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JP2010156041A - 双方向形状回復合金 - Google Patents

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Daido Steel Co Ltd
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Abstract

【課題】低廉であり、二方向の動作特性を持ち、形状回復温度がTiNi系合金より高く、高い形状回復精度を持ち、しかも形状回復の繰り返しに耐えうる高い強度を持つ双方向形状回復合金を提供すること。
【解決手段】C<0.20mass%、13.00≦Mn≦30.00mass%、0.10≦Si≦6.00mass%、0.05≦Cr≦12.00mass%、0.01≦Ni≦3.00mass%、N<0.100mass%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、600≦33Mn+11Si+28Cr+17Ni≦1050を満たす双方向形状回復合金。
【選択図】図3

Description

本発明は、双方向形状回復合金に関し、さらに詳しくは、実質的に塑性変形を利用することなく、相変態に伴う膨張と収縮を利用して、低温時の形状と高温時の形状とを可逆的に変化させることが可能な双方向形状回復合金に関する。
ある種の材料に対して低温で塑性変形を加えた後、これを高温に加熱すると、形状が塑性変形前の状態に戻る。このような現象を形状記憶効果といい、形状記憶効果を示す合金を形状記憶合金という。
形状記憶合金は、
(1)ピストンリングの張力を温度に応じて可変させるためのコイルエキスパンダ(特許文献1参照)、
(2)オイル流量を温度によりコントロールするシステム(特許文献2参照)、
(3)温度に対するセンサ機能を兼ね備えたアクチュエータや各種スイッチ部品、
などへの応用が期待されている。
形状記憶合金としては、従来から種々の材料が知られている。中でもTi−Ni系合金は、最も知られた形状記憶合金の1つであり、高温で形状記憶処理が施された状態で各種の用途に用いられている。TiNi系合金の形状記憶効果は、外力により双晶変形した低温相(マルテンサイト相)が高温相(オーステナイト相)に逆変態する際に、形状記憶処理した形状に戻る特性に由来する。
しかしながら、TiNi系合金は、材料コストが高いために、幅広い用途への展開が困難であるという問題がある。また、変態温度が室温近傍であるために、100℃以上の形状回復温度が要求される用途に適用できないという問題がある。
これに対し、Fe−Mn−Si系合金に代表されるFe基形状記憶合金は、低廉であり、形状回復温度も高いという特徴がある。Fe基合金の形状記憶効果は、応力誘起イプシロンマルテンサイト変態(Ms点以上Md点以下の温度において塑性変形させることにより誘起されるγ(FCC)相→ε(HCP)相への変態)により生じたε相がγ相に逆変態する際に、加工前の形状に戻る特性に由来する。
しかしながら、Fe基形状記憶合金は、
(1)形状記憶効果がTiNi系形状記憶合金より劣る、
(2)Feを含むために耐食性や耐酸化性に劣る、
(3)焼鈍状態のまま塑性変形させると割れが発生しやすい、
などの問題がある。
そこでこの問題を解決するために従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献3には、Mn:28.80%、Si:5.24%、Cr:0.20%、N:0.11%を含み残部がFeからなる含窒素鉄系形状記憶合金が開示されている。
同文献には、窒素を合金化させることによって、Fe−Mn系合金の形状記憶特性だけでなく、減衰特性を含む機械的特性が向上する点が記載されている。
また、特許文献4には、所定の組成を有するFe−Mn−Si系合金を成形後、1000℃超〜1200℃未満の温度域で15分以上保持するFe−Mn−Si系形状記憶合金の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、MnやSiが濃化した微細な金属間化合物が粒界に析出することに起因する応力変形時の割れを抑制できる点が記載されている。
また、特許文献5には、所定の組成を有するFe−Mn−Si系合金をMd'点(加工誘起によってεマルテンサイト及びα'マルテンサイトが生成しない温度)以上700℃以下で加工し、Md'点+200℃以上の温度で焼鈍する鉄基形状記憶合金の製造方法が開示されている。
同文献には、
(1)Md'点以上の温度で加工することにより、加工性を害するεマルテンサイト及びα'マルテンサイトの生成を抑制できるので、加工限界を大幅に改善できる点、及び、
(2)Md'点+200℃以上で焼鈍することにより、加工により生じたγ相中の歪みの回復又はγ相の再結晶が生じ、形状記憶特性が向上する点、
が記載されている。
さらに、特許文献6には、所定の組成を有するFe−Mn−Si系合金を熱処理し、表面に厚さ10μm以上のα相を形成させたFe−Mn−Si系形状記憶合金が開示されている。
同文献には、
(1)Fe−Mn−Si系合金を適切な雰囲気中で熱処理すると、表面に母相(γ相)よりもMn濃度が低い体心立方構造のα相が生成する点、及び、
(2)α相は、γ相よりも耐食性が高く、かつγ相との整合性も良好であるので、母相が変形しても剥離や亀裂が生じにくくなり、十分な耐食性が得られる点、
が記載されている。
国際公開WO2004/090318号公報 特開平11−264425号公報 特表2000−501778号公報 特開平10−36943号公報 特開平2−221321号公報 特開平7−292448号公報
一般に、形状記憶合金を変態温度以下で塑性変形させた後、これを変態温度以上に加熱すると、形状は塑性変形前の状態に戻る。しかしながら、これを再び変態温度以下に冷却しても、通常、低温で塑性変形させた後の形状には戻らない。このような高温相の形状のみを記憶する現象は、特に「一方向形状記憶効果」と呼ばれている。
一方、ある種の形状記憶合金をマルテンサイト状態で強加工したり、あるいはマルテンサイト状態で変形させた後に拘束加熱すると、低温相の形状も一部記憶させることができる。このような高温相の形状と低温相の形状の双方を記憶する現象は、特に「二方向形状記憶効果」と呼ばれている。例えば、部分的に集合組織を形成させたTiNi系合金は、二方向形状記憶効果を示すことが知られている。
上述したコイルエキスパンダ、オイル流量コントロールシステム、アクチュエータなどの各種の用途において、形状記憶合金には、二方向の動作特性が必要となる場合が多い。そのため、一方向形状記憶効果を持つ形状記憶合金を二方向の動作特性が要求される素子に応用するためには、形状記憶合金と他の部品とを組み合わせて素子に二方向の動作特性を付与する必要がある。二方向の動作特性を付与する方法には、バネやおもりなどと組み合わせて二方向の動作特性を付与する方法(バイアス式)、2個以上の形状記憶部品を使用する方法(差動式)などが知られている。
しかしながら、他の部品と組み合わせて二方向の動作特性を付与する方法は、素子の小型化に限界がある。そのため、その適用分野は限られる。
一方、従来知られている二方向形状記憶合金は、いずれも高価であり、再現性にも乏しいので、実用化例が少ない。また、従来のFe基形状記憶合金は、逆変態(ε→γ)により塑性加工後の形状から塑性加工前の形状に回復させる特性(すなわち、一方向形状記憶効果)を示すが、2方向形状記憶効果を示すものではない。
さらに、形状記憶合金を各種の用途に応用するためには、高い形状回復精度と、形状回復の繰り返しに耐え得る強度が求められる。
しかしながら、低廉であり、二方向の動作特性を持ち、形状回復温度がTiNi系合金より高く(具体的には、90〜100℃以上)、高い形状回復精度を持ち、しかも形状回復の繰り返しに耐えうる強度を持つ合金が提案された例は、従来にはない。
本発明が解決しようとする課題は、低廉であり、二方向の動作特性を持ち、形状回復温度がTiNi系合金より高く、高い形状回復精度を持ち、しかも形状回復の繰り返しに耐えうる高い強度を持つ双方向形状回復合金を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る双方向形状回復合金は、
C<0.20mass%、
13.00≦Mn≦30.00mass%、
0.10≦Si≦6.00mass%、
0.05≦Cr≦12.00mass%、
0.01≦Ni≦3.00mass%、
N<0.100mass%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
次の(1)式を満たすことを要旨とする。
600≦33Mn+11Si+28Cr+17Ni≦1050 ・・・(1)
本発明に係る形状回復合金は、さらに、
(1)Mo、W、V、及びCoから選ばれるいずれか1以上の元素、並びに/又は、
(2)所定量のCu及び/若しくはAl+所定量のNi
をさらに含んでいても良い。
Fe−Mn−Si系合金において、成分元素の含有量を最適化すると、冷却時にはマルテンサイト変態(γ→ε)による体積収縮が起こり、加熱時には逆変態(ε→γ)による体積膨張が起こる。この膨張・収縮に伴う形状変化は可逆的であり、その形状変化量は相対的に大きい。また、形状回復温度はTiNi系合金より高く(具体的には、90〜100℃以上)、形状回復精度も高い。
さらに、所定の組成を有するFe−Mn−Si系合金は、安価であり、形状回復の繰り返しに耐えうる強度も併せ持つ。特に、Mo等の置換型固溶強化元素やCu等の析出強化型元素を添加すると、強度がさらに向上する。
そのため、本発明に係る双方向形状回復合金は、二方向の動作特性が要求される各種機能部品に用いられることができる。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 双方向形状回復合金]
本発明に係る双方向形状回復合金は、以下のような元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、しかも成分バランスが一定の条件を満たすものからなる。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
なお、本発明において、「双方向形状回復」とは、実質的に塑性変形を利用することなく、主として相変態に伴う膨張と収縮を利用して、低温時の形状と高温時の形状とを可逆的に変化させることをいう。
[1.1. 主構成元素]
(1) C<0.20mass%。
Cは、Fe中に侵入型元素として存在し、強力なオーステナイト形成元素である。また、通常の鋼では、焼入れ処理によりα'(BCT)相を形成し、強度向上に繋がる。しかしながら、FCC−BCT変態は、体積膨張を伴う変態である。また、この変態は、材料の冷却速度に強く依存し、冷却速度が変わるとベイナイト組織やフェライト組織となり安定した体積膨張が得られない。さらに、この変態により、双方向形状回復効果は得られない。
従って、双方向形状回復効果を発現させるためには、焼入れによりα'相を生成させないようにする必要がある。そのためには、C含有量は、0.20mass%未満である必要がある。C含有量は、さらに好ましくは、0.10mass%未満である。
(2) 13.00≦Mn≦30.00mass%。
Mnは、γ⇔εの双方向変態を安定的に実現するために必須となる添加元素である。Mnは、高温でオーステナイト形成元素として働く。低温では、含有量が多くなるほど、εマルテンサイトが生成しやすくなる。εマルテンサイトを生成させるためには、Mn含有量は、13.00mass%以上である必要がある。Mn含有量は、さらに好ましくは、15.00mass%以上である。
一方、Mn含有量が過剰になると、冷却時の変態温度が大きく低下し、−50℃でもオーステナイト相が安定相となる可能性がある。従って、Mn含有量は、30.00mass%以下である必要がある。Mn含有量は、さらに好ましくは、25.00mass%未満である。
(3) 0.10≦Si≦6.00mass%。
Siは、積層欠陥エネルギーを低減し、γ相からε相への変態を促進する元素である。そのためには、Si含有量は、0.10mass%以上である必要がある。Si含有量は、さらに好ましくは、0.30mass%以上である。
一方、Si含有量が過剰になると、固溶強化が顕著となり、材料の延性低下を招く.従って、Si含有量は、6.00mass%以下である必要がある。Si含有量は、さらに好ましくは、4.00mass%以下である。
(4) 0.05≦Cr≦12.00mass%。
Crは、γ相からε相への変態温度をコントロールする作用と、材料の耐食性を向上させる作用とを持つ。このような効果を得るためには、Cr含有量は、0.05mass%以上である必要がある。
一方、Crは高温でα安定化元素として作用するので、Cr含有量が過剰になると、熱処理後の組織をα'マルテンサイト組織化させる傾向がある。従って、Cr含有量は、12.00mass%以下である必要がある。
(5) 0.01≦Ni≦3.00mass%。
Niは、その添加量を変えることで、熱処理時の組織変化を招くことなく変態温度を調節する作用を持つ。このような効果を得るためには、Ni含有量は、0.01mass%以上である必要がある。
一方、Niは、強力なオーステナイト形成元素であるので、Ni含有量が過剰になると、組織変化が生ずる。従って、Ni含有量は、3.00mass%以下である必要がある。
(6) N<0.100mass%。
Nは、AlなどとN化合物を形成し、熱間加工性や冷間加工性に悪影響を与える。また、Nは、Fe中に侵入型元素として固溶し、強力なオーステナイト形成元素となる。N含有量が過剰になると、Cと同様に、変態挙動が変化し、焼入れ処理によりα'(BCT)相を形成する。
従って、双方向形状回復効果を発現させるためには、焼入れによりα'相を生成させないようにする必要がある。そのためには、N含有量は、0.100mass%未満である必要がある。N含有量は、さらに好ましくは、0.050mass%未満である。
[1.2. 不可避的不純物]
不可避的不純物としては、具体的には、以下のようなものがある。
(1) P<0.050mass%。
Pは、不可避的に原材料より混入する。Pは、結晶粒界に偏析して材料の熱間加工性を低下させる元素である。そのため、P含有量は、0.050mass%未満とするのが好ましい。P含有量は、さらに好ましくは、0.010mass%未満である。
(2) S<0.100mass%。
Sは、不可避的に原材料より混入する。Sは、結晶粒界に偏析し、熱間加工性を阻害する。本発明においては、Mn含有量が多いので、Sが混入してもMnSを形成し、熱間加工性に与える影響は少ないが、Sは少ないほど良い。そのため、S含有量は、0.100mass%未満とするのが好ましい。S含有量は、さらに好ましくは、0.050mass%未満である。
(3) O<0.050mass%。
Oは、不可避的に鋼中に混入する。Oは、AlやSiと酸化物を形成し、熱間加工性や冷間加工性に悪影響を与える。そのため、O含有量は、0.050mass%未満とするのが好ましい。O含有量は、さらに好ましくは、0.020mass%未満である。
(4) Mo<0.10mass%。
(5) W<0.10mass%。
(6) V<0.05mass%。
(7) Co<0.10mass%。
Mo、W、V、及びCoは、いずれも不可避的に鋼中に混入するおそれがある。これらの元素は、変態温度や組織形態に大きく影響を与える元素ではないが、上記の値未満とするのが好ましい。
なお、これらの元素は、いずれも置換型固溶強化元素として機能する。このような場合には、上記の値以上を添加しても良い。この点については、後述する。
(8) Cu<0.10mass%。
Cuは、不可避的に原料より混入する元素である。Cu含有量が過剰になると、赤熱脆性を示し、その加工性を著しく劣化させる。加工性を維持するためには、Cu含有量は、0.10mass%未満とするのが好ましい。Cu含有量は、さらに好ましくは、0.05mass%未満である。
なお、所定量のNiを添加することを条件としてCuを積極的に添加し、Cuの2次析出による析出強化を行うこともできる。このような場合には、Cu含有量は、最大で1.00mass%まで許容される。この点については、後述する。
(9) Al<0.10mass%。
Alは、Siと同様、脱酸材として使用されるため、不可避的に混入する。Alは、Oと酸化物を形成し、熱間加工性や冷間加工性に悪影響を与える。そのため、Al含有量は、0.10mass%未満とするのが好ましい。
なお、所定量のNiを添加することを条件としてAlを積極的に添加し、AlNi金属間化合物の2次析出による強度向上を図ることもできる。このような場合には、Al含有量は、最大で1.00mass%まで許容される。この点については、後述する。
[1.3. 成分バランス]
本発明に係る双方向形状回復合金は、成分元素が上述した範囲にあることに加えて、次の(1)式を満たしている必要がある。
600≦33Mn+11Si+28Cr+17Ni≦1050 ・・・(1)
(1)式から求められる値は、合金の変態温度と相関があり、経験的に求められたものである。Mn、Si、Cr、及びNiの成分バランスを最適化すると、高温(300℃以上)でγ相、低温(−50℃以下)でε相を安定して確保することができる。
上述したように、Mnは、主にオーステナイト形成元素であると同時に、冷却後にε相を形成させる元素である。Siは、低温でγ相からε相の形成を促進するが、高温でα安定化元素として作用する。Crは、高温でα安定化元素として作用するが、γ相からε相への変態温度をコントロールする元素である。Niは、γ相からε相への変態温度をコントロールする元素である。
(1)式の値が小さくなるほど、加熱変態終了温度(Af点)が高くなる。Af点が高すぎると、逆変態(ε→γ)時にクリープ変形が生じ、形状回復精度が低下するおそれがある。高い形状回復精度を得るためには、Af点は400℃以下である必要がある。そのためには、(1)式の値は、600以上である必要がある。(1)式の値は、さらに好ましくは、700以上である。
一方、(1)式の値が高くなるほど、加熱変態開始温度(As点)が低くなる。(1)式の値が高くなりすぎると、As点が室温以下となり、TiNi系合金の形状回復温度より高い温度において形状回復させるのが困難となる。As点をTiNi系合金の形状回復温度より高くし、90〜100℃以上の温度において形状回復させるためには、(1)式の値は、1050以下である必要がある。(1)式の値は、さらに好ましくは、900以下である。
[1.4. 変態温度]
マルテンサイト変態(γ→ε)は、冷却変態開始温度(Ms点)で開始し、冷却変態終了温度(Mf点)で終了する。一方、逆変態(ε→γ)は、加熱変態開始温度(As点)で開始し、加熱変態終了温度(Af点)で終了する。
上述したように、(1)式の値を最適化すると、As点を90℃以上、あるいは100℃以上にすることができる。
また、双方向形状回復効果を二方向の動作特性が要求される素子に応用する場合、可逆的な形状変化が狭い温度域で生じることが望ましい。すなわち、加熱変態終了温度(Af)と冷却変態開始温度(Ms)の差(Af−Ms)は、小さいほど良い。一般に、低合金鋼におけるAf−Msは、200〜300℃以上であるが、本発明に係る双方向形状回復合金においては、上述したMn、Siなどの変態温度に影響を与える成分元素を最適化することにより、Af−Msを200〜300℃以下にすることができる。加熱・冷却時のヒステリシスを小さくするためには、Af−Msは、150℃以下が好ましい。Af−Asは、さらに好ましくは、100℃以下である。
なお、変態温度は、膨張収縮曲線の傾きが変化する前後で接線を引き、その交点から求めることができる。
[1.5. 副構成元素]
本発明に係る双方向形状回復合金は、上述した元素に加えて、以下のいずれか1以上の元素をさらに含んでいても良い。
[1.5.1. 置換型固溶強化元素]
(1) 0.10≦Mo≦2.00mass%。
(2) 0.10≦W≦2.00mass%。
(3) 0.05≦V≦1.00mass%。
(4) 0.10≦Co≦5.00mass%。
本発明に係る双方向形状回復合金において強度向上が望まれる場合、加熱⇔冷却による変態挙動に影響を与えない限りにおいて、置換型固溶強化元素を添加することができる。置換型固溶強化元素としては、Mo、W、V、及びCoがある。これらは、いずれか1種を添加しても良く、あるいは、2種以上を添加しても良い。
固溶強化を図るためには、Mo、W、V、及びCoの含有量は、それぞれ、上記の下限値以上とするのが好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になると、効果が飽和し、あるいは高コスト化するだけでなく、変態挙動に影響を与える場合がある。従って、これらの元素の含有量は、それぞれ、上記の上限値以下とするのが好ましい。
[1.5.2. 析出強化型元素]
(5) 0.10≦(Cu+Al)≦1.00mass%。
(6) Ni≧(Cu+Al)。
Cuを単独で添加すると、Cuが粒界に析出し、熱間加工性が低下する。しかしながら、Cuを添加すると同時に所定量のNiを添加すると、NiがCuの粒界への析出を抑制する。その結果、Cuが粒内において2次析出し、強度が向上する。
このような効果を得るためには、Cu含有量は、0.10mass%以上とするのが好ましい。一方、Cu含有量が過剰になると、熱間加工性が低下する.従って、Cu含有量は、1.00mass%以下とするのが好ましい。
また、熱間加工性を低下させることなく、析出強化を図るためには、Niは、Cuの等量以上の量を添加するのが好ましく、さらに好ましくは、Cuの2倍以上である。
同様に、Alを単独で添加すると、酸化物が多量に生成し、熱間加工性や冷間加工性が低下する。しかしながら、Alを添加すると同時に所定量のNiを添加すると、NiAl系金属間化合物が2次析出し、強度が向上する。
このような効果を得るためには、Al含有量は、0.10mass%以上とするのが好ましい。一方、Al含有量が過剰になると、熱間加工性や冷間加工性が低下する.従って、Al含有量は、1.00mass%以下とするのが好ましい。
また、熱間加工性や冷間加工性を低下させることなく、析出強化を図るためには、Niは、Alの等量以上の量を添加するのが好ましく、さらに好ましくは、Alの2倍以上である。
さらに、所定量のNiを添加することを条件として、CuとAlを同時に添加し、CuとAlの双方により析出強化を図ることもできる。このような効果を得るためには、Cu及びAlの含有量は、総量で0.1mass%以上とするのが好ましい。
一方、熱間加工性や冷間加工性の低下を抑制するためには、Cu及びAlの含有量は、総量で1.00mass%以下とするのが好ましい。
Cu及びAlを同時に添加する場合においても、Niは、Cu及びAlの総量の等量以上の量を添加するのが好ましく、さらに好ましくは、Cu及びAlの総量の2倍以上である。
[2. 双方向形状回復合金を用いた機能部品]
本発明に係る双方向形状回復合金は、実質的に塑性変形を用いることなく、γ⇔εの変態に伴う膨張・収縮を利用して、低温時の形状と高温時の形状とを可逆的に変化させる作用がある。
そのため、このような双方向形状回復合金は、
(1)高温での形状と低温での形状の変化を利用したスイッチやアクチュエータ、
(2)温度変化に伴う形状回復量をバネや梃子の原理を用いて増幅する機構を備えたアクチュエータ、
(3)形状回復温度100℃以上が要求されるスイッチやアクチュエータ、
(4)ピストンリグのエキスパンダ(例えば、特許文献1参照)、
(5)粘性流体継ぎ手装置のオイル供給機構に用いられる温度感応部材(例えば、特許文献2参照)、
などの機能部品に適用することができる。
また、本発明に係る双方向形状回復合金は、そのままの状態で使用することもできるが、表面に、各種の表面処理を施した状態で使用しても良い。表面処理方法としては、例えば、窒化処理、PVD処理、CVD処理などがある。このような表面処理により、耐酸化性や耐摩耗性を付与することができる。
表面処理により耐摩耗性が付与された双方向形状回復合金は、相手材との接触環境下で使用される機能部品(例えば、コイルバネ、ピストンリングなど)に用いることができる。
[3. 双方向形状回復合金の製造方法]
本発明に係る双方法形状回復合金は、所定の比率で配合された原料を溶解し、鋳造することにより製造することができる。鋳塊を所定の形状に鍛造した後、鍛造の影響を除くために溶体化処理(ST処理)+空冷を行うのが好ましい。溶体化処理温度は、700〜1200℃が好ましい。
また、析出強化型元素を添加している場合には、溶体化処理+空冷後、時効処理を行うのが好ましい。時効処理は、400℃以上600℃以下の温度において、0.5時間以上5時間未満行うのが好ましい。
[4. 双方向形状回復合金の作用]
図1に、共析鋼(0.77mass%C)の温度変化及び相変態に伴う長さの変化を示す。
共析鋼は、室温近傍(A点)においてフェライト(α)相組織になっている。この共析鋼をオーステナイト(γ)相領域まで加熱すると、図1に示すように、共析鋼は、A→B→C→D線に沿って膨張→収縮→膨張する。また、共析鋼をγ相領域から室温まで徐冷すると、共析鋼は、D→E→F→A線に沿って収縮→膨張→収縮し、加熱前の形状に戻る。加熱時にB→C線に沿って収縮するのは、α→γ変態が生じるためである。また、冷却時にE→F線に沿って膨張するのは、γ→α変態が生じるためである。
一方、共析鋼をγ相領域から急冷すると、図1に示すように、破線(D−H線)に沿って収縮→膨張し、加熱前に比べて形状が変化する。また、急冷した共析鋼を再度加熱すると、共析鋼は、H→J→K→L→M→N→O線に沿って膨張及び収縮を繰り返し、最終的にはD点に達する。
急冷後の長さ(H点)が加熱前の長さ(A点)より長くなるのは、共析鋼をγ相領域からMs点以下の温度に急冷することによって、体積膨張を伴うマルテンサイト変態(γ(FCC)→α'(BCT)変態)が生じるためである。また、400℃以下の温度において熱膨張に伴う長さ変化以上の膨張又は収縮が生じるのは、温度の上昇とともにε−炭化物の生成、残留γの分解、及びθ−炭化物の生成が生じるためである。
一般に用いられるFe基合金は、このような熱処理により生ずるマルテンサイト変態やその逆変態を組織制御に積極的に用いている。
しかしながら、γ→α'変態は、冷却時に体積膨張を伴うため、冷却時に収縮することが求められる形状回復合金として使用することができない。
また、γ→α'変態は、材料の冷却速度に強く依存する。そのため、冷却速度が変わると、ベイナイト組織やフェライト組織となり、安定した体積膨張(すなわち、形状回復の再現性)が得られない。
さらに、加熱時のα→γ変態終了温度(Af点)は、700℃以上と高い。また、Af点と冷却時のγ→α'変態開始温度(Ms点)との差は、200〜300℃以上であり、加熱・冷却時のヒステリシスが大きい。
これに対し、本発明に係る双方向形状回復合金は、Fe−Mn−Si合金をベースとし、成分元素の含有量を最適化しているので、高温(300℃以上)から低温(−50℃以下)に冷却する際にγ(FCC)相からε(HCP)相への変態が起こり、α(BCC)相やα'(BCT)相が生成しない。γ→ε変態は、体積収縮を生じるので、冷却時には熱収縮に伴う形状変化以上の収縮を伴う。
一方、加熱時には、ε→γ変態が生じるので、熱膨張に伴う形状変化以上の膨張を伴う。しかも、この膨張・収縮に伴う形状変化は可逆的であり、形状を回復させるために塑性変形を必要としない。
また、本発明に係る双方向形状回復合金は、形状変化量が相対的に大きい。具体的には、成分元素を最適化することにより、加熱時の長さ変化率(ΔL/L0×100)は、0.3%以上、0.5%以上、あるいは0.7%以上となる。双方向形状回復合金の形状を最適化する(例えば、バネ形状とする)と、この形状変化量をさらに増幅させることができる。
また、冷却時の長さ変化率は、加熱時の長さ変化率と同等の値を示す。具体的には、加熱冷却サイクル1回当たりの長さの変化率は0.1%以下であり、形状回復率は極めて高い。さらに、加熱冷却サイクルを数百回繰り返しても、形状回復率の経時劣化が少ない。
また、本発明に係る双方向形状回復合金は、Fe−Mn−Si合金をベースとしているので、その形状回復温度(As点)は、従来のTiNi系合金より高い。また、成分元素を最適化することにより、加熱冷却時のヒステリシス(Af−Ms)は、一般のFe基合金より小さくなる。
具体的には、(1)式を満足するように成分元素を最適化すると、As点は、90℃以上、あるいは100℃以上となる。同様に、(1)式を満足するように成分元素を最適化すると、Af−Msは、200℃以下、150℃以下、あるいは100℃以下となる。
さらに、本発明に係る双方向形状回復合金は、Fe−Mn−Si合金をベースとしているので、安価であり、形状回復の繰り返しに耐え得る強度も併せ持つ。特に、Mo等の置換型固溶強化元素やCu等の析出強化型元素を添加すると、強度がさらに向上する。
そのため、本発明に係る双方向形状回復合金は、二方向の動作特性が要求される各種機能部品に用いることができる。
(実施例1〜28、比較例1〜10)
[1. 試料の作製]
表1及び表2に示す化学組成の材料(各50kg)を高周波加熱溶解炉で溶解し、鋳造した。得られた鋳塊を1200℃×24h均熱保持した後、800℃以上の温度でφ30まで鍛造し、徐冷した。鍛造条件の影響などを省くため、800℃×30minの溶体化処理+空冷を行った。
さらに、0.1mass%以上のCuを添加した実施例10〜13、及び0.1mass%以上のAlを添加した実施例14〜18については、溶体化処理+空冷後、時効処理を行った。時効温度は500℃、時効時間は1.5時間とした。
Figure 2010156041
Figure 2010156041
[2. 試験方法]
[2.1. 変態温度及び長さ変化率]
示差熱膨張率測定装置を用いて、加熱・冷却時の変態温度(As、Af、Ms、Mf)、及び加熱変態時の長さ変化率(膨張率)を測定した。試験片形状はφ5×20mm、加熱時の昇温速度は10℃/min、冷却時の降温速度は10℃/minとした。
[2.2. 組織]
−50℃で保持した試料についてX線回折を行い、相を同定した。X線には、CoのKα線を用いた。
[2.3. 熱疲労試験]
平行部長さ40mmの試験片を用いて熱疲労試験を行った。試験片の平行部の内、歪測定部分(長さ15mmの領域)を加熱し、最高温度に達したところで試験片の両端を拘束した。この状態から冷却及び加熱を300サイクル繰り返し、温度変化と試験片に発生する応力との関係を調査した。最高温度は300℃、最低温度は50℃とした。また、加熱速度は平均250℃/minとし、冷却速度は平均83℃/minとした。
[2.4. 引張試験]
JIS 14A号(M18)試験片を用いて引張試験を行った。引張試験条件は、JIS Z2241に準じた。
[3. 結果]
[3.1. 変態温度、長さ変化率、及び組織]
表3に、加熱変態時の長さ変化率(ΔL/L0×100)、Af−Ms、As、(1)式の値及び−50℃での組織を示す。
Figure 2010156041
比較例1(JST)及び比較例2(NSC)は、(1)式の値が1050を超えているために、Asが低い。比較例3(JST−2)は、Crが過剰であり、かつ(1)式の値が1050を超えているために、Af−Msが600℃を超え、冷却時にα相が生成した。
比較例4(SUS304相当)は、Niが過剰であるために、−50℃においてもγ単相であった。比較例5(SUS420)、比較例6、及び比較例7は、いずれも成分バランスが適切でないために、α相が生成した。
比較例8は、(1)式の値が1050を超えているために、Asが低い。比較例9は、Crが過剰であるために、α'相が生成した。さらに、比較例10は、Nが過剰であるために、−50℃においてもγ単相であった。
これに対し、実施例1〜28は、成分が最適化されているので、いずれも−50℃においてε相を含み、α相及びα'相を含まない。加熱時の長さ変化率は、いずれも0.3%以上であった。Af−Msは、いずれも300℃以下であり、Asは、いずれも90℃以上であった。
図2に、実施例7の合金の加熱−冷却時の変態曲線を示す。図2より、加熱冷却時にγ⇔ε変態が生じ、これによって可逆的な形状変化が生じていることがわかる。
図3に、実施例及び比較例の合金のAf−MsとAsとの関係を示す。組織がε相又はε+γ相である実施例の合金は、Asが比較的低温側にあり、Af−Msも相対的に小さい。一方、α相又はα'相を含む比較例の合金は、Asが600℃以上になると同時に、Af−Msも大きくなる傾向が認められる。
[3.2. 熱疲労試験]
図4に、実施例2で得られた合金の1サイクル目、100サイクル目、及び300サイクル目における温度変化と試験片に発生する応力の関係を示す。
図4より、
(1)熱疲労試験中において、加熱変態温度(As、Af)及び冷却変態温度(Ms)は、ほぼ一定になっていること、
(2)発生応力も、繰り返し回数にかかわらず、ほぼ一定であること、
がわかる。
以上の結果から、本発明に係る合金は、双方向の形状回復合金として安定した特性を発揮することがわかった。
[3.3. 引張試験]
表4に、引張試験の結果を示す。表4より、
(1)比較例中には強度の低い材料が含まれているのに対し、実施例1〜28の材料は、いずれも引張強度が800MPaを超えている、
(2)主構成元素に加えて、所定量のAl及び/又はCuを添加し、時効処理を行うと、引張強さがさらに向上する、
(2)主構成元素に加えて、所定量のMo、W、V、及び/又は、Coを添加すると、引張強さがさらに向上する、
ことがわかる。
Figure 2010156041
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る双方向形状回復合金は、温度変化を利用したスイッチやアクチュエータ、ピストンリングのエキスパンダ、粘性流体継ぎ手のオイル供給機構に用いられる温度感応部材などに使用することができる。
共析鋼(0.77mass%C)の温度変化及び相変態に伴う長さの変化を示す図である。 実施例7の合金の加熱−冷却時の変態曲線を示す図である。 実施例及び比較例の合金のAf−MsとAsとの関係を示す図である。 実施例2で得られた合金の熱疲労試験の結果である。

Claims (4)

  1. C<0.20mass%、
    13.00≦Mn≦30.00mass%、
    0.10≦Si≦6.00mass%、
    0.05≦Cr≦12.00mass%、
    0.01≦Ni≦3.00mass%、
    N<0.100mass%
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    次の(1)式を満たす双方向形状回復合金。
    600≦33Mn+11Si+28Cr+17Ni≦1050 ・・・(1)
  2. 加熱変態終了温度(Af点)と冷却変態開始温度(Ms点)の差(Af−Ms)が150℃以下であり、
    加熱変態開始温度(As点)が100℃以上である請求項1に記載の双方向形状回復合金。
  3. 0.10≦Mo≦2.00mass%、
    0.10≦W≦2.00mass%、
    0.05≦V≦1.00mass%、及び、
    0.10≦Co≦5.00mass%
    のいずれか1以上をさらに含む請求項1又は2に記載の双方向形状回復合金。
  4. 0.10≦(Cu+Al)≦1.00mass%をさらに含み、
    Ni≧(Cu+Al)である
    請求項1から3までのいずれかに記載の双方向形状回復合金。
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