以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において種々の構成を他の公知の構成に置き換えることは可能である。
《実施例1》
(1)画像形成部
図1は本発明に従う画像加熱装置を定着装置20として搭載した画像形成装置の一例である電子写真フルカラープリンタ100の概略構成を示す縦断面模式図である。まず、画像形成部の概略を説明する。
このプリンタ100は、制御回路部(制御手段:CPU)101とインターフェース102を介して通信可能に接続した外部ホスト装置103からの入力画像情報に応じて作像動作して、記録材にフルカラー画像を形成して出力することができる。記録材は、普通紙、樹脂コート紙、OHPシート、封筒、葉書等である(以下、記録紙と記す)。
外部ホスト装置103は、コンピュータ、イメージリーダー等である。制御回路部101は、外部ホスト装置103やプリンタ100のタッチパネルなどの入力装置(操作部)104と信号の授受をする。また制御回路部101は画像形成部の各種作像機器と信号の授受をし、作像シーケンス制御を司る。入力装置104はユーザーからの操作入力を制御回路部101に入力する。また、表示部105を有しプリンタ100のプリント動作状態や異常状態などを表示する。
8は無端状でフレキシブルな中間転写ベルト(以下、転写ベルトと略記する)であり、二次転写対向ローラ9とテンションロ−ラ10との間に張架されていて、ローラ9が駆動されることにより矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。11は二次転写ローラであり、上記の二次転写対向ローラ9に対して転写ベルト8を介して圧接させてある。転写ベルト8と二次転写ローラ11との当接部が二次転写部である。
1Y,1M,1C,1Bkは第1〜第4の4つの画像形成部であり、転写ベルト8の下側において転写ベルト移動方向に沿って所定の間隔をおいて一列に配置されている。各画像形成部1はレーザ露光方式の電子写真プロセス機構であり、それぞれ、矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと略記する)2を有する。
各ドラム2の周囲には、一次帯電器3、現像装置4、転写手段としての転写ローラ5、ドラムクリーナ装置6が配置されている。各転写ローラ5は転写ベルト8の内側に配置されており、転写ベルト8の下行き側ベルト部分を介して対応するドラム2に対して圧接させてある。各ドラム2と転写ベルト8との当接部が一次転写部である。7は各画像形成部1のドラム2に対するレーザ露光装置であり、与えられる画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応した発光を行うレーザ発光手段、ポリゴンミラー、反射ミラー等で構成されている。
制御回路部101は外部ホスト装置102から入力されたカラー色分解画像信号に基づいて、各画像形成部1を作像動作させる。これにより、第1〜第4の画像形成部1Y,1M,1C,1Bkにおいて、それぞれ、回転するドラム2の面に対して所定の制御タイミングで、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の色トナー像(トナー画像)が形成される。なお、ドラム2にトナー像を形成する電子写真作像原理、プロセスは公知に属するからその説明は省略する。
各画像形成部1のドラム2の面に形成される上記のトナー像はそれぞれ一次転写部にて、各ドラム2の回転方向と順方向に、かつ各ドラム2の回転速度に対応した速度で回転駆動されている転写ベルト8の外面に対して順次に重畳転写される。これにより、転写ベルト8の面に上記の4つのトナー像の重ね合わせによる未定着のフルカラートナー像が合成形成される。
一方、所定の給紙タイミングにて、それぞれ大小各種幅サイズの記録紙Pを積載収容させた上下多段のカセット給紙部13A,13B,13Cのうちの選択された段位の給紙カセットの給紙ローラ14が駆動される。これにより、その段位の給紙カセットに積載収納されている記録紙Pが1枚分離給紙されて縦搬送パス15を通ってレジストローラ16に搬送される。手差し給紙が選択されているときには、給紙ローラ18が駆動される。これにより、手差しトレイ(マルチ・パーパス・トレイ)17上に積載セットされている記録紙が1枚分離給紙されて縦搬送パス15を通ってレジストローラ16に搬送される。
レジストローラ16は、回転する転写ベルト8上の上記のフルカラートナー像の先端が二次転写部に到達するタイミングに合わせて記録紙Pの先端部が二次転写部に到達するように記録紙Pをタイミング搬送する。これにより、二次転写部において、転写ベルト8上のフルカラーのトナー像が一括して記録紙Pの面に順次に二次転写されていく。
二次転写部を出た記録紙Pは、転写ベルト8の面から分離され、縦ガイド19に案内されて、定着装置(定着器)20に導入される。この定着装置20により、上記の複数色のトナー像が溶融混色されて記録紙表面に固着像として定着される。定着装置20を出た記録紙Pはフルカラー画像形成物として搬送パス21を通って排紙ローラ22により排紙トレイ23上に送り出される。二次転写部にて記録紙分離後の転写ベルト8の面はベルトクリーニング装置12により二次転写残トナー等の残留付着物の除去を受けて清掃され、繰り返して作像に供される。
モノ黒プリントモードの場合には、ブラックトナー像を形成する第4の画像形成部1Bkのみが作像動作制御される。
両面プリントモードが選択されている場合には、第1面プリント済みの記録紙Pが排紙ローラ22により排紙トレイ23上に送り出されていき、後端部が排紙ローラ22を通過する直前時点で排紙ローラ22の回転が逆転に変換される。これにより、記録紙Pはスイッチバックされて再搬送パス24に導入される。そして、表裏反転状態になって再びレジストローラ16に搬送される。以後は、第1面プリント時と同様に、二次転写部、定着装置20に搬送されて、両面プリント画像形成物として排紙トレイ23上に送り出される。
(2)定着装置20
図2、図3、図4は、それぞれ、本実施例1における定着装置20の要部の拡大横断右側面模式図、正面模式図、縦断正面模式図である。この定着装置は、加熱機構としてセラミックヒーターを用いたベルト加熱方式−加圧部材駆動方式の画像加熱装置である。
ここで、以下の説明において、画像加熱装置として機能する定着装置20またはこれを構成している部材に関して、長手方向とは定着装置20のニップ部における記録紙搬送方向(画像加熱装置における記録材搬送方向)Gに直交する方向に平行な方向である。若しくは回転体の回転軸線方向である。後述するように、定着ベルトの幅方向とも呼ぶ。短手方向とは記録紙搬送方向Gに平行な方向である。若しくは回転体の回転軸線方向に直交する方向である。定着ベルトの移動方向(周方向)とも呼ぶ。
また、定着装置20について、正面とは記録紙入り口部側の面、背面とはそれとは反対側の記録紙出口部側の面、左右とは装置20を正面から見て左又は右である。上流又は下流とは記録紙搬送方向Gにおいて上流又は下流である。また、記録紙Pの幅とは記録紙搬送方向Gに直交する方向の寸法である。
実施例に示す画像形成装置100および定着装置20は、使用可能な最大幅サイズの記録紙はA3サイズ(297mm×420mm)であり、A3サイズ記録紙の長辺(420mm)を搬送方向と平行にして搬送(縦送り)できる。従って、使用可能な記録紙Pの最大幅サイズは297mmである。また、定着装置20における記録紙Pの搬送基準(通紙基準)は記録紙幅中心のいわゆる中央搬送基準であり、後述するヒーターに設けられた抵抗発熱体の長手方向中央になっている。しかし、本発明はA3以外の記録紙を最大幅サイズ紙とした場合でも適応可能である。
図2〜図4において、31はベルトアセンブリ、32は加圧部材(加圧回転体)としての加圧ローラ(弾性ローラ)であり、両者の圧接によりニップ部(定着ニップ部)Nを形成させている。
ベルトアセンブリ31において、33は記録紙Pに担持された画像に接触して加熱する加熱部材(定着部材)としての円筒状で可撓性を有する定着ベルト(回転体、エンドレスベルト:以下、ベルトと略記する)である。34は横断面略半円弧状樋型の耐熱性・剛性を有するベルトガイド部材(ヒーターホルダ、ヒーターステイ:以下、ガイド部材と略記する)である。35はベルト33を加熱する加熱機構(加熱源、加熱体)としての、通電により発熱するヒーターである。このヒーター35の具体的な構成については(3)項で詳述する。
ヒーター35はガイド部材34の外面に該部材34の長手方向に沿って設けた凹溝部に嵌め入れて固定的に配設されている。ベルト33はヒーター35を取り付けたガイド部材34に対してルーズに外嵌されている。ガイド部材34はヒーター35を保持するとともに、ベルト33の回転をガイドする役割を果たしており、耐熱性の高い液晶ポリマー樹脂で形成されている。本実施例1では、液晶ポリマーとして、デュポン社のゼナイト7755(商品名)を使用した。
36は横断面コ字型の剛性加圧ステイ(逆U字型の補強板金:以下、ステイと略記する)であり、ガイド部材34の内側に配設されている。37はステイ36の左右両端部の外方突出腕部36aにそれぞれ嵌着した端部ホルダ、37aはこの端部ホルダ37と一体のフランジ部である。
ベルト33は、ステンレスを厚み30μmの円筒状に形成した円筒状の基材上に、厚み約300μmのシリコーンゴム層(弾性層)をリングコート法により形成されている。さらに、その上に、厚み20μmのPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)樹脂チューブが最表面層としてシリコーンゴムからなる接着剤により被覆された構造となっている。なお、本実施例1におけるベルト33は温度が210℃に達すると接着層の軟化による接着力の低下が発生するため、弾性層からPFA樹脂チュが剥がれ、ベルトの破損が発生する。
加圧ローラ32は、ステンレス製の芯金32a上に、厚み約3mmのシリコーンゴム層32bを同心一体に設けて硬度を下げ、更にその外周に厚み約40μmのPFA樹脂チューブ32cが積層された弾性ローラである。加圧ローラ32は芯金32aの両端部が装置フレーム(シャーシー:不図示)の左右の側板間に軸受部材(不図示)を介して回転可能に軸受保持されて配設されている。
上記の加圧ローラ32に対してベルトアセンブリ31がヒーター35側を対向させて平行に配列され、左右の端部ホルダ37と左右の固定のばね受け部材39との間に加圧ばね(加圧手段)40が縮設されている。これにより、ベルトアセンブリ31側のステイ36、ガイド部材34、ヒーター35が加圧ローラ32側に押圧付勢されている。
押圧付勢力を所定に設定して(例えば、総圧90〜320N)、ヒーター35を、ベルト33を挟んで加圧ローラ32に対して弾性層32bの弾性に抗して圧接させる。これにより、ベルト33と加圧ローラ32との間に記録紙搬送方向Gにおいて所定幅のニップ部Nを形成させている。本実施例1においては、ステイ36の両端部は、一端側が156.8(16kgf)、総圧313.6N(32kgf)の力で加圧ローラ32の軸線方向に付勢されている。ステイ36はベルトアセンブリ31と加圧ローラ32との加圧によるベルトアセンブリ31の変形を抑制している。
加圧ローラ32は制御回路部101で制御されるモータ(駆動手段:駆動装置)M1により図2において矢示の時計方向R32に所定の周速度で回転駆動される。この加圧ローラ32の回転駆動による加圧ローラ32とベルト33の外面とのニップ部Nにおける摩擦力でベルト33に回転力が作用する。これにより、ベルト33が、その内面がニップ部Nにおいてヒーター35の表面に密着して摺動しつつ矢示の時計方向R33にガイド部材34の外回りを加圧ローラ32の回転周速度とほぼ同じ周速度で従動して回転する(加圧部材駆動方式)。
ベルト33の内面にはグリス(潤滑剤)が塗布されており、ガイド部材34およびヒーター35とベルト33の内面との摺動性を確保している。左右の端部ホルダ37のフランジ部37aは、回転するベルト33がガイド部材34の長手に沿って左方または右方に寄り移動したときの寄り移動側のベルト端部を受け止めて寄り移動を規制する役目をする。
プリントスタート信号に基づいて、加圧ローラ32の回転が開始され、またヒーター35に対する通電によりヒーター35のヒートアップが開始される。ベルト33の回転周速度が定常化し、またヒーター35の温度が所定に立ち上がった状態において、ニップ部Nに未定着トナー画像tを担持した記録紙Pがトナー画像担持面側をベルト33側にして縦ガイド19に案内されて導入される。
記録紙Pはニップ部Nにおいてベルト33を介してヒーター35に密着してニップ部Nをベルト33と一緒に移動通過していく。その移動通過過程においてヒーター35で加熱されるベルト33により記録紙Pに熱が付与される。また、加圧を受ける。これによりトナー画像tが記録紙P面に定着される。ニップ部Nを通過した記録紙Pはベルト33の面から曲率分離して排出搬送される。
本実施例1では、記録紙Pの搬送は幅中心のいわゆる中央搬送基準で行なわれる。すなわち、装置20に通紙使用可能(導入使用可能)な大小いかなる幅の記録紙も、記録紙の幅方向中央部がベルト33の長手方向中央部(ヒーター35における後述する抵抗発熱体620,621の長手方向中央部)を通過することになる。Sはその中央搬送基準線(仮想線)である。
W1は通紙可能な最大幅記録紙の通紙幅(最大通紙幅:導入可能最大幅)である。本実施例1の最大通紙幅W1はA3サイズ幅297mm(A3縦送り)である。ヒーター長手方向の有効発熱領域(ヒーター35がベルト33を加熱する加熱領域)の長さYは最大通紙幅W1よりも少し大きく設定してある。W3は装置に通紙可能な最小幅記録紙の通紙幅(最小通紙幅:導入可能最小幅)である。
本実施例1において、この最小通紙幅W3はA4縦サイズ幅210mm(A4縦送り)である。W2は上記の最大幅記録紙と最小幅記録紙の間の幅の記録紙の通紙幅である。本実施例において、通紙幅W2はB4縦サイズ幅257mm(B4縦送り)を示した。
以下、最大通紙幅W1に対応する幅サイズの記録紙を最大サイズ記録紙、この記録紙よりも幅の小さい記録紙を小サイズ記録紙と記す。
aは最大通紙幅W1と通紙幅W2との差幅部((W1−W2)/2)、bは最大通紙幅W1と最小通紙幅W3との差幅部((W1−W3)/2)である。本実施例においては記録紙通紙が中央搬送基準であるから非通紙部(非通過部)aとbはそれぞれ通紙幅(通過部)W2の左右両側部、通紙幅(導入部)W3の左右両側部に生じる。この非通紙部の幅は通紙使用される小サイズ記録紙の幅の大小により種々異なる。
THは温度センサ(温度検知素子:以下、サーミスタと記す)であり、最小通紙幅W3に対応する領域のヒーター温度(=通紙部温度)を検出する。このサーミスタTHはヒーター35の裏面側(ベルト摺動面であるヒーター表面側とは反対側の面)においてヒーター長手方向のほぼ中央部に設置されている。なお、サーミスタTHは、通紙部W3に対応するベルト部分の基層内面に弾性的に接触させて配設してもよい。サーミスタTHはA/Dコンバータを介して制御回路部101に接続されている(図5の(a))。
制御回路部101はサーミスタTHからの出力を所定の周期でサンプリングしており、このように得られた温度情報を温度制御に反映させる構成となっている。つまり、制御回路部101はサーミスタTHの出力をもとに、ヒーター35の温調制御内容を決定し、電力供給部である制御部(ヒーター駆動回路部:通電制御手段としてのトライアック)51によって交流電源部52からヒーター35への通電を制御する。
(3)ヒーター35
図5の(a)はヒーター35の構成と制御系統を説明するための模式図、(b)は(a)の(b)−(b)線にそって切断したヒーター35の拡大断面模式図である。ヒーター35はニップ部Nにおける記録紙搬送方向Gに直交する方向を長手方向とする細長い、全体的に熱容量が小さい板状部材(線状加熱体)である。
本実施例1におけるヒーター35はいわゆるセラミックヒーターであり、絶縁性、耐熱性、低熱容量のセラミック基板610を有する。より具体的には、厚さ1.0mmの耐熱性・電気絶縁性材料で、高い熱伝導性を有するチッ化アルミニウム、アルミナ(Al2O3)などの平板短冊状の高剛性絶縁基板610を用いた、裏面加熱タイプである。
基板610の表面側(一方面側)をベルト摺動面とし、この面に摺動層623として厚さ10μm程度のポリイミド層が設けられている。このポリイミド層により、ベルト33とヒーター35との摺擦抵抗を低減することで、駆動トルクの低減およびベルト33の内面の磨耗を軽減させている。
また、基板610の裏面側(他方面側)には、通電により発熱する発熱部となるメイン抵抗発熱体(通電発熱層)620とサブ抵抗発熱体621の2本の抵抗発熱体が基板長手に沿って間隔をあけて平行に形成さている。
また、メイン抵抗発熱体620を中にしてサブ抵抗発熱体621の側とは反対側にメイン抵抗発熱体620に対して間隔をあけて平行に基板長手に沿ってPTC特性を有するPTC抵抗体622が形成されている。PTC抵抗体622は、ベルト33の温度上昇に伴いその抵抗値が上昇する特性を備えた抵抗素子であり、チタン酸バリウム等の焼結体からなる抵抗体に電極を設けることで構成されている。基板610上に、例えば、厚さ約10μm、幅1〜5mmにスクリーン印刷等により形成し、焼成して厚膜を形成した、正の抵抗温度特性(PTC特性)をもつ自己温度制御型の抵抗体である。
本実施例1においては、ヒーター35の基板610がニップ部Nにおいてベルト33の内面に接触する対向部材である。そして、PTC抵抗体622はこの対向部材である基板610に配設されている。
メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621とPTC抵抗体622の各一端部側は互いに導体部625により電気的に接続されている。また、メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621とPTC抵抗体622の各他端部側はそれぞれ導体部626a,626b,626cを介して電極端子部627a,627b,627cに導通している。
メイン抵抗発熱体620、サブ抵抗発熱体621、PTC抵抗体622、および導体部625,626a,626b,626cの一部、は全体的にガラス質のオーバーコート層624で覆われて表面が保護されている。メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621の長手方向のほぼ中央部に対応する個所のオーバーコート層表面部分にはサーミスタTHが配設されている。
上記のヒーター35がガイド部材34の外面に該部材34の長手に沿って設けた凹溝部に対して摺動層623を設けた表面側を外向きにして嵌め込まれて固定的に支持されている。そのヒーター35の他端部側にコネクタ53が嵌着されることで、メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621の電極端子部627a,627bがそれぞれ制御部51に対して接続される。また、PTC抵抗体622の電極端子部627cが交流電源部52に接続される。サーミスタTHはA/Dコンバータを介して制御回路部101に接続されている。
制御部51は制御回路部101により制御され、メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621に対する通電比率が、使用される記録紙Pの幅に応じて切り替えられるように設定されている。制御部51は、公知の技術である位相制御、若しくは波数制御によって、メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621の通電比率を異ならせる事で、記録紙サイズにあわせた温度分布を適正化することが可能となる。
メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621は、例えば、Ag/Pd(銀パラジウム)、RuO2(酸化ルテニウム)、Ta2N(窒化タンタル)、RuO2等の電気抵抗材料である。この電気抵抗材料が基板610の面に例えば厚み約10μmで線状もしくは細帯状にスクリーン印刷等によりパターン形成されてメイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621が形成される。
メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621は特開平10−177319号公報に記載の公知技術と同じように長手方向の発熱分布が互いに異なっている。本実施例1においては、メイン抵抗発熱体620は長手方向の発熱分布が小サイズ記録紙に対応して中央高配熱となっている。サブ抵抗発熱体621は長手方向の発熱分布が逆に端部高配熱となっている。図6はメイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621の長手位置による発熱分布を示す図であり、実線がメイン抵抗発熱体620の発熱分布、破線がサブ抵抗発熱体621の発熱分布を示す。
PTC抵抗体622は、チタン酸バリウムに希土類金属酸化物を加えた材料から成形され、キュリー温度を有する。即ち、特開平5−19652号公報に記載の公知技術の様に、正の抵抗温度特性(PTC特性)をもつ自己温度制御型の発熱体であり、例えばチタン酸バリウム等に微少量の希土類を添加した焼成成形体などが挙げられる。
PTC特性とは、あるキュリー温度(閾値温度)以上で抵抗値が2桁以上上昇する特性で定義される。図7はPTC材料の温度−抵抗値特性を示しており、チタン酸バリウムに添加する微少量の希土類を調整することで、所定の温度(スイッチング温度)でその抵抗値が急激に上昇する温度(キュリー温度)が変化する。
本実施例1では図7の線AFで示す特性のPTC材料を用いている。キュリー温度は約240℃である。通常の使用時である200℃付近での比抵抗(常温の25℃環境での抵抗値に対する比率)は2×10-1程度、異常昇温として検知したい温度である260℃付近での比抵抗は2×102程度、270℃付近では1×103程度の材料を選択した。
この材料は、通常の温度(25℃〜200℃)程度での抵抗値Rnに比べて、検知したい異常昇温である260℃以上では抵抗値Reが2桁以上高くなっている。また異常昇温が発生している幅として検知したい長さ(幅)Xeは、PTC抵抗体622の全長(全幅)Xに対して1/100程度である3mm程度なので、異常昇温による抵抗上昇値が、PTC抵抗体622の抵抗値として検知可能な値となる。
本実施例1では、PTC抵抗体622の全長X=300mmに対して検知したい異常昇温長さとしてXe=3mm程度を検知したいので、X/Xe=100となる。そのため、上記の様に通常時の比抵抗Rnに対して、異常時の比抵抗Reが100倍以上となる特性をもつPTC抵抗体622を用いたが、検知したい幅がもっと広くてもよい場合には、Re/Rnが小さい特性のPTC材料を用いてもよい。
すなわちPTC抵抗体622の温度−抵抗値特性としては、通常の温度での抵抗値と、異常温度として検知したい温度での抵抗値との比が、PTC抵抗体622の全長Xに対する、検知したい異常昇温の幅の比率であることが望ましい。つまり上記のRn,Re,X,Xeを用いるとX/Xe≦Re/Rnである温度−抵抗値特性をもったPTC抵抗体622である事が望ましい。
即ち、PTC抵抗体622に関して、その全長をXとする。閾値温度(キュリー温度)よりも低温状態の抵抗値をRnとする。閾値温度以上の温度であってあらかじめ設定した検知したい温度での抵抗値をReとする。閾値温度以上の温度であってあらかじめ設定した検知温度以上になっている部分の長さをXeとする。この場合において、PTC抵抗体622は、X/Xe≦Re/Rn、の温度−抵抗値特性をもつものである事が望ましい。
導体部625、626a、626b、626cは、例えば銀(Ag)、銀・プラチナ合金(Ag/Pt)、金(Au)、プラチナ(Pt)などの良導電性金属を混練したペーストを基板610の面にスクリーン印刷し、焼成して厚膜を形成してある。導体部625、626a、626b、626cは、抵抗発熱体620,621とPTC抵抗体622の両端と、外部の電気回路と接点となる電極端子部と電気的に接続するために形成する。導体部625、626a、626b、626cは抵抗値が低いので発熱量は極端に小さい。
電極端子部627a,627b,627cも導体部625、626a、626b、626cと同材料で形成されている。
PTC抵抗体622と抵抗発熱体620,621は図5の(a)で示すように、導体部625を介して直列に接続されており、PTC低抗体622の抵抗値が高い状態と低い状態では、抵抗発熱体620,621の電圧降下が大きく異なる。そのため、抵抗発熱体620,621での発熱量が異なってくる。
また、PTC抵抗体622とヒーター35は、PTC抵抗体622の長さXとヒーター35のベルト33を加熱する加熱領域の長さY(抵抗発熱体620,621の長さ)がY≦Xの関係となるように配置されている。即ち、ヒーター35の長手方向において、PTC抵抗体622はヒーター35のベルト33を加熱する加熱領域よりも広い領域に設けられている。
本実施例1においては、PTC抵抗体622の長さX(本実施例では300mm)は、ヒーター35の抵抗発熱体620,621の長さY(本実施例では298mm=加熱領域)以上の長さ(幅)としてある。これにより、ヒーター35の加熱領域Yにおけるあらゆる部分的な異常発熱を検知することが可能である。
(4)異常昇温検知動作
図8にPTC抵抗体622と抵抗発熱体620,621の接続の等価回路を示す。抵抗発熱体620,621をR1,R2とし、PTC抵抗体622をR3とし、電源電圧をV0としている。
表1に、本実施例1における定常状態である200℃均一状態での各抵抗値R1、R2、R3と、並列接続されたR1,R2の合成抵抗R12と、R1,R2に直列接続されたR3の合成抵抗R123の値を示す。また、回路全体にV0=100Vを印加した場合での各々の抵抗での降下電圧Vと、その抵抗での発熱量Wを示す。
定常状態である200℃均一状態では、PTC低抗体622の抵抗値R3=0.1Ωは、R1,R2の抵抗値19.6Ωと比べて小さいので、回路全体での電圧100Vのうち殆どの電圧である99VがR1,R2で降下し、R3では1Vしか降下しない。そのため、R1,R2での発熱量は各々500Wとなり、定着に必要な熱量を得ることが可能となる。ちなみにPTC低抗体622の発熱量は10W程度である。
次に異常昇温が発生した状態に付いて説明する。ヒーター35の一部が異常昇温である270℃付近となり、それ以外に部分は200℃の状態で均一な状態だったとする。これは、PTC低抗体622が部分的に抵抗値が高い部分と、低い部分に分かれて直列に接続されている事に対応する。
図9は270℃の異常昇温になっている幅と、その状態でヒーター全体R123で発熱する発熱量W(左側の軸)と、その時に回路に流れる電流値A(右側軸)の関係を示している。図9では発熱量Wと電流値Aが一つに重なっており、右と左の軸で発熱量Wと電流値Aを読み取ることができる。異常昇温の幅が広がってくると、ヒーター35の発熱量Wが低下し、同時に電流値Aが下がっていくことがわかる。これは回路全体の合成抵抗R123が、PTC低抗体622の抵抗上昇によって上昇し、その結果電流が流にくくなり、発熱量が低下している事を示している。
本実施例1では制御部51に内蔵されている電流検知手段511によって、ヒーター35に投入されている電流量Aを検知し、所定の値以下(8A以下:あらかじめ設定された抵抗値)となった場合には制御回路部101が異常状態とし判断している。本実施例1においては、上記の電流検知手段511が、PTC抵抗体622の抵抗値に対応する情報を検出する検出機構である。そしては予め設定された電流値を検知すると制御回路部101にフィードバックする。
図10に本実施例1における制御系統のブロック図、図11に画像形成動作中の制御回路部101の内部制御動作を表すフロー図をしめす。この図10と図11を用いて、異常昇温の検知動作を説明する。
S001:画像形成が開始され、定着動作を開始する。
S002:指定された記録紙Pの種類によって、ヒーター35の目標温度を設定する。
S003:指定された記録紙Pのサイズによって、メインとサブの抵抗発熱体620,621の通電比率を決定する。
S004:ヒーター35の制御定数が決定した後に、ヒーター35への電力ON指令を出す。制御部51は交流電源部52からの電力をヒーター35に投入し、定着可能状態となる。サーミスタTHはヒーター35の温度を検知し、ヒーター35が目標温度に到達すると画像形成部の画像形成動作が開始されてプリント状態となる。プリント中はサーミスタTHの温度が所定の値となるように電力を制御する。
S005:もしプリント中にヒーター35の電流検知手段511(図5の(a))が電流低下を検知がなければ、通常の定着状態であり(S006)となり、電流量が8A以下を検知すると(S009)へすすむ。
S006:異常がなく所定枚数の出力が終了したかを判断する。
S007:所定枚数の出力が終了したら、制御部51に電力OFF指令をだす。
S008:画像形成部の動作を停止し、プリント終了となる。
S009:電流量が8A以下(所定電流値以下)を検知すると異常昇温と判断し、制御部51に電力OFF指令をだす。また、画像形成部の画像形成動作をストップ(緊急停止)させる。即ち、制御回路部101は電流検知手段511が検知する電流値が所定値以下の場合、定着装置20の少なくとも一部が異常に高温な状態であると判断する。
S010:画像形成装置100の入力装置104の表示部105に定着装置20の異常をしらせる警告表示をだす。或いはホスト装置103の表示部に定着装置20の異常をしらせる警告表示をだす。
本実施例1では、8A以下の電流低下を検知して異常昇温を検知しているので、図9が示すように2mm程度の異常昇温を検知することが可能である。そのため、ほとんどの記録紙Pのサイズ(幅サイズ)の設定ミスによる異常昇温を検知することが可能である。
本実施例1で実際にヒーター35の昇温状態を想定し、A4横サイズ(幅297mm)の設定で、LTR横サイズ(幅280mm)の記録紙を連続出力したところ、異常状態を検知し画像形成動作をストップすることが確認できた。
同じ出力モードで、異常昇温検知を行わずに連続プリントを行った。この場合は、記録紙サイズが一致していない事による部分的な異常昇温によって、ベルト33の表面の一部が260℃以上に異常昇温してしまい、ベルト33が破損する恐れがあるので緊急停止した。
異常昇温の幅(長さ)が2mm以下の場合には、ヒーター35の基板610自体とベルト33の長手の熱伝導、ヒーター35とベルト33との間の熱抵抗、ベルト33内の熱拡散によりベルト33が破損する加熱幅では無くなり問題ではない。
なお、本実施例1のヒーター35について、メインおよびサブの抵抗発熱体620,621と、PTC低抗体622とに関し、その両方を基板610の表面側に配設した形態にすることもできる。あるいは一方を基板610の表面側に他方を裏面側に配設した形態にすることもできる。
以上のように、本実施例1の定着装置20は、セラミックヒーター基板610にPTC抵抗体(PTC抵抗素子)を併設する。ヒーター35の長手方向の一部が異常昇温してしまった際(例えば、小サイズ記録紙の連続通紙時の非通紙部昇温)に、PTC抵抗体の抵抗値が上昇することを利用(検知)理由して、定着装置の異常昇温を判断するものである。これにより、温度センサ(サーミスタ)を多数設けずに済む。
《実施例2》
実施例2の定着装置について説明する。実施例1の定着装置20と共通する構成部材・部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。以下、主として、実施例1の定着装置20とは異なる構成部材・部分について説明する。画像形成装置の構成は実施例1と同様である。
(1)ヒーター35
図12は本実施例2におけるヒーター35の構成と制御系統の模式図である。メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621の各一端部側は互いに導体部628aで電気的に接続されるとともに電極端子部629aに導通している。メイン抵抗発熱体620は実施例1と同様に長手方向の発熱分布が小サイズ記録紙に対応して中央高配熱となっている。サブ抵抗発熱体621も実施例1と同様に長手方向の発熱分布が逆に端部高配熱となっている。
PTC抵抗体622の一端部側は導体部628bを介して電極端子部629bに導通している。ヒーター35の他端部側の構成は実施例1のヒーター35と同じである。
ヒーター35の一端部側にコネクタ54が嵌着されることで、メイン抵抗発熱体620およびサブ抵抗発熱体621の一端部側の電極端子部629aが制御部51に対して接続される。また、PTC抵抗体622の一端部側の電極端子部629bが抵抗検知手段(抵抗検知部:抵抗値算出回路)640に対して接続される。
一方、ヒーター35の他端部側にコネクタ53が嵌着されることで、メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621の電極端子部627a,627bがそれぞれ制御部51に対して接続される。また、PTC抵抗体622の電極端子部627cが抵抗検知手段640に対して接続される。
抵抗検知手段640はPTC抵抗体622の両端部間の抵抗値を検知する。本実施例2においては、上記の抵抗検知手段640が、PTC抵抗体622の抵抗値に対応する情報を検出する検出機構である。抵抗検知手段640はあらかじめ設定された抵抗値を検知すると制御回路部101にフィードバックする。
本実施例2のヒーター35の構成は実施例1の図5のヒーター35の構成との対比において次の点で異なる。即ち、実施例1のヒーター構成においてはPTC抵抗体622が抵抗発熱体620,621に直列に接続しているのに対して、本実施例2においてはPTC抵抗体622は抵抗発熱体620,621とは直列に接続されず、抵抗検知手段640と接続されている。
PTC抵抗体622は、実施例1と同様に、ヒーター35の加熱領域の長さ(抵抗発熱体620,621の長さ)Yよりも同等以上の長さXである300mmとしてある。これにより、ヒーター35の加熱領域におけるあらゆる部分的な異常発熱を検知することが可能である。
PTC抵抗体622は、実施例1と同じく図7のAFの特性を示す材料を使用した。そのため本実施例2においても通常の温度(25℃〜200℃)程度での抵抗(Rn)に比べて、検知したい異常昇温である260℃以上では、抵抗値(Re)が2桁以上高くなっている。また異常昇温が発生している幅として検知したい長さ(Xe)は、PTC抵抗体622の全長(X)に対して1/100程度である3mm程度なので、異常昇温による抵抗上昇値が、PTC抵抗体622の抵抗値として検知可能な値となる。
本実施例2では、実施例1とは異なり、PTC抵抗体622の抵抗値は大きくすることが可能であるので、300mm全域の温度が200℃均一の状態で、抵抗値60Ωとした。この時、図7のAFの特性から、200℃における比抵抗0.2に対して、低温部では比抵抗が上昇傾向にある事が分かる。例えば0℃での比抵抗は1.5となっているので、0℃におけるPTC抵抗体623の抵抗値は60×(0.2/1.5)=450Ωとなる。
抵抗検知手段640はサーミスタ等の抵抗値を検知する公知の技術であり、図13に概略等価回路を示す。図13のR4はPTC抵抗体622であり、抵抗検知手段640の外部にある。DC電源は5VのDC電源であり、R4と直列接続された参照用の固定抵抗(予め設定された抵抗値の抵抗器)R5に接続される。電圧計VはR5の電圧降下を測定する手段であって、R5の電圧を測定することによって、PTC抵抗体622の抵抗値の変化を測定する手段である。
たとえばR4の抵抗値が10Ωとし、DC電源に5Vを印加すると、R5が5Vの半分である2.5VのときにR4=10Ωとなるので、閾値にしたい抵抗値と同じ抵抗値の参参照抵抗を使用し、電源の1/2の電圧を検知したときを検知すればよい。
抵抗検知手段640は図12で示すように、抵抗検知した出力を制御回路部101に返し、ヒーター35の異常昇温状態を検知する。
(2)異常昇温検知動作
図14にPTC抵抗体622が異常昇温になっている幅を横軸とし、異常昇温の温度として260℃と270℃の2水準の場合の抵抗値Ωを示している。図14の横一定の実線は、ヒーター全体が0℃均一の状態の場合のPTC抵抗体622の抵抗値である450Ωを示している。
260℃、および270℃の幅が広がってくると、PTC抵抗体622の抵抗値が上昇してくるが、0℃の抵抗値450Ω以上に異常値を設定しておけば、定着装置が低温で冷え切った状態でも異常状態を検知することがない。本実施例では異常検知の抵抗値として600Ωとし、図13の参照抵抗R5には600Ωの抵抗値を選択した。図14から600Ωとなる異常昇温幅は、260℃では約3mm程度であり、270℃では0.5mm程度の幅で異常検知することが可能になる。3mm程度の検知精度は記録紙サイズの設定やその他の部分的異常発熱として問題となる領域として十分な検知能力である。
図15に本実施例2における制御系統のブロック図、図16に画像形成動作中の制御回路部101の内部制御動作を表すフロー図をしめす。この図15と図16を用いて、異常昇温の検知動作を説明する。
S101:画像形成が開始され、定着動作を開始する。
S102:指定された記録紙Pの種類によって、ヒーター35の目標温度を設定する。
S103:指定された記録紙Pの幅サイズによって、メインとサブの抵抗発熱体620,621の通電比率を決定する。
S104:ヒーター35の制御定数が決定した後に、ヒーター35への電力ON指令を出す。制御部51は交流電源部52からの電力をヒーター35に投入し、定着可能状態となる。サーミスタTHはヒーター35の温度を検知し、ヒーター35が目標温度に到達すると画像形成部の画像形成動作が開始されてプリント状態となる。プリント中はサーミスタTHの温度が所定の値となるように電力を制御する。
S105:プリント中に抵抗検知手段640では、参照抵抗R5の電圧が2.5V以下になるかを監視しており、もし2.5V以下の場合には異常であると判断する。もし異常がなければ、通常の定着状態であり(S106)となり、異常を検知すると(S109)へすすむ。即ち、制御回路部101は電流検知手段511が検知する電流値が所定値以下の場合、定着装置20の少なくとも一部が異常に高温な状態であると判断する。即ち、制御回路部101は抵抗値検知手段640が検知する抵抗値が所定値以下の場合、定着装置20の少なくとも一部が異常に高温な状態であると判断する。
S106:異常がなく所定枚数の出力が終了したかを判断する。
S107:所定枚数の出力が終了したら、制御部51に電力OFF指令をだす。
S108:画像形成部の動作を停止し、プリント終了となる。
S109:プリント中に異常を検知すると異常昇温と判断し、制御部51に電力OFF指令をだす。また、画像形成部の画像形成動作をストップ(緊急停止)させる。
S010:画像形成装置100の入力装置104の表示部105に定着装置20の異常をしらせる警告表示をだす。或いはホスト装置103の表示部に定着装置20の異常をしらせる警告表示をだす。
本実施例2で実際にヒーター35の昇温状態を想定し、A4横サイズ(幅297mm)の設定で、LTR横サイズ(幅280mm)の記録紙を連続出力したところ、異常状態を検知し画像形成動作をストップすることが確認できた。
同じ出力モードで、異常昇温検知を行わずに連続プリントを行った。この場合は、記録紙幅サイズが一致していない事による部分的な異常昇温によって、ベルト33の表面の一部が270℃以上に異常昇温してしまった。その結果、異常昇温部近傍(記録紙両端部)で定着不良(ホットオフセット)が発生してしまった。
本実施例2も、実施例1と同様に異常昇温の幅(長さ)が2mm以下の場合には問題ではない。即ち、ヒーター35の基板610自体とベルト33の長手の熱伝導、ヒーター35とベルト33と間の熱抵抗、ベルト33内の熱拡散によりベルト33が破損する加熱幅では無くなり問題ではない。
本実施例2では一例として、プリント中の異常動作検知のみを記載したが、プリント中に限定されるのではなく、画像形成装置100の電源がONの状態の時には常に関していても問題ない。
なお、本実施例2のヒーター35についても、メインおよびサブの抵抗発熱体620,621と、PTC低抗体622とに関し、その両方を基板610の表面側に配設した形態にすることもできる。あるいは一方を基板610の表面側に他方を裏面側に配設した形態にすることもできる。
《実施例3》
実施例3の定着装置について説明する。実施例2の定着装置20と共通する構成部材・部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。以下、主として、実施例2の定着装置20とは異なる構成部材・部分について説明する。画像形成装置の構成は実施例1と同様である。
本実施例3は、実施例2の抵抗検知手段640を有するPTC抵抗体622を用いる基本構成は同じで、定着装置20の基本構成を特開2010−122450号公報で記載の誘導加熱方式を用いた定着装置に応用した例である。
図17は本実施例3で用いた定着装置20の要部の拡大横断面模式図である。この定着装置20もベルトアセンブリ31と加圧部材としての加圧ローラ32を有し、両者31,32の圧接によりニップ部(定着ニップ部)Nを形成させている。
ベルトアセンブリ31は記録紙Pに担持された画像tを加熱する加熱部材(定着部材)としての円筒状で可撓性を有する定着ベルト33を有する。このベルト33は電磁誘導により発熱する誘導発熱体(導電性発熱体)を含んでいる。ベルト33は固定加圧部材36aを保持した剛性ステイ36に対して回転可能に外嵌されている。本実施例3においては、固定加圧部材36aがニップ部Nにおいてベルト33の内面に接触する対向部材である。
固定加圧部材36aはPPS、PEEK、フェノール樹脂や液晶ポリマーなどの耐熱性樹脂からなる。この固定加圧部材36aに対してベルト33を介して加圧ローラ32が加圧されることでベルト33と加圧ローラ32との間に記録紙Pの搬送方向Gにおいて所定幅のニップ部Nが形成される。加圧ローラ32は実施例1や2の定着装置における加圧ローラ32と同様の弾性ローラである。
加圧ローラ32は制御回路部101(図19)で制御されるモータ(駆動装置)M1により矢示の時計方向R32に所定の周速度で回転駆動される。これにより、ベルト33が、その内面がニップ部Nにおいて固定加圧部材36aに密着して摺動しつつ矢示の時計方向R33に加圧ローラ32の回転周速度とほぼ同じ周速度で従動して回転する(加圧ローラ駆動方式)。
固定加圧部材36aのベルト摺動面近傍には固定加圧部材36aの長手に沿ってPTC抵抗体622が埋め込まれている。即ち、PTC抵抗体622は固定加圧部材36aのベルト33と接触する部分に配設されている。従って、PTC抵抗体622はニップ部Nの温度とほぼ同等となる。
また、ベルトアセンブリ31は、ベルト31を加熱する加熱機構としてのコイルユニット(磁束発生手段)60を有する。コイルユニット60はベルト33の加圧ローラ32側とは反対側においてベルト33の外側に所定の隙間を存してベルト33に対向して配設されている。
コイルユニット60は、ベルト33を誘導加熱するIHコイル(励磁コイル)61と磁性体コア62を有する。コイル61は、図18のコイル61とコア62の分解斜視図のように、左右方向に長いほぼ楕円形状(横長舟形)をしており、ベルト33のほぼ半周の外面部に沿うように電線が巻回されて構成されている。コア62は磁気回路の効率を上げるためと磁気遮蔽のために用いている。
図19、図20は制御系統のブロック図である。加圧ローラ32が回転駆動されてベルト33が回転している状態において、コイル61に対してIH電源部(励磁回路、高周波回路)55から交流電流が流される。これにより発生する磁束(交番磁束、交番磁場)により、誘導発熱体を含んでいるベルト33が電磁誘導発熱してベルト33が昇温する。そして、ベルト33の温度がサーミスタTHにより検知される。
サーミスTHはベルト33の内側においてベルト33の長手方向のほぼ中央部のベルト内面に弾性支持部材38に支持されて弾性的に接触させた形態で配設されている。サーミスTHはベルト33の長手方向のほぼ中央部のベルト外面の温度を接触式または非接触式で検知する構成とすることもできる。
サーミスTHで検知される温度情報が制御回路部101に入力する。制御回路部101はサーミスTHからの検知温度情報に基づいてベルト33が目標温度(定着温度)に昇温して維持されるようにIH電源部55を制御する。即ち、IH電源部55からIHコイル61に対する供給電力を制御する。
上記のようにして、加圧ローラ32とベルト33が回転され、ベルト33が所定の定着温度に立ち上がって温調された状態において、ニップ部Nに、未定着トナー画像tを担持した記録紙Pが画像面をベルト33側にして導入される。記録紙Pはニップ部Nにおいてベルト33の外面に密着してベルト33と一緒にニップ部Nを挟持搬送されていく。これにより、記録紙Pにベルト33の熱が付与され、またニップ圧を受けて未定着トナー画像tが記固着画像として定着される。ニップ部Nを出た記録紙Pはベルト33の表面から順次に曲率分離して排出搬送される。
なお、本実施例3においては、ベルト33と加圧ローラ32は接離可能な構成を有している。ベルト33を回転させる場合は、加圧ローラ32がベルト33に接触し、ベルト33は加圧ローラ32に従動して回転を行う。
制御回路部101は、IH電源部55、モータ(駆動装置)M1、及びサーミスTHと接続され、ベルト33の表面温度を一定に保つ制御や、モータM1によるベルト33の回転制御等を行っている。また、制御回路部101は、ユーザーからの操作入力を画像形成部にあるタッチパネル等の入力装置104(図1)により受け付け、プリント動作や異常状態の表示などを同じく画像形成部の表示部(105)により表示させる。
図20に本実施例3における長手方向の配置図を示す。PTC抵抗体622はコイル61によって加熱されるベルト加熱領域の長さYよりも同等以上の長さX(Y≦X)としてあり、ニップ部Nの長手方向のあらゆる部分的な異常発熱を検知することが可能である。
またPTC抵抗体622の抵抗値や温度−抵抗特性は実施例2と同じ物を使用した。そのため本実施例3においても通常の温度(25℃〜200℃)程度での抵抗(Rn)に比べて、検知したい異常昇温である260℃以上では、抵抗値(Re)が2桁以上高くなっている。また異常昇温が発生している長さ(幅)として検知したい長さ(Xe)は、PTC抵抗体622の全長(X)に対して1/100程度である3mm程度なので、異常昇温による抵抗上昇値が、PTC抵抗体622の抵抗値として検知可能な値となる。
本実施例3で実際に定着装置20の昇温状態を想定し、A4横サイズ(幅297mm)の設定で、LTR横サイズ(幅280mm)の紙を連続出力したところ、異常状態を検知し画像形成動作をストップすることが確認できた。
また、同じ出力モードで、異常昇温検知を行わずに連続プリントを行ったところ、紙幅サイズが一致していない事による部分的な異常昇温によって、ベルト表面の一部が270℃以上に異常昇温してしまった。その結果、異常昇温部近傍(紙両端部)で定着不良(ホットオフセット)が発生してしまった。
本実施例3も、実施例1,2と同様に異常昇温の幅(長さ)が2mm以下の場合には、ベルト33の長手の熱伝導、固定加圧部材36aとベルト33間の熱抵抗、ベルト33内の熱拡散によりベルト33が破損する加熱幅では無くなり問題ではない。
本実施例3においても、2mm程度の異常昇温部を発生させたところ、抵抗検知手段640で異常状態を検知し、画像形成動作をストップすることが確認できた。
このように本発明においては、実施例1や2のように抵抗発熱体620,621による加熱源(加熱機構)のみに限定されるわけではない。本実施例3のようにコイル61を加熱源として用いた定着装置においても、その他、例えばハロゲンランプを加熱源とする定着装置においても、PTC抵抗体622を定着装置のニップ部近傍に配置する。これにより、ベルト33の長手の温度分布を検知する事によって適用可能である。
《実施例4》
実施例4の定着装置について説明する。実施例1または2の定着装置20と共通する構成部材・部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。以下、主として、実施例2の定着装置20とは異なる構成部材・部分について説明する。画像形成装置の構成は実施例1と同様である。
図21は本実施例4における定着装置20の概略構成を示す横断面模式図である。この定着装置20は、大別して、ベルト加熱方式の定着機構部20Aと、送風冷却機構部20Bとからなる。
(1)定着機構部20A
定着機構部20Aは実施例1や2の定着装置20と同様の、加熱機構としてセラミックヒーターを用いたベルト加熱方式−加圧部材駆動方式の画像加熱装置である。
図22は定着機構部20Aの縦断正面模式図、図23の(a)はヒーター35の構成と制御系統を説明するための模式図、(b)は(a)の(b)−(b)線にそって切断したヒーター35の拡大断面模式図である。
本実施例4におけるヒーター35も、基板610としてチッ化アルミニウムを用いた裏面加熱タイプである。基板610の裏面側(ベルト対向面側とは反対面側)には2本の抵抗発熱体(通電発熱層)625が基板長手に沿って間隔をあけて平行に配設されている。この抵抗発熱体625はAg/Pdでスクリーン印刷により塗工して設けられており、長手方向の発熱分布は均一である。
また、抵抗発熱体625に平行に、定着装置の温度上昇検知に用いるPTC抵抗体622が配設されている。PTC抵抗体622はチタン酸バリウムでスクリーン印刷により塗工して設けられている。
平行2本の抵抗発熱体625の一端側と他端側はそれぞれ導体部631a,631bを介して電極端子部632a,632bに導通している。また、PTC抵抗体622の一端側と他端側はそれぞれ導体部633a,633bを介して電極端子部634a,634bに導通している。
抵抗発熱体625、PTC抵抗体622、および導体部631a,631b,633a,633bの一部、は全体的にガラス質のオーバーコート層624で覆われて表面が保護されている。抵抗発熱体625の長手方向のほぼ中央部に対応する個所のオーバーコート層表面部分には第1の温度センサ(以下、第1のサーミスタと記す)TH1が配設されている。
ヒーター35の一端部側にコネクタ54が嵌着されることで、抵抗発熱体625の一端部側の電極端子部632aが電源部(電力供給部、ヒーター駆動回路部)52に対して接続される。また、PTC抵抗体622の一端部側の電極端子部634aが抵抗検知手段(抵抗検知部)640に対して接続される。
一方、ヒーター35の他端部側にコネクタ53が嵌着されることで、抵抗発熱体625の他端部側の電極端子部632bが電源部52に対して接続される。また、PTC抵抗体622の電極端子部634bが抵抗検知手段640に対して接続される。
第1のサーミスタTH1はA/Dコンバータを介して制御回路部101に接続されている。ヒーター35の抵抗発熱体625の長手両端間に電源部52から通電されることで、抵抗発熱体625が発熱してヒーター35がヒーター長手方向の有効発熱領域(ヒーター35がベルト33を加熱する加熱領域)の全長Yにわたって急速に昇温する。
そのヒーター温度が第1のサーミスタTH1により検出され、その出力信号がA/Dコンバータを介して制御回路部101に入力する。制御回路部101は、その入力する検出温度情報に基づいて、ヒーター温度を所定の温度に維持するように電源部52から抵抗発熱体625に対する通電を制御する。すなわち、ヒーター35で加熱されるベルト33の温度が第1のサーミスタTH1の出力に応じて所定の定着温度に温調制御される。
本実施例4は温度制御方式として比例制御方式を用いており、ヒーター温度の設定値(本実施例4では220℃)と第1のサーミスタTH1で測定された温度の偏差に比例した電力をヒーター35に印加するような方式になっている。
TH2は第2の温度センサ(以下、第2のサーミスタと記す)であり、定着装置の非通紙部(非通過部)の温度を検出する。その出力(温度に関する信号値)がA/Dコンバータを介して制御回路部101に入力する。本実施例4においてはこの第2のサーミスタTH2は非通紙部aに対応するベルト部分の基層内面に弾性的に接触させて配設してある。
具体的には、第2のサーミスタTH2は、ガイド部材34に基部が固定される板ばね形状の弾性支持部材38の自由端に配置されている。そして、この第2のサーミスタTH2を弾性支持部材38の弾性によりベルト33の基層の内面に弾性的に当接させて非通紙部aに対応するベルト部分の温度を検出させている。
尚、第1のサーミスタTH1は、通紙部W3に対応するベルト部分の基層内面に弾性的に接触させて配設してもよい。逆に、第2のサーミスタTH2は、非通紙部aに対応するヒーター温度を検出するように配設してもよい。
定着機構部20Aの定着動作については実施例1や2の定着装置20と同様であるので、再度の説明は省略する。
(2)送風冷却機構部20B
次に、送風冷却機構部20Bについて説明する。図24の(a)は送風冷却機構部20Bの外観斜視模式図、(b)は(a)における(b)−(b)線に沿う拡大断面図である。
本実施例4において、送風冷却機構部20Bは、加熱部材であるベルト33の温度上昇を軽減することが可能であって、温度上昇を軽減可能な領域が可変である昇温軽減機構である。この送風冷却機構部20Bは、ベルト33を送風冷却するための送風部材(送風ファン:以下、ファンと記す)41を有する。また、ベルト33の冷却領域を設定可能な可動のシャッタ部材(以下、シャッタと記す)44を有する。また、シャッタ44を移動するためのシャッタ駆動装置(シャッタ駆動機構、開口幅調節手段、送風幅調節装置)45を有する。
送風冷却機構部20Bは小サイズ記録紙を連続通紙する際に生じる、ベルト33の非通紙部の昇温を送風により冷却する冷却手段である。42はファン41で生じる風を導く送風ダクトである。送風ダクト42はベルト33に対向する部分に配置された送風口(ダクト開口部)43を有する。シャッタ44はこの送風口43の開口幅を通紙される記録紙Pの幅に適した幅に調整する。シャッタ駆動装置45はこのシャッタ44を駆動する。
上記のファン41、送風ダクト42、送風口43、シャッタ44はベルト33の長手方向左右部に対称に配置されている。本実施例4ではファン41としてシロッコファン用いている。
シャッタ44は左右部に送風口43を形成した、左右方向に延びている支持板46の板面に沿って左右方向にスライド移動可能に支持される。このシャッタ44をラック歯47とピニオンギア48により連絡させ、ピニオンギア48を制御回路部101で制御されるモータ(パルスモータ)M2で正転または逆転駆動する。これにより、シャッタ44を連動してそれぞれに対応する送風口43に対して左右対称の関係で開閉動するようにしてある。上記の支持板46、ラック歯47、ピニオンギア48、モータM2によりシャッタ駆動装置45が構成されている。
左右の送風口43は、最小幅記録紙を通紙したときに生じる非通紙部bよりも僅かに中央寄りの位置から最大通紙幅W1にかけて設けられている。シャッタ44は支持板46の長手中央から外に向けて送風口43を所定量だけ閉める向きに配置されている。
制御回路部101には、外部ホスト装置103や入力装置105からのユーザーによる記録紙サイズの入力情報に基づき通紙される記録紙の幅情報Wが入力される。本実施例4において外部ホスト装置103や入力装置105が定着処理(加熱処理)を行う記録紙の幅サイズをユーザーが設定するためのサイズ設定装置である。
そして、制御回路部101はその情報に基づき、シャッタ駆動装置45を制御する。すなわち、モータM2を駆動してピニオンギア48を回転させ、ラック歯47によりシャッタ44を移動することで送風口43を所定量だけ開くことができる。
つまり、制御回路部101は、記録紙Pの幅情報WがA4縦サイズ幅の小サイズ記録紙である時は、シャッタ44を非通紙部bに対応する部分だけ送風口43を開放した位置に移動する。また、B4縦サイズ幅の小サイズ記録紙である時は、シャッタ44を非通紙部aに対応する部分だけ送風口43を開放した位置に移動する。即ち、シャッタ44は記録紙Pの幅方向長さに応じて送風口43の開口幅を調整可能である。
従って、通紙される小サイズ記録紙がLTR−R、EXE、K8、LTR等である場合には、制御回路部101は、それらの場合に生じる非通紙部に対応する分だけ送風口を開いた位置にシャッタ44を移動する。
シャッタ44の位置情報はシャッタ44の所定位置に配置されたフラグ50aを支持板46上に配置されたセンサ50により検出する。具体的には、送風口43を全閉したシャッタ位置でホームポジションを定め、開口量はモータM2の回転量から検出している。
(3)非通紙部昇温(非通過部昇温)およびコールドオフセットの抑制制御
次に、本実施例4の特徴的な部分であるPTC抵抗体622について説明する。PTC抵抗体622は、前述した図23のように、ヒーター基板610に対して抵抗発熱体625とほぼ平行に、ヒーター35の加熱領域の長さ(抵抗発熱体625の長さ)Yよりも長い領域Xに渡って形成されている。
そのため、加熱領域Yのある領域においてヒーター35の温度が異常に上昇した場合でも、PTC抵抗体622の温度も上昇して、その抵抗値は上昇する。PTC抵抗体622の抵抗値は抵抗検知手段640のA/Dコンバータを介して制御回路部101に入力され、制御回路部101はその入力情報に基づいてPTC抵抗体622の抵抗値を算出する。
図25に本実施例4で用いるPTC抵抗体622の温度―抵抗特性を示す。PTC抵抗体622は25℃(常温)における抵抗値は20Ω程度であり、温度が上昇するに従って、抵抗値が緩やかに減少する。温度が260℃(キュリー温度)に達すると抵抗値が急激に上昇し、270℃で抵抗値は1000Ωとなる。
図26が本実施例4の定着装置20において、PTC抵抗体622がキュリー温度を上回る温度270℃に達する幅とPTC抵抗体622の抵抗値との関係を示す図である。尚、本実験は第1のサーミスタTH1の温度を220℃、ファン41を動作させる第2のサーミスタTH2の温度を210℃に設定し、定着処理を行う記録紙Pの幅サイズとしては210mm(A4サイズ縦)で行った。このとき、ファン41で冷却する領域においてPTC抵抗体622の温度は250℃に維持される。
更に、図27に示すように、左右のシャッタ44の開口幅DlおよびDrを変えることで、ベルト33およびヒーター35が過度に温度上昇する幅ElおよびErを変化させた。尚、図26の横軸はベルト33およびヒーター35が過度に温度上昇する幅Eで、左右の幅ElとErを加算した幅である。また、縦軸はPTC抵抗体622の抵抗値である。
図26に示すように、PTC抵抗体622の270℃に達する幅Eが広がるにつれて、PTC抵抗体622の抵抗値が大きくなることがわかる。更に、270℃に達する幅Eが1mm程度の狭い領域でであっても、PTC抵抗体622の抵抗値は8Ωから16Ωに上昇するので、制御回路部101はPTC抵抗体622の何れかの部分の温度が270℃に達したことを検知可能である。
図28は小サイズ記録紙としてA4縦サイズの記録紙を連続して定着処理する際にベルト33の非通紙領域(非通過領域)を冷却する動作手順を示すフローチャートである。図29の(a)は図27の長手方向(幅方向)の位置A、BおよびCにおけるベルト33およびヒーター35の温度推移を示す。位置Aは中央搬送基準位置、位置Bは中央搬送基準位置から145mmの位置、位置Cは中央搬送基準位置から115mmの位置である。A4縦サイズの記録紙の定着処理を行う場合、位置Aは通紙領域(通過領域)、位置BおよびCは非通紙領域(非通過領域)である。
図29の(a)は実線がベルト33の温度推移、破線がヒーター35の温度推移を示す。図30の(a)は図29の(a)の場合におけるPTC抵抗体622の抵抗値推移である。
図28のフローチャートにおいて、画像形成装置100(図1)の画像形成スタート(A1)とほぼ同時にヒーター35の抵抗発熱体625への通電が始まり(A2)、抵抗発熱体625が発熱して、ベルト33及び加圧ローラ32が加熱される。この時、ユーザーが外部ホスト装置103や入力装置104で設定した記録紙Pのサイズ情報Wが小サイズ幅の場合、設定されたサイズ情報Wに対応する位置にシャッタ44が移動制御される(A3)。
ヒーター35への通電開始(t0)から約10秒後(t1)に第1のサーミスタTH1の検知温度が220℃に達すると、画像形成部において画像形成が開始される(A4)。この時のベルト33の温度はA、B、C点において160℃程度で均一であり、PTC抵抗体622の抵抗値は8Ω程度である。
その後、ベルト33およびヒーター35の非通紙領域である点BおよびCの温度が上昇し、第2のサーミスタTH2の検知温度が190℃になるとファン41をオンして送風冷却を行う(A5、t2)。この時のベルト33の温度は通紙領域である位置Aでは160℃程度に維持される。そして、送風冷却により、第2のサーミスタのTH2の検知温度が210℃未満まで下がるとファン41をオフする。
上記の場合、非通紙領域に対応するベルト33を冷却するので、ベルト33およびヒーター35が過度に昇温することは無い。そのため、PTC抵抗体622の抵抗値(Rptc)は8Ω程度に維持され、PTC抵抗体622の温度が270℃に達したことを検知する抵抗値であるRmax(16Ω)を超えることは無い(A6)。
尚、PTC抵抗体622の抵抗値であるRptcおよびPTC発熱体622が270℃に達したと判断する抵抗値Rmaxは何れも抵抗検知手段640が検知するPTC抵抗体622の全体抵抗である。
以後は最終の記録紙の定着処理が終了する(A7)まで、このファン41のオフ/オンを繰り返す。即ち、制御回路部101は、ベルト33の非通紙領域の温度を検知する第2のサーミスタTH2の検知温度によって、送風冷却機構部20Bのオン/オフ制御を行う。これにより、非通紙領域のヒーター35の温度を250℃に、ベルト33の温度を190℃程度に維持することができるので、ベルト35の接着剤の接着力が低下する210℃に達することが無いので、ベルト35が破損することは無い。
以下に、本実施例の特徴的な部分であるユーザーが記録紙サイズを誤設定した場合でも、ベルト35およびヒーター35の過度な昇温を検知し、ベルト33が破損する温度まで上昇することを防止する動作について説明する。
図29の(b)は図27の長手方向(幅方向)の位置A、BおよびCにおけるベルト33およびヒーター35の温度推移を示す。位置A、B、Cの位置は前述の通りであり、位置Aは通紙領域、位置Bは冷却装置により冷却される領域、位置Cは記録紙が通紙されず、冷却装置によって冷却されない非通紙領域である。更に、図29の(b)においては実線がベルト33の温度推移、破線がヒーター35の温度推移を示す。図30の(b)は図29の(b)の場合におけるPTC抵抗体35eの抵抗値推移である。
以下では、ユーザーが通紙サイズよりも小さな幅サイズを誤設定した場合の動作の一例として、通紙サイズがB4サイズの場合にA4縦サイズにユーザーが誤設定した場合において説明する。
図28のフローチャートのように、画像形成装置100(図1)の画像形成スタート(A1)とほぼ同時にヒーター35の抵抗発熱体625への通電が始まり(A2)、抵抗発熱体625が発熱して、ベルト33及び加圧ローラ32が加熱される。この時、ユーザーが外部ホスト装置103や入力装置104で設定した記録紙のサイズ情報が小サイズの場合、設定されたサイズ情報Wに対応する位置にシャッタ部材43がB4サイズの非通紙領域に制御される(A3)。
ヒーター35への通電開始(t0)から約10秒後(t1)に第1のサーミスタTH1の検知温度が220℃に達すると、画像形成部において画像形成が開始される(A4)。この時のベルト33の温度はA、B、C点において160℃程度で均一であり、PTC抵抗体622の抵抗値は8Ω程度である。
その後、ベルト33およびヒーター35の非通紙領域である位置BおよびCの温度が上昇する。そして、第2のサーミスタTH2の検知温度が190℃になるとファン41をオンしてB4サイズの非通紙領域の冷却を行う(A5、t2)。この時のベルト35の温度は通紙領域である位置Aでは160℃に維持される。更に、PTC抵抗体622の抵抗値(Rptc)は8Ω程である。そして、送風冷却により、第2のサーミスタTH2の検知温度が210℃未満まで下がるとファン41をオフする。
以後の定着処理により、A4縦サイズの外側、且つ、B4サイズの通紙領域ではある位置Cは記録紙に熱を供給することが無く、更に、ベルト33の送風冷却がなされない。そのため、過度に昇温しPTC抵抗体622の温度がやがてキュリー温度を上回る270℃に達する。この時、位置Cにおけるベルト33の温度は210℃に達する。この時、PTC抵抗体622の抵抗値Rptcは600Ω程度となるので、Rmax(本実施例では16Ω)を上回ったことを制御回路部101が検知する(A6、t3)。
制御回路部101はシャッタ駆動装置45を制御して冷却領域が広がる方向に段階的にPTC抵抗体622の抵抗値RptcがRmaxを下回るまでシャッタ44を移動する(A8)。従って、位置CにおけるPTC抵抗体622の温度が250℃程度に、ベルト35の温度は190℃程度に維持され、最終の記録紙の定着処理が終了する(A7)まで、このファン41のオフ/オンを繰り返す。
即ち、制御回路部101はベルト33の非通紙領域の温度を検知する第2のサーミスタTH2の検知温度によって、送風冷却機構部20Bのオン/オフ制御を行う。更に、PTC抵抗体622の抵抗値Rptcが10Ωを超えると冷却領域が広がる方向に段階的にPTC抵抗体622の抵抗値Rptcが10Ωを下回るまでシャッタ44を移動する。
これにより、ユーザーが記録紙のサイズ設定を間違えた場合においても、非通紙領域のベルト33の温度を190℃程度に維持することができるので、ベルト33が破損することは無い。また、A4縦サイズの通紙領域である位置Aの温度は常に160℃程度に維持されるため、コールドオフセットが発生することも無い。
以上、要するに、制御回路部101は、サイズ設定装置で設定される記録紙のサイズに応じて、ベルト33の温度上昇を軽減する領域を設定する。そして、定着処理中(加熱処理中)において定着装置20の少なくとも一部が異常に高温であると判断すると、昇温軽減機構である送風冷却機構部20Bが温度上昇を軽減する領域を拡大するように制御する。
尚、本発明は本実施例4の定着装置20に限定されるものではなく、様々な形態に適用可能であることは言うまでも無い。例えば、PTC抵抗体622はヒーター基板610以外に配設した定着装置構成とすることもできる。
例えば、図31に示すように、PTC抵抗体622をベルトガイド部材34の外面のベルト33と接する部分にベルトガイド部材34の長手方向にそって配設してもよい。この構成においても、ユーザーが記録紙サイズを間違えて設定した場合でも、ベルト33の過度な温度上昇の検知および破損を防止可能であることは言うまでも無い。
更に、制御回路部101が、PTC抵抗体622の抵抗値Rptcが16Ωを超える、即ち、ヒーター35の一部が270℃に達したことを検知すると、定着処理を行う単位時間当たりの記録紙の枚数を減少させる。この方法によっても、ベルト33の破損を防止することができる。即ち、制御回路部101は定着装置20の少なくとも一部が異常に高温な状態であると判断すると、記録紙の定着処理(加熱処理)を行う単位時間当たりの記録紙の枚数を減少させる制御を行う。
上記動作の手順を図28のフローチャートで説明する。PTC抵抗体622の抵抗値Rptcが16Ωを超えると、制御回路部101によって、画像形成部の画像形成間隔を長く設定し、定着処理が施される記録紙が定着装置20に到達する間隔を延長するのである。そのため、ヒーター35の抵抗発熱体625に供給される単位時間当たりの電力が低下する。これにより、非通紙領域の温度が低下するので、PTC抵抗体622の抵抗値Rptcが10Ω以下となるまで間隔を順次延長することでベルト33の破損を防止することができる。
以上説明したように、本実施例4に係る定着装置によって、ユーザーが記録紙のサイズを誤って設定した場合であっても、非通紙部における過度な温度上昇とコールドオフセットの発生を同時に防止する定着装置を提供することができる。
なお、本実施例4のヒーター35についても、抵抗発熱体625と、PTC低抗体622とに関し、その両方を基板610の表面側に配設した形態、あるいは一方を基板610の表面側に他方を裏面側に配設した形態にすることもできる。
《実施例5》
実施例5の定着装置について説明する。実施例3や4の定着装置20と共通する構成部材・部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。以下、主として、実施例3や4の定着装置20とは異なる構成部材・部分について説明する。画像形成装置の構成は実施例1と同様である。
図32は本実施例5における定着装置20の要部の斜視図である。図33は図32の定着装置20を矢印Jの方向から見た図である。図34は図33の(34)−(34)線にそって切断した要部の拡大横断面模式図である。図35は励磁コイルと磁性体コアの分解斜視図であり、定着ベルトと加圧ローラも記載されている。図36の(a)はPTC抵抗体を具備させたパッド部材の構成と制御系統を説明するための模式図、(b)は(a)の(b)−(b)線にそって切断したパッド部材の拡大断面模式図である。
本実施例5は、実施例3の定着装置20と同様に誘導加熱方式を用いた定着装置であり、ベルトアセンブリ31と加圧部材としての加圧ローラ32を有し、両者31,32の圧接によりニップ部Nを形成させている。また、ベルトアセンブリ31のベルト33を電磁誘導加熱する磁束発生手段としてのコイルユニット60を有する。また、昇温軽減機構としての磁性体コア移動機構70を有する。
(1)ベルトアセンブリ31
ベルトアセンブリ31(図34)は、実施例4と同様に、ベルト33、ガイド部材34、ステイ36、端部ホルダ37などによる組立体である。ただし、ベルト33はコイルユニット60で発生する磁束により電磁誘導発熱する誘導発熱体を有する。また、ガイド部材34にはヒーター35の代わりにPTC抵抗体622を具備させたニップパッド(パッド部材)56を固定的に配設してある。
パッド部材56は、ヒーター35と同様に、記録紙Pの搬送路面内において記録紙搬送方向Gに直交する方向を長手方向とする細長い、全体的に熱容量が小さい板状部材であり、ニップ部Nに位置している。従って、ベルト33はその内面がニップ部Nにおいてニップパッド56に密着して摺動しながら回転する。そして、ニップパッド56はニップ部Nの温度とほぼ同等となる。本実施例5においてはこのニップパッド56がニップ部Nにおいてベルト33の内面に接触する対向部材である。
ニップパッド56は、図36のように、基板56aとしてチッ化アルミニウムを用いている。この基板56aの表面側(一方面側)をベルト摺動面とし、この面に摺動層623として厚さ10μm程度のポリイミド層が設けられている。このポリイミド層により、ベルト33とニップパッド56との摺擦抵抗を低減することで、駆動トルクの低減およびベルト33の内面の磨耗を軽減させている。
また、基板56aの裏面側(他方面側:ベルト対向面側とは反対面側)には、基板長手にそってPTC抵抗体622としてのチタン酸バリウムがスクリーン印刷により塗工して設けられている。PTC抵抗体622の一端部側は導体部633aを介して電極端子部634aに導通している。また、他端部側は導体部633bを介して電極端子部634bに導通している。PTC抵抗体622、および導体部633a,633bの一部、は全体的にガラス質のオーバーコート層(保護層)624で覆われて表面が保護されている。
上記のニップパッド56がガイド部材34の外面に該部材34の長手に沿って設けた凹溝部に対して摺動層623を設けた表面側を外向きにして嵌め込まれて固定的に支持されている。このニップパッド56の一端部側と他端部側にそれぞれコネクタ54,53が嵌着されることで、PTC抵抗体622の電極端子部629b,627cが抵抗検知手段640に対して接続される。
抵抗検知手段640はPTC抵抗体622の両端部間の抵抗値を検知する。制御回路部101はその入力情報に基づいて、PTC抵抗体622の抵抗値を算出する。本実施例で用いるPTC抵抗体622の温度と抵抗値との関係は、実施例4の図25、図26に示す特性と同様の特性と有している。
THは定着装置20の温調用のサーミスタ(温度センサ)である。本実施例5においてはこのサーミスタTHはベルト33の内側においてベルト33の長手方向のほぼ中央部のベルト内面に弾性的に接触させて配設されている。具体的には、サーミスタTHは、ガイド部材34に基部が固定される板ばね形状の弾性支持部材38の自由端に配置されている。そして、このサーミスタTHを弾性支持部材38の弾性によりベルト33の内面に弾性的に当接させて最小通紙幅W3(図4、図5)に対応するベルト部分の温度を検出させている。
(2)コイルユニット60および磁性体コア移動機構70
本実施例5の定着装置20においては、加熱部材であるベルト33の温度上昇を軽減することが可能であって、温度上昇を軽減可能な領域が可変である昇温軽減機構として、実施例4の送風冷却機構部20Bに代えて、磁性体コア移動機構70を採用している。
本実施例における昇温軽減機構は、ニップ部Nにおける記録紙搬送方向Gに直交する方向で複数に分割されて設けられる複数の磁性体コア62を有する。また、その複数の磁性体コア62の夫々を励磁コイル61との間隙を変化させる方向に単独で移動可能とし、加熱処理を行う記録紙サイズに応じて移動させる磁性体コアを変えることが可能な磁性体コア移動機構70を有する。制御回路部100は定着装置20の少なくとも一部が異常に高温な状態であると判断すると、磁性体コア移動機構70を駆動して、複数の磁性体コアと励磁コイルとの間隙を変える構成である。
即ち、磁性体コア移動機構70がコイルユニット60における複数の磁性体コアと励磁コイルとの間隙を単独で(独立に)移動可能とすることで記録紙の幅サイズに応じてベルト33が発熱する領域を適宜変える方式を採用している。
コイルユニット60は、実施例3の定着装置20と同様に、ベルト33を電磁誘導加熱するIHコイル(励磁コイル)61とコイル61の巻き中心部と周囲を囲むように構成されている磁性体コア62を有する。
コイル61は、図35に示すように、長手方向に略楕円形状(横長舟形)をしており、ベルト33の外周面に沿うようにハウジング76の内部に配置されている。コイル61の芯線としては、φ0.1〜0.3mmの細線を略80〜160本程度束ねたリッツ線を用いている。細線には絶縁被覆電線を用いている。又、コア62を周回するように8〜12回巻回してコイル62を構成したものが使われる。コイル61にはIH電源部(励磁回路)55が接続されており、交番電流をコイル61へ供給できるようになっている。
コア62は図35に示すように長手方向において複数に分割されて設けられている。領域Dは最小通紙幅W3に対応する分割コア領域を示している。領域Eは領域Dよりも外側の分割コア領域を示している。領域Eにおける分割コアにおいて、破線Kを境として、コイル61の巻き中心部である楕円穴内部に入り込む部分を有する分割コア62bと、コイル61の端部に対応した分割コア62aとが存在する。
領域Eにおける個々の分割コア62は後述する磁性体コア移動機構70によってハウジング76内においてコイル61との間隙を小さくする方向P2と大きくする方向P1とに移動可能となっている。また、領域Dにおける各分割コア62はハウジング76内においてコイル61に対して所定の間隙を保持した位置に固定されている。
図34において62Aは補助コアであり、ハウジング76の底面の外側においてハウジング長手方向に領域E,Dにわたって固定されて配設されている。コア62,62Aはコイル61より発生した交流磁束を効率よくベルト33を構成している誘導発熱体に導く役目をする。すなわち磁気回路の効率を上げるためと磁気遮蔽のために用いている。コア62,62Aの材質として、フェライト等の高透磁率残留磁束密度の低いものを用いると良い。
ベルト33を構成している誘導発熱体は鉄等の強磁性の金属(透磁率の高い金属)を使うことで、コイルユニット60から発生する磁束を金属内部により多く拘束させることができる。即ち、磁束密度を高くすることができることにより、金属表面に渦電流を発生し、効率的にベルト33を発熱させることができる。
コイル61はIH電源部55から供給される交流電流によって交番磁束を発生し、交番磁束はコア62に導かれて誘導発熱体であるベルト33に渦電流を発生させる。その渦電流は誘導発熱体の固有抵抗によってジュール熱を発生させる。即ち、コイル61に交流電流を供給することでベルト33が電磁誘導発熱状態になる。
ベルト33が発熱してするとベルト33の温度はベルト33の内面に接触させて配設したサーミスタTHにより検出され、その出力信号がA/Dコンバータを介して制御回路部101に入力する。制御回路部101は、その入力する検出温度情報に基づいて、ベルト33の温度を所定の温度に維持するようにIH電源部55からコイル61への通電を制御する。すなわち、ベルト33の温度がサーミスタTHの出力に応じて所定の定着温度に温調制御される。
本実施例は温度制御方式として比例制御方式を用いており、ベルト33の温度の設定値(本実施例では160℃)とサーミスタTHで測定された温度の偏差に比例した電力をコイル61に印加するような方式になっている。
次に、磁性体コア移動機構70について説明する。図33に示すように種々の記録紙サイズ(幅サイズ)の非通紙部昇温の回避に対応できるように、コア62は図34のように通紙端部側の領域Eにおいて記録紙搬送方向Gに直交する方向、すなわちF方向で複数に分割されている。また、領域Eにおける個々の分割コア62は、それぞれ、コアホルダ77に熱溶着され保持されており、ハウジング76内に収まっている。尚、本実施例ではコアホルダ77を具備したが、コアホルダ77を廃止し、個々の分割コアのみで本実施例の分割コア62とコアホルダ77の形状を具備してもよい。
また、図34に示すように分割コア62を保持した各コアホルダ77はそれぞれハウジング76の案内手段761の案内によって、分割コア62とコイル61との間隙を変化させる方向すなわち矢印P方向に移動可能になっている。リンク部材75は長穴部751がコアホルダ77の連結部771と連結され、回転軸78周りに回転可動となっている。
つまり、リンク部材75がQ1方向へ回転すると、コアホルダ77と分割コア62がP1方向へ移動し、リンク部材75がQ2方向へ回転すると、コアホルダ77と分割コア62がP2方向へ移動する。このように、リンク部材75を設けることによって、コアホルダ77と分割コア62の移動距離を長くすることが可能となる。リンク部材75は付勢部材74によってQ1方向へ回転されるように付勢されており、規制部材73によって、リンク部材75のQ1方向への回転を規制している。
尚、本実施例ではリンク部材75に弾性バネで構成される付勢部材74を取り付けているが、結果として分割コア62がP1へ動く方向であればよい。従って、分割コア62やコアホルダ77へ付勢部材を取り付けたり、リンク部材75の自重によってQ1方向へモーメントを作用させても用いてもよい。
図33に示すように、規制部材73はピニオンギア80と連結され、ピニオンギア80の回転運動により、記録紙搬送方向Gに直交する方向、すなわちF方向へ移動可能となっている。また、ピニオンギア80は制御回路部101で制御されるモータ(駆動機構)M2と駆動連結されており、モータM2の駆動力によって動作する。
ホームポジションセンサ81はフォトインタラプタであり、規制部材73のフラグ部73aによって遮光されている。このときホームポジションセンサ80はON状態とする。したがって、図32、図33、図34の状態においては、規制部材73によってすべてのリンク部材75が規制されていることになる。
図37は磁性体コア移動機構70が移動動作した後の定着装置20の斜視図である。図38は図37の装置を矢印Jの方向から見た図である。図39は図38の(39)−(39)線にそって切断した要部の拡大横断面模式図である。
図37〜図39においては、定着処理(加熱処理)を行う記録紙の幅サイズをユーザーが設定するためのサイズ設定装置で設定された記録紙の幅サイズがB4幅サイズであると制御回路部101が認識した際の、非通紙部領域のコア移動後の状態を示している。すなわち、コアホルダ77の動作で換言すると、77a、77b、77c、77d、77eがP1方向へ移動し、それに対応している分割コア62とコイル71との間隙が広がっている。
本実施例5において外部ホスト装置103や入力装置105が定着処理(加熱処理)を行う記録紙のサイズをユーザーが設定するためのサイズ設定装置である。
図38のように規制部材73がF1方向へ移動が開始すると、記録紙搬送方向Gと直交方向の端部側のリンク部材75から規制がはずれる。すなわち、規制部材73が端部側から中央側へ移動するとき、端部側のコア72から規制を解除していくことになる。このように、小サイズ通紙時に規制部材73を中央部へ動作させることで、規制部材73の可動範囲が記録紙搬送方向と直交方向に広がらないため、省スペースで構成することができる。
規制部材73から規制を解除された分割コア62の状態を図39を用いて説明する。規制部材73の規制からはずれたリンク部材75は、付勢部材74によって回転軸78を中心にQ1の方向へ回転する。そして、フレーム79の突き当て部791に当接し、リンク部材75の位置が規制される。これに伴って、コアホルダ77および分割コア62はハウジング76の案内手段761の案内によって、P1方向へ移動し、分割コア62とコイル71との間隙が広がることになる。
したがって、図37〜図39に示すような状態においては、コイル61と移動した分割コア62の距離が離れているため、コイル61の周りにできる分割コア62及び誘導発熱体からなる磁気回路の効率が落ちて、発熱量が低下する。すなわち非通紙部昇温が回避され、その結果、分割コア62やコイル61の異常昇温も回避される。
以下に、本実施例の特徴的な部分であるユーザーが記録紙サイズを誤設定した場合でも、ベルト33の過度な昇温を検知し、ベルト33が破損する温度まで上昇することを防止する動作について説明する。
図40は小サイズ記録紙としてA4縦サイズの記録紙を連続して定着処理する際にベルト33の非通紙領域を冷却する動作手順を示すフローチャートである。図41は図27の長さ方向(幅方向)の位置A、BおよびCにおけるベルト33およびニップパッド56の温度推移を示す。尚、位置A、B、Cの位置は実施例4で説明した位置と同様である。更に、図41は実線がベルト33の温度推移、破線がニップパッド56の温度推移を示す。
以下では、ユーザーが通紙サイズよりも小さなサイズを誤設定した場合の動作の一例として、通紙サイズがB4サイズの場合にA4縦サイズにユーザーが誤設定した場合において説明する。
上述のように、画像形成装置の画像形成スタート(A1)とほぼ同時にベルト33の加熱が始まり(A2)、加圧ローラ32も加熱される。この時、ユーザーが操作部104で設定した記録紙のサイズ情報が小サイズの場合、設定されたサイズ情報であるB4サイズに対応する非通紙部bに位置する分割コア62とコイル61との間隙が広く設定される。
ベルト33の加熱開始(t0)から約10秒後(t1)にサーミスタTHの検知温度が160℃に達すると、画像形成部において画像形成が開始される(A4)。この時のベルト33の温度はA、B、C点において160℃程度で均一である。その後、ベルト33およびニップパッド56の非通紙領域である位置BおよびCの温度が上昇する。そして、分割コア62とコイル61との間隙が広く設定される位置Bにおいてはベルト33の温度が190℃に維持される。然しながら、分割コア62とコイル61との間隙が狭く設定され、ベルト33が加熱される位置Cにおいてはベルト33の温度が上昇する。
以後の定着処理により、A4縦サイズの外側、且つ、B4サイズの通紙領域ではある位置Cは記録紙に熱を供給することが無く、更に、ベルト33が発熱するため、過度に昇温しPTC抵抗体622の温度がやがてキュリー温度を上回る270℃に達する。この時、位置Cにおけるベルト33の温度は210℃に達する。
この時、PTC抵抗体622の抵抗値RptcがRmax(本実施例では10Ω)を上回る。これを制御回路部101が検知すると(A6、t3)、制御回路部101はB4サイズの端に位置する分割コア62から内側方向へ順にPTC抵抗体622の抵抗値RptcがRmaxを下回るまでコイル61との間隙が大きくなるように移動させる(A8、t3)。従って、位置CにおけるPTC抵抗体622の温度が250℃程度に、ベルト33の温度は190℃程度に維持され、最終の記録紙の定着処理が終了する(A7)。
上記動作により、ユーザーが記録紙のサイズ設定を間違えた場合においても、非通紙領域のベルト33の温度を190℃程度に維持することができるので、ベルト33が破損することは無い。また、A4縦サイズの通紙領域である位置Aの温度は常に160℃程度に維持されるため、コールドオフセットが発生することも無い。
尚、本発明は本実施例の定着装置に限定されるものではなく、様々な形態に適用可能であることは言うまでも無い。例えば、制御回路部101がPTC抵抗体622の抵抗値Rptcが10Ωを超える、即ち、ニップパッド56の一部が270℃に達したことを検知すると、定着処理を行う単位時間当たりの記録紙の枚数を減少させる方法とすることもできる。これによっても、ベルト33の破損を防止することができる。
つまり、PTC抵抗体622の抵抗値Rptcが10Ωを超えると、制御回路部101によって、画像形成部の画像形成間隔を長く設定し、定着処理が施される記録紙が定着装置20に到達する間隔を延長するのである。そのため、ベルト33に供給される単位時間当たりの電力が低下するため、非通紙領域の温度が低下するので、PTC抵抗体622の抵抗値Rptcが10Ω以下と成るまで、間隔を順次延長することで、ベルト33の破損を防止することができる。
以上説明したように、実施例5に係る定着装置によって、ユーザーが記録紙のサイズを誤って設定した場合であっても、非通紙部における過度な温度上昇とコールドオフセットの発生を同時に防止するベルト定着装置を提供することができる。
《実施例6》
実施例6の定着装置について説明する。本実施例6の定着装置20は基本的には実施例4と同様の定着装置構成である。即ち、図21、図22と同様に、加熱機構としてセラミックヒーターを用いたベルト加熱方式−加圧部材駆動方式の定着機構部20Aと、昇温軽減機構として送風冷却機構部20Bと、を有する定着装置である。実施例4の定着装置20と共通する構成部材・部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。以下、主として、実施例4の定着装置20とは異なる構成部材・部分について説明する。画像形成装置の構成は実施例1と同様である。
(1)ヒーター
図42は本実施例6におけるヒーター35の構成と制御系統を説明するための模式図、図43の(a)と(b)はそれぞれ図42の(a)−(a)線と(b)−(b)線にそって切断したヒーター35の拡大断面模式図である。
抵抗発熱体625については1本具備させた形態としてある。この抵抗発熱体625の長さ、即ちヒーター35の長手方向の有効発熱領域(ヒーター35がベルト33を加熱する加熱領域)の長さYは本実施例においては315mmとしている。
PTC抵抗体622については長手方向において複数に分割して配置した形態としてある。本実施例6においては、左右の2個622L,622Rに2分割して配置してある。左右のPTC抵抗体622L,622Rの長さはそれぞれ160mmであり、PTC抵抗体622の全体長さXは左右のPTC抵抗体622L,622Rを合わせて320mmとしてあり、抵抗発熱体625の長さYよりも長い構成になっている。
左側のPTC抵抗体622Lの一端側と他端側はそれぞれ導体部633a、633bを介して電極端子部634a,634bに導通している。右側のPTC抵抗体622Rの一端側と他端側はそれぞれ導体部635a、635bを介して電極端子部636a,636bに導通している。
ヒーター35の一端部側にコネクタ54が嵌着されることで、抵抗発熱体625の一端部側の電極端子部632aが電源部52に対して接続される。また、左側と右側のPTC抵抗体622L,622Rの一端部側の電極端子部634a,636aがそれぞれ抵抗検知回路(抵抗検知手段、抵抗検知部)640に対して接続される。
一方、ヒーター35の他端部側にコネクタ53が嵌着されることで、抵抗発熱体625の他端部側の電極端子部632bが電源部52に対して接続される。また、左側と右側のPTC抵抗体622L,622Rの他端部側の電極端子部634b,636bがそれぞれ抵抗検知回路640に対して接続される。
左右のPTC抵抗体622L,622Rには実施例1で説明した図7の線AFで示す特性(抵抗値の温度変化特性)のPTC材料を用いている。このPTC材料は、温度240〜260℃(Tc:キュリー温度)で急激に抵抗値が上昇する特性を持っている。この温度Tcはヒーター35が通常画像形成時に保持される温度180℃(Ts)より高く設定されており、ヒーター35が正常に制御されている場合には抵抗値は小さい。
しかし、記録紙サイズの設定間違いや記録紙位置設定間違いや通電回路の故障等によりヒーター35が異常高温状態になった場合、ヒーター温度がTcに近づくとPTC抵抗体622L,622Rの抵抗値は大きくなる。
前記のように、PTC抵抗体622L+622Rの長さXの方が抵抗発熱体620よりも長手方向の長さが長い構成になっている。これによって、ヒーター長手のどの部分で異常昇温が発生した場合においても、漏れることなく異常昇温を検知することができ、適切な対処を実行することが可能となる。また、PTC抵抗体622を長手で複数(本実施例では2個)所持していることで、記録紙サイズの設定間違いや記録紙位置設定間違いや通電回路の故障等によるヒーターの異常昇温を検知することができる。詳細に関しては次の(2)項と(3)項で説明する。
(2)PTC抵抗体による異常高温検知
図44に、各温度状態におけるPTC抵抗体622L,622Rの各両端の抵抗の比を示す(PTC特性として図7のAFを使用)。通常画像形成時に保持される温度180℃のときの抵抗を1としたときに、各温度状態における抵抗がいくつになるかを示している。
(a)の通常画像形成時に保持される温度180℃のときの抵抗を1とすると、(b)の通常画像形成時に保持される温度180℃領域が159.5mmと異常昇温領域(260℃)が0.5mmあった場合の抵抗値は、(a)の6倍弱になる。
よって、PTC抵抗体622の特性が使用領域に合致したものを使うことによって、局所的に異常昇温箇所が発生した場合においても、ヒーター35に発生した異常昇温を検知することができる。換言すれば、記録紙サイズの設定間違いや用紙位置設定間違いによって生じる非通紙部昇温を検知することができるということである。
また、(e)のヒーター35のPTC抵抗体622の全長Xに対応する長さ320mmが、180℃よりも温度が高い240℃になった場合においても、抵抗値が(a)の7.5倍になる。このことから、通電回路の故障等によりヒーター35が異常高温状態になった場合においても、異常昇温に到達する前に検知することができることになる。
(d)の25℃における抵抗値は5倍程度になっているため、本実施例では、(b)、(c)、(e)の異常昇温時と(d)の室温時を区別するために、異常高温を検知するシーケンスは画像形成時のみ行うこととしている。
図45にPTC抵抗体622の抵抗値の比と異常昇温幅の関係を示す。図中の数値は、異常昇温幅以外のPTC抵抗体622の温度は180℃としたときの値である。
図46に図42における抵抗検知回路640の概略等価回路を示す。抵抗検知回路640はサーミスタ等の抵抗値を検知する公知の技術である。図46のR1、R2は左側のPTC抵抗体622Lと右側のPTC抵抗体622Rであり、抵抗検知回路640の外部にある。DC電源は5VのDC電源であり、R1、R2と各々直列接続された参照用の固定抵抗R3、R4に接続される。電圧計VはR3、R4の電圧降下を測定する手段であって、R3、R4の電圧を測定することによって、PTC抵抗体622L,622Rの抵抗値の変化を測定する手段である。
たとえばR1の抵抗値が10Ωとし、DC電源に5Vを印加すると、R2が5Vの半分である2.5VのときにR1=10Ωとなるので、閾値にしたい抵抗値と同じ抵抗値の参参照抵抗を使用し、電源の1/2の電圧を検知したときを検知すればよい。
抵抗検知回路640は図42で示すように抵抗検知した出力を制御回路部101にフィードバックする。制御回路部101はフィードバック情報に基づいてヒーター35の異常昇温状態を検知する。
図47は、PTC抵抗体622L,622Rが異常昇温になっている幅を横軸とし、異常昇温の温度として250℃と260℃の2水準の場合の抵抗値Ωを示している。通常画像形成時に保持される温度180℃のときの抵抗を60Ωとすると、通常画像形成時に保持される温度180℃領域が159.5mmと異常昇温領域(260℃)が0.5mmあった場合の抵抗値は、341Ωになる。
よって、PTC抵抗体622の特性が使用領域に合致したものを使うことによって、局所的に異常昇温箇所が発生した場合においても、ヒーター35に発生した異常昇温を検知することができる。換言すれば、記録紙サイズ(記録材サイズ)の設定の間違いや記録紙設定位置(記録材設定位置)の間違いによって生じる非通紙部昇温を検知することができるということである。
本実施例では異常検知の抵抗値として300Ωとし、図46の参照抵抗R3、R4には300Ωの抵抗値を選択した。図47から300Ωとなる異常昇温幅は、260℃では約0.5mm程度であり、250℃では4mm程度の幅で異常検知することが可能になる。
(3)異常高温検知シーケンス
図42の制御ブロック図と図48の制御フローチャートを参照して異常高温検知シーケンスを説明する。
制御回路部101は、一例としてA4縦紙を連続して通紙する場合は、複写モードの設定サイズから記録紙がA4縦サイズであることを判断し(S2)、通電(S3)、画像形成を開始する(S4)。また、昇温軽減機構として送風冷却機構部20B(図21、図24)のシャッタ44の移動により送風幅をA4縦サイズ紙の非通紙部領域に対応させ、冷却を開始する(S5)。
ジョブ中は、PTC抵抗体622L,622Rの抵抗値Rptc1(R3)、Rptc2(R4)とRlimit値(所定値:本実施例では300Ω)の関係をモニタリングしている(S6)。本実施例においては、とRlimit値は、画像形成時に保持される温度180℃のときの抵抗値の5倍の値に設定した。5倍に設定すると、例えば260℃に昇温した箇所が0.5mm存在すれば、Rlimit値(300Ω)にひっかかることになる。
前述したが、非通紙部昇温によって各部材の温度が高くなりすぎる(本実施例ではヒーター温度が260℃付近)と、ベルト33の離型層の接着性の低下や定着ベルトおよび加圧ローラの弾性層が軟化する等の熱劣化によって、各部材が破損する。
S6でRptc1(R3)、Rptc2(R4)ともにRlimit(300Ω)を下回っている場合、最終紙が通紙された時点(S17)で異常高温検知シーケンスの動作は終了となる(S19)。
一方、S6でRptc1(R3)またはRptc2(R4)がRlimit値(300Ω)以上(所定値以上)であった場合、何らかの異常が考えられる。具体的には、記録紙サイズ設定の間違いや記録紙設定位置の間違いや通電回路の故障等が考えられるので、さらに要因を明確化し、適切な対処を取る必要がある。
そこで、Rptc1(R3)またはRptc2(R4)がRlimit値(300Ω)以上であった場合(S6)、次にΔRptcとΔRlimitの関係を判別する(S7)。ここで、ΔRptcとはRptc1(R3)とRptc2(R4)の差の絶対値のことであり、|Rptc1−Rptc2|(抵抗値差)のことである。
S7では、|Rptc1−Rptc2|が所定値(ΔRlimit)に対して大きいか(所定値以上)、小さいかの判定を行う。本実施例6では、ΔRlimitの値を400Ωと設定した。この理由は、ΔRlimitの値を400Ωと設定することで、記録紙位置設定間違いを検知するためである。
例えば、記録紙サイズが間違っておらず、記録紙位置設定のみが間違っていた場合、Rptc1(R3)とRptc2(R4)の値はどちらか一方が非通紙部昇温し、もう一方は、非通紙部昇温は発生しない。すなわち、Rptc1(R3)もしくはRptc2(R4)のどちからか一方は、抵抗60Ωを維持し(非通紙部昇温しないため)、もう一方は温度上昇に伴い抵抗値が上昇していくことになる。記録紙位置設定間違いを検知するためには、ΔRlimitが300Ω以上でよいことになる。
S7でΔRptcがΔRlimitよりも大きい場合、記録紙位置設定間違いが疑われるので、ユーザーに記録紙設定間違いを伝達するとともに、Rptc1(R3)、Rptc2(R4)の出力に応じて、シャッタ44の移動を行う(S12)。本動作をΔRptcが所定値(ΔRlimit)以下になるまで繰り返す(S13、S14)。
ΔRptcが所定値(ΔRlimit)以下になったら、Rptc1(R3)かつRptc2(R4)がRlimit以下になっていることを判定する(S15)。Rlimit以下になっていない場合、Rlimit以下になるように、シャッタ44の移動を行う(S16)。Rptc1(R3)、Rptc2(R4)ともにRlimitを下回っている場合、最終紙が通紙された時点(S18)で異常高温検知シーケンスの動作は終了となる(S19)。
S7で、ΔRptcがΔRlimit(400Ω)よりも小さい場合、記録紙サイズの設定間違い、または通電回路の故障による温度上昇が考えられる。
まず、S8ではユーザーに記録紙サイズ設定違いを伝達するとともに、Rptc1(R3)、Rptc2(R4)の出力に応じて、シャッタ44の移動を行う(S8)。ユーザーに対する伝達は入力装置104の表示部(表示手段:表示パネル)105やホスト装置103の表示部になされる。
Rptc1(R3)、Rptc2(R4)がRlimitを下回ったか否かを判定し(S9)、下回っていた場合、最終紙が通紙された時点(S17)で異常高温検知シーケンスの動作は終了となる(S19)。
一方、下回っていなかった場合、本動作を3回実行し(S10)、それでも下回らなかった場合、通電回路の故障による温度上昇が疑われるため、高温エラーをユーザーに伝達すると同時にヒーターへの通電を停止し、本体動作も停止する(S11)。
上記のように、複数設けたPTC抵抗体622L,622Rの抵抗値を検知することで、記録紙の片寄せ、記録紙サイズ誤設定による非通紙部昇温、ベルト破損を判断することができる。その判断結果に応じて警告表示や最適な冷却動作を実行することで、定着装置20の故障を抑制することができる。
PTC抵抗体622は上記実施例6の2分割の構成に限られず長手方向に3分割以上の複数に分割されて配置された構成形態にすることもできる。また、PTC抵抗体622は上記実施例のようにヒーター基板610の裏面側において加熱部材であるベルト33に近接して設けられた構成形態に限られない。図17や図31のようにベルト33に接触して設けられた構成形態にすることもできる。
なお、本実施例6のヒーター35について、抵抗発熱体25と、PTC低抗体622L,622Rとに関し、その両方を基板610の表面側に配設した形態、あるいは一方を基板610の表面側に他方を裏面側に配設した形態にすることもできる。PTC低抗体622Lと622Rの一方を基板610の表面側に他方を表面側に配設した形態にすることもできる。
定着装置20は、実施例5のように、定着機構部20Aが誘導加熱方式を用いた定着機構部であり、昇温軽減機構としての磁性体コア移動機構70を用いた構成形態にすることもできる。
上記の本実施例6をまとめると次のとおりである。抵抗素子であるPTC抵抗体622は長手方向に複数に分割されてベルト33を加熱する加熱領域に存在しており、分割されたPTC抵抗体622L,622RのそれぞれのPTC抵抗体の両端部間の抵抗値を検知する抵抗検知手段640を有している。
制御回路部101は抵抗検知手段640が分割されたPTC抵抗体622L,622Rの抵抗値が所定値以上を検知した場合にはPTC抵抗体の抵抗値が所定値以下になるように昇温軽減機構を制御する。または、それぞれの抵抗素子の抵抗値差が所定値以上を検知した場合にはPTC抵抗体の抵抗値が所定値以下になるように昇温軽減機構を制御する。分割されたPTC抵抗体622L,622Rの抵抗値を検知する場合、まず、それぞれのPTC抵抗体の抵抗値が所定値以上であるか否かを検知し、次に、それぞれのPTC抵抗体の抵抗値差が所定値以上であるか否かを検知する。
制御回路部101は、抵抗検知手段640が分割されたPTC抵抗体622L,622Rの抵抗値が所定値以上、またはそれぞれのPTC抵抗体の抵抗値差が所定値以上を検知した場合には、記録材サイズ設定の間違いである可能性があると判断する。または、記録紙設定位置が間違っている可能性があると判断する。そして、表示手段にその旨の表示を行う。
制御回路部101は、抵抗検知手段640が分割されたPTC抵抗体622L,622Rの抵抗値が所定値以上、またはそれぞれの抵抗素子の抵抗値差が所定値以上を検知した場合には、加熱機構への通電を停止する。また、装置動作も停止する。
《実施例7》
本実施例7の定着装置20は基本的には実施例2と同様の定着装置構成である。実施例2の定着装置20と共通する構成部材・部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。以下、主として、実施例2の定着装置20とは異なる構成部材・部分について説明する。
(1)ヒーター
図49は本実施例7におけるヒーター構成と制御系統の模式図である。図50の(a)と(b)はそれぞれ図49の(a)−(a)線と(b)−(b)線にそって切断したヒーター35の拡大断面模式図である。
本実施例7においては、メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621は長手方向で発熱体幅を変化させることにより、それぞれの長手方向での発熱分布を変えている。メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621の各々に通電した場合の中央搬送基準線Sを基準とした片側(右半部)のみの長手方向の発熱分布を図51に示す。
メイン抵抗発熱体620は長手中央の発熱量が大きく端部に向かうに従い発熱量が小さくなり、サブ抵抗発熱体621は長手中央の発熱量が小さく端部に向かうに従い発熱量が大きくなる。発熱分布はほぼ2次曲線となるように、またメイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621の2本の発熱体に等しく通電した場合の発熱分布がフラットになるように部分抵抗値を計算して発熱体形状を設定した。
中央の発熱量を揃えてメイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621への通電比率を変えた場合の発熱分布を図52に示す。メイン抵抗発熱体620への通電量を100とした際にサブ抵抗発熱体621への通電量を減少させていくことで、図52に示すような発熱分布に制御することができる。すなわち、メイン抵抗発熱体620とサブ抵抗発熱体621の通電比率を変えることで発熱分布を変更可能である。
PTC抵抗体622については長手方向において複数に分割して配置した形態としてある。本実施例7においては、実施例6の図42と同様に左右の2個622L,622Rに2分割して配置してある。左右のPTC抵抗体622L,622Rの長さはそれぞれ160mmであり、PTC抵抗体622の全体長さXは左右のPTC抵抗体622L,622Rを合わせて320mmとしてあり、抵抗発熱体625の長さYよりも長い構成になっている。
図53はPTC材料の温度−抵抗値特性を示しており、チタン酸バリウムに添加する微少量の希土類を調整することで、所定の温度(スイッチング温度)でその抵抗値が急激に上昇する温度(キュリー温度)が変化する。この材料は、通常の温度(25℃〜200℃)程度での抵抗に比べて、検知したい異常昇温である260℃以上では、抵抗値が2桁以上高くなっている。
また、異常昇温が発生している幅として検知したい幅は、PTC抵抗体の全幅に対して1/100程度である3mm程度なので、異常昇温による抵抗上昇値が、PTC抵抗体の抵抗値として検知可能な値となる。PTC抵抗体622L,622Rは図53に示すような正の抵抗温度特性(PTC特性)をもつため、ある温度を超えると急激に抵抗が上昇する。
従ってヒーター35が異常昇温した場合には、PTC抵抗体622Lもしくは622Rの抵抗が上昇することで、抵抗算出手段52で判定が可能である。PTC抵抗体622L,622Rのキュリー温度は通常の状態と異常昇温の状態を判断できるように設定される。
また、図53からわかるように、非常に高い温度においては、抵抗値も非常に大きくなる。従ってヒーター35の狭い領域のみが非常に高い温度になったときでも、異常昇温を判断できるレベルまでPTC抵抗体622Lもしくは622Rの抵抗値は上昇する。サーミスタ等で異常検知をする場合、温度検知手段近傍しか温度を検知することができない。ヒーター全体の異常検知をしたい場合には、ヒーター全体に多数の温度検知手段を設けることが必要となる。
しかしながら、本実施例7の場合は、ヒーターのどの部分が異常昇温しても、PTC抵抗体622Lもしくは622Rの抵抗が大きく上昇することで、異常検知をすることが可能となる
(2)加熱定着動作
定着装置20及び画像形成部はCPUとメモリーからなる制御回路部101によって動作を制御されている。ユーザーは汎用的なインターフェース102を用いてホスト装置103からプリントデータを画像形成装置100に転送し、出力命令を行う。画像出力命令があると、制御回路部101は画像形成部に画像形成命令と画像データを転送し、定着装置20に加熱定着動作の命令を送る。
加熱定着動作として、制御回路部101は、制御部51をオンする。これにより交流電源部52からヒーター35のメイン抵抗発熱体620及びサブ抵抗発熱体621に通電される。これによりメイン抵抗発熱体620及びサブ抵抗発熱体621が発熱し、基板610が加熱され、ヒーター35の加熱領域Yの全体が急速昇温する。その昇温に応じて加熱されるヒーター35の温度をサーミスタTHが検知する。
制御回路部101は、サーミスタTHの出力(検知温度)をA/D変換して取り込む。そしてサーミスタTHからの出力に基づいて、制御部51によりヒーター35に通電する電力を位相制御或いは波数制御等により制御して、ヒーター35の温度制御を行う。即ち、制御回路部101は、記録紙P上のトナー像を加熱定着する工程中、サーミスタTHの検知温度が設定温度(目標温度)を維持するようにヒーター35への通電を制御する。
つまり、サーミスタTHの検知温度が所定の設定温度より低い場合にはヒーター35が昇温するように、高い場合にはヒーター35が降温するように通電を制御することによって、ヒーター35を設定温度に温調している。
加熱定着工程中の設定温度は、加圧ローラ32の温まり具合や記録紙Pの種類(普通紙、厚紙、樹脂シート等)等に応じて制御回路部101により設定される。加圧ローラ32の温まり具合は、連続プリント時のプリント枚数をカウントしたり、連続プリント時の時間をカウントしたりして推測できる。従って、本実施例7のプリンタは、記録紙Pの種類に応じた複数の設定温度を有するものである。
またPTC抵抗体622L及び622Rの抵抗値は抵抗検知回路540によって抵抗値が算出され、制御回路部101に取り込まれる。
(3)異常昇温検知動作
図14にPTC抵抗体622L,622Rが異常昇温になっている幅を横軸とし、異常昇温の温度として260℃と270℃の2水準の場合の抵抗値Ωを示している。横一定の実線は、ヒーター全体が0℃均一の状態の場合に、PTC抵抗体622L,622Rの抵抗値が若干上昇した状態での抵抗値であり、450Ωの定数値である。260℃、および270℃の幅が広がってくると、PTC抵抗体622L,622Rの抵抗値が上昇してくるが、0℃の抵抗値450Ω以上に異常値を設定しておけば、定着装置20が低温で冷え切った状態でも異常状態を検知することがない。
また、本実施例においては、加圧ローラ32の温まり具合や記録紙Pの種類、記録紙サイズ等に応じて、設定温度、ヒーターの通電比率、通紙速度、単位時間当たりの通紙枚数等を設定する。これにより、ヒーター35の温度が230℃以上にはならないように設定している。ヒーターの温度が230℃以下の場合は、ヒーター全域の温度が上昇した場合でも450Ω以上になることがない。
本実施例では異常検知の抵抗値として600Ωとし、図13の参照抵抗R5には600Ωの抵抗値を選択した。図14から600Ωとなる異常昇温幅は、260℃では約3mm程度であり、270℃では0.5mm程度の幅で異常検知することが可能になる。したがって、抵抗検知回路640で600Ωを検出した時に異常昇温が発生していると判断する。
図54は本実施例の動作を示すフローチャートである。ユーザーはインターフェースを用いてホスト装置103からプリントデータを画像形成装置に転送し、出力命令を行う。画像出力命令があると、制御回路部101は画像形成部に画像形成命令と画像データを転送し、定着装置20に加熱定着動作の命令を送る(001)。
加圧ローラ32の温まり具合、記録紙Pの種類(普通紙、厚紙、樹脂シート等)、記録紙Pのサイズ等に応じて制御回路部101により温調温度や記録紙搬送速度等の複写モードが設定される(002)。複写モードが設定されたら通紙を開始し(003)、画像形成を開始する(003)。
次に定着ヒーター35の制御を開始したら(004)、まずはPTC抵抗体622Lもしくは622Rの抵抗値が600Ωを超えていないかを判定する(006)。
PTC抵抗体622Lもしくは622Rの抵抗値が600Ωを超えている場合は異常昇温が発生している。その状態で通紙を続けると、定着装置20の寿命が著しく低下したり、ベルト33が熱で破損してしまう。そのため、即座に定着装置20および画像形成部の動作を停止させ(007)、ディスプレイ等に異常昇温が発生したことを表示させる(008)。
PTC抵抗体622Lもしくは622Rの抵抗値が600Ωを超えていない場合は、PTC抵抗体622Lと622Rの抵抗値の両方が450Ωを超えているかを確認する(009)。
両方が超えている場合は、定着装置20に破損を生じさせるような温度ではないものの、定着装置20の温度が高くなっている状態である。通常のモードではここまで上がることはないことから、サイズ間違いによる端部昇温であると判断できる。したがって、ヒーター35の点灯比率を変更し(010)、ディスプレイ等にサイズ間違いの可能性があることを表示させる(011)。
端部昇温が大きい場合は、端部の発熱量が大きいメイン抵抗発熱体620に対するサブ抵抗発熱体621の点灯比率を下げて端部昇温を抑制する。PTC抵抗体622Lと622Rの抵抗値の両方が450Ωを超えていない場合は、PTC抵抗体622と623の抵抗値のどちらかが450Ωを超えていないかを確認する(012)。どちらか一方のみが高温になっている場合は片寄通紙と判断できる。片寄通紙間隔を広げて、生産性を低下させる(013)。
次にディスプレイ等に片寄せ通紙を行なっている可能性があることを表示させる(014)。片寄せ通紙で発生する異常昇温に対して、温調温度を下げると定着不良が発生する可能性がある。また、メイン抵抗発熱体620に対するサブ抵抗発熱体621の点灯比率を変更すると、端部の温度が下がため、記録紙が寄っている側の端部で、定着不良が発生する可能性がある。従って、生産性を低下させ、記録紙間を広げることで、異常昇温を緩和させる。
PTC抵抗体622Lと622Rの抵抗値のどちらもが450Ωを超えていない場合、最終紙かどうかを判断する(015)。最終紙であればプリントジョブを終了させ(016)、最終紙でなければ、再びPTC抵抗体622Lもしくは622Rの抵抗値が600Ωを超えていないかを再び判定する(006)。以後異常昇温の判断(006)から最終紙の判断(015)を最終紙まで繰り返す。
上記の本実施例7の構成をまとめると次のとおりである。加熱機構であるヒーター35は、通電により発熱する複数の抵抗発熱体であって、定着装置における記録紙搬送方向Gに配列されており、長手方向における発熱分布が違う抵抗発熱体620,621を有している。PTC抵抗体は長手方向に複数に分割622L,622Rされて加熱領域Yに存在している。検出機構として、分割されたPTC抵抗体622L,622RのそれぞれのPTC抵抗体の両端部間の抵抗値を検知する抵抗検知手段640を有している。
抵抗検知手段640は分割されたPTC抵抗体622L,622Rについて検知した抵抗値情報を制御手段である制御回路部101にフィードバックすることを特徴とする。制御回路部101は抵抗検知手段640が異常抵抗値(異常抵抗値、異常抵抗値差)を検知した場合には複数の抵抗発熱体620,621に対する通電比率を変更する。
或いは、制御回路部101は抵抗検知手段640が異常抵抗値を検知した場合には装置に連続通紙する記録紙の単位時間あたりの通紙枚数を変更する。或いは、制御回路部101は抵抗検知手段640が異常抵抗値を検知した場合にはヒーター35の設定温度を変更する。
上記のような定着装置構成により、定形外サイズを含むさまざまな記録紙サイズや小サイズ記録紙が中央搬送基準で正しくセットされていない場合であっても、定着装置20の寿命を著しく低下させたり、ベルトが熱で破損してしまうことを防止できる。
また、本実施例では、PTC抵抗体622Lもしくは622Rの抵抗値が600Ωを超えた場合、即座に画像形成装置本体を停止させた。しかし、極力画像形成装置本体の稼働を止めないために、即座には停止させず、まずは設定温度を下げ、それでもPTC抵抗体622Lもしくは622Rの抵抗値が600Ω以下にならない場合に、画像形成装置本体を停止させてもよい。即ち、制御回路部101は抵抗検知手段640が異常抵抗値を検知した場合にはヒーター35の設定温度を変更する。
《その他の事項》
1)本発明に係る画像加熱装置は実施例のような定着装置としての使用に限られない。記録材に一旦定着された或いは仮定着された画像(定着済み画像又は半定着画像)の光沢度などを改質する画像改質装置としても有効である。
2)記録材に担持された画像を加熱する加熱部材は回転可能な円筒状のベルト部材に限られない。複数の懸架部材間に張設されて回転駆動される可撓性を有するエンドレスベルトや、剛性を有する回転可能なローラ体であってもよい。
3)加熱部材とニップ部を形成する加圧部材は回転体でなくともよい。即ち、加熱部材が駆動手段により直接的に駆動されるものである場合には、加圧部材が回転体でなくてもよい。加熱部材や記録材との当接面である表面の摩擦係数が小さいパッドや板状部材などの非回転部材の形態のものにすることもできる。
4)加熱部材を加熱する加熱機構は実施例のセラミックヒーターや電磁誘導加熱に限られない。ハロゲンヒータ、赤外線ランプなどの他の内部加熱方式或いは外部加熱方式の加熱手段を用いることもできる。
5)画像加熱装置の記録材導入方式は、実施例の定着装置の中央搬送基準に限られない。本発明は、いわゆる片側搬送基準の画像加熱装置や画像形成装置にも適用することができることは勿論である。
6)実施例において定着装置は、実施例のカラー電子写真プリンタ以外の画像形成装置、モノクロ複写機、ファクシミリ、モノクロプリンタ、これらの複合機等で実施されてもよい。即ち、実施例の定着装置及びカラー電子写真プリンタは、上述した構成部材の組み合わせには限定されず、それぞれの代替部材で一部又は全部を置き換えた別の実施形態で実現してもよい。
6)画像形成装置の画像形成部の画像形成方式は電子写真方式に限られない。静電記録方式や磁気記録方式の画像形成部であってもよい。また、転写方式に限られず、記録材に対して直接方式で未定着画像を形成する構成のものであってもよい。