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JP2017113858A - カーバイド層を有するダイヤモンド砥石およびダイヤモンド砥石の製造方法 - Google Patents

カーバイド層を有するダイヤモンド砥石およびダイヤモンド砥石の製造方法 Download PDF

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JP2017113858A JP2015254199A JP2015254199A JP2017113858A JP 2017113858 A JP2017113858 A JP 2017113858A JP 2015254199 A JP2015254199 A JP 2015254199A JP 2015254199 A JP2015254199 A JP 2015254199A JP 2017113858 A JP2017113858 A JP 2017113858A
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坂本 広明
Hiroaki Sakamoto
広明 坂本
俊哉 木下
Toshiya Kinoshita
俊哉 木下
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Nippon Steel Chemical and Materials Co Ltd
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Nippon Steel and Sumikin Materials Co Ltd
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Abstract

【課題】ガラスやセラミックス等の堅くて脆い部材に微細な加工に適した、ダイヤモンド砥石を提供する。【解決手段】金属製支持材と、前記金属製支持材の表面ににろう材層を介して固着されたダイヤモンド砥粒とを具備し、前記ダイヤモンド砥粒の平均粒径dが3μm以上15μm以下であり、前記ダイヤモンド砥石に固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が、少なくともその頂部にカーバイド層を有することを特徴とするダイヤモンド砥石。【選択図】なし

Description

本発明は、カーバイド層を有するダイヤモンド砥石およびダイヤモンド砥石の製造方法に関する。
石材、ガラス、セラミック等の硬くて脆い素材の穿孔加工や端面加工には、ダイヤモンド砥粒が台金に固着された砥石(以下、しばしば、ダイヤモンド砥石という)が使用されている。ダイヤモンド砥石に使用されるダイヤモンド砥粒のサイズや、ダイヤモンド砥粒を固着する方法は様々である。固着方法としては、Ni電着法、電鋳法、メタルボンド法、ろう付け法等が知られている。
例えば、特許文献1には、プラズマディスプレーパネルガラス等の穿孔加工用の砥石として、ダイヤモンド砥粒をニッケルや銅鍍金を用いて電着により固着した砥石が記載されている。電着法では、例えばニッケルメッキ法によってダイヤモンド砥粒が固着されている。
特許文献2には、粒径1μm〜100μmのダイヤモンド砥粒を電鋳により固着した、細孔を開けるための工具が記載されている。電鋳法では、上記の電着法と同様にメッキによってダイヤモンド砥粒を固着するが、砥粒のついたメッキ層だけを剥がして利用する。
更に特許文献3には、タッチパネル用ガラスの穴開け用の砥石であって、ダイヤモンドまたはCBNからなる砥粒をメタルボンドまたは電着によって固着した砥石が記載されている。メタルボンド法は、金属粉とダイヤモンド砥粒を混合し、加熱することによって金属粉を焼結させ、ダイヤモンド砥粒を金属の間に部分的に埋めるように固着させる方法である。
特許文献4には、粒度が30〜400メッシュ(即ち、平均粒径840〜44μm)のダイヤモンド砥粒を、Cu系合金を主成分とするボンド部材を用いてメタルボンド法で固着、またはCu系合金を主成分とするろう材でろう付けした、石材、コンクリート、タイルなど穴開け用の砥石が記載されている。特許文献5には、#60/80(即ち、平均粒径250μm)のダイヤモンド砥粒をNi−Cr系活性ろう材で固定した、セラミックやハイシリコンアルミニウム合金に穴を開けるための砥石が記載されている。ろう付け法は、例えば、ろう材をその融点以上に加熱し、ろう材を溶融させて砥粒を固着する方法である。
ダイヤモンド砥粒のろう付けに使用されるろう材は広く知られている。例えば、Ni−Cr−Si−B−P系ろう材(特許文献6)、Ti、Zr、Cr、TaおよびNbの少なくとも1種を含むろう材(特許文献7)、Ag−Cu−Ti粉末にガラス質材料を添加し、所望によりV、P、Bを加えたろう材(特許文献8)、Ti−Zr−Cu−Ni系ろう材、Ag−Cu−Ti−In系ろう材、Ni−Cr−B−Si−Fe−C−P系ろう材(特許文献9)等が挙げられる。
特開2004−122265号公報 特開2005−153131号公報 特開2014−108479号公報 特開2002−239919号公報 特開2006−116660号公報 特開2007−83352号公報 特開2001−162540号公報 特開2002−160168号公報 特開2003−300161号公報
ガラス等の硬くて脆い部材の孔開け加工、あるいは、切削面の面取り加工等を施すための砥石としては、ダイヤモンド砥粒を用いたダイヤモンド砥石が一般的である。ダイヤモンド砥粒を金属製の支持材に固着する方法として、特許文献1〜3に記載されているような、電着法、電鋳法やメタルボンド法、あるいは特許文献4と5に記載されているようなろう付け法が挙げられる。いずれの方法においても、ダイヤモンド砥粒の約半分程度をろう材や電着Ni等に埋没させ、残りのダイヤモンド砥粒部位は表面に露出させた、ダイモンド砥粒が被切削物に直接当たる構造の砥石を製造している。これは、ダイヤモンド自体を被切削物に直接当てることによって、研削力を確保させるためと考えられる。
近年、携帯端末、タブレット端末等の市場が飛躍的に大きくなり、それらに使用されるタッチパネル用途も含んだカバ−ガラスの生産量も飛躍的に大きくなってきている。このような用途に用いられるガラスには、軽くて割れにくいことが要求され、ガラスは薄くて高強度となる。通常、このように被加工素材が硬くなる程、穿孔加工や切削加工の際にチッピングが生じ易くなる。よって、これらのガラス加工に使われるダイヤモンド砥石には、大きな加工速度が達成され、かつ、加工面が滑らかであること(即ち、チッピングが少ないこと)が要求される。
ダイヤモンド砥石による加工面のチッピングを低減させるためには、砥粒径を小さくする必要がある。しかしながら、チッピング低減のために砥粒の粒径を小さくすると、砥粒を金属製の支持材に固着するのが難しくなり、砥粒の脱落によって砥石の寿命が短くなるという問題が生じる。よって、砥粒径を小さくしてチッピングを低減させる手法には限界がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ガラス等の硬くて脆い部材の孔開け加工や面取り加工の際に加工面のチッピングを低減し、且つダイヤモンドの接合力の向上による砥石寿命の長時間化を同時に達成するダイヤモンド砥石、およびこのようなダイヤモンド砥石の製造方法の提供を目的とする。
上記課題に鑑み、本発明の第一は、下記のダイヤモンド砥石である。
[1] 金属製支持材の表面に複数個の砥粒が単層に固着された砥石であって、
金属製支持材と、
前記金属製支持材の表面にろう材層を介して固着されたダイヤモンド砥粒とを具備し、
前記ダイヤモンド砥粒の平均粒径dが3μm以上15μm以下であり、
前記ダイヤモンド砥石に固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が、少なくともその頂部にカーバイド層を有する
ことを特徴とするダイヤモンド砥石。
[2] 前記カーバイド層の厚みが、前記ダイヤモンド砥粒の平均粒径dに対して、0.01d以上0.3d以下であることを特徴とする、[1]に記載ダイヤモンド砥石。
[3] 前記カーバイド層が、Cr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む炭化物からなることを特徴とする、[1]または[2]に記載のダイヤモンド砥石。
[4] 前記ろう材層の組成が、質量%で、
70%≦Ni+Fe≦95%
(ただし、0≦Fe/(Ni+Fe)≦0.4)、
2%≦Si+B≦15%
(ただし、0≦B/(Si+B)≦0.8)、
0.5%≦P≦8.0%、および
0.2%≦X≦3.0%
(ただし、XはCr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、0.2≦X/P≦4.0)
であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のダイヤモンド砥石。
[5] 隣り合う砥粒同士の中心間距離をLとした場合、少なくとも一組の隣り会う砥粒同士の前記Lはd≦L<10dであり、且つ
前記ダイヤモンド砥石全体の砥粒数に対する、隣り会う砥粒同士の前記Lがd≦L<10dであるように配置された砥粒数の割合が50%以上である
ことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のダイヤモンド砥石。
[6] 前記金属製支持材がステンレス鋼製である、[1]〜[5]のいずれかに記載のダイヤモンド砥石。
[7] 前記金属製支持材がロッド状であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載のダイヤモンド砥石。
[8] 前記ロッド状の金属製支持材が、直径が0.5mm〜7mm、長さが40mm〜200mmであることを特徴とする、[7]に記載のダイヤモンド砥石。
[9] 前記金属製支持材がその側周部に形成されたくびれ部を有し、前記くびれ部にも複数個のダイヤモンド砥粒が単層に固着されていることを特徴とする、[7]または[8]に記載のダイヤモンド砥石。
[10] 前記金属製支持材が円盤状であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載のダイヤモンド砥石。
[11] 前記円盤状の金属製支持材が、直径が30mm〜400mm、厚み3mm〜50mmであることを特徴とする、[10]に記載のダイヤモンド砥石。
[12] ガラスの孔開け加工用又は面取り加工用である、[1]〜[11]のいずれかに記載のダイヤモンド砥石。
[13] 金属製支持材の表面に複数個の砥粒が単層に固着された砥石であって、
金属製支持材と、
前記金属製支持材の表面にろう材層を介して固着されたダイヤモンド砥粒とを具備し、
前記ダイヤモンド砥石に固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が、少なくともその頂部にカーバイド層を有し、
前記ろう材層の組成が、質量%で、
70%≦Ni+Fe≦95%
(ただし、0≦Fe/(Ni+Fe)≦0.4)、
2%≦Si+B≦15%
(ただし、0≦B/(Si+B)≦0.8)、
0.5%≦P≦8.0%、および
0.2%≦X≦3.0%
(ただし、XはCr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、0.2≦X/P≦4.0)
であることを特徴とするダイヤモンド砥石。
[14] 金属製支持材の表面に複数個の砥粒が単層に固着された砥石であって、
金属製支持材と、
前記金属製支持材の表面にろう材層を介して固着されたダイヤモンド砥粒とを具備し、
前記ダイヤモンド砥石に固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が、少なくとも頂部にカーバイド層を有し、
前記カーバイド層が、Cr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む炭化物からなる
ことを特徴とするダイヤモンド砥石。
本発明の第二は、下記のダイヤモンド砥石の製造方法である。
[15] Cr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物と、ダイヤモンド砥粒とを加熱下で反応させて、ダイヤモンド砥粒の表面にカーバイド層を形成し、
前記カーバイド層を形成したダイヤモンド砥粒を、ろう材層を介して、金属製支持材の表面に単層に固着する
ことを包含する、ダイヤモンド砥石の製造方法。
本発明によれば、平均粒径dが3μm以上15μm以下のダイヤモンド砥粒が、ろう材層を介して金属製支持材の表面に固着されたダイヤモンド砥石であって、固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が少なくともその頂部にカーバイド(炭化物)層を有すると、被切削物に直接当たる部分の半数以上がダイヤモンドよりも柔らかいカーバイドであるため、衝撃力が低減されて、チッピングが抑制されると考えられる。更に、チッピングの抑制に非常に微細な砥粒を使用する必要がないことから、砥粒の脱落の少ない、砥石寿命の長いダイヤモンド砥石の提供も可能となる。
また、Cr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物と、ダイヤモンド砥粒とを加熱下で反応させて、ダイヤモンド砥粒の表面にカーバイド層を形成し、カーバイド層を形成したダイヤモンド砥粒を、ろう材層を介して、金属製支持材の表面に単層に固着することを包含する、本発明のダイヤモンド砥石の製造方法を用いると、頂部にカーバイド層を有するダイヤモンド砥粒が所望の割合で固着された、チッピング抑制効果が高く、且つ砥石寿命の長いダイヤモンド砥石を容易に製造することが可能となる。
穿孔加工用のダイヤモンド砥石の一例を示す模式図である。 面取り加工用のダイヤモンド砥石の一例を示す模式図である。
1.ダイヤモンド砥石
本発明のダイヤモンド砥石は、金属製支持材の表面に複数個の砥粒が単層に固着された砥石であって、金属製支持材と、前記金属製支持材の表面にろう材層を介して固着されたダイヤモンド砥粒とを具備し、前記ダイヤモンド砥粒の平均粒径dが3μm以上15μm以下であり、前記ダイヤモンド砥石に固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が、少なくともその頂部にカーバイド層を有することを特徴とするダイヤモンド砥石である。
本発明のダイヤモンド砥石に固着されているダイヤモンド砥粒の平均粒径dは3μm以上15μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下、より好ましくは6μm以上9μm以下である。ダイヤモンド砥粒の平均粒径dが3μm未満であると、砥粒の突き出し高さが低くなるため、十分な研削速度を達成することが難しくなる。また、ダイヤモンド砥石の平均粒径が15μm以上であると、ガラス等の硬くて脆い部材の加工面にチッピングが生じやすくなる。
ダイヤモンド砥粒の平均粒径dは、任意の数のダイヤモンド砥粒の粒径を測定し、その数平均粒径とすることができる。上記ダイヤモンド砥粒の粒径は、ダイヤモンド砥石に固着していない砥粒について測定して得た値でもよいし、固着した砥粒の粒径をそのまま測定して得た値でもよい。ダイヤモンド砥石に固着していない砥粒の粒径は、ダイヤモンド砥石に固着される前の砥粒を測定して得てもよいし、ダイヤモンド砥石から剥がして集めた砥粒を測定して得てもよく、篩分級法、レーザー回折法、遠心沈降法および走査型電子顕微鏡(SEM)を含む直接観察法により測定することができる。固着した砥粒の粒径は、SEMによる直接観察法により得られる円相当径とすることができる。
更に本発明のダイヤモンド砥石に固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が、少なくともその頂部にカーバイド層を有する。本発明においてカーバイド層とは、ダイヤモンド砥粒の表面に形成された炭化物の層であり、ダイヤモンドの炭素と他の元素とが反応して形成されたものである。カーバイド層を構成する炭素以外の元素に特に限定はないが、カーバイド層は、Cr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む炭化物からなることが好ましい。上記元素はダイヤモンドの炭素と反応して、炭化クロム、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化バナジウムおよび炭化ジルコニウムなどの炭化物を生成しやすく、また、生成された炭化物はダイヤモンドとの接合強度が高いため、砥石の使用中に砥粒から剥がれ落ちにくいため好ましい。
ダイヤモンド砥粒は、少なくともその頂部にカーバイド層を有していればよい。本発明においてダイヤモンド砥粒の頂部とは、金属製支持材の表面に固着された砥粒の頂点とその周辺部分とを含む、最も上側に位置する部分である。カ−バイド層が砥粒表面のどの部分に形成されているかは、マイクロスコ−プ、あるいは、元素分析機能(EDX)を有する走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により確認することができる。例えば、ダイヤモンド砥石に固着された砥粒をその側面や真上から観察した際に、カーバイド層が砥粒の頂点と、頂点と接するその周辺部分に形成されていれば、砥粒は少なくともその頂部にカーバイド層を有している。また、砥粒を真上から観察した際に、その頂点を中心とするカーバイド層の平均半径は、ダイヤモンド砥粒の平均粒径dに対して、0.01d以上であることが好ましく、0.025d以上であることがより好ましい。カーバイド層が上記で定義した砥粒の頂部に形成されていれば、ダイヤモンド砥石の使用時に被切削物に直接当たる部分はダイヤモンドではなく、カーバイドであるため、衝撃力が低減されて、チッピングが抑性されると考えられる。
尚、カーバイド層は、被切削物に直接当たる砥粒の頂部、即ち、砥粒の頂点と、頂点と接するその周辺部分、に形成されていればチッピングを抑制することができるが、カーバイド層と被切削物との接触をより確実なものとし、更にはカーバイド層の強度を向上させるためには、砥粒の頂点から計測したカーバイド層の平均半径は、0.10d以上であることが好ましい。また、砥石の表面に露出した砥粒の全面がカーバイド層で覆われていてもよい。
本発明のダイヤモンド砥石においては、固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が少なくともその頂部にカーバイド層を有する。ダイヤモンド砥石の表面に固着された砥粒の50%以上がその頂部にカーバイド層を有していれば、被切削物に直接当たる砥粒の半数以上がダイヤモンドよりも柔らかいカーバイドであるため、衝撃力が低減されて、チッピングが抑性されると考えられる。チッピングを更に低減するために、固着されたダイヤモンド砥粒の80%以上が少なくともその頂部にカーバイド層を有することが好ましい。尚、少なくともその頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合は、マイクロスコ−プ、あるいは、元素分析機能(EDX)を有する走査電子顕微鏡を用いて、ろう付け後の砥石の所定範囲内にあるダイヤモンド砥粒を数え、砥粒総数に対する頂部にカーバイド層を有する砥粒数の割合から求めることができる。
砥粒表面に設けられたカーバイド層の厚みtに特に限定はないが、ダイヤモンド砥粒の平均粒径dに対して、0.01d以上0.3d以下であることが好ましく、0.02d以上0.3d以下であることがより好ましい。カーバイド層の厚みtが0.1d未満では、カーバイド層が薄すぎて、衝撃力を低減する効果が発揮されにくい。また、カーバイド層の厚みtが0.3dよりも厚くなると、カーバイド層の剥離が生じやすくなり、砥石寿命が短くなる場合がある。その理由としては、0.3dよりも厚いカーバイド層は、層自体の強度が低下するためと推定される。
カーバイド層の厚みは、例えば、以下の方法で測定することができる。砥石の表面を元素分析機能(EDX)付き走査電子顕微鏡、等で観察し、頂部にカーバイド層を有する砥粒を選定する。選定した砥粒をFIB加工によって輪切りにした後、その切断面の元素マッピングをEDX、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、等で行い、カーバイド層を構成する炭素以外の元素(Cr、Ti、Nb、Ta、V、Zrなど)とCとが重なり合っている厚みを、カーバイド層の厚みとする。
本発明のダイヤモンド砥石においては、ダイヤモンド砥粒はろう材を介して金属製支持材の表面に固着されている。ダイヤモンド砥粒を固着するろう材層の厚みに特に限定はないが、ダイヤモンド砥粒の平均粒径dに対して、0.1d以上0.5d以下であることが好ましく、0.35d以上0.45d以下であることがより好ましい。ろう材層の厚みが0.1d未満では、ダイヤモンド砥粒の固着が不十分となり、砥石の寿命が低下する。また、0.5dを超えると、砥粒の突き出し高さが低くなるため、十分な研削速度を達成することが難しくなる。
本発明におけるろう材層の厚みは、砥石表面の砥粒の固着されていない部分について、砥石の断面から測定した値である。後述する砥粒同士の中心間距離Lが砥粒の平均直径dと同じ場合でも、砥粒は不定形であるため、砥粒が固着されていないろう材層の部分が必ず存在する。
本発明のダイヤモンド砥石においては、隣り合う砥粒同士の中心間距離をLとした場合、少なくとも一組の隣り会う砥粒同士の前記Lはd≦L<10dであり、且つ前記ダイヤモンド砥石全体の砥粒数に対する、隣り会う砥粒同士の前記Lがd≦L<10dであるように配置された砥粒数の割合が50%以上であることが好ましい。砥粒同士の中心間距離Lは小さいほど、砥粒間隔は狭くなる。好ましい砥粒間隔はd≦L<5dであり、より好ましくはd≦L<3dである。砥粒間隔Lがd未満であると、砥粒は重ねてろう付けされなければならず(即ち、単層ではなくなり)、その結果、被研削部材と砥粒の当たり方が不均一となり、チッピングが増える。また、砥粒間隔Lが10d以上であると、被切削部材へ砥粒の当たる確率が低下するため、研削速度が低下する。前記距離に配置された砥粒数の割合が、砥石全体の砥粒数に対して50%以上であれば、本発明の効果を得ることができ、この割合は70%以上であればより好ましい。砥石全体の砥粒数に対して砥粒間隔が上記条件を満たす砥粒数が50%以上であれば、優れた研削速度が得られると同時に、砥粒数が増える結果、個々の砥粒への負荷が減り優れた寿命が得られる。
ダイヤモンド砥粒を金属製支持材の表面に固着しているろう材層の組成に特に限定はなく、上述した平均粒径のダイヤモンド砥粒を金属製支持材に固着できるものであればよい。使用するろう材として、例えば、Ni−Cr−Si−B−P系ろう材(特許文献6)、Ti、Zr、Cr、TaおよびNbの少なくとも1種を含むろう材(特許文献7)、Ag−Cu−Ti粉末にガラス質材料を添加し、所望によりV、P、Bを加えたろう材(特許文献8)、Ti−Zr−Cu−Ni系ろう材、Ag−Cu−Ti−In系ろう材やNi−Cr−B−Si−Fe−C−P系ろう材(特許文献9)等が挙げられる。砥粒の接合強度や、カーバイド層形成の観点から、次に詳細に説明する、Ni−Si−P−X系ろう材(ただし、XはCr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である)を好適に用いることが出来る。
好ましいNi−Si−P−X系ろう材は、質量%で、以下の条件を全て満たすものである。
70%≦Ni+Fe≦95%
(ただし、0≦Fe/(Ni+Fe)≦0.4)、
2%≦Si+B≦15%
(ただし、0≦B/(Si+B)≦0.8)、
0.5%≦P≦8.0%、および
0.2%≦X≦3.0%
(ただし、XはCr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、0.2≦X/P≦4.0)。
PとXを複合添加した上記ろう材を使用すると、Pの存在によってダイヤモンド表面の黒鉛化が抑制され、ダイヤモンド砥粒とろう材の接合強度が格段に向上すると考えられる。
更に上記ろう材中の成分X(Cr、Ti、Nb、Ta、Vおよび/またはZr)は、ダイヤモンドの炭素との反応によってカーバイドを形成することができるため、ろう材の組成および反応条件にもよるが、砥粒とろう材の濡れ性を利用してろう材と砥粒とが接触している砥粒底部のみならず、砥粒の頂部にまでカーバイドを形成することができる。よって、上記ろう材を用いてダイヤモンド砥粒のろう付けを行うと、砥粒のろう付けと共に、カーバイド層の形成も行うことが可能となり、少ない工程でダイヤモンド砥石を製造することが可能となる。
更に上述したろう材について詳細に説明する。
Niは、上記ろう材の主元素である。NiとFeとを合わせた含有量が70%以上95%以下であり、かつ、Feの(Ni+Fe)の合計に対する割合が0.4以下であると、ろう材の融点を低くすることができる。そのため、ろう付け温度の上昇による金属製支持材への熱変形による反りおよび接合不良を生じにくくすることができるため、砥石寿命を延ばすことができる。NiとFeの好ましい含有量は、84%以上95%以下である。なお、金属製支持材にステンレス等を用いる場合には、0<Fe/(Ni+Fe)≦0.4であることが好ましい。金属製支持材中にFeが含まれるために、ろう材中にもFeを含有させた方がろう材と支持材との接合性が良くなるためである。
Si及びBは、ろう材の融点を低下させるために含有させる。SiとBとを合わせた含有量が2%以上15%以下であり、かつ、(Si+B)の合計に対するBの割合が0.8以下であると、ろう材の融点を低くすることができ、ろう付け温度の上昇による金属製支持材への熱変形による反りおよび接合不良を生じにくくすることができるため、砥石寿命を延ばすことができる。SiとBの好ましい含有量は、4%以上13%以下である。
ろう材の形状には、箔状と粉末状の2種類があり、箔状の形態のものを得るためには、例えば、単ロール急冷法によってアモルファス箔とする製造法が一般的に用いられている。Bは、アモルファス形成に必要な元素であるため、箔状のろう材を製造する場合には、少なくともBを1%以上は含有させる必要がある。粉末状のろう材を製造する場合には、所望の融点が得られるならば、Bは必ずしも含有させる必要はない。なお、(Si+B)の合計に対するBの割合を0.8より多くしても、アモルファスの形成がさらに良くなるわけではなく、かえって、箔自体が脆くなる傾向が生じてしまう。
Xは、炭化物を形成しやすい元素であり、ダイヤモンドとの炭化物を形成させてダイヤモンドとろう材との接合強度を高め、砥石の寿命を長くするために添加する。XであるCr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrは、炭化クロム、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化バナジウムおよび炭化ジルコニウムなどの炭化物を生成しやすく、これらの炭化物がダイヤモンドと接合合金との界面に生成する、ダイヤモンドの接合に有効な金属である。Xの含有量が0.2%未満であると、炭化物形成元素Xの含有量が少なくなるため、ダイヤモンド表面に所定の炭化物層が形成されにくくなるばかりか、十分な接合強度を確保するためのカ−バイドも形成され難くなる。一方、Xの含有量が0.2%以上であると、ろう材が高温となったときに、Xがダイヤモンド内に拡散して炭化物(たとえば、XがTiであるときは炭化チタン)を形成し、ダイヤモンドとろう材層との接合強度をより高めることができる。Xの含有量を3.0%より多くしても、上記効果の上積みは見られない。Xは、Cr、Ti、Nb、Ta、VまたはZrであり、ろう材中に1種のみ含まれても、2種以上含まれていてもよい。ろう材がXを2種以上含むときは、2種以上のXを合計した含有量を0.2%以上3.0%以下とする。好ましいXの含有量は、0.5%以上3.0%以下である。
Pは、ろう材単独で測定した融点とろう材を金属製支持材に接合させて測定した融点の差をなくして、溶融温度を安定化させるために含有させる。Pは、ろう材の厚み、接合温度、接合時間が変わった場合においても溶融温度を安定化させることを可能にするため、従来は余裕をみて高めに設定していたろう付け温度を低下させることを可能とし、金属製支持材の熱による変形も軽減させる。また、Pは、砥粒を金属製支持材にろう付けする場合に、砥粒とろう材との濡れ性を高めるため、接合性を安定化させ、砥粒の脱落も抑制する。Pの含有量が0.5%未満であると、ダイヤモンド表面の黒鉛化を抑制する効果が低減し、砥粒の接合強度が低下すると考えられる。また、Pの含有量が8.0%を超えると、砥粒とろう材との濡れ性が過大となって、被切削部に当たる炭化物層の厚みが0.3dより厚くなってしまう場合がある。よってPの含有量の範囲は0.5%≦P≦8.0%である。Pの含有量が0.5%以上であれば、融点安定化の効果を得ることが可能となり、Pの含有量が8.0%以下であれば、砥粒とろう材との濡れ性を適切な範囲に調整することができる。
ろう材にXが含まれると、上記のように、ダイヤモンドを構成する炭素とXとが反応して炭化物(カーバイド)を形成するため、ろう材とダイヤモンドとの接合強度が高くなると考えられるが、一方で、上記炭素の結晶構造が変化し、黒鉛化してしまうため、接合強度の向上には限界がある。これに対し、ろう材にXとPとを複合して添加することで、ダイヤモンドの接合強度をより高め、砥石の寿命を長くすることができる。これは、Pの添加により、Xによる上記ダイヤモンドの黒鉛化が抑制されるためと考えられる。XとPとの含有量の比(X/P)が0.2未満であると、X(炭化物形成元素)の含有量が少ないため、十分な厚みのカ−バイド層が砥粒の頂部に形成されず、被切削物への衝撃力を低減する効果が発揮されにくなると考えられる。更には、接合強度が低下してしまうと考えられる。また、X/Pが4.0%を超えると、ダイヤモンド表面の黒鉛化抑性効果が低減する恐れがあり、接合強度が低下すると考えられる。X/Pの比においては、P含有量が増えるにつれてXの下限値が増える理由は、PとXが反応して化合物を形成する際に、カ−バイドの形成に費やされるべきXの一部を消費するからである。好ましいX/Pの範囲は、0.4以上2.0以下である。
ダイヤモンド砥石を用いてガラス等を加工する際には、通常、中性の水系スラリーや油の下で加工するが、酸性あるいはアルカリ性のスラリーの下で加工してもよい。砥石を酸性あるいはアルカリ性のスラリーの下で使用する場合には、ろう材層にXの少なくとも1部として、Crが含まれることが望ましい。耐食性向上のためのCr含有量は、質量%で、0.2%≦Cr<3.0%が好ましい。ろう材にCrが含まれると、切削液が酸性、アルカリ性のいずれの場合でも、ろう材の耐食性が向上し、ろうの溶損によって生じる砥粒接合強度の低下が抑制されうる。しかしながら、Crの含有量が0.2%未満では、耐食性向上が不十分であり、3.0%であれば、切削用途における耐食性は十分となる。また、CrもPと反応して化合物を形成するため、Crの含有量は1.0%未満であることがより好ましい。Crの含有量が1.0%未満であれば、CrによるPの消費を抑制し、Crによる接合強度の低下を最小限にすることができる。Crが1.0%でも、通常の切削加工においての耐食性は確保できる。
本発明のダイヤモンド砥石を構成するろう材は、本発明で規定する組成の合金を用いることによって、従来公知の方法で製造することができる。例えば、箔にする場合には、回転する冷却ロール上にスロットノズルから溶湯を噴出して箔にする、単ロール法で製造可能である。粉末にする場合には、ガスアトマイズ法、インゴットをボールミル等で粉砕する方法で製造可能である。
本発明のダイヤモンド砥石に用いる金属製支持材の材質に特に限定はなく、一般的にステンレス鋼が用いられる。被研削部材の材質にもよるが、中性の研削液を使用する場合には、ステンレス鋼以外の鋼材の使用もできる。また、酸性、あるいは、アルカリ性の研削液を使用する場合には、JIS規格のSUS304、SUS316、SUS430、等が好適である。炭素鋼等の一般構造用鋼の表面にNi等のめっきをしたものも使用可能である。
本発明のダイヤモンド砥石に用いる金属製支持材の形状にも特に限定はなく、その用途等に鑑みて、従来の砥石の形状などから適宜選択すればよい。具体的な形状としては、ロッド状、スクリュー状、円盤状、円錐状、角錐状などが挙げられる。
例えば、穿孔加工を主目的とした砥石の場合、金属製支持材の形状として、図1に示したような、先端部2を有するロッド状の金属製支持材1が挙げられ、面取り加工用の砥石の金属製支持材の形状としては、図2に示したような、先端部2とくびれ部3を有するロッド状の金属製支持材1が挙げられる。ロッド状の金属製支持材を用いた砥石においては、通常、細い先端部を、ガラスの孔開け、および、その孔開け加工面のチッピング等を減らしで滑らかにする加工に使用することができる。また、砥石の胴部に溝を設けて、その溝部をガラスの外周加工等に使用することができる。胴部の後端部は装置へ固定する部位(チャック部)となる。
ロッド状の金属製支持材のサイズとしては、直径が0.5mm〜7mm、長さが40mm〜200mmのものが挙げられる。このような金属製支持材においてダイヤモンド砥粒が固着された部位に特に制限はないが、例えば、孔開け加工用砥石の場合、金属製支持材の先端から約2〜4mm、先端部直径が約0.8〜1.2mmの領域にダイヤモンド砥粒が固着されていればよい。金属製支持材の先端から3mm程度の領域にダイヤモンド砥粒が固着されていれば、孔開け加工を円滑に行うことができる。
また、図2のように先端部にくびれ部を有する金属製支持材の場合には、くびれ部の幅は加工するガラス板の厚みよりも少し広い程度であればよく、通常、0.4〜0.8mm程度が望ましい。また、くびれ部の深さは0.1〜0.3mm程度が望ましい。砥石の先端部にくびれ部を設けた金属製支持材の場合には、くびれ部にも複数個のダイヤモンド砥粒を単層に固着するため、先端部の長さは、くびれ部全体を含む長さであることが望ましい。図2のような形状の支持材からなる砥石は、先端部を穿孔加工用、くびれ部を面取り加工に使用することができる。
更に、金属製支持材の胴部に設けた溝をガラスの外周加工等に使用することもできる。金属製支持材の胴部に設ける溝の数に限定はないが、通常、1〜3本程度である。溝の幅や深さにも特に限定はないが、通常、幅は0.4〜0.8mm程度、深さは0.3〜0.8mm程度が望ましい。胴部においてダイヤモンド砥粒が固着された領域は、溝の全てを含む幅である限り特に限定はないが、通常、3〜8mm程度である。
また、面取り加工を主目的とした砥石の場合、金属製支持材の形状として、円盤状が挙げられる。円盤状の金属製支持材のサイズとしては、直径が30mm〜400mm、厚み3mm〜50mmのものが例示できる。
2.ダイヤモンド砥石の製造方法
本発明のダイヤモンド砥石の製造方法に特に限定はないが、ダイヤモンド砥粒の少なくともその頂部にカーバイド層を有することを特徴とするダイヤモンド砥石の製造方法としては、次の2つの方法が挙げられる。(1)ダイヤモンド砥粒のろう付けと、カーバイド層の形成とを同時に行う方法、および(2)ダイヤモンド砥粒の表面にカーバイド層を形成してから、金属製支持材にろう付けする方法。
次に、上記方法(1)および方法(2)について詳細に説明する。
方法(1)
ダイヤモンド砥粒のろう付けと、カーバイド層の形成とを同時に行う方法とは、上述したNi−Si−P−X系のろう材、即ち、質量%で、以下の条件を全て満たすろう材を使用する方法である。
70%≦Ni+Fe≦95%
(ただし、0≦Fe/(Ni+Fe)≦0.4)、
2%≦Si+B≦15%
(ただし、0≦B/(Si+B)≦0.8)、
0.5%≦P≦8.0%、および
0.2%≦X≦3.0%
(ただし、XはCr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、0.2≦X/P≦4.0)。
ダイヤモンド砥粒のろう付けとカーバイド層の形成を同時に行うための方法は、基本的に、砥粒を金属製支持材にろう付けするための方法と同じである。例えば、上述したろう材を金属製支持材の表面に仮付けする。金属製支持材が円盤状の場合、使用するろう剤は箔状でも粉状でもよいが、金属製支持材がロッド状の場合は、粉状のろう材を使用する。ろう材が箔の場合には、スポット溶接で仮付け可能である。粉の場合には、例えば、セルロース系のバインダー等をろう粉と混練したものを金属製支持材に塗布すればよい。
砥粒は、ろう材の上に所定のパターン、例えば、四角形あるいは三角形の各頂点近傍に配置した規則パターンやランダムで配列すればよい。この時、砥粒間距離Lが所望の値となるように砥粒を配置することができる。また砥粒は、平方mm当たり数10個〜10万個程度の密度となるように、単層で配置する。この場合、砥粒がずれないように糊等で仮止めする。次に、10−3Pa程度に真空引きした後、ろう材が溶融する温度まで昇温する。ここで使用する温度は、単にろう材が溶融するだけでは不十分で有り、溶融したろう材と砥粒の濡れ性が向上してろう材が砥粒の頂部にまで達して付着する温度でなければならない。しかしながら、金属製支持材は高温により変形することがあるため、ろう付けの温度は高ければよいというものでもない。砥粒頂部にカーバイド層が形成される、適切なろう付け処理の温度と時間は、ろう材の組成や砥粒の平均粒径にもよるが、900℃〜1100℃、好ましくは900℃〜1050℃で、10分〜60分、好ましくは20分〜50分である。ろう付け温度を高める、および/または処理時間を長くすることによって、カーバイド層を頂部に有する砥粒の割合を高めることができる。また、ろう材中のP含有量を高めると、ぬれ性が向上するため、P含有量が高いろう材を使用する場合には、ろう付け温度が比較的低くても、砥粒頂部にカーバイド層を形成することが可能となる。
更にカーバイド層の厚みを調整するために、砥石を拡散熱処理に付すこともできる。拡散熱処理とは、ろう付けよりも低温であり、ろう材の融点以下の温度で砥石を再度加熱することによって、砥粒表面に形成されるカーバイド層を成長させるための工程である。拡散熱処理に適した条件は、800℃〜1000℃、好ましくは900℃〜950℃で、5分〜120分、好ましくは20分〜90分である。
方法1で砥石を製造すると、カーバイド層を形成するための工程と、砥粒のろう付けのための工程が1つの工程で完了するため、製造効率を上げる上で好ましい。
方法(2)
ダイヤモンド砥粒の表面にカーバイド層を形成してから、金属製支持材にろう付けする方法とは、以下の工程を含む方法である。
Cr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物と、ダイヤモンド砥粒とを加熱下で反応させて、ダイヤモンド砥粒の表面にカーバイド層を形成する工程、および
前記カーバイド層を形成したダイヤモンド砥粒を、ろう材層を介して、金属製支持材の表面に単層に固着する工程。
ダイヤモンド砥粒の表面にカーバイド層を形成する工程においては、Cr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む被膜をダイヤモンド砥粒の表面に形成し、その後、皮膜元素とダイヤモンドの炭素とを反応させて、カ−バイド層を形成することができる。元素を含む被膜の形成方法としては、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、等が挙げられるが、これ限定されるものではない。
スパッタ法を用いて被膜を形成する方法の一例としては、純度99.9%のCr、Ti、Nb、TaまたはVからターゲットを作製し、作製したターゲットと高周波マグネトロンスパッタ装置を用いて、砥粒表面にスパッタによって皮膜を形成させる。この時、砥粒は、ガラス板の上に互いに重なり合わないように散布しておく。1回のスパッタでは砥粒の下側の部位に被覆することはできないため、砥粒の向きを変えて、スパッタを複数回繰り返すことが望ましい。スパッタを3回〜7回繰り返すことで、砥粒のほぼ全体に被膜を形成することができると考えられる。スパッタの条件にも特に限定はなく、例えば、スパッタ電力は300W〜900W、雰囲気は0.1Pa〜0.5PaのAr、1回のスパッタ時間は5分〜30分とすることができる。スパッタの回数や条件は、所望の被覆率および被膜厚に応じて変化させればよく、例えば、本願の実施例8では、スパッタ電力は600W、0.3PaのAr雰囲気下、1回10分のスパッタを3回繰り返すことで、皮膜厚が0.5〜0.7μm、被覆率が80%以上の砥粒が得られた。
次に、皮膜を形成した砥粒を加熱して、皮膜中の金属元素とダイヤモンドの炭素とを反応させて、カ−バイド層を形成する。カ−バイド層が形成される限り、加熱条件に特に限定はない。例えば、10−3Pa程度に真空条件下で、1000℃〜1200℃で10分〜270分加熱すればよい。
上記方法においては、砥粒全体にカーバイド層を設けることが容易であり、頂部にカーバイド層を有する砥粒が容易に得られる。また、砥粒を準備した後で、頂部にカーバイド層を有する砥粒のみを選択して使用することも可能であるため、頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合を高めることも容易である。
上記の方法でカーバイド層を設けた砥粒を、ろう材を介して金属製支持材に固着する。砥粒を金属支持材にろう付けする方法に特に限定はなく、従来から知られているろう付け法を使用することができる。使用するろう材の組成に特に限定はなく、例えば、Ni−Cr−Si−B−P系ろう材(特許文献6)、Ti、Zr、Cr、TaおよびNbの少なくとも1種を含むろう材(特許文献7)、Ag−Cu−Ti粉末にガラス質材料を添加し、所望によりV、P、Bを加えたろう材(特許文献8)、Ti−Zr−Cu−Ni系ろう材、Ag−Cu−Ti−In系ろう材、Ni−Cr−B−Si−Fe−C−P系ろう材(特許文献9)等が挙げられる。
ろう付け方法の一例について具体的に説明する。
先ず、金属製支持材にろう材を仮付けする。金属製支持材が円盤状の場合、使用するろう剤は箔状でも粉状でもよいが、金属製支持材がロッド状の場合は、粉状のろう材を使用する。ろう材が箔の場合には、スポット溶接で仮付け可能である。粉の場合には、例えば、セルロース系のバインダー等をろう粉と混練したものを金属製支持材に塗布すればよい。
砥粒は、ろう材の上に所定のパターン、例えば、四角形あるいは三角形の各頂点近傍に配置した規則パターンやランダムで配列すればよい。この時、砥粒間距離Lが所望の値となるように砥粒を配置することができる。また砥粒は、平方mm当たり数10個〜10万個程度の密度となるように、単層で配置することができる。この場合、砥粒がずれないように糊等で仮止めすることが望ましい。次に、10−3Pa程度に真空引きした後、ろう材が溶融する温度まで昇温する。バインダー、糊等は、昇温の途中で殆どが気化してしまう。ろう材を溶融させる温度は、ろう材の融点以上であって、できるだけ低温であることが好ましい。高くても液相線温度+20℃程度以内が好ましい。温度が高い場合には金属製支持材の熱による変形が大きくなるからである。ろう付け温度における保持時間は、5〜30分程度あれば十分である。
上記方法(2)で得られるダイヤモンド砥石においては、カーバイドを形成するための高温に金属製支持材が曝されないことから、高温によって金属製支持材が変形する恐れが少ない。また、カーバイド層を頂部に有する砥粒の割合や、砥粒表面に対するのカーバイド層の面積なども所望の値に調整することが容易である。
上記のいずれの方法で作製した砥石に付いても、砥粒頂部のカーバイド層の有無、カーバイド層を頂部に有する砥粒の割合、カーバイド層の厚み、砥粒同士の中心間距離L等はは、ダイヤモンド砥石について上述したのと同様の方法で確認することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り、「質量%」を表す。
(実施例1)
<ダイヤモンド砥石の作製>
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが、1.5μm、3.0μm、7.5μm、14μm、17μmのものをそれぞれ使用し、図1および図2に示した形状のロッド状のダイヤモンド砥石を作製した。ろう材の組成はNi−4.2%Si−3.0%B−1.0%P−2.0%Tiであり、大きさが38μmアンダ−の粉末ろうを使用した。
図1または図2に示した形状のSUS304製の金属製支持材(先端部の直径は1.0mm、長さ40mm、チャックに固定する部位の直径は6.0mm、図2の砥石の面取り加工用のくぼみは、深さ0.15mmと幅0.7mm)を用意し、ダイヤモンド砥粒を固着させる部位にセルロ−ス系の有機系バインダーを塗布した。次に粉末ろう材を有機系バインダーに付着させた。粉末ろう材はほぼ単層に付着させた。この時、ろう材層の厚みは、ダイヤモンド砥粒径の約40%の厚みになるように調整した。次に、ろう材の上に有機系バインダーを塗布し、そこにダイヤモンド砥粒を固着させた。具体的には、2枚の電極板に交流電圧を印加して電極間に交流の静電気を発生させ、その中にダイヤモンド砥粒を投入すると、投入された砥粒は空間に浮遊された状態となった。この中に有機バインダーを塗布した金属製支持材を挿入すると、バインダーに砥粒が付着された。挿入している時間を変えることによって、砥粒付着量が変わるため、砥粒の付着間隔を変えることができた。砥粒の中心間距離はLと、Lの中心間距離を持つ砥粒の割合は表1に記載した。
その後、加熱炉を用いて、1000℃〜1030℃、20分〜40分間加熱してろう材を溶融させた。雰囲気は10−3Paの真空中とした。温度と時間を変えることによって、ダイヤモンド砥粒の頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合を変えることができた。具体的な加熱条件については、表1に記載した。
昇温過程において、有機系バインダーは揮発した。外見上、溶融後の凝固したろう材の厚みはほぼ均一となった。
ダイヤモンド砥粒の頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合は、マイクロスコ−プ、あるいは、元素分析機能(EDX)を有する走査電子顕微鏡を用いて、ろう付け後の砥石の所定範囲内にあるダイヤモンド砥粒を数え、砥粒総数に対する頂部にカーバイド層を有する砥粒数の割合から求めた。
各砥石に付いて、使用した砥粒の平均粒径d、ろう付け条件、頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合、および砥粒間隔を、表1に示した。
<ダイヤモンド砥石の評価方法>
上記で作製した孔開け加工用砥石と面取り加工用砥石について、ガラスの孔開け加工とそれに続く面取り加工によるチッピングの有無によって、砥石の性能を評価した。
1)孔開け加工
図1に示した形状の孔開け用砥石を用いて、携帯端末用カバーガラスへの孔開け加工を実施した。穿孔方法は、所定の板厚方向の切り込み量でダイヤモンド砥石を横方向に移動させて、ガラス表面からガラスを削り取っていく方法を用いた。加工条件は以下の通りであり、切削部位に中性の水系クーラントをかけながら、切削を実施した。
ガラスサイズ:50mm×100mm×0.55mm
ガラス材質:化学強化ガラス
孔形状:約1mm×9.8mmの長孔
工具回転数:50,000rpm
工具送り速度:60mm/分
板厚方向切り込み量:0.05mm
各穴開け加工用砥石について、上記加工条件で10孔づつ孔開け加工を行った。発明例の穴開け加工用砥石で作製した孔は、砥粒頂部にカーバイド層を有しない比較例の穴開け加工用砥石や、頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合が50%未満の穴開け加工用砥石で作製した孔と比べて、加工面の表面性状が滑らかだった。
2)限界送り速度の計測
上記1)の条件で砥粒頂部にカーバイド層を有しない比較例の穴開け加工用砥石で作製した孔について、孔の拡張と加工面の形状を整えるための面取り加工を実施し、限界送り速度を計測した。限界送り速度とは、それ以上送り速度を上げると、砥石が焼きつき、研削できなくなるか、もしくはチッピングが100μm以上に粗大化する速度と定義した。尚、面取り加工には、穴開け加工用砥石と同じ砥粒、ろう材、および製造条件を用いて作製した、頂部にカーバイド層を有していない面取り加工用砥石を使用した。
具体的には、孔開け加工用砥石で携帯端末用カバーガラスに作製した孔の加工面の形状を整えるための面取り加工を、所定の切り込み量でダイヤモンド砥石を横方向および縦方向に移動させる方法で実施した。工具送り速度を増加させながら、下記の加工条件で面取り加工を行った。尚、面取り加工は、切削部位に中性の水系クーラントをかけながら実施した。
ガラスサイズ:50mm×100mm×0.55mm
ガラス材質:化学強化ガラス
孔形状:約1mm×9.8mmの長孔を面取し、1.2mm×10.0mmの長孔に加工
工具回転数:50,000rpm
切込量:0.10mm
3)面取り加工におけるチッピングの評価
次に、穴開け加工用砥石で作製した孔の面取り加工を実施した。面取り加工には、穴開け加工用砥石と同じ砥粒、ろう材、および製造条件を用いて作製した、頂部にカーバイド層を有する面取り加工用砥石を使用した。面取り加工は、工具送り速度を上記で求めた頂部にカーバイド層を有していない砥石の限界送り速度を超えた速度に設定する以外は、上記と同じ加工条件で行った。また、使用した工具送り速度の、頂部にカーバイド層を有していない砥石の限界送り速度に対する倍率も計算した。
面取り加工後の孔をマイクロスコープで観察し、100μm以上の粗大なチッピングの有無を確認した。尚、10孔について面取り加工を行い、チッピングの生じた孔が1つでも存在した場合に、チッピング有りと評価した。
頂部にカーバイド層を有していない砥石の限界送り速度、頂部にカーバイド層を有する砥石による面取り加工に用いた送り速度および100μm以上の粗大なチッピングの有無を表1に示した。
Figure 2017113858
表1から明らかなように、砥粒径が3μm未満では、砥粒の頂部のカ−バイド層の有無にかかわらず、焼き付きが生じた(比較例No.1とNo.2)。また、砥粒径が15μm超では、砥粒の頂部のカ−バイド層の有無にかかわらず、100μm以上の粗大なチッピングが発生した(比較例No.24〜No.27)。
一方、砥粒径が3〜15μmの範囲内であり、さらに頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合が50%以上の場合には、頂部にカ−バイド層の被覆が無い砥石と比べて、限界送り速度の1.2倍〜1.3倍の速度でも、100μm以上の粗大なチッピングの発生は抑性された(発明例No.6〜No.9、No.13〜No.16、No.20〜No.23)。しかしながら、砥粒径が3〜15μmの範囲内であっても、頂部にカーバイド層を有する砥粒割合が50%未満の場合には、粗大なチッピングの発生を抑えることはできなかった(比較例No.4とNo.5、No.11とNo.12、No.18とNo.19)。
(実施例2)
<ダイヤモンド砥石の作製>
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが、4.5μm、7.5μm、14μmのものをそれぞれ使用し、面取り用砥石をそれぞれ作製した。ろう材の組成をNi−4.2%Si−3.0%B−0.2〜2.0%P−2.0%Tiとし(即ち、Pの量を砥石によって変化させ)、ろう付けのための熱処理条件を1030℃×30分として、ダイヤモンド砥粒の頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合を80%以上としたこと以外は、実施例1と同様に穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。更にカーバイド層の厚みを調整するために、表2示した条件で拡散熱処理を実施した。
尚、比較例No.31、No.42、No.53の砥石は、ろう付けのための熱処理条件を1000℃×20分とする以外は実施例1と同様にして、砥粒の頂部にカーバイド層を有していない穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。
<カーバイド層の厚みの測定>
砥石のカーバイド層の厚みは、次のようにして測定した。砥石の表面を元素分析機能(EDX)付き走査電子顕微鏡で観察し、頂部にカーバイド層を有する砥粒を選定した。選定した砥粒を集束イオンビーム(FIB)加工によって輪切りにした後、その切断面の元素マッピングを行い、TiとCとが重なり合っている厚みを、カーバイド層の厚みとした。
<ダイヤモンド砥石の評価方法>
上記で作製した孔開け加工用砥石と面取り加工用砥石について、実施例1と同様に、ガラスの孔開け加工とそれに続く面取り加工によるチッピングの有無によって、砥石の性能を評価した。
尚、発明例の穴開け加工用砥石で作製した孔は、砥粒頂部にカーバイド層を有しない比較例の穴開け加工用砥石で作製した孔と比べて、加工面の表面性状が滑らかだった。
また、穴開け加工用砥石で作製した孔の面取り加工を実施する際には、穴開け加工用砥石と同じ砥粒、ろう材、および製造条件を用いて作製した面取り加工用砥石を使用した。
各砥石に付いて、使用した砥粒の平均粒径d、拡散熱処理条件、カ−バイド層の厚みt、平均粒径dに対するカ−バイド層の厚みt(t/d)と共に、砥石の評価結果(頂部にカーバイド層を有していない砥石の限界送り速度、頂部にカーバイド層を有する砥石による面取り加工に用いた送り速度および100μm以上の粗大なチッピングの有無)を表2に示した。
Figure 2017113858
表2から明らかなように、砥粒の頂部にカーバイド層を有する発明例の砥石(発明例No.32、No.34〜No.39、No.41、No.43、No.45〜No.50、No.52、No.54、No.56〜No.61、No.63)では、カーバイド層を有していない比較例の砥石(比較例No.31、No.42、No.53)と比べて、送り速度を1.1倍以上に設定した場合においても、粗大なチッピングの発生は無かった。また、t/dが0.01未満または0.3超である砥石の場合には、送り速度が1.1倍では粗大なチッピングの発生は無かったが(発明例No.32、No.41、No.43、No.52、No.54、No.63)、送り速度を1.2〜1.3倍に設定した場合には、粗大なチッピングが発生することがあった(発明例No.33、No.40、No.44、No.51、No.55、No.62)。一方、t/dが0.01〜0.3の範囲内である砥石の場合には、送り速度を1.2倍または1.3倍に設定しても粗大なチッピングの発生は無かった(発明例No.34〜No.39、No.45〜No.50、No.56〜No.61)。
(実施例3)
<ダイヤモンド砥石の作製>
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが7.5μmのものを使用し、ろう材の組成をNi=bal、Si=7.5%、B=3.0%であり、PとXの含有量を表3に示したように変更し、ろう付け熱処理条件を1030℃×30分とした以外は、実施例1と同様に穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。尚、ろう材のXはCr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、表3に示したように、Xとして上記元素の単独添加または2種の複合添加を行った。ろう材の組成における元素の合計量が100となるように、Ni量で調整した。
上記熱処理条件によって、頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合を80%以上に調整した。更に、表3示した条件で拡散熱処理を実施することで、カーバイド層の厚みを調整した。
得られた砥石において、ろう材層の厚みはダイヤモンド砥粒径の約40%であり、砥石の砥粒間距離Lは1.2d〜3.0dであった。
比較例においては、ろう付けのための熱処理条件を1000℃×20分とする以外は実施例1と同様にして、砥粒の頂部にカーバイド層を有していない穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。
<カーバイド層の厚みの測定>
実施例2と同様にカーバイド層の厚みを測定した。但し、カーバイド層の厚みは、切断面の元素マッピングにおいて、使用した元素XとCとが重なり合っている厚みとした。
<ダイヤモンド砥石の評価方法>
上記で作製した孔開け加工用砥石と面取り加工用砥石について、実施例1と同様に、ガラスの孔開け加工とそれに続く面取り加工によるチッピングの有無によって、砥石の性能を評価した。
尚、発明例の穴開け加工用砥石で作製した孔は、砥粒頂部にカーバイド層を有しない比較例の穴開け加工用砥石で作製した孔と比べて、加工面の表面性状が滑らかだった。
また、穴開け加工用砥石で作製した孔の面取り加工を実施する際には、穴開け加工用砥石と同じ砥粒、ろう材、および製造条件を用いて作製した面取り加工用砥石を使用した。
各砥石に付いて、ろう材中のXの種類と含有量、拡散熱処理条件、カ−バイド層の厚みt、t/dと共に、砥石の評価結果(頂部にカーバイド層を有していない砥石の限界送り速度、頂部にカーバイド層を有する砥石による面取り加工に用いた送り速度および100μm以上の粗大なチッピングの有無)を表3に示した。
Figure 2017113858
表3から明らかなように、同じ組成のろう材を使用した砥石の場合、砥粒の頂部にカーバイド層を有し、その厚みt/dが0.01〜0.3の範囲である発明例の砥石は、工具送り速度を比較例の限界送り速度の1.2〜1.3倍に設定した場合でも、粗大なチッピングの発生は無かった。
(実施例4)
<ダイヤモンド砥石の作製>
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが7.5μmのものを使用し、ろう材の組成を、P=1.0%、Ti=2.0%であり、Ni、Fe、SiおよびBの含有量を表4−1に示したように変更し、ろう付け熱処理条件を1030℃×30分とした以外は、実施例1と同様に穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。
上記熱処理条件によって、頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合を80%以上に調整した。更に、表4−2示した条件で拡散熱処理を実施することで、カーバイド層の厚みを調整した。
得られた砥石において、ろう材層の厚みはダイヤモンド砥粒径の約40%であり、砥石の砥粒間距離Lは1.2d〜3.0dであった。
比較例においては、ろう付けのための熱処理条件を1000℃×20分とする以外は実施例1と同様にして、砥粒の頂部にカーバイド層を有していない穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。
<カーバイド層の厚みの測定>
実施例2と同様にカーバイド層の厚みを測定した。
<ダイヤモンド砥石の評価方法>
上記で作製した孔開け加工用砥石と面取り加工用砥石について、実施例1と同様に、ガラスの孔開け加工とそれに続く面取り加工によるチッピングの有無によって、砥石の性能を評価した。
尚、発明例の穴開け加工用砥石で作製した孔は、砥粒頂部にカーバイド層を有しない比較例の穴開け加工用砥石で作製した孔と比べて、加工面の表面性状が滑らかだった。
また、穴開け加工用砥石で作製した孔の面取り加工を実施する際には、穴開け加工用砥石と同じ砥粒、ろう材、および製造条件を用いて作製した面取り加工用砥石を使用した。
各砥石に付いて、ろう材の組成を表4−1に示し、拡散熱処理条件、カ−バイド層の厚みt、t/d、および砥石の評価結果(頂部にカーバイド層を有していない砥石の限界送り速度、頂部にカーバイド層を有する砥石による面取り加工に用いた送り速度および100μm以上の粗大なチッピングの有無)を表4−2に示した。
Figure 2017113858
Figure 2017113858
表4−1と表4−2の結果から明らかなように、同じ組成のろう材を使用した砥石の場合、砥粒の頂部にカーバイド層を有し、その厚みt/dが0.01〜0.3の範囲である発明例の砥石は、工具送り速度を比較例の限界送り速度の1.3倍に設定した場合でも、粗大なチッピングの発生は無かった。
また、ろう材が、70%≦Ni+Fe≦95%(ただし、0≦Fe/(Ni+Fe)≦0.4)および2%≦Si+B≦15%(ただし、0≦B/(Si+B)≦0.8)の全ての要件も満たす発明例No.106、No.108、No.110、No.114、No.118、No.120のダイヤモンド砥石では、600孔の面取りを行う間にダイヤモンド砥粒の脱落は生じなかった。
一方、Ni+Feが70%未満であり、且つSi+Bが15%超の発明例No.102、Si+Bが15%超の発明例No.104、Ni+Feが95%超であり、且つSi+Bが2%未満の発明例No.112、Fe/(Ni+Fe)が0.4超の発明例No.116、およびB/(Si+B)が0.8超の発明例No.122のダイヤモンド砥石においては、400孔の面取りを行う間にダイヤモンド砥粒の脱落は見られなかったが、それ以降は、砥粒の脱落が生じた。
(実施例5)
<ダイヤモンド砥石の作製>
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが7.5μmのものを使用し、ろう材の組成を、P=3.6%、Ti=2.7%であり、Ni、Fe、SiおよびBの含有量を表5−1に示したように変更し、ろう付け熱処理条件を1030℃×30分とした以外は、実施例1と同様に穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。
上記熱処理条件によって、頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合を80%以上に調整した。更に、表5−2示した条件で拡散熱処理を実施することで、カーバイド層の厚みを調整した。
得られた砥石において、ろう材層の厚みはダイヤモンド砥粒径の約40%であり、砥石の砥粒間距離Lは1.2d〜3.0dであった。
比較例においては、ろう付けのための熱処理条件を1000℃×20分とする以外は実施例1と同様にして、砥粒の頂部にカーバイド層を有していない穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。
<カーバイド層の厚みの測定>
実施例2と同様にカーバイド層の厚みを測定した。
<ダイヤモンド砥石の評価方法>
上記で作製した孔開け加工用砥石と面取り加工用砥石について、実施例1と同様に、ガラスの孔開け加工とそれに続く面取り加工によるチッピングの有無によって、砥石の性能を評価した。
尚、発明例の穴開け加工用砥石で作製した孔は、砥粒頂部にカーバイド層を有しない比較例の穴開け加工用砥石で作製した孔と比べて、加工面の表面性状が滑らかだった。
また、穴開け加工用砥石で作製した孔の面取り加工を実施する際には、穴開け加工用砥石と同じ砥粒、ろう材、および製造条件を用いて作製した面取り加工用砥石を使用した。
各砥石に付いて、ろう材の組成を表5−1に示し、拡散熱処理条件、カ−バイド層の厚みt、t/d、および砥石の評価結果(頂部にカーバイド層を有していない砥石の限界送り速度、頂部にカーバイド層を有する砥石による面取り加工に用いた送り速度および100μm以上の粗大なチッピングの有無)を表5−2に示した。
Figure 2017113858
Figure 2017113858
表5−1と表5−2の結果から明らかなように、同じ組成のろう材を使用した砥石の場合、砥粒の頂部にカーバイド層を有し、その厚みt/dが0.01〜0.3の範囲である発明例の砥石は、工具送り速度を比較例の限界送り速度の1.3倍に設定した場合でも、粗大なチッピングの発生は無かった。
また、ろう材が、70%≦Ni+Fe≦95%(ただし、0≦Fe/(Ni+Fe)≦0.4)および2%≦Si+B≦15%(ただし、0≦B/(Si+B)≦0.8)の全ての要件も満たす発明例No.132、No.134のダイヤモンド砥石では、600孔の面取りを行う間にダイヤモンド砥粒の脱落は生じなかった。
一方、Si+Bが2%未満の発明例No.136のダイヤモンド砥石においては、400孔の面取りを行う間にダイヤモンド砥粒の脱落は見られなかったが、それ以降は、砥粒の脱落が生じた。
(実施例6)
<ダイヤモンド砥石の作製>
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが7.5μmのものを使用し、ろう材の組成を、Ni=bal、Fe=0.07%、Si=7.5%、B=3.0%であり、PおよびXとしてのTiの含有量を表6−1〜表6−3に示したように変更し、ろう付け熱処理条件を1030℃×30分とした以外は、実施例1と同様に穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。尚、ろう材の組成における元素の合計量が100となるように、Ni量で調整した。更に、900℃×30分の拡散熱処理を実施することで、カーバイド層の厚みを調整した。
上記熱処理条件によって、頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合を80%以上に調整した。得られた砥石において、ろう材層の厚みはダイヤモンド砥粒径の約40%であり、砥石の砥粒間距離Lは1.2d〜3.0dであった。
比較例においては、ろう付けのための熱処理条件を1000℃×20分とする以外は実施例1と同様にして、砥粒の頂部にカーバイド層を有していない穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。
<カーバイド層の厚みの測定>
実施例2と同様にカーバイド層の厚みを測定した。
<ダイヤモンド砥石の評価方法>
上記で作製した孔開け加工用砥石と面取り加工用砥石について、実施例1と同様に、ガラスの孔開け加工とそれに続く面取り加工によるチッピングの有無によって、砥石の性能を評価した。
尚、発明例の穴開け加工用砥石で作製した孔は、砥粒頂部にカーバイド層を有しない比較例の穴開け加工用砥石で作製した孔と比べて、加工面の表面性状が滑らかだった。
また、穴開け加工用砥石で作製した孔の面取り加工を実施する際には、穴開け加工用砥石と同じ砥粒、ろう材、および製造条件を用いて作製した面取り加工用砥石を使用した。
各砥石に付いて、ろう材中のXとPの含有量、X/P、カ−バイド層の厚みt、t/dと共に、砥石の評価結果(頂部にカーバイド層を有していない砥石の限界送り速度、頂部にカーバイド層を有する砥石による面取り加工に用いた送り速度および100μm以上の粗大なチッピングの有無)を表6−1〜表6−3に示した。
Figure 2017113858
Figure 2017113858
Figure 2017113858
表6−1〜表6−3から明らかなように、同じ組成のろう材を使用した砥石の場合、砥粒の頂部にカーバイド層を有し、その厚みt/dが0.01〜0.3の範囲である発明例の砥石は、工具送り速度を比較例の限界送り速度の1.2〜1.3倍に設定した場合でも、粗大なチッピングの発生は無かった。
また、ろう材が、0.5%≦P≦8.0%、0.2%≦X≦3.0%、および0.2≦X/P≦4.0の全ての要件も満たす発明例No.158、No.160、No.162、No.164、No.166、No.172、No.174、No.176、No.178、No.180、No.186、No.188、No.190、およびNo.200の砥石では、600孔の面取りを行う間にダイヤモンド砥粒の脱落は生じなかった。
一方、Pが0.5%未満および/またはX/Pが4.0%超のろう材を用いた発明例No.142、No.156、No.170、No.184、No.198の砥石においては、400孔の面取りを行う間にダイヤモンド砥粒の脱落は見られなかったが、それ以降は、砥粒の脱落が生じた。
更にPが8%超、Xが0.2%未満および/またはX/Pが0.2未満である発明例No.154、No.168、No.182、No.192、No.194、No.196、No.202、No.204、No.206、No.210、No.212、No.214の砥石においては、工具送り速度を比較例の限界送り速度の1.3倍に設定した場合、少数ではあるが、粗大なチッピングが発生する場合があった。
(実施例7)
<ダイヤモンド砥石の作製>
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが7.5μmのものを使用し、ろう材の組成を、Ni=bal、Fe=0.07%、Si=7.5%、B=3.0%であり、PおよびXの含有量を表7−1と表7−2に示したように変更し、ろう付け熱処理条件を1030℃×30分とした以外は、実施例1と同様に穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。尚、ろう材の組成における元素の合計量が100となるように、Ni量で調整した。
更に、900℃×30分の拡散熱処理を実施することで、カーバイド層の厚みを調整した。
尚、上記熱処理条件によって、頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合を80%以上に調整した。得られた砥石において、ろう材層の厚みはダイヤモンド砥粒径の約40%であり、砥石の砥粒間距離Lは1.2d〜3.0dであった。
比較例においては、ろう付けのための熱処理条件を1000℃×20分とする以外は実施例1と同様にして、砥粒の頂部にカーバイド層を有していない穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。
<カーバイド層の厚みの測定>
実施例2と同様にカーバイド層の厚みを測定した。但し、カーバイド層の厚みは、切断面の元素マッピングにおいて、使用した元素XとCとが重なり合っている厚みとした。
<ダイヤモンド砥石の評価方法>
上記で作製した孔開け加工用砥石と面取り加工用砥石について、実施例1と同様に、ガラスの孔開け加工とそれに続く面取り加工によるチッピングの有無によって、砥石の性能を評価した。
尚、発明例の穴開け加工用砥石で作製した孔は、砥粒頂部にカーバイド層を有しない比較例の穴開け加工用砥石で作製した孔と比べて、加工面の表面性状が滑らかだった。
また、穴開け加工用砥石で作製した孔の面取り加工を実施する際には、穴開け加工用砥石と同じ砥粒、ろう材、および製造条件を用いて作製した面取り加工用砥石を使用した。
各砥石に付いて、ろう材中のXとPの含有量、X/P、カ−バイド層の厚みt、t/dと共に、砥石の評価結果(頂部にカーバイド層を有していない砥石の限界送り速度、頂部にカーバイド層を有する砥石による面取り加工に用いた送り速度および100μm以上の粗大なチッピングの有無)を表7−1と表7−2に示した。
Figure 2017113858
Figure 2017113858
表7−1と表7−2から明らかなように、ろう材の組成にかかわらず、砥粒の頂部にカーバイド層を有し、その厚みt/dが0.01〜0.3の範囲である発明例の砥石は、工具送り速度を比較例の限界送り速度の1.3倍に設定した場合でも、粗大なチッピングの発生は無かった。
(実施例8)
<カーバイド層を有する砥粒の作製>
平均粒径dが7.5μmのダイヤモンド砥粒の表面に、スパッタ法を用いて、X元素からなる皮膜層を形成させた。
初めに、純度99.9%のCr、Ti、Nb、Ta、およびVのそれぞれから直径4インチのターゲットを作製した。
次に、ダイヤモンド砥粒をガラス板の上に互いに重なり合わないように散布して、その上に、スパッタによって皮膜を形成させた。スパッタは、先に作製したターゲットと一般的な高周波マグネトロンスパッタ装置を用い、スパッタ電力は600W、雰囲気は0.3PaのArとし、1回のスパッタ時間を10分として行った。1回のスパッタでは、砥粒の下側の部位には皮膜が形成されないため、1回目のスパッタが終了した後、ガラスの上の砥粒を一旦回収し、再び、ガラスの上に散布して、再スパッタを行うことを3回繰り返した。1回10分のスパッタを3回繰り返すことによって、0.5〜0.7μmの皮膜を有する、被覆率80%以上の砥粒が得られた。
次に、それぞれの金属が皮膜された砥粒を10−3Paの真空中で1060℃×30分熱処理し、皮膜元素とダイヤモンドの炭素とを反応させて、カ−バイド層を形成させ、カーバイド層を有する砥粒を得た。
<ダイヤモンド砥石の作製>
ダイヤモンド砥粒として、上記のカーバイド層を有する砥粒を使用し、ろう材の組成を、Ni=bal、Si=7.5%、B=3.0%、P=1.0%に変更し、ろう付け熱処理条件を1000℃×20分とした以外は、実施例1と同様に穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。尚、ろう材の組成における元素の合計量が100となるように、Ni量で調整した。
尚、得られた砥石においては、頂部にカーバイド層を有する砥粒の割合は97%以上であった。ろう材層の厚みはダイヤモンド砥粒径の約40%であり、砥石の砥粒間距離Lは1.2d〜3.0dであった。
比較例においては、皮膜無しのダイヤモンド砥粒を用いる以外は上記と同様にして、砥粒の頂部にカーバイド層を有していない穴あけ加工用砥石と面取り加工用砥石をそれぞれ作製した。但し、砥粒の接合強度を確保するために、ろう材には2.0%のTiを加えた。得られた砥石は、砥粒の頂部にカ−バイドを有していなかった。
<カーバイド層の厚みの測定>
実施例2と同様にカーバイド層の厚みを測定した。但し、カーバイド層の厚みは、切断面の元素マッピングにおいて、使用した元素XとCとが重なり合っている厚みとした。
<ダイヤモンド砥石の評価方法>
上記で作製した孔開け加工用砥石と面取り加工用砥石について、実施例1と同様に、ガラスの孔開け加工とそれに続く面取り加工によるチッピングの有無によって、砥石の性能を評価した。
尚、発明例の穴開け加工用砥石で作製した孔は、砥粒頂部にカーバイド層を有しない比較例の穴開け加工用砥石で作製した孔と比べて、加工面の表面性状が滑らかだった。
また、穴開け加工用砥石で作製した孔の面取り加工を実施する際には、穴開け加工用砥石と同じ砥粒、ろう材、および製造条件を用いて作製した面取り加工用砥石を使用した。
各砥石に付いて、皮膜の形成に用いた元素、カ−バイド層の厚みt、t/dと共に、砥石の評価結果(頂部にカーバイド層を有していない砥石の限界送り速度、頂部にカーバイド層を有する砥石による面取り加工に用いた送り速度および100μm以上の粗大なチッピングの有無)を表8に示した。
Figure 2017113858
表8から明らかなように、砥粒の97%以上が頂部にカーバイド層を有する発明例No.282〜No.287の砥石においては、砥粒頂部にカ−バイド層の被覆が無い比較例No.281の砥石の限界送り速度の1.2倍の速度でも、100μm以上の粗大なチッピングの発生は抑性された。
本発明のダイヤモンド砥石は、平均粒径dが3μm以上15μm以下のダイヤモンド砥粒が、金属製支持材の表面に単層に固着された砥石であって、砥石に固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が、少なくともその頂部にカーバイド層を有することを特徴とするダイヤモンド砥石である。このような砥石においては、被切削物に直接当たる部分の半数以上がダイヤモンドよりも柔らかいカーバイドであるため、ガラスやセラミックス等の堅くて脆い部材に微細な加工を施す際には、衝撃力が低減されて、チッピングが抑性されると考えられる。更に、チッピングの抑制に非常に微細な砥粒を使用する必要がないことから、砥粒の脱落の少ない、砥石寿命の長いダイヤモンド砥石の提供も可能となる。
1 金属製支持材
2 先端部
3 くびれ部

Claims (15)

  1. 金属製支持材の表面に複数個の砥粒が単層に固着された砥石であって、
    金属製支持材と、
    前記金属製支持材の表面にろう材層を介して固着されたダイヤモンド砥粒とを具備し、
    前記ダイヤモンド砥粒の平均粒径dが3μm以上15μm以下であり、
    前記ダイヤモンド砥石に固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が、少なくともその頂部にカーバイド層を有する
    ことを特徴とするダイヤモンド砥石。
  2. 前記カーバイド層の厚みが、前記ダイヤモンド砥粒の平均粒径dに対して、0.01d以上0.3d以下であることを特徴とする、請求項1に記載ダイヤモンド砥石。
  3. 前記カーバイド層が、Cr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む炭化物からなることを特徴とする、請求項1または2に記載のダイヤモンド砥石。
  4. 前記ろう材層の組成が、質量%で、
    70%≦Ni+Fe≦95%
    (ただし、0≦Fe/(Ni+Fe)≦0.4)、
    2%≦Si+B≦15%
    (ただし、0≦B/(Si+B)≦0.8)、
    0.5%≦P≦8.0%、および
    0.2%≦X≦3.0%
    (ただし、XはCr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、0.2≦X/P≦4.0)
    であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイヤモンド砥石。
  5. 隣り合う砥粒同士の中心間距離をLとした場合、少なくとも一組の隣り会う砥粒同士の前記Lはd≦L<10dであり、且つ
    前記ダイヤモンド砥石全体の砥粒数に対する、隣り会う砥粒同士の前記Lがd≦L<10dであるように配置された砥粒数の割合が50%以上である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイヤモンド砥石。
  6. 前記金属製支持材がステンレス鋼製である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のダイヤモンド砥石。
  7. 前記金属製支持材がロッド状であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のダイヤモンド砥石。
  8. 前記ロッド状の金属製支持材が、直径が0.5mm〜7mm、長さが40mm〜200mmであることを特徴とする、請求項7に記載のダイヤモンド砥石。
  9. 前記金属製支持材がその側周部に形成されたくびれ部を有し、前記くびれ部にも複数個のダイヤモンド砥粒が単層に固着されていることを特徴とする、請求項7または8に記載のダイヤモンド砥石。
  10. 前記金属製支持材が円盤状であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のダイヤモンド砥石。
  11. 前記円盤状の金属製支持材が、直径が30mm〜400mm、厚み3mm〜50mmであることを特徴とする、請求項10に記載のダイヤモンド砥石。
  12. ガラスの孔開け加工用又は面取り加工用である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のダイヤモンド砥石。
  13. 金属製支持材の表面に複数個の砥粒が単層に固着された砥石であって、
    金属製支持材と、
    前記金属製支持材の表面にろう材層を介して固着されたダイヤモンド砥粒とを具備し、
    前記ダイヤモンド砥石に固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が、少なくともその頂部にカーバイド層を有し、
    前記ろう材層の組成が、質量%で、
    70%≦Ni+Fe≦95%
    (ただし、0≦Fe/(Ni+Fe)≦0.4)、
    2%≦Si+B≦15%
    (ただし、0≦B/(Si+B)≦0.8)、
    0.5%≦P≦8.0%、および
    0.2%≦X≦3.0%
    (ただし、XはCr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、0.2≦X/P≦4.0)
    であることを特徴とするダイヤモンド砥石。
  14. 金属製支持材の表面に複数個の砥粒が単層に固着された砥石であって、
    金属製支持材と、
    前記金属製支持材の表面にろう材層を介して固着されたダイヤモンド砥粒とを具備し、
    前記ダイヤモンド砥石に固着されたダイヤモンド砥粒の50%以上が、少なくとも頂部にカーバイド層を有し、
    前記カーバイド層が、Cr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む炭化物からなる
    ことを特徴とするダイヤモンド砥石。
  15. Cr、Ti、Nb、Ta、VおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物と、ダイヤモンド砥粒とを加熱下で反応させて、ダイヤモンド砥粒の表面にカーバイド層を形成し、
    前記カーバイド層を形成したダイヤモンド砥粒を、ろう材層を介して、金属製支持材の表面に単層に固着する
    ことを包含する、ダイヤモンド砥石の製造方法。
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