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JP2013520405A - 角膜の繊維症および/または濁りを治療するための、形質転換成長因子−β1(TGF−β1)インヒビターペプチドの使用 - Google Patents

角膜の繊維症および/または濁りを治療するための、形質転換成長因子−β1(TGF−β1)インヒビターペプチドの使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、角膜の線維症および/または角膜の濁りを予防および/または治療するための形質転換成長因子−β1(TGF−β1)インヒビターペプチド、またはこのペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用に関する。

Description

本発明は、一般的に、角膜の線維症および/または角膜の濁りを予防および/または治療するための生成物、組成物および方法に関する。本発明の方法は、形質転換成長因子−β1(TGF−β1)インヒビターペプチド、またはこのペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用を含む。
眼の表面(すなわち、角膜)は、重層上皮とその下にある結合組織で覆われている。角膜は眼の構造の外側膜として機能し、化学成分、微生物の攻撃または物理的損傷といった外部刺激による妨害を防ぐ。角膜の無血管性、透明性、および規則的な湾曲は、すべて適切な光の屈折には必須であり、したがって、適切な視力に必須である。
角膜の濁りは、通常は透明な眼の前表面がくもることであり、濁りの進行は、角膜の先天的な創傷治癒機序の副作用に続発するものと考えられている。組織が傷つくと、間葉細胞および浸潤した炎症細胞(すなわち、マクロファージ)は、最も重要な線維形成成長因子のひとつである形質転換成長因子−TGF−β1(TGF−β1)を含む種々の成長因子/サイトカインを分泌する。TGF−β1は、組織の完全性を維持するのに重要であるが、治癒しつつある上皮下組織での線維形成反応をも促進してしまう。
角膜の組織修復に関与する主な化学成分は、皮膚の場合と非常によく似ており、重層上皮とその下にある間葉細胞(角膜線維芽細胞)を含むコラーゲン基質である。角膜の透明性と規則正しい形状を維持するには、I型、III型、V型のコラーゲン線維の組織化された細胞外マトリックス構造と、その繊維の間にあるプロテオグリカンが必須である。角膜が線維化すると、透明性が失われ、組織の収縮および瘢痕の変形が起こり、これによって角膜が濁る。
角膜の濁りを治療するのに、局所抗炎症ステロイド薬(例えば、デキサメタゾン、フルオロメトロンまたはプレドニゾロン)および局所代謝拮抗薬(例えば、マイトマイシンC)双方の使用が現在広く行われている。しかし、これらの薬剤は、重篤な合併症を伴うことがある。局所ステロイド薬を使用すると、眼圧が上がり、視神経が損傷し、視界が変わってしまうことがある。マイトマイシンCは、瘢痕または濁りを生じる眼の細胞などの特定の種類の細胞が増殖したり、成長したりするのを止めることができるため、使用されてきた。しかし、マイトマイシンCは、ある状況下では、効力が非常に大きく、潜在的に毒性がある。マイトマイシンCを使用した後に報告されている眼に関連する合併症としては、限定されないが、結膜充血(眼の充血)、永久的な幹細胞欠乏、角膜もしくは強膜の菲薄化、または角膜移植を必要とする穿孔、角膜代償不全、白内障、および網膜血管閉塞が挙げられる。
TGF−β1は、角膜および他の組織の濁りおよび瘢痕化の重要な制御因子であることが分かってきている。実際、成人組織では、TGF−β1およびTGF−β2の発現が増加した。同様に、治癒しつつある角膜損傷に外因性のTGF−β1を加えると、瘢痕化および線維化が肥大する。例えば、特定の中和抗体を用いることや[例えば、Jesterら、Cornea 1997;16(2):177−87;Moller−Pedersenら、Current Eye Research 1998年7月;17(7):736−47;Buehrenら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2009年2月;50(2):634−43を参照]、TGF−β1遺伝子の発現をブロックする、TGF−β1コード遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いること[Cordeiroら、Gene Therapy 2003;10:59−71]などによる、様々な戦略の使用に基づくTGF−β1の阻害は、in vitroおよびin vivoで上手くいくことが分かってきている。抗TGF−β1抗体を用いてTGF−β1を阻害すると、角膜の再上皮形成が促進される一方、角膜実質細胞による基質の細胞再生が低減される[Carringtonら、Invest.Ophthalmol Vis Sci 2006;47:1886−1894]が、抗体を使用すると、このサイトカイン(TGF−β1)を全体的かつ特異的にブロックすることができる。もっとも、血中に外因性免疫グロブリンが存在すること、およびTGF−β1の全身的ブロックに由来する影響の双方によって、ある種の副作用が起こり易くなる。それに加え、免疫グロブリンは長期間安定であり、このサイトカインの活性を短時間だけ制御することはできない。アンチセンスオリゴヌクレオチドは遺伝子発現レベルでTGF−β1の産生を阻害し、これは、このサイトカインが関与する全プロセスの重要な脱制御をもたらすことができるという事実である。
さらに、屈折矯正手術後の濁りを防ぐために、例えば、マンノース−6−ホスフェートのようなTGF−β1インヒビターが提案されてきている[Angunawela & Marshall、J.Cataract.Refract.Surg.2010;36:121−126]。しかし、マンノース−6−ホスフェートは、近年、中間層皮膚移植片のドナー部位の治癒を促進するという第II相臨床試験が上手くいかず、臨床的な抗線維化効能の証拠は得られていない。
米国特許第6,399,107号は、角膜の濁りを治療するためにグリコサミノグリカン合成阻害剤を使用することを開示している。米国2004/0001821号公報は、レーザーによる視力矯正手術後の角膜および上皮下の濁りを防ぐためにプラスミノーゲン活性化剤の使用を開示しているが、角膜の濁りが改善したという臨床データは報告されていない。
しかし、角膜の線維症および/または濁りを予防および/または治療するために、様々な戦略が存在するが、副作用を最小限にするか、または回避しながら、角膜の線維症および/または濁りを低減させる新規治療を開発することが当該技術分野で必要とされている。
今般、TGF−β1インヒビターペプチドを、角膜の線維症および/または濁りを予防および/または治療するのに使用可能であることを見出した。このペプチドを肝線維症の治療に使用すること(WO 2005/019244)、および免疫調節薬として使用すること(WO 2007/048857)はすでに開示されている。
本発明は、角膜の線維症および/または角膜の濁りを予防および/または治療するための生成物、組成物および方法に関する。この組成物は、少なくとも1つのTGF−β1インヒビターペプチド、またはこのペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる。
したがって、一つの態様では、本発明は、下記からなる群:
(a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント、
(b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
(c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
(e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチド、および/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、並びに
(f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、少なくとも1つ以上の組み合わせから選択される、角膜の線維症および/または角膜の濁りの予防および/または治療用生成物に関する。
または、本発明は、角膜の線維症および/または角膜の濁りの予防および/または治療のための医薬組成物の製造における、下記からなる群:
(a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント、
(b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
(c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
(e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチド、および/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、並びに
(f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、少なくとも1つ以上の組み合わせ、から選択される生成物の使用に関する。
別の態様では、本発明は、角膜の線維症または角膜の濁りを予防および/または治療する方法であって、下記からなる群:
(a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体またはフラグメント、
(b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
(c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
(e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチドおよび/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、並びに
(f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、少なくとも1つ以上の組み合わせ、から選択される生成物を、治療に有効な量、治療を必要とする被検体に投与することを含む、方法に関する。
別の態様では、本発明は、眼用医薬組成物であって、下記からなる群:
(a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント、
(b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
(c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
(e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチド、および/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、並びに
(f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、少なくとも1つ以上の組み合わせ、から選択される、治療に有効な量の生成物と、
この化合物のための医薬的に許容されるビヒクルであって、当該医薬的に許容されるビヒクルが眼への投与に適したものである、ビヒクルとを含む、眼用医薬組成物に関する。
特定の実施形態では、前記生成物は組成物の形態であり、この組成物は、前記生成物(a)〜(e)のうち、少なくとも1つ以上を含む。別の特定の実施形態では、前記組成物は、さらに医薬的に許容されるビヒクルおよび/または治療化合物を含む。
特定の実施形態では、前記TGF−β1インヒビターペプチドは、p144(配列番号6)、p17(配列番号17)、およびこれらの組み合わせからなるペプチドの群から選択されるものである。
図1は、角膜の濁りに対し、TGF−β1インヒビターペプチド(p17およびp144)が及ぼす効果の漸進的な変化を示す。 図2は、上皮(創)閉鎖に対し、ペプチドp17およびp144が及ぼす効果の漸進的な変化を示す。 図3は、p17を適用した後の角膜の濁りの漸進的な変化を示す。図中、 *** p<0.001;5週目における、コントロール対p17は、極めて有意である; ††† p<0.001;5週目のコントロール対0日目のコントロールは、極めて有意である; ### p<0.001;5週目に治療したもの対0日目に治療したものは、極めて有意である。 図4は、p17を適用した後の上皮閉鎖の漸進的な変化を示す。図中、 ** p<0.01;5週目における、コントロール対p17は、非常に有意である; †† p<0.01;5週目のコントロール対0日目のコントロールは、非常に有意である; ### p<0.001;5週目に治療したもの対0日目に治療したものは、極めて有意である。 図5は、p144を適用した後の角膜の濁りの漸進的な変化を示す。図中、 *** p<0.001;5週目における、コントロール対p17は、極めて有意である; * p<0.05;2週目および4週目における、コントロール対p17は、有意である; ††† p<0.001;5週目のコントロール対0日目のコントロールは、極めて有意である; ### p<0.001;5週目に治療したもの対0日目に治療したものは、極めて有意である。 図6は、p144を適用した後の上皮閉鎖の漸進的な変化を示す。図中、 *** p<0.001;5週目における、コントロール対p17は、極めて有意である; * p<0.05;4週目における、コントロール対p17は、有意である; †† p<0.01;5週目のコントロール対0日目のコントロールは、非常に有意である; ### p<0.001;5週目に治療したもの対0日目に治療したものは、極めて有意である。 図7は、p−Smad 2、全Smad2、およびβ−アクチン(ローディングコントロール)に対するp17およびp144のウエスタンブロットの結果を示す。 図8は、ウサギ角膜線維芽細胞のSmad2/3に対するウエスタンブロットの結果を示す。 図9は、TGF−βで処置し、p17およびp144で治療したウサギ角膜線維芽細胞のSmad7に対するウエスタンブロットの結果を示す。 図10は、TGF−β1で処置しない場合、並びに、3ng/mlおよび5ng/mlのTGF−β1で処置した後、のウサギ角膜線維芽細胞について、p−Smad2の免疫蛍光結果を示す。 図11は、TGF−β1、およびp17またはp144で処置しない場合、並びに異なる濃度のそれらで治療した後、のウサギ角膜線維芽細胞について、p−Smad2の免疫蛍光結果を示す。
本発明者らは、化学物質(NaOH)で角膜損傷させた後に角膜線維症を誘発した実験動物モデルにTGF−β1インヒビターペプチドを投与すると、この動物の角膜の線維症および/または濁りが驚くほど低減することを見出し、これにより、角膜の線維症および/または濁りを予防および/または治療するための新しい治療の可能性を提供する。
したがって、本発明は、角膜の線維症および/または濁りを治療するためのTGF−β1インヒビターペプチドに関するが、本発明は、さらに、この疾患の治療のために1種類以上の異なるTGF−β1インヒビターペプチドを使用する可能性をも想定している。同様に、当業者は、1種類以上のTGF−β1インヒビターペプチドが、例えば、ペプチド、融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞などの複数の形態で存在してもよいことを理解するであろう。
このように、第1の態様では、本発明は、下記からなる群:
(a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント、
(b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
(c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
(e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチド、および/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、並びに
(f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、少なくとも1つ以上の組み合わせから選択される、角膜の線維症および/または角膜の濁りの予防および/または治療用生成物(以下「本発明の生成物」という。)に関する。
また、本発明は、角膜の線維症および/または角膜の濁りの予防および/または治療のための医薬組成物の製造における、下記からなる群:
(a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント、
(b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
(c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
(e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチド、および/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、並びに
(f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、少なくとも1つ以上の組み合わせ、から選択される生成物(本発明の生成物)の使用に関する。
(a)本発明のTGF−β1インヒビターペプチド
本発明によれば、特定の実施形態では、本発明の生成物は、TGF−β1インヒビターペプチド(以下「本発明のTGF−β1」という。)、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメントである。
本発明において、「TGF−β1インヒビターペプチド」という用語は、TGF−β1の生物学的活性を阻害する能力をもつペプチドを指し;TGF−β1の生物学的活性の阻害は、例えば、TGF−β1の活性形態と相互作用させることによって行うことができ−特定の実施形態では、TGF−β1インヒビターペプチドは、TGF−β1に直接結合し、そのTGF−β1の生物学的活性を阻害する。
TGF−β1は、哺乳動物で説明されている3種類のアイソフォーム(TGF−β1、2および3)の1つに含まれる、構造的に関連する調節タンパク質(サイトカイン)のスーパーファミリーに属する糖タンパク質である。最も豊富に存在するアイソフォームはTGF−β1であり、ジスルフィド結合によって結合した2個のサブユニットで構成される25kDaのホモダイマーからなる。この成長因子の配列は、数種類の動物種でよく知られている。ヒトTGF−β1のアミノ酸配列は、Derynckらによって開示されている[Derynck Kら、「Human transforming growth factor−beta complementary DNA sequence and expression in normal and transformed cells」.Nature 316(6030)、701−705(1985)]。ヒト配列のGenBank寄託番号は、TGF−β1およびTGF−β1前駆体:NP−000651(タンパク質)およびNM−000660(cDNA)、TGF−β2およびTGF−β2前駆体:NP−003229(タンパク質)およびNM−003238(cDNA)、TGF−β3およびTGF−β3前駆体:NP−003230(タンパク質)およびNM−003239(cDNA)に対応している。TGF−β1のさらなるアミノ酸配列は、GenBank寄託番号:AAL27646.2で示される。TGF−β1は、進化の間で高度に保存された配列をもつ分子である。TGF−β1は、元来は、ラット繊維芽細胞の増殖および形態学的変化とは独立した、接着性を誘発する能力によって定義されていたが、後の研究によって、TGF−β1は、広範囲の細胞種の増殖の一般的な阻害剤であることが示されている。この分子は、細胞分化のあらゆる段階で、非常に多様な細胞種によって、様々な組織で産生される。この分子は、発達、生理機能および免疫応答に関連する強力でかつ頻繁に悪影響を生ずるとともに、さまざまな生物学的効果をもつ。例えば、臓器または組織の機能損失、または手術もしくは美容手術による合併症に関連する線維症(例えば、肝線維症または肺線維症)のような多くの疾患または病理学的変化は、TGF−β1が過剰にまたは無秩序に発現することと関わりがある。
TGF−β1インヒビターペプチド分子は、ペプチドの性質をもち、つまり、アミド結合(すなわち、ペプチド結合)によって結合したα−アミノ酸を含むことを意味する。「ペプチド」という用語は、短鎖アミノ酸に限定されず、50アミノ酸長を超える鎖を含んでいてもよい。このような理由で、ペプチドとの用語は、本明細書において、一般的なポリペプチドおよびタンパク質も包含する。TGF−β1インヒビターペプチドの非限定的な具体例としては、WO00/31135またはUS7,528,226(表2〜6)、およびWO2005/019244に開示されているペプチドが挙げられ、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態では、TGF−β1インヒビターペプチドは、以下の表1に示す配列番号1〜23に示されるいずれかのアミノ酸配列のうち、任意のアミノ酸配列に対して好ましくは少なくとも70%、有益には少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するペプチドである。
Figure 2013520405
本発明のTGF−β1インヒビターペプチドは、従来の技術によって得てもよい;例えば、限定されないが、固相ペプチド合成(例えば、WO00/31135またはWO2005/019244参照)のような化学合成法によって合成し、そして所望の場合は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、そして例えば、シークエンシングおよび質量分析計、アミノ酸分析、核磁気共鳴技術などの従来の技術によって分析してもよい。また、前記本発明のTGF−β1インヒビターペプチドは、前記ペプチドを合成する種々の細胞源(例えば、当該ペプチドを合成または分泌することが可能な組換えDNA分子でトランスフェクトされた細胞)から組換えDNA技術によって、を得ることができる。前記ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、TGF−β1インヒビターペプチドのアミノ酸配列から容易に推測することができる。さらに、前記ペプチドは、市販されていてもよく、例えば、P144はSigma−Genosys、Ltd.(ケンブリッジ、UK)によって供給される。
当該技術分野で知られているように、2つのペプチドまたはタンパク質の間の「配列同一性」または「同一性の程度」は、あるペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列を、他のペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列と比較することによって決定される。本明細書に記載するように、特定のペプチドが、別のペプチドに対し、少なくとも約70%、約80%、約90%または約95%同一であるかどうかは、当該技術分野で既知の方法およびコンピュータプログラムまたはソフトウエア(例えば、限定されないが、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group)、GCGパッケージ(GAPバージョン8、Genetics Computer Group、USA))を用いて決定することができる。BESTFITは、2つの配列間の相同性の最適なセグメントを見つけるために、Smith and Watermanの局所的ホモロジーアルゴリズムを利用している(Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981))。GCGパッケージは、タンパク質の標準的なペナルティ:GAP weight 3.00、length weight 0.100、およびGribskov and Brugess、Nucl.Acids Res.(1986)14(16)、6745−6763に記載されるMatrixを利用している。また、2つのペプチドまたはタンパク質因子間の同一性の程度は、BLASTPアルゴリズムを用いることによって決定することができる[BLAST Manual、Altschul,S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、Md.20894、Altschul,S.ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)]。
当業者は、本発明が、特定のTGF−β1インヒビターペプチド(すなわち、TGF−β1インヒビターペプチドの特定のアミノ酸配列)だけではなく、その機能的に等価な誘導体、改変体、類似体および/またはフラグメントにも関するものであると認識するであろう。したがって、特定のTGF−β1インヒビターペプチドのアミノ酸配列の機能的に等価な誘導体、改変体、類似体またはフラグメントは、好ましくはこの特定のTGF−β1インヒビターペプチドの少なくとも1つの生物学的活性または機能(本発明に関しては、TGF−β1を阻害する能力)を保存している配列である。
特定の実施形態では、TGF−β1インヒビターペプチドは、その配列が配列番号1〜23で示されるペプチド、またはこれらの機能的に等価な塩、誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント(すなわち、TGF−β1を阻害する能力を有するTGF−β1インヒビターペプチドの誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント)からなる群から選択されるペプチドである。したがって、特定の実施形態では、TGF−β1インヒビターペプチドは、そのアミノ酸配列が、配列番号1、または配列番号2、または配列番号3、または配列番号4、または配列番号5、または配列番号6、または配列番号7、または配列番号8、または配列番号9、または配列番号10、または配列番号11、または配列番号12、または配列番号13、または配列番号14、または配列番号15、または配列番号16、または配列番号17、または配列番号18、または配列番号19、または配列番号20、または配列番号21、または配列番号22、または配列番号23で示されるペプチド、またはこれらの機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント(すなわち、TGF−β1を阻害する能力を有するTGF−β1インヒビターペプチドの誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント)である。
別の特定の実施形態では、TGF−β1インヒビターペプチドは、配列番号1〜23のアミノ酸配列に対し、少なくとも70%、有益には少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメントから選択される。
したがって、特定の実施形態では、TGF−β1インヒビターペプチドは、そのアミノ酸配列が、配列番号1、または配列番号2、または配列番号3、または配列番号4、または配列番号5、または配列番号6、または配列番号7、または配列番号8、または配列番号9、または配列番号10、または配列番号11、または配列番号12、または配列番号13、または配列番号14、または配列番号15、または配列番号16、または配列番号17、または配列番号18、または配列番号19、または配列番号20、または配列番号21、または配列番号22、または配列番号23で示されるアミノ酸配列に対し、少なくとも70%、有益には少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するペプチド、またはこれらの機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメントである。
本発明の特定の実施形態では、TGF−β1インヒビターペプチドは、ペプチドp144(配列番号6)、ペプチドp17(配列番号17)、これらの組み合わせ、またはこれらの機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメントから選択され、好ましくは、前記TGF−β1インヒビターペプチドは、ペプチドp144(配列番号6)、ペプチドp17(配列番号17)、およびこれらの組み合わせから選択される。
したがって、本発明のTGF−β1インヒビターペプチドの機能的に等価な誘導体は本発明の範囲内にある。「誘導体」との用語は、本明細書において、当該技術分野で既知の手段によって、残基またはN−末端基もしくはC−末端基上に側鎖として存在する官能基から調製され得る誘導体を包含し、そしてそれらが依然として医薬的に許容される状態である限り、すなわち、それらが上述したペプチドの生物学的活性(すなわち、TGF−β1の生物学的活性を阻害する能力)を損なわず、それらを含有する組成物に毒性を与えない限り、本発明に含まれる。誘導体は、任意の誘導体がTGF−β1インヒビターペプチドの生物学的活性を保持し、そして依然として医薬的に許容される状態である限り、炭水化物またはリン酸塩残基のような化学部分を有してもよい。例えば、誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは一級アミンもしくは二級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部分(例えば、アルカノイルまたは炭素環アロイル基)で形成されたアミノ酸残基のN−アシル誘導体または遊離アミノ基、またはアシル部分で形成された遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体(例えば、セリルまたはスレオニル残基の誘導体)を含んでいてもよい。また、このような誘導体は、例えば、ポリエチレングリコール側鎖を含んでいてもよく、それにより抗原部位をマスクし、体液中の当該分子の滞留時間を伸ばしてもよい。
本発明のTGF−β1インヒビターペプチドの機能的に等価な改変体も、本発明の範囲内にある。本明細書において、機能的に等価な「改変体」との用語は、そのアミノ酸配列を、TGF−β1インヒビターペプチドの元々の配列に由来する1個以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失によって得ることができ[どのアミノ酸の変更が、表現型としてサイレントであり易いかについて言及するガイドラインは、Bowie,J.U.ら(Science 1990、vol.247:1306−1310)に見つけることができる]、そしてTGF−β1の生物学的活性を阻害する能力を少なくとも部分的に保持している任意のペプチドを指す。
ペプチドがTGF−β1を阻害する能力は、TGF−β1活性を測定するのに適した従来の任意のバイオアッセイ、例えば、Meagerによって記載されるアッセイ[Meager A.Journal of Immunological Methods(1991)141:1−14]によって決定されてよい。これらの方法の中で、Mv−1−Lu細胞成長阻害アッセイは特に適している。Mv−1−Lu細胞株は、ミンク肺上皮に由来する細胞株であり、その増殖はTGF−β1によって阻害される。前記Mv−1−Lu細胞成長阻害アッセイの記載は、WO2005/019244中に与えられる。典型的には、本発明のTGF−β1インヒビターペプチドは、Mv−1−Lu細胞成長阻害アッセイで、10%以上、有益には15%以上、好ましくは20%以上の阻害活性を有する。さらに好ましくは、本発明のTGF−β1インヒビターペプチドは、Mv−1−Lu細胞成長阻害アッセイで、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%の阻害活性を有する。さらに、ペプチドがin vivoでTGF−β1の生物学的活性を阻害する能力を評価することができ、そして所望の場合は、例えば、四塩化炭素(CCl)を投与することにより誘発される急性肝臓損傷動物モデルを試験することによって、定量することができる。ペプチドがin vivoでTGF−β1を阻害する能力を決定する前記アッセイの記載も、WO2005/019244中に与えられる。
ペプチドの一次構造の変動、およびより高次の構造的構成の変動、例えば、アミノ酸残基を結合する共有結合の種類の変動、またはペプチドの末端残基に対する基の付加は、本発明の範囲内にある。
特定の実施形態では、機能的に等価な改変体は、1個以上のアミノ酸残基が、保存されたアミノ酸残基または保存されていないアミノ残基(好ましくは、保存されたアミノ酸残基)で置換されている改変体であってもよく、そしてそのような置換アミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされるものであってもよく、コードされないものであってもよい。したがって、改変体は、分子の機能を保存するサイレント変化を生じるような、アミノ酸配列に保存的な変更または非保存的な変更(例えば、欠失、付加、置換を含む)を含んでいてもよい。このような変更された分子は、それらを使用するときに特定の利点をもたらす点で望ましいであろう。本明細書において、保存的置換は、対応するペプチドの配列内にある1個以上のアミノ酸を、同様の極性および疎水性/親水性をもつ別のアミノ酸で置換し、機能的に等価な分子を生じることを含む。このような保存的置換としては、限定されないが、以下のアミノ酸群内の置換が挙げられる:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;フェニルアラニン、チロシン;およびメチオニン、ノルロイシン。当業者は、ペプチドの機能にとって重要ではない位置で保存的なアミノ酸置換を生じるような、TGF−β1インヒビターペプチドをコードするヌクレオチド配列の変異は、その全体的な構造またはその機能に影響を与えない進化的中立突然変異であることを理解するであろう。
改変体は、当該技術分野でよく知られた方法を用い、改変体ペプチドを直接化学合成することによって簡便に調製されてもよい。また、所定のTGF−β1インヒビターペプチドの改変体は、対応するDNA配列内を変異させることによって調製することができる。このような改変体としては、例えば、アミノ酸配列内の残基の欠失、または挿入、または置換が挙げられる。もちろん、改変体をコードするDNA内に作られる変異は、リーディングフレームを変更してはならず、好ましくは、二次mRNA構造を作る可能性がある相補領域を作り出すわけにはいかない。遺伝子レベルで、前記改変体は、通常所定のTGF−β1インヒビターペプチド分子をコードするDNA内のヌクレオチドの部位特異的突然変異によって調製され、それによって、改変体をコードするDNAを作製し、その後、組換え細胞培養でDNAを発現する。改変体は、典型的には、改変していないペプチドと同じ性質の生物学的活性を示す。
また、本発明のTGF−β1インヒビターペプチドの機能的に等価な類似体も、本発明の範囲内にある。既に定義したTGF−β1インヒビターペプチドの「類似体」は、本発明によれば、非天然の分子を指し、完全な分子全体またはその活性フラグメントと実質的に同一である。このような類似体は、対応するTGF−β1インヒビターペプチドと同じ活性を示すであろう。
本発明のTGF−β1インヒビターペプチドの機能的に等価なフラグメントも、本発明の範囲内にある。「フラグメント」は、本発明によれば、TGF−β1インヒビターペプチドのアミノ酸配列を含むものであるが、アミノ末端を含む連続した一連の残基(すなわち、連続領域、部分または一部)、またはカルボキシル末端を含む連続した一連の残基を失っていてもよく、二重切断変異のように、一方にアミノ末端を含み、他方にカルボキシル末端を含む2つの連続した一連の残基を失っていてもよい。この場合もまた、これらの切断変異は、完全なTGF−β1インヒビターペプチドの少なくとも1つの生物学的活性(つまり、TGF−β1を阻害する能力)を保存している。TGF−β1インヒビターペプチドのアミノ酸配列のフラグメントを用いて、ペプチド合成によって対応する完全長ペプチドを作製してもよく、したがって、このフラグメントを中間生成物として用いて、完全長ペプチドを作製してもよい。分子のいずれかの末端からアミノ酸を除去し、得られたものについて、TGF−β1インヒビターペプチドとしての性質を試験することによって、フラグメントを容易に調製してもよい。ポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかから一度に1個のアミノ酸を除去するプロテアーゼは、当該技術分野で知られている。
特定の実施形態では、前記フラグメントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、または配列番号23の5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14連続アミノ酸残基を含むフラグメントであり、このフラグメントは、TGF−β1を阻害する能力を維持している。
当業者は、本発明のTGF−β1インヒビターペプチドの機能的に等価な塩も、本発明の範囲内にあることを理解するであろう。本明細書において「塩」との用語は、TGF−β1インヒビターペプチドのカルボキシル基の塩、およびアミノ基の酸付加塩の双方を指す。カルボキシル基の塩は、当該技術分野で既知の手段によって形成されてもよく、無機塩、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄、または亜鉛の塩などが挙げられ、さらに有機塩基との塩、例えば、アミン、例えば、トリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ピペリジン、プロカインなどから形成された塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、鉱物酸、例えば、塩酸、臭素酸、硫酸、リン酸などとの塩、および、有機酸、例えば、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、マレイン酸などとの塩が挙げられる。もちろん、このような塩も、いずれもTGF−β1インヒビターペプチドの生物学的活性を保持していなければならない。治療用途のために、TGF−β1インヒビターペプチドの塩は、対イオンが医薬的に許容される塩である。医薬的に許容される塩の性質は、医薬的に許容されるものであれば、重要な考慮事項ではない。医薬的に許容される最終生成物を製造するときに使用可能であるため、医薬的に許容されない塩も本発明の範囲に包含される。
(b)本発明のTGF−β1インヒビターペプチドを含む融合タンパク質
本発明によれば、別の特定の実施形態では、本発明の生成物は、本発明のTGF−β1インヒビターペプチドを含む融合タンパク質である(以下「本発明の融合タンパク質」という。)。効果的には、ある実施形態では、本発明のTGF−β1インヒビターペプチドは、別の分子(例えば、TGF−β1インヒビターペプチドに天然のTGF−β1インヒビターペプチドに関する性質または利点を与える別のペプチド)に結合し、融合タンパク質を得ることができる。
本発明では、「融合タンパク質」との用語は、既に定義されているように、それぞれの部分が異なるタンパク質に由来し、共有結合してなる少なくとも2つの部分を有し、複数の部分の1つが本発明のTGF−β1インヒビターペプチドであるポリペプチドを指す。当業者が理解するように、本明細書に記載の融合タンパク質は、TGF−β1の生物学的活性を阻害する能力を有する。
TGF−β1インヒビターペプチドに融合することが可能なペプチドの非限定的な具体例は、例えば、融合タンパク質の抽出および精製を容易にする分子、例えば、ポリヒスチジンタグ(His−タグ)(例えば、H6およびH10など)、またはIMACシステム(例えば、Ni2+アフィニティカラムなど)で使用する他のタグ、GST融合物、MBP融合物、ストレプトアビジンタグ、BIRA細菌酵素のBSPビオチニル化標的配列、および抗体が直接作用するタグエピトープ(例えば、特に、c−mycタグ、FLAGタグ)である。当業者が理解するであろうとおり、前記tagペプチドは、本発明の融合タンパク質を精製し、検査し、選択し、および/または観察するのに使用することができる。さらに、例えばDNAまたはGAL4遺伝子の転写活性化ドメインの結合のようなアッセイ条件における安定性を高める分子に加え、蛍光部分、放射性部分または酵素部分も、適切なタグである。
本発明のTGF−β1インヒビターペプチドは、二官能リンカー、融合ポリペプチドの形成、ビオチンまたはストレプトアビジン/アビジンのいずれかを相補性分子に結合させることによる、ビオチン/ストレプトアビジン複合体またはビオチン/アビジン複合体の形成などのよく知られた方法を用いることによって、他のペプチドに結合させてもよい。TGF−β1インヒビターペプチドおよび他の化合物の中の反応性基の性質に依存して、リンカーを同時にまたは連続して形成させ、反応性基を互いに反応させてもよい。例えば、標的として選択される薬剤は、例えば、カルボキシル末端にあるスルフヒドリル基を用いて調製することができ、次いで、これを誘導体化剤にカップリングし、キャリア分子を形成する。次いで、キャリア分子を、スルフヒドリル基を用いてペプチドに結合させる。さらに、その結合は当業者に既知のカップリング化学物質を用い、TGF−β1インヒビターペプチドの反応性基と、融合タンパク質を形成する1種類以上の分子とに、好ましくは共有結合を形成させることによって、形成することができる。当該技術分野で許容される多くの方法を用い、共有結合を形成することができる[例えば、March,J.、Advanced Organic Chemistry、第4版、New York、N.Y.、Wiley and Sons、1985、pp.326−1120を参照]。当業者は、多数の他の可能なリンカーを知っている。
それに加え、本発明の融合タンパク質の一部を形成するペプチドを、1個のペプチド結合を用いて、または、1個以上のアミノ酸残基を含むペプチドリンカーを用いて直接結合させることができる。一般的に、この部分およびリンカーは、お互いに同じリーディングフレーム内にあり、組換え技術を用いて作製される。考えられる可撓性リンカー/リンカー配列の非限定的な具体例としては、SGGTSGSTSGTGST(配列番号24)、AGSSTGSSTGPGSTT(配列番号25)、GGSGGAP(配列番号26)[Muller、K.M.、Arndt、K.M.およびAlber、T.、Meth.Enzymology、2000、328:261−281]、GGGVEGGG(配列番号27)、またはGSGGS(配列番号28)が挙げられる。コネクタペプチドまたはリンカーペプチドの好ましい例としては、結合するペプチドまたはタンパク質の機能を実質的に損なうことなく、または、少なくとも結合するペプチドまたはタンパク質の1つの機能を実質的に損なうことなく、ペプチドまたはタンパク質を結合するのに使用されるものが挙げられる。
リンカーは、好ましくは、ペプチドの性質をもつ。リンカーペプチドは、好ましくは、少なくとも2個のアミノ酸、例えば、少なくとも3個のアミノ酸、例えば、少なくとも5個のアミノ酸、例えば、少なくとも10個のアミノ酸、例えば、少なくとも15個のアミノ酸、例えば、少なくとも20個のアミノ酸、例えば、少なくとも30個のアミノ酸、例えば、少なくとも40個のアミノ酸、例えば、少なくとも50個のアミノ酸、例えば、少なくとも60個のアミノ酸、例えば、少なくとも70個のアミノ酸、例えば、少なくとも80個のアミノ酸、例えば、少なくとも90個のアミノ酸、例えば、約100個のアミノ酸を含む。
所望の場合は、融合タンパク質の部分の間(ペプチド−パートナー)にタンパク分解による切断部位を含むことが可能であり、これにより、融合タンパク質のパートナー(ペプチド)を分離することができる。融合タンパク質の活性が低い場合には、このパートナー(ペプチド)間のリンカーを、(例えば、標的組織中に存在する酵素による酵素的切断のために)十分不安定に選択することができ、リンカーが容易に切断され、その結果その分子が放出される。
(c)本発明のTGF−β1インヒビターペプチドまたは本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
別の実施形態では、本発明の生成物は、本発明の1つ以上の異なるTGF−β1インヒビターペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下「本発明のポリヌクレオチド」という。)を含む。本発明のポリヌクレオチドは、TGF−β1インヒビターペプチドまたは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の前に発現調節配列を含んでいてもよく、前記発現調節配列は、TGF−β1インヒビターペプチドまたは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に結合している。すなわち、TGF−β1インヒビターペプチドまたは融合タンパク質は、前記調節配列の制御下で発現させるための正しいリーディングフレームの中にある。
本発明の有用な調節配列は、ヌクレオチドの発現を増大させる核プロモーター配列、またはエンハンサー配列、および/または調節配列であってよい。プロモーターは、構成的であってもよく、誘導性であってもよい。ポリヌクレオチドの一定発現が望ましい場合、構成的なプロモーターを用いる。よく知られている構成的なプロモーターの例としては、真核生物ウイルスのゲノム誘導体、例えば、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40、CMV、トリ肉腫ウイルス、B型肝炎ウイルス、メタロチオネイン遺伝子プロモーター、ヘルペス単純ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子プロモーター、レトロウイルスのLTR領域、免疫グロブリン遺伝子プロモーター、アクチン遺伝子プロモーター、EF−1α遺伝子プロモーター、並びにペプチドまたはタンパク質の発現が分子または外因性シグナルを加えることに依存する誘導性プロモーター、例えば、テトラサイクリンシステム、NFkappaB/UV光システム、Cre/Loxシステム、および熱ショック遺伝子プロモーターが挙げられる。構成的なプロモーターのいくつかの他の例は、当該技術分野でよく知られており、これを使用して本発明を実施することができる。
TGF−β1インヒビターペプチドまたは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を制御しながら発現させることが望ましい場合、誘導性プロモーターを使用しなければならない。誘導されていない状態では、誘導性プロモーターは、「サイレント」である可能性がある。「サイレント」とは、誘導因子が存在しない状態で、本発明のポリヌクレオチドの発現がほとんど検出されないか、またはまったく検出されないことを意味すると理解されるが、誘導因子が存在する状態では、本発明のポリヌクレオチドの発現が起こる。発現レベルは、誘導因子の濃度を変えることによって頻繁に制御することができる。発現を制御することによって、例えば、誘導性プロモーターが、より強く、またはより弱く刺激されるように誘導因子の濃度を変えることによって、本発明のポリヌクレオチドの転写産物の濃度が影響を受け、これによって、合成されるペプチドまたは融合タンパク質の量を制御することができる。したがって、治療産物の濃度を変えることが可能である。よく知られている誘導性プロモーターの例は、アンドロゲン感受性プロモーターまたはエストロゲン感受性プロモーター、デオキシサイクリン感受性プロモーター、メタロチオネインプロモーター、またはエクジソン応答性プロモーターである。他の種々の例は、当該技術分野でよく知られており、これを使用して本発明を実施することができる。構成的なプロモーターおよび誘導性プロモーター(通常は、多種類の細胞または組織型で働く)に加え、組織特異的なプロモーターを使用し、特定の細胞または組織内でポリヌクレオチド配列の特異的な発現を達成することができる。眼組織に特異的なプロモーターのよく知られている例としては、ケラチン12およびケラトカン遺伝子の角膜特異的なプロモーター、IRBP(間質性レチノール結合タンパク質)(これは、レチノール結合タンパク質3(RBP3)としても知られている)およびロドプシンキナーゼ(RkまたはGRK1)遺伝子の網膜特異的なプロモーターなどが挙げられる。
(d)本発明のポリヌクレオチドを含むベクター
別の実施形態では、本発明の生成物は、既に定義した本発明のポリヌクレオチド(すなわち、1種類以上の異なるTGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメントをコードするポリヌクレオチド、または前記TGF−β1インヒビターペプチドを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)を含むベクター(以下「本発明のベクター」という。)を含む。特定の実施形態では、前記本発明のポリヌクレオチドは、発現調節配列が先行している。
前記本発明のポリヌクレオチドを収容するのに適したベクターとしては、宿主細胞に導入されると、その細胞のゲノムに組み込まれるか、或いは組み込まれないプラスミドまたはベクターが挙げられる。前記本発明のベクターは、当業者に知られている従来の方法によって得ることができ、そして例えば、Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第3版、2001中に見出すことができる。
しかし、本発明の範囲内で、本発明のベクターは、好ましくは、治療で使用するのに適したウイルスベクターまたは非ウイルスベクターである。このベクターの非限定的な具体例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、アルファウイルスなどに基づくウイルスベクターが挙げられ、または、非ウイルスベクターの場合、ベクターは、DNA−リポソーム、DNA−ポリマー、DNA−ポリマー−リポソーム複合体、ポリマーナノ粒子、脂質ナノ粒子、デンドリマーなどが挙げられる[「Nonviral Vectors for Gene Therapy」、Huang編集、Hung and Wagner、Academic Press(1999)を参照]。本発明のポリヌクレオチドを含む前記ウイルスベクターおよび非ウイルスベクターは、従来の方法を用い、ヒトまたは動物の体に直接投与することができる。ウイルスベクターは、例えば、アルファウイルス、例えば、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルスまたはベネズエラウマ脳炎ウイルス(EEV);高容量アデノウイルス;制限増殖型アデノウイルス;アデノ随伴ウイルスなどであってもよい。
(e)本発明のベクターを含む細胞
また、本発明のベクターを使用し、細胞、好ましくは哺乳動物細胞(ヒト細胞を含む)を例えば、ex vivoで形質転換、トランスフェクト、または感染させることができ、次いで、これをヒトまたは動物の体に移植し、望ましい治療効果を得ることができる。これらを被検体に投与するために、前記細胞は生存能力に悪影響を及ぼさない適切な培地に配合されるだろう。同様に、前記ベクターは、特に、マルチクローニングサイト、発現調節配列、ベクターが導入される宿主細胞に適した複製起点、選択マーカーなどを含んでいてもよい。
したがって、当業者は、ある実施形態では、本発明の生成物が、それぞれ、本発明の第1の態様の(a)、(b)、(c)の項に定義されるTGF−β1インヒビターペプチドまたはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、または本発明のベクターを含む細胞(以下「本発明の細胞」という。)を含むことを理解するであろう。TGF−β1インヒビターペプチド、融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクターの特徴は、先に説明している。
本発明のTGF−β1インヒビターペプチド、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、または本発明のベクターを収容するのに適した細胞は、真核細胞または原核細胞であってもよい。本発明にあっては、実際、本発明のポリヌクレオチドによって形質転換することが可能であるか、または本発明のベクターによって形質転換され、トランスフェクトされ、もしくは感染される、任意の宿主細胞(例えば、動物細胞(例えば、哺乳動物細胞、鳥類の細胞、昆虫細胞など)、植物細胞、酵母など)を使用することができる。
本発明のTGF−β1インヒビターペプチド、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、および/または本発明のベクターを発現するように遺伝的に改変された任意の真核細胞を本発明で使用してもよいが、マウス、ラット、霊長類およびヒトの細胞が、好ましい細胞である。したがって、本発明を実施するのに適した細胞は、心筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(B細胞およびT細胞)、マスト細胞、好酸球、血管内膜細胞、異なる臓器から単離した細胞の一次培養物、好ましくは、ランゲルハンス島、肝細胞、白血球(単核白血球を含む)、胚、間葉細胞、臍帯または成人の(皮膚、胚、腎臓、および肝臓)幹細胞、破骨細胞,軟骨細胞および他の結合組織細胞から単離した細胞の一次培養物である。樹立細胞株、例えば、Jurkat T細胞、NIH−3T3細胞、CHO細胞、Cos細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞、MDCK細胞、293細胞、3T3細胞、C2C12筋芽細胞、W138細胞も適している。本発明の細胞は、当業者が知っている従来の方法によって得ることができる[Sambrookら、2001、上述]。
(f)組み合わせ
別の実施形態では、本発明は、前記生成物(a)〜(e)のうち、2つ以上の組み合わせを用いる可能性を想定している。この生成物(a)〜(e)の詳細は既に述べている。
本発明の組成物
別の実施形態では、本発明の生成物は組成物の形態であり、この組成物は前記生成物(a)〜(e)のうち、1つ以上を含む。したがって、特定の実施形態では、本発明は、それぞれ、本発明の第1の態様の(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の項に定義される本発明のTGF−β1インヒビターペプチド、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、および/または本発明の細胞の1つ以上の組み合わせを含む組成物を提供する。このように、本発明によって提供される組成物は、下記を含む可能性も想定している。
−単独で、または、本発明の第1の態様の(b)、(c)および(d)の項に定義される融合タンパク質、ポリヌクレオチド、およびベクターと組み合わせた状態の、少なくとも2種類の異なるTGF−β1インヒビターペプチド;
−単独で、または、それぞれ本発明の第1の態様の(a)および(d)の項に定義される、TGF−β1インヒビターペプチドまたはベクターと組み合わせた状態の、それぞれが異なるTGF−β1インヒビターペプチドをコードする少なくとも2種類のポリヌクレオチド;
−それぞれが、本発明の第1の態様の(c)の項に定義される、1つまたはいくつかのポリヌクレオチドを含み、異なるTGF−β1インヒビターペプチド(単独、または、本発明の第1の態様の(a)の項に定義されるTGF−β1インヒビターペプチドとの組み合わせ)をコードする、少なくとも2種類のベクター;
−異なるTGF−β1インヒビターペプチド、融合タンパク質、ポリヌクレオチド、またはベクター(例えば、それぞれ本発明の第1の態様の(a)〜(d)の欄項に定義されているもの)を含む、少なくとも2種類の細胞など。
本明細書の初めに述べたように、TGF−β1インヒビターペプチドを角膜の線維症または濁りラットモデルに投与すると、驚くべきことに、角膜の線維症および/または濁りが低減され、これにより、角膜の線維症および/または角膜の濁りを治療する新規治療の可能性を提供する。当業者は、本発明のTGF−β1インヒビターペプチド、または本発明の任意の他の生成物を治療目的で使用することができることを理解すると思われ、投与のために適切に配合されなければならない。
したがって、特定の実施形態では、本発明によって提供される組成物は医薬組成物であり、さらに医薬的に許容されるビヒクルと、場合により、所望の場合は、角膜の線維症および/または角膜の濁りの治療を目的とする別の治療化合物とを含む。
したがって、本発明は、治療に有効な量の本発明の生成物または組成物を含む医薬組成物をも提供する。
本発明において、「治療に有効な量」とは、角膜の線維症および/または濁りに関連する症状またはその重篤度を遅らせるか、低減させるか、またはなくすのに十分な本発明のTGF−β1インヒビターペプチドの量であると理解される。本明細書において、「医薬的に許容されるビヒクル」との用語は、安全で、標的組織への有効量の少なくとも1つの本発明の組成物の有効な送達を提供する任意の製剤を指す。
本発明の生成物、または本発明によって提供される組成物の成分(すなわち、既に定義したペプチド、融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞)の性質に依存して、医薬組成物中のそれらの量は変化してもよい。例えば、組成物がウイルスベクターを含む場合、本発明によって提供される組成物中のベクターの量は、使用するウイルスベクターに依存して、10〜1013ウイルス粒子/投薬用量の範囲を変動してもよい。一方、ベクターが非ウイルスベクターである場合、例えば、本発明によって提供される組成物中のプラスミド、ベクターの量は、投薬用量あたり100ng〜約5mgの範囲を変動することができる。
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、2種類以上の成分を含み、この実施形態では、これらの成分を別個に、同時に、または連続して用いて製剤化してもよい。
本発明の生成物は、当業者に既知の製剤化技術にしたがって、さまざまな種類の医薬組成物に含まれてもよい。投与経路(例えば、局所または眼球内)および投薬計画は、治療される病状の実際の性質、病状の重篤度、患者の年齢および全身的な身体状態、使用する特定の本発明の生成物、個々の薬物動態特性などの因子に基づいて、熟練した臨床医によって決定されるであろう。
本発明の生成物、または本発明の組成物は、異なる方法(例えば、局所、眼球内など)によって投与してもよく、そして標的部位に局所的に、全身的に、または直接に投与することができる。活性成分を投与する異なる方法、使用する賦形剤、およびこれらを調製する方法の説明は、Tratado de Farmacia Galenica、C.Fauli i Trillo、Luzan 5、S.A.de Editions、1993およびRemington’s Pharmaceutical Sciences(A.R.Gennaro編)、第20版、Williams & Wilkins PA、USA.(2000)中に見つけることができる。
特定の実施形態では、本発明との関連で、本発明の生成物、または本発明の組成物は眼に投与され、その結果、TGF−β1インヒビターペプチドが眼のTGF−β1を阻害することができるが、他のレベルで投与してもよい。
本発明の生成物または本発明の医薬組成物を投与する方法は、治療される疾患、他の因子(例えば、治療継続期間や、本発明の生成物または本発明の医薬組成物を予防的に投与するか、または例えば術後のような急性段階の間に投与するかということ)によって変わるであろう。本発明の生成物および医薬組成物は、眼の手術(例えば、眼の手術後の硝子体または結膜下注射)に添加剤として使用してもよい。化合物は一時的な病状の急性治療に使用してもよく、または特に、変性疾患の場合には、慢性的に投与してもよい。また、化合物は予防的に使用してもよく、特に、眼の手術、非侵襲性の目の処置、または他の種類の手術の前に使用してもよい。
したがって、ある実施形態では、本発明によって提供される医薬組成物は、眼用医薬組成物であり、すなわち、治療に有効な量の本発明の生成物または組成物と、前記化合物のための医薬的に許容されるビヒクルであって、当該医薬的に許容されるビヒクルが眼への投与に適したものである、ビヒクルとを含む、医薬組成物である。本明細書において、「眼用医薬組成物」という用語は、眼に適用することを目的とするか、またはコンタクトレンズのような眼と接触して配置される器具を処置することを目的とする組成物を示す。したがって、特定の実施形態では、本発明は、眼用医薬組成物であって、下記からなる群:
(a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント、
(b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
(c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
(e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチド、および/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、並びに
(f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、1つ以上の組み合わせ、から選択される治療に有効な量の生成物と、この化合物のための医薬的に許容されるビヒクルであって、当該医薬的に許容されるビヒクルが眼への投与に適したものである、ビヒクルとを含む、眼用医薬組成物に関する。
特定の実施形態では、医薬組成物を局所適用のために製剤化し、投与してもよい。局所製剤は、一般的に水性の性質であり、生理学的に許容されるpHに緩衝化され、そして典型的には連続分注するために保存されている。したがって、特定の実施形態では、本発明は、治療に有効な量の本発明の生成物または組成物と、この化合物のための医薬的に許容されるビヒクルであって、当該医薬的に許容されるビヒクルが眼への局所投与に適したものである、ビヒクルとを含む局所用の眼用医薬組成物をも提供する。当業者がよく知っているように、さまざまな種類のビヒクルを利用してもよい。ビヒクルは、一般的に、水性の性質をもつ。製剤化のし易さ、および患眼に1〜2滴の溶液を注入することによってそのような組成物を患者が投与し易いという能力から、水溶液が一般的に好ましい。しかし、本発明の生成物は、他の種類の組成物(例えば、懸濁物、粘性もしくは半粘性のゲル、または他の種類の固体組成物または半固体組成物)に簡単に組み込まれてもよい。懸濁物は、比較的に水に不溶性な本発明の生成物にとって好ましい場合がある。本発明の眼用組成物は、さまざまな他の成分(例えば、バッファー、保存剤、共溶媒および粘度構築剤)を含んでいてもよい。
貯蔵条件でpHが変動するのを防ぐために、適切なバッファーシステム(例えば、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、またはホウ酸ナトリウム)を加えてもよい。
眼用製品は、典型的には、複数回投薬形態で包装される。使用中に細菌汚染を防ぐために、防腐剤が必要である。適切な防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクアテルニウム−1、または当業者が知っている他の薬剤が挙げられる。このような防腐剤は、典型的には、組成物の合計重量を基準として、0.001〜1.0重量パーセント(wt.%)の量で使用される。
本発明の生成物のうち、水への溶解度が限られているものもあり、したがって、組成物中に界面活性剤または他の適切な共溶媒を必要とする場合がある。このような共溶媒としては、例えば、ポリエトキシル化ヒマシ油、Polysorbate 20、60および80;Pluronic(登録商標)F−68、F−84およびP−103(BASF Corp.、Parsippany N.J.、USA);シクロデキストリン;または当業者が知っている他の薬剤が挙げられる。このような共溶媒は、典型的には、0.01〜2wt.%の量で使用される。
活性化合物(本発明の生成物)の眼への吸収率を上げるために、製剤を分散するときの変動を低減させるために、製剤の懸濁物または乳化物の成分が物理的に分離するのを低減させるために、および/またはその他眼用製剤を改善するために、単純な水溶液の粘土よりも高い粘度が望ましいことがある。このような粘度上昇剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または当業者が知っている他の薬剤が挙げられる。このような薬剤は、典型的には、0.01〜2wt.%の量で使用される。
別の特定の実施形態では、本発明の生成物は、眼球内用途のために製剤化されるであろう。したがって、特定の実施形態では、本発明は、治療に有効な量の本発明の生成物または組成物と、この化合物のための医薬的に許容されるビヒクルであって、当該医薬的に許容されるビヒクルが眼への投与に適したものであるビヒクルとを含む眼球内用眼用医薬組成物を提供する。当業者がよく知っているように、さまざまな種類のビヒクルを利用してもよい。眼球内で使用するための製剤は、一般的に、例えば、以下に記載するBSS Plus(登録商標)Sterile Irrigating SolutionまたはBSS Plus(登録商標)Sterile Irrigating Solution単独中のフッ素化炭化水素のような手術用灌流液を含むであろう。本発明の生成物のために医薬ビヒクルとして生理学的に調整された灌流液を使用することは、この生成物が眼球内投与されるときに、好ましい。本明細書において、「生理学的に調整された灌流液」という用語は、侵襲的な医療処置または非侵襲的な医療処置の間、物理構造および組織の機能を維持するように変えられる溶液を意味する。この種の溶液は、典型的には、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、および/または塩化物のような電解質;エネルギー源、例えば、デキストロース;溶液のpHを生理学的値またはこれに近い値に維持するためのバッファーを含んでいてもよい。この種のさまざまな溶液が知られている(例えば、Lactated Ringers溶液)。BSS(登録商標)Sterile Irrigating SolutionおよびBSS Plus(登録商標)Sterile Intraocular Irrigating Solution(Alcon Laboratories、Inc.、Fort Worth、Tex.、USA)は、生理学的に調整された眼球内灌流液の例である。後者の種類の溶液は、米国特許第4,550,022号に記載されており、その内容全体は参照することにより本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態では、TGF−β1インヒビターペプチドは、例えば、点眼薬、軟膏、クリームなどの眼への適用に適した局所用医薬組成物の形態で投与される。特定の実施形態では、この局所用医薬組成物は、ヒアルロン酸または眼への投与に適したその医薬的に許容される塩、例えば、ヒアルロン酸ナトリウムを含む。
局所、眼周囲または眼球内投与の任意の上述の目的のために利用される投薬量は、一般的に、体重1kgあたり、約0.01〜約100mgであり(mg/kg)、1日あたり、1〜数回(例えば、4回、6回、8回またはそれ以上)投与する。
また、本発明の医薬組成物は、固形医薬投薬形態(例えば、錠剤、カプセルなど)、液状医薬投薬形態(例えば、溶液、懸濁物など)、または半固形医薬投薬形態(例えば、ゲルなど)で製剤化されてもよい。前記ビヒクルを含む組成物は、当該技術分野で既知の従来の方法を用いることによって製剤化されてもよい。
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明の生成物に加え、さらに、角膜の線維症および/または角膜の濁りの治療を目的とした別の治療化合物を含む。実際に、角膜の線維症および/または角膜の濁りの治療を目的とした任意の治療化合物を使用してもよい。角膜の線維症および/または濁りに使用する治療薬剤の非限定的な具体例としては、局所用抗炎症ステロイド薬(例えば、デキサメタゾン、フルオロメトロン、プレドニゾロンなど)、代謝拮抗薬(例えば、マイトマイシンCなど)などが挙げられる。
本発明の生成物および本発明によって提供される組成物は、キットの形態であってもよい。本発明において、「キット」とは、異なる活性成分、または本発明の第1の態様の(a)〜(e)欄に定義される本発明の生成物、および/または付加的治療化合物を含有し、包装された組成物を形成し、輸送、貯蔵、同時投与もしくは連続投与が可能な製品であると理解される。したがって、本発明のキットは、本発明の活性成分を含有し、単回投薬量または複数回投薬量で調製することができる1種類以上の懸濁物、シリンジなどを含んでいてもよい。キットは、さらに、必要な場合、例えば、水性媒体(例えば、食塩水、リンガー溶液、デキストロースおよび塩化ナトリウム)、水溶性媒体(例えば、アルコール、ポリエチレングリコール、プロピルエチレングリコール)、および水不溶性ビヒクルのような、本発明の生成物を再懸濁するのに適したビヒクルを含んでいてもよい。キットに存在してもよい別の要素は、本発明の組成物を規定の限界値内に維持することができるパッケージである。このようなパッケージを調製するのに適した材料としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど)、瓶、バイアル、紙、小袋などが挙げられる。
本発明のキットは、キット内に存在する様々な医薬製剤を同時に、連続して、または個別に投与するための説明書を付加的に備えていてもよい。したがって、本発明のキットは、様々な要素を同時に、連続して、または個別に投与するための説明書をさらに備えていてもよい。この説明書は、印刷された材料の形態であってもよく、または電子記録媒体(磁気ディスク、テープなど)、光学媒体(CD−ROM、DVD)など被検体が読み取ることができる説明書を保存することができる電子的なサポートの形態であってもよい。媒体は、これに加え、またはこれに代えて、前記説明書を与えるインターネットウェブページを含んでいてもよい。
上に示されているように、本発明で記載している知見は、角膜の線維症および/または角膜の濁りを治療するのに有用である。角膜の線維化(角膜線維症)によって、透明性が失われ、組織の収縮および瘢痕の変形が起こり、これによって角膜が濁る。実施例1は、2種類のTGF−β1インヒビターペプチド[p144(配列番号6)およびp17(配列番号17)]が、動物モデルにおいて、化学物質の攻撃によって誘発された角膜の線維症および濁りを完全にまたは部分的に低減させることができることを示す。
本発明において、「角膜の線維症」とは、眼球を覆う中心領域または周辺領域の通常は澄んで透明な部分(角膜)が、異物または化学物質による炎症、感染または刺激物質への曝露に続発して、混濁するか、または濁ってしまうことを特徴とする疾患であると理解される。この角膜の障害としては、損傷または慢性疾患に応答して瘢痕組織が蓄積した(コラーゲンの過剰な蓄積および/またはコラーゲンの配向が変わった)任意の角膜組織の変更が挙げられる。これにより、損傷を受けた領域で角膜が白〜灰色になり、通常の透明度とは異なるグレードの不透明な状態になる。
同様に、本明細書において、「角膜の濁り」との用語は、角膜上皮下の濁りを意味し、視力を濁らせるか、くもらせるような、角膜透明性が乱れていることを指す。濁りは、活性化した角膜実質細胞から分泌され、細胞外マトリックスに影響を及ぼすような構造化されていないコラーゲン繊維が存在することによって生じる。濁りが存在する場合、濁りは、レーザーによる眼の手術の数週間〜数ヶ月後(通常は、最初の1ヶ月の間)に現れ、その強度は、術後3〜6ヶ月の間に最大となる。濁りは、解消するまで1年も続くこともある。本発明の特定の実施形態では、レーザー屈折矯正手術後の角膜の濁りまたはくもりは、前実質ラメラ(anterior stromal lamellae)の構造が破壊された結果生じる。角膜の濁りは、術後数週間〜数ヶ月までは現れない。継続期間は、数週間〜数ヶ月の場合があり、ある場合には、1年より長く続き、ある場合には、不可逆である。重篤度は、軽度から重度までがあり得る。報告されている濁りの有病率は、かなり変動がある。
別の態様では、本発明は、角膜の線維症および/または角膜の濁りを予防および/または治療するための方法であって、下記からなる群:
(a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント、
(b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
(c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
(e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチド、および/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、
(f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、少なくとも1つ以上の組み合わせ、から選択される生成物を、治療に有効な量、治療を必要とする被検体に投与することを含む方法に関する。
特定の実施形態では、前記生成物は組成物の形態であり、この組成物は、上記生成物(a)〜(e)のうち、1つ以上を含む。別の特定の実施形態では、前記組成物は、さらに医薬的に許容されるビヒクルおよび/または角膜の線維症および/または角膜の濁りの治療を目的とする治療化合物を含む。
特定の実施形態では、レーザー手術後の角膜上皮下の術後の濁りを予防するか、または低減させるために、治療に有効な量の本発明の1種類以上の生成物を罹患した眼の表面に適用することによって、上記方法を用いることができる。本発明の方法は、特に、レーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)、レーザーインサイチュ角膜切除術(LASIK)の後の濁りを防ぐように設計されているが、この方法は、眼の手術中の角膜の光剥離、眼の表面感染(細菌、ウイルス、任意の他の微生物製剤、寄生虫)、機械的な摩耗、化学損傷などを含む、濁りを引き起こすと考えられる任意の眼の損傷の後に起こる濁りを予防するか、または低減させる。
特定の実施形態では、TGF−β1インヒビターペプチドは、その配列が配列番号1〜23で示されるペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント(すなわち、TGF−β1を阻害する能力をもつ前記TGF−β1インヒビターペプチドの誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント)からなる群から選択されるペプチドである。したがって、特定の実施形態では、TGF−β1インヒビターペプチドは、そのアミノ酸配列が、配列番号1、または配列番号2、または配列番号3、または配列番号4、または配列番号5、または配列番号6、または配列番号7、または配列番号8、または配列番号9、または配列番号10、または配列番号11、または配列番号12、または配列番号13、または配列番号14、または配列番号15、または配列番号16、または配列番号17、または配列番号18、または配列番号19、または配列番号20、または配列番号21、または配列番号22、または配列番号23で示されるペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント(例えば、配列番号1、または配列番号2、または配列番号3、または配列番号4、または配列番号5、または配列番号6、または配列番号7、または配列番号8、または配列番号9、または配列番号10、または配列番号11、または配列番号12、または配列番号13、または配列番号14、または配列番号15、または配列番号16、または配列番号17、または配列番号18、または配列番号19、または配列番号20、または配列番号21、または配列番号22、または配列番号23の5、6、7、8、9、10、11、12、13または14連続アミノ酸残基を含むフラグメント、またはこれらの医薬的に許容される塩であり、このフラグメントは、TGF−β1を阻害する能力を維持している。)である。
別の特定の実施形態では、TGF−β1インヒビターペプチドは、ペプチドp144(配列番号6)、p17(配列番号17)、または配列番号6または配列番号17の9、10、11、12、13または14連続アミノ酸残基を含むフラグメント、またはこれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択されるペプチドであり、前記フラグメントはTGF−β1を阻害する能力を維持している。
好ましい実施形態では、前記TGF−β1インヒビターペプチドは、p144(配列番号6)、p17(配列番号17)およびこれらの組み合わせからなるペプチドの群から選択される。
以下の実施例は、本発明を説明するが、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
実施例1
角膜の線維症および濁りの治療
TGF−β1は、主要な線維症誘発メディエーターのひとつである。角膜が線維化すると、透明性が失われ、組織の収縮および瘢痕の変形が起こり、これによって角膜が濁る。この実施例は、実験動物における角膜線維症を試験し、TGF−β1インヒビターペプチド:p144(配列番号6)およびp17(配列番号17)を局所投与した後に、完全に、または部分的に低減されるということに注目した。
1.1 材料および方法
1.1.1 角膜損傷の誘発
動物線維症モデル
この試験では、12〜16月齢の家禽雌鶏(Gallus gallus domesticus)を実験動物として最初に使用したが、このモデルは、特に、動物を入手し、取り扱うという点で困難であるため、Long−Evansラットを使用することに決定した。さらに、これらの動物がが有色ラットであり、ヒトと同様にBowman膜をもつため、より正確に損傷の漸進的変化を追うことができるので、角膜線維症を研究するin vivoモデルとして使用されていることを書誌確認した。
実験グループ
10週齢の雄Long−Evansラットを用い、5つのグループに分けた。
グループ1:12ラット、デキサメタゾンで治療した6匹と、マイトマイシンCで治療した6匹
グループ2:12ラット、第1の製剤(1.1.2.bの項を参照)のp17で治療した6匹と、第1の製剤(1.1.2.bの項を参照)のp144で治療した6匹
グループ3:12ラット、第2の製剤(1.1.2.bの項を参照)のp17で治療した6匹と、第2の製剤(1.1.2.bの項を参照)のp144で治療した6匹
グループ4:12ラット、第3の製剤(1.1.2.bの項を参照)のp17で治療した6匹と、第3の製剤(1.1.2.bの項を参照)のp144で治療した6匹
グループ5:12ラット、第4の製剤(1.1.2.bの項を参照)のp17で治療した6匹と、第4の製剤(1.1.2.bの項を参照)のp144で治療した6匹
グループ6:12ラット、第5の製剤(1.1.2.bの項を参照)のp17で治療した6匹と、第5の製剤(1.1.2.bの項を参照)のp144で治療した6匹。
角膜を損傷させるために、動物をイソフルランで麻酔し、30秒間1N NaOHに浸した5mm Whatmanペーパーディスクを動物の眼の中央部分にアプライした。損傷させた後、動物を十分な量の生理食塩水の血清で洗浄し、抗生物質の軟膏を塗り、罹患領域で起こり得る感染を予防した。
先に記載した動物群を用い、幾つかのin vivo試験を行った後、NaOHを30秒間アプライした後に起こった化学損傷は、実施予定の試験には過度の病変を生じたと結論づけられたため、時間を15秒に減らし、新しい実験を行うことに決めた。
1.1.2 治療
まず、角膜線維症の治療に通常用いられる薬物(デキサメタゾンおよびマイトマイシンC)の臨床的有効性を確認するために、実験を行った。この最初の実験では、得られた結果が、実際に科学文献に記載された結果と対応していることを確認した。このため、その後に、p17およびp144でのみ治療した動物群を用いて以下の試験を行った。そして、多数の動物を用いて実験することが可能であり、したがって、さらに有意性の高い結果が得られた。
(a)薬量学のまとめ
Figure 2013520405
各動物の左目をコントロールとし、右目が治療された眼となるようにランダムに確立し、同じ動物がコントロールとも治療された動物ともなった。細菌性角膜炎を避けるために、全ての動物に対し、試験第1週の間のみ両目に抗生物質治療を受けさせたことを指摘しておかなければならない。
(b)点眼薬の配合
この試験の目的のひとつは、デキサメタゾンおよびマイトマイシンCを用いて得られた臨床結果と同様の臨床結果を得るために、最も適切な製剤化を実現することであった。この目的のために、以下に列挙した様々な製剤を試験した。
第1の製剤
− 60℃で加熱し、0.45μmフィルタで濾過したMQ水中で超音波処理した2% カルボポール(50ml中、1g)
− 最終濃度が1mg/mlになるp144およびp17
− 10mgを秤量し、2%カルボポール5ml中で超音波処理した
− 火曜日に使用するまで、週末を超えて、4℃
:試験中、製剤を4℃に維持した。
第2の製剤
− 以下のようにカルボポール溶液を調製した:1.5%カルボポール−2001 40mlを超音波処理し、2000rpmで5分間遠心分離した(バブル)。+400μlのトリエタノールアミン(99%)および1.2mlの1N HCl(撹拌し、遠心分離した)
− p144:1mlのカーボネート+10mgのp144。超音波処理。9mlのカルボポール溶液を加え、超音波処理
− p144コントロール:上と同じであるが、p144を含まない
− p17:10mlのカルボポール溶液+10mgのp17。超音波処理
− p17コントロール:カルボポール溶液(すなわち、p17を含まない)
:カーボネートは、カルボポール溶液のpHを上げ、粘度を上げる。全ての溶液は水中でゲルである。試験中、製剤を4℃で維持した。
第3の製剤
− 以下のようにカルボポール溶液を調製した:1.5%カルボポール−2001 40mlを超音波処理し、2000rpmで5分間遠心分離した(バブル)
− p144:1mlのカーボネート+10mgのp14。超音波処理。9mlのカルボポール溶液を加え、超音波処理
− p144コントロール:上と同じであるが、p144を含まない
− p17:10mlのカルボポール溶液+10mgのp17。超音波処理
− p17コントロール:カルボポール溶液(すなわち、p17を含まない)
:適切な粘度が得られるまで、トリエタノールアミン(10〜20μl)およびHCl(32%)(2〜10μL)を加えることによって粘度を調整。試験中、製剤を4℃で維持した。
第4の製剤
リン酸緩衝化食塩水(PBS)中、23mg/mlのHealon 5TM(AMO)ヒアルロン酸ナトリウムから出発し、ヒアルロン酸塩の最終濃度1mg/mlが得られるまで希釈を行った。14mlのPBSおよびカーボネートまで、23mg/mlヒアルロン酸塩(HLNC)を入れた0.6mlシリンジ。
− p144:14mgを、1mg/mlのHLNCを含むカーボネート7mlに溶解した。超音波処理
− p17:4mgを、1mg/mlのHLNCを含むカーボネート7mlに溶解した
:試験中、製剤を4℃で維持した。
第5の製剤
防腐剤を含まない0.15% ヒアルロン酸ナトリウム(Hyabak 10mL、Thea)から始めた。
− p144:20mgを点眼薬5mlに溶解し、飽和濃NaOH 40μlを加え、撹拌し、その一部の5μlに加えた。溶解するまで超音波処理した。pHを調整するために、500μlの1M HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピイペラジンエタンスルホン酸)を加え、その結果、pHが10.5から7に変化した。
− p144コントロール:飽和NaOH 40μl、1M HEPES 500μl(HEPESの最終濃度は50mM)
− p17:20mgを点眼薬5mlに溶解し、完全に溶解するまで超音波処理し、10mlシリンジと青い針の付いたバイアルに入れ、内容物のフィルタに穴をあけた(最終濃度は2mg/ml)
− p17コントロール:操作していない点眼薬
:試験中、製剤を4℃で維持した。
異なる群(1.1.1項)について全てin vivo試験を行った後、1N NaOHを用いて作製した損傷を回復させようとするために最も適切な製剤は、第5の製剤であると決定された。したがって、in vivoに関連して示されている試験はすべて、この種の治療を指す。
1.1.3 角膜病変の週に一度の経過観察
(a)角膜の生体顕微鏡検査法を用いた半定量的分析
損傷させてから24時間後に、治療の投与を開始した。その後、損傷の経過観察を実施し、経過観察は、0、7、14、21、28および35日に写真を撮影することからなっていた。写真を撮影するために、動物をイソフルランで麻酔した。フルオレセインを用いた状態と、用いない状態で、コントロールの眼(左)および治療された眼(右)両方の写真を撮影した。フルオレセインを用いた写真によって、作製した損傷の上皮閉鎖の漸進的な変化を観察することができ、一方、フルオレセインを用いない写真は、損傷領域の濁りの漸進的な変化を示す。フルオレセインを用いない写真を最初に撮影した。これらの写真は、カメラに白いカラーフィルタを取り付けて撮影した。次いで、市販のフルオレセイン(Colircusi Fluorescein)の液滴を60秒間眼に入れた後、フルオレセインを用いた場合の写真を撮影した。その後、損傷領域を生理食塩水で洗浄し、暗室で、カメラにブルーフィルムを用い、眼を撮影した。
(b)角膜の濁りの定量的分析
この分析によって、1.1.3.(a)項で行った試験から面積を数値で表した値を得ることができた。この目的のために、ImageJプログラムを用い、各動物の眼の合計面積と損傷面積とを測定した。比較可能な測定を行うことができるように、損傷面積を合計面積で割った。このようにして、異なる動物間の眼の大きさの違い、または写真を撮影したときの遠近の差による誤差を最小限に抑えた。得られた全てのデータは、0日目の写真を用いて得られた初期値に対して参照され、全ての動物における初期損傷を100%とした。
1.1.4 動物を殺処分し、眼を摘出
イソフルランで麻酔した後、首を脱臼させて動物を殺処分した。殺処分した後、摘出を行い、眼を固定させる目的で、Davidson溶液に24時間入れた。その後、動物の眼をDavidson溶液から4%ギ酸に移し、24時間後、眼を70%エタノールに移した(眼は1ヶ月まで保存することができる)。
1.1.5 組織をパラフィンに封入
70%エタノールに入っている固定した組織を、パラフィンに入れることができるように脱水した。封入したら、サンプルをミクロトームで3〜5μmに切断し、次いで、対応する組織学的分析および免疫組織化学的分析を行うことができる。
1.1.6 切断片の組織学的分析
まず、線維化マーカー(例えば、α−SMAまたはフィブロネクチン)を用い、免疫組織化学レベルでサンプルを試験し、Sirius Redで染色した後にコラーゲンの量を定量し、炎症細胞の数を定量することにした。しかし、これらのほとんどの技術は、ラットに対し、それほど多くの特異的な抗体が存在しないため、適切な抗体の選択に問題があり、実施することができなかった。さらに、他の研究所(IOVA、Valladolid(Spain))に相談すると、分子シグナル試験によって、より精密な方法で、角膜線維症の抑制において、ペプチドの効力を定量することが簡便であることが分った。
したがって、ウェスタンブロットおよび免疫蛍光試験を行い、in vivo試験から抽出した細胞から、局所投与するペプチドによって使用されるシグナル伝達経路を決定した。この試験は、ラットの角膜ではなく、ウサギの角膜から得た線維芽細胞で試験を行ったことを強調しておくべきである。齧歯動物の眼から線維芽細胞を単離することが難しかったため、この決定がなされた。
1.1.7 データの統計学的研究
得られた結果の比較は、SPSS 15.0ソフトウエアを用い、関連サンプルのStudentのt検定を用いて行った。
1.2.結果
1.2.1 in vivo結果
異なる群の動物から得られた結果を以下に示す。p17およびp144両方で治療した眼では、コントロールに対し、濁りの明らかな低下(図1)、および上皮閉鎖の明らかな縮小(図2)を見ることができる。
ImageJプログラムを用いて画像を分析した後、一連の面積データが得られ、このデータから図3、4、5および6に示すグラフを作成した。これらのグラフは、各群の全動物(n=12)について、0、7、14、21、28および35日目の平均±標準偏差を示している。
1.2.2 生物化学的結果
(a)ウェスタンブロット試験
科学文献にはTGF−β1シグナル伝達経路が繰り返し記述されているため、方法論の項目に記載された技術を用い、この経路を深く探求することに決定した。この経路は、Smadタンパク質ファミリーの試験、特に、アイソフォームSmad2、2/3および7の試験を含んでいる。
この目的のために、ウサギ線維芽細胞の一次培養物から得られたタンパク質抽出物を、0、3、および5ng/mlの濃度のTGF−β1、並びに、50および200μg/mlのペプチドp17およびp144を用いて治療した。
p−Smad2の発現
インヒビターペプチドp17を適用した後に、p−Smad2の活性化の低下は観察されず(図7)、一方、p144を用いると、50μg/mlを用いて治療した後、p−Smad2の発現がわずかに阻害されているのが観察された。この阻害は、200μg/mlで治療したときのコントロールの値よりも大きい(図7)。
Smad 2/3の発現
一次培養物中のSmad 2/3の発現は、TGF−β1での治療、またはインヒビターペプチドp17および144での治療によって影響を受けなかった(図8)。図8は、第1の場所にインヒビターペプチドp17を示し、第2の場所にp144の作用を示している。
Smad7の発現
ウサギ線維芽細胞の一次培養物中のSmad 7の発現は、TGF−β1の治療、またはインヒビターペプチドの治療の影響を受けなかった(図9)。
(b)免疫蛍光試験
TGF−β1を用いた治療
3ngおよび5ngのTGF−β1を適用すると、p−Smad2の核への移行を誘発した(緑に染色されている)[図10]。
TGF−β1インヒビターペプチド(p17およびp144)を用いた治療
p17を用いた治療は、p−Smad2の核への移行を阻害しなかったが、p−Smad2の核への移行はp144を用いた治療によって阻害され、このことは、このペプチドが、ウサギ角膜線維芽細胞の一次培養物においてTGF−β1シグナル伝達経路を阻害することを示している(図11)。
1.3 結論
異なる実験群において、1N NaOHを用いて角膜損傷させた後に誘発した化学損傷を治療すると、p17およびp144で治療した後に顕著に減少し、このことは、疑いようもなく、臨床的重要性がきわめて高い。
さらに、得られた結果を以下に示す:
− 1N NaOHを用いて作成した損傷の治療として最も適切な製剤は第5の製剤であった(ヒアルロン酸ナトリウムを含む);
− 6週間のアッセイ期間中、p17を用いた治療またはp144を用いた治療は、濁りおよび上皮閉鎖に関連して、NaOHを用いて形成した初期損傷を顕著に回復させた;
− TGF−β1は、ウサギ角膜線維芽細胞の一次培養物中でSmad2のリン酸化を活性化するが、Smad2/3およびSmad7の量を変えない。後者は、p17またはp144で治療した後、変わらない;
− p17を用いた治療は、ウサギ角膜線維芽細胞の一次培養物中のTGF−β1のシグナル伝達カスケードに対しなんら影響を与えず、このことは、in vivo試験で得られる結果と食い違いがある;拘束力のない説明によって、p17によって用いられるシグナル伝達経路は、試験する動物モデルでは非常に有効であることが示されているが、この試験で調べたタンパク質によって媒介されず、Smad2、Smad2/3、およびSmad7タンパク質から選ばれる他の異なるタンパク質によって媒介されると考えられる、
− 50μg/mlおよび200μg/mlの濃度でのp144を用いた治療は、TGF−β1形質導入シグナルをブロックし、Smad2のリン酸化を阻害し、従って、その後の核への移行を阻害する;これらの知見は、in vivo試験で得られた結果と完全に一致しており、このことは、細胞内効果がSmad2経路によって仲介されていることを示唆している。

Claims (10)

  1. 下記からなる群:
    (a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント、
    (b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
    (c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    (d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
    (e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチド、および/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、並びに
    (f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、少なくとも1つ以上の組み合わせから選択される、角膜の線維症および/または角膜の濁りの予防および/または治療用生成物。
  2. 前記生成物(a)〜(e)のうち、少なくとも1つ以上を含んでなる組成物の形態である、請求項1に記載の生成物。
  3. 前記TGF−β1インヒビターペプチドが、配列番号1〜23で示されるいずれかのアミノ酸配列のうち、任意のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するペプチドである、請求項1または2に記載の生成物。
  4. 前記TGF−β1インヒビターペプチドが、そのアミノ酸配列が、配列番号1、または配列番号2、または配列番号3、または配列番号4、または配列番号5、または配列番号6、または配列番号7、または配列番号8、または配列番号9、または配列番号10、または配列番号11、または配列番号12、または配列番号13、または配列番号14、または配列番号15、または配列番号16、または配列番号17、または配列番号18、または配列番号19、または配列番号20、または配列番号21、または配列番号22、または配列番号23で示されるペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント、またはこれらの塩からなる群から選択されるペプチドである、請求項1または2に記載の生成物。
  5. 前記フラグメントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、または配列番号23の5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14連続アミノ酸残基を含んでなり、さらにTGF−β1を阻害する能力を維持するものである、請求項4に記載の生成物。
  6. 前記TGF−β1インヒビターペプチドが、ペプチドp144(配列番号6)、ペプチドp17(配列番号17)、または配列番号6もしくは配列番号17の9、10、11、12、13、または14連続アミノ酸残基を含んでなるフラグメント、またはこれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択されるペプチドであり、ここで前記フラグメントがTGF−β1を阻害する能力を維持するものである、請求項1または2に記載の生成物。
  7. 前記TGF−β1インヒビターペプチドが、p144(配列番号6)、p17(配列番号17)、およびこれらの組み合わせからなるペプチドの群から選択されるものである、請求項1または2に記載の生成物。
  8. 角膜の線維症および/または角膜の濁りの予防および/または治療のための医薬組成物の製造において使用するための、下記からなる群:
    (a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体またはフラグメント、
    (b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
    (c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    (d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
    (e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチドおよび/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、並びに
    (f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、1つ以上の組み合わせ、から選択される生成物の使用。
  9. 角膜の線維症または角膜の濁りを予防および/または治療する方法であって、下記からなる群:
    (a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体またはフラグメント、
    (b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
    (c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    (d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
    (e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチドおよび/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、並びに
    (f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、少なくとも1つ以上の組み合わせ、から選択される生成物を、治療に有効な量、治療を必要とする被検体に投与することを含んでなる、方法。
  10. 眼用医薬組成物であって、下記からなる群:
    (a)TGF−β1インヒビターペプチド、またはその機能的に等価な誘導体、改変体、類似体もしくはフラグメント、
    (b)(a)に定義されるペプチドを含む融合タンパク質、
    (c)(a)に定義されるペプチドまたは(b)に定義される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    (d)(c)に定義されるポリヌクレオチドを含むベクター、
    (e)(a)に定義されるペプチド、(b)に定義される融合タンパク質、(c)に定義されるポリヌクレオチド、および/または(d)に定義されるベクターを含む細胞、並びに
    (f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)のうち、少なくとも1つ以上の組み合わせ、から選択される治療に有効な量の生成物と、
    この化合物のための医薬的に許容されるビヒクルであって、当該医薬的に許容されるビヒクルが眼への投与に適したものである、ビヒクルとを含んでなる、眼用医薬組成物。
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