以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
(1)ハニカム構造体:
まず、本発明のハニカム構造体の一の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体は、図1〜図4に示すように、流体の流路となる流入端面11から流出端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する隔壁1を有する筒状のハニカム構造部10を備えた、ハニカム構造体100である。ハニカム構造体100は、ハニカム構造部10の流入端面11から所定の範囲における隔壁1aの厚さAinが、ハニカム構造部10の流出端面12における隔壁1bの厚さAoutと比較して、0.051mm以上薄いものとなっている。上記所定の範囲とは、ハニカム構造部10の流入端面11から、当該ハニカム構造部10の全長(例えば、図4における、全長L1)の少なくとも5%以上且つ50%以下までの範囲である。以下、本実施形態のハニカム構造体100について、ハニカム構造部10の全長を「全長L1」として説明を行うこととする。図4に示すハニカム構造体100においては、ハニカム構造部10の流入端面11から長さL1inの範囲における隔壁1aの厚さAinが、隔壁1bの厚さAoutと比較して、0.051mm以上薄いものとなっている。
ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、流入端面を模式的に示す平面図である。図3は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、流出端面を模式的に示す平面図である。図4は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
「ハニカム構造部の全長」とは、ハニカム構造部10の流入端面11から流出端面12の長さである。また、図4における、「長さL1in」は、ハニカム構造部10の流入端面11からの長さであって、0.05L1≦L1in≦0.5L1の関係を満たす長さである。図4における、「長さL1out」は、ハニカム構造部10の「全長L1」から「長さL1in」を減算した長さである。すなわち、「長さL1out」は、ハニカム構造部10の流出端面12からの長さであって、0.5L1≦L1out≦0.95L1の関係を満たす長さである。
以下、流入端面11から長さL1inの範囲において、流出端面12における隔壁1bに比して、その厚さが0.051mm以上薄くなっている隔壁1aを、「流入側隔壁1a」又は「薄壁隔壁1a」ということがある。流出端面12から長さL1outの範囲において流入側隔壁1aに比して、その厚さが厚くなっている隔壁1bを、「流出側隔壁1b」又は「厚壁隔壁1b」ということがある。
本実施形態のハニカム構造体100は、流入側隔壁1aの厚さAinが、流出端面12における隔壁1bの厚さAoutと比較して、0.051mm以上薄いものとなっているため、耐久性を維持しつつ、圧力損失の低減を図ることができる。すなわち、流入側隔壁1aの厚さAinのみを薄くし、流入側隔壁1a以外の範囲の隔壁1bの厚さAoutを相対的に厚くすることで、耐久性の低下を有効に抑制しつつ、圧力損失の低減を図ることができる。また、このようなハニカム構造体100は、排ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体や、当該触媒が担持された排ガス浄化用のフィルタとして用いた場合に、従来のハニカム構造体に比して、より多くの量の触媒を担持させることができる。
なお、流入側隔壁1aの厚さAinが、流出端面12における隔壁1bの厚さAoutと比較して、0.051mm未満薄いものであっても、十分な圧力損失の低減効果を図ることは困難である。流入側隔壁1aの厚さAinは、流出端面12における隔壁1bの厚さAoutと比較して、0.051〜0.102mm薄いものであることが好ましく、0.051〜0.076mm薄いものであることが更に好ましい。
流入側隔壁1aは、ハニカム構造部10の流入端面11から、ハニカム構造部10の全長L1の少なくとも5%以上且つ50%以下までの範囲に存在している。流入側隔壁1aが、ハニカム構造部10の流入端面11から、ハニカム構造部10の全長L1の5%未満の範囲のみに存在している場合には、十分な圧力損失の低減効果を図ることは困難である。また、流入側隔壁1aが、ハニカム構造部10の流入端面11から、ハニカム構造部10の全長L1の50%を超えた範囲にも存在している場合には、ハニカム構造体100の耐久性が低下してしまうことがある。流入側隔壁1aは、ハニカム構造部10の全長L1の少なくとも10%以上且つ50%以下までの範囲に存在していることが好ましく、少なくとも20%以上且つ40%以下までの範囲に存在していることが更に好ましい。
ハニカム構造体100においては、流入側隔壁1aが配設された範囲以外に存在する流出側隔壁1bの厚さAoutが、流入側隔壁1aの厚さAinよりも0.051mm以上厚いものであることが好ましい。すなわち、ハニカム構造部10の流出端面12から長さL1outの範囲における隔壁1bの厚さAoutが、流入側隔壁1aの厚さAinと比較して、0.051mm以上厚いものであることが好ましい。
ハニカム構造部10は、隔壁1を囲繞するように最外周に配設された外周壁3を有していてもよい。このような外周壁3を有することにより、ハニカム構造体100を、排ガス浄化装置の缶体内に収納し易くなる。本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部10の全長L1が、50mm以上である場合に有効であり、特に、100〜254mmである場合に特に有効である。ハニカム構造部10の全長L1が、50mm未満であると、圧力損失を低減する効果が発現し難くなることがある。特に、50mmのハニカム構造部10の場合には、隔壁の厚さAinが薄くなる流入側隔壁1aは、流入端面11から少なくとも2.5mm以上の範囲に配設されることとなる。流入側隔壁1aの配設範囲が、流入端面11から2.5mm未満であると、圧力損失を低減する効果が発現し難くなることがある。なお、圧力損失を低減する効果を更に良好に得るためには、流入側隔壁1aの配設範囲が、流入端面11から5mm以上確保されていることがより好ましく、流入端面11から10mm以上確保されていることが特に好ましい。
ハニカム構造部を構成する隔壁は、多孔質材料からなる隔壁基材に、触媒が担持されたものであってもよい。すなわち、図1〜図4に示すハニカム構造体100においては、隔壁1が、多孔質材料からなる隔壁基材によって構成されており、当該隔壁基材によって構成された隔壁1が、流入側隔壁1aと流出側隔壁1bとを有する。本発明のハニカム構造体は、図5〜図8に示すハニカム構造体200であってもよい。ここで、図5は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。図6は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態の、流入端面を模式的に示す平面図である。図7は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態の、流出端面を模式的に示す平面図である。図8は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
図5〜図8に示すハニカム構造体200は、流体の流路となる流入端面41から流出端面42まで延びる複数のセル32を区画形成する隔壁21を有する筒状のハニカム構造部40を備えたものである。なお、本実施形態のハニカム構造体200におけるハニカム構造部40については、その全長を「全長L2」とする。そして、ハニカム構造部40の流入端面41から所定の範囲における隔壁31aの厚さBinが、ハニカム構造部40の流出端面42における隔壁31bの厚さBoutと比較して、0.051mm以上薄いものとなっている。上記所定の範囲とは、ハニカム構造部40の流入端面41から、当該ハニカム構造部40の全長L2の少なくとも5%以上且つ50%以下までの範囲である。図8に示すハニカム構造体200においては、ハニカム構造部40の流入端面41から長さL2inの範囲における隔壁31aの厚さBinが、隔壁31bの厚さBoutと比較して、0.051mm以上薄いものとなっている。
そして、図5〜図8に示すハニカム構造体200においては、ハニカム構造部40を構成する隔壁31は、多孔質材料からなる隔壁基材45に、触媒46が担持されたものである。すなわち、本実施形態のハニカム構造体200における隔壁31は、隔壁基材45と触媒46とによって構成されている。ここで、隔壁31aを、「流入側隔壁31a」又は「薄壁隔壁31a」ということがある。隔壁31bを、「流出側隔壁31b」又は「厚壁隔壁31b」ということがある。流入側隔壁31aは、隔壁基材45によって構成されている。流入側隔壁31aの厚さBinは、上記隔壁基材45の厚さに相当する。流出側隔壁31bは、隔壁基材45と、当該隔壁基材45の表面に触媒46とによって構成されている。流出側隔壁31bの厚さBoutは、上記隔壁基材45の厚さと、触媒46によって形成された触媒層の厚さとの和に相当する。
図5〜図8に示すハニカム構造体200のように、隔壁31の厚さが厚くなる流出側隔壁31bを、隔壁基材45と触媒46とによって構成することで、流入側隔壁31aの厚さBinを薄くしつつ、流出側隔壁31bの厚さBoutを厚くすることができる。このため、ハニカム構造体200の耐久性を維持しつつ、圧力損失の低減を図ることができる。また、流出側隔壁31bに優先的に触媒46が担持されていることで、触媒46が担持されたハニカム構造体200において、圧力損失の上昇を抑制しつつ、触媒46の担持量を増加させることができる。
触媒46としては、例えば、三元触媒、NOX吸蔵還元触媒、酸化触媒、NOX選択還元触媒等のSCR触媒などの種々の触媒を挙げることができる。触媒46を担持する方法としては、例えば、従来公知の触媒用スラリーを用いた方法を挙げることができる。触媒用スラリーは、触媒以外に、貴金属、触媒助剤、貴金属保持材料などを含有していてもよい。貴金属としては、例えば、白金、ロジウム、パラジウムなどを挙げることができる。触媒助剤としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、セリアなどを挙げることができる。
図5〜図8に示すハニカム構造体200においては、少なくともハニカム構造部40の全長L2の50%超の範囲において、隔壁基材45に、触媒46が担持されていてもよい。また、このハニカム構造体200においては、流出側隔壁31bのみに触媒46が担持され、当該流出側隔壁31bの厚さが厚くなっているが、流入側隔壁31aにも触媒46が担持されていてもよい。この際、流入端面41からハニカム構造部40の全長L2の5%以上且つ50%以下までの範囲と、ハニカム構造部40の全長L2の50%超の範囲とにおいて、隔壁基材45に担持された触媒46によって構成される触媒層の厚さが異なってもよい。特に、流入側隔壁31aに担持された触媒46によって形成される触媒層の厚さに比して、流出側隔壁31bに担持された触媒46によって形成される触媒層の厚さが、各隔壁31当り0.051mm以上厚くなるようすることが好ましい。ここで、「各隔壁31当り0.051mm以上厚くなる」とは、隔壁基材45の両面に触媒46が担持された場合に、隔壁基材45の両面に担持された触媒46によって形成される触媒層の厚さの総和が、0.051mm以上になるということである。
図5〜図8に示すハニカム構造体200においては、流出側隔壁31bの隔壁基材45の両面に触媒46が担持された場合の例を示しているが、流出側隔壁31bの隔壁基材45の片側面に、触媒46が担持されていてもよい。
図5〜図8に示すハニカム構造体200においては、ハニカム構造部40の全長L2において、隔壁基材45の厚さが一定であるが、隔壁基材45の厚さが、ハニカム構造部40の全長L2において、部分的に異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、流入端面からハニカム構造部の全長L2の5%以上且つ50%以下までの範囲における隔壁基材の厚さが、ハニカム構造部の流出端面における隔壁基材の厚さと比較して、0.051mm以上薄くなっていてもよい。このように構成されたハニカム構造部においては、隔壁基材の長さ方向全域に触媒を均等な厚さで担持させた場合では、本発明の構成を満たすハニカム構造体とすることができる。
本実施形態のハニカム構造体においては、流入端面における所定のセル(第1セル)の開口部、及び流出端面における残余のセル(第2セル)の開口部に配設された目封止部を備えていてもよい。上記第1セルと上記第2セルとは、交互に並んでいることが好ましい。そして、それによって、ハニカム構造体の両端面に、目封止部と「セルの開口部」とにより、市松模様が形成されていることが好ましい。目封止部の材質は、隔壁の材質として好ましいとされた材質であることが好ましい。目封止部の材質と隔壁の材質とは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。このようなハニカム構造体は、排ガス中の粒子状物質を捕集するためのフィルタとして好適に用いることができる。
例えば、本発明のハニカム構造体は、図9〜図12に示すハニカム構造体300であってもよい。ここで、図9は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。図10は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、流入端面を模式的に示す平面図である。図11は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、流出端面を模式的に示す平面図である。図12は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。図9〜図12に示すハニカム構造体300において、図5〜図8に示すハニカム構造体200と同様に構成要素について、同一の符号を付して説明を省略することがある。
図9〜図12に示すハニカム構造体300は、流体の流路となる流入端面41から流出端面42まで延びる複数のセル32を区画形成する隔壁21を有する筒状のハニカム構造部40を備えたものである。そして、ハニカム構造部40の流入端面41から所定の範囲における隔壁31aの厚さBinが、ハニカム構造部40の流出端面42における隔壁31bの厚さBoutと比較して、0.051mm以上薄いものとなっている。上記所定の範囲とは、ハニカム構造部40の流入端面41から、当該ハニカム構造部40の全長L2の少なくとも5%以上且つ50%以下までの範囲である。ハニカム構造体300は、流入端面41における所定のセル32の開口部、及び流出端面42における残余のセル32の開口部に配設された目封止部47を更に備えている。このような目封止部47を備えたハニカム構造体においても、上記構成を採用することにより、圧力損失を低減することができる。例えば、流入端面41から全長L2の20%の範囲について、流入側隔壁31aの厚さBinを、流出側隔壁31bの厚さBoutより0.051mm薄くした場合に、ハニカム構造体の圧力損失が10%低減することが確認された。なお、上記確認における比較対象のハニカム構造体は、ハニカム構造部の隔壁の厚さが、その全長において、上記ハニカム構造体の流出側隔壁31bの厚さBoutと同じ厚さのハニカム構造体である。
図1〜図4に示すハニカム構造体100の隔壁1は、セラミックからなる多孔質のものであることが好ましい。ここで、図1〜図4に示すハニカム構造体100の隔壁1は、触媒の担持されていないものであり、例えば、図5〜図8におけるハニカム構造部40の隔壁基材45に相当するものである。隔壁1の材料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも1種からなるものであることが好ましい。このような材料を用いることにより、耐熱性に優れたハニカム構造体となる。隔壁は、上記群より選択される少なくとも1種を主成分として含む材料からなるものであってもよい。ここで、「主成分」とは、隔壁1を構成する材料中に含まれる成分が70質量%以上の成分のことを意味する。隔壁が、上記群より選択される少なくとも1種を、80質量%以上含む材料からなることが好ましく、90質量%以上含む材料からなることが更に好ましい。
図1〜図4に示すハニカム構造部10は、上述したように、多孔質の隔壁1と、隔壁1を囲繞するように最外周に配設された外周壁3と、を有している。外周壁3は、ハニカム構造部10を作製する過程において、ハニカム成形体を押出成形する際に、隔壁1とともに形成されたものであってもよい。また、押出成形時には外周壁を形成しなくともよい。例えば、セル2を区画形成する隔壁1の外周部分に、セラミック材料を塗工して外周壁3を形成することもできる。更に、ハニカム構造部10の外周部分を研削して一度除去し、隔壁1を囲繞するようにセラミック材料を塗工して外周壁3を形成することもできる。
ハニカム構造部の形状については特に制限はない。例えば、ハニカム構造部の形状としては、ハニカム構造部の端面が円形の筒状(円筒形状)、上記端面がオーバル形状の筒状、上記端面が多角形の筒状の形状を挙げることができる。多角形としては、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等を挙げることができる。図1〜図4においては、ハニカム構造部10の形状が、端面が円形の筒状である場合の例を示す。
流出側隔壁の厚さが、0.076〜0.508μmであることが好ましく、0.102〜0.381μmであることが更に好ましく、0.152〜0.381μmであることが特に好ましい。流入側隔壁の厚さを上記数値範囲とすることにより、ハニカム構造体の強度を維持しつつ、ハニカム構造体の圧力損失の悪化を抑制することができる。なお、流入側隔壁の厚さは、流出側隔壁の厚さと比較して、0.051mm以上薄い厚さである。
流入側隔壁の厚さを、流出側隔壁の厚さよりも薄くする方法については、例えば、以下の(1)〜(6)の方法を挙げることができる。なお、下記(1)〜(4)の方法は、予め、隔壁の厚さを、流出側隔壁の厚さと同じ程度となるように厚くし、流入側隔壁の厚さを、後から薄くする方法である。下記(5)及び(6)の方法は、予め、隔壁の厚さを、流入側隔壁の厚さと同じ程度となるように薄くし、流出側隔壁の厚さを、後から厚くする方法である。(1)やすり等の研削工具にて、流入側隔壁が配設される部分の隔壁の表面を削り、流入側隔壁の厚さを薄くする方法。(2)流入側隔壁が配設される部分の隔壁に、酸等の溶液を塗布し、隔壁を部分的に侵食させて、流入側隔壁の厚さを薄くする方法。(3)ハニカム構造部を、押出成形等の方法によって成形した後、流入側隔壁が配設される部分を伸長させて、流入側隔壁の厚さを薄くする方法。(4)流入側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、サンドブラストを施し、流入側隔壁の厚さを薄くする方法。(5)流出側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、隔壁と同じ材料又は異なる材料の膜を配設させて、流出側隔壁の厚さを厚くする方法。(6)流出側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、触媒を担持させて、流出側隔壁の厚さを厚くする方法。なお、流出側隔壁の厚さよりも薄くする方法については、上記(1)〜(6)の方法に限定されることはない。
ハニカム構造部のセル密度が、16〜186個/cm2であることが好ましい。セル密度を上記数値範囲とすることで、圧力損失の増大を有効に防止することができる。また、ハニカム構造体(別言すれば、ハニカム構造部)の隔壁に触媒を担持した際に、高い浄化性能を得ることができる。ハニカム構造部のセル密度とは、セルの延びる方向に直交する断面における、単位面積当たりのセルの個数のことを意味する。ハニカム構造部のセル密度が、23〜93個/cm2であることが更に好ましく、31〜62個/cm2であることが特に好ましい。
隔壁の気孔率は、25〜90%であることが好ましく、30〜80%であることが更に好ましく、35〜75%であることが特に好ましい。気孔率が25%より小さいと、ハニカム構造体の圧力損失が増加することがある。気孔率が90%より大きいと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。隔壁の気孔率は、水銀ポロシメータで測定することができる。水銀ポロシメータとしては、Micromeritics社製、商品名:Autopore 9500を挙げることができる。上記隔壁の気孔率は、触媒が担持されていない状態で測定された気孔率である。
セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状としては、四角形、六角形、八角形、円形、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。四角形の中でも、正方形、長方形が好ましい。
ハニカム構造体100の流入端面11から流出端面12に延びる方向に垂直な断面における大きさについては、特に制限はなく、ハニカム構造体100を、種々の排ガス浄化装置に用いた際に、最適な浄化性能を得るように適宜選択すればよい。本実施形態のハニカム構造体100において、上記断面の形状が円形状である場合には、この断面の直径が、50〜400mmであることが好ましく、70〜360mmであることが更に好ましい。
また、図示は省略するが、ハニカム構造体は、セグメント構造のハニカム構造体であってもよい。具体的には、セグメント構造のハニカム構造体としては、複数個の適用長さLが、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたハニカム構造体を挙げることができる。ハニカムセグメントは、第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁及び隔壁を取り囲むように配設された外壁を有するものである。複数個のハニカムセグメントを接合した接合体の最外周に、外周壁が配置される。また、複数個のハニカムセグメントを接合した接合体の外周部を研削等によって加工し、セルの延びる方向に垂直な断面の形状を円形等にした後、最外周にセラミック材料を塗工することによって外周壁を配置してもよい。このような、所謂、セグメント構造のハニカム構造体であっても、図1〜図4に示すような、所謂、一体型のハニカム構造体と同様の作用効果を得ることができる。
外周壁は、隔壁と同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。例えば、外周壁は、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも1種からなるものであることが好ましい。このように構成することによって、耐熱性に優れたハニカム構造体となる。
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。ただし、本発明のハニカム構造体を製造する方法については、以下の製造方法に限定されることはない。
まず、ハニカム構造体を製造する際には、セラミック原料を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る。この坏土は、ハニカム構造部を作製するためのものである。セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
成形原料は、セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、界面活性剤、造孔材等を更に混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造部の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
分散媒としては、水を用いることができる。分散媒の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、10〜30質量部であることが好ましい。
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はこれらを組み合わせたものとすることが好ましい。有機バインダの添加量は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜5質量部が好ましい。
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜2質量部が好ましい。
造孔材としては、樹脂粒子、デンプン、カーボン等を用いることができる。造孔材は、作製するハニカム構造部の隔壁に細孔を形成するためのものである。造孔材の添加量は、作製するハニカム構造部の隔壁の平均細孔径や気孔率を考慮して適宜調整することが好ましい。
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
次に、得られた坏土を成形して、円筒状のハニカム成形体を形成する。ハニカム成形体は、複数のセルを区画形成する隔壁と外周壁とを有するものであることが好ましい。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する押出成形用口金を用いて押出成形する方法等を好適例として挙げることができる。上述した流出側隔壁の厚さよりも薄くする方法の(1)〜(4)の方法を採用して、流入側隔壁の厚さを後から薄くする場合には、ハニカム成形体の隔壁の厚さが、焼成後に、当該隔壁が流出側隔壁の厚さとなるようなものとすることが好ましい。一方、流出側隔壁の厚さよりも薄くする方法の(5)及び(6)の方法を採用して、流出側隔壁の厚さを後から厚くする場合には、ハニカム成形体の隔壁の厚さが、焼成後に、当該隔壁が流入側隔壁の厚さとなるようなものとすることが好ましい。
上述した流出側隔壁の厚さよりも薄くする方法の(3)の方法を行う場合には、ハニカム成形体を作製した後に、焼成後に流入側隔壁となる部分の隔壁の厚さを薄くすることが好ましい。すなわち、ハニカム成形体を押出成形した後、ハニカム成形体の流入側隔壁が配設される部分を引張り、当該部分を伸長させて、流入側隔壁の厚さを薄くしてもよい。
次に、得られたハニカム成形体を乾燥する。乾燥方法は、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組み合わせて行うことが好ましい。
次に、ハニカム成形体を焼成する。ハニカム成形体を焼成する前には、このハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。仮焼の方法については特に制限はない。例えば、ハニカム成形体中の有機物の少なくとも一部を除去することができればよい。上記有機物としては、有機バインダ、界面活性剤、造孔材等を挙げることができる。有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度である。このため、仮焼は、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、10〜100時間程度加熱することが好ましい。
ハニカム成形体の焼成は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われるものである。焼成の条件は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1350〜1440℃が好ましい。焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、3〜10時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置としては、電気炉、ガス炉等を挙げることができる。
ハニカム成形体を焼成した後、上述した流出側隔壁の厚さよりも薄くする方法の(1)〜(6)のうち、(1),(2),(4)〜(6)の方法を行うことにより、流入側隔壁の厚さを薄く、又は流出側隔壁の厚さを厚くすることができる。例えば、やすり等の研削工具にて、流入側隔壁が配設される部分の隔壁の表面を削り、流入側隔壁の厚さを薄くしてもよい。流入側隔壁が配設される部分の隔壁に、酸等の溶液を塗布し、隔壁を部分的に侵食させて、流入側隔壁の厚さを薄くしてもよい。流入側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、サンドブラストを施し、流入側隔壁の厚さを薄くしてもよい。流出側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、隔壁と同じ材料又は異なる材料の膜を配設させて、流出側隔壁の厚さを厚くしてもよい。流出側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、触媒を担持させて、流出側隔壁の厚さを厚くしてもよい。
以上のようにして、多孔質の隔壁を有する筒状のハニカム構造部を備えたハニカム構造体を製造することができる。また、ハニカム構造部の所定のセルの流入側端部と残余のセルの流出側端部とに、目封止材料を充填して、目封止部を形成してもよい。目封止部を形成する方法については、目封止部を備えたハニカム構造体の従来公知の製造方法に準じて行うことができる。
流出側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、触媒を担持させて、流出側隔壁の厚さを厚くする方法は、特に限定されないが、触媒成分を含有する触媒スラリーに、ハニカム構造体の流出側隔壁が配設される部分を浸漬させることが好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体の流出側隔壁が配設される部分のみに、触媒スラリーを塗工することができる。そのほかの方法としては、触媒スラリーを担体に循環させ触媒層を形成する方法が好ましい。ここで、「担体」とは、多孔質の隔壁を有するハニカム構造部のことである。担体の片端面から触媒スラリーを流し込み、又は、触媒スラリーを吸い上げることで触媒スラリーを塗布することができる。このようにして、流出側隔壁が配設される部分に、触媒スラリーによる触媒コート層を形成し、当該触媒コート層を乾燥、焼成させることにより、流出側隔壁の厚さが相対的に厚くなるように構成されたハニカム触媒体を簡便に製造することができる。触媒スラリーに含まれる触媒成分として、例えば、ゼオライトなどを挙げることができる。
以下、上述した「流出側隔壁の厚さよりも薄くする方法の(1)〜(5)」の更に具体的な例について説明する。
(1)やすり等の研削工具にて、流入側隔壁が配設される部分の隔壁の表面を削り、流入側隔壁の厚さを薄くする方法(以下、「(1)の方法」ということがある)。この(1)の方法では、セルの開口部の一辺より幅が狭いやすりを用いることが好ましい。そして、(1)の方法では、例えば、上述した「やすり」を、ハニカム構造部のセルピッチに応じた間隔に並べた冶具を作製し、当該冶具を用いて、セルの一列、又は、セルの一区画について、同時に研削を行う方法を挙げることができる。
(2)流入側隔壁が配設される部分の隔壁に、酸等の溶液を塗布し、隔壁を部分的に侵食させて、流入側隔壁の厚さを薄くする方法(以下、「(2)の方法」ということがある)。この(2)の方法では、溶液として、フッ酸、塩酸、硝酸、硫酸などを用いることが好ましい。また、(2)の方法によれば、溶液中に漬ける深さを調整することにより、流入側隔壁の厚さを薄くする部分の長さを調節することができる。また、(2)の方法によれば、溶液中に漬ける時間を調製することにより、流入側隔壁の厚さ(別言すれば、薄さ)を調節することができる。
(3)ハニカム構造部を、押出成形等の方法によって成形した後、流入側隔壁が配設される部分を伸長させて、流入側隔壁の厚さを薄くする方法(以下、「(3)の方法」ということがある)。この(3)の方法では、ハニカム成形体の押出成形後で、且つ、乾燥を行う前に、ハニカム成形体の片面と当該ハニカム成形体の中心部を把持し、流路方向に引っ張りの加重を静的にかけることで、ハニカム成形体の片側端面部の隔壁を薄くすることができる。ハニカム成形体を乾燥した後、乾燥したハニカム成形体の端面を切除することにより、隔壁の厚さを薄くする部分の長さを調節することができる。
(4)流入側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、サンドブラストを施し、流入側隔壁の厚さを薄くする方法(以下、「(4)の方法」ということがある)。この(4)の方法としては、例えば、ハニカム成形体の乾燥後に、酸化アルミナを主成分とする粒径4〜250μmの研磨材を用いてサンドブラストを施す方法を挙げることができる。隔壁に対して、角度を付けて研磨材を投射することで、隔壁の厚さを薄くする部分の長さを調節することができる。また、研磨材の粒径やサンドブラストを施す時間を調整することにより、隔壁の厚さを薄くする部分の長さを調節することもできる。
(5)流出側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、隔壁と同じ材料又は異なる材料の膜を配設させて、流出側隔壁の厚さを厚くする方法(以下、「(5)の方法」ということがある)。この(5)の方法としては、例えば、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜の形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム構造部の隔壁表面に付着させた後、乾燥、焼成する方法等を挙げることができる。また、(5)の方法としては、ハニカム構造部の流入側開口端部側から、原料微粒子を含む原料ガスを供給して、当該セルを形成する隔壁の表面に原料微粒子を堆積させることによって形成する方法も好適に採用することができる。原料微粒子としては、コージェライト原料などを用いることができる。このような(5)の方法であると、簡便に流出側隔壁の厚さを厚くすることができる。流出側隔壁の厚さは、原料ガスの供給流量を所定の範囲内で変化させることにより決定することができる。具体的には、供給初期は、供給流量を多くすることによりハニカム構造部の内部まで原料微粒子を到達させ、その後、供給流量を少なくし、その後、供給後期は、供給流量を更に少なくしてハニカム構造部の流入側開口端部に原料微粒子を堆積させる。このように供給流量を変化させることで、流入側開口端部における隔壁の厚さと、流出側開口端部における隔壁の厚さとを、簡便に異ならせることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
炭化珪素粉末を80質量部と、Si粉末20質量部とを混合して、混合粉末を得た。この混合粉末100質量部に対し、バインダ、造孔材、水を添加して、成形原料とした。
次に、成形原料を混練し、土練して円柱状の坏土を作製した。そして、得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いてハニカム形状に成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、ハニカム乾燥体を得た。
乾燥後のハニカム成形体(ハニカム乾燥体)に、目封止部を形成した。具体的には、まず、ハニカム成形体の流入端面側のセルの開口部に、マスクを施した。このとき、マスクを施したセルと、マスクを施さないセルとが交互に並ぶようにした。そして、ハニカム成形体のマスクを施した側の端部を目封止スラリーに浸漬して、マスクが施されていないセルの開口部に目封止スラリーを充填した。そして、乾燥後のハニカム成形体の流出端面における残りのセル(即ち、流入端面において目封止部を形成していないセル)についても、同様にして、目封止部を形成した。
次に、目封止部を形成したハニカム成形体を、大気雰囲気にて550℃で3時間かけて仮焼(脱脂)した。その後、Ar不活性雰囲気にて約1450℃で2時間焼成して、ハニカム構造体の前駆体を作製した。
得られたハニカム構造体の前駆体は、流入端面から流出端面までの長さが140.5mmで、流入端面から流出端面に延びる方向に垂直な断面の直径が165.0mmの円筒形状のものであった。このハニカム構造体の前駆体のハニカム構造部の隔壁の厚さが0.305mmで、セル密度が47個/cm2のものであった。隔壁の気孔率は、63%であった。隔壁の気孔率は、マイクロメリティクス社(Micromeritics社)製の「オートポアIII 9420(商品名)」によって測定した値である。
次に、得られたハニカム構造体の前駆体の、流入端面からその全長の20%までの範囲に配設された隔壁の表面を、やすりによって研削加工して、当該範囲に配設された隔壁の厚さを薄くした。研削加工した後の隔壁の厚さは、0.254mmであった。このようにして、実施例1のハニカム構造体を作製した。研削加工した隔壁が、本発明における「流入側隔壁」となる。
表1に、実施例1のハニカム構造体における、「流出端面における隔壁の厚さAout(mm)」、「流入側隔壁の厚さAin(mm)」、「Aout−Ain(mm)」、を示す。また、表1に、「流入側隔壁の適用長さの比(%)」、「ハニカム構造体の全長L(mm)」、及び「流入側隔壁の適用長さLin(mm)」を示す。「Aout−Ain(mm)」とは、「流出端面における隔壁の厚さAout(mm)」から「流入側隔壁の厚さAin(mm)」を減算した値(mm)のことである。「流入側隔壁の適用長さの比(%)」とは、ハニカム構造体の全長Lに対する、流入側隔壁が配設された流入端面からの長さLinの百分率(Lin/L×100)のことである。「流入側隔壁の適用長さLin(mm)」とは、上記した流入側隔壁が配設された流入端面からの長さLin(mm)のことである。
得られたハニカム構造体について、以下の方法で、圧力損失の低減率を求めた。また、得られたハニカム構造体について、以下の方法で、破壊試験の評価を行った。結果を、表1に示す。
[圧力損失の低減率(%)]
まず、評価対象のハニカム構造体に、室温(25℃)の空気を10Nm3/分の流量で流した際のハニカム構造体の流入端面側と流出端面側との圧力を測定し、その圧力差を算出することにより、圧力損失P1を求めた。また、比較例1,5〜7のハニカム構造体についても、同様の方法で圧力損失P0を求めた。比較例1,5〜7のハニカム構造体が、圧力損失の低減率を求める際の比較対象のハニカム構造体となる。比較対象のハニカム構造体の圧力損失P0から、評価対象のハニカム構造体の圧力損失P1を減算した値を、比較対象のハニカム構造体の圧力損失P0で除算した値の百分率を求めた。すなわち、圧力損失の低減率(%)を、下記式(1)によって算出した。なお、実施例1〜3,7〜11及び比較例2〜4のハニカム構造体において、比較例1のハニカム構造体が評価対象となる。実施例4のハニカム構造体において、比較例5のハニカム構造体が評価対象となる。実施例5のハニカム構造体において、比較例6のハニカム構造体が評価対象となる。実施例6のハニカム構造体において、比較例7のハニカム構造体が評価対象となる。圧力損失の低減率(%)は、5%以上の圧力損失の低減が確認された場合を合格とする。
圧力損失の低減率(%)={(P0−P1)/P0×100} ・・・ (1)
[破壊試験の評価]
まず、ハニカム構造体の流出端面から130mmの範囲を、三菱樹脂社製のMAFTEC(商品名)によって把持した。このようにして流出端面を把持したハニカム構造体に、振動数100Hz、加速度30Gの振動を与えながら、プロパンバーナーで加熱した空気を流し、100時間試験した(加熱加振(ホットバイブレーション)試験)。加熱加振(ホットバイブレーション)試験における加熱された空気を流す条件は、流量2Nm3/min、温度150−800℃(1サイクル20分)の条件とした。加熱加振試験後、ハニカム構造体の隔壁に破損が生じているか否について、目視によって確認した。ハニカム構造体の隔壁に、破損が確認されない場合を、「OK(合格)」とした。ハニカム構造体の隔壁に、破損が確認された場合を、「NG(不合格)」とした。
(実施例2〜6、比較例1〜7)
「流出端面における隔壁の厚さAout(mm)」、「流入側隔壁の厚さAin(mm)」、「流入側隔壁の適用長さの比(%)」、及び「ハニカム構造体の全長L」を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。なお、比較例1,5〜7については、隔壁に対して研削加工を行わず、ハニカム構造体の流入端面から流出端面までの全域において、隔壁の厚さが一定の厚さのハニカム構造体を作製した。
実施例2〜6及び比較例2〜4のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で圧力損失の低減率(%)を求めた。また、実施例2〜6及び比較例2〜4のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で破壊試験の評価を行った。結果を、表1に示す。
(実施例7)
実施例7においては、流入側隔壁が配設される部分の隔壁に、酸を塗布し、隔壁を部分的に侵食させて、流入側隔壁の厚さを薄くすることによってハニカム構造体を作製した。上述した流入側隔壁の厚さを薄くする方法以外について、ハニカム構造体の前駆体の作製方法は、実施例1と同様の方法である。実施例7のハニカム構造体における、「流出端面における隔壁の厚さAout(mm)」、「流入側隔壁の厚さAin(mm)」、「Aout−Ain(mm)」、「流入側隔壁の適用長さの比」、「ハニカム構造体の全長L」、及び「流入側隔壁の適用長さLin(mm)」を、表1に示す。
(実施例8)
実施例8においては、ハニカム成形体を、押出成形によって作製した後、流入側隔壁が配設される部分を伸長させて、流入側隔壁の厚さを薄くすることによってハニカム構造体を作製した。上述した流入側隔壁の厚さを薄くする方法以外について、ハニカム成形体及びハニカム構造体の前駆体の作製方法は、実施例1と同様の方法である。実施例8のハニカム構造体における、「流出端面における隔壁の厚さAout(mm)」、「流入側隔壁の厚さAin(mm)」、「Aout−Ain(mm)」、「流入側隔壁の適用長さの比」、「ハニカム構造体の全長L」、及び「流入側隔壁の適用長さLin(mm)」を、表1に示す。
(実施例9)
実施例9においては、流入側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、サンドブラストを施し、流入側隔壁の厚さを薄くすることによってハニカム構造体を作製した。上述した流入側隔壁の厚さを薄くする方法以外について、ハニカム構造体の前駆体の作製方法は、実施例1と同様の方法である。実施例9のハニカム構造体における、「流出端面における隔壁の厚さAout(mm)」、「流入側隔壁の厚さAin(mm)」、「Aout−Ain(mm)」、「流入側隔壁の適用長さの比」、「ハニカム構造体の全長L」、及び「流入側隔壁の適用長さLin(mm)」を、表1に示す。
(実施例10〜12)
実施例10〜12においては、流出側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、隔壁と同じ材料のセラミック膜を配設させて、流出側隔壁の厚さを厚くすることによってハニカム構造体を作製した。すなわち、実施例10〜12においては、流入側隔壁の厚さを相対的に薄くすることによってハニカム構造体を作製した。セラミック膜は、コージェライト原料などによって調製したセラミックスラリーを、流出側隔壁が配設される部分に塗工して作製した。上述したセラミックスラリーを塗工して流出側隔壁の厚さを厚くする方法以外について、ハニカム構造体の前駆体の作製方法は、実施例1と同様の方法である。実施例10〜12のハニカム構造体における、「流出端面における隔壁の厚さAout(mm)」、「流入側隔壁の厚さAin(mm)」、「Aout−Ain(mm)」、「流入側隔壁の適用長さの比」、「ハニカム構造体の全長L」、及び「流入側隔壁の適用長さLin(mm)」を、表1に示す。実施例10〜12では、セラミック膜の原料となる原料微粒子の供給量を調整して、「流入側隔壁の適用長さの比(%)」を調節した。
(実施例13〜15)
実施例13〜15においては、流出側隔壁が配設される部分の隔壁の表面に、触媒を担持させて、流出側隔壁の厚さを厚くすることによってハニカム構造体を作製した。すなわち、実施例13〜15においては、流入側隔壁の厚さを相対的に薄くすることによってハニカム構造体を作製した。触媒は、ゼオライトなどによって調製した触媒スラリーを、流出側隔壁が配設される部分に塗工することによって担持した。上述した触媒を担持させて流出側隔壁の厚さを厚くする方法以外について、ハニカム構造体の前駆体の作製方法は、実施例1と同様の方法である。実施例13〜15のハニカム構造体における、「流出端面における隔壁の厚さAout(mm)」、「流入側隔壁の厚さAin(mm)」、「Aout−Ain(mm)」、「流入側隔壁の適用長さの比」、「ハニカム構造体の全長L」、及び「流入側隔壁の適用長さLin(mm)」を、表1に示す。実施例13〜15では、触媒スラリーの塗工範囲を調整して、「流入側隔壁の適用長さの比(%)」を調節した。
実施例7〜15のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で圧力損失の低減率(%)を求めた。また、実施例7〜15のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で破壊試験の評価を行った。結果を、表1に示す。
(結果)
実施例1〜15のハニカム構造体は、圧力損失の低減率(%)が5%以上であり、圧力損失の低減が十分に図られているものであった。また、実施例1〜15のハニカム構造体は、破壊試験の評価が全て「OK」であり、耐久性に優れたものであった。一方で、比較例2,4のハニカム構造体は、圧力損失の低減率(%)が4%であり、圧力損失の低減が十分に図られていないものであった。比較例3のハニカム構造体は、破壊試験の評価が「NG」であり、耐久性が低いものであった。