Weir,Handbook of Experimental Immunology,Blackwell Scientific,Boston,MA(1986)、Mishell and Shigii(eds.)Selected Methods in Cellular Immunology,Freeman Publishing,San Francisco,CA(1979)、Green and Reed,Science281:1309(1998)、及びこれらの中で引用される参考文献もまた、参照されたい)。
免疫原及び対象となるそれぞれの指定抗原に特異的に結合する抗体の存在ならびに/またはレベルを決定することは、ELISA、免疫沈降、免疫ブロット、向流免疫電気泳動、放射免疫アッセイ、ドットブロットアッセイ、阻害または拮抗アッセイなど(例えば、米国特許第4,376,110号及び同第4,486,530号、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)を参照されたい)を含むが、これらに限定されない、当該技術分野において通例実施されるいくつかの免疫アッセイのうちのいずれか1つを使用して、決定することができる。免疫アッセイを実行して、免疫原に特異的に結合する抗体のクラス及びアイソタイプを決定することもできる。免疫原に特異的に結合し、免疫化した対象における抗体特異的免疫応答を検出する免疫アッセイにおいて、対照として使用され得る抗体(ポリクローナル及び/もしくはモノクローナル抗原、またはそれらの抗原結合断片)は一般に、当業者にとって既知である様々な技のうちのいずれかによって調製され得る。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)、Peterson,ILAR J.46:314−1(2005)、(Kohler et al.,Nature,256:495−97(1976)、Kohler et al.,Eur.J.Immunol.6:511−19(1975)、Coligan et al.(eds.),Current Protocols in Immunology,1:2.5.1−2.6.7(John Wiley&Sons1991)、米国特許第4,902,614号、同第4,543,439号、及び同第4,411,993号、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,Kennett et al.(eds.)(1980)、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988)を参照されたく、例えば、Brand et al.,Planta Med.70:986−92(2004)、Pasqualini et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101:257−59(2004)も参照されたい。免疫原もしくはその免疫原性断片、あるいは免疫原もしくはその免疫原性断片を担持する細胞または粒子を使用して、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかの産生について動物を免疫化することができる。
サイトカインのレベルは、例えば、ELISA、エリスポット、細胞内サイトカイン染色、及びフローサイトメトリー、ならびにこれらの組み合わせ(例えば、細胞内サイトカイン染色及びフローサイトメトリー)を含む、本明細書に記載され、当該技術分野において実施される方法に従って決定することができる。免疫応答の抗原特異的誘発または刺激の結果として得られる免疫細胞増殖及びクローン増殖は、脾臓細胞またはリンパ節からの細胞などのリンパ球を単離し、細胞を抗原で刺激し、トリチウム標識したチミジンの組み込みまたは非放射性アッセイ(MTTアッセイなど)などによって、サイトカイン産生、細胞増殖、及び/または細胞生存率を測定することによって決定することができる。Th1免疫応答とTh2免疫応答との間のバランスに対する本明細書に記載される免疫原の効果は、例えば、Th1サイトカイン(IFN−γ、IL−12、IL−2、及びTNF−βなど)のレベル、ならびに2型サイトカイン(IL−4、IL−5、IL−9、IL−10、及びIL−13など)のレベルを決定することによって試験することができる。
CTL免疫応答のレベル及びメモリーCD4T細胞応答のレベルは、本明細書に記載され、当該技術分野において通例実施される多数の免疫学的方法のうちのいずれか1つによって決定することができる。CTL免疫応答のレベルは、本明細書に記載される組成物、ベクター、またはベクター粒子のいずれか1つの投与前に決定され、その後、メモリーCD4T細胞に援助を提供する組成物、ベクター、またはベクター粒子の1つ以上の投与後の適切な時点でのCTL免疫応答のレベルと比較するために使用され得る。CTL活性を決定するための細胞傷害性アッセイは、当該技術分野において通例実施されるいくつかの技術及び方法のうちのいずれか1つを使用して実行され得る(例えば、Henkart et al.,“Cytotoxic T−Lymphocytes”,Fundamental Immunology,Paul(ed.)(2003Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PA),pages1127−50、及びこれらの中で引用される参考文献もまた、参照されたい)。
本明細書で使用される場合、結合パートナーまたは抗体は、抗体が免疫原またはその免疫原性断片に検出可能なレベルで、好ましくは約104M−1以上、または約105M−1以上、または約106M−1以上、約107M−1以上、または108M−1以上の親和定数(Ka)で反応する場合、対象となる免疫原「に免疫特異的である」、「に特異的である」、または「も特異的に結合する」と言われる。その同族抗原に対する抗体の親和性はまた、一般に解離定数KDとして表され、抗体は、それが10−4M以下、約10−5M以下、約10−6M以下、10−7M以下、または10−8M以下のKDで結合する場合、対象となる免疫原に特異的に結合する。
結合パートナーまたは抗体の親和性は、従来の技術、例えば、Scatchardら(Ann.N.Y.Acad.Sci.USA51:660(1949))によって記載されるものを使用して、及び表面プラズモン共鳴(SPR、BIAcore(商標)、Biosensor,Piscataway,NJ)によって、容易に決定することができる。表面プラズモン共鳴について、標的分子は固相上に固定化され、フローセルに沿って流れる移動相の結合パートナー(またはリガンド)に露出される。固定化された標的へのリガンド結合が発生した場合、局所的な屈折率が変化し、SPR角度の変化をもたらし、これは、反射光の強度の変化を検出することによって実時間で監視することができる。SPRシグナルの変化の速度を分析して、結合反応の会合相及び解離相の見かけの速度定数をもたらすことができる。これらの値の比率は、見かけの平衡定数(親和性)をもたらす(例えば、Wolff et al.,Cancer Res.53:2560−2565(1993)を参照されたい)。
免疫原を含む免疫原性組成物、及び免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物などの、本明細書に記載される免疫原性組成物のうちのいずれか1つ以上を受けている対象、もしくは本明細書に記載される方法に従うアジュバントを含む1つ以上の組成物を含む両方の免疫原性組成物を受けている対象における免疫原及び/またはそれぞれの指定抗原に対する免疫応答の存在及びレベルを決定するために、生物学的試料が対象から取得されてもよい。「生物学的試料」とは、本明細書で使用される場合、(血清または血漿が調製され得る)血液試料、生検標本、体液(例えば、肺洗浄液、腹水、粘膜洗浄液、滑液)、骨髄、リンパ節、組織外植片、器官培養物、または対象もしくは生物学源からの任意の他の組織もしくは細胞調製物であり得る。生物学的試料はまた、いかなる免疫原性組成物も受ける前に対象から取得されてもよく、この生物学的試料は、基線(すなわち、免疫化前)データを確立するための対照として有用である。
本明細書に記載される免疫応答を決定するための全ての免疫アッセイ及び方法に関して、当業者は、これらの方法の実施時にどの対照が適切に含まれるかを容易に認識し、理解するであろう。反応構成成分の相互作用を可能にするのに十分な反応構成成分の濃度、緩衝液の種類、温度、及び期間は、本明細書に記載され、当業者が精通している方法に従って決定され、かつ/または調整され得る。
免疫応答を誘導する方法
1つ以上の抗原に対する適応抗原特異的免疫応答を誘導するための、少なくとも2つの異なる免疫原性組成物を投与することを含む方法が本明細書において提供される。本明細書に記載される免疫原性組成物での対象の二重免疫化は、体液性免疫応答ならびに細胞性免疫応答(CD4T細胞応答及びCD8T細胞応答を含む)の誘導をもたらす。2つの免疫原性組成物は、同時または任意の順序で順次投与される。したがって、体液性免疫応答ならびに(細胞傷害性T細胞応答を含み得る)CD4T細胞応答及びCD8T細胞応答を含む細胞性応答を誘導するための方法が本明細書において提供され、免疫応答のそれぞれは免疫原(複数可)に特異的なものであるため、それぞれの指定抗原(複数可)に特異的なものとなる。これらの方法は、(単離される、かつ/または組み換え産生される)少なくとも1つの免疫原を含む免疫原性組成物を投与することと、免疫原の発現をコードし、指示する組み換え発現ベクターを含む第2の免疫原性組成物を投与することとを含む。
一実施形態において、指定抗原(便宜上、本明細書では第1の指定抗原と呼ばれ得る)に対する特異的免疫応答を誘発することができる少なくとも1つの免疫原を含む免疫原性組成物を投与することによって、対象において1つ以上の指定抗原に特異的な免疫応答を誘導するための方法が提供される。本方法は、免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む別の(すなわち、第2の異なる)免疫原性組成物を、同時投与または順次(すなわち、前または後続して)投与することを更に含む。組み換え発現ベクターは、免疫原をコードするヌクレオチド配列に作動的に連結された少なくとも1つの制御配列を更に含み、故に、組み換え発現ベクターは、免疫原の発現を指示することができる。
特定の実施形態において、免疫応答を誘導するためのこれらの方法に従って投与される組み換え発現ベクターは、ベクター粒子(例えば、ウイルスベクター粒子または細胞粒子)中に組み込まれる。組み換え発現ベクターまたはベクターを含むベクター粒子は、粒子が標的細胞に導入される(すなわち、送達される)ことを可能にする様式で構築される。特定の実施形態において、標的細胞は抗原提示細胞である。より具体的な実施形態において、標的細胞は、樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞である。その後、免疫原(またはその断片)は標的細胞中で発現され、その免疫原または断片が抗原提示細胞の表面上に提示され、免疫原に特異的な免疫応答、及びそれによりそれぞれの指定抗原に特異的な免疫応答を誘導する。
少なくとも1つの免疫原(第1の免疫原性組成物)を含む免疫原性組成物は、それを必要とする、免疫原性組成物が投与される対象に投与するのに薬学的または生理学的に好適である、少なくとも1つのアジュバントを更に含み得る。組み換え発現ベクター(第2の免疫原性組成物)を含む免疫原性組成物もアジュバントを含み得る。第1の組成物及び第2の組成物の両方がアジュバントを含む場合、アジュバントは同一であっても、異なってもよい。免疫原、それぞれの指定抗原、アジュバント、ならびに組み換え発現ベクター及びベクター粒子は、本明細書に詳細に論じられる。
別の実施形態において、(アジュバントを更に含み得る)少なくとも1つの免疫原を含む免疫原性組成物がまず投与され、その後、(アジュバントを更に含み得る)少なくとも1つの免疫原を含む免疫原性組成物の投与と同時に組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物が投与される。換言すると、(アジュバントを更に含み得る)少なくとも1つの免疫原を含む免疫原性組成物は、第1またはプライミング免疫化であり、組み換え発現ベクター及び(アジュバントを更に含み得る)少なくとも1つの免疫原を含む免疫原性組成物の第2の用量を含む免疫原性組成物は、追加免疫組成物として同時投与される。
他の実施形態において、少なくとも1つの免疫原を含む免疫原性組成物が少なくとも1つの追加の免疫原(または少なくとも1つの第2の免疫原)を更に含む、免疫応答を誘導するための方法が提供される。本明細書に記載される方法の他の実施形態において、免疫原をコードし、第2の免疫原性組成物中に含まれる組み換え発現ベクターはまた、少なくとも1つの追加の免疫原の発現もコードし、指示する。更に別の実施形態において、少なくとも1つの免疫原を含む免疫原性組成物は、少なくとも1つの追加の免疫原を更に含み、他の(または第2の)免疫原性組成物中に含まれる組み換え発現ベクターは、少なくとも1つの追加の免疫原の発現をコードし、指示する。第1及び第2の免疫原性組成物中に含まれる免疫原は、同一であっても、異なってもよい。特定の実施形態において、第1の組成物中に含まれる少なくとも1つの追加の免疫原と、第2の免疫原性組成物中に含まれる組み換え発現ベクターによってコードされるものとは、同一である。本明細書で詳細に論じるように、1つ以上の免疫原が免疫原性組成物中に含まれるか、または組み換え発現ベクターによってコードされる場合、各免疫原は、同一の指定抗原または異なる指定抗原に対する特異的免疫応答を誘導し得る。
したがって、特定の一実施形態において、少なくとも1つの免疫原を含む(アジュバントを更に含み得る)免疫原性組成物が、少なくとも1つの追加の免疫原(すなわち、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の免疫原とも換言され得る、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、またはそれ以上の免疫原)を更に含む方法が提供される。特定の実施形態において、少なくとも2つの免疫原(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の免疫原)を含む免疫原性組成物は、多価の免疫原性組成物を形成する。2つ以上の免疫原がアジュバントと組み合わされる例において、免疫原性組成物は、アジュバントとともに別個に配合された各免疫原を含んでもよく、その後、アジュバント化された免疫原が組み合わされて、対象に投与される免疫原性組成物を形成する。あるいは、2つ以上の免疫原がアジュバントと組み合わされ、ともに配合されて、免疫原性組成物を形成してもよい。特定の具体的な実施形態において、各追加の免疫原(例えば、第2、第3、第4、第5、第6の免疫原など)のうちの1つ以上は、第1の免疫原と同一の指定抗原に対する免疫応答を誘導し得る。他の特定の実施形態において、各追加の免疫原(例えば、第2、第3、第4、第5の免疫原など)はそれぞれ、異なる指定抗原(例えば、第2、第3、第4、第5、第6などの指定抗原)に特異的な免疫応答を誘導し得る。
上記の通り、特定の実施形態において、免疫原性組成物中の組み換え発現ベクターが多シストロンであり得、少なくとも1つの追加の免疫原(すなわち、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の免疫原とも換言され得る、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、またはそれ以上の免疫原)をコードするヌクレオチド配列を含み得る方法が提供される。組み換え発現ベクターは、組み換え発現ベクターが導入される細胞中で各免疫原が発現されるように、それぞれのヌクレオチド配列が各免疫原をコードして、フレーム中に全ての適切な制御配列を含むように構築される。特定の具体的な実施形態において、各追加の免疫原(例えば、第2、第3、第4、第5、第6の免疫原など)のうちの1つ以上は、第1の免疫原と同一の指定抗原に対する免疫応答を誘導し得る。他の特定の実施形態において、追加の免疫原(例えば、第2、第3、第4、第5、第6の免疫原など)のそれぞれは、異なる指定抗原(例えば、第2、第3、第4、第5、第6の指定抗原など)に特異的な免疫応答をそれぞれ誘導し得る。
他の特定の実施形態において、免疫応答を誘導するための方法が提供され、第1の免疫原性組成物は、少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原(便宜上、第1の免疫原と呼ばれる)を含み、少なくとも1つの追加の単離された/組み換え免疫原を更に含み得る。他の実施形態において、本方法は、第1の免疫原をコードし、少なくとも1つの追加の免疫原をコードする組み換え発現ベクターを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含む。特定の一実施形態において、第1の免疫原性組成物は、少なくとも2つの単離された/組み換え免疫原を含み、第2の免疫原性組成物は、少なくとも2つの免疫原をコードするヌクレオチド配列を含有する組み換え発現ベクターを含む。
単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物中に2つ以上の免疫原が含まれる、かつ/または組み換え発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされる場合、各免疫原は、対象となる指定抗原の2つの異なる免疫原性領域またはエピトープを含むアミノ酸配列を含み得る。少なくとも1つの免疫原は、少なくとも1つのB細胞エピトープを含んでも、T細胞エピトープを含んでも、B細胞エピトープ及びT細胞エピトープの両方を含むアミノ酸配列を含んでもよい。第2の異なる免疫原は、異なるB細胞及び/またはT細胞エピトープに対応するアミノ酸配列を含んでもよい。2つ以上の免疫原が免疫原性組成物中に含まれる(または組み換え発現ベクターによってコードされる)場合、少なくとも1つの免疫原は、少なくとも1つのT細胞エピトープ領域を含む。より具体的な実施形態において、少なくとも1つのT細胞エピトープ領域は、免疫原及びそれぞれの指定抗原に対するCD8T細胞特異的免疫応答を誘導することができる。
2つ以上の免疫原に特異的な免疫応答の誘導が所望される特定の実施形態において、少なくとも1つの免疫原が、少なくとも1つの特異的体液性及び/またはCD4T細胞応答を含む免疫応答を誘導することができ、少なくとも1つの追加の免疫原が、少なくとも1つ特異的CD8T細胞免疫反応を含む免疫応答を誘導することができる。したがって、一実施形態において、(a)第1の単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物(第1の免疫原性組成物とも呼ばれ得る)(この組成物は、アジュバントを更に含み得る)と、(b)第1の免疫原及び第2の免疫原の発現をコードし、指示する組み換え発現ベクターを含む第2の免疫原性組成物とを、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法が本明細書において提供され、少なくとも第2の免疫原は、特異的CD8T細胞応答を誘導することができる。特定の実施形態において、少なくとも2つの免疫原のうちのそれぞれは、同一の指定抗原に対する免疫応答を誘導する能力を有する。あるいは、少なくとも2つの免疫原のうちのそれぞれは、異なる指定抗原(便宜上、それぞれ第1及び第2の指定抗原などとも呼ばれる)に特異的な免疫応答を誘導する能力を有する。
本明細書に記載される特定の実施形態において、2つの異なる免疫原性組成物が、それらを必要とする対象に順次投与される。特定の一実施形態において、本方法は、組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物を投与する前に、(アジュバントを更に含み得る)少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物を投与することを含む。換言すると、特定の実施形態において、本方法は、単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物(この組成物は、アジュバントを更に含み得る)の投与に後続して(すなわち、後に)、組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物を投与することを含む。
他の実施形態において、組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物は、単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物(この組成物は、アジュバントを更に含み得る)の前に投与される。換言すると、特定の実施形態において、本方法は、組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物の投与に後続して(すなわち、後に)、(アジュバントを更に含み得る)少なくとも1つの免疫原を含む免疫原性組成物を投与することを含む。
本明細書に記載される二重免疫化法及び免疫原性組成物を使用する免疫応答の誘導は、様々な異なる免疫化レジメンを用いることによって達成することができる。免疫化レジメンの例示的、非網羅的一覧を図6及び図5に示す。特に、CMB305組み合わせ療法において使用される、ID−LV305(レンチウイルスベクターがNY−ESO−1を発現する、樹状細胞を標的化するように修飾されたアルファウイルスで偽型化されている、本明細書に記載されるレンチウイルスベクター)及びIDC−G305(GLA−SE(合成リピドA類似体TLR4アゴニスト)と組み合わせた組み換えNY−ESO−1タンパク質)が異なる時間に順次投与される、CMB305の計画された臨床レジメンが本明細書に記載される。具体的には、0日目及び21日目にLV305を投与し、その後、35日目にG305を投与する。49日目に別の用量のレンチウイルスベクターを与え、その後、63日目にG305の別の投与を行う。77日目に第4の用量のLV305を与え、その後、91日目に第3の用量のG305を与える。
適応抗原特異的免疫応答を誘導するための方法のこれら及び追加の実施形態は、以下及び本明細書に詳細に記載される。
特定の実施形態において、本方法は、単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物(参照を容易にするため、第1の免疫原性組成物と呼ぶ)、及び/または組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物(参照を容易にするため、第2の免疫原性組成物と呼ぶ)を、対象に2回以上投与することを含む。特定の実施形態において、(アジュバントを更に含み得る)免疫原を含む免疫原性組成物は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、またはそれ以上の回数(例えば、二度(2回)、3回、4回、5回、またはそれ以上の回数)対象に投与される。換言すると、第1の免疫原性組成物の複数の用量(すなわち、2、3、4、5、6、またはそれ以上の用量)が、対象に投与される。第1の免疫原性組成物が複数可(すなわち、二度(2回)、3回、4回、5回、またはそれ以上の回数)投与される場合、第1の免疫原性組成物の各投与は順次であってもよく、第1の組成物の各投与及び全てが第2の組成物の前に投与される。他の特定の実施形態において、第2の組成物は、第1の組成物の1用量後かつ第1の組成物の後続用量前に投与される。例として、第1の組成物が対象に2回投与される場合、第2の組成物は、第1の免疫原性組成物の第1の投与(すなわち、第1の用量)に後続して、かつ免疫原性組成物の第2の投与(すなわち、第2の用量)の投与の前に投与されてもよい。第1の免疫原性組成物が3回投与される(すなわち、3用量が投与される)場合などの、別の特定の実施形態において、第2の組成物は、第1の用量の後かつ第2の用量の前、第2の用量の後かつ第3の用量の前、または第1の免疫原性組成物の3用量全ての後に投与されてもよい。第1の免疫原性組成物が4回投与される(すなわち、4用量が投与される)場合などの、更に別の特定の実施形態において、第2の組成物は、第1の用量の後かつ第2の用量の前、第2の用量の後かつ第3の用量の前、第3の用量の後かつ第4の用量の前、または第1の免疫原性組成物の4用量全ての後に投与されてもよい。当業者は、第1の免疫原性組成物5つ以上の用量が投与される場合、第2の組成物が第1の免疫原性組成物の複数の用量のいずれか1つに後続して、または第1の免疫原性組成物の全ての用量の投与に後続して投与され得ることを容易に認識することができる。代替的実施形態において、第2の免疫原性組成物は1回投与され、第1の免疫原性組成物の全ての投与前に投与される。
更に別の実施形態において、第1の免疫原性組成物が複数回(すなわち、2回以上の回数)投与される場合、第1の免疫原性組成物の1用量は、第2の免疫原性組成物の投与と同時に投与されてもよい。例として、投薬レジメンが第1の免疫原性組成物の2用量の投与を含む場合、第1の用量は、第2の免疫原性組成物と第1の免疫原性組成物の第2の用量との同時投与の前に投与されてもよい。追加の例として、投薬レジメンが第1の免疫原性組成物の3以上の用量の投与を含む場合、3つの用量のうちの少なくとも1つは、第2の免疫原性組成物の投与と同時に投与され、第1の免疫原性組成物の追加の用量は、両方の組成物の同時投与前に投与されても、両方の組成物の同時投与に後続して投与されても、または特定の投薬レジメンに従って投与が意図される第1の免疫原性組成物の用量の総数によっては、1つ以上の用量が両方の組成物の同時投与前に投与され、第1の免疫原性組成物の残りの用量が両方の組成物の同時投与に後続して投与されてもよい。
特定の具体的な実施形態において、第1の免疫原性組成物の投与は2回投与され、第2の免疫原性組成物は、(a)第1の免疫原性組成物の第1の投与に後続して、かつ第1の免疫原性組成物の第2の投与の前に、(b)第1の免疫原性組成物の第2の投与に後続して、(c)第1の免疫原性組成物の第1の投与の前に、または(d)第1の免疫原性組成物の第1及び第2の投与と同時に投与される。別の特定の実施形態において、第1の免疫原性組成物は3回投与され、第2の免疫原性組成物は、(a)第1の免疫原性組成物の第1の投与に後続して、かつ第1の免疫原性組成物の第2の投与の前に、(b)第1の免疫原性組成物の第2の投与に後続して、かつ第1の組成物の第3の投与の前に、(c)第1の免疫原性組成物の第3の投与に後続して、(d)第1の免疫原性組成物の第1の投与の前に、または(e)第1の免疫原性組成物の第1、第2、もしくは第3の投与と同時に投与される。更に別の特定の実施形態において、第1の免疫原性組成物は4回投与され、第2の免疫原性組成物は、(a)第1の免疫原性組成物の第1の投与に後続して、かつ第1の免疫原性組成物の第2の投与の前に、(b)第1の免疫原性組成物の第2の投与に後続して、かつ第1の組成物の第3の投与の前に、(c)第1の免疫原性組成物の第3の投与に後続して、かつ第1の組成物の第4の投与の前に、(d)第1の免疫原性組成物の第4の投与に後続して、(e)第1の免疫原性組成物の第1の投与の前に、または(f)第1の免疫原性組成物の第1、第2、第3、もしくは第4の投与と同時に投与される。
更に他の特定の実施形態において、第2の組成物(すなわち、少なくとも1つの免疫原をコードする組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物)が2回投与され、第1の免疫原性組成物(すなわち、少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原を含み、アジュバントを更に含み得る免疫原性組成物)が1回、2回、3回、4回、5回、またはそれ以上の回数投与される方法が提供される。第2の組成物の2つの投与(すなわち、2用量)のうちのそれぞれ及び第1の免疫原性組成物の各投与(すなわち、第1、第2、第3、第4、または第5の投薬)は、任意の順序で順次投与され得る。他の特定の実施形態において、第2の免疫原性組成物の用量のうちの少なくとも1つは、第1の免疫原性組成物の1用量と同時に投与される。
別の特定の実施形態において、第2の組成物(すなわち、レンチウイルスベクターなどの、少なくとも1つの免疫原をコードする組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物)が2回投与され、第1の免疫原性組成物(すなわち、少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原を含み、アジュバントを更に含み得る免疫原性組成物)が後続して1回投与され、その後、第2の免疫原性組成物が追加投与され、後続して、第1の免疫原性組成物が再度投与され、その後、第2の免疫原性組成物の別の投与及び第1の免疫原性組成物の追加の投与が再度なされる方法が提供される。特定の実施形態において、このレジメンには、追加免疫として第1の免疫原性組成物の追加の投与が続いてもよい。
本明細書に記載するように、他の実施形態において、単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物(この組成物は、アジュバントを更に含み得る)、及び免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物は、少なくとも1回、同時に投与されてもよい。そのような一実施形態において、(1)免疫原を含む免疫原性組成物(この組成物は、アジュバントを更に含み得る)を投与し、順次、任意の順序で、(2)免疫原をコードする組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物と同時に、免疫原を含む免疫原性組成物の第2の用量を投与することを含む方法が本明細書において提供される。特定の一実施形態において、免疫原を含む免疫原性組成物は、組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物と免疫原を含む免疫原性組成物(すなわち、免疫原を含む免疫原性組成物の第2の用量)との同時投与の前に投与される。別の具体的な実施形態において、免疫原を含む免疫原性組成物は、組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物と免疫原を含む免疫原性組成物との同時投与に後続して投与される。更により具体的な実施形態において、組み換え/単離された免疫原を含む免疫原性組成物(すなわち、第1の免疫原性組成物)の各用量は、免疫原をコードする組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物(すなわち、第2の免疫原性組成物)の1用量と同時に投与される。より具体的には、第1の免疫原性組成物の第1の用量が第2の免疫原性組成物の第1の用量と同時に投与され(プライミング免疫化とも呼ばれる)、その後、第1の免疫原の第2の用量及び第2の免疫原性組成物の第2の用量が同時投与される(追加免疫化とも呼ばれる)方法が提供される。特定の実施形態において、対象は、第1及び第2の免疫原性組成物の同時投与によって3回免疫化されてもよい。プライミング免疫化と追加免疫化(複数可)との間の時間間隔は本明細書に詳細に論じられ、前臨床研究及び/または臨床研究からの結果に基づいて選択される。
免疫原性組成物の順次投与を含む、本明細書に記載される方法に関して、用量間の時間間隔は、臨床治験を実施する当業者によって容易に決定され得る。ヒト対象の投薬レジメンはまた、前臨床研究からの結果及び当該技術分野における知識によって知り得る。特定の実施形態において、免疫原性組成物の用量の投与間の時間間隔は、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、もしくは7日、または1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、もしくは8週間であっても、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、もしくは11ヶ月、または少なくとも1年、2年、3年、もしくは4年であってもよい。例として、組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物(議論を容易にするため、第2の免疫原性組成物と呼ぶ)が、免疫原を含む免疫原性組成物(議論を容易にするため、第1の免疫原性組成物と呼ぶ)の少なくとも1つの用量に後続して投与される場合、第2の免疫原性組成物は、本明細書に記載される時間間隔のうちのいずれか1つ、または適切な前臨床研究及び臨床研究によって決定され得る時間間隔で、第1の免疫原性組成物の少なくとも1つの用量の投与に後続して投与される。
同様に、組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物(議論を容易にするため、第2の免疫原性組成物と呼ぶ)が、免疫原を含む免疫原性組成物(議論を容易にするため、第1の免疫原性組成物と呼ぶ)の少なくとも1つの用量の前に投与される場合、第1の免疫原性組成物は、本明細書に記載される時間間隔のうちのいずれか1つ、または適切な前臨床研究及び臨床研究によって決定され得る時間間隔で、第2の免疫原性組成物の少なくとも1つの用量の投与に後続して投与される。例として、特定の一実施形態において、第2の免疫原性組成物は、0日目、21日目または約21日目(例えば、約19日目〜約23日目)、49日目または約49日目(例えば、約47日目〜約51日目)、及び77日目または約77日目(例えば、約75日目〜約79日目)に投与され得る一方で、第1の免疫原性組成物は、35日目または約35日目(例えば、約33日目〜約37日目)、63日目または約63日目(例えば、約61日目〜約65日目)、及び91日目または約91日目(例えば、約89日目〜約93日目)に再度投与され得る。
特定の実施形態において、対象は、免疫原性組成物のうちの1つ以上で3回、4回、または5回免疫化されてもよい。第3の免疫化と第2の免疫化との間の時間間隔は、第1の免疫原性組成物の投与と第2の免疫原性組成物の投与との間の時間間隔と同一であっても、それとは異なってもよく、時間間隔は異なってもよい。同一または異なる免疫原性組成物の投与間の本明細書に記載される時間間隔は、本明細書に記載される投与レジメン(例えば、図6に示すレジメンを含む)のうちのいずれかに関係する。
上記の方法に従って、本明細書に記載される免疫原性組成物を投与することによって誘導される免疫応答は、各免疫原中に存在する各免疫原に特異的であるため、各免疫原それぞれの指定抗原に特異的なものである、体液性応答及び細胞性応答(CD4免疫応答及びCD8免疫応答を含む)を含む適応免疫応答を含む。単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物(この組成物は、アジュバントを更に含み得る)、及び免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物は、順次投与され、第1に投与される少なくとも組成物(複数可)(プライミング組成物とも呼ばれ得る)は、免疫原及びそれぞれの指定抗原に特異的なCD4T細胞応答を含む免疫応答を誘導することができる。プライミング組成物によって誘導される免疫応答はまた、免疫原及びそれぞれの指定抗原に特異的な抗体応答も含み得る。第2に投与される免疫原性組成物(複数可)(追加免疫組成物とも呼ばれる)は、免疫原及び指定抗原に特異的なCD8T細胞応答を含む免疫応答を誘導する。追加免疫組成物の投与はまた、抗原特異的抗体応答及び/またはCD4T細胞特異的免疫応答も誘導または追加免疫し得る。特定の具体的な実施形態において、かつ本明細書に記載するように、免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物の投与は、免疫原及びそれぞれの指定抗原に特異的なCD8T細胞免疫応答の誘導を少なくとも含む、免疫応答を誘導することができる。
本明細書に記載される免疫原性組成物の第1の投与(すなわち、第1の投薬)によって誘導される免疫応答は、それぞれが免疫原性組成物中に含まれる免疫原に特異的である、体液性免疫応答及びCD4T細胞免疫応答を含み得る。第1の投薬は、(アジュバントを更に含み得る)単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物、または免疫原の発現をコードし、指示する組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物を投与することを含んでも、第1の投薬は、上述の免疫原性組成物のそれぞれの同時投与を含んでもよい。第2の免疫化(すなわち、追加免疫化)は、これらの免疫原性組成物のうちの1つ以上の投与を含み、特異的CD8T細胞免疫応答を含む免疫応答を誘導することができる。
特定の実施形態において、(アジュバントを更に含み得る)少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物(第1の免疫原性組成物とも呼ばれる)は、免疫原に特異的であるため、それぞれの指定抗原に特異的である、CD4T細胞応答を含む免疫応答を誘導することができ、この免疫応答はまた、免疫原に対する体液性応答(すなわち、特異的抗体応答または抗原特異的抗体応答)の誘導も含み得る。免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む、他方の免疫原性組成物(または第2の免疫原性組成物)は、少なくとも免疫原に特異的なCD8T細胞応答を誘導することができ、故に、指定抗原に特異的なCD8T細胞応答を誘導することができる。
したがって、少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物(この組成物は、アジュバントを更に含み得る)を、それを必要とする対象に投与することと、免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物を順次及び/または同時に投与することとを含む、細胞傷害性T細胞応答(CTL)を誘導するための方法が提供される。これらの方法は、複数投薬レジメンを含む、本明細書に記載する2つの免疫原性組成物の投与ステップのいずれかに従って実行することができる。CTL応答は、免疫原及び/またはそれぞれの指定抗原を担持するか、または提示する細胞または粒子に特異的である。特定の具体的な実施形態において、かつ例として、免疫原が腫瘍関連抗原である場合、CTL応答は、免疫原及び/または指定抗原を発現する腫瘍細胞に特異的である。免疫原及び/または指定抗原は、腫瘍細胞表面上に存在するため、細胞傷害性T細胞にとって到達可能であり得る。したがって、本明細書に詳細に記載される方法及び組成物は、腫瘍関連抗原を担持または発現する複数の腫瘍細胞を含む腫瘍の発生及び再発の可能性を低下させるために有用である。
他の特定の実施形態において、免疫原及び指定抗原は、ウイルス、細菌、寄生虫、または真菌などの感染性疾患微生物由来のものであってもよく、CTL免疫応答は、免疫原及び/もしくは指定抗原を発現または担持する、ウイルス、細菌、寄生虫、または真菌にそれぞれ特異的である。したがって、本明細書に記載される方法は、それぞれの感染性疾患生物によって引き起こされる感染症を予防または治療するために有用である。
また、本明細書に記載するように、特定の実施形態において、CTL応答を誘導するためのこれらの方法は、多シストロンであり、少なくとも1つの追加の免疫原(すなわち、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の免疫原とも換言され得る、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、またはそれ以上の免疫原)をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを投与することを含み得る。特定の具体的な実施形態において、追加の免疫原(例えば、第2、第3、第4、第5、第6の免疫原など)のそれぞれの発現時、それぞれが、第1の免疫原と同一の指定抗原に対する免疫応答を誘導し得る。他の特定の実施形態において、追加の免疫原(例えば、第2、第3、第4、第5、第6の免疫原など)のそれぞれは、異なる指定抗原(例えば、第2、第3、第4、第5、第6のものなど)に特異的な免疫応答をそれぞれ誘導し得る。他の特定の実施形態において、少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物は、少なくとも2つの単離された/組み換え免疫原(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の免疫原)を含んで、多価の免疫原性組成物を形成し得る。2つ以上の免疫原がアジュバントと組み合わされる例において、免疫原性組成物は、アジュバントとともに別個に配合された各免疫原を含んでもよく、その後、アジュバント化された免疫原が組み合わされて、対象に投与される免疫原性組成物を形成する。あるいは、2つ以上の免疫原がアジュバントと組み合わされ、ともに配合されて、免疫原性組成物を形成してもよい。特定の具体的な実施形態において、各追加の免疫原(例えば、第2、第3、第4、第5、第6の免疫原など)は、第1の免疫原と同一の指定抗原に対する免疫応答を誘導し得る。他の特定の実施形態において、各追加の免疫原(例えば、第2、第3、第4、第5の免疫原など)はそれぞれ、異なる指定抗原(例えば、第2、第3、第4、第5、第6などのもの)に特異的な免疫応答を誘導し得る。
本明細書に記載される方法及び用途を実施するためのより具体的な実施形態において、アジュバント、例えば、無毒性リピドA関連アジュバントが免疫原とともに配合されてもよい。他の特定の実施形態において、無毒性リピドA関連アジュバントなどのアジュバントは、免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物と組み合わせて投与されてもよい。更により具体的な実施形態において、無毒性リピドA関連アジュバントはGLAである。更により具体的な実施形態において、GLAは、SEとともに配合されて、本明細書に記載される方法及び組成物において使用するための安定な水中油型乳濁剤(GLA/SE)を形成する。
少なくとも1つの単離された/組み換え免疫原を含む免疫原性組成物中にアジュバントが含まれる場合、アジュバント及び免疫原は、典型的には対象への投与前に組み合わされる(すなわち、ともに配合される、混合される)。代替的実施形態において、少なくとも1つの免疫原を含む免疫原性組成物及びアジュバントは、別個しかし同時に対象に投与されてもよい。免疫原を含む免疫原性組成物及びアジュバントが別個かつ同時に投与される場合、免疫原性組成物及びアジュバントのそれぞれは、同一の経路を介して同一の部位に投与されても、異なる経路を介して同一の部位に投与されても、同一または異なる投与経路によって対象の異なる部位に投与されてもよい。特定の実施形態において、アジュバントは、GLA/SEなどの無毒性リピドA関連アジュバントである。
組み換え発現ベクターを含む免疫原性組成物中にアジュバントが含まれる場合、アジュバントは、組み換え発現ベクター(または組み換え発現ベクターを含むベクター粒子)と組み合わされて(すなわち、それとともに配合されて、それと混合されて)、免疫原性組成物を形成してもよい。他の実施形態において、組み換え発現ベクター(または組み換え発現ベクターを含むベクター粒子)を含む免疫原性組成物は、別個の組成物であり、同一の経路を介して同一の部位に投与されても、異なる経路を介して同一の部位に投与されても、同一または異なる投与経路によって対象の異なる部位に投与されてもよい。特定の実施形態において、アジュバントは、GLA/SEなどの無毒性リピドA関連アジュバントである。
別の特定の実施形態において、特異的免疫応答を誘導するための本明細書に記載される免疫化法は、アジュバントGLA/SE及び指定抗原に特異的な免疫応答を誘導することができる免疫原を含む免疫原性組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本明細書に記載するように、GLAはTLR4を標的化する。TLR4は、下流飾シグナリングがMyD88依存性パスウェイ及びTRIF依存性パスウェイの両方を介して発生するという点において、TLRファミリーの中でも特有である。合わせて、これらのパスウェイは、DC成熟、抗原プロセシング/提示、T細胞プライミング、ならびにサイトカイン(例えば、IL−12、IFNα/β、及びTNFα)の産生を刺激する(例えば、Iwasaki et al.,Nat.Immunol.5:987(2004)を参照されたい)。
特定の実施形態において、本明細書に記載するように、組み換え発現ベクターは、ベクター粒子中に組み込まれ、本明細書に記載される方法は、免疫原の発現をコードし、指示する組み換え発現ベクターを含むベクター粒子を含む免疫原性組成物を投与することを含む。より具体的な実施形態において、ベクター粒子はレンチウイルスベクター粒子などのウイルスベクター粒子である。本明細書に記載するように、レンチウイルスベクター粒子は、修飾シンドビスウイルス外被糖タンパク質を使用して、樹状細胞(DC)に選択的に侵入する、自己不活性化非組み込みレンチベクターであるDC−NILVであってもよい。ベクターのDCへの侵入時、ベクターによってコードされる免疫原の活性転写及び翻訳を介して生成される抗原ペプチドは、MHCクラスI提示パスウェイへと導入される。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、DC−NILVの使用は、強固なCD8T細胞応答を生成する。
一実施形態において、組み換え発現ベクターまたは組み換え発現ベクターを含むベクター粒子を含む免疫原性組成物は、対象に直接投与される。他の特定の実施形態において、標的細胞(複数可)は、免疫原性組成物が投与される対象から単離されて、ベクター粒子が標的細胞中にエクソビボで導入されてもよい。その後、ベクター粒子を含む標的化された細胞が、対象に導入される。
更により具体的な実施形態において、二重免疫化法は、対象となる組み換え/単離された免疫原(複数可)がアジュバントGLA/SEと組み合わされたを含む免疫原性組成物を投与することを含む。本方法は、免疫原(複数可)をコードし、発現するDC−NILVを含む第2の免疫原性組成物を投与することを更に含む。これらの免疫原性組成物を使用するための例示的であるが非網羅的な免疫化レジメンを、以下の表1に示す。
追加のレジメンを図5及び図6に示す。
本明細書に記載される方法は、免疫原及びそのそれぞれの指定抗原のうちのいずれか1つに特異的な免疫応答を誘導するために有用である。本明細書に詳細に記載するように、対象となる指定抗原は、腫瘍関連抗原であっても、感染性微生物(例えば、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫)由来の抗原であってもよい。特定の具体的な実施形態において、本明細書に記載される方法は、腎細胞癌抗原、前立腺癌抗原、中皮腫抗原、膵臓癌抗原、黒色腫抗原、乳癌抗原、肺癌抗原、及び卵巣癌抗原を含むが、これらに限定されない腫瘍関連抗原に特異的な免疫応答を誘導するために有用である。より具体的な実施形態において、対象となる指定抗原は、前立腺癌抗原、例えば、前立腺酸性ホスファターゼ、前立腺特異的抗原、NKX3.1、または前立腺特異的膜抗原である。
別の特定の実施形態において、HIV、CMV、肝炎ウイルス、EBV、RSV、VSV、インフルエンザ、もしくはHSV−2、または本明細書もしくは当該技術分野において記載される任意の他の感染性ウイルスなどのウイルスに対して対象を免疫化するための組成物及び方法が提供される。したがって、本明細書に記載される方法は、ウイルス抗原に特異的な免疫応答を誘導するために使用され得る。より具体的な実施形態において、対象となる指定抗原は、gD及びUL19などのHSV−2タンパク質である。
特定の実施形態において、本明細書において提供される二重免疫化法は、対象においてCD8T細胞免疫応答をプライミングし、追加免疫するための方法を提供する。本明細書において提供される二重免疫化法は、対象となる少なくとも1つの指定抗原を担持または発現する細胞、粒子、もしくは微生物に対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導するために使用することができる。特定の実施形態において、対象となる少なくとも1つの指定抗原を発現する腫瘍細胞に対するCTL応答を誘導するための方法が本明細書において提供される。特定の実施形態において、指定抗原(またはその部分(複数可))は、腫瘍細胞の細胞外表面上に存在し、細胞外環境に露出されている。本明細書に記載される方法は、対象となる指定抗原である腫瘍関連抗原を担持、発現、もしくは分泌する腫瘍(複数の腫瘍細胞を含む)の発生または再発の可能性を低下させる(すなわち、統計的、臨床的、もしくは生物学的に有意な様式で、発生または再発の可能性を低下させる)ために有用である。
他の特定の実施形態において、本明細書に記載される方法は、ウイルス、寄生虫、細菌、または真菌細胞などの微生物に対するCTL応答を誘導する。指定抗原は、典型的には微生物によって分泌される微生物抗原であっても、微生物の細胞表面上に存在するため露出しており、かつ対象の免疫系の分子及び細胞による認識ならびにそれとの相互作用に利用可能である、1つ以上の免疫原性領域を有する微生物抗原であってもよい。したがって、対象の二重免疫化を含む本明細書に記載される方法は、対象に対する本明細書に記載される免疫原性組成物の投与の不在下では悪化するか、もしくは発生する、微生物感染症を治療及び/または予防する(すなわち、統計的、臨床的、もしくは生物学的に有意な様式で、その発生の可能性を低下させる)ために有用である。
医学の技術分野の当業者によって理解されるように、「治療する」及び「治療」という用語は、対象(すなわち、ヒトまたは非ヒト動物であり得る患者、宿主)の疾患、障害、または病態の医学的対応を指す(例えば、Stedman’s Medical Dictionaryを参照されたい)。一般に、適切な用量及び治療レジメンは、治療的及び/または予防的利益をもたらすのに十分な量の、本明細書に詳述される免疫原及び任意でアジュバントを提供する。治療処置及び/または予防方法もしくは防止方法の結果として得られる治療的及び/または予防的利益としては、例えば、所望されない生理学的変化もしくは障害を予防もしくは緩徐化もしくは遅延(減少)させること、またはそのような疾患もしくは障害の重症度の増大を予防もしくは緩徐化もしくは遅延(減少)させることが目的である臨床成績の改善が挙げられる。対象の治療からの有益または所望される臨床結果としては、治療される疾患もしくは障害の結果として生じるか、またはそれに関連する症状の寛解、減少、もしくは軽減;症状の発生の減少;生活の質の改善;より長い無疾患状態(すなわち、対象が、それに基づいて疾患の診断がなされる症状を示す可能性または傾向を減少させること);疾患程度の減少;疾患の安定化した(すなわち、悪化していない)状態;疾患進行の遅延または緩徐化;疾患状態の寛解または緩和;及び検出可能または検出不能であるかに関わらず(部分的または全体的であるかに関わらず)緩解;ならびに/あるいは全体的な生存が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」とはまた、対象が治療を受けなかった場合に予想される生存と比較して、生存を延長することも意味し得る。本明細書に記載方法及び組成物を必要とする対象は、既に疾患もしくは障害を有している対象、及び疾患もしくは障害を有する傾向があるか、またはそれを発症するリスクにある対象を含む。予防的治療を必要とする対象は、疾患、病態、または障害が予防されるべきである(すなわち、疾患もしくは障害の発生または再発の可能性を減少させる)対象を含む。本明細書に記載される組成物(及び組成物を含む調製物)ならびに方法によってもたらされる臨床的利益は、組成物の投与が利益をもたらすことが意図される対象における、インビトロアッセイ、前臨床研究、ならびに臨床的研究の設計及び実行によって評価することができる。適切な前臨床研究ならびに臨床研究の設計及び実行は、関連する技術分野(複数可)の当業者によって容易に実行され得る。
単離された/組み換え免疫原、組み換え発現ベクター、及び/またはベクター粒子は、薬学的もしくは生理学的に許容される賦形剤または担体で対象に投与され得る。薬学的に許容される賦形剤は、生物学的に適合するビヒクル、例えば、本明細書に詳細に記載され、ヒトまたは他の非ヒト対象(非ヒト哺乳類対象を含む)への投与が好適である、生理食塩水である。
組み換え発現ベクターの投与に関して、治療的に有効な量は、治療されるヒトまたは非ヒト動物において、医学的に望ましい結果を産生することができる(すなわち、統計的、生物学的、及び/もしくは有意な様式で、免疫原に特異的な免疫応答(体液性及び/もしくは細胞傷害性T細胞応答を含む細胞媒介応答)を誘導または亢進するのに十分な量の免疫原が発現される)ポリヌクレオチドの量を提供する。医学の技術分野において周知であるように、任意の1人の患者への投与量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、一般的健康、ならびに同時投与される他の薬物を含む多くの因子に依存する。用量は変動するが、組み換え発現ベクターを含むベクター粒子を投与するために好ましい用量は、ベクターポリヌクレオチド分子(ベクターゲノムとも呼ばれる)の約106〜1012個の複写を提供するのに十分である。
本明細書に記載される免疫原性組成物及びアジュバント組成物を含む薬学的組成物は、医学の技術分野の当業者によって決定される、治療(または予防)される疾患または病態に適切な様式で投与され得る。適切な用量ならびに組成物の投与の好適な継続期間及び頻度は、患者の健康状態、患者の大きさ(すなわち、体重、質量、または体面積)、患者の疾患の種類及び重症度、活性成分の特定の形態、ならびに投与方法などの因子によって決定されるであろう。一般に、適切な用量及び治療レジメンは、治療的及び/または予防的利益(より頻繁な完全もしくは部分的緩解などの臨床成績の改善、より長い無疾患及び/もしくは全体的な生存、または症状重症度の減少を含む、本明細書に記載するようなもの)をもたらすのに十分な量の組成物(複数可)を提供する。予防的用途には、用量は、疾患もしくは障害に関連する疾患を予防、その発生を遅延、またはその重症度を減少するのに十分であるべきである。本明細書に記載される方法に従って投与される免疫原性組成物の予防的利益は、前臨床研究(インビトロ及びインビボ動物研究を含む)ならびに臨床研究を実行し、それらから取得されたデータを、適切な統計的、生物学的、及び臨床的方法ならびに技術(これらの全ては当業者によって容易に実施され得る)によって分析することによって決定することができる。
一般に、1用量中に存在するか、または1用量中に存在するポリヌクレオチドをコードすることによってインサイチュで産生される、本明細書に記載する融合ポリペプチドを含む免疫原の量は、1kgの宿主当たり約0.01μg〜約1000μgの範囲である。有効な治療をもたらすのに十分である最小投与量の使用が、通常好ましい。患者は一般に、治療または予防される病態に好適なアッセイを使用して、治療的または予防的有効性について監視され得、これらのアッセイは、当業者が精通しており、本明細書に記載されるものであるだろう。液体形態で投与される場合、好適な用量サイズは患者の大きさとともに変動するが、典型的には10〜60kgの対象について、約1ml〜約500ml(1kg当たり約0.01μg〜約1000μgを含む)の範囲であるだろう。最適な用量は一般に、実験モデル及び/または臨床治験を使用して決定することができる。最適な用量は、対象の体重、体面積、または血液量に依存し得る。本明細書に記載するように、適切な用量はまた、年齢、性別、及び体重、ならびに医学の技術分野の当業者が精通している他の因子だけでなく、患者の(例えば、ヒト)病態、つまり、疾患の段階、一般的健康状態にも依存し得る。
薬学的組成物は、例えば、局所、経口、経腸、経鼻(すなわち、鼻腔内)、吸入、髄腔内、直腸、腟、眼内、結膜下、舌下、皮内、節内、腫瘍内、経皮、または非経口投与(皮下、経皮、静脈内、筋肉内、胸骨内、空洞内、外尿道口内、もしくは尿道内注射または注入を含む)を含む、任意の適切な投与様式で配合され得る。投与方法は、明細書に詳細に記載される。
非経口投与について、担体は、好ましくは水、食塩水、アルコール、脂肪、ワックス、または緩衝液を含む。経口投与について、上記の賦形剤のうちのいずれか、またはマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、固体サッカリン、タルカム、セルロース、カオリン、グリセリン、デンプンデキストリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、グルコース、スクロース、及び/または炭酸マグネシウムなどの固体賦形剤もしくは担体が用いられてもよい。
組み換え/単離された免疫原を含む免疫原性組成物、及び組み換えベクター構築物またはベクター粒子を含む免疫原性組成物は、免疫原の有効用量を提供する任意の経路による送達のために配合され得る。そのような投与方法は、経口投与または注射による送達を含み、液体の形態であってもよい。液体薬学的組成物としては、例えば、以下、注射用水、食塩水溶液、好ましくは生理食塩水、リンゲル溶液、等張食塩水、溶液もしくは懸濁培地としての役割を果たし得る不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の溶媒などの無菌希釈剤;抗菌剤;酸化防止剤;キレート剤;塩化ナトリウムもしくはデキストロースなどの浸透圧の調整のための緩衝液及び薬剤のうちの1つ以上が挙げられ得る。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数容量バイアルに封入され得る。生理食塩水の使用が好ましく、注射可能薬学的組成物は好ましくは無菌である。
本明細書に記載される組み換え発現ベクターなどの核酸分子を含む薬学的組成物について、核酸分子は、当業者にとって既知である核酸、ならびに細菌、ウイルス、及び哺乳類発現系(例えば、本明細書において提供されるベクター粒子及び組み換え発現構築物など)を含む任意の種類の送達系内に存在し得る。ポリヌクレオチド(例えば、DNA)をそのような発現系内に組み込むために技術は、当業者にとって周知である。他の特定の実施形態において、典型的にはDNAである組み換え発現ベクターはまた、例えば、Ulmer et al.,Science259:1745−49(1993)に記載され、Cohen,Science259:1691−92(1993)に概説されるように「ネイキッド」であり得る。ネイキッドDNAの取り込みは、細胞中に効率的に輸送される生分解性ビーズ上にDNAをコーティングすることによって増加され得る。
核酸分子は、当該技術分野において記載されるいくつかの方法いずれか1つに従って、細胞中に送達され得る(例えば、Akhtar et al.,Trends Cell Bio.2:139(1992)、Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,ed.Akhtar,1995,Maurer et al.,Mol.Membr.Biol.16:129−40(1999)、Hofland and Huang,Handb.Exp.Pharmacol.137:165−92(1999)、Lee et al.,ACS Symp.Ser.752:184−92(2000)、米国特許第6,395,713号、国際特許出願公開第94/02595号)、Selbo et al.,Int.J.Cancer87:853−59(2000)、Selbo et al.,Tumour Biol.23:103−12(2002)、米国特許出願公開第2001/0007666号、及び同第2003/077829号を参照されたい)。当業者にとって既知であるそのような送達方法としては、イオン導入による、または生分解性ポリマー;ヒドロゲル;シクロデキストリン(例えば、Gonzalez et al.,Bioconjug.Chem.10:1068−74(1999)、Wang et al.国際出願公開第03/47518号及び同第03/46185号);乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)及びPLCA微粒子(ペプチド及びポリペプチドならびに他の物質の送達にも有用である)(例えば、米国特許第6,447,796号、米国特許出願公開第2002/130430号を参照されたい);生分解性ナノカプセル;ならびに生体接着性微粒子などの他のビヒクル中への組み込みによる、あるいはタンパク質性ベクター(国際出願公開第00/53722号)による、リポソーム中へのカプセル封入が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、核酸分子はまた、ポリエチレンイミン及びその誘導体(ポリエチレンイミン−ポリエチレングリコール−N−アセチルガラクトサミン(PEI−PEG−GAL)またはポリエチレンイミン−ポリエチレングリコール−トリ−N−アセチルガラクトサミン(PEI−PEG−triGAL)誘導体など)とともに配合または複合されてもよい(例えば、米国特許出願公開第2003/0077829号も参照されたい)。
本明細書に記載される方法の特定の実施形態において、対象はヒトまたは非ヒト動物である。本明細書に記載される治療を必要とする対象は、本明細書に記載される疾患、障害、または病態の症状または続発症を呈し得るか、または疾患、障害、または病態を発症するリスクにあり得る。治療され得る非ヒト動物としては、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、及びゴリラなど)、齧歯類(例えば、ラット、マウス、スナネズミ、ハムスター、フェレット、ウサギ)、ウサギ類、ブタ類(例えば、ブタ、ミニブタ)、ウマ類、イヌ類、ネコ類、ウシ類、ならびに他の飼育動物、家畜、及び動物園の動物が挙げられる。
本明細書において提供される組成物は、例えば、固体、液体、粉末、水性、または凍結乾燥形態などの様々な形態であり得る。ウイルスベクター粒子及び細菌ベクター粒子を含むベクター粒子を投与するための好適な薬学的賦形剤及び担体、ならびに組み換え発現ベクター成物の例は、当該技術分野において既知である。そのような賦形剤、担体、及び/または添加剤は、従来の方法によって配合され、好適な用量で対象に投与され得る。本明細書に記載される組成物中に含まれ得るリピドなどの安定剤、ヌクレアーゼ阻害剤、ポリマー、及びキレート剤は、組成物及び組成物の構成成分を体内での分解から保存するのを補助し得る。
本明細書において提供されるウイルスベクター粒子及び細菌ベクター粒子を含むベクター粒子、免疫原性組成物、アジュバント組成物、ならびに組み換え発現ベクターは、キットとしてパッケージングされてもよい。キットは、任意で使用説明書、デバイス、及び追加の試薬などの1つ以上の構成成分と、本方法を実施するためのチューブ、容器、及びシリンジなどの構成成分とを含む。例示的なキットは、任意で使用説明書、ベクター粒子を検出するためのデバイスもしくは試薬、組み換え発現ベクター、または対象中の免疫原と、組成物(複数可)を対象に投与するためのデバイスとを含んでもよい。
免疫原をコードするポリヌクレオチドを含むキットもまた、本明細書に企図される。そのようなキットはまた、ウイルスパッケージング構成成分をコードする少なくとも1つのプラスミド、及びシンドビスウイルスE2糖タンパク質バリアントをコードするベクターも含んでもよい。いくつかのキットは、ウイルスパッケージング構成成分をコードする少なくとも1つのプラスミド、シンドビスウイルスE2糖タンパク質バリアントをコードするベクター、及び少なくとも1つのDC成熟因子をコードするベクターを含有するであろう。
対象となる(典型的には抗原または免疫原をコードする)配列をコードするウイルスベクターを含むキット、及び任意でDC成熟因子をコードするポリヌクレオチド配列もまた、本明細書に企図される。いくつかのキットにおいて、キットは、ウイルスパッケージング構成成分をコードする少なくとも1つのプラスミド、及びシンドビスウイルスE2糖タンパク質バリアントをコードするベクターを含む。
キットはまた、説明書を含有してもよい。説明書は典型的には、組成物を投与するために、対象の適切な状態、適切な投与量、及び適切な投与方法を決定するための方法を含む投与のための方法を記載する。説明書はまた、治療時間の継続期間にわたって対象を監視するためのガイダンスも含んでもよい。
本明細書において提供されるキットはまた、本明細書に記載される免疫原性組成物のうちのそれぞれを投与するための、及び/またはアジュバント組成物を対象に投与するためのデバイスを含んでもよい。薬剤、免疫原性組成物、及びワクチンを投与するための、当該技術分野において既知である様々なデバイスのうちのいずれも、本明細書において提供されるキットに含まれてもよい。例示的なデバイスの例としては、皮下針、静脈内針、カテーテル、無針注射デバイス、吸入器、及び液体分注器(点眼器など)が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、組成物を投与するためのデバイスは、キットの活性構成成分と適合する。例えば、高圧注射デバイスなどの無針注射デバイスが、高圧注射によって損傷されないベクター粒子、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドとともにキットに含まれてもよいが、典型的には、高圧注射によって損傷され得るベクター粒子、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドを含むキットには含まれない。
他の実施形態及び用途は、本開示に照らして、当業者に明らかになるであろう。以下の実施例は、単に様々な実施形態の例示的なものとして提供されるにすぎず、いかなる方法でも本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例1
ID−VP02に対する中和抗体応答が、免疫化後に検出され得る
VP02(他ではDC−NILVとも呼ばれる)は、腫瘍抗原コード遺伝子をインビボでDCに送達するように操作された、レンチベクター(LV)系ワクチンプラットフォームである。このワクチンプラットフォームは、C型レクチン受容体DC−SIGNに結合する操作されたシンドビスウイルス(SINV)糖タンパク質での偽型化によって、DCを形質導入することが示されている。結果として、ベクターは、マウスにおける単一免疫化後、大きな機能的CD8T細胞免疫応答を誘導する。VP02レンチウイルスベクタープラットフォームは、(ベクター産生中、ゲノム転写物の核内輸出を促進する)Revを除く全てのHIVアクセサリータンパク質を欠き、ベクターは、U3領域(ΔU3)に延長した欠失を有する分割ゲノムによってコードされる。ΔU3欠失は、(1)感染した標的細胞中で、逆転写されたdsDNAベクターからの全長ベクターゲノムの転写を予防し、(2)3’LTRが組み込み後にプロモーターとして機能し得るときに発生し得る、挿入活性化のリスクを最小化する、自己不活性化変異である。特異的変異は、(1)ヒトDCを形質導入するVP02の能力を亢進し、(2)インテグラーゼ酵素依存性組み込み事象を除去するための重複した安全性機構を提供するために、ベクター及び製造プロセスにおいて行われている。特に、VP02プラットフォームは、DCへの結合及び侵入を亢進するための2つの特異的修飾を含有する。第1のものは、DC−SIGN膜タンパク質に対する結合特異性を有するアルファウイルス外被糖タンパク質の使用である。この外被(SINVar1)は、そのDC向性を更に増加させ、遍在するヘパラン硫酸塩受容体への結合を予防するために、原型から遺伝子組み換えされている。これらの遺伝子組み換えに加えて、ID−VP02がマンノシダーゼIの小分子阻害剤の存在下で産生され、これは、末端高マンノース残基を有するID−VP02外被糖タンパク質の生成をもたらす(例えば、国際公開第2013/149167号を参照されたい)。
中和抗体応答は、CD8T細胞に対する提示のための抗原を送達するベクターの効力に影響を与え得る第1の投与後、ID−VP02に対して生成されることが予想される。インビボ投与後に中和抗体がID−VP02に対して生成されるかどうかを決定するために、GFPをコードするID−VP02の7.5×1010、3.0×109、もしくは1.2×108個のベクターゲノム、GFPをコードするVSV−G偽型化されたレンチベクターの7.5×1010個のベクターゲノム、またはHBSSのうちのいずれかで免疫化した3匹のマウスの群から血清を単離させた。その後、インビトロ形質導入アッセイによって、ID−VP02に対する中和抗体の存在について血清を評価した。高用量または中用量のID−VP02のいずれかを注射したマウスからの血清は、このアッセイにおいてベクターを中和することができた(図1A)。中和抗体応答は用量依存性であり、最高のベクター用量(7.5×1010個のベクターゲノム)のVSV−G対照ベクターで免疫化したマウスからは血清中和が観察されなかったという点で、ID−VP02のシンドビスウイルス由来外被に特異的であった。
このアッセイにおいて抗ID−VP02抗体が検出されたため、我々は、ID−VP02免疫化マウス中に存在する中和抗体のレベルがベクターのインビボ効力に影響を与えるかどうかを決定することを望んだ。ナイーブCD8T細胞を有効にプライミングするための免疫学的要求は、既存のメモリー細胞を追加免疫するための免疫学的要求よりも一層厳密なものであるため、我々は、中範囲用量のID−VP02がナイーブCD8T細胞をプライミングする能力を有意に損なうためには、どのレベルのID−VP02への事前露出(すなわち、用量)が必要とされるのかを決定することを模索した。故に、GFPをコードする高容量、中用量、もしくは低容量のID−VP02、GFPをコードする高用量のVSV−G偽型化レンチベクター、またはHBSSで免疫化された上記のマウスを、最小OVA257ペプチド配列をコードする、LV1bと呼ばれる代替的な抗原カセットをコードするID−VP02の3.0×109個のベクターゲノムで免疫化した。免疫化の12日後、ICSによって脾臓におけるOVA257特異的CD8T細胞応答を測定した。対照マウスにおいて観察されたCD8T細胞応答と比較して、GFPをコードする25倍高用量(7.5×1010個のベクターゲノム)のID−VP02に対する事前露出の文脈において、ID−VP02の3.0×109個のベクターゲノムがナイーブCD8T細胞応答をプライミングする能力の明白な低下が存在した(図1B)。しかしながら、この低下は、等しい(3.0×109)用量または25倍低い(1.2×108)用量のID−VP02−GFPに事前露出されていなかった動物においては観察されなかった。インビトロ中和アッセイにおける場合のように、ベクター効力の低下の原因となる機構は、VSV−G偽型化対照ベクターの7.5×1010個のベクターゲノムで既に免疫化されたマウスにおいてはナイーブCD8T細胞のプライミングの低下が観察されなかったという点で、ID−VP02の外被に特異的であるようであった。
これらのデータは、ベクター特異的免疫が高用量のID−VP02に対して生成され得るものの、プライミング免疫化及び追加免疫化の両方に当量の中範囲用量が与えられる場合、ID−VP02の適用は単回投与に制限されることを示す。
実施例2
マウスにおけるCMB305のGLP安全性/毒性研究
CMB305調査レジメンの公式のGLP安全性/毒性研究が、マウスにおいて行われている。「17日間または5週間の回復期間での、8週間にわたるBALB/cマウスへの筋肉内注射及び皮下注射によって順次投与される、13週間のCMB305の反復用量毒性研究(A13−week repeat dose toxicity study of CMB305administered sequentially by intramuscular and subcutaneous injections for 8weeks to BALB/c mice with a17−day or5week recovery period)」と題したこの研究は現在進行中であり、予備的結果が以下に提供される。CMB305は、癌の治療のための調査治療ワクチンである。調査治療レジメンは、2つの調査産生物、つまりID−LV305(NY−ESO−1癌関連抗原を発現するVP02プラットフォームに基づくレンチウイルスベクター)及びIDC−G305(合成TLR4アゴニストGLA−SEと組み合わされた組み換えNY−ESO−1タンパク質)で構成され、これらは、順次、しかし異なる投与経路を介して投与される。この研究において、1回の剖検時点当たり、10匹のオス及び10匹のメスのBALB/cマウスに、4用量のID−LV305を皮下(尾の付け根)に、及び3用量のIDC−G305を筋肉内に投与した(表2)。研究設計の略図を図2に示す。ID−LV305及びIDC−G305の投与レベルはそれぞれ、2.5×108個のベクターゲノム及び5μgのGLA−SEであった。この研究の対照群の動物は、代わりに注射ビヒクルを受けた。投与経路は、それらがワクチン免疫化のための一般的な経路であるため、及びこれらの経路が意図されるヒトへの投与(皮内及び筋肉内)のための支持を提供するために選択された。
この研究の目的は、オス及びメスのBALB/cマウスに筋肉内注射及び皮下注射によって8週間の投薬期間にわたって投与されたときの、CMB305の潜在的な局所及び全身毒性を評価すること、ならびに17日間または5週間の回復期間後のCMB305の任意の効果の可逆性、持続性、または遅延した発生を評価することである。
予備的結果
この研究は現在進行中であり、免疫化が完了し、2つの第1の剖検が実施されている。
臨床病理学
血液学:いずれの性別においても、血液学的パラメータにおいて試験物品に関連した影響は存在しなかった。全ての平均値及び個々の値は、生物学的変動にとって許容される範囲内にあると考えられた。
臨床化学:いずれの性別においても、臨床化学的分析物において試験物品に関連した影響は存在しなかった。MPI Researchの歴史範囲外である時折の平均値に関わらず、全ての平均値及び個々の値は、生物学的変動にとって許容される範囲内にあると考えられた。これらは、それらの大きさの小ささ、変化の方向、及び対照ビヒクルを含む最小数の感染した動物に基づいて、有意義であるとは考えられなかった。
死亡率/罹患率
3匹の動物を、研究中、死に際して安楽死させた。
●動物2009(2群オス)及び2013(2群オス)−陰茎逸脱(乾燥、紅斑)、体重減少、軽度〜中程度に脱水。陰茎逸脱のため、15日目に安楽死させた。
●動物2020(2群オス)−体重減少、活性の減少、せむし様の体位、触ると皮膚が冷たい。14日目に安楽死させた。
独立した毒性学コンサルタントは、動物が、順化期間中、プロトコルに指定される体重範囲未満であると結論付け、1匹の動物が死亡して見つかった。しかしながら、投薬の3日前、全ての動物は、低い正常範囲ではあるものの推奨される体重範囲内にあり、正常であると考えられていた。コンサルタントは、認定獣医師(MSc、DVM、DACVP)に連絡してこの所見を議論し、彼は、研究の完了時に全てのデータセットが入手可能となるまで試験物品に関連する事象を完全には退くことはできないものの、おそらく動物の不良な状態によるものであることに同意した。
研究15日目時点で入手可能なデータを審査し、コンサルタントは、以下の推奨及びコメントを出した:
1)体重及び摂食量の測定を、1週間に1回から1週間に2回に増加させることによって、動物をより頻繁に監視する。
2)所定の水システムに加えて、動物に水ボトルを提供する。契約者がヒドロゲルの形態の食餌濃縮物を全ての動物に提供したこと、この付加によって動物の一般的な状態が改善されたことが留意されたい。この付加により、摂食量データに影響があった。
3)第2の用量後、体重が減少し続けた場合、出資者はG305でのマウスの治療の延期を考えるべきである。出資者には、16日目及び17日目から体重データが提供された。オスのマウスは、LV−305の第2の用量後の両日に体重が増加していたため、G305の投薬の延期は必要ではなかった。
4)コンサルタントは、2匹の瀕死のマウスについて報告された臨床病理学的データの結果の解釈に関して、これらのデータはこれらの動物において非常に変動しやすいため、出資者を警告した。契約者から歴史的対照データが要求され、彼らは、臨床病理学者がこのデータを審査することに言及した。
5)陰茎逸脱の所見は、おそらくこれらの動物の不良な状態によるものであり、おそらく試験物品に関連するものではない。
後続する臨床的所見及び体重測定は、全ての群の全てのマウスにおいて許容されるものであった。
免疫原性結果
免疫応答レベルを、BALB/cマウスにおいて実施されるCMB305の中心的GLP安全性/毒性研究上記及び表2を参照されたい)においてパラメータとして含めるために、脾細胞を研究剖検の時点で回収し、その後、我々の施設に新鮮なまま輸送して、処理し、NY−ESO−1特異的CD8T細胞応答について評価した。図3に見られるように、細胞内サイトカイン染色、その後のフローサイトメトリーは、CMB305の組み合わせ投薬レジメンを受けたマウスにおいて有意な免疫応答が誘導された一方で、配合物ビヒクル単独で免疫化されたマウスは、そのような応答を呈さなかったことを実証する。
実施例3:
1つまたは4つのリンパ節部位に様々な投与レベルで皮内投与された、B6D2F1マウスにおけるID−LV305の免疫原性
1つ対4つのリンパ節ドレナージ部位に皮内投与した後、NY−ESO−1に対するT細胞応答を誘導することができるID−LV305の最低免疫原性投与レベルを決定するために、B6D2F1マウスを、2倍の増分での1.25×108〜2.0×109個のベクターゲノムの範囲の用量のID−LV305で免疫化した。使用した部位は、尾の付け根の近く、上背部及び下背部の左右の側の対側、外側に位置した(図4)。動物を1回免疫化し、14日後に脾細胞におけるNY−ESO−1特異的T細胞応答を評価した。図4(下部パネル)に示すように、上部または下部皮内部位に単回ボーラス注射として投与される場合の最低免疫原性用量は、5.0×108個のベクターゲノムであった。投与レベルが増加するにつれて、増加する免疫応答レベルに向かう傾向が観察された。しかしながら、4つの別個の注射に分割されたID−LV305の投与後、最低免疫原性総用量は、2.0×109個のベクターゲノム(4つの注射部位のそれぞれに投与される5.0×108個のベクターゲノム)であった。より低い応答レベルではあるが、抗原特異的CD4T細胞応答(示さず)について類似した結果が見られた。複数の注射の効果は相加的であることが予想されていたため、これらの結果は驚くべきものであった。しかしながら、これらの結果は、複数の注射から予想される相加的効果を低下させる因子があるようであることを示す。この実験の結果は、複数の注射部位への投与が総注射量を増加させるために使用され得ることを示す。これらの結果は、単回注射として投与される場合、複数の投与が使用される場合よりも低い免疫原性用量が使用され得ることを示す。単回注射が関与するレジメンは、利便性を改善し、最良の臨床効果のために必要とされる用量を低下させることができる。これは、より少ない注射が必要とされるため、1回の治療当たりのより低い費用、及び患者経験の改善をもたらす。
実施例4
NY−ESO−1を発現する局所進行性癌または転移性癌を有する患者における、皮内投与されるVP02−NY−ESO−1の安全性、耐容性、及び免疫原性の評価
提案されるファースト・イン・ヒューマンの研究の全体的な目標は、NY−ESO−1を発現する癌を有する患者における、反復用量のVP02−NY−ESO−1投与の安全性及び免疫原性を評価することである。追加の目的としては、生検で取得される臨床的腫瘍応答及び腫瘍組織学的応答の評価が挙げられる。
患者は、彼らが、RT−PCR及び/またはIHC及び/またはNY−ESO−1に対する血清抗体の存在によって、NY−ESO−1を発現する局所進行性癌または転移性癌を有し、1つ以上の全身療法(NSCLC及び乳癌については少なくとも2つ以上の全身療法)に対して好ましく応答していない場合にのみ、登録される。患者は、巨大腫瘤病変または急速進行性疾患を有するべきではない。以下の癌組織学、つまり乳癌、黒色腫、NSCLC、卵巣癌、腎細胞癌、または肉腫のうちの1つを有する患者が、登録され得る。これらの腫瘍型は、それらの既知のNY−ESO−1発現頻度(例えば、cta.lncc.br/index.phpのCTDatabaseウェブサイトを参照されたい)に基づいて選択され、免疫療法に対して応答性であることが既知である腫瘍を含む。多くの異なる種類の悪性腫瘍を有する患者のための承認された治療選択肢は増加し続けるものの、進行癌を有する患者は不良な予後を有し続け、現在の療法はほとんどが不満足なものである。患者は、提案される調査療法の潜在的なリスク及び利益に関して、完全に知らされる。適切な血液学的及び代謝的機能は、研究参加のために必要とされる判断基準であるだろう。
臨床研究のためのワクチン及びベクター投薬の選択は、一般的に種にわたる非比例的スケーリングによる調整をせず、これはファースト・イン・ヒューマンの臨床治験であるため、提案されるヒト開始用量レベル(5×108個のゲノム)は、BALB/cマウスGLP毒性学研究において使用された最高用量とおよそ同一である。体重によって調整して、開始ヒト用量は、マウスGLP毒性学研究からの最高用量よりもおよそ2800倍低い。提案される2対数用量増大範囲は、非GLP動物毒性学研究からの安全域及び先行するベクター免疫療法臨床治験からの慣習の考慮を反映する。
VP02−NY−ESO−1は、3用量について3週間に1回、皮内注射により8つの部位に投与される。非臨床研究は、2〜4週間に1回の注射が最も耐久性があり、かつ最高の大きさの免疫応答を生成することを示唆する。
手順
VP02−NY−ESO−1は、3+3の順次用量増大設計において、0、21、及び42日目に投与される。VP02−NY−ESO−1の全ての用量レベルは、1mLで8×125μL皮内注射として、各三角筋に2回及び各四頭筋に2回、鼠径リンパ節に対して少なくとも10cm遠位で投与される。皮内注射は、各部位で少なくとも3cm離して位置するべきである。
3つの用量レベルのコホートを、DLTの不在及び先行する2つのコホートの許容される安全性データの審査を条件として治療する。
実施例5
VP02−NY−ESO−1投与の初期第1相データの要約
以下は、実施例4に概要を述べる第1相臨床治験の初期データの高レベルの要約である。
LV305の3つの異なる用量レベルを評価する、この用量増大治験において治療された12人の患者において観察された、グレード1または2の有害事象のみを有する好ましい安全性プロファイル。CD4またはCD8特異的T細胞応答が、11人中8人(73%)の評価可能な患者において治療後に観察された。中用量レベルまたは高用量レベルのLV305で治療された6人中4人の患者は、NY−ESO−1に対する新規のCD8T細胞応答を発生させた。予想通り、治療は、抗NY−ESO−1抗体レベルには影響を有しなかった。NY−ESO−1を発現する様々な種類の軟部組織肉腫を有する、登録され、治療された12人の患者のうち、LV305治療前に腫瘍増殖の証拠を有する6人中4人の患者が最長で347+日間、安定化し、進行が停止し、最大13.8%の腫瘍退行が1人の患者において観察された。12人中8人(67%)の患者が、208日間の継続期間中央値(範囲:139〜347+)で、安定な疾患(SD)の最良の応答を達成し、6ヶ月時点で、12人全ての患者の無進行率(PFR)は少なくとも42%であった1。小研究であり、患者個体群における差異が存在するものの、観察された少なくとも42%のPFRは、Van Glabbekeらにより報告された大きな患者群の分析における歴史的PFRに好ましく匹敵し2、この報告では、第1の選択治療及び第2の選択治療のための活性剤はそれぞれ、30〜56%超(組織学に依存)、及び6ヶ月時点で14%超のPFRを呈した(重要なことに、LV305研究は、全てが少なくとも1つの事前治療を受けた患者からなった)。
結論:LV305は、最大1010vgまでの全ての用量で許容される安全性を実証した。最低用量では、LV305は、強度のT細胞応答及び抗腫瘍効果の予備的証拠を生成した。中用量及び高用量からのデータは、未決定のままである。これらの心強い結果の後、G305(NY−ESO−1タンパク質−TLR4アゴニスト)及び抗PD−1治療でのプライム/ブーストで、単独でのLV305(1010vg)の研究を続けた。
1LV305研究における総腫瘍負荷は10cm未満に制限されたこと、及びECOG状態は2未満であったことに留意されたい。
2Van Glabbeke,et al.,European Journal of Cancer,,“Progression−free rate as the principal end−point for phase II trials in soft−tissue sarcomas”,2002。
実施例6
CMB305組み合わせ臨床プロトコル
この臨床治験は、用量増大相(第1部)の後に行われ、黒色腫、卵巣癌(卵管癌腫を含む)、肉腫(具体的には、滑膜肉腫型または粘液性脂肪肉腫/円形細胞脂肪肉腫型)、及びNSCLCを有する患者を登録して、ID−LV305単独またはCMB305(順次投与/ID−LV305とIDC−G305との組み合わせ)のいずれかを受けさせる。治験のCMB305部分において、図5に概要を述べるスケジュールを使用してCMB305を受けるように患者を割り当てる。ID−LV305の用量は、第1部の用量増大中に決定された確立された安全容量からなり、IDC−G305の用量は、GLAの確立された安全容量及び250ugのNY−ESO−1タンパク質からなる。CMB305において、4用量の皮内ID−LV305及び3用量の筋肉内IDC−G305が投与される。
GLAは完全合成TLR4アゴニストであり、NY−ESO−1タンパク質を有し、インフルエンザワクチン中などのように感染病原体抗原を有するアジュバントとして、900人を超える患者及び健康なボランティアにおいて試験されている。GLAは確立された安全性プロファイルを有し、数百人の患者または健康なボランティアにおいて5ug用量レベルが試験されている。進行中の別個のIDC−G305の第1相治験において、5ug用量のGLAプラス250ugのNY−ESO−1タンパク質が中等度(中)用量レベルであり、既に安全であることが決定されている。より高い10ug用量コホートが、現在この第1相治験において試験されている。
CMB305治療群において、GLAの用量は5ugのGLAからなり、250ugのNY−ESO−1タンパク質と組み合わせて配合される。その用量が別個の第1相IDC−G305安全性研究において安全であると決定される場合、GLAの用量は10ugまで増加され得る。図5に示すように、CMB305組み合わせ療法において使用される、ID−LV305及びIDC−G305は、異なる時間に順次投与される。各構成成分は、第1相研究において良好に許容されることが決定された。
CMB305では、まず3人の患者を登録する。順次の組み合わせの安全性を確立するために、CMB305を受ける最初の3人の患者を、治療の最初の49日間に生じる治療緊急DLTについて観察する。観察期間後、研究薬剤に潜在的に関連すると見なされた全てのSAE及びDLT安全性事象は、出資者及び独立したDMCによって審査される。
基線で、及びその後、ID−LV305またはIDC−G305での治療前のいくつかの時点で免疫原性アッセイのために末梢血を引き出し、その後、計画された全ての治療の完了の3週間後、112日目にCMB305のために末梢血を引き出す。基線で白血球除去を実行し、最終CMB305投与(98〜112日目以内)後、探索バイオマーカー及び免疫アッセイのために細胞を採取する。
到達可能な腫瘍を有する同意する患者の亜個体群において、計画された全ての治療完了の3週間後に腫瘍生検を実行する。別の研究の一部としてNY−ESO−1発現について評価された標本を含む、いずれの事前研究からの腫瘍組織または腫瘍の外科標本も、基線生検として使用することができる。
検診来院(基線)中、腫瘍撮像を実行する。患者は、irRCによって定義される疾患進行まで、およそ8週間に1回撮像及び臨床評価を継続する。初回注射後、ID−LV305の持続性を試験するためのアッセイのために血液試料を採取する。CMB305中、基線で、及びその後168日目、224日目、12ヶ月目、24ヶ月目の来院で血液を採取する。ウイルスゲノムの存在について、PCRによって試料をアッセイする。12ヶ月を通した結果によって、2回連続の試料がID−LV305持続性の証拠を示さなくなるまで年1回の評価が継続され得る。
実施例7
マウスCT26−NY−ESO−1皮下腫瘍モデルにおける、VP02−NY−ESO−1での予防的ワクチン接種後の抗腫瘍応答
マウス腫瘍負荷モデルにおける、予防的に関連する抗腫瘍応答のために必要とされる最小必要用量は未知である。BALB/cマウス(n=10/群)を、ID−VP02−NY−ESO−1の4×109個または2×1010個のベクターゲノムで免疫化した。免疫化の21日後、免疫化した対照マウス及び治療していない対照マウスの右側腹部に、Matrigel(登録商標)中7.5×105個のCT26−NY−ESO−1腫瘍細胞、または負の対照として、単独でMatrigel(登録商標)を皮下注射した。注射の9日後、移植片を切除し、秤量して、腫瘍増殖を評価した。これらの結果(図7)は、試験されたID−VP02−NY−ESO−1の最低単回用量、つまり4×109個のゲノムが、NY−ESO−1を発現する腫瘍増殖の有意な拒絶を誘発するのに十分であることを実証した。
実施例8
BALB/cマウスにおける単回皮下注射後の、マウスにおけるID−VP02−NY−ESO−1の免疫原性
CD107aは、CD8+T細胞における細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性のためのマーカーである。BALB/cマウスを、2週間離して2回、1.25×108個、2.5×108個、及び5×108個のベクターゲノムの投与レベルのID−LV305で免疫化する。第2の免疫化の9日後、H−2Dd拘束性NY−ESO−1エピトープRGPESRLL(NY−ESO−181−88)でエクソビボ再刺激した後、NY−ESO−1脾臓CD8T細胞応答を、CD107aの表面染色、ならびにIFN−γ、TNF−α、及びIL−2の細胞内サイトカイン染色(ICS)によって測定した。HBSSビヒクル対照で免疫化したマウスからの脾細胞、及びNY−ESO−181−88で再刺激したマウスからの脾細胞が、負の対照としての役割を果たした。図8に見られるように、試験された最低用量、つまり1.25×108個のベクターゲノムは、このプライム・ブーストレジメン後、抗原特異的T細胞応答を誘発するのに十分であった。
上記の様々な実施形態を組み合わせて、更なる実施形態をもたらすことができる。本明細書で参照される、及び/または出願データシートに列挙される全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、ならびに非特許出版物の全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。実施形態の態様を必要に応じて変更して、様々な特許、出願、及び出版物の概念を用いてそれ以上の更なる実施形態をもたらしてもよい。
上記に詳述される記載に照らして、実施形態にこれら及び他の変更がなされ得る。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は特許請求の範囲を本明細書及び特許請求の範囲において開示される特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、むしろ、そのような特許請求の範囲に権利を与える等価物の完全な範囲とともに、全ての可能な実施形態を含むものとして解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。