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JP2017128034A - 積層体及び積層体の製造方法 - Google Patents

積層体及び積層体の製造方法 Download PDF

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JP2017128034A JP2016008854A JP2016008854A JP2017128034A JP 2017128034 A JP2017128034 A JP 2017128034A JP 2016008854 A JP2016008854 A JP 2016008854A JP 2016008854 A JP2016008854 A JP 2016008854A JP 2017128034 A JP2017128034 A JP 2017128034A
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Abstract

【課題】本発明は、微細繊維状セルロース含有シート(繊維層)と樹脂層を有する積層体であって、より優れた密着性を有し、かつ曲げ応力付与時の密着性にも優れた積層体を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む繊維層と、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含む接着層と、樹脂層と、をこの順で有する積層体に関する。【選択図】図1

Description

本発明は、積層体及び積層体の製造方法に関する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10μm以上50μm以下の繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。
繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。また、このような微細繊維状セルロースから構成されるシートや、微細繊維状セルロース含有シートと樹脂層を含む複合体が開発されている。微細繊維状セルロースを含有するシートや複合体においては、繊維同士の接点が著しく増加することから、引張強度等が大きく向上することが知られている。また、繊維幅が可視光の波長より短くなることで、透明度が大きく向上することも知られている。
微細繊維状セルロース含有シートと樹脂層を含む複合体においては、微細繊維状セルロース含有シートと樹脂層の密着性を高めることが検討されている。例えば、特許文献1では、微細繊維状セルロース含有シートにポリカーボネートシートを加熱融着して積層体とする際に、アクリルプライマー等のプライマー処理液を含ませた微細繊維状セルロース含有シートを用いることにより密着性を高めることが検討されている。また、特許文献2においては、微細繊維状セルロース含有シートと樹脂層を、接着層を介して積層することが検討されている。特許文献2の実施例においては、接着層を構成する接着剤としてポリウレタン系の接着剤が用いられている。
特開2010−023275号公報 特開2014−065837号公報
しかしながら、従来の積層体においては、微細繊維状セルロース含有シート(繊維層)と樹脂層の密着性が十分ではなく、使用態様においてはさらなる改善が求められる場合があった。また、従来の積層体においては、曲げ応力付与時の密着性が劣る場合があり、改善が求められていた。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、微細繊維状セルロース含有シート(繊維層)と樹脂層を有する積層体であって、より優れた密着性を有し、かつ曲げ応力付与時の密着性にも優れた積層体を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む繊維層と、接着層と、樹脂層とをこの順で有する積層体において、接着層を所定の樹脂種から構成することにより、繊維層と樹脂層の密着性を高め得ることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む繊維層と、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含む接着層と、樹脂層と、をこの順で有する積層体。
[2] 樹脂層は、ポリカーボネート樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも一方を含む[1]に記載の積層体。
[3] 樹脂層は、接着層側に配される第1層と、第1層の一方の面側であって、接着層とは反対側に配される第2層とを有し、第1層は、アクリル樹脂を含み、第2層はポリカーボネート樹脂を含む[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 第1層は、アルキル(メタ)アクリレート樹脂を含む[3]に記載の積層体。
[5] 第1層は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む[3]に記載の積層体。
[6] 樹脂層は第1層と、第2層を有する共押出しフィルムである[3]〜[5]のいずれかに記載の積層体。
[7] 接着層に含まれるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、ウレタン単位とアクリル単位を含み、ウレタン単位の含有量(質量%)をPとし、アクリル単位の含有量(質量%)をQとした場合、P/Qは0.1以上0.9以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の積層体。
[8] 繊維層の密度は1.0g/cm3以上である[1]〜[7]のいずれかに記載の積層体。
[9] 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む繊維層を得る工程と、ウレタン(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物を繊維層の少なくとも一方の面上に塗工し、接着層を形成する工程と、接着層の一方の面であって、繊維層とは反対側の面に樹脂層を積層する工程と、を含む積層体の製造方法。
[10] 樹脂層は、接着層側に配される第1層と、第1層の一方の面側であって、接着層とは反対側に配される第2層とを有し、第1層は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含み、第2層はポリカーボネート樹脂を含み、樹脂層は、第2層上に、エポキシ(メタ)アクリレート含有組成物を塗工することで形成されたものである[9]に記載の積層体の製造方法。
[11] 樹脂層は、接着層側に配される第1層と、第1層の一方の面側であって、接着層とは反対側に配される第2層とを有し、第1層は、アルキル(メタ)アクリレート樹脂を含み、第2層はポリカーボネート樹脂を含み、樹脂層は、第1層と第2層を共押出しで形成されたものである[9]に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、微細繊維状セルロースを含む繊維層と、樹脂層の密着性が高められた積層体を得ることができる。さらに、本発明によれば、曲げ応力付与時の密着性にも優れた積層体を得ることができる。本発明の積層体は、密着性に優れた積層体であるため、様々な用途に適用することが可能である。
図1は、本発明の積層体の構成を説明する断面図である。 図2は、本発明の積層体の構成を説明する断面図である。 図3は、本発明の積層体の構成を説明する断面図である。 図4は、繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を含むことを意味する。
(積層体)
本発明は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース(以下、微細繊維状セルロースともいう)を含む繊維層と、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含む接着層と、樹脂層と、をこの順で有する積層体に関する。
本発明の積層体は、上記構成を有するため、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む繊維層と樹脂層の密着性に優れたものである。また、本発明の積層体は、曲げ応力付与時においても優れた密着性を発揮することができる。
図1は、本発明の積層体の構成を説明する断面図である。図1に示されているように、本発明の積層体10は、繊維層2と、接着層4と、樹脂層6をこの順で積層した構造を有する。繊維層2と樹脂層6は、接着層4を介して接着されている。
本発明の積層体は、繊維層2、接着層4及び樹脂層6を少なくとも1層ずつ有していればよいが、繊維層2を2層以上有していてもよく、接着層4を2層以上有していてもよく、樹脂層6を2層以上有するものであってもよい。例えば、図2には、樹脂層6と、接着層4を2層ずつ有する積層体10が図示されている。図2に示されているように、2層の樹脂層6は、繊維層2の両面に設けられていてもよい。この場合、繊維層2の両面には接着層4が各々設けられ、接着層4を介して樹脂層6が積層されていることが好ましい。なお、図2のような構成において、繊維層2は多層構成の繊維層であってもよい。
本発明の積層体の全体厚みは、特に制限されるものではないが、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。また、積層体の全体厚みは、20mm以下であることが好ましい。積層体の厚みは用途に応じて適宜調整することが好ましい。
積層体の繊維層の厚みは5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、繊維層の厚みは、500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。ここで、積層体を構成する繊維層の厚さは、ウルトラミクロトームUC−7(JEOL社製)によって積層体の断面を切り出し、当該断面を電子顕微鏡、拡大鏡又は目視で観察して、測定される値である。積層体に繊維層が複数層含まれている場合は、合計の繊維層の厚みが上記範囲内であることが好ましい。
積層体の接着層の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましい。また、接着層の厚みは、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。ここで、積層体を構成する接着層の厚さは、ウルトラミクロトームUC−7(JEOL社製)によって積層体の断面を切り出し、当該断面を電子顕微鏡、拡大鏡又は目視で観察して、測定される値である。積層体に接着層が複数層含まれている場合は、合計の接着層の厚みが上記範囲内であることが好ましい。
また、積層体の樹脂層の厚みは10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であることがよりさらに好ましく、200μm以上であることが特に好ましい。また、樹脂層の厚みは、15000μm以下であることが好ましく、5000μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。ここで、積層体を構成する樹脂層の厚さは、ウルトラミクロトームUC−7(JEOL社製)によって積層体の断面を切り出し、当該断面を電子顕微鏡、拡大鏡又は目視で観察して、測定される値である。積層体に樹脂層が複数層含まれている場合は、合計の樹脂層の厚みが上記範囲内であることが好ましい。
本発明の積層体において、樹脂層の厚みは繊維層の厚みの30%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましい。また、積層体が、繊維層及び樹脂層の少なくとも一方を複数有する場合、繊維層の厚さの合計に対する樹脂層の厚さの合計の比(樹脂層の厚さの合計/繊維層の厚さの合計)は、0.5以上が好ましい。繊維層の厚さの合計に対する樹脂層の厚さの合計の比を上記範囲とすることにより、積層体の機械的強度を高めることができる。
積層体の全光線透過率は、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、85%以上が特に好ましい。積層体の全光線透過率を上記範囲とすることにより、従来は透明なガラスが適用されていた用途に本発明の積層体を適用することが容易になる。ここで、全光線透過率は、JIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
積層体のヘーズは、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。ヘーズが低いほど、従来は透明なガラスが適用されていた用途に本発明の積層体を適用することが容易になる。ここで、ヘーズは、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
積層体の23℃、相対湿度50%における引張弾性率は、2.5GPa以上であることが好ましく、5.0GPa以上であることがより好ましく、10GPa以上であることがさらに好ましい。また、積層体の23℃、相対湿度50%における引張弾性率は、30GPa以下であることが好ましく、25GPa以下であることがより好ましく、20GPa以下であることがさらに好ましい。積層体の引張弾性率は、JIS P 8113に準拠して測定される値である。
(樹脂層)
樹脂層は、天然樹脂や合成樹脂等の樹脂を主成分とする層である。ここで、主成分とは、樹脂層の全質量に対して、50質量%以上含まれている成分を指す。樹脂の含有量は、樹脂層の全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、樹脂の含有量は、100質量%とすることもでき、95質量%以下であってもよい。
天然樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂を挙げることができる。
合成樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、合成樹脂はポリカーボネート樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリカーボネート樹脂であることがより好ましい。なお、アクリル樹脂は、ポリアクリロニトリル及びポリ(メタ)アクリレートから選択される少なくともいずれか1種であることが好ましい。
樹脂層を構成するポリカーボネート樹脂としては、例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。これらの具体的なポリカーボネート系樹脂は公知であり、例えば特開2010−023275号公報に記載されたポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
樹脂層は、単層構造であってもよいが、多層構造であってもよい。樹脂層が多層構造である場合、樹脂層は、接着層側に配される第1層と、第1層の一方の面側であって、接着層とは反対側に配される第2層とを有することが好ましい。
図3は、樹脂層2が第1層11と、第2層12を有する場合の積層体10の構成を説明する断面図である。図3に示されているように、第1層11は繊維層4と接するように積層され、積層体10を構成する。
樹脂層が多層構造である場合、第1層は、アクリル樹脂を含むことが好ましい。また、第2層は、ポリカーボネート樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも一方を含むことが好ましく、ポリカーボネート樹脂を含むことがより好ましい。樹脂層が上記のような多層構造を有することにより、接着層を介して接着する樹脂層と繊維層の密着性をより効果的に高めることができる。
樹脂層が上述したような第1層と第2層を有する場合は、第1層はアクリル樹脂を含むことが好ましい。アクリル樹脂は、例えば、アルキル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アルコキシ基、エチレンオキシド基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ウレタン基及びフェニル基から選択される少なくとも1種を有するアクリルモノマーの重合体であることが好ましい。中でも、アクリル樹脂は、アルキル基及びエポキシ基から選択される少なくとも1種を有するアクリルモノマーの重合体であることがより好ましい。すなわち、第1層は、アルキル(メタ)アクリレート樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、アルキル(メタ)アクリレートはメチル(メタ)アクリレート又はエチル(メタ)アクリレートであることが好ましく、メチル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、上記エポキシ(メタ)アクリレートは、ウレタン(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート以外の成分がグラフト重合してなる重合体、およびエポキシ(メタ)アクリレートと他のモノマーとが共重合してなる共重合体を含む。ただし、当該共重合体中のエポキシ(メタ)アクリレート以外の成分の含有量は、50質量%以下であることが好ましい。
第2層は、ポリカーボネート樹脂を含むことが好ましく、好ましいポリカーボネート樹脂は上述した通りである。
樹脂層が第1層と第2層を有する場合、このような層構成はいずれか一方の層に他方の層を塗工することによって形成してもよいし、第1層と第2層を構成する樹脂を共押出しすることによって層構成を形成してもよい。例えば、第1層がアルキル(メタ)アクリレート樹脂を含む場合、樹脂層は共押出しによって形成されることが好ましい。具体的には、アルキル(メタ)アクリレート樹脂と、ポリカーボネート樹脂を共押出しすることにより、樹脂層を形成することができる。すなわち、樹脂層は共押出しフィルムであってもよい。
また、第1層がエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む場合、第2層の少なくとも一方の面上に、第1層を構成するモノマー、またはポリマー成分を含む樹脂組成物を塗工することで樹脂層を形成してもよい。第1層を構成するモノマー、またはポリマー成分を含む樹脂組成物を塗工する塗工機としては、例えば、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。厚みをより均一にできることから、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーターが好ましい。
塗工後には、硬化工程を設けることが好ましい。硬化工程としては、例えば、加熱工程や光照射工程等を挙げることができる。本発明において、第2層としてポリカーボネートフィルムを用い、フィルム上にエポキシ(メタ)アクリレート樹脂組成物を塗工した後には、紫外線照射工程を設けることが好ましい。
樹脂層の繊維層側の面には表面処理を施してもよい。また、第2層の一方の面であって、第1層側の面に表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ放電処理、UV照射処理、電子線照射処理、火炎処理等を挙げることができる。中でも、表面処理は、コロナ処理及びプラズマ放電処理から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、プラズマ放電処理は真空プラズマ放電処理であることが好ましい。
樹脂層の繊維層側の面は微細凹凸構造を形成してもよい。また、第2層の一方の面であって、第1層側の面に表面処理を施してもよい。該面が微細凹凸構造を有することにより、繊維層と樹脂層の密着性、もしくは、第1層と第2層の密着性をより効果的に高めることができる。樹脂層の繊維層側の面が微細凹凸構造を有する場合、このような構造は、例えば、ブラスト加工処理、エンボス加工処理、エッチング処理、コロナ処理、プラズマ放電処理等の処理工程により形成されることが好ましい。
なお、本明細書において、微細凹凸構造とは、任意箇所に引いた長さ1mmの一本の直線上に存在する凹部の数が10個以上である構造をいう。凹部の数を測定する際には、積層体をイオン交換水中に24時間浸漬した後、樹脂層から繊維層をはく離し、その後樹脂層の繊維層側の面を触針式表面粗さ計(小坂研究所社製、サーフコーダシリーズ)で走査することにより測定ができる。凹凸のピッチがサブミクロン、ナノオーダーの極めて小さいものである場合、走査型プローブ顕微鏡(日立ハイテクサイエンス社製、AFM5000II、およびAFM5100N)の観察像から凹凸の数を測定することができる。
樹脂層には合成樹脂以外の任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、例えば、フィラー、顔料、染料、紫外線吸収剤等の樹脂フィルム分野で使用される公知成分が挙げられる。
(接着層)
本発明の積層体は接着層を含む。接着層はウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含む。ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート樹脂である。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂はウレタン単位とアクリル単位を含む。ここで、ウレタン単位とは、下記構造式で表される単位である。なお、下記構造式において、R1は2つ以上のイソシアネート構造またはイソシアネート構造に由来する構造を含む連結基であり、R2は2つ以上のヒドロキシル基またはヒドロキシル基に由来する基を含む連結基である。
Figure 2017128034
また、アクリル単位とは、下記構造式で表される単位である。なお、下記構造式においてR1は水素原子またはメチル基を表す。
Figure 2017128034
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂において、ウレタン単位の含有量(質量%)をPとし、アクリル単位の含有量(質量%)をQとした場合、P/Qは0.1以上0.9以下であることが好ましい。P/Qは、0.8以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。ウレタン単位とアクリル単位を上記比率で含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いることにより、樹脂層と繊維層の密着性をより効果的に高めることができる。
また、樹脂層が第1層と第2層を有する場合であって、第1層がアルキル(メタ)アクリレート樹脂を含む場合は、P/Qは0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。ウレタン単位とアクリル単位を上記比率で含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いることにより、樹脂層と繊維層の密着性をより効果的に高めることができる。
ここで、ウレタン単位の含有量(質量%)は、核磁気共鳴装置、赤外分光分析装置、または微量窒素分析装置による分析によって測定することができる。アクリル単位の含有量(質量%)は、核磁気共鳴装置、赤外分光分析装置によって測定することができる。
接着層に含まれるウレタン(メタ)アクリレート樹脂のガラス転移温度は50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂のガラス転移温度は、200℃以下であることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート樹脂のガラス転移温度を上記範囲内とすることにより、樹脂層と繊維層の密着性をより効果的に高めることができる。
(繊維層)
繊維層は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む。繊維層に含まれる微細繊維状セルロースの含有量は、繊維層の全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
繊維層の密度は、1.0g/cm3以上であることが好ましく、1.2g/cm3以上であることがより好ましく、1.4g/cm3以上であることがさらに好ましい。また、繊維層の密度は、1.7g/cm3以下であることが好ましく、1.65g/cm3以下であることがより好ましく、1.6g/cm3以下であることがさらに好ましい。積層体に繊維層が2層以上含まれている場合は、各々の繊維層の密度が上記範囲内であることが好ましい。
繊維層の密度は、繊維層の坪量と厚さから、JIS P 8118に準拠して算出される。繊維層の坪量は、ウルトラミクロトームUC−7(JEOL社製)によって積層体の繊維層のみが残るように切削し、JIS P 8124に準拠し、算出することができる。なお、繊維層が微細繊維状セルロース以外の任意成分を含む場合は、繊維層の密度は、微細繊維状セルロース以外の任意成分を含む密度である。
本発明においては、繊維層は非多孔性の層である点にも特徴がある。ここで、繊維層が非多孔性であるとは、繊維層全体の密度が1.0g/cm3以上であることを意味する。繊維層全体の密度が1.0g/cm3以上であれば、繊維層に含まれる空隙率が、所定値以下に抑えられていることを意味し、多孔性のシートや層とは区別される。
また、繊維層が非多孔性であることは、空隙率が15体積%以下であることからも特徴付けられる。ここでいう繊維層の空隙率は簡易的に下記式(a)により求めるものである。
式(a):空隙率(体積%)=[1−B/(M×A×t)]×100
ここで、Aは繊維層の面積(cm2)、tは繊維層の厚み(cm)、Bは繊維層の質量(g)、Mはセルロースの密度である。
<微細繊維状セルロース>
微細繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましい。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを含有する繊維層は高強度が得られる傾向がある。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上10nm以下であるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細繊維状セルロースの平均繊維幅(単に、「繊維幅」ということもある。)はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
微細繊維状セルロースの繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上800μm以下がさらに好ましく、0.1μm以上600μm以下が特に好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制でき、また微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることができる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、TEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。
微細繊維状セルロースが含有する結晶部分の比率は、本発明においては特に限定されないが、X線回折法によって求められる結晶化度が60%以上であるセルロースを使用することが好ましい。結晶化度は、好ましくは65%以上であり、より好ましくは70%以上であり、この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
微細繊維状セルロースは、置換基を有するものであることが好ましく、置換基はアニオン基であることが好ましい。アニオン基としては、例えば、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基又はカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある)、及び、スルホン基又はスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基で及びカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることが特に好ましい。
微細繊維状セルロースは、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するものであることが好ましい。リン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であっても、非イオン性置換基であってもよい。
本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
Figure 2017128034
式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);αn(n=1〜nの整数)およびα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化試薬」又は「化合物A」という)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化試薬は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、繊維原料のスラリーにリン酸化試薬の粉末や水溶液を添加してもよい。
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(リン酸化試薬又は化合物A)を反応させることにより行うことができる。なお、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」という)の存在下で行ってもよい。
化合物Aを化合物Bの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、繊維原料のスラリーに化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。繊維原料の形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
本実施態様で使用する化合物Aは、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、またはリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから化合物Aは水溶液として用いることが好ましい。化合物Aの水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は特に限定されないが、化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。繊維原料に対するリン原子の添加量が100質量%を超えると、収率向上の効果は頭打ちとなり、使用する化合物Aのコストが上昇する。一方、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記下限値以上とすることにより、収率を高めることができる。
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、1−エチル尿素などが挙げられる。
化合物Bは化合物A同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
加熱処理の際、化合物Aを添加した繊維原料スラリーに水が含まれている間において、繊維原料を静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aが繊維原料表面に移動する。そのため、繊維原料中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、繊維表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥による繊維原料中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状の繊維原料を用いるか、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は攪拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもでき、軸比の高い微細繊維を得ることができる。
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるが繊維原料スラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本発明では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.1mmol/g以上3.5mmol/g以下であることが好ましく、0.14mmol/g以上2.5mmol/g以下がより好ましく、0.2mmol/g以上2.0mmol/g以下がさらに好ましく、0.2mmol/g以上1.8mmol/g以下よりさらに好ましく、0.4mmol/g以上1.8mmol/g以下が特に好ましく、最も好ましくは0.6mmol/g以上1.8mmol/g以下である。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースのスラリーの粘度を適切な範囲に調整することができる。
リン酸基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。具体的には、解繊処理工程により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーをイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定することができる。
伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図4に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。すなわち、3つの領域が現れる。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。すなわち、図4に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、複数回繰り返すこともできる。この場合、より多くのリン酸基が導入されるので好ましい。
<アルカリ処理>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基導入工程と、後述する解繊処理工程の間にアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、リン酸基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、リン酸基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、リン酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、解繊処理工程の前に、アルカリ処理済みリン酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
<解繊処理>
リン酸基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、またはt−ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
本発明では、微細繊維状セルロースを濃縮、乾燥させた後に解繊処理を行ってもよい。この場合、濃縮、乾燥の方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる脱水機、プレス、乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、およびWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。また、濃縮した微細繊維状セルロースをシート化してもよい。該シートを粉砕して解繊処理を行うこともできる。
微細繊維状セルロースを粉砕する際に粉砕に用いる装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできるが特に限定されない。
上述した方法で得られたリン酸基を有する微細繊維状セルロース含有物は、微細繊維状セルロース含有スラリーであり、所望の濃度となるように、水で希釈して用いてもよい。
<任意成分>
繊維層には、微細繊維状セルロース以外の任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、例えば、親水性高分子や有機イオン等が挙げられる。親水性高分子は、親水性の含酸素有機化合物(但し、上記セルロース繊維は除く)であることが好ましい。含酸素有機化合物は非繊維状であることが好ましく、このような非繊維状の含酸素有機化合物には、微細繊維状セルロースや熱可塑性樹脂繊維は含まれない。
含酸素有機化合物は、親水性の有機化合物であることが好ましい。親水性の含酸素有機化合物は、繊維層の強度、密度及び化学的耐性などを向上させることができる。親水性の含酸素有機化合物は、たとえばSP値が9.0以上であることが好ましい。また、親水性の含酸素有機化合物は、たとえば100mlのイオン交換水に含酸素有機化合物が1g以上溶解するものであることが好ましい。
含酸素有機化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)等の親水性高分子;グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール等の親水性低分子が挙げられる。これらの中でも、繊維層の強度、密度、化学的耐性などを向上させる観点から、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、グリセリン、ソルビトールが好ましく、ポリエチレングリコール及びポリエチレンオキサイドから選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリエチレングリコールであることがさらに好ましい。
含酸素有機化合物は、分子量が5万以上800万以下の有機化合物高分子であることが好ましい。含酸素有機化合物の分子量は、10万以上500万以下であることも好ましいが、例えば分子量が1000未満の低分子であってもよい。
繊維層に含まれる含酸素有機化合物の含有量は、繊維層に含まれる微細繊維状セルロース100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。含酸素有機化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、高い透明性と強度を有する積層体を形成することができる。
有機イオンとしては、テトラアルキルアンモニウムイオンやテトラアルキルホスホニウムイオンを挙げることができる。テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、ラウリルトリメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、オクチルジメチルエチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルエチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムイオン、トリブチルベンジルアンモニウムイオンが挙げられる。テトラアルキルホスホニウムイオンとしては、例えばテトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラプロピルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、およびラウリルトリメチルホスホニウムイオンが挙げられる。また、テトラプロピルオニウムイオン、テトラブチルオニウムイオンとして、それぞれテトラn−プロピルオニウムイオン、テトラn−ブチルオニウムイオンなども挙げることができる。
(積層体の製造方法)
本発明は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む繊維層を得る工程と、ウレタン(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物を繊維層の少なくとも一方の面上に塗工し、接着層を形成する工程と、接着層の一方の面であって、繊維層とは反対側の面に樹脂層を積層する工程と、を含む積層体の製造方法に関するものでもある。
<繊維層を得る工程>
繊維層(以下、微細繊維状セルロース含有シートともいう)を得る工程は、微細繊維状セルロース分散液(微細繊維状セルロース含有スラリー)を基材上に塗工する工程又は、微細繊維状セルロース分散液を抄紙する工程を含むことが好ましい。中でも、微細繊維状セルロース含有シートの製造工程は微細繊維状セルロース分散液を基材上に塗工する工程を含むことが好ましい。
<塗工工程>
塗工工程は、微細繊維状セルロース分散液を基材上に塗工し、これを乾燥して形成された微細繊維状セルロース含有シートを基材から剥離することにより、シートを得る工程である。塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。塗工する微細繊維状セルロース分散液の濃度は特に限定されないが、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。
微細繊維状セルロース分散液には、含酸素有機化合物が含有されていることが好ましい。含酸素有機化合物の含有量は、微細繊維状セルロース分散液に含まれる微細繊維状セルロース100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
塗工工程で用いる基材の質は、特に限定されないが、微細繊維状セルロース分散液に対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができて良いが、乾燥後に形成されたシートが容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂板または金属板が好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミ板、亜鉛版、銅版、鉄板等の金属板および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を用いることができる。
塗工工程において、微細繊維状セルロース分散液の粘度が低く、基材上で展開してしまう場合、所定の厚み、坪量の微細繊維状セルロース含有シートを得るため、基材上に堰止用の枠を固定して使用してもよい。堰止用の枠の質は特に限定されないが、乾燥後に付着するシートの端部が容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂板または金属板を成形したものが好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミ板、亜鉛版、銅版、鉄板等の金属板および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を成形したもの用いることができる。
微細繊維状セルロース分散液を塗工する塗工機としては、例えば、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。厚みをより均一にできることから、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーターが好ましい。
塗工温度は特に限定されないが、20℃以上45℃以下であることが好ましい。塗工温度が上記下限値以上であれば、微細繊維状セルロース分散液を容易に塗工でき、上記上限値以下であれば、塗工中の分散媒の揮発を抑制できる。
塗工工程においては、シートの仕上がり坪量が10g/m2以上100g/m2以下になるように微細繊維状セルロース分散液を塗工することが好ましい。坪量が上記範囲内となるように塗工することで、強度に優れた繊維層が得られる。
微細繊維状セルロース含有シートの製造工程は、基材上に塗工した微細繊維状セルロース分散液を乾燥させる工程を含むことが好ましい。乾燥方法としては、特に限定されないが、非接触の乾燥方法でも、シートを拘束しながら乾燥する方法の何れでもよく、これらを組み合わせてもよい。
非接触の乾燥方法としては、特に限定されないが、熱風、赤外線、遠赤外線または近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができる。加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができるが、特に限定されない。加熱乾燥法における加熱温度は特に限定されないが、20℃以上150℃以下とすることが好ましく、25℃以上105℃以下とすることがより好ましい。加熱温度を上記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができ、上記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制及び微細繊維状セルロースが熱によって変色することを抑制できる。
乾燥後に、得られた微細繊維状セルロース含有シートを基材から剥離するが、基材がシートの場合には、微細繊維状セルロース含有シートと基材とを積層したまま巻き取って、微細繊維状セルロース含有シートの使用直前に微細繊維状セルロース含有シートを工程基材から剥離してもよい。
<抄紙工程>
微細繊維状セルロース含有シートの製造工程は、微細繊維状セルロース分散液を抄紙する工程を含んでもよい。抄紙工程で抄紙機としては、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等公知の抄紙を行ってもよい。
抄紙工程では、微細繊維状セルロース分散液をワイヤー上で濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、プレス、乾燥することでシートを得る。微細繊維状セルロース分散液の濃度は特に限定されないが、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。また、微細繊維状セルロース分散液には、含酸素有機化合物が含有されていることが好ましい。含酸素有機化合物の含有量は、上述した通りである。
微細繊維状セルロース分散液を濾過、脱水する場合、濾過時の濾布としては特に限定されないが、微細繊維状セルロースは通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては特に限定されないが、有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。具体的には孔径0.1μm以上20μm以下、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1μm以上20μm以下、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられるが、特に限定されない。
微細繊維状セルロース分散液からシートを製造する方法としては、特に限定されないが、例えばWO2011/013567に記載の製造装置を用いる方法等が挙げられる。この製造装置は、微細繊維状セルロース分散液を無端ベルトの上面に吐出し、吐出された微細繊維状セルロース分散液から分散媒を搾水してウェブを生成する搾水セクションと、ウェブを乾燥させて繊維シートを生成する乾燥セクションとを備えている。搾水セクションから乾燥セクションにかけて無端ベルトが配設され、搾水セクションで生成されたウェブが無端ベルトに載置されたまま乾燥セクションに搬送される。
本発明において使用できる脱水方法としては特に限定されないが、紙の製造で通常に使用している脱水方法が挙げられ、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、ロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、乾燥方法としては特に限定されないが、紙の製造で用いられている方法が挙げられ、例えば、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーターなどの方法が好ましい。
<接着層を形成する工程>
接着層を形成する工程では、ウレタン(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物を繊維層の少なくとも一方の面上に塗工する。樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートを少なくとも含み、さらに、イソシアネート化合物等の架橋剤を含むことが好ましい。また、樹脂組成物はウレタン(メタ)アクリレートのアクリル単位の重合反応を行うため、重合開始剤を含有してもよい。さらに、樹脂組成物は塗工性を調整するため、任意の希釈溶媒を含有してもよい。
ウレタン(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物を塗工する塗工機としては、例えば、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。
塗工後は樹脂を硬化させる工程を設けることが好ましい。硬化工程では、20℃以上150℃以下になるように加熱することが好ましい。加熱時間は0.1時間以上10時間以下であることが好ましい。
<樹脂層を積層する工程>
樹脂層を積層する工程では、接着層の一方の面であって、繊維層とは反対側の面に樹脂層を積層する。すなわち、樹脂層を積層する工程では、接着層を介して、繊維層と樹脂層を接着する。樹脂層を積層する工程では、接着層を介して、繊維層と樹脂層を積層した後に、繊維層側と樹脂層側から金属板等の板状物で挟み、プレスすることが好ましい。また、プレス時には加熱することも好ましい。この場合のプレス圧は、0.1MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1MPa以上であることがさらに好ましく、3MPa以上であってもよい。また、プレス圧は、20MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましい。加熱温度は20℃以上250℃以下であることが好ましい。プレス時間は、10秒以上10分以下であることが好ましい。
本発明の積層体の製造工程は、樹脂層を積層する工程の前に、第1層と、第1層の一方の面側であって、接着層とは反対側に配される第2層とを有する樹脂層を形成する工程をさらに含むことが好ましい。この場合、樹脂層は、第1層と第2層のいずれか一方の層に他方の層を塗工することによって形成されてもよく、第1層と第2層を構成する樹脂を共押出しすることによって形成されてもよい。
第1層がエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む場合は、樹脂層を形成する工程は、第2層上に、エポキシ(メタ)アクリレート含有組成物を塗工する工程を含むことが好ましい。この場合、第2層はポリカーボネート樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも一方を含むことが好ましく、ポリカーボネート樹脂を含むことがより好ましい。すなわち、樹脂層の第1層は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含み、第2層はポリカーボネート樹脂を含み、樹脂層は、前記第2層上に、エポキシ(メタ)アクリレート含有組成物を塗工することで形成されたものであることが好ましい。
エポキシ(メタ)アクリレート含有組成物は、エポキシ(メタ)アクリレートを少なくとも含むことが好ましい。また、エポキシ(メタ)アクリレート含有組成物はエポキシ(メタ)アクリレートのアクリル単位の重合反応、およびエポキシ基を基点とした重合反応を行うため、重合開始剤を含有してもよい。さらに、エポキシ(メタ)アクリレート含有組成物は塗工性を調整するため、任意の希釈溶媒を含有してもよい。
第1層がアルキル(メタ)アクリレート樹脂を含む場合は、樹脂層を形成する工程は、第1層と第2層を共押出しで形成する工程であることが好ましい。この場合、第2層はポリカーボネート樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも一方を含むことが好ましく、ポリカーボネート樹脂を含むことがより好ましい。すなわち、樹脂層の第1層は、アルキル(メタ)アクリレート樹脂を含み、第2層はポリカーボネート樹脂を含み、樹脂層は、第1層と第2層を共押出しで形成されたものであることが好ましい。
共押出しで形成する工程では、例えば、アルキル(メタ)アクリレート樹脂と、ポリカーボネート樹脂を共押出しすることにより、樹脂層を形成することができる。
樹脂層を形成する工程では、樹脂層の少なくとも一方の面に表面処理を施してもよく、樹脂層中の第2層の少なくとも一方の面に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ放電処理、UV照射処理、電子線照射処理、火炎処理等を施すことができる。
また、樹脂層を形成する工程では、微細凹凸構造を形成する工程を含んでもよく、樹脂層中の第2層の少なくとも一方の面に微細凹凸構造を形成する工程を含んでもよい。微細凹凸構造を形成する工程としては、ブラスト加工処理、エンボス加工処理、エッチング処理、コロナ処理、プラズマ放電処理等を挙げるこことができる。
積層体の製造方法としては、上述した方法以外に、射出成形用の金型内に繊維層と接着層を有する積層シートを接着層が露出するように設置して、当該金型内に加熱されて溶融した樹脂を射出して、接合させる方法も挙げられる。
(無機膜積層体)
本発明の積層体は、さらに無機膜(以下、無機層ともいう)を有していてもよい。無機層は、繊維層側に積層されてもよく、樹脂層側に積層されてもよい。また、無機層は、積層体の両側に積層されてもよい。
無機層を構成する物質としては、特に限定されないが、例えばアルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン;これらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、もしくは酸化炭化窒化物;またはこれらの混合物が挙げられる。高い防湿性が安定に維持できるとの観点からは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、またはこれらの混合物が好ましい。
無機層の形成方法は、特に限定されない。一般に、薄膜を形成する方法は大別して、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD)と物理成膜法(Physical Vapor Deposition、PVD)とがあるが、いずれの方法を採用してもよい。CVD法としては、具体的には、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。PVD法としては、具体的には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられる。
また、無機層の形成方法としては、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition、ALD)を採用することもできる。ALD法は、形成しようとする膜を構成する各元素の原料ガスを、層を形成する面に交互に供給することにより、原子層単位で薄膜を形成する方法である。成膜速度が遅いという欠点はあるが、プラズマCVD法以上に、複雑な形状の面でもきれいに覆うことができ、欠陥の少ない薄膜を成膜することが可能であるという利点がある。また、ALD法には、膜厚をナノオーダーで制御することができ、広い面を覆うことが比較的容易である等の利点がある。さらにALD法は、プラズマを用いることにより、反応速度の向上、低温プロセス化、未反応ガスの減少が期待できる。
無機層の厚みは、特に限定されないが、例えば、防湿性能の発現を目的とする場合は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。無機層の厚みは、透明性、フレキシブル性の観点からは、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、600nm以下であることがさらに好ましい。
(用途)
本発明の積層体の好ましい実施形態は、透明で機械的強度が高く、ヘーズの小さい積層体である。優れた光学特性を活かす観点から、各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池、等の光透過性基板の用途に適している。また、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適している。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1>
[リン酸化]
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93%、坪量208g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を使用した。上記針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素200質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒間乾燥・加熱処理し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入した。このときのリン酸基の導入量は、0.98mmol/gであった。
なお、リン酸基の導入量は、セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024:コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図4に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。
[アルカリ処理及び洗浄]
次いで、リン酸基を導入したセルロースに5000mlのイオン交換水を加え、撹拌洗浄後、脱水した。脱水後のパルプを5000mlのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液をpHが12以上13以下になるまで少しずつ添加して、パルプ分散液を得た。その後、このパルプ分散液を脱水し、5000mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。この脱水洗浄をさらに1回繰り返した。
[機械処理]
洗浄脱水後に得られたパルプにイオン交換水を添加して、固形分濃度が1.0質量%のパルプ分散液とした。このパルプ分散液を、高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社製、Panda Plus 2000)を用いて処理し、セルロース分散液を得た。高圧ホモジナイザーを用いた処理においては、操作圧力1200barにてホモジナイジングチャンバーを5回通過させた。さらに、このセルロース分散液を湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)を用いて処理し、微細繊維状セルロース分散液(A)を得た。湿式微粒化装置を用いた処理においては、245MPaの圧力にて処理チャンバーを5回通過させた。微細繊維状セルロース分散液(A)に含まれる微細繊維状セルロースの平均繊維幅は4nmであった。
[繊維層の形成]
微細繊維状セルロース分散液(A)の固形分濃度が0.5質量%となるよう濃度調整を行った。その後、微細繊維状セルロース分散液(A)100質量部に対して、ポリエチレンオキサイド(住友精化社製、PEO−18)の0.5質量%水溶液を20質量部添加し、微細繊維状セルロース分散液(B)を得た。次いで、セルロース繊維含有層(微細繊維状セルロース分散液(B)の固形分から構成される層)の仕上がり坪量が50g/m2になるように微細繊維状セルロース分散液(B)を計量して、市販のアクリル板に塗工し、35℃、相対湿度15%の恒温恒湿器にて乾燥した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の金枠(内寸が180mm×180mmの金枠)を配置した。以上の手順により、繊維層(セルロース繊維含有層)を得た。
[接着層の積層]
ウレタン/アクリル比率が2/8であるウレタンアクリレート(大成ファインケミカル社製、アクリット8UA−347A)100質量部、イソシアヌレート化合物(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートTPA−100)9.7質量部を混合し、樹脂組成物Aを得た。次いで、繊維層の一方の面上に、樹脂組成物Aをバーコーターにて塗布し、100℃の恒温乾燥機で1時間乾燥させた。上記の手順により、繊維層の一方の面上に接着層が積層された積層シートAを得た。
[樹脂層の形成]
エポキシウレタンアクリレート(荒川化学工業社製、ビームセット371)39質量部、メチルエチルケトン21質量部、ラジカル重合開始剤(BASF社製、イルガキュア184)2質量部を混合し、樹脂組成物Bを得た。次いで、ポリカーボネートフィルム(帝人社製、パンライトPC−2151:厚み300μm)の一方の面上に、樹脂組成物Bをバーコーターにて塗布し、3分間乾燥させた。次いで、UVコンベア装置(アイグラフィックス社製、ECS−4011GX)を用いて500mJ/cm2の紫外線を照射し、樹脂組成物Bを硬化させた。上記の手順により、ポリカーボネートフィルム上にエポキシウレタンアクリレート樹脂層を有する樹脂層を形成した。
[積層シートAと樹脂層の積層]
上記積層シートAと、樹脂層を各々100mm角に切り出した。次いで、積層シートAの接着層を積層した面と、樹脂層のエポキシウレタンアクリレート樹脂層面が接するように重ね、厚み2mm、寸法200mm×200mmのステンレス板で挟んだ。なお、ステンレス板としては、離型剤(オーデック社製、テフリリーズ)を挟持面に塗布したものを使用した。その後、常温に設定したミニテストプレス(東洋精機工業社製、MP−WCH)に挿入して1MPaのプレス圧力下、3分かけて180℃まで昇温した。この状態で30秒間保持した後、5分かけて30℃まで冷却した。上記の手順により、繊維層が、接着層を介して樹脂層と積層された積層体を得た。
<実施例2>
実施例1において、積層シートAと樹脂層の積層の際、プレス圧力を1MPaから5MPaに変更した。その他の手順は実施例1と同様にし、繊維層が、接着層を介して樹脂層と積層された積層体を得た。
<実施例3>
実施例1の接着層の積層の際、ウレタン/アクリル比率が2/8であるウレタンアクリレートの代わりに、ウレタン/アクリル比率が4/6であるウレタンアクリレート(大成ファインケミカル社製、アクリット8UA−540)を使用した。その他の手順は実施例1と同様にし、繊維層が、接着層を介して樹脂層と積層された積層体を得た。
<実施例4>
実施例3において、積層シートAと樹脂層の積層の際、プレス圧力を1MPaから5MPaに変更した。その他の手順は実施例1と同様にし、繊維層が、接着層を介して樹脂層と積層された積層体を得た。
<実施例5>
実施例2において、ポリカーボネートフィルム上にエポキシウレタンアクリレート樹脂層を有する樹脂層の代わりに、ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂を共押出しすることで形成された共押出しフィルム(ユーピロンMR−DF02U:厚み300μm)を使用した。積層シートAと樹脂層の積層の際には、共押出しフィルムのアクリル樹脂側の面と、積層シートAの接着層側の面が接するように重ねた。その他の手順は実施例2と同様にし、繊維層が、接着層を介して樹脂層と積層された積層体を得た。
<比較例1>
実施例1において、接着層の積層を行わなかった。また、樹脂層の形成において、樹脂組成物Bの塗工を行わなかった。その他の手順は実施例1と同様にし、繊維層が、接着層を介さずに樹脂層と積層された積層体を得た。
<比較例2>
実施例2において、接着層の積層の際、樹脂組成物Aの構成を、アクリロイル基がグラフト重合したアクリル樹脂(大成ファインケミカル社製、アクリット8KX−012C)100質量部と、イソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ社製、TPA−100)38質量部、ラジカル重合開始剤(BASF社製、イルガキュア184)2質量部の混合物とした。その他の手順は実施例2と同様にし、繊維層が、接着層を介して樹脂層と積層された積層体を得た。
<測定>
実施例及び比較例で得た積層体を以下の方法にて評価した。
[積層体の厚み]
積層体の厚みを触針式厚さ計(マール社製、ミリトロン1202D)で測定した。
[繊維層(セルロース繊維含有層)の厚み]
積層を行う前に、繊維層の厚みを触針式厚さ計(マール社製、ミリトロン1202D)で測定し、積層体中の繊維層の厚みとした。
[接着層の厚み]
積層シートAと樹脂層の積層を行う前に、積層シートAの厚みを触針式厚さ計(マール社製、ミリトロン1202D)で測定し、積層シートAの厚みから、繊維層の厚みを減じて、積層体中の接着層の厚みを算出した。
[樹脂層の厚み]
積層体の厚みから、繊維層の厚みと、接着層の厚みを減じて、積層体中の樹脂層の厚みを算出した。
[繊維層(セルロース繊維含有層)の密度]
繊維層の坪量(50g/m2)を繊維層の厚みで除し、繊維層の密度とした。
<評価>
実施例及び比較例で得た積層体を以下の方法にて評価した。
[繊維層と樹脂層の密着性]
JIS K 5400に準拠し、実施例及び比較例の積層体の繊維層に、1mm2のクロスカットを100個入れた。次いで、セロハンテープ(ニチバン社製)をその上に貼り付け、1.5kg/cm2の荷重で押し付けた後、90°方向にはく離した。はく離したマス数により、繊維層と樹脂層の密着性を評価した。
[繊維層と樹脂層の曲げ応力付与時の密着性]
実施例及び比較例の積層体を、繊維層を内側にして180°折り曲げて破壊した。破壊後の積層体の破壊挙動を観察し、下記の評価基準にしたがって評価し、繊維層と樹脂層の曲げ応力付与時の密着性の指標とした。
◎:はく離を生じる部位が観察されず、破壊した後も積層構成を維持する。
○:破壊が生じた部位には軽微なはく離が観察されるが、積層構成を維持する。
×:はく離が発生し、積層構成が維持されない。
[積層体の全光線透過率]
JIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて積層体の全光線透過率を評価した。
[積層体のヘーズ]
JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて積層体のヘーズを評価した。
Figure 2017128034
表1から明らかなように、接着層としてウレタンアクリレート樹脂層を形成した実施例では、透明性を維持したまま、繊維層と樹脂層の密着性が良好な積層体が得られた。この密着性は、曲げ応力を付与した際も良好であった。一方で、接着層を形成しなかった比較例1では、透明性は維持していたものの、繊維層と樹脂層の密着性が不良であり、実用上の問題が懸念される結果となった。また、接着層としてウレタンアクリレート樹脂層を形成しなかった比較例2でも、繊維層と樹脂層の密着性が不良であった。
<実施例6(多層積層体の製造例1)>
下記の手順で繊維層の両面に樹脂層が積層された多層積層体が得られる。
実施例1〜5のいずれかで得られた積層体を2枚用意し、各々の繊維層に、バーコーターにて水を塗工する。次いで、2枚の積層体の繊維層面を貼り合わせ、一方の積層体の樹脂層側からゴムローラーを押し当てて加圧する。さらに、貼り合わせた積層体を恒温乾燥機にて100℃で1時間乾燥することで、繊維層の両面に樹脂層が積層された多層積層体が得られる。
<実施例7(多層積層体の製造例2)>
実施例1〜5のいずれかで得られた積層体を2枚用意し、各々の繊維層に、UV硬化型アクリル接着剤(アイカ工業社製、Z−587)をバーコーターにて塗工する。次いで、2枚の積層体の繊維層面を貼り合わせ、一方の積層体の樹脂層側からゴムローラーを押し当てて加圧する。さらに、貼り合わせた積層体の樹脂層側から、UVコンベア装置(アイグラフィックス社製、ECS−4011GX)を用いて500mJ/cm2の紫外線を3回照射して、UV硬化型アクリル接着剤を硬化することで、繊維層の両面に樹脂層が積層された多層積層体が得られる。
<実施例8(多層積層体の製造例3)>
実施例1〜5のいずれかで得られた積層体を用い、下記の手順で両面に樹脂層が積層された多層積層体が得られる。
まず、アクリロイル基がグラフト重合したアクリル樹脂(大成ファインケミカル社製、アクリット8KX−012C)100質量部と、ポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ社製、TPA−100)38質量部を混合して樹脂組成物を得る。次いで上記樹脂組成物を、積層体のセルロース繊維含有層に、バーコーターにて塗布する。さらに、100℃で1時間加熱して硬化させることで、セルロース繊維含有層の両面に樹脂層が積層された多層積層体が得られる。
<実施例9(無機膜積層体の製造例1)>
実施例1〜5のいずれかで得られた積層体又は実施例6〜8のいずれかで得られた多層積層体に対し、原子層堆積装置(Picosun社製「SUNALE R-100B」)で、酸化アルミニウム成膜を行う。アルミニウム原料として、トリメチルアルミニウム(TMA)、TMAの酸化にはH2Oを用いる。チャンバー温度を150℃に設定し、TMAのパルス時間を0.1秒、パージ時間を4秒とし、H2Oのパルス時間を0.1秒、パージ時間を4秒とする。このサイクルを405サイクル繰り返すことで、積層体、または多層積層体の両面に膜厚30nmの酸化アルミニウム膜が積層された無機膜積層体が得られる。
<実施例10(無機膜積層体の製造例2)>
実施例1〜5のいずれかで得られた積層体又は実施例6〜8のいずれかで得られた多層積層体に対し、プラズマCVD装置(セルバック社製「ICP−CVDロールtoロール装置」)でシリコン酸窒化膜を成膜する。具体的には、キャリアフィルム(PETフィルム)の上面に、積層体又は多層積層体を両面テープで貼合して真空チャンバー内に設置する。真空チャンバー内の温度は50℃に設定し、流入ガスはシラン、アンモニア、酸素、窒素とする。プラズマ放電を発生させて45分間の成膜を行い、積層体、または多層積層体の片面に膜厚500nmのシリコン酸窒化膜が積層された無機膜積層体を得る。さらに、反対側の面にも同様の手順で成膜を行うことで、積層体、または多層積層体の両面に膜厚500nmのシリコン酸窒化膜が積層された無機膜積層体を得ることもできる。
2 繊維層
4 接着層
6 樹脂層
10 積層体
11 第1層
12 第2層

Claims (11)

  1. 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む繊維層と、
    ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含む接着層と、
    樹脂層と、をこの順で有する積層体。
  2. 前記樹脂層は、ポリカーボネート樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも一方を含む請求項1に記載の積層体。
  3. 前記樹脂層は、前記接着層側に配される第1層と、第1層の一方の面側であって、前記接着層とは反対側に配される第2層とを有し、
    前記第1層は、アクリル樹脂を含み、前記第2層はポリカーボネート樹脂を含む請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記第1層は、アルキル(メタ)アクリレート樹脂を含む請求項3に記載の積層体。
  5. 前記第1層は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む請求項3に記載の積層体。
  6. 前記樹脂層は前記第1層と、前記第2層を有する共押出しフィルムである請求項3〜5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 前記接着層に含まれるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、ウレタン単位とアクリル単位を含み、前記ウレタン単位の含有量(質量%)をPとし、前記アクリル単位の含有量(質量%)をQとした場合、P/Qは0.1以上0.9以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 前記繊維層の密度は1.0g/cm3以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体。
  9. 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む繊維層を得る工程と、
    ウレタン(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物を前記繊維層の少なくとも一方の面上に塗工し、接着層を形成する工程と、
    前記接着層の一方の面であって、前記繊維層とは反対側の面に樹脂層を積層する工程と、を含む積層体の製造方法。
  10. 前記樹脂層は、前記接着層側に配される第1層と、第1層の一方の面側であって、前記接着層とは反対側に配される第2層とを有し、
    前記第1層は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含み、前記第2層はポリカーボネート樹脂を含み、
    前記樹脂層は、前記第2層上に、エポキシ(メタ)アクリレート含有組成物を塗工することで形成されたものである請求項9に記載の積層体の製造方法。
  11. 前記樹脂層は、前記接着層側に配される第1層と、第1層の一方の面側であって、前記接着層とは反対側に配される第2層とを有し、
    前記第1層は、アルキル(メタ)アクリレート樹脂を含み、前記第2層はポリカーボネート樹脂を含み、
    前記樹脂層は、前記第1層と前記第2層を共押出しで形成されたものである請求項9に記載の積層体の製造方法。
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