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JP2017007312A - 導電積層体および導電積層体の製造方法 - Google Patents

導電積層体および導電積層体の製造方法 Download PDF

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JP2017007312A JP2015128655A JP2015128655A JP2017007312A JP 2017007312 A JP2017007312 A JP 2017007312A JP 2015128655 A JP2015128655 A JP 2015128655A JP 2015128655 A JP2015128655 A JP 2015128655A JP 2017007312 A JP2017007312 A JP 2017007312A
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和也 西岡
Kazuya Nishioka
和也 西岡
直樹 辻内
Naoki Tsujiuchi
直樹 辻内
渡邊 修
Osamu Watanabe
渡邊  修
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Abstract

【課題】成型後にも高い導電性を有し、ヘイズ値上昇が抑制された導電積層体を提供する。
【解決手段】基材1上にポリウレタン樹脂とシリカ粒子とを含むアンダーコート層2を形成し、アンダーコート層2の上にカーボンナノチューブを含む塗液をコーティング3し、さらにその上にオーバーコート層4を塗布することにより導電層5を形成する導電積層体。前記導電積層体を用いた成形体並びに前記成形体を用いたタッチセンサーなどに利用できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電積層体に関する。より詳細には、成型後にも高い導電性を有し、ヘイズ値上昇が抑制された導電積層体に関する。
従来より、抵抗膜式、静電容量式などのタッチパネル用途、電子ペーパー用途、デジタルサイネージ用途などの実に様々な製品に導電積層体が用いられてきた。導電性を発現させるための導電材料としては、インジウム錫酸化物(以下、ITO)や銀ナノワイヤー(以下、AgNW)、カーボンナノチューブ(以下、CNT)、導電性高分子などが用いられている。上記用途では、平面か、もしくはフレキシブルな基板上に用いられることがほとんどであり、導電積層体を成型加工する必要性はあまり求められてこなかった。これまでは、柔軟性が求められるフレキシブル基板に適するCNTの検討が行われており、特許文献1では、耐屈曲性に優れたCNTを導電膜とする導電積層体の提案がなされている。
しかしながら、今後は操作性およびデザイン性の観点から、平面ではなく立体的なタッチパネルが求められるようになる。これまで検討されてきたITOやAgNWは柔軟性がなく、成型加工後にはITO層のクラックの発生やAgNW自体の断裂などにより表面抵抗値が大幅に上昇する結果導通が取れなくなり、導電積層体としての機能を維持できないことが予想される。そこで、成型後の表面抵抗値変化を抑制するために、元来より柔軟性が高く、成型加工に有利なCNTと導電性高分子による検討が行われている。
特許文献2では、成型された合成樹脂成型品に発生する静電気を逃して塵埃の付着を防止するための帯電防止処理用途として、CNTの分散性を向上させた成型可能な成型用導電フィルムの提案がなされている。また特許文献3では、発熱体を具備した車両用灯具用途としてCNTを導電層に用いた曲面成型体の提案がなされている。
特開2012−66580号公報 特開2006−35772号公報 特開2010−45014号公報
しかしながら、特許文献1では、耐屈曲性は優れているが、成型加工を行うと、CNTの断裂や、透明保護膜にクラックが発生することにより、成型後は導電性が発現されない。特許文献2では、CNTを用いた成型用導電性フィルムが提案されており、成型後もある一定以下の表面抵抗値が維持されるが、そのヘイズ値は大きく、タッチセンサー用途として使用するには困難である。また、特許文献3では、タッチセンサー用途については提案されていない。
従って、本発明の目的は、上記問題に鑑み、成型後にも高い導電性を有し、ヘイズ値が抑制された導電積層体を提供することにある。
課題を解決するために、本発明は以下の方法からなる。
(1)基材上にカーボンナノチューブを含む導電層を有する導電積層体であって、20%延伸した後のヘイズ値が3.0%以下であることを特徴とする導電積層体。
(2)前記導電層がポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする(1)に記載の導電積層体。
(3)前記導電層がシリカ粒子を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の導電積層体。
(4)前記基材が熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の導電積層体。
(5)前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂および環状オレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂であることを特徴とする(4)に記載の導電積層体。
(6)以下の[A]または[B]を満たす(1)〜(5)のいずれかに記載の導電積層体。
[A]全光線透過率が80%以上93%以下であり、表面抵抗値が1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下
[B]導電層光吸収率が1%以上10%以下であり、表面抵抗値が1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下
(7)基材上にポリウレタン樹脂とシリカ粒子とを含むアンダーコート層を形成し、前記アンダーコート層の上にカーボンナノチューブを含む塗液をコーティングすることにより導電層を形成することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の導電積層体の製造方法。
(8)(1)〜(6)のいずれかに記載の導電積層体を用いた成型体。
(9)(1)〜(6)のいずれかに記載の導電積層体または(8)に記載の成型体を用いたタッチセンサー。
本発明の導電積層体は、成型後のヘイズ値上昇が小さいため、成型することでヘイズ値が低く導電性を維持した成型体を得ることができる。すなわち、曲面形状や立体形状の静電容量式タッチパネルやタッチスイッチ、タッチセンサーなど、成型体のヘイズ値が重要となるデバイス向けの導電積層体として好適である。
本発明の導電積層体の断面模式図である。
以下、発明を実施するための形態を説明していく。
[導電積層体]
本発明で用いられる導電積層体は基材とカーボンナノチューブを含む導電層とを少なくとも含む。
本発明の導電積層体は、20%延伸した後のヘイズ値が3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが特に好ましい。導電積層体を20%延伸した後のヘイズ値が3.0%以下であることにより、タッチパネルやタッチスイッチなどに使用した際、外観良好であるため好ましい。
導電積層体の表面抵抗値は成型体にする延伸倍率によって適宜決定されるが、導電積層体を2倍延伸したときの表面抵抗値が10Ω/□以上2,000Ω/□以下が好ましい。また、使用するデバイスに応じて適宜決定されるが、例えばタッチスイッチの場合、好ましくは100〜2,000Ω/□、より好ましくは、100〜1,000Ω/□、さらに好ましくは100〜500Ω/□である。また、例えばタッチパネルの場合は、好ましくは10〜1,000Ω/□、より好ましくは、50〜500Ω/□、さらに好ましくは100〜300Ω/□である。これらの範囲にあることでICコントローラーの設計が容易となり、良好な作動性が得られるため好ましい。
また、層間密着性向上や信頼性向上のため必要に応じて基材と導電層との間にアンダーコート層や導電層の上にオーバーコート層などの機能層を設けてもよい。
[基材]
本発明に用いられる基材は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、透明な導電積層体を得るためには、透過率が高い熱可塑性樹脂が好ましく使用される。具体的には波長380〜780nmにおける全光線透過率が80%以上のものが好ましく、同全光線透過率が90%以上のものがより好ましい。このように透過率が高い熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、良好な成型加工性を有する樹脂が好ましく、基材がポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂および環状オレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂を含むことが好ましい。この中でも特にポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。
また、取り扱い性、成型性の観点から上記基材の厚みは50〜1,000μmであることが好ましく、100〜500μmであることがより好ましい。
さらに、上記基材は、必要に応じ、表面処理を施してあってもよい。表面処理は、コロナ放電、プラズマ処理、グロー放電、火炎処理等の物理的処理、あるいは樹脂層を設けてあってもよい。また、易接着層を形成したものであってもよく、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してあってもよい。基材の種類は上述に限定されることはなく、用途に応じて透明性や耐久性や可撓性やコスト等から最適なものを選ぶことができる。
また、導電層を積層させる反対面に保護層としてハードコート層を設けてもよい。この場合のハードコート層とは、傷の発生を抑制できる程度の硬度があればよく、特に限定されるものではない。
[導電層]
本発明における「導電層」とは、後述するカーボンナノチューブを含む層とアンダーコート層とを合わせた層のことをいい、さらに後述するオーバーコート層がある場合はオーバーコート層も導電層に含む。本発明において導電層の厚みは20nm以上2,000nm以下が好ましい。導電性や耐候性の観点から、50nm以上1,500nm以下がより好ましく、100nm以上1,000nm以下がさらに好ましい。
また、本発明の導電層は延伸時に発生するクラックを抑制し、ヘイズ値上昇を抑制できる観点からポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。また、導電層の導電性の向上、基材と導電層との密着性向上の観点から導電層がシリカ粒子を含むことが好ましい。
[導電層の作製方法]
本発明において、例えば導電層は基材上にアンダーコート層を形成した後にカーボンナノチューブを含む層を積層形成することで作製される。また、カーボンナノチューブを含む層を形成した後にオーバーコート層をさらに積層形成してもよい。なお、オーバーコート層はカーボンナノチューブを含む層およびアンダーコート層に浸透し、混合した状態で層を形成する場合があるため、カーボンナノチューブを含む層とアンダーコート層とオーバーコート層に明確な界面が存在しない場合がある。
[アンダーコート層]
本発明においては基材の上にアンダーコート層を有することが好ましい。アンダーコート層を有することによりカーボンナノチューブを含む層の密着性向上、導電積層体の表面凹凸が調整できることから好ましい。本発明におけるアンダーコート層は延伸可能な熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。具体的にはポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂および環状オレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂を含む熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。中でも高伸度で耐水性、耐溶剤性に優れる点からポリウレタン樹脂が特に好ましい。
通常、ポリウレタン樹脂はポリオール成分とイソシアネート成分の共重合からなるポリマーであるが、ポリオール成分が高伸度性、屈曲性などを付与し、ポリオール成分とイソシアネート成分との共重合によって形成されるウレタン結合が強靱性、耐溶剤性を付与している。従って、本発明においては、成型倍率に合わせてポリオール成分とイソシアネート成分を配合させたポリウレタン樹脂を用いればよい。
ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられ、具体的にポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールが挙げられ、ポリエステルポリオールとしては、カルボン酸としてアジピン酸、フタル酸、多価アルコールとしてエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールの重縮合によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
また、イソシアネート成分としては、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネートが挙げられ、具体的にはテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
さらに、本発明におけるアンダーコート層はシリカ粒子を含むことが好ましい。シリカ粒子を含むことにより、カーボンナノチューブを含む層の密着性向上、表面凹凸による粘着性改善、シリカ粒子表面修飾により親水性が調整可能である観点から好ましい。シリカ粒子のサイズは導電積層体の透明性を損なわず、良好な分散状態が得られることから、粒子径が5nm〜500nmの範囲であることが好ましく、20nm〜200nmがより好ましい。
本発明に用いられるシリカ粒子は表面修飾されていてもよく、カーボンナノチューブ分散液の塗布性が向上すること、カーボンナノチューブを含む層中に含まれる絶縁物である分散剤がアンダーコート層に優先的に吸着され、カーボンナノチューブを含む層の導電性が向上することから、親水化処理されていることが好ましい。シリカ粒子の形状は特に限定されないが、表面積が大きくなる球状や扁平形状が好ましい。
本発明におけるアンダーコート層は熱可塑性樹脂中にシリカ粒子が分散されていることが好ましい。熱可塑性樹脂中にシリカ粒子が分散していることでアンダーコート層を延伸した際にシリカ粒子間に存在する熱可塑性樹脂の伸度が大きく、延伸した際のクラック発生が抑制され好ましい。
本発明におけるアンダーコート層の熱可塑性樹脂とシリカ粒子との質量比は延伸時のヘイズ値上昇、基材と導電層の密着性、カーボンナノチューブを含む層の導電性の点から熱可塑性樹脂:シリカ粒子=80:20〜40:60であることが好ましく、70:30〜50:50がより好ましい。
[アンダーコート層の作製方法]
本発明において、アンダーコート層を基材上に設ける方法は特に限定されない。既知の湿式コーティング方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷方法などが利用できる。また、乾式コーティング方法を用いてもよい。乾式コーティング方法としては、スパッタリング、蒸着などの物理気相成長や化学気相成長などが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。好ましい塗布方法は、湿式コーティングであるグラビアコーティング、バーコーティング、ダイコーティングである。
前記塗布工程の後、乾燥工程にて塗布されたアンダーコート成分を含むアンダーコート塗布液から溶媒を除去する。溶媒の除去方法としては、熱風を基材に当てる対流熱風乾燥、赤外線乾燥装置からの輻射で基材に赤外線を吸収させて熱に変え加熱し乾燥させる輻射熱乾燥、熱媒体で加熱された壁面からの熱伝導で加熱し乾燥させる伝導熱乾燥、などを適用することができる。中でも対流熱風乾燥は乾燥速度が大きいため好ましい。
本発明において、アンダーコート層の厚みは特に限定されない。カーボンナノチューブを含む層中に含まれる絶縁物である分散剤がアンダーコート層に優先的に吸着するという観点と、延伸した際にクラックを抑制できる観点から、15nm〜2,000nmの範囲にあることが好ましい。
本発明において、アンダーコート層の水接触角は、カーボンナノチューブ分散液のアンダーコート層上への塗布性の観点より、40°以下であることが好ましい。水接触角が40°を超える場合、カーボンナノチューブ分散液がアンダーコート上に均一に塗布できない場合がある。
アンダーコート層の水接触角は市販の接触角測定装置を用いて測定することができる。水接触角の測定は、JIS R 3257(1999年)に従い、室温25℃、相対湿度50%の雰囲気下で、アンダーコート層表面に1〜4μLの水をシリンジで滴下し、液滴を水平断面から観察し、液滴端部の接線とアンダーコート層の表面とのなす角を求める。
[カーボンナノチューブ]
本発明において用いられるカーボンナノチューブは、実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであれば特に限定されず、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ、多層に巻いた多層カーボンナノチューブいずれも適用できるが、中でもグラファイトの1枚面を2層に巻いた特に2層カーボンナノチューブが100本中に50本以上含まれているカーボンナノチューブであると、導電性ならびに塗布用分散液中でのカーボンナノチューブの分散性が極めて高くなることから好ましい。さらに好ましくは100本中75本以上が2層カーボンナノチューブ、最も好ましくは100本中80本以上が2層カーボンナノチューブである。なお、2層カーボンナノチューブが100本中に50本含まれていることを、2層カーボンナノチューブの割合が50%と表示することもある。また、2層カーボンナノチューブは酸処理などによって表面が官能基化されても導電性などの本来の機能が損なわれない点からも好ましい。
カーボンナノチューブは、例えば次のように製造される。マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒を、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させ、該反応器内にメタンを鉛直方向に供給し、メタンと前記触媒を500〜1,200℃で接触させ、カーボンナノチューブを製造した後、カーボンナノチューブを酸化処理することにより、単層〜5層のカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブを得ることができる。カーボンナノチューブは製造した後、酸化処理を施すことにより単層〜5層の割合を、特に2層〜5層の割合を増加させることができる。酸化処理は例えば、硝酸処理する方法により行われる。硝酸はカーボンナノチューブに対するドーパントとして作用するため、好ましい。ドーパントとは、カーボンナノチューブに余剰の電子を与える、または電子を奪ってホールを形成する作用をなすものであり、自由に動くことのできるキャリアを生じさせることにより、カーボンナノチューブの導電性を向上させるものである。硝酸処理法は本発明のカーボンナノチューブが得られる限り、特に限定されないが、通常、140℃のオイルバス中で行われる。硝酸処理時間は特に限定されないが、5〜50時間の範囲であることが好ましい。
[分散剤]
カーボンナノチューブの分散剤としては、界面活性剤、各種高分子材料(水溶性高分子材料等)等を用いることができるが、分散性が高いイオン性高分子材料が好ましい。イオン性高分子材料としてはアニオン性高分子材料やカチオン性高分子材料、両性高分子材料がある。カーボンナノチューブ分散能が高く、分散性を保持できるものであればどの種類も用いることができるが、分散性、および分散保持性に優れることから、アニオン性高分子材料が好ましい。なかでも、カルボキシメチルセルロースおよびその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸の塩がカーボンナノチューブ分散液においてカーボンナノチューブを効率的に分散することができ、好ましい。
本発明において、カルボキシメチルセルロース塩、ポリスチレンスルホン酸塩を用いる場合、塩を構成するカチオン性の物質としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のカチオン、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のカチオン、アンモニウムイオン、あるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、エチルアミン、ブチルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等の有機アミンのオニウムイオン、または、これらのポリエチレンオキシド付加物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
[溶媒]
本発明においてカーボンナノチューブ分散液に用いられる溶媒は分散剤を容易に溶解できる点、廃液の処理が容易である等の観点から、水が好ましい。
[カーボンナノチューブ分散液]
本発明において用いるカーボンナノチューブ分散液の調製方法は、特に限定されないが、例えば次のような手順で行うことができる。分散時の処理時間が短縮できることから、一旦、分散媒中にカーボンナノチューブを0.003〜0.15質量%の濃度範囲で含まれる分散液を調製した後、希釈することで、所定の濃度とすることが好ましい。本発明において、カーボンナノチューブに対する分散剤の質量比(分散剤/カーボンナノチューブ)は10以下であることが好ましい。かかる好ましい範囲であると、均一に分散させることが容易である一方、導電性低下の影響が少ないため好ましい。質量比は0.5〜9であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、質量比が2〜3であれば、高い透明導電性を得ることができるので特に好ましい。
調製時の分散手段としては、カーボンナノチューブと分散剤とを分散媒中で塗装製造に慣用の混合分散機(例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)を用いて混合することが挙げられる。また、これら複数の混合分散機を組み合わせて段階的に分散を行ってもよい。中でも、振動ボールミルで予備的に分散を行った後、超音波装置を用いて分散する方法が、得られる塗布用分散液中のカーボンナノチューブの分散性が良好であることから好ましい。
[カーボンナノチューブを含む層の作製方法]
本発明において、カーボンナノチューブを含む層は、カーボンナノチューブ分散液を基材に塗布する塗布工程と、その後分散媒を除去する乾燥工程とを経て作製される。本発明において、分散液を基材上またはアンダーコート層上に塗布する方法は特に限定されない。既知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。最も好ましい塗布方法は、グラビアコーティング、バーコーティング、ダイコーティングである。
前記塗布工程の後、乾燥工程にて塗布された分散剤を含むカーボンナノチューブ分散液から分散媒を除去する。溶媒の除去方法としては、熱風を基材に当てる対流熱風乾燥、赤外線乾燥装置からの輻射で基材に赤外線を吸収させて熱に変え加熱し乾燥させる輻射熱乾燥、熱媒体で加熱された壁面からの熱伝導で加熱し乾燥させる伝導熱乾燥、などを適用することができる。中でも対流熱風乾燥は乾燥速度が大きいため好ましい。
本発明において、カーボンナノチューブを含む層とは、カーボンナノチューブ分散液から分散媒を取り除いた後の、カーボンナノチューブおよび分散剤を含む固形分を含有する層のことを指す。
[カーボンナノチューブ塗布量の調整]
カーボンナノチューブ分散液を基材または、アンダーコート層上に塗布する際の量は、カーボンナノチューブ分散液の濃度にも依存するため、望む表面抵抗値が得られるように適宜調整すればよい。本発明におけるカーボンナノチューブ塗布量は、導電性を必要とする種々の用途を達成するために、容易に調整可能である。例えば、塗布量が1mg/m〜40mg/mである。
[オーバーコート層]
本発明におけるオーバーコート層に用いる樹脂は、導電積層体に必要な特性に合わせて選択することができ、表面硬度、基材との密着性の得られるアクリル樹脂やポリエステル樹脂、延伸追従性に優れるポリウレタン樹脂などが好適に利用できる。また、これら複数の樹脂を組み合わせて使用することもできる。中でも、延伸性に優れたポリウレタン樹脂や、ウレタン骨格を有するウレタンアクリレートが架橋した樹脂が好適に用いられる。
本発明に用いるオーバーコート層の厚みは、15〜450nmが好ましく、40〜300nmがより好ましく、45〜200nmがさらに好ましく、50〜100nmが特に好ましい。オーバーコート層の厚みが15nmより薄くなると、粘着層貼合時の導電性安定化効果が十分に発現しない場合がある。オーバーコート層の厚みが450nmより厚くなると、導電層表面に存在するカーボンナノチューブの量が少なくなることから、接触抵抗値が上昇する場合がある。
[オーバーコート層の作製方法]
オーバーコート層の作製方法は前記オーバーコート層に用いる樹脂を含む塗料を乾燥した後の厚みが所望の厚みになるよう固形分濃度を調整し、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、スピンコート法などにより塗布することが好ましい。樹脂を含む塗料は樹脂が溶媒に溶解されているか、樹脂が分散媒に分散された状態で用いることができる。本発明のオーバーコート層に用いる樹脂を含む塗料に用いられる溶媒、分散媒としては、水、有機溶剤などを用いることができ、塗工適性の観点から水、イソプロピルアルコールやエタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、シクロヘキサノンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、キシレン、トルエンなどの炭化水素系溶剤が好適に用いられる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
オーバーコート層に用いる樹脂を含む塗料には、オーバーコート層の効果が損なわれない範囲で、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、触媒、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤などを用いることができる。
次いで、塗布後の塗膜を乾燥させて溶媒、分散媒を除去することが好ましい。ここで、乾燥に用いられる熱源としては特に制限は無く、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターなど任意の熱源を用いることができる。なお、加熱温度は50〜150℃で行うことが好ましい。また、加熱処理時間は数秒〜1時間行うことが好ましい。さらに、加熱処理中は温度が一定であってもよく、徐々に温度を変化させてもよい。また、乾燥処理中は湿度を相対湿度で20〜90%RHの範囲で調整しながら加熱処理してもよい。前記加熱処理は、大気中もしくは不活性ガス中に封入した状態で行ってもよい。
次に、必要に応じて乾燥後の樹脂を含む塗膜に紫外線照射などの活性エネルギー線照射処理を施すことで前記塗膜の組成を変性させ、本発明のオーバーコート層を得ることができる。紫外線処理は、1回のみ行ってもあるいは2回以上繰り返して行ってもよい。紫外線処理を行う際の酸素濃度は、オーバーコート層の組成制御の観点から酸素ガスの体積比1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。相対湿度は任意でよい。また、前記紫外線処理では窒素ガスを用いて酸素濃度を低下させることがより好ましい。
紫外線発生源としては、高圧水銀ランプメタルハライドランプ、マイクロ波方式無電極ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ等、既知のものを用いることができる。
紫外線照射の積算光量は、50〜3,000mJ/cmであることが好ましく、100〜1,000mJ/cmがより好ましい。前記積算光量が50mJ/cm以上であれば所望のオーバーコート層が得られるため好ましい。また、前記積算光量が3,000mJ/cm以下であれば高分子基材へのダメージを少なくすることができるため好ましい。
[透明導電性]
本発明の導電積層体は以下の[A]または[B]を満たすことが好ましい。
[A]全光線透過率が80%以上93%以下であり、表面抵抗値が1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下
[B]導電層光吸収率が1%以上10%以下であり、表面抵抗値が1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下。
[A]または[B]を満たすことにより、透明導電性に優れた導電積層体となり、タッチセンサー、タッチパネル、電子ペーパー、タッチスイッチに好適に用いることができるため好ましい。
ここで、透明性の指標として代表的なものは、全光線透過率であり、導電層を1層含んだ導電積層体の全光線透過率が実用的な意味がある。なお、全光線透過率は導電層表層や基材の反導電面の反射率により変化する。例えば、導電層表層や基材の反導電面の反射率が高いと、全光線透過率は低い値となる。すなわち、全光線透過率はオーバーコート層や基材の種類により調整できる値であるため、透明性の指標として導電層光吸収率を用いることがある。導電層光吸収率はオーバーコート層や基材の種類を問わず比較可能な値である。また、導電性の指標として代表的なものは、表面抵抗値であり、導電層を1層含んだ導電積層体の表面抵抗値が実用的な意味がある。
透明導電性の観点から、高い全光線透過率が求められる抵抗膜式タッチパネルに好適に用いられるため、以下の[A]または[B]を満たすことがより好ましい
[A]全光線透過率が85%以上93%以下であり、表面抵抗値が1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下
[B]導電層光吸収率が1%以上8%以下であり、表面抵抗値が1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下。
低い表面抵抗値が求められる静電容量式タッチパネルに好適に用いられるため、以下の[A]または[B]を満たすことが特に好ましい
[A]全光線透過率が85%以上93%以下であり、表面抵抗値が1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下
[B]導電層光吸収率が1%以上8%以下であり、表面抵抗値が1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下。
[ヘイズ値]
本発明の導電積層体において、導電積層体を2倍延伸したときのヘイズ値は好ましくは0%以上5%以下、より好ましくは0%以上3%以下、さらに好ましくは0%以上1%以下である。ここでいうヘイズ値とはJIS−K7361(1997年)に基づき測定した値である。ヘイズ値がこの範囲にあることによって、例えばタッチセンサー、タッチパネルやタッチスイッチに用いた場合、表示品位が損なわれることなく、良好に使用することができるため好ましい。
[導電積層体の製造方法]
本発明の導電積層体は、基材上にポリウレタン樹脂とシリカ粒子とを含むアンダーコート層を形成し、前記アンダーコート層の上にカーボンナノチューブを含む塗液をコーティングすることにより導電層を形成する導電積層体の製造方法であることが好ましい。前記アンダーコート層の上にカーボンナノチューブを含む塗液をコーティングすることにより、カーボンナノチューブ同士の接点距離が近い良好なネットワーク構造を取ることができるため好ましい。
[成型加工]
本発明の導電積層体は、様々な成型方法を使って成型体を得ることができる。真空成型、圧空成型、真空成型と圧空成型とを組み合わせた圧空真空成型、プレス成型、プラグ成型、ラミネート成型、インモールド成型、インサート成型などの成型方法で成型することが可能である。本発明において、導電積層体の基材に用いられる樹脂の性質や、基材上に積層される層に用いられる樹脂の性質、さらにはそれぞれの厚み、成型させる形状に合わせた成型方法を選択することができる。
延伸倍率については、導電積層体の基材に用いられる材料特性や厚みによって決められるが、基材のガラス転移点以上の温度環境下で1倍を超えて2倍以下の範囲であれば生産性良く、延伸後の位相差も制御しやすいため好ましい。すなわち、導電積層体を基材のガラス転移点以上の温度環境下で1倍を超えて2倍以下で延伸することが好ましい。また延伸の際、Tg以上で行うと延伸しても位相差が低いまま保たれるため好ましい。延伸温度については、好ましくはTg+30度以下の範囲、より好ましくは、Tg+20度以下の範囲、さらに好ましくは、Tg+10度以下の範囲である。延伸温度がこの範囲にあることでしわやたるみが入りにくく良好に成型できるため好ましい。
[成型体]
本発明でいう成型体とは本発明の導電積層体を例えば上述した[成型加工]の項に記載した方法で成型したものをいう。また、本発明の成型体は、加飾フィルムや他の樹脂材料と貼り合せて使用することもできる。
[用途]
本発明の導電積層体は延伸後のヘイズ値上昇が小さいため、立体形状のタッチパネルや電子ペーパー等の表示装置に特に好ましく用いることができる。さらに、本発明の導電積層体は、タッチセンサーや静電容量式タッチスイッチ、静電容量式タッチパネル、面状発熱体、電太陽電池用電極等にも好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。本実施例で用いた測定法を以下に示す。
<測定法>
(1)分散剤の重量平均分子量
分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて重量平均分子量を算出した。
装置:株式会社島津製作所製 LC−10Aシリーズ
カラム:昭和電工株式会社製 GF−7M HQ
移動相:10mmol/L 臭化リチウム水溶液
流速:1.0ml/min
検出:示差屈折率計
カラム温度:25℃。
(2)表面抵抗値
100mm×50mmの大きさにカットした導電積層体の中央部を非接触式抵抗率計(ナプソン(株)製 NC−10)を用い、渦電流方式で測定した値を表面抵抗値とした。
(3)全光線透過率、ヘイズ値
JIS K 7361(1997年)に基づき、日本電色工業(株)製の濁度計NDH4000を用いて測定した。
(4)導電層光吸収率
(4−1)導電面反射率、導電面逆面反射率
測定面の反対側表面を60°光沢度(JIS Z 8741 (1997年))が10以下になるように320〜400番の耐水サンドペーパーで均一に粗面化した後、可視光線透過率が5%以下となるように黒色塗料を塗布して着色した。測定面を分光光度計((株)島津製作所製 分光光度計UV−3150)にて、測定面から5°の入射角で、550nmでの導電面反射率、導電面逆面反射率測定を行った。
(4−2)光透過率
分光光度計((株)島津製作所製 分光光度計UV−3150)にて、導電面から光を入射させて550nmにおける光透過率測定を行った。
(4−3)導電層光吸収率
(4−1)、(4−2)で測定した導電面反射率、導電面逆面反射率、光透過率から次式を用いて導出した。
導電層光吸収率(%)=100%−光透過率(%)−導電面反射率(%)−導電面逆面反射率(%)・・・式(1)。
(5)各層の厚み
導電積層体の各層の厚みは断面のTEM観察により測定した。測定する導電積層体の断面を収束イオンビーム装置(FIB、Focused Ion Beam)(株式会社日立ハイテクノロジー製「FB2000A」)で薄膜化し、透過型電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)(株式会社日立ハイテクノロジー製「H7100FA」)を用いて観察した。得られた像のコントラスト差より、界面を判断し、アンダーコート層とカーボンナノチューブを含む層とオーバーコート層を合わせた厚みを導電層厚みとして計測した。観察は20,000倍から100,000倍の範囲で行い、導電層厚みが1視野内の縦方向で50%以上に収まる倍率を選択して計測した。
(6)導電層に含まれる樹脂の同定
サンプルの導電層をFT−IR−ATR法にて分析した。ウレタン結合を示す1,550〜1,530cm−1、CO二重結合を示す1,770−1、760cm−1、NH結合を示す3,250〜3,350cm−1のすべてにピークを有する場合、導電層中にウレタン樹脂を含むと判断した。
(7)延伸後の全光線透過率、ヘイズ値
導電積層体を長さ150mm、幅20mmにカットし、引っ張り試験機(テンシロン ヤマト科学社製)の槽内を160℃で温度を調整し、導電積層体を試長50mmになるように設置し、導電積層体を1分間加熱した。その後、槽内温度を保ったまま、引っ張り速度50mm/minで10mm延伸し(20%延伸)、そのまま10秒間固定しその後サンプルを取り出した。以上の条件により得られたサンプルの中央部をJIS K 7361(1997年)に基づき、日本電色工業(株)製の濁度計NDH4000を用いて測定した。
(8)延伸後の表面抵抗値
導電積層体を長さ150mm、幅20mmにカットし、引っ張り試験機(テンシロン ヤマト科学社製)の槽内を160℃で温度を調整し、導電積層体を試長50mmになるように設置し、導電積層体を1分間加熱した。その後、槽内温度を保ったまま、引っ張り速度50mm/minで10mm延伸し(20%延伸)、そのまま10秒間固定しその後サンプルを取り出した。以上の条件により得られたサンプルの中央部を非接触式抵抗率計(ナプソン(株)製 NC−10)を用い、渦電流方式で測定した値を延伸後の表面抵抗値とした。
(9)延伸後の導電層光吸収率
導電積層体を長さ150mm、幅20mmにカットし、引っ張り試験機(テンシロン ヤマト科学社製)の槽内を160℃で温度を調整し、導電積層体を試長50mmになるように設置し、導電積層体を1分間加熱した。その後、槽内温度を保ったまま、引っ張り速度50mm/minで10mm延伸し(20%延伸)、そのまま10秒間固定しその後サンプルを取り出した。以上の条件により得られたサンプルを(4)導電層光吸収率と同様の方法で測定し、式(1)より導出した値を延伸後の導電層光吸収率とした。
(実施例1)
[アンダーコート層作製]
以下の操作により、アンダーコート層を作製した。
ポリウレタン樹脂の水分散体(第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス150」固形分濃度:30質量%)をアンダーコート層用の樹脂とし、シリカ粒子の水分散体(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOUP」固形分濃度:15質量%)をアンダーコート層に含まれるシリカ粒子とした。前記スーパーフレックス150とスノーテックスOUPと純水を質量比で5.25:4.5:5.25の割合で混合し、固形分15質量%のアンダーコート層作製用の塗布液とした。基材として、厚さ100μmのポリカーボネートフィルム(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロンE2000」)を使用した。UR100線のグラビアロールを用いて、ライン速度に対するグラビアロールの回転比を1.5倍に設定し、基材上に前記アンダーコート層用の塗液を塗布した。塗布後、125℃の乾燥機内で1分間乾燥させた。この方法で作製したアンダーコート層の厚みは約800nmで、アンダーコート層の樹脂とシリカ粒子の質量比は7:3であった。
[カーボンナノチューブ合成触媒調製]
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.2kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。この時、洗い込み液としてイオン交換水0.5kgを使用した。密閉した状態で160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、濾取物中に少量含まれる水分は120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、10〜20メッシュの範囲の粒径を回収した。左記の顆粒状の触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。かさ密度は0.32g/mLであった。また、濾液をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析したところ鉄は検出されなかった。このことから、添加したクエン酸鉄(III)アンモニウムは全量酸化マグネシウムに担持されたことが確認できた。さらに触媒体のEDX分析結果から、触媒体に含まれる鉄含有量は0.39質量%であった。
[カーボンナノチューブの製造]
前記の触媒を用い、カーボンナノチューブを合成した。固体触媒132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層を作製した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにメタンガスを0.78L/minで60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却して触媒付きカーボンナノチューブ組成物を得た。この触媒付きカーボンナノチューブ組成物を129g用いて4.8Nの塩酸水溶液2,000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返し、触媒が除去されたカーボンナノチューブ組成物を得た。
[カーボンナノチューブの酸化処理]
前記のカーボンナノチューブ組成物を約300倍の質量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay 60〜61質量%)に添加した。その後、約140℃のオイルバスで24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で2倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。このカーボンナノチューブ組成物の平均外径を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、1.7nmであった。また2層カーボンナノチューブの割合は90質量%であり、波長532nmで測定したラマンG/D比は80であり、燃焼ピーク温度は725℃であった。
[重量平均分子量:35,000のカルボキシメチルセルロースの製造]
10質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)社製、セロゲン5A(重量平均分子量:80,000、分子量分布(Mw/Mn):1.6、エーテル化度:0.7))水溶液500gを三口フラスコに加えて、1級硫酸(キシダ化学(株)社製)を用いてpH2に調整した。この容器を120℃に昇温したオイルバスに移し、加熱還流下で攪拌しながら9時間加水分解反応を行った。三口フラスコを放冷後、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)社製)を用いてpH10に調整し反応停止した。加水分解後のカルボキシメチルセルロースナトリウムの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。その結果、重量平均分子量は約35,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。また収率は97質量%であった。前記10質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(重量平均分子量:35,000)水溶液20gを30cmに切断した透析チューブ(スペクトラムラボラトリーズ(株)社製、Biotech CE透析チューブ(分画分子量:3,500−5,000D、16mmφ)に加え、この透析チューブをイオン交換水1,000gが入ったビーカーに浮かべて2時間透析を行った。その後、新しいイオン交換水1,000gと入れ替えて再度2時間透析を行った。この操作を3回繰り返した後、新しいイオン交換水1,000gが入ったビーカー中で12時間透析を行い、透析チューブからカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を取り出した。この水溶液についてエバポレーターを用いて減圧濃縮した後、凍結乾燥機を用いて乾燥した結果、粉末状のカルボキシメチルセルロースナトリウムが70質量%の収率で得られた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による重量平均分子量は透析前と同等であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィースペクトルにおけるピーク面積について透析前のカルボキシメチルセルロースナトリウムが57質量%であったのに対し、透析後では硫酸アンモニウムのピーク面積が減少し、カルボキシメチルセルロースナトリウムのピーク面積が91質量%に向上した。
[カーボンナノチューブ分散液作製]
この10質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(重量平均分子量:35,000)水溶液を用いてウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物(乾燥質量換算で25mg)、3.5質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)社製、セロゲン5Aを加水分解した(重量平均分子量:35,000))水溶液1.8g、ジルコニアビーズ(東レ(株)社製、“トレセラム”(登録商標)、ビーズサイズ:0.8mm)13.3gを容器に加え、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)社製)を用いてpH10に調整した。この容器を振動ボールミル((株)入江商会社製、VS−1、振動数:1,800cpm(60Hz))を用いて2時間振盪させ、カーボンナノチューブペーストを調製したところ、このカーボンナノチューブ含有組成物ペースト中の分散剤の吸着量は88質量%、粒径は2.9μmであった。
次にこのカーボンナノチューブ含有組成物ペーストをカーボンナノチューブ含有組成物の濃度が0.15質量%となるようにイオン交換水で希釈し、その希釈液10gに対して再度28質量%アンモニア水溶液でpH10に調整した。その水溶液を超音波ホモジナイザー(家田貿易(株)社製、VCX−130)出力20W、1.5分間(2kW・min/g)、氷冷下分散処理した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機((株)トミー精工、MX−300)にて10,000G、15分遠心処理し、カーボンナノチューブ分散液9gを得た。この分散液中のAFMにより測定したときのカーボンナノチューブ含有組成物の分散体の平均直径は1.7nmであり、孤立分散していた。また、カーボンナノチューブ含有組成物の分散体の長さは3.9μmであった。その後、水を添加して終濃度でカーボンナノチューブ含有組成物の濃度が0.06質量%となるように調製してフィルム塗布液とした。
[カーボンナノチューブを含む層の作製]
前記作製法で作製したフィルム塗布液を、前記アンダーコート層上に、バーコート法によって塗布、乾燥させることで、カーボンナノチューブを含む層を作製した。なお、バーコートの番手は6番、乾燥温度100℃、乾燥時間60秒である。
[オーバーコート層の作製]
ウレタンアクリレート(共栄社化学株式会社製「UF−8001G」)をイソプロピルアルコールと酢酸エチルを7:3の質量比で混合した溶媒で希釈し、固形分濃度を2.0質量%とし、光重合開始剤(BASF社製「IRGACURE184」)を樹脂固形分に対して5質量%添加してオーバーコート塗液とした。この塗液をカーボンナノチューブを含む層上にバーコーター番手8番で塗布、熱風オーブンを用いて125℃で1分間乾燥した。さらに、UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製「ECS−301」)を用いて窒素雰囲気下で積算光量400mJ/cmの照射量でUV照射し、オーバーコート層を形成した。オーバーコート層とカーボンナノチューブを含む層とアンダーコート層は明確な界面を持たず、オーバーコート層、カーボンナノチューブを含む層、アンダーコート層を合わせた導電層の厚みは820nmであった。
このようにして作製した導電積層体のヘイズ値は0.3%であり、この導電積層体を20%延伸した後のヘイズ値は0.3%であった。
(実施例2)
アンダーコート層の作製に用いるグラビアロールをUR100線に変えたこと以外は実施例1と同様の方法で導電積層体を作製し、導電積層体の延伸前後のヘイズ値を測定した。
(実施例3)
オーバーコート層を設けないこと以外は実施例1と同様の方法で導電積層体を作製し、導電積層体の延伸前後のヘイズ値を測定した。
(実施例4)
オーバーコート層として用いる材料を6官能アクリレート(共栄社化学株式会社製「ライトアクリレートDPE−6A」)に変えたこと以外は実施例1と同様の方法で導電積層体を作製し、導電積層体の延伸前後のヘイズ値を測定した。
(比較例1)
以下の手順でアンダーコート層作製用の塗布液を調整した。親水アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(高松油脂株式会社製「ペスレジンA647−GEX」固形分濃度:20質量%)をアンダーコート層用の樹脂とし、シリカ粒子の水分散体(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOUP」固形分濃度:15質量%)をアンダーコート層に含まれるシリカ粒子とした。前記ペスレジンA647−GEXとスノーテックスOUPと純水を質量比で2.6:10.9:1.5の割合で混合し、固形分5質量%のアンダーコート層作製用の塗布液とした。上記アンダーコート層作製用の塗布液を使用し、オーバーコート層を設けないこと以外は実施例1と同様の方法で導電積層体を作製し、導電積層体の延伸前後のヘイズ値を測定した。
(比較例2)
以下の手順でアンダーコート層作製用の塗布液を調整した。4官能シリカ(コルコート(株)製「コルコートN−103X」固形分濃度:2.0質量%)をイソプロピルアルコールで希釈し固形分1質量%のアンダーコート層作製用塗布液とした。上記アンダーコート層作製用の塗布液を使用し、オーバーコート層を設けないこと以外は実施例1と同様の方法で導電積層体を作製し、導電積層体の延伸前後のヘイズ値を測定した。
Figure 2017007312
Figure 2017007312
1:基材
2:アンダーコート層
3:カーボンナノチューブを含む層
4:オーバーコート層
5:導電層

Claims (9)

  1. 基材上にカーボンナノチューブを含む導電層を有する導電積層体であって、20%延伸した後のヘイズ値が3.0%以下であることを特徴とする導電積層体。
  2. 前記導電層がポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電積層体。
  3. 前記導電層がシリカ粒子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の導電積層体。
  4. 前記基材が熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電積層体。
  5. 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂および環状オレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の導電積層体。
  6. 以下の[A]または[B]を満たす請求項1〜5のいずれかに記載の導電積層体。
    [A]全光線透過率が80%以上93%以下であり、表面抵抗値が1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下
    [B]導電層光吸収率が1%以上10%以下であり、表面抵抗値が1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下
  7. 基材上にポリウレタン樹脂とシリカ粒子とを含むアンダーコート層を形成し、前記アンダーコート層の上にカーボンナノチューブを含む塗液をコーティングすることにより導電層を形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の導電積層体の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の導電積層体を用いた成型体。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の導電積層体または請求項8に記載の成型体を用いたタッチセンサー。
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