本実施形態の自動火災報知システムA1について図を参照して説明する。
自動火災報知システムA1は、図1に示すように、少なくとも1台の子機B1〜B16(本実施形態では16台)と、1台の親機20とを備え、子機B1〜B16と親機20とは各々、一対の電線51,52に電気的に接続されている。なお、以下の説明では、16台の子機B1〜B16の各々を区別しないで説明する場合には「子機10」として説明する。
子機10は例えば、熱感知器、煙感知器、炎感知器などの装置からなり、火災発生を検知した場合に火災発生を報知する信号(火災報)を一対の電線51,52に送信する。なお、子機10は、火災の発生を検知する感知器に限らず、発信機などを含んでいてもよい。ここで言う発信機は押しボタンスイッチを有し、例えば火災を発見した人が押しボタンスイッチを押すことにより一対の電線51,52に火災報を送信する装置である。
親機20(例えば受信機)は、一対の電線51,52に送信された信号を受信し、その信号が火災報の場合に火災発生の報知を行う。親機20は、例えば自動火災報知システムA1が設置された建物の管理室などに配置される。
以下の説明では、集合住宅(例えばマンション)に用いられる自動火災報知システムA1について説明するが、自動火災報知システムA1は、集合住宅に限らず、例えば商業施設、病院、ホテル、雑居ビルなどの適宜の建物で使用できる。
自動火災報知システムA1は、図1に示すように、1棟の集合住宅60に対して、少なくとも1台の子機10(本実施形態では16台)と、1台の親機20とを備えている。
本実施形態の自動火災報知システムA1では、集合住宅60の1〜4階の各階(フロア)に(2本で1組の)一対の電線51,52が配線されている。つまり本実施形態の自動火災報知システムA1は、一対の電線51,52を4組備えている。
本実施形態の自動火災報知システムA1には、各組の一対の電線51,52に対して最大で40〜80台の子機10が接続可能である。さらに、1台の親機20には、一対の電線51,52は最大で50〜200回線(50〜200組)接続可能である。例えば各組の一対の電線51,52に最大で40台の子機10が接続可能で、1台の親機20に最大で50回線の一対の電線51,52が接続可能である場合、子機10は、1台の親機20に対して最大で2000(=40×50)台まで接続可能である。なお、これらの数値は一例であって、これらの数値に限定する趣旨ではない。
一対の電線51,52には各々、親機20が接続されている端部と反対側の端部に終端抵抗40が接続されている。親機20は、一対の電線51,52間に流れる電流の電流値を計測することで、一対の電線51,52の断線を検知することが可能である。なお、終端抵抗40は必須の構成ではなく、省略されていてもよい。
親機20には、他装置30が電気的に接続されている。他装置30は例えば、防火扉や排煙設備などの防排煙設備、非常用放送設備、外部移報装置、およびスプリンクラーなどの消火設備に用いられる装置である。外部移報装置とは例えば、自動火災報知システムA1が設置された施設の外部の関係者、消防機関、警備会社などへ通報する装置である。他装置30の動作は、親機20によって制御されるように構成されている。親機20は、他装置30を連動させるための通知(連動報)を子機10から受けると、他装置30を動作させる。つまり親機20は、子機10からの連動報の送信に応じて他装置30を連動させる。そのため、自動火災報知システムA1は、火災の発生時に、防排煙設備の防火扉を制御したり、非常用放送設備にて音響または音声により火災の発生を報知したりすることが可能である。
ところで、自動火災報知システムとして、P型(Proprietary-type)の自動火災報知システムが知られている。P型の自動火災報知システムは、子機が一対の電線を電気的に短絡することで親機に火災発生を通知する。
本実施形態の自動火災報知システムA1では、従来のP型の自動火災報知システムで使用する配線(2本1組の電線からなる一対の電線)と同様の配線が使用される。そのため、従来のP型の自動火災報知システムが使用されている集合住宅などに本実施形態の自動火災報知システムA1を導入する際に、一対の電線を新たに敷設することなく、従来の一対の電線を利用可能である。従来のP型の自動火災報知システムの親機を親機20に交換し、従来のP型の自動火災報知システムの子機を子機10に交換することで自動火災報知システムA1を実現することも可能である。
次に、親機20および子機10の構成について図2および図4を参照して説明する。なお、図2では、1台の子機10が一対の電線51,52を介して1台の親機20に接続されている状態を示し、他の複数の子機10および他の一対の電線51,52の図示を省略している。
親機20と子機10とは各々、一対の電線51,52に電気的に接続されて一対の電線51,52に信号を送信する。一対の電線51,52に送信される信号は例えば、一対の電線51,52間の電圧の変化や電流の変化に基づく信号である。本実施形態では、親機20と子機10とは各々、一対の電線51,52に流れる電流の電流値を変化させて一対の電線51,52に信号を送信するが、一対の電線51,52間の電圧を変化させて一対の電線51,52に信号を送信してもよい。
親機20は、一対の電線51,52間に電圧を印加する印加部21と、一対の電線51,52の信号を送受信する通信部22と、通信部22と電気的に接続されて通信部22を制御する処理部27とを備えている。本実施形態の親機20はさらに、表示部25と、操作部26と、連動部28と、予備電源29とを備えている。
印加部21は、一対の電線51,52間に24Vの直流電圧を印加する。印加部21は、一対の電線51,52に接続されている子機10に動作用の電力を供給する。なお、印加部21が一対の電線51,52に印加する電圧は24Vの直流電圧に限定される趣旨ではない。
一対の電線51,52のうち高電位側の電線(本実施形態では電線51)と印加部21との間には抵抗24が接続されている。抵抗24は、一対の電線51,52に送信された電流信号を電圧信号に変換する第1の機能と、一対の電線51,52間が短絡したときに一対の電線51,52を流れる電流を制限する第2の機能との2つの機能を有している。つまり抵抗24は、電流−電圧変換素子として第1の機能と、電流制限素子としての第2の機能とを兼ね備えている。ここでは一例として、抵抗24の抵抗値は400Ωあるいは600Ωとするが、この値に限定する趣旨ではない。
本実施形態の通信部22は、一対の電線51,52に信号を送信する送信部222と、一対の電線51,52から信号を受信する受信部221とを有している。
受信部221および送信部222は、抵抗24の低電位側に接続されている電線51と電線52との間に電気的に接続されている。
送信部222は、印加部21から抵抗24に流れる電流を引き込む機能と、その電流の引き込みを停止する機能とを有する。送信部222は、印加部21から抵抗24に流れる電流の電流値を所望のタイミングで増減させて一対の電線51,52間の電圧を変化させることにより信号を送信する。
受信部221は、一対の電線51,52間の電圧の変化に基づいて、一対の電線51,52に送信された信号を受信する。具体的に言うと、子機10が一対の電線51,52を流れる電流を引き込むと抵抗24を流れる電流の電流値が変化し、一対の電線51,52間の電圧が変化する。受信部221は、一対の電線51,52間の電圧の変化パターンを受信し、通信制御部23にその変化パターンを出力する。
通信部22は、送信部222と受信部221とを用いて、子機10との間で一対の電線51,52を介した信号の送受信を行う。送信部222と受信部221との動作は、通信制御部23によって制御される。
通信制御部23は、受信部221が受信した信号に含まれるデータを読み取る機能と、送信部222に一対の電線51,52間の電圧を変化させて所望のデータを含む信号を送信させる機能を有する。
通信制御部23は、複数の子機10の各々から応答信号501〜516を送信させる第1要求信号310を一対の電線51,52に送信する機能を有する。通信制御部23は、第2要求信号320を一対の電線51,52に送信する機能を有する。第1要求信号310の送信に要する時間(区間T31)は、第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)よりも短くなるように設定されている。
第1要求信号310は、同期信号300と、子機10の動作を指示する制御コマンド311とを含む。制御コマンド311は例えば、子機10が火災の発生を通知する信号を送信した場合に、どの子機10が発報したかを親機20が特定するために、動作の状態を通知する情報を応答信号として全ての子機10の制御部18に送信させる命令である。制御コマンド311は他にも、キープアライブ試験を各々の子機10に実施させて試験結果を応答信号として送信させる制御命令や、各々の子機10のセンサ13の検出値を応答信号として送信させる制御命令などである。なお、ブロードキャスト通信では、全ての子機10の制御部18は、制御コマンド311に応じた適宜の応答をするように構成されていればよく、制御部18が送信する応答信号は、上記に限定される趣旨ではない。同様に、通信制御部23が送信する制御コマンド311は、全ての子機10の制御部18が応答できるようにあらかじめ定められた制御コマンド311であればよく、上記の制御コマンド311に限定される趣旨ではない。
第2要求信号320は、同期信号300と、特定の子機10の動作を指示する制御コマンド321と、特定の子機10を指定する識別情報を含む個別要求信号322とを含む。制御コマンド321は例えば、個別要求信号322に含まれる識別情報で特定される子機10へのアドレス設定やセンサ13の感度設定の変更など、特定の子機10を個別に制御する制御命令などである。なお、個別要求信号322は、特定の子機10を指定するための識別信号の他にも、制御コマンド321に加えてさらに別の動作を特定の子機10に指示する制御命令や設定値情報などを含んでいてもよい。また、制御コマンド321は、識別情報で特定される子機10が応答できるようにあらかじめ定められた制御命令であればよく、上記の制御命令に限定される趣旨ではない。
第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)は、あらかじめ定められていてもよいし、第2要求信号320に含まれるデータや信号に応じて所望の時間となるように定められてもよい。第2要求信号320は、同期信号300と、制御コマンド321と、個別要求信号322とを含んでいるが、例えば制御コマンド321や個別要求信号322の内容に応じて情報量が異なっていてもよい。つまり第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)は、第2要求信号320に含まれるデータや信号に応じて異なっていてもよい。言い換えると、区間T32は、区間の長さがあらかじめ定められていてもよいし、第2要求信号320に含まれるデータや信号に応じて区間の長さを変えられる区間(可変長の区間)であってもよい。なお、詳しくは後述するが、第2要求信号320の送信に要する時間が変化しても、子機10の制御部18は、第2要求信号320の送信に要する時間に応じた区間T32を受信区間として設けるので、制御部18は第2要求信号320を最後まで受信できる。
処理部27は、例えばマイクロコンピュータで構成され、マイクロコンピュータが有するメモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。本実施形態の処理部27は、メモリに記憶された通信制御用のプログラムを実行することにより、通信部22を制御する通信制御部23を実現している。なお、処理部27が実行するプログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、インターネットのような電気通信回線を通して提供されてもよい。
連動部28は、他装置30(図1参照)の動作を制御する。連動部28の動作は、処理部27にて制御される。通信制御部23が一対の電線51,52から連動報を受信すると、処理部27は、連動報に応じて他装置30の動作を制御するように構成されている。
予備電源29は、例えば蓄電池などで構成されている。予備電源29は、停電時でも一定の時間、自動火災報知システムA1を動作させる容量の電力を有するように構成されている。親機20は、通常は商用電源や自家発電設備などから供給される電力で動作するが、停電時には予備電源29の電力で動作するように構成されている。
表示部25は、例えばLED(Light Emitting Diode)や液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなどを備えている。表示部25の動作は処理部27によって制御される。処理部27は、一対の電線51,52から受信したデータの内容に応じて表示部25の表示内容を変えさせる。表示部25は例えば、火災の発生、火災の発生階(フロア)、火災や異常を検知した子機10の識別情報、子機10のキープアライブの試験結果、子機10の自動試験の結果などを表示できる。
操作部26は、例えば押しボタンスイッチや、タッチパネル方式のディスプレイを備えている。操作部26で操作された内容に応じて、処理部27は、あらかじめ定められた制御動作を行う。操作部26は例えば、火災報知動作の停止、子機の異常検知動作の停止、子機10のキープアライブ試験や自動試験の開始などを処理部27に行わせるように構成されている。
親機20は、警報音発生部を有していてもよい。警報音発生部は例えば、スピーカーなどの音を発生させる装置を備えている。警報音発生部の動作は、例えば処理部27により制御され、一対の電線51,52から受信したデータの内容に応じて、警報音を鳴らしたり音声案内を再生したりする。
親機20は、子機情報記憶部を有していてもよい。子機情報記憶部は例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などからなる。親機20は例えば、複数台の子機B1〜B16の各々が有する固有の識別情報を、子機B1〜B16の各々の設置場所(例えば部屋番号)と対応付けて子機情報記憶部に記憶する。なお、固有の識別情報については後述する。
親機20は、複数の子機10のうちどの子機10が信号を送信したかを、子機情報記憶部に記憶されている識別情報に基づいて識別し、信号を送信した子機10の設置場所を表示部25に表示させることができる。
本実施形態の親機20では、1つの処理部27が、印加部21、通信部22(送信部222、受信部221)、表示部25、操作部26、連動部28の各々を制御しているが、この構成に限定されない。親機20は例えば、印加部21、通信部22(送信部222、受信部221)、表示部25、操作部26、連動部28の各々を個別に制御する制御部を有していて、その複数の制御部を処理部27が制御するように構成されていてもよい。
次に、子機10の構成について説明する。
子機10は、記憶部17と、送信部15と、受信部16と、制御部18とを備える。本実施形態の子機10はさらに、報知部19と、ダイオードブリッジ11と、センサ13と、電源回路12とを備える。
記憶部17は、例えばEEPROMで構成されていて、固有の識別情報(例えばアドレス)を記憶する。固有の識別情報とは、複数ある子機10の各々を識別するための情報であり、重複しない情報である。識別情報は、子機10を建物に設置する前にあらかじめ記憶部17に記憶させておいてもよいし、後述する方法により親機20から送信された識別情報であってもよい。なお、すべての子機10が各々、(重複しない)固有の識別情報を有していればよく、記憶部17はROMなどの書き換えできない記録媒体で構成されていてもよい。
ダイオードブリッジ11は、一対の電線51,52が電気的に接続される一対の入力端子と、一対の出力端子とを備える。ダイオードブリッジ11の高電位側の出力端子には、電源回路12、送信部15、受信部16が各々、電気的に接続されている。
電源回路12は、一対の電線51,52から供給される電力でチャージされるコンデンサを有する。電源回路12は、送信部15、受信部16、制御部18、記憶部17、センサ13の各機能を実現させるために必要な出力を供給する。電源回路12は、一対の電線51,52を流れる電流が増加し一対の電線51,52間の電圧が低下した際に、コンデンサに蓄えた電力を供給する。なお、電源回路12は、一対の電線51,52間の電圧が変動しても子機10が電力不足にならないように構成されていればよく、コンデンサを有していない適宜の構成であってもよい。
センサ13は、例えば煙の濃度の変化、温度の変化、一酸化炭素などのガス濃度の変化を検出するセンサで構成され、そのセンサの検出値に基づいて火災や煙の発生を検知する。センサ13は、火災の発生を検知すると制御部18に検知信号を送信する。
受信部16は、一対の電線51,52間の電圧の変化に基づいて、一対の電線51,52に送信された信号を受信し、受信した信号に含まれるデータを制御部18に出力する。なお、受信部16は、電圧の変化に応じて信号を出力するような既知の回路構成で実現できるので、受信部16の回路構成の説明を省略する。
送信部15は、一対の電線51,52に流れる電流を引き込んで一対の電線51,52に流れる電流の電流値を大きくする機能と、その電流の引き込みを停止する機能とを有する。送信部15は、一対の電線51,52に流れる電流の電流値を所望のタイミングで増減させて一対の電線51,52に信号を送信する。
報知部19は、例えばブザーやLEDなどを有し、周囲に火災の発生を報知するように構成されている。報知部19の動作は制御部18によって制御される。
制御部18は、例えばマイクロコンピュータで構成され、マイクロコンピュータが有するメモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。なお、プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、インターネットのような電気通信回線を通して提供されてもよい。なお、本実施形態では、送信部15と受信部16との制御を制御部18が行っているが、送信部15を制御する第1の制御部と、受信部16を制御する第2の制御部とが各々、子機10に設けられていてもよい。そして制御部18が、第1の制御部と第2の制御部とを制御するように構成されていてもよい。
制御部18は、送信部15と、受信部16と、センサ13と、記憶部17と、報知部19とに各々電気的に接続されている。制御部18は、送信部15から一対の電線51,52に信号を送信させる。制御部18は、受信部16が出力したデータを受け取る。
制御部18は、第1要求信号310を受信した場合、以下のように動作する。制御部18は、第1要求信号310を受信した時点から固有の識別情報(アドレス)に基づいて定まる固有待ち時間W2〜W16が経過した時点で第1要求信号310に対応する応答信号501〜516を送信する(図4参照)。
制御部18は、第2要求信号320を検知した場合、第1要求信号310の受信区間(区間T31)よりも長い受信区間(区間T32)を設けて第2要求信号320を受信する。制御部18は、第2要求信号320を受信しかつ第2要求信号320に含まれる識別情報が記憶部17に記憶されている識別情報と一致する場合、第2要求信号320に対応する個別応答信号600を送信する。なお、制御部18が第2要求信号320を検知する動作の詳細については後述する。
制御部18は、第1要求信号310を受信した場合、第1要求信号310を受信した時点から第1待ち時間T41が経過しさらに固有待ち時間W2〜W16が経過した時点で応答信号501〜516を送信する。制御部18は、第2要求信号320を受信しかつ第2要求信号320に含まれる識別情報が記憶部17に記憶されている識別情報と一致する場合、第2要求信号320を受信した時点から第2待ち時間T42が経過した時点で、個別応答信号600を送信する。本実施形態の第1待ち時間T41は、第2待ち時間T42よりも短くなるように設定されている。なお、第1待ち時間T41は、第2待ち時間T42以下であってもよい。
第1待ち時間T41は、通信制御部23が第1要求信号310の送信に要する時間(区間T31)に基づいてあらかじめ定められている。第2待ち時間T42は、通信制御部23が第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)に基づいてあらかじめ定められている。第1待ち時間T41および第2待ち時間T42は本実施形態では記憶部17に記憶されているが、例えばマイクロコンピュータが有するメモリに記憶されていてもよい。なお、本実施形態の第2待ち時間T42は、所望の(一定の)時間に定められているが、第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)の長さに応じて変化するように定められてもよい。言い換えると、第2待ち時間T42は、第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)の長さに応じて待ち時間の長さが変化する(つまり可変長の待ち時間となる)ように定められてもよい。
制御部18は、第1要求信号310を受信した場合は第1要求信号310を受信した時点から第1待ち時間T41が経過しさらに固有待ち時間W2〜W16が経過するまで信号を送信しない。制御部18は、第2要求信号320を受信した場合は第2要求信号320を受信した時点から第2待ち時間T42が経過するまで信号を送信しない。
なお、制御部18は、第1要求信号310を受信した時点から第1待ち時間T41が経過しさらに固有待ち時間W2〜W16が経過するまでの間、送信部15の動作と受信部16の動作とを停止させてもよい。また制御部18は、第2要求信号320を受信した時点から第2待ち時間T42が経過するまでの間、送信部15の動作と受信部16の動作とを停止させてもよい。
制御部18は、第2要求信号320に含まれている制御コマンド321(制御データ)に従って報知部19の動作を制御する。制御部18は、センサ13により火災の発生を検知すると、制御コマンド321に従って報知部19に報知動作を行わせる。報知部19の動作が制御部18によって制御されることにより、親機20は、全ての子機10の各々について、後述する自動試験を行うことができる。
以下、親機20と複数の子機10とのいずれも一対の電線51,52に信号を送信しない時間のことをガード区間GIと呼ぶ。本実施形態では、ガード区間GIは、第1要求信号310の送信完了時から応答信号501の送信開始時(応答区間500の開始時)までの時間に設定されている。また、ガード区間GIは、第2要求信号320の送信完了時から個別応答信号600の送信開始時までの時間に設定されている。さらにガード区間GIは、応答信号502〜516の各々の送信開始前に設定されている。一対の電線51,52に信号が送信されると一対の電線51,52間の電圧は、減少したり元に戻ったりすることを繰り返す。一対の電線51,52間の電圧が減少している間、子機10は電源回路12のコンデンサが蓄えた電力を用いて動作し続ける。ガード区間GIを設定することにより、減少した電力をそのコンデンサに充電することができる。ガード区間GIの長さは、そのコンデンサを充電する時間程度に定められる。
ここで、送信部15の回路構成について図3を参照して説明する。なお、子機10の送信部15と親機20の送信部222とは同様の構成であるため、親機20の送信部222の説明を省略する。
送信部15は、第1引込部151と第2引込部152とを備えており、第1引込部151と第2引込部152とが各々、一対の電線51,52を流れる電流を引き込む。送信部15は、第1引込部151のみで電流の引き込みを行う機能と、第1引込部151および第2引込部152の両方で電流の引き込みを行う機能とを有する。送信部15は、一対の電線51,52からの電流の引き込み量を変えることにより、一対の電線51,52を流れる電流を変化させて信号を送信する。
第1引込部151は、半導体素子153と、抵抗154と、LED155とを備えている。
LED155は、発光時に子機10の外部に光を放射するように配置される。
半導体素子153はnpn型のトランジスタからなる。半導体素子153のコレクタ端子は、ダイオードブリッジ11の高電位側の出力端子に電気的に接続されている。半導体素子153のエミッタ端子は、抵抗154の一端が電気的に接続されている。抵抗154の他端にはLED155のアノード端子が接続されている。LED155のカソード端子は、回路グランド(ダイオードブリッジ11の低電位側の出力端子)に電気的に接続されている。半導体素子153のベース端子は、制御部18に電気的に接続されている。第1引込部151は、制御部18からベース端子に入力される制御信号に応じて、一対の電線51,52から抵抗154およびLED155に流す電流の電流値を変化させる。すなわち第1引込部151は、制御部18からの制御信号に応じて、一対の電線51,52を流れる電流の引き込み量を変化させて信号を送信する。第1引込部151が一対の電線51,52から電流を引き込むと(つまり信号を送信すると)、LED155が発光し、子機10の外部に光を放射する。例えば子機10が、第1引込部151を動作させて火災報を一対の電線51,52に送信する場合、複数ある子機10のうちどの子機10が火災報を送信しているかを目視で判断することができる。
第2引込部152は、半導体素子156と、抵抗157とを備えている。半導体素子156はnpn型のトランジスタからなる。半導体素子156のコレクタ端子は、ダイオードブリッジ11の高電位側の出力端子に電気的に接続されている。半導体素子156のエミッタ端子は、抵抗157の一端が電気的に接続されている。抵抗154の他端は回路グランドに電気的に接続されている。半導体素子156のベース端子は、制御部18に電気的に接続されている。第2引込部152は、制御部18からベース端子に入力される制御信号に応じて、一対の電線51,52から抵抗157に流す電流の電流値を変化させる。すなわち第2引込部152は、制御部18からの制御信号に応じて、一対の電線51,52を流れる電流の引き込み量を変化させて信号を送信する。第1引込部151が一対の電線51,52から電流を引き込んでいる状態で、第2引込部152がさらに一対の電線51,52から電流を引き込むことにより、一対の電線51,52の電流値をさらに変化させることができる。つまり、第1引込部151および第2引込部152の動作を制御部18が制御することにより、第1引込部151が一対の電線51,52から電流を引き込んでいる状態であっても第2引込部152は一対の電線51,52に信号を送信できる。
なお、半導体素子153および半導体素子156は、npn型のトランジスタに限定されず、一対の電線51,52から電流を引き込む量を制御部18によって制御される適宜の半導体素子でよい。半導体素子153および半導体素子156は、例えばpnp型のトランジスタや、電界効果トランジスタでもよい。
ここで、子機10が親機20に信号を送信する動作について図2および図3を参照して説明する。なお、以下では、子機10が火災発生を通知する信号のことを火災報と呼び、子機10が火災発生後に親機に他装置30の連動を指示する信号のことを連動報と呼ぶ。
火災が発生していない状態で、子機10が親機20に所望のデータを送信する場合、制御部18は、第2引込部152に一対の電線51,52から電流を引き込ませる。制御部18は、第2引込部152の引き込み動作のオンオフを所望のタイミングで繰り返し切り替えることにより、所望のデータ(例えば親機20の要求に対して応答する信号)を一対の電線51,52に送信する。
センサ13が火災の発生を検知すると、制御部18に検知信号を送信する。制御部18は、検知信号を受信すると第1引込部151に一対の電線51,52から電流を引き込ませる。本実施形態の子機10は、第1引込部151を用いて一対の電線51,52から電流を引き込むことにより一対の電線51,52に火災報を送信する。また、火災報が送信されている状態における一対の電線51,52に流れる電流のことを火災報レベルの電流と呼ぶ。
制御部18は、一対の電線51,52に火災報レベルの電流が流れている状態で第2引込部152を用いてさらに一対の電線51,52から電流を引き込ませる。制御部18は、第2引込部152の引き込み動作のオンオフを所望のタイミングで繰り返し切り替えることにより、所望のデータを一対の電線51,52に送信する。所望のデータとは、例えば記憶部17に記憶されている識別情報を含むデータである。
制御部18は、所望のデータを一対の電線51,52に送信した後、第2引込部152の電流の引き込み量をさらに増やし、この電流の引込動作を維持する。本実施形態の子機10は、第2引込部152を用いて火災報レベルの電流からさらに電流を引き込むことにより、一対の電線51,52に連動報を送信する。また、連動報が送信されている状態における一対の電線51,52に流れる電流のことを連動報レベルの電流と呼ぶ。
親機20は、子機10が一対の電線51,52に送信した火災報、所望のデータを含む信号、連動報を各々受信部221で受信する。所望のデータに識別情報が含まれている場合、親機20はその信号を送信した子機10を識別できる。なお、親機20の送信部222も子機10の送信部15と同様に構成されている。そのため親機20は、一対の電線51,52に火災報、所望のデータ、連動報を各々送信することができる。
本実施形態の自動火災報知システムA1では、一対の電線51,52を流れる電流の電流値を増やして火災報レベルの電流にすることで火災報を送信する。自動火災報知システムA1では、一対の電線51,52の電流値を、火災報レベルからさらに増やしたり火災報レベルに戻したりすることを繰り返して所望のデータを送信する。自動火災報知システムA1では、火災報レベルの電流よりもさらに電流値を増やした状態を維持することで連動報を送信する。なお、火災報、所望のデータ、連動報を各々、一対の電線51,52に送信する方法は上記の方法に限定されず、親機20が、火災報、所望のデータ、連動報の各々を区別できる任意の送信方法でよい。さらに、親機20および子機10が一対の電線51,52に信号を送信する順序は、火災報、所望のデータ、連動報の順に限定される趣旨ではない。
次に、親機20と子機10とが各々、一対の電線51,52に信号を送信する手順について図4および図5を参照して説明する。なお、以下の説明では、親機20の通信制御部23が送信部222から一対の電線51,52に信号を送信させる動作について「通信制御部23が信号を送信する」と表記する。また、受信部221が一対の電線51,52から信号を受信して信号に含まれるデータを通信制御部23に出力する動作について「通信制御部23が信号を受信する」と表記する。そして、子機10の制御部18が送信部15から一対の電線51,52に信号を送信させる動作について「制御部18が信号を送信する」と表記する。また、受信部16が一対の電線51,52から信号を受信して信号に含まれるデータを制御部18に出力する動作について「制御部18が信号を受信する」と表記する。
なお、以下の説明では、「信号を受信する」とは、最初の信号の受信を開始してからその信号に含まれるデータを全て受信し終えることを言うが、この説明に限定される趣旨ではない。例えば、通信制御部23および制御部18が、信号の受信を開始してから、その信号の受信中であっても、その信号に含まれる所望のデータの受信を終えた時点で「信号を受信した」とみなしてもよい。
また、以下の説明では、一対の電線51,52に火災報も連動報も送信されていない状態で親機20と子機10とが通信を行う動作について説明するが、火災報や連動報を送信した状態で親機20と子機10とが通信を行ってもよい。
以下では、自動火災報知システムA1が行うブロードキャスト通信およびユニキャスト通信について説明するが、いずれの通信であっても、通信制御部23は、定期的に同期信号300を送信する。制御部18が同期信号300を受信することにより、親機20と全ての子機10とが信号を送受信するタイミングについて同期する。
まず、親機20が全ての子機10の各々に応答させるブロードキャスト通信について説明する。
子機10の制御部18は、起動後、信号を受信できる状態で待機する(図5のステップS1)。
制御部18は、同期信号300および制御コマンド311を受信する(ステップS2)。全ての子機10は、受信した信号に制御コマンド311が含まれている場合、第1要求信号310を受信したと判断し(ステップS3のYes)、第1待ち時間T41が経過するまで信号を送信せずに待機する(ステップS4)。第1待ち時間T41が経過するまでの時間がガード区間GIとなり、通信制御部23および制御部18は一対の電線51,52に信号を送信しない。
第1待ち時間T41の長さは記憶部17に記憶されていて、制御部18は第1要求信号310を受信すると、ROMから読み込んだ命令を実行してタイマを起動させ、第1待ち時間T41が経過するまで経過時間を計測するように構成されている。なお、第1待ち時間T41が経過したことを判断するための方法は上記に限定されず、適宜の方法で経過時間を計測すればよい。
制御部18は各々、第1待ち時間T41が経過した時点でさらに、固有待ち時間が経過するまで信号を送信することなく待機する(ステップS5)。固有待ち時間とは、記憶部17に記憶されている個別の識別情報に基づいて定まる待ち時間であり、複数の子機10の制御部18が同時に信号を送信しないようにタイムスロットを設けるために定められている。つまり制御部18は、第1待ち時間T41が経過した後に、さらに固有待ち時間が経過するまで待機することにより、各々の子機10に割り当てられたタイムスロットで応答信号を送信する(ステップS6)。
子機B1は、第1待ち時間T41が経過した時点で応答信号501を送信する。つまり、子機B1の固有待ち時間はゼロに定められている。
子機B2は、第1待ち時間T41が経過した時点からさらに固有待ち時間W2が経過した時点で応答信号502を送信する。
子機B3は、第1待ち時間T41が経過した時点からさらに固有待ち時間W3が経過した時点で応答信号503を送信する。固有待ち時間W3は、固有待ち時間W2よりも長くなるように定められている。以下、子機B4〜B16は各々、第1待ち時間T41が経過した時点からさらに、個別の識別子に基づいて定められた固有待ち時間W4〜W16が経過した時点で応答信号504〜516を送信する。
以下の説明では、子機B1〜B16の各々が送信する応答信号を区別する場合には応答信号501〜516と表記する。子機B1〜B16から送信される応答信号501〜516のうち、最初の応答信号501の送信開始から最後の応答信号516の送信終了までの間に一対の電線51,52に送信される信号のことを応答区間500と表記する。
制御部18は、応答信号501〜516を送信した後に、信号を受信できる状態で待機する(ステップS1)。
親機20は、一対の電線51,52に送信された応答信号501〜516を受信することにより、全ての子機10の各々から制御コマンド311に対する応答情報(応答信号501〜516)を収集する。
自動火災報知システムA1では、第1要求信号310の送信に要する区間T31を短くするほど、第1待ち時間T41が短くできる。そのため、通信制御部23が第1要求信号310を送信してから応答信号501〜516を受信するまでの時間(応答区間500)を短くすることができる。
なお、本実施形態の制御部18は、第1待ち時間T41を定めているが、第1待ち時間T41は省略されてもよい。言い換えると、制御部18は、第1要求信号310を受信した場合、第1要求信号310を受信した時点から固有の識別情報に基づいて定まる固有待ち時間が経過した時点で第1要求信号310に対応する応答信号501〜516を送信してもよい。本実施形態における子機B1の識別情報に基づく固有の待ち時間はゼロに定められているが、この場合は適宜の時間数に定められていてもよい。
ここで、ブロードキャスト通信の使用例として、親機20が、火災報の送信元の子機10を特定する動作について説明する。火災報を受信した親機20の通信制御部23は、火災報を送信した子機10を特定するために、全ての子機10に火災報を送信したか否かを応答信号501〜516で応答させる第1要求信号310を送信する。親機20は、応答信号501〜516により、複数の子機10のうちどの子機10が火災報を送信したかを特定することができる。親機20は例えば、子機情報記憶部に記憶されているデータと、火災報を送信した子機10とを比較することで、集合住宅60内のどの場所に設置された子機10が火災報を送信したかを表示部25に表示させることができる。
なお、本実施形態の通信制御部23は定期的に同期信号300を送信しているが、同期信号300を省略して、制御コマンド311が同期信号を兼ねるように定めることにより、第1要求信号の送信に要する区間T31を短くすることができる。つまり、同期信号300を省略し、さらに短い時間で通信制御部23が全ての子機10の制御部18からの応答信号501〜516を受信するように構成されていてもよい。
また、本実施形態の制御部18は、割り当てられたタイムスロットにガード区間GIを定めることにより、電源回路12のコンデンサを充電する時間を確保している。そのため応答区間500が長くなっても、電源回路12から子機10の動作に必要な電力の供給が不足しにくくなる。なお、応答区間500が過ぎるまで電源回路12のコンデンサが電力を供給し続けられるなど、子機10の動作に必要な電力が確保されていれば、制御部18は、割り当てられたタイムスロットにガード区間GIを設けなくてもよい。
次に、親機20が特定の子機10に応答させるユニキャスト通信について説明する。なお、ユニキャスト通信の説明として、親機20が子機10に報知部19の自動試験を行わせて試験結果を送信させる動作を説明するが、自動試験に限定される趣旨ではない。また、以下の説明では、個別要求信号322に含まれる識別情報を有する子機10のことを「特定の子機10」と表記し、特定の子機10の制御部18のことを「特定の制御部18」と表記する。
親機20の通信制御部23は、特定の制御部18(特定の子機10)に対して自動試験を行う制御命令を含む第2要求信号320を送信する。
子機10の制御部18は、同期信号300、制御コマンド321、個別要求信号322を受信する(ステップS2)。制御部18は、受信した信号に制御コマンド321が含まれている場合、第2要求信号320を受信したと判断する(ステップS3のNoおよびステップS7のYes)。すなわち、本実施形態の制御部18は、制御コマンド321を受信することで第2要求信号320を検知する。制御部18は、第2要求信号320を検知すると、第2要求信号320を受信する受信区間を、区間T31よりも長い区間T32に設定する。具体的には、同期信号300と、制御コマンド321と、個別要求信号322とを制御部18が受信するために必要な最小の区間は区間T32と等しいので、制御部18は区間T32を受信区間として定める。なお、本実施形態の制御部18は、制御コマンド321を受信することにより第2要求信号320を検知しているが、第2要求信号320の検知はこの動作に限定されない。制御部18は、例えば受信した信号に第2要求信号320であることを示すデータが含まれていると判断した場合に第2要求信号320を検知してもよい。また、制御部18は、第2要求信号320を検知した際に、区間T32を受信区間に設定することに限定されず、例えば第2要求信号320の最後に含まれるエンドビットなどのデータを受信するまで受信区間を延長するように設定してもよい。
制御部18は、個別要求信号322に含まれるデータが、記憶部17の識別情報と一致しない場合には待機状態に戻る(ステップS8のNo)。特定の制御部18は、個別要求信号322に含まれるデータが記憶部17の識別情報と一致する場合(ステップS8のYes)、制御部18のメモリに記憶されている自動試験動作用のデータを読み込んで、自動試験を実施する(ステップS9)。
特定の制御部18は、第2要求信号320を受信した時点から第2待ち時間T42が経過するまで個別応答信号600を送信しない。つまり第2待ち時間T42が経過するまでの間はガード区間GIとなる。
第2待ち時間T42の長さは記憶部17に記憶されていて、特定の制御部18は第2要求信号320を受信すると、ROMから読み込んだ命令を実行してタイマを起動させ、第2待ち時間T42が経過するまで経過時間を計測するように構成されている。なお、第2待ち時間T42が経過したことを判断するための方法は上記に限定されず、適宜の方法で経過時間を計測すればよい。
特定の制御部18は、第2要求信号320を受信した時点から第2待ち時間T42が経過した後に(ステップS10)、自動試験の結果を含む個別応答信号600を送信する(ステップS11)。
特定の制御部18は、個別応答信号600を送信した後に、信号を受信できる状態で待機する(ステップS1)。なお、本実施形態の制御部18は、受信した信号が第1要求信号310でもなく第2要求信号320でもない場合は、待機状態に戻る(ステップS1)が、この場合に適宜の動作を行うように構成されていてもよい。
通信制御部23が個別応答信号600を受信することにより、親機20は、特定の子機10に関する報知部19の動作結果を受信する。親機20は、特定の子機10を変えて自動試験を行うことを繰り返すことにより、全て子機10について自動試験を実施することができる。自動試験を行うことにより、定期的に行うことが義務付けられている試験の一部または全部を自動化することができるので、例えば人件費の削減などが期待できる。ユニキャスト通信により、親機20は子機10の各々と個別に通信を行うことができる。
なお、あらかじめ制御部18のメモリに自動試験動作用のデータが書き込まれていない子機10を自動試験する場合、親機20が第2要求信号320に含まれる制御命令で子機10を制御してもよい。例えば、特定の子機10の報知部19を報知動作させる命令と、報知部19の報知動作を停止させる命令とを各々、第2要求信号320に含めて親機20が送信する。親機20は、第2要求信号320に含まれる制御命令で特定の子機10の報知部19の報知動作を制御することにより自動試験を行うことができる。
第2要求信号320は、個別要求信号322を含んでいるので、第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)は、第1要求信号310の送信に要する時間(区間T31)よりも長い。第2要求信号320の送信時に、電源回路12のコンデンサの電力消費がさらに多くなる。そのため、第2待ち時間T42を、第1待ち時間T41よりも長く定めることで電源回路12のコンデンサの充電量を増やすことができる。なお、第2待ち時間T42は、個別応答信号600の送信が完了しても全ての子機10が電源回路12のコンデンサに蓄えられた電力により動作し続けるために必要な充電量までコンデンサを充電するのに必要な時間程度に定められていればよい。
子機10の制御部18は、親機20の通信制御部23が送信する第2要求信号320に応じて、個別応答信号600を送信するか否かを判断する。制御部18のこの判断動作により、親機20は特定の子機10のみとの通信(つまりユニキャスト通信)を行うことができる。
本実施形態でのユニキャスト通信に要する時間は、第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)と、第2待ち時間T42と、個別応答信号600の送信に要する時間(区間T60)とを合計した時間である。本実施形態でのユニキャスト通信では、通信制御部23が第2要求信号を送信してから個別応答信号600を受信するまでの時間を、子機10の台数によらず一定にできる。例えば子機10の台数が増えるとブロードキャスト通信に要する時間が長くなるが、ユニキャスト通信時に要する時間は一定である。子機10の接続台数の多い自動火災報知システムA1であっても、ユニキャスト通信に要する時間が長くならないので、親機20は、定められた時間内で、より多くの子機10とユニキャスト通信を行うことができる。なお、区間T32と第2待ち時間T42とが各々、可変長となるように定められていても、ユニキャスト通信に要する最小の長さとなるように定められることにより、親機20は、定められた時間内で、より多くの子機10とユニキャスト通信を行うことができる。
なお、第2要求信号320のうち同期信号300を省略し、同期信号を兼ねるような制御コマンド321を用いることにより、第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)をさらに短くすることができる。区間T32を短くするとガード区間GI(第2待ち時間T42)が短い時間で済むので、通信制御部23が第2要求信号320を送信してから個別応答信号600を受信するまでの時間(つまりユニキャスト通信に要する時間)をさらに短くすることも可能である。
なお、制御部18は、第1待ち時間T41および固有待ち時間W2〜W16の時間経過と、第2待ち時間T42の時間経過とを各々、タイマに計測させている間、タイマ以外の動作を停止するように構成されていてもよい(以下、スリープモードと呼ぶ)。制御部18は例えば、第1要求信号310を受信した時点から第1待ち時間T41が経過しさらに固有待ち時間W2〜W16が経過するまでの間、送信部15の動作と受信部16の動作とを停止させてもよい。また制御部18は、第2要求信号320を受信した時点から第2待ち時間T42が経過するまでの間、送信部15の動作と受信部16の動作とを停止させてもよい。制御部18がスリープモードで動作し、送受信動作などの一部の動作を停止させることにより、消費電力を抑えることができる。なお、制御部18が一部の動作を停止させる区間(スリープモードで動作する区間)は、第1待ち時間T41と、固有待ち時間W2〜W16と、第2待ち時間T42とのうち少なくとも1つの区間であってもよい。またスリープモードとは、送受信動作の停止に限定されず、制御部18の消費電力を抑制する適宜の動作状態への変更であってもよい。さらに制御部18は、例えば所望の時間の経過後にタイマからの割り込み信号が制御部18に入力されることで通常動作に復帰するように構成されていてもよい。
以上説明したように、本実施形態の自動火災報知システムA1の子機10は、記憶部17と、送信部15と、受信部16と、制御部18とを備える。記憶部17は、固有の識別情報を記憶する。送信部15は、電圧が印加される一対の電線51,52に電気的に接続され、一対の電線51,52に信号を送信する。受信部16は、一対の電線51,52に送信された信号を受信する。制御部18は、送信部15および受信部16を制御する。一対の電線51,52に電気的に接続される親機20は、第1要求信号310を一対の電線51,52に送信する機能と、識別情報を含む第2要求信号320を一対の電線51,52に送信する機能とを有する。制御部18は、第1要求信号310を受信した場合、第1要求信号310を受信した時点から固有の識別情報に基づいて定まる固有待ち時間W2〜W16が経過した時点で第1要求信号310に対応する応答信号501〜516を送信する。制御部18は、第2要求信号320を検知した場合、第1要求信号310の受信区間(区間T31)よりも長い受信区間(区間T32)を設けて第2要求信号320を受信する。制御部18は、第2要求信号320を受信しかつ第2要求信号320に含まれる識別情報が記憶部17に記憶されている識別情報と一致する場合、第2要求信号320に対応する個別応答信号600を送信する。
上記構成によれば、子機10の制御部18は、第1要求信号310を受信すると、固有待ち時間W2〜W16(タイムスロットの長さ)が経過した時点で応答信号501〜516を送信する。つまり子機10は、火災報や連動報を送信する機能に加えて、一対の電線51,52に送信された第1要求信号310に応じて応答信号501〜516を送信することができる。タイムスロットの長さは識別情報に基づいて子機10ごとに異なる長さに定められているので、子機10ごとに応答信号501〜516の送信タイミングが異なる。親機20は、第1要求信号310をブロードキャスト通信で送信し、タイムスロットの違いによって各々の子機10からの応答信号501〜516を区別して受信する。すなわち子機10は、親機20からブロードキャスト通信で送信された第1要求信号310を受信して、応答信号501〜516を送信することにより、親機20と個別に通信を行うことができる。言い換えると、複数の子機10が一斉に信号(応答信号501〜516)を送信する場合に親機20が信号(応答信号501〜516)の送信元を特定できる。
また、子機10の制御部18は、第2要求信号320を検知した場合、第1要求信号310の受信区間(区間T31)よりも長い受信区間(区間T32)を設けるので、受信に要する時間が第1要求信号310よりも長い第2要求信号320を最後まで受信できる。受信した第2要求信号320に含まれる識別情報が記憶部17に記憶されている識別情報と一致する場合に個別応答信号600を送信する。子機10は、火災報や連動報を送信する機能に加えて、一対の電線51,52に送信された第2要求信号320に応じて個別応答信号600を送信することができる。すなわち子機10のうち第2要求信号320に含まれる識別情報を有する特定の子機10のみが個別応答信号600を送信することにより、子機10は、親機20とユニキャスト通信により個別に通信を行うことができる。言い換えると、情報量の異なる要求(第2要求信号320)が親機20から送信されてもその要求(第2要求信号320)に応じて子機10が個別に応答できる(個別応答信号600を送信できる)。
さらに、子機10が第2要求信号320を受信してから個別応答信号600を送信するまでの時間は、子機10の台数に関わらず一定(第2待ち時間T42)であるため、限られた時間内で多くの子機10が親機20とユニキャスト通信を行うことができる。
本実施形態の自動火災報知システムA1の子機10は、以下のように構成されていることが好ましい。制御部18は、第1要求信号310を受信した場合、第1要求信号310を受信した時点から第1待ち時間T41が経過しさらに固有待ち時間W2〜W16が経過した時点で応答信号501〜516を送信する。制御部18は、第2要求信号320を受信しかつ第2要求信号320に含まれる識別情報が記憶部17に記憶されている識別情報と一致する場合、第2要求信号320を受信した時点から第2待ち時間T42が経過した時点で、個別応答信号600を送信する。
上記構成によれば、制御部18は、第1要求信号310を受信してから応答信号501〜516を送信するまでの間に、第1待ち時間T41と固有待ち時間W2〜W16とを合わせた時間だけ時間を空けている。制御部18は、第2要求信号320を受信してから個別応答信号600を送信するまでの間に、第2待ち時間T42だけ時間を空けている。これにより制御部18は、親機20が信号を送信している間に子機10が信号を送信すること(コリジョンの発生)を抑制している。
本実施形態の子機10の制御部18は、第1要求信号310を受信した場合は第1要求信号310を受信した時点から第1待ち時間T41が経過しさらに固有待ち時間W2〜W16が経過するまで信号を送信しないことも好ましい。制御部18は、第2要求信号320を受信した場合は第2要求信号320を受信した時点から第2待ち時間T42が経過するまで信号を送信しないことも好ましい。
上記構成によれば、制御部18は、第1要求信号310と第2要求信号320とを各々受信した際に上記した時間だけ信号を送信しないので、一対の電線51,52間の電圧を変化させない時間(ガード区間GI)を設定することができる。子機10は、一対の電線51,52間の電圧が変化している間は電源回路12のコンデンサの電力で動作し、一対の電線51,52間の電圧が変化しない間に電源回路12のコンデンサを充電する。そのため電源回路12のコンデンサの電力不足になりにくくなり、子機10は電力不足による不安定な動作をしにくくなる。
本実施形態の自動火災報知システムA1の子機10は、第1待ち時間T41は第2待ち時間T42以下であることも好ましい。
上記構成によれば、親機20が第1要求信号310の送信に要する時間(区間T31)は、識別情報を含む第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)よりも短いので、第1待ち時間T41は、第2待ち時間T42以下に定めることができる。そのため、マルチキャスト通信に必要なガード区間GIを必要最小限の長さに定めることで、ブロードキャスト通信の応答信号501の送信開始(応答区間500の開始)を早めることができる。子機10の応答信号501の送信開始が早まることで応答信号516の送信完了(応答区間500の終了)を早めることができるので、親機20と子機10との通信に必要な時間が短くて済む。つまり親機20と子機10との通信に要する時間を短時間化できる。
本実施形態の自動火災報知システムA1の子機10は、第1待ち時間T41は第2待ち時間T42よりも短いことも好ましい。
上記構成によれば、親機20が第1要求信号310の送信に要する時間(区間T31)は、識別情報を含む第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)よりも短いので、第1待ち時間T41は、第2待ち時間T42よりも短く定めることができる。そのため、マルチキャスト通信に必要なガード区間GIを必要最小限の長さに定めることで、ブロードキャスト通信の応答信号501の送信開始(応答区間500の開始)を早めることができる。子機10の応答信号501の送信開始が早まることで応答信号516の送信完了(応答区間500の終了)を早めることができるので、親機20と子機10との通信に必要な時間が短くて済む。つまり親機20と子機10との通信に要する時間を短時間化できる。
本実施形態の自動火災報知システムA1の子機10は、制御部18に制御されて火災の発生を報知する報知部19をさらに備え、制御部18は、第2要求信号320に含まれている制御命令(制御データ)に従って報知部19の動作を制御することも好ましい。
上記構成によれば、子機10の制御部18は、第2要求信号320に自動試験を行う制御命令が含まれている場合に報知部19の自動試験を行い、試験結果を送信することができる。親機20は、全ての子機10の各々について報知部19の動作を確認することにより、全ての子機10の自動試験を行うことができる。自動試験を行うことにより、定期的に行うことが義務付けられている試験の一部または全部を自動化することができるので、例えば人件費の削減などが期待できる。
本実施形態の自動火災報知システムA1の親機20は、印加部21と、通信部22と、通信部22を制御する通信制御部23とを備える。印加部21は、上記した子機10が複数接続されている一対の電線51,52に電気的に接続されて一対の電線51,52間に電圧を印加する。通信部22は、一対の電線51,52に信号を送信し、複数の子機10のうち少なくとも1台の子機10から一対の電線51,52に送信された信号を受信する。通信制御部23は、複数の子機10の各々から応答信号501〜516を送信させる第1要求信号310を一対の電線51,52に送信する機能と、第2要求信号320を一対の電線51,52に送信する機能と有する。第1要求信号310の送信に要する時間(区間T31)は、第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)よりも短くなるように構成されている。
上記構成によれば、第1要求信号310の送信に要する時間(区間T31)を第2要求信号320の送信に要する時間(区間T32)よりも短くすることで、必要なガード区間GI(第1待ち時間T41)を短くすることができる。親機20が応答信号501の受信を開始するタイミングを早めることができるので、ブロードキャスト通信に要する時間を短時間化することができる。言い換えると、ブロードキャスト通信時およびユニキャスト通信時の要求信号の送信に要する時間が一定である自動火災報知システムの親機と比べて、本実施形態の親機20は、より短い待ち時間でブロードキャスト通信時の応答信号501の受信を開始できる。
本実施形態の自動火災報知システムA1は、上記した子機10と、上記した親機20とを備える。
上記構成によれば、複数の子機10が一斉に信号(応答信号501〜516)を送信する場合に親機20が信号(応答信号501〜516)の送信元を特定する自動火災報知システムA1を提供できる。また、情報量の異なる要求(第2要求信号320)が親機20から送信されてもその要求(第2要求信号320)に応じて子機10が個別に応答できる(個別応答信号600を送信できる)自動火災報知システムA1を提供できる。
なお、本実施形態の制御部18と通信制御部23とは各々、電流を引き込むことにより信号を送信しているが、制御部18と通信制御部23とが各々、電流を引き込む方法に限定されない。制御部18と通信制御部23とは各々、例えば一対の電線51,52間の電圧を変化させて信号を送信するなど、適宜の方法で信号を一対の電線51,52に送信するように構成されていればよい。
本実施形態では、第1要求信号の同期信号300および制御コマンド311の送信に要する時間と、第2要求信号の同期信号300および制御コマンド321を送信するのに要する時間との長さが等しくなるように構成されているが、この構成に限定されない。例えば、制御コマンド311の送信に要する時間と、制御コマンド321の送信に要する時間とは時間の長さが異なっていてもよい。
本実施形態では、第1要求信号310の送信に要する時間(区間T31)および第1待ち時間T41は各々、あらかじめ定められた時間の長さ(つまり固定長の区間)に定められているが、この例に限定されない。第1要求信号310の送信に要する時間(区間T31)は第1要求信号310に含まれるデータおよび信号に応じて異なるように定められてもよい。例えば制御部18は、制御コマンド311の一部を受信した際に第1要求信号310を検知して区間T31を受信区間に定めてもよい。これにより制御コマンド311の区間の長さが制御コマンド311に含まれる命令ごとに異なる場合や、制御コマンド311の後に続けて所望のデータが送信される場合であっても、制御部18は第1要求信号310を最後まで受信できる。この場合、第1待ち時間T41は、第1要求信号310の送信に要する時間(区間T31)に応じて定められてもよい。例えば区間T31が長くなるにつれて第1待ち時間T41を長く定めることで、子機10の電源回路12のコンデンサの充電時間を長く確保できる。