(実施例1)
以下、本願の実施例1に係る照明装置について、図面を参照しながら説明する。図1は本願の実施例1における光源装置の構成を示す概略図である。この図1に示すように、実施例1の光源装置10は、励起光を発する励起光源11と、励起光の光路上に配置され、励起光により励起されて所定の波長帯域の蛍光を生じる波長変換部材としての蛍光ホイール12と、励起光源11の発光制御および蛍光ホイール12の位相制御を行う光源部制御手段(制御手段)13と、蛍光ホイール12から生じた蛍光を集めて(集光して)出射する集光光学系21と、を備えて構成されている。
励起光源11は、励起光として、例えば、青色の波長帯域(例えば、400nm〜450nm)の光を発光する固体発光素子を用いることができる。より具体的には、励起光源11は、可視光としての青色レーザ光を発生する青色レーザダイオード(半導体レーザ、LDともいう)を用いている。また、励起光源11は、図1では説明の便宜上、一個のLDみを模式的に示しているが、実施例1では、複数個の青色レーザダイオードからなる発光アレイにより構成されている。なお、励起光源11として、青色レーザダイオードの代わりに、青色光を発生する発光ダイオード(LED)や、紫外域の波長領域を生じるレーザダイオード(LD)を用いてもよいし、これらを複合した光源を用いてもよい。
蛍光ホイール12は、図1、図2に示すように、円板状基板12aと、この円板状基板12aの表面に設けられた蛍光体層12bとで構成されている。円板状基板12aは、全体に円板形状を呈し、蛍光体層12bから生じる所定の波長帯域の蛍光を透過させる光学特性を有する部材で構成されている。この円板状基板としては、例えば、ガラス材等を用いることができる。このように円板状基板12aを構成することで、蛍光体層12bから生じる蛍光を、集光光学系21に向かって出射させることができる。なお、本実施例では、円板状基板12aは、蛍光を透過させる材料で形成しているが、本願がこれに限定されることはなく、蛍光を反射させる材料で形成し、この反射により蛍光を集光光学系21に導くよう構成してもよい。
蛍光体層12bは、円板状基板12aの中心軸線を中心とする環状(リング状)に形成され、当該円板状基板12aに設けられている。この蛍光体層12bは、励起光源11から出射した励起光により励起されて、励起光とは異なる波長帯域の蛍光、例えば、緑色光の蛍光を発生する材料(蛍光材料)で構成されている。この蛍光材料としては、特に限定されないが、緑色の場合は、YAG系の蛍光材料や、サイアロン系の蛍光材料等が好適である。緑色の蛍光の波長帯域としては、例えば、500nm〜600nmが好ましい。なお、蛍光体層12bから生じさせる蛍光としては、緑色光に限定されることはなく、赤色光や黄色光等を生じさせるものであってもよい。
また、蛍光ホイール12では、図1に示すように、円板状基板12aが、電動モータ等の駆動手段(以下「モータ部12d」と呼ぶ)の回転軸12cに取り付けられている。このモータ部12dは、後述のモータ駆動部17により駆動制御される。このモータ部12dが駆動されることで、回転軸12cを回転中心として、蛍光ホイール12が回転駆動される。この蛍光ホイール12の回転により、蛍光体層12b上での励起光の被照射位置が時間的に変化することで、円周方向の所定範囲の領域(照射領域)に励起光が照射される。このように蛍光ホイール12は、モータ部12dと供回りする(同期して回転する)ため、以下、本明細書では、蛍光ホイール12の位相制御の説明を、モータ部12dの位相制御の説明に置き換えて説明する。
ここで、従来の問題点について説明する。蛍光ホイールでは、励起光源から出射する励起光が、蛍光体層に小さな点状(スポット状)に照射される。この小さな点状の光の被照射位置が、蛍光体層の同一箇所に収集して照射されると、蛍光の生成効率の低下や発光特性の劣化により、蛍光の発光異常を生じることがある。そのため、この蛍光ホイールを回転駆動させることで、蛍光体層上での励起光の被照射位置を時間的に変化させ、励起光のエネルギーが蛍光体層の同一箇所に集中され続けるのを防止している。これにより、蛍光体層における蛍光の生成効率の低下の防止や、蛍光体層の発光特性の劣化の防止を図っている。
しかし、長期間の使用等の何らかの理由により、蛍光体層に蛍光の生成効率の低下や発光特性の劣化等を生じるような領域が部分的に生じた場合でも、その領域にも引き続き励起光が照射され、蛍光の生成に使用されることとなる。特に、特許文献2、3では、蛍光体層の全周を励起光の照射領域に使用しているため、劣化等を生じた領域も、蛍光の生成に使用され続けることとなる。これを放置したままでは、蛍光に光量ムラ等を生じて、画像品質等に影響を及ぼす場合がある。
このような不具合を解消するため、実施例1の光源装置10では、励起光が照射される照射領域での蛍光の発光状態等、蛍光ホイール12の性能に基づいて光源部制御手段13により、モータ部12dの駆動時の回転位相を制御して、モータ部12dと供回りする蛍光ホイール12の位相を変化させている。これにより、劣化等を生じた領域に励起光が照射されないように、この領域回避することができる。その結果、蛍光の生成効率の低下等による蛍光の発光状態の低下を抑制する効果を向上させることができる。この位相制御の詳細については、後述する。
なお、実施例1では、波長変換部材として蛍光ホイール12を用い、この蛍光ホイール12を回転させている。しかしながら、励起光の被照射位置を、時間的に変化させることができるものであれば、他の構成であってもよく、本願が実施例1の構成に限定されるものではない。他の構成としては、表面に蛍光体層を設けた無端ベルト状の波長変換部材としてもよい。この場合も、無端ベルト状の波長変換部材を回転させることで、励起光の被照射位置を時間的に変化させることができ、蛍光体の蛍光の生成効率の低下の防止や、発光特性の劣化の防止が可能となる。また、蛍光体層に部分的に劣化等が生じた場合は、この領域に励起光が照射されないように無端ベルトの位相を制御することで、蛍光の発光状態への影響を回避することができる。さらに異なる構成としては、例えば、波長変換部材の基板を、円板状基板12aに替えて長尺な板形状基板とし、この板形状基板の表面に、長尺方向に延びる蛍光体層を設けてもよい。この板状部材基板を、その長尺方向に往復移動させることにより、励起光の被照射位置を時間的に変化させることができ、蛍光体の蛍光の生成効率の低下の防止や、発光特性の劣化の防止が可能な波長変換部材を得ることができる。この板状部材製の波長変換部材の往復移動の位相を変化させることで、劣化等が生じた領域を回避して励起光を照射することが可能となる。
モータ部12dには、回転軸12cの回転速度を示す回転検出信号MIDXを生成し、後述のモータ駆動部17に出力する機能を備えている。本機能は、モータ部12dの内部に設けられていてもよいし、モータ部12dに外付けされていてもよい。本機能を外付けで実装する場合、例えば、モータ部12dの回転軸12cまたはこの回転軸12cと一緒に回転する部品の一部に光学的なマークを施し、フォトセンサなどを用いてそのマークを検出するような方式が一般的に知られている。すなわち、フォトセンサは、そのマークを検出するごとにパルスを生成し、回転検出信号MIDXを出力する。
光源部制御手段13は、一定周期の同期信号を出力する同期信号発生部15と、励起光源11の発光(点灯および消灯)を制御するLD駆動部16と、蛍光ホイール12のモータ部12dの位相を制御するモータ駆動部17と、これらを制御する制御部14と、励起光源11の発光タイミングデータ、発光期間、モータ部12dの回転位相データ等の各種データが記憶されたメモリ18と、等を備えて構成されている。また、光源部制御手段13のLD駆動部16、モータ駆動部17および制御部14は、メモリバス(MBI)20を介してメモリ18に接続されている。
光源部制御手段13のハードウェア構成としては、CPU(中央処理ユニット;Central Processing Unit)、ROM(リードオンリーメモリ;Read Only Memory)、RAM(ランダムアクセスメモリ;Random Access Memory)等から構成される。光源部制御手段13は、ROMに予め記憶されているプログラムに従って、RAMをワークメモリとして用いて、励起光源11や蛍光ホイール12を駆動制御する。
同期信号発生部15は、一定の周期T0の同期信号SYNC(SYN_O)を出力する機能を備える。この同期信号SYN_Oの出力タイミングに基づいて、モータ駆動部17によるモータ部12dの位相制御とLD駆動部16による励起光源11の発光制御とが行われる。実施例1では、外部から同期信号発生部15に周期信号SYN_Iが入力されると、同期信号発生部15は、この周期信号SYN_Iと同じ周期および位相の信号を同期信号SYN_Oとして出力する。この同期信号SYN_Oの出力手順が実施例1に限定されることはなく、他の異なる例として、同期信号発生部15の内部で任意の周期および位相の信号を生成し、同期信号SYN_Oとして出力してもよい。同期信号SYN_Oは、LD駆動部16、モータ駆動部17に出力される。
制御部14は、外部インタフェース(図示せず)を介して外部から入力される起動信号STが肯定(assert)されると、モータ駆動部17に対してモータ起動信号MSTを出力する機能を備える。制御部14は、さらに、モータ駆動部17から、モータ部12dが正常な回転状態になったことを知らせる信号MGDが肯定されると、LD発光開始信号LDENを肯定し、LD駆動部16に向けて出力する。
モータ駆動部17は、制御部14からのモータ起動信号MSTが肯定されると、モータ駆動信号MTDを出力してモータ部12dの駆動を開始する機能を備える。モータ駆動部17は、さらに、モータ部12dからの回転検出信号(位相信号)MIDXの周期を検出する機能を備える。より詳細には、モータ駆動部17は、モータ起動信号MSTの肯定により、モータ部12dが回転検出信号MIDXの出力を開始してから、この回転検出信号MIDXが所定の周期に到達したか否かを監視する。回転検出信号MIDXが所定周期に到達したことを検出すると、モータ部12dが正常な回転状態になったことを知らせる信号MGDを肯定して、制御部14に出力する。
モータ駆動部17は、モータ部12dの位相を制御する機能を備える。この制御のため、モータ駆動部17は、レジスタR3を内部に有し、メモリ18に記憶されているモータ部12dの回転位相データT3を読み込んで、レジスタR3に記憶する。そして、モータ部12dが正常な回転状態になったのを確認した上で、同期信号SYN_O(周期T0)に対する回転検出信号MIDXの位相を検出し、その位相差とレジスタR3の内容とを比較する。モータ駆動部17は、この位相差がレジスタR3に記憶された回転位相データT3と一致するように、モータ駆動信号MTDを制御する。具体的には、実施例1では、モータ部12dとして3相ブラシレスDCモータを用い、モータ駆動部17はモータ駆動信号MTDとして、3相の電流信号を生成する。そして、この3相の電流信号について、同期信号SYN_Oに対する位相を制御することで実現できる。
LD駆動部16は、LD発光開始信号LDENが肯定されると、同期信号SYN_Oに対して所定の発光開始タイミング(開始期間T1)で、所定の発光期間(発光期間T2)だけ、励起光源11であるレーザダイオード(LD)を駆動(発光)するためのLD駆動信号LDDを出力する。LD駆動部16の具体的な構成および動作の例としては、以下のようにして実現することができる。まず、実施例1では、LD駆動部16は、メモリ18に記憶された発光開始タイミングデータT1および所定の発光期間データT2を読み込んで記憶しておく2つのレジスタR1,R2と、2つのタイマTM1,TM2と、を内部に有している。タイマTM1,TM2の時間計数値を、それぞれt10,t20とする。LD駆動部16は、制御部14からLD発光開始信号LDENが肯定された後、同期信号SYN_Oに対して所定のタイミングでタイマTM1を起動する。このタイマTM1の時間計数値t10が、レジスタR1の発光開始タイミングデータT1と一致すると、LD駆動信号LDDの出力を開始するとともにタイマTM2を起動する。LD駆動信号LDDの出力により、励起光源11が点灯する。また、このタイマTM2の時間計数値t20が、レジスタR2の発光期間データT2と一致するタイミングで、LD駆動信号LDDの出力を停止して励起光源11を消灯する。
メモリ18は、前述のモータ部12dの回転位相データT3、励起光源11の発光開始タイミングデータT1および発光期間データT2が情報として記憶されている。これらの情報は、例えば、光源装置10の電源ON時に、メモリバス(MBI)20を介してメモリ18から読み出され、モータ駆動部17のレジスタR3およびLD駆動部16のレジスタR1,R2に書き込む(記憶させる)ようにしている。これにより、メモリ18の内容を反映した光源装置10の動作が実現できる。また、メモリ18としては、RAMを用いてもよいし、HDD、USB等の外部記憶装置等を用いることができる。
なお、メモリ18に記憶された回転位相データT3、発光開始タイミングデータT1および発光期間データT2は、外部から書き換えることができる。具体的には、制御部14には、外部から制御信号CNTが入力されるが、この制御信号CNTは、外部とのインタフェース信号を含んでいる。このインタフェース信号に基づいて、制御部14が、メモリ18の回転位相データT3、励起光源11の発光制御用の発光開始タイミングデータT1または発光期間データT2を書き換えるようにする。このようにメモリ18の内容を書き換え可能とすることにより、例えば、実施例1の光源装置10やこの光源装置10を備えた照明装置を、画像表示装置や投影表示装置に用いた場合、次のような動作が可能となる。つまり、これらの画像表示装置や投影表示装置に入力される映像信号の種類やフレーム周波数によって、投影される出力映像信号のフレーム周波数が変化することがある。このフレーム周波数の変化等に対応させて、メモリ18のデータを書き換えることで、フレーム周波数に対応して蛍光(照明光)を出射させることができるとともに、光量ムラ等を抑制して、発光状態が良好な蛍光を出射させることができる。
以下、上述した構成の実施例1の光源装置10における動作を、図3〜図6の概略図、および図7のフローチャートに基づいて説明する。図3は、図1に示す実施例1の光源装置10での同期信号SYNC(SYN_O)に対するモータ部12dの回転検出信号MIDXおよびLD駆動信号LDDの出力の様子を示すタイミングチャートである。図4は、図3とは異なる位相でモータ部12dを位相制御したときのタイミングチャートである。図3、図4中、SYNC(SYN_O)は、同期信号発生部15からの同期信号の一例を示す。MTDは、モータ駆動部17からのモータ駆動信号の一例を示し、Iu,Iv,Iwは、このモータ駆動信号MTDの3相の電流信号の一例を示す。MIDXは、モータ部12dからの回転検出信号を示す。LDDは、LD駆動部16からの励起光源11を駆動するLD駆動信号を示す。
また、図3、図4においては、モータ部12d(すなわち、蛍光ホイール12)の位相を制御するモータ駆動信号MTDの出力タイミングおよび励起光源11の発光を制御するLD駆動信号LDDの出力タイミングは、同期信号SYNC(SYN_O)の立ち上り遷移を基準に設定されている。なお、LD駆動信号LDDの出力タイミングは一定(すなわち、励起光源11の発光タイミングと発光期間とが一定)である。これに対して、モータ部12dの回転位相は、電流信号Iu,Iv,Iwの位相を制御することで、所定の周期となるように制御できる。また、実施例1では、光源部制御手段13の制御により、同期信号SYN_Oの周期T0の間に、モータ部12dとともに蛍光ホイール12が一回転し、励起光源11が一定期間(発光期間T2)発光するように制御されている。
図5は、図3のタイミングチャートに従って光源装置10が動作したときの蛍光ホイール12での励起光の照射領域Dを示す概略図である。図6は、図4のタイミングチャートに従って光源装置10が動作したときの蛍光ホイール12での励起光の照射領域D’を示す概略図である。つまり、図5、図6は、図3、図4に示したモータ部12dの回転位相T3およびLD駆動信号LDDの出力タイミングにおける、蛍光ホイール12上の蛍光体層12bの照射領域の違いを概略的に示したものである。
また、図5、図6においては、説明を解り易くするために、蛍光ホイール12上に便宜的にマーカPを設定する。モータ部12dの回転検出信号MIDXが、「0」から「1」に遷移するタイミングにおけるマーカPの位置を、基準位置Aとする。また蛍光ホイール12は、図5、図6中にBで示される励起光照射位置で、励起光源11からの励起光が蛍光体層12bに照射されるように配置されているものとする。この励起光照射位置Bは、励起光の光路を表している。そして、蛍光ホイール12の回転に従って、蛍光体層12b上で励起光が照射される領域全体(照射領域D,D’)を斜線で示している。
以下、図3のタイミングチャートに基づいた光源装置10の動作について、図7に示すフローチャートを用いて説明する。まず、同期信号発生部15は、外部から入力される周期信号SYN_Iに基づいて、周期T0の同期信号SYN_Oを出力する(ステップS1)。制御部14は、外部からの起動信号STが肯定(assert)されたか(起動信号ST=1か)判定し(ステップS2)、肯定された場合(Yes)は、モータ駆動部17に対してモータ起動信号MST(MST=1)を出力する(ステップS3)。モータ駆動部17は、このモータ起動信号MSTが肯定されると、モータ部12dに対して、3相の電流信号Iu,Iv,Iwからなるモータ駆動信号MTDを出力し、モータ部12dの駆動を開始する(ステップS4)。モータ部12dは、このモータ駆動信号MTDによって回転駆動し、モータ駆動部17に対して回転検出信号MIDXを出力する(ステップS5)。
モータ駆動部17では、同期信号SYN_O(図3の周期T0)に対する回転検出信号MIDXの位相を検出し、その位相差が、レジスタR3の回転位相データT3と一致するか否か判定する(ステップS6)。一致しない場合(No)は、ステップS4に戻り、モータ駆動信号MTDの電流信号Iu,Iv,Iwを制御する。一方、回転検出信号MIDXの位相差と回転位相データT3とが一致した場合(Yes)は、モータ部12dが正常な回転状態になったとして、モータ駆動部17は、回転正常の信号MGDを肯定して制御部14に出力する(ステップS7)。制御部14は、この回転正常の信号MGDが肯定されると、LD発光開始信号LDENを肯定してLD駆動部16に出力する(ステップS8)。LD駆動部16は、LD発光開始信号LDENが肯定されると、同期信号SYN_O(図3の周期T0)に対して、レジスタR1の発光開始タイミング(T1)で、レジスタR2の発光期間(T2)だけ、LD駆動信号LDDを出力し、励起光源11を発光(点灯)させる(ステップS9)。
以上の動作により、図3のタイミングチャートに示すように、同期信号SYN_Oに対して、T3期間後に、モータ部12dからの回転検出信号MIDXが「0」から「1」に遷移する。一方、LD駆動信号LDDは、同期信号SYN_Oに対して、T3の期間よりも長いT1期間後に出力される。したがって、回転検出信号MIDXが「0」から「1」に遷移してから「T1−T3」期間後に、LD駆動信号LDDの出力(励起光源11の発光)が開始される。これにより、図5に示すように、マーカPが基準位置Aに到達した時点では、励起光照射位置B(励起光の光路)にまだ到達していない斜線部分が、励起光の照射領域Dとなる。この照射領域Dが、発光期間T2中に、励起光照射位置B、すなわち、励起光の光路上を通過する領域である。蛍光ホイール12は、励起光が発光する発光期間と同期して、周期T0ごとに一回転するため、蛍光ホイール12の回転時の位相が変更されない限りは、常にこの特定の照射領域Dに励起光が照射される。
次に、図4のタイミングチャートに基づいた光源装置10の動作について説明する。このときの動作は、モータ部12dからの回転検出信号MIDXの位相が、T3’となるように、モータ駆動信号MTDを制御すること以外は、図3における動作、すなわち図7のフローチャートに示す動作と同一であるため、詳細な説明は省略する。図4の場合は、同期信号SYN_Oに対して、図3におけるT3およびT1よりも長いT3’期間後に、モータ部12dからの回転検出信号MIDXが「0」から「1」に遷移する。一方、LD駆動信号LDDの出力タイミングは一定であり、同期信号SYN_Oに対して、T1期間後に出力される。したがって、モータ部12dの回転検出信号MIDXが「0」から「1」に遷移するタイミングよりも前から、LD駆動信号LDDの出力(励起光源11の発光)が開始されている。そのため、図6に示すように、マーカPが基準位置Aに到達した時点で、既に励起光照射位置B(励起光の光路)に到達している部分(マーカPが基準位置Aに到達するT3’−T1期間前に励起光照射位置Bに到達している部分)を含む斜線部分が、励起光が照射される特定の照射領域D’となる。この照射領域D’が、発光期間T2中に、励起光照射位置B、すなわち、励起光の光路上を通過する領域である。
以上説明したように、実施例1に係る光源装置10では、モータ駆動部17は、モータ部12dからの回転検出信号MIDXに基づいて、モータ駆動信号MTDを制御する。この制御により、モータ部12dの回転位相を、図3から図4のように変化させることができる。このようにモータ部12dの回転位相を変化させることにより、図5、図6に示すように、蛍光ホイール12上の励起光の照射領域をDからD’に変更することができる。これを利用して、例えば、使用当初においては、図3に示すタイミングチャートに従って、モータ部12dの回転位相がT3となるような制御で光源装置10を動作させる。これにより、図5に示すように、蛍光ホイール12の照射領域Dに対して励起光が照射され、この照射領域Dから生じた蛍光が、光源装置10から出射される。そして、長期の使用等により、蛍光ホイール12の照射領域Dに、蛍光の生成効率の低下や発光特性の劣化が生じた場合は、光源装置10から出射される蛍光にムラを生じる等、蛍光の発光状態に影響が出るため、生成効率の低下等を把握することができる。この場合は、図4に示すタイミングチャートに従って、モータ部12dの回転位相がT3’となるような制御で光源装置10を動作させる。これにより、図6に示すように、蛍光ホイール12の照射領域D’に対して励起光が照射され、この照射領域D’から生じた蛍光が、光源装置10から出射される。
したがって、励起光の照射領域を、DからD’に変化させることで、蛍光体層12b生成効率の低下等を生じた領域に励起光が照射されるのを回避することができる。図5、図6の例では、図5の照射領域Dでは含まれているが、図6の照射領域D’には含まれていない領域(図6の領域d)に、生産効率の低下等を生じる部位が生じている。モータ部12dの位相を制御することで、この領域dを回避して励起光が照射されるようになる。また、照射領域D’内に生成効率の低下等を生じた領域がある場合は、さらにモータ部12dの位相を変更することにより、当該領域を回避することができる。なお、回転位相T3をT3’に変更するには、前述したように、外部からのインタフェース信号に基づいて、制御部14がメモリ18に記憶された回転位相データT3をT3’に書き換えることで実現できる。
以上、実施例1の光源装置10では、周期信号SYN_Iに対するモータ部12d(蛍光ホイール12)の位相を制御することにより、励起光の発光開始タイミングに対するモータ部12d(蛍光ホイール12)の位相を変化させることができる。これにより、励起光の発光期間中に、励起光の光路を通過する蛍光ホイール12上の照射領域を変化させることができる。したがって、蛍光ホイール12の一部に、蛍光体の劣化等を生じた領域が存在しても、モータ部12dの位相を制御することで、当該領域を回避して励起光を照射して、蛍光を生じさせることができる。その結果、光量ムラ等を抑制して、発光状態が良好な蛍光を出射することができる。また、このように、劣化等を生じた領域を回避し、劣化等のない領域を用いて蛍光を生じさせることで、蛍光ホイール12を頻繁に交換する必要がなくなり、交換の手間やコストを省くことができる。したがって、優れた光学性能をより長期に維持することが可能となり、低コストで信頼性が高く、かつ高品位の光源装置10を実現することができる。
(実施例2)
次に、本願の実施例2に係る光源装置について、図面に基づいて説明する。実施例2の光源装置では、蛍光ホイールから生じる蛍光の発光状態を監視し、その監視結果に基づいて、蛍光ホイールの位相を制御している。この蛍光の発光状態を監視するため、実施例2では、蛍光ホイールから生じる蛍光を受光し、その発光量を検出している。図8は、実施例2に係る光源装置10Aの構成を示す概略図である。この図7に示す実施例2の光源装置10Aは、集光光学系21からの蛍光の出射光路に、蛍光の発光状態(発光量)を検知する出力光検知手段(検出手段)22を設けたこと以外は、図1に示す実施例1の光源装置10と同様の基本構成を有している。そのため、第1実施例と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
出力光検知手段22は、図8に示すように、反射ミラー23と、フォトダイオード(Photodiode、以下「PD」と呼ぶ)24と、インピーダンス変換器(amplifier、以下、「AMP」と呼ぶ)25と、アナログ/デジタル変換器(Analog-to-digital converter、以下、「ADC」と呼ぶ)26と、を備えて構成されている。反射ミラーは、ミラーの一部にアルミニウムなどの反射膜を蒸着することにより形成され、集光光学系21から出射される蛍光の出射光路に配置されている。反射ミラー23は、集光光学系21から出射した蛍光の殆どは透過して出射させるが、蛍光の一部を反射膜によって出射光路と直交する方向に反射させる。この反射光路には、PD24が配置されている。このPD24は、反射ミラー23により反射された蛍光を受光し、電流信号PDIに変換し、AMP25に向けて出力する。
AMP25は、PD24から入力された電流信号PDIを、電圧信号PDVに変換し、ADC26に向けて出力する。ADC26は、AMP25から入力された電圧信号PDVを、デジタル信号に変換し、このデジタル信号を、受光信号PDDとして、同期クロックPCKとともに出力する。この受光信号PDDと同期クロックPCKとは、光源部制御手段13の制御部14に入力される。受光信号PDDは、光源装置10Aから出射される蛍光の発光量を表すデータであり、この受光信号PDDの変化を検知することにより、蛍光の発光量の変化を知ることができる。
実施例2の制御部14は、実施例1と同様の機能に加え、出力光検知手段22からの信号に基づいて、励起光の照射領域に蛍光の劣化等を生じたかを検出する機能を備える。この機能の実現のため、制御部14は、劣化等のエラーが生じているか否かを示すエラーフラグ信号(内部信号)Perrを生成するとともに、出力光検知手段22から入力される受光信号(デジタル信号)PDDの低下を判断するための基準値(閾値)Prefを内部に記憶している。制御部14は、さらに、劣化等を生じた領域を回避するため、タイマTM30およびレジスタR30を内部に有している。タイマTM30は、LD発光開始からの経過時間の計数用のタイマであり、このタイマTM30の時間計数値をT30とする。レジスタR30は、受光信号PDDが、励起光の発光期間T2の全期間において基準時を上回る回転位相データを記憶するレジスタである。このレジスタR30に記憶された値をDR30とする。
また、実施例1と同様に、モータ駆動部17は回転位相データT3を記憶するレジスタR3を内部に有し、LD駆動部16は発光開始タイミングデータT1、発光期間データT2を記憶するレジスタR1,R2およびタイマTM1,TM2を内部に有している。これらのデータは、メモリ18に記憶され、光源装置10Aの起動の際に読み出され、各レジスタR1,R2,R3に書き込まれる。
また、LD駆動部16は、実施例1と同様の機能に加え、励起光源11の発光状態を知らせるLD発光信号LDD_ONを生成する機能を備える。LD駆動部16は、LD発光開始信号LDENの肯定により、励起光源11の発光を制御する際に、所定間隔で、LD発光信号LDD_ONを制御部14に対して出力する。LD駆動部16は、励起光源11を発光(点灯)している間は、LD発光信号LDD_ONとして「1」を出力し、励起光源11を消灯している間は、LD発光信号LDD_ONとして「0」を出力する。
実施例2の光源装置10Aにおけるモータ部12dの回転位相の制御および励起光源11の発光制御の基本動作は、実施例1と同様である。まず、同期信号発生部15が、外部からの周期信号SYN_Iに基づいて、周期T0の同期信号SYN_Oを出力する。制御部14は、外部からの起動信号STが肯定(assert)されると、モータ駆動部17に対してモータ起動信号MSTを出力する。モータ駆動部17は、このモータ起動信号MSTが肯定されると、モータ部12dに対して、モータ駆動信号MTDを出力し、モータ部12dの駆動を開始する。モータ部12dは、このモータ駆動信号MTDによって回転駆動し、モータ駆動部17に対して回転検出信号MIDXを出力する。モータ駆動部17では、モータ部12dから入力される回転検出信号MIDXの位相を検出し、その位相差がレジスタR3に記憶された回転位相データT3と一致するように制御する。これらが一致すると、モータ駆動部17は、回転正常の信号MGDを肯定して制御部14に出力し、LD発光開始信号LDENを肯定してLD駆動部16に出力する。これにより、LD駆動部16は、同期信号SYN_Oに対して、レジスタR1の発光開始タイミング(T1)で、レジスタR2の発光期間(T2)だけ、LD駆動信号LDDを出力し、励起光源11を発光(点灯)させる。また、この励起光源11の発光中、LD駆動部16は励起光源11の発光を知らせるLD発光信号LDD_ON信号として「1」を制御部14に出力する。また、励起光源11を消灯させたときは、LD発光信号LDD_ON信号として「0」を制御部14に出力する。
以上のような動作に加えて、実施例2の制御部14は、LD発光信号LDD_ONが「1」の期間中、クロックPCKに同期して、出力光検知手段22から入力される出力光データとしての受光信号PDDを、内部に記憶している基準値Prefと、順次比較している。そして、受光信号PDDが基準値Pref未満(閾値未満)であった場合に、モータ駆動部17のレジスタR3に記憶されているモータ部12dの回転位相データT3の値を書き換えて、モータ部12dの位相を制御する。この制御により、入力される受光信号PDDが、励起光の発光期間T2の全期間において、基準値Pref以上(閾値以上)となる位相を算出し、新規のモータ回転位相データT3として、メモリ18に書き込んで記憶することを実施している。
以下、実施例2の光源装置10Aの制御部14が、モータ部12dの位相を制御する際の動作例を、図面に基づいて説明する。図9は、制御部14によるモータ部12dの位相制御の動作例を概略的に示したフローチャートである。図10(a)は、実施例2の光源装置10Aで、発光量の低下が検出されたが、その後に発光量が基準値以上となった様子を示すタイミングチャートである。図10(b)は、発光量が低下した領域を回避するようモータ部12dの位相を制御したときの各信号の出力の様子を示すタイミングチャートである。図11(a)は、発光量の低下が検出され、その後も発光量が基準値以上とならなかった場合の各信号の出力の様子を示すタイミングチャートである。図11(b)は、発光量が低下した領域を回避するようモータ部12dの位相を制御し、発光量が基準値以上となった領域が検出されたときの各信号の出力の様子を示すタイミングチャートである。図10、図11では、蛍光の発光量の変化の状態を、デジタル信号である受光信号PDDに変換する前の電圧信号PDVで示している。
まず、制御部14は初期処理として、図9に示すように、エラーフラグ信号Perrをオフ状態とし(ステップS101)、タイマTM30およびレジスタR30をリセットする(ステップS102)。これにより、エラーフラグ信号Perrは、初期状態(エラーなし)を示す「0」が設定され、制御部14内部のタイマTM30の値T30およびレジスタR30の値DR30も「0」が設定される。
次に、制御部14は、LD発光信号LDD_ONが「1」であるか否かを判定し(ステップS103)、No(LD発光信号LDD_ONが「0」)の場合は、ステップS103に戻って待機する。ステップS103の判定で、LD発光信号LDD_ONが「1」、すなわち、励起光源11が発光中である場合(Yes)は、制御部14はタイマTM30を起動し(ステップS104)、以降のステップS105〜ステップS109(受光信号PDDと基準値Prefとの比較)を行う。このステップS105〜ステップS109の処理は、LD発光信号LDD_ONが「1」の間、繰り返し行われる。つまり、ステップS110で、LD発光信号LDD_ONが「0」であるか判定し、「0」と判定した場合は(Yes)、励起光の発光期間が終了したとして、ステップS111に進む。一方、ステップS110で、LD発光信号LDD_ONが「0」でないと判定した場合は(No)、励起光の発光中であるため、ステップS105に戻って以降の処理を繰り返す。
以下、ステップS105〜ステップS109の処理を詳細に説明する。制御部14は、出力光検知手段22のADC26から入力される受光信号PDDを取得し、この受光信号PDDと、内部に記憶している出力光データの基準値Prefとを比較する。具体的には、受光信号PDDの値が基準値Pref未満かを判定し(ステップS105)、受光信号PDDが基準値Pref以上(発光量の低下なし)であれば(No)、次のステップS106に進む。これに対して、受光信号PDDの値が基準値Prefより小さくなる状態が検出された場合は(Yes)、発光量が低下した(発光異常あり)としてエラーフラグ信号Perrをオン(Perr=1)にする(ステップS109)。そして、次のタイミングで受光信号PDDと基準値Prefとの比較を行って、受光信号PDDが基準値Pref以上となる領域を検出すべく、次の比較のためのステップS110に進む。
ステップS105で、受光信号PDDの値が基準値Pref以上と判定された場合は、次に、エラーフラグ信号Perrが「1」であるか否かを判定する(ステップS106)。この判定の結果で、エラーフラグ信号Perrが「1」でない場合(No)は、前回までの比較時にも受光信号PDDが基準値Pref未満となることがなく、蛍光の劣化等が生じていないことを意味する。したがって、その後の処理は行わず、次のタイミングで受光信号PDDと基準値Prefとの比較を行うべく、ステップS110に進む。
これに対して、ステップS106で、エラーフラグ信号Perrが「1」であると判定された場合(Yes)の処理について説明する。この場合は、前回までの比較処理で、受光信号PDDの値が出力光データの基準値Pref未満(蛍光の劣化等を生じた領域がある)の状態が検出されたが、今回の比較で受光信号PDDの値が出力光データの基準値Pref以上となる状態が検出されたことを意味する。したがって、蛍光ホイール12の蛍光体層12bの一部の領域に、劣化等が生じているが、この領域を回避すれば、光量ムラ等を抑制して発光状態が良好な蛍光を出射し得る。
以上のように、エラーフラグ信号Perrが「1」になった後に、受光信号PDDの値が基準値Pref以上になる状態が検出されたら、制御部14は、ステップS107で、その時点のタイマTM30の計測値T30をレジスタR30に書き込む(DR30=T30)。図10(a)を用いて説明すれば、電圧信号PDVの波形中で、電圧の値が低くなっている部分では、蛍光体層12bに劣化等を生じている。ステップS107の実行時には、励起光源11の発光開始からT30期間経過時に、受光信号PDDの値が基準値Pref以上になる状態が検出されたことを意味する。そのため、この基準値Pref以上となった期間T30をレジスタR30に記憶しておく。また、基準値Pref以上の状態が検出されたことから、エラーフラグ信号Perrをクリア(「0」を設定)する(ステップS108)。
ここで、LD駆動部16は、励起光源11の発光期間がT2に一致したとき(発光期間が終了したとき)、LD駆動信号LDDの制御により励起光源11を消灯するとともに、LD発光信号LDD_ONに「0」を設定する。これにより、ステップS110の判定において、励起光源11が消灯されたと判定され(Yes)、次のステップS111以降の処理に進む。
次いで、制御部14は、ステップS111において、エラーフラグ信号Perrが「1」であるか否かを判定し、Yesの場合はステップS112に進み、Noの場合は、ステップS113に進む。ステップS112に進むケースは、エラーフラグ信号Perrが「1」になった後、受光信号PDDの値が基準値Pref以上になる状態が検出されることなく発光期間が終了した(LD発光信号LDD_ONが「0」になった)場合である。この場合には、当該ステップS112で、制御部14は、その時点のタイマTM30の時間計数値T30を、レジスタR30に書き込む(DR30=T30)。そして、ステップS113において、制御部14は、回転位相データT3を書き換える。つまり、回転位相データT3を、期間T30に相当する分だけ進める。この場合、現在のモータ部12dの回転位相データT3と、ステップS107で書き込まれたレジスタR30の値DR30との差分T3−DR30を新規の回転位相データT3とする。この新規のT3の値で、モータ駆動部17の内部のレジスタR3の値DR3と、メモリ18のT3の値とを書き換える。ただし、受光信号PDDが基準値Preff以上となるまでの期間DR30が長く、T3−DR30<0である場合は、モータ部12dの位相を同期信号SYN_Oに対して、|T3−DR30|だけ進めるべく、T0−|T3−DR30|を新規の回転位相データT3とする。このようにして算出した新規の回転位相データT3で、モータ駆動部17の内部のレジスタR3の値T3と、メモリ18のT3の値とを書き換える。
以上のように、発光量の低下が回復しない状態で、回転位相データT3の書き換えが行われると、モータ駆動部17は、以後はこの新規のT3に基づいて、モータ部12dの位相制御を行うようになる。この位相の変更が行われた場合のタイミングチャートを、図11(b)に示す。この図11(b)に示すT3’’が、新規の回転位相データである。モータ駆動部17は、回転位相データT3’’に従って、モータ部12dの位相を制御することで、前回に検出された発光量の低下した領域を回避して励起光を照射し、次の発光量の変化の検出を行うことができる。
これに対して、ステップS111でエラーフラグ信号Perrが「1」でないと(No)と判定され、ステップS112をスキップしてステップS113に進むケースは、次の2つのケースがある。第1のケースは励起光の照射領域に、劣化等を生じた領域が存在しない場合である。第2のケースは劣化等を生じた領域(PDD<Pref)が一部存在したが、その後に発光量が基準値以上の領域(PDD≧Pref)が見つかった場合である。これら2つのケースにおけるステップS113の処理について説明する。第1のケースでは、照射領域全体に劣化等を生じていないため、レジスタDR30が「0」、すなわち、初期状態のままである。そのため、ステップS113を実行してもT3の値は変化することがない。したがって、引き続き、同様のタイミングでモータ部12dの回転制御が行われる。
一方、第2のケースでは、先のステップS107で、発光量が基準値以上となった時点でのタイマTM30の時間計数値T30がレジスタR30に記憶されているため、当該レジスタR30の値DR30は「0」以外となっている。したがって、第2のケースにおいてステップS113を実行することで、現在のモータ部12dの回転位相データT3と、ステップS107で書き込まれたレジスタR30の値DR30との差T3−DR30が、新規のT3となる。なお、T3−DR30<0の場合は、T0−|T3−DR30|を新規のT3とする。このようにして算出した新規の回転位相データT3で、モータ駆動部17の内部のレジスタR3の値T3と、メモリ18のT3の値とを書き換える。
この回転位相データT3の書き換えにより、モータ駆動部17は、以後はこの新規のT3に基づいて、モータ部12dの位相制御を行うようになる。これにより、劣化等を生じた領域を回避することができる。この位相の変更が行われた場合のタイミングチャートを、図10(b)に示す。この図10(b)に示すT3’(=T3−T30)が、新規の回転位相データである。モータ駆動部17は、T30に相当する期間だけ進めてモータ部12dの位相を制御することで、蛍光ホイール12上の発光量の低下した領域を回避して励起光を照射することが可能となる。
最後にタイマTM30をリセットして初期状態「0」とし(ステップS114)、一周期T0分の処理を終了する。以上の動作を、光源装置10Aの作動中に繰り返し実行することで、動作中に蛍光ホイール12の励起光の照射領域に、蛍光体の劣化等を生じても、この領域を回避して、蛍光の発光量への影響を抑制することができる。
以上説明したように、励起光の発光期間T2の間に受光信号PDDの値が基準値Prefよりも小さくなる状態が検出された場合には、その状態となる蛍光体層12bの領域を避けて照射するように制御される。もし、励起光の発光期間T2の間に受光信号PDDの値が基準値Prefよりも小さくなる状態が検出されて、その状態が発光期間T2の終了まで続いた場合には、次の発光期間T2について同様の検出(ステップS101〜ステップS114の処理)を行なう動作に移行する。この移行により、前回検出を行った領域とは異なる領域で、発光量の状態を検出することができる。
図10は、前述したように、上記の動作の一例をタイミングチャートで示したものである。図10(a)は蛍光の発光期間中に受光信号PDDの値が基準値未満になる状態が発生したが、その後に基準値以上となる状態が発生した様子を示している。また、このときの図10(b)は制御部14によってモータ部12dの回転位相が変更されたことによって、受光信号PDDの値が発光期間T2の全期間で基準値以上になった様子を示している。図10(a)に示すように、蛍光体の劣化等による蛍光の発光量の低下が、発光が開始されてから期間T30が経過するまでの間に発生していることが検知された。そのため、図10(b)に示すように、モータ部12dの回転位相を期間T30に相当する分だけ進めて、回転位相データT3’(=T3−DR30)となるようモータ部12dの位相を制御する。この制御により、劣化等を生じた領域が、励起光の照射前に励起光照射位置(励起光の光路)を通過するようになる。すなわち、励起光の発光期間中は、劣化等を生じた領域が、励起光の光路を通過しないように制御される。したがって、劣化等を生じた領域への励起光の照射を回避して、蛍光の発光量を良好に保つことができる。
また、図11は、上記の動作の他の例をタイミングチャートで示したものである。図11(a)は蛍光の発光期間中に受光信号PDDの値が基準値Pref未満になる状態が発生し、その後発光量が回復しなかった様子を示している。また、このときの図11(b)は制御部14によってモータ部12dの位相が変更された様子を示している。図11(a)に示すように、蛍光体の劣化等による蛍光の発光量の低下が、発光が開始されてから期間T30’(=発光期間T2)が経過しても発生し続けていることが検知された。そのため、図11(b)に示すように、回転位相を同期信号SYN_Oに対して、|T3−DR30|に相当する期間だけ進めて、モータ部12dの位相を制御する。すなわち、回転位相データT3’’を「T0−|T3−DR30|」とする。この制御により、蛍光ホイール12上で、前回の劣化等を生じた領域を飛ばした位置から発光量の検出が開始される。図11(b)では、この位相制御後に、発光開始からT30’’期間経過後に、発光量が基準値以上となる領域が検出された様子を示している。この場合、例えば、T3’’−T30’’を、新規の回転位相データT3としてモータ部12dの位相を制御することで、劣化等を生じた領域への励起光の照射を回避することができる。その結果、光量ムラ等を抑制して、発光量が良好な蛍光を出射することができる。
以上、実施例2の光源装置10Aでも、蛍光ホイール12の蛍光体層12bに劣化等を生じた領域を回避して蛍光を生じさせることができるため、発光量が良好な蛍光を照射することができる。また、優れた光学性能を長期に維持することが可能となり、蛍光ホイール12を頻繁に交換等する必要がなく、低コストで信頼性が高く、かつ高品位の光源装置10Aを実現することができる。また、実施例2では、蛍光の発光量を検出して、劣化等を生じた領域を検出し、その領域を回避するよう、制御部14が自動でモータ部12dの位相を変更している。そのため、モータ部12dの位相の変更に際して、ユーザ自身が回転位相データT3をマニュアル等で書き換える必要がなく、操作の手間を省くことができ、アプライアンス性に優れた高品位の光源装置10Aを実現することができる。
なお、上記実施例2では、蛍光の発光状態として、蛍光ホイール12から生じる蛍光の一部を出力光検知手段22により受光し、その発光量を検出しているが、本願がこの実施例に限定されることはない。他の異なる具体例として、蛍光ホイール12に入射したにもかかわらず波長変換されなかった(蛍光の発生に使用されなかった)励起光を検出することで、間接的に蛍光の発光状態を知ることができる。励起光を検出する具体的な手段として、例えば、励起光に対して、蛍光ホイール12を傾斜させて配置することで、波長変換されなかった励起光を、蛍光ホイール12によって反射させる。この励起光の反射光路に、適宜の受光素子を配置して、反射光のスペクトルを検出し、蛍光ホイール12に入射したにもかかわらず波長変換されなかった励起光の存在の有無を検出する。このような励起光が検出されなかった場合は、蛍光ホイール12の照射領域で、蛍光への波長変換が効率的かつ良好に行われたことがわかる。これに対して、励起光が検出された場合は、蛍光への波長変換が良好に行われず、当該照射領域に劣化等を生じていることがわかる。
(実施例3)
次に、本願の実施例3に係る光源装置について説明する。この実施例3では、実施例2と同様の構成の光源装置10Aを用いているが、制御部14によるモータ部12dの位相制御の動作が実施例2とは異なる。具体的には、実施例2では光源装置10Aの動作中に、受光信号PDDが基準値Pref未満となる領域が生じたときに、モータ部12dの位相を変更して、当該領域に励起光が照射されないように制御している。そのため、例えば、蛍光の発光量が基準値未満とならない間は、同期信号SYN_Oに対するモータ部12dの位相は変更されることはなく、蛍光ホイール12の同じ照射領域に励起光が照射され続ける。
しかしながら、発光量が基準値以上を保っていた場合であっても、蛍光ホイール12の寿命をより長くするためには、励起光が一部の領域に照射し続けないように制御することが好ましい。そのため、実施例3では、モータ部12dの位相を所定間隔で変化させ、蛍光ホイール12への励起光の照射領域をずらすとともに、各照射領域での蛍光の平均発光量を検出している。この平均発光量が最大となる領域に励起光が照射されるように、モータ部12dの位相を制御して、蛍光ホイール12を回転制御している。これにより、蛍光の発光量に影響するような劣化等を生じていない場合であっても、蛍光ホイール12の一部の領域のみに励起光が照射され続けるのを抑制することができる。
このような制御の実現のため、実施例3の制御部14は、図8に点線で示したように、内部にレジスタR20,R20A,R20B,AveR20,R30Aを有している。レジスタR20は受光信号PDDを加算(累積)して記憶するレジスタである。レジスタR20Aは、受光信号PDDの平均値AveDR20の最大値を記憶するレジスタである。レジスタR20Bは、受光信号PDDを加算した回数をカウントして記憶するレジスタである。レジスタAveR20は、平均値AveDR20を算出するために作業域として使用されるレジスタである。レジスタR30Aは、平均値AveDR20が最大となった時点とでのモータ部12dの回転位相データを記憶するレジスタである。
以下、図12のフローチャートを参照して、実施例3の制御部14でのモータ部12dの位相制御の動作例を説明する。この図12に示すように、制御部14では、まず、起動信号STが肯定されたか(ST=1か)判定し(ステップS201)、肯定された場合は、ステップS202に進んで、レジスタの初期化を行う。具体的には、受光信号PDDの平均値AveDR20の算出用のレジスタR20Aに「0」を書き込む(DR20A=0)。また、モータ駆動部17の内部のレジスタR3に、モータ部12dの回転位相データT3の初期値として「0」を書き込む(T3=0)。以降の処理では、同期信号SYN_Oに対する回転検出信号MIDXの位相が「0」の状態から、ΔTずつ位相をずらして(遅らせて)、回転位相データT3が周期T0に到達するまで、各位相での発光量の状態が検出される。
初期化処理を行ったら、次に、制御部14は、モータ起動信号MSTを肯定し(MST=1)、モータ駆動部17に出力する(ステップS203)。このモータ起動信号MSTの肯定により、実施例1で説明したように、モータ駆動部17がモータ部12dに対して、モータ駆動信号MTDを出力する。このモータ駆動信号MTDによってモータ部12dが回転駆動し、モータ駆動部17に対して回転検出信号MIDXを出力する。モータ駆動部17は、この回転検出信号MIDXの位相差が、レジスタR3の回転位相データT3と一致したとき、回転正常の信号MGD(MGD=1)を肯定して制御部14に出力する。
制御部14は、モータ駆動部17からの回転正常の信号MGDが「1」になったか否かを判定し(ステップS204)、Noの場合(MGD=0)はステップS204の判定を繰り返す。そして、回転正常の信号MGDが「1」になって(Yes)、モータ部12dの回転が定常状態になったことが検出されると、制御部14は、レジスタR20,R20Bの値DR20,DR20Bに「0」を書き込んで初期化する(ステップS205)。さらに、LD発光開始信号LDENを「1」にして、LD駆動部16に出力する(ステップS206)。このLD発光開始信号LDENにより、実施例1で説明したように、LD駆動部16は、LD駆動信号LDDを出力して励起光源11を発光(点灯)させる。同時に、実施例2で説明したように、励起光源11の発光を知らせるLD発光信号LDD_ONを「1」にして、制御部14に出力する。
制御部14では、LD発光信号LDD_ONが「1」になったか否かを判定し(ステップS207)、LDD_ON=0の場合(No)はステップS207の判定を繰り返す。そして、LD発光信号LDD_ONが「1」になったら(Yes)、ステップS208に進み、出力光検知手段22から入力される受光信号PDDの値を、直前のレジスタR20の値DR20に加算し、この加算結果を新たにレジスタR20に書き込んで更新する。また、加算回数のカウンタR20Bに「1」を加算(カウントアップ)する。次に、ステップS209で、LD発光信号LDD_ONが「0(オフ)」になったか否かを判定する。No(LDD_ON=1)と判定されたとき、つまり、励起光源11の発光期間中(LDD_ONがオンの間)、ステップS208の受光信号PDDの加算処理(照射領域の複数箇所で検出した受光信号PDDの加算処理)を繰り返す。
一方、LD発光信号LDD_ONが「0」と判定されると(Yes)、発光期間が終了したことから、次のステップS210に進む。ステップS210で、制御部14は、その時点のレジスタR20の値DR20を加算回数カウンタR20Bの値DR20Bで除算し、受光信号PDDの平均値AveDR20を算出する(AveDR20=DR20/DR20B)。次に、制御部14は、算出された平均値AveDR20と、直前のレジスタR20Aの値DR20Aとを比較する(ステップS211)。平均値AveDR20が大きければ(Yes)、ステップS212で、この平均値AveDR20をレジスタR20Aに新たな最大値として、レジスタR20Aを書き換える(DR20A=AveDR20)。さらに、ステップS213で、このときのモータ部12dの回転位相データT3をレジスタR30Aに書き込む(DR30A=T3)。
一方、ステップS211で、直前のレジスタR20Aの値DR20Aが大きいと判定された場合は(No)、ステップS212、ステップS213の処理はスキップする。これにより、平均値AveDR20の最大値DR30と回転位相データT3とが更新されず、直前の状態が維持される。
本動作例では、制御部14は、モータ駆動部17のレジスタR3の回転位相データT3を、0から期間ΔTずつ変えて、ステップS205〜ステップS213までの動作を繰り返す。この繰り返しは、回転位相データT3が、前述の同期信号SYN_Oの一周期期間(周期T0)に到達するまで行われる。つまり、図12に示すように、制御部14は、ステップS214でレジスタR3の回転位相データT3にΔTを加え、次に、回転位相データT3が周期T0以上になったか否かを判定する(ステップS215)。回転位相データT3が、周期T0に到達していない場合は(No)、ステップS205に戻り、ステップS205〜ステップS214までの動作を実行する。ステップS215の判定で、回転位相データT3が周期T0以上になったと判定された場合は(Yes)、蛍光ホイール12の周回方向の全域の発光状態の検知が終了したことを意味する。そのため、平均値AveDR20等の算出を終了し、ステップS216に進む。ステップS215にて、制御部14は、その時点でレジスタR30に書き込まれている値DR30(平均値AveDR20が最大となったときの回転位相データ)を、モータ回転位相データT3として、メモリ18のT3領域およびモータ駆動部17のレジスタR3を書き換える。
以上の動作により、実施例3では、レジスタR3に記憶された回転位相データT3に基づいて、受光信号PDDの平均値AveDR20、すなわち、蛍光の平均発光量が最大になるように、モータ部12dの位相を制御することができる。そのため、光源装置10Aから、発光ムラ等のない発光量が良好な蛍光を出射することができる。また、このように蛍光の平均発光量が最大となるようにモータ部12dの位相を制御することで、蛍光ホイール12の蛍光体層12bに部分的に劣化等を生じていた場合でも、当該領域に励起光が照射されないよう制御することができる。つまり、蛍光体の劣化等により発光異常を生じた領域を含む照射領域の平均発光量は、発光異常を生じる領域がない照射領域での平均発光量と比べて低くなる。そのため、劣化等を生じた領域を含む照射領域に励起光が照射される位相が、発光量が最大の回転位相データT3を表すレジスタR30Aに記憶されることがない。そのため、当該領域を回避して励起光を照射することができ、光源装置10Aから出射される蛍光の発光量を良好に保つことができる。
以上、実施例3では、蛍光ホイール12の蛍光体層12bの全周にわたって、その発光量を検出し、発光量が最大となるようにモータ部12dの位相を制御している。そのため、例えば、蛍光ホイール12のある領域に励起光を照射し、当該領域の発光量が、基準値以上ではあるが、他の領域の発光量よりも低下した場合には、制御部14による位相制御により、当該領域を回避して、より発光量の高い(発光量が最大の)領域を、励起光の照射領域に変更することができる。そのため、長期間にわたって、蛍光ホイール12の同じ領域に励起光が照射し続けられることがなく、優れた光学性能を長期に維持することが可能となり、高品位で長寿命の光源装置を実現することができる。
(実施例4)
次に、本願の実施例4に係る光源装置について、図面に基づいて説明する。図13は、実施例4に係る光源装置10Bの構成を示す概略図である。この図13に示す実施例4の光源装置10Bは警報表示部としてのLED19を設けたこと以外は、図8に示す実施例2に係る光源装置10Aと同様の基本構成を有している。そのため、実施例2と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
上記各実施例の光源装置では、蛍光の発光量が基準値未満となる領域を避けて励起光を照射することで、蛍光の発光量を基準値以上に保つようにしている。しかし、蛍光ホイールの蛍光体層の全周にわたって劣化等を生じた場合は、発光量が基準値以上となるように制御することができなくなる。これにユーザが気づかず、蛍光ホイールの交換等の適切な対応をすることなく、そのまま継続して使用した場合、光源装置の品質に影響を及ぼすことがある。そのため、実施例4の光源装置10Bは、蛍光ホイール12の蛍光体層12bが全体的に劣化等を生じ、蛍光の発光量を基準値以上に保つことができない場合は、警報発生手段により警報を発してユーザに知らせる機能を備えている。
この実現のため、実施例4の制御部14は、警報発生手段としてのLED19を点灯制御するための警報信号ALTを生成する。この警報信号ALTは、警報発生手段としてのLED19に接続されている。このLED19は警報信号ALTが肯定されると、発光して異常を知らせる。また、制御部14は、レジスタR30に加え、レジスタR31を内部に備えている。このレジスタR31の値をDR31とする。このレジスタR31には、デフォルトでは値DR31として「0」が書き込まれている。
以下、図14のフローチャートを参照して、実施例4の光源装置10Bの制御部14でのモータ部12dの位相制御の動作例を説明する。この図14に示すステップS301〜ステップS313、ステップS315の処理は、実施例2に係る図9に示すステップS101〜ステップS114の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
まず、制御部14は、エラーフラグ信号PerrおよびタイマTM30およびレジスタR30,R31を初期化する(ステップS301,S302)。次に、制御部14は、LD発光信号LDD_ONが「1」であるか否かを判定し(ステップS303)、Noの場合は判定を繰り返す。ステップS303の判定がYesの場合はタイマTM30を起動し(ステップS304)、LD発光信号LDD_ONが「1」の間、以降のステップS305〜ステップS309(受光信号PDDと基準値Prefとの比較)を繰り返す。
ステップS305では、制御部14は、受光信号PDDが基準値Pref未満か否かを判定し、受光信号PDDが基準値Pref以上で発光量の低下がなければ(No)、次のステップS306に進む。これに対して、受光信号PDDの値が基準値Prefより小さくなる状態が検出された場合は(Yes)、発光量が低下したとして、エラーフラグ信号Perrをオン(Perr=1)にし(ステップS309)、ステップS310に進む。
ステップS305で、発光量が基準値未満でない(No)と判定された場合は、エラーフラグ信号Perrが「1」であるか否かを判定する(ステップS306)。この判定の結果で、エラーフラグ信号Perrが「1」でない場合(No)は、現在まで発光量の低下が検出されていないことを意味するため、ステップS307、ステップS308の処理は行わず、ステップS310に進む。
ステップS306で、エラーフラグ信号Perrが「1」であると判定された場合(Yes)は、前回までに発光量が低下した領域が検出されたが、今回の処理で発光量の低下のない領域が検出されたことを意味する。そのため、発光量の低下を生じた領域を回避するべく、制御部14は、ステップS307で、その時点(発光量が基準値以上)のタイマTM30の計測値T30をレジスタR30に書き込む(DR30=T30)。また、発光量の低下のない領域が検出されたことから、エラーフラグ信号Perrをクリア(「0」を設定)する(ステップS308)。
そして、励起光源11の一回の発光期間T2が終了し、ステップS310の判定において、励起光源11が消灯されたと判定されると(Yes)、次のステップS311の処理に進む。このステップS311で、エラーフラグ信号Perrが「1」であると判定された場合は(Yes)、ステップS312に進む。このステップS312に進むのは、発光量の低下した領域が検出された後、発光量が基準値以上の領域が発見されなかった場合である。そのため、その時点までの領域を回避すべく、その時点のタイマTM30の時間計数値T30を、レジスタR30に書き込む(DR30=T30)。
次に、制御部14は、このレジスタR30に基づいて、回転位相データT3を算出し、モータ駆動部17の内部のレジスタR3の値DR3と、メモリ18のT3の値とを書き換える(ステップS313)。このとき、新規の回転位相データT3として、現在のモータ部12dの回転位相データT3と、ステップS312で書き込まれたレジスタR30の値DR30との差分「T3−DR30」を算出する。または、T3−DR30<0である場合は、その絶対値を周期T0から差分した値「T0−|T3−DR30|」を、新規の回転位相データT3とする。この回転位相データT3の書き換えにより、モータ駆動部17は、この新規のT3に基づいて、モータ部12dの位相制御を行うようになる。
一方、ステップS311で、エラーフラグ信号Perrが「1」でないと判定された場合は(No)、ステップS312をスキップして、ステップS313に進む。このステップS313では、回転位相データT3を書き換えるが、発光量の低下がなかった場合は、レジスタR30の値DR30が「0」であるため、回転位相データT3が書き変わることはない。したがって、引き続き、同様のタイミングでモータ部12dの位相制御が行われる。
一方、発光量の低下があったが、その後に基準値以上となり、その状態が維持されている場合には、レジスタR30の値DR30は「0」以外が設定されている。そのため、ステップS313を実行することで、劣化等を生じた領域を回避可能な新規の回転位相データT3が算出される。この新規の回転位相データT3で、モータ駆動部17の内部のレジスタR3の値DR3と、メモリ18のT3の値とを書き換える。このとき、新規の回転位相データT3として、現在のモータ部12dの回転位相データT3と、ステップS307で書き込まれたレジスタR30の値DR30との差分「T3−DR30」を算出する。または、T3−DR30<0である場合は、その絶対値を周期T0から差分した値「T0−|T3−DR30|」を、新規の回転位相データT3とする。この回転位相データT3の書き換えにより、モータ駆動部17は、この新規のT3に基づいて、モータ部12dの位相制御を行うようになる。
以上のように、必要に応じて回転位相データT3の書き換えを行ったら、次に、励起光の発光が終了した現時点でのレジスタR30の値DR30を、レジスタR31の値DR31に加算して、その結果をレジスタR31に書き込む(ステップS314)。また、タイマTM30をリセットして初期状態「0」とする(ステップS315)。次に、ステップS314で算出したレジスタR30の値DR31を、同期信号SYN_Oの周期T0と比較する(ステップS316)。DR31が周期T0より小さければ(No)、ステップS303に戻り、信号LDD_ONが「1(オン)」になるたびに、ステップS304〜ステップS316の処理を繰り返すことで、蛍光ホイール12の発光量の監視を続行する。
一方、ステップS316において、レジスタR31の値DR31が、周期T0以上になったと判定された場合(Yes)、蛍光ホイール12の全周にわたって発光量が基準値よりも低くなったことを意味する。その場合、蛍光の発光量が基準時以上となるように、モータ部12dの位相を設定することは、もはやできないとして、制御部14は、警報信号ALTを「1」に設定して、LED19に出力する(ステップS317)。LED19は、警報信号ALT「1」が入力されると、発光して異常を知らせる。その後、処理全体を終了する。このLED19の発光による異常の通知で、ユーザは、蛍光ホイール12の蛍光体層12bの全体に蛍光の発光量に影響するような劣化等を生じたことを把握することができる。そして、ユーザが蛍光ホイール12の交換等の対応を迅速に行うことができ、光源装置から出射される蛍光の良好な発光状態を長期に維持することが可能となり、光源装置の品質と信頼性とをさらに向上させることができる。
なお、実施例4では、異常を知らせる警報発生手段として、LED19による発光現象を用いたが、本願がこれに限定されることはなく、他の様々な手段を用いて実現してもよい。警報発生手段の他の異なる実施例として、例えば、ブザー等を用いて音で知らせてもよいし、音声システムを備えて音声で知らせてもよい。また、液晶等の表示器を用いて、メッセージを表示して知らせてもよい。
(実施例5)
次に、本願の実施例5に係る投影表示装置(プロジェクタ)について、図面に基づいて説明する。図15は、実施例5に係る投影表示装置100の構成を示す概略図である。この図15に示すように、実施例5に係る投影表示装置100は、光源部(光源装置)30と、照明光学系40と、画像生成部50と、投影光学系60と、映像処理部70と、を備えている。この投影表示装置100は、被投影面であるスクリーン(図示せず)に画像を投影して拡大表示する装置である。
光源部30は、緑色光、青色光、赤色光を、時分割で順次に、またはこれらを組み合わせて(混合して)、照明光学系40へ向けて出射する。光源部30は、緑色の波長帯域(例えば、500nm〜600nm)の光(蛍光)を出射する光源装置(光源装置G)31と、青色の波長帯域(例えば、400nm〜460nm)の光を出射する光源装置(光源装置B)32と、赤色の波長帯域(例えば、620nm〜750nm)の光を出射する光源装置(光源装置R)33と、第1ダイクロイックミラー34と、第2ダイクロイックミラー35と、を備えて構成されている。
光源装置(光源装置G)31として、実施例5では、図8に示す実施例2の光源装置10Aを用いている。また、光源装置(光源装置B)32および光源装置(光源装置R)33としては、例えば、LEDやレーザダイオード等を用いることができる。第1ダイクロイックミラー34は、緑色光を反射させ、青色光を透過させる光学特性を有し、緑色光および青色光を第2ダイクロイックミラー35に導く。第2ダイクロイックミラー35は、緑色光および青色光を透過させ、赤色光を反射させる光学特性を有し、緑色光、青色光および赤色光を照明光学系40に導く。このように、第1ダイクロイックミラー34と第2ダイクロイックミラー35とで、各色の光を合成して一の出射光路上に導く光路合成機能を有している。
照明光学系(導光光学系)40は、光源部30から出射された光を、画像生成部50に導く。(この照明光学系40と光源部30とで、本願の照明装置を構成している。)照明光学系40は、集光レンズ41と、ロッドインテグレータ42と、照明レンズ43と、を有している。集光レンズ41は、光源部30から出射された光を集光してロッドインテグレータ42へと導く。ロッドインテグレータ42は、集光レンズ41を介して光源部30から出射された光が入射するものであり、内部を中空とする筒状を呈し、その内側面にミラーが設けられた構成を有している。ロッドインテグレータ42は、ライトトンネル、ライトパイプ等とも呼ばれ、その内部で光の反射を繰り返すことにより、入射された光の輝度分布を均一化する機能、すなわち、入射された光の光量ムラ等による発光状態への影響を抑制する機能を備える。照明レンズ43は、ロッドインテグレータ42を経て輝度分布が均一化された光(光束)を適宜集光して、画像生成部50の後述する反射ミラー(被照射部)51へと導く。
画像生成部50は、照明光学系40により導かれた光を用いて、画像生成データに基づくフルカラーの画像を形成するものである。(この画像生成部50と、照明光学系40および光源部30で構成される照明装置とで、本願の画像表示装置を構成している。)画像生成部50は、反射ミラー51と、光変調素子52と、を有している。反射ミラー51は、照明光学系40により導かれた光を光変調素子52へ向けて反射し、当該光変調素子52へと進行させる。光変調素子52は、映像処理部70に接続されており、この、映像処理部70によって駆動制御される。光変調素子52は、光源部30から出射されて照明光学系40により導かれた各色の光を、画素毎に諧調制御することでカラー投影画像を形成する。
また、実施例5の光変調素子52は、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス;Digital Micromirror Device)で構成されている。このDMDからなる光変調素子52は、画素単位のマイクロミラーを有し、映像処理部70の制御下で、各マイクロミラーが異なる2つの角度のいずれかの状態を維持することが可能となっている(いわゆる、2値制御)。すなわち、光変調素子52の各マイクロミラーは、照明光学系40により導かれた各色の光を投影光学系60へ向けて反射する角度(ON状態)と、当該各色の光を内部の吸収体へ向けて反射して外部に出射させない角度(OFF状態)と、のいずれかの状態となる。このため、光変調素子52では、各マイクロミラーが個別に駆動(2値制御)されることにより、表示する画素毎に投影する光を制御することができる。また、光変調素子52では、例えば、パルス幅変調方式(PWM方式)により各マイクロミラーのON状態の時間比率を調整することで、表示する画素毎における階調表現を行うことができる。
なお、実施例5および次の実施例6では、光変調素子52としてDMDを用いているが、本願がこれに限定されることはない。光源部30から出射されて照明光学系40により導かれた各色の光を利用してカラー投影画像を形成するものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、液晶を用いてもよい。
投影光学系60は、画像生成部50の光変調素子52により生成された投影画像をスクリーンに投影する。この投影光学系60は、固定鏡筒に設けられた固定レンズ群や可動鏡筒に設けられた可動レンズ群を備えている。この可動レンズ群を移動させることにより、フォーカス調整やズーム調整を行うことが可能となっている。
映像処理部70は、投影表示装置100全体の動作を統括制御するものである。映像処理部70のハードウェア構成としては、CPU、ROM、RAM等を有して構成される。映像処理部70は、ROMに予め記憶されているプログラムに従って、RAMをワークメモリとして用いて、投影表示装置100の各部を駆動制御する。
映像処理部70は、光源装置(光源装置G)31(10A)の励起光源11、蛍光ホイール12のモータ部12d、光源装置(光源装置B)32、光源装置(光源装置R)33、画像生成部50の光変調素子52、および、投影光学系60の可動レンズ群の駆動機構(図示せず)等に接続されている。映像処理部70は、所定の信号の送受信を行うことで、光源部30における各色の光の出射制御処理や光源装置10Aでのモータ部12dの位相制御、画像生成部50の光変調素子52における投影画像の生成制御処理、投影光学系60におけるフォーカス調整やズーム調整の調整制御処理を実行する。
以下、実施例5に係る投影表示装置100の動作を説明する。投影表示装置100の映像処理部70は、外部から映像信号VINが入力されると、映像信号VINのフレーム周波数に基づいて、周期信号SYN_Iを生成し、光源装置31,32,33に出力する。また、映像処理部70は、光源装置31については、実施例1等で説明したように、制御信号CNTによってモータ部12dの回転位相データT3、励起光の発光開始タイミングデータT1および励起光の発光期間データT2等のパラメータを設定する。このように、フレーム周波数に基づいて、周期信号SYN_Iを生成し、パラメータを設定することで、光源装置31(10A)におけるモータ部12dの位相や励起光の発光期間等を、フレーム周波数に対応して所望に調整することができる。また、光源装置32,33についても、映像処理部70は、それぞれ制御信号BCNT,RCNTを使用して、青色光および赤色光の発光開始タイミングおよび発光期間を設定する。
上述のように、各光源装置31,32,33のパラメータの設定を終了すると、次に、映像処理部70は、起動信号STを肯定して、光源装置31を起動する。この起動信号STが肯定されると、光源装置31は、上記各実施例で説明したとおり、モータ部12d(図1等参照)を回転制御し、その位相が回転位相データT3と一致して正常回転に到達したら、回転正常の信号MGDを肯定する。
映像処理部70は、回転正常の信号MGDが肯定されると、起動信号ST_BおよびST_Rを肯定して、光源装置32,33を起動する。この起動により、光源装置32は青色光を出射し、光源装置33は、赤色光を出射する。以上のように、映像処理部70は、画像の一フレーム期間内に、光源部30の光源装置31,32,33から、緑色光、青色光および赤色光を時分割で順次切り替えて出射させる。
光源装置31,32,33から出射した緑色光、青色光および赤色光は、第1ダイクロイックミラー34および第2ダイクロイックミラー35によって合成され、照明光学系40の集光レンズ41によって集光された後、ロッドインテグレータ42に導かれる。ロッドインテグレータ42から出射した光は、更に照明レンズ43と画像生成部50の反射ミラー51によって光変調素子52に導かれ、この光変調素子52の表示画素領域に照射される。
映像処理部70は、上述のように、光源部30から出射される各色の光の出射のタイミングに同期して、画像生成部50における光変調素子52の各マイクロミラーを個別に駆動制御する。この駆動制御のため、映像処理部70は、映像信号VINに所定の画像処理を施して、赤色、緑色および青色の各色の表示信号を生成する。これらの表示信号を、光変調素子52の各マイクロミラーを駆動する駆動信号DMDDに変換して光変調素子52に向けて出力する。これによって、光変調素子52の表示画素領域に照射された光は、画像光に変調され、投影光学系60を通してスクリーンなどに投影され、目の残像現象を利用して、表示信号に基づくフルカラーの画像が表示される。
以上説明したように、実施例5に係る投影表示装置100では、緑色光を出射する光源装置31として、本願の実施例2に係る光源装置10Aを用いている。この光源装置10Aでは、実施例2で説明したように、蛍光ホイール12から生じる蛍光の発光量を検出し、この発光量が基準値未満となる領域が検出された場合に、この領域に励起光が照射されないよう、モータ部12dの位相を制御している。そのため、光源装置31(10A)では、光量のムラ等が抑制されて、発光状態が良好な蛍光を照射することができる。したがって、この発光状態が良好な蛍光を出射する光学性能に優れた光源装置31(10A)を使用することで、高品質な表示画像を生成することが可能となり、低コストで信頼性が高く、かつ、高品位な投影表示装置100を実現することができる。
(実施例6)
次に、本願の実施例6に係る投影表示装置(プロジェクタ)について、図面に基づいて説明する。図16は、実施例6に係る投影表示装置100Aの構成を示す概略図である。図17は、実施例6の映像処理部70Aにおいて、警報メッセージの投影表示に関わる主要部分の構成を示した概略図である。また、図18(a)は実施例6の投影表示装置100Aにより投影表示される投影画像であって、蛍光に異常が生じる前の通常の投影画像を示す。図18(b)は蛍光の発光状態が低下して警報メッセージが表示された投影画像を示す。
図16に示す実施例6の投影表示装置100Aは、図15に示す実施例5の投影表示装置100と同様の基本構成を有しているため、実施例5と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。この図16に示すように、実施例6の投影表示装置100Aは、光源部30Aと、照明光学系40と、画像生成部50と、投影光学系60と、映像処理部70Aと、を備えている。
この実施例6の投影表示装置100Aは、蛍光ホイール12の全周にわたって発光量が基準値未満となったときに、警報メッセージを投影表示するように構成されている。この実現のため、実施例6では、蛍光ホイール12の全周にわたって発光量が基準値未満となったときに、映像処理部70Aに対して警報信号ALTを出力する光源装置31Aを備えている。この警報信号ALTにより、映像処理部70Aは、警報メッセージの画像を生成する。
光源装置31Aは、警報発生手段としてのLEDを備えていないこと以外は、図13に示す実施例4の光源装置10Bと同様の基本構成を有している。また、光源装置31Aによる動作も、警報信号ALTをLEDではなく映像処理部70Aに対して出力すること以外は、図14のフローチャートに基づいて説明した実施例4の光源装置10Bの動作とほぼ同様である。そのため、光源装置10Bの構成と処理との詳細な説明は省略する。
映像処理部70Aは、図17に示すように、警報メッセージの表示に関わる主要部分として、画像処理部71と、警報表示画像生成部としてのOSD画像生成部72と、画像合成部73と、を備えて構成されている。画像処理部71には、映像信号VINが入力される。画像処理部71は、入力された映像信号VINに対して、必要に応じて所定の画像処理を施して、赤色、緑色および青色の各色の表示信号を生成し、表示用映像信号VOUTとして、画像合成部73に出力する。OSD画像生成部72は、いわゆるオンスクリーン機能(OSD,On Screen Display)を利用して、リモコンや操作パネル等(以上、図示せず)によるユーザ操作に対応して、それぞれの要求に対応した画像を表示するための表示信号(OSD画像データ信号OSDD)を生成する。実施例6のOSD画像生成部72は、この機能に加え、前述した警報信号ALTの入力に応じて、警報メッセージ用の表示信号(OSD画像データ信号OSDD)を生成する。画像合成部73は、画像処理部71から入力される表示用映像信号VOUTと、OSD画像生成部72から入力されるOSD画像データ信号OSDDを合成して、光変調素子52を駆動するための駆動信号DMDDを生成し、光変調素子52に向けて出力する。
以下、実施例6に係る投影表示装置100Aの動作を説明する。光源装置31Aから出射される蛍光に光量ムラ等がない状態が保たれている間は、警報信号ALTが「0」であり、図18(a)に示すように、スクリーンには、通常の投影画像が表示されている。このときの実施例6に係る投影表示装置100Aの基本動作は、実施例5に係る投影表示装置100の動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。そして、蛍光の発光量が基準値以上に保つのが困難となり、光源装置31Aから出力される警報信号ALTが「1」になったとき、この警報信号ALTが、OSD画像生成部72に入力される。OSD画像生成部72は、前述したように、警報メッセージ用のOSD画像データ信号OSDDを生成し、画像合成部73に出力する。この警報メッセージとして、本実施例では、「異常発生!サービスマンを呼んで下さい。」と表示しているが、本願がこれに限定されることはなく、他のいずれの警報メッセージとしてもよい。
画像合成部73は、画像処理部71から入力される表示用映像信号VOUTと、OSD画像生成部72から入力されるOSD画像データ信号OSDDを合成して、駆動信号DMDDを生成し、光変調素子52に向けて出力する。これによって、光変調素子52の表示画素領域に照射された光は、画像光に変調され、投影光学系60を通してスクリーンなどに投影される。図18(b)は、警報メッセージが表示されたときの投影画像を示したものである。この警報メッセージにより、蛍光異常が蛍光ホイール12の交換等の対応を行うことにより、投影表示装置100Aの表示画像の品質への影響を抑制することができる。
以上、実施例6の投影表示装置100Aでも、光源装置31Aにおいて、蛍光ホイール12から生じる蛍光の発光量を検出し、この発光量が基準値未満となる領域を回避して励起光が照射されるようにモータ部12dの位相を制御している。したがって、実施例6の投影表示装置100Aでは、光量ムラ等のない発光状態が良好な蛍光を使用して、高品質な表示画像を生成することが可能となる。さらに、発光量を基準値以上に保つことができなくなった場合には、スクリーンに警報メッセージを表示しているため、蛍光ホイール12の劣化等をユーザが容易に認識することができ、迅速な対応を取ることができる。したがって、低コストでより信頼性が高く、かつ、高品位な投影表示装置100Aを実現することができる。
以上で説明した各実施例では、周期T0を一定に保ち、モータ部12dの位相の周期(位相速度)も一定に保っている。また、一定の周期T0の同期信号SYN_Oに対する励起光の発光開始タイミングT1や発光期間T2も一定としている。しかし、本願がこれに限定されることはない。例えば、プロジェクタ等の映像表示装置においては、入力される映像信号の種類やフレーム周波数によって、投影表示される映像信号VINのフレーム周波数が変わる場合がある。そのため、光源装置において、このフレーム周波数の変化に対応させて、周期T0を変化させ、この周期T0に対応させてモータ部12dの位相を制御するようにしてもよい。具体的には、フレーム周波数の変化に対応して、同期信号発生部15に入力する周期信号SYN_Iを変化させる。なお、実施例5、6では、映像信号VINのフレーム周波数に対応して、周期信号SYN_Iを光源装置に対して出力している。
この周期信号SYN_Iの入力により、同期信号発生部15は、周期信号SYN_Iに対応した周期T0の同期信号SYN_Oを出力する。そして、この変更された周期T0に従って、制御部14はモータ駆動部17に対してモータ起動信号MSTを出力し、モータ駆動部17にモータ部12dを駆動制御させる。このように、周期T0を変更し、これに同期してモータ部12dの位相速度、すなわち、蛍光ホイール12の位相速度も変化可能な光源装置を実現する。これにより、この光源装置を、プロジェクタ等に適用した場合、投影表示される映像信号VINのフレーム周波数が変わってもそれに対応でき、適用性の高い光源装置を実現することができる。
また、例えば、前述のDLP方式プロジェクタにおいては、それぞれの製品に特有の演色性を実現するために、一周期期間内における蛍光の発光期間が製品間で異なっている。また、それぞれの製品自体においても、色表現のモードを幾つか切り替えられるように構成され、モードによって蛍光の発光期間が可変になっているものがある。したがって、周期T0内での励起光の発光開始タイミングT1や、発光期間T2を可変とすることで、幅広いプロジェクタ製品の種々のモードに対応することができ、より適用性の高い光源装置を実現することができる。
また、上記各実施例では、周期T0内で、励起光を発光期間T2で一回発光させ、モータ部12d(蛍光ホイール12)を一回転させている。しかし、本願がこれに限定されることはなく、励起光の発光期間T2に同期して蛍光ホイール12が回転し、励起光の発光期間T2中に、蛍光ホイール12の特定の照射領域に励起光が照射されればよい。したがって、例えば、周期T0内で、励起光を所定の発光期間で2回以上発光させ、蛍光ホイール12の2か所以上の照射領域に励起光が照射されるようにしてもよい。この場合も、いずれか照射領域のいずれかの箇所に、劣化等を生じた場合は、周期信号SYN_Iに対して蛍光ホイール12の位相をずらすことにより、劣化等を生じた領域を回避することができる。
以上、本願の光源装置および投影表示装置を各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については各実施例に限られるものではなく、本願の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。また、前記構成部材の数、位置、形状等は各実施例に限定されることはなく、本願を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。また、投影表示装置として、スクリーン等の投影面に画像を投影して拡大表示する投影装置(プロジェクタ)に適用した実施例を説明したが、本願がこれらの実施例に限定されることはない。例えば、半導体デバイスの制作工程でウェハー上に回路パターンを露光する露光装置としての投影装置等に適用することもできる。