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JP2011005425A - 潤滑皮膜塗装アルミニウム材 - Google Patents

潤滑皮膜塗装アルミニウム材 Download PDF

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JP2011005425A JP2009151516A JP2009151516A JP2011005425A JP 2011005425 A JP2011005425 A JP 2011005425A JP 2009151516 A JP2009151516 A JP 2009151516A JP 2009151516 A JP2009151516 A JP 2009151516A JP 2011005425 A JP2011005425 A JP 2011005425A
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Takeshi Takada
高田健
Yuichi Tanaka
田中祐一
Masahiro Kurata
倉田正裕
Toshiaki Kobayashi
小林敏明
Tomohisa Miyajima
宮島知久
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Furukawa Sky Aluminum Corp
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Nippon Steel Corp
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Abstract

【課題】成形加工性や成形後溶接性に優れ、工程を増やすことなく成形後の塗装に対しても高い塗膜密着性を有する耐食性に優れた潤滑皮膜塗装アルミニウム材を提供する。
【解決手段】アルミニウム基板と、アルミニウム基板の少なくとも一方の面に形成され、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂、水溶性ジルコニウム化合物及び潤滑剤を含む潤滑皮膜とを備え、水溶性ジルコニウム化合物が潤滑皮膜中に金属ジルコニウム換算で1〜50mg/m含有され、潤滑剤が0.1〜30μmの平均粒径を有し、かつ、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂100重量部に対して1〜30重量部含有され、アルカリ処理後のアルミニウム基板表面において、FT−IRスペクトルの1700cm−1台に現れるピークの最大吸収率が1%以下で、金属ジルコニウム換算で0.5mg/m以上のジルコニウム化合物層が残存する潤滑皮膜塗装アルミニウム材。
【選択図】なし

Description

本発明は、プレス成形性、脱膜性及び脱膜後の耐食性に優れ、飲料容器、電気電子機器部材、自動車用ボディシート材や建材等で使用される成形加工用の潤滑皮膜塗装アルミニウム材に関する。
アルミニウム板又はアルミニウム合金板(以下、「アルミニウム基板」という)は耐食性及び意匠性に優れ、且つ軽量で加工性にも優れるといった種々の特徴から、飲料容器、電気部品、輸送機体構成材料等々幅広い分野で使用されている。特に最近は温室効果ガスの排出規制が厳しさを増していることから、輸送機体分野において軽量化を目的としたアルミニウム板の採用が増えている。
アルミニウム基板を上記用途に適用するに当たっては、通常、プレス加工によって成形される。厳しい加工条件の場合には表面摩擦抵抗が大きくなると共に変形抵抗が増大し、過大な変形抵抗が加わる部分で強度不足となって加工割れが生じてしまう。そこで、こうした加工割れを防止する目的で、高粘性の潤滑剤を塗付してプレス成形を行う方法が採用されている。このようなプレス成形品に対しては耐食性等の付与を目的として塗装が為されるが、塗装する前にプレス加工時に塗付された潤滑剤が付着したままでは処理性が劣るためこれを除去する必要がある。潤滑剤の除去方法としては有機溶剤やアルカリ処理等による脱脂が行われているが、有機溶剤を用いた脱脂は作業者の健康に悪影響をもたらすだけでなく、その多くが環境負荷物質でありこの方法は極力避けたい。一方で高粘性の潤滑剤はアルカリ処理において完全に除去することが困難で、残存した潤滑剤がその後の塗装等の処理に悪影響をもたらすことがあった。
高粘性の潤滑剤を使用しないプレス成形法としては、アルミニウム基板に非脱膜型潤滑皮膜を設けてプレス成形する方法が開発されている。しかしながら、プレス成形後も潤滑皮膜が金属面に残存するため、加工後の溶接、塗装等の処理を経る用途に対しては適用が困難であった。この問題の解決策として特許文献1及び2には、プレス成形後にアルカリ処理によって潤滑皮膜を容易に除去できる脱膜型の潤滑皮膜が提案されている。しかしながら、このアルカリ脱膜型潤滑皮膜を最終的に塗装が為される製品に適用した場合、潤滑皮膜を脱膜した表面には、アルカリ処理後に施される塗膜との密着性を高める層が存在せず密着性及び耐食性に問題が生じることがあった。この場合、潤滑皮膜を設ける前にアルミニウム基板の表面に化成皮膜等の下地処理を施すことで密着性及び耐食性を高めているが、工程数の増加や設備敷設にスペースを要することになり、また多大なコストが掛かるといったデメリットがあった。
特開2003−27256号公報 特開2007−98582号公報
本発明はこれらの問題点を解決して、成形加工性や成形後溶接性に優れるとともに、工程を増やすことなく成形後の塗装に対しても高い塗膜密着性を有することで耐食性に優れる潤滑塗装アルミニウム材を提供することを目的とする。
本発明は、アルミニウム基板にアルカリ脱膜型ウレタン樹脂、水溶性ジルコニウム化合物及び潤滑剤を必須成分とする水性塗料を塗布しこれを乾燥することで、アルミニウム基板表面に潤滑皮膜を形成させるものである。水溶性ジルコニウム化合物は、アルミニウム及びアルカリ脱膜型ウレタン樹脂のカルボキシル基と化学結合を形成する。ここで、アルミニウムとの反応の方がウレタン樹脂との反応より速く、アルミニウム基板表面はジルコニウム化合物によって優先的に占有される。アルカリ脱膜型ウレタン樹脂、この樹脂と結合したジルコニウム化合物及び潤滑剤は、塗装アルミニウム材をアルカリ処理した際にアルミニウム基板上から除去される。しかしながら、アルミニウム基板と結合した一部のジルコニウム化合物は、アルカリ処理後も基板上に層として残存する。残存するジルコニウム化合物層は非常に薄く、塗装アルミニウム材のスポット溶接や電着塗装に対して悪影響をもたらさないとともに、この層の上に形成される塗膜に対して高い密着性を発揮して優れた耐食性を示す。
このように、本発明者らは、潤滑皮膜形成時において、アルカリ溶液に溶解しないジルコニウム化合物層が形成されることで、アルカリ処理後に設けられる塗膜との密着性を改善でき、耐食性を向上できることを見出した。なお、アルカリ脱膜型樹脂としてはアクリル系樹脂なども適用はできるが、深絞り加工やしごき加工などの厳しい成形条件下においてはかじりが発生するなど十分な成形性を得られない場合があり、ウレタン系樹脂が適している。
本発明は請求項1において、アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなるアルミニウム基板と、当該アルミニウム基板の少なくとも一方の面に形成され0.05〜10μmの乾燥皮膜厚を有する潤滑皮膜であって、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂、水溶性ジルコニウム化合物及び潤滑剤を含み、前記アルカリ脱膜型ウレタン樹脂が親水性基を含有し当該親水性基による酸価が25mg−KOH/g以上である潤滑皮膜とを備え、前記アルミニウム基板表面に100Å以下の厚さを有する酸化皮膜が存在し、前記水溶性ジルコニウム化合物が潤滑皮膜中に金属ジルコニウム換算で1〜50mg/m含有され、前記潤滑剤が0.1〜30μmの平均粒径を有し、かつ、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂100重量部に対して1〜30重量部含有され、アルカリ処理によって前記潤滑皮膜中のアルカリ脱膜型ウレタン樹脂及び潤滑剤を除去した際に、前記アルミニウム基板表面において、FT−IRスペクトルの1700cm−1台に現れるピークの最大吸収率が1%以下で、且つ、金属ジルコニウム換算で0.5mg/m以上のジルコニウム化合物層が残存することを特徴とする潤滑皮膜塗装アルミニウム材とした。
本発明は請求項2において、前記水溶性ジルコニウム化合物を炭酸ジルコニウムのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩とした。
本発明は請求項3において、前記潤滑剤をポリオレフィン系ワックス及びフッ素樹脂の少なくとも一方を含有するものとした。
本発明により、成形加工性や成形後溶接性に優れ、工程を増やすことなく成形後の塗装に対しても高い塗膜密着性を有し、これにより耐食性に優れた潤滑皮膜塗装アルミニウム材を提供できる。
以下、本発明を各要素に分けて詳述する。
A.潤滑皮膜塗装アルミニウム材
本発明に係る潤滑皮膜塗装アルミニウム材は、アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなるアルミニウム基板と、このアルミニウム基板の少なくとも一方の面に塗装した潤滑皮膜を備える。
B.アルミニウム基板
本発明に用いるアルミニウム基板には、純アルミニウム板、ならびに、鉄、銅、マンガン、珪素、マグネシウム、亜鉛、クロム、ニッケル等を1種又は2種以上含有するアルミニウム合金板を用いることができる。アルミニウム合金板としては、例えばJIS1050、1100、1085、1200、2002、2037、3003、5052、5082、5182、6009、6010、6015、6022、7072、7075等がある。アルミニウム基板の厚さは特に限定されるものではないが、0.1〜5.0mmのものが好適に用いられる。
本発明を適用するに当たっては、製造工程においてアルミニウム基板の表面に付着した油分は潤滑皮膜の形成に悪影響を及ぼす虞があることから、これらを除去する目的でアルカリ性水溶液及び/又は酸性水溶液による脱脂を行うことが好ましい。また、アルミニウム基板表面に存在する酸化皮膜が厚い場合には、例えば接着剤を介して本発明の潤滑皮膜アルミニウム塗装材を他の部品に接着する際において、酸化皮膜が凝集破壊することで接着強度が損なわれる。そこで、酸化皮膜の厚さは100Å以下とする。酸化皮膜を除去する方法としては、アルカリ性水溶液及び/又は酸性水溶液を用いた洗浄が挙げられる。
これらの脱脂や洗浄には、通常のアルミニウム処理法として行われる方法でよく、市販の処理液を使用することも可能である。アルカリ性水溶液としては水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等、酸性水溶液としては硫酸、硝酸、リン酸、フッ酸、硝酸とフッ酸の混合液等を用いることが出来る。
C.潤滑皮膜
本発明に用いる潤滑皮膜は、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂、水溶性ジルコニウム化合物及び潤滑剤を必須成分とし、これらを含有する水性塗料をアルミニウム基板に塗布、乾燥することで得られる。潤滑皮膜の膜厚は、乾燥膜厚で0.05〜10μmの範囲である。0.05μm未満では皮膜が薄すぎるために成形時にかじりが生じ、成形性を満足することができない。また、10μmを超える場合には乾燥後の皮膜から剥離粉が発生し、金型のメンテナンス頻度の増加や作業環境の悪化が危惧される。
C−1.アルカリ脱膜型ウレタン樹脂
本発明における潤滑皮膜に含有されるアルカリ脱膜型ウレタン樹脂は、(i)1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物と、(ii)1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有するポリオール系化合物と、(iii)分子内に少なくとも1個の活性水素基を有し、且つ、カルボキシル基、スルホン酸基等の親水性基を含有する化合物との共重合体である。(iii)については、水溶性ジルコニウム化合物との反応性の点から、親水性基としてはカルボキシル基を含有することが好ましい。
上記(i)の1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を含有する化合物としては、例えば2,4−又は2,6−トリエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4´−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,3又は1,4−キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートヘキサン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートヘキサン等のトリイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート基を有するこれらの化合物が使用されるが、十分な加工性を達成するには芳香族、芳香脂肪族、もしくは脂環族イソシアネート化合物が好ましい。
上記(ii)の1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有するポリオール系化合物では、活性水素基がアミノ基、水酸基、メルカプト基である化合物が挙げられる。ここで、イソシアネート基との反応速度、及び塗布後の機械的物性の観点から活性水素基が水酸基である化合物が好ましい。活性水素基が水酸基である化合物としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類を反応させて得られるポリエステルポリオール;水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等のポリオールを開始剤としてエチレンオキシド等のオキシラン化合物を重合させることによって得られるポリエーテルポリオール;テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸と上記ポリエーテルポリオールとを反応させて得られるポリエーテルエステルポリオール;テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸とエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン及び上記ポリエーテルポリオールとを反応させて得られるポリエステルアミドポリオール;アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル等あるいはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等の1分子中1個以上の水酸基を有する重合性モノマーとアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合させることによって得られるアクリルポリオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール−Aからなる群から選ばれる1種又は2種以上のグリコール類とジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ホスゲン等とを反応させることにより得られるポリカーボネートポリオール;イソプレン、ブタジエン又はブタジエンとアクリルアミド等を共重合させて得られるポリヒドロキシアルカン;ひまし油;ポリウレタンポリオール、又はそれらの混合物が挙げられる。良好なアルカリ脱膜性を達成するにはポリエステルポリオール、及びポリエステルポリオールで構成されるポリウレタンポリオールが好ましい。前記各種の活性水素基を有する化合物が使用されるが、良好なアルカリ可溶性を達成するにはポリエステルポリオール、及びポリエステルポリオールで構成されるポリウレタンポリオールが好ましい。また、特に室温のような低い温度でのアルカリ可溶性を達成するためには、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の脂肪族二塩基酸もしくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、エチレングリコールを反応させて得られるポリエステルポリオールが好ましい。
上記(iii)の分子内に少なくとも1個の活性水素基を有し、且つ、カルボキシル基、スルホン酸基等の親水性基を含有する化合物としては、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボキシル基含有化合物もしくはこれらの誘導体;又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール;フェノールスルホン酸等のスルホン酸基含有化合物もしくはこれらの誘導体;又はこれらを共重合して得られるポリオール;等が挙げられ、共重合の際にはこれらの親水性基含有化合物を単独、若しくは2種類以上組み合わせて使用する。
ウレタンポリマーの合成に際しては高分子量化を目的として、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3´−ジメチル−4,4´−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン類;ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアミノ基と水酸基を持つ化合物、ヒドラジン類、酸ヒドラジド類;といった鎖延長剤や、メチルアルコール等のアルコール類;ブチルセロソルブ等のエーテル類;ブチルセロソルブアセテート等のグリコールエーテルエステル類;といった造膜助剤を目的に応じて添加してもよい。
以上はアルカリ脱膜型ウレタン樹脂原料の例であり、アルカリ脱膜型であればウレタン樹脂の原料、及び製造方法は特に限定されるものではない。
潤滑皮膜は水性塗料の塗装によって形成されるが、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂を水溶液中に良好に溶解又は分散するには、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂に含まれるカルボキシル基やスルホン基等の親水基を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、n−プロピルアミン等で中和する必要がある。このような中和剤を用いることによって、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂のアルカリ可溶性が達成できる。本発明で用いる中和剤としては水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが含まれていることが好ましい。
アルカリ脱膜型ウレタン樹脂は、カルボキシル基、スルホン酸基等の親水性基を含有するが、これら親水性基による酸価を25mg−KOH/g以上とする。この酸化が25mg−KOH/g未満では、酸化が少な過ぎてアルカリ成分による良好なアルカリ脱膜性が得られない。酸価は、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂を構成する上記(iii)の化合物、すなわち、分子内に少なくとも1個の活性水素基を有し、且つ、カルボキシル基、スルホン酸基等の親水性基を含有する化合物の共重合体における割合を調整することによって変化させることができる。なお、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂の他にも潤滑皮膜の性能を劣化させない範囲でアルカリ脱膜型のアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等を加えてもよい。アルカリ脱膜型ウレタン樹脂はホモジナイザー、ミキサー等を用いて水中に溶解又は分散させることで水性塗料とする。
C−2.水溶性ジルコニウム化合物
本発明に用いる潤滑皮膜に含有される水溶性ジルコニウム化合物は、上記水性塗料に添加される。この水溶性ジルコニウム化合物は、アルミニウム及びウレタン樹脂の官能基と反応するもので、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム;これらのアンモニウム塩;これらのアルカリ金属塩;が好適に用いられる。前記水性塗料に対する安定性や環境負荷の観点から、炭酸ジルコニウムのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩が特に好適に用いられる。
水溶性ジルコニウム化合物は、潤滑皮膜中に金属ジルコニウム換算で1〜50mg/mと以上なる量で含有される。金属ジルコニウム換算で1mg/m未満では潤滑皮膜のアルミニウム基板への密着力が弱く、加工後に十分な耐食性が得られない。一方、金属ジルコニウム換算で50mg/mを超える場合には潤滑皮膜が脆くなり、成形性の低下を招いたり、潤滑皮膜を設けた状態で接着剤を用いて接合を行った際に潤滑皮膜が凝集破壊し易くなることで接着強度が低下するといった問題が生じる。
また、潤滑皮膜塗装アルミニウム板をアルカリ処理した際に基板上に残存するジルコニウム化合物は、金属ジルコニウム換算で0.5mg/m以上とする。0.5mg/m未満ではアルカリ処理後に施される塗装においてアルミニウム基板に対する潤滑皮膜の十分な密着性を確保できない。
C−3.潤滑剤
本発明で潤滑皮膜中に添加する潤滑剤としては、0.1〜30μmの平均粒径を有するものが用いられる。潤滑剤の種類は、ポリオレフィン系ワックス及びフッ素樹脂の少なくとも一方が好適に用いられる。ポリオレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、変性ポリエチレン等、又はこれらの混合物が挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロポリプレン、ポリフッ化ビニリデン等、又はこれらの混合物が挙げられる。ポリオレフィン系ワックス及びフッ素樹脂の何れも、水中に安定して分散するものが用いられる。この他にもマイクロクリスタリン、ラノリン、カルナバ、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール等、樹脂と相溶しない潤滑性物質を潤滑皮膜の性能を劣化させない範囲でポリオレフィン系ワックスやフッ素樹脂と一緒に添加することができる。
潤滑剤の平均粒径が0.1μm未満では、十分な摩擦係数の低減が図れず成形性を満足できない。また、平均粒径が30μmを超えると、潤滑皮膜からの脱離が多くなる。潤滑剤の添加量は、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂を100重量部とした場合に1〜30重量部である。1重量部未満では十分な成形性が得られず、30重量部を超えると潤滑皮膜の強度低下、接着性の低下及び潤滑剤の脱離が生じる。
本発明に用いる潤滑皮膜を形成させる水性の塗料には、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂、水溶性ジルコニウム化合物及び潤滑剤の他に、シリカ、金属酸化物、導電性添加剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、乾燥剤、安定剤、皮張り防止剤、かび防止剤、防腐剤、凍結防止剤等を皮膜性能の低下を生じさせない範囲内で目的に応じ添加することができる。塗料の溶媒は水を主体とするが、塗装性改善等を目的として、必要に応じてアルコール、ケトン、セロソルブ系の水溶性有機溶剤を潤滑皮膜の性能を損なわない範囲で加えてもよい。
本発明に用いる潤滑皮膜をアルミニウム基板表面に形成する方法としては、ロールコーター法、スプレー法、刷毛塗り法、バーコーター法等の従来から公知である方法を利用できる。塗装する際の水性塗料中の各成分の配合比及び濃度は、形成される皮膜の皮膜厚及び組成が上記範囲内となるように、粘度や濡れ性等の条件との兼ね合いから適宜調節すればよい。塗装した潤滑皮膜の乾燥は、室温〜250℃の雰囲気下で1秒〜10分程度保持すればよい。好ましくは5秒〜5分である。乾燥炉としては熱風乾燥炉、誘導加熱炉、赤外線炉等が利用できる。
乾燥させた潤滑皮膜中のアルカリ脱膜型ウレタン樹脂及び潤滑剤を除去して脱膜するには、プレス成形した潤滑塗装アルミニウム材をアルカリ処理する。アルカリ処理としては、アルカリ溶液による接触が好適に用いられる。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのpH8以上の水溶液が好適に用いられる。効率は劣るがアルカリ成分を含有しない温水と接触させた場合にも脱膜することができる。アルカリ溶液としては、市販のアルカリ処理剤を用いてもよい。アルカリ溶液の温度は室温〜80℃であることが好ましい。また、アルカリ溶液との接触時間は5秒〜5分が好ましい。
アルカリ脱膜型ウレタン樹脂、水溶性ジルコニウム化合物及び潤滑剤を必須成分とする水性塗料をアルミニウム基板表面に塗布して乾燥すると、初めに水溶性ジルコニウム化合物のジルコニウム原子がアルミニウム原子と酸素を介して結合し、アルミニウム基板と強固に結合したジルコニウム化合物の層が形成される。次いで、このジルコニウム化合物はウレタン樹脂の官能基と化学的に結合することで、アルミニウム基板とジルコニウム化合物とウレタン樹脂とが強固に一体的に結合した潤滑皮膜が形成される。
このようにして得られる潤滑皮膜塗装アルミニウム材をアルカリ処理すると、アルミニウム基板と結合したジルコニウム化合物だけが基板上に残存し、ウレタン樹脂、ウレタン樹脂とのみ反応したジルコニウム化合物、ならびに、潤滑剤は除去される。絶縁性の高いウレタン樹脂及び潤滑剤が除去されることで、アルカリ処理後のアルミニウム材にはスポット溶接や電着塗装を問題なく行うことができる。また、機構の詳細は不明であるが、アルミニウム基板上に残存したジルコニウム化合物はアルカリ処理後に形成される塗膜に対して優れた密着性を示す。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本実施例は一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
実施例1〜20及び比較例1〜11
アルミニウム基板として厚さ1.0mmのJIS5082アルミニウム合金板を用い、550℃で加熱することでO材とした。このアルミニウム基板に対し、潤滑皮膜を塗装する前処理として、後述のA1〜A3の洗浄を行い又は行わずに供試材とした(比較例1では、このような洗浄を行わなかった)。また、酸価の異なるアルカリ脱膜型ウレタン樹脂のエマルジョンに水溶性ジルコニウム化合物の水溶液及び潤滑剤を添加して表1に記載の水性塗料を調製した。この水性塗料を供試材の両面に塗装した後、200℃の雰囲気下で40秒間保持して乾燥することにより、潤滑皮膜塗装アルミニウム材の試料を作製した。更に、作製した潤滑皮膜塗装アルミニウム材の試料を、市販のアルカリ脱脂剤(水酸化ナトリウム系)に炭酸ガスを吹き込むことでpH9に調整した40℃の劣化脱脂液に2分間浸漬し、その後水洗処理することによってアルカリ処理した。これによって、潤滑皮膜からアルカリ脱膜型樹脂と潤滑剤を除去して脱膜した。
アルカリ脱膜型ウレタン樹脂としては、(i)1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物である1,3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルと、(ii)1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有するポリオール系化合物であるトリエチレングリコール(ii―1)、及びアジピン酸とエチレングリコールからなる分子量2000のポリエステルポリオール(ii―2)と、(iii)分子内に少なくとも1個の活性水素基を有し、且つ、カルボキシル基、スルホン酸基等の親水性基を含有する化合物であるジメチロールプロピオン酸との共重合体を用いた。得られた共重合体において酸価が15mg−KOH/gのものの(i)〜(iii)の各化合物の重量比は、(i):(ii−1):(ii−2):(iii)=25:5:66:4であった。酸価が28mg−KOH/gのものでは、(i):(ii−1):(ii−2):(iii)=32:4:57:7であった。酸価が70mg−KOH/gのものでは、(i):(ii−1):(ii−2):(iii)=54:2:26:18であった。上記ウレタン樹脂の樹脂固形分100重量部に対して200重量部の2%NaOH水溶液及び11%の2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール水溶液をウレタン樹脂の樹脂固形分100重量部に対して50重量部添加しウレタンエマルジョンを得た。
また、比較例11では、樹脂としてアルカリ脱膜型アクリル樹脂を用いた。
水溶性ジルコニウム化合物としては、表1に示す炭酸ジルコニウム塩を用いた。アルカリ脱膜型ウレタン樹脂の100重量部に対して、炭酸ジルコニウム塩を金属ジルコニウム換算で表1に記載の重量部で添加した。なお、炭酸ジルコニウム塩は、13重量%水溶液として塗料に添加した(ウレタン樹脂に対する重量部は、金属ジルコニウム換算値でありその水溶液としての重量部ではない)。また、潤滑剤としては、表1に示すものを用いた。表1における潤滑剤の添加量は、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂の100重量部に対する重量部である。上記の各ウレタンエマルジョンに炭酸ジルコニウム塩及び潤滑剤を表1に記載の割合で添加し、水性塗料とした。
Figure 2011005425
アルミニウム基板の洗浄方法を以下に記す。
A1:40℃市販のアルカリ脱脂剤(水酸化ナトリウム系)に10秒間浸漬+40℃、
10%硝酸水溶液中に10秒間浸漬
A2:40℃、5%水酸化ナトリウム水溶液中に10秒間浸漬
A3:40℃、10%硝酸水溶液中に10秒間浸漬
アルミニウム基板の上記洗浄方法及び酸化皮膜厚;潤滑皮膜の成分、皮膜厚、酸価、Zr換算量、潤滑剤粒径及び潤滑剤添加量;脱膜前の潤滑皮膜性能である皮膜安定性、接着性、成型形及び加工部耐食性、脱膜性としてのIR最大吸収率(1700cm−1台に現れる)及び残存Zr換算量、脱膜後の潤滑皮膜性能である電着塗装性及び耐食性を表1に示す。これらの測定方法、評価方法は下記の通りである。
(1)酸価
共重合体1gを、トルエン/アセトン/メタノール混合溶剤(75:12.5:12.5)100mlに溶解し、1/10Nの水酸化カリウム/メタノール溶液で滴定し、下記式から酸価を算出した。
酸価=5.61×(滴下量[mg])×(滴下液の力価)/(サンプル重量[g])
(2)潤滑皮膜のZr換算量
潤滑皮膜のZr換算量は、蛍光X線測定(リガク社、RIX−1000型蛍光X線測定装置)により測定した。
(3)皮膜安定性
潤滑皮膜塗装アルミニウム材試料の潤滑皮膜にセロハンテープを貼り付け、剥がしたセロハンテープへの剥離粉付着の有無を目視で評価した。
○ :剥離粉の付着無し
× :剥離粉付着
○を合格とし、×を不合格とした。
(4)接着性
潤滑皮膜塗装アルミニウム材試料を25mm×150mmに切断し、市販の潤滑油(油研工業製RP−75N)を浸漬塗油後1日室温で放置した。その後、構造用接着剤(サンスター製#1086)で接着面積25mm×10mm、接着剤厚さ0.2mm、180℃×20分の加熱処理を施して接着試験片を作製した。この接着試験片を40℃の純水中に30日間浸漬させた後、せん断剥離強度を測定した。
○ :せん断剥離強度≧16MPa
△ :16MPa>せん断剥離強度≧14MPa
× :せん断剥離強度<14MPa
○を合格とし、△と×を不合格とした。
(5)成形性(絞り性)
潤滑皮膜塗装アルミニウム材試料を円形に打ち抜いてブランクとし、ブランクの径を変えてポンチ径φ50mm、肩R5mmの金型にて、しわ抑え圧600N、成形速度5mm/sで深絞り成形を行い、限界絞り比(LDR=最大ブランク径/ポンチ径)を求めた。
○ :LDR≧2.05
△ :2.05>LDR≧2.00
× :LDR<2.00
○を合格とし、△と×を不合格とした。
(6)加工部耐食性
100mm×50mmに切断した潤滑皮膜塗装アルミニウム材試料を試験片とし、これをエリクセン試験機で6mm押し出し加工した後、試験片のエッジ及び裏面を粘着テープでシールし、5%の塩水を120時間噴霧して発錆の有無を目視で観察した。
○ :発錆無し
× :発錆有り
○を合格とし、×を不合格とした。
(7)脱膜性
アルカリ処理後の潤滑皮膜塗装アルミニウム材試料をフーリエ変換赤外分光分析装置で高感度反射法により赤外吸収スペクトルを測定し、カルボキシル基の吸収ピークが現れる1700cm−1台の最大吸収率を求めることでウレタン樹脂の脱膜性を評価した。また、脱膜後の潤滑皮膜塗装アルミニウム材試料のアルミニウム基板表面に残存したジルコニウム化合物量を蛍光X線分析により測定し金属ジルコニウム換算として求めた。
・IR吸収率(1700cm−1台に現れる)について
○ :吸収率≦0.5%
△ :0.5%<吸収率≦1%
× :吸収率>1%
○と△を合格とし、×を不合格とした。
・Zr残存量について
○ :残存量≧0.5mg/m
× :残存量<0.5mg/m
○と合格とし、×を不合格とした。
IR吸収率及びZr残存量の両方が合格の場合に脱膜性を合格(○)とし、IR吸収率及びZr残存量の一方又は両方が不合格の場合には脱膜性を不合格(×)とした。
(8)電着塗装性
潤滑皮膜塗装アルミニウム材試料を150mm×70mmに切断し、この試験片に対して上記アルカリ処理を行った後、サクセードS#30S(デュポン神東製)を用いた電着塗装処理を行った。処理条件は200V×3分で、電着後150℃×20分の焼付けを行った。この電着塗装後試験片の外観を観察し、塗装抜け又はムラの有無を目視で評価した。
○ :塗装抜け及びムラ無し
× :塗装抜け又はムラ有り
○を合格とし、×を不合格とした。
(9)耐食性
上記(8)の電着塗装を行った試験片にカッターナイフで120mmの傷を2本、交差するように入れた。この試験片をSST24時間試験後の恒温恒湿槽(40℃・70%RH)中での10日間保管を1サイクルとする腐食加速操作を4サイクル実施し、発生した最大腐食長さを測定した。
○ :最大腐食長さ<1.5mm
△ :1.5mm≧最大腐食長さ>2.0mm
× :最大腐食長さ≧2.0mm
○を合格とし、△と×を不合格とした。
実施例1〜20では、潤滑皮膜の酸価及び乾燥皮膜厚、脱膜後におけるIR最大吸収率(1700cm−1台に現れる)及び残存Zr換算量が本発明範囲内であるので、脱膜前の潤滑皮膜性能、脱膜性及び脱膜後の潤滑皮膜性能のいずれもが合格であった。
比較例1では、酸化皮膜を除去するための洗浄を行わなかったため、アルミニウム基板上の酸化皮膜が厚過ぎて凝集破壊が起こり、潤滑皮膜のアルミニウム基板に対する接着性が劣った。
比較例2では、潤滑皮膜が薄過ぎたため、潤滑皮膜塗装アルミニウム材の十分な成形性が得られなかった。
比較例3では、潤滑皮膜が厚過ぎたため潤滑皮膜にクラックが生じ、潤滑皮膜の脱落が著しく皮膜安定性及び接着性に劣った。また、脱膜性(IR最大吸収率)が十分ではないため、電着塗装性及び耐食性に劣った。
比較例4では、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂の酸価が低いためにアルカリ処理時の脱膜性(IR最大吸収率)が十分ではなかった。その結果、潤滑皮膜の残存のために脱膜後の電着塗膜にムラが生じ、電着塗装性及び耐食性に劣った。
比較例5では、潤滑皮膜中のジルコニウム化合物含有量が少なく、そのために加工部耐食性に劣った。脱膜後のアルミニウム基板表面におけるジルコニウム化合物の残存量も少な過ぎたため、脱膜性が十分でなく、耐食性にも劣った。
比較例6では、潤滑皮膜中の水溶性ジルコニウム化合物量が多過ぎたために、潤滑皮膜が脆くなり、皮膜安定性、接着性、成形性に劣った。
比較例7では、潤滑剤の粒径が小さ過ぎたために十分な成形性を得られない。
比較例8では、潤滑剤の粒径が大き過ぎたために潤滑皮膜からの脱落が著しく、皮膜安定性、接着性及び成形性に劣った。
比較例9では、潤滑剤の添加量が少な過ぎたために十分な成形性が得られなかった。
比較例10では、潤滑剤の添加量が多過ぎたために潤滑皮膜の強度が低下し、皮膜安定性、接着性及び成形性に劣った。
比較例11では、前記アルカリ脱膜型樹脂にアクリル樹脂を用いたため、潤滑皮膜の成形性が十分でなかった。
本発明による潤滑皮膜塗装アルミニウム材は、成形時に高い成形性を示す。更に、成形後のアルカリ処理でウレタン樹脂及び潤滑剤が脱膜除去されることによって、成形後の溶接性や塗装等に問題を生じず、アルカリ処理後の塗装においても塗膜との高い密着性を維持できる。その結果、耐食性に優れることから高成形性と製品の美観を必要とする様々な用途に好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなるアルミニウム基板と、当該アルミニウム基板の少なくとも一方の面に形成され0.05〜10μmの乾燥皮膜厚を有する潤滑皮膜であって、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂、水溶性ジルコニウム化合物及び潤滑剤を含み、前記アルカリ脱膜型ウレタン樹脂が親水性基を含有し当該親水性基による酸価が25mg−KOH/g以上である潤滑皮膜とを備え、前記アルミニウム基板表面に100Å以下の厚さを有する酸化皮膜が存在し、前記水溶性ジルコニウム化合物が潤滑皮膜中に金属ジルコニウム換算で1〜50mg/m含有され、前記潤滑剤が0.1〜30μmの平均粒径を有し、かつ、アルカリ脱膜型ウレタン樹脂100重量部に対して1〜30重量部含有され、アルカリ処理によって前記潤滑皮膜中のアルカリ脱膜型ウレタン樹脂及び潤滑剤を除去した際に、前記アルミニウム基板表面において、FT−IRスペクトルの1700cm−1台に現れるピークの最大吸収率が1%以下で、且つ、金属ジルコニウム換算で0.5mg/m以上のジルコニウム化合物層が残存することを特徴とする潤滑皮膜塗装アルミニウム材。
  2. 前記水溶性ジルコニウム化合物が炭酸ジルコニウムのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩である、請求項1に記載の潤滑皮膜塗装アルミニウム材。
  3. 上記潤滑剤がポリオレフィン系ワックス及びフッ素樹脂の少なくとも一方を含有する、請求項1又は2に記載の潤滑皮膜塗装アルミニウム材。
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