添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について以下に説明する。様々な実施形態を通じて同様の要素には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。また、各実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。
図1を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るセンサユニット100の例示の構造について説明する。後述するようにセンサユニット100は放射線検出装置の一部として用いられてもよい。図1(a)はセンサユニット100の平面図を示し、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図を示す。センサユニット100は主にセンサ基板110、シンチレータ層120、回路基板130及び接続部140を有しうる。図1(a)では説明のために画素アレイ111を示しているが、実際にはシンチレータ保護層121の下にあるため視認できない。
センサ基板110には一方の面(第1面)に画素アレイ111が形成されている。以下の説明では画素アレイ111が形成された面を受光面112と呼び、その反対側の面(第2面)を入射面113と呼ぶ。画素アレイ111には光電変換素子がアレイ状に配置されており、各光電変換素子は検出した光を電気信号に変換する。画素アレイ111はセンサ保護層114により覆われる。センサ基板110には例えばAlなどの金属で形成された接続端子115が形成されており、接続端子115は導電線(不図示)によって画素アレイ111に接続されている。
シンチレータ層120はセンサ基板110の受光面112側(第1面側)に配置されており、画素アレイ111全体を覆う一方で、接続端子115を露出する。シンチレータ層120はセンサユニット100に入射した放射線150を、画素アレイ111が検出可能な波長の光に変換する。本実施形態に係るセンサユニット100は、センサ基板110の入射面113側(第2面側)から入射した放射線150を検出する裏面照射型である。入射面113側から入射した放射線150はシンチレータ層120のうちの画素アレイ111に近い側で光に変換される可能性が最も高い。すなわち、画素アレイ111の近くが最も強く光る。そのため、その反対側から放射線が入射した場合よりも散乱光が低減し、解像度が向上する。シンチレータ層120はシンチレータ保護層121で覆われてもよい。シンチレータ保護層121で覆うことにより、シンチレータ層120を外気からの水分の浸入や外部からの衝撃による構造破壊から保護できる。
回路基板130にはIC131や抵抗器(不図示)などの回路が形成されている。これらの回路を用いて画素アレイ111の動作が制御される。このような制御は例えば画素アレイ111の走査やタイミング制御、画素アレイ111から得られた信号の処理などを含みうる。回路基板130はシンチレータ層120のセンサ基板110とは反対側に配置される。回路基板130と接続端子115とは接続部140を介して電気的に接続される。裏面照射型であるセンサユニット100では、接続端子115と、回路基板130及び接続部140とが、センサ基板110の同じ側(受光面112側)に配置される。回路基板130及び接続部140が、センサ基板110の入射面113側(第2面側)とシンチレータ層120との間に配置されると、入射した放射線150が回路基板130及び接続部140に吸収されるおそれがあるためである。そのため、回路基板130及び接続部140をセンサ基板110の受光面112の外縁(第1面の外縁)からはみ出さない位置に、言い換えると、外縁よりも内側に、配置できる。例えば、接続部140の長さ(接続端子115に接続された部分と回路基板130に接続された部分との間の長さ)を調整することによって接続部140が撓んで受光面112の外縁からはみ出さないようにしてもよい。接続部140の柔軟性が高く容易に変形する場合に、接続部140のうち接続端子115及び接続部140に接続されていない部分(例えば中央部分)をセンサ基板110上の構成要素(例えばシンチレータ保護層121)に接着剤などで固定してもよい。
センサユニット100は電磁シールド層160を更に有してもよい。電磁シールド層160は回路基板130とシンチレータ層120との間に配置されてもよく、回路基板130の有する回路が発生した電磁波を遮蔽して、画素アレイ111の動作への影響を低減する。本実施形態に係る電磁シールド層160は回路基板130よりも大きく、画素アレイ111よりも小さい。これにより、画素アレイ111の動作への影響を低減するとともに、センサユニット100の軽量化も実現できる。本実施形態では、電磁シールド層160は接続部140の有するIC141等の回路とシンチレータ層120との間にも形成されており、接続部140の回路が発生した電磁波も遮蔽できる。センサユニット100は裏面照射型であるため、電磁シールド層160が入射面113側から入射した放射線150の検出を妨げることはない。
続いて、センサユニット100の各構成要素の具体的な構成例を説明する。センサ基板110は、例えばガラス、耐熱性プラスチック等を用いて形成できる。ガラスで形成した場合に、ガラスによる放射線の吸収を低減するために、薄型ガラス基板を使用してもよい。また、画素アレイ111を形成した後、画素アレイ111を保護フィルムで保護し、フッ酸の液に浸してガラス基板を化学的に研磨し、センサ基板110の厚さを薄くしてもよい。センサ基板110を薄くした場合にはセンサユニット100の更なる小型化、軽量化が実現される。ガラスで形成したセンサ基板110の厚さは加工性やハンドリング性を向上するために30μmから500μmの範囲としてもよく、特に100から300μmの範囲としてもよい。本実施形態のセンサユニット100では接続端子115と回路基板130とが同じ側(受光面112側)に配置されるため、これらを接続するためにセンサ基板110にスルーホールを形成する必要はない。従って、スルーホールを形成することによるセンサ基板110の強度の低下を防止でき、歩留まりが向上する。
画素アレイ111は、例えばアモルファスシリコン(a−Si)等の半導体を用いたMIS型センサ、PIN型センサ等の変換素子を有する画素が、行列状に配置された領域である。本実施形態において画素アレイ111は、絶縁性基板上に画素が行列状に配置された構成や、単結晶半導体基板に画素が行列状に配置された構成など、既存の構成を用いて実施できるため、その詳細な説明を省略する。センサ保護層114は、例えばシリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、パラキシリレンやアクリル等の有機物質を含む樹脂を用いて形成されてもよく、例えば、熱硬化型のポリイミド系樹脂を用いてもよい。また、シンチレータ層120の蒸着やアニール処理のような高温条件を伴う処理において劣化しないように、耐熱性を有する樹脂を用いてもよい。
シンチレータ層120は、例えばGd2O2S:Tbのような粒子蛍光体やハロゲン化アルカリのシンチレータ層で形成されうる。シンチレータ層120はセンサ基板110に対してセンサ保護層114の上に蒸着することによって形成されるCsI:NaおよびCsI:Tl等のハロゲン化アルカリの柱状結晶構造を有してもよい。
シンチレータ保護層121は、例えばポリイミド系、エポキシ系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系のホットメルト樹脂を用いて形成されうる。これらの材料のうち、水分透過率の低いものを用いてもよい。また、シンチレータ保護層121の厚さを10μm〜200μm程度としてもよい。更に、シンチレータ保護層121とシンチレータ層120との間に例えば、Al、Ag、Cr、Cu、Ni、Ti、Mg、Rh、Pt、及びAu、又はこれらの合金のような反射率の高い金属からなる反射層(不図示)を配置してもよい。これにより、センサユニット100の輝度特性が向上する。
電磁シールド層160は、例えばAg、Cu、Au、Al、Niなどの金属で形成された箔、シート又は板の形状や、これらの金属を混ぜ込んだ導電性塗料、ステンレス繊維を分散させた導電性高分子などを用いて形成されうる。これらの材料のうち、加工性や材料価格等での優位なAlを使用してもよい。また、金属箔の形状を選択した場合に、樹脂のフィルム形状の材料と貼り合わせてもよく、これにより箔形状の安定化や作業性の向上が図れる。この樹脂として、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、アクリル等のフィルム材料を用いうる。さらに、接着剤(不図示)を用いて電磁シールド層160をシンチレータ保護層121に固定してもよい。この接着剤として、例えばゴム系接着剤、アクリル系接着剤、スチレン・共役ジエンブロック共重合体系接着剤、シリコーン系接着剤などを用いうる。電磁シールド層160は、薄い場合には電磁シールド効果が少なく、厚い場合にはセンサユニット100の重量が増加する。そこで、両者のトレードオフを考慮して、電磁シールド層160の厚さを5μmから3mmの範囲としてもよく、特に10μmから1mmの範囲としてもよい。
回路基板130は例えばガラスエポキシ、紙フェノール、紙エポキシ等を素材とした基板であり、この基板に銅箔など導電体で回路(パターン)配線が形成され、回路を構成する部品が実装される。回路基板130の一部にコンタクトホールを形成し、回路基板130と電磁シールド層160とを導電性接着剤で接続し、回路基板130を介して電磁シールド層160を接地に接続してもよい。また、回路基板130を接着剤等で電磁シールド層160に固定してもよい。固定することにより、振動等による衝撃に対して接続部140との接続部の信頼性が向上する。
接続部140は、例えばポリイミドやポリエステルなどのフィルムで形成された基材の上に銅箔の導電パターンが形成され、表面保護のための絶縁フィルムで被覆されたフレキシブル配線基板(FPC)であってもよい。接続端子115と接続部140とは導電性接着剤で接着される。また、回路基板130と接続部140とは導電性接着剤で接着される。この導電性接着剤は、例えば銀や金等の導電フィラーと、アクリルやエポキシ等の樹脂バインダとを混合した接着剤でありうる。
以上のように、本実施形態によれば、センサ基板110の外縁を越えた部分に回路基板130及び接続部140が位置しないので、センサユニット100を小型化できる。また、センサ基板110にスルーホールを形成する必要はないので、センサ基板110の強度は維持される。
続いて、図2を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る放射線検出装置200の例示の構造について説明する。図2(a)は放射線検出装置200の平面図を示し、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図を示す。放射線検出装置200は主にセンサユニットと、センサユニットを収容して保護するカバーとを備えうる。放射線検出装置200のセンサユニットは図1に示されるセンサユニット100と同様の構成であるため、図1を用いて説明された構成要素については同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。図2(a)では説明のためにカバーの上面を省略している。また、図2(a)において、画素アレイ111、接続部140の一部及び接続端子115は電磁シールド層160にあるため実際には視認できない。
カバーは上カバー261と下カバー262とで構成されうる。放射線150の入射側にある下カバー262は例えばアモルファスカーボン、樹脂等の放射線吸収量が少ない材料で形成してもよい。放射線検出装置200は回路基板130のほかに回路基板230を有しうる。回路基板230にはIC231等を有する回路が形成されている。回路基板230は回路基板130と同様の構成を有してもよく、重複する説明を省略する。回路基板130にはアナログ信号を処理する回路が配置され、回路基板230にはデジタル信号を処理する回路が配置されてもよい。そのような場合、回路基板230を回路基板130よりも中央側に配置することが好ましい。アナログ信号を処理する回路よりも放射線による品質影響を受けやすいデジタル信号を処理する回路を、放射線の吸収確率が高い中央側に配置した方が、放射線検出装置200の放射線耐性が向上するためである。回路基板230と回路基板130とは接続部240で接続される。回路基板130と回路基板230とは1枚の回路基板に統合されてもよい。この場合に、回路基板は画素アレイ111を全体的に覆う大きさであってもよい。これにより、外部から回路基板に与えられた応力を画素アレイ111全体に分散させることができ、放射線検出装置200の耐障害性が向上する。
図1の電磁シールド層160とは異なり、本実施形態に係る放射線検出装置200の電磁シールド層160はセンサ基板110よりも大きく、センサ基板110を全体的に覆う。さらに、電磁シールド層160の外周は上カバー261に接している。これにより、電磁シールド層160により画素アレイ111が全体的に覆われ、電磁シールド効果がさらに向上する。また、電磁シールド層160はセンサ基板110よりも小さく、画素アレイ111よりも大きくてもよい。この場合にも、電磁シールド層160により画素アレイ111を全体的に覆うことができる。電磁シールド層160には例えば斜めに入れられたスリットである開口242が形成されており、接続部140はこの開口242を通る。
センサ基板110と下カバー262とはセンサ基板接着層271により接着されて固定される。センサ基板接着層271として例えばゴム系接着剤、アクリル系接着剤、スチレン・共役ジエンブロック共重合体系接着剤、シリコーン系接着剤などを用いうる。放射線検出装置200では、センサ基板110の入射面113と下カバー262とがセンサ基板接着層271を介して接している。このような構成ではセンサ基板110を保持する基台は不要であり、放射線検出装置200の小型化・軽量化につながる。本実施形態で、センサ基板接着層271はセンサ基板110の入射面113だけでなく、その側面の一部を覆っている。これにより、振動等によるセンサ基板110の下カバー262への衝突を防ぐことができ、センサ基板110の破損が防止される。また、センサ基板110の入射面113が下カバー262に直接に接するように配置してもよく、センサ基板接着層271はセンサ基板110の側面のみを覆ってもよい。
回路基板130、230と上カバー261との間には保持層272が配置される。保持層272は例えば発泡ゴムや、多孔質ゴム等からなるスポンジ状の柔らかい物質を用いて形成され、容易に変形する。回路基板130、230に実装されたIC等の保持層272の領域は変形し、実装部品との接触面積を大きくすることでセンサ基板110の振動等による位置ずれが防止され、接続部140の接続部の信頼性が向上する。本実施形態の放射線検出装置200も第1実施形態と同様の効果を有する。
続いて、図3を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る放射線検出装置300の例示の構造について説明する。図3(a)は放射線検出装置300の平面図を示し、図3(b)は図3(a)のC−C線断面図を示す。以下では放射線検出装置300と放射線検出装置200との相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
放射線検出装置300はセンサパネルとシンチレータパネルとを別々に準備し、それらを貼り合わせて形成される間接方式の放射線検出装置である。シンチレータを蒸着するためのシンチレータ基板として、電磁シールド層160を用いてもよい。これにより、シンチレータ基板と電磁シールド層160とを別々に配置する場合と比較して、軽量化・小型化を実現できる。シンチレータの材料としてCsI:Na及びCsI:Tl等のハロゲン化アルカリ物質を用いる場合には、電磁シールド層160の表面に絶縁保護膜(不図示)を形成してから蒸着してもよい。
シンチレータ層120がCsI:Tl等のハロゲン化アルカリの柱状結晶構造を有する場合に、放射線の吸収量が増加すると輝度特性が低下する。この場合に、環境温度よりも高い熱をシンチレータ層120に加えることにより、輝度特性を回復できる。本実施形態に係る放射線検出装置300では、電磁シールド層160にシンチレータ層120が蒸着され、電磁シールド層160と回路基板130、231とが直接に又は接着剤を介して接している。これにより、IC131、231等の回路で発生した熱は、回路基板130、230及び電磁シールド層160を介してシンチレータ層120に伝わる。これにより、シンチレータ層120の輝度特性を回復できると共に、IC131、232等の回路を冷却できる。また、電磁シールド層160にシンチレータ層120が蒸着され、シンチレータ層120よりも電磁シールド層160が大きいので、シンチレータ層120全体に回路で発生した熱が伝熱する。シンチレータ層120に均一に熱が伝達されるように、熱源となるIC231をシンチレータ層120の中央に配置してもよい。また、その他のIC等の回路をシンチレータ層120上に点在するように配置してもよい。本実施形態の放射線検出装置200も第1実施形態と同様の効果を有する。