様々な被印刷体への印刷を行う場合、求められる印刷の品質や意匠も多様になる。そこで、本願の発明者は、インクジェットプリンタを用いて、金属光沢等の光沢性を有する印刷を行う方法について、鋭意研究を行った。
ここで、インクジェットプリンタにおいて、特殊な色を用いた印刷を行う場合、CMYKの各色のインク以外の特色のインクを用いることが一般的である。しかし、従来、例えば金色や銀色等について、光沢性を十分に表現できる特色のインクは開発されていない。そのため、特色のインクを用いる方法ではなく、より適切な方法により、光沢性を適切に表現することが望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる薄膜転写物の製造方法、液体吐出装置、及び液体吐出方法を提供することを目的とする。
インクジェットプリンタを用いて光沢性を表現するために、本願の発明者は、先ず、インクジェットプリンタによる印刷に加え、金属箔(蒸着膜)等の薄膜を被印刷体に貼り付けることで、被印刷体に高い光沢性を付与することを考えた。そして、その具体的な方法として、UVインク(紫外線硬化型インク)を被印刷体の被印刷面に塗布し、弱い紫外線を照射することでUVインクを半硬化の状態にし、そこへ金属の蒸着膜を転写することを考えた。
ここで、金属の蒸着膜の転写は、例えば、フィルム上に形成した蒸着膜をインクの表面に転写した後、フィルムを除去することで行う。また、蒸着膜の転写後、フィルムの除去の前又は後には、UVインクにより強い紫外線を照射することにより、UVインクの硬化を完了させる。
このような方法で蒸着膜を転写した場合、金属の蒸着膜が被印刷面上に貼り付けられるため、被印刷面の所望の領域に適切に金属光沢を付与することができる。しかし、本願の発明者が実際に実験等により確認をしたところ、このような方法で金属の蒸着膜を転写した場合、転写後の蒸着膜の表面の状態が、蒸着膜を転写する領域におけるUVインクの凹凸を反映することが判明した。また、その結果、被転写物上に残る薄膜の表面の均一性が不十分になる場合があることが判明した。そのため、印刷及び転写が完了した段階の状態として求められる表現や意匠によっては、この方法でも、所望の状態を得られない場合もあった。
これに対し、本願の発明者は、更に鋭意研究を行い、被印刷体にUVインクが着弾した後、半硬化用の弱い紫外線を照射するまでの時間を長くすることで、半硬化の状態におけるUVインクをより平坦にすることを考えた。また、実際に実験等で、この方法により転写後の金属蒸着膜が十分に平坦になり、高い光沢性を有する均一な状態になることを確認した。更には、この方法について、金属蒸着膜以外の薄膜(例えばホログラムフィルム等)を転写する場合にも好適に用いることができることを見出した。上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)シート状の基体上に形成された薄膜を被転写物に転写することにより薄膜転写物を製造する薄膜転写物の製造方法であって、紫外線の照射により硬化する液体である紫外線硬化型液体をインクジェット方式で吐出する液体吐出ヘッドを用いて、被転写物において薄膜が転写される領域に紫外線硬化型液体を吐出し、紫外線光源により被転写物上の紫外線硬化型液体に紫外線を照射することにより、紫外線硬化型液体を、表面が粘着性を有するゲル状態にまで硬化した半硬化の状態に硬化させる半硬化液体形成工程と、半硬化の状態になった紫外線硬化型液体と薄膜とが接するように、薄膜が形成されている基体と、被転写物とを重ねることにより、薄膜を被転写物の側に貼り付ける貼付工程と、半硬化の状態の紫外線硬化型液体に更に紫外線を照射することにより、被転写物上の紫外線硬化型液体の硬化を完了させる硬化完了工程と、少なくとも貼付工程よりも後に基体を被転写物から剥がす基体剥離工程とを有し、半硬化液体形成工程において、液体吐出ヘッドは、紫外線硬化型液体を吐出することにより、被転写物上に、紫外線硬化型液体のドットを並べて形成し、紫外線光源は、基体剥離工程の後に被転写物上に残る薄膜の表面が均一になる平坦度にまで被転写物上における紫外線硬化型液体のドットが拡がる時間が経過した後に、紫外線硬化型液体に紫外線を照射する。
このように構成すれば、例えば、薄膜を被転写物へ適切に転写できる。また、このように構成した場合、紫外線硬化型液体のドットが十分に拡がるのを待って半硬化させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、転写後の薄膜の表面がドットの形状の影響により不均一になることを適切に防ぐことができる。また、これにより、薄膜を用いた様々な意匠をより適切に表現できる。
また、このように構成した場合、貼付工程において、紫外線硬化型液体がゲル状態に半硬化した状態で、薄膜を転写することになる。そのため、このように構成すれば、例えば、被転写物に対して薄膜を押圧しても、紫外線硬化型液体が外へ逃げにくい状態にできる。また、紫外線硬化型液体が液体のままである場合と比べ、薄膜を押圧して平坦面にする作業の作業性が良好になる。更には、貼付工程で被転写物に薄膜を貼り付けた後に硬化完了工程を行うことにより、紫外線硬化型液体の表面に薄膜を確実に接着することができる。また、これにより、基体剥離工程で基体を剥がす時に切れがよくなり、転写部のエッジをきれいに転写できる。
ここで、被転写物上に残る薄膜の表面が均一になるとは、例えば、薄膜の表面が平坦かつ連続な平面状になることである。また、実用上、被転写物上に残る薄膜の表面が均一になるとは、例えば、紫外線硬化型液体の各ドットの形状の影響で生じるドットの粒状感が目視で確認できない程度の状態であってよい。この状態は、例えば、ドットの間隔に対応する凹凸が薄膜の表面に反映されない状態である。また、この状態は、ドットが拡がるレベリングが十分に進み、隣接するドット同士が繋がった状態とも考えられる。
また、紫外線硬化型液体を半硬化させるとは、例えば、紫外線硬化型液体が完全には硬化しない強度の紫外線を照射することにより、表面が粘着性を有するゲル状態にまで紫外線硬化型液体を硬化させることである。
また、上記の構成において、被転写物に転写される薄膜は、例えば紫外線を透過するように形成される。このように構成すれば、例えば、薄膜が転写された領域における紫外線硬化型液体についても、適切に硬化を完了させることができる。また、液体吐出ヘッドは、例えば、インクジェットヘッドである。紫外線硬化型液体としては、例えばUVインク(紫外線硬化型インク)を好適に用いることができる。また、被転写物としては、紫外線硬化型液体がしみこまない素材で形成されたものであれば、様々な素材及び形状のものを好適に用いることができる。被転写物は、例えば各種加工品等の立体物であってよい。また、薄膜は、例えば金属の蒸着膜である。このように構成すれば、例えば、高い光沢性を有する金属蒸着膜を被転写物に適切に転写できる。
また、被転写物に転写される薄膜としては、金属蒸着膜以外の薄膜を用いることもできる。この場合、被転写物に転写される薄膜は、光を反射する性質の薄膜であることが好ましい。また、より具体的には、この薄膜として、例えば、ホログラムフィルム用の薄膜等を用いることが考えられる。
また、基体剥離工程は、例えば、硬化完了工程の前後いずれに行ってもよい。硬化完了工程の後に基体剥離工程を行う場合、転写用の薄膜を形成する基体としては、紫外線を透過するフィルム等を用いることが好ましい。基体としては、例えばPETのフィルム等を好適に用いることができる。
(構成2)薄膜は、基体上に蒸着された金属蒸着膜である。この金属蒸着膜としては、例えば金又は銀の蒸着膜等を好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、転写後の薄膜に対し、高い金属光沢性を持たせることができる。
(構成3)基体剥離工程は、硬化完了工程よりも後に基体を被転写物から剥がす。このように構成した場合、例えば、硬化が完了することで紫外線硬化型液体の粘着性がなくなっているため、被転写物から基体を剥がしやすくなる。また、例えば、硬化した紫外線硬化型液体と薄膜とが十分な強度で接合した後に、基体を剥がすことができる。そのため、このように構成すれば、被転写物から基体をより適切に剥がすことができる。
(構成4)液体吐出ヘッドは、予め設定された主走査方向へ移動しつつ紫外線硬化型液体を吐出する主走査動作により、被転写物上に紫外線硬化型液体を吐出し、半硬化液体形成工程において、液体吐出ヘッドは、被転写物上において紫外線硬化型液体を吐出すべき各領域に対し、少なくとも2回の主走査動作を行う。
このように構成した場合、被転写物の各領域に対し、より多くの紫外線硬化型液体を吐出できる。また、紫外線硬化型液体のドットが十分に拡がった後に半硬化させる構成により、多くの紫外線硬化型液体を吐出した場合にも、紫外線硬化型液体のドットを適切に平坦化できる。そのため、このように構成すれば、例えば、被転写物において薄膜が転写される領域を、より適切に平坦化できる。また、これにより、例えば、転写後の薄膜の表面をより適切に均一化できる。
(構成5)液体吐出ヘッドは、予め設定された主走査方向へ移動しつつ紫外線硬化型液体を吐出する主走査動作により、被転写物上に紫外線硬化型液体を吐出し、半硬化液体形成工程は、液体吐出ヘッドが主走査動作を行う場合に液体吐出ヘッドと共に主走査方向へ移動する紫外線光源を用いて紫外線の照射を行い、紫外線光源は、液体吐出ヘッドに対して主走査方向における少なくとも一方の側に設けられており、液体吐出ヘッドが被転写物へ紫外線硬化型液体を吐出するタイミングにおいて、紫外線光源は、被転写物に向けて紫外線を照射しない状態で、液体吐出ヘッドと共に主走査方向へ移動し、紫外線光源が被転写物に向けて紫外線を照射するタイミングにおいて、液体吐出ヘッドは、紫外線硬化型液体の吐出を行わずに主走査方向へ移動し、かつ、紫外線光源は、液体吐出ヘッドと共に主走査方向へ移動する。
このように構成すれば、例えば、半硬化させる前に紫外線硬化型液体のドットが拡がる時間を適切に確保できる。また、これにより、例えば、転写後の薄膜の表面をより適切に均一化できる。
(構成6)液体吐出ヘッドは、予め設定された主走査方向へ移動しつつ紫外線硬化型液体を吐出する主走査動作により、被転写物上に紫外線硬化型液体を吐出し、紫外線光源は、主走査方向と直交する副走査方向において液体吐出ヘッドと位置をずらして配設されており、紫外線光源は、副走査方向において液体吐出ヘッドと異なる位置において被転写物へ向けて紫外線を照射することにより、被転写物に吐出された後に所定の平坦度にまで拡がった紫外線硬化型液体に対し、紫外線を照射する。
このように構成すれば、例えば、半硬化させる前に紫外線硬化型液体のドットが拡がる時間を適切に確保できる。また、これにより、例えば、転写後の薄膜の表面をより適切に均一化できる。
(構成7)硬化完了工程において照射する紫外線の強度を100%の強度とした場合、半硬化液体形成工程において照射する紫外線の強度は、15〜35%である。このように構成すれば、例えば、紫外線硬化型液体を適切に半硬化させることができる。
(構成8)紫外線硬化型液体は、紫外線硬化型のプライマーインクである。このように構成すれば、例えば、被転写物への薄膜の転写を適切に行うことができる。
(構成9)シート状の基体上に形成された薄膜が転写される被転写物に紫外線の照射により硬化する液体である紫外線硬化型液体を吐出する液体吐出装置であって、紫外線硬化型液体をインクジェット方式で吐出する液体吐出ヘッドと、紫外線を発生する紫外線光源とを備え、液体吐出ヘッドは、被転写物において薄膜が転写される領域に紫外線硬化型液体を吐出することにより、被転写物上に、紫外線硬化型液体のドットを並べて形成し、紫外線光源は、被転写物上の紫外線硬化型液体に紫外線を照射することにより、紫外線硬化型液体を、表面が粘着性を有するゲル状態にまで硬化した半硬化の状態に硬化させ、薄膜は、半硬化の状態になった紫外線硬化型液体と薄膜とが接するように、薄膜が形成されている基体と、被転写物とが重ねられることにより、被転写物の側に貼り付けられるものであり、基体は、少なくとも薄膜が被転写物の側に貼り付けられた後に、被転写物から剥がされるものであり、紫外線光源は、基体が被転写物から剥がされた後に被転写物上に残る薄膜の表面が均一になる平坦度にまで被転写物上における紫外線硬化型液体のドットが拡がる時間が経過した後に、紫外線硬化型液体に紫外線を照射する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
(構成10)シート状の基体上に形成された薄膜が転写される被転写物に紫外線の照射により硬化する液体である紫外線硬化型液体を吐出する液体吐出方法であって、紫外線硬化型液体をインクジェット方式で吐出する液体吐出ヘッドと、紫外線を発生する紫外線光源とを用い、液体吐出ヘッドにより、被転写物において薄膜が転写される領域に紫外線硬化型液体を吐出することにより、被転写物上に、紫外線硬化型液体のドットを並べて形成し、紫外線光源により、被転写物上の紫外線硬化型液体に紫外線を照射することにより、紫外線硬化型液体を、表面が粘着性を有するゲル状態にまで硬化した半硬化の状態に硬化させ、薄膜は、半硬化の状態になった紫外線硬化型液体と薄膜とが接するように、薄膜が形成されている基体と、被転写物とが重ねられることにより、被転写物の側に貼り付けられるものであり、基体は、少なくとも薄膜が被転写物の側に貼り付けられた後に、被転写物から剥がされるものであり、紫外線光源は、基体が被転写物から剥がされた後に被転写物上に残る薄膜の表面が均一になる平坦度にまで被転写物上における紫外線硬化型液体のドットが拡がる時間が経過した後に、紫外線硬化型液体に紫外線を照射する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
本発明によれば、例えば、金属蒸着膜等の薄膜を、被転写物に適切に転写できる。
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る薄膜転写物の製造方法の一例を示す。この薄膜転写物の製造方法は、シート状の基体上に形成された薄膜を被転写物に転写することにより薄膜転写物を製造する方法である。
図1(a)は、転写前の薄膜及び被転写物50の状態の一例を示す。本例において、被転写物50に転写される薄膜は、金属の蒸着膜106であり、離形層104を挟んで基体60上に形成される。
基体60は、転写前の蒸着膜106を形成するためのベースフィルムである。基体60としては、紫外線を透過するフィルム等を用いることが好ましい。また、より具体的に、基体60としては、例えばPETのフィルム等を好適に用いることができる。離形層104は、基体60から蒸着膜106を剥がれやすくするための層である。蒸着膜106は、例えば金又は銀等の金属蒸着膜である。
尚、被転写物50に転写される薄膜としては、金属蒸着膜以外の薄膜を用いることも考えられる。例えば、この薄膜として、ホログラムフィルム用の薄膜等を用いることも考えられる。被転写物50に転写される薄膜は、光を反射する性質の薄膜であることが好ましい。また、被転写物50に転写される薄膜は、紫外線を透過する性質の薄膜であることが好ましい。
被転写物50は、紫外線硬化型液体の一例である紫外線硬化型インクがしみこまない素材で形成された製品又は部品等である。また、本例の被転写物50において、蒸着膜106が転写される被転写面には、インク層102が形成されている。
インク層102は、紫外線硬化型インクが半硬化の状態にまで硬化したインク層であり、後に詳しく説明をする半硬化液体形成工程において形成される。また、本例において、インク層102は、蒸着膜106の転写時において転写の下地層として機能する。インク層102を構成するインクとしては、例えばプライマーインク等を好適に用いることができる。
尚、紫外線硬化型インクが半硬化の状態であるとは、例えば、紫外線硬化型インクが完全には硬化しない強度の紫外線を照射することにより、表面が粘着性を有する状態にまで紫外線硬化型インクを硬化した状態である。半硬化の状態の紫外線硬化型インクは、例えばゲル状の状態になっている。
また、被転写物50上には、複数のインク層が形成されていてもよい。例えば、被転写物50上にCMYKインクで着色層を形成し、その上に、透光性のプライマーインク等でインク層102を形成してもよい。また、この場合、着色層については、完全に硬化した状態としてもよい。また、着色層も、半硬化の状態であってもよい。
図1(b)は、被転写物50へ蒸着膜106を転写する転写工程について説明をする図である。本例において、転写工程は、貼付工程、硬化完了工程、及び基体剥離工程を含む工程である。
貼付工程は、インク層102と蒸着膜106とが接するように、基体60と被転写物50とを重ねることにより、蒸着膜106を被転写物50の側に貼り付ける工程である。貼付工程においては、基体60と被転写物50とを重ねた状態で、更に加圧をすることが好ましい。このようにすれば、例えば、より適切に蒸着膜106を転写できる。
硬化完了工程は、インク層102における半硬化の状態の紫外線硬化型インクに紫外線を照射することにより、紫外線硬化型インクの硬化を完了させる工程である。紫外線硬化型インクの硬化を完了させるとは、例えば、蒸着膜106の転写により製造される薄膜転写物の用途等に応じて求められる精度において硬化が完了していると言える程度にまで紫外線硬化型インクを硬化させることである。また、硬化が完了した時点において、紫外線硬化型インクは、例えば、表面が粘着性を有さない固体の状態になる。
尚、本例において、被転写物50に転写される薄膜は、金属の蒸着膜106である。この場合、蒸着膜106は、硬化完了工程において照射される紫外線を透過する。そのため、本例によれば、蒸着膜106を通して、インク層102を適切に硬化させることができる。
基体剥離工程は、少なくとも貼付工程よりも後に基体60を被転写物50から剥がす工程である。本例において、基体剥離工程は、硬化完了工程の後に行う工程であり、離形層104と共に基体60を剥がす。これにより、被転写物50のインク層102上に蒸着膜106を残して基体60を除去し、被転写物50への蒸着膜106の転写を完了させる。
ここで、本例においては、硬化が完了することで紫外線硬化型インク体の粘着性がなくなっているため、被転写物50から基体60を剥がしやすくなる。また、例えば、硬化した紫外線硬化型インクと蒸着膜106とが十分な強度で接合した後に、被転写物50を剥がすことができる。そのため、本例によれば、例えば、被転写物50から基体60を適切に剥がすことができる。また、転写工程の変形例においては、貼付工程のと硬化完了工程との間に、基体剥離工程を行ってもよい。
図1(c)は、蒸着膜106の転写完了後の被転写物50の状態の一例を示す。基体剥離工程により基体60を除去することにより、転写完了後の被転写物50は、インク層102上に蒸着膜106が転写された状態となる。以上の工程により、被転写物50に蒸着膜106を転写した薄膜転写物を適切に製造することができる。
尚、図1においては、図示の便宜上、被転写物50の被転写面の全体へ蒸着膜106が転写されるような図を示した。しかし、被転写物50への蒸着膜106の転写は、例えば被転写物50の被転写面における一部の転写領域に対して行ってもよい。この場合、例えば、基体60上に形成する蒸着膜106の形状を、転写領域に対応する形状とすることにより、被転写面における一部の転写領域へ蒸着膜106を転写できる。また、これにより、蒸着膜106の転写により様々な意匠を表現することができる。
続いて、被転写物50上にインク層102を形成する工程である半硬化液体形成工程について、更に詳しく説明をする。図2は、半硬化液体形成工程において用いる印刷装置10の一例を示す図である。図2(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す正面図及び上面図である。
印刷装置10は、紫外線硬化型液体を吐出する液体吐出装置の一例である。本例において、印刷装置10は、UV硬化型インクを用いて印刷を行うインクジェットプリンタであり、インクジェットヘッド12及び紫外線光源14を備える。インクジェットヘッド12は、液体吐出ヘッドの一例であり、紫外線硬化型インクをインクジェット方式で吐出する。また、これにより、インクジェットヘッド12は、転写の下地層となるインク層102(図1参照)を形成するための紫外線硬化型インクを被転写物50へ吐出する。この紫外線硬化型インクとしては、例えばプライマーインクを好適に用いることができる。
尚、インク層102を形成するための紫外線硬化型インクとしては、プライマーインク以外のインクを用いることもできる。例えば、白色の特色インクや、CMYKインクの各色のインク等を用いてもよい。また、印刷装置10は、インク層102形成用のインク以外のインクを吐出するインクジェットヘッドを更に備えてもよい。例えば、印刷装置10は、プライマーインク用のインクジェットヘッド12に加え、着色層形成用のCMYKインクの各色のインクをそれぞれ吐出するインクジェットヘッドを更に備えてもよい。
紫外線光源14は、被転写物50へ吐出された紫外線硬化型インクへ紫外線を照射する光源である。紫外線光源14は、被転写物50上の紫外線硬化型インクに紫外線を照射することにより、紫外線硬化型インクを半硬化させる。また、本例において、紫外線光源14は、例えばUVLEDを有する光源であり、印刷装置10において予め設定されたY方向におけるインクジェットヘッド12の一端側及び他端側にそれぞれ設けられる。
尚、紫外線光源14は、例えば、硬化完了工程においても、紫外線硬化型インクに紫外線を照射する。これにより、硬化完了工程において、紫外線光源14は、紫外線硬化型インクの硬化を完了させる。また、硬化完了工程においては、例えば印刷装置10に設けられる紫外線光源14以外の紫外線光源を用いて、紫外線硬化型インクを硬化させてもよい。また、後に更に詳しく説明をするように、本例において、紫外線光源14は、半硬化用の弱い紫外線を照射する弱紫外線照射動作を、インクジェットヘッド12による主走査動作とは別の動作として行う。そのため、紫外線光源14は、Y方向においてインクジェットヘッド12の一方の側のみに設けられてもよい。
また、説明は省略したが、印刷装置10は、インクジェットヘッド12及び紫外線光源14以外に、例えば公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の各種の構成を更に備えてよい。例えば、印刷装置10は、インクジェットヘッド12に主走査動作を行わせる主走査駆動部や、インクジェットヘッド12に対して相対的に被転写物50を送る副走査駆動部等を更に備える。また、印刷装置10の各部を制御する制御部等を更に備える。
これらの構成により、半硬化液体形成工程において、印刷装置10は、インクジェットヘッド12を用いて、被転写物50において薄膜が転写される領域に紫外線硬化型インクを吐出する。また、紫外線光源14により被転写物50上の紫外線硬化型インクに紫外線を照射することにより、紫外線硬化型インクを半硬化の状態に硬化させる。本例によれば、例えば、転写の下地となるインク層102を被転写物50上に適切に形成することができる。
続いて、被転写物50に対する印刷装置10の印刷動作について、更に詳しく説明をする。本例において、印刷装置10は、Y方向を主走査方向とする主走査動作(スキャン動作)を行うことにより、被転写物50への印刷動作を行う。主走査動作において、インクジェットヘッド12は、主走査方向へ移動しつつ、インク滴を被転写物50上へ吐出する。これにより、半硬化液体形成工程において、インクジェットヘッド12は、紫外線硬化型インクを吐出することにより、被転写物50上に、紫外線硬化型インクのドットを並べて形成する。
尚、主走査動作時において、紫外線光源14は、被転写物50へ紫外線を照射しない状態で、インクジェットヘッド12と共に主走査方向へ移動する。そのため、本例において、各回の主走査時に被転写物50に着弾した紫外線硬化型インクは、少なくとも、その回の主走査動作が完了するまでの間、紫外線が照射されない状態となる。
また、印刷装置10は、被転写物50上に着弾した紫外線硬化型インクのドットが十分に拡がるのを待って、紫外線光源14により、紫外線硬化型インクを半硬化させるための弱い紫外線を照射する。より具体的に、半硬化液体形成工程において、紫外線光源14は、基体剥離工程の後に被転写物50上に残る蒸着膜106(図1参照)の表面が均一になる平坦度にまで被転写物50上における紫外線硬化型インクのドットが拡がる時間が経過した後に、紫外線硬化型インクに紫外線を照射する。
尚、被転写物50上に残る蒸着膜106の表面が均一になるとは、例えば、蒸着膜106の表面が平坦かつ連続な平面状になることである。また、実用上、蒸着膜106の表面が均一になるとは、例えば、紫外線硬化型インクの各ドットの形状の影響で生じるドットの粒状感が目視で確認できない程度の状態であってよい。
また、より具体的に、本例において、印刷装置10は、所定回数の主走査動作を行う毎に、半硬化用の弱い紫外線を照射する弱紫外線照射動作を行う。弱紫外線照射動作において、紫外線光源14は、所定の強度の紫外線を被転写物50へ向けて照射しつつ、Y方向へ移動する。
ここで、硬化完了工程において照射する紫外線の強度を100%の強度とした場合、半硬化液体形成工程において紫外線光源14が照射する弱い紫外線の強度は、15〜35%とすることが好ましい。弱い紫外線の強度は、より好ましくは、20〜30%(例えば23%程度)である。
また、印刷装置10は、主走査動作及び弱紫外線照射動作を行っていない所定のタイミングにおいて、Y方向と直交するX方向へインクジェットヘッド12に対して相対的に被転写物50を送る副走査動作を行う。本例において、印刷装置10は、例えば、予め設定された送り量分だけX方向へインクジェットヘッド12を移動させることにより、副走査動作を行う。これにより、印刷装置10は、次回の主走査動作においてインク滴が吐出される領域を、順次変更する。また、印刷装置10は、例えば、被転写物50の側を移動させることにより、副走査動作を行ってもよい。
本例によれば、被転写物50の被転写面における各位置に対し、紫外線硬化型インクを適切に吐出できる。また、被転写物50に着弾した紫外線硬化型インクを、適切に半硬化させることができる。更には、これにより、転写の下地層となるインク層102を適切に形成できる。尚、本例における主走査動作、弱紫外線照射動作、及び副走査動作については、後に更に詳しく説明をする。
図3は、被転写物50に着弾した後の紫外線硬化型インクの状態について説明をする図である。図3(a)は、被転写物50への着弾直後の紫外線硬化型インクの状態の一例を示す。図2に関連して説明をしたように、本例において、インクジェットヘッド12(図1参照)は、主走査動作により、被転写物50上に、紫外線硬化型インクのドット202を並べて形成する。また、被転写物50への着弾直後において、ドット202の並びにより構成されるインク層102の表面は、ドット202が並ぶことで凹凸状になっている。
図3(b)は、着弾後にドット202が拡がる様子の一例を示す。紫外線が照射されていない状態において、紫外線硬化型インクは、液体である。そのため、被転写物50への着弾後には、時間の経過に応じて、ドット202が徐々に拡がることとなる。
図3(c)は、紫外線硬化型インクが十分に平坦化した状態の一例を示す。着弾後のドット202が十分に拡がると、例えば隣接するドット202同士が接触し、一体化する。そのため、インクの着弾後、十分に時間が経過した時点において、インク層102の表面は、図中に示すように、平坦になる。
ここで、インク層102の表面が平坦になった状態とは、必ずしも完全に平坦になった場合に限らず、例えば被転写物50上に残る蒸着膜106の表面を均一にするという目的に応じた精度で平坦になった状態であってもよい。例えば、被転写物50上の各ドット202は、必ずしも完全に一体化した状態になっていなくてもよい。
また、本例においては、図2等に関連して説明をしたように、インク層102の表面が平坦になった後に、弱い紫外線の照射により、インク層102を半硬化の状態にする。そのため、本例によれば、平坦な状態で半硬化したインク層102を適切に形成することができる。
尚、半硬化の状態において、紫外線硬化型インクは、例えばゲル状の状態になる。そのため、例えば被転写物50への着弾直後に弱い紫外線を照射し、半硬化の状態にした場合にも、その後、ある程度の径にまでドット202が拡がるとも考えられる。しかし、本願の発明者は、実験等により、このような方法では、被転写物50上に残る蒸着膜106の表面を十分に均一化できないという知見を得た。
これに対し、本例においては、紫外線硬化型インクの着弾後、弱い紫外線を照射するまでの時間を十分に確保することにより、紫外線硬化型インクを十分に平坦化した後に、弱い紫外線を照射している。そのため、本例によれば、転写の下地層となるインク層102を、より適切かつ十分に平坦化できる。また、これにより、半硬化液体形成工程の後に行う転写工程において、被転写物50上に残る蒸着膜106の表面をより適切に均一化できる。
続いて、本例における主走査動作、弱紫外線照射動作、及び副走査動作について、更に詳しく説明をする。本例において、印刷装置10は、被転写物50上において紫外線硬化型インクを吐出すべき各領域に対し、2回の主走査動作と、1回の弱紫外線照射動作を行う。また、これらの動作を行う毎に、副走査動作を行う。
図4は、印刷装置10による主走査動作、弱紫外線照射動作、及び副走査動作について説明をする図である。図4(a)は、被転写物50上の一の領域に対する1回目の主走査動作について説明をする図である。図4(b)は、1回目の主走査動作を行った領域に対する2回目の主走査動作について説明をする図である。
本例において、インクジェットヘッド12は、X方向の位置を固定した状態で、Y方向への往復の主走査動作を行う。また、その往路において、インクジェットヘッド12の移動経路と重なる被転写物50上の領域に対し、1回目の主走査動作を行う。また、その復路において、1回目の主走査動作と同じ領域に対し、Y方向の反対側から、2回目の主走査動作を行う。
ここで、1回目及び2回目のそれぞれ主走査動作において、インクジェットヘッド12は、紫外線硬化型インクを吐出しつつ、往路及び復路の各方向へ移動する。また、紫外線光源14は、往路及び復路の各方向へ、インクジェットヘッド12と共に移動する。しかし、主走査動作時において、紫外線光源14は、被転写物50に向けて紫外線を照射しない。そのため、被転写物50に着弾した紫外線硬化型インクのドットは、後の弱紫外線照射動作で紫外線が照射されるまでの間、徐々に拡がって平坦化する。
本例によれば、例えば、被転写物50上の各領域に対し、多くの紫外線硬化型インクを適切に吐出できる。これにより、被転写物50の被転写面を、インク層102でより確実に覆うことができる。また、主走査時には紫外線を照射せず、紫外線硬化型インクのドットが十分に拡がった後に半硬化させる構成とすることにより、多くの紫外線硬化型インクを被転写物50上に吐出した場合にも、紫外線硬化型インクのドットを適切に平坦化できる。
尚、本例において、印刷装置10は、往路及び復路のそれぞれの主走査動作において、インクジェットヘッド12の移動経路と重なる領域に対し、プライマーインク等の紫外線硬化型インクにより、所定の濃度で領域を塗りつぶすベタ印字(ベタ印刷)を行う。そのため、1回の主走査動作での塗りつぶしの濃度を100%とした場合、印刷装置10は、各領域を、200%の濃度で塗りつぶすことになる。
図4(c)は、弱紫外線照射動作について説明をする図である。本例において、印刷装置10は、往路及び復路による2回の主走査動作を行う毎に、インクジェットヘッド12及び紫外線光源14のX方向の位置を固定したまま、1回の弱紫外線照射動作を行う。例えば、本例の弱紫外線照射動作において、紫外線光源14は、被転写物50へ弱い紫外線を照射しつつ、往路の主走査動作と同じ方向へ移動する。また、インクジェットヘッド12は、紫外線硬化型インクの吐出を行わずに、紫外線光源14と共に移動する。
このように構成した場合、主走査動作の後に別の動作で弱い紫外線を照射するため、被転写物50へのインクの着弾後、インクのドットが拡がる時間を十分に確保できる。そのため、本例によれば、インク層102を適切かつ十分に平坦化できる。また、これにより、後の転写工程においてインク層102上に転写される蒸着膜106(図1参照)の表面を適切に均一化できる。
尚、上記のように、紫外線光源14を往路方向へ移動させて弱紫外線照射動作を行った場合、印刷装置10は、例えば、次の主走査動作を行うまでの間に、インクジェットヘッド12及び紫外線光源14を復路方向へ移動させる。このように構成すれば、往復の主走査動作の開始前に、インクジェットヘッド12及び紫外線光源14を所定の初期位置へ復帰させることができる。また、これにより、前回と同様の動作により、次の往復の主走査動作を適切に行うことができる。
また、弱紫外線照射動作の後、インクジェットヘッド12及び紫外線光源14を復路方向へ移動させずに、次の主走査動作を行ってもよい。この場合、次の往復の主走査動作における往路及び復路の方向が、前回の往復時と反対になる。このようにした場合も、次の往復の主走査動作を適切に行うことができる。
また、弱紫外線照射動作の変形例においては、例えばY方向の往路及び復路の両方において、弱い紫外線を照射してもよい。また、例えば紫外線を照射しない状態でインクジェットヘッド12及び紫外線光源14に往路の移動を行わせ、復路において紫外線を照射してもよい。
図4(d)は、副走査動作について説明をする図である。本例において、印刷装置10は、弱紫外線照射動作を行う毎に、副走査動作を行う。副走査動作において、印刷装置10は、インクジェットヘッド12及び紫外線光源14をX方向へ移動させることにより、被転写物50において主走査動作及び弱紫外線照射動作の対象となる領域を変更する。
これにより、印刷装置10は、次の対象領域に対し、次の主走査動作及び弱紫外線照射動作を行う。また、その領域に対する主走査動作及び弱紫外線照射動作を行った後、印刷装置10は、再度副走査動作を行う。本例によれば、被転写物50上の各領域に対し、主走査動作及び弱紫外線照射動作を適切に行うことができる。また、これにより、被転写物50上にインク層102を適切に形成できる。
以上のような構成により、本例においては、転写の下地層となるインク層102について、紫外線硬化型インクのドットが十分に拡がるのを待って半硬化させることができる。また、これにより、例えば、転写後の蒸着膜106の表面がドットの形状の影響により不均一になることを適切に防ぐことができる。そのため、本例によれば、例えば、均一な蒸着膜106を被転写物50へ適切に転写できる。また、これにより、蒸着膜106を用いた様々な意匠を適切に表現できる。
また、本願の発明者は、本例の薄膜転写物の製造方法について、実際に実験等を行い、転写結果を確認した。図5は、実験により確認をした転写結果について説明をする図である。
図5(a)は、本例の薄膜転写物の製造方法により製造した薄膜転写物(以下、実施例1の薄膜転写物という)を示す。実施例1の薄膜転写物の製造工程において、被転写物50としては、携帯端末(スマートフォン)のカバーを用いた。また、蒸着膜106としては、金の蒸着膜を用いた。また、被転写物50への蒸着膜106の転写は、図1を用いて説明をした方法で行った。被転写物50上の各領域への紫外線硬化型インクの吐出、及び半硬化は、図2を用いて説明をした印刷装置10を用い、図4を用いて説明をした方法により、2回の主走査動作と、1回の弱紫外線照射動作により行った。
図5(a)に示した写真から分かるように、実施例1の薄膜転写物においては、転写後の蒸着膜106の表面を、適切かつ十分に均一化することができた。また、これにより、高い金属光沢性を有する状態で金属の蒸着膜106を転写することができた。
図5(b)は、実施例1の薄膜転写物の製造方法とは一部異なる方法で製造した薄膜転写物(以下、参考例1の薄膜転写物という)を示す。参考例1の薄膜転写物の製造工程において、印刷装置10による紫外線硬化型インクの吐出、及び半硬化の方法は、図4を用いて説明をした方法と異ならせ、主走査動作と弱紫外線照射動作とを同時に行った。すなわち、参考例1の薄膜転写物の製造時には、主走査動作の後に別途弱紫外線照射動作を行うのではなく、主走査動作を行いながら紫外線光源14に紫外線を照射させることにより、主走査動作と弱紫外線照射動作とを同時に行った。また、それ以外の点については、実施例1の薄膜転写物と同様にして、被転写物50上に紫外線硬化型インクのインク層を形成した。
この場合、ドットが十分に拡がる前に半硬化の状態となるため、インク層の表面が凹凸状になると考えられる。また、その結果、転写後の蒸着膜106の表面の状態が、インク層の凹凸を反映すると考えられる。そして、実際、図5(b)に示した写真から分かるように、参考例1の薄膜転写物においては、蒸着膜106の表面が不均一な状態となった。
尚、図から分かるように、実施例1の薄膜転写物と、参考例1の薄膜転写物とでは、被転写物50として用いた携帯端末のカバーの色も異なっている。しかし、この違いは、実験の便宜上のものであり、蒸着膜106の表面の状態に影響を与えるものではない。
図5(c)は、実施例1の薄膜転写物、及び参考例1の薄膜転写物の製造方法とは一部異なる方法で製造した薄膜転写物(以下、参考例2の薄膜転写物という)を示す。参考例2の薄膜転写物の製造工程において、印刷装置10による紫外線硬化型インクの吐出、及び半硬化の方法は、図4を用いて説明をした方法と異ならせ、被転写物50上の各領域への主走査動作を1回のみとした。すなわち、参考例2の薄膜転写物の製造工程においては、被転写物50上の各領域に対し、1回の主走査動作と、1回の弱紫外線照射動作を行った。また、それ以外の点については、実施例1の薄膜転写物と同様にして、被転写物50上に紫外線硬化型インクのインク層を形成した。
参考例2の薄膜転写物の製造工程においては、実施例1の薄膜転写物の製造時と同様に、被転写物50へのインクの着弾後、インクのドットが拡がる時間を十分に確保できる。そのため、図5(c)に示した写真から分かるように、参考例2の薄膜転写物においても、実施例1の薄膜転写物と同様に、転写後の蒸着膜106の表面を、適切かつ十分に均一化することができた。また、これにより、高い金属光沢性を有する状態で金属の蒸着膜106を転写することができた。しかし、参考例2の薄膜転写物においては、蒸着膜106の一部に点状の欠陥が発生した。
ここで、本願の発明者は、更なる実験等により、実施例1の薄膜転写物のように、走査動作の回数を2回以上とした場合、このような欠陥がほとんど生じないことも確認をした。そのため、この欠陥は、被転写物50上の各領域への主走査動作の回数を1回のみとしたことと関連していると考えられる。
以上の実験結果から、本例の薄膜転写物の製造方法においては、被転写物50へのインクの着弾後、インクのドットが拡がる時間を十分に確保することにより、転写後の蒸着膜106の表面を、適切かつ十分に均一化することが確認できた。これにより、例えば、本例の薄膜転写物の製造方法によって、高い品質の薄膜転写物を適切に製造できることが確認できた。
また、被転写物50上の各領域への主走査動作の回数を2回以上とすることにより、転写後の蒸着膜106に点状の欠陥が生じることを防ぎ得ることが確認できた。これにより、被転写物50上の各領域への主走査動作の回数を2回以上とすることで、より高い品質の薄膜転写物をより適切に製造できることが確認できた。
続いて、半硬化液体形成工程において用いる印刷装置10の構成の変形例について、説明をする。本例の薄膜転写物の製造方法において、半硬化液体形成工程において用いる印刷装置10としては、例えば図2に示した構成と異なる構成と異なる構成の印刷装置10を用いることも考えられる。図6は、印刷装置10の構成の第2の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図6において、図1〜図4と同じ符号を付した構成は、図1〜図4における構成と、同一又は同様の特徴を有する。
図6に示した構成において、紫外線光源14は、インクジェットヘッド12に対して相対的に被転写物50が移動する副走査方向への移動方向において、インクジェットヘッド12よりも下流側に配設される。また、これにより、紫外線光源14は、副走査方向においてインクジェットヘッド12と位置をずらして配設される。そして、この構成により、紫外線光源14は、副走査方向においてインクジェットヘッド12と異なる位置において、被転写物50へ向けて紫外線を照射する。
このように構成した場合、被転写物50上の各領域は、インクジェットヘッド12による主走査動作と、その後の副走査動作が行われた後に、紫外線光源14と対向する。そのため、被転写物50上の各領域において、インクの着弾のタイミングと、紫外線の照射のタイミングがずれることになる。また、これにより、紫外線光源14は、被転写物50に吐出された後に所定の平坦度にまで拡がった紫外線硬化型インクに対し、半硬化用の弱い紫外線を照射する。そのため、このように構成した場合も、被転写物50へのインクの着弾後、インクのドットが拡がる時間を十分に確保できる。また、これにより、例えば、転写後の蒸着膜の表面を、適切に均一化できる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。