JP2012101270A - 溶接方法およびこれを用いた船舶 - Google Patents
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Abstract
【課題】T字溶接継手のすみ肉の溶接にレーザーアークハイブリッド溶接を用いて、すみ肉溶接を行う入射面側に対して反対面側の反入射面側のすみ肉の硬度を改善することが可能な溶接方法およびこれを用いた船舶を提供することを目的とする。
【解決手段】母材3と部材2とをT字状に合わせたT字溶接継手1のすみ肉5をレーザービームおよび電気アークを用いる溶接9の溶接方法において、レーザービームおよび電気アークを用いる溶接9が施工される入射面側のすみ肉5に対して入射面側溶接を行ってから所定の時間内に、部材2を挟んで入射面側のすみ肉5とは反対の反対面側の反入射面側のすみ肉7に対して溶材8を供給することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】母材3と部材2とをT字状に合わせたT字溶接継手1のすみ肉5をレーザービームおよび電気アークを用いる溶接9の溶接方法において、レーザービームおよび電気アークを用いる溶接9が施工される入射面側のすみ肉5に対して入射面側溶接を行ってから所定の時間内に、部材2を挟んで入射面側のすみ肉5とは反対の反対面側の反入射面側のすみ肉7に対して溶材8を供給することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、溶接方法およびこれを用いた船舶に関し、例えば、レーザー溶接とアーク溶接とを組み合わせたレーザーアークハイブリッド溶接を用いて船舶のT字溶接継手のすみ肉溶接を行うものである。
一般に、船舶の船体構造建造の際には、縦通肋骨の足下やビルドアップロンジのフェースとウェブとのすみ肉溶接施工法として、図6(A)に示すように、炭酸ガスを用いたアーク溶接等が用いられている。しかし、アーク溶接は、入熱幅が広くかつ入熱が大きいため、溶接過程で局部的に生じる圧縮による残留歪みのため溶接変形が大きく生じることがある。そのため、溶接後に、溶接歪みを除去する歪み取りを行う工程が必要となっている。
また、アーク溶接は、図6(A)に示すように、すみ肉に形成される溶接ビード101の溶け込みが浅いため、フェース103とウェブ102との付け合わせ部分に溶け込み不良箇所を有する恐れがあった。
そこで、近年は、特許文献1に開示されているような船舶以外の各種溶接現場で導入されているレーザーアークハイブリッド溶接が船舶の船体構造建造にも用いられている。
レーザーアークハイブリッド溶接は、例えば、図6(B)に示すように、アーク溶接に比べて入熱幅も狭く、かつ、入熱も小さい。そのため、溶接変形量を小さくすることができる。また、溶接ビード105の溶け込みを深く(溶け込んでいる最深部が大きく)することができる。
レーザーアークハイブリッド溶接は、例えば、図6(B)に示すように、アーク溶接に比べて入熱幅も狭く、かつ、入熱も小さい。そのため、溶接変形量を小さくすることができる。また、溶接ビード105の溶け込みを深く(溶け込んでいる最深部が大きく)することができる。
しかしながら、特許文献1や図6(B)に示すT字溶接継手100を形成しているウェブ102の板厚が厚い(例えば、5mm以上)場合には、レーザーアークハイブリッド溶接が行われる入射面側のすみ肉106にレーザーアークハイブリッド溶接を行っても、入射面側のすみ肉106から反入射面側のすみ肉107にまでアーク溶接の溶接材料が十分に浸透しない。
そのため、レーザーアークハイブリッド溶接によって溶融したフェース103またはウェブ102の成分が攪拌されることなく反入射面側のすみ肉107に凝固する。このように形成されたフェース103またはウェブ102の成分主体の溶融凝固部108には、フェース103またはウェブ102の成分が過剰(リッチ)で硬化傾向の強い組織が存在する。
そのため、この反入射面側のすみ肉107に形成された溶融凝固部108を裏はつりを行って除去後、反入射面側のすみ肉107にレーザーアークハイブリッド溶接を行う。しかし、裏はつりをしてレーザーアークハイブリッド溶接をおこなっても、反入射面側のすみ肉107の硬度を許容の硬度(たとえば、300HV)にまで軟化させることができないという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、T字溶接継手のすみ肉の溶接にレーザーアークハイブリッド溶接を用いて、すみ肉溶接を行う入射面側に対して反対面側の反入射面側のすみ肉の硬度を改善することが可能な溶接方法およびこれを用いた船舶を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の溶接方法およびこれを用いた船舶は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る溶接方法によれば、母材と部材とをT字状に合わせたT字溶接継手のすみ肉をレーザービームおよび電気アークを用いる溶接方法において、溶接が施工される入射面側の前記すみ肉に対して入射面側溶接を行ってから所定の時間内に、前記部材を挟んで入射面側の前記すみ肉とは反対の反対面側の反入射面側の前記すみ肉に対して溶材を供給することを特徴とする。
すなわち、本発明に係る溶接方法によれば、母材と部材とをT字状に合わせたT字溶接継手のすみ肉をレーザービームおよび電気アークを用いる溶接方法において、溶接が施工される入射面側の前記すみ肉に対して入射面側溶接を行ってから所定の時間内に、前記部材を挟んで入射面側の前記すみ肉とは反対の反対面側の反入射面側の前記すみ肉に対して溶材を供給することを特徴とする。
電気アークとレーザービームとを走査させて、母材と部材とをT字状に合わせたT字溶接継手のすみ肉を入射面側から入射面側溶接した場合には、入射面側のすみ肉から反入射面側のすみ肉まで溶接材料が十分に浸透しない。そのため、入射面側溶接によって溶融した母材の成分が反入射面側のすみ肉において凝固して硬度が規定値(例えば、380Hv)を超えるなど硬化傾向が顕著になる。
そこで、母材と部材とをT字状に合わせたT字溶接継手のすみ肉の入射面側に対して入射面側溶接を行ってから所定の時間内に、部材を挟んで入射面側と反対の反対側面の反入射面側のすみ肉に溶材を供給することとした。そのため、入射面側溶接によって溶融した母材の成分中の硬化傾向が大きい成分が凝固する前に、反入射面側にすみ肉に供給された溶材によって溶融した母材の成分を攪拌することができる。これにより、溶融した母材の成分の凝固による硬化傾向を緩和することができる。
なお、所定の時間内とは、入射面側溶接を行ってから反入射面側に硬化した組織が析出するまでの間の時間をいう。
なお、所定の時間内とは、入射面側溶接を行ってから反入射面側に硬化した組織が析出するまでの間の時間をいう。
また、反入射面側のすみ肉に溶材を供給することとしたので、反入射面側のビード形状を制御することが可能となる。したがって、アンダーカットや融合不良などの溶接欠陥の発生を抑制することができる。
本発明に係る溶接方法によれば、反入射面側の前記すみ肉に対して前記溶材を供給する際には、反入射面側の前記すみ肉に入熱が与えられることを特徴とする。
反入射面側のすみ肉に入熱を与えることによって、反入射面側のすみ肉に供給された溶材が溶融する。したがって、入射面側溶接による入射面側からの入熱によって反入射面側のすみ肉に供給された溶材が溶融しない場合であっても、溶材を十分に溶融させることができる。したがって、良好な溶接ビードを形成することができる。
本発明に係る溶接方法によれば、前記溶材の供給は、前記入射面側溶接と同時または入射面側溶接の直前に行われることを特徴とする。
入射面側溶接を行う直前または同時に、反入射面側のすみ肉に溶材の供給を行うことにした。これにより、入射面側溶接による入射面側からの入熱によって反入射面側のすみ肉に供給された溶材を溶融することができる。したがって、反入射面側のすみ肉の温度管理を行うことなく溶材を溶融することができる。
また、反入射面側のすみ肉への溶材の供給を入射面側溶接の直前または同時に行うことによって、入射面側溶接の入熱によって反入射面側のすみ肉に供給された溶材を溶融することができる。そのため、入射面側溶接中に発生する母材または部材からの金属粒子の飛散を防止することができる。したがって、スパッタの発生を制御することができる。
本発明に係る溶接方法によれば、前記所定の時間内に前記溶材を供給することができない場合や前記入熱を与えることができない場合には、反入射面側の前記すみ肉近傍の前記母材を所定温度以上に予熱した後に反入射面側の前記すみ肉に前記溶材の供給を行うことを特徴とする。
反入射面側のすみ肉近傍の母材の温度を所定温度以上に予熱してから、反入射面側のすみ肉に溶材を供給することとした。したがって、所定の時間内に溶材を供給することができない場合や入熱を与えることができない等により反入射面側のすみ肉を形成する母材の温度が室温まで冷えて入射面側溶接によって溶融した母材の成分が硬化傾向になった場合であっても、一度溶融した母材成分を再度溶融させて溶材を供給することができる。
なお、所定温度とは、例えば、母材の温度が100℃以上をいう。
なお、所定温度とは、例えば、母材の温度が100℃以上をいう。
本発明に係る船舶によれば、上記のいずれかに記載の溶接方法を用いたことを特徴とする。
入射面側溶接による反入射面側のすみ肉に生じる硬化傾向を緩和して良好な溶接ビードを形成することが可能な溶接方法を用いることとした。そのため、部材の板厚が厚い場合、例えば、板厚が5mm以上であっても反入射面側のすみ肉に溶接材料を十分に浸透させる。したがって、板厚が厚い部材を用いて船体構造を建造することができ、かつ、溶接欠陥を起因とした損傷を抑制した船舶とすることができる。
本発明によると、母材と部材とをT字状に合わせたT字溶接継手のすみ肉の入射面側に対して入射面側溶接を行ってから所定の時間内に、部材を挟んで入射面側と反対の反対側面の反入射面側のすみ肉に溶材を供給することとした。そのため、入射面側溶接によって溶融した母材の成分中の硬化傾向が大きい成分が凝固する前に、反入射面側にすみ肉から供給された溶材によって溶融した母材の成分を攪拌することができる。これにより、溶融した母材の成分の凝固による硬化傾向を緩和することができる。
また、反入射面側のすみ肉に溶材を供給することとしたので、反入射面側のビード形状を制御することが可能となる。したがって、アンダーカットや融合不良などの溶接欠陥の発生を抑制することができる。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係る船舶の船体構造の建造時に用いられるT字溶接継手のすみ肉の溶接施工法の概略図が示されている。
本実施形態の溶接施工法(溶接方法)は、船舶(図示せず)の船体構造の縦通肋骨(図示せず)の足下やビルドアップロンジ(図示せず)のフェース(図示せず)とウェブ(図示せず)といった母材と部材とをT字状に合わせたT字溶接継手1の片側のすみ肉5の溶接にレーザーアークハイブリッド溶接(レーザービームおよび電気アークを用いる溶接)9を用いて行われる。
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係る船舶の船体構造の建造時に用いられるT字溶接継手のすみ肉の溶接施工法の概略図が示されている。
本実施形態の溶接施工法(溶接方法)は、船舶(図示せず)の船体構造の縦通肋骨(図示せず)の足下やビルドアップロンジ(図示せず)のフェース(図示せず)とウェブ(図示せず)といった母材と部材とをT字状に合わせたT字溶接継手1の片側のすみ肉5の溶接にレーザーアークハイブリッド溶接(レーザービームおよび電気アークを用いる溶接)9を用いて行われる。
T字溶接継手1は、例えばフェース(母材)3に対してウェブ(部材)2がT字状になるように合わせられている。ウェブ2は、鋼材として、例えばAH36が用いられる。ウェブ2の板厚は、5mm以上であり、例えば、図1では、13mmの鋼材が用いられている。フェース3は、鋼材として、例えばAH36が用いられる。フェース3の板厚は、例えば13mmである。
すみ肉5、7のうちレーザーアークハイブリッド溶接9によってすみ肉溶接が施工される入射面側のすみ肉5は、ウェブ2とフェース3とをT字形状にあわせた直角部(隅部)である。また、反入射面側のすみ肉7は、ウェブ2を挟んで入射面側のすみ肉5とは反対の反対面側であって、ウェブ2とフェース3とをT字形状にあわせた直角部(隅部)である。
レーザーアークハイブリッド溶接9は、レーザービームと電気アーク溶接とからなっている。レーザーアークハイブリッド溶接9は、電気アーク溶接をレーザービームに先行して走査させている。レーザービームには、YAGレーザーを用いる。レーザービームの出力は、例えば10kWである。電気アーク溶接には、MIG溶接またはTIG溶接を用いる。電気アーク溶接の溶接棒には、例えば、JIS Z3312 YGW11相当とされ、株式会社神戸製鋼所の製品名 MG−50等が用いられる。
上述したようなT字溶接継手1の溶接施工法としては、入射面側のすみ肉5に対してすみ肉溶接(以下、「入射面側溶接」という)を行ってから所定の時間内に、図1(B)に示すように、反入射面側のすみ肉7に対して溶材8が供給される。
溶材8は、電気アーク溶接の溶接棒と同様に、例えば、JIS Z3312 YGW11相当とされ、株式会社神戸製鋼所の製品名 MG−50等が用いられる。
溶材8は、電気アーク溶接の溶接棒と同様に、例えば、JIS Z3312 YGW11相当とされ、株式会社神戸製鋼所の製品名 MG−50等が用いられる。
なお、所定の時間内とは、入射面側溶接を行ってから入射面側溶接による入熱によって温度の上昇した反入射面側のすみ肉7のフェース3の温度が100℃以下になるまでの間の時間をいい、本実施形態の場合には、入射面側溶接と同時に反入射面側のすみ肉7に対して溶材8が供給される。
次に、本実施形態の溶接施工法について説明する。
図1に示すように、鉛直方向の断面形状がT字形状となるように合わせられたT字溶接継手1の入射面側のすみ肉5には、レーザーアークハイブリッド溶接9によって入射面側溶接が施工される。また、反入射面側のすみ肉7には、入射面側溶接と同時に溶材8が供給される。
図1に示すように、鉛直方向の断面形状がT字形状となるように合わせられたT字溶接継手1の入射面側のすみ肉5には、レーザーアークハイブリッド溶接9によって入射面側溶接が施工される。また、反入射面側のすみ肉7には、入射面側溶接と同時に溶材8が供給される。
図2には、本実施形態の溶接施工法によって溶接されたフェース3とウェブ2とのマクロ断面写真が示されている。図3には、図2に示したマクロ断面の硬さ計測結果を示し、(A)は、その計測位置を示し、(B)は、(A)に示した計測位置の模式図を示す。また、図4には、図2に示したマクロ断面の硬さ計測結果を示し、(A)は、フェースの長手方向の硬さ計測結果を示し、(B)は、フェースの板厚方向の硬さ計測結果を示している。図4(A)および図4(B)の縦軸には、硬さ(HV)を示し、横軸には、フェースの長手方向またはフェースの板厚方向を0.1mm毎に示している。なお、フェースおよびウェブとしては、R155を用いて計測を行った。
図4(A)および図4(B)に示す硬さ計測は、計測方法としてマイクロビッカース硬さを用いており、マイクロビッカース硬さの計測は、荷重1kgf、計測ピッチ1.0mmで行った。
図2から図4において、図の右側のすみ肉が入射面側のすみ肉5を示し、左側のすみ肉が反入射面側のすみ肉7を示している。
図2から図4において、図の右側のすみ肉が入射面側のすみ肉5を示し、左側のすみ肉が反入射面側のすみ肉7を示している。
フェース3の長手方向の測定範囲は、図3(A)中に示すように反入射面側のすみ肉7から入射面側のすみ肉5に向かってIからVに区分されている。さらに、これら5つに区分された測定範囲において、硬さの計測は、フェース3の上面(Y=0)から上方に向かって0.5mmの位置(図3(A)中のA)、フェース3の上面から下方に向かって0.5mmの位置(図3(A)中のB)、フェース3の上面から下方に向かって1.0mmの位置(図3(A)中のC)で行った。図4(A)のグラフにおいて、図3(A)に示した各位置A、B、Cにおける硬さ計測結果は、各々三角印、四角印、丸印で示した。
また、フェース3の板厚方向の測定範囲は、図3(A)中に示すようにウェブ2の長手方向からウェース3に向かってVIらVIIIに区分されている。さらに、これら3つに区分された測定範囲において、硬さの計測は、反入射面側のすみ肉7側のウェブ2の表面から0.5mmだけ中心軸側の位置(図3(A)及び図3(B)中のD)、ウェブ2の中心軸の位置(図3(A)及び図3(B)中のE)、入射面側のすみ肉5側のウェブ2の表面から0.5mmだけ中心軸側の位置(図3(A)及び図3(B)中のF)で行った。図4(A)のグラフにおいて、図4(B)に示した各位置D、E、Fにおける硬さ計測結果は、各々三角印、四角印、丸印で示した。
図4(A)および図4(B)のグラフ中、白抜きの三角印、四角印、丸印は、溶接金属を示し、塗りつぶした三角印、四角印、丸印は、熱影響部を示し、斜線を有する三角印、四角印、丸印は、フェース2またはウェブ3といった母材または部材を示している。
入射面側のすみ肉5にレーザーアークハイブリッド溶接9を施工して反入射面側のすみ肉7に溶材8を供給しなかった際に生じる溶解凝固部の発生位置に相当する図4(A)のIIの部分および図4(B)のVIIIの部分のビッカース硬さは、本実施形態の溶接施工法によって施工した場合には、図4(A)の計測結果に示すように、規定値である380HV以下にできることが分かった。
これは、入射面側のすみ肉5に施工されたレーザーアークハイブリッド溶接9による入熱が伝熱して反入射面側のすみ肉7を形成しているフェース3の温度が上昇して反入射面側のすみ肉7に供給された溶材8を溶融することにより、溶融した溶材8がレーザーアークハイブリッド溶接9によって形成された溶解凝固部を攪拌するためである。したがって、溶融した溶材8がフェース3内の成分が過多となって硬化傾向にある溶解凝固中の組織を攪拌して分散するため、硬化傾向にある溶解凝固部の硬化が緩和される。
以上説明したように、本実施形態にかかる溶接施工法およびこれを用いた船舶によれば、以下の作用効果を奏する。
フェース(母材)3とウェブ(部材)2とをT字状に合わせたT字溶接継手1の入射面側のすみ肉5に対して入射面側溶接を行うのと同時(所定の時間内)に、ウェブ2を挟んで入射面側のすみ肉5と反対の反対側面の反入射面側のすみ肉7に溶材8を供給することとした。そのため、入射面側溶接によって溶融したフェース3の成分中の硬化傾向が大きい成分が凝固する前に、反入射面側のすみ肉7から供給された溶材8によって溶融したフェース3の成分を攪拌することができる。これにより、溶融したフェース3の成分の凝固による硬化傾向を緩和することができる。
フェース(母材)3とウェブ(部材)2とをT字状に合わせたT字溶接継手1の入射面側のすみ肉5に対して入射面側溶接を行うのと同時(所定の時間内)に、ウェブ2を挟んで入射面側のすみ肉5と反対の反対側面の反入射面側のすみ肉7に溶材8を供給することとした。そのため、入射面側溶接によって溶融したフェース3の成分中の硬化傾向が大きい成分が凝固する前に、反入射面側のすみ肉7から供給された溶材8によって溶融したフェース3の成分を攪拌することができる。これにより、溶融したフェース3の成分の凝固による硬化傾向を緩和することができる。
また、反入射面側のすみ肉7に溶材8を供給することとしたので、反入射面側のすみ肉7に形成される溶接ビードの形状を制御することが可能となる。したがって、アンダーカットや融合不良などの溶接欠陥の発生を抑制することができる。
入射面側溶接を行うと同時に、反入射面側のすみ肉7に溶材8の供給を行うことにした。そのため、入射面側溶接によるレーザーアークハイブリッド溶接(レーザービームおよび電気アーク)9の入熱によって反入射面側のすみ肉7に供給された溶材8を溶融することができる。したがって、反入射面側のすみ肉7の温度管理を行うことなく溶材8を溶融することができる。
また、反入射面側のすみ肉7への溶材8の供給を入射面側溶接と同時に行うことによって、反入射面側のすみ肉7に供給された溶材8を溶融することができる。そのため、入射面側溶接中に発生するフェース3またはウェブ2からの金属粒子の飛散を防止することができる。したがって、スパッタ等の発生を制御することができる。
入射面側溶接による反入射面側のすみ肉7に生じる硬化傾向を緩和して良好な溶接ビードを形成することが可能な溶接施工法(溶接方法)を用いることとした。そのため、ウェブ2の板厚が厚い場合であっても反入射面側のすみ肉7に溶接材料を浸透させる。したがって、板厚が厚いウェブ2を用いて船体構造を建造することができ、かつ、溶接欠陥を起因とした損傷を抑制した船舶とすることができる。
なお、本実施形態では、反入射面側のすみ肉7に供給する溶材8は、入射面側のすみ肉5のレーザーアークハイブリッド溶接9と同時に供給するとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反入射面側に硬化した組織が析出するまでの間に溶材8を供給すれば良い。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の溶接施工法およびこれを用いた船舶は、反入射面側のすみ肉に入熱を与える点で第1実施形態と相違し、その他は同様である。したがって、同一の構成、溶接施工法については、同一の符号を付してその説明を省略する。
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の溶接施工法およびこれを用いた船舶は、反入射面側のすみ肉に入熱を与える点で第1実施形態と相違し、その他は同様である。したがって、同一の構成、溶接施工法については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図5には、本実施形態に係る船舶に係る船舶の建造時に用いられるT字溶接継手のすみ肉の溶接施工法の概略図が示されている。
入射面側のすみ肉5は、レーザーアークハイブリッド溶接(レーザービームおよび電気アーク)9によって溶接(入射面側溶接)が施工される。また、反入射面側のすみ肉7には、溶材(図示せず)の供給と共にシールドガスに二酸化炭素を用いたMAG溶接10が行われる。
入射面側のすみ肉5は、レーザーアークハイブリッド溶接(レーザービームおよび電気アーク)9によって溶接(入射面側溶接)が施工される。また、反入射面側のすみ肉7には、溶材(図示せず)の供給と共にシールドガスに二酸化炭素を用いたMAG溶接10が行われる。
MAG溶接10によって反入射面側のすみ肉7には、入熱が与えられる。MAG溶接10によって与えられた入熱によって反入射面側のすみ肉7に供給された溶材を積極的に溶融させることができる。したがって、溶融した溶材がフェース3内の成分が過多となって硬化傾向にある溶解凝固中の組織を攪拌・分散して、硬化傾向にある溶解凝固部の硬化を緩和する。
以上説明したように、本実施形態にかかる溶接施工法(溶接方法)およびこれを用いた船舶によれば、以下の作用効果を奏する。
反入射面側のすみ肉7にMAG溶接10によって入熱を与えることによって、反入射面側のすみ肉7に供給された溶材(図示せず)が溶融する。したがって、入射面側溶接による入射面側のすみ肉5からの入熱によって反入射面側のすみ肉7に供給された溶材が溶融しない場合であっても、溶材を十分に溶融させることができる。したがって、良好な溶接ビードを形成することができる。
反入射面側のすみ肉7にMAG溶接10によって入熱を与えることによって、反入射面側のすみ肉7に供給された溶材(図示せず)が溶融する。したがって、入射面側溶接による入射面側のすみ肉5からの入熱によって反入射面側のすみ肉7に供給された溶材が溶融しない場合であっても、溶材を十分に溶融させることができる。したがって、良好な溶接ビードを形成することができる。
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の溶接施工法およびこれを用いた船舶は、入射面側溶接によって溶融したフェースの成分が硬化した後に反入射面側のすみ肉のフェースを予熱する点で第1実施形態と相違し、その他は同様である。したがって、同一の構成、溶接施工法については、同一の符号を付してその説明を省略する。
以下、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の溶接施工法およびこれを用いた船舶は、入射面側溶接によって溶融したフェースの成分が硬化した後に反入射面側のすみ肉のフェースを予熱する点で第1実施形態と相違し、その他は同様である。したがって、同一の構成、溶接施工法については、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の溶接施工法(溶接方法)は、入射面側溶接によって溶融したフェース(母材)の成分が冷却されて溶解凝固部(溶融したフェースの成分が硬化傾向)が形成され、その溶解凝固部が形成される前に反入射面側のすみ肉に溶材が供給されなかった場合(所定の時間内に溶材を供給することができない場合)に、反入射面側のすみ肉近傍のフェースを予熱する。このフェースの予熱は、溶解凝固部を再度溶融することが可能な温度とされ、例えば、100℃以上をいう。
フェースが予熱された後に反入射面側のすみ肉には、溶材が供給される。予熱によって再度溶融した溶解凝固部を溶融した溶材によって攪拌する。このように、溶融した溶材がフェース内の成分が過多となって硬化傾向にある溶解凝固部中の組織を攪拌・分散するため、硬化傾向にある溶解凝固部の硬化が緩和される。
以上説明したように、本実施形態にかかる溶接施工法およびこれを用いた船舶によれば、以下の作用効果を奏する。
反入射面側のすみ肉近傍のフェース(母材)を予熱してから、反入射面側のすみ肉に溶材を供給することとした。したがって、反入射面側のすみ肉を形成するフェースが室温まで冷えて入射面側溶接によって溶解凝固部が形成された場合(溶融したフェースの成分が硬化傾向になった場合)であっても、溶解凝固部中のフェース成分を再度溶融させて溶材を供給することができる。
反入射面側のすみ肉近傍のフェース(母材)を予熱してから、反入射面側のすみ肉に溶材を供給することとした。したがって、反入射面側のすみ肉を形成するフェースが室温まで冷えて入射面側溶接によって溶解凝固部が形成された場合(溶融したフェースの成分が硬化傾向になった場合)であっても、溶解凝固部中のフェース成分を再度溶融させて溶材を供給することができる。
1 T字溶接継手
2 ウェブ(部材)
3 フェース(母材)
5 入射面側のすみ肉
7 反入射面側のすみ肉
8 溶材
9 レーザーアークハイブリッド溶接(レーザービームおよび電気アークを用いる溶接)
2 ウェブ(部材)
3 フェース(母材)
5 入射面側のすみ肉
7 反入射面側のすみ肉
8 溶材
9 レーザーアークハイブリッド溶接(レーザービームおよび電気アークを用いる溶接)
Claims (5)
- 母材と部材とをT字状に合わせたT字溶接継手のすみ肉をレーザービームおよび電気アークを用いる溶接方法において、
溶接が施工される入射面側の前記すみ肉に対して入射面側溶接を行ってから所定の時間内に、前記部材を挟んで入射面側の前記すみ肉とは反対の反対面側の反入射面側の前記すみ肉に対して溶材を供給することを特徴とする溶接方法。 - 反入射面側の前記すみ肉に対して前記溶材を供給する際には、反入射面側の前記すみ肉に入熱が与えられることを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
- 前記溶材の供給は、前記入射面側溶接と同時または該入射面側溶接の直前に行われることを特徴とする請求項2に記載の溶接方法。
- 前記所定の時間内に前記溶材を供給することができない場合や前記入熱を与えることができない場合には、反入射面側の前記すみ肉近傍の前記母材を所定温度以上に予熱した後に反入射面側の前記すみ肉に前記溶材の供給を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の溶接方法。
- 請求項1から請求項4のいずれかに記載の溶接方法を用いたことを特徴とする船舶。
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-
2010
- 2010-11-12 JP JP2010253820A patent/JP2012101270A/ja not_active Withdrawn
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