本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置の構造および作製方法の一例について、図1から図4を用いて説明する。
本実施の形態の発光装置400は、図4(A)のように基板401上に複数個の発光部分410を備えた発光領域402と、m個(mは1以上の整数)の端子405を備えた端子部403と、n個(nは1以上の整数)の端子406を備えた端子部404を備えた回路構成を有している。
端子部403及び端子部404は外部配線を接続する端子であり、外部配線により外部に設けられた制御回路や電源などと接続される。外部に設けられた制御回路や電源などから供給される信号は、端子部403及び端子部404を介して発光装置400に入力される。図4(A)では、端子部403および端子部404の2カ所から信号を入力する構成を示しているが、端子部403を発光領域402の左右外側に形成し、端子部404を発光領域402の上下外側に形成して、合計4箇所から信号を入力する構成としてもよい。入力箇所を多く形成することにより、信号の供給能力が高まるため、発光装置400の高速動作が容易となる。また、発光装置400の大型化や高精細化に伴う配線抵抗の増大による信号遅延の影響を軽減することができる。また、発光装置400に冗長性を持たせることが可能となるため、発光装置400の信頼性を向上させることができる。
図4(B)は、発光部分410の回路構成の一例を示している。発光部分410は、トランジスタ420およびトランジスタ430と、容量素子440と、発光素子450を有している。なお、図示はしていないが、発光素子450は外部接続端子に接続されている。発光表示装置に設けられる容量素子440の保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、電荷を所定期間保持できるように設定される。なお、高純度化された酸化物半導体膜を半導体層として用いたトランジスタ(以下、OS(Oxide Semiconductor)トランジスタと略記する。)は、半導体層としてシリコン膜などを用いたトランジスタと比較してリーク電流が極微量であるという特性を有しているため、OSトランジスタを少なくともトランジスタ420に用いることにより、容量素子440の容量の大きさを小さくすることができるため好ましい。なお、勿論図4(B)のように1つの発光素子に対して2つのトランジスタおよび1つの容量素子を備える構造(2トラ1Cなどとも表現される)以外の構成においても、容量素子440の容量を小さくするなど、必要に応じてOSトランジスタを用いればよい。
以下において、発光装置400の構造および作製方法の説明を行う。なお、発光装置400の構造を理解しやすくするため、発光部分およびその周辺部分に着目して、EL層形成前段階での構造および作製方法を説明するパート(当該パートでは、構造を分かり易くするため発光層形成前までの構造および工程を説明する。)と、発光装置全体についての構造および作製方法を説明するパートの2つに分けて説明を行う。また、本実施の形態において、発光装置400はトップエミッション構造であることを前提として説明を行うが、勿論これに限定されるものではなく、ボトムエミッション構造(下面射出構造)やデュアルエミッション構造(両面射出構造)などの構造であってもよい。
<発光部分およびその周辺部分の構造および作製方法(EL層形成前まで)>
図1は、本発明の一態様である発光装置400の、発光部分およびその周辺部分についての構造を示す図であり、図1(A1)は発光装置の上面図であり、図1(B)は図1(A1)のA1−A2部分およびB1−B2部分における断面図である。なお、構造を分かり易くするため、図1(A1)では全体に形成されている膜(または層)については記載していない。また、図1(A2)は図1(A1)の配線構造を分かり易くするために、図1(A1)の第3の電極216および第2の隔壁220を記載していない上面図である。
本実施の形態の発光装置400の発光部分およびその周辺部分の構造は、図1(A)および図1(B)のように、ベース基板200と、ベース基板200上の下地層202と、下地層202上の、ゲート電極として機能する第1の電極204と、第1の電極204を覆う第1の絶縁層206と、第1の絶縁層206上の半導体層208と、第1の電極204上に位置し半導体層208と電気的に接続された、ソース電極およびドレイン電極として機能する第2の電極210と、半導体層208および第2の電極210を覆う第2の絶縁層212と、第2の絶縁層212上の第3の絶縁層214と、第2の絶縁層212および第3の絶縁層214の一部に設けられた開口部を介して第2の電極210と電気的に接続された第3の電極216と、第3の絶縁層214上に位置し第3の電極216の側面および端部を覆う第1の隔壁218と、第1の隔壁218上の第2の隔壁220を構成要素として有しており、画素の動作状態(発光状態)を制御するトランジスタ230および容量素子240が形成されている。なお、本実施の形態にて説明する発光装置には、周辺回路や引き回し配線など様々な構成要素が存在するが、当該構成要素は、図1に示す構造を形成する際にベース基板200上に形成できることは当業者であれば容易に想像できるため、ここでは説明を省略する。また、本実施の形態では1画素につきトランジスタが2つ、容量素子が1つ形成された構成を記載しているが、勿論この構成に限定されることは無い。
以下にて、本実施の形態における発光装置について、発光部分およびその周辺部分の作製方法を、図2および図3を用いて説明する。
まず、ベース基板200を準備し、ベース基板200上に下地層202を成膜し、下地層202上にゲート電極などとして機能する第1の電極204を形成する(図2(A)参照。)。
ベース基板200としては、例えば、青板ガラス、白板ガラス、鉛ガラス、強化ガラス、セラミックガラス等の各種ガラス基板や、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等の無アルカリガラス基板を用いればよい。これらのガラス基板は大面積化に適しており、G10サイズ(2850mm×3050mm)やG11サイズ(3000mm×3320mm)なども作製されているため、本発明の一態様に係る発光装置を低コストで大量生産することができる。他にも、石英基板、サファイア基板等の絶縁体でなる絶縁性基板、シリコン等の半導体材料でなる半導体基板の表面を絶縁材料で被覆したものを用いることもできる。
また、ベース基板200として、エチレンビニルアセチレート(EVA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレン樹脂(PE)、ABS樹脂などの各種プラスチック基板を用いることもできる。なお、各種プラスチック基板をベース基板200として用いる場合は、表面に酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウムなどの水蒸気透過性の低い膜を単層又は積層にて形成するとよい。これにより、各種プラスチック基板には高い水蒸気バリア性が付与されるため、後の工程にて形成するEL層500の劣化を抑制できる。
上述のプラスチック基板をベース基板200として用いることにより発光装置を薄型化、軽量化でき、さらに後の工程で使用する対向基板506にもプラスチック基板を用いることで、発光装置に可撓性を持たせることができるため、発光装置の付加価値を高めることができる。
ベース基板200の厚さについては特に限定は無いが、発光装置の薄型化、軽量化の観点から考えると3mm以下が望ましく、より好ましくは1mm以下が望ましい。
下地層202としては、例えば、プラズマCVD法などのCVD法、スパッタリング法などのPVD法を用いて、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどを形成すればよい。なお、下地層202は、単層構造、積層構造のどちらであってもよく、積層構造とする場合は、前述の膜を組み合わせて形成すればよい。下地層202を成膜することにより、ベース基板200からの不純物拡散を防止できるため、発光装置の性能低下を抑制することができる。
下地層202の厚さについては、不純物拡散防止効果および生産性の観点から考えると50nm以上1000nm以下が望ましく、より好ましくは100nm以上500nm以下が望ましい。
なお、上述にて「酸化窒化」及び「窒化酸化」という言葉を用いているが、これは形成した層に含まれる酸素含有量と窒素含有量のどちらが多いかを表すものであり、「酸化窒化」では、その組成において窒素よりも酸素の含有量が多いことを示す。
第1の電極204としては、例えば、真空蒸着法などの蒸着法や、スパッタリング法などのPVD法を用いて導電性を有する層を成膜し、当該層上にフォトリソグラフィ法やインクジェット法などを用いて、加工したいパターン形状に応じたレジストマスクを形成し、ドライエッチング法やウェットエッチング法などを用いて、導電性を有する層を選択的に除去することにより形成すればよい。導電性を有する層としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、タンタル、クロム、タングステン、モリブデン、コバルト、マンガン、マグネシウム、チタン、パラジウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウム、金、白金、銀又は銅等の金属材料の単層や積層、これらの材料を含む合金などを用いることができる。
また、第1の電極204として、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In2O3―SnO2、ITOと略記する場合がある)、酸化インジウム酸化亜鉛(In2O3―ZnO)、または、これらの金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含有させたものを用いることができる。導電性の金属酸化物は上述の金属材料と比較して可視光透過率が高いため、EL層からの発光を第1の電極204形成面側に取り出す方式(ボトムエミッション方式およびデュアルエミッション方式)の発光装置に用いることにより、画素部の開口率を大きくしても、EL層からの発光を外部に効率良く取り出すことができる。
第1の電極204の厚さについては、導電性の確保および生産性の観点から考えると50nm以上1000nm以下が望ましく、より好ましくは100nm以上500nm以下が望ましい。
次に、第1の電極204を覆う第1の絶縁層206を成膜し、第1の絶縁層206上に第1の電極と重畳する半導体層208を形成し、半導体層208と電気的に接続された、ソース電極やドレイン電極などとして機能する第2の電極210を形成する(図2(B)参照。)。
第1の絶縁層206としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンなどの材料を用いることができる。また、13族元素および酸素を含む材料を用いて形成することもできる。13族元素および酸素を含む材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウムなどを用いることができる。さらに、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0))、などを含むように形成してもよい。第1の絶縁層206は、単層構造としても良いし、上記の材料を組み合わせて積層構造としても良い。
第1の絶縁層206の厚さは特に限定されないが、発光装置内に形成される回路の形成サイズを微細化する場合には、半導体素子(例えばトランジスタ230など)の動作を確保するために薄くすることが望ましい。例えば、酸化シリコンを用いる場合には、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることが望ましい。
なお、第1の絶縁層206は、水素、水などの不純物を混入させない方法で成膜した膜を用いて形成することが好ましく、例えば、水素や水などの不純物が除去された高純度ガスを用いたスパッタリング法により成膜することが好ましい。第1の絶縁層206に水素、水などの不純物が含まれると、酸化物半導体材料を用いて半導体層208を作製した場合に、半導体層208中に水素、水などの不純物が浸入する、水素や水などの不純物により半導体層208中の酸素が引き抜きかれる、などの現象が生じ半導体層208のチャネルが低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがあるためである。
半導体層208としては、例えば、スパッタリング法などのPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法などを用いて半導体膜を成膜し、当該膜上にフォトリソグラフィ法などによりレジストマスクを形成した後に、ドライエッチング法やウェットエッチング法などを用いて半導体膜を選択的に除去することにより形成すればよい。半導体膜としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウム砒素等の材料を用いて成膜した膜を使用すればよい。また、半導体膜を形成する材料として、上記材料以外に酸化物半導体材料を用いてもよい。
半導体層208の厚さは、1nm以上100nm以下、より好ましくは3nm以上50nm以下とすることが望ましい。
なお、酸化物半導体材料を用いて半導体膜を成膜する、および、当該半導体膜を用いて半導体層を形成する場合、上述のシリコン等の材料を用いて半導体層を形成する場合と比較して様々な違いがあるため、以下に、酸化物半導体材料を用いた半導体膜の成膜、および、当該半導体膜を用いた半導体層の形成についての具体的な説明を記載する。
酸化物半導体材料を用いて半導体膜を成膜する場合、酸化物半導体材料としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、トランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、インジウム(In)や亜鉛(Zn)に加えて、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)およびアルミニウム(Al)のいずれか一種以上を含むことが好ましい。
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を含んでもよい。
例えば、半導体膜を形成する材料として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物半導体材料という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物半導体材料を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)、In:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)あるいはIn:Sn:Zn=20:45:35の原子比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物半導体材料を用いるとよい。
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物半導体材料の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物半導体材料の組成のrだけ近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)2+(b−B)2+(c−C)2≦r2を満たすことをいい、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物半導体材料でも同様である。
また、ターゲット中の金属酸化物の相対密度は80%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99.9%以上である。相対密度の高いターゲットを用いることにより、緻密な構造の酸化物半導体膜を成膜することが可能である。
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
例えば、In−Sn−Zn系酸化物半導体材料を用いて半導体膜を成膜し、当該膜を用いて半導体層を形成したトランジスタでは、高い移動度が得られている(Eri Fukumoto,Toshiaki Arai,Narihiro Morosawa,Kazuhiko Tokunaga,Yasuhiro Terai,Takashige Fujimori,Tatsuya Sasaoka、「High Mobility Oxide Semiconductor TFT for Circuit Integration of AM−OLED」、IDW’10、p.631−p634)。
なお、In、Sn、Znを主成分とする半導体膜を成膜し、当該膜を用いて半導体層を形成したトランジスタは、半導体膜を成膜する際に基板を加熱する、或いは半導体膜を成膜した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。なお、主成分とは組成比で5atomic%以上含まれる元素をいう。
In、Sn、Znを主成分とする半導体膜を成膜する際に基板を意図的に加熱することにより、当該膜を用いて半導体層を形成したトランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせ、ノーマリ・オフ化させることが可能となる。
なお、前述ではIn、Sn、Znを主成分とする半導体膜を成膜し、当該膜を用いて半導体層(少なくともチャネル形成領域)を形成したトランジスタについての説明を行ったが、In、Ga、Znを主成分とする半導体を成膜し、当該膜を用いて半導体層(少なくともチャネル形成領域)を形成したトランジスタについても、半導体層中のバルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。
なお、上述の酸化物半導体材料を用いて形成した酸化物半導体膜は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)または非晶質などの状態をとる。
好ましくは、酸化物半導体膜は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下の表面上に形成するとよい。
なお、Raとは、JIS B 0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている算術平均粗さを曲面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」で表現でき、以下の式にて定義される。
ここで、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり、座標(x1,y1,f(x1,y1)),(x1,y2,f(x1,y2)),(x2,y1,f(x2,y1)),(x2,y2,f(x2,y2))の4点で表される四角形の領域とし、指定面をxy平面に投影した長方形の面積をS0、基準面の高さ(指定面の平均の高さ)をZ0とする。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて測定可能である。
酸化物半導体材料を用いて半導体膜を成膜する場合は、成膜雰囲気を、不活性雰囲気、酸化性雰囲気、又は不活性ガスと酸化性ガスとの混合雰囲気とすることが好ましい。酸化性雰囲気とは、酸素、オゾンまたは亜酸化窒素などの酸化性ガスを主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、熱処理装置に導入する酸素、オゾン、亜酸化窒素の純度は、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm未満、好ましくは0.1ppm未満)とする。酸化性雰囲気は、酸化性ガスを不活性ガスと混合して用いてもよい。その場合、酸化性ガスが少なくとも10ppm以上含まれるものとする。また、不活性雰囲気とは、窒素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン)などの不活性ガスを主成分とする雰囲気である。例えば、熱処理装置に導入する不活性ガスの純度は、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm未満、好ましくは0.1ppm未満)とする。具体的には、酸化性ガスなどの反応性ガスが10ppm未満とする。
酸化物半導体材料を用いた半導体膜をスパッタリング法により成膜する際には、例えば、減圧状態に保持された処理室内に被処理物(本実施の形態では、下地層202、第1の電極204および第1の絶縁層206が形成されたベース基板200)を保持し、被処理物の温度が100℃以上550℃未満、好ましくは200℃以上400℃以下となるように被処理物を熱する。または、酸化物半導体膜の成膜の際の被処理物の温度は、室温としてもよい。そして、処理室内の水分を除去しつつ、水素や水などが除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体膜を成膜する。被処理物を熱しながら酸化物半導体膜を成膜することにより、酸化物半導体膜に取り込まれる水素や水などの不純物を低減することができ、電界効果移動度を向上させる効果が見込める。また、スパッタによる損傷を軽減することができる。処理室内の水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどを用いることができる。また、ターボポンプにコールドトラップを加えたものを用いてもよい。クライオポンプなどを用いて排気することで、処理室から水分などの不純物を除去することができるため、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減できる。
スパッタリング法により成膜する際の各種設定条件としては、例えば、被処理物とターゲットの間との距離が170mm、圧力が0.4Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素100%)雰囲気、またはアルゴン(アルゴン100%)雰囲気、または酸素とアルゴンの混合雰囲気、といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、パーティクル(成膜時に形成される粉状の物質など)を低減でき、膜厚分布も均一となるため好ましい。
なお、上述の方法にて半導体膜を成膜する前には、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、成膜面の付着物を除去することが好ましい。ここで、逆スパッタとは、通常のスパッタリング法においては、スパッタターゲットにイオンを衝突させるところを、逆に、処理表面にイオンを衝突させることによってその表面を改質する方法のことをいう。処理表面にイオンを衝突させる方法としては、アルゴン雰囲気下で処理表面側に高周波電圧を印加して、被処理物付近にプラズマを生成する方法などがある。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などによる雰囲気を適用してもよい。
半導体膜としてCAAC−OS膜を成膜する場合、以下の三つの方法で成膜すればよい。第1の方法は、200℃以上450℃以下の成膜温度で酸化物半導体膜を成膜し、酸化物半導体膜をCAAC−OS膜とする方法である。第2の方法は、酸化物半導体膜を成膜した後、当該膜に対して200℃以上700℃以下の熱処理を行うことで、酸化物半導体膜をCAAC−OS膜とする方法である。第3の方法は、酸化物半導体膜を2層に分けて成膜し、1層目の酸化物半導体膜を薄く成膜した後、200℃以上700℃以下の熱処理を行い1層目の膜をCAAC−OS膜とし、当該膜上に2層目の成膜を行うことで、1層目の結晶を種結晶として2層目の酸化物半導体膜をCAAC−OS膜とする方法である。
そして、上述の方法にて成膜した半導体膜上にフォトリソグラフィ法やインクジェット法などを用いて、加工したいパターン形状に応じたレジストを形成し、ドライエッチング法やウェットエッチング法などを用いて酸化物半導体膜の不要部分を選択的に除去して、半導体層208を形成すればよい。
なお、半導体膜のエッチングとしてドライエッチング法を用いる場合、エッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl2)、三塩化硼素(BCl3)、四塩化珪素(SiCl4)、四塩化炭素(CCl4)など)が好ましい。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF4)、六弗化硫黄(SF6)、三弗化窒素(NF3)、トリフルオロメタン(CHF3)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O2)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
また、半導体膜のエッチングとしてウェットエッチング法を用いる場合、エッチング液として、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、クエン酸やシュウ酸などの有機酸を用いることができる。例えば、ITO−07N(関東化学社製)を用いることができる。
上述の方法により形成した半導体層は、不純物としての水分又は水素(水酸基を含む)が含まれていることがある。水分又は水素はドナー準位を形成しやすいため、半導体層にとっては不純物である。そこで、半導体層中の水分又は水素などの不純物を低減(脱水化または脱水素化)するために、半導体層に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、などにおいて、脱水化または脱水素化の加熱処理(以下、第1の加熱処理と略記する。)を行ってもよい。
半導体層に第1の加熱処理を行うことで、半導体膜中の水分又は水素を脱離させることができる。具体的には、250℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満の温度で加熱処理を行えば良い。例えば、500℃、3分間以上6分間以下程度で行えばよい。加熱処理にRTA法を用いれば、短時間に脱水化または脱水素化が行えるため、ガラス基板の歪点を超える温度でも処理することができる。
加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、又は窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
第1の加熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水分又は水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
また、第1の加熱処理を行った半導体層に、第2の加熱処理を行ってもよい。第2の加熱処理は、酸化性雰囲気にて加熱処理することにより半導体層に酸素を供給して、第1の加熱処理の際に半導体層中に生じた酸素欠損を補填する目的がある。このため、第2の加熱処理は加酸素化処理ということもできる。第2の加熱処理は、例えば200℃以上基板の歪み点未満で行えばよい。好ましくは、250℃以上450℃以下とする。処理時間は3分〜24時間とする。処理時間を長くするほど非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い半導体層を形成することができるが、24時間を超える熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
酸化性雰囲気とは酸化性ガスを含む雰囲気である。酸化性ガスとは、酸素、オゾンまたは亜酸化窒素などであって、水、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、熱処理装置に導入する酸素、オゾン、亜酸化窒素の純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm未満、好ましくは0.1ppm未満)とする。酸化性雰囲気は、酸化性ガスを不活性ガスと混合して用いてもよい。その場合、酸化性ガスが少なくとも10ppm以上含まれるものとする。また、不活性雰囲気とは、窒素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン)などの不活性ガスを主成分とする雰囲気である。具体的には、酸化性ガスなどの反応性ガスが10ppm未満とする。
なお、第2の加熱処理に用いる熱処理装置およびガス種は、第1の加熱処理と同じ物を用いることができる。また、脱水化または脱水素化の加熱処理である第1の加熱処理と、加酸素化の加熱処理である第2の加熱処理は、生産性の観点から考えて連続して行うことが好ましい。
基板を意図的に加熱して半導体膜を成膜することや、半導体層形成後に熱処理することにより、半導体膜や半導体層から水素や水酸基若しくは水分を放出させ除去することができ、電界効果移動度を向上させる効果が見込める。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、半導体膜や半導体層から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。
また、上述の熱処理の効果は、電界効果移動度の向上のみならず、トランジスタのノーマリ・オフ化を図ることにも寄与している。例えば、基板を意図的に加熱しないでIn、Sn、Znを主成分とする半導膜を成膜し、当該膜を用いて形成したトランジスタでは、しきい値電圧がマイナスシフトしてしまう傾向があるが、基板を意図的に加熱(150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは400℃以上)して成膜した場合は、このしきい値電圧のマイナスシフト化は解消され、しきい値電圧はノーマリ・オフとなる方向に動くことが観測されている。
また、基板を意図的に加熱して半導体膜を成膜することや、半導体層形成後に熱処理することにより、ゲートバイアス・ストレスに対する安定性を高めることができる。
なお、しきい値電圧はIn、Sn及びZnの比率を変えることによっても制御することが可能であり、組成比としてIn:Sn:Zn=2:1:3の酸化物半導体材料を用いることでトランジスタのノーマリ・オフ化を実現することができる。また、酸化物半導体材料の組成比をIn:Sn:Zn=2:1:3とすることで結晶性の高い酸化物半導体膜を得ることができる。
このように、基板を意図的に加熱して半導体膜を成膜することや、半導体層形成後に熱処理することにより、半導体層は高純度化された非単結晶酸化物半導体となり、理想的には100cm2/Vsecを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
また、半導体膜の成膜後および\または半導体層の形成後において、半導体層(または半導体膜)に酸素注入処理を行い、熱処理により水素や水酸基若しくは水分を放出させ、その熱処理と同時にまたはその後の熱処理により酸化物半導体を結晶化させても良い。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性の良い非単結晶酸化物半導体を得ることができる。
ここで、酸素注入処理とは、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む。)を半導体層(または、半導体膜)のバルクに添加することをいう。なお、当該「バルク」の用語は、酸素を、薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、「酸素ドープ」には、プラズマ化した酸素をバルクに添加する「酸素プラズマドープ」が含まれる。酸素ドープ処理を行うことにより、半導体層208(または、半導体膜)や第1の絶縁層206に含まれる酸素を、化学量論的組成比より多くすることができる。
酸素ドープ処理は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)方式を用いて、マイクロ波(例えば、周波数2.45GHz)により励起された酸素プラズマを用いて行うことが好ましい。
なお、上述の半導体層(または、半導体膜)への酸素イオンの注入は、第2の加熱処理と同様に、半導体層(または、半導体膜)中に酸素を補充するため、「加酸素化処理」とも言える。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度を1×1016/cm3以上2×1020/cm3以下とすれば、結晶に歪み等を与えることなく半導体層(半導体膜)中に含ませることができる。
以上が、酸化物半導体材料を用いた半導体膜の成膜、および、当該半導体膜を用いた半導体層の形成についての具体的な説明である。
第2の電極210としては、第1の電極204にて記載した説明と同様の材料および方法を用い、第1の電極204にて記載した説明と同様の膜厚で形成すればよい。
次に、第1の絶縁層206、半導体層208および第2の電極210上に、第2の絶縁層212および第3の絶縁層214を形成する(図2(C)参照。)。
第2の絶縁層212および第3の絶縁層214としては、プラズマCVD法などのCVD法、スパッタリング法などのPVD法を用いて、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどを形成すればよい。また、ポリイミド、アクリル等の有機絶縁材料を用いることも可能である。例えば、第2の絶縁層212として、水分や水蒸気などに対してバリア性の高い無機材料膜を成膜し、第3の絶縁層214として段差の平坦化効果の高い有機樹脂を形成すればよい。これにより、トランジスタ230への水分や水蒸気の侵入が第2の絶縁層212により抑制され、且つ、第3の絶縁層214により表面状態が平坦化にされているため、後の工程にて形成する第3の導電層の膜厚が表面凹凸に起因して面内で変化する、または段切れが発生するといった現象を防止できる。
第2の絶縁層212の厚さは、水分や水蒸気などに対するバリア性効果および生産性の観点から考えると、50nm以上1000nm以下、好ましくは100nm以上500nm以下が望ましい。また、第3の絶縁層214の厚さは、凹凸の被覆性および生産性の観点から考えると、100nm以上5000nm以下、好ましくは300nm以上3000nm以下が望ましい。
次に、第3の絶縁層214上に、第2の電極210と電気的に接続された第3の電極216と、第3の電極216の側面および端部を覆う第1の隔壁218を形成する(図3(A)参照。)。
第3の電極216としては、第1の電極204にて記載した説明と同様の材料および方法を用い、第1の電極204にて記載した説明と同様の膜厚で形成すればよい。また、第3の電極216を第2の電極210と電気的に接続するため、第3の絶縁層214上に第3の電極216として機能する導電膜を形成する前に、第2の絶縁層212および第3の絶縁層214に開口部を設け、第2の電極210の一部が露出した状態とする必要がある。なお、第2の絶縁層212および第3の絶縁層214に開口部を形成する方法としては、第3の絶縁層214上にフォトリソグラフィ法やインクジェット法などを用いて加工したいパターン形状に応じたレジストマスクを形成し、ドライエッチング法やウェットエッチング法などを用いて第2の絶縁層212および第3の絶縁層214を選択的に除去することにより形成すればよい。
なお、発光装置がボトムエミッション構造である場合、ベース基板200側に光を取り出す必要があるため、第3の電極216として、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In2O3―SnO2、ITOと略記する場合がある)、酸化インジウム酸化亜鉛(In2O3―ZnO)、または、これらの金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含有させたものを用いればよい。
第1の隔壁218としては、例えば、スピンコート法、印刷法、ディスペンス法またはインクジェット法などを用いて絶縁性を有する材料を第3の絶縁層214上に塗布し、塗布した材料に応じた硬化処理(例えば、加熱処理や光照射処理など)を行って層を形成した後に、当該層上にフォトリソグラフィ法やインクジェット法などを用いて、加工したいパターン形状に応じたレジストマスクを形成し、ドライエッチング法やウェットエッチング法などを用いて当該層を選択的に除去することにより形成すればよい。なお、絶縁性を有する材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂、下地層202にて記載した無機材料および有機ポリシロキサンなどの有機無機混合材料を用いることができる。特に、第1の隔壁218として感光性の有機樹脂や有機無機混合材料を用い、第1の隔壁218の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することにより、後の工程にて形成するEL層や第4の電極の段切れを抑制できるため好ましい。
第1の隔壁218の厚さは、後の工程にて形成するEL層や第4の電極の段切れの抑制効果および生産性の観点から考えると、第3の電極216より厚く、且つ5000nm以下、好ましくは第3の電極216より100nm以上厚く、且つ3000nm以下であることが望ましい。
次に、第1の隔壁218上に第2の隔壁220を形成する(図3(B)参照。)。第2の隔壁は、多孔質構造の金属酸化物により構成すればよい。なお、本明細書における「多孔質構造」は、ベース基板200の面方向と平行に第2の隔壁の任意の一部を切断した際に、切断面に形成される孔断面の50%以上が1nm2以上100002nm以下の面積となる構造であることが好ましい。
多孔質構造の金属酸化物は、ファンデルワールス力等の物理的な力で水分等の物質を吸着(物理吸着)するため、高い吸着速度を有するという特徴がある。したがって、第2の隔壁220として多孔質の金属酸化膜を用いることにより、第1の隔壁218形成時に完全に除去することのできなかった水分や水蒸気、第1の隔壁218形成後において当該隔壁表面に吸着された水分や水蒸気、発光装置外部から侵入した水分や水蒸気(特に、第1の隔壁218の内部を介してEL層に到達する水分や水蒸気)を効果的に吸湿することができる。このため、水分や水蒸気に起因したEL層の劣化を抑制することができる。なお、多孔質構造の金属酸化物は化学吸着のように高い吸湿熱を発生することがないため、吸湿熱によりEL層を劣化させることもない。
また、図1(A1)に示すように、上記特徴を有する第2の隔壁220は、後の工程にてEL層500および第4の電極502を形成することにより形成される発光素子となる箇所(図1(A1)において第3の電極216が剥き出しとなっている部分。)を囲む状態に、発光部から非常に近い箇所に形成することにより、水分や水蒸気を効果的に吸湿できる。加えて、EL層500からの発光が対向基板側に射出される構造(所謂、トップエミッション型。上方射出型ともいう。)の場合においては、EL層500からの発光を反射または\および吸収することがないため、色度低下、光反射や光吸収による発光ロスに起因する消費電力の増加を抑制できる。
したがって、本実施の形態に記載するように、発光部分を囲む状態に、発光部分から非常に近い箇所に第2の隔壁220を形成する構造を、トップエミッション型の発光装置に適用することにより、色度低下の抑制や消費電力増加の抑制などの更なる効果を発揮することができる。
なお、発光部分に第2の隔壁が形成されると発光領域が減少してしまうため、第2の隔壁は、第1の隔壁上に形成することが好ましい。
第2の隔壁220を形成する方法としては、例えば、1μmより小さく、好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは3nm以上50nm以下のサイズまで粉砕された金属酸化物微粒子を、金属酸化物粒子同士の凝集を抑制する機能を有する材料(分散剤ともいう)に混合した溶液を第1の隔壁上にディップコート法やスピンコート法を用いて塗布した後、当該溶液に対して加熱処理を行い多孔質薄膜を形成する。なお、当該加熱処理は、分散剤が蒸発し、金属酸化物粒子同士が結合し、且つ、第1の隔壁に形状変化が生じない温度範囲で処理を行えばよく、具体的には150℃以上400℃以下、好ましくは250℃以上350℃以下であることが望ましい。加熱処理に用いる装置については特に限定は無いが、溶液中の分散剤を効率的に除去するためには、減圧雰囲気下で加熱処理を行える装置を用いることが好ましい。そして、加熱処理により得られた多孔質薄膜上にフォトリソグラフィ法等によりレジストパターンを形成し、ドライエッチング法やウェットエッチング法により不要部分を除去することで、第2の隔壁220を形成することができる。なお、第2の隔壁220を形成後、第2の隔壁中に残留する水分や水蒸気を除去するための加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理については、上述の溶液を加熱処理する際の温度範囲や装置を用いることができる。
上述の金属酸化物粒子としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化錫、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ジルコニウムまたは酸化ニオブのいずれか1種類を主成分とする金属酸化物粒子、前記材料を複数含む金属酸化物粒子を用いることができる。また、金属酸化物粒子として前記材料に各種金属成分を含む粒子、例えば、低融点ガラスを粒子状に粉砕したものを用いることもできる。なお、低融点ガラスの金属成分については、公知の文献や各種製品のデータシートに記載されている範囲また記載内容から予想される範囲であれば、どのような成分であってもよい。また、分散剤についても、使用する金属酸化物粒子の種類に合わせ、公知の材料を用いればよい。
また、第2の隔壁220を形成する他の方法としては、スパッタリング法や蒸着法などの気相析出法により得られる多孔質構造の金属酸化物薄膜を、フォトリソグラフィ法等によりレジストパターンを形成し、ドライエッチング法やウェットエッチング法により不要部分を除去することにより、第2の隔壁220を形成することができる。例えば、スパッタリング法により低密度の金属酸化物薄膜を成膜する方法としては、金属酸化物ターゲットが設置されたスパッタリング装置において、第1の隔壁218まで形成されたベース基板200を金属酸化物ターゲットに対して傾けた状態(つまり、金属酸化物ターゲットの表面とベース基板200の表面(第1の隔壁218が形成されている面)が平行でない状態)、好ましくは、金属酸化物ターゲットに対するベース基板200の傾きが15度以上90度以下、より好ましくは30度以上90度以下となる状態に設置してスパッタリング処理(斜めスパッタ法、斜め堆積スパッタ法などとも言われる)を行うことで、シャドーイング効果(自己シャドー効果とも言われる。)により多孔質構造の金属酸化物薄膜を得ることができる。他の気相析出法においても上述と同様に、金属酸化物材料供給源に対してベース基板200を傾けた状態で成膜すればよい。一例として、例えば酸化珪素ターゲットが設置されたマグネトロンスパッタ装置内に、当該ターゲットに対してベース基板200を50度傾けた状態として成膜処理を行えばよい。
なお、上述の気相析出法による多孔質構造の金属酸化物薄膜の成膜方法では、装置内に1つのターゲット(材料供給源)が設置されていることを前提とした説明を行ったが、装置内に2つ以上のターゲット(材料供給源)を備え、各々のターゲット(材料供給源)に対してベース基板200が15度以上85度以下、より好ましくは30度以上80度以下の範囲で傾いた状態に設置して成膜処理を行う方法もある。当該方法では、例えば金属酸化物薄膜を形成する材料(以下、材料Aと略記する)と、材料Aとは異なる材料(以下、材料Bと略記する。材料Bに特段の限定は無い。)を用いて多孔質構造の薄膜を成膜した後、当該薄膜に対して、材料Aよりも材料Bの選択比が高い(つまり、材料Aよりも材料Bの方がエッチングされやすい)溶剤やガス種を用いてエッチング処理を行うことにより、材料Bが選択的にエッチングされ、材料Aを主成分とした多孔質構造の金属酸化物薄膜を形成することができる。なお、上述のエッチング処理で用いる溶剤やガス種は、選択比が低いと材料Aがエッチングされ多孔質構造の金属酸化物薄膜が脆くなってしまうため、選択比が10以上、好ましくは30以上であることが望ましい。
また、上述の方法以外としてゾルゲル法を用いて多孔質構造の金属酸化物薄膜を形成してもよい。
本明細書において第2の隔壁220は「多孔質構造」であると記載しているが、必ずしも第2の隔壁220の全ての部分が多孔質構造である必要はない。例えば、第2の隔壁220の中心部分近傍に多孔質構造が存在しなくとも、表面近傍に多孔質構造が形成されていれば、第2の隔壁220は水分や水蒸気を吸湿する効果を発揮する。このため、本明細書における「多孔質構造」とは、第2の隔壁220全体の体積(空孔部を含む)を100%とした場合において、第2の隔壁220の表面から内部方向に10%の範囲に多孔質な構造を有しているものを「多孔質構造」とする。
なお、図3(B)では、第2の隔壁220の断面形状は、底部よりも上部の幅が狭い形状として記載されているが、図3(C)のように底部よりも上部の幅が広い、いわゆる逆テーパー状の形状であってもよい。ここで、逆テーパー状の形状とは、第1の隔壁218の表面と第2の隔壁220の側面の成す角度(図3(C)の角度θ部分)が90度未満であることを示す。
以上が、本実施の形態の発光装置における、EL層形成前段階での発光部分およびその周辺部分の構造および作製方法の説明である。
<発光装置の構造および作製方法>
以下に、発光装置全体についての構造および作製方法ついての説明を記載する。
図5(A)は、本実施の形態における発光装置の構造の一例を表す上面図であり、図5(B)は、図5(A)の一点鎖線X−Yにおける断面図に相当する。
なお、図5(B)の断面図により発光装置全面の構造を全て表すことはできないため、上述にて記載した発光部分のトランジスタ230および容量素子240の構造を代表して示すと共に、発光装置と外部装置との間で電力や信号を送受信する第1の外部配線の接続部および第2の外部配線の接続配線部の構造を記載する。
本実施の形態における発光装置は、上述にて記載した、ベース基板200、下地層202、第1の電極204、第1の絶縁層206、半導体層208、第2の電極210、第2の絶縁層212、第3の絶縁層214、第3の電極216、第1の隔壁218、第2の隔壁220に加え、第3の電極216上に形成されたEL層500と、EL層500上に形成された第4の電極502と、発光領域402の周辺に設けられたシール材504と、シール材504によりベース基板200と貼り合わされた対向基板506と、対向基板の一方の面に形成されたカラーフィルター508を有し、発光装置の一部には導電材料509を介して第1の外部配線510aおよび第2の外部配線510bが電気的に接続されている。
以下にて、本実施の形態における発光装置の作製方法を、図6および図7を用いて説明する。
まず、第3の電極216上にEL層500を形成し、EL層500上に第4の電極502を形成する(図6(A)参照。)。第4の電極502は、EL層500を挟む電極の一方として機能するため、外部配線接続部に引き回され、後の工程にて外部配線と電気的に接続される。図6(A)では、第4の電極502は、第1の外部配線接続部に引き回されて第3の電極216と電気的に接続されており、後の工程にて、第1の外部配線接続部の第3の電極216には、導電材料を介して外部配線が接続される。なお、第3の電極216もEL層500を挟む電極の他方として機能するため外部配線接続部に引き回されているが、図面を用いた説明は省略する。
EL層500としては、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などの真空蒸着法を用い、発光装置の使用目的に応じて適宜選択した材料を用いて形成すればよい。なお、EL層500は、白色の光を呈する層であることが好ましい。EL層500の形成方法や材料についての詳細は、実施の形態2にて記載する。なお、EL層500は、水分、水蒸気、酸素などにより著しく劣化するため、後の工程にて形成するシール材より内側(基板中心側)に形成することが好ましい。また、図6(A)のように基板の一部にEL層500を形成する場合、例えば、一部に開口部が設けられたマスク(例えばメタルマスク等)を準備し、EL層500を形成する領域に当該マスクの開口部が重なるように、当該マスクを基板表面側(各種電極や絶縁層等が形成されている側。)に設置した状態で成膜すればよい。
なお、EL層500は水分、水蒸気、酸素などに弱いため、EL層500は極力水分の少ない状態(例えば、EL層500を成膜する前の状態において、EL層500の成膜処理を行う装置内を1×10−4Pa以下まで真空引きするなど。)で成膜することが好ましい。また、後の工程にてベース基板200に対してシール材504を塗布する工程や、ベース基板200と対向基板506を貼り合わせる工程においても、水分の少ない状態(例えば、作業を行う装置内を少なくとも一度1×10−4Pa以下まで真空引きした後に、露点が−70度以下のガスで装置内を充填するなど。)で行うことが好ましい。
第4の電極502として、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズIn2O3―SnO2、ITOと略記する場合がある)、酸化インジウム酸化亜鉛(In2O3―ZnO)、または、これらの金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含有させたものを用いることができる。なお、図6(A)のように、ある定められた場所に第1の電極を形成する場合は、EL層500と同様にマスク等を用いればよい。
また、第4の電極502として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することもできる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、またはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体等があげられる。また、1枚乃至10枚のグラフェンシートよりなる材料を用いてもよい。
なお、発光装置がボトムエミッション構造である場合、対向基板506側に光を取り出す必要が無いため、第4の電極502として、例えば、真空蒸着法などの蒸着法や、スパッタリング法などのPVD法を用いて、アルミニウム、ニッケル、タンタル、クロム、タングステン、モリブデン、コバルト、マンガン、マグネシウム、チタン、パラジウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウム、金、白金、銀又は銅等の金属材料の単層や積層、これらの材料を含む合金などを成膜して用いることができる。
第3の電極216とEL層500と第4の電極502とが重なり合うことで、電圧を印加することにより発光する発光素子450が形成される。発光素子450は、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。上記のようなメカニズムから、電流励起型の発光素子と呼ばれる。なお、EL層500に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第4の電極502上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、例えば、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ガリウムアルミニウムから選ばれた膜を単層または積層にて形成すればよい。なお、本実施の形態ではEL層500として有機EL材料を用いているが、公知の無機EL材料を用いてもよい。
なお、第2の隔壁220の形状を前述した逆テーパー形状とした場合、EL層500を、第2の隔壁220の側面部分で段切れを起こしやすい成膜方法(例えば蒸着法など)を用いて成膜し、第4の電極502を、第2の隔壁220の側面部分で段切れを起こしにくい成膜方法(例えばスパッタリング法など)を用いて成膜することにより、図6(A)の容量素子部に示すように、EL層500については、第2の隔壁220で段切れや膜厚の非常に薄い部分(例えば、狙い膜厚の5分の1以下の膜厚)が発生した状態、第4の電極502については、第2の隔壁により一部膜厚が薄くなる部分はあるが、段切れの発生がない状態に形成することができる。これにより、ある1つの発光素子450での発光が、EL層500を介して(つまり、EL層500内を反射して)隣接する他の発光素子450に伝搬することにより、発光する必要のない(つまり、電圧印加をおこなっていない)発光素子まで発光してしまう現象(迷光とも言われる)を抑制することができる。
また、図6(A)には示されていないが、第2の隔壁220の表面には、微細気孔が複数存在するため、第2の隔壁220の表面に成膜されたEL層500は平坦な膜とはならず、微細気孔の形状に沿って3次元的に蛇行する、または、一部において段切れが発生する。これにより、上述したEL層500を伝搬する光に起因した不要な発光を、より効果的に低減することができる。
次に、発光領域402周辺を覆うようにシール材504を設けた状態で、一方の面にカラーフィルター508を形成した対向基板506をベース基板200に貼り合わせ、シール材504を硬化させる(図6(B)参照)。なお、カラーフィルター508は、複数の色(例えば、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3色や、当該3色に加えてY(イエロー)を加えた4色や、当該4色に加えてC(シアン)を加えた5色など)が形成されており、対向基板506をベース基板200に貼り合わせる際は、1つ(1色)のカラーフィルターが複数の発光素子450と重ならないように貼り合わせ処理を行う必要がある。
対向基板506としては、ベース基板200にて記載した説明と同様の材質を用いることができる。
貼り合わせ処理は、真空貼り合わせ装置などを用いて、減圧状態が保たれた処理室内で行うことが好ましい。これにより、ベース基板200と対向基板506間の空間にEL層500を劣化させる成分(水分、水蒸気、酸素など)の混入を抑制でき、また、シール材504中の気泡発生を抑制できる。
なお、シール材504の硬化処理は、シール材504の材料成分に応じて、可視光照射処理、UV光照射処理、加熱処理の中から1種類または複数の処理を行えばよい。
次に、第1の外部配線接続部および第2の外部配線接続部に設けられた第3の電極216上に、導電材料509を設け、各々に外部配線510a、外部配線510bを貼り合わせる(図7参照)。なお、本実施の形態は第3の電極216に対して外部配線510aおよび510bを貼り合わせたが、勿論これに限定されることはなく、他の電極(導電層)に貼り合わせてもよい。
導電材料509としては、例えば、導電性粒子と有機樹脂を含む材料を用いることができる。具体的には、粒径が数nmから数十μmの導電性粒子(例えば球状粒子やフレーク状粒子)を有機樹脂に溶解または分散させた材料を用いる。導電性粒子としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、アルミ(Al)、カーボン(C)のいずれか一つ以上の金属粒子、絶縁粒子表面に前記いずれか一つ以上の金属膜が形成された粒子、ハロゲン化銀の微粒子、分散性ナノ粒子または半田材料などを用いることができる。また、導電材料509に含まれる有機樹脂としては、例えば第1の隔壁218にて記載した説明と同様の材料を用いればよい。
導電材料509を設ける方法としては、フレキソ印刷装置、オフセット印刷装置、グラビア印刷装置、スクリーン印刷装置、インクジェット装置、ディスペンサー装置などの各種印刷装置を用いればよい。
外部配線510aおよび510bとしては、例えば、プリント配線板やFPC(Flexible Printed Circuit)などを用いればよい。
接続処理としては、導電材料509が硬化する条件(可視光照射、UV光照射、加熱処理など)を導電材料509に与えればよい。さらに、導電材料509自体の導電性向上や、第3の電極216と導電材料509の導通不良防止のため、導電材料509の接続処理時には圧力を加えることが望ましい。例えば、接続処理としては、導電材料509および外部配線510a(または510b)に対して加圧処理を行いながら加熱処理を行う圧着装置を用いることができる。
以上の工程により作製された発光装置は、多孔質構造を有する第2の隔壁220が発光部分に近接して形成されているため、第1の隔壁218形成時に完全に除去することのできなかった水分や水蒸気、第1の隔壁218形成後において当該隔壁表面に吸着された水分や水蒸気、発光装置外部から侵入した水分や水蒸気(特に、第1の隔壁内部を介してEL層に到達する水分や水蒸気)を効果的に吸湿することができる。したがって、水分や水蒸気に起因したEL層500の劣化を抑制することができる。
また、第2の隔壁220の形状を逆テーパー形状とすることにより、EL層500については、第2の隔壁220で段切れや膜厚の非常に薄い部分(例えば、狙い膜厚の5分の1以下の膜厚)が発生した状態、第4の電極502については、第2の隔壁により一部膜厚が薄くなる部分はあるが、段切れの発生がない状態に形成することができるため、ある1つの発光素子450が発光した際に、EL層500を介して隣接する他の発光素子450に光が伝搬して発光してしまう現象を抑制することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、発光素子の構成の一例について、図8および図9を用いて説明する。本実施の形態で例示する発光素子は、第3の電極216、第4の電極502及びEL層500を備える。第3の電極216または第4の電極502のいずれか一方が陽極、他方が陰極として機能する。EL層500は第3の電極216と第4の電極502の間に設けられる。なお、当該EL層500の構成は第3の電極216と第4の電極502の材質に合わせて適宜選択すればよい。以下に発光素子の構成の一例を例示するが、勿論、発光素子の構成がこれに限定されることはない。
<発光素子の構成例1>
発光素子の構成の一例を図8(A)に示す。図8(A)に示す発光素子は、第3の電極216と第4の電極502の間にEL層500が挟まれている。
第3の電極216と第4の電極502の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、EL層500に第3の電極216の側から正孔が注入され、第4の電極502の側から電子が注入される。注入された電子と正孔はEL層500において再結合し、EL層500に含まれる発光物質が発光する。
本明細書においては、両端から注入された電子と正孔が再結合する領域を1つ有する層または積層体をEL層という。よって、当該発光素子の構成例1はEL層を1つ備えるということができる。
EL層500は、少なくとも発光物質を含む発光層を備えていればよく、発光層以外の層と積層された構造であっても良い。発光層以外の層としては、例えば正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔輸送性に乏しい(ブロッキングする)物質、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、並びにバイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い)の物質等を含む層が挙げられる。
EL層500の具体的な構成の一例を図8(B)に示す。図8(B)に示すEL層500は、第3の電極216側から正孔注入層801、正孔輸送層802、発光層803、電子輸送層804、並びに電子注入層805の順に積層されている。
<発光素子の構成例2>
発光素子の構成の他の一例を図8(C)に示す。図8(C)に例示する発光素子は、第3の電極216と第4の電極502の間にEL層500が挟まれている。さらに、第4の電極502とEL層500との間には中間層806が設けられている。なお、図8(C)のEL層500には、図8(B)のEL層500と同様の構成を適用することができる。
中間層806は少なくとも電荷発生領域を含んで形成されていればよく、電荷発生領域以外の層と積層された構成であってもよい。例えば、第4の電極502側から順に、第1の電荷発生領域806c、電子リレー層806b、及び電子注入バッファー層806aが積層された構造を適用することができる。
中間層806における電子と正孔の挙動について説明する。第3の電極216と第4の電極502の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、第1の電荷発生領域806cにおいて、正孔と電子が発生し、正孔は第4の電極502へ移動し、電子は電子リレー層806bへ移動する。電子リレー層806bは電子輸送性が高く、第1の電荷発生領域806cで生じた電子を電子注入バッファー層806aに速やかに受け渡す。電子注入バッファー層806aはEL層500に電子を注入する障壁を緩和し、EL層500への電子注入効率を高める。従って、第1の電荷発生領域806cで発生した電子は、電子リレー層806bと電子注入バッファー層806aを経て、EL層500のLUMO準位に注入される。
また、電子リレー層806bは、第1の電荷発生領域806cを構成する物質と電子注入バッファー層806aを構成する物質が界面で反応し、互いの機能が損なわれてしまう等の相互作用を防ぐことができる。
当該発光素子の構成例2の第4の電極に用いることができる材料の選択の幅は、構成例1の第4の電極に用いることができる材料の選択の幅に比べて、広い。なぜなら、構成例2の第4の電極は中間層が発生する正孔を受け取ればよく、仕事関数が比較的大きな材料を適用できるからである。
<発光素子の構成例3>
発光素子の構成の他の一例を図9(A)に示す。図9(A)に例示する発光素子は、第3の電極216と第4の電極502の間に2つのEL層500aおよびEL層500bが設けられている。さらに、第1のEL層500aと、第2のEL層500bとの間には中間層806が設けられている。
なお、第3の電極216と第4の電極502の間に設けるEL層の数は2つに限定されない。図9(B)に例示する発光素子は、EL層500が複数積層された構造、所謂、タンデム型の発光素子の構成を備える。但し、例えば第3の電極216と第4の電極502の間にn(nは2以上の自然数)層のEL層500を設ける場合には、m(mは自然数、1以上(n−1)以下)番目のEL層と、(m+1)番目のEL層との間に、それぞれ中間層806を設ける構成とする。
また、当該発光素子の構成例3のEL層500には、上述の発光素子の構成例1と同様の構成を適用することが可能であり、また当該発光素子の構成例3の中間層806には、上述の発光素子の構成例2と同様の構成が適用可能である。
EL層の間に設けられた中間層806における電子と正孔の挙動について説明する。第3の電極216と第4の電極502の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、中間層806において正孔と電子が発生し、正孔は第4の電極502側に設けられたEL層へ移動し、電子は第3の電極側に設けられたEL層へ移動する。第4の電極側に設けられたEL層に注入された正孔は、第4の電極側から注入された電子と再結合し、当該EL層に含まれる発光物質が発光する。また、第3の電極側に設けられたEL層に注入された電子は、第3の電極側から注入された正孔と再結合し、当該EL層に含まれる発光物質が発光する。よって、中間層806において発生した正孔と電子は、それぞれ異なるEL層において発光に至る。
なお、EL層同士を接して設けることで、両者の間に中間層と同じ構成が形成される場合は、EL層同士を接して設けることができる。具体的には、EL層の一方の面に電荷発生領域が形成されていると、当該電荷発生領域は中間層の第1の電荷発生領域として機能するため、EL層同士を接して設けることができる。
発光素子の構成例1から構成例3は、互いに組み合わせて用いることができる。例えば、発光素子の構成例3の第4の電極502とEL層の間に中間層を設けることもできる。
<発光素子に用いることができる材料>
次に、上述した構成を備える発光素子に用いることができる具体的な材料について、第3の電極、第4の電極、並びにEL層の順に説明する。
<第3の電極に用いることができる材料>
第3の電極216は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上が好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。
これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、インジウム−亜鉛酸化物膜は、酸化インジウムに対し1wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム膜は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5wt%以上5wt%以下、酸化亜鉛を0.1wt%以上1wt%以下含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。
この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン等)、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物、チタン酸化物等が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の導電性ポリマーを用いても良い。
但し、第3の電極216と接して第2の電荷発生領域を設ける場合には、仕事関数を考慮せずに様々な導電性材料を第3の電極216に用いることができる。具体的には、仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料を用いることもできる。第2の電荷発生領域を構成する材料については、第1の電荷発生領域と共に後述する。
<第4の電極に用いることができる材料>
第4の電極502に接して第1の電荷発生領域806cを、EL層500との間に設ける場合、第4の電極502は仕事関数の大小に関わらず様々な導電性材料を用いることができる。
なお、第4の電極502および第3の電極216のうち少なくとも一方を、可視光を透過する導電膜を用いて形成する。可視光を透過する導電膜としては、例えば酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などを挙げることができる。また、光を透過する程度(好ましくは、5nm以上30nm以下程度)の金属薄膜を用いることもできる。
<EL層に用いることができる材料>
上述したEL層を構成する各層に用いることができる材料について、以下に具体例を示す。
正孔注入層は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
なお、第2の電荷発生領域を用いて正孔注入層を形成してもよい。正孔注入層に第2の電荷発生領域を用いると、仕事関数を考慮せずに様々な導電性材料を第3の電極216に用いることができるのは前述の通りである。第2の電荷発生領域を構成する材料については第1の電荷発生領域と共に後述する。
<正孔輸送層>
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送層は、単層に限られず正孔輸送性の高い物質を含む層を二層以上積層したものでもよい。電子よりも正孔の輸送性の高い物質であればよく、特に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質が、発光素子の駆動電圧を低減できるため好ましい。
<発光層>
発光層は、発光物質を含む層である。発光層は、単層に限られず発光物質を含む層を二層以上積層したものでもよい。発光物質は蛍光性化合物や、燐光性化合物を用いることができる。発光物質に燐光性化合物を用いると、発光素子の発光効率を高められるため好ましい。
<電子輸送層>
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層は、単層に限られず電子輸送性の高い物質を含む層を二層以上積層したものでもよい。正孔よりも電子の輸送性の高い物質であればよく、特に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が、発光素子の駆動電圧を低減できるため好ましい。
<電子注入層>
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層は、単層に限られず電子注入性の高い物質を含む層を二層以上積層したものでもよい。電子注入層を設ける構成とすることで第4の電極502からの電子の注入効率が高まり、発光素子の駆動電圧を低減できるため好ましい。
<電荷発生領域に用いることができる材料>
第1の電荷発生領域806c、及び第2の電荷発生領域は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む領域である。なお、電荷発生領域は、同一膜中に正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含有する場合だけでなく、正孔輸送性の高い物質を含む層とアクセプター性物質を含む層とが積層されていても良い。但し、第1の電荷発生領域を第4の電極側に設ける積層構造の場合には、正孔輸送性の高い物質を含む層が第4の電極502と接する構造となり、第2の電荷発生領域を第3の電極側に設ける積層構造の場合には、アクセプター性物質を含む層が第3の電極216と接する構造となる。
なお、電荷発生領域において、正孔輸送性の高い物質に対して質量比で、0.1以上4.0以下の比率でアクセプター性物質を添加することが好ましい。
電荷発生領域に用いるアクセプター性物質としては、遷移金属酸化物や元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化モリブデンが特に好ましい。なお、酸化モリブデンは、吸湿性が低いという特徴を有している。
また、電荷発生領域に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。具体的には、10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
<電子リレー層に用いることができる材料>
電子リレー層806bは、第1の電荷発生領域806cにおいてアクセプター性物質がひき抜いた電子を速やかに受け取ることができる層である。従って、電子リレー層806bは、電子輸送性の高い物質を含む層であり、またそのLUMO準位は、第1の電荷発生領域806cにおけるアクセプター性物質のアクセプター準位と、当該電子リレー層が接するEL層500のLUMO準位との間に位置する。具体的には、およそ−5.0eV以上−3.0eV以下とするのが好ましい。
電子リレー層806bに用いる物質としては、例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物が挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定な化合物であるため電子リレー層806bに用いる物質として好ましい。さらに、含窒素縮合芳香族化合物のうち、シアノ基やフルオロ基などの電子吸引基を有する化合物を用いることにより、電子リレー層806bにおける電子の受け取りがさらに容易になるため、好ましい。
<電子注入バッファー層に用いることができる材料>
電子注入バッファー層806aは、第1の電荷発生領域806cからEL層500への電子の注入を容易にする層である。電子注入バッファー層806aを第1の電荷発生領域806cとEL層500の間に設けることにより、両者の注入障壁を緩和することができる。
電子注入バッファー層806aには、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
また、電子注入バッファー層806aが、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明したEL層500の一部に形成することができる電子輸送層の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
<発光素子の作製方法>
これらの層を適宜組み合わせてEL層を形成する。EL層は、用いる材料に応じて種々の方法(例えば、乾式法や湿式法等)を用いることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法などを選んで用いればよい。また、各層で異なる方法を用いて形成してもよい。
以上のような材料を組み合わせることにより、本実施の形態に示す発光素子を作製することができる。この発光素子からは、上述した発光物質からの発光が得られ、その発光色は発光物質の種類を変えることにより選択できる。また、発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、発光スペクトルの幅を拡げて、例えば白色発光を得ることもできる。なお、白色発光を得る場合には、互いに補色となる発光色を呈する発光物質を用いればよく、例えば補色となる発光色を呈する異なる層を備える構成等を用いることができる。具体的な補色の関係としては、例えば青色と黄色、あるいは青緑色と赤色等が挙げられる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した発光装置を電子機器に適用する場合の一例について、図10を用いて説明する。
図10(A)は、携帯型の情報端末であり、筐体1001、筐体1002、第1の表示部1003a、第2の表示部1003bなどによって構成されている。第1の表示部1003aおよび第2の表示部1003bはタッチ入力機能を有するパネルとなっており、例えば図10(A)の左図のように、第1の表示部1003aに表示される選択ボタン1004により「タッチ入力」を行うか、「キーボード入力」を行うかを選択できる。選択ボタンは様々な大きさで表示できるため、幅広い世代の人が使いやすさを実感できる。ここで、例えば「キーボード入力」を選択した場合、図10(A)の右図のように第1の表示部1003aにはキーボード1005が表示される。これにより、従来の情報端末と同様に、キーボード入力による素早い文字入力などが可能となる。
また、図10(A)に示す携帯型の情報端末は、図10(A)の右図のように、第1の表示部1003a及び第2の表示部1003bのうち、一方を取り外すことができる。第1の表示部1003aおよび第2の表示部1003bは両方がタッチ入力機能を有しており単体で動作させることができるため、持ち運びの際に一方を取り外し、さらなる軽量化を図ることができる。また、筐体1002を壁に設置し、筐体1001を用いて手元で操作するといった使用方法を採ることもできる。
図10(A)は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
また、図10(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
さらに、図10(A)に示す筐体1002にアンテナやマイク機能や無線機能を持たせ、携帯電話として用いてもよい。
上述の実施の形態で説明した発光装置は、第2の隔壁の効果により、水分や水蒸気に起因したEL層の劣化が抑制されており、また、EL層を介して隣接する発光素子に光が漏れることについても抑制されている。このため、第1の表示部1003aや第2の表示部1003bなどに当該発光装置を使用することにより、高い表示能力を有し、且つ、水分や水蒸気による発光状態の劣化が抑制された、付加価値の高い携帯型情報端末を提供できる。
図10(B)は、テレビジョン装置であり、筐体1011、表示部1012、スタンド1013などで構成されている。テレビジョン装置の操作は、筐体1011が備えるスイッチや、リモコン操作機1014により行うことができる。このようなテレビジョン装置において、表示部1012などに上述の実施の形態で説明した発光装置を用いることにより、高い表示能力を有し、且つ、水分や水蒸気による発光状態の劣化が抑制された、付加価値の高いテレビジョン装置を提供できる。
図10(C)は、半球型映像表示装置であり、本体1021、座席1022、ヒンジ1023、表示部1024などで構成されている。半球型映像表示装置は、表示部1024を湾曲状態にする必要がある。先の実施の形態にて記載した発光装置の作製方法では、ベース基板200および対向基板506として各種プラスチック基板などの可とう性を有する基板を用いることが可能であるため、上述の実施の形態で説明した発光装置を曲面部分に形成することができる。このような半球型映像表示装置において、表示部1024などに上述の実施の形態で説明した発光装置を用いることにより、高い表示能力を有し、且つ、水分や水蒸気による発光状態の劣化が抑制された、付加価値の高い半球型映像表示装置を提供できる。
図11は、本実施の形態の発光装置を照明機器に用いた場合の一例であり、照明機器1100は部屋全体を明るく照らす事を目的に、本明細書に記載した発光装置を天井面に貼り付けている。また、照明機器1102は、部屋の一部を明るく照らすスポットライトとして用いる事を目的に、天井に形成した半球状の穴の内部に、本明細書に記載した発光装置を貼り付けている。また、本明細書に記載の発光装置は、ベース基板200および対向基板506にプラスチック基板等の可撓性を有する基板を用いて作製する事により、湾曲面等にも貼り付けることが可能となるため、様々な形状及び使用用途の照明機器に用いることができる。例えば、本明細書に記載した発光装置を湾曲面に貼り付け、卓上型照明機器1104のように用いることもできる。