[go: up one dir, main page]

JP2014196269A - アモジアキンを含む神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物 - Google Patents

アモジアキンを含む神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2014196269A
JP2014196269A JP2013072983A JP2013072983A JP2014196269A JP 2014196269 A JP2014196269 A JP 2014196269A JP 2013072983 A JP2013072983 A JP 2013072983A JP 2013072983 A JP2013072983 A JP 2013072983A JP 2014196269 A JP2014196269 A JP 2014196269A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
disease
pharmaceutical composition
tdp
amodiaquine
hydrochloride
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2013072983A
Other languages
English (en)
Inventor
山下 万貴子
Makiko Yamashita
万貴子 山下
長谷川 成人
Shigeto Hasegawa
成人 長谷川
治彦 秋山
Haruhiko Akiyama
治彦 秋山
野中 隆
Takashi Nonaka
隆 野中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science
Original Assignee
Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science filed Critical Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science
Priority to JP2013072983A priority Critical patent/JP2014196269A/ja
Publication of JP2014196269A publication Critical patent/JP2014196269A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Abstract

【課題】TDP−43プロテイノパチーの治療及び/又は予防のために、TDP−43の凝集体の異常蓄積を抑制する医薬組成物を開発すること。【解決手段】本発明は、アモジアキン、その誘導体及びその塩からなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物を有効成分として含む、TAR DNA結合タンパク質−43(TDP−43)を含む不溶性凝集体を形成する神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物を提供する。前記医薬組成物は、前記不溶性凝集体の形成抑制剤の場合がある。前記神経変性疾患は、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ALS/パーキンソン認知症複合、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、嗜銀顆粒性認知症(グレイン病)、ハンチントン病、ペリー症候群、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ピック病、及び、家族性英国型認知症からなる群から選択される。【選択図】なし

Description

本発明は、アモジアキン、その誘導体及びその塩からなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物を有効成分として含む神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物に関する。具体的には、TAR DNA結合タンパク質−43(TDP−43)を含む不溶性凝集体の形成を抑制し、神経変性疾患(例えば、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ALS/パーキンソン認知症複合など)の治療又は予防のための医薬組成物に関する。
TDP−43は、FTLD、及び、ALSの患者の脳にみられるタウ陰性ユビキチン陽性封入体の主要構成成分として同定された(非特許文献1)。また、TDP−43遺伝子の変異が、家族性及び弧発性ALSにおいて多数発見されたため、ALSにおける神経変性の原因がTDP−43であることがほぼ確実となった。つまり、このことはTDP−43がALS治療の標的となりうることを意味する。さらに、TDP−43の凝集体の蓄積を伴う病変の拡大と臨床症状の進行とは非常によく一致するため、凝集体の形成が病気の発症や進行を促進すると考えられる。
TDP−43の異常は、上記疾患以外に、アルツハイマー病やレビー小体型認知症の30〜50%程度の患者に認められことが報告されている。また、TDP−43の凝集体の蓄積が、さまざまな神経変性疾患(例えば、嗜銀顆粒性認知症、ハンチントン病、ペリー症候群、家族性英国型認知症、及び、ALS/パーキンソン認知症複合など)において報告されている(非特許文献2、3)。
Arai T, et al., Biochem Biophys Res Commun. 22;351(3):602−11 (2006) Arai T, et al., Neuropathology. 30(2):170−81 (2010) Chen−Plotkin AS et al., Nat Rev Neuro. 6(4):211−20 (2010)
したがって、TDP−43の凝集体の異常蓄積を伴うさまざまな神経変性疾患(いわゆるTDP−43プロテイノパチー)の治療及び/又は予防のために、TDP−43の凝集体の異常蓄積を抑制する医薬組成物を開発する必要がある。
本発明者らは、TDP−43凝集体蓄積細胞モデルを用いて、TDP−43プロテイノパチーに対する新規治療又は予防薬の開発を目的に、迅速かつ簡便なハイスループット・スクリーニング法を開発し、TDP−43の凝集体の形成を抑制する低分子化合物のスクリーニングを行った。その結果、本発明者らは、アモジアキンがTDP−43の凝集及びリン酸化を抑制することを見出し、TDP−43プロテイノパチーの治療又は予防のための医薬組成物に関する本発明を完成した。
本発明は、アモジアキン、その誘導体及びその塩からなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物を有効成分として含む、神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物を提供する。
前記神経変性疾患は、TAR DNA結合タンパク質−43(TDP−43)を含む不溶性凝集体を形成する疾患の場合がある。
前記医薬組成物は、前記不溶性凝集体の形成抑制剤の場合がある。
前記医薬組成物は、TAR DNA結合タンパク質−43(TDP−43)のリン酸化抑制剤の場合がある。
前記神経変性疾患は、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ALS/パーキンソン認知症複合、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、嗜銀顆粒性認知症、ハンチントン病、ペリー症候群、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ピック病、及び、家族性英国型認知症からなる群から選択される場合がある。
本発明は、アモジアキン、その誘導体及びその塩からなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物と、他の神経変性疾患の治療薬又は予防薬とを含む医薬組成物を提供する。
前記他の神経変性疾患の治療薬又は予防薬は、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン、及び、エダラボンからなる群から1種類以上選択される場合がある。
前記医薬組成物には、生体内でアモジアキンに代謝されるアモジアキン誘導体及び/又はその塩がプロドラッグとして含まれる場合がある。
本発明は、アモジアキン、その誘導体及びその塩からなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物と、TDP−43を含む不溶性凝集体を形成する生物学的試料とを含む神経変性疾患の研究のためのキットを提供する。
本発明の医薬組成物は、TDP−43の凝集及びリン酸化を顕著に抑制することができ、TDP−43の凝集体の異常蓄積を伴うさまざまな神経変性疾患(いわゆるTDP−43プロテイノパチー)の治療及び/又は予防に有用である。
陰性対照群(DMSOのみ)、陽性対照群(ラトレピルジン(20μM))、及び、実験群(アモジアキン(20μM))における、GFPを強く発現する細胞の割合(%)を示すグラフ。 可溶性画分中のTDP−43、及び、不溶性画分中のリン酸化TDP−43を示すウェスタンブロット図。 図2−1のウェスタンブロット図から算出したTDP−43のリン酸化の割合を示すグラフ。 共焦点顕微鏡の画像データから算出した凝集体形成の割合を示すグラフ。
本明細書において、「アモジアキン」とは、以下の化学式で示される化合物4−([7−Chloro−4−quinolinyl]amino)−2−([diethylamino]methyl)phenol(CAS 6398−98−7)(分子量:464.81)をいい、マラリアを治療するための医薬品として使用されている。前記アモジアキンは無水和物(CAS 69−44−3)などを含む。アモジアキン・二塩酸塩の半数致死量(LD50)は、マウスにおいて、腹腔内投与では225mg/kgであり、経口投与では550mg/kgであり、アモジアキンは安全性の高い化合物である。
(http://www.who.int/ipcs/poisons/pim_amodiaquine.pdf)。
前記神経変性疾患の治療又は予防のための化合物として前記アモジアキンを使用できる。
本明細書において、「アモジアキン誘導体」とは、アモジアキンの官能基及び/又は側鎖が修飾された化合物をいう。前記誘導体は、具体的には、酵素、胃酸などによる酸化、還元及び加水分解されることを含む生体内での化学的反応及び/又は生物学的反応によってアモジアキンを遊離できる化合物を含むプロドラッグをいう。前記誘導体は、エステル誘導体を含むが、これらに限定されない。前記エステル誘導体は、メチルエステル、エチルエステルその他のプロドラッグとして慣用されるエステル化合物を含む。また、前記誘導体は、タンパク質、ペプチド、糖、脂質、核酸などのような生体高分子との結合誘導体と、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニル、ポリエステルなどのような合成高分子との結合誘導体とを含むが、これらに限定されない。
本明細書において、アモジアキン誘導体の「塩」とは、金属塩、アミン塩、酸塩、酢酸塩、酸付加塩、塩基付加塩などを含むいずれかの塩をいう。前記金属塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの場合がある。前記塩は、水和物及び無水和物を含む。
本明細書において、「TAR DNA結合タンパク質−43(TDP−43)」とは、不均一核内リボ核酸タンパク質(hnRNP)の一種であり、核に局在し、RNAの安定化や選択的スプライシング、転写調節などに関与するタンパク質をいい、野生型、多型(一塩基多型(SNP)など)、変異型(欠失、挿入、スプライシング・バリアントなど)、修飾型(リン酸化、ユビキチン化など)、ホモログ、パラログ、オルソログ、断片(ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドなど)、融合タンパク質(GFP、EGFPなどの他のタンパク質、又は、FLAG、His、GSTなどの他のペプチドのアミノ末端及び/又はカルボキシル末端での融合産物)などを含む。
本発明において、神経変性疾患とは、中枢神経系の神経細胞が異常タンパク質の凝集体の蓄積により、徐々に変性し、機能不全や細胞死に陥る進行性疾患をいう。典型的には、前記神経変性疾患はTDP−43の不溶性凝集体の異常蓄積を伴う、いわゆるTDP−43プロテイノパチーである。前記神経変性疾患は、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ALS/パーキンソン認知症複合、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、嗜銀顆粒性認知症(グレイン病)、ハンチントン病、ペリー症候群、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ピック病、家族性英国型認知症を含むが、これらに限定されない。
本発明の医薬組成物は、アモジアキンが、TDP−43のリン酸化、及び/又は、凝集体の形成を抑制する効果を損なわないことを条件として、さらに1種類又は2種類以上の薬学的に許容される添加物を含む場合がある。前記添加物は、結合剤、滑剤、崩壊剤、溶解剤、緩衝剤、着色剤、香料、甘味料、防腐剤、安定化剤、及び、当業者に知られたその他の医薬品添加剤を含むが、これらに限られない。
本発明の医薬組成物の剤型は、アモジアキンが、TDP−43のリン酸化、及び/又は、凝集体の形成を抑制する効果を損なわないことを条件として、特に限定されない。本発明の組成物の剤型は、経口剤、注射剤、塗布剤、経鼻剤を含み、従来の医薬組成物に用いるものであればいかなるものでもかまわない。
アモジアキンの処方例は、下記の処方例を含むが、これに限定されない。
アモジアキンのカプセルの処方例
(1)カプセル内容物
成分 含量(1カプセル中)
アモジアキン 200mg
ステアリン酸マグネシウム 30mg
タルク 30mg
本発明の医薬組成物の製造は、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規範に適合した条件(good manufacturing practice、GMP基準)で実施されることが好ましい。
本発明は、本発明の医薬組成物の有効量を被験体に投与するステップを含む、神経変性疾患を治療又は予防する方法を提供する。前記医薬組成物は、アモジアキン、その誘導体及びその塩からなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物を有効成分として含む場合がある。また、前記医薬組成物は、アモジアキン、その誘導体及びその塩からなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物と、他の神経変性疾患の治療薬又は予防薬とを含む場合がある。アモジアキン、その誘導体及びその塩からなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物は、他の神経変性疾患の治療薬又は予防薬と同時又は別々に投与される場合がある。前記神経変性疾患は、TAR DNA結合タンパク質−43(TDP−43)を含む不溶性凝集体を形成する疾患の場合がある。前記医薬組成物は、前記不溶性凝集体の形成抑制剤の場合がある。前記医薬組成物は、TAR DNA結合タンパク質−43(TDP−43)のリン酸化抑制剤の場合がある。前記神経変性疾患は、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ALS/パーキンソン認知症複合、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、嗜銀顆粒性認知症(グレイン病)、ハンチントン病、ペリー症候群、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ピック病、及び、家族性英国型認知症からなる群から選択される場合がある。典型的には、前記被験体はヒトである。前記他の神経変性疾患の治療薬又は予防薬は、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン、及び、エダラボンからなる群から1種類以上選択される場合がある。前記医薬組成物には、生体内でアモジアキンに代謝されるアモジアキン誘導体及びその塩がプロドラッグとして含まれる場合がある。本発明の医薬組成物の有効量を被験体に投与するステップにおいて、本発明の医薬組成物の投与経路は、経口、静脈内、経皮、経鼻を含むが、これらに限定されない。本発明の組成物の調製及び送達には、アモジアキン、その誘導体及びその塩の体内分布を、量的、空間的及び時間的に制御できる当業者に周知の送達システムを用いることができる。
本明細書において、有効量とは、本発明の医薬組成物を投与された被験体が健康を害さず、かつ、該被験体で本発明の効果を発揮する投与量をいう。前記有効量は、被験体の体重、年齢、性別、遺伝子型、病状などを考慮して設定される場合がある。典型的には、前記被験体はヒトであり、男性及び女性の未成年者、成人及び高齢者を含む。
本発明の医薬組成物に含まれるアモジアキン、その誘導体及び/又は塩の1日摂取量の下限は、TDP−43のリン酸化、及び/又は、凝集体の形成を抑制する効果が損なわれないことを条件として特に限定されないが、例えば、体重1kgあたり20mgであればよく、好ましくは10mgである。1回あたりの投与量5mgが、1日あたり3回投与される場合がある。また、本発明の医薬組成物に含まれるアモジアキン、その誘導体及び/又は塩の1日摂取量の上限は、TDP−43のリン酸化、及び/又は、凝集体の形成を抑制する効果が損なわれないことを条件として特に限定されないが、例えば、体重1kgあたり180mgが好ましく、135mgがより好ましく、90mgが最も好ましい。
本発明のキットは、他の神経変性疾患の治療薬又は予防薬をさらに含む場合がある。本発明のキットにおける化合物は、生物学的試料内でアモジアキンに代謝されるアモジアキン誘導体及び/又はその塩のプロドラッグを含む。本発明は、本発明の神経変性疾患の研究のためのキットを使用するステップを含む神経変性疾患を解析する方法を提供する。前記神経変性疾患の研究では、リン酸化酵素の活性、プロテアソームの活性などが測定できる。
本明細書において、「生物学的試料」とは、神経変性疾患関連タンパク質の不溶性凝集体を形成する可能性がある全ての生物学的試料をいい、ヒト、実験動物の生体内から採取された細胞、組織及び器官と、培養細胞とを含むが、これらに限定されない。前記神経変性疾患関連タンパク質は、TAR DNA結合タンパク質−43(TDP−43)、α−シヌクレイン、タウ、β−アミロイド、ポリグルタミン、SOD1及び/又はプリオンを含むが、これらに限定されない。前記培養細胞は、生体内から採取した細胞の初代培養と、継代培養された細胞と、iPS細胞、外胚葉系幹細胞その他の多分化能を有する幹細胞から分化された細胞と、細胞株とを含むが、これらに限定されない。前記実験動物は、ノックアウト動物及びトランスジェニック動物を含む。前記生物学的試料は、当業者に標準的な方法で調製することができる。前記生物学的試料の生物種は、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ニワトリ、ショウジョウバエ、線虫、ゼブラフィッシュ及びメダカを含むが、これらに限定されない。前記ヒトは、健常者と、神経変性疾患患者(例えば、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、ピック病などの患者)とを含むが、これらに限定されない。本発明において、前記生物学的試料は、in vitro、ex vivo、及び/又は、in vivoで用いられる。
本明細書において、「TDP−43を含む不溶性凝集体を形成する生物学的試料」とは、典型的には、TDP−43を含む不溶性凝集体を形成することができる細胞である。前記細胞は、神経細胞に類似した性質を有する細胞が好ましいが、その由来は、神経変性疾患に由来する細胞であってもかまわないし、該疾患と無関係に得られた細胞であってもかまわない。また、前記細胞は、神経細胞の細胞系譜に属する細胞や、神経細胞の細胞系譜由来の腫瘍細胞であってもかまわない。前記細胞として、B103、KELLY、SH−SY5Y、SK−N−AS、SK−N−F1、SK−N−DZ、BE(2)−C、BE(2)−M17、SK−N−BE(2)、及び、SK−N−SHを含むが、これらに限定されない、神経芽種細胞株が用いられる場合がある。前記細胞は、iPS細胞、間葉系幹細胞その他の多分化能を有する幹細胞から神経細胞に分化させられた細胞であってもかまわない。前記細胞は、所望の機能を有するタンパク質を構成的に発現するための発現ベクターが組み込まれたトランスフェクタントを含む。
本明細書において、「神経変性疾患関連タンパク質が構成的に発現される」とは、いずれかの神経変性疾患関連タンパク質を一過的又は恒久的に発現することをいい、前記神経変性疾患関連タンパク質が多くの細胞で発現されていることを条件として、いかなる手法で前記神経変性疾患関連タンパク質が発現されてもかまわない。好ましくは、所望の機能を有するタンパク質を発現するために、前記神経変性疾患関連タンパク質をエンコードするポリヌクレオチドが組み込まれた発現ベクターがリポフェクション法で細胞に導入される。この手法に用いる試薬は当業者に知られたいかなる試薬を用いてもかまわない。例えば、X−tremeGENE9、FuGENE6、リポフェクチン、リポフェクタミン、マルチフェクタムなどの市販の試薬が利用できる。
本明細書において「発現ベクター」とは、所望の機能を有するタンパク質を宿主生物において発現させるために使用されるベクターであって、前記所望の機能を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドが組み込まれたベクターである。前記タンパク質は、TAR DNA結合タンパク質−43(TDP−43)、α−シヌクレイン、タウ、β−アミロイド、ポリグルタミン、SOD1及び/又はプリオンの場合がある。前記ベクターは、プラスミド、ウイルス、ファージ、コスミドを含むが、これらに限定されない。前記ベクターは、市販の発現ベクター(例えば、pEGFP−C1ベクター(Clontech)など)を利用できる。一般的に、前記所望の機能を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって調製され、制限酵素、DNA連結酵素などを利用する当業者に周知の遺伝子工学の手法を用いて前記発現ベクターに組み込まれる。前記PCRで用いられるフォワードプライマー及びリバースプライマーは、所望の機能を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを増幅できることを条件として、いかなる配列であってもかまわない。前記プライマーは、前記発現ベクターに組み込むための制限酵素認識配列を有する場合がある。
神経変性疾患関連タンパク質が構成的に発現される細胞は、該タンパク質を含む不溶性凝集体を形成でき、該不溶性凝集体の形成を抑制する薬物のスクリーニングで用いられる場合がある。前記タンパク質は、TAR DNA結合タンパク質(TDP−43)を緑色蛍光タンパク質(GFP)でタグ化した融合タンパク質(GFP−TDP43)の場合がある。
本明細書において、「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」及び「ペプチド」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合で連結した化合物である。「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」及び「ペプチド」は、有機化合物、無機化合物、金属イオン(カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウムなど)、生体高分子(例えば、糖、脂質、核酸、タンパク質、ペプチドなど)、合成高分子(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニル、ポリエステルなど)と共有結合又は非共有結合によって結合又は会合している場合がある。
本明細書において、タンパク質の量は、細胞により産生されたタンパク質の量の他、採取された生物学的試料中に存在するタンパク質の量を含む。所望のタンパク質の量は、ELISA、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、免疫細胞化学染色、免疫沈降法及び免疫比濁法を含むが、これらに限定されない方法によって測定される。前記方法において、所望のタンパク質を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。前記抗体は、当業者に標準的な方法で作製された抗体であってかまわないし、商業的に入手可能な抗体であってもかまわない。
本明細書において、タンパク質の量は、測定するときの細胞の数又は全タンパク質の量によって標準化された測定値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコなどに播種される場合には、培養後の容器1つあたりの所望のタンパク質の量は、候補薬物を添加する前の前記細胞の所望のタンパク質の量を基準とする測定値で表される場合がある。さらに、本発明において、所望のタンパク質の量は、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコなどに播種される場合には、同一条件で処理された容器1つあたりの対照タンパク質の量で標準化される場合がある。前記対照タンパク質は、いわゆるハウスキーピング遺伝子のタンパク質、例えば、β−アクチン、γ−チューブリンを含むが、これらに限定されない。ハウスキーピング遺伝子のタンパク質の量をELISAなどによって測定するためには、前記タンパク質を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。不溶性凝集体の形成を抑制する薬物のスクリーニングにおいて、候補薬物の効果は前記測定値を用いて比較される場合がある。
本明細書において、リン酸化タンパク質の量は、細胞により産生されたリン酸化タンパク質の量の他、採取された生物学的試料中に存在するリン酸化タンパク質の量を含む。所望のリン酸化タンパク質の量は、ELISA、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、免疫細胞化学染色、免疫沈降法及び免疫比濁法を含むが、これらに限定されない方法によって測定される。前記方法において、所望のリン酸化タンパク質を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。前記抗体は、当業者に標準的な方法で作製された抗体であってかまわないし、商業的に入手可能な抗体であってもかまわない。
本明細書において、リン酸化タンパク質の量は、測定するときの細胞の数又は全タンパク質の量によって標準化された測定値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコなどに播種される場合には、培養後の容器1つあたりの所望のリン酸化タンパク質の量は、候補薬物を添加する前の前記細胞の所望のリン酸化タンパク質の量を基準とする測定値で表される場合がある。さらに、本発明において所望のリン酸化タンパク質の量は、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコなどに播種される場合には、同一条件で処理された容器1つあたりの対照のリン酸化タンパク質の量で標準化される場合がある。前記対照タンパク質は、いわゆるハウスキーピング遺伝子のタンパク質、例えば、β−アクチン、γ−チューブリンを含むが、これらに限定されない。ハウスキーピング遺伝子のタンパク質の量をELISAなどによって測定するためには、前記タンパク質を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。不溶性凝集体の形成を抑制する薬物のスクリーニングにおいて、候補薬物の効果は前記測定値を用いて比較される場合がある。
本明細書において、凝集体の量は、細胞により産生された凝集体の量の他、採取された生物学的試料中に存在する凝集体の量を含む。所望の凝集体の量は、ELISA、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、免疫細胞化学染色、免疫沈降法及び免疫比濁法を含むが、これらに限定されない方法によって測定される。前記方法において、所望の凝集体を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。前記抗体は、当業者に標準的な方法で作製された抗体であってかまわないし、商業的に入手可能な抗体であってもかまわない。
本明細書において、凝集体の量は、測定するときの細胞の数又は全凝集体の量によって標準化された測定値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコなどに播種される場合には、培養後の容器1つあたりの所望の凝集体の量は、候補薬物を添加する前の前記細胞の所望の凝集体の量を基準とする測定値で表される場合がある。前記不溶性凝集体は、TDP−43を含む不溶性凝集体を含むが、これらに限定されない。前記不溶性凝集体の形成を抑制する薬物のスクリーニングにおいて、候補薬物の効果は前記測定値を用いて比較される場合がある。
前記候補薬物は、微生物、菌類、植物及び動物から調製される化合物と、化学的に合成される化合物とを含むが、これらに限定されない。好ましくは、前記候補薬物は医薬品である。前記候補薬物として、市販の低分子化合物ライブラリー(例えば、プレストウィック・ザ・ケミカルライブラリーなど)が利用できる。
前記ELISA、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、免疫細胞化学染色、免疫沈降法及び免疫比濁法は、市販の試薬、キット、及び/又は、装置を用いて、当業者に周知な標準的な手順で実施できる。
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
以下の実施例の実験は公益財団法人東京都医学総合研究所の研究倫理委員会の承認(承認番号:12−3、承認日:2004年3月30日)を得て実施された。
フローサイトメトリーによる候補薬物の凝集体形成抑制能の評価
材料及び方法
細胞培養
候補薬物の凝集体形成抑制能を評価するために、神経変性疾患関連タンパク質が構成的に発現されるトランスフェクタントが用いられた。このトランスフェクタントの作製及び培養は、原則として、Hasegawa M, et al., Ann Neurol. 64(1):60−70(2008)、Nonaka T, et al., Hum Mol Genet. 15;18(18):3353−64(2009)、及び、国際公開番号 WO/2009/125646に従って行われた。簡潔には、SH−SY5Y細胞及びそのトランスフェクタントは10%ウシ胎仔血清を含む細胞培養用培地(D−MEM/F−12、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて培養された。以下、特記されない場合には、SH−SY5Y細胞及びそのトランスフェクタントは、37°C、5%CO2及び飽和水蒸気雰囲気下で培養された。SH−SY5Y細胞は、播種翌日にウェル中で50%コンフルエントになるように市販の6ウェルプレートに播種された。
コンストラクション
TAR DNA結合タンパク質(TDP−43)を緑色蛍光タンパク質(GFP)でタグ化した2種類の融合タンパク質(GFP−TDP43)それぞれを前記SH−SY5Y細胞で発現させるため、前記融合タンパク質をエンコードする2種類の発現ベクターが調製された。1つの発現ベクターは、緑色蛍光タンパク質(GFP)と、TAR DNA結合タンパク質のアミノ酸の第162番目から第414番目までとをエンコードするポリヌクレオチド(GFP−TDP 162−414)を有する発現ベクターである。もう1つの発現ベクターは、緑色蛍光タンパク質(GFP)と、アミノ酸の第78番目から第84番目までの核局在シグナル(NLS)及びアミノ酸の第187番目から第192番目までの領域を欠損したTAR DNA結合タンパク質とをエンコードするポリヌクレオチド(GFP−TDP 162−414)を有する発現ベクターである。
トランスフェクション
前記発現ベクター1μgと、X−tremeGENE 9 DNAトランスフェクション試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)3μLと、前記OptiMEM 100μLとの混合液が、50%コンフルエントの前記SH−SY5Y細胞に添加され、6時間培養された。その後、2種類のトランスフェクタントは、以下の薬物処理に供された。
薬物処理
薬物処理は、原則として、Yamashita M, et al., FEBS Lett. 21;583(14):2419−24(2009)、及び、国際公開番号 WO/2009/125646に従って行われ、TDP−43凝集体形成を抑制するための薬物がハイスループット・スクリーニングされた。簡潔には、前記トランスフェクタントは、候補薬物で4日間処理された。前記候補薬物として、市販の化合物ライブラリー(プレストウィック・ザ・ケミカルライブラリーVer.13、株式会社パーキンエルマージャパン)が用いられた。陰性対照として、溶媒であるDMSOのみが添加された。陽性対照として、20μMのラトレピルジン(ディメボン(商標)、Tocris Bioscience)が添加された。処理後、トランスフェクタントは以下のフローサイトメトリーに供された。
フローサイトメトリー
候補薬物で処理したトランスフェクタントは回収され、1mLのPBSに懸濁された。その後、前記トランスフェクタントのGFPの蛍光強度が、製造者の指示に従ってフローサイトメーター(EPICS XL/XL−MCL:ベックマン・コールター株式会社)で測定された。この評価システムでは、凝集体が形成されると、GFPも同時に凝集され、その結果として、GFPの蛍光強度が増加し、凝集体を形成する細胞はGFPの蛍光強度が高い細胞として検出される。したがって、候補薬物の凝集体形成抑制能はGFPの蛍光強度を指標に評価できる。また、この評価システムでは、得られたヒストグラムからGFPを強く発現する細胞の割合(%)が、解析ソフト(FlowJo:トミーデジタルバイオロジー株式会社)を用いて算出され、各候補薬物の凝集体形成抑制能が、陰性対照及び陽性対照と比較された。
結果
図1は、陰性対照群(DMSOのみ)、陽性対照群(ラトレピルジン(20μM))、及び、実験群(アモジアキン(20μM))における、GFPを強く発現する細胞の割合(%)を示すグラフである。各実験条件の標準偏差は、同一条件で3回繰り返した実験結果の測定値から算出された。スチューデントt検定において、アスタリスク(**)はp値が1%未満であることを示す。GFPを強く発現する細胞の割合(%)は、陰性対照では約26%であり、陽性対照では約19%であり、実験群では約18%であった。図1に示されるとおり、アモジアキンは、陰性対照と比較して、統計学的に有意に凝集体形成を抑制した。また、アモジアキンの凝集体形成抑制能は、陽性対照と比較して高かった。なお、アモジアキンの細胞毒性は認められなかった(データは示されない。)。
アモジアキンの半数致死量(LD50)は、上述のとおり、マウスでの経口投与では550mg/kgである。本実施例で用いたアモジアキンの濃度は20μM(0.0086mg/mL)である。したがって、アモジアキンは、凝集体の形成を抑制する有効性発現濃度は安全域の範囲内であることが示された。
ウェスタンブロットによる候補薬物の凝集体形成抑制能の評価
材料及び方法
細胞培養、コンストラクション、トランスフェクション及び薬物処理は、原則として、実施例1と同様に行われた。薬物処理3日後に、TDP−43及びリン酸化TDP−43の量がウェスタンブロットによって測定された。
可溶性画分及び不溶性画分の調製
候補薬物で処理したトランスフェクタントは回収され、1mLのPBSに懸濁された。前記トランスフェクタントは、1% TritonX−100を含む細胞破砕溶液(50mM Tris−HCl(pH 7.5)、0.15M NaCl、5mM EDTA、5mM EGTA、及び、プロテアーゼインヒビターカクテル(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社))中で超音波破砕され、トランスフェクタントの細胞溶解液が調製された。上清と沈殿とが遠心分離(20,000×g、30分間)によって分離され、前記上清が可溶性画分として、前記沈殿が不溶性画分として分画された。これらの画分は、以下のウェスタンブロットによる解析に供された。
ウェスタンブロットは、当業者に周知な標準的な方法で行われた。簡潔には、SDSサンプルバッファーが前記可溶性画分及び前記不溶性画分に添加された後に熱処理され、ウェスタンブロット用サンプルが調製された。前記サンプルは、12%(v/v)SDS−ポリアクリルアミドゲルの電気泳動により分離された。分離されたタンパク質はPVDF膜に転写され、適切に希釈した1次抗体及び2次抗体と反応され、ECL Plusウェスタンブロッティング検出システム(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)と、ImageQuant(商標)LAS 4000 mini(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)とを用いて検出された。
可溶性画分のウェスタンブロットでは、1次抗体として抗TDP−43抗体(10782−1−AP、ProteinTech)が、2次抗体としてBiotinilated Anti−Rabbit IgG (H+L)(Vector Laboratories)が用いられた。不溶性画分のウェスタンブロットでは、1次抗体として自作の抗リン酸化TDP−43(pS409/410)抗体(Arai T, et al., Biochem Biophys Res Commun. 22;351(3):602−11(2006))が、2次抗体としてBiotinilated Anti−Rabbit IgG (H+L)(Vector Laboratories)が用いられた。
得られたブロットデータはImageJで解析され、TDP−43のリン酸化の割合が算出された。このTDP−43のリン酸化の割合に基づいて、候補薬物の凝集体形成抑制能が評価された。サンプル1つあたり実験2回が行われた。
結果
図2−1は、可溶性画分中のTDP−43、及び、不溶性画分中のリン酸化TDP−43を示すウェスタンブロット図である。図2−1に示されるとおり、陽性対照群(ラトレピルジン(20μM))、及び、実験群(アモジアキン(20μM))でのリン酸化TDP−43の量は、陰性対照群(DMSOのみ)と比較して少なかった。図2−2は、図2−1のウェスタンブロット図から算出したTDP−43のリン酸化の割合を示すグラフである。TDP−43のリン酸化の割合は、陰性対照群(DMSOのみ)では約0.41であり、陽性対照群(ラトレピルジン(20μM))では約0.14であり、実験群(アモジアキン(20μM))では約0.21であった。図2−2に示されるとおり、アモジアキンは、陰性対照と比較して、顕著にTDP−43のリン酸化を抑制した。なお、アモジアキンの細胞毒性は認められなかった(データは示されない。)。
免疫細胞化学染色による候補薬物の凝集体形成抑制能の評価
材料及び方法
細胞培養、コンストラクション、トランスフェクション及び薬物処理は、原則として、実施例1と同様に行われた。ヒト神経細胞株SH−SY5Y細胞はカバーグラス上で培養され、各発現ベクターがトランスフェクションされた。6時間後、トランスフェクタントは候補薬物で処理された。
共焦点顕微鏡観察
トランスフェクション3日後に、トランスフェクタントは、4%パラホルムアルデヒド(和光純薬工業株式会社)を用いてカバーグラス上に室温で30分間固定された。また、膜透過処理が0.2%(v/v)TritonX−100を含むPBSを用いて室温で10分間行われた。さらに、ブロッキングが、5% BSAを含むPBSを用いて室温で30分間行われた。その後、適切に希釈した1次抗体及び2次抗体それぞれを用いて、抗原抗体反応が37°Cで1時間ずつ行われた。1次抗体として抗リン酸化TDP−43(pS409/410)抗体が、2次抗体としてAlexa−568標識抗ウサギ抗体が用いられた。細胞の核はTO−PRO−3(Molecular Probes、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)で37°Cで1時間染色された。前記トランスフェクタントはProLong Gold antifade reagent(カタログ番号P36934、インビトロジェン株式会社)で封入され、共焦点顕微鏡(カールツァイスマイクロスコピー株式会社)で観察された。
この評価システムでは、凝集体が形成されると、GFPも同時に凝集され、その結果として、GFPの蛍光強度が増加し、凝集体を形成する細胞はGFPの蛍光強度が高い細胞として検出される。したがって、候補薬物の凝集体形成抑制能はGFPの蛍光強度を指標に評価できる。この評価システムでは、レーザーの波長(488nm)は、TDP−43凝集体のみを検出できるように調節された。またTO−PRO−3の染色シグナルを視野内の細胞数とみなすことによって、凝集体形成の割合が算出された。サンプル1つあたり視野8つ以上の画像データが取得され、数値化された。
結果
図3は、共焦点顕微鏡の画像データから算出した凝集体形成の割合を示すグラフである。凝集体形成の割合は、陰性対照群(DMSOのみ)では約0.043であり、陽性対照群(ラトレピルジン(20μM))では約0.021であり、実験群(アモジアキン(20μM))では約0.017であった。図3に示されるとおり、アモジアキンは、陰性対照と比較して、統計学的に有意に凝集体形成を抑制した。なお、アモジアキンの細胞毒性は認められなかった(データは示されない。)。
アモジアキンがTDP−43の凝集及びリン酸化を顕著に抑制することができる。したがって、アモジアキンを有効成分として含む医薬組成物は、TDP−43の凝集体の異常蓄積を伴うさまざまな神経変性疾患(いわゆるTDP−43プロテイノパチー)の治療又は予防に有用である。

Claims (9)

  1. アモジアキン、その誘導体及びその塩からなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物を有効成分として含むことを特徴とする、神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
  2. 前記神経変性疾患は、TAR DNA結合タンパク質−43(TDP−43)を含む不溶性凝集体を形成する疾患であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記医薬組成物は、前記不溶性凝集体の形成抑制剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. 前記医薬組成物は、TAR DNA結合タンパク質−43(TDP−43)のリン酸化抑制剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  5. 前記神経変性疾患は、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ALS/パーキンソン認知症複合、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、嗜銀顆粒性認知症、ハンチントン病、ペリー症候群、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ピック病、及び、家族性英国型認知症からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  6. アモジアキン、その誘導体及びその塩からなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物と、他の神経変性疾患の治療薬又は予防薬とを含むことを特徴とする、医薬組成物。
  7. 前記他の神経変性疾患の治療薬又は予防薬が、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン、及び、エダラボンからなる群から1種類以上選択されることを特徴とする、請求項6に記載の医薬組成物。
  8. 生体内でアモジアキンに代謝されるアモジアキン誘導体及び/又はその塩がプロドラッグとして含まれることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  9. アモジアキン、その誘導体及びその塩からなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物と、TDP−43を含む不溶性凝集体を形成する生物学的試料とを含むことを特徴とする、神経変性疾患の研究のためのキット。
JP2013072983A 2013-03-29 2013-03-29 アモジアキンを含む神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物 Pending JP2014196269A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013072983A JP2014196269A (ja) 2013-03-29 2013-03-29 アモジアキンを含む神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013072983A JP2014196269A (ja) 2013-03-29 2013-03-29 アモジアキンを含む神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014196269A true JP2014196269A (ja) 2014-10-16

Family

ID=52357389

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013072983A Pending JP2014196269A (ja) 2013-03-29 2013-03-29 アモジアキンを含む神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2014196269A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108143734A (zh) * 2018-02-09 2018-06-12 南京中医药大学 阿莫地喹及其药学上可接受的盐在制备用于治疗阿尔茨海默病的药物中的应用
JP2022544700A (ja) * 2019-08-22 2022-10-20 バイオヘイブン・セラピューティクス・リミテッド 筋萎縮性側索硬化症および関連障害の治療のためにtdp-43に結合する分子
US12318357B2 (en) 2019-08-02 2025-06-03 Acelot, Inc. Small molecule drugs and related methods for treatment of diseases related to TDP-43, alpha-synuclein, huntingtin's protein and tau protein oligomer formation

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108143734A (zh) * 2018-02-09 2018-06-12 南京中医药大学 阿莫地喹及其药学上可接受的盐在制备用于治疗阿尔茨海默病的药物中的应用
US12318357B2 (en) 2019-08-02 2025-06-03 Acelot, Inc. Small molecule drugs and related methods for treatment of diseases related to TDP-43, alpha-synuclein, huntingtin's protein and tau protein oligomer formation
JP2022544700A (ja) * 2019-08-22 2022-10-20 バイオヘイブン・セラピューティクス・リミテッド 筋萎縮性側索硬化症および関連障害の治療のためにtdp-43に結合する分子
EP4017492A4 (en) * 2019-08-22 2023-10-11 Biohaven Therapeutics Ltd. MOLECULES THAT BIND TDP-43 FOR THE TREATMENT OF AMYOTROPHIC LATERAL SCLEROSIS AND RELATED DISORDERS

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Bonora et al. Physiopathology of the permeability transition pore: molecular mechanisms in human pathology
Nezich et al. MiT/TFE transcription factors are activated during mitophagy downstream of Parkin and Atg5
Garcia et al. Ubiquitylation of MLKL at lysine 219 positively regulates necroptosis-induced tissue injury and pathogen clearance
Patterson et al. Heat shock protein 70 prevents both tau aggregation and the inhibitory effects of preexisting tau aggregates on fast axonal transport
Masuyama et al. Calcium/calmodulin‐signaling supports TRPV4 activation in osteoclasts and regulates bone mass
US7977049B2 (en) Methods and compositions for extending the life span and increasing the stress resistance of cells and organisms
US20220313628A1 (en) Methods for selecting phosphatase selective and non-selective phosphatase inhibitors
CN107206009A (zh) 用于治疗视觉障碍的组合物和方法
CA2906194A1 (en) Benzimidazole derivatives and uses thereof
Martínez-Mármol et al. p110δ PI3-kinase inhibition perturbs APP and TNFα trafficking, reduces plaque burden, dampens neuroinflammation, and prevents cognitive decline in an Alzheimer's disease mouse model
JP6062371B2 (ja) 神経変性疾患関連タンパク質の不溶性凝集体の製造方法
US20210205300A1 (en) Polycomb inhibitors and uses thereof
JP2014196269A (ja) アモジアキンを含む神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物
JP2014196268A (ja) フルベストラントを含む神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物
US20110081296A1 (en) Systems and methods for identification of ciliopathy therapeutics
Yu et al. Nuclear factor of activated T cells 2 is required for osteoclast differentiation and function in vitro but not in vivo
JP2014196270A (ja) ミトタンを含む神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物
Li et al. αA‐crystallin and αB‐crystallin, newly identified interaction proteins of protease‐activated receptor‐2, rescue astrocytes from C2‐ceramide‐and staurosporine‐induced cell death
US20090280110A1 (en) Cell Model for Alzheimer's Disease Pathology
US20250134895A1 (en) Methods and compositions for treating alpha-synuclein-mediated neurodegeneration
US20110086908A9 (en) Use of phosphatase inhibitors for the treatment of neurodegenerative diseases
Banks DENND5A-related developmental and epileptic encephalopathy driven by loss of symmetric cell division of apical neural progenitors
CN102107001B (zh) Lxr核受体激动剂在治疗和预防自身免疫性疾病中的应用
JP5873652B2 (ja) 軟骨疾患治療薬のスクリーニング方法および軟骨疾患治療用改変軟骨細胞
Pasetto et al. Cyclophilin A knock-out mice develop a pure frontotemporal dementia phenotype with marked TDP-43 pathology