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JP2017510825A - 防汚性を有する防曇性被膜の前駆体である被膜を含む光学物品 - Google Patents

防汚性を有する防曇性被膜の前駆体である被膜を含む光学物品 Download PDF

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JP2017510825A JP2016536777A JP2016536777A JP2017510825A JP 2017510825 A JP2017510825 A JP 2017510825A JP 2016536777 A JP2016536777 A JP 2016536777A JP 2016536777 A JP2016536777 A JP 2016536777A JP 2017510825 A JP2017510825 A JP 2017510825A
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Abstract

本発明は、表面と水との静的接触角が90°超であり且つ極性表面エネルギー成分が1.5mJ/m2超である防曇性被膜の前駆体である被膜で被覆された基材を有する光学物品に関する。防汚性をさらに有する防曇性被膜の前駆体は、その表面に界面活性剤膜を適用することにより実際の防曇性被膜に変換される。

Description

本発明は、一時的防曇性溶液の適用後に防汚性を有すると同時に効果的且つ長期持続的な防曇効果を有するように表面が改質された光学物品、より特定的には眼用レンズを得ることに関する。本発明は、斯かる物品、斯かる物品の作製プロセス、及び斯かる物品と界面活性剤又は斯かる界面活性剤で含浸された布との組合せによる防曇性の付与に関する。
プラスチックやガラスなどの多くの支持体は、それらの表面の温度が周囲空気の露点未満に低下した時に曇りで覆われた状態になるという欠点を呈する。このことは、特に、輸送車両又は建築物の窓、鏡、眼用レンズ、例えば、眼鏡レンズなどを形成するために使用されるガラスの場合に当てはまる。これらの表面に曇りを生じると水滴による光の散乱により透明度が減少するので、かなりの妨害の原因となりうる。
多湿環境での曇りの生成、すなわち、支持体上での微小な水滴の凝縮を防止するために、この支持体の外表面に水との静的接触角が小さい(典型的には10°以下の)親水性被膜を堆積することが可能である。この永久的防曇性被膜は、その親水性が他の被膜又は支持体に永久的に結合された親水性化合物からもたらされ、曇りに対してスポンジとして作用し、透明感を与える非常に薄い膜を形成することにより支持体表面への水滴の接着を可能にする。水吸収の結果として、それは、膨張し、軟化し、そして機械的により弱くなる。
他の解決策は、部分的に界面活性剤で構成された低屈折率の多孔性薄層を用いて層に永久的防曇性を持たせることである。
永久的防曇性被膜のより有利な代替手段は、防曇性被膜用の前駆体被膜の表面に一時的親水性溶液を適用することにより防曇性被膜を得ることである。
国際特許出願の国際公開第2011/080472号パンフレット、国際公開第2012/153072号パンフレット、及び国際公開第2013/013929号パンフレットには、ポリオキシアルキレン基、特に式CH3O−(CH2CH2O)6〜9−(CH23Si(OCH33(III)で示されるオルガノシランを有する化合物をグラフトすることにより得られる防曇性被膜用の前駆体被膜を表面にシラノール基を含む被膜で被覆された光学物品の外表面に堆積するという記載がなされている。防曇性被膜用のこの前駆体被膜は、10°〜50°の範囲内に水との静的接触角を有するので親水性である。一時的被膜である実際の防曇性被膜は、前駆体被膜の表面に界面活性剤組成物の膜を液体形態で直接に又は前記組成物を含むドライワイプ若しくはウェットワイプにより適用した後に得られる。
これらの出願に記載の防曇性被膜用の前駆体は、非常に効率的な防曇性被膜の利用を可能にするが、その清浄性を改善することが望ましい。後者は、「疎水性及び/又は疎油性被膜」としても参照され、フルオロシラン又はフルオロシラザン、すなわち、フッ素原子を含有するシラン又はシラザンから一般に製造されるので、当然ながら防曇性を付与することはできない。斯かる防汚性被膜を得るために使用可能な化合物は、特開2005−187936号公報及び米国特許第6183872号明細書に記載されている。
日本出願の特開2004−317539号公報には、反射防止被膜と、フッ素化疎水性基、ポリオキシエチレン基を含む親水性基、及び基材の表面と反応可能な基を含む化合物、例えば、式C817O(CH2CH2O)2CONH(CH23Si(OCH33で示される化合物を堆積することにより形成された被膜と、で被覆されたレンズが記載されている。こうして形成された被膜は、水との接触角が50°〜90°でさまざまであり、その表面への界面活性剤の適用後に防曇性被膜の利用を可能にする。
日本出願の特開2005−281143号公報には、水との接触角が60〜65°程度であるポリオキシエチレン基を有する非フッ素化シランに基づく光学レンズ用の他の被膜が記載されており、これは、その表面に界面活性剤が適用されると防曇性を呈する。
国際出願の国際公開第2006/049020号パンフレットには、フッ素化重合性シラン、及び親水性基(特にオキシアルキレン基)を有する重合性シラン、及び/又はこれらのシランの加水分解物を含む、光学レンズの表面への防汚性被膜の形成を可能にする組成物が記載されている。この被膜は、水との接触角度が100°程度である。
国際出願の国際公開第2013/005710号パンフレットには、ポリオキシエチレン鎖を有するアクリル樹脂系又はウレタン樹脂系の水吸収可能層と、アミノ変性シラン系又はメルカプト変性シラン系の疎水性層と、で逐次的に被覆された光学物品が記載されている。こうして、物品の外表面は、水との接触角が100°以上である。
これらの種々の出願に開示された被膜は、改善しうる防汚性又は改善しうる不十分な防曇性のいずれかを有する。
本発明は、公知の前駆体被膜と対比して防汚性が改善される防曇性被膜用の前駆体被膜を含む光学物品を得ることを目的とする。本発明者らは、親水性官能基及び疎水性官能基の両方を有する「混合」表面を利用することにより被膜清浄能を有意に改善しつつ満足すべき防曇性能を維持しうることを発見した。
本発明の目的は、表面と水との静的接触角が90°超であり且つ表面エネルギーの極性成分が1.5mJ/m2超である防曇性被膜用の前駆体被膜で被覆された基材を有する光学物品により達成される。
本発明はまた、
a)少なくとも1つの主表面を有する基材を提供する工程と、
b)表面と水との静的接触角が90°超であり且つ表面エネルギーの極性成分が1.5mJ/m2超である防曇性被膜用の前駆体被膜が得られるように、基材の前記主表面に少なくとも1種の親水性化合物A及び少なくとも1種の疎水性化合物Bを堆積する工程と、
を含む斯かる光学物品の作製プロセスに関する。
発明はまた、以上に定義された光学物品と界面活性剤とを含む集合体に関する。
図1は、実施例7、比較例1、8の結果を示す図である。 図2は、実施例7、比較例1、8の結果を示す図である。 図3は、実施例7、比較例8の結果を示す図である。
逐次クリーニングサイクルの作用下で先行技術の光学物品と比較して本発明に係る光学物品から汚れを除去する速度を表す図1〜3を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
本特許出願では、基材/被膜「上」に存在する被膜又は基材/被膜「上」に堆積された被膜とは、(i)基材/被膜の上に位置決めされた被膜、(ii)必ずしも基材/被膜に接触しているとはかぎらない被膜、すなわち、基材/被膜と当該被膜との間に1つ以上の中間被膜が位置決めされていてもよい被膜(しかしながら、好ましくは前記基材/被膜に接触している)、及び(iii)必ずしも基材/被膜を完全に覆っているとはかぎらない被膜として定義されるものである。「層1が層2の下に位置決めされる場合」、層2は層1よりも基材から離れていると理解されるものとする。同様に、「外」層は「内」層よりも基材から離れている。
「防曇性被膜」という用語は、本特許出願では、この被膜で被覆された透明ガラス基材が、前記被膜を備えていない前記基材上に曇りを生じる条件下に置かれた時、5メートルの距離に位置する視力表を被覆ガラスを通して観察している観察者に対して>6/10の視力をただちに可能にする被膜を意味するものと理解される。被膜の防曇性の評価を可能にする試験は、実験の節に記載されている。曇りを生じる条件下で、防曇性被膜は、その表面に曇りを生じないか(理想的な場合では視覚の歪みを生じないか、さもなければ視覚の歪みを生じるが上述した測定条件下で>6/10の視力を呈する)、又はその表面に曇りを生じるがそれでもなお曇りにより引き起こされる視力の乱れにもかかわらず上述した測定条件下で>6/10の視力を可能にするか、のいずれかでありうる。非防曇性被膜は、上述した測定条件下で>6/10の視力を可能にしないうえに曇りを生じる条件に付されると一般に凝縮体のベールを呈する。
「防曇性ガラス」という用語は、本特許出願では、以上に定義された「防曇性被膜」を備えたガラスを意味するものと理解される。
「防曇性被膜用の前駆体」という用語は、本特許出願では、界面活性剤を含有する組成物を膜が形成されるように表面に適用することにより本発明の趣旨の範囲内の防曇性被膜となる被膜を意味するものと理解される。界面活性剤を含む組成物は、光学物品上に直接適用される液体溶液又はワイプに含浸させる組成物でありうるとともに、このワイプは、場合によりウェット又はドライ(溶媒不在)であり、例えば、国際特許出願公開第2013/013929号パンフレットに記載されているようにCapstone(商標)FS3100で含浸されたCEMOI(商標)ドライワイプである。
防曇性膜の形成を可能にする界面活性剤は、好ましくはフルオロカーボン基と少なくとも1つのポリオキシアルキレンユニットとを含む。前駆体被膜と界面活性剤系溶液の膜とにより形成された集合体は、実際の防曇性被膜となる。
したがって、疎水性表面を有する被膜である本発明に係る防曇性被膜用の前駆体は、本発明の趣旨の範囲内の防曇性被膜であるとはみなされない。実際に、防曇性被膜用のこの前駆体は、上述した測定条件下で>6/10の視力を可能にしない。
「一時的防曇性被膜」という用語は、前記防曇性被膜用の前駆体被膜の表面に防曇性を付与する少なくとも1種の作用剤、好ましくは界面活性剤を含有する液体溶液の適用後に得られる防曇性被膜を意味すると理解される。界面活性剤分子は、被膜の表面に永久的に装着されているのではなく、多かれ少なかれ持続的に吸着されているにすぎないので、一時的防曇性被膜の耐久性は、一般にその表面を払拭する作用により制限される。
本発明に従って作製される光学物品は、前側主面と後側主面とを有する基材、好ましくは透明基材(85%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超、最適には97%超のTv。Tv率は、標準国際定義(ISO13666:1998規格であり、ISO8980−3規格に準拠して測定される)に対応する。それは、380〜780nmにわたる波長範囲で定義される。)を含み、前記主面の少なくとも一方、好ましくは両方の主要面が、防曇性被膜用の前駆体被膜を少なくとも1つ含む。基材の「後面」(後面は一般に凹である)は、物品が使用された時に着用者の眼に最も近い面であると理解される。反対に、基材の「前面」(前面は一般に凸である)は、物品が使用された時に着用者の眼から最も離れた面であると理解される。
本発明に係る物品は、曇りの生成に直面する可能性のある任意の光学物品、例えば、スクリーン、自動車産業用若しくは建設産業用の窓、又は鏡でありうるが、好ましくは光学レンズ、より好ましくは眼鏡用の眼用レンズ、又は光学レンズ用若しくは眼用レンズ用のブランクである。これには、曇りの生成の問題に本質的に直面しない生組織に接触する眼内レンズやコンタクトレンズなどの物品は含まれない。
防曇性被膜の前駆体被膜は、基材の主表面又は基材の前記主表面が第1の被膜で被覆されている場合には第1の被膜のいずれかに直接接触する。本発明に係る第1の被膜、好ましくはその表面にシラノール基を含むものは、ベア基材すなわち非被覆基材の主面の少なくとも一方又は1つ以上の機能性被膜ですでに被覆された基材の主面の少なくとも一方に形成されうる。
本出願の残りの部分では、これらの層を光学物品上に直接堆積することにより層の作製を説明する。
本発明はまた、前記被膜を含む面と光学物品の表面に接着結合させることが意図された面とを有する膜上で層のすべて又はその一部の堆積が行われる実施形態を包含する。
接着結合以外に、最終物品上に出現しうるものと逆の順序で被膜が堆積された支持体から所望の被膜を移動させてもよい。
少なくとも1つの主表面を含む本発明に係る光学物品の基材は、無機ガラス又は有機ガラス、例えば、熱可塑性又は熱硬化性プラスチックで作製された有機ガラスでありうる。
特に好ましい基材のクラスは、ポリ(チオウレタン)、ポリエピスルフィド、及びアルキレングリコールビス(アリルカーボネート)の重合又は(共)重合により得られる樹脂である。後者は、例えば、PPG IndustriesによりCR−39(登録商標)という商品名で販売されている(Orma(登録商標)レンズ、Essilor)。
本発明に関連する範囲内で使用可能な他の基材は、熱硬化性タイプのアクリル基材、熱可塑性基材、例えば、Nylon(商標)系、ポリカーボネート系、及びPMMA系の基材である。
いくつかの用途では、第1の被膜の堆積前に基材の主表面を1つ以上の機能性被膜で被覆することが好ましい。光学品で従来から使用されているこれらの機能性被膜は、限定されるものではないが、耐衝撃性プライマー層、耐摩耗性及び/若しくは耐引掻き被膜、偏光被膜、フォトクロミック被膜、又は着色被膜、特に、耐摩耗性及び/又は耐引掻き性層で被覆された耐衝撃性プライマー層である。
第1の被膜は、耐摩耗性及び/又は耐引掻き性被膜上に堆積されうる。耐摩耗性及び/又は耐引掻き性被膜は、眼用レンズの分野で耐摩耗性及び/又は耐引掻き性被膜として従来から使用されている任意の層でありうる。
耐摩耗性及び/又は耐引掻き性被膜は、好ましくは、硬化したら被膜の硬度及び/又は屈折率が増加するように意図された1種以上の無機充填剤を一般に含むポリ(メタ)アクリレート系又はシラン系の硬質被膜である。それらは、国際出願公開第2011/080472号パンフレットにより詳細に記載されている。
耐摩耗性及び/又は耐引掻き性被膜の堆積前に、最終製品で後続層の耐衝撃性及び/又は接着性を改善するプライマー被膜を基材上に堆積することが可能である。これらの被膜は、眼用レンズなどの透明ポリマー材料で作製された物品で従来から使用されている任意の耐衝撃性プライマー層でありうるとともに、国際出願公開第2011/080472号パンフレットにより詳細に記載されている。
本発明に係る第1の被膜は、特に耐摩耗性及び/又は耐引掻き性被膜でありうるか、又は好ましい実施形態によれば単層反射防止被膜若しくは多層反射防止被膜でありうる。この第1の被膜は、好ましくはその表面にシラノール基を含む。
「表面にシラノール基を含む被膜」という表現は、天然で表面にシラノール基を有する被膜、さもなければ表面活性化処理に付された後で形成されたシラノール基を有する被膜を意味するものと理解される。この被膜は、好ましくはシロキサン系又はシリカ系の被膜、例えば、限定されるものではないが、シリカ層、ゾル−ゲル被膜、特にアルコキシシランなどのオルガノシラン系被膜又はシリカコロイド系被膜である。それは、特に耐摩耗性及び/又は耐引掻き性被膜又は単層反射防止被膜又は多層反射防止被膜でありうるとともに、その外層は、その表面にシラノール基を有する。「スタックの外層」という表現は、基材から最も離れた層を意味するものと理解される。
シラノール基を形成するために又は少なくとも被膜の表面のその割合を増加させるために任意選択で利用される表面活性化処理は、一般に真空下で行われる。それは、高エネルギー種及び/又は反応性種、例えば、イオンビーム(イオンプレクリーニング若しくはIPC)又は電子ビームによる衝撃、コロナ放電処理、グロー放電処理、UV処理、又は真空プラズマ処理でありうる。それはまた、酸若しくは塩基による表面処理及び/又は溶媒による処理でありうる。これらの処理のいくつかを組み合わせてもよい。
高エネルギー(及び/又は反応性)種とは、1〜300eV、好ましくは1〜150eV、より好ましくは10〜150eV、さらにより好ましくは40〜150eVの範囲内のエネルギーを有するイオン種を特に意味するものと理解される。高エネルギー種は、イオンやラジカルなどの化学種又は光子や電子などの種でありうる。
好ましくは、表面にシラノール基を含む被膜は、酸化ケイ素系、好ましくはシリカ系(シリカを含む)の低屈折率層であり、理想的には、気相堆積により一般に得られるシリカ(SiO2)層からなる。好ましくは、前記シリカ系層は、500nm以下、より好ましくは2〜110nm、優先的には5〜100nmの範囲内の厚さを有する。
好ましくは、表面にシラノール基を含む被膜は、少なくとも70重量%のSiO2、より好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%のSiO2を含む。上述したように、最適な実施形態では、それは100重量%のシリカを含む。
表面にシラノール基を含む被膜はまた、国際出願公開第2012/153072号パンフレットにより詳細に記載されているように、コロイド酸化物を任意選択で含むアルコキシシランやオルガノシランなどのシラン系ゾル−ゲル被膜でありうる。
本発明の一実施形態によれば、表面にシラノール基を含む被膜は、耐摩耗性被膜上に堆積された、好ましくはこの耐摩耗性被膜上に直接堆積されたシリカ系層である。
好ましい実施形態を構成する本発明の別の実施形態によれば、本発明に係る光学物品は、反射防止被膜を含む。斯かる被膜が存在する場合、それは、一般に本発明の趣旨の範囲内の第1の被膜を構成する。この反射防止被膜は、光学分野、特に眼光学分野で従来から使用されている任意の反射防止被膜でありうる。
「反射防止被膜」とは、最終光学物品の反射防止性を改善する、光学物品の表面に堆積された被膜として定義される。それは、可視スペクトルの比較的広い領域にわたり物品/空気界面での光反射の低減を可能にする。
同様に周知のように、反射防止被膜は、従来的には誘電体材料の単層又は多層スタックを含む。これは、好ましくは、高屈折率(HI)の層と低屈折率(LI)の層とを含む多層被膜である。これらの被膜の組成、それらの厚さ、及びそれらの堆積方法は、特に国際出願公開第2010/109154号パンフレット及び国際出願公開第2012/153072号パンフレットに記載されている。
第1の被膜上又はベア基材上に防曇性被膜用の前駆体を形成する前に、この第1の被膜又は基材の表面を防曇性被膜用の前駆体の接着を増加させることが意図された物理的又は化学的活性化処理に付すことが一般的である。これらの処理は、表面にシラノール基を含む被膜を活性化するための以上に記載のものから選択可能である。
本発明によれば、第1の被膜は、存在する場合、防曇性被膜用の前駆体被膜に直接接触する。別の実施形態によれば、基材自体が防曇性被膜用の前駆体被膜に直接接触する。これについて次に説明する。
防曇性被膜用の前駆体被膜は、水との静的接触角が90°超であり且つこの表面エネルギーの極性成分が1.5mJ/m2超である表面を有する。
表面エネルギー特性(mJ/m2単位)、すなわち、この表面エネルギーの分散成分及び極性成分は、参照文献:“Estimation of the surface free energy of polymers”OWENS D.K,WENDT R.G.(1969)J.APPL.POLYM.SCI.,13,1741−1747に記載のオーエンス・ウェント法により決定される。液体又は固体の表面エネルギーETは、分散成分ED及び極性成分EPで構成されると考えられる。それは、ET=ED+EPという形で記される。
光学物品の外側被覆は、表面エネルギーの極性成分が好ましくは1.7mJ/m2以上、より好ましくは1.9mJ/m2以上、さらに好ましくは2mJ/m2以上、さらにより好ましくは2.3mJ/m2以上である。一実施形態では、防曇性被膜用の前駆体被膜は、表面エネルギーの極性成分が4mJ/m2以下である。別の実施形態では、防曇性被膜用の前駆体被膜は、表面エネルギーの極性成分が3.5mJ/m2以下、より好ましくは3mJ/m2以下である。防曇性被膜用の前駆体被膜は、水との静的接触角が好ましくは95°以上、より好ましくは100°以上、さらにより好ましくは102°以上、理想的には105°以上である。水との静的接触角は、好ましくは120°未満である。
防曇性被膜用の前駆体被膜は、フルオロカーボン基とポリオキシアルキレン基とを含有する材料から一般に形成される。すなわち、親水性ユニット及び疎水性ユニットの両方を含む。
好ましい一実施形態によれば、防曇性被膜用の前駆体被膜は、少なくとも1種の疎水性化合物Bと少なくとも1種の親水性化合物Aとを十分量で好ましくは気相中で、より好ましくは蒸発により第1の被膜上又は基材上に堆積した後でグラフトすることにより形成される。化合物A及びBは膜形成化合物である。
「親水性化合物」という用語は、基材の表面に形成された膜と水との静的接触角が60°以下、好ましくは55°以下、より好ましくは50°以下である化合物を意味するものと理解される。本出願では、接触角は、国際出願公開第2008/053020号パンフレットに記載の方法で測定される。
「疎水性化合物」という用語は、基材の表面に形成された膜と水との静的接触角が75°以上、好ましくは90°以上、より好ましくは100°以上、さらにより好ましくは110°以上である化合物を意味するものと理解される。好ましくは、基材の表面に形成された膜と水との静的接触角は、117°以下、より好ましくは116°以下、115°、114°、113°である。
親水性化合物Aは、少なくとも1個の親水性基を有する。「親水性」基とは、本発明に関連する範囲内では、特に水素結合により水分子に結合可能な原子の組合せを意味するものと理解される。これは、一般に、荷電原子を含みうる極性有機基である。化合物Aは、好ましくは、ポリオキシアルキレン基、ポリアミン基、ポリオール基(ポリヒドロキシル化基、例えば、多糖基又はポリグリセロール基)、及びポリエーテル基(例えばポリオールエーテル基)、好ましくはポリオキシアルキレン基から選択される少なくとも1個の基を含む。化合物Aは、一般に、基材若しくはそれにグラフトされる第1の被膜の外表面に存在するか又は化合物Bに存在する官能基と共有結合を形成可能な少なくとも1個の基を含み、第1の被膜が存在する場合、前記官能基は好ましくはシラノール基である。この基は、反応性基であり、限定されるものではないが、次の基、すなわち、イソシアネート基、アクリレート基、メタクリレート基、ハロアルキル基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基若しくはそのエステル基、アシルクロリド基、クロロスルホニル基、クロロホルメート又はエステル基、少なくとも1個の加水分解性基を担持したケイ素原子、又はグリシジル基などのエポキシ官能基を含有する基を担持したケイ素原子、好ましくは少なくとも1個の加水分解性基、特にシラノール基若しくはその前駆体を担持したケイ素原子のうちの1つでありうる。
化合物Aは、好ましくはオルガノシラン化合物、より好ましくは少なくとも1個の加水分解性基を担持した少なくとも1個のケイ素原子を有するオルガノシラン化合物、さらにより好ましくはポリオキシアルキレン基と少なくとも1個の加水分解性基を担持した少なくとも1個のケイ素原子とを有するオルガノシラン化合物である。
好ましくは、そのポリオキシアルキレン鎖は、一方のみの末端又はその末端の両方、理想的には一方のみの末端が、少なくとも1個の加水分解性基を担持した少なくとも1個のケイ素原子を含む少なくとも1個、好ましくは丁度1個の基により官能基化される。好ましくは、このオルガノシラン化合物は、少なくとも2個の加水分解性基、好ましくは3個の加水分解性基を担持したケイ素原子を含む。それは、好ましくは式:
1(Y)mSi(X)3-m (I)
(式中、Y基は、同一であるか又は異なり、炭素原子を介してケイ素に結合された1価有機基であり、X基は、同一であるか又は異なり、加水分解性基又はヒドロキシ基であり、R1は、ポリオキシアルキレン官能基を含む基であり、且つmは、0、1、又は2に等しい整数である。好ましくはm=0。)
で示される化合物である。
X基は、好ましくは、アルコキシ基−O−R3(式中、R3は、好ましくはC1〜C4、より好ましくはC1の線状若しくは分岐状のアルキル基である)、アシルオキシ基−O−C(O)R4(式中、R4は、好ましくはC1〜C6の線状若しくは分岐状のアルキル基、好ましくはメチル若しくはエチル、ハロゲン基、例えば、Cl及びBr、又はトリメチルシロキシ(CH33SiO−基、−NH2基、−NHSiMe3基、又は−NH−アルキル基若しくはジアルキルアミノ基(これらの線状若しくは分岐状のアルキル基は、好ましくはC1〜C6基である(例えば、−N(CH32及びN(C252基))、及びこれらの基の組合せから選択される。好ましくは、X基は、アルコキシ基、特にメトキシ基又はエトキシ基、より好ましくはエトキシ基である。
Y基は、mがゼロでない場合に存在し、好ましくは飽和若しくは不飽和の線状若しくは分岐状の炭化水素基、好ましくはC1〜C10基、より好ましくはC1〜C4基、例えば、メチルやエチルなどのアルキル基、ビニル基、アリール基、例えば、単環式若しくは二環式の芳香族基、例えば、特に1個以上のC1〜C4アルキル基により任意選択で置換されたフェニル基である。好ましくは、Yはメチル基を表す。
好ましい実施形態によれば、式(I)で示される化合物は、トリエトキシシリル基やトリメトキシシリル基などのトリアルコキシシリル基を含む。
オルガノシラン化合物のポリオキシアルキレン基(R1基)は、好ましくは80個未満の炭素原子、より好ましくは60個未満の炭素原子、さらにより好ましくは50個未満の炭素原子を含む。R1基は、好ましくは上述の条件を満たす。
1基は、一般的には、式−L−R2(式中、Lは、式I又はIIで示される化合物のケイ素原子に炭素原子を介して結合された二価基であり、且つR2は、酸素原子を介してL基に結合されたポリオキシアルキレン基を含む基であり、この酸素原子は、R2基に含まれる)を有する。L基の例としては、任意選択で置換された線状若しくは分岐状の好ましくはC2〜C15、より好ましくはC2〜C15、さらにより好ましくはC2〜C10のアルキレン基、単環式若しくは二環式のC3〜C10シクロアルキレン基、好ましくは単環式若しくは二環式のC3〜C10アリーレン基、カルボニル基、又はアミド基、或いはこれらの基の組合せ、例えば、シクロアルキレンアルキレン基、ビスシクロアルキレン基、ビスシクロアルキレンアルキレン基、アリーレンアルキレン基、ビスフェニレン基、ビスフェニレンアルキレン基、又はアミドアルキルエン基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、その一例は、CONH(CH23 基、さもなければ−OCH2CH(OH)CH2−基及び−NHC(O)−基である。好ましいL基は、好ましくは10個以下の炭素原子、より好ましくは5個以下の炭素原子を有する好ましくは線状のアルキレン基、例えば、エチレン基及びプロピレン基である。
好ましいR2基は、ポリオキシエチレン基−(CH2CH2O)n−、ポリオキシプロピレン基、又はこれらの基の組合せを含む。
式(I)で示される好ましいオルガノシランは、以下の式(II):
m(X)3-mSi(CH2n’−(L’)m’−(OR)n−O−(L’’)m’’−R’ (II)
(式中、R’は、水素原子、アシル基、又は線状若しくは分岐状のアルキル基、好ましくはC1〜C10基、より好ましくは1個以上の官能基により任意選択で置換され且つ1個以上の二重結合を追加的に含みうるC1〜C5基であり、Rは、線状若しくは分岐状のアルキレン基、好ましくは線状アルキレン基、好ましくは2〜3個のCを含むもの、例えば、エチレン基又はプロピレン基であり、L’及びL’’は、同一であるか又は異なり、2価基であり、X、Y、及びmは、以上に定義されたとおりであり、n’は、1〜10、好ましくは1〜5の範囲内の整数であり、nは、3〜50、好ましくは4〜50、より好ましくは4〜30、より好ましくは5〜25の範囲内の整数であり、m’は、0又は1、好ましくは0に等しく、且つm’’は、0又は1、好ましくは0に等しい。)
で示される化合物である。
L’基及びL’’基は、存在する場合、以上に記載の2価L基から選択されうるとともに、好ましくは−OCH2CH(OH)CH2−基又は−NHC(O)−基を表す。この場合、−OCH2CH(OH)CH2−基又は−NHC(O)−基は、それらの酸素原子(−OCH2CH(OH)CH2−基に対して)又はそれらの窒素原子(−NHC(O)−基に対して)を介して隣接基(CH2)n’(L’基の場合)及びR’(L’’基の場合)に結合される。
−O−(L’’)m’’−R’基は、好ましくはアルコキシ基(m’’=0、R’=アルキル)、理想的にはメトキシ基である。
好ましくは、式(I)又は(II)で示される化合物は、少なくとも1個の加水分解性基を担持した丁度1個のケイ素原子を含む。
一実施形態によれば、m=0且つ加水分解性基Xはメトキシ基又はエトキシ基を表す。n’は、好ましくは3に等しい。別の実施形態によれば、R’は、5個未満の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基を表す。R’はまた、脂肪族若しくは芳香族のアシル基、特にアセチル基を表しうる。
最後に、R’は、トリアルコキシシリルアルキレン基又はトリハロシリルアルキレン基、例えば、−(CH2n’’Si(R53基を表しうるとともに、R5基は、同一であるか又は異なり、R5は、以上に定義されたX基などの加水分解性基であり、且つn’’は、以上に定義されたn’基などの整数である。斯かるR’基の例は、−(CH23Si(OC253基である。この実施形態では、オルガノシラン化合物は、少なくとも1個の加水分解性基を担持した2個のケイ素原子を含む。
好ましい実施形態によれば、nは、3に等しいか、さもなければ6〜9、9〜12、21〜24、又は25〜50、好ましくは6〜9の範囲内である。
式(II)で示される化合物の例としては、Gelest Inc.又はABCRにより販売されている式CH3O−(CH2CH2O)6〜9−(CH23Si(OCH33(III)及びCH3O−(CH2CH2O)9〜12−(CH23Si(OCH33(IV)で示される2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン化合物、式CH3O−(CH2CH2O)3−(CH23Si(OCH33(VIIa)で示される化合物、より一般的には式CH3O−(CH2CH2O)n−(CH23Si(OCH33(式中、nは4〜45(特にn=21、22、23、又は24を含む)の範囲内である)で示される化合物、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリクロロシラン、式CH3C(O)O−(CH2CH2O)6〜9−(CH23Si(OCH33で示される2−[アセトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、式CH3C(O)O−(CH2CH2O)6〜9−(CH23Si(OC253で示される2−[アセトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン、式HO−(CH2CH2O)6〜9−(CH23Si(OCH33で示される2−[ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、式HO−(CH2CH2O)6〜9−(CH23Si(OC253で示される2−[ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン、式HO−(CH2CH2O)8〜12−(CH23Si(OCH33及びHO−(CH2CH2O)8〜12−(CH23Si(OC253で示される化合物、ビス[(3−メチルジメトキシシリル)プロピル]ポリプロピレンオキシド、並びに2個のシロキサンヘッドを含む化合物、例えば、式(V)で示されるビス[(3−トリエトキシシリルプロポキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ポリエチレンオキシド、式(VI)(式中、n=10〜15)で示されるビス[(N,N’−(トリエトキシシリルプロピル)アミノカルボニル]ポリエチレンオキシド、及び式(VII)で示されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリエチレンオキシドが挙げられうる。
好ましい式(II)で示される化合物のファミリーは、[アルコキシ(ポリアルキレンオキシ)アルキル]トリアルコキシシラン又はそのトリハロ類似体(m=m’=m’’=0、R’=アルコキシ)のファミリーであり、好ましい化合物は、式(III)で示されるものである。
好ましくは、本発明に係る化合物Aはフッ素原子を有していない。好ましくは、本発明に係る化合物Aのモル質量は、400〜4000g/mol、好ましくは400〜1500g/mol、より好ましくは400〜1200g/mol、さらにより好ましくは400〜1000g/molの範囲内にある。
疎水性化合物Bは、少なくとも1個の疎水性基を有する。「疎水性」基とは、本発明に関連する範囲内では、特に水素結合により水分子に結合可能でない原子の組合せを意味するものと理解される。これは、一般に、荷電原子を含まない非極性有機基である。
好ましくは、化合物Bは、少なくとも1個のフッ素化基、好ましくは過フッ素化基、典型的にはフルオロカーボン基、好ましくはフルオロアルキル基、フルオロアルケニル基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルケニル基、(ポリ)(フルオロアルキルエーテル)基、(ポリ)(ペルフルオロアルキルエーテル)基、及び(ポリ)フルオロアルコキシ[(ポリ)アルキレンオキシ]アルキル基から選択される基、好ましくはフルオロアルキル基を含む。これらの線状、環状、若しくは分岐状の基は、互いに直接結合されうるか、又は二価基、特にアルキレン基若しくはアルケニレン基、酸素原子、又は窒素架橋(−NH−、−N=)を利用して結合されうる。好ましくは、フルオロカーボン基は、由来する炭化水素基の水素原子の代わりとしてフッ素原子を少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも90%含む。これらの基は、例えば、−CHF−、−CHF−CHF−、−CH2−C(CF32−、−CF2−C(CF32−、−CF2−、−CF2−CF2−、−CF2−CF2−CF2−、−CF2−C(CF32−、−(CHF)n−、及び−(CF2n−(式中、nは3以上の整数を表す)などのユニットを含む。
ポリ(フルオロアルキルエーテル)基とは、フルオロアルコキシユニットの重合により、又はこれらのユニットとアルコキシユニットなどの他のユニットとの共重合により得られる基を意味するものと理解される。斯かる基の例は、−(CHF−CHF−O)n−基、−(CH2−CF2−O)n−基、−(CF2−CF2−O)n−基、−(CF2−CF2−CF2−O)n−基、−(CF2−CH(CF3)−O)n−基、−(CF2−CF(CF3)−O)n−基(式中、nは、1以上の整数を表す)である。また、斯かる基は、−(CH2−CH2−O)m−、−(CH2−CH2−CH2−O)m−及び(CH2−C(CH32−O)m−、(式中、mは、1以上の整数を表す)などのポリアルコキシユニットを含みうる。
化合物Bは、一般に、基材若しくはそれにグラフトされる第1の被膜の外表面に存在するか又は化合物Aに存在する官能基と共有結合を形成可能な少なくとも1個の基を含み、第1の被膜が存在する場合、前記官能基は好ましくはシラノール基である。この基は、反応性基であり、限定されるものではないが、次の基、すなわち、イソシアネート基、アクリレート基、メタクリレート基、ハロアルキル基、カルボン酸基、スルホン酸基、アシルクロリド基、クロロスルホニル基、クロロホルメート基、エステル基、少なくとも1個の加水分解性基(ここではヒドロキシ基は加水分解性基であるとみなされる)を担持したケイ素原子、又はグリシジル基などのエポキシ官能基を含有する基を担持したケイ素原子、好ましくは少なくとも1個の加水分解性基、特にシラノール基若しくはその前駆体を担持したケイ素原子のうちの1つでありうる。
加水分解性基の例は、以上に定義されたX基である。
化合物Bは、好ましくはオルガノシラン化合物(この用語は特にオルガノシラザンを含む)、より好ましくは少なくとも1個の加水分解性基を担持した少なくとも1個(好ましくは1個)のケイ素原子を有するオルガノシラン化合物、さらにより好ましくは少なくとも1個の疎水性基、特にフルオロアルキル基と少なくとも1個の加水分解性基(例えばオルガノアルコキシシラン)とを担持した少なくとも1個のケイ素原子を有するオルガノシラン化合物である。一実施形態によれば、化合物Bは、少なくとも1個の−Si(R)3基(式中、Rは、加水分解性基、特に−OCH3基、−OC25基、−OH基、及び−NH2基から選択されるものを表す)を含む。したがって、化合物Bは、例えば、シラザンでありうるか、又はトリアルコキシシリル基を含みうる。好ましくは、Bはトリアルコキシシリル基を含む。
好ましくは、その疎水性鎖、例えば、フルオロアルキル鎖は、一方のみの末端又はその末端の両方、理想的には一方のみの末端が、少なくとも1個の加水分解性基を担持した少なくとも1個(好ましくは1個)のケイ素原子を含む少なくとも1個、好ましくはちょうど1個の基により官能基化される。好ましくは、このオルガノシラン化合物は、少なくとも2個の加水分解性基、好ましくは3個の加水分解性基を担持したケイ素原子を含む。好ましくは、化合物Bの一方の鎖末端のみがシラノール基又はシラノール基前駆体を含む。
化合物Bは、式(VIII)及び(IX):
F(CF2c−(CH2d−(CF2e−(CH2f−Si(R)3 (VIII)
H(CH2g−(CF2h−(CH2i−(CF2j−Si(R)3 (IX)
(式中、c、d、e、f、g、h、i、及びjのそれぞれは、0〜10の範囲内の整数を表し、c、d、e、及びfの少なくとも1つは0以外であり、g、h、i、及びjの少なくとも1つは0以外であり、且つRは以上に定義された加水分解性基である)
で示されるシラン(又はシラザン)から選択されうる。好ましくは、5≦c+d+e+f≦15及び/又は5≦g+h+i+j≦15、より好ましくは5≦c+d+e+f≦12及び/又は5≦g+h+i+j≦12。
好ましい成分Bは、式CF3−(CF27−CH2−CH2−Si(NH23で示されるフルオロアルキルシラザンなどの加水分解性Si−N結合を含むシラザン化合物である。この化合物は、OptronからOF110(商標)という名称で入手可能である。使用可能な他の成分Bは、同会社製のフッ素化化合物OF210(商標)及びKP911(登録商標)という名称で信越化学工業株式会社により販売されている化合物である。
シリカ(SiO2)表面に5nmの単層の形態で堆積された場合、化合物Bは、一般に、得られる表面エネルギーが16mJ/m2以下、より好ましくは15mJ/m2以下、さらにより好ましくは14mJ/m2以下の層をもたらす。
好ましくは、本発明に係る化合物Bのモル質量は、900g/mol以下、より好ましくは800g/mol以下、さらに好ましくは700g/mol以下、さらにより好ましくは700g/mol以下である。それは、好ましくは300〜800g/mol、より好ましくは300〜700g/mol、さらにより好ましくは400〜600g/molの範囲内である。
また、以上に定義された、少なくとも1種の化合物A、好ましくはポリオキシアルキレン基を有するものと、少なくとも1種の化合物B、好ましくはフルオロカーボン基を有するものと、から形成される本発明に係る防曇性被膜用の前駆体は、防汚性被膜ともなる。それは、一般に、光学物品の表面エネルギーを25mJ/m2以下に低下させうる。
親水性化合物Aの不在下では、得られる被膜は、満足すべき防曇性を有しておらず、一方、疎水性化合物Bの不在下では、得られる被膜は、満足すべき防汚性を有していない。
本発明の一実施形態によれば、防曇性被膜用の前駆体は、防曇性被膜用の前駆体の全重量を基準にして、80重量%超、好ましくは90重量%超の本発明に係る化合物A及びBを含む。一実施形態によれば、防曇性被膜用の前駆体は、前記化合物A及びBの層からなる。
好ましくは、本発明に係る防曇性被膜用の前駆体は、被膜の全重量を基準にして5重量%未満の金属酸化物又はメタロイド酸化物(例えば、シリカ又はアルミナ)を含有し、より好ましくは、それを含まない。防曇性被膜の形成に使用されるオルガノシラン化合物が真空下で堆積される場合、好ましくは、欧州特許出願第1324078号明細書に記載される少なくとも1種の有機化合物と少なくとも1種の無機化合物との共蒸発技術に従って金属酸化物を一緒に共蒸発させない。
本発明によれば、化合物A及びBを堆積すると、前記化合物A及び/又はBが第1の被膜(存在する場合)、基材、及び/又は互いに(少なくとも部分的に)永久的に(単なる吸着ではなく共有結合により)グラフトされた内側部分と、洗浄及び/又は払拭により(機械的及び/又は化学的に)除去可能な外側部分と、を含む防曇性被膜用の前駆体被膜が形成される。
斯かる構造に到達するために、第1の被膜又は基材の表面、好ましくはシラノール基を含む表面に過剰の化合物A及び/又はB、好ましくは過剰の化合物Aを堆積することが可能である。斯かる構成に到達するための堆積パラメーターの調整は、当業者の技術の範囲内である。過剰とは、化合物B及び/又は化合物Bの一部の後に堆積された親水性化合物Aの一定量が遊離状態を維持していること、すなわち、第1の被膜若しくは基材又は化合物A若しくはBのいずれにも共有結合によりグラフトされていないことを意味するものと理解される。
基材又は第1の被膜の表面への化合物A及びBのグラフトは、これらの2種の化合物のそれぞれを共有結合で直接グラフトするか、さもなければ、それらの一方のみ、好ましくは化合物Bをグラフトする場合を含む。一実施形態によれば、化合物A及び/又はBがシランであり、そのケイ素原子が少なくとも1個の加水分解性基Rを有する場合、化合物A及び/又は化合物BのSi−R基の少なくとも1つは、基材又は第1の被膜のヒドロキシ基に共有結合される。
防曇性被膜用の前駆体被膜は、好ましくは3nm以上、より好ましくは≧5nm、さらにより好ましくは≧8nm、理想的には≧10nmの厚さ(払拭前)を有するコーティングである。その厚さは、好ましくは100nm未満、より好ましくは≦50nm、さらにより好ましくは≦20nmである。それは、典型的には3〜100nm、好ましくは5〜50nmの範囲内である。
本発明に係る第1の被膜又は基材の表面への化合物A及びBの堆積は、通常の技術に従って、好ましくは気相堆積又は液相堆積、より好ましくは気相堆積により、一般的には真空チャンバー内で実施可能である。
気相堆積は、物理気相堆積(PVD)又は化学気相堆積(CVD)を、例えば、限定されるものではないが、蒸発、任意選択でイオンビーム蒸発、スパッタリング、又はプラズマ増強化学気相堆積からなりうる。好ましい方法は、物理気相堆積、特に真空蒸発、一般的には蒸発させる化合物の加熱と組み合わせたものである。それは、ジュール効果熱源(ジュール効果は電気抵抗が熱となって現れたものである)や電子銃のようにさまざまな蒸発システムを用いて実現されうるが、当業者に公知の任意の他のデバイスを使用することも可能である。
化合物A及びBは、蒸発及び堆積の速度をより良好に制御するために蒸発前にあらかじめ溶媒に溶解可能である。
親水性化合物Aは、好ましくは、ジュール効果熱源を用いて真空蒸発により堆積される。疎水性化合物Bは、好ましくは、その気化を引き起こすために電子銃を用いて真空蒸発により堆積される。
化合物A及びBは、逐次的に、すなわち、互いの化合物の堆積工程をオーバーラップさせずに、又は同時に(例えば、共蒸発により)、又は部分的に同時に堆積されうる。このために、ジュール効果システム上に位置決めされた金属容器、例えば、銅皿に2種の化合物A及びBを配置することが可能である。銅皿は、スチールウール又は金属発泡体(好ましくはニッケル発泡体)を含有しうる。一実施形態では、化合物Aは、スチールウール又は金属発泡体に含浸され、化合物Bは、ディッシュに単に注加される。
これらの化合物は、好ましくは逐次的に堆積される。疎水性化合物Bを堆積する工程は、好ましくは、親水性化合物Aを堆積する工程の前に開始される。最適な実施形態によれば、真空蒸発による本発明に係る防曇性被膜用の前駆体の形成は、好ましくは、疎水性化合物B及びその後に親水性化合物Aを逐次堆積することにより行われる。
堆積プロセス、特に蒸発の持続時間は、所望の被覆厚さが得られるように調整される。
堆積条件は、化合物A及びBの堆積後、水との静的接触角が90°超であり且つ表面エネルギーの極性成分が1.5mJ/m2超である被膜が得られるように選択される。使用される化合物の性質、それらのそれぞれの量(蒸発フローを調整することにより調整されうる)、それらの堆積の順序、及び堆積の持続時間は、所望の性質を有する被膜に到達するために当業者であればいかに変化させるか分かるであろうパラメーターの例である。
化合物A及びBは、好ましくは、個別の支持体上に堆積した場合に[化合物Aの層の物理的厚さ]/[化合物Bの層の物理的厚さ]の比が3未満且つ好ましくは0.8超である化合物A及びBの層が形成されるような量及び条件下で堆積時に使用される。化合物Aは、防曇性被膜用の前駆体被膜の表面の表面エネルギーの極性成分が1.5mJ/m2超になるように十分な量で使用しなければならない。
本発明の一実施形態によれば、堆積条件は、単層として測定したときにそのそれぞれの層に対して測定された実際の物理的厚さの範囲が疎水性化合物Bから得られた層では1〜15nm、且つ親水性化合物Aから得られた層では4〜50nm、好ましくは4〜25nmになるように選択される。その測定は、多波長エリプソメトリーにより行われうる。
防曇性被膜用の前駆体被膜は、好適量の化合物A及びBを直接堆積することにより得られうる。
しかしながら、過剰の化合物A及びB、主に過剰の親水性化合物Aを光学物品の表面に堆積することにより、且つ同一の所望の最終厚さに到達するために、堆積されたがグラフトされていない過剰のこれらの化合物を除去することにより、防曇性被膜用の前駆体被膜を形成することが好ましいことを、本発明者らは見いだした。この手順は、処理レンズの防曇性能を保証する。前駆体被膜の層を過剰厚さにせずに直接堆積すると、いくつかの場合には、表面が界面活性剤の液体溶液に対して十分な親和性を有していないために所望の防曇性を有していない被膜をもたらす不均一な堆積層及び防曇性被膜用の前駆体被膜が得られる可能性があることを、実際に本発明者らは見いだした。
本発明に係る化合物A及びBの堆積後、払拭により除去可能な被膜の外側部分を洗浄及び/又は払拭により除去しうるか、さもなければ一時的層を堆積した場合には一時的層の使用を含む国際公開第2012/153072号パンフレットに記載の除去技術に付しうる。防曇性被膜用の前駆体被膜の外側部分を洗浄及び/又は払拭により除去可能であるということは、特に、スポンジを用いて石鹸水(界面活性剤を含有する)による洗浄に付した後で脱イオン水による洗浄に付すことにより、及び/又はドライであるか若しくは任意選択でアルコール、典型的にはイソプロピルアルコールで含浸されたCEMOI(商標)布、Wypall(商標)布、若しくはSelvith(商標)布を用いて典型的には20秒以下の払拭に付すことにより、除去しうることを意味する。この払拭操作に続いて、任意選択で脱イオン水によるさらなる濯ぎ及び布片による最終払拭を行うことが可能である。
堆積された過剰の化合物A及び任意選択で化合物B、すなわち、払拭により除去可能な防曇性被膜用の前駆体被膜の外側部分を除去した後、実際にグラフトされた化合物A及びBを含有する防曇性被膜用の前駆体被膜の内側部分のみが、本発明に係る第1の被膜又は基材の表面に残留する。グラフトされていない分子はこうして除去される。前駆体被膜の内側部分は、温和な処理、例えば、布を用いた乾式払拭若しくは類似の処理、さもなければ水、石鹸水、若しくはイソプロピルアルコールなどのアルコールで含浸された布を用いた払拭により除去することはできない。
本発明はまた、
a)少なくとも1つの主表面を有する基材を提供する工程と、
b)前記化合物A及びBが基材に又は存在する場合には第1の被膜にグラフトされた内側部分と、洗浄及び/又は払拭により除去可能な外側部分と、を含む防曇性被膜用の前駆体被膜が得られるように、基材の前記主表面上又は基材の前記主表面が第1の被膜で被覆されている場合には第1の被膜上に、少なくとも1種の親水性化合物A及び少なくとも1種の疎水性化合物Bを、好ましくは真空蒸発により堆積する工程と、
を含む、以上に定義された光学物品、好ましくは眼用レンズの作製プロセスに関する。
以上で説明したように、本発明に係るプロセスは、一般的には真空チャンバー内で基材の主表面又は第1の被膜を化合物A及び/又は化合物Bに暴露して、この又はこれらの化合物の堆積を行う工程を含む。
本発明に係るプロセスはまた、払拭により除去可能な防曇性被膜用の前駆体被膜の外側部分を除去することにより一時的防曇性被膜の利用を可能にした後に得られた防曇性被膜用の前駆体被膜の表面に少なくとも1種の界面活性剤を堆積する追加の段階を含みうる。この界面活性剤膜は、目に見える曇りが形成されないようにレンズの表面全体に水滴を分散させるのに役立つ一様な層をその表面に形成することにより曇りに対する一時的保護を備えたレンズを提供する。
一実施形態によれば、界面活性剤は、少なくとも1種の界面活性剤を含有する液体溶液の膜を適用することにより堆積される。界面活性剤溶液の適用は、任意の公知の技術、特にディップ塗布、スピン塗布、又はスプレー塗布により実施可能である。界面活性剤溶液は、好ましくは、この溶液の1滴を防曇性被膜用の前駆体の表面に堆積することにより、及びその後で前記前駆体被膜の好ましくは全体を覆うようにそれを展延することにより、適用される。適用される界面活性剤溶液は、一般的には水性溶液、好ましくは0.5重量%〜10重量%、より好ましくは2重量%〜8重量%の界面活性剤を含むものである。
防曇性を付与するための市販の界面活性剤溶液は、Essilor製のOptifog(商標)Activator溶液である。
好ましい別の実施形態によれば、界面活性剤は、前記界面活性剤で含浸された布、例えば、ドライワイプ又はウェットワイプ、好ましくは再使用可能なものを用いて前駆体被膜に適用される。それは、理想的にはドライワイプ、すなわち、指触で乾燥しているように感じられるワイプである。
これらの含浸布は、処理される表面の単純な払拭(前後並進運動及び/又は回転運動)により、基材の表面に界面活性剤を効果的に分配可能である。
本発明に係る界面活性剤含浸布は、好ましくはマイクロ繊維布、より好ましくは織布又は編布、さらにより好ましくは編布である。本発明で使用される布は、好ましくは少なくとも80重量%のマイクロ繊維、より好ましくは少なくとも90重量%のマイクロ繊維、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは100重量%のマイクロ繊維を含む。「マイクロ繊維」という用語は、1.3デシテックス(1.3g/10km)未満の線密度のテキスタイル繊維を意味すると理解される。マイクロ繊維布は、好ましくは、親水性ポリマーマイクロ繊維及び親油性ポリマーマイクロ繊維、特にポリアミドマイクロ繊維及びポリエステルマイクロ繊維、より好ましくは60重量%〜85重量%のポリエステルマイクロ繊維及び15重量%〜40重量%のポリアミドマイクロ繊維を含む。斯かる布の例は、69.5重量%のポリエステルマイクロ繊維及び30.5重量%のポリアミドマイクロ繊維で構成されたCemoi(商標)布である。
好ましくは、本発明に係るワイプは、非含浸布の重量を基準にして5重量%〜40重量%、好ましくは10重量%〜40重量%、より好ましくは15重量%〜35重量%、最適には20重量%〜30重量%の界面活性剤で含浸された布を含む。基材に防曇性を付与するために使用可能な含浸布及びワイプさらには作製方法は、FR2013/50459号明細書で出願された出願により詳細に記載されている。
使用される界面活性剤は、表面に適用した後に光学物品に防曇性を付与できるものでなければならない。それは、実験の節に記載の熱蒸気試験を行うことにより検証されうる。
溶液を用いて又はワイプを利用して直接適用するために、多種多様な界面活性剤を使用しうる。これらは、イオン性(陽イオン性、陰イオン性、若しくは両イオン性)又は非イオン性、好ましくは非イオン性又は陰イオン性でありうる。しかしながら、これらの種々のカテゴリーに属する界面活性剤の混合物を想定可能である。使用可能な界面活性剤の例は、国際公開第2013/013929号パンフレット及びFR2013/50459号明細書に開示されているものである。ポリエチレングリコールアルキルモノエーテル、ソルビタン環、特にポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルを有する界面活性剤、2つのエチレンオキシドブロックと1つの中心プロピレンオキシドブロックとを含むトリブロックコポリマー、及びポリエトキシル化フルオロアルキル性の化合物が挙げられうる。
好ましくはポリオキシアルキレン基、より好ましくは6つ超のオキシアルキレンユニットを有するポリオキシアルキレン基、さらにより好ましくは6つ超のオキシエチレンユニットを有するポリオキシエチレン基を含む界面活性剤が使用される。
使用される界面活性剤は、好ましくは≧5の親水性親油性バランス(HLB)を有し、これは、最適な防曇性が奏効するように、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらにより好ましくは15以下である。「親水性親油性バランス(HLB)」という表現は、当業者に周知であり、界面活性剤の特徴量を表し、水への溶解度が高い界面活性剤の場合、より大きい。本出願では、親水性親油性バランスの理論(計算)値が考慮されるものとする。使用される計算方法は、界面活性剤のカテゴリーに応じて、FR2013/50459号明細書に示されている。
基材の表面に界面活性剤を適用した後に得られる本発明に係る防曇性被膜は、水との静的接触角が好ましくは10°以下、より好ましくは5°以下である。それは、一般的には光学物品の外側被覆を構成する。
本発明はまた、表面と水との静的接触角が90°超であり且つ表面エネルギーの極性成分が1.5mJ/m2超である防曇性被膜用の前駆体被膜で被覆された基材を有する光学物品と、好ましくは≧5の親水性親油性バランス(HLB)を有する界面活性剤と、を含む集合体に関し、集合体は、好ましくは、前記界面活性剤で含浸された布を含み、より好ましくは、前記界面活性剤で含浸されたマイクロ繊維布を含むドライワイプを含む。
以下の実施例は、本発明をより詳細に例示するものであり、限定を示唆するものではない。特に指定がない限り、本出願に記載の厚さはすべて、堆積後に多波長エリプソメトリーにより測定された物理的厚さである。
1.使用した材料及び光学物品
防曇性被膜用の前駆体を形成するために実施例で使用した親水性オルガノシラン化合物Aは、6〜9つのエチレンオキシドユニット及び450〜600g/molのモル質量を有する式(III)で示される2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン(CAS番号:65994−07−2、商品名:SIM6492.7、供給元Gelest,Inc.)、Gelest,Inc.により供給された式CH3O−(CH2CH2O)9〜12−(CH23Si(OCH33(IV)で示される化合物、並びにGelest(商品名:SIM6492.73)により供給された式CH3O−(CH2CH2O)21〜24−(CH23Si(OCH33(IVa)で示される化合物である。
防曇性被膜用の前駆体を形成するために実施例で使用した疎水性オルガノシラン化合物Bは、Optronにより供給されたフッ素化化合物OF210(商標)である。比較例で使用した他の疎水性化合物は、オプツールDSX(商標)(ダイキン工業株式会社)及びKY−130(商標)(信越化学工業株式会社)である。
種々の層(反射防止層、防曇性被膜用の前駆体被膜)の堆積を可能にする真空蒸発デバイスは、材料蒸発用の2つのシステム、すなわち、電子銃蒸発システム及びジュール効果蒸発システムを有するSyrus III機である。
本発明に係る実施例で使用したレンズは、ビスフェノールAポリカーボネートで作製されたレンズ基材(矯正−8.00ディオプター、+2.00シリンダー)を含み、その各面に1ミクロン程度の厚さを有するポリウレタン耐衝撃性プライマーを含み、そのプライマー自体に3ミクロン程度の厚さを有する耐摩耗性被膜及び5つの層ZrO2/SiO2/ZrO2/ITO/SiO2を有する反射防止被膜が被覆されている。これらの種々の被膜、他の堆積条件、及び施された処理は、国際出願公開第2012/153072号パンフレットの実験の節により詳細に記載されている。
また、類似の眼用レンズを再現するが、ヘイズ測定のために度なしのもの(前(凸)面及び後(凹)面で2つの同一のディオプター)である。
2.防曇性被膜用の前駆体の気相堆積
防曇性被膜用の前駆体の形成に使用される種々の化学化合物は、ジュール効果又は電子銃による蒸発時に生成物のスプラッシュを抑えるためにスチールウールを備えた銅皿に最初に詰め込まれる。所望の厚さに応じて100〜300μLの化合物を含有する各皿は、蒸発工程前に70℃のホットプレート上で2分間予備加熱される。これにより任意選択の溶媒の蒸発及び生成物の脱ガスが可能になる。スチールウールを備えた銅皿にあらかじめ詰め込んで使用した化合物OF210(商標)は、予備加熱工程を必要としない。
疎水性化合物、比較化合物、又は本発明に係る化合物を含有する皿は、蒸発時にこれらの化合物への電子銃の直接衝撃を防止するために、Satisから入手した穿孔されたタンタルカバーでさらに覆われる。電子束によりカバーを加熱し、それ自体で熱伝導を介して銅皿を加熱する。こうして生成される「オーブン」内の温度を化合物が蒸発するまで上昇させる。
本発明に係る防曇性被膜用の前駆体の堆積は、レンズの反射防止被膜上に2工程で行われる。最初に、蒸発させる化合物を含有する銅皿が内部に配置された電子ビーム蒸発システムを用いて真空蒸発により疎水性化合物B(OF210(商標))を堆積し(速度:0nm/s超〜0.5nm/sの範囲内、一般的には0.25nm/s、1〜4mAの範囲内の放出電流、サーキュラー及びブロード電子走査トレース、平均残留圧力:7.9×10-4Pa)、次いで、ジュール効果熱源を用いて、すなわち、蒸発させる化合物を含有する銅皿を電流が通り抜ける金属ボート内に配置して、真空蒸発により親水性化合物A(式IIIで示される化合物)を堆積する(速度:0nm/s超〜0.5nm/sの範囲内、一般的には0.25nm/s、2〜5.5Aの範囲内の加熱電流、平均残留圧力:5.7×10-4Pa)。
実施例では、種々の量の化合物A及びBを蒸発させた。以下の表1に示される厚さの比は、使用した種々の化合物を個別の支持体上に堆積した場合に得られる被膜の厚さに対応する物理的理論厚さを割り算することにより計算されたものである。具体的には、逐次蒸発させる2種の化合物は、互いに反応して、2つの堆積層の理論厚さの和とは異なる実際の厚さを有する最終被膜をもたらしうる。
防曇性被膜用の前駆体被膜は、10〜17nm程度の厚さ(過剰のシロキサン化合物を含めて多波長エリプソメーターで測定した厚さ)を有して得られる。
比較例では、2種の化合物は、実施例1のものに匹敵する厚さを有する被膜が形成されるように逐次蒸発される(単一化合物を蒸発させる比較例1及び8を除く)。疎水性化合物(OF210(商標)、オプツールDSX(商標)、KY−130(商標))は、電子銃を利用して蒸発させ、一方、親水性化合物(III)は、ジュール効果により蒸発させた。ただし、両方の化合物(疎水性及び親水性)をジュール効果により蒸発させた比較例5を除く。
蒸発の終了時、堆積した過剰のシロキサン化合物が除去されるように、各レンズの表面を石鹸水、上水、イソプロピルアルコール、上水、次いで脱イオン水で濯いでからドライCemoi(商標)布で払拭した。Cemoi(商標)布は、Microfibre M8405 30×40という商品名で供給業者Facolにより供給された布を表す。
表1に示される結果を与えるレンズの表面の性質(接触角、表面エネルギー)の測定は、この段階でこうして洗浄及び払拭されたレンズを用いて行われる。表面エネルギー特性は、2種の参照液体(水及びジヨードメタン、0.15mmの内径の針)を用いて参考文献:“Estimation of the surface free energy of polymers”Owens D.K.,Wendt R.G.(1969),J.Appl.Polym.Sci.,13,1741−1747に記載のオーエンス・ウェント法に従ってDIGIDROP GBXデバイスにより決定された。このデバイスはまた、1滴の液体(この場合は水)の堆積後の所与の時点(3000ms)で撮影された写真に基づく静的接触角の決定を可能にする。
3.一時的防曇性被膜の形成及びその性能の評価
界面活性剤が「負荷」されるようにワイプを用いて中心から縁に向かって螺旋運動を行うことにより、界面活性剤(Capstone(登録商標)FS3100(30重量%))で含浸されたCemoi(商標)布で作製されたワイプを用いてレンズの両面を払拭する。これは1回の適用に対応する。種々の適用レベル、例えば、5、10、又は20回の適用を行いうる。
次いで、温度(20〜25℃)及び湿度50%が調整された環境にレンズを24時間配置し、次いで、55℃の水を含有する加熱容器の上に15秒間配置する(熱蒸気試験)。その直後、5m離れて位置決めされた視力表を試験レンズを通して観察する。10/10の視力を有する観察者が眼の前にレンズを配置した状態で10/10の視力を達成し(透過方式、5メートル離れて配置されたスネレン視標チャート、FAX INTERNATIONALから入手可能なArmaignac Tridents,ref.T6チャート)、且つ曇りや視覚の歪みが観察されない場合、試験に合格したとみなされる。この試験により、着用者がお茶やコーヒーの入ったカップ又は沸騰水の入ったソースパンの上に顔を置く通常の生活条件をシミュレートすることが可能になる。
得られた結果は表1にまとめられている。実施例1〜5では、5〜15回適用の範囲内の界面活性剤適用レベルで防曇性が得られたが、実施例6のレンズでは約20回の適用が必要であった。比較例1〜5のレンズは、界面活性剤を20回適用した後でさえも防曇性を示さなかった。
親水性化合物Aを使用しないで外側被覆を形成した場合、疎水性化合物Bをジュール効果により堆積するか又は電子銃の作用下で堆積するかにかかわらず、このレンズは防汚性を有するが防曇性を有していないことが比較例1から示される。本発明に係る実施例1〜5のレンズのみが防曇性及び防汚性の両方を呈する。
先行技術の眼用レンズ(比較例1及び8のレンズ)と比較して、汚れに対する本発明に係る実施例7の眼用レンズの防汚挙動を以下で詳細に説明する。
+は、レンズの防汚性が参照として採用した比較例8のレンズと同程度であることを示している。
+++は、2回転(試験番号1(CEMOI布)に基づく以下に記載の清浄性プロトコルに準拠)の後、レンズが参照として採用した比較例8のレンズを上回る防汚性(3.9%未満のヘイズレベル)を有することを示している。
方法
手順/清浄性
試験は、温度が22℃±3℃且つ周囲湿度が50%±10%に調整された室内で行われる。汚れは、人工皮脂(主にオレイン酸からなる)であらかじめ含浸された指からレンズの中心に指紋を適用することにより得られる。得られた汚れ(人工皮脂)は、約20mmの直径を有する痕跡の形態である。
次いで、レンズは、機械ロボットに装着された任意選択で含浸されたマイクロ繊維布を利用して750gの負荷(完全に再現性のある前進後退運動)の下で自動払拭に付される。1回の払拭操作は、布の1回の前進運動又は1回の後退運動に対応する。レンズ上での布の運動時の全移動距離は、40mm、すなわち、汚れを中心とする点の片側に20mmである。テキスタイルは、レンズに対して常に同一方向に適用される。運動は1回目の運動時に中心から開始されるので、一番最初の移動時に挙げられた2という値は実際には1.5である。
レンズを通した透過方式でのヘイズの値(Hにより表される)は、皮脂により覆われた領域全体にわたりレンズの中心で1回目の測定を行ってから、2、5、10、20、又は30回(挙げられた値は、払拭操作の開始からの合計値である)に等しい払拭操作回数の後、Hazeguard XL 211 Plusデバイスにより測定される。
ヘイズHは、レンズを透過した光の全量(I total)及び透過方式で散乱された光の量(I scattered:法線方向に対して2.5°超の角度で偏向されて透過した光の量)を同時に測定することにより、ASTM D1003規格「透明プラスチックのヘイズ及び視感透過率の標準的試験方法」に準拠して得られる。
ヘイズHが急速に減少するほど、清浄化は速くなり、清浄性は良好になる。
試験番号1:CEMOI(商標)布を用いて以上のプロトコルに準拠して、本発明に係る実施例7の眼用レンズの清浄性を試験する。
図1は、以下のことを示している。
− 本発明に係る眼用レンズは、先行技術の防曇性被膜用の前駆体を含む表面を有するレンズである比較例8のレンズよりも汚れの影響が少ない。実際に、指紋は、本発明に係る実施例7の場合よりも比較例8の場合のほうがより多くのヘイズを発生する。
− 本発明に係る眼用レンズは、比較例8に係るレンズよりもかなり急速に清浄化され、且つOF210(商標)防汚性被膜のみで被覆された比較例1の眼用レンズとまったく同程度に良好に清浄化される。ヘイズは、最初の清浄化サイクル(2回転)から開始して1/8倍に低減される。
試験番号2:30重量%のCapstone(商標)FS3100で含浸された乾燥感触CEMOI(商標)布を使用した以外は試験番号1を再現する。
図2は、本発明に係る眼用レンズが2つの比較例に係るレンズよりも良好に清浄化され、特に、比較例8のレンズと対比して本発明がより良好であることを示している。
試験番号3:指紋を適用する前に30重量%のCapstone(商標)FS3100を含む乾燥感触CEMOI(商標)布を用いて眼用レンズの表面処理(5回転)を行った以外は試験番号2を再現する。したがって、こうして、表面にCapstone(商標)FS3100の非常に薄い層を有する防曇性眼用レンズを試験する。
図3は、本発明に係る眼用レンズが比較例8に係るレンズよりも良好な清浄性を有することを確認したものである。

Claims (17)

  1. その表面が、90°超の水との静的接触角および1.5mJ/m2超の表面エネルギーの極性成分を有することを特徴とする、防曇性被膜用の前駆体被膜で被覆された基材を有する光学物品。
  2. 前記表面エネルギーの極性成分が1.7mJ/m2以上、より好ましくは2mJ/m2以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光学物品。
  3. 前記防曇性被膜用の前駆体被膜と水との静的接触角が95°以上、好ましくは100°以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学物品。
  4. 前記防曇性被膜用の前駆体被膜が、フルオロカーボン基とポリオキシアルキレン基とを含有する材料から形成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学物品。
  5. 前記防曇性被膜用の前駆体被膜が、少なくとも1種の親水性化合物Aと少なくとも1種の疎水性化合物Bとを堆積することにより形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学物品。
  6. 前記化合物Aが、少なくとも1個のポリオキシアルキレン基を含み且つ少なくとも1個の加水分解性基を担持した少なくとも1個のケイ素原子を有するオルガノシランであることを特徴とする、請求項5に記載の光学物品。
  7. 前記化合物Bが、少なくとも1個のフルオロカーボン基を含み且つ少なくとも1個の加水分解性基を担持した少なくとも1個のケイ素原子を有するオルガノシランであることを特徴とする、請求項5又は6に記載の光学物品。
  8. 前記防曇性被膜用の前駆体被膜が界面活性剤膜で被覆されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学物品。
  9. 前記防曇性被膜用の前駆体被膜が25mJ/m2以下の表面エネルギーを有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学物品。
  10. 眼用レンズを構成することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学物品。
  11. a)少なくとも1つの主表面を有する基材を提供する工程と、
    b)表面と水との静的接触角が90°超であり且つ表面エネルギーの極性成分が1.5mJ/m2超である防曇性被膜用の前駆体被膜が得られるように、前記基材の前記主表面に少なくとも1種の親水性化合物A及び少なくとも1種の疎水性化合物Bを堆積する工程と、
    を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学物品の作製プロセス。
  12. 前記化合物A及びBが真空蒸発により堆積されることを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
  13. 前記化合物Aが、ジュール効果熱源を用いて真空蒸発により堆積され、且つ前記化合物Bが、電子銃を用いて真空蒸発により堆積されることを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
  14. 前記防曇性被膜用の前駆体被膜が、化合物B、次いで化合物Aを逐次堆積することにより形成されることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
  15. その表面が、90°超の水との静的接触角および1.5mJ/m2超の表面エネルギーの極性成分を有することを特徴とする、防曇性被膜用の前駆体被膜で被覆された基材を有する光学物品と、
    好ましくは親水性親油性バランス(HLB)≧5を有する界面活性剤と、
    を含む、集合体。
  16. 前記光学物品と前記界面活性剤で含浸された布とを含む、請求項15に記載の集合体。
  17. 前記光学物品と前記界面活性剤で含浸されたマイクロ繊維布を含むドライワイプとを含む、請求項15又は16に記載の集合体。
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