このような乗用コンベヤは、例えば、エスカレータや動く歩道である。エスカレータは、典型的に高さの異なる階床の間で乗客を搬送する乗用コンベヤである。動く歩道は、一般に水平に延びる面あるいは僅かな傾斜を有する面に沿って乗客を搬送するために使用される。
このような乗用コンベヤは、典型的に、フレーム、移動手すりを備える欄干、(例えば、踏段バンドまたはパレットバンドなどの)無端搬送バンドおよび搬送バンドを推進させる搬送チェーンを含む駆動装置を含む。
フレームは、左右両側にトラス部を含む。各々のトラス部は、乗場を構成する2つの端部を有し、これらの端部は傾斜した中間部あるいは動く歩道の場合には水平の中間部によって連結されている。一方の乗場が、トラスの間に配置された乗用コンベヤの駆動装置またはマシンを収容することが多い。
搬送チェーンは、上流のおよび下流の乗場にそれぞれ設けられたシーブもしくはスプロケットの間でエンドレスに移動する。搬送チェーンは、複数の搬送チェーンリンクを含み、各々の搬送チェーンリンクには、対応する搬送チェーンローラが関連して設けられており、連続する搬送チェーンリンクは、対応する搬送チェーンローラを介して連結されている。搬送チェーン要素は、フレームに固定された搬送チェーンガイドアセンブリによって案内される。
本発明は、特に、(例えば、踏段やパレットの形態の)複数の搬送要素またはトレッドプレートから構成された無端搬送バンドを備える乗用コンベヤに関する。搬送要素は、前面、後面および2つの側面によって画定されるトレッド面を含む。搬送バンドは、(一般に踏段チェーンまたはパレットチェーンと呼ばれる)少なくとも1本の搬送チェーンに駆動可能に連結される。多くの場合、無端の経路に沿って平行に走行する2本の側方搬送チェーンが設けられており、搬送バンドが両方の搬送チェーンに駆動可能に連結される。
大きな傾斜なく上流の乗場と下流の乗場との間で移動する動く歩道の場合は、搬送バンドと搬送チェーンが上流および下流の反転部の周りで駆動されているというほうが適切かもしれない。エスカレータの場合は、反転部は一般に下方および上方の反転部と呼ばれる。
乗用コンベヤの駆動装置は、典型的に、搬送チェーン、(例えば、スプロケットまたは歯車の形態の)搬送チェーン駆動輪および駆動モータを備える。搬送チェーンは、一方の乗場から他方の乗場へそして戻るように連続的な閉ループに沿って移動する。搬送チェーンは、例えば、搬送チェーンの対応する搬送チェーンローラを支持する搬送チェーンローラ軸を介して搬送要素に駆動可能に連結されている。搬送チェーンローラ軸は、対応する搬送要素を枢軸運動可能に支持する。駆動モータは、直接または追加の動力伝達装置を介して、搬送チェーンを駆動するように連結された駆動シーブを駆動する。一般に、終駆動装置は、反転領域に設けられた一対のチェーン反転駆動輪として実現される。これらの駆動輪は、搬送要素および搬送チェーンの寸法に基づいており、一例として、ほとんどのエスカレータ装置では直径が一般に750mmである。各々の駆動輪の周りには、搬送チェーンが案内および駆動されている。
搬送チェーンの推進が反転部の近傍で行われずに、例えば、中間部(積載部または戻り部)で行われる乗用コンベヤもある。このような形式の乗用コンベヤでは、チェーン反転ホイールの代わりに反転プレートまたは基本的に半円形のガイドウェイを設け、搬送チェーンローラが反転プレートまたはガイドウェイによって画定される経路をたどるようにすることができる。搬送チェーンローラは、反転プレートまたはガイドウェイにおいて、積載部から乗用コンベヤの戻り部へと反転する。反転部は、例えば、チェーン反転ホイール、反転ガイドウェイまたは反転プレートなどのあらゆる種類の構成を含むものである。
例えば、エスカレータまたは動く歩道などの乗用コンベヤの搬送要素は、基本的にボックス型の要素を典型的に含み、このボックス型の要素は、“トレッド”とも呼ばれるトレッド面と、“ライザ”と呼ばれるエスカレータの傾斜領域で露出する前面と、を含む。動く歩道の場合には、ライザは典型的に乗客に見えることはない。エスカレータまたは動く歩道の動作中に乗客に見えることがない、ボックスの残りの側面、底面および後面は、閉じていてもよいが多くの場合開いたままである。これは、特に、トレッド面の反対で搬送要素の後方に位置する搬送要素の下面に当てはまる。搬送チェーンに面する搬送要素の側壁は、構造上の理由から典型的に一様に配置されている。ボックス様の搬送要素の後壁が前面に対向して設けられていない場合には、搬送チェーンに面するボックスの側壁は、底部に向かってテーパとなった三角形状を有することが多く、搬送要素自体は、前面の近傍における搬送要素の厚みに比べて後方領域で厚みが比較的薄い。このような寸法のために、重量および要求される材料がかなり減少する。
各々の搬送要素は、典型的に搬送チェーンローラ軸によって搬送チェーンに固定されている。搬送チェーンローラ軸は、通常、搬送要素本体を貫通し、2本の搬送チェーンが側方に設けられている場合には両自由端で搬送チェーンに連結されている。搬送要素は、容易に加工できる材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金またはプラスチックのように押出可能な材料で従来通り製造される。搬送チェーンローラ軸は、例えば、鉄や鋼などの比較的強度の高い材料で製造される。
乗用コンベヤの反転部において、搬送チェーンリンクならびに搬送要素は、移動方向を逆転するために遷移曲線に沿って移動しなければならない。通常は、遷移曲線に沿って搬送要素および搬送チェーンリンクの両方を案内するために、反転部にはガイド手段が設けられている。よって、遷移曲線の曲げ半径は、搬送要素と搬送チェーンリンクの大きいほうが遷移曲線をたどることができるように選択する必要がある。通常の寸法の搬送要素では、搬送要素が反転部における遷移曲線の最小曲げ半径を定める。よって、このような最小曲げ半径は大きくなってしまい、好ましくない。
乗用コンベヤでは、個々の搬送要素は、“スカートボード”と呼ばれるパネル要素によって側方で制限された“チャネル”内で典型的に移動する。スカートボードは、乗用コンベヤのフレームに固定されており、搬送要素はこれらの(静止した)スカートボードに対して移動する。(移動する)搬送要素と(静止した)スカートボードの間に形成される間隙は、物体や乗客の体の一部が間隙内に引っ張り込まれて捕捉されることが確実にないように、安全上の理由から非常に小さく保つ必要がある。
非常に狭い間隙を確実に得るという必要条件は、高額な保守費用を伴う。特定の場合には、狭い間隙に関する安全上の必要条件を満たすことは全く不可能である。狭い間隙を用いる以外に、このような潜在的リスクを低下させるための選択肢の1つは、搬送要素に固定され、搬送要素と共に移動する底部スカートボードパネルを設けることである。このような可動底部パネルは、例えば、特許文献1に記載されている。このような従来技術の底部パネルは、例えば、入口および出口などのエスカレータの水平領域において、搬送装置のトレッド面の上方に比較的大きく突出するか、比較的設計が複雑であるという難点を有する。
特許文献2は、枢軸運動可能な側方スカートパネルを使用する他の方法を開示している。ここでは、エスカレータの各々の踏段が、対応する踏段チェーンローラ軸を介して踏段チェーンに連結されており、各々の踏段には一対の側方スカートパネルが固定されている。スカートパネルは、対応する踏段およびこれに隣接する踏段を踏段チェーンに連結する踏段チェーンローラ軸によって支持されている。これにより、側方スカートパネルは、踏段が無端搬送経路の傾斜部/水平部に沿って移動するにつれて、踏段ライザの上昇/下降に応じて踏段の対応するトレッド面に対して枢軸運動する。しかし、この構成は、側方スカートパネルと踏段チェーンリンクの両方が踏段のトレッド面と同じ長さを有することを要し、結果として反転部における曲げ半径が大きくなってしまう。
特許文献3は、各々の踏段のトレッド面に固定された円形底部パネルの組合せによって形成された側方パネル構造と、2つの連続する円形底部パネルの間に配置された可動ブリッジ部と、を有するエスカレータを開示している。可動ブリッジ部は、踏段チェーンの対応するリンクと関連して設けられており、踏段チェーンが無端搬送経路の異なる部分を通って移動するに従ってリンクに対して静止状態に保たれる。各々のブリッジ部は、2つの凹状の境界端部を有し、これらの境界端部は、隣接する底部パネルの円形端部と協働してエスカレータの移動経路に沿って踏段の両側面に連続する障壁を提供する。この構造は、また、各々の踏段のそれぞれの側面に1つの円形底部パネルと1つのブリッジ部を正確に配置することを要し、特許文献2と同様に、結果として反転部における曲げ半径が大きくなってしまう。
図1〜図8は、エスカレータ10の形態の実施例の種々の説明図である。例えば、動く歩道の形態の他の実施例も可能である。
図1は、エスカレータ10のトレッドプレートまたは踏段12の移動経路の直線部におけるエスカレータ10の平面図を示す。(以下でより詳細に説明するが)図1では、複数の連続するトレッドプレートまたは踏段12a,12bが示されており、これらの踏段は、枢軸運動可能な側方スカートボードの形態の対応する左右の側方パネル部材14を備えている。特に、側方パネル部材14は、連続する踏段12a,12bの一方または両方の側面と関連して設けられている。以下では、踏段およびパネル部材をそれぞれ示すために参照符号12,14を使用する。
踏段12a,12bは、エスカレータのフレームに支持される方法が異なる。以下でより詳細に説明するように、踏段12aは、踏段チェーンローラ軸26を介して支持されており、踏段12bは、搬送要素軸28を介して支持されている。他の点では、踏段12a,12bは、同一の構造を有しうる。以下の説明では、踏段12aを“第1の踏段”と呼び、踏段12bを“第2の踏段”と呼ぶ。第1の踏段12aと第2の踏段12bは、支持方法が異なり、踏段チェーンローラ軸26または搬送要素軸28を介してそれぞれ支持されている。
図4は、エスカレータ10の上部移行部において移動する複数の連続する同様の形態の側方パネル部材14を示す側面図である。図6は、エスカレータ10の下部移行部において移動する複数の連続する側方パネル部材14の横断面図を示し、図7,図8は、エスカレータ10の上部反転部において移動する複数の連続する側方パネル部材14およびトレッドプレートまたは踏段12a,12bの横断面図を示す。
全図において、相当する要素および特徴部は、同じ参照符号によって示されている。よって、特定の図に関する説明は、他の図にも一般に適用される。つまり、全図において、繰り返し説明していない。
図1〜図8は、連結された複数のトレッドプレートまたは踏段12a,12bから構成された無端踏段バンドを備えるエスカレータ10を示している。踏段バンドの踏段12aは、側方で搬送チェーンまたは踏段チェーン16に連結されている。エスカレータ10は、踏段12の側方にそれぞれ配置された2本の踏段チェーン16を有している。踏段12に関する“側方”という用語は、(図1のように)平面図において、踏段チェーン16が踏段バンドの踏段12の側方に隣接して設けられている実施例だけでなく、平面図において、踏段チェーン16が側方で完全にもしくは部分的に踏段バンドの踏段12のトレッド面の下方に設けられた実施例(図示省略)も含む。
各々の踏段チェーン16は、一連の踏段チェーンリンク18(交互に設けられた外側踏段チェーンリンク18’の対と内側踏段チェーンリンク18”の対)を含む。踏段チェーンリンク18は、長手方向の両端部に対応する連結部を有する。隣接する2つの踏段チェーンリンク18は、対応する連結部において互いに枢軸運動可能に連結されている(図面では、これらの連結部の枢軸をAとして示している)。エスカレータフレーム(図示省略)に固定された踏段チェーンガイド内で無端移動経路に沿って踏段チェーン16を案内する踏段チェーンローラ20もこれらの連結部に支持されている。
エスカレータ10は、踏段チェーンと噛み合う歯付き駆動スプロケットまたは踏段チェーンと噛み合う無端の循環式歯付き駆動ベルトを使用して実現可能な駆動ユニット(図示省略)によって駆動されている。
例えば、図1〜図4は、各々の踏段12が、“ライザ”24に隣接する前面、前面の反対側でトレッド面に設けられた後面、および前面と後面を連結する2つの側面によって定められるトレッド面または“トレッド”22を備えることを示している。
図1は、さらに、無端経路に沿った踏段の移動にわたって、対応する踏段に対して静止した状態を保つように踏段12と共に移動する側方パネル部材またはスカートパネル14を示している。各々の踏段12には、一対の側方(左右の)パネル部材14が支持されている。パネル部材14は、踏段12に対して枢軸運動可能に支持されており、踏段が傾斜部へと移動するときに対応する踏段のトレッド面に対して上昇し、踏段が水平部(すなわち、上方および下方の乗場部分)へと移動するときにトレッド面に対して下降する。
第1の踏段12aは、踏段チェーンローラ軸26によって踏段チェーン16に連結されている。踏段チェーンローラ軸26は、各々の踏段12aの前面の近傍に設けられており、踏段チェーンリンク18の対応する連結部の軸Aと一致する。また、踏段チェーンローラ軸26は、対応する踏段チェーンローラ20をそれぞれの自由端で支持する。実施例では、踏段12を左右の踏段チェーン16に連結するために共通の踏段チェーンローラ軸26が設けられているが、踏段の左側および右側に2つの独立した踏段チェーンローラ軸26を設けてもよい。
第1の踏段12aには、側方パネル部材14が支持されている。これらの第1の側方パネル部材14は、対応する踏段12aを踏段チェーン16に連結する踏段チェーンローラ軸26によって支持されている。
第1の踏段12aおよび対応する側方パネル部材14と、踏段チェーン16と、の踏段チェーンローラ軸26による連結は、図1で“Y”として示した特徴部を拡大して示す図2により詳細に示されている。
第2の踏段12bは、側方踏段チェーン16に連結されていない。代わりに、踏段12bには、搬送要素軸28によって側方パネル部材14が枢軸運動可能に支持されている。第1の踏段12aに対する踏段チェーンローラ軸26の配置に対応して、搬送要素軸28は各々の第2の踏段12bの前面の近傍に配置されている。図1に示すように、搬送要素軸28は、無端移動経路の直線部に沿って移動するときに、踏段チェーン16の対応する踏段チェーンローラ20と同軸に配置され、搬送要素軸28の軸Bは踏段チェーンリンク18の対応する連結部の軸Aと一致する。しかし、搬送要素軸28と対応する踏段チェーンローラ20との間には機械的な連結部はない。むしろ、図1で“X”として示した領域の詳細説明図である図3により明瞭に示されているように、搬送要素軸28の端部と対応する踏段チェーンローラ20の間には間隙32がある。図3で示すように、踏段チェーンローラ20の軸21は、間隙32によって搬送要素軸28から離間されている。
図1の実施例では、第2の踏段12bの両側面に側方パネル部材14を枢軸運動可能に支持するために共通の搬送要素軸28が設けられている。しかし、独立した搬送要素軸28を踏段の左右の側面に設けることもできる。
図1からわかるように、搬送要素軸28の各々は、軸方向端部に対応する搬送要素ローラ30を支持している。搬送要素ローラ30は、エスカレータの静止フレームに設けられたパネル部材ガイドアセンブリ(図示省略)と係合している。これにより、搬送要素ローラ30は、踏段チェーンローラ20の移動経路とは異なる移動経路に沿って案内される。これは、移動経路の反転部において重要である。
図1からわかるように、搬送要素ローラ30は、踏段チェーンローラ20を備える踏段チェーン16の横方向内側に配置されている。これにより、搬送要素ローラ30の搬送経路と踏段チェーンローラ20の搬送経路が、干渉せずに互いを横切ることが可能になっている(搬送要素ローラの移動経路が点線で示されており、踏段チェーンローラの移動経路が踏段チェーンリンクの径方向“内側”端部をつなぐ線をほぼたどる図7,図8参照)。
図4は、踏段12からエスカレータの一方の側面を見た側面図(すなわち、“前面”からの側面図)を示している。図4は、踏段12a,12bと共に移動するいくつかの側方パネル部材14と、パネル部材14の頂部を覆って上向きに延在する静止した欄干パネル34と、を示している。例えば、ガラス製の欄干がパネル34に設けられ、手すり(図示省略)が欄干の外側端部に沿って踏段バンドと実質的に同期して移動する。図4は、さらに、各々の踏段12a,12bによってそれぞれ支持された複数の踏段ローラ36を示している。踏段ローラ36は、踏段が移動経路の傾斜部から水平部に移動するときおよびその逆のときに連続する踏段が互いに対して正しく枢軸運動するように設けられている。図4の断面全体にわたって、各々の踏段チェーンローラ20の軸Aは、対応する搬送要素軸28および搬送要素ローラ30の軸Bとほぼ一致する。よって、図4では踏段チェーンローラ20のみが示されている。
図5は、1つの側方パネル部材14を詳細に示している。全ての側方パネル部材14は、同一の形状寸法を有する。側方パネル部材14は、ディスクの一部の形態の前部141と、略三角形の主要部142と、を有する。主要部は、前部141の反対側に後方端部143を有する。後方端部143は、ディスク形状の前部の半径と同じ半径の円のセクタの形態を有し、凹面をなしている。よって、連続するパネル部材14のディスク形状の前部141が後方端部143の空間に収容されて後方端部143に密に接触し、間隙が実質的になくなる。接触端部の形状が円周の一部の形態を有することにより、2つの連続するパネル部材14,14が、接触する端部の間に間隙を生じることなく、ディスク形状の前部141の中心周りで互いに対して回転することが可能となる。
前部141は、開口部144を含む。パネル部材14が第1のパネル部材14aである場合には、対応する踏段チェーンローラ軸26が開口部144に収容される。一方、パネル部材14が第2のパネル部材14bである場合は、対応する搬送要素軸28が開口部144に収容される。さらに、パネル部材14には、前面の反対側の面に、軸方向端部に開口部を有するラグ145が設けられている。この開口部は、後方端部143からディスク形状の前部141の半径に対応する距離に設けられている。よって、第1のパネル部材14aか第2のパネル部材14bかに関係なく、2つの連続するパネル部材14は、隣接するパネル部材14を対応する踏段に連結する(隣接するパネル部材が第1のパネル部材であれば踏段チェーンローラ軸26であり、隣接するパネル部材が第2のパネル部材14bであれば搬送要素軸28である)軸26,28をラグ145に設けられた開口部に嵌め込むことによって互いに連結することができる。これにより、パネル部材14は、互いに連結されたパネル部材のチェーンを構成する。
図6は、欄干の外側からエスカレータの側面を見た横断面図を示している。図6では、複数の連続する踏段12a,12bと対応する側方パネル部材14が、エスカレータの下方移行領域で移動している。また、図6には、(図1に示したように、交互に設けられた外側踏段チェーンリンク18’の対と内側踏段チェーンリンク18”の対が踏段チェーンローラ20を介して互いに連結された)複数の踏段チェーンリンク18を備える踏段チェーン16が示されている。また、図6に示す移動経路では、搬送要素軸の軸Bは、踏段チェーンローラ20の軸Aと一致するので、軸Aのみが示されている。
図7,図8は、欄干の外側から内部を示す図であり、図6と同様に、複数の連続する側方パネル部材14と、エスカレータ10の上方反転部において移動する踏段チェーンの複数の連続するリンク18と、を示している。図7は、図8に示す踏段12a,12bが図7では明瞭化のために省略されている点でのみ図8と異なっている。
図7,図8の両方において、踏段チェーンリンク18および踏段チェーンローラ20は、踏段チェーンガイドアセンブリ(図示省略)によって予め定められた第1の移動経路をたどることが明瞭に示されている(図7,図8では、踏段チェーンローラの移動経路は踏段チェーンリンク18の径方向“内側”端部によって形成される多角形の線とほぼ同一である)。第1の踏段12aと対応するパネル部材14も、踏段チェーンローラ軸26によって支持されているため、踏段チェーンガイドアセンブリが定める移動経路をたどる。しかし、第2の踏段12bおよびそのパネル部材14は、搬送要素ローラ30を支持する搬送要素軸28によって支持されているため、踏段チェーンローラ20の移動経路とは異なる移動経路をたどる。
上部反転部などにおける踏段12a,12bおよび対応するパネル部材14の遷移曲線に沿った移動は、以下のように説明できる。一般に、所定のチェーンリンクピッチを有するチェーンでは、遷移曲線の曲げ半径が最小曲げ半径よりも大きい場合にのみチェーンリンクが遷移曲線を密にたどることができる。このような最小曲げ半径は、チェーンリンクのピッチによって決まる。すなわち、チェーンリンクのピッチが比較的小さければ小さくなり、チェーンリンクのピッチが比較的大きければ大きくなる。
踏段チェーン16は、(対応する側方パネル部材14を含む)第1および第2の踏段12a,12bのチェーンよりも小さい踏段チェーンリンク18のピッチを有する(図7,図8には、パネル部材14のみが示されている)。図示の例では、踏段チェーンリンク18のピッチは、第1および第2の踏段12a,12bのピッチの約3分の1である。よって、踏段チェーンリンク18と第1および第2の踏段12a,12bが、反転部において遷移曲線を密にたどるには、基本的に踏段チェーンスプロケットによって定められる遷移曲線の曲げ半径が第1および第2の踏段12a,12bのチェーンの最小曲げ半径よりも大きくなければならない。しかし、このような曲げ半径は、大きいので望ましくない。
実施例では、反転部における遷移曲線の曲げ半径は、踏段チェーンリンク18が曲げ半径を密にたどることができる一方で、各々の踏段12a,12bが同一のチェーンリンクであるチェーンとして配列された場合に、踏段12a,12bが曲げ半径を密にたどることができないように選択される。踏段12a,12bがそれでも反転部を通過することを可能にするために、第1の踏段12aのみを対応する踏段チェーンローラ軸26を介して踏段チェーン16に連結し、第2の踏段12bを搬送要素軸28上の対応するローラ30を介して支持することにより補償がなされる。ローラ30は、無端経路の中間部でのみエスカレータフレームのガイド手段と係合するが、反転部では係合しない。(図3の間隙32によって示されるように)搬送要素軸28は、踏段チェーン16に連結されておらず、実際には反転部において全く案内されていないため、反転部周りであらゆる経路に沿って移動できる。反転部では、第1および第2の踏段12a,12bのチェーンは、2番目ごとのチェーンリンク、すなわち第1のチェーンリンク12aのみがガイド手段と係合するチェーン特性を有する。これにより、反転部において、より大きな自由度が得られる。
図1〜図8に示す実施例では、2番目ごとの踏段(“奇数の踏段”)が第1の形式の踏段12aとしてそれぞれ選択され、これらの踏段は、対応するパネル部材14aと共に踏段チェーンローラ軸26によって支持される。同様に、2番目ごとの踏段(“偶数の踏段”)が第2の形式の踏段12bとして選択され、これらの踏段は、対応するパネル部材14bと共に踏段チェーンに連結されていない搬送要素軸28によって支持される。他の実施例では、第1の形式の踏段および第2の形式の踏段の割当ては異なりうる。
さらに、図1〜図8に示す実施例では、隣接する踏段13の対応する箇所の間の距離によって定められる搬送バンドのピッチは、搬送チェーンのピッチの3倍である。換言すると、1つの踏段12に対してそれぞれ3つの踏段チェーンリンク18がある。よって、2番目ごとの踏段のみが第1の形式の踏段12bとして選択される場合、6番目ごとの踏段チェーンローラ20のみが踏段チェーンローラ軸26によって支持される。踏段チェーンのピッチに対して搬送バンドの他のピッチが選択される他の実施例も考えられる。
上述した実施例によって、無端搬送バンドと搬送チェーンを備える乗用コンベヤが提供され、乗用コンベヤは従来技術の構成の難点を克服する別の構成を有する。特定の実施例は、特に反転部において必要な空間が比較的小さい乗用コンベヤにおける搬送要素の構成を提供する。
一実施例では、複数の搬送要素を備える無端搬送バンドを有し、少なくとも1本の無端搬送チェーンが搬送バンドに駆動可能に連結されており、搬送チェーンは、第1および第2の反転部周りで駆動されるとともに、複数の搬送チェーンリンクと、複数の搬送チェーンローラと、を備え、連続する搬送チェーンリンクが対応する搬送チェーンローラによって連結されており、複数の搬送チェーンローラ軸をさらに有し、各々の搬送チェーンローラ軸は、搬送チェーンに対応する搬送要素を連結し、搬送要素は、対応する搬送チェーンローラ軸によって支持された第1の搬送要素と、搬送要素軸によって支持された第2の搬送要素と、を含む、乗用コンベヤが提供される。
典型的に、搬送バンドは、搬送チェーンと共に第1および第2の反転部周りで駆動される。
基本的に、反転部における搬送チェーンの曲げ半径は、隣接する搬送チェーンローラの軸の間の距離として定められるピッチが比較的小さい搬送チェーンを使用することで減少させることができる。搬送チェーンのピッチが小さいほど搬送チェーンリンクが短くなり、比較的小さい曲げ半径で搬送チェーンが移動経路に沿って案内される。しかし、搬送要素の各側面に枢軸運動可能に支持された対応するパネル部材を有する乗用コンベヤ構成では、側方パネル部材が、搬送チェーンの連続するチェーンローラの搬送チェーンローラ軸に取り付けられているので、搬送チェーンは搬送要素やその側方パネル部材と同じ経路を移動しなければならない。このため、搬送チェーンは、反転部で最小曲げ半径を定める搬送要素と同じピッチを有する。
搬送チェーンローラ軸を介して搬送チェーンに連結される連続する搬送要素は、比較的小さい曲げ半径に沿って案内することができないので、搬送要素および対応する側方パネル部材を支持する搬送チェーンローラ軸がn番目ごと(図7,図8では3番目ごと)の搬送チェーンローラのみに関連するように、搬送要素のピッチに対して搬送チェーンのピッチを単に減少させることは効果がない。
本発明は、第1の搬送要素と呼ばれる搬送要素の部分集合のみが、搬送チェーンの搬送チェーンローラも支持する搬送チェーンローラ軸によって支持される異なる構成を提案する。第2の搬送要素と呼ばれる搬送要素の他の部分集合があり、この部分集合は、搬送チェーンローラ軸によって支持されず、代わりに搬送要素軸によって枢軸運動可能に支持される。第1の搬送要素が踏段チェーンローラ軸を介して搬送チェーンに連結されており、第2の搬送要素が搬送チェーンに直接的に連結されていないこと以外は、第1および第2の搬送要素は同一とすることができる。第1および第2の搬送要素の上述の構成によって、第2の搬送要素は、第1の搬送要素の移動経路とは異なる移動経路をたどることが可能となる。このような構成により、一方では第1の搬送要素が、そして他方では第2の搬送要素が、反転部において異なる移動経路をたどることが可能になるため、乗用コンベヤの反転部において比較的小さい曲げ半径を得ることができることが実証されている。第2の搬送要素は、反転部において、搬送チェーン要素の経路をたどる第1の搬送要素の経路からそれることが可能となっているということができる。
対応するパネル部材が搬送要素の各々の側面に枢軸運動可能に支持されている従来の乗用コンベヤ構成では、側方パネル部材は、搬送チェーンの連続するチェーンローラの搬送チェーンローラ軸に取り付けられており、これにより、搬送チェーンは、搬送要素およびその側方パネル部材と同じ経路を移動しなければならない。このため、搬送チェーンは、反転部における最小曲げ半径を定める搬送要素と同じピッチを有する。
第1および第2の搬送要素を含む構成は、上述したように搬送要素の側方に少なくとも1つのパネル部材をそれぞれ備える搬送要素を有する乗用コンベヤで特に有利である。このような構成における少なくとも1つのパネル部材は、対応する搬送要素に対して静止し、かつ対応する搬送要素に対して枢軸運動可能に支持することができる。第1の搬送要素に関連するパネル部材は、対応する搬送チェーンローラ軸によって搬送要素に支持することができる。第2の搬送要素に関連するパネル部材は、対応する搬送要素軸によって搬送要素に支持することができる。
一実施例では、上述の特徴部のあらゆる組合せに加えて、例えば、踏段チェーンローラ軸が搬送要素軸を超えて側方に延在するように、各々の搬送要素軸を対応する搬送チェーンリンクの搬送チェーンローラに連結しないことができる。搬送要素および搬送チェーンの無端移動経路の重要な部分、特に直線部分または僅かに湾曲した移行部では、搬送要素および搬送チェーンは同一または平行な移動経路を移動するが、このような部分において搬送要素軸は搬送チェーンローラと同軸に整列可能であるとしても、搬送要素軸と対応する搬送チェーン軸の間に連結部はない。これにより、より急な湾曲部を有する移動経路の部分、特に反転部において、搬送要素軸と対応する搬送チェーンローラの整列のずれが生じる。このようなずれは、第2の搬送要素およびこれに支持された対応する第2の側方パネル部材の“外側に回転する(swivel out)”動作に対応する。
一実施例では、上述の特徴部のあらゆる組合せに加えて、第1および第2の反転部周りの無端経路に沿って搬送チェーンを案内する搬送チェーンガイドアセンブリが提供される。このような搬送チェーンガイドアセンブリは、第1および第2の反転部周りの無端経路に沿って搬送チェーンローラを案内するように、搬送チェーンローラと相互作用するように設けることができる。例えば、搬送チェーンは、内側リンク部材の対と外側リンク部材の対を備えることができ、内側リンク部材の対は、搬送チェーンローラによって外側リンク部材の対に連結される。搬送チェーンガイドアセンブリは、典型的に、搬送チェーンローラの径方向に延在する部分と係合する。上述の第1の搬送要素では、対応する搬送チェーンローラが、対応する搬送チェーンローラ軸によって支持される。
他の実施例では、上述の特徴部のあらゆる組合せに加えて、各々の搬送要素軸は、対応する搬送要素ローラを支持しうる。このような搬送要素ローラにより、少なくとも第1および第2の反転部周りの無端経路の部分に沿って搬送要素ローラを案内するように、搬送要素ガイドアセンブリと搬送要素ローラとの相互作用が可能になる。一般に、搬送要素および搬送チェーンの少なくとも無端移動経路の湾曲部(例えば、第1および第2の反転部)において、搬送チェーンガイドアセンブリと搬送要素ガイドアセンブリは、搬送チェーンローラと搬送要素ローラの異なる移動経路をそれぞれ定め、これにより、このような部分では搬送要素ガイドアセンブリは搬送チェーンガイドアセンブリとは違うものとなる。実施例では、搬送要素ローラは、反転部において完全に案内されない状態で移動することもできる。しかし、無端移動経路の少なくとも実質的に直線状の部分では、搬送要素ローラおよび搬送チェーンローラは同じまたはほぼ同じ移動経路を移動し、このような部分では搬送チェーンガイドアセンブリは搬送要素ローラを案内するために使用できると考えられる。
一実施例では、上述の特徴部のあらゆる組合せに加えて、搬送要素ローラを搬送チェーンローラの横方向内側、すなわち搬送チェーンローラよりもトレッドの側面の近くに配置することができる。このような構成では、搬送要素ローラの移動経路および搬送チェーンローラの移動経路は、干渉せずに互いに交差することができる。
一実施例では、上述の特徴部のあらゆる組合せに加えて、n個(nは1より大きい整数)の搬送要素は、対応する搬送チェーンローラ軸を介して搬送チェーンに連結可能であり、m個(mは1より大きい整数)の搬送要素は、対応する搬送要素軸を介して支持可能である。一般に、各々の搬送要素が搬送チェーンローラ軸または搬送要素軸のいずれかによって支持されるように、n+mは搬送要素の総数に等しい。
例えば、2番目ごとあるいは3番目ごとの搬送要素は、対応する搬送チェーンローラ軸を介して搬送チェーンに連結することができる。搬送チェーンローラ軸を介して搬送チェーンに直接連結されない搬送要素は、反転部において搬送チェーンに対して“外側に回転”可能となる。2番目ごとの搬送要素が対応する搬送チェーンローラ軸を介して搬送チェーンに連結された特定の例では、反転部において1つおきの搬送要素が外側に回転可能となる。
一実施例では、上述の特徴部のあらゆる組合せに加えて、搬送チェーンのピッチは、搬送チェーンローラ軸のピッチよりもかなり小さくすることができる。換言すると、搬送チェーンローラの数(すなわち、搬送チェーンリンクの数)は、搬送チェーンローラ軸の数のk倍(kは1より大きい整数)とすることができる。特定の一実施例では、6番目ごとの搬送チェーンローラのみが搬送チェーンローラ軸に支持される。このようにして、搬送要素が反転部において移動するときに大きな自由度が得られる。通常は、搬送チェーンのピッチは、搬送要素のピッチよりも小さい。各々の搬送要素には、2つ以上の搬送チェーンリンクが関連して設けられる。搬送要素が反転部において異なる移動経路をたどることが可能なため、反転部の遷移曲線の曲げ半径が、搬送チェーンリンクが遷移曲線を密にたどることが可能になる曲げ半径まで減少する。一例では、搬送チェーンのピッチは、搬送要素のピッチの3分の1とすることができる。
一実施例では、上述の特徴部のあらゆる組合せに加えて、各々の搬送要素は、前面、後面および2つの側面によって画成されるトレッド面を備えることができ、搬送要素が対応する搬送チェーンローラ軸または対応する搬送要素軸によって支持される位置は、搬送要素の前面の近傍に設けられる。トレッド面は、前面において“ライザ”と呼ばれる通常は実質的に垂直に延在する面と接触する。
他の実施例では、上述の特徴部のあらゆる組合せに加えて、一連のパネル部材が、静止した側方パネル要素と搬送要素のトレッド面との間で搬送要素の側方に延びる空間を覆うように、複数のパネル部材を連続的に配置することができる。
他の実施例では、上述の特徴部のあらゆる組合せに加えて、複数のパネル部材を搬送要素の各々の側面に連続的に配置してもよい。側方パネル部材の間で移動する搬送要素によって搬送チャネルが形成されるように、複数の連続するパネル部材を搬送要素の一方の側面に配置し、かつ複数の連続するパネル部材を搬送要素の反対側の側面に配置することができる。
乗用コンベヤのさらに他の実施例では、上述の特徴部のあらゆる組合せに加えて、搬送要素の移動経路に沿って搬送要素の側方に延在する垂直方向の空間が一連のパネル部材によって覆われるように、複数のパネル部材を連続的に配置することができる。
乗用コンベヤは、搬送要素と平行に走行し、搬送要素の側方にそれぞれ配置された第1および第2の搬送チェーンをさらに含む。各々の第1および第2の搬送チェーンは、第1および第2の反転部周りで駆動される。
搬送要素の第1の部分集合に割り当てられた対応する搬送要素は、(共通の)搬送チェーンローラ軸を介して第1および第2の搬送チェーンに連結可能である。