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JP2010004760A - 糸状菌プロテアーゼの生産方法 - Google Patents

糸状菌プロテアーゼの生産方法 Download PDF

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JP2010004760A JP2008165094A JP2008165094A JP2010004760A JP 2010004760 A JP2010004760 A JP 2010004760A JP 2008165094 A JP2008165094 A JP 2008165094A JP 2008165094 A JP2008165094 A JP 2008165094A JP 2010004760 A JP2010004760 A JP 2010004760A
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Abstract

【課題】糸状菌プロテアーゼの生産方法、並びに当該方法の実施に有用な糸状菌用発現ベクターおよび形質転換体を提供する。
【解決手段】糸状菌体内で機能する選択マーカー遺伝子配列、糸状菌体内で機能するプロモーター配列、特定の塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるプロテアーゼ遺伝子、および糸状菌体内で機能するターミネーター配列を有する糸状菌用発現ベクター(好ましくはセルフクローニングベクター)、前記ベクターで形質転換された糸状菌および前記糸状菌を培養し回収するプロテアーゼの生産方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、糸状菌プロテアーゼの生産方法、並びに当該方法の実施に有用な糸状菌用発現ベクターおよび形質転換体に関する。
プロテアーゼは、衣料用洗剤をはじめとする各種洗浄剤、化粧料、浴用剤、食品改質剤、消化補助剤或いは消炎剤といった様々な用途、分野で利用され、工業用酵素の中で最も生産量が多い。食品工業においても、食品タンパク質からの調味料としてのアミノ酸製造、食品の苦味や雑味の低減、食品へのコクや濃厚感付与のためのペプチド製造、栄養源の高い腸吸収の良いペプチド製造、血圧降下活性などの機能性食品素材としてのペプチド製造、食品に混濁する不要タンパク質の除去などにおいて、プロテアーゼは重大な働きを有する。食品工業で使用されるプロテアーゼは、微生物由来のものが多く、Aspergillus属、Bacillus属、Rhizopus属のものが多い。特に、Aspergillus属の麹菌(Aspergillus oryzae)由来のプロテアーゼは、幅広いpHに対応できるものが多く、また液体培養や固体培養などの培養条件の違いで種々のタイプの分子種を有するプロテアーゼ酵素剤を提供できることから、食品業界で最も汎用されている。
なかでも血圧降下活性を有する乳たんぱく質由来のVPP, IPPなどのラクトトリペプチドは、麹菌由来のプロテアーゼ酵素剤で有利に生産できることから、機能性食品材料としてのペプチド生産にも麹菌由来のプロテアーゼは非常に有用である(非特許文献1)。
ただ、機能性ペプチド製造においては、現状の麹菌由来のプロテアーゼ酵素剤にも弱点がある。より具体的には、かかる酵素剤は、麹菌の培養抽出物を組成とするため、特性が不明な複数のペプチダーゼを含んでおり、このため、食品タンパク質に作用させた場合、目的の機能性ペプチドが過分解され、アミノ酸にまで変換されてしまう。
上記課題を解決するために、反応時間、反応pH、反応温度、食品タンパク質と酵素剤の量比、酵素剤の併用など、ケースバイケースで対応せざるを得ないのが現状である。
かかる課題を解決するためには、分子種が明らかなプロテアーゼ酵素剤を、安全性が高く古くから清酒や醤油などの醸造食品の製造に利用されてきた糸状菌、特に麹菌により提供できることが望ましいが、未だそのような技術は提供されていないのが現状である。
British Journal of Nutrition, 94, 84-91 (2005)
機能性ペプチドの生産に有用な糸状菌、特に麹菌に由来するプロテアーゼ酵素剤を工業的に生産するためには分子種が明らかなプロテアーゼが生産できるシステムの構築が必要である。そこで本発明は、糸状菌に由来し、分子種が明らかなプロテアーゼを、糸状菌を宿主として生産する方法、特にセルフクローニング法により生産する方法を提供することを目的とする。また本発明は、当該プロテアーゼの生産に用いるための材料、すなわち糸状菌用の発現ベクターおよび形質転換体を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ねた結果、配列番号11〜20のいずれかに記載するアミノ酸配列を有する糸状菌由来のプロテアーゼについて、上記システムの構築が可能であり、これらのプロテアーゼを、糸状菌を宿主とするセルフクローニング法を用いて効率よく、しかも菌体外(培地上清)に生産することができることを確認して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の実施態様を有する。
(I)糸状菌用発現ベクター
(I-1)糸状菌体内で機能する選択マーカー遺伝子配列、糸状菌体内で機能するプロモーター配列、配列番号1〜10に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるプロテアーゼ遺伝子、および糸状菌体内で機能するターミネーター配列を有する糸状菌用発現ベクター。
(I-2)実質的に糸状菌に由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである、(I-1)に記載する糸状菌用発現ベクター。
(I-3)直鎖状であることを特徴とする、(I-1)または(I-2)に記載する糸状菌用発現ベクター。
(I-4)糸状菌がアスペルギルス属に属する糸状菌である、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する糸状菌用発現ベクター。
(II)形質転換体
(II-1)(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する糸状菌用発現ベクターで形質転換されてなる糸状菌。
(II-2)アスペルギルス属に属する糸状菌である、(II-1)に記載する糸状菌。
(III)プロテアーゼの生産方法
(III-1)(II-1)または(II-2)に記載する形質転換された糸状菌を培地で培養し、当該培地から配列番号11〜20に記載されるアミノ酸配列からなる群より選択されるいずれかの一つのアミノ酸配列からなるプロテアーゼを回収する工程を含む、プロテアーゼの生産方法。
本発明の糸状菌用発現ベクターおよび生産方法によれば、分子種の明らかな糸状菌由来のプロテアーゼを、糸状菌を宿主として用いて効率よく製造することができる。このため、本発明の方法によれば、分子種の明らかな所望のプロテアーゼを工業的に製造することができる。
また直鎖状の糸状菌用発現ベクターは、(1)構築したプラスミドから1ステップのPCRで取得できるなど、環状の発現ベクターと比べて少ないステップで調製することができること、(2)宿主としてロイシン要求性変異株を使用する場合に、当該変異を直接相補することができること、および(3)形質転換効率が環状の発現ベクターと比べて高いという利点がある。
本発明が対象とする糸状菌としては、麹菌、及び麹菌が属する糸状不完全菌類を挙げることができる。なかでも好ましくはアスペルギルス属(Aspergillus)、ムコール属(Mucor)、カンジダ属(Candida)、トリコデルマ属(Trichoderma)、およびノイロスポラ属(Neurospora)に属する糸状菌であり、より好ましくはアスペルギルス属(Aspergillus)に属する糸状菌である。アスペルギルス属糸状菌としては、特に制限されないが、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terrus)、およびアスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)などを挙げることができる。なかでも、長年清酒、醤油、味噌、みりんなどの醸造食品に利用されてきた安全な微生物であり、わが国の産業において利用頻度の高い宿主である点で、麹菌アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)が好ましい。
(1)糸状菌用発現ベクター
本発明の糸状菌用発現ベクターは、糸状菌またはその変異株を宿主として、当該宿主内で配列番号11〜20のいずれかに記載するアミノ酸配列を有する糸状菌プロテアーゼを発現し産生することのできるベクターである。かかるベクターは、上記プロテアーゼをコードする配列番号1〜10のいずれかに記載される塩基配列を有するプロテアーゼ遺伝子に加えて、糸状菌体内で機能するプロモーター配列、糸状菌体内で機能するターミネーター配列、および糸状菌体内で機能し、形質転換体の選択に好適に使用される選択マーカー遺伝子配列を有する。
(1-1)糸状菌プロテアーゼ
本発明が対象とするプロテアーゼは、配列番号11〜20に記載するいずれかのアミノ酸配列を有する糸状菌由来、特に麹菌由来のプロテアーゼである。これらのプロテアーゼのうち、配列番号11〜13に示すプロテアーゼはアルカリ性プロテアーゼ、配列番号14〜17に示す酸性カルボキシペプチダーゼ、配列番号18に示すプロテアーゼは酸性プロテアーゼ、および配列番号19〜20に示すプロテアーゼは中性プロテアーゼに分類することができる。
なお、これらの各プロテアーゼのアミノ酸配列とこれらをコードする遺伝子(プロテアーゼ遺伝子)の塩基配列との対応関係を、下表に記載する:
Figure 2010004760
(1-2)選択マーカー遺伝子
選択マーカー遺伝子は、糸状菌体内、特にアスペルギルス属糸状菌体内で選択マーカーとして機能するもの、すなわち発現できるものであればよいが、好ましくは糸状菌、特にアスペルギルス属糸状菌に由来する選択マーカー遺伝子である。かかる選択マーカー遺伝子として、例えば、niaD(Biosci.Biotechnol.Biochem.,59,1795-1797(1995))、argB(Enzyme Microbiol Technol, 6, 386-389, (1984))、sC(Gene, 84, 329-334, (1989))、ptrA(Biosci Biotechnol Biochem, 64, 1416-1421, (2000))、pyrG(Biochem Biophys Res Commun, 112, 284-289, (1983)),amdS(Gene, 26, 205-221, (1983))、オーレオバシジン耐性遺伝子(Mol Gen Genet, 261, 290-296, (1999))、ベノミル耐性遺伝子(Proc Natl Acad Sci USA, 83, 4869-4873, (1986))、及びハイグロマイシン耐性遺伝子(Gene, 57, 21-26, (1987))から選ばれるマーカー遺伝子を挙げることができる。
これらの選択マーカー遺伝子は、上記文献に記載された配列に基づいて設計されたプライマーを用いて、アスペルギルス属糸状菌の染色体DNAを鋳型としてPCRを行う方法、または上記文献に記載された配列に基づいて設計されたプローブを用いてアスペルギルス属糸状菌の染色体DNAライブラリーからハイブリダイゼーションにより取得する方法などにより容易に入手することができる。また、宿主の糸状菌として、例えばロイシン要求性などの栄養要求性変異株を用いる場合、選択マーカー遺伝子として当該栄養要求性を相補する野生型遺伝子を用いることもできる。例えば、宿主がロイシン要求性変異株である場合、そのロイシン要求性を相補できる選択マーカー遺伝子を用いることができ、かかる遺伝子としてはβ−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードするアスペルギルス・ニジュランス由来の遺伝子ANleu2およびアスペルギルス・オリゼ由来の遺伝子leu2を挙げることができる。なお、これらの場合、宿主として用いる糸状菌は、選定された選択マーカーについての機能的遺伝子を有していない株を用いる必要がある。
(1-3)プロモーター
プロモーターは、糸状菌体内、特にアスペルギルス属糸状菌体内でプロモーターとして機能するものであればよいが、好ましくは糸状菌、特にアスペルギルス属糸状菌に由来するプロモーターである。かかるプロモーターとして具体的には、例えばα−アミラーゼ遺伝子プロモーターamyB(Biosci Biotechnol Biochem,56,1849-1853,(1992)), グルコアミラーゼ遺伝子プロモーターglaA(Gene,108,145-150,(1992))、α−グルコシダーゼ遺伝子プロモーターagdA(Curr Genet, 30,432-438,(1996))、マンガンSOD遺伝子プロモーターsodM(特開2000-224381号公報)、チロシナーゼ遺伝子プロモーターmelO(特開2001−046078号公報)、グルコアミラーゼ遺伝子プロモーターglaB(特開2000−245465号公報、特開平11−243965号公報)等が挙げられる。液体培養に特異的な高発現プロモーターとして、好ましくはsodM、およびmelOを挙げることができ、また固体培養に特異的な高発現プロモーターとして、好ましくはglaBを挙げることができる。
発現ベクターにおけるプロモーターの位置は、糸状菌体内でプロモーターが機能し、所望のプロテアーゼが発現し産生できる位置であれば、特に限定されないが、通常、プロテアーゼ遺伝子配列の上流域に配置される。
(1-4)ターミネーター
ターミネーターは、糸状菌体内、特にアスペルギルス属糸状菌体内でターミネーターとして機能するものであればよいが、好ましくは糸状菌、特にアスペルギルス属糸状菌に由来するターミネーターである。好ましくはアスペルギルス属、より好ましくはアスペルギルス・オリゼに由来する、例えばα−アミラーゼ遺伝子のターミネーター、またはグルコアミラーゼ(glaB)ターミネーター(Gene. 207, 127-134,(1998))等を挙げることができる。
(1-5)糸状菌用発現ベクター
本発明の糸状菌用発現ベクターは、これらの選択マーカー遺伝子、プロモーター、プロテアーゼ遺伝子、およびターミネーターが、直接連結されてなるものであってもよいが、それらの間に1〜2000塩基程度のヌクレオチドが挟まれていてもよい。但し、これらのヌクレオチドの配列は糸状菌由来、好ましくはアスペルギルス属糸状菌に由来する配列であることが望ましい。例えば、目的とするプロテアーゼが菌体内タンパク質として生産されるものである場合は、目的とするプロテアーゼの遺伝子のオープンリーディングフレームに隣接して、上流に糸状菌、好ましくはアスペルギルス属糸状菌の既知分泌タンパク質の遺伝子を配置してもよく、こうすることにより、目的とするプロテアーゼは、上記分泌タンパク質との融合タンパク質として発現産生され、斯くして産生された融合タンパク質は菌体外に分泌される。また、その他のヌクレオチドとして、通常ベクターが備える制限酵素切断部位などを備えていてもよい。
なお、アスペルギルス属糸状菌の分泌タンパク質としては、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ、セロビオハイドロラーゼ、β-グルコシダーゼ、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、キシラナーゼ、ガラクトシダーゼ、フラクトフラノシダーゼ、キシロシダーゼ、ペクチンリアーゼ、およびフィターゼなどが知られている。
また本発明には、直鎖状の糸状菌用発現ベクターおよび環状の糸状菌用発現ベクターの両者が含まれるが、(1)構築したプラスミドから1ステップのPCRで取得できるなど、環状の発現ベクターと比べて少ないステップで調製することができること、(2)宿主としてロイシン要求性変異株を使用する場合に、当該変異を直接相補することができること、および(3)形質転換効率が環状の発現ベクターと比べて高いという点から、好ましくは直鎖状の糸状菌用発現ベクターである。
(2)形質転換体
本発明の形質転換体は、前述する本発明の糸状菌用発現ベクターで糸状菌を形質転換したものである。
宿主は糸状菌であればよいが、高いプロモーター活性を発現させるためには、アスペルギルス属の菌株が好ましく、特にアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terrus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)等のアスペルギルス属糸状菌が好ましい。これらの中では、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・タマリ、アスペルギルス・グラウカスなどが食品産業において有用な菌種である。高いタンパク質生産能及び醸造微生物としての安全性の点で、特にアスペルギルス・オリゼを宿主とすることが好ましい。なお、宿主として用いる糸状菌は、野生株に限らず、糸状菌に由来するものであれば、その変異株であってもよい。かかる変異株としては、前述する選択マーカーに関する機能的遺伝子を有さないように変異してなる株を挙げることができ、具体的には正常にロイシンの生合成ができないようにロイシン生合成を担う遺伝子が変異または欠失しているロイシン要求性変異株:正常にアルギニンの生合成ができないようにアルギニン生合成を担う遺伝子が変異または欠失しているアルギニン要求性変異株:正常にメチオニンの生合成ができないようにメチオニン生合成を担う遺伝子が変異または欠失しているメチオニン要求性変異株:正常にヒスチジンの生合成ができないようにヒスチジン生合成を担う遺伝子が変異または欠失しているヒスチジン要求性変異株:正常に硝酸が資化できないように硝酸資化性遺伝子が変異または欠失しているniaD変異株:正常に硝酸イオンが資化できないように硝酸イオン資化性遺伝子が欠失しているsC変異株などを挙げることができる。
宿主の形質転換方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、Cohenらの方法(塩化カルシウム法)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69:2110 (1972))、プロトプラスト法(Mol.Gen.Genet.,168:111 (1979))、コンピテント法(J.Mol.Biol.,56:209 (1971))、エレクトロポレーション法等を挙げることができる。
(3)プロテアーゼの生産方法
本発明のプロテアーゼの生産方法は、前述した本発明の糸状菌の形質転換体を培養する工程と、培養物から目的タンパク質を回収する工程を含む。
培養工程は、固体培地を用いる固体培養、または液体培地を用いる液体培養のいずれでも行うことができる。好ましくは液体培地を用いた液体培養である。
固体培地としては、糸状菌の培養に使用される公知の固体培地を制限なく使用することができる。固体培地とはその固形の支持担体が栄養源を含むか、又は固形の支持担体に栄養源が添加されものであり、そこに糸状菌が生育できる固形培地を指し示す。このような固体培地として主に、フスマ(小麦などの穀物の殻)、デンプン粉末、米・小麦・大豆の生あるいは蒸したもの、更にはメンブレンや多孔質の人工物(例えば園芸に使われるバーミキュライト)等に栄養源を添加したもの等が挙げられる。特にフスマ、蒸した米が好ましい。
また、液体培地は、糸状菌の培養に使用される公知の液体培地を制限なく使用できる。例えば、用いられる培地としては、炭素源としてグルコース、フルクトース、グリセロール、スターチなどの炭水化物を含有するものが挙げられる。また無機もしくは有機窒素源(例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、カゼインの加水分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン、ビーフ抽出物等)が挙げられる。これらの炭素源および窒素源は、純粋な形で使用する必要はなく、純度の低いものも微量の生育因子や無機栄養素を豊富に含んでいるので有利である。さらに所望により、他の栄養源[例えば、無機塩(例えば、二リン酸ナトリウムまたは二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム)、ビタミン類(例えば、ビタミンB1)、抗生物質(例えば、アンピシリン、カナマイシン)など]を培地中に添加してもよい。具体的な液体培地としては、例えば、ポテトデキストロース培地(ニッスイ社)、または最少培地(2%グルコース(又はスターチ)、0.3% NaNO3、0.2% KCl、0.1% KH2PO4、0.05% MgSO4、0.002% FeSO4、pH6.0)等を挙げることができる。なお、これらは1.5%程度の寒天を添加することで、固体培地として調製することもできる。
形質転換体の培養は、通常pH5.5〜8.5、好ましくはpH6〜8のpH条件;通常25〜42℃、好適には30〜37℃の温度条件で行うことができる。培養時間は、その他の条件によって異なるが、通常2〜7日間程度、好ましくは3〜5日間程度を挙げることができる。
本発明の方法によれば、実施例で示すように目的とするプロテアーゼ(配列番号1〜10)が菌体外に生成される。このため、プロテアーゼの取得に際しては、培養上清を回収すればよい。また寒天培地などのように固体培地を使用する場合も培養上清としての寒天培地を回収すればよい。さらに、これらの上清を、公知のタンパク質精製方法、例えばイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティなどの各種クロマトグラフィーに供することにより目的とするプロテアーゼを単離し回収することができる。
(4)セルフクローニングベクターおよびセルフクローニング株
本発明において、好ましい糸状菌発現ベクターは、糸状菌に由来する選択マーカー遺伝子、糸状菌に由来するプロモーター、糸状菌に由来するプロテアーゼ遺伝子、および糸状菌に由来するターミネーターを含む、実質的に糸状菌に由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである。また本発明において、好ましい形質転換体は、上記セルフクローニングベクターで形質転換してなる糸状菌である。糸状菌のなかでも好ましくは麹菌であり、麹菌のなかでも好ましくはアスペルギルス属に属する麹菌である。
なお、本発明において「セルフクローニング株」とは、前述するように実質的に宿主糸状菌種と同種の生物由来のヌクレオチドから構成される株をいう。また糸状菌に由来しないヌクレオチドが含まれる場合も、せいぜい1〜10塩基程度、特に6〜10塩基程度である。この程度の大きさの挿入配列は、例えば制限酵素部位を導入するために挿入される場合がある。
宿主の糸状菌としては、マーカー遺伝子、プロモーター、ターミネーター及び発現させるプロテアーゼ遺伝子が由来する糸状菌、好ましくはアスペルギルス属糸状菌と同種の菌株が用いられる。形質転換株が容易に選択できるように、導入するマーカー遺伝子と同一またはそれと同機能の遺伝子が欠失または変異した変異株を用いることが好ましい。この場合は、上記で説明した糸状菌用発現ベクターを用いて上記変異株を形質転換した後、導入されたマーカー遺伝子の発現を指標とすることによって、糸状菌用発現ベクター中の目的プロテアーゼ遺伝子が導入された形質転換体を選択することができる。
また、導入するマーカー遺伝子と同一またはそれと同機能の遺伝子が欠失または変異していないアスペルギルス属糸状菌を宿主として用いることもできる。この場合は、目的とするプロテアーゼ遺伝子の発現又はその発現量の増大などを指標とすることによって形質転換体を選択することができる。形質転換方法は、特に限定されず、PEG−カルシウム法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法などの公知の方法を制限なく採用できる。
斯くして得られるセルフクローニング株は、糸状菌、好ましくはアスペルギルス属糸状菌の染色体DNA中に、前述する本発明の糸状菌用発現ベクターが組み込まれた状態で存在し、大腸菌などの異種生物由来のヌクレオチドは実質的に存在しない。
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般的な実験方法は、実験書(サムブルックら(Sambrook, J.)のMolecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版)に従った。また、下記の実施例において、すべてのPCRは、LA−Taq(宝ホールディングス)を用いて行った。なお、下記実施例において、麹菌(Aspergillus oryzae)として、OSI 1013株を使用した。
また、下記の実施例において各プロテアーゼに付随して記載されるAO番号は、GOGAN〔nite(独立行政法人製品評価技術基盤機構)のGenome Analysis Centerでシークエンスされた微生物のゲノムデータベース)(http://www.bio.nite.go.jp/dogan/Top)に基づく番号であり、Aspergillus oryzaeに由来するタンパク質をコードする遺伝子を意味する。
実施例1 糸状菌用発現ベクターカセットの構築
(1)選択マーカー遺伝子(配列番号21)の調製
麹菌(Aspergillus oryzae)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRにより増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて選択マーカー遺伝子断片を切り出した。
<プライマー>
プライマー1:5’- gcgtggttta ctagctttag tgctaccaaa-3’(配列番号22)
プライマー2:5’- ccgtacgcggggagtgtgcttaaggcgatg -3’ (配列番号23)
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃ 5分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
(2)ターミネーター(配列番号24)の調製
麹菌(Aspergillus oryzae)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRにより増幅し。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いてターミネーター断片を切り出した。
<プライマー>
プライマー3:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTC-3’(配列番号25)
プライマー4:5’- CTGCAGATCGGCTGAAGTTAGGAGCGGCCATTGTC -3’(配列番号26)
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(1分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
(3)sodMプロモーター(配列番号27)の調製
麹菌(Aspergillus oryzae)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRにより増幅し。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いてsodMプロモーター断片を切り出した。
<プライマー>
プライマー5:5’-CTGCAGTTATGTACTCCGTACTCGGTTGAATTAT-3’(配列番号28)
プライマー6:5’-TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGAGGGTTTTGAG-3’(配列番号29)
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(1分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
(4)glaAプロモーター(配列番号30)の調製
麹菌(Aspergillus oryzae)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRにより増幅し。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いてglaAプロモーター断片を切り出した。
<プライマー>
プライマー7:5’- GAATTCTGTA GCTGCTCTAT TTCTATTACT -3’(配列番号31)
プライマー8:5’- CTTGCTTCGACTTCGTTTGCTGATGTG -3’(配列番号32)
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(1分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
(5)糸状菌用発現ベクターカセットの調製
麹菌用発現ベクターを、pUC118(タカラバイオ、日本)を基本プラスミドとして用いて、次のようにして作成した。
pUC118のSmaI部位に、上記で調製した選択マーカー遺伝子(配列番号21)を、Blunting High(東洋紡、日本)により平滑末端化させて、DNA Ligation Kit ver.1(タカラバイオ、日本)によりサブクローニングした。当該プラスミドをpUCL1とした。
次に、このpUCL1に、上記で調製し、Blunting High(東洋紡、日本)により平滑末端化させたターミネーターをサブクローニングした。具体的には、上記pUCL1を鋳型として、プライマー2(配列番号23)とプライマー9(5’- ggggatcctctagagtcgacctgca -3’(配列番号33))を用いて、下記条件でPCRを行い、得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、ベクターを調製した。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(7分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
得られたベクターと上記で調製したターミネーター断片を、DNA Ligation Kit ver.1(タカラバイオ、日本)によりサブクローニングし、得られたプラスミドをpUCLT1とした。
次に、下記の方法を用いてpUCLT1にプロモーター(sodMプロモーター、glaAプロモーター)をサブクローニングした。
(a)sodMプロモーターのサブクローニング
pUCLT1に、上記で調製したsodMプロモーター(配列番号27)をサブクローニングした。具体的には、上記pUCLT1を鋳型として、プライマー2(配列番号23)とプライマー3(配列番号25)を用いてPCRを行い、得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、ベクターを調製した。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(8分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
上記ベクターとsodMプロモーターを、DNA Ligation Kit ver.1(タカラバイオ、日本)によりサブクローニングし、得られたプラスミドをpUCLTS1とした。
(b)glaAプロモーターのサブクローニング
pUCLT1に、上記で調製したglaAプロモーター(配列番号30)をサブクローニングした。具体的には、上記pUCLT1を鋳型として、プライマー2(配列番号23)とプライマー3(配列番号25)を用いてPCRを行い、得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、ベクターを調製した。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃ (30秒)、72℃(8分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
上記ベクターとglaAプロモーターを、DNA Ligation Kit ver.1(タカラバイオ、日本)によりサブクローニングし、得られたプラスミドをpUCLTA1とした。
実施例2 糸状菌用発現ベクターの調製およびセルフクローニングによるアルカリ性プロテアーゼの発現産生
麹菌(Aspergillus oryzae)のアルカリ性プロテアーゼ(AO090003001036)(便宜上、これを「プロテアーゼ1」とする)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ、産生させた。
(1)アルカリ性プロテアーゼ遺伝子の調製
アルカリ性プロテアーゼのアミノ酸配列を配列番号11に、それをコードするアルカリプロテアーゼ遺伝子の塩基配列を配列番号1に示す。このアルカリ性プロテアーゼ遺伝子は、下記の方法によって調製した。
麹菌(Aspergillus oryzae)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いてPCRを行い、得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて、配列番号1に記載する塩基配列からなる断片を切り出し、アルカリ性プロテアーゼ遺伝子を調製した。
<プライマー>
プライマー10:5’- ATGCAGTCCATCAAGCGTACCTTGCTCCTCCTCGG-3’(配列番号34)
プライマー11:5’- TTAAGCGTTACCGTTGTAGGCAAGCAGGTT -3’ (配列番号35)
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(2分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
(2)糸状菌用発現ベクターの調製
(2-1)プラスミドベクター
まず上記pUCLT1を鋳型として、プライマー3(配列番号25)とプライマー6(配列番号29)を用いてPCRを行い、得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、これをベクターとした。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(9分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
得られたベクターと上記で調製したアルカリ性プロテアーゼ遺伝子を、DNA Ligation Kit ver.1(タカラバイオ、日本)によりサブクローニングした。当該プラスミドをプラスミドベクター(IE-232)とした。
(2-2)セルフクローニングベクター
上記で得られたプラスミドベクター(IE-232)を鋳型として、プライマー1(配列番号22)とプライマー4(配列番号26)を用いてPCRを行い、得られたPCR増幅産物をQIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて精製し、これをセルフクローニングベクターとした。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(9分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
(3)形質転換体の調製
定法であるPEG−カルシウム法(Mol Gen Genet,218,99-104,(1989))に従って、上記で調製したプラスミドベクター(IE-232)またはセルフクローニングベクター(IE-232)をそれぞれ用いて、ロイシン要求性変異麹菌株を形質転換した。なお、当該ロイシン要求性変異麹菌株は、麹菌(Aspergillus oryzae)のロイシンをコードする遺伝子を変異させて正常なロイシンが合成できないようにした菌株であり、ロイシン要求性を相補する選択マーカー遺伝子が組み込まれなければ、通常、ロイシンを含まない培地では増殖することができない。当該ロイシン要求性変異麹菌株は、Aspergillus oryzae leu-5として、茨城県つくば市東1−1−1つくばセンター中央第6に住所を有する独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている(寄託番号FERM P-20079)。
次いで形質転換処理した菌株を、硝酸を単一窒素源とするツアペクドックス(Czapek-Dox)培地(2%グルコース、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)で培養し、かかる培地で生育できる菌株を選択することにより、プラスミドベクター(IE-232)およびセルフクローニングベクター(IE-232)それぞれについて形質転換体を複数個得た。
(3-1)形質転換効率
形質転換効率は、プラスミドベクター(IE-232)が1±0.5/μg-DNAであったのに対して、セルフクローニングベクターは、8.6±3.4/μg-DNAであった。このことから、セルフクローニングベクター(IE-232)を用いると、形質転換効率が、そうでないベクターに比して約8倍も上昇することが確認された。
(3-2)遺伝子導入の有無
サザン解析にて、遺伝子導入の有無を調べた。
セルフクローニングベクター(IE-232)とプラスミドベクター(IE-232)による各形質転換体のゲノムDNAを定法により調製し、これをEcoRIで消化し、アガロース電気泳動に供して、Hybond N+メンブレン(アマシャムファルマシア)に転写した。次いで選択マーカー遺伝子(配列番号21)をプローブ(leuAプローブ)にして、Gene Image kit(アマシャムファルマシア)にてサザン解析を行なった。
結果を図1に示す。図1からわかるように、宿主株(Host strain)と比較して、プラスミドベクター(IE-232)の形質転換体は1コピー、セルフクローニングベクター(IE-232)の形質転換体は1〜3コピーの遺伝子導入が認められた。このことから、麹菌(Aspergillus oryzae)に由来する遺伝子のみからなるセルフクローニングベクターを用いて麹菌に遺伝子を導入することが可能であることが確認された。
(3-3)大腸菌由来配列の有無
次に、サザン解析を用いて、得られた形質転換体に大腸菌に由来する配列が存在するか否かを確認した。
まずセルフクローニングベクター(IE-232)とプラスミドベクター(IE-232)による各形質転換体のゲノムDNAをEcoRI消化し、アガロース電気泳動に供して、Hybond N+メンブレン(アマシャムファルマシア)に転写した。次いで、pUC118遺伝子(タカラバイオ、日本)をプローブ(pUCプローブ)にして、Gene Image kit(アマシャムファルマシア)にてサザン解析を行なった。
結果を図2に示す。図2からわかるように、プラスミドベクター(IE-232)の形質転換体では大腸菌由来の配列が認められたのに対して、セルフクローニングベクター(IE-232)の形質転換体では大腸菌由来の配列は認められなかった。このことから、当該形質転換体は、麹菌が、麹菌に由来する遺伝子のみで形質転換されてなるセルフクローニング株であることが確認された。
(4)アルカリ性プロテアーゼの産生
上記で調製した各形質転換体を、ポテトデキストロース培地で胞子形成させ、30℃で3日間、GPY液体培地(2%グルコース、1%ペプトン、0.5%酵母エキス、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)で培養した。次いで、培養上清100μlを濃縮乾燥して、SDS−PAGEに供した。また、対照試験として、実施例1で作成したプラスミドpUCLTS1を用いて、麹菌ロイシン要求性変異株を形質転換した株を用いて同様に培養し、SDS−PAGEに供した。
結果を図3に示す。
図3に示すように、セルフクローニング株(IE-232)では、対照株では認められないアルカリ性プロテアーゼのバンド(図中、→で示す)が大量に検出された。また、一部のセルフクローニング株では、プラスミドベクターの形質転換体によるアルカリ性プロテアーゼの生産量を上回るものもあった。
次いで、培養上清について、プロテアーゼ活性を測定した。
プロテアーゼ活性の測定は、50mMトリス緩衝液(pH8.0)に溶解した1.25%アゾカゼイン溶液400μlと培養上清100μlを混合し、37℃で1時間反応した後、1mlの10%トリクロロ酢酸を加え、激しく混合した後、19000xgで5分間遠心分離を行い、上清の吸光度(335nm)を測定した。ブランク値として、培養上清100μlに、1mlの10%トリクロロ酢酸を加え、さらに50mMトリス緩衝液(pH8.0)に溶解した1.25%アゾカゼイン溶液400μlを加え、激しく混合した後、19000xgで5分間遠心分離を行い、上清の吸光度(335nm)を測定した値を用いた。
ブランク値を差し引いた対照株の吸光度(OD335)は、非検出であったのに対して、ブランク値を差し引いたセルフクローニング株の吸光度(OD335)は、最大で2.87であった。このことから、当該セルフクローニング株(IE-232)が、アルカリ性プロテアーゼを発現産生し、菌体外(培地上清)に分泌する菌株であることが確認された。
実施例3 sodMプロモーターを用いた糸状菌用発現ベクターの調製、および種々のプロテアーゼ遺伝子のセルフクローニング発現
麹菌に由来するプロテアーゼ6種類(プロテアーゼ2〜7)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ産生させた(sodMプロモーター使用)。
(1)プロテアーゼ遺伝子の調製
表2に示す6種類のプロテアーゼの遺伝子を、麹菌(Aspergillus oryzae)ゲノムDNAを鋳型に、同表に示す各2本のプライマーを用いて、次のPCR条件で増幅して調製した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、プロテアーゼ遺伝子とした。
<PCR条件>
・96℃ (5分)を1サイクル
・96℃ (20秒)、 60℃ (30秒)、 72℃ (2分)を30サイクル
・72℃ (7分)を1サイクル。
Figure 2010004760
(2)糸状菌用発現ベクターの調製
(2-1)プラスミドベクター
まずpUCLTS1を鋳型として、プライマー3(配列番号25)とプライマー6(配列番号29)を用いて下記条件でPCRを行い、得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、これをベクターとした。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(9分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
斯くして調製したベクターと上記で調製した各プロテアーゼ遺伝子を、DNA Ligation Kit ver.1(タカラバイオ、日本)によりサブクローニングし、各プロテアーゼ遺伝子を組み込んだ6種類のプラスミド(プラスミドベクター)を作成した。なお、以下、これらのプラスミドベクターを各プロテアーゼに対応して下記のように称する。
Figure 2010004760
(2-2)セルフクローニングベクター
上記6種類のプラスミド(IE233、IE292、IE338、IE339、IE340、IE341)をそれぞれ鋳型として、プライマー1(配列番号22)とプライマー4(配列番号26)を用いて、下記条件でPCRを行って、麹菌の遺伝子部分のみ増幅した。得られたPCR増幅産物を、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて精製し、これをセルフクローニングベクター(IE233、IE292、IE338、IE339、IE340、IE341)とした。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(9分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
(3)形質転換体の調製
定法であるPEG−カルシウム法に従って、上記で調製した各セルフクローニングベクターを用いてロイシン要求性変異麹菌株(Aspergillus oryzae leu-5(寄託番号:FERM P-20079))を形質転換した。これを、硝酸を単一窒素源とするツアペクドックス(Czapek-Dox)培地で培養し、この培地で生育できる菌株を選択することにより、各セルフクローニングベクターにつきそれぞれ10個の形質転換体を取得した。これらすべての形質転換体についてサザン解析を行い、いずれもが大腸菌由来の遺伝子が含まれないセルフクローニング株であることを確認した。
(4)プロテアーゼの産生
上記で調製した各形質転換体を、ポテトデキストロース培地で胞子形成させ、30℃で3日間、GPY液体培地(2%グルコース、1%ペプトン、0.5%酵母エキス、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)で培養した。次いで、その培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した。また、対照試験として、実施例1で作成したpUCLTS1を用いて、麹菌ロイシン要求性変異株を形質転換した株を用いて同様に培養し、培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した(対照株)。その結果、対照株は、菌体外(培養上清)にプロテアーゼは確認できなかったのに対して、形質転換体(セルフクローニング株)はいずれも菌体外(培養上清)にプロテアーゼが生成していることが明確に確認できた。
各セルフクローニング株(IE233、IE292、IE338、IE339、IE340、IE341)のプロテアーゼの産生およびプロテアーゼ活性を測定した結果は下記の通りである。
(4-1)セルフクローニング株(IE-233)
(a) プロテアーゼの産生
上記方法で培養して得られた培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した結果を、対照株の結果と併せて図4に示す。図4に示すように、セルフクローニング株(IE-233)では、対照株にないプロテアーゼのバンドが大量に検出された。
(b) プロテアーゼ活性の測定
培養上清についてプロテアーゼ活性を測定した。測定は、50mMトリス緩衝液(pH7.0)に溶解した1.25%アゾカゼイン溶液400μlと、培養上清100μlを混合し、37℃で1時間反応させた後、1mlの10%トリクロロ酢酸を加え、激しく混合した。次いで19000xgで5分間遠心分離を行い、上清の吸光度(335nm)を測定した。ブランク値として、培養上清100μlに、1mlの10%トリクロロ酢酸を加え、さらに50mMトリス緩衝液(pH7.0)に溶解した1.25%アゾカゼイン溶液400μlを加え、激しく混合した後、19000xgで5分間遠心分離を行い、上清の吸光度(335nm)を測定した値を用いた。ブランク値を差し引いた対照株の培養上清の吸光度(OD335)は、非検出であったのに対して、ブランク値を差し引いたセルフクローニング株の培養上清の吸光度(OD335)は、最大で3.42であった。
(4-2)セルフクローニング株(IE-292)
(a) プロテアーゼの産生
上記方法で培養して得られた培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した結果を、対照株の結果と併せて図5に示す。図5に示すように、セルフクローニング株(IE-292)では、対照株にないプロテアーゼのバンドが大量に検出された。
(b) プロテアーゼ活性の測定
培養上清についてプロテアーゼ活性を測定した。測定は、50mMトリス緩衝液(pH7.0)に代えて50mM酢酸緩衝液(pH5.0)を使用する以外は、上記セルフクローニング株(IE-233)と同様に行った。その結果、ブランク値を差し引いた対照株の培養上清の吸光度(OD335)は、非検出であったのに対して、ブランク値を差し引いたセルフクローニング株の培養上清の吸光度(OD335)は、最大で1.22であった。
(4-3)セルフクローニング株(IE-338)
(a) プロテアーゼの産生
上記方法で培養して得られた培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した結果を図6に示す。図6に示すように、セルフクローニング株(IE-338)ではバンドが大量に検出された。一方、対照株では対応するバンドは検出されなかった(結果示さず)。
(b) プロテアーゼ活性の測定
培養上清についてプロテアーゼ活性を測定した。測定は、キッコーマン醸造分析キットである「酸性カルボキシペプチダーゼ測定キット」を用いて行った。この原理は、基質のカルボベンゾキシ-L-チロシルL-アラニンが酸性カルボキシペプチダーゼによって分解されると、L-アラニンを生じる。生成したL-アラニンは、NAD+の存在下でアラニンデヒドロゲナーゼを添加することによって特異的に分解され、NADHが生成する。そこで生成したNADHをテトラゾリウム塩、PMSで発色させ、吸光度(460nm)で定量するというものである。
培養上清100μlについてプロテアーゼ活性を測定した。ブランク値として、基質のカルボベンゾキシ-L-チロシルL-アラニンとの反応前に反応停止液を添加して、同様に測定した値を使用した。ブランク値を差し引いた対照株の培養上清の吸光度(OD460)は、非検出であったのに対して、ブランク値を差し引いたセルフクローニング株(IE-338)の吸光度(OD460)は、最大で0.69であった。
(4-4)セルフクローニング株(IE-339)
(a) プロテアーゼの産生
上記方法で培養して得られた培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した結果を図6に示す。図6に示すように、セルフクローニング株(IE-339)ではバンドが大量に検出された。一方、対照株では対応するバンドは検出されなかった(結果示さず)。
(b) プロテアーゼ活性の測定
培養上清100μlについてプロテアーゼ活性を測定した。測定は、キッコーマン醸造分析キットである「酸性カルボキシペプチダーゼ測定キット」を用いて、セルフクローニング株(IE-338)と同様にして行った。ブランク値を差し引いた対照株の培養上清の吸光度(OD460)は、非検出であったのに対して、ブランク値を差し引いたセルフクローニング株(IE-339)の吸光度(OD460)は、最大で0.89であった。
(4-5)セルフクローニング株(IE-340)
(a) プロテアーゼの産生
上記方法で培養して得られた培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した結果を図6に示す。図6に示すように、セルフクローニング株(IE-340)ではバンドが大量に検出された。一方、対照株では対応するバンドは検出されなかった(結果示さず)。
(b) プロテアーゼ活性の測定
培養上清100μlについてプロテアーゼ活性を測定した。測定は、キッコーマン醸造分析キットである「酸性カルボキシペプチダーゼ測定キット」を用いて、セルフクローニング株(IE-338)と同様にして行った。ブランク値を差し引いた対照株の培養上清の吸光度(OD460)は、非検出であったのに対して、ブランク値を差し引いたセルフクローニング株(IE340)の吸光度(OD460)は、最大で0.89であった。
(4-6)セルフクローニング株(IE-341)
(a) プロテアーゼの産生
上記方法で培養して得られた培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した結果を図6に示す。図6に示すように、セルフクローニング株(IE-341)ではバンドが大量に検出された。一方、対照株では対応するバンドは検出されなかった(結果示さず)。
(b) プロテアーゼ活性の測定
培養上清100μlについてプロテアーゼ活性を測定した。測定は、キッコーマン醸造分析キットである「酸性カルボキシペプチダーゼ測定キット」を用いて、セルフクローニング株(IE-338)と同様にして行った。ブランク値を差し引いた対照株の培養上清の吸光度(OD460)は、非検出であったのに対して、ブランク値を差し引いたセルフクローニング株(IE341)の吸光度(OD460)は、最大で0.76であった。
実施例4 glaA プロモーターを用いた糸状菌用発現ベクターの調製、および種々のプロテアーゼ遺伝子のセルフクローニング発現
麹菌に由来するプロテアーゼ3種類(プロテアーゼ8〜10)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ産生させた(glaAプロモーター(配列番号30)使用)。
(1)プロテアーゼ遺伝子の調製
表4に示す3種類のプロテアーゼの遺伝子を、麹菌(Aspergillus oryzae)ゲノムDNAを鋳型に、同表に示す各2本のプライマーを用いて、次のPCR条件で増幅して調製した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、プロテアーゼ遺伝子とした。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(2分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
Figure 2010004760
(2)糸状菌用発現ベクターの調製
(2-1)プラスミドベクター
まずpUCLTA1を鋳型として、プライマー3(配列番号25)とプライマー8(配列番号32)を用いて下記条件でPCRを行い、得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、これをベクターとした。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(9分)を30サイクル
・72℃ (7分)を1サイクル。
斯くして調製したベクターと上記で調製した各プロテアーゼ遺伝子を、DNA Ligation Kit ver.1(タカラバイオ、日本)によりサブクローニングし、各プロテアーゼ遺伝子を組み込んだ3種類のプラスミド(プラスミドベクター)を作成した。なお、以下、これらのプラスミドベクターを各プロテアーゼに対応して下記のように称する。
Figure 2010004760
(2-2)セルフクローニングベクター
上記3種類のプラスミド(IE326、IE327、IE328)をそれぞれ鋳型として、プライマー1(配列番号22)とプライマー4(プライマー26)を用いて、下記条件でPCRを行って、麹菌の遺伝子部分のみ増幅した。得られたPCR増幅産物を、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて精製し、これをセルフクローニングベクター(IE-326、IE-327、IE-328)とした。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(9分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
(3)形質転換体の調製
定法であるPEG−カルシウム法に従って、上記で調製した各セルフクローニングベクターを用いてロイシン要求性変異麹菌株(Aspergillus oryzae leu-5(寄託番号:FERM P-20079))を形質転換した。これを、硝酸を単一窒素源とするツアペクドックス(Czapek-Dox)培地で培養し、この培地で生育できる菌株を選択することにより、各セルフクローニングベクターにつきそれぞれ10個の形質転換体を取得した。これらすべての形質転換体についてサザン解析を行い、いずれもが大腸菌由来の遺伝子が含まれないセルフクローニング株であることを確認した。
(4)プロテアーゼの産生
上記で調製した各形質転換体を、ポテトデキストロース培地で胞子形成させ、30℃で3日間、GPY液体培地(2%グルコース、1%ペプトン、0.5%酵母エキス、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)で培養した。次いで、その培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した。また、対照試験として、実施例1で作成したpUCLTS1を用いて、麹菌ロイシン要求性変異株を形質転換した株を用いて同様に培養し、培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した(対照株)。その結果、対照株は、菌体外(培養上清)にプロテアーゼは確認できなかったのに対して、形質転換体(セルフクローニング株)はいずれも菌体外(培養上清)にプロテアーゼが生成していることが明確に確認できた。
各セルフクローニング株(IE-326、IE-327、IE-328)のプロテアーゼの産生およびプロテアーゼ活性を測定した結果は下記の通りである。
(4-1)セルフクローニング株(IE-326)
(a) プロテアーゼの産生
上記方法で培養して得られた培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した結果を、対照株の結果と併せて図7に示す。図7に示すように、セルフクローニング株(IE-326)では、対照株にないプロテアーゼのバンドが大量に検出された。
(b) プロテアーゼ活性の測定
培養上清についてプロテアーゼ活性を測定した。測定は、50mM酢酸緩衝液(pH3.0)に溶解した1.25%アゾカゼイン溶液400μlと、培養上清100μlを混合し、37℃で1時間反応させた後、1mlの10%トリクロロ酢酸を加え、激しく混合した。次いで19000xgで5分間遠心分離を行い、上清の吸光度(335nm)を測定した。ブランク値として、培養上清100μlに、1mlの10%トリクロロ酢酸を加え、さらに50mM酢酸緩衝液(pH3.0)に溶解した1.25%アゾカゼイン溶液400μlを加え、激しく混合した後、19000xgで5分間遠心分離を行い、上清の吸光度(335nm)を測定した値を用いた。ブランク値を差し引いた対照株の培養上清の吸光度(OD335)は、非検出であったのに対して、ブランク値を差し引いたセルフクローニング株(IE-326)の培養上清の吸光度(OD335)は、最大で0.84であった。
(4-2)セルフクローニング株(IE-327)
(a) プロテアーゼの産生
上記方法で培養して得られた培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した結果を、対照株の結果と併せて図7に示す。図7に示すように、セルフクローニング株(IE-327)では、対照株にないプロテアーゼのバンドが大量に検出された。
(b) プロテアーゼ活性の測定
培養上清についてプロテアーゼ活性を測定した。測定は、50mM酢酸緩衝液(pH3.0)に代えて50mMトリス緩衝液(pH7.0)を使用する以外は、上記セルフクローニング株(IE-326)と同様に行った。その結果、ブランク値を差し引いた対照株の培養上清の吸光度(OD335)は、非検出であったのに対して、ブランク値を差し引いたセルフクローニング株(IE-327)の培養上清の吸光度(OD335)は、最大で0.45であった。
(4-3)セルフクローニング株(IE-328)
(a) プロテアーゼの産生
上記方法で培養して得られた培養上清100μlを濃縮乾燥させて、SDS−PAGEに供した結果を図7に示す。図7に示すように、セルフクローニング株(IE-328)では、対照株にないプロテアーゼのバンドが大量に検出された。
(b) プロテアーゼ活性の測定
培養上清についてプロテアーゼ活性を測定した。測定は、上記セルフクローニング株(IE-327)と同様に、50mM酢酸緩衝液(pH3.0)に代えて50mMトリス緩衝液(pH7.0)を使用する以外は、上記セルフクローニング株(IE-326)と同様の方法で行った。その結果、ブランク値を差し引いた対照株の培養上清の吸光度(OD335)は、非検出であったのに対して、ブランク値を差し引いたセルフクローニング株(IE-328)の培養上清の吸光度(OD335)は、最大で0.63であった。
セルフクローニングベクター(IE-232)とプラスミドベクター(IE-232)による各形質転換体のゲノムDNAのEcoRI消化物について、選択マーカー遺伝子(配列番号21)をプローブ(leuAプローブ)として用いてサザン解析を行なった結果を示す(実施例2)。 セルフクローニングベクター(IE-232)とプラスミドベクター(IE-232)による各形質転換体のゲノムDNAのEcoRI消化物について、pUCプローブを用いてサザン解析を行い、大腸菌遺伝子の存在を調べた結果を示す(実施例2)。 セルフクローニングベクター(IE-232)とプラスミドベクター(IE-232)による各形質転換体、ならびに対照株の培養上清をSDS−PAGEにかけた結果を示す(実施例2)。 セルフクローニングベクター(IE-233)による形質転換体、および対照株の培養上清をSDS−PAGEにかけた結果を示す(実施例3)。 セルフクローニングベクター(IE-292)による形質転換体、および対照株の培養上清をSDS−PAGEにかけた結果を示す(実施例3)。 セルフクローニングベクター(IE-338、IE-339、IE-340、IE-341)による形質転換体の培養上清をSDS−PAGEにかけた結果を示す(実施例3)。 セルフクローニングベクター(IE-326、IE-327、IE-328)による形質転換体、および対照株の培養上清をSDS−PAGEにかけた結果を示す(実施例4)。
配列番号22、23、25、26、28、29、および31〜53は、実施例においてPCR増幅に使用したプラーマー1〜29の塩基配列を示す。
配列番号24は、ターミネーターの塩基配列、配列番号27はsodMプロモーターの塩基配列、および配列番号30はglaAプロモーターの塩基配列をそれぞれ示す。

Claims (5)

  1. 糸状菌体内で機能する選択マーカー遺伝子配列、糸状菌体内で機能するプロモーター配列、配列番号1〜10に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるプロテアーゼ遺伝子、および糸状菌体内で機能するターミネーター配列を有する糸状菌用発現ベクター。
  2. 実質的に糸状菌に由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである、請求項1に記載する糸状菌用発現ベクター。
  3. 直鎖状であることを特徴とする、請求項1または2に記載する糸状菌用発現ベクター。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載する糸状菌用発現ベクターで形質転換されてなる糸状菌。
  5. 請求項4に記載する形質転換された糸状菌を培地で培養し、当該培地から配列番号11〜20に記載されるアミノ酸配列からなる群より選択されるいずれかの一つのアミノ酸配列からなるプロテアーゼを回収する工程を含む、プロテアーゼの生産方法。
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