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JP2014148709A - 電解用隔膜 - Google Patents

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JP2014148709A
JP2014148709A JP2013017350A JP2013017350A JP2014148709A JP 2014148709 A JP2014148709 A JP 2014148709A JP 2013017350 A JP2013017350 A JP 2013017350A JP 2013017350 A JP2013017350 A JP 2013017350A JP 2014148709 A JP2014148709 A JP 2014148709A
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ion exchange
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健郎 井上
Hiroyuki Higuchi
浩之 樋口
Yuzo Muraki
勇三 村木
Takashi Kumano
隆史 熊野
Ichiro Amino
一郎 網野
Masaya Nishigawara
正也 西川原
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Nitto Denko Corp
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Abstract

【課題】イオンの透過性に優れ、使用時の面積変化率が小さく、かつ、電解時に電極で生成したガスが隔膜表面に付着することによる電圧上昇を抑制し得る電解用隔膜を提供すること。
【解決手段】 本発明の電解用隔膜は、イオン透過膜を備え、濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液に対して濡れ性を示す、電解用隔膜であって、該イオン透過膜の平均孔径が0.01μm〜20μmであり、かつ、純水に浸漬した場合の面積変化率が20%以下である。好ましい実施形態においては、上記イオン透過膜の温度25℃/濃度40重量%の水酸化カリウム水溶液を電解液としたときの電気抵抗値が、0.5Ω・cm以下である。
【選択図】図2

Description

本発明は、電解用隔膜に関する。
従来、石油を中心としたエネルギー構図が構築されているが、石油は限りある資源であることに加えて産出可能な地域が限定されているため、今後のエネルギー事情を考慮すると、安定したエネルギーの供給方法が必要である。このようなエネルギー事情を反映し、水素は石油に代わる新しいエネルギー源として注目されている。水素の工業的製造方法として、高分子電解質を用いた水電解法が挙げられるが、これは白金のような高価な貴金属を触媒として使用するため、コストが高くなる問題がある。一方、アルカリ水電解法は、高価な貴金属触媒を使用することなく、アルカリ水を電気分解することで、安価に安定して水素を得られる方法として期待されている。
アルカリ水電解法に用いられる隔膜として、例えば、スルホン酸基を有するフッ化炭化水素重合体から構成される隔膜が提案されている(特許文献1)。しかし、このような隔膜は、電解槽に組み込んで湿潤状態となった際に、重合体の膨潤による面積変化が大きく、シワ、破れ、変形等の発生が問題となる。
また、アルカリ水電解法に用いられる隔膜として、親水性無機材料を含有する隔膜が提案されている(特許文献2)。この隔膜は、水への濡れ性を示し、多孔質であるためイオン透過性を有するが、電解環境下において、アルカリ水への濡れ性が不十分であるという問題があり、特に電解時に電極で生成したガスが隔膜表面に付着することによる電圧上昇が問題となる。また、特許文献1の隔膜は、イオン透過性が不十分であるという問題もある。
特開昭59−182984号公報 特開2008−144262号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、イオンの透過性に優れ、使用時の面積変化率が小さく、かつ、電解時に電極で生成したガスが隔膜表面に付着することによる電圧上昇を抑制し得る電解用隔膜を提供することにある。
本発明の電解用隔膜は、イオン透過膜を備え、濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液に対して濡れ性を示す、電解用隔膜であって、該イオン透過膜の平均孔径が0.01μm〜20μmであり、かつ、該イオン透過膜を純水に浸漬した場合の面積変化率が20%以下である。
好ましい実施形態においては、上記イオン透過膜の温度25℃/濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液を電解液としたときの電気抵抗値が、0.5Ω・cm以下である。
好ましい実施形態においては、上記イオン透過膜が、中酸性イオン交換基、弱酸性イオン交換基、強塩基性イオン交換基、中塩基性イオン交換基または弱塩基性イオン交換基を有するポリマーから構成される。
好ましい実施形態においては、上記イオン透過膜において、上記中酸性イオン交換基、弱酸性イオン交換基、強塩基性イオン交換基、中塩基性イオン交換基または弱塩基性イオン交換基が、グラフト重合により導入されている。
好ましい実施形態においては、本発明の電解用隔膜は、上記イオン透過膜の片側または両側に配置された多孔性の補強体をさらに備える。
好ましい実施形態においては、上記補強体が、前記イオン透過膜の両側に配置されている。
好ましい実施形態においては、上記補強体が、中酸性イオン交換基、弱酸性イオン交換基、強塩基性イオン交換基、中塩基性イオン交換基または弱塩基性イオン交換基を有するポリマーから構成されている。
好ましい実施形態においては、上記補強体において、上記中酸性イオン交換基、弱酸性イオン交換基、強塩基性イオン交換基、中塩基性イオン交換基または弱塩基性イオン交換基が、グラフト重合により導入されている。
本発明の別の局面によれば、水素製造用電気化学セルが提供される。この水素製造用電気化学セルには、上記電解用隔膜が用いられる。
本発明によれば、微多孔性であるイオン透過膜を備えることにより、イオン透過性に優れ、かつ、使用時の面積変化率が小さい電解用隔膜を得ることができる。また、本発明の電解用隔膜は、アルカリ水溶液に対して高い濡れ性を有し、電解時に生成したガスが表面に付着し難く、その結果、電圧上昇を抑制することができる。
本発明の好ましい実施形態による電解用隔膜の概略断面図である。 本発明の好ましい実施形態による電解用隔膜の概略断面図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.電解用隔膜の全体構成
本発明の電解用隔膜は、微多孔性のイオン透過膜を備える。
本発明の電解用隔膜は、イオン透過膜を1枚有する単膜構成であってもよく、イオン透過膜を含む積層構成であってもよい。単膜構成であれば、イオン透過性がより高い電解用隔膜を得ることができ、強度に対する要求が比較的低い用途において有用である。一方、積層構成であれば、高強度、かつ、より短絡し難い電解用隔膜を得ることができる。積層構成の電解用隔膜の具体例としては、イオン透過膜の少なくとも片側に補強体を備える電解用隔膜が挙げられる。
図1は、本発明の好ましい実施形態による電解用隔膜の概略断面図である。図1に示す電解用隔膜100は、イオン透過膜10と多孔性の補強体20とを備える。図2は、本発明の別の好ましい実施形態による電解用隔膜の概略断面図である。図2に示す電解用隔膜100’は、イオン透過膜10の両側に多孔性の補強体20を備える。積層構成の場合において、補強体20は、図1に示すようにイオン透過膜10の片側に配置されていてもよく、図2に示すようにイオン透過膜10の両側に配置されていてもよい。好ましくは、補強体20は、イオン透過膜10の両側に配置される。このような構成であれば、反りが少なく、抵抗値等の特性に優れる電解用隔膜を得ることができる。また、補強体20がイオン透過膜10の片側に配置される場合、本発明の電解用隔膜100は、イオン透過膜10をアノード電極側に配置して用いてもよく、カソード電極側に配置して用いてもよい。イオン透過膜10と補強体20とは、例えば、ホットプレス機または加熱ロールを用いて加熱加圧して溶着させて積層させることができる。好ましくは、イオン透過膜10と補強体20とを積層し、積層体端部のみを加熱する。このようにして加熱すれば、補強体20が過度に加熱されて濡れ性が低下することを防ぐことができる。また、本発明の電解用隔膜は、隔膜として使用する際に、電極等により両側から圧力をかけて、イオン透過膜10と補強体20とを固定してもよい。また、後述のように、イオン透過膜および/または補強体がグラフト重合によって形成される場合、グラフト前のイオン透過膜と補強体とを上記方法により積層し、その後、グラフト処理を行ってもよい。
図1または図2に示す構成であれば、イオン透過膜10が補強体20により補強されて、電解用隔膜として十分な強度を有し、かつ、電極間での短絡防止性にも優れる。また、補強体20は、上記のとおり、多孔性であるため、イオン透過性を阻害することなく上記効果を発現し得る。さらに、上記のようにイオン透過膜10が補強されるため、イオン透過膜10を薄くすることができ、その結果、イオン透過性に優れる電解用隔膜を得ることができる。
本発明の電解用隔膜の厚みは、好ましくは15μm〜1500μmであり、より好ましくは35μm〜1000μmであり、さらに好ましくは50μm〜500μmである。
本発明の電解用膈膜は、濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液に対して濡れ性を示す。より詳細には、本発明においては、イオン透過膜を1枚有する単膜構成の場合には該イオン透過膜が上記のように濡れ性を示し、イオン透過膜および補強体を有する積層構成の場合には、イオン透過膜と補強体とが上記のように濡れ性を示す。本発明の電解用膈膜は上記のように濡れ性を示すので、アルカリ水電解により生じたガス(水素ガスおよび酸素ガス)が付着し難く、該ガスによる電圧上昇を抑制することができる。なお、本明細書において、「水酸化カリウム水溶液に対して濡れ性を示す」とは、電解用膈膜を温度80℃/濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液中に100時間浸漬させた場合にも、濡れ性が失われないことをいう。具体的には、上記のように水酸化カリウム水溶液中に浸漬させた後の電解用膈膜の表面に濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液を滴下した際に、滴下した水酸化カリウム水溶液が裏面にまで到る場合、該電解用膈膜を「水酸化カリウム水溶液に対して濡れ性を示す」電解用膈膜という。
本発明の電解用隔膜は、純水に浸漬した場合の面積変化率が、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下である。また、本発明の電解用隔膜は、濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液に浸漬した場合の面積変化率が、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下である。面積変化率がこのような範囲の電解用隔膜は、シワ、破れ、変形、折り重なり等が発生し難く、長寿命で安定した性能を発揮する。上記のように面積変化率の小さい電解用隔膜は、後述のように面積変化率が小さい微多孔性のイオン透過膜を備えることにより、得ることができる。なお、面積変化率の測定方法は、後述する。
B.イオン透過膜
上記イオン透過膜は、カソード電極で生成されるイオン(例えば、水酸化物イオン等のアニオン)をアノード電極に透過させ得る。上記イオン透過膜は、好ましくは、濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液中でイオン透過性(アニオン透過性)を示す。具体的には、上記イオン透過膜は、温度25℃/濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液を電解液としたときの電気抵抗値が、好ましくは0.5Ω・cm以下であり、より好ましくは0.1Ω・cm以下であり、さらに好ましくは0.01Ω・cm〜0.05Ω・cmである。本発明の電解用膈膜が積層構成の場合(すなわち、補強体を備える場合)、上記イオン透過膜の厚みは、好ましくは5μm〜300μmであり、より好ましくは5μm〜200μmであり、さらに好ましくは5μm〜100μmである。このような範囲であれば、イオン透過性に優れるイオン透過膜を得ることができる。本発明の電解用膈膜がイオン透過膜を1枚有する単膜構成の場合、該イオン透過膜の厚み(すなわち電解用隔膜の厚み)は、好ましくは15μm〜300μmであり、より好ましくは15μm〜200μmであり、さらに好ましくは15μm〜100μmである。このような範囲であれば、イオン透過性に優れ、かつ、実用上許容可能な強度を有する電解用膈膜を得ることができる。
上記イオン透過膜は、微多孔性である。微多孔性のイオン透過膜とは、孔径20μm以下の孔を全面にわたり有するイオン透過膜を意味する。本発明の電解用隔膜は、微多孔性のイオン透過膜を備えるため、非常に優れたイオン透過性を有する。また、イオン透過膜はアルカリ水に対して濡れ性を示すので、該電解用隔膜を使用する際には、電解液によりイオン透過膜を構成するポリマーが孔を塞ぐように膨潤して、隔膜を通じてガスが通過することを防止することができる。イオン透過膜は、該イオン透過膜を構成する材料を、例えば、延伸法、相分離法等の任意の適切な方法により微多孔性化して得ることができる。
上記イオン透過膜は、純水に浸漬した場合の面積変化率が20%以下である。このようなイオン透過膜を用いれば、運転、停止およびメンテナンス時における電解液の入れ替えによりイオン透過膜の乾燥状態/湿潤状態が繰り返された場合においても、シワ、破れ、変形、折り重なり等が発生し難く、長寿命で安定した性能を発揮する電解用隔膜を得ることができる。上記イオン透過膜は、純水に浸漬した場合の面積変化率が、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。純水に浸漬した場合の面積変化率は、小さいほど好ましい。該面積変化率の下限値は、例えば、1%である。なお、本明細書において、微多孔性のイオン透過膜および電解用隔膜の面積とは、見かけの面積のことをいう。例えば、イオン透過膜の平面視形状が矩形である場合、該矩形の4辺により規定される面の面積を、イオン透過膜の面積とする。
上記のように純水に浸漬した場合の面積変化率が小さいことは、アルカリ水に浸漬した場合の面積変化率が小さいことを意味する。上記イオン透過膜は、濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液に浸漬した場合の面積変化率が、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは5%以下であり、特に好ましくは3%以下である。濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液に浸漬した場合の面積変化率は、小さいほど好ましい。該面積変化率の下限値は、例えば、0.5%である。アルカリ水電解においては、電解液が強塩基性であるため、湿潤状態で電解用隔膜を組み込むことには危険が伴うが、上記イオン透過膜を備える本願発明の電解用隔膜を用いれば、乾燥状態のまま組み込んでも電解液中での面積変化率が小さいので、組み込み時の安全性を確保しつつ、安定したアルカリ水電解を行うことが可能である。
上記のように面積変化率の小さいイオン透過膜は、上記のように所定の径を有する孔を形成することにより得ることができる。より詳細には以下のとおりである。イオン透過膜は、ポリマーから構成されるため、電解液中で膨潤するが、従来のイオン透過膜は、ポリマーの膨潤がそのままイオン透過膜の巨視的な形状に影響して、面積が変化する。一方、本願発明においては、ポリマーが膨潤して変形するが、面内方向においては孔を塞ぐようにして変形する。その結果、イオン透過膜自体の面積変化が抑えられる。換言すれば、ポリマーの変形がイオン透過膜の形状に作用する際に、本願発明に用いられるイオン透過膜における孔は緩衝効果を奏し、その結果、該イオン透過膜の面積変化が抑えられる。また、本発明においては、上記のようにしてイオン透過膜の孔が塞がれるため、ガス遮断性に優れる電解用隔膜を得ることができる。
上記イオン透過膜の乾燥時の平均孔径は、0.01μm〜20μmであり、好ましくは0.03μm〜10μmであり、より好ましくは0.05μm〜1μmであり、さらに好ましくは0.05μm〜0.5μmである。このような範囲であれば、イオン透過性に非常に優れるイオン透過膜を得ることができる。また、イオン透過膜の平均孔径が上記の範囲であれば、本発明の電解用膈膜の使用時、すなわち該電解用膈膜を電解液であるアルカリ水に浸漬した際に、イオン透過膜を構成する材料(ポリマー)が膨潤して、孔が塞がれるため、ガス遮断性に優れる電解用膈膜を提供することができる。さらに、上記で説明したように、イオン透過膜自体の面積変化が抑えられ得る。なお、本明細書において、平均孔径とは、乾燥した試料、すなわち、温度:25℃、湿度:60%の環境下で時間経過により重量が変化しなくなるまで(例えば、12時間以上)静置した試料について、水銀圧入法により測定・算出された径をいう。
上記イオン透過膜を構成する材料としては、例えば、アニオン交換性の官能基を有するポリマーが挙げられる。アニオン交換性の官能基を有することにより、イオン透過性およびアルカリ水に対する濡れ性が付与される。上記アニオン交換性の官能基を有するポリマーとしては、アルカリ水に対して機械的耐久性および化学的耐久性を有し、かつ、アルカリ水において適度に膨潤するポリマーが好ましく用いられる。
上記イオン透過膜を構成する材料(ポリマー)の濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液に対する膨潤度の上限は、好ましくは250%以下であり、より好ましくは150%以下であり、さらに好ましくは100%以下である。このような範囲であれば、上記面積変化率が小さいイオン透過膜を得ることができる。該膨潤度の下限は、好ましくは1%以上である。このような範囲であれば、ガス遮断性に優れるイオン透過膜を得ることができる。膨潤度による材料(ポリマー)の選択は、電解用隔膜の用途に応じてなされ得る。例えば、より低い面積変化率が求められる用途に対しては、膨潤度が比較的低い材料(ポリマー)が選択され得、より高いガス遮断性が求められる用途に対しては、膨潤度が比較的高い材料(ポリマー)が選択され得る。なお、本明細書において、膨潤度とは、液温25℃、浸漬時間12時間における、重量膨潤度を意味する。
上記アニオン交換性の官能基を有するポリマーとしては、例えば、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、芳香族炭化水素系樹脂等の骨格となる樹脂にアニオン交換性の官能基が導入されたポリマーが挙げられる。なかでも、アルカリ水に対する化学的安定性の観点から、フッ素系樹脂またはオレフィン系樹脂にアニオン交換性の官能基が導入されたポリマーが好ましく用いられる。また、アニオン交換性の官能基の導入のしやすさの観点からは、オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
上記フッ素系樹脂としては、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。なかでも好ましくは、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体またはテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体である。
上記オレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、およびこれらの化合物を構成する繰り返し単位を有する共重合体等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、低密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンである。イオン透過膜を構成する材料として用いられる超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量は好ましくは50万〜1000万であり、より好ましくは100万〜1000万である。なお、上記粘度平均分子量は、ASTMD4020に規定の粘度法により測定することができる。
上記芳香族炭化水素系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリーレート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、およびこれらの化合物を構成する繰り返し単位を有する共重合体等が挙げられる。
上記アニオン交換性の官能基は、中酸性イオン交換基、弱酸性イオン交換基、強塩基性イオン交換基、中塩基性イオン交換基または弱塩基性イオン交換基である。このような官能基を有するポリマーを用いれば、アルカリ水に対する濡れ性に優れ、イオン透過性に優れるイオン透過膜を得ることができる。
本明細書において、中酸性イオン交換基とは、水中における酸解離定数pKaが1以上2未満の官能基をいう。中酸性イオン交換基としては、例えば、ホスホメチル基、リン酸基等が挙げられる。本明細書において、弱酸性イオン交換基とは、水中における酸解離定数pKaが2以上、好ましくは2〜10の官能基をいう。弱酸性イオン交換基としては、例えば、カルボン酸基、フェノール性水酸基、カルボキシメチル基等が挙げられる。中酸性基および弱酸性基を有するポリマーから構成されるイオン透過膜は、中酸性基および弱酸性基を、アルカリ金属イオン(例えば、カリウム)で中和処理することにより、アルカリ水への濡れ性を向上させることができる。なお、強酸性基を有するポリマーから構成される膜は、該強酸性基がアルカリ水中のアルカリ金属イオンにより容易に交換され、アルカリ水に対する濡れ性が低減するため、本発明のイオン透過膜としては好ましくない。
本明細書において、強塩基性イオン交換基とは、水中における塩基解離定数pKbが2未満の官能基をいう。強塩基性イオン交換基としては、例えば、第4級アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基、ピリジニウム塩基等が挙げられる。本明細書において、中塩基性イオン交換基とは、水中における塩基解離定数pKbが2以上4未満の官能基をいう。中塩基性イオン交換基としては、例えば、エピクロロヒドリントリエタノールアミン基等が挙げられる。本明細書において、弱塩基性イオン交換基とは、水中における塩基解離定数pKbが4以上、好ましくは4〜10の官能基をいう。弱塩基性イオン交換基としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、イミダゾール基、アミド基、シアノ基、ピリジル基等が挙げられる。
上記アニオン交換性の官能基を導入する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。該方法としては、例えば、放射線グラフト重合法、化学開始剤グラフト重合法等のグラフト重合による方法;上記骨格となる樹脂を構成するモノマーと、アニオン交換性の官能基を有するモノマーと、必要に応じて架橋剤とを共重合させる方法等が挙げられる。好ましくはグラフト重合法が採用され、より好ましくは放射線グラフト重合法が採用される。放射線グラフト重合法を用いれば、上記骨格となる樹脂の特性(例えば、機械的耐久性、化学的耐久性)を損なうことなく、長期的に親水性(より具体的には、アルカリ水に対する濡れ性)を維持し得る透過膜を得ることができる。さらに、放射線グラフト重合によりアニオン交換性の官能基が導入されたポリマーから構成されるイオン透過膜は、高温のアルカリ水(例えば、80℃の30重量%水酸化カリウム水溶液)中でも、親水性を失わない。以下、アニオン交換性の官能基を導入する方法の代表例として、放射線グラフト重合法により該官能基を導入する好ましい実施形態を説明する。
上記放射線グラフト重合法としては、骨格となる上記樹脂を微多孔性化した後、該骨格となる樹脂に放射線を照射してフリーラジカルを生成させた後、放射線が照射された樹脂と、アニオン交換性の官能基を有するモノマーおよび/またはアニオン交換性の官能基を導入し得るモノマーを含むモノマー組成物とを接触させ、該フリーラジカルを起点としてグラフト重合させる方法(前照射法)を用いることが好ましい。骨格となる樹脂とモノマーとを共存させた状態に放射線を照射してグラフト重合させる方法(同時照射法)に比べて、モノマー同士の重合が抑制されて、グラフト重合に寄与するモノマーの量が多くなり、モノマーの利用率が優れるからである。好ましくは、上記の骨格となる樹脂は、フィルム状で用いられる。なお、本明細書において、グラフト重合に供されるフィルム状の樹脂(骨格となる樹脂)を基材と称する。
上記前照射法としては、不活性ガス中で放射線を照射し重合するポリマーラジカル法を用いてもよく、酸素存在下で放射線を照射し重合するパーオキサイド法を用いてもよい。好ましくは、ポリマーラジカル法である。ポリマーラジカル法を用いれば、モノマーがグラフト重合されずにポリマー化することを抑制することができる。上記放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などが挙げられる。好ましくは、γ線または電子線である。
上記イオン透過膜の作製に用いられる基材は、微多孔性であることが好ましい。該基材の平均孔径は、好ましくは0.01μm〜20μmであり、より好ましくは0.03μm〜10μmであり、さらに好ましくは0.05μm〜1μmであり、特に好ましくは0.05μm〜0.5μmである。
上記基材を微多孔性化する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、延伸法、相分離法、抽出法、溶融急冷法、化学処理法、融着法、発泡法、およびこれらの方法を適宜組み合わせた方法等が採用され得る。なかでも、好ましくは延伸法または相分離法である。延伸法は、無孔フィルムを所定の倍率にて一軸方向または二軸方向に延伸して多孔性化する方法であり、該方法によれば、均一、かつ、連続性に優れる孔形状を得ることができる。また、相分離法によれば、簡便に微多孔性化させることができる。
上記放射線グラフト重合法における放射線照射線量は、通常1kGy〜500kGy(キログレイ:1グレイは1J/kgエネルギー吸収に相当する)であり、好ましくは5kGy〜300kGyである。照射線量が1kGyより少ないとグラフト重合に十分な数のフリーラジカルが生成されないおそれがある。また、照射線量が500kGyより多いと基材を構成する樹脂の過剰な架橋反応や劣化が進むおそれがある。照射時の温度は特に制限されないが、例えば、−200℃〜60℃であり、好ましくは−200℃〜25℃程度である。照射時および照射後の環境温度が基材を構成する樹脂のガラス転移温度より高すぎると生成したフリーラジカルが失活するおそれがある。照射後の樹脂は、好ましくは常温以下、より好ましくは−60℃以下の低温下に置くことが好ましい。
放射線が照射された樹脂(基材)と、アニオン交換性の官能基を有するモノマーおよび/またはアニオン交換性の官能基を導入し得るモノマーを含むモノマー組成物とを接触させて、グラフト重合させる方法としては、例えば、放射線が照射された樹脂(基材)をモノマー組成物中に浸漬させる方法が挙げられる。上記モノマー組成物中、アニオン交換性の官能基を有するモノマーまたはアニオン交換性の官能基を導入し得るモノマーは、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記モノマー組成物は、有機溶媒を含む均一系溶液であってもよく、水溶性溶媒(例えば、水)を含むエマルジョン溶液であってもよい。上記有機溶媒としては、モノマーを溶解することができ、かつ、基材に浸透し得る溶媒であれば、任意の適切な溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、好ましくは炭素数が1〜6の低級アルコール、より好ましくは炭素数が1〜4の低級アルコール、さらに好ましくはエタノールまたはメタノールが挙げられる。また、有機溶剤として、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサンまたはトルエンを用いてもよい。好ましくは、上記モノマー組成物は、減圧脱気、窒素などの不活性ガスによるバブリングを行い、脱酸素される。
上記アニオン交換性の官能基を有するモノマーとしては、例えば、アニオン交換性の官能基を有するビニル系化合物が挙げられ、下記一般式(1)で表されるビニル系化合物が好ましく用いられ得る。
C=C(X)R ・・・(1)
Xは水素原子、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。Xがアルキル基の場合、その炭素数は、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5である。Rは上記アニオン交換性の官能基を有する直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはヒドロキシル基、カルボン酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミド基、シアノ基、4級アンモニウム塩基、イミダゾール基、ピリジル基および/または4級ピリジニウム塩基を有する直鎖状または分岐状のアルキル基である。Rは、炭素数が、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜6である。このような炭素数であれば、親水性に優れるイオン透過膜を得ることができる。
上記アニオン交換性の官能基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル、アリルアミン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートアクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルビニルピリジン、エチルビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、アミノスチレン、アルキルアミノスチレン、ジアルキルアミノスチレン、トリアルキルアミノスチレン、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。なかでも好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミドまたはメタクリルアミドである。これらのモノマーは、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。また、グラフト重合した後、例えば、約1規定の水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を用いて中和処理を行うことにより、更に親水化効果を高めることができる。
上記アニオン交換性の官能基を導入し得るモノマーをとしては、例えば、スチレンスルホン酸のアルキルエステル;ビニルスルホン酸のアルキルエステル;アクリルホスホン酸のアルキルエステル;スチレンスルホン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩;ビニルスルホン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩;アクリルホスホン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸またはアクリルホスホン酸のアルキルエステルを用いる場合、グラフト重合した後、エステルを加水分解して酸型とすることにより、イオン透過性および親水性を付与することができる。スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸またはアクリルホスホン酸の塩を用いる場合は、グラフト重合した後、例えば約1規定の硝酸、塩酸または硫酸等を用いて、酸処理を行うことにより、上記アニオン交換性の官能基を有してイオン透過性および親水性を示すイオン透過膜を得ることができる。
上記スチレンスルホン酸のアルキルエステルの具体例としては、スチレンスルホン酸エチルエステル、スチレンスルホン酸プロピルエステル、スチレンスルホン酸イソプロピルエステル、スチレンスルホン酸n−ブチルエステル、スチレンスルホン酸tertブチルエステル、スチレンスルホン酸イソブチルエステル、スチレンスルホン酸ペンチルエステル、スチレンスルホン酸ネオペンチルエステル、スチレンスルホン酸イソペンチルエステル、スチレンスルホン酸tertペンチルエステル等が挙げられる。ビニルスルホン酸のアルキルエステルの具体例としては、ビニルスルホン酸エチルエステル、ビニルスルホン酸メチルエステル等が挙げられる。
上記アニオン交換性の官能基を導入し得るモノマーとして、ハロゲン化アルキルスチレンを用いてもよい。ハロゲン化アルキルスチレンの具体例としては、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン、ヨードメチルスチレン、クロロエチルスチレン、ブロモエチルスチレン、ヨードエチルスチレン、クロロペンチルスチレン、ブロモペンチルスチレン、ヨードペンチルスチレン、クロロヘキシルスチレン、ブロモヘキシルスチレン、ヨードヘキシルスチレン、クロロプロピルスチレン、ブロモプロピルスチレン、ヨードプロピルスチレン、クロロブチルスチレン、ブロモブチルスチレン、ヨードブチルスチレン等が挙げられる。ハロゲン化アルキルスチレンを用いる場合、グラフト重合した後、例えば、アンモニア水、またはアルキルアミン(例えば、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエチルアミン)をアルコール、アセトンおよび/または水に溶解させた溶液等でハロゲン化アルキル基の4級アンモニウム化処理を行うことでイオン透過性および親水性を付与することができる。また、例えばトリブチルホスフィンをアルコールおよび/またはアセトンに溶解させた溶液で、ホスホニウム化処理を行うことで、イオン透過性および親水性を有するイオン透過膜を得ることができる。
上記モノマー組成物におけるアニオン交換性の官能基を有するモノマーおよびアニオン交換性の官能基を導入し得るモノマーの濃度は、好ましくは0.1重量%〜70重量%であり、より好ましくは5重量%〜60重量%である。該モノマーの濃度が0.1重量%未満の場合、グラフト重合反応が十分に進行しないおそれがある。また、該モノマーの濃度が70重量%より高い場合、未反応モノマーが残存し歩留まりの低下を招くおそれがある。
上記モノマー組成物中に、その他のモノマーが含まれていてもよい。その他のモノマーとしては、上記アニオン交換性の官能基を有するモノマーまたはアニオン交換性の官能基を導入し得るモノマーと共重合可能なモノマーであれば、任意の適切なモノマーが用いられ得る。その他のモノマーの含有割合は、上記アニオン交換性の官能基を有するモノマーおよびアニオン交換性の官能基を導入し得るモノマーの合計量に対して、好ましくは0.5重量%〜100重量%であり、より好ましくは1重量%〜50重量%である。
上記モノマー組成物中のその他のモノマーは架橋剤であってもよい。架橋剤を含むモノマー組成物を用いることにより、架橋構造を有し耐久性(例えば、耐水性、耐アルカリ性、耐熱性、耐酸化性)に優れるイオン透過膜を得ることができる。架橋剤としては、例えば、ビニル基を2つ以上有するビニル系化合物が挙げられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
放射線が照射された基材とモノマー組成物とを接触させる際の温度(グラフト重合反応における反応温度)は、好ましくは0℃〜100℃、より好ましくは30℃〜80℃である。放射線が照射された基材とモノマー組成物とを接触させる時間(グラフト重合反応における反応時間)は、好ましくは3分〜48時間である。
グラフト重合反応させた後、アニオン交換性の官能基を有するポリマーを、トルエン、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等の有機溶媒または水で洗浄し、その後、乾燥することが好ましい。
グラフト重合により得られたアニオン交換性の官能基を有するイオン透過膜の重量グラフト率は、好ましくは5%〜150%であり、より好ましくは10%〜100%である。なお、本明細書において重量グラフト率とは、(グラフト重合後の基材の重量−グラフト重合前の基材の重量)/(グラフト重合前の基材の重量)×100で算出される値をいう。
本発明の電解用隔膜が、イオン透過膜と補強体とを備える場合、イオン透過膜を構成する基材に対するグラフト処理は、イオン透過膜を構成する基材と補強体(または補強体を構成する基材)とを積層した後に行ってもよく、イオン透過膜と補強体とを積層する前に行ってもよい。好ましくは、イオン透過膜を構成する基材と補強体(または補強体を構成する基材)とを積層した後に、グラフト処理が行われる。イオン透過膜を構成する基材と補強体を構成する基材とを積層した後にグラフト処理が行われる場合、両基材に対して同時にグラフト処理が行われ得る。このように両基材に対して同時にグラフト処理を行えば、イオン透過性に優れ、アルカリ水に対して高い濡れ性を示す電解用隔膜を得ることができる。両基材に対して、同時にグラフト処理が行われる場合、電解用隔膜の重量グラフト率は、好ましくは5%〜150%であり、より好ましくは10%〜100%である。
C.補強体
上記補強体は、多孔性である。多孔性の補強体の形態としては、例えば、織布、不織布、ネット、メッシュ、焼結多孔膜等が挙げられる。好ましくは焼結多孔膜である。焼結多孔膜であれば、強度およびイオン透過性が顕著に優れる。焼結多孔膜を得る方法としては、例えば、特開平2−214647号公報に記載された焼結法が挙げられる。
上記補強体の孔径は、上記イオン透過膜の孔径よりも大きい。補強体の孔の大きさは通気度により間接的に評価され得る(より詳細には、孔の大きさと厚みとが通気度に影響する)。上記補強体の通気度は、好ましくは1cm/cm・秒以上であり、より好ましくは3cm/cm・秒以上であり、さらに好ましくは5cm/cm・秒以上である。このような範囲であれば、イオン透過性に優れる電解用膈膜を得ることができる。上記補強体の通気度の上限は、例えば、500cm/cm・秒である。通気度が500cm/cm・秒以上を超えると、補強体の強度が低下するおそれがある。なお、本明細書において通気度は、JIS L 1096 8.26 I Aに基づくフラジール法評価により測定することができる。
上記補強体の気孔率は、好ましくは10%〜90%であり、より好ましくは10%〜55%であり、さらに好ましくは10%〜50%である。なお、補強体の気孔率とは、{1−(補強体の見掛け密度/補強体を構成する材料の真比重)}×100の式で算出される値をいう。
上記補強体の厚みは、好ましくは10μm〜1000μmであり、より好ましくは30μm〜500μmであり、さらに好ましくは50μm〜200μmである。このような範囲であれば、補強体として十分な強度を有し、かつ、電極の短絡を防止することができる。
上記補強体を構成する材料としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な材料が用いられ得る。上記多孔性補強体を構成する材料としては、例えば、親水性官能基を有するポリマーが挙げられ、好ましくはアニオン交換性の官能基を有するポリマーが挙げられる。アニオン交換性の官能基を有するポリマーとしては、上記B項で説明したポリマーが挙げられる。なかでも、骨格となる樹脂として超高分子量ポリエチレンを用いたポリマーが好ましく用いられ得る。補強体においては、該ポリマーが、アニオン交換性の官能基として、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミノ基、アミド基またはシアノ基を有することが好ましい。
上記補強体においてのアニオン交換性の官能基の導入は、上記B項で説明したような方法により行うことができる。すなわち、上記補強体においても、アニオン交換性の官能基の導入は、グラフト重合法により行うことが好ましく、放射線グラフト重合法により行うことが好ましい。補強体を構成する基材に対するグラフト処理は、イオン透過膜(またはイオン透過膜を構成する基材)と補強体を構成する基材とを積層した後に行ってもよく、イオン透過膜と補強体とを積層する前に行ってもよい。好ましくは、イオン透過膜(またはイオン透過膜を構成する基材)と補強体を構成する基材とを積層した後に、グラフト処理が行われる。イオン透過膜を構成する基材と補強体を構成する基材とを積層した後にグラフト処理が行われる場合、両基材に対して同時にグラフト処理が行われ得る。
上記補強体の作製に用いられる基材の通気度は、好ましくは1cm/cm・秒以上であり、より好ましくは3cm/cm・秒以上であり、さらに好ましくは5cm/cm・秒以上である。このような範囲であれば、イオン透過性に優れる電解用膈膜を得ることができる。上記補強体の通気度の上限は、例えば、500cm/cm・秒である。
上記補強体の作製に用いられる基材の形態としては、例えば、織布、不織布、ネット、メッシュ、焼結多孔膜等が挙げられる。
上記補強体においては、基材(グラフト重合前の補強体)の気孔率は、好ましくは10%〜95%であり、より好ましくは15%〜90%であり、さらに好ましくは15%〜75%であり、特に好ましくは15%〜70%である。このような範囲であれば、イオン透過性に優れ、かつ、電極の短絡防止性能に優れる補強体を得ることができる。なお、本明細書において、基材(グラフト重合前の補強体)の気孔率とは、{1−(基材の見掛け密度/基材を構成する材料の真比重)}×100の式で算出される値をいう。
グラフト重合により得られたアニオン交換性の官能基を有する補強体の、重量グラフト率は、好ましくは5%〜150%であり、より好ましくは10%〜100%である。
上記のように、本発明の電解用隔膜は、イオン透過性に優れ、使用時の面積変化率が小さく、アルカリ水溶液に対して高い濡れ性を有して電圧上昇を抑制することができる。このような電解用隔膜は、水素製造用電気化学セルに好適に用いられ得る。本発明の別の局面によれば、上記電解用隔膜を用いた水素製造用電気化学セルが提供され得る。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
(1)厚みの測定
厚みはデジタルアップライトゲージR1−205(尾崎製作所社製;測定子:Φ5mm、測定力:1.1N以下)を使用した。特に断りがない場合は、25℃±2℃、65±20%RHでの測定値である。
(2)平均孔経の測定
実施例および比較例で用いた基材の平均孔径は、水銀圧入装置を用いた水銀圧入法により求めた。
(3)通気度
実施例および比較例で用いた基材の通気度は、JIS L 1096 8.26 I A法に基づくフラジール法に準じて測定した。
(4)水酸化カリウム水溶液に対する濡れ性
80℃に維持された濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液中に、電解用隔膜を100時間浸漬した。その後、電解用隔膜を引き上げ、残存した水酸化カリウム水溶液を十分に洗浄、除去した後、乾燥させた。次いで、電解用隔膜の一方の面(裏面)にpH試験紙(アズワン社製、品番「1−1745−01」)をあてておき、他方の面(表面)から濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液1滴(約50mg)を滴下した。滴下して1分間経過した後、該水酸化カリウム水溶液が裏面まで到り、pH試験紙が変色した場合は、濡れ性ありと判断した。
(5)面積変化率
所定の面積に裁断した電解用隔膜を温度25℃/湿度60%の環境下に置き、12時間経過した後の該電解用隔膜の面積をSとし、また、同サンプルを、60℃の純水中に浸漬し、3時間経過した後の該電解用隔膜の面積をSとして、下記式により、面積変化率を算出した。
面積変化率(%)=((S−S)/S)×100
なお、純水に浸漬した場合の面積変化は、アルカリ水に浸漬した場合の面積変化と相関がある。また、純水に浸漬した場合の面積変化は、アルカリ水に浸漬した場合の面積変化よりも顕著である。したがって、上記のように純水を用いて測定した面積変化率は、アルカリ水に浸漬した場合の面積変化の好ましい指標となる。
(6)電気抵抗
実施例および比較例で得られた電解用隔膜の電気抵抗を、JIS C 2313に準じて測定した。電解液は、濃度40重量%の水酸化カリウム水溶液を用いた。電極としては、白金板を用いた。測定時の液温は25℃に設定した。測定は、電解用隔膜を電解液に10分間浸漬させた後に行った。
(7)アルカリ水電解評価
実施例および比較例で得られた電解用隔膜のアルカリ水電解評価は、アクリル樹脂製のH型セルを用いて行った。電解液は、濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液を用い、電極としては、Ni電極を用いた。測定時の液温は25℃に設定した。電流密度を0.2A/cmとし、定電流を1時間連続して印加した時の電圧を測定し、測定開始から50分後〜1時間後における測定値の平均値により、アルカリ水電解評価を行った。測定は、電解用隔膜を電解液に10分間浸漬させた後に行った。
(8)ガス遮断性
上記(7)におけるアルカリ水電解を開始して1時間後にカソード側に発生したガスを回収し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社社製、商品名「GC−8A」)によりカソード側に発生したガスの水素純度を測定することにより、ガス遮断性を評価した。表1中、該水素純度が99.9%以上である場合を○、99.9%未満である場合を×とする。
(9)平滑性
実施例および比較例で得られた電解用隔膜において無作為に選んだ9点の厚みを測定し、該厚みの平均値に対する、最厚部の厚さと最薄部の厚さとの差の割合で平滑性を評価した。表1中、最厚部の厚さと最薄部の厚さとの差が、(厚み平均値×30%)以下の場合を○、(厚み平均値×30%)より大きい場合を×とした。
[実施例1]電解用隔膜A(イオン透過膜1枚構成)の作製
粘度平均分子量が120万の超高分子量ポリエチレンからなる二軸延伸された微多孔性の基材1に(東電化日東(上海)電能源社製、商品名:FIBR0SS、厚さ:16μm、平均孔径:0.08μm)に、45kGyの電子線を照射することで、フリーラジカルを生成させた。電子線照射後、−70℃にて保管を行った。
次いで、セパラブルフラスコにメタクリル酸(和光純薬工業社製)250gと、メタノール(和光純薬工業社製)250gとを投入して混合液を調製し、温度を25℃に保ったまま窒素ガスによるバブリングを1時間行うことで、混合液に残存している酸素を除去した。
該混合液に、上記の電子線を照射した基材1を投入し、液温を55℃まで昇温させ、液温を55℃に維持させながら、4分間重合処理を行い、基材1にメタクリル酸をグラフト重合させた(重量グラフト率:32%)。
次いで、グラフト重合させた基材1を、液温を60℃に保った濃度10重量%の水酸化カリウム(和光純薬工業社製)水溶液に1時間浸漬して、グラフト鎖部分をカリウム塩とした。その後、該基材1を引き上げて、水洗して余分な水酸化カリウムを洗い流した後、表面部分の水分を除き、イオン透過性を有する微多孔のイオン透過膜1aからなる電解用隔膜Aを得た。
得られた電解用隔膜Aを、上記評価(4)〜(9)に供した。評価結果を表1に示す。
[実施例2]電解用隔膜B(イオン透過膜1枚構成)の作製
グラフト重合における重合処理時間4分間を、5分間に変えた以外は、実施例1と同様にして、イオン透過膜1b(重量グラフト率:42%)からなる電解用隔膜Bを得た。得られた電解用隔膜Bを、上記評価(4)〜(9)に供した。評価結果を表1に示す。
[実施例3]電解用隔膜C(イオン透過膜1枚構成)の作製
メタクリル酸に代えてアクリルアミド(和光純薬工業社製)を用い、グラフト重合における重合温度(重合液の温度)55℃を60℃に変え、グラフト重合における重合処理時間4分間を5分間に変えた以外は、実施例1と同様にしてイオン透過膜2a(重量グラフト率:51%)からなる電解用隔膜Cを得た。得られた電解用隔膜Cを、上記評価(4)〜(9)に供した。評価結果を表1に示す。
[実施例4]電解用隔膜D(イオン透過膜1枚構成)の作製
メタクリル酸に代えてアクリルアミド(和光純薬工業社製)を用い、グラフト重合における重合温度(重合液の温度)55℃を60℃に変え、グラフト重合における重合処理時間4分間を8分間に変えた以外は、実施例1と同様にしてイオン透過膜2b(重量グラフト率:79%)からなる電解用隔膜Dを得た。得られた電解用隔膜Dを、上記評価(4)〜(9)に供した。評価結果を表1に示す。
[実施例5]電解用隔膜E(補強体1/イオン透過膜1c/補強体1)の作製
実施例1で用いた基材1と、補強体を構成するための湿式不織布1(廣瀬製紙社製、商品名:HOP−15H、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造、厚さ:84μm、通気量:345cm/cm・秒)とを、湿式不織布1/基材1/湿式不織布1となるように、150℃に加熱された熱ロール機を用いて熱溶着し、三層積層基材Iを得た。
次いで、該基材Iに、45kGyの電子線を照射することで、フリーラジカルを生成させた。照射後、−70℃にて保管を行った。
次いで、セパラブルフラスコにメタクリル酸(和光純薬工業社製)250gと、メタノール250gとを投入して混合液を調製し、温度を25℃に保ったまま窒素ガスによるバブリングを1時間行うことで、混合液に残存している酸素を除去した。
該混合液に、上記の電子線を照射した基材Iを投入し、液温を55℃まで昇温させ、液温を55℃に維持させながら、7分間重合処理を行い、基材Iにメタクリル酸をグラフト重合させた (重量グラフト率:72%)。
次いで、グラフト重合させた基材Iを、液温を60℃に保った濃度10重量%の水酸化カリウム(和光純薬工業社製)水溶液に1時間浸漬して、グラフト鎖部分をカリウム塩とした。その後、該基材Iを引き上げて、水洗して余分な水酸化カリウムを洗い流した後、表面部分の水分を除き、イオン透過性を有する微多孔のイオン透過膜1cと多孔性の補強体1からなる電解用隔膜Eを得た。
得られた電解用隔膜Eを、上記評価(4)〜(9)に供した。評価結果を表1に示す。
[実施例6]電解用隔膜F(補強体2/イオン透過膜1d/補強体2)の作製
湿式不織布1に代えて、超高分子量ポリエチレンからなる焼結多孔膜1(日東電工社製、商品名:サンマップ、厚さ:100μm、通気量:16cm/cm・秒)を用い、160℃に加熱された熱ロール機を用いた以外は、実施例5と同様にして、電解用隔膜Fを得た(補強体2/イオン透過膜1d/補強体2、重量グラフト率:54%)。得られた電解用隔膜Fを、上記評価(4)〜(9)に供した。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
イオン透過膜として、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体から構成される無孔性のイオン透過膜C1(デュポン社製、商品名:ナフィオン212CS、厚さ:50μm)を用い、該イオン透過膜C1から構成される電解用隔膜(イオン透過膜1枚構成)を得た。この電解用隔膜を、上記評価(4)〜(9)に供した。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
無孔性のポリエチレンフィルムに100kGyの電子線照射による架橋処理を施して得られた架橋ポリエチレンフィルム(厚さ30μm)に75kGyの電子線を照射し、フリーラジカルを生成した。次いで、このフリーラジカルが生成した架橋ポリエチレンフィルムを液温が70℃に維持されたメタクリル酸(和光純薬社製)のメタノール溶液(濃度:60重量%)に2時間浸漬し、上記架橋ポリエチレンフィルムにメタクリル酸をグラフト重合(重量グラフト率:41%)させた。次いで、グラフト重合させた架橋ポリエチレンフィルムを、60℃に維持した濃度10重量%の水酸化カリウム(和光純薬製)水溶液に1時間浸漬してグラフト鎖部分をカリウム塩とした。その後、フィルムを引き上げ、水洗して余分な水酸化カリウムを洗い流しながした後、表面部分の水分を除き、イオン透過膜C2からなる電解用隔膜を得た。この電解用隔膜を、上記評価(4)〜(9)に供した。評価結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1で用いた微多孔性の基材1(東電化日東(上海)電能源社製、商品名:FIBR0SS、厚さ:16μm、平均孔径:0.08μm)をそのまま電解用隔膜として用いた。この電解用隔膜を、上記評価(4)〜(9)に供した。評価結果を表1に示す。
[比較例4]
初めに1−メチル−2−ピロリドン(和光純薬社製)30gと、フッ化カルシウム(和光純薬社製)12gとを混合してホモミキサーで十分に撹拌した。ここにポリスルホン(BASF社製、商品名「ULTRASON S6010」)4g、を添加して60℃に加温し、再度十分に撹拌、溶解した後、脱泡して懸濁液を調製した。
200メッシュ、厚み190μmのポリエチレン網(ニップ(ポリエチレン)強力網、NBC社製)を、伸長状態で、底面に設置した10cm×10cmのガラス製の枠体上に、上記懸濁液10mlを流し込んだ。その後、懸濁液を流し込んだ枠体ごと25℃の純水中に浸漬し、室温で10分間放置して1−メチル−2−ピロリドンを抽出した。その後、凝固したシート状物を枠体より剥離し、さらに25℃の純水中で30分間洗浄し、25℃で風乾後、80℃の乾燥機で30分間乾燥し、シート状のイオン透過膜C3を得た。得られたイオン透過膜C3を、上記評価(4)および(9)に供した。結果を表1に示す。なお、このイオン透過膜C3は、表面に凹凸が多く見られ、膜厚みが300μm〜1500μmとばらついており、面積変化率、電気抵抗、アルカリ水電解評価およびガス遮断性の評価はできなかった。
[比較例5]
初めに1−メチル−2−ピロリドン(和光純薬社製)30gと、フッ化カルシウム(和光純薬社製)24gとを混合してホモミキサーで十分に撹拌した。ここにポリスルホン(BASF社製、商品名「ULTRASON S6010」)8g、を添加して60℃に加温し、再度十分に撹拌、溶解した後、脱泡して懸濁液を調製した。
次いで、ガラス板にベーカー式アプリケータを用いて、ギャップ300μmで上記懸濁液を塗布した。この上に200メッシュ、厚み190μmのポリエチレン網(ニップ(ポリエチレン)強力網、NBC社製)を載せ、ハンドローラーにて面圧を加えてメッシュに懸濁液を十分に浸みこませた。その後、同じ様にベーカー式アプリケータを用いて、ギャップ400μmで再度上記懸濁液を塗布した。その後、ガラス板ごと25℃の純水中に浸漬し、室温で10分間放置して1−メチル−2−ピロリドンを抽出した。凝固したシート状物を剥離し、さらにこれを25℃の純水中で30分間洗浄し、25℃で風乾後、80℃の乾燥機で30分間乾燥し、シート状のイオン透過膜C4を得た。得られたイオン透過膜C4は、表面が平滑で、膜厚みが380μm前後で均一であった。得られたイオン透過膜C4を、上記評価(4)〜(9)に供した。評価結果を表1に示す。
Figure 2014148709
表1から明らかなように、本発明の電解用隔膜は、純水に浸漬した場合の面積変化率が小さく、電気抵抗が小さく、電圧上昇を抑制し得る。また、本発明の電解用隔膜は、ガス遮断性にも優れる。なお、無孔性のイオン透過膜からなる電解用隔膜は、面積変化率が大きく(比較例1、2)、濡れ性に劣る電解用隔膜は、電解電圧が高くなった(比較例3)。また、イオン透過膜としてアニオン交換性の官能基を有さないポリマーから構成される微多孔性の基材を用いた場合、ガス遮断性に劣る(比較例3)。
また、本発明の電解用隔膜においては、イオン透過膜(補強体を有する場合は、イオン透過膜および補強体)は、放射線グラフト重合によりアニオン交換性の官能基を導入することで、高温のアルカリ水に長時間浸漬しても、アルカリ水に対する濡れ性が維持される。
本発明の電解用隔膜は、アルカリ水電解法に用いられる隔膜として好適に用いられ得る。
10 イオン透過膜
20 補強体
100、100’ 電解用隔膜

Claims (9)

  1. イオン透過膜を備え、濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液に対して濡れ性を示す、電解用隔膜であって、
    該イオン透過膜の平均孔径が0.01μm〜20μmであり、かつ、該イオン透過膜を純水に浸漬した場合の面積変化率が20%以下である、
    電解用隔膜。
  2. 前記イオン透過膜の温度25℃/濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液を電解液としたときの電気抵抗値が、0.5Ω・cm以下である、請求項1に記載の電解用隔膜。
  3. 前記イオン透過膜が、中酸性イオン交換基、弱酸性イオン交換基、強塩基性イオン交換基、中塩基性イオン交換基または弱塩基性イオン交換基を有するポリマーから構成される、請求項1または2に記載の 電解用隔膜。
  4. 前記イオン透過膜において、前記中酸性イオン交換基、弱酸性イオン交換基、強塩基性イオン交換基、中塩基性イオン交換基または弱塩基性イオン交換基が、グラフト重合により導入されている、請求項3に記載の電解用隔膜。
  5. 前記イオン透過膜の片側または両側に配置された多孔性の補強体をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の電解用隔膜。
  6. 前記補強体が、前記イオン透過膜の両側に配置されている、請求項5に記載のアルカリ水電解用隔膜。
  7. 前記補強体が、中酸性イオン交換基、弱酸性イオン交換基、強塩基性イオン交換基、中塩基性イオン交換基または弱塩基性イオン交換基を有するポリマーから構成されている、請求項5または6に記載の電解用隔膜。
  8. 前記補強体において、前記中酸性イオン交換基、弱酸性イオン交換基、強塩基性イオン交換基、中塩基性イオン交換基または弱塩基性イオン交換基が、グラフト重合により導入されている、請求項7に記載の電解用隔膜。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の電解用隔膜を用いた、水素製造用電気化学セル。
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