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JP2017197807A - 厚鋼板の製造方法 - Google Patents

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JP2017197807A JP2016089091A JP2016089091A JP2017197807A JP 2017197807 A JP2017197807 A JP 2017197807A JP 2016089091 A JP2016089091 A JP 2016089091A JP 2016089091 A JP2016089091 A JP 2016089091A JP 2017197807 A JP2017197807 A JP 2017197807A
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Abstract

【課題】高生産性で強度、延性、靱性、音響異方性に優れた厚鋼板の製造方法の提供。
【解決手段】質量%でC:0.03〜0.25%、Si:0.001〜0.50%、Mn:0.5〜3.0%を含む鋼を鋳造後、そのまま又は一旦冷却してAc〜1300℃に加熱し、終了温度をAr〜1100℃とする熱間圧延の後、表面温度がAr以上の温度から、板厚方向の平均冷却速度を3〜50℃/sとする制御冷却を開始し、(1)〜(3)式により表面温度T(℃)の温度履歴から算出されるフェライト生成指標SIが0.55〜2.00になるように制御冷却を行い、板厚方向の平均温度が450〜675℃、表面温度が350〜675℃の範囲で制御冷却を終了し、室温まで放冷する厚鋼板の製造方法。SI=SI+SI・・・(1)、SI=∫(1/2037)×(Ar−T)dt・・・(2)、SI=∫(2/2037)×(650−T)dt・・・(3)。
【選択図】なし

Description

本発明は、厚鋼板の製造方法、特に、引張強度が490N/mm級や570N/mm級で、例えば、音響異方性が小さく延性に優れた厚鋼板の製造方法に関する。
近年、構造物の大型化により、引張強度が490N/mm級以上の高張力鋼が用いられる機会が増加している。その一方で、安全性の観点から、母材や溶接部の高い靱性が求められている。このように、強度を高めつつ靱性を向上させる方法として、オンラインの水冷装置を用いて加速冷却を行い、金属組織を制御し、結晶粒を微細にする方法が提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
特許文献1、2に提案されている方法は、NbやTiなどの微量元素を利用し、制御圧延及び加速冷却を行うものである。しかしながら、熱間圧延後に鋼板を水冷する場合、製造条件によっては、鋼板の硬度が過剰に上昇し、延性が低下することがある。特に、圧延の生産性を向上させたり、鋼板の音響異方性を改善する目的で高温圧延を行った場合などに、このような傾向が強くなる。
このため、上述したような延性が低下する傾向の緩和を目的として、緩冷却の適用などが試みられ、提案されている(例えば、特許文献3を参照)。また、一様伸びを改善し、延性を向上する方法として、500〜600℃の温度範囲まで第1の強制冷却を行った後、放冷以下の冷却速度で冷却し、さらに第2の強制冷却を行って金属組織を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献4を参照)。
特公昭57−21007号公報 特公昭59−14535号公報 特開平5−214440号公報 特開平7−233414号公報
しかしながら、従来、高い生産性を維持して、強度、延性、靱性、音響異方性といった様々な特性を最適に制御することはできていなかった。そのため、生産性を阻害することなく、様々な特性、例えば、強度を向上させながらも、他の特性、例えば、延性や靱性、また、音響異方性を劣化させることのない、厚鋼板の製造方法が必要とされていた。
本発明はこのような実情に鑑み、例えば、音響異方性が小さく、延性に優れた、引張強度が490N/mm級や570N/mm級の厚鋼板を効率良く製造することが可能な、厚鋼板の製造方法の提供を課題とするものである。
本発明者等は、上記問題を解決するため、鋼の成分と製造条件、特に、鋼の変態温度と表面の温度履歴との関係について詳細に検討を行った。その結果、熱間圧延後、制御冷却を開始して、鋼の表面の温度が、ベイナイト変態やマルテンサイト変態を生じる温度に低下するまでの間に、十分にフェライトが生成するように、特に、表面の温度履歴を制御する必要があることを知見した。ここで、制御冷却とは、空冷よりも冷却速度が速い水冷等の加速冷却や、空冷よりも冷却が遅い徐冷を含む工程であり、途中で加熱してもよい。加速冷却の冷却速度を途中で変更する多段冷却や、加速冷却を途中で停止して空冷し、加速冷却を再開する間欠冷却なども制御冷却に含まれる。
鋼板の制御冷却では、熱間圧延後、加速冷却によって鋼板の表面の温度をAr(冷却時にオーステナイトからフェライトへの変態が開始する温度)よりも低い温度域に低下させてフェライトを生成させる。本発明者等は、制御冷却時の鋼板のフェライトの生成量が、鋼板の表面温度とArとの差と、鋼板の表面温度がAr以下の温度域に滞留する時間と、に影響されると考え、検討を行った。その結果、ベイナイト変態が生じる可能性のある600℃未満に表面の温度が低下する前に、鋼板の表面のフェライトの生成量を制御すれば、ベイナイトの生成が抑制されて、鋼板の表面の硬度の上昇が抑制されることを見出した。
そして、制御冷却を開始してから鋼板の表面温度が600℃未満に低下するまでの間に、フェライトの生成度合を表すパラメータ(フェライト生成指標)SIが0.55以上になるように冷却条件を制御することによって、鋼板の表面の硬度の上昇の抑制が可能になることがわかった。フェライト生成指標SIは、下記(1)〜(3)式によって算出されるもので、その数値が大きいほどフェライト生成量が増加し、表面硬度が低下して、延性や靱性が向上する。
SIは、制御冷却の開始から表面温度が600℃以上の範囲で下記(2)式によって算出したSIに、600℃以上650℃以下の範囲で下記(3)式によって算出したSIを加えて求める。ここで、下記(3)式で算出されるSIは、650℃以下でのフェライト変態駆動力の上昇による核生成頻度の増加を考慮した項である。表面温度650℃超で制御冷却を終了する場合は、上記(2)式で求めたSIが、そのままSIとなる。
SI=SI+SI・・・(1)
SI=∫(1/2037)×(Ar−T)dt (ただし、T≧600℃)・・・(2)
SI=∫(2/2037)×(650−T)dt (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(3)
ここで、上記(2)式及び(3)式におけるTは鋼の表面温度(℃)である。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、従来よりも高度な制御冷却により、鋼の組織を微細化し、かつ、過剰な表面の硬化を防止し、例えば、音響異方性が小さく、延性に優れた厚鋼板を効率良く製造する方法である。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、
C:0.03〜0.25%、
Si:0.001〜0.50%、
Mn:0.5〜3.0%
を含有し、
P:0.050%以下、
S:0.050%以下、
Al:0.05%以下、
N:0.010%以下、
O:0.010%以下
に制限し、残部Fe及び不純物からなる鋼を鋳造後、そのまま、又は、一旦冷却してAc〜1300℃に加熱し、終了温度をAr〜1100℃の範囲内とする熱間圧延を行った後、
表面温度がAr以上の温度から、板厚方向の平均冷却速度を3〜50℃/sとする制御冷却を開始し、
下記(1)〜(3)式によって前記表面温度T(℃)の温度履歴から算出されるフェライト生成指標SIが0.55〜2.00になるように前記制御冷却を行い、
板厚方向の平均温度が450〜675℃、表面温度が350〜675℃の範囲で前記制御冷却を終了し、
そのまま室温まで放冷する
ことを特徴とする厚鋼板の製造方法。
SI=SI+SI・・・(1)
SI=∫(1/2037)×(Ar−T)dt (ただし、T≧600℃)・・・(2)
SI=∫(2/2037)×(650−T)dt (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(3)
[2]前記制御冷却を板厚方向の平均温度が550〜675℃、表面温度が450〜675℃の範囲で終了することを特徴とする上記[1]に記載の厚鋼板の製造方法。
[3]前記制御冷却を板厚方向の平均温度が450〜600℃、表面温度が350〜600℃の範囲で終了することを特徴とする上記[1]に記載の厚鋼板の製造方法。
[4]更に、前記鋼が、質量%で、
Cu:2.0%以下、
Ni:3.0%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
W :2.0%以下、
V :0.30%以下、
Nb:0.05%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.002%以下、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に記載の厚鋼板の製造方法。
[5]更に、前記鋼が、質量%で、
REM:0.10%以下、
Mg:0.02%以下、
Ca:0.02%以下、
Zr:0.30%以下、
Hf:0.30%以下、
Ta:0.30%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか1項に記載の厚鋼板の製造方法。
本発明の厚鋼板の製造方法によれば、例えば、音響異方性が小さく、延性に優れた、引張強度が490N/mm級や570N/mm級の厚鋼板を高効率で製造することが可能になり、産業上の貢献が極めて顕著である。
以下、本発明の厚鋼板の製造方法の実施の形態について説明する。なお、この実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
本発明の厚鋼板の製造方法は、特に、下記(1)〜(3)式によって算出され、フェライトの生成度合を表すパラメータ(フェライト生成指標)SIにより、鋼板の表面のフェライトの生成量を制御し、ベイナイトの生成を抑制して、表面の硬度の上昇を抑制することを最大の特徴とする。
SI=SI+SI・・・(1)
SI=∫(1/2037)×(Ar−T)dt (ただし、T≧600℃)・・・(2)
SI=∫(2/2037)×(650−T)dt (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(3)
ここで、上記(2)式及び(3)式におけるTは鋼の表面温度(℃)である。
従来の制御圧延及び加速冷却は、熱間圧延の加熱条件及び圧延条件、更に、冷却条件を制御するものであり、ある程度、結晶粒を微細化する効果が得られる。特に、低温で熱間圧延する制御圧延と加速冷却とを組み合わせると、結晶粒を顕著に微細化することができる。一方、低温で制御圧延を行う場合、熱間圧延の途中で鋼板の温度の低下を待つ必要があり、生産性が低下するという問題がある。また、低温で熱間圧延を行うと、結晶粒が圧延方向に伸長し、鋼板の特性に異方性が生じ、特に音響異方性が劣化するという問題がある。
生産性を損なわずに異方性を低減するためには、高温で熱間圧延を終了した後、鋼板を加速冷却する方法が考えられる。しかしながら、高温で水冷を開始すると、鋼板の硬度、特に表面の硬度が上昇するため、延性や靱性が低下する。この原因は、1)表面と板厚中心部との温度差と、2)オーステナイトの粗大化である。
ここで、原因の1つ目である板厚中心部と表面との温度差は、高温から加速冷却を開始することによって拡大する。特に、鋼板の表面では、冷却速度が大きいため、ベイナイトやマルテンサイトが増加し、硬度上昇が顕著になる。また、原因の2つ目であるオーステナイトの粗大化は、高温で熱間圧延を終了する場合に、圧延温度が高くなることに起因する。圧延温度が高いと、オーステナイトの結晶粒が大きくなり、焼入性が高くなるため、加速冷却後、鋼板の中心部、表面ともに硬度が上昇しやすくなる。
したがって、鋼板の延性及び靭性を向上させるために、高温で熱間圧延を完了し、水冷の水量を低減して緩やかに冷却する(緩冷却)方法が考えられる。しかしながら、単に冷却速度を遅くすると、当初の狙いである水冷による結晶粒微細化の効果が期待通りに得られなくなる。そこで、本発明者等は、より高度な制御冷却により、鋼の組織を微細化し、かつ、過剰な硬化を防止する方法を検討した。その結果、熱間圧延を高温で実施し、高度の制御冷却、即ち、緩冷却や間欠冷却を精緻に行う方法が最適であることを見出した。
高温での熱間圧延後、緩冷却や間欠冷却を行うことにより、温度待ちによる生産性の低下や音響異方性の発生を回避することができる。更には、表層のフェライトの生成を促進し、硬度の過剰な上昇を回避することが可能になる。同時に、板厚方向中心部の冷却速度が上昇し、板厚中心部のフェライトが微細になる。このような緩冷却や間欠冷却は、フェライトが生成する下限の温度の近傍、本発明の成分では、引張強度490N/mm級鋼で550〜675℃程度(鋼板の表面温度)まで、引張強度570N/mm級鋼では450〜600℃程度(鋼板の表面温度)まで冷却することが必要である。なお、また、緩冷却は、冷却開始から冷却停止まで、比較的遅い冷却速度で冷却する方法である。一方、間欠冷却は、冷却開始後、1回以上、冷却を中断して鋼板の温度を復熱させる方法である。
(フェライト生成指標SI:0.55〜2.00)
制御冷却では、冷却時の鋼板の表面のフェライトの生成量が、Arと鋼板の温度との差の大きさと、Ar未満の温度域での滞留時間に影響されることから、最適な条件について検討を行った。その結果、フェライト生成度合を表すパラメータである「SI(フェライト生成指標)」が重要であることがわかった。このSIは、Arと鋼板の表面の温度Tとの差(Ar−T)の時間変化の積分に依存する。650℃以下ではフェライト変態駆動力の上昇による核生成頻度の増加を考慮する必要があり、増分は650℃と鋼板の表面の温度Tとの差(650−T)の時間変化の積分に依存する。フェライト生成指標SIは、鋼板の表面のフェライト生成量を増加させ、表面硬度の上昇を抑制して、延性や靱性を向上させるために、0.55以上とする。SIを大きくするとフェライト量が増加し、表面がほぼフェライトになるように、SIを1.00以上にすることが好ましい。一方、フェライト生成指標SIの上限は、2を超えると、フェライトが成長し、結晶粒が粗大化して靱性や延性が低下することがあるため、2.00以下とする。
以下では、フェライト生成指標SIの技術的意義、算出方法について説明する。
熱間圧延後の制御冷却によって鋼板の表面に生成するフェライトの量は、Arと鋼板の表面温度との差と、表面温度がAr以下の温度域に滞留する時間に影響される。ただし、600℃未満になるとベイナイト変態が生じる可能性があるため、制御冷却の開始から600℃以上の温度範囲の制御冷却が重要である。即ち、フェライト生成指標は、(Ar−T)の時間変化の積分値に依存し、本発明の成分組成を有する鋼の場合、制御冷却の開始から鋼板の表面温度Tが600℃以上の範囲で、フェライト生成指標SIを下記(2)式で求める。ここで、1/2037は、本発明の成分組成を有する鋼を用いて実験によって求めた係数である。
SI=∫(1/2037)×(Ar−T)dt (ただし、T≧600℃)・・・(2)
更に、本発明の成分組成を有する鋼の場合、鋼板の表面の温度が650℃以下になると、フェライト駆動力の上昇によって核生成の頻度が増加し、フェライトの生成が促進される。フェライト変態の核生成の頻度の上昇によるフェライト生成量の増加は、650℃と鋼板の表面温度との差と、表面温度が650℃以下の温度域に滞留する時間に影響される。このフェライト生成量の増加は、(650℃−T)の時間変化の積分値に依存し、本発明の成分組成を有する鋼の場合、制御冷却の開始から鋼板の表面温度Tが600〜650℃の範囲で、フェライト生成量の減少を表わすフェライト生成指標SIを下記(3)式で求める。ここで、2/2037は、本発明の成分組成を有する鋼を用いて実験によって求めた係数である。
SI=∫(2/2037)×(650−T)dt (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(3)
以上のように、上記(2)式で求めるSIと上記(3)式で求めるSIとの合計が、制御冷却を行う際に、冷却時の鋼板の表面の温度履歴から求めたフェライト生成指標SIである(下記(1)式)。SIは、鋼板の表面の温度を測定することにより、Arの温度差の時間変化から算出することができる。例えば、Arの温度差を時間に対してプロットし、数値解析等によって、温度履歴を示す曲線よりも下の部分の面積としてSIを求めればよい。したがって、SIは、一定の冷却速度で加速冷却する場合(緩冷却)に限らず、途中で冷却速度を変更する場合(多段冷却)や、加速冷却を途中で停止する場合(間欠冷却)にも適用することができる。
SI=SI+SI・・・(1)
また、近似的に、冷却速度が一定である場合、Tdtは(1/CR)dTとなる。鋼板の表面温度Tが650℃超の温度では、冷却速度が一定の温度範囲で冷却速度CR(℃/s)を用いて、(4)式によってSIを求めることができる。一方、鋼板の表面温度Tが600〜650℃の温度では、(5)式によってSIを算出することができる。冷却速度の変化が複数回であるような、複雑な制御冷却を行う場合は、冷却速度が一定の温度範囲で、鋼板の表面温度に応じて(4)式及び(5)式でSIを求め、全てを合計すればよい。また、間欠冷却では、加速冷却を停止した間のSIを、加速冷却の停止後、直ちに復熱温度に達すると仮定して求めればよい。
SI=[{(1/2037)×(Ar−T}/CR]/2−[{(1/2037)×(Ar−T}/CR]/2 (ただし、T>650℃)・・・(4)
SI=[{(1/2037)×(Ar−T}/CR]/2−[{(1/2037)×(Ar−T}/CR]/2+{(1/2037)×(650−T}/CR−{(1/2037)×(650−T}/CR (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(5)
ここで、Tは冷却速度の変化が開始した時の鋼の表面温度(℃)、Tは、前記Tの冷却速度から更に冷却速度が変化した時の鋼の表面温度(℃)である(T>T)。CR(℃/s)は近似的に一定とみなした冷却速度であって、前記Tと前記Tとの温度差を冷却に要した時間によって除して求める。冷却速度が一定である温度範囲内に650℃が含まれる場合は、650℃超と650℃以下で温度範囲を分割し、650℃超のSIを式(4)で、650℃以下のSIを式(5)で求めればよい。
次に、本発明鋼の化学成分について説明する。なお、以下の説明においては、組成における質量%は、単に%と記載する。
(C:0.03〜0.25%)
Cは、鋼材の焼入性を高め、炭化物を生成する元素である。本発明では、鋼材の強度を向上させるために、C量の下限を0.03%以上とする。しかしながら、Cを過剰に含有させると、パ−ライト、マルテンサイト及びセメンタイトなど、硬質の第2相組織の形成量が増加して、鋼材の延性及び靱性の低下を招く。したがって、C含有量の上限を0.25%以下とする。また、C量が多いと、鋼材の溶接性及び溶接部の靱性が劣化することがあるため、C含有量の上限を0.15%以下にすることがより好ましい。
(Si:0.001〜0.50%)
Siは、鋼材の脱酸元素であり、鋼材の酸素濃度を低減する目的で添加され、効果を得るためにSi含有量を0.001%以上とする。しかしながら、Si含有量が0.50%を超えると、鋼中に高炭素マルテンサイト−オーステナイト(M−A)混合物などが生成し、靱性を劣化させる。したがって、Siの含有量は、0.50%以下に制限する。また、Si量が多いと、スケール生成挙動が変化し、鋼の表面性状が劣化することがあるため、Si含有量の上限は、0.30%以下がより好ましい。一方、Siは、固溶強化元素として、強度の上昇に寄与するため、Si含有量の下限は0.01%以上が好ましい。
(Mn:0.5〜3.0%)
Mnは、鋼の焼き入れ性を高め、強度向上に寄与する元素である。本発明では、鋼の強度を高めるために、Mn含有量を0.5%以上とする。また、Mn含有量のより好ましい下限は、1.0%以上である。一方、Mn含有量が3.0%を超えると、凝固時に生成するミクロ偏析が顕著になる。鋼材中において、添加量以上にMnが濃縮している部位では、焼き入れ性が高く、また溶接部靱性を劣化させるM−A混合物を生成しやすい。そこで、本発明においては、M−A混合物の生成回避の観点から、Mn含有量の上限を3.0%以下とする。また、Mn含有量のより好ましい上限は、2.5%以下である。
(P:0.050%以下)
Pは不純物であり、主に粒界に偏析して厚鋼板の靭性を低下させる。したがって、本発明では、Pの含有量の上限を0.050%以下に制限する。なお、鋼の靭性を高めるには、P量の上限を0.020%以下に制限することがより好ましい。また、P量の下限は特に限定しないが、製造コストの増加を避けるために、0.001%以上を含有させてもよい。
(S:0.050%以下)
Sは不純物であり、鋼中でMnと結合してMnSを生成する。Sの含有量が0.050%を超えると、MnSが粗大になり、熱間加工性を損なうため、上限を0.050%以下に制限する。また、S量のより好ましい上限は、0.010%以下であり、更に好ましくは、0.005%以下に制限する。なお、鋼中に分散した微細なMnSは、結晶粒の成長の抑制に有効であり、フェライト変態の生成核として作用するため、0.0005%以上を含有させることが好ましい。
(Al:0.05%以下)
Alは脱酸元素であり、酸素濃度を低減する目的で添加され、効果を得るためにAl含有量を0.001%以上とする。しかし、Al含有量が0.05%を超えると、厚鋼板の靱性及び表面性状が劣化するため、上限を0.05%以下とする。なお、粗大な介在物の生成を抑制するには、Al含有量の上限を0.03%以下にすることがより好ましい。また、Alの含有量の下限値は特に限定しないが、結晶粒の微細化に寄与する窒化物を形成させるためには、0.01%以上を添加することが好ましい。
(N:0.010%以下)
Nは不純物であり、過剰に含有すると固溶Nに起因して靭性が低下するため、N量の上限を0.010%以下に制限する。また、Nは、Ti、Nb、V、Al、Zr、Ta及びHfなどと窒化物を形成し、結晶粒の微細化に有効に作用するため、0.0003%以上を含有させることが好ましい。また、窒化物の粗大化を抑制し、靭性を確保するには、N含有量の上限を0.005%以下に制限することが好ましい。
(O:0.010%以下)
O(酸素)は不純物であり、介在物の粗大化を防止するために、O量の上限を0.010%以下に制限する。また、O含有量のより好ましい上限は、0.002%以下である。また、Ti、Al及びMn等の酸化物が鋼中に微細に分散すると、熱間圧延の再加熱時に結晶粒の成長を抑制したり、熱間圧延後の冷却時に粒内でのフェライト変態を促進する。厚鋼板の結晶粒を微細化し、鋼の強度及び靭性を向上させるには、O含有量の下限を0.0001%以上にすることが好ましい。
本発明で使用する鋼には、更に、上記各成分に加えて、厚鋼板の強度や強度を向上させるCu、Ni、Cr、Mo、W、Ti、Nb、V、Bからなる群から選択された1種又は2種以上の元素を添加することができる。
(Cu:2.0%以下)
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、また、固溶強化及び析出強化によって、厚鋼板の強度を向上させる元素でもある。Cuを添加し、熱処理を施すと、微細な金属Cuが析出し、結晶粒の微細化や延性の劣化の抑制にも寄与する。厚鋼板の強度を上昇させるためには、Cu含有量の下限を0.001%以上にすることが好ましい。一方、Cu含有量が過剰であると、析出強化が著しくなることから、厚鋼板の靭性を確保するためには、Cu量の上限を2.0%以下とすることが好ましい。また、Cuが鋳造時に粒界に析出すると、内部割れを引き起こし、鋼片及び鋼板の表面疵が発生しやすくなるため、Cu量の上限を0.70%以下にすることがより好ましい。また、熱間加工性等の劣化を抑制するには、Cu量の上限を0.50%以下にすることがより好ましい。
(Ni:3.0%以下)
Niは、焼入れ性を高め、特に靭性を低下させることなく強度を向上させる、有用な元素である。厚鋼板の強度及び靭性を高めるには、Ni含有量の下限を0.001%以上にすることが好ましい。一方、3.0%を超える量のNiを含有させても、効果が飽和するため、Ni量の上限を3.0%以下にすることが好ましい。また、合金コストの観点から、Ni量の上限は1.50%以下がより好ましく、0.50%以下が更に好ましい。
(Cr:1.0%以下)
Crは、焼入れ性を向上させる元素であり、また、炭化物、窒化物を生じ、析出強化にも寄与する。厚鋼板の強度を高めるには、Crの含有量の下限を0.001%以上にすることが好ましい。一方、Cr量が1.0%を超えると、靭性が低下することがあるため、上限を1.0%以下にすることが好ましい。また、Cr量のより好ましい上限は、0.50%以下である。
(Mo:1.0%以下)
Moは、焼入れ性を向上させる元素である。また、Moは、有用な固溶強化元素であり、炭化物を生じて析出強化にも寄与する。厚鋼板の強度を高めるには、Mo含有量を0.001%以上にすることが好ましい。一方、Mo含有量が1.0%を超えると、合金コストが上昇するため、上限を1.0%以下にすることが好ましい。なお、Mo量のより好ましい上限は、0.30%以下である。
(W:2.0%以下)
Wは、Moと同様、焼入れ性の向上、固溶強化及び析出強化に寄与する元素である。厚鋼板の強度を向上させるには、W含有量を0.001%以上にすることが好ましい。この含有量未満では、析出強化に寄与することができず、十分な強度が確保できない。一方、W含有量が2.0%を超えると、合金コストが上昇するため、上限を2.0%以下にすることが好ましい。なお、W量のより好ましい上限は、0.30%以下である。
(Ti:0.05%以下)
Tiは、炭化物、窒化物を形成する元素である。これらの析出物を利用して結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のTiを添加することが好ましい。一方、Ti含有量が0.05%を超えると、厚鋼板の靭性が低下することがあるため、上限は0.05%以下が好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.03%以下、更に好ましくは0.02%以下とする。
(Nb:0.05%以下)
Nbは、Tiと同様、炭化物、窒化物を形成する元素である。これらの析出物を利用して結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のNbを添加することが好ましい。一方、Nb含有量が0.05%を超えると、厚鋼板の靭性が低下することがあるため、上限は0.05%以下が好ましい。Nb含有量は、より好ましくは0.03%以下、更に好ましくは0.02%以下とする。
(V:0.30%以下)
Vは、Ti、Nbと同様、炭化物、窒化物を形成する元素であり、結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のVを添加することが好ましい。一方、V含有量が0.30%超になると、厚鋼板の靭性が低下することがあるため、上限は0.30%以下が好ましい。V含有量は、より好ましくは0.10%以下、更に好ましくは0.05%以下とする。
(B:0.002%以下)
Bは、微量の添加で、厚鋼板の焼き入れ性を著しく向上させる元素である。厚鋼板の強度を高めるには、0.0001%以上の添加が好ましい。B含有量は、より好ましくは0.0003%以下とする。一方、B含有量が0.002%を超えると、過剰に焼入れ性が向上して靭性を損なうことがあるため、B量の上限を0.002%以下にすることが好ましい。
更に、本発明で使用する鋼には、上記各成分に加えて、Zr、Hf、Ta、REM、Mg、Caからなる群から選択された1種又は2種以上の元素を添加してもよい。
(Zr:0.30%以下)
Zrは、炭化物、窒化物を形成する元素であり、脱酸剤としても有効である。厚鋼板の結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のZrを添加することが好ましい。一方、Zrの含有量が0.30%を超えると、厚鋼板の靱性及び表面性状が劣化することがある。したがって、Zrの含有量の上限は、0.30%以下が好ましい。Zr含有量は、より好ましくは0.10以下、更に好ましくは0.05%以下とする。
(Hf:0.30%以下)
Hfは、Zrと同様、炭化物、窒化物を形成する元素であり、脱酸剤としても有効である。厚鋼板の結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のHfを添加することが好ましい。一方、Hfの含有量が0.30%を超えると、厚鋼板の靱性及び表面性状が劣化することがあるため、上限を0.30%以下にすることが好ましい。Hf含有量は、より好ましくは0.10%以下、更に好ましくは0.05%以下とする。
(Ta:0.30%以下)
Taは、Zr及びHfと同様、炭化物、窒化物を形成する元素であり、脱酸剤としても有効である。厚鋼板の結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のTaの添加が好ましい。一方、Taの含有量が0.30%を超えると、厚鋼板の靱性及び表面性状が劣化することがあるため、上限は0.30%以下が好ましい。Ta含有量は、より好ましくは0.10%以下、更に好ましくは0.05%以下とする。
(REM:0.10%以下)
REMは、硫化物等、介在物の形態の制御に有効な元素であり、熱間加工性の向上に寄与する。また、微細な酸化物を生じ、結晶粒やHAZの粒径の粗大化の防止に有効である。厚鋼板の靭性を向上させるには、0.0001%以上のREMを添加することが好ましい。一方、REMを過剰に添加すると、介在物が粗大化し、靭性が損なわれることがあるため、REMの含有量を0.10%以下にすることが好ましい。REM含有量は、より好ましくは0.05%以下、更に好ましくは0.02%以下とする。
(Mg:0.02%以下)
Mgは、REMと同様、硫化物等、介在物の形態の制御に有効な元素である。特に、Mgは、微細な酸化物を生じ、ピン止め効果に加えて、粒内でのフェライト変態を促進するため、結晶粒やHAZの粒径の粗大化の防止に極めて有効である。厚鋼板の靭性を向上させるには、0.0001%以上のMgを添加することが好ましい。一方、Mgを過剰に添加すると介在物が粗大化し、靭性が損なわれることがあるため、含有量の上限を0.02%以下にすることが好ましい。Mg含有量は、より好ましくは0.01%以下とする。
(Ca:0.02%以下)
Caは、Mg及びREMと同様、硫化物等、介在物の形態の制御に有効な元素である。特に、Caは、粗大なMnSの生成を抑制し、硫化物の形態の制御に有効である。一方、Caを過剰に添加すると、介在物が粗大化し、靭性が損なわれることがあるため、含有量の上限を0.02%以下にすることが好ましい。Ca含有量は、より好ましくは0.01%以下とする。
また、本発明で使用する鋼の上記各成分以外の成分は、Fe及び不純物である。ここで、不純物とは、厚鋼板を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。ただし、本発明においては、不純物のうち、P、S、N及びOについては、上述のように、上限を規定する必要がある。
次に、本発明の厚鋼板の製造工程及び製造条件について説明する。
本発明の厚鋼板は、鋼を溶製し、組成を調整した後、鋳造し、熱間圧延を施し、制御冷却を行って製造する。鋼を溶製し、鋳造して得られた鋼片を室温まで冷却することなくそのまま熱間圧延してもよく、鋳造後に、鋼片を、一旦、Ar以下、更には室温まで冷却し、Ac(加熱時にフェライトからオーステナイトへの変態が開始する温度)以上に再加熱して熱間圧延してもよい。鋼片の組織を微細にするには、鋳造後、室温まで冷却して再加熱することが好ましい。Ac及びArは、熱膨張試験によって、加熱及び冷却による変態に伴う体積の膨張及び収縮が生じる温度を測定し、求めることができる。
熱間圧延の後、表面温度がAr以上の温度から制御冷却を開始する。制御冷却は、冷却速度が速いほど好ましく、水冷が望ましい。放冷から、ファン冷却、ミスト冷却、水冷などにより、冷却速度が高くなるに従って、一般に、鋼の金属組織は、比較的に粗粒のフェライト、細粒フェライト、ベイナイト、マルテンサイトへと変化する。制御冷却では、SIを調整するため、冷却速度を制御して1回の中間速度冷却を行ってもよく、一旦、冷却を停止し、表面の温度を復熱させる間欠冷却を採用してもよい。また、間欠冷却では、冷却の停止を2回以上行ってもよい。
(熱間圧延の加熱温度:Ac〜1300℃)
鋼片の温度をAr以下に冷却した場合は、鋼片の金属組織をオ−ステナイト単相にするため、加熱温度をAc以上にする必要がある。音響異方性を向上させるために高温で熱間圧延を終了することが好ましく、熱間圧延の加熱温度を900℃以上とすることが好ましい。更に、熱間圧延の終了温度を高くするには、熱間圧延の加熱温度を950℃以上にすることがより好ましい。一方、熱間圧延の加熱温度が1300℃を超えると、鋼片の組織が著しく粗大となり、鋼板の結晶粒の微細化が困難になるため、熱間圧延の加熱温度の上限を1300℃以下とする。なお、加熱温度は、加熱炉内の温度であり、鋼片の中心部がこの温度に加熱されるものとする。
(熱間圧延終了温度(表面温度):Ar〜1100℃)
熱間圧延の終了温度の下限は、金属組織がオーステナイト単相である温度で熱間圧延を終了させるため、Ar以上とする。また、熱間圧延の終了温度の下限は、より好ましくは900℃以上とする。これは、圧延の生産性を低下させる低温での制御圧延を回避し、鋼板の音響異方性を損なう圧延異方性の発現を抑制するためである。また、異方性の観点からは、オーステナイトの未再結晶温度以上で圧延を終了することが好ましい。未再結晶状態での圧延を回避するためには、950℃以上で熱間圧延を終了することがより好ましい。一方、細粒化の観点からは圧延温度は低い方がよいので、熱間圧延の終了温度の上限を1100℃以下とする。また、熱間圧延の終了温度のより好ましい上限は、1000℃以下である。
(制御冷却開始温度(表面温度):Ar以上)
表面温度がAr未満から制御冷却を開始すると、冷却開始前に粗大なフェライトが生成し、鋼板の強度が低下し、靱性も劣化するため、制御冷却の開始温度は表面温度でAr以上とする。制御冷却の開始温度の上限は特に定めず、熱間圧延の終了後、直ちに制御冷却を開始してもよい。ただし、高温で制御冷却を開始すると、制御冷却を停止した際に板厚中心部と鋼板表面との温度差が大きくなる。したがって、表面の温度を600℃以上に保持してフェライトを生成させ、かつ、板厚中心部の終了温度を低下させて強度を確保するために、1000℃以下で制御冷却を開始することが好ましい。
(板厚方向の平均冷却速度:3〜50℃/s)
本発明では、熱間圧延後の鋼板の結晶粒を微細化するため、制御冷却を実施する。制御冷却のうち、加速冷却は、通常、水冷で行うが、十分な細粒化の効果が得られる板厚方向の平均冷却速度として3℃/s以上を下限とする。また、制御冷却の板厚方向の平均冷却速度の下限は、より微細なフェライトを安定的に生成させるために、5℃/s以上にすることがより好ましい。より好ましくは15℃/s以上とする。本発明では、制御冷却の終了後、放冷する間にもフェライト変態が生じるため、制御冷却の板厚方向の平均冷却速度の上限は、工業的規模で実現可能なレベルとして50℃/s以下とする。制御冷却の板厚方向の平均冷却速度の上限は、30℃/s以下であってもよい。板厚方向の平均冷却速度は、板厚方向の平均温度の変化及び所要時間から算出する。なお、板厚方向の平均温度(鋼板表面から板厚中央部にかけての平均温度)は、鋼板表面の温度を基にしたシミュレーション計算などによって求める。即ち、制御冷却を開始する時の板厚方向の温度分布から平均温度を求め、制御冷却を終了した時の板厚方向の温度分布から平均温度を求め、これらの温度差を所要時間によって除して求める。
制御冷却による鋼板の表面の硬化を抑制するために、鋼板の表面の冷却速度を制御してもよい。特に、制御冷却を終了する直前の表面の加速冷却の冷却速度(ただし、近似的に一定の冷却速度)は、フェライト生成の制御や細粒化の観点から、3℃/s以上にすることが好ましい。より好ましくは5℃/s以上である。また、制御冷却を終了する直前の加速冷却の表面の冷却速度は、工業的規模で実現可能なレベルとして、最も速い場合でも、200℃/sを超えることはない。ここで、加速冷却とは、空冷よりも冷却速度が速い冷却であって、上述のファン冷却、ミスト冷却、水冷などによる冷却である。
(制御冷却の終了温度(板厚方向の平均温度):450〜675℃)
板厚方向平均の冷却終了温度は、675℃を超えると、粗大フェライトが増加し、鋼板の強度や靱性が低下する。好ましくは板厚方向平均の冷却終了温度を600℃以下とする。強度を高めるためには、板厚方向平均の冷却終了温度は低い方が好ましい。一方、板厚方向平均の冷却終了温度が450℃未満になると、ベイナイト量の増加や、マルテンサイトの生成によって延性や靱性が低下する。延性や靱性を高めるためには、板厚方向平均の冷却終了温度は高い方が好ましい。
板厚方向平均の冷却終了温度は、引張強度のレベルに応じて適正な範囲が異なっている。引張強度が490N/mm級の鋼板の場合、強度が過剰に高くならないように、板厚方向平均の冷却終了温度を550℃以上にすることが好ましい。引張強度が570N/mm級の鋼板の場合は、延性や靱性を確保するために、板厚方向平均の冷却終了温度を、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃未満とする。
(制御冷却の終了温度(表面温度):350〜675℃)
表面の冷却終了温度は、微細なフェライトを生成させるために675℃以下とする。強度を高めるためには、適正なベイナイトが生成するように、表面の冷却終了温度を低くすることが好ましい。一方、表面の冷却終了温度が350℃未満になると、ベイナイト量の増加や、マルテンサイトの生成によって鋼板の表面が硬化し、延性や靱性が低下する。
表面の冷却終了温度も、引張強度のレベルに応じて適正な範囲が異なっている。引張強度が490N/mm級の鋼板の場合、強度が過剰に高くならないように、表面の冷却終了温度を450℃以上にすることが好ましい。引張強度が570N/mm級の鋼板の場合は、延性や靱性を確保するために、表面の冷却終了温度を、好ましくは600℃以下、より好ましくは575℃以下とする。
以下、本発明に係る音響異方性が小さく延性に優れた厚鋼板の製造方法の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
表1に示す組成の鋼を常法で溶製し、鋳造し、得られた鋼片を再加熱し、熱間圧延及び制御冷却を施した後、そのまま室温まで空冷し、鋼板を製造した。熱間圧延及び制御冷却は、表2、表4、表5、表8、表9、表11及び表12に示した条件で行った。表2は、加速冷却(水冷)を途中で停止せず、制御冷却を終了した例であり、その他は、加速冷却(水冷)を途中で、1回以上、停止した例である。
得られた鋼板の引張特性(降伏応力YS、引張強度TS、均一伸びuEL、全伸びEL)を、各鋼板から採取した5号試験片を用いて、JIS Z 2241に準拠して評価した。また、各鋼板から、Vノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242に準拠してシャルピー試験を行い、靱性(延性−脆性破面遷移温度vTrsおよび0℃における吸収エネルギーvE)を評価した。また、溶接入熱を7KJ/mm相当としてサブマージアーク溶接したときの溶接熱影響部の靱性(シャルピー試験の−40℃における吸収エネルギーvE−40)をJIS Z 3128に準拠して評価した。
また、母材の板厚方向硬度分布は、10kgビッカース硬度計により表面下1mmの硬度と板厚方向中心部の硬度差ΔHvを測定した。更に、音響異方性(圧延方向と幅方向の音速比)も、超音波測定装置を用いて測定した。
結果を表3、表6、表7、表10及び表13に示す。
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表1〜13から明らかなように、本発明の範囲内で製造した本発明例の厚鋼板は、母材の強度及び靭性、溶接熱影響部の靭性のいずれの特性も優れている。これに対して、本発明で規定する各成分や条件の範囲外で製造した比較例の厚鋼板は、強度や延性、靱性又は音響異方性のいずれかが低下する結果となった。これらの結果から、上述した知見を確認することができ、また、上述した各鋼成分の限定の根拠を裏付けることが可能となる。従って、本発明の厚鋼板の製造方法により、音響異方性が小さく、延性に優れた、引張強度が490N/mm級以上の厚鋼板を高効率で製造することが可能であることが明らかである。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.25%、
    Si:0.001〜0.50%、
    Mn:0.5〜3.0%
    を含有し、
    P:0.050%以下、
    S:0.050%以下、
    Al:0.05%以下、
    N:0.010%以下、
    O:0.010%以下
    に制限し、残部Fe及び不純物からなる鋼を鋳造後、そのまま、又は、一旦冷却してAc〜1300℃に加熱し、終了温度をAr〜1100℃の範囲内とする熱間圧延を行った後、
    表面温度がAr以上の温度から、板厚方向の平均冷却速度を3〜50℃/sとする制御冷却を開始し、
    下記(1)〜(3)式によって前記表面温度T(℃)の温度履歴から算出されるフェライト生成指標SIが0.55〜2.00になるように前記制御冷却を行い、
    板厚方向の平均温度が450〜675℃、表面温度が350〜675℃の範囲で前記制御冷却を終了し、
    そのまま室温まで放冷する
    ことを特徴とする厚鋼板の製造方法。
    SI=SI+SI・・・(1)
    SI=∫(1/2037)×(Ar−T)dt (ただし、T≧600℃)・・・(2)
    SI=∫(2/2037)×(650−T)dt (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(3)
  2. 前記制御冷却を板厚方向の平均温度が550〜675℃、表面温度が450〜675℃の範囲で終了することを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板の製造方法。
  3. 前記制御冷却を板厚方向の平均温度が450〜600℃、表面温度が350〜600℃の範囲で終了することを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板の製造方法。
  4. 更に、前記鋼が、質量%で、
    Cu:2.0%以下、
    Ni:3.0%以下、
    Cr:1.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    W:2.0%以下、
    V:0.30%以下、
    Nb:0.05%以下、
    Ti:0.05%以下、
    B:0.002%以下、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の厚鋼板の製造方法。
  5. 更に、前記鋼が、質量%で、
    REM:0.10%以下、
    Mg:0.02%以下、
    Ca:0.02%以下、
    Zr:0.30%以下、
    Hf:0.30%以下、
    Ta:0.30%以下
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の厚鋼板の製造方法。
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