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JP2013132248A - 光合成細菌の培養方法および光合成細菌 - Google Patents

光合成細菌の培養方法および光合成細菌 Download PDF

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JP2013132248A JP2011285046A JP2011285046A JP2013132248A JP 2013132248 A JP2013132248 A JP 2013132248A JP 2011285046 A JP2011285046 A JP 2011285046A JP 2011285046 A JP2011285046 A JP 2011285046A JP 2013132248 A JP2013132248 A JP 2013132248A
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Koji Morimura
浩司 森村
Tatsunori Higa
辰典 比嘉
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Abstract

【課題】光合成細菌の効率的な培養方法および光合成細菌を提供する。
【解決手段】キチンおよび/またはキトサンを含有する培地で培養することを特徴とする、光合成細菌の培養方法である。前記光合成細菌は、紅色非硫黄細菌の一種であるロドシュードモナス・パルストリスであることが好ましい。嫌気条件でも好気条件でも、また光照射の有無に係わりなく、いずれの条件でも培地にキチンを含有することで増殖率が増加する。
【選択図】なし

Description

本発明は、光合成細菌の培養方法、および特定の光合成細菌に関する。
光合成細菌は自然界に広く分布する細菌であり、アミノ酸やビタミンを豊富に含むために農作物の栽培などに利用されている。たとえば、紅色非硫黄細菌の培養液と土壌微生物培養剤とを施用する農作物の栽培法がある(特許文献1)。紅色非硫黄細菌が植物根圏において、根毛より分泌される炭水化物、アミノ酸、有機酸、ビタミン、核酸などを利用代謝して植物に吸収利用されることで農作物の栄養生長が促進され、生産物の品質を向上させることができるという。
また、有機物含有液に活性炭を添加し、光合成細菌の存在下で浄化させ、浮上してきた浮上物を分離することを特徴とする植物培養土の製造方法もある(特許文献2)。従来から、有機物含有廃液の処理方法として活性汚泥を用いる沈降法が行われてきたが、汚泥が浮上して有機物との分離性が劣化するため処理の続行が困難となり、また汚泥にアルミニウムなどの凝集剤を添加して沈降性を確保すると、分離した凝集物の塩類濃度が高くなるため田畑への再利用が制限される。しかしながら、特許文献2記載の方法によれば、汚泥中の難消化性タンパク質などの懸濁物が活性炭に吸着されるため効率的に汚泥と分離して浮遊し、このようにして得られる浮遊物は凝集剤を含まないため植物培養土の創製に積極的に利用しうるという。実施例では、予め種培養した光合成細菌をし尿処理場の汚泥で8日間の本培養を行っている。なお、本培養液には光合成細菌のほかに一般細菌、アンモニア酸化細菌、硫黄酸化細菌、亜硫酸酸化細菌、亜硫酸還元菌、硝酸還元菌、酵母も共存している。
また、微生物を利用した植物育成を行うと、微生物培養の設備費や用益費が高価になることに鑑み、簡便かつ保存性に優れる培養物を得る光合成細菌の培養方法として、固体培地成分の含有割合が15〜65重量%でありかつ水分含有割合が35〜85重量%である固体培地で光合成細菌を培養することを特徴とする光合成細菌の培養方法がある(特許文献3)。実施例で調製する固体培地は、稲わら、広葉樹の落ち葉、小麦ふすま、おから、廃糖蜜、米糠をこの順に積層し2週間に亘って発酵させた堆肥を自然乾燥させたものである。このようにして得られた光合成細菌の培養物は、ただちに農作物の栽培用土中に埋め込むことができるが、施肥時期まで保存する場合には、通気孔を有する袋やコンテナなどに水分含有量が45重量%を超える培地で光合成細菌を培養して乾燥を防止すると、施肥時まで保存しうるという。
一方、光合成細菌の培養方法として、米のとぎ汁を発酵菌で一次発酵させたとぎ汁発酵液を培養基とする光合成細菌の培養方法もある(特許文献4)。光合成細菌の培養は他の菌が増殖できない環境を作り、光合成細菌が優先的に増殖する条件でなければ長期保存に適しないが、特許文献4記載の方法によれば、嫌気性または通性嫌気性である光合成細菌の性能を生かして長期間保存が可能であるという。実施例では、米のとぎ汁に発酵菌として乳酸菌、枯草菌、酵母を添加し、生成する乳酸菌、酪酸、プロピオン酸などの有機酸によって雑菌を死滅および自己消化した後に光合成細菌を植菌し、弱光で照射および撹拌しながら光合成細菌を培養している。
また、FRP製の密閉可能な容器内に液体培地を注入し、上記容器内の液体培地を撹拌しつつ加熱沸騰による間欠滅菌をした後、液体培地に光合成細菌の種菌を投入して容器を密閉し、種菌入りの液体培地を撹拌しつつ培養を行う、光合成細菌の大量培養法もある(特許文献5)。光合成細菌のみを大量に純粋培養するには、耐圧性容器に液体培地を7〜8分目程度入れ、撹拌とエアレーションを行った後に高温高圧で滅菌した後に種菌を投入し、通気撹拌を行いながら培養を開始するが、装置が高価でランニングコストも高い。特許文献5記載の方法によれば、FRP製であるから、装置本体に投光窓を形成したり光源を配設するこなく光合成を効率良く行わせることができ、加熱沸騰と定温放置による間欠滅菌を行うため、圧力容器やボイラなどの機器類の専門的な管理者を配置することなく、手軽に光合成細菌を大量に純粋培養することができるという。
更に、光合成細菌の液体懸濁液に多糖類を添加して混合液を調製し、この混合液を乾燥させることを特徴とする光合成細菌の保存方法もある(特許文献6)。廃水処理、養殖用の飼料、農作物の肥料として光合成細菌を用いる場合、その特性を活かすためには光合成細菌を生菌の状態で使用する必要があるが、光合成細菌を液体に懸濁した状態で常温保存すると菌数が激減し使用不能になる。一方、冷蔵や冷凍保存を行うと設備費がかさむ。特許文献6記載の方法は、澱粉やアルギン酸などの多糖類を添加し、乾燥させると光合成細菌の生菌状態を常温で維持できるため、冷蔵、冷凍施設を使用せずに長期保存が可能であるという。
一方、光合成細菌を培養して5−アミノレブリン酸を製造する方法もある(特許文献7)。光照射を必要としない従属栄養条件下での微生物培養において、酸素はエネルギー産生のため必要不可欠なものであるが、5−アミノレブリン酸合成酵素は酸素によって不活化する。一方、光照射を行うとコストがかかる。特許文献7は、特定条件で酸素供給を制限することで好気条件下で培養を行うことで、光の非照射条件でも5−アミノレブリン酸を高収率で産生することができる、という。
特開昭59−184788号公報 特許第3072086号公報 特開平10−248555号公報 特開2002−171963号公報 特開平11−243946号公報 特開2006−288221号公報 特開平8−168391号公報
光合成細菌は有用性が高く、単独培養しうることが好ましいが増殖は容易でない。たとえば特許文献1では培養液に含まれるアミノ酸、有機酸、ビタミン、核酸などを積極的に利用するものであるが、培養方法に関する開示はない。また、特許文献2も光合成細菌を利用するものであるが、培養液には光合成細菌のほかに一般細菌、アンモニア酸化細菌、硫黄酸化細菌、亜硫酸酸化細菌、亜硫酸還元菌、硝酸還元菌、酵母も共存され、光合成細菌を単独で培養する方法に関する開示はない。同様に、特許文献3も稲わらや広葉樹の落ち葉などを固形培地として光合成細菌を培養するものであるが、保存性を確保するため固形培地の水分量を特定範囲に制限するものであり、培養方法を開示するものではない。更に、特許文献4も米のとぎ汁を乳酸菌、枯草菌、酵母などの発酵菌で一次発酵させたとぎ汁発酵液を培養基として光合成細菌を培養するものであるが、光合成細菌の単独培養方法を開示するものではない。また、特許文献5は、耐圧容器を使用することで培養装置を簡略化するものであり、特許文献6は多糖類を添加することで保存性を向上されるものであり、いずれも光合成細菌の単独培養方法を開示するものではない。
一方、特許文献7は、5−アミノレブリン酸を生産するため、培地中に資化し得る炭素源及び窒素源としてグルコースやグルタミン酸ナトリウムなどを添加し、通気量を空気0.014v/v/m、N2 ガスを0.086v/v/mにて供給し、5−アミノレブリン酸を生産しているが、供給ガスの制御が容易でない。また、栄養源としてグルコースを添加する必要がありコストが嵩む。
更に、光合成細菌は、上記特許文献1から特許文献3に記載するように肥料に配合して使用されるが、たとえば上記特許文献3記載の培養方法では、培地に植物の成長促進作用を有するレブリン酸を添加して培養する。レブリン酸を含有するため、この培養液は有機JASの認定を受けることができない。
また、本来、光合成細菌は生育が遅い。糖蜜などの栄養豊富な培地を使用して培養する際に無菌操作を行わないと、混在する他の菌が先に増殖するため光合成細菌の増殖が妨げられる。一方、無菌操作は容易でない。
上記現状に鑑み、本発明は、安価なエネルギー源を使用し、簡便な方法で増殖率に優れる光合成細菌の培養方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、増殖率に優れる特定の光合成細菌を提供することを目的とする。
本発明者らは、光合成細菌について詳細に検討したところ、培地にキチンやキトサンを添加して培養するとこれらを含まない培地で培養した場合と比較して嫌気培養、好気培養のいずれであっても、かつ光照射の有無に係わらず増殖に優れ、更に、キチンやキトサンのみを炭素源、窒素源とするため他の菌類が増殖できず、無菌処理を行うことなく光合成細菌のみを増殖しうることを見出し、本発明を完成させた。本発明の培養方法は、キチンやキトサンのみを使用するため、培養液を有機JASの認定を受けた農地に使用することができる。
すなわち本発明は、キチンおよび/またはキトサンを含有する培地で培養することを特徴とする、光合成細菌の培養方法を提供するものである。
また本発明は、前記光合成細菌が、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)である、上記培養方法を提供するものである。
また本発明は、嫌気かつ照明下で培養することを特徴とする、上記培養方法を提供するものである。
更に、本発明は、受託番号NITE P−1166で特定される光合成細菌を提供するものである。
本発明によれば、培地にキチンおよび/またはキトサンを含有させることで効率的に光合成細菌を単独培養することができる。
(A)は、表1の結果を図示したものであり、(B)は表2の結果を図示したものである。 表1、表2の結果に基づき各培養条件における菌株間の増殖の相違を示す図である。(A)は、嫌気・明条件、(B)は、嫌気・暗条件、(C)は好気・明条件、(D)は好気・暗条件での結果を示す。なお、Y軸は対数表示である。 表1、表2の結果に基づき各菌株での培養条件の相違による増殖の違いを示す図である。(A)はNITE P−1166、(B)はATCC BAA−98、(C)はNBRC 16661、(D)は基準株(NBRC 100419)の結果である。なお、Y軸は対数表示である。
本発明の第一は、キチンおよび/またはキトサンを含有する培地で培養することを特徴とする、光合成細菌の培養方法である。
本発明で使用する光合成細菌とは、広くは光合成を行う真正細菌の総称であり、紅色細菌や紅色非硫黄細菌などを含む。光合成を行うのはシアノバクテリア、紅色細菌、緑色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌、ヘリオバクテリアであり、紅色細菌は栄養的分類から紅色硫黄細菌と紅色非硫黄細菌に分けられる。紅色細菌は、光合成細菌のうち酸素を発生せず、カロテノイドの蓄積により赤色ないし褐色を呈する。本発明では、紅色非硫黄細菌を好適に使用することができる。通性嫌気性であり、酸素の有無に係わらず増殖しうるからである。しかも、紅色非硫黄細菌は菌体内に蓄積されたカロテノイドの紅色によって増殖を外部から視認することができる。特に好ましくはロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)である。嫌気条件、好気条件、明条件、暗条件のいずれでも増殖しうるからである。
ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)は、グラム陰性の短桿菌であり、菌体内に蓄積したカロテノイドにより紅色〜淡紅色を示す。本発明で使用する光合成細菌としては、キチンやキトサンを資化しうる光合成細菌であることが好ましい。このような光合成細菌としては、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターの受託証(通知年月日2011年12月5日、通知番号11−309)に記載の通り、2011年11月24日付で寄託した受領番号NITE AP−1166に基づく受託番号NITE P−1166として寄託されたRhodopseudomonas palustris TPR001株(以下、単にNITE P−1166と称する。)、ATCC BAA−98、NBRC 16661、基準株(NBRC 100419)であり、特に好ましくは、NITE P−1166、ATCC BAA−98、NBRC 16661である。後記する実施例に示すように、キチン添加による増殖率に優れるからである。
本発明では、培地にキチンを含有することを特徴とする。キチンは、N−アセチルD−グルコサミンがβ−1,4で結合したものであり、N−アセチルD−グルコサミンに加えてグルコサミンも共重合されてなる直鎖状のポリマーである。節足動物や甲殻類の外骨格を構成するクチクラの主成分であり、生物資源由来の物質であって枯渇の恐れが無く、むしろ大量に廃棄されているが生分解性を有する有用資源である。光合成細菌の増殖培地には、炭素源としてグルコースやグルタミン酸ナトリウムなどが使用されるが、キチンは難溶解性であり、これを培地に添加した例は存在しない。しかしながら、この難溶解性のキチンを培地に添加して光合成細菌を培養したところ、キチンを添加しない培地で培養する場合と比較して、極めて光合成細菌の増殖率に優れることが判明した。
本発明の培養方法で使用する培地において、キチンの含有量は、培地中に少なくとも0.1質量%を含めば上限はなく、0.1〜95質量%、好ましくは0.5〜70質量%、より好ましくは1〜50質量%、特に好ましくは1〜30質量%である。この範囲で増殖に優れるからである。
なお、培地には、無機塩類として、例えばカリウム、ナトリウム、鉄、マグネシウム、マンガン、銅、カルシウム、コバルト等の各塩類等を添加することができる。このような無機塩類としては、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マンガンなどの硫酸塩、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化アンモニウムなどの塩化物、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸アンモニウムなどのリン酸塩がある。これら塩類は、核酸を構成し、DNAポリメラーゼの補因子などとして使用される。無機塩の配合総量は、培地中に0.0001〜10質量%、好ましくは0.0001〜8質量%、より好ましくは0.001〜5質量%である。キチン以外に配合する成分に制限はないが、その他、本発明の効果を害しない範囲でニコチン酸、ビオチン、チアミンその他を添加してもよい。
培地のpHは、5〜9であることが好ましく、より好ましくは6〜8である。pHは、塩酸や水酸化ナトリウム溶液などで調整することができる。なお、pH調整のために、上記した塩類の1種以上を使用してもよい。
なお、培地には光合成細菌が資化しうる炭素源として、グルタミン酸、リンゴ酸、酢酸、ピルビン酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、グルコン酸、エタノール、グリセロール、グルコース、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、酵母エキス等の炭素源を添加してもよい。また、窒素源として、アンモニア、塩化アンモニウム、燐酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素等の無機窒素化合物や、酵母エキス、乾燥酵母、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸等の有機窒素源を添加してもよい。ただし、本発明はこのような炭素源や窒素源を使用することなくキチンやキトサンで増殖しうる点に特徴がある。この点を詳記する。
本発明の培養方法では、後記する実施例に示すように、培地に資化しうる基質としてキチンやキトサンを含有すればよく、光合成細菌を増殖した後の培養液の主成分は、未資化のキチンやキトサンと菌体分泌物となる。従ってこの培養液は、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らず、自然界の力で生産された農産物の生産者に認定される有機JASの認証を受けた農地でも好適に使用することができる。なお、農地の放線菌は、キチン質を好むため、光合成細菌と共に培地に含まれるキチンやキトサンを施肥することで土壌中の放線菌が増殖し、また農地に存在するフザリウムやリゾクトニアなどの土壌病原菌は細胞質がキチン質で構成されているため、前記増殖した放線菌の分泌するキチン分解酵素によって溶菌される。
しかも、キチンやキトサンのみを培地に含むため、これらを資化しうる菌株以外は増殖することができず、他の菌の殺菌その他の除去処理を行うことなく、光合成細菌のみを増殖することができる。これは、無菌操作を行うことなく培養できることを意味し、これにより培養操作並びに培養装置の簡便化をはかることができる。
更に、キチンやキトサンは、難溶解性であるため培地中に沈殿するが、この培地に光合成細菌を植菌して培養すると、沈殿した白色のキチンやキトサンの層中で光合成細菌が増殖する。光合成細菌の中でも紅色非硫黄細菌は、カロテノイドによる紅から淡紅色を呈するため、白色のキチンやキトサン中で紅色を確認することで光合性細菌の増殖を視認することができる。更に、培養後に培地をデカンタすれば遠心分離などを行うことなくキチンやキトサン層と培地とを分離することができる。光合成細菌は、キチンやキトサン層中で増殖するため、デカンタ後の培養容器に蒸留水を添加してキチンやキトサンを懸濁し、次いで静置してキチンやキトサンが沈殿した後に上澄みを分取すれば、沈降の遅い菌体を培地成分と分離して簡便に回収することができる。従来の培地成分は、培地に溶解して使用することが一般的であったため、菌体と培地成分との分離にはカラムによる分離や遠心分離などを行う必要があった。しかしながら、本発明の培養方法によれば、難溶解性のキチンやキトサンを使用するため、簡便に未資化のキチンやキトサンと菌体との分離が容易である。
本発明の培養方法は、二酸化炭素を供給して酸素を供給しない嫌気条件でも、酸素の存在下で培養する好気条件でも増殖することができ、そのいずれにおいても光を照射する明条件でも、光を照射しない暗条件でも増殖することが判明した。なお、培養温度は、15〜37℃、より好ましくは25〜35℃である。
なお、嫌気条件とは、酸素を供給せず、二酸化炭素を濃度5〜30%の範囲で供給する条件であり、好気条件とは酸素を1〜20%の濃度で供給する条件である。また、明条件とは、100〜10000ルクスの照明下での培養を意味し、暗条件とは30ルクス以下の条件での培養を意味する。明条件では、培養時に光照射を必要とするため光源装置および照明費用が必要となる。暗条件であれば、このような装置や照明費用を不要とし、安価に光合成細菌を増殖することができる。本発明では、上記したように、嫌気・明条件、嫌気・暗条件、好気・明条件、好気・暗条件のいずれでも増殖しうるが、同じ光合成細菌でも菌株によって培養条件の相違による増殖率に相違がある。このため、培養を目的とする光合成細菌の菌株の特性や培養設備の種類などに対応して適宜好適な培養条件を選択することができる。
培養時間は7〜30日、より好ましくは10〜20日である。光合成細菌が紅色非硫黄細菌である場合には、培地に添加したキチンやキトサンの層中で光合成細菌が増殖し、紅色から淡紅色の着色でその存在を確認することができる。本発明の培養方法によれば、もっとも増殖に優れる方法で培養して光合成細菌を培養し、その後、もっとも簡便な培養方法で静置すれば、増殖した光合成細菌を安定して保存することができる。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例1)
(1)嫌気、明条件での培養
蒸留水に硫酸マグネシウム7水和物を0.03%、リン酸水素2カリウムを0.03%溶解し、更にキチンを5%添加して培地を調製した。この培地のpHは、6.7であった。この培地を試験管に5mlとり、光合成細菌(Rhodopseudomonas palustris:NITE−P1166)を5×10cfu/ml植菌して、培養液を調製した。嫌気培養用容器(三菱ガス化学株式会社製、商品名「アネロパック・ケンキ」)に前記培養液を収納し、温度30℃、蛍光灯を2000ルクスで照射して7日間の嫌気・明条件で培養を行った。なお、前記嫌気培養用容器内の炭酸ガス濃度は、16%であった。
(2)嫌気、暗条件での培養
上記(1)と同様にして培養液を調製した。嫌気培養用容器(三菱ガス化学株式会社製、商品名「アネロパック・ケンキ」)に前記培養液を収納し、温度30℃、蛍光灯を照射することなく7日間の嫌気・暗条件で培養を行った。なお、前記嫌気培養用容器内の炭酸ガス濃度は、16%であった。
(3)好気、明条件での培養
上記(1)と同様にして培養液を調製した。この培養液を、温度30℃、大気中の酸素が取り込まれる条件で蛍光灯を2000ルクスで照射して10日間の好気・明条件で培養を行った。
(4)好気、暗条件での培養
上記(1)と同様にして培養液を調製した。この培養液を、温度30℃、大気中の酸素が取り込まれる条件で蛍光灯を照射することなく10日間の好気・暗条件で培養を行った。
(5)細胞数の測定
上記(1)〜(4)の培養液について、コロニー計数法により生菌数を測定した。結果を表1に示す。なお、表1において生菌数はcfu/mlで表記した。
(比較例1)
培地の組成を、蒸留水に硫酸マグネシウム7水和物を0.03%、リン酸水素2カリウムを0.03%溶解したものに変更した以外は、実施例1と同様に操作して比較培養液を調製した。
この比較培養液を使用し、実施例1の(1)〜(4)と同様に操作して、それぞれ、嫌気・明条件、嫌気・暗条件、好気・明条件、好気・暗条件で培養を行った。ついで、各比較培養液についてコロニー計数法により生菌数を測定した。結果を表2に示す。なお、表2において生菌数はcfu/mlで表記した。
(実施例2)
実施例1の光合成細菌(Rhodopseudomonas palustris:NITE P−1166)に代えて、光合成細菌(Rhodopseudomonas palustris:ATCC BAA−98)を5×10cfu/ml植菌して培養液を調製し、実施例1の(1)〜(4)と同様に操作して、それぞれ、嫌気・明条件、嫌気・暗条件、好気・明条件、好気・暗条件で培養を行った。ついで、各培養液についてコロニー計数法により生菌数を測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
培地の組成を、蒸留水に硫酸マグネシウム7水和物を0.03%、リン酸水素2カリウムを0.03%溶解したものに変更した以外は、実施例2と同様に操作して比較培養液を調製した。
この比較培養液を使用し、実施例1の(1)〜(4)と同様に操作して、それぞれ、嫌気・明条件、嫌気・暗条件、好気・明条件、好気・暗条件で培養を行った。ついで、各比較培養液についてコロニー計数法により生菌数を測定した。結果を表2に示す。
(実施例3)
実施例1の光合成細菌(Rhodopseudomonas palustris:NITE P−1166)に代えて、光合成細菌(Rhodopseudomonas palustris:NBRC 16661)を5×10cfu/ml植菌して培養液を調製し、実施例1の(1)〜(4)と同様に操作して、それぞれ、嫌気・明条件、嫌気・暗条件、好気・明条件、好気・暗条件で培養を行った。ついで、各培養液についてコロニー計数法により生菌数を測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
培地の組成を、蒸留水に硫酸マグネシウム7水和物を0.03%、リン酸水素2カリウムを0.03%溶解したものに変更した以外は、実施例3と同様に操作して比較培養液を調製した。
この比較培養液を使用し、実施例1の(1)〜(4)と同様に操作して、それぞれ、嫌気・明条件、嫌気・暗条件、好気・明条件、好気・暗条件で培養を行った。ついで、各比較培養液についてコロニー計数法により生菌数を測定した。結果を表2に示す。
(実施例4)
実施例1の光合成細菌(Rhodopseudomonas palustris:NITE P−1166)に代えて、光合成細菌(Rhodopseudomonas palustris:基準株(NBRC 100419))を5×10cfu/ml植菌して培養液を調製し、実施例1の(1)〜(4)と同様に操作して、それぞれ、嫌気・明条件、嫌気・暗条件、好気・明条件、好気・暗条件で培養を行った。ついで、各培養液についてコロニー計数法により生菌数を測定した。結果を表1に示す。
(比較例4)
培地の組成を、蒸留水に硫酸マグネシウム7水和物を0.03%、リン酸水素2カリウムを0.03%溶解したものに変更した以外は、実施例4と同様に操作して比較培養液を調製した。
この比較培養液を使用し、実施例1の(1)〜(4)と同様に操作して、それぞれ、嫌気・明条件、嫌気・暗条件、好気・明条件、好気・暗条件で培養を行った。ついで、各比較培養液についてコロニー計数法により生菌数を測定した。結果を表2に示す。
(結果)
(1)キチン含有培地での結果を示す表1と、キチン不含有培地での結果を示す表2とを比較すると、嫌気条件、好気条件のいずれであるか、および光照射の有無を問わず、キチン含有培地で光合成細菌を培養すると増殖率に優れ、培養後の生菌数が高値となった。図1(A)にキチン含有培地での各菌株における培養条件による菌数の相違を、図1(B)にキチン不含有培地での各菌株における培養条件による菌数の相違を図示する。なお、比較のため図1(A)と図1(B)とは、縦軸の尺度を同一とした。図1(A)に示すように、キチン含有培地では図1(B)に示すキチン不含有培地を使用した場合よりも増殖率が向上し、培養後の生菌数が増大した。
(2)表1、表2の結果に基づき各培養条件における菌株間の増殖の相違を図2に示す。図2(A)は、嫌気・明条件、図2(B)は、嫌気・暗条件、図2(C)は好気・明条件、図2(D)は好気・暗条件での結果を示す。なお、Y軸は対数表示とした。光合成細菌は、いずれの培養条件でもキチン含有培地で増殖に優れる傾向があった。しかも安定して増殖している。たとえば図2(A)に示す嫌気・明条件で例示すれば、キチン不含有培地では、培養後の菌数は、NITE P−1166が4,000,000、ATCC BAA−98が12,000,000、NBRC 16661が460,000、基準株(NBRC 100419)では1,200,000と、菌数460,000から12,000,000の変動がある。これに対し、キチン含有培地では、NITE P−1166が190,000,000、ATCC BAA−98が150,000,000、NBRC 16661が160,000,000、基準株(NBRC 100419)では9,400,000である。特にNITE P−1166、ATCC BAA−98およびNBRC 16661間でのばらつきが少なく、かつ生菌数が多い。このことは、培地にキチンを添加することで安定して光合成細菌を増殖しうることを意味する。この傾向は、図2(B)に示す嫌気・暗条件、図2(C)に示す好気・明条件、図2(D)に示す好気・暗条件も同様であった。このことから、嫌気培養か好気培養か、および光照射の有無に係わらず、キチンを培地に添加することで光合成細菌を効率的に増殖しうることが判明した。
(3)表1、表2の結果に基づき各菌株での培養条件の相違による増殖の違いを図3に示す。図3(A)はNITE P−1166、図3(B)はATCC BAA−98、図3(C)はNBRC 16661、図3(D)は基準株(NBRC 100419)の結果である。Y軸は対数表示とした。NITE P−1166、ATCC BAA−98およびNBRC 16661は、キチン含有培地の嫌気・明条件でもっとも増殖率に優れる結果となった。NITE P−1166では、嫌気・暗条件、好気・明条件、好気・暗条件でも表1に示すようにそれぞれ培養後の菌数が46,000,000、55,000,000、および49,000,000であり安定して高い結果となった(図3(A))。これは、ATCC BAA−98(図3(B))、NBRC 16661(図3(C))、基準株(NBRC 100419)(図3(D))でも同様の傾向であった。このことから、光合成細菌のなかでもRhodopseudomonas palustrisの基準株(NBRC 100419)を含む多くの菌株は、キチンを培地に添加することでその増殖率を向上しうると考えられた。なお、特にキチン含有培地での嫌気・明条件での増殖率に優れる傾向があった。
本発明は、光合成細菌を効率的に増殖でき、有用である。

Claims (4)

  1. キチンおよび/またはキトサンを含有する培地で培養することを特徴とする、光合成細菌の培養方法。
  2. 前記光合成細菌が、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)である、請求項1記載の培養方法。
  3. 嫌気かつ照明下で培養することを特徴とする、請求項1または2記載の培養方法。
  4. 受託番号NITE P−1166で特定される光合成細菌。
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