[第1実施形態]
本発明の第1実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法について図1及び図2を用いて説明する。
図1及び図2は本実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を示す工程断面図である。
まず、基板10上に、例えばスパッタ法により、チタン(Ti)を堆積し、例えば膜厚1nmのチタン膜よりなる下地層12aを形成する(図1(a))。
基板10は、用途に応じて任意に選択することができ、特に限定されるものではないが、シリコン基板などの半導体基板、アルミナ(サファイア)基板、MgO基板、ガラス基板などを用いることができる。また、これら基板上に薄膜が形成されたものでもよい。例えば、シリコン基板上にシリコン酸化膜などの絶縁膜が形成されたものを用いることができる。
下地層12aは、後述する触媒金属微粒子14a,18aを堆積する際の下地として機能するものである。下地層としては、チタン、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)若しくは銅(Cu)、又はこれらの窒化物や酸化物を適用することができる。
次いで、下地層12aが形成された基板10を、成長装置の成長室内に搬入する。なお、成長装置としては、後述の第6乃至第10実施形態に記載の成長装置を適用することができる。なお、下地層12aの形成を同じ成長装置内で行い、以後の工程を同一装置内で連続して行ってもよい。
次いで、下地層12a上に、コバルト(Co)よりなり、平均粒子径が例えば4nm程度の触媒金属微粒子14aを、例えばレーザーアブレーション法、スパッタ法、真空蒸着法、エアロゾル法、アークプラズマガン法等により、下地層12aの表面に対する被覆率が例えば50%程度となるように堆積する(図1(b))。この際、触媒金属微粒子14aの粒子径は、成長しようとするカーボンナノチューブの直径(太さ)に応じて適宜設定することができる。また、下地層12aの表面に対する触媒金属微粒子14aによる被覆率は、後述するカーボン被膜を形成する際の熱処理過程で触媒金属微粒子14a同士が凝集しないように、触媒金属微粒子14aの構成材料や熱処理温度等に応じて適宜設定する。
なお、触媒金属微粒子14aを構成する触媒金属としては、コバルト、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)若しくはパラジウム(Pd)又はこれらの少なくとも1種類を含む合金を適用することができる。
次いで、下地層12a及び触媒金属微粒子14aが形成された基板10を、200〜400℃、例えば250℃に加熱する。この加熱により、下地層12aと触媒金属微粒子14aとの間で相互拡散が生じる。これにより、触媒金属微粒子14aが下地層12aとなじみ、触媒としての活性度が高まる(図1(c))。また、下地層12aの表面に対する被覆率を50%程度以下とすることにより、触媒金属微粒子14a同士の凝集を防止することができる。
なお、本実施形態では、触媒金属微粒子14aを覆うカーボン被膜16を形成する際の温度を、後述するカーボンナノチューブ20を成長する際の温度よりも低くしている。これは、カーボン被膜16を形成する際の温度をカーボンナノチューブ20を成長する際の温度と同程度とすると、カーボン被膜16の形成速度が速くなり、制御性が低下するからである。
次いで、原料ガス、例えばアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:9)を、成長室内の総ガス圧が例えば1kPaとなるように導入する。これにより、触媒金属微粒子14aが原料ガスに対して触媒として作用し、触媒金属微粒子14aの表面にカーボンが析出する。これにより、触媒金属微粒子14aの表面に、カーボン被膜16が形成される(図1(d))。
カーボン被膜16は、カーボンナノチューブの成長初期段階に形成されるものである。上記条件を用いた場合、成長室内に1分間程度原料ガスを導入することにより、カーボン被膜16を形成することができる。なお、本工程の目的は、触媒金属微粒子14aの周囲を炭素からなる構造体で囲うことであり、触媒金属微粒子14aの表面をカーボン被膜16で被覆する代わりに、更に成長を進行してカーボンナノチューブを形成するようにしてもよい。但し、成長するカーボンナノチューブが長すぎると、後工程で触媒金属微粒子18aを下地層12a上に堆積しにくくなるため、カーボンナノチューブはできる限り短くすることが望ましい。
次いで、成長室内の原料ガスを排気する。
次いで、カーボン被膜16で覆われた触媒金属微粒子14aが形成された下地層12a上に、触媒金属微粒子14aの堆積の場合と同様の手法により、コバルトよりなり、平均粒子径が例えば4nm程度の触媒金属微粒子18aを、下地層12aの表面に対する被覆率が例えば50%程度となるように堆積する(図2(a))。この際、触媒金属微粒子18aの粒子径は、成長しようとするカーボンナノチューブの直径(太さ)に応じて適宜設定することができる。また、下地層12aの表面に対する触媒金属微粒子18aによる被覆率は、後述するカーボンナノチューブを成長する際の熱処理過程で触媒金属微粒子18a同士が凝集しないように、触媒金属微粒子14aによる表面被覆率、触媒金属微粒子18aの構成材料、熱処理温度等に応じて適宜設定する。
次いで、下地層12a、触媒金属微粒子14a、カーボン被膜16及び触媒金属微粒子18aが形成された基板10を、300〜500℃、例えば400℃に加熱する。この加熱により、下地層12aと触媒金属微粒子18aとの間で相互拡散が生じる。これにより、触媒金属微粒子18aが下地層12aとなじみ、触媒としての活性度が高まる(図2(b))。
また、下地層12aの表面に対する触媒金属微粒子18aの被覆率を50%程度以下とすることにより、触媒金属微粒子18a同士の凝集を防止することができる。また、触媒金属微粒子14aの表面は、カーボン被膜16によって被覆されているため、触媒金属微粒子18aと触媒金属微粒子14aとが凝集することはない。触媒金属微粒子14a,18aを2度に分けて堆積することにより、触媒金属微粒子の凝集を抑制することができ、触媒金属微粒子を一度で形成する場合と比較して、触媒金属微粒子をより高密度に堆積することができる。
次いで、原料ガス、例えばアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:9)を、成長室内の総ガス圧が例えば1kPaとなるように導入する。これにより、触媒金属微粒子14a,18aが原料ガスに対して触媒として作用し、触媒金属微粒子14a,18a上にカーボンナノチューブ20が成長する(図2(c))。カーボンナノチューブ20の長さは、成長時間により制御することができ、例えば60分間成長を続けることにより、2.0μmのカーボンナノチューブ20を成長することができる。
なお、触媒金属微粒子18aは、カーボン被膜16により覆われた触媒金属微粒子14a上に堆積されることもある。しかしながら、カーボン被膜16上に堆積された触媒金属微粒子18aは下地層12aとなじんでおらず触媒としての活性度が低いため、この触媒金属微粒子18aを触媒としてカーボンナノチューブ20が成長することはない。カーボン被膜16上に堆積された触媒金属微粒子18aがカーボンナノチューブ20の成長を阻害することもない。
次いで、所定時間の成長後、成長室内の原料ガスを排気する。
次いで、基板10を室温に戻した後、基板10を成長室から取り出し、カーボンナノチューブ20成長の一連のプロセスを完了する。
このように、本実施形態によれば、触媒金属微粒子の堆積を2度に分け、1度目の堆積後に、触媒金属微粒子を覆うように炭素元素からなる構造体を形成しておくので、2度目の堆積の際に、1度目に堆積した触媒金属微粒子と2度目に堆積した触媒金属微粒子とが凝集することを防止でき、触媒金属微粒子を高密度で堆積することができる。これにより、カーボンナノチューブを高密度で成長することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法について図3及び図4を用いて説明する。
図3及び図4は本実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を示す工程断面図である。なお、図1及び図2に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
本実施形態では、触媒金属としてニッケル(Ni)を用いた場合の一例を示す。
まず、基板10上に、例えばスパッタ法により、窒化チタン(TiN)を堆積し、例えば膜厚1nmの窒化チタン膜よりなる下地層12bを形成する(図3(a))。
次いで、下地層12bが形成された基板10を、成長装置の成長室内に搬入する。
次いで、下地層12b上に、ニッケル(Ni)よりなり、平均粒子径が例えば3nm程度の触媒金属微粒子14bを、例えばレーザーアブレーション法、スパッタ法、真空蒸着法、エアロゾル法、アークプラズマガン法等により、下地層12bの表面に対する被覆率が例えば50%程度となるように堆積する(図3(b))。この際、触媒金属微粒子14bの粒子径は、成長しようとするカーボンナノチューブの直径(太さ)に応じて適宜設定することができる。また、下地層12bの表面に対する触媒金属微粒子14bによる被覆率は、後述するカーボン被膜を形成する際の熱処理過程で触媒金属微粒子14b同士が凝集しないように、触媒金属微粒子14bの構成材料や熱処理温度等に応じて適宜設定する。
なお、本実施形態では、第1実施形態に記載の構成材料から、触媒金属微粒子14bの構成材料をニッケルに変更するとともに、下地層12bの構成材料を窒化チタンに変更しているが、下地層12bの構成材料は窒化チタンに限定されるものではなく、第1実施形態に記載の種々の材料を適用することができる。
次いで、下地層12b及び触媒金属微粒子14bが形成された基板10を、200〜400℃、例えば250℃に加熱する。この加熱により、下地層12bと触媒金属微粒子14bとの間で相互拡散が生じる。これにより、触媒金属微粒子14bが下地層12bとなじみ、触媒としての活性度が高まる(図3(c))。また、下地層12bの表面に対する被覆率を50%程度以下とすることにより、触媒金属微粒子14b同士の凝集を防止することができる。
次いで、原料ガス、例えばアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:19)を、成長室内の総ガス圧が例えば1kPaとなるように導入する。これにより、触媒金属微粒子14bが原料ガスに対して触媒として作用し、触媒金属微粒子14bの表面にカーボンが析出する。これにより、触媒金属微粒子14bの表面に、カーボン被膜16が形成される(図3(d))。
なお、触媒金属微粒子14bを構成するニッケルは、コバルトよりも触媒としての活性度が高いため、コバルトを用いる場合よりも反応速度が速くなる。このため、第1実施形態の場合よりも炭素原料(アセチレン)の混合比率を下げた上記条件を用いた場合でも、約30秒程度の時間でカーボン被膜16を形成することができる。
次いで、成長室内の原料ガスを排気する。
次いで、カーボン被膜16で覆われた触媒金属微粒子14bが形成された下地層12b上に、触媒金属微粒子14bの堆積の場合と同様の手法により、ニッケルよりなり、平均粒子径が例えば3nm程度の触媒金属微粒子18bを、下地層12bの表面に対する被覆率が例えば50%程度となるように堆積する(図4(a))。この際、触媒金属微粒子18bの粒子径は、成長しようとするカーボンナノチューブの直径(太さ)に応じて適宜設定することができる。また、下地層12bの表面に対する触媒金属微粒子18bによる被覆率は、後述するカーボンナノチューブを成長する際の熱処理過程で触媒金属微粒子18b同士が凝集しないように、触媒金属微粒子14bによる表面被覆率、触媒金属微粒子18bの構成材料、熱処理温度等に応じて適宜設定する。
次いで、下地層12b、触媒金属微粒子14b、カーボン被膜16及び触媒金属微粒子18bが形成された基板10を、300〜500℃、例えば400℃に加熱する。この加熱により、下地層12bと触媒金属微粒子18bとの間で相互拡散が生じる。これにより、触媒金属微粒子18bが下地層12bとなじみ、触媒としての活性度が高まる(図4(b))。
また、下地層12bの表面に対する触媒金属微粒子18bの被覆率を50%程度以下とすることにより、触媒金属微粒子18b同士の凝集を防止することができる。また、触媒金属微粒子14bの表面は、カーボン被膜16によって被覆されているため、触媒金属微粒子18bと触媒金属微粒子14bとが凝集することはない。触媒金属微粒子14b,18bを2度に分けて堆積することにより、触媒金属微粒子の凝集を抑制することができ、触媒金属微粒子を一度で形成する場合と比較して、触媒金属微粒子をより高密度に堆積することができる。
次いで、原料ガス、例えばアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:19)を、成長室内の総ガス圧が例えば1kPaとなるように導入する。これにより、触媒金属微粒子14b,18bが原料ガスに対して触媒として作用し、触媒金属微粒子14b,18b上にカーボンナノチューブ20が成長する(図4(c))。カーボンナノチューブ20の長さは、成長時間により制御することができ、例えば60分間成長を続けることにより、1.5μmのカーボンナノチューブ20を成長することができる。
次いで、所定時間の成長後、成長室内の原料ガスを排気する。
次いで、基板10を室温に戻した後、基板10を成長室から取り出し、カーボンナノチューブ20成長の一連のプロセスを完了する。
このように、本実施形態によれば、触媒金属微粒子の堆積を2度に分け、1度目の堆積後に、触媒金属微粒子を覆うように炭素元素からなる構造体を形成しておくので、2度目の堆積の際に、1度目に堆積した触媒金属微粒子と2度目に堆積した触媒金属微粒子とが凝集することを防止でき、触媒金属微粒子を高密度で堆積することができる。これにより、カーボンナノチューブを高密度で成長することができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法について図5及び図6を用いて説明する。
図5及び図6は本実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を示す工程断面図である。なお、図1乃至図4に示す第1及び第2実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
本実施形態では、触媒金属としてニッケル及びコバルトを用いた場合の一例を示す。
まず、基板10上に、例えばスパッタ法により、窒化タンタル(TaN)を堆積し、例えば膜厚1nmの窒化タンタル膜よりなる下地層12cを形成する(図5(a))。
次いで、下地層12cが形成された基板10を、成長装置の成長室内に搬入する。
次いで、下地層12c上に、ニッケル(Ni)よりなり、平均粒子径が例えば4nm程度の触媒金属微粒子14bを、例えばレーザーアブレーション法、スパッタ法、真空蒸着法、エアロゾル法、アークプラズマガン法等により、下地層12cの表面に対する被覆率が例えば50%程度となるように堆積する(図5(b))。この際、触媒金属微粒子14bの粒子径は、成長しようとするカーボンナノチューブの直径(太さ)に応じて適宜設定することができる。また、下地層12cの表面に対する触媒金属微粒子14bによる被覆率は、後述するカーボン被膜を形成する際の熱処理過程で触媒金属微粒子14b同士が凝集しないように、触媒金属微粒子14bの構成材料や熱処理温度等に応じて適宜設定する。
なお、本実施形態では、第2実施形態に記載の構成材料から、下地層12cの構成材料を窒化タンタルに変更しているが、下地層12cの構成材料は窒化タンタルに限定されるものではなく、第1実施形態に記載の種々の材料を適用することができる。
次いで、下地層12c及び触媒金属微粒子14bが形成された基板10を、200〜400℃、例えば250℃に加熱する。この加熱により、下地層12cと触媒金属微粒子14bとの間で相互拡散が生じる。これにより、触媒金属微粒子14bが下地層12cとなじみ、触媒としての活性度が高まる(図5(c))。また、下地層12cの表面に対する被覆率を50%程度以下とすることにより、触媒金属微粒子14b同士の凝集を防止することができる。
次いで、原料ガス、例えばアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:99)を、成長室内の総ガス圧が例えば1kPaとなるように導入する。これにより、触媒金属微粒子14bが原料ガスに対して触媒として作用し、触媒金属微粒子14bの表面にカーボンが析出する。これにより、触媒金属微粒子14bの表面に、カーボン被膜16が形成される(図5(d))。なお、炭素原料としては、アセチレンのほか、メタン、エチレン等の炭化水素類や、エタノール、メタノール等のアルコール類などを用いることもできる。
なお、触媒金属微粒子14bを構成するニッケルは、コバルトよりも触媒としての活性度が高いため、コバルトを用いる場合よりも反応速度が速くなる。このため、第1実施形態の場合よりも炭素原料(アセチレン)の混合比率を下げた上記条件を用いた場合でも、約30秒程度の時間でカーボン被膜16を形成することができる。
次いで、成長室内の原料ガスを排気する。
次いで、カーボン被膜16で覆われた触媒金属微粒子14bが形成された下地層12c上に、触媒金属微粒子14bの堆積の場合と同様の手法により、コバルトよりなり、平均粒子径が例えば4nm程度の触媒金属微粒子18aを、下地層12cの表面に対する被覆率が例えば50%程度となるように堆積する(図6(a))。この際、触媒金属微粒子18aの粒子径は、成長しようとするカーボンナノチューブの直径(太さ)に応じて適宜設定することができる。また、下地層12cの表面に対する触媒金属微粒子18aによる被覆率は、後述するカーボンナノチューブを成長する際の熱処理過程で触媒金属微粒子18a同士が凝集しないように、触媒金属微粒子14bによる表面被覆率、触媒金属微粒子18aの構成材料、熱処理温度等に応じて適宜設定する。
次いで、下地層12c、触媒金属微粒子14b、カーボン被膜16及び触媒金属微粒子18aが形成された基板10を、300〜500℃、例えば400℃に加熱する。この加熱により、下地層12cと触媒金属微粒子18aとの間で相互拡散が生じる。これにより、触媒金属微粒子18aが下地層12cとなじみ、触媒としての活性度が高まる(図6(b))。
また、下地層12cの表面に対する触媒金属微粒子18aの被覆率を50%程度以下とすることにより、触媒金属微粒子18a同士の凝集を防止することができる。また、触媒金属微粒子14bの表面は、カーボン被膜16によって被覆されているため、触媒金属微粒子18aと触媒金属微粒子14bとが凝集することはない。触媒金属微粒子14b,18aを2度に分けて堆積することにより、触媒金属微粒子の凝集を抑制することができ、触媒金属微粒子を一度で形成する場合と比較して、触媒金属微粒子をより高密度に堆積することができる。
なお、本実施形態では、触媒金属微粒子14bと触媒金属微粒子18aとを異なる材料により構成している。これにより、同一の触媒金属材料を用いる場合と比較して、凝集を抑制する効果を更に高めることができる。
次いで、原料ガス、例えばアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:99)を、成長室内の総ガス圧が例えば1kPaとなるように導入する。これにより、触媒金属微粒子、14b,18aが原料ガスに対して触媒として作用し、触媒金属微粒子14b,18a上にカーボンナノチューブ20が成長する(図6(c))。カーボンナノチューブ20の長さは、成長時間により制御することができ、例えば60分間成長を続けることにより、1.0μmのカーボンナノチューブ20を成長することができる。
次いで、所定時間の成長後、成長室内の原料ガスを排気する。
次いで、基板10を室温に戻した後、基板10を成長室から取り出し、カーボンナノチューブ20成長の一連のプロセスを完了する。
このように、本実施形態によれば、触媒金属微粒子の堆積を2度に分け、1度目の堆積後に、触媒金属微粒子を覆うように炭素元素からなる構造体を形成しておくので、2度目の堆積の際に、1度目に堆積した触媒金属微粒子と2度目に堆積した触媒金属微粒子とが凝集することを防止でき、触媒金属微粒子を高密度で堆積することができる。これにより、カーボンナノチューブを高密度で成長することができる。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法について図7及び図8を用いて説明する。
図7及び図8は本実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を示す工程断面図である。なお、図1乃至図6に示す第1乃至第3実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
本実施形態では、触媒金属としてニッケル及び鉄(Fe)を用いた場合の一例を示す。
まず、基板10上に、例えばスパッタ法により、タンタル(Ta)を堆積し、例えば膜厚1nmのタンタル膜を形成する。
次いで、例えば酸素分圧が0.1kPaの雰囲気中で300℃の温度でタンタル膜を熱酸化し、酸化タンタル(TaOx)膜よりなる下地層12dを形成する(図7(a))。
次いで、下地層12dが形成された基板10を、成長装置の成長室内に搬入する。
次いで、下地層12d上に、ニッケルよりなり、平均粒子径が例えば5nm程度の触媒金属微粒子14bを、例えばレーザーアブレーション法、スパッタ法、真空蒸着法、エアロゾル法、アークプラズマガン法等により、下地層12dの表面に対する被覆率が例えば50%程度となるように堆積する(図7(b))。この際、触媒金属微粒子14bの粒子径は、成長しようとするカーボンナノチューブの直径(太さ)に応じて適宜設定することができる。また、下地層12dの表面に対する触媒金属微粒子14bによる被覆率は、後述するカーボン被膜を形成する際の熱処理過程で触媒金属微粒子14b同士が凝集しないように、触媒金属微粒子14bの構成材料や熱処理温度等に応じて適宜設定する。
なお、本実施形態では、第2実施形態に記載の構成材料から、下地層12dの構成材料を酸化タンタルに変更しているが、下地層12dの構成材料は酸化タンタルに限定されるものではなく、第1実施形態に記載の種々の材料を適用することができる。
次いで、下地層12d及び触媒金属微粒子14bが形成された基板10を、200〜400℃、例えば250℃に加熱する。この加熱により、下地層12dと触媒金属微粒子14bとの間で相互拡散が生じる。これにより、触媒金属微粒子14bが下地層12dとなじみ、触媒としての活性度が高まる(図7(c))。また、下地層12dの表面に対する被覆率を50%程度以下とすることにより、触媒金属微粒子14b同士の凝集を防止することができる。
次いで、原料ガス、例えばアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比0.1:100)を、成長室内の総ガス圧が例えば1kPaとなるように導入する。これにより、触媒金属微粒子14bが原料ガスに対して触媒として作用し、触媒金属微粒子14bの表面にカーボンが析出する。これにより、触媒金属微粒子14bの表面に、カーボン被膜16が形成される(図7(d))。
なお、触媒金属微粒子14bを構成するニッケルは、コバルトよりも触媒としての活性度が高いため、コバルトを用いる場合よりも反応速度が速くなる。このため、第1実施形態の場合よりも炭素原料(アセチレン)の混合比率を下げた上記条件を用いた場合でも、約30秒程度の時間でカーボン被膜16を形成することができる。
次いで、成長室内の原料ガスを排気する。
次いで、カーボン被膜16で覆われた触媒金属微粒子14bが形成された下地層12d上に、触媒金属微粒子14bの堆積の場合と同様の手法により、鉄(Fe)よりなり、平均粒子径が例えば5nm程度の触媒金属微粒子18cを、下地層12dの表面に対する被覆率が例えば50%程度となるように堆積する(図8(a))。この際、触媒金属微粒子18cの粒子径は、成長しようとするカーボンナノチューブの直径(太さ)に応じて適宜設定することができる。また、下地層12dの表面に対する触媒金属微粒子18cによる被覆率は、後述するカーボンナノチューブを成長する際の熱処理過程で触媒金属微粒子18c同士が凝集しないように、触媒金属微粒子14bによる表面被覆率、触媒金属微粒子18cの構成材料、熱処理温度等に応じて適宜設定する。
次いで、下地層12d、触媒金属微粒子14b、カーボン被膜16及び触媒金属微粒子18cが形成された基板10を、300〜500℃、例えば400℃に加熱する。この加熱により、下地層12dと触媒金属微粒子18cとの間で相互拡散が生じる。これにより、触媒金属微粒子18cが下地層12dとなじみ、触媒としての活性度が高まる(図8(b))。
また、下地層12dの表面に対する触媒金属微粒子18cの被覆率を50%程度以下とすることにより、触媒金属微粒子18c同士の凝集を防止することができる。また、触媒金属微粒子14bの表面は、カーボン被膜16によって被覆されているため、触媒金属微粒子18cと触媒金属微粒子14bとが凝集することはない。触媒金属微粒子14b,18cを2度に分けて堆積することにより、触媒金属微粒子の凝集を抑制することができ、触媒金属微粒子を一度で形成する場合と比較して、触媒金属微粒子をより高密度に堆積することができる。
次いで、原料ガス、例えばメタン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:9)を、成長室内の総ガス圧が例えば1kPaとなるように導入する。これにより、触媒金属微粒子14b,18cが原料ガスに対して触媒として作用し、触媒金属微粒子14b,18c上にカーボンナノチューブ20が成長する(図6(c))。カーボンナノチューブ20の長さは、成長時間により制御することができ、例えば60分間成長を続けることにより、2.0μmのカーボンナノチューブ20を成長することができる。
次いで、所定時間の成長後、成長室内の原料ガスを排気する。
次いで、基板10を室温に戻した後、基板10を成長室から取り出し、カーボンナノチューブ20成長の一連のプロセスを完了する。
このように、本実施形態によれば、触媒金属微粒子の堆積を2度に分け、1度目の堆積後に、触媒金属微粒子を覆うように炭素元素からなる構造体を形成しておくので、2度目の堆積の際に、1度目に堆積した触媒金属微粒子と2度目に堆積した触媒金属微粒子とが凝集することを防止でき、触媒金属微粒子を高密度で堆積することができる。これにより、カーボンナノチューブを高密度で成長することができる。
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法について図9乃至図11を用いて説明する。
図9乃至図11は本実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を示す工程断面図である。なお、図1乃至図8に示す第1乃至第4実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
本実施形態では、触媒金属微粒子を4回に分けて堆積した場合の一例を示す。
まず、基板10上に、例えばスパッタ法により、チタン(Ti)を堆積し、例えば膜厚1nmのチタン膜を形成する。
次いで、例えば酸素分圧が0.1kPaの雰囲気中で300℃の温度でチタン膜を熱酸化し、酸化チタン(TiOx)膜よりなる下地層12eを形成する(図9(a))。
次いで、下地層12eが形成された基板10を、成長装置の成長室内に搬入する。
次いで、下地層12e上に、コバルトよりなり、平均粒子径が例えば3nm程度の触媒金属微粒子14aを、例えばレーザーアブレーション法、スパッタ法、真空蒸着法、エアロゾル法、アークプラズマガン法等により、下地層12eの表面に対する被覆率が例えば20%程度となるように堆積する(図9(b))。この際、触媒金属微粒子14aの粒子径は、成長しようとするカーボンナノチューブの直径(太さ)に応じて適宜設定することができる。また、下地層12eの表面に対する触媒金属微粒子14aによる被覆率は、後述するカーボン被膜を形成する際の熱処理過程で触媒金属微粒子14a同士が凝集しないように、触媒金属微粒子14aの構成材料や熱処理温度等に応じて適宜設定する。なお、本実施形態では、触媒金属微粒子を4回に分けて堆積するため、各回に堆積する触媒金属微粒子による表面被覆率をそれぞれ20%程度としている。
なお、本実施形態では、第1実施形態に記載の構成材料から、下地層12eの構成材料を酸化チタンに変更しているが、下地層12eの構成材料は酸化チタンに限定されるものではなく、第1実施形態に記載の種々の材料を適用することができる。
次いで、下地層12e及び触媒金属微粒子14aが形成された基板10を、200〜400℃、例えば300℃に加熱する。この加熱により、下地層12eと触媒金属微粒子14aとの間で相互拡散が生じる。これにより、触媒金属微粒子14aが下地層12eとなじみ、触媒としての活性度が高まる(図9(c))。また、下地層12eの表面に対する被覆率は20%程度であるため、触媒金属微粒子14a同士が凝集することはない。
次いで、原料ガス、例えばアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比0.1:100)を、成長室内の総ガス圧が例えば1kPaとなるように導入する。これにより、触媒金属微粒子14aが原料ガスに対して触媒として作用し、触媒金属微粒子14aの表面にカーボンが析出する。これにより、触媒金属微粒子14aの表面に、カーボン被膜16が形成される(図10(a))。なお、本実施形態では、加熱温度を300℃としているため、約30秒程度の時間でカーボン被膜16を形成することができる。
次いで、成長室内の原料ガスを排気する。
次いで、カーボン被膜16で覆われた触媒金属微粒子14aが形成された下地層12e上に、触媒金属微粒子14aの堆積の場合と同様の手法により、コバルトよりなり、平均粒子径が例えば3nm程度の触媒金属微粒子18aを、下地層12eの表面に対する被覆率が例えば20%程度となるように堆積する(図10(b))。この際、触媒金属微粒子18aの粒子径は、成長しようとするカーボンナノチューブの直径(太さ)に応じて適宜設定することができる。また、下地層12eの表面に対する触媒金属微粒子18aによる被覆率は、後述するカーボンナノチューブを成長する際の熱処理過程で触媒金属微粒子18a同士が凝集しないように、触媒金属微粒子14aによる表面被覆率、触媒金属微粒子18aの構成材料、熱処理温度等に応じて適宜設定する。
次いで、下地層12e、触媒金属微粒子14a、カーボン被膜16及び触媒金属微粒子18aが形成された基板10を、200〜400℃、例えば300℃に加熱する。この加熱により、下地層12eと触媒金属微粒子18aとの間で相互拡散が生じる。これにより、触媒金属微粒子18aが下地層12eとなじみ、触媒としての活性度が高まる。また、下地層18eの表面に対する被覆率は20%程度であるため、触媒金属微粒子18a同士が凝集することはない。
次いで、原料ガス、例えばアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比0.1:100)を、成長室内の総ガス圧が例えば1kPaとなるように導入する。これにより、触媒金属微粒子18aが原料ガスに対して触媒として作用し、触媒金属微粒子18aの表面にカーボンが析出する。これにより、触媒金属微粒子18aの表面に、カーボン被膜16が形成される(図10(c))。
次いで、図10(b)〜図10(c)に示す工程と同様にして、下地層12e、触媒金属微粒子14a,18a、カーボン被膜16が形成された基板10上に、コバルトよりなり、表面がカーボン被膜16により被覆された触媒金属微粒子22aを形成する(図11(a))。
次いで、図10(b)〜図10(c)に示す工程と同様にして、下地層12e、触媒金属微粒子14a,18a,22a、カーボン被膜16が形成された基板10上に、コバルトよりなる触媒金属微粒子24aを形成する(図11(b))。
次いで、原料ガス、例えばアセチレン・アルゴンの混合ガス(分圧比1:9)を、成長室内の総ガス圧が例えば1kPaとなるように導入する。これにより、触媒金属微粒子14a,18a、22a,24aが原料ガスに対して触媒として作用し、触媒金属微粒子14a,18a,22a,24a上にカーボンナノチューブ20が成長する(図11(c)))。カーボンナノチューブ20の長さは、成長時間により制御することができ、例えば60分間成長を続けることにより、1.0μmのカーボンナノチューブ20を成長することができる。
次いで、所定時間の成長後、成長室内の原料ガスを排気する。
次いで、基板10を室温に戻した後、基板10を成長室から取り出し、カーボンナノチューブ20成長の一連のプロセスを完了する。
このように、本実施形態によれば、触媒金属微粒子の堆積を複数回に分け、触媒金属微粒子を堆積する毎に、触媒金属微粒子を覆うように炭素元素からなる構造体を形成しておくので、以後の堆積の際に、既に堆積されている触媒金属微粒子と新たに堆積した触媒金属微粒子とが凝集することを防止でき、触媒金属微粒子を高密度で堆積することができる。これにより、カーボンナノチューブを高密度で成長することができる。
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置について図12を用いて説明する。
図12は本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の構造を示す概略図である。
はじめに、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の構造について図12を用いて説明する。
本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置30は、図12に示すように、カーボンナノチューブの成長を行う成長室32と、触媒金属微粒子を生成する微粒子生成室34とを有している。成長室32と微粒子生成室34とは、ノズル36を介して連続している。ノズル36の先端は、基板10と対向している。
成長室32には、カーボンナノチューブを成長する基板10を搭載するサセプタ38が設置されている。サセプタ38には、基板10を加熱するための加熱機構(図示せず)が設けられている。成長室32には、また、成長室32内を減圧するための真空ポンプ40と、カーボンナノチューブの成長に用いられる原料ガスを導入する原料ガスボンベ42とが接続されている。
微粒子生成室34には、触媒金属微粒子の発生源となる触媒金属ターゲット44と、触媒金属ターゲット44にレーザ光を照射するレーザ光源46とが設けられている。微粒子生成室34には、また、微粒子生成室34内の圧力を成長室32内の圧力よりも高く保つための差動排気装置48が接続されている。
このように、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置30は、カーボンナノチューブを成長するための成長室32と、触媒金属微粒子を形成する微粒子生成室とが、空間的に連続して一体に形成されている。
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の動作について図12を用いて説明する。
サセプタ38上に、カーボンナノチューブを成長する基板10を搭載する。また、真空ポンプ40と差動排気装置48とにより、微粒子生成室34の圧力が成長室32の圧力よりも高くなるように、制御する。この状態で、レーザ光源46から発せられたレーザ光50を触媒金属ターゲット44に照射し、触媒金属ターゲット44の構成材料を昇華する。この手法は、レーザーアブレーション法と呼ばれるものである。この際、微粒子生成室34内にヘリウム(He)などの熱伝導性の良いガスを導入しておくことにより、昇華された触媒金属材料が急激に冷却され、微粒子化する。微粒子化された触媒金属(触媒金属微粒子52)は、微粒子生成室34と成長室32との圧力差によって、ノズル36を介して成長室32に導入される。ノズル36の先方に基板10を設置しておくことにより、触媒金属微粒子52を基板10上に堆積することができる。
成長室32では、基板10上に堆積した触媒金属微粒子52を触媒として、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)を成長する。この成長様式は、通常の化学気相成長法と同様である。基板10は、サセプタ38の加熱機構により、所定の成長温度に加熱される。この状態で、成長室32内に原料ガスボンベ42から原料ガスを導入することにより、触媒金属微粒子52を触媒として、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)が成長される。
カーボンナノチューブを成長するための成長室32と触媒金属微粒子を形成する微粒子生成室とを一体形成した成長装置を構成することにより、基板10上への触媒金属微粒子の堆積と、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)の成長とを、迅速に切り換えることができる。これにより、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を用いてカーボンナノチューブを成長する際のスループットを大幅に向上することができる。
すなわち、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長では、触媒金属微粒子の堆積と、カーボン被膜或いはカーボンナノチューブの成長とを交互に繰り返し行う。このプロセスを、触媒金属微粒子を堆積するための装置と、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)を成長するための装置とを用いて別々に処理した場合、装置間の搬送によるスループットの低下や、大気開放による基板10の汚染等の問題が懸念される。また、真空搬送系を有するマルチチャンバ装置を用いた場合にも、チャンバ間を搬送する際のスループットの低下が懸念される。特に、触媒金属微粒子を被覆するカーボン被膜の成膜は、数十秒〜1分程度と極めて短時間のため、基板10の搬送に要する時間が全体の処理時間に与える影響は非常に大きい。
これに対し、本実施形態による成長装置では、レーザーアブレーションによる触媒金属微粒子の形成と、原料ガスの導入とを切り換えるだけで、基板10上への触媒金属微粒子の堆積と、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)の成長とを、迅速に切り換えることができる。これにより、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を高スループットで実現することができる。
このように、本実施形態によれば、触媒金属微粒子の堆積機構とカーボンナノチューブの成長機構とを一体化した成長装置を構成するので、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法のように、触媒金属微粒子の堆積と炭素元素からなる構造体の成長とを繰り返し行う場合にも、高いスループットでカーボンナノチューブを成長することができる。
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置について図13を用いて説明する。なお、図12に示す第6実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
図13は本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の構造を示す概略図である。
はじめに、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の構造について図13を用いて説明する。
本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置30は、化学気相成長装置とスパッタ装置とを組み合わせたものである。化学気相成長装置とスパッタ装置とを組み合わせる場合、第6実施形態の場合のようにノズル36を用いる必要はない。
図13に示すように、成長室32内には、カーボンナノチューブを成長する基板10を搭載するサセプタ38と、触媒金属ターゲット44とが、対向するように設けられている。サセプタ38には、基板10を加熱するための加熱機構(図示せず)が設けられている。成長室32には、また、成長室32内を減圧するための真空ポンプ40と、カーボンナノチューブの成長に用いられる原料ガスを導入する原料ガスボンベ42とが接続されている。
このように、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置30は、化学気相成長法によりカーボンナノチューブを成長する機構と、スパッタ法により触媒金属微粒子を形成する機構とが、成長室32内に形成されている。
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の動作について図13を用いて説明する。
サセプタ38上に、カーボンナノチューブを成長する基板10を搭載する。この状態で、成長室32内にスパッタガス(例えばアルゴン)を導入し、サセプタ38と触媒金属ターゲット44との間に電圧を印加する。これにより、サセプタ38と触媒金属ターゲット44との間にはプラズマ54が発生し、触媒金属ターゲット44の構成材料がスパッタされる。アルゴンの圧力を適宜調整することにより、微粒子状の触媒金属(触媒金属微粒子52)を基板10上に堆積することができる。
カーボンナノチューブ(カーボン被膜)を成長する際には、サセプタ38の加熱機構により基板10を所定の成長温度に加熱した状態で、成長室32内に原料ガスボンベ42から原料ガスを導入する。これにより、触媒金属微粒子52を触媒として、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)が成長される。
成長室32内に、化学気相成長法によりカーボンナノチューブを成長する機構と、スパッタ法により触媒金属微粒子を形成する機構とを設けることにより、基板10上への触媒金属微粒子の堆積と、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)の成長とを、迅速に切り換えることができる。これにより、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を用いてカーボンナノチューブを成長する際のスループットを大幅に向上することができる。
このように、本実施形態によれば、触媒金属微粒子の堆積機構とカーボンナノチューブの成長機構とを一体化した成長装置を構成するので、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法のように、触媒金属微粒子の堆積と炭素元素からなる構造体の成長とを繰り返し行う場合にも、高いスループットでカーボンナノチューブを成長することができる。
[第8実施形態]
本発明の第8実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置について図14を用いて説明する。なお、図12及び図13に示す第6及び第7実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
図14は本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の構造を示す概略図である。
はじめに、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の構造について図14を用いて説明する。
本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置30は、化学気相成長装置と真空蒸着装置とを組み合わせたものである。化学気相成長装置と真空蒸着装置とを組み合わせる場合、第6実施形態の場合のようにノズル36を用いる必要はない。
図14に示すように、成長室32内には、カーボンナノチューブを成長する基板10を搭載するサセプタ38と、クヌーセンセル(Kセル)56とが、対向するように設けられている。サセプタ38には、基板10を加熱するための加熱機構(図示せず)が設けられている。成長室32には、また、成長室32内を減圧するための真空ポンプ40と、カーボンナノチューブの成長に用いられる原料ガスを導入する原料ガスボンベ42とが接続されている。
このように、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置30は、化学気相成長法によりカーボンナノチューブを成長する機構と、真空蒸着法により触媒金属微粒子を形成する機構とが、成長室32内に形成されている。
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の動作について図14を用いて説明する。
サセプタ38上に、カーボンナノチューブを成長する基板10を搭載する。クヌーセンセル56内には、触媒金属、例えばコバルトを充填する。クヌーセンセル56を例えば1700℃に加熱することにより、コバルトが蒸発し、コバルトの微粒子(触媒金属微粒子52)を基板10上に堆積することができる。クヌーセンセル56を複数設けることにより、異なる種類の触媒金属を容易に切り換えることができる。
カーボンナノチューブ(カーボン被膜)を成長する際には、サセプタ38の加熱機構により基板10を所定の成長温度に加熱した状態で、成長室32内に原料ガスボンベ42から原料ガスを導入する。これにより、触媒金属微粒子52を触媒として、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)が成長される。
成長室32内に、化学気相成長法によりカーボンナノチューブを成長する機構と、真空蒸着法により触媒金属微粒子を形成する機構とを設けることにより、基板10上への触媒金属微粒子の堆積と、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)の成長とを、迅速に切り換えることができる。これにより、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を用いてカーボンナノチューブを成長する際のスループットを大幅に向上することができる。
このように、本実施形態によれば、触媒金属微粒子の堆積機構とカーボンナノチューブの成長機構とを一体化した成長装置を構成するので、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法のように、触媒金属微粒子の堆積と炭素元素からなる構造体の成長とを繰り返し行う場合にも、高いスループットでカーボンナノチューブを成長することができる。
[第9実施形態]
本発明の第9実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置について図15を用いて説明する。なお、図12乃至図14に示す第6乃至第8実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
図15は本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の構造を示す概略図である。
はじめに、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の構造について図15を用いて説明する。
本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置30は、化学気相成長装置に、エアロゾル法による微粒子形成機構を組み合わせたものである。
図15に示すように、成長室32内には、カーボンナノチューブを成長する基板10を搭載するサセプタ38と、触媒金属材料を含む有機金属を有機溶媒に分散した溶媒を噴霧するための噴霧器58とが、対向するように設けられている。サセプタ38には、基板10を加熱するための加熱機構(図示せず)が設けられている。成長室32には、また、成長室32内を減圧するための真空ポンプ40と、カーボンナノチューブの成長に用いられる原料ガスを導入する原料ガスボンベ42とが接続されている。
このように、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置30は、化学気相成長法によりカーボンナノチューブを成長する機構と、エアロゾル法による微粒子形成機構とが、成長室32内に形成されている。
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の動作について図15を用いて説明する。
サセプタ38上に、カーボンナノチューブを成長する基板10を搭載する。噴霧器58内には、触媒金属材料を含む有機金属、例えばニッケロセンを、エタノールなどの有機溶媒に分散させた溶媒を注入する。基板10を200〜400℃程度に加熱した状態で、噴霧器58によって基板10上に溶媒を噴霧することにより、基板10上に微粒子状のニッケル(触媒金属微粒子52)を堆積することができる。
カーボンナノチューブ(カーボン被膜)を成長する際には、サセプタ38の加熱機構により基板10を所定の成長温度に加熱した状態で、成長室32内に原料ガスボンベ42から原料ガスを導入する。これにより、触媒金属微粒子52を触媒として、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)が成長される。
成長室32内に、化学気相成長法によりカーボンナノチューブを成長する機構と、エアロゾル法による微粒子形成機構とを設けることにより、基板10上への触媒金属微粒子の堆積と、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)の成長とを、迅速に切り換えることができる。これにより、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を用いてカーボンナノチューブを成長する際のスループットを大幅に向上することができる。
このように、本実施形態によれば、触媒金属微粒子の堆積機構とカーボンナノチューブの成長機構とを一体化した成長装置を構成するので、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法のように、触媒金属微粒子の堆積と炭素元素からなる構造体の成長とを繰り返し行う場合にも、高いスループットでカーボンナノチューブを成長することができる。
[第10実施形態]
本発明の第10実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置について図16を用いて説明する。なお、図12乃至図15に示す第6乃至第9実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
図16は本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の構造を示す概略図である。
はじめに、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の構造について図16を用いて説明する。
本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置30は、化学気相成長装置に、アークプラズマガンによる微粒子形成機構を組み合わせたものである。
図16に示すように、成長室32内には、カーボンナノチューブを成長する基板10を搭載するサセプタ38と、触媒金属微粒子を生成するアークプラズマガン60とが、対向するように設けられている。サセプタ38には、基板10を加熱するための加熱機構(図示せず)が設けられている。成長室32には、また、成長室32内を減圧するための真空ポンプ40と、カーボンナノチューブの成長に用いられる原料ガスを導入する原料ガスボンベ42とが接続されている。
このように、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置30は、化学気相成長法によりカーボンナノチューブを成長する機構と、アークプラズマガンによる微粒子形成機構とが、成長室32内に形成されている。
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブの成長装置の動作について図16を用いて説明する。
サセプタ38上に、カーボンナノチューブを成長する基板10を搭載する。アークプラズマガン60としては、触媒金属(例えばコバルト)をターゲットとするアークプラズマガンを用いる。成長室32内を10〜4Pa程度の真空にした状態でアークプラズマガン60を作動させることにより、1パルス毎にコバルト微粒子(触媒金属微粒子52)が形成され、これを基板10上に堆積することができる。
カーボンナノチューブ(カーボン被膜)を成長する際には、サセプタ38の加熱機構により基板10を所定の成長温度に加熱した状態で、成長室32内に原料ガスボンベ42から原料ガスを導入する。これにより、触媒金属微粒子52を触媒として、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)が成長される。
成長室32内に、化学気相成長法によりカーボンナノチューブを成長する機構と、アークプラズマガンによる微粒子形成機構とを設けることにより、基板10上への触媒金属微粒子の堆積と、カーボンナノチューブ(カーボン被膜)の成長とを、迅速に切り換えることができる。これにより、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を用いてカーボンナノチューブを成長する際のスループットを大幅に向上することができる。
このように、本実施形態によれば、触媒金属微粒子の堆積機構とカーボンナノチューブの成長機構とを一体化した成長装置を構成するので、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法のように、触媒金属微粒子の堆積と炭素元素からなる構造体の成長とを繰り返し行う場合にも、高いスループットでカーボンナノチューブを成長することができる。
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記第1乃至第4実施形態では触媒金属微粒子を2回に分けて堆積し、第5実施形態では触媒金属微粒子を4回に分けて堆積したが、触媒金属微粒子を堆積する回数はこれらに限定されるものではなく、3回でもよいし、5回以上でもよい。
また、上記第3実施形態では触媒金属微粒子としてニッケル及びコバルトを用い、第4実施形態では触媒金属微粒子としてニッケル及び鉄を用いたが、触媒金属材料の組み合わせや堆積順序はこれに限定されるものではなく、コバルト、ニッケル、鉄及びこれらの少なくとも1種類を含む合金の中から任意に組み合わせて用いることができる。また、3回以上に分けて触媒金属微粒子を堆積する場合、それぞれの堆積工程において触媒金属微粒子を任意に選択することができる。
また、上記第6乃至第10実施形態では、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法を適用するに好適な成長装置として、カーボンナノチューブの成長機構と触媒金属微粒子の形成機構とが一体化された成長装置を示したが、第1乃至第5実施形態によるカーボンナノチューブの成長方法は、必ずしもこれら成長装置を用いる必要はない。例えば、カーボンナノチューブの成長装置及び触媒金属微粒子の形成装置として、それぞれ別々の装置を用いてもよいし、カーボンナノチューブの成長チャンバと触媒金属微粒子の形成チャンバとを有するマルチチャンバ装置を用いてもよい。これらの場合、スループットが低下するなどの不利な点も認められるが、カーボンナノチューブを高密度で形成できるという本発明の効果を奏するうえで特段の影響はない。
また、上記第6乃至第10実施形態では、触媒金属微粒子の生成に、レーザーアブレーション法、スパッタ法、真空蒸着法、エアロゾル法又はアークプラズマガン法を用いたが、触媒金属微粒子を生成して基板上に堆積しうるものであれば、これらに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、カーボンナノチューブの成長方法及び成長装置を説明したが、本発明は、炭素の六員環よりなるグラフェンシートを筒状に巻いた形状からなる線状構造体の成長方法及び成長装置に広く適用することができる。炭素元素からなる線状構造体としては、カーボンナノチューブのほか、カーボンナノワイヤ、カーボンロッド、カーボンファイバが挙げられる。これら線状構造体は、サイズが異なるほかは、カーボンナノチューブと同様である。
また、上記実施形態に記載の構成材料や製造条件は、当該記載に限定されるものではなく、目的等に応じて適宜変更が可能である。