JP2017197807A - 厚鋼板の製造方法 - Google Patents
厚鋼板の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2017197807A JP2017197807A JP2016089091A JP2016089091A JP2017197807A JP 2017197807 A JP2017197807 A JP 2017197807A JP 2016089091 A JP2016089091 A JP 2016089091A JP 2016089091 A JP2016089091 A JP 2016089091A JP 2017197807 A JP2017197807 A JP 2017197807A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- less
- cooling
- temperature
- steel plate
- steel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Abstract
【解決手段】質量%でC:0.03〜0.25%、Si:0.001〜0.50%、Mn:0.5〜3.0%を含む鋼を鋳造後、そのまま又は一旦冷却してAc3〜1300℃に加熱し、終了温度をAr3〜1100℃とする熱間圧延の後、表面温度がAr3以上の温度から、板厚方向の平均冷却速度を3〜50℃/sとする制御冷却を開始し、(1)〜(3)式により表面温度T(℃)の温度履歴から算出されるフェライト生成指標SIが0.55〜2.00になるように制御冷却を行い、板厚方向の平均温度が450〜675℃、表面温度が350〜675℃の範囲で制御冷却を終了し、室温まで放冷する厚鋼板の製造方法。SI=SI1+SI2・・・(1)、SI1=∫(1/2037)×(Ar3−T)dt・・・(2)、SI2=∫(2/2037)×(650−T)dt・・・(3)。
【選択図】なし
Description
SI=SI1+SI2・・・(1)
SI1=∫(1/2037)×(Ar3−T)dt (ただし、T≧600℃)・・・(2)
SI2=∫(2/2037)×(650−T)dt (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(3)
ここで、上記(2)式及び(3)式におけるTは鋼の表面温度(℃)である。
本発明の要旨は以下のとおりである。
C:0.03〜0.25%、
Si:0.001〜0.50%、
Mn:0.5〜3.0%
を含有し、
P:0.050%以下、
S:0.050%以下、
Al:0.05%以下、
N:0.010%以下、
O:0.010%以下
に制限し、残部Fe及び不純物からなる鋼を鋳造後、そのまま、又は、一旦冷却してAc3〜1300℃に加熱し、終了温度をAr3〜1100℃の範囲内とする熱間圧延を行った後、
表面温度がAr3以上の温度から、板厚方向の平均冷却速度を3〜50℃/sとする制御冷却を開始し、
下記(1)〜(3)式によって前記表面温度T(℃)の温度履歴から算出されるフェライト生成指標SIが0.55〜2.00になるように前記制御冷却を行い、
板厚方向の平均温度が450〜675℃、表面温度が350〜675℃の範囲で前記制御冷却を終了し、
そのまま室温まで放冷する
ことを特徴とする厚鋼板の製造方法。
SI=SI1+SI2・・・(1)
SI1=∫(1/2037)×(Ar3−T)dt (ただし、T≧600℃)・・・(2)
SI2=∫(2/2037)×(650−T)dt (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(3)
[2]前記制御冷却を板厚方向の平均温度が550〜675℃、表面温度が450〜675℃の範囲で終了することを特徴とする上記[1]に記載の厚鋼板の製造方法。
[3]前記制御冷却を板厚方向の平均温度が450〜600℃、表面温度が350〜600℃の範囲で終了することを特徴とする上記[1]に記載の厚鋼板の製造方法。
Cu:2.0%以下、
Ni:3.0%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
W :2.0%以下、
V :0.30%以下、
Nb:0.05%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.002%以下、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に記載の厚鋼板の製造方法。
[5]更に、前記鋼が、質量%で、
REM:0.10%以下、
Mg:0.02%以下、
Ca:0.02%以下、
Zr:0.30%以下、
Hf:0.30%以下、
Ta:0.30%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか1項に記載の厚鋼板の製造方法。
SI=SI1+SI2・・・(1)
SI1=∫(1/2037)×(Ar3−T)dt (ただし、T≧600℃)・・・(2)
SI2=∫(2/2037)×(650−T)dt (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(3)
ここで、上記(2)式及び(3)式におけるTは鋼の表面温度(℃)である。
制御冷却では、冷却時の鋼板の表面のフェライトの生成量が、Ar3と鋼板の温度との差の大きさと、Ar3未満の温度域での滞留時間に影響されることから、最適な条件について検討を行った。その結果、フェライト生成度合を表すパラメータである「SI(フェライト生成指標)」が重要であることがわかった。このSIは、Ar3と鋼板の表面の温度Tとの差(Ar3−T)の時間変化の積分に依存する。650℃以下ではフェライト変態駆動力の上昇による核生成頻度の増加を考慮する必要があり、増分は650℃と鋼板の表面の温度Tとの差(650−T)の時間変化の積分に依存する。フェライト生成指標SIは、鋼板の表面のフェライト生成量を増加させ、表面硬度の上昇を抑制して、延性や靱性を向上させるために、0.55以上とする。SIを大きくするとフェライト量が増加し、表面がほぼフェライトになるように、SIを1.00以上にすることが好ましい。一方、フェライト生成指標SIの上限は、2を超えると、フェライトが成長し、結晶粒が粗大化して靱性や延性が低下することがあるため、2.00以下とする。
SI1=∫(1/2037)×(Ar3−T)dt (ただし、T≧600℃)・・・(2)
SI2=∫(2/2037)×(650−T)dt (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(3)
SI=SI1+SI2・・・(1)
SI=[{(1/2037)×(Ar3−T2)2}/CR]/2−[{(1/2037)×(Ar3−T1)2}/CR]/2 (ただし、T>650℃)・・・(4)
SI=[{(1/2037)×(Ar3−T2)2}/CR]/2−[{(1/2037)×(Ar3−T1)2}/CR]/2+{(1/2037)×(650−T2)2}/CR−{(1/2037)×(650−T1)2}/CR (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(5)
ここで、T1は冷却速度の変化が開始した時の鋼の表面温度(℃)、T2は、前記T1の冷却速度から更に冷却速度が変化した時の鋼の表面温度(℃)である(T1>T2)。CR(℃/s)は近似的に一定とみなした冷却速度であって、前記T1と前記T2との温度差を冷却に要した時間によって除して求める。冷却速度が一定である温度範囲内に650℃が含まれる場合は、650℃超と650℃以下で温度範囲を分割し、650℃超のSIを式(4)で、650℃以下のSIを式(5)で求めればよい。
Cは、鋼材の焼入性を高め、炭化物を生成する元素である。本発明では、鋼材の強度を向上させるために、C量の下限を0.03%以上とする。しかしながら、Cを過剰に含有させると、パ−ライト、マルテンサイト及びセメンタイトなど、硬質の第2相組織の形成量が増加して、鋼材の延性及び靱性の低下を招く。したがって、C含有量の上限を0.25%以下とする。また、C量が多いと、鋼材の溶接性及び溶接部の靱性が劣化することがあるため、C含有量の上限を0.15%以下にすることがより好ましい。
Siは、鋼材の脱酸元素であり、鋼材の酸素濃度を低減する目的で添加され、効果を得るためにSi含有量を0.001%以上とする。しかしながら、Si含有量が0.50%を超えると、鋼中に高炭素マルテンサイト−オーステナイト(M−A)混合物などが生成し、靱性を劣化させる。したがって、Siの含有量は、0.50%以下に制限する。また、Si量が多いと、スケール生成挙動が変化し、鋼の表面性状が劣化することがあるため、Si含有量の上限は、0.30%以下がより好ましい。一方、Siは、固溶強化元素として、強度の上昇に寄与するため、Si含有量の下限は0.01%以上が好ましい。
Mnは、鋼の焼き入れ性を高め、強度向上に寄与する元素である。本発明では、鋼の強度を高めるために、Mn含有量を0.5%以上とする。また、Mn含有量のより好ましい下限は、1.0%以上である。一方、Mn含有量が3.0%を超えると、凝固時に生成するミクロ偏析が顕著になる。鋼材中において、添加量以上にMnが濃縮している部位では、焼き入れ性が高く、また溶接部靱性を劣化させるM−A混合物を生成しやすい。そこで、本発明においては、M−A混合物の生成回避の観点から、Mn含有量の上限を3.0%以下とする。また、Mn含有量のより好ましい上限は、2.5%以下である。
Pは不純物であり、主に粒界に偏析して厚鋼板の靭性を低下させる。したがって、本発明では、Pの含有量の上限を0.050%以下に制限する。なお、鋼の靭性を高めるには、P量の上限を0.020%以下に制限することがより好ましい。また、P量の下限は特に限定しないが、製造コストの増加を避けるために、0.001%以上を含有させてもよい。
Sは不純物であり、鋼中でMnと結合してMnSを生成する。Sの含有量が0.050%を超えると、MnSが粗大になり、熱間加工性を損なうため、上限を0.050%以下に制限する。また、S量のより好ましい上限は、0.010%以下であり、更に好ましくは、0.005%以下に制限する。なお、鋼中に分散した微細なMnSは、結晶粒の成長の抑制に有効であり、フェライト変態の生成核として作用するため、0.0005%以上を含有させることが好ましい。
Alは脱酸元素であり、酸素濃度を低減する目的で添加され、効果を得るためにAl含有量を0.001%以上とする。しかし、Al含有量が0.05%を超えると、厚鋼板の靱性及び表面性状が劣化するため、上限を0.05%以下とする。なお、粗大な介在物の生成を抑制するには、Al含有量の上限を0.03%以下にすることがより好ましい。また、Alの含有量の下限値は特に限定しないが、結晶粒の微細化に寄与する窒化物を形成させるためには、0.01%以上を添加することが好ましい。
Nは不純物であり、過剰に含有すると固溶Nに起因して靭性が低下するため、N量の上限を0.010%以下に制限する。また、Nは、Ti、Nb、V、Al、Zr、Ta及びHfなどと窒化物を形成し、結晶粒の微細化に有効に作用するため、0.0003%以上を含有させることが好ましい。また、窒化物の粗大化を抑制し、靭性を確保するには、N含有量の上限を0.005%以下に制限することが好ましい。
O(酸素)は不純物であり、介在物の粗大化を防止するために、O量の上限を0.010%以下に制限する。また、O含有量のより好ましい上限は、0.002%以下である。また、Ti、Al及びMn等の酸化物が鋼中に微細に分散すると、熱間圧延の再加熱時に結晶粒の成長を抑制したり、熱間圧延後の冷却時に粒内でのフェライト変態を促進する。厚鋼板の結晶粒を微細化し、鋼の強度及び靭性を向上させるには、O含有量の下限を0.0001%以上にすることが好ましい。
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、また、固溶強化及び析出強化によって、厚鋼板の強度を向上させる元素でもある。Cuを添加し、熱処理を施すと、微細な金属Cuが析出し、結晶粒の微細化や延性の劣化の抑制にも寄与する。厚鋼板の強度を上昇させるためには、Cu含有量の下限を0.001%以上にすることが好ましい。一方、Cu含有量が過剰であると、析出強化が著しくなることから、厚鋼板の靭性を確保するためには、Cu量の上限を2.0%以下とすることが好ましい。また、Cuが鋳造時に粒界に析出すると、内部割れを引き起こし、鋼片及び鋼板の表面疵が発生しやすくなるため、Cu量の上限を0.70%以下にすることがより好ましい。また、熱間加工性等の劣化を抑制するには、Cu量の上限を0.50%以下にすることがより好ましい。
Niは、焼入れ性を高め、特に靭性を低下させることなく強度を向上させる、有用な元素である。厚鋼板の強度及び靭性を高めるには、Ni含有量の下限を0.001%以上にすることが好ましい。一方、3.0%を超える量のNiを含有させても、効果が飽和するため、Ni量の上限を3.0%以下にすることが好ましい。また、合金コストの観点から、Ni量の上限は1.50%以下がより好ましく、0.50%以下が更に好ましい。
Crは、焼入れ性を向上させる元素であり、また、炭化物、窒化物を生じ、析出強化にも寄与する。厚鋼板の強度を高めるには、Crの含有量の下限を0.001%以上にすることが好ましい。一方、Cr量が1.0%を超えると、靭性が低下することがあるため、上限を1.0%以下にすることが好ましい。また、Cr量のより好ましい上限は、0.50%以下である。
Moは、焼入れ性を向上させる元素である。また、Moは、有用な固溶強化元素であり、炭化物を生じて析出強化にも寄与する。厚鋼板の強度を高めるには、Mo含有量を0.001%以上にすることが好ましい。一方、Mo含有量が1.0%を超えると、合金コストが上昇するため、上限を1.0%以下にすることが好ましい。なお、Mo量のより好ましい上限は、0.30%以下である。
Wは、Moと同様、焼入れ性の向上、固溶強化及び析出強化に寄与する元素である。厚鋼板の強度を向上させるには、W含有量を0.001%以上にすることが好ましい。この含有量未満では、析出強化に寄与することができず、十分な強度が確保できない。一方、W含有量が2.0%を超えると、合金コストが上昇するため、上限を2.0%以下にすることが好ましい。なお、W量のより好ましい上限は、0.30%以下である。
Tiは、炭化物、窒化物を形成する元素である。これらの析出物を利用して結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のTiを添加することが好ましい。一方、Ti含有量が0.05%を超えると、厚鋼板の靭性が低下することがあるため、上限は0.05%以下が好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.03%以下、更に好ましくは0.02%以下とする。
Nbは、Tiと同様、炭化物、窒化物を形成する元素である。これらの析出物を利用して結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のNbを添加することが好ましい。一方、Nb含有量が0.05%を超えると、厚鋼板の靭性が低下することがあるため、上限は0.05%以下が好ましい。Nb含有量は、より好ましくは0.03%以下、更に好ましくは0.02%以下とする。
Vは、Ti、Nbと同様、炭化物、窒化物を形成する元素であり、結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のVを添加することが好ましい。一方、V含有量が0.30%超になると、厚鋼板の靭性が低下することがあるため、上限は0.30%以下が好ましい。V含有量は、より好ましくは0.10%以下、更に好ましくは0.05%以下とする。
Bは、微量の添加で、厚鋼板の焼き入れ性を著しく向上させる元素である。厚鋼板の強度を高めるには、0.0001%以上の添加が好ましい。B含有量は、より好ましくは0.0003%以下とする。一方、B含有量が0.002%を超えると、過剰に焼入れ性が向上して靭性を損なうことがあるため、B量の上限を0.002%以下にすることが好ましい。
Zrは、炭化物、窒化物を形成する元素であり、脱酸剤としても有効である。厚鋼板の結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のZrを添加することが好ましい。一方、Zrの含有量が0.30%を超えると、厚鋼板の靱性及び表面性状が劣化することがある。したがって、Zrの含有量の上限は、0.30%以下が好ましい。Zr含有量は、より好ましくは0.10以下、更に好ましくは0.05%以下とする。
Hfは、Zrと同様、炭化物、窒化物を形成する元素であり、脱酸剤としても有効である。厚鋼板の結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のHfを添加することが好ましい。一方、Hfの含有量が0.30%を超えると、厚鋼板の靱性及び表面性状が劣化することがあるため、上限を0.30%以下にすることが好ましい。Hf含有量は、より好ましくは0.10%以下、更に好ましくは0.05%以下とする。
Taは、Zr及びHfと同様、炭化物、窒化物を形成する元素であり、脱酸剤としても有効である。厚鋼板の結晶粒を微細化するには、0.0001%以上のTaの添加が好ましい。一方、Taの含有量が0.30%を超えると、厚鋼板の靱性及び表面性状が劣化することがあるため、上限は0.30%以下が好ましい。Ta含有量は、より好ましくは0.10%以下、更に好ましくは0.05%以下とする。
REMは、硫化物等、介在物の形態の制御に有効な元素であり、熱間加工性の向上に寄与する。また、微細な酸化物を生じ、結晶粒やHAZの粒径の粗大化の防止に有効である。厚鋼板の靭性を向上させるには、0.0001%以上のREMを添加することが好ましい。一方、REMを過剰に添加すると、介在物が粗大化し、靭性が損なわれることがあるため、REMの含有量を0.10%以下にすることが好ましい。REM含有量は、より好ましくは0.05%以下、更に好ましくは0.02%以下とする。
Mgは、REMと同様、硫化物等、介在物の形態の制御に有効な元素である。特に、Mgは、微細な酸化物を生じ、ピン止め効果に加えて、粒内でのフェライト変態を促進するため、結晶粒やHAZの粒径の粗大化の防止に極めて有効である。厚鋼板の靭性を向上させるには、0.0001%以上のMgを添加することが好ましい。一方、Mgを過剰に添加すると介在物が粗大化し、靭性が損なわれることがあるため、含有量の上限を0.02%以下にすることが好ましい。Mg含有量は、より好ましくは0.01%以下とする。
Caは、Mg及びREMと同様、硫化物等、介在物の形態の制御に有効な元素である。特に、Caは、粗大なMnSの生成を抑制し、硫化物の形態の制御に有効である。一方、Caを過剰に添加すると、介在物が粗大化し、靭性が損なわれることがあるため、含有量の上限を0.02%以下にすることが好ましい。Ca含有量は、より好ましくは0.01%以下とする。
鋼片の温度をAr3以下に冷却した場合は、鋼片の金属組織をオ−ステナイト単相にするため、加熱温度をAc3以上にする必要がある。音響異方性を向上させるために高温で熱間圧延を終了することが好ましく、熱間圧延の加熱温度を900℃以上とすることが好ましい。更に、熱間圧延の終了温度を高くするには、熱間圧延の加熱温度を950℃以上にすることがより好ましい。一方、熱間圧延の加熱温度が1300℃を超えると、鋼片の組織が著しく粗大となり、鋼板の結晶粒の微細化が困難になるため、熱間圧延の加熱温度の上限を1300℃以下とする。なお、加熱温度は、加熱炉内の温度であり、鋼片の中心部がこの温度に加熱されるものとする。
熱間圧延の終了温度の下限は、金属組織がオーステナイト単相である温度で熱間圧延を終了させるため、Ar3以上とする。また、熱間圧延の終了温度の下限は、より好ましくは900℃以上とする。これは、圧延の生産性を低下させる低温での制御圧延を回避し、鋼板の音響異方性を損なう圧延異方性の発現を抑制するためである。また、異方性の観点からは、オーステナイトの未再結晶温度以上で圧延を終了することが好ましい。未再結晶状態での圧延を回避するためには、950℃以上で熱間圧延を終了することがより好ましい。一方、細粒化の観点からは圧延温度は低い方がよいので、熱間圧延の終了温度の上限を1100℃以下とする。また、熱間圧延の終了温度のより好ましい上限は、1000℃以下である。
表面温度がAr3未満から制御冷却を開始すると、冷却開始前に粗大なフェライトが生成し、鋼板の強度が低下し、靱性も劣化するため、制御冷却の開始温度は表面温度でAr3以上とする。制御冷却の開始温度の上限は特に定めず、熱間圧延の終了後、直ちに制御冷却を開始してもよい。ただし、高温で制御冷却を開始すると、制御冷却を停止した際に板厚中心部と鋼板表面との温度差が大きくなる。したがって、表面の温度を600℃以上に保持してフェライトを生成させ、かつ、板厚中心部の終了温度を低下させて強度を確保するために、1000℃以下で制御冷却を開始することが好ましい。
本発明では、熱間圧延後の鋼板の結晶粒を微細化するため、制御冷却を実施する。制御冷却のうち、加速冷却は、通常、水冷で行うが、十分な細粒化の効果が得られる板厚方向の平均冷却速度として3℃/s以上を下限とする。また、制御冷却の板厚方向の平均冷却速度の下限は、より微細なフェライトを安定的に生成させるために、5℃/s以上にすることがより好ましい。より好ましくは15℃/s以上とする。本発明では、制御冷却の終了後、放冷する間にもフェライト変態が生じるため、制御冷却の板厚方向の平均冷却速度の上限は、工業的規模で実現可能なレベルとして50℃/s以下とする。制御冷却の板厚方向の平均冷却速度の上限は、30℃/s以下であってもよい。板厚方向の平均冷却速度は、板厚方向の平均温度の変化及び所要時間から算出する。なお、板厚方向の平均温度(鋼板表面から板厚中央部にかけての平均温度)は、鋼板表面の温度を基にしたシミュレーション計算などによって求める。即ち、制御冷却を開始する時の板厚方向の温度分布から平均温度を求め、制御冷却を終了した時の板厚方向の温度分布から平均温度を求め、これらの温度差を所要時間によって除して求める。
板厚方向平均の冷却終了温度は、675℃を超えると、粗大フェライトが増加し、鋼板の強度や靱性が低下する。好ましくは板厚方向平均の冷却終了温度を600℃以下とする。強度を高めるためには、板厚方向平均の冷却終了温度は低い方が好ましい。一方、板厚方向平均の冷却終了温度が450℃未満になると、ベイナイト量の増加や、マルテンサイトの生成によって延性や靱性が低下する。延性や靱性を高めるためには、板厚方向平均の冷却終了温度は高い方が好ましい。
表面の冷却終了温度は、微細なフェライトを生成させるために675℃以下とする。強度を高めるためには、適正なベイナイトが生成するように、表面の冷却終了温度を低くすることが好ましい。一方、表面の冷却終了温度が350℃未満になると、ベイナイト量の増加や、マルテンサイトの生成によって鋼板の表面が硬化し、延性や靱性が低下する。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.03〜0.25%、
Si:0.001〜0.50%、
Mn:0.5〜3.0%
を含有し、
P:0.050%以下、
S:0.050%以下、
Al:0.05%以下、
N:0.010%以下、
O:0.010%以下
に制限し、残部Fe及び不純物からなる鋼を鋳造後、そのまま、又は、一旦冷却してAc3〜1300℃に加熱し、終了温度をAr3〜1100℃の範囲内とする熱間圧延を行った後、
表面温度がAr3以上の温度から、板厚方向の平均冷却速度を3〜50℃/sとする制御冷却を開始し、
下記(1)〜(3)式によって前記表面温度T(℃)の温度履歴から算出されるフェライト生成指標SIが0.55〜2.00になるように前記制御冷却を行い、
板厚方向の平均温度が450〜675℃、表面温度が350〜675℃の範囲で前記制御冷却を終了し、
そのまま室温まで放冷する
ことを特徴とする厚鋼板の製造方法。
SI=SI1+SI2・・・(1)
SI1=∫(1/2037)×(Ar3−T)dt (ただし、T≧600℃)・・・(2)
SI2=∫(2/2037)×(650−T)dt (ただし、600℃≦T≦650℃)・・・(3) - 前記制御冷却を板厚方向の平均温度が550〜675℃、表面温度が450〜675℃の範囲で終了することを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板の製造方法。
- 前記制御冷却を板厚方向の平均温度が450〜600℃、表面温度が350〜600℃の範囲で終了することを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板の製造方法。
- 更に、前記鋼が、質量%で、
Cu:2.0%以下、
Ni:3.0%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
W:2.0%以下、
V:0.30%以下、
Nb:0.05%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.002%以下、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の厚鋼板の製造方法。 - 更に、前記鋼が、質量%で、
REM:0.10%以下、
Mg:0.02%以下、
Ca:0.02%以下、
Zr:0.30%以下、
Hf:0.30%以下、
Ta:0.30%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の厚鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016089091A JP6736959B2 (ja) | 2016-04-27 | 2016-04-27 | 厚鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016089091A JP6736959B2 (ja) | 2016-04-27 | 2016-04-27 | 厚鋼板の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017197807A true JP2017197807A (ja) | 2017-11-02 |
JP6736959B2 JP6736959B2 (ja) | 2020-08-05 |
Family
ID=60238854
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016089091A Active JP6736959B2 (ja) | 2016-04-27 | 2016-04-27 | 厚鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6736959B2 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110093556A (zh) * | 2019-03-26 | 2019-08-06 | 舞阳钢铁有限责任公司 | 一种封头用12Cr2Mo1R钢板及其生产方法 |
JP2019215227A (ja) * | 2018-06-12 | 2019-12-19 | 株式会社神戸製鋼所 | 超音波探傷方法 |
JP2020037734A (ja) * | 2018-08-30 | 2020-03-12 | 株式会社神戸製鋼所 | 母材と溶接熱影響部の靭性に優れかつ音響異方性の小さい高強度低降伏比厚鋼板およびその製造方法 |
JP7663699B2 (ja) | 2021-02-09 | 2025-04-16 | バオシャン アイアン アンド スティール カンパニー リミテッド | 耐衝突破壊性船体構造用鋼およびその製造方法 |
Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011132600A (ja) * | 2009-11-25 | 2011-07-07 | Jfe Steel Corp | 高圧縮強度耐サワーラインパイプ用溶接鋼管及びその製造方法 |
JP2012158791A (ja) * | 2011-01-31 | 2012-08-23 | Jfe Steel Corp | 高張力厚鋼板およびその製造方法 |
JP2014095146A (ja) * | 2012-10-10 | 2014-05-22 | Jfe Steel Corp | 耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた溶接構造物用鋼板およびその製造方法 |
JP2015127444A (ja) * | 2013-12-27 | 2015-07-09 | Jfeスチール株式会社 | 耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材およびその製造方法並びに耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材の判定方法 |
-
2016
- 2016-04-27 JP JP2016089091A patent/JP6736959B2/ja active Active
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011132600A (ja) * | 2009-11-25 | 2011-07-07 | Jfe Steel Corp | 高圧縮強度耐サワーラインパイプ用溶接鋼管及びその製造方法 |
JP2012158791A (ja) * | 2011-01-31 | 2012-08-23 | Jfe Steel Corp | 高張力厚鋼板およびその製造方法 |
JP2014095146A (ja) * | 2012-10-10 | 2014-05-22 | Jfe Steel Corp | 耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた溶接構造物用鋼板およびその製造方法 |
JP2015127444A (ja) * | 2013-12-27 | 2015-07-09 | Jfeスチール株式会社 | 耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材およびその製造方法並びに耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材の判定方法 |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019215227A (ja) * | 2018-06-12 | 2019-12-19 | 株式会社神戸製鋼所 | 超音波探傷方法 |
JP7080737B2 (ja) | 2018-06-12 | 2022-06-06 | 株式会社神戸製鋼所 | 超音波探傷方法 |
JP2020037734A (ja) * | 2018-08-30 | 2020-03-12 | 株式会社神戸製鋼所 | 母材と溶接熱影響部の靭性に優れかつ音響異方性の小さい高強度低降伏比厚鋼板およびその製造方法 |
JP7262288B2 (ja) | 2018-08-30 | 2023-04-21 | 株式会社神戸製鋼所 | 母材と溶接熱影響部の靭性に優れかつ音響異方性の小さい高強度低降伏比厚鋼板およびその製造方法 |
CN110093556A (zh) * | 2019-03-26 | 2019-08-06 | 舞阳钢铁有限责任公司 | 一种封头用12Cr2Mo1R钢板及其生产方法 |
JP7663699B2 (ja) | 2021-02-09 | 2025-04-16 | バオシャン アイアン アンド スティール カンパニー リミテッド | 耐衝突破壊性船体構造用鋼およびその製造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP6736959B2 (ja) | 2020-08-05 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6048626B1 (ja) | 厚肉高靭性高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP4066905B2 (ja) | 溶接熱影響部靱性に優れた低降伏比高強度高靱性鋼板の製造方法 | |
JP4808828B2 (ja) | 高周波焼入れ用鋼及び高周波焼入れ鋼部品の製造方法 | |
JP7411072B2 (ja) | 低温衝撃靭性に優れた高強度極厚物鋼材及びその製造方法 | |
JP7339339B2 (ja) | 冷間加工性及びssc抵抗性に優れた超高強度鋼材及びその製造方法 | |
JPWO2006009299A1 (ja) | 溶接熱影響部の低温靱性が優れた溶接構造用鋼およびその製造方法 | |
JP2009270194A (ja) | 低温靭性の優れた780MPa級高張力鋼板の製造方法 | |
JPH11140580A (ja) | 低温靱性に優れた高強度鋼用の連続鋳造鋳片およびその製造法、および低温靱性に優れた高強度鋼 | |
JP2019502018A (ja) | 脆性亀裂伝播抵抗性及び溶接部の脆性亀裂開始抵抗性に優れた高強度鋼材及びその製造方法 | |
JP5842574B2 (ja) | 大入熱溶接用鋼材の製造方法 | |
JP7569928B2 (ja) | 延伸率に優れた高強度厚物熱延鋼板及びその製造方法 | |
JP2017197787A (ja) | 延性に優れた高張力厚鋼板及びその製造方法 | |
JP6736959B2 (ja) | 厚鋼板の製造方法 | |
JP7082669B2 (ja) | 高強度高靭性熱延鋼板及びその製造方法 | |
JP5477089B2 (ja) | 高強度高靭性鋼の製造方法 | |
JP5958428B2 (ja) | 大入熱溶接用鋼板の製造方法 | |
JP5194572B2 (ja) | 耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法 | |
JPH10306316A (ja) | 低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼材の製造方法 | |
JP6684353B2 (ja) | 低温靭性と耐水素誘起割れ性に優れた厚板鋼材、及びその製造方法 | |
JP5157387B2 (ja) | 高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法 | |
JP2009127071A (ja) | 厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法 | |
JP5130472B2 (ja) | 耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法 | |
JP4926447B2 (ja) | 耐溶接割れ性に優れた高張力鋼の製造方法 | |
JP4264296B2 (ja) | 溶接部靭性、条切り特性に優れた低降伏比570MPa級高張力鋼及びその製造方法 | |
JP2004218081A (ja) | 高張力鋼板の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20181019 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20181206 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20190814 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20190903 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20191030 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20191227 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20200616 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20200629 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 6736959 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |