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JP2011063840A - 耐hic特性に優れた鋼板およびuoe鋼管 - Google Patents

耐hic特性に優れた鋼板およびuoe鋼管 Download PDF

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JP2011063840A JP2009214724A JP2009214724A JP2011063840A JP 2011063840 A JP2011063840 A JP 2011063840A JP 2009214724 A JP2009214724 A JP 2009214724A JP 2009214724 A JP2009214724 A JP 2009214724A JP 2011063840 A JP2011063840 A JP 2011063840A
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出 湊
Nobuaki Takahashi
伸彰 高橋
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Abstract

【課題】特にMn、P、S等の従来よりHIC発生起因として知られる元素の制御に加えて、NbやTiの炭窒化物に起因したHIC発生を防止できる鋼板を提供する。
【解決手段】C:0.02%以上0.07%以下、Si:0.05%以上0.5%以下、Mn:1.10%以上1.60%以下、P:0.015%以下、S:0.0020%以下、Nb:0.010%以上0.050%以下、Ti:0.005%以上0.025%以下、sol.Al:0.005%以上0.06%以下、Ca:0.0005〜0.0060%、N:0.0015%以上0.007%以下を含有し、かつ式(1):0.1%≦Cu+Ni+Cr+Mo≦1.5%を満足し、残部Feおよび不純物からなり、板厚方向の中央部から板厚方向へ向けて板厚の5%の距離にある領域におけるNb濃度が0.060%以下であるとともにTi濃度が0.025%以下であることを特徴とする耐HIC特性に優れた鋼板である。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼板およびUOE鋼管に関する。具体的には、本発明は、ラインパイプや海洋構造物さらには圧力容器等の用途に適用されるX60以上の耐HIC特性に優れた厚鋼板と、この厚鋼板を用いたUOE鋼管とに関する。
原油や天然ガスの輸送に使用されるラインパイプには、強度、靱性、溶接性等の一般的な特性の他に、硫化水素を含む環境下で使用されることから、耐水素誘起割れ(Hydrogen Induced Cracking:以下、「HIC」と略記する)が重要な特性として、要求される。
HICに関する多数の研究が、過去に実際にラインパイプや油井管等でHICに起因した油漏れや破壊、爆発事故が発生したことから、従来より行われている。それらによれば、HICの発生機構は、腐食環境で発生した水素ガスが鋼材中に浸入して拡散し、鋼材中のMnSや酸化物系介在物の周囲に集積し、分子化して割れにつながることである。このため、以下に大別される手段がHICの防止策として開示されている。
(1)鋼材中にMnSが存在すると、これを起点として割れが発生し、MnSが圧延時に長く伸展すると割れ感受性を増大する。このため、特許文献1には、鋼中のS含有量を低下するとともに鋼中にCaやREMを添加することによって、鋼中のSを微細な球状化したCaSやREM硫化物とする発明が開示されている。
(2)鋳片の中心偏析部に相当する部位では、C、Mn、P等が偏析することによりマルテンサイトやベイナイトなどの硬い組織が形成され、これが割れの伝播経路となる。このため、特許文献2には、鋼中のC、Mn、P等の濃度を低減すること、拡散により偏析を軽減するための均熱処理を行うこと、さらには圧延後の冷却速度を高めることによって、硬い組織の生成を防止する発明が開示されている。また、特許文献3には、連続鋳造の未凝固溶鋼が残る段階で鋳片を一旦バルジングさせた後圧下することによって、中心偏析そのものを解消する発明が開示されている。
(3)近年、要求される鋼材の強度スペックの向上に伴って、上記(1)項または(2)項の単独の対策を行うのでは、不十分な場合が多くなってきた。このため、特許文献4〜6には、鋼中にCuやNiを添加することにより表面に保護被膜を形成して鋼中への水素の浸入を抑制するとともに、これらの対策とともに、CrやMo等の添加や圧延時の加工熱処理(TMCP)を併用する発明が開示されている。
特開昭54−110119号公報 特開昭61−60866号公報 特開平09−57410号公報 特開平6−220577号公報 特開平9−209037号公報 特開2003−226922号公報
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、X60クラス(YP70ksiクラス)以上のラインパイプ等に使用される厚鋼板においては、上述した(1)〜(3)項に示す対策では防止できないHICがあることが新たに判明した。本明細書において「厚鋼板」とは、板厚が6.0mm以上38.1mm以下の鋼板を意味する。
本発明の目的は、X60クラス(YP70ksiクラス)以上のラインパイプ等に使用される厚鋼板において、これまで知られているHICの防止策では防ぐことができないHICを、防止することができる耐HIC特性に優れた鋼板およびUOE鋼管を提供することである。
本発明は、「X60クラス(YP70ksiクラス)以上のラインパイプ等に使用される厚鋼板では、HIC発生起点が、上述した(1)〜(3)項に示す原因以外に、主にNbやTiの炭窒化物である」という新規な知見に基づくものである。
本発明は、C:0.02%以上0.07%以下(本明細書では特に断りがない限り組成に関する「%」は「質量%」を意味するものとする)、Si:0.05%以上0.5%以下、Mn:1.10%以上1.60%以下、P:0.015%以下、S:0.0020%以下、Nb:0.010%以上0.050%以下、Ti:0.005%以上0.025%以下、sol.Al:0.005%以上0.06%以下、Ca:0.0005%以上0.0060%以下、N:0.0015%以上0.007%以下を含有し、かつ式(1):0.1%≦Cu+Ni+Cr+Mo≦1.5%を満足し、任意元素としてV:0.10%以下、望ましくは0.01%以上0.10%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなり、板厚方向の中央部から板厚方向へ向けて板厚の5%の距離にある領域におけるNb濃度が0.060%以下であるとともにTi濃度が0.025%以下であることを特徴とする鋼板である。ただし、式(1)における元素記号は各元素の含有量(質量%)である。
別の観点からは、本発明は、上述した本発明に係る鋼板を素材とすることを特徴とするUOE鋼管である。
本発明により、X60クラス(YP70ksiクラス)以上のラインパイプ等に使用されるとともに、TiやNbの粗大な炭窒化物に起因したHICを生じることがない耐HIC特性に優れた鋼板と、この鋼板を素材とするUOE鋼管とを提供することができるようになる。
レーザーICP装置を用いたMn、P、S、Nb、Cの偏析度の調査結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
はじめに、本発明に係る鋼板の組成を限定する理由を説明する。
[C:0.02%以上0.07%以下]
一般に、Cは鋼の強度に大きな影響を及ぼす元素として知られ、C含有量が0.02%未満ではラインパイプ等の用途に対して所定の強度を得ることが困難となる。一方、C含有量が0.07%を超えると、上述したように連続鋳造時には鋳片の厚み中心部にマクロ偏析部を形成してHICの発生原因となる。そのため、C含有量は0.02%以上0.07%以下と限定する。同様の観点からC含有量の上限は0.06%であることが好ましく、0.05%であることがさらに好ましい。一方、下限は0.03%であることが好ましく、0.04%であることがさらに好ましい。
[Si:0.05%以上0.5%以下]
Siは、一般に鋼の製造プロセスでは0.05%以上含有することにより脱酸元素として鋼中の酸素濃度を低減するために有効な元素の一つであり、鋼を強化する効果もある。また、強度を高める元素として非常に有用な元素である。しかし、Si含有量が0.5%を超えると縞状マルテンサイトが生成するようになりHAZ靱性を悪化させる。このため、Si含有量は0.05%以上0.5%以下と限定する。同様の観点から、Si含有量の下限は0.10%であることが好ましく、0.20%であることがさらに好ましい。
一方、Siは、Tiとの間に強い相互作用を有することから、構成元素でないにもかかわらずTiNの生成に影響する。そして、Nb炭窒化物はTiNを核として析出する可能性も高く、耐HIC性能の劣化を引き起こす恐れもある。そこで、Si含有量の上限は0.30%未満とすることが好ましい。
[Mn:1.10%以上1.60%以下]
Mnは、一般に鋼材の強度に大きな影響を与える元素であるが、Mn含有量が1.10%未満では十分な強度を得ることが困難である。また、Mn含有量が1.60%を超えると上述したように中心偏析部で濃化して耐HIC性能を劣化させる。このため、Mn含有量は1.10%以上1.60%以下とする。同様の観点から、Mn含有量の下限は1.20%であることが好ましく、1.30%であることがさらに好ましい。一方、中心偏析部での耐HIC性を確実に確保するためにはMn含有量の上限は1.50%であることが好ましく、1.40%であることがさらに好ましい。
[P:0.015%以下]
Pは、鋼中に不可避的に存在する不純物の一つであり、P含有量はできるだけ低い方が好ましい。Pは、凝固時の固液界面における分配係数が小さいため著しく偏析するため、上述したように中心偏析部で濃化して耐HIC性を劣化させる。そのため、P含有量は0.015%以下とする。Pの中心偏析部における耐HIC性の劣化を防止するためには、P含有量は0.008%未満とすることが好ましい。しかし、著しいPの低減には相応の製鋼コスト上昇を伴うので、P含有量は0.003%以上とすることが好ましい。
[S:0.0020%以下]
Sは、Pと同様に鋼中に不可避的に存在する不純物の一つであり、その含有量はできるだけ低い方が好ましい。Sも凝固時の固液界面における分配係数が小さいため著しく偏析するばかりでなく、上述したように偏析部ではMnSを生成してHICの発生起点となる。このため、S含有量は0.0020%以下とする。高強度鋼などより要求レベルの厳しい条件で安定して耐HIC性を確保するためにはS含有量の上限を0.0010%とすることが好ましい。しかし、著しいSの低減には相応の製鋼コスト上昇を伴うので、S含有量は0.0003%以上とすることが好ましい。
[Nb:0.010%以上0.050%以下]
Nbは、鋼中で炭窒化物を形成して鋼の強度を高めるとともに靱性の向上にも有効な元素であり、また、特にTMCPにおいて固溶及び析出を制御することにより鋼板のミクロ組織を制御するために、0.010%以上含有する。しかし、Nb含有量が0.050%を超えると、加熱時にも固溶せず組織制御ができなくなるとともに、Nb含有量が増加することはNb炭窒化物量が増加することであり、耐HIC性の低下を引き起こす可能性がある。このため、Nb含有量は0.010%以上0.050%以下とする。高強度鋼などにより要求レベルの厳しい条件で安定して耐HIC性を確保するためには、Nb含有量は0.010%以上0.040%以下とすることが好ましい。
[Ti:0.005%以上0.025%以下]
Tiは、鋼の強度を向上させるとともに、本発明の根幹をなすTiNの構成元素である。また、鋼中のNをTiNとして固定しNbNやAlNの析出量を減少することから連続鋳造鋳片の曲げ・矯正時のオーステナイト粒界へのNbNやAlNの動的析出に起因した鋳片表面割れを防止する効果もある。このような効果を得るためにTiは0.005%以上含有する。しかし、Ti含有量が0.025%を超えると溶接部の靭性の低下を招くだけでなく、Ti炭窒化物量の増加により耐HIC性が低下する可能性がある。このため、Ti含有量は0.005%以上0.025%以下とする。より好適には0.008%以上0.020%以下である。
[sol.Al:0.005%以上0.06%以下]
Alも脱酸元素として鋼中の酸素濃度を低減するために有効な元素の一つである。脱酸のために有効な含有量は0.005%以上である。sol.Al含有量が0.005%を下回ると、脱硫も不十分になるとともに、Ca添加の歩留まりが悪化しその効果も充分得られなくなり、鋼中の硫化物やSの偏析に起因してHICが発生する。しかし、sol.Al含有量が0.06%を超えると脱酸に伴い生成するアルミナがHICの原因となることがある。このため、sol.Al含有量は0.005%以上0.06%以下とする。同様の観点から、sol.Al含有量は0.005%以上0.04%以下とすることがより好ましい。
[Ca:0.0005%以上0.0060%以下]
耐HIC鋼ではCaはS濃度を低減させ、MnSの生成を防止するとともに、硫化物の形態制御を行うために、含有する。このため、Caは0.005%以上含有する。しかし、0.0060%を超えて含有してもその効果は飽和して製造コストが嵩むだけとなる。このため、Ca含有量は、0.0005%以上0.0060%以下とする。
[N:0.0015%以上0.007%以下]
Nは、転炉などの大気雰囲気で溶製する場合には鋼中に不可避的に浸入する元素である。本発明で着目している粗大Nb炭窒化物の構成元素である。Nb炭窒化物は、直接Nと優先的に結びつくことはないが、晶出したTiNを核として析出することが知られている。鋼材中ではAlやTiなどと窒化物を形成する元素であり、これらの窒化物は熱間加工の過程でピン留め粒子として結晶粒を微細化する効果を有することから鋼材の機械特性に影響を与えるとともに、ミクロ組織形成に影響を与える。このため、Nは0.0015%以上含有する。一方、N含有量が0.007%を超えると、上述したように、これらの窒化物が連続鋳造時にオーステナイト粒界に動的析出することにより鋳片表面割れの原因となる。このため、N含有量は、0.0015%以上0.007%以下とする。
[0.1%≦Cu+Ni+Cr+Mo≦1.5%]
耐HIC鋼では、MnSの発生およびC偏析の低減の理由でC、Mnの含有量の上限が定められる。このため、強度を確保するために、Cu、Ni、Cr、Mo等の合金元素を含有する。強度の向上効果を確実に得るためには、これら合金元素の含有量の総量は0.1%以上であることが有効である。しかしながら、これら合金元素の含有量が多過ぎると、焼き入れ性の上昇を伴い、強度上昇とともに一部組織の硬化を引き起こし、これにより、耐HIC性が劣化する。そこで、本発明では、これら合金元素の含有量の総量は1.5%以下とする。
これらの合金元素それぞれに含有量についても説明する。
Cuは、0.1%以上含有することにより鋼の焼き入れ性を向上させるが、Cu含有量が0.5%を超えると鋼材の熱間加工性や被削性が低下するとともに、連続鋳造時にはカッパー割れと称する表面割れを誘発する元素であることからCuを0.2%以上含有する場合にはその(1/3)以上の濃度のNiを併せて含有することが望ましい。以上の理由により、Cu含有量は0.1%以上0.5%以下であることが望ましい。
Niには、固溶強化によって鋼の強度を向上させるとともに、靱性を改善する効果もある。これらの効果を得るためには0.1%以上含有するが、1.0%を超えて含有してもその効果は頭打ちとなり、むしろ溶接性が悪化する。このため、Ni含有量は0.1%以上1.0%以下であることが望ましい。
Crには、鋼の強度、靱性を高め、特にX80クラスなど高強度のスペックが要求される場合に有効であるため、0.05%以上含有する。一方、炭素当量Ceq(=C+Mn/6+(Cr+Mo)/5+(Cu+Ni)15)を少量含有するだけで大幅に上昇させることからわかるように、少量含有することで強度上昇に大幅に寄与するとともに、0.5%を超えて含有すると溶接割れが発生する。そこで、Cr含有量は0.05%以上0.4%以下であることが望ましい。
さらに、Moは、鋼板の焼き入れ性を向上させ、強度上昇に寄与する。また、ミクロ偏析し難い元素であり、中心偏析に起因するHICの発生を抑制する効果がある。Mo含有の効果を得るためには0.02%以上含有する。しかし、Moは高価な元素でありコスト増加につながるばかりでなく、0.5%を超えて含有するとベイナイトやマルテンサイト相などの硬化相が生成してHICをむしろ悪化させることから、Mo含有量は0.5%以下とする。そこで、Mo含有量は0.02%以上0.5%以下であることが望ましい。耐HIC性能に及ぼす影響は、上述した他の3元素と比較して大きいため、Mo含有量は好ましくは0.3%以下である。
次に、任意元素について説明する。
[V:0.10%以下]
Vは、鋼中でフェライト中への固溶並びに炭窒化物を形成して鋼の強度を高めるために有効な元素である。しかし、V含有量が0.10%を超えると、溶接熱影響部での析出状況が変化して靱性に悪影響を与える。このため、Vを含有する場合にはその含有量は0.10%以下であることが望ましい。なお、Vによる上記効果を確実に奏するためには、V含有量は0.01%であることが望ましい。
上記以外は、Feおよび不純物である。
[板厚方向の中央部から板厚方向へ向けて板厚の5%の距離にある領域におけるNb濃度:0.060%以下、Ti濃度:0.025%以下]
本発明者らは、従来より耐HIC性能を阻害する主原因として考えられていた、MnSやC、Mn、Pを低減しても、耐HIC特性を十分に確保できない場合があることを知見し、鋭意検討を重ねた。その結果、従来のMnSやマクロ偏析などのHIC割れの原因の対策を十分に行っても、鋼中に残存するNbやTiの炭窒化物が基点となって割れが発生する場合があることが判明した。つまり、従来の知見に加えて、新たにNbとTiを低減することが耐HIC特性を向上させるために有効であることを知見した。
本発明者らは、鋼板の偏析度とHIC試験を行ってその相関関係を調査することにより、Nb、Tiに関しても鋼板における偏析度によりHIC発生の有無を判定できることを知見した。すなわち、偏析を制御することによりNbとTiの量を低減できる。
製造された鋼材から採取した試験片についてHIC試験を行った。その結果、割れ発生は全て板厚中央部において発生しており、このことから、中心偏析部がHIC発生の原因であることが示されている。
割れが発生した試験片について割れ発生部の詳細な調査を行った。割れの起点となった介在物は、SEM/EDSにより分析したところ、濃度は種々変化する場合があるものの、主にNbを含有しNb(C,N)と表記される炭窒化物(10体積%以下のTiを含む、以下「Nb炭窒化物」と略記する。)であることが判明した。
上述したように、Nb、Tiの量を低減させるには偏析のコントロールが必須である。本発明者らは、現状の成品の偏析度レベルを評価し、HIC発生有無との相関を調査するため、圧延された厚鋼板について中心偏析部の各元素の偏析度を調査した。
各元素の偏析度調査は、レーザーアイシーピー装置(以下「L−ICP装置」と略記する。)を用いて測定した。L−ICP装置は発光分析装置の一種であり、10mm長さの測定において約100点の測定、つまり100μm毎の測定が可能であるため、マクロ偏析を十分に評価することができる。偏析度は、その100点の各元素の測定データの平均値を鋼板の平均組成と定義し、最高点をその平均組成で除することにより、定義した。
レーザーのビーム径は約1mm程度あるため、1mm以下の介在物は、全て測定データの中に吸収されることとなる。通常介在物は数μm程度、大きいとされるものでも数10μm程度であり、本測定により十分に介在物を含んだ偏析度調査を行うことができる。
その結果、各元素の偏析度によりHIC発生の判定基準を、「板厚方向の中央部から板厚方向へ向けて板厚の5%の距離にある領域におけるNb濃度:0.060%以下、Ti濃度:0.025%以下」と定めることができた。
図1は、レーザーICP装置を用いたMn、P、S、Nb、Cの偏析度の調査結果を示すグラフである。図1のグラフにおける横軸は肉厚方向の測定位置であり、縦軸は各元素の測定結果である。縦軸は、元素によりレベル差が生じるが、この測定方法により平均組成および偏析度を算出することができる。なお、このレーザーICP装置を用いた方法以外にも、例えば化学分析等を用いて対象部位の元素を測定することによっても偏析のない部分との分析結果との比較により偏析度を求めることは可能である。
後述する表1の実施例、及び比較例8、9が示すとおり、「板厚方向の中央部から板厚方向へ向けて板厚の5%の距離にある領域におけるNb濃度:0.060%以下、Ti濃度:0.025%以下」を基準として、HIC発生を判定することができる。
本発明により得られたHIC発生有無の判定基準は、従来から知られている判定基準のみでは判定できない高強度鋼のHICについて、特に顕著な効果を発揮する。従来提案されているC、Mn、P、Sの低減とともに本発明に係るNb、Tiの偏析度の判定基準を併用すればHIC割れを効果的に防止できることは言うまでもない。
なお、成分および偏析度の制御のみならず、さらに他の要素をも制御することにより、よりいっそう効果的に、HIC割れの防止を図ることができるので、これら他の要素についても簡単に説明する。
製鋼では、酸化物制御としてIR(インジェクションリファイニング)の適用およびCaを添加することによる酸化物の形態制御が有効である。次工程である連続鋳造(以下「CC」と略記する。)では、鋳片の中心部が凝固する際に鋳片の凝固収縮量に相当する程度、あるいはやや上回る程度に勾配を設置することで、偏析の低減を図ることが有効である。一方で、鋳込み巾方向、鋳込み長さ方向で顕著な凝固不均一が発生しないように適正な水冷条件の採用および鋳込み速度の選択が有効である。
厚板においては、先ず1100℃以上1200℃以下での加熱を実施することが有効である。これにより、スラブ段階で発生したNbを固溶させてNb炭窒化物となることを防ぐことができる。次に、Nb量に伴って加熱温度や時間を調整することが有効である。また、圧延においては、Ar点以上で水冷を行うことが有効である。水冷停止温度を制限するのは、Ar点未満でフェライトが生成して炭素の排出が始まるため、組織中に炭素を多量に含むために硬化組織が形成され、上述したようにHIC性能が劣化するからである。
一方、水冷が有効であるのは、CやP等の元素の拡散をできるだけ低減し、CがNbと結びつくことを防止できるからである。温度の低下とともに各元素の拡散速度は低下するが、圧延後水冷せずに放冷すると、より高温にさらされる時間が長く、元素の拡散を助長する可能性がある。拡散した元素は、粒界や介在物に偏析する。
水冷速度は5℃/sec以上30℃/sec以下が望ましい。水冷速度が遅すぎると拡散を助長し、また水冷速度が高すぎると焼きが過度に入り、硬化組織を生じるからである。
この本発明に係る鋼板を素材として製造されるUOE鋼管は、TiやNbの粗大な炭窒化物に起因したHICを生じることがなくなる。
さらに、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
種々の鋼種を、厚さ300mm、幅2300mmの垂直曲げ型スラブ連続鋳造機を用いて0.7〜0.8m/minの鋳造速度で連続鋳造し、鋳片からサンプルを採取して中心偏析部の析出物を調査するとともに、圧延した後にさらに析出物を調査し、さらに引張試験およびHIC試験を行い、HIC割れ発生部を調査した。表1に鋳造した鋼種の組成を示す。なお、表1に示す元素以外の残部はFeおよび不純物である。
Figure 2011063840
一方このように連続鋳造したスラブを約1100〜1200℃に加熱し、熱間圧延を行い、仕上げ圧延温度が約750〜850℃となるような条件で10〜25mmの厚さの厚鋼板とした。圧延後には直ちに5〜30℃/secの冷却速度で水冷を行い約400〜550℃で冷却を停止し、その後空冷した。
この厚鋼板について引張試験を行うとともに、HIC試験としてNACE TM−02−84で規定されるNACE試験に供し、割れ面積率(CAR,%)を測定した。また、厚鋼板の中心偏析部について析出物の調査も行った。同時に板強度も測定し、巾方向板強度C−TS(MPa)は520MPa以上を合格とした。割れ面積率(CAR,%)は3%以下を合格とした。
表1の供試材No.1〜5は本発明の条件を全て満足する本発明例であり、供試材No.6〜15は本発明の条件の少なくとも一つを満足しない比較例である。
供試材No.1〜6は、3%以下の割れ面積率を有するとともに、C−TSも538MPa以上と、X60クラス(YP70ksiクラス)を満足する。
これに対し、供試材No.7は、Mn含有量が本発明の範囲の下限を満足しないため、C−TSが512と不芳である。
供試材No.8、9は、Nb絶対量およびTi絶対量がいずれも本発明の範囲の上限を満足しないため、割れ面積率が不芳である。
供試材No.10は、Ca含有量が本発明の範囲の下限を満足しないために硫化物の形態制御を十分に行うことができず、割れ面積率が不芳である。
供試材No.11は、P含有量が本発明の範囲の上限を満足しないために偏析発生および介在物の原因となり、割れ面積率が不芳である。
供試材No.12は、S含有量が本発明の範囲の上限を満足しないために偏析発生および介在物の原因となり、割れ面積率が不芳である。
供試材No.13は、C含有量が本発明の範囲の上限を満足しないために偏析発生の原因となり、割れ面積率が不芳である。
供試材No.14は、V含有量が本発明の範囲の上限を満足しないため、割れ面積率が不芳であるとともに、溶接部の靭性に非常に悪影響を及ぼすため、パイプとして使用不可である。
供試材No.15は、Nb含有量が本発明の範囲の上限を満足しないために偏析発生および介在物の原因となり、割れ面積率が不芳である。
さらに、供試材No.16は、Ti含有量が本発明の範囲の上限を満足しないために偏析発生および介在物の原因となり、割れ面積率が不芳である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.02%以上0.07%以下、Si:0.05%以上0.5%以下、Mn:1.10%以上1.60%以下、P:0.015%以下、S:0.0020%以下、Nb:0.010%以上0.050%以下、Ti:0.005%以上0.025%以下、sol.Al:0.005%以上0.06%以下、Ca:0.0005%以上0.0060%以下、N:0.0015%以上0.007%以下を含有し、かつ下記式(1)を満足し、残部Feおよび不純物からなり、板厚方向の中央部から板厚方向へ向けて板厚の5%の距離にある領域におけるNb濃度が0.060%以下であるとともにTi濃度が0.025%以下であることを特徴とする鋼板。
    0.1%≦Cu+Ni+Cr+Mo≦1.5% ・・・・・(1)
    ただし、式(1)における記号は各元素の含有量(質量%)である。
  2. さらに、V:0.10%以下を含有する請求項1に記載された鋼板。
  3. 請求項1または2に記載された鋼板を素材とすることを特徴とするUOE鋼管。
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