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JP2009501550A - メチオニン生産組換え微生物 - Google Patents

メチオニン生産組換え微生物 Download PDF

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パッターソン,トーマス,エー.
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Abstract

本発明は、メチオニン生産組換え微生物に関する。具体的には、本発明は、それらの野生型対応微生物と比べて、増加したレベルのメチオニンを生産するコリネバクテリウム属の組換え株、さらにかかる微生物を作製する方法に関する。
【選択図】図1

Description

関連出願
本願は、いずれも「Methionine Producing Recombinant Microorganism」と題する、2005年7月18日出願の米国仮特許出願第60/700,699号、および2005年9月1日出願の米国仮特許出願第60/714,042号の優先権の利益を主張するものであり、それらの各々の全開示内容は参照により本明細書に組み入れる。
さらに、本願は、いずれも「Use of Dimethyl Disulfide for Methionine Production in Microrganisms」と題する、2005年7月18日出願の米国仮特許出願第60/700,698号、および2005年9月1日出願の米国仮特許出願第 60/713,907号に関するものであり、それらの各々の全開示内容は参照により本明細書に組み入れる。
本願はまた、いずれも「Use of a Bacillus MetI Gene to Improve Methionine Production in Microorganisms」と題する、2005年7月18日出願の米国仮特許出願第60/700,557号、および2005年9月1日出願の米国仮特許出願第60/713,905号にも関し、それらの各々の全開示内容は参照により本明細書に組み入れる。
これらの特許出願の各々の全開示内容は、限定されるものではないが、本明細書、特許請求の範囲、および要約書、ならびにすべての図、表、またはそれらの図面を含め、本明細書によって明示的に、参照により本明細書に組み入れる。
背景
メチオニンは、限定されるものではないが、動物飼料、医薬品、食品添加物、化粧品、および栄養補助食品を含む多くの異なる産業において用いられるアミノ酸である。メチオニンは、多くの異なる方法によって大量生産することができる。例えば、メチオニンは、最初にメチルメルカプタンをアクロレインと反応させて、中間体である3-メチルメルカプトプロピオンアルデヒド(MMP)を生産することによって化学的に生産することができる。さらなる処理では、5-(2-メチルチオエチル)ヒダントインを生成するためにMMPをシアン化水素と反応させることを必要とし、この5-(2-メチルチオエチル)ヒダントインを、その後、NaOHなどの腐食剤をNa2CO3、NH3、およびCO2とともに用いて加水分解する。続いて、DL-メチオニンナトリウムを硫酸およびNa2CO3で中和し、D,L-メチオニン、Na2SO4、およびCO2を得る。この方法では、メチオニンの量と比べて大過剰の不使用の化合物が生じ、経済的および生態学的問題をもたらす。
加えて、微生物の発酵も、例えば、微生物を、限定されるものではないが、炭水化物源、例えば、糖類(グルコース、フルクトース、またはスクロースなど)、デンプン加水分解物、窒素源、例えば、アンモニア、および硫黄源、例えば、硫酸塩および/またはチオ硫酸塩を含む栄養源と、他の必要なまたは追加の培地成分とともに培養することにより、メチオニンの大量生産への利用可能性がある。この方法では、L-メチオニンと、副産物としてのバイオマスが生じ、これらには、毒性、危険性、易燃性、不安定性、有害性である出発原料が含まれない。
しかしながら、既存の方法を用いて生産されるメチオニンの力価および収量は低すぎて商業的には実現不可能である。そのため、商業的に重要でありながら、毒性のある化学薬品や有害な副産物の生成を回避する改善されたメチオニン生産方法を見つける必要がある。
ある特定のアミノ酸の高レベル生産は、わずか3つあるいはそれより少ない数の遺伝子、および/またはそれらによりコードされるタンパク質の発現を改変することによって得ることができるということが報告されている。例えば、80g/lのリジンを生産する菌株は、アスパルトキナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、およびホモセリンデヒドロゲナーゼの発現を改変するだけで構築することができる(Ohnishi, J. ら, Appl. Microbiol. Biotechnol. 58(2):217-223 (2002))。
次の遺伝子単独の発現、または細菌の他の遺伝子の発現と組み合わせて改変することがメチオニン生産につながるということが報告されている。:metF(WO/087386A2、WO 04/024931A2、および米国公開第2002049305号参照);metH(WO 04/024933A2および米国公開第2002/0048793号参照);metA(WO/024932A2参照);metK(WO 03/100072 A2);sahH(EP 1507008参照);metY(米国公開第20050064551号参照);metRおよび/またはmetZ(米国公開第2002/0102664号参照);metE(米国公開第20020110877号);metD(米国公開第20050074802号参照)、cysQ(WO 02/42466A2参照);cysD、cysN、cysK、cysE、およびcysH(WO 02/0086373参照);ならびにmetZ、metC、およびrxa 00657(WO 01/66573参照)。また、類似の耐性株、例えば、アミノ酸生産細菌のエチオニン耐性株などを創出することによっても、メチオニンの生産につながり得ることも報告されている。(KumarおよびGomes, Biotechnology advances 23: 41-61 (2005))。
しかしながら、メチオニン生合成は、還元硫黄原子の組込みを必要とし、他のアミノ酸の生合成よりも複雑であると考えられるため、商業的に魅力のあるレベルのメチオニンを生産するのに、改変遺伝子のどの組合せが必要で、および/または耐性株のどの使用が必要かは明らかではない。
概要
本発明は、メチオニンの生産を増加するための新規の改善された方法を特徴とする。特に、本発明は、少なくとも一部は、微生物、例えば、Cornyebacterium glutamicumにおけるある特定の遺伝子の(例えば、遺伝子工学および古典的遺伝学による)改変が、増加したメチオニン生産をもたらすという知見に基づく。
本発明はさらに、それらの野生型対応微生物により生産されるメチオニンと比べて、増加したレベルのメチオニンを生産する組換え微生物、かかる微生物を作り出す方法、およびかかる微生物を用いるメチオニンを生産するための方法に関する。いくつかの実施形態では、改変遺伝子のある特定の組合せは、これまでに報告されている力価よりも実質的に高い、例えば、少なくとも15g/l、または少なくとも16g/l、または少なくとも17g/l、またはそれ以上の増加したメチオニン生産をもたらす。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される任意の2つ以上、または3つ以上、または4つ以上、または5つ以上、または6つ以上、または7つ以上、または8つ以上の遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含み、この場合、該遺伝子改変は該遺伝子の過剰発現を引き起こし、結果として、該2つ以上、または3つ以上、または4つ以上、または5つ以上、または6つ以上、または7つ以上、または8つ以上の遺伝子のそれぞれにおける該遺伝子改変の不在下でのメチオニン生産と比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす。いくつかの実施形態では、組換え微生物は、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される少なくとも5つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を有し、この場合、該遺伝子改変は該少なくとも5つの遺伝子の過剰発現を引き起こし、結果として、該少なくとも5つの遺伝子のそれぞれにおける該遺伝子改変の不在下で生産されるメチオニンと比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす。また、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される任意の6つの遺伝子のそれぞれに、または任意の7つの遺伝子のそれぞれに、または任意の8つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含む組換え微生物も本明細書において記載され、この場合、該遺伝子改変は該遺伝子の過剰発現を引き起こし、結果として、該任意の6つの遺伝子、または任意の7つの遺伝子、または任意の8つの遺伝子のそれぞれにおける該遺伝子改変の不在下でのメチオニン生産と比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす。組換え微生物はまた、9つの遺伝子 askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfの全てにおいても遺伝子改変を含み得、この場合、該遺伝子改変は該9つの遺伝子の過剰発現を引き起こし、結果として、該9つの遺伝子のそれぞれにおける該遺伝子改変の不在下でのメチオニン生産と比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす。
本明細書に記載のとおり、過剰発現は様々な手段により行うことができ、それらの手段としては、限定されるものではないが、例えば、(例えば、遺伝子の上流にプロモーター配列および/またはエンハンサー配列を導入することにより)該遺伝子の転写/翻訳を増加させること、プロモーターを、該遺伝子の発現を増加させ、または該遺伝子の構成的発現を引き起こす異種プロモーターと置き換えること、該遺伝子のコピー数を増加させること、エピソームプラスミドを用いること、あるいは該遺伝子配列を変更することによる手段、ならびに該遺伝子によりコードされる酵素が、その野生型対応微生物と比べて、増加した活性または1以上の阻害化合物による阻害に対する増加した耐性を有するような、そのような方法の任意の組合せを含む。加えて、過剰発現は、例えば、該遺伝子を、過剰発現させることが望ましい遺伝子の発現を通常抑制する転写因子について欠失または突然変異させることによっても行うことができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、mcbR、hsk、metQ、metK、およびpepCKから選択される任意の2つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含み、この場合、該遺伝子改変は、該任意の2つの遺伝子の発現および/または該任意の2つの遺伝子によりコードされるタンパク質の活性(例えば、酵素活性)を低下させ、結果として、該任意の2つの遺伝子のそれぞれにおける該遺伝子改変の不在下でのメチオニン生産と比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす。さらに他の実施形態では、本発明に包含される組換え微生物は、mcbR、hsk、metQ、metK、およびpepCKから選択される任意の3つの遺伝子、または任意の4つの遺伝子、または5つ全ての遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含み、この場合、該遺伝子改変は、該遺伝子の発現および/または該遺伝子によりコードされるタンパク質の活性を低下させ、結果として、該任意の3つの遺伝子、または4つの遺伝子、または5つ全ての遺伝子のそれぞれにおける該遺伝子改変の不在下でのメチオニン生産と比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす。本明細書において、遺伝子の発現の低下は、多くの異なる手段により行うことができ、それらの手段としては、限定されるものではないが、例えば、該遺伝子のプロモーターを突然変異させること、該遺伝子のプロモーターを、該遺伝子の発現を低減させる異種プロモーターと置き換えること、あるいは該遺伝子がその野生型対応微生物よりも低い活性を有するタンパク質または酵素をコードするように遺伝子配列を改変することによる手段を含む。場合によっては、発現の低下は、より低いレベルのタンパク質もしくは酵素が生産されるか、またはタンパク質もしくは酵素が全く生産されないように、遺伝子配列を欠失または突然変異させることによっても行われる。加えて、遺伝子の発現の低下は、例えば、該遺伝子の転写リプレッサーの発現を増加させることによって行うことができる。
いくつかの実施形態では、本発明に包含される組換え微生物は、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される任意の2つの遺伝子、または任意の3つの遺伝子、または任意の5つの遺伝子、または任意の6つの遺伝子、または任意の7つの遺伝子、または任意の8つの遺伝子、または9つ全ての遺伝子のそれぞれにおける遺伝子改変(この場合、該遺伝子改変は、該任意の2つの遺伝子、または任意の3つの遺伝子、または任意の4つの遺伝子、または任意の5つの遺伝子、または該任意の6つの遺伝子、または該任意の7つの遺伝子、または該任意の8つの遺伝子、または該9つの遺伝子のそれぞれの過剰発現を引き起こす)と、mcbR、hsk、metQ、metK、およびpepCKから選択される任意の1つの遺伝子、または任意の2つの遺伝子、または任意の3つの遺伝子、または任意の4つの遺伝子、または5つの遺伝子のそれぞれにおける遺伝子改変(この場合、該遺伝子改変は、該任意の1つの遺伝子、または該任意の2つの遺伝子、または該任意の3つの遺伝子、または該任意の4つの遺伝子、または該5つの遺伝子の発現を低下させる)とを組み合わせて含み、この場合、該組合せは、該組合せの不在下でのメチオニン生産と比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす。いくつかの実施形態では、組換え微生物は、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される少なくとも5つの遺伝子のそれぞれにおける遺伝子改変(この場合、該遺伝子改変は該少なくとも5つの遺伝子のそれぞれの過剰発現を引き起こす)と、mcbR、hsk、metQ、metK、およびpepCKから選択される少なくとも1つの遺伝子における、結果として、該少なくとも1つの遺伝子の低下した発現をもたらす遺伝子改変とを組み合わせて含み、該微生物は、該組合せの不在下で生産されるメチオニンと比べて、増加したレベルのメチオニンを生産する。
例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、askfbr、homfbr、metH、およびaskfbr、homfbr、metEからなる群から選択される各遺伝子における、結果として、該各遺伝子の過剰発現をもたらす遺伝子改変と、mcbRおよびhskのそれぞれにおける、結果として、mcbRおよびhskの低下した発現をもたらす遺伝子改変とを組み合わせて含み、該微生物は、該組合せの不在下で生産されるメチオニンと比べて、増加したレベルのメチオニンを生産する。本明細書に記載のさらに他の実施形態では、組換え微生物は、askfbr、homfbr、metX(metAとも呼ばれる)、metY(metZとも呼ばれる)、metF、metH、metE、およびaskfbr、homfbr、metX、metY、metF、およびmetEからなる群から選択される少なくとも6つの遺伝子のそれぞれにおける、結果として、該少なくとも6つの遺伝子の過剰発現をもたらす遺伝子改変と、mcbRおよびhskのそれぞれにおける、結果として、mcbRおよびhskの低下した発現をもたらす遺伝子改変とを組み合わせて含み、該微生物は、該組合せの不在下で生産されるメチオニンと比べて、増加したレベルのメチオニンを生産する。
本明細書に記載の組換え微生物は、システイン生合成経路における1つ以上の遺伝子の過剰発現をもたらす遺伝子改変もさらに含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、askfbr、homfbr、metX(metAとも呼ばれる)、metY(metZとも呼ばれる)、metB、metK、metQ、metH、metE、metF、metC、zwf、frpAl、asd、cysE、cysK、cysN、cysD、cysH、cysI、cysC、cysX、cysM、cysA、cysQ、cysG、cysZ、cysJ、cysY、hsk、mcbR、pyc、pepCK、およびilvAから選択される2つ以上、または3つ以上、または4つ以上、または5つ以上、または6つ以上、または7つ以上、または8つ以上、または9つ以上、または10以上、または11以上、または12以上、または13以上、または14以上、または15以上、または16以上、または17以上、または18以上、または19以上、または20以上、または21以上、または22以上、または23以上、または24以上、または25以上、または26以上、または27以上、または28以上、または29以上、または30以上、または31以上、または32以上、または33以上、または34の遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含み、結果として、該遺伝子改変の不在下で生産されるものと比べて、増加したメチオニン生産をもたらす。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、askfbr、homfbr、metX(metAとも呼ばれる)、metY(metZとも呼ばれる)、metB、metH、metE、metF、metC、zwf、frpA、asd、cysE、cysK、cysN、cysA、cysD、cysH、cysI、cysC、cysX、cysG、cysM、cysZ、cysJ、およびpycから選択される少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも7つ、または少なくとも8つ、または少なくとも9つ、または少なくとも10、または少なくとも11、または少なくとも12、または少なくとも13、または少なくとも14、または少なくとも15、または少なくとも16、または少なくとも17、または少なくとも18、または少なくとも19、または少なくとも20、または少なくとも21、または少なくとも22、または少なくとも23、または少なくとも24、または少なくとも25、または26の遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含み、この場合、該少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも7つ、または少なくとも8つ、または少なくとも9つ、または少なくとも10、または少なくとも11、または少なくとも12、または少なくとも13、または少なくとも14、または少なくとも15、または少なくとも16、または少なくとも17、または少なくとも18、または少なくとも19、または少なくとも20、または少なくとも21、または少なくとも22、または少なくとも23、または少なくとも24、または少なくとも25、または26の遺伝子は過剰発現され、結果として、該遺伝子改変の不在下でのメチオニン生産と比べて、増加したメチオニン生産をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、組換え微生物は、askfbr、homfbr、metX(metAとも呼ばれる)、metY(metZとも呼ばれる)、metB、metH、metE、metF、metC、zwf、frpA、asd、cysE、cysK、cysN、cysA、cysD、cysH、cysI、cysC、cysX、cysG、cysM、cysZ、cysJ、およびpycから選択される少なくとも8つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含み、この場合、該遺伝子改変は該少なくとも8つの遺伝子の過剰発現を引き起こし、結果として、該遺伝子改変の不在下で生産されるメチオニンと比べて、増加したメチオニン生産をもたらす。
いくつかの実施形態では、組換え微生物は、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される少なくとも5つの遺伝子のそれぞれにおける遺伝子改変(この場合、該遺伝子改変は該少なくとも5つの遺伝子のそれぞれの過剰発現を引き起こす)と、cysE、cysK、cysN、cysA、cysD、cysH、cysI、cysC、cysX、cysG、cysM、cysZ、およびcysJから選択される少なくとも6つの遺伝子(この場合、該遺伝子改変は該少なくとも6つの遺伝子の過剰発現をもたらす)とを組み合わせて含み、この場合、該組合せは、該組合せの不在下での生産と比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす。
さらに他の実施形態では、組換え微生物は、metK、metQ、cysQ、cysY、hsk、mcbR、pepCK、およびilvAから選択される少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含み、この場合、少なくとも2つの遺伝子の該発現は低下され、結果として、該遺伝子改変の不在下でのメチオニン生産と比べて、増加したメチオニン生産をもたらす。
いくつかの実施形態では、組換え微生物は、アスパラギン酸キナーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンアセチルトランスフェラーゼ、ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ-シンターゼ、シスタチオニンβ-リアーゼ、O-アセチルホモセリンスルフヒドララーゼ(O-Acetylhomoserine sulfhydralase)、O-スクシニルホモセリンスルフヒドララーゼ(O-Succinylhomoserine sulfhydralase)、ビタミンB12依存性メチオニンシンターゼ、ビタミンB12非依存性メチオニンシンターゼ、N5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット2、APSキナーゼ、APSレダクターゼ、ホスホアデノシンホスホ硫酸レダクターゼ、NADP-フェレドキシンレダクターゼ、亜硫酸レダクターゼサブユニット1、亜硫酸レダクターゼサブユニット2、硫酸イオントランスポーター、セリンO-アセチルトランスフェラーゼ、O-アセチルセリン(チオール)-リアーゼA、ウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、およびアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼから選択される少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも7つ、または少なくとも8つ、または少なくとも9つ、または少なくとも10、または少なくとも11、または少なくとも12、または少なくとも13、または少なくとも14、または少なくとも15、または少なくとも16、または少なくとも17、または少なくとも18、または少なくとも19、または少なくとも20、または少なくとも21、または少なくとも22、または少なくとも23、または少なくとも24、または少なくとも25のタンパク質の調節解除(deregulation)を含み、この場合、該調節解除は該タンパク質の過剰発現を含み、結果として、好適な条件下で少なくとも8g/lの量でメチオニンの生産をもたらす。いくつかの実施形態では、組換え微生物は、本明細書に記載の少なくとも5つのタンパク質の調節解除を含み、結果として、好適な条件下で少なくとも8g/lの量でメチオニンの生産をもたらす。さらに他の実施形態では、組換え微生物は、本明細書に記載の少なくとも8つのタンパク質の調節解除を含み、結果として、好適な条件下で少なくとも16g/lの量でメチオニンの生産をもたらす。好適な条件は、本明細書に記載のとおり、本明細書に記載の組換え微生物による増加したメチオニン生産をもたらす条件である。
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、組換え微生物は、好適な条件下で少なくとも8g/l、または少なくとも9g/l、または少なくとも10g/l、または少なくとも11g/l、または少なくとも12g/l、または少なくとも13g/l(at 13g/l)、または少なくとも14g/l、または少なくとも15g/l、または少なくとも16g/lの量でメチオニンを生産する。いくつかの実施形態では、組換え微生物は、少なくとも8g/lの量でメチオニンを生産する。他の実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、少なくとも16g/lの量でメチオニンを生産する。
いくつかの実施形態では、組換え微生物は、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される少なくとも5つの遺伝子のそれぞれにおける遺伝子改変(この場合、該遺伝子改変は該少なくとも5つの遺伝子のそれぞれの過剰発現を引き起こす)と、metK、metQ、hsk、mcbR、およびpepCKから選択される少なくとも1つの遺伝子における、結果として、該少なくとも1つの遺伝子の低下した発現をもたらす遺伝子改変とを組み合わせて含み、該組合せは、例えば、本明細書に記載される、好適な条件下で該微生物による少なくとも8g/lのメチオニン生産をもたらす。
1つの例示的な実施形態では、本発明に包含される組換え微生物は、ask、hom、metX、metY、metE、metH、metF、およびmcbRから選択される8つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含み、好適な条件下で該微生物により生産されるメチオニンの力価は少なくとも16g/lである。
いくつかの実施形態では、遺伝子の過剰発現は、前記遺伝子、および/または前記遺伝子によりコードされるポリペプチドの構成的発現を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物はエチオニン耐性である。よって、本明細書に記載される、遺伝子改変の数多くの組合せのうちの1つを含むエチオニン耐性組換え微生物も本発明に包含され、この場合、前記エチオニン耐性と前記遺伝子改変との該組合せは、該組合せの不在下で生産されるメチオニンと比べて、増加したメチオニン生産をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される、遺伝子改変の1組合せを含むエチオニン耐性微生物は、発酵プロセスにおいて少なくとも8g/l、または少なくとも9g/l、または少なくとも10g/l、または少なくとも11g/l、または少なくとも12g/l、または少なくとも13g/l、または少なくとも14g/l、または少なくとも15g/l、または少なくとも16g/l、または少なくとも17g/l、または少なくとも18g/l、または少なくとも19g/l、または少なくとも20g/lの量でメチオニンを生産する。
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、組換え微生物は、(1)askfbr、homfbr、metX(metAとも呼ばれる)、metY(metZとも呼ばれる)、metH、metF、およびaskfbr、homfbr、metX(metAとも呼ばれる)、metY(metZとも呼ばれる)、metH、metF、およびmetEから選択される少なくとも6つの遺伝子のそれぞれにおける、結果として、少なくとも6つの遺伝子のそれぞれの過剰発現をもたらす遺伝子改変;(2)mcbRおよびhskのそれぞれにおける、結果として、mcbRおよびhskの低下した発現をもたらす遺伝子改変;ならびに(3)エチオニン耐性突然変異;の組合せを含み、この場合、該微生物は好適な条件下で少なくとも16g/lのメチオニンを生産する。
本発明は、さらに、増加または強化されたレベルでメチオニンを生産する微生物を遺伝子操作する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明に包含される様々な遺伝子改変を作製するために微生物に導入し得るベクターを提供する。かかる遺伝子改変は、遺伝子の発現を増加させ得るか、または遺伝子の発現を低下させ得る。いくつかの実施形態では、ベクターを用いて、遺伝子の上流にプロモーター配列および/またはエンハンサー配列を導入し、それにより、該遺伝子の発現を増加させる。
本明細書に記載の組換え微生物は、グラム陽性またはグラム陰性のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、組換え微生物は、バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Cornyebacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococci)、およびストレプトミセス属(Streptomyces)から選択される属に属する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、コリネバクテリウム(Cornyebactrium)、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Cornyebacterium glutamicum)株に属する。
いくつかの実施形態では、メチオニンを生産する方法は、メチオニンが生産されるような条件下で、ask、hom、metX、metY、metB、metC、metH、metE、metF、metK、ilvA、metQ、fprA、asd、cysD、cysN、cysC、pyc、cysH、cysI、cysY、cysX、cysZ、cysE、cysK、cysG、zwf、hsk、mcbR、およびpepCKから選択される少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも7つ、または少なくとも8つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含むCornynebacterium株を培養すること、および該メチオニンを回収することを含む。いくつかの実施形態では、かかるCornyebacterium株は、少なくとも8つの遺伝子に遺伝子改変を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物(例えば、組換えCornyebacterium glutamicum)を培養する方法は、培養物1L当たり少なくとも16gの量でメチオニンの生産をもたらす。
いくつかの実施形態では、ベクターは、微生物内の特定の所望のゲノム遺伝子座への核酸配列の組込みに有用な組込みカセットを含む。ある特定の実施形態では、組込みカセットは、内在性遺伝子を、異種核酸配列を該内在性遺伝子配列内に挿入することにより改変する。かかる異種核酸配列には、例えば、メチオニン生合成経路における酵素を発現する核酸配列が含まれ得る。異種遺伝子は、異なる生物由来の遺伝子、改変された内在性遺伝子、または異なる染色体位置から移動された内在性遺伝子であり得る。
詳細な説明
本発明は、少なくとも一部は、微生物におけるある特定の遺伝子改変が該微生物による増加したメチオニン生産をもたらすという知見に基づく。もう1つの態様では、本発明は、ある特定の遺伝子における遺伝子改変の組合せがメチオニン生産に特に好都合であるという知見に基づく。
図1に示されるように、微生物におけるメチオニン合成における硫黄原子の中間体基質への付加では2つの代替経路が存在する。例えば、細菌 大腸菌(Escherichia coli)は、トランススルフレーション経路(transsulfuration pathway)を利用するが、一方、一部の他の微生物(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびCorynebacterium glutamicum(C. glutamicum)など)は直接スルフヒドリル化経路(direct sulfhydrylation pathway)を使用する。多くの微生物はいずれか一方の経路を用いると思われるが、C. glutamicumはメチオニン生産に両方の経路を使用する。
本発明は、少なくとも一部は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、具体的には、C. glutamicumにおけるメチオニン生産に有益な遺伝子改変の同定に基づく。メチオニン生産を最大にするためには、その経路におけるある特定の重要な酵素(例えば、アスパラギン酸キナーゼ(ask遺伝子によりコードされる)、ホモセリンデヒドロゲナーゼ(hom遺伝子によりコードされる)、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ(metY遺伝子によりコードされる)、ホモセリンアセチルトランスフェラーゼ(metX遺伝子によりコードされる)、N5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(metF遺伝子によりコードされる)、およびメチオニンシンターゼ(遺伝子metHおよびmetEによりコードされる)など)のフィードバック阻害を減少させることが有益である。例えば、様々な生物由来のアスパラギン酸キナーゼ酵素(例えば、Askなど)は、リジンおよび/またはトレオニンにより阻害されるということが報告されている。例えば、位置311のアミノ酸をトレオニンからイソロイシンに変更することにより(T311L)、C. glutamicumにおけるAskのフィードバック阻害は減少する(米国特許第6,893,848号を参照、その全開示内容は参照により本明細書に組み入れる)。同様に、ホモセリンデヒドロゲナーゼ(Hom)は、Sritharan V. Journal of General Microbiology, 136:203-209 (1990);Chassagnole C.ら Biochemical Journal 356:415-23(2001);Eikmanns B. J.ら Antonie van Leeuwenhoek 64:145-63 (1993-94);およびCremer J.ら Journal of General Microbiology 134(12):3221-3229 (1988))(それらの全開示内容は参照により本明細書に組み入れる)に記載されるように、トレオニン、メチオニン、リジン、およびイソロイシンにより阻害することができる。加えて、Sugimoto Mら Bioscience, Biotechnology & Biochemistry, 61:1760-1762(1997)(その全開示内容は参照により本明細書に組み入れる)に記載されるように、位置393のアミノ酸をセリンからフェニルアラニンに変更することにより(S393F)、C. glutamicumにおけるHom(Hsdhの別名でも知られる)のフィードバック阻害は減少する。加えて、酵素 O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ(MetY)は、メチオニンシンターゼ(MetH)がそうであるように(Chenら J. Biol. Chem. 269:27193-27197 (1994))、メチオニンにより阻害される(WO 2004/108894 A2)。
本発明では、微生物におけるメチオニン生産を増加させるためには、メチオニン生合成経路におけるある特定の遺伝子(例えば、ask、hom(hsdの別名でも知られる)、metX(metAの別名でも知られる)、metY(metZの別名でも知られる)、metB、metH、metE、metF、metCなど)、および/またはシステイン生合成経路のある特定の遺伝子(cysJ、cysE、cysK、cysN、cysD、cysH、cysA、cysI、cysG、cysZ、cysX、およびcysMなど)の発現(例えば、転写および/または翻訳)を増加させることが有益であることを示している。
加えて、メチオニン生産を増加させるためには、特定の条件下でメチオニン生産を低下させる産物をもたらすある特定の遺伝子(例えば、mcbR(RXA00655とも呼ばれる)(Rey D.A., Journal of Biotechnology 103:51-65(2003);およびRey D.A.ら, Molecular Microbiology 56:871-887 (2005)(その全開示内容は参照により本明細書に組み入れる)に記載されている)hsk、cysQ、cysY、ilvA, pepCK、metK、およびmetQなど)の発現を低下またはダウンレキュレートすることも有益である。例えば、C. glutamicumにおけるメチオニン生産を増加させるためには、hsk遺伝子を突然変異させ、それにより、位置190のアミノ酸がトレオニンからアラニンへと変更された酵素(T190A)をもたらすこと、および/または位置94のアミノ酸がシステインからアラニンへと変更されたS-アデノシルメチオニンシンターゼ酵素(C94A)をもたらすようにmetK遺伝子を突然変異させることは特に有益である。
本発明は、さらに、次の遺伝子:askfbr、homfbr、metX(metAの別名でも知られる)、metY(metZの別名でも知られる)、metB、metH、metE、metF、およびzwfのうちの任意の2つの組合せ、または任意の3つの組合せ、または任意の4つの組合せ、または任意の5つの組合せ、または任意の6つの組合せ;または任意の7つの組合せ;または任意の8つの組合せにおける各遺伝子に遺伝子改変を含む微生物であって、この場合、該遺伝子改変は、該任意の2つ、または任意の3つ、または任意の4つ、または任意の5つ、または該任意の6つ、または該任意の7つ、または該任意の8つの遺伝子の過剰発現を引き起こし、結果として、該遺伝子改変の不在下で生産されるメチオニンと比べて、増加したメチオニン生産をもたらす微生物を特徴とする。また、本発明は、上記の9つの遺伝子のそれぞれに、上記の9つ全ての遺伝子の発現を強化し、結果として、メチオニン生産を増加させる遺伝子改変を含む微生物も特徴とする。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、次の遺伝子:askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfのうちの任意の2つ、または任意の3つ、または任意の4つ、または任意の5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つの遺伝子のそれぞれにおける遺伝子改変と、次の遺伝子:mcbR、hsk、metQ、metK、およびpepCKのうちの少なくとも1つにおける遺伝子改変とを組み合わせて含み、結果として、メチオニン生産を増加させる。発現の強化または増加は、遺伝子の転写/翻訳を増加させること、またはその遺伝子によりコードされるタンパク質/酵素の活性もしくはレベルを増加させることを包含するということは理解される、同様に、発現の低下は、遺伝子の転写/翻訳を低下させること、またはその遺伝子によりコードされるタンパク質/酵素の活性/レベルを低下させることを包含する。
本発明をより理解しやすくするために、最初に特定の用語を本明細書において定義する。
本明細書において、表現「メチオニン生産微生物」とは、メチオニンを生産することができるいずれもの微生物、例えば、細菌、酵母、菌類、古細菌などを指す。いくつかの実施形態では、メチオニン生産微生物はコリネバクテリウム属に属する。さらに他の実施形態では、メチオニン生産微生物はCorynebacterium glutamicumである。さらに他の実施形態では、メチオニン生産微生物は、コリネバクテリウム属に属する微生物、腸内細菌属に属する微生物、バチルス属に属する微生物、および酵母から選択される。いくつかの実施形態では、コリネバクテリウム属に属する微生物はCorynebacterium glutamicumであり;腸内細菌属に属する微生物は大腸菌である。他の実施形態では、バチルス属に属する微生物は枯草菌(Bacillus subtilis)である。さらに他の実施形態では、酵母はサッカロミセス・セレビシエである。
本明細書において、表現「増加したレベルのメチオニン生産」とは、本明細書において記載される、2つ以上、または3つ以上、または4つ以上、または5つ以上、または6つ以上、または7つ以上、または8つ以上、または9つ以上、または10以上、または11以上、または12以上、または13以上、または14以上、または15以上、または16以上、または17以上、または18以上、または19以上、または20以上、または21以上の、または22以上、または23以上、または24以上、または25以上、または26以上、または27以上、または28以上、または29以上、または30以上、または31以上、または32以上、または33以上、または34以上の遺伝子に遺伝子改変を含む微生物によって生産される、同様の発酵条件下で対照微生物(通常はかかる遺伝子改変のない該微生物である)によって生産される量よりも高いメチオニンの力価(例えば、好適な発酵条件下でのもの、単位はg/l)を指す。表現「増加したレベルのメチオニン」とは、本明細書に記載の少なくとも2つの調節解除されたタンパク質を含む組換え微生物によって生産されるメチオニンの力価も指す。表現「増加したレベルのメチオニン生産」とは、本明細書に記載の値に含まれるメチオニンの値および範囲、ならびに/または本明細書に記載の値の中間の値を含む。増加したレベルのメチオニン生産はまた、異種メチオニン非感受性生合成酵素を発現するように遺伝子操作していない微生物によって立証された基礎レベルを上回って生産される力価も包含するものとする。いくつかの実施形態では、増加したレベルのメチオニンとは、野生型もしくは親対応微生物によって、または本明細書において実施例で記述されるように、菌株構築中に遺伝子操作される菌株の直前の菌株によって生産される量に対する、遺伝子操作された(例えば、変更されたまたは改変された)微生物によって生産されるメチオニンの力価を指す。
本明細書において、用語「生合成経路」および「生合成方法」とは、1以上の生化学反応の結果として目的の分子または化合物が生産されるin vivoまたはin vitro方法を指す。一般には、前駆体分子から始まり、典型生合成過程は、目的の分子または化合物を生産するために段階的に働く1つ以上の酵素の作用を必要とする。目的の分子または化合物は、例えば、有機小分子、アミノ酸、ペプチド、細胞の補因子、ビタミン、および類似化学物質を含む。目的の分子または化合物は、特に、化学品、例えば、メチオニン、ホモシステイン、S-アデノシルメチオニン、グルタチオン、システイン、ビオチン、チアミン、マイコチオール(mycothiol)、補酵素A、補酵素M、およびリポ酸を含む。ある特定の状況では、生合成経路において働く1つの酵素または複数の酵素は、その過程で生成される化学生成物により調節されることがある。そのような場合、漸増する濃度の最終または中間生成物が経路内の酵素の機能または活性を変更するようにフィードバックループが存在するといわれている。例えば、生合成経路の最終生成物または中間体は、生合成方法の酵素のレベルまたは活性をダウンレギュレーションするよう作用し得、それにより、所望の最終産物が生産される割合を低下させ得る。このような状況は、例えば、目的の分子または化合物の生産産業で用いられる大規模発酵法においては、望ましくない場合が多い。本明細書において記述される方法および材料は、少なくとも一部において、目的の化合物の産業規模および発酵生産を増加することに向けられる。フィードバックループの典型的な例は、明細書において記載されるメチオニンの生産において起こる。
用語「メチオニン生合成経路」とは、メチオニンの形成または合成に利用される、メチオニン生合成酵素(例えば、生合成酵素コード遺伝子によりコードされるポリペプチド)、化合物(例えば、前駆体、基質、中間体、または産物)、補因子などが関与する生合成経路を指す。用語「メチオニン生合成経路」とは、微生物において(例えば、in vivoで)メチオニンの合成をもたらす生合成経路だけでなく、in vitroでメチオニンの合成をもたらす生合成経路も含む。図1は、メチオニン生合成経路の模式図である。
本明細書において、用語「メチオニン生合成酵素」とは、メチオニン生合成経路の化合物(例えば、中間体または産物)の形成に利用されるいずれもの酵素を指す。「メチオニン生合成酵素」とは、例えば、「トランススルフレーション経路」およびメチオニン合成の代替経路である「直接スルフヒドリル化経路」に関与する酵素を含む。例えば、上記のとおり、大腸菌はトランススルフレーション経路を利用するが、一方、他の微生物(サッカロミセス・セレビシエ、C. glutamicum、および枯草菌、ならびにこれらの微生物の類縁微生物など)は直接スルフヒドリル化経路を使用する。多くの微生物は、トランススルフレーション経路または直接スルフヒドリル化経路のいずれかを用い、両方は用いないが、例えば、C. glutamicumなどの一部の微生物はメチオニンの合成に両方の経路を用いる。
図1に示されるように、オキサル酢酸塩(OAA)からのメチオニンの合成は、中間体、アスパラギン酸、アスパラギン酸(アスパルチル)リン酸、およびアスパラギン酸セミアルデヒドを経て進行する。アスパラギン酸セミアルデヒドは、ホモセリンデヒドロゲナーゼ(hom遺伝子の産物、他の生物における他の名前の中ではthrA、metL、hdh、hsdの別名でも知られる)によりホモセリンに変換される。メチオニン合成におけるその後の段階は、トランススルフレーション経路および/または直接スルフヒドリル化経路を通って進行し得る。
トランススルフレーション経路では、ホモセリンは、ホモセリンアセチルトランスフェラーゼ(metX遺伝子の産物、metAとも呼ばれる)およびその付加基質アセチルCoAによりO-アセチルホモセリンに変換されるか、またはその付加基質スクシニルCoAおよびmetA遺伝子の産物(ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ)を用いてO-スクシニルホモセリンに変換される。metB遺伝子の産物であるシスタチオニンγ-シンターゼによる、システインからO-アセチルホモセリンまたはO-スクシニルホモセリンのいずれかへの硫黄基の供与によりシスタチオニンが生じる。シスタチオニンは、その後、metC遺伝子(一部の生物ではaecD遺伝子とも呼ばれる)の産物であるシスタチオニンβ-リアーゼによりホモシステインに変換される。
直接スルフヒドリル化経路では、metY遺伝子(metZ遺伝子とも呼ばれる)の産物であるO-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼは、スルフィドのO-アセチルホモセリンへの直接付加を触媒して、ホモシステインを生成する。ホモシステインは、直接スルフヒドリル化経路のバリエーションにおいて、metZ遺伝子の産物であるO-スクシニルホモセリンスルフヒドララーゼによるスルフィド基のO-スクシニルホモセリンへの直接付加によっても生成され得る。本明細書において、metYはmetZと交換可能に用いられ、metAはmetXと交換可能に用いられる。
デノボメチオニン合成する生物にしか存在しないトランススルフレーション酵素/スルフヒドリル化酵素とは異なり、メチオニンシンターゼは数多くのさらなる生物に存在し、S-アデノシルメチオニン(SAM)のメチル基の再生が確実に行われている。大腸菌においては、2種類のメチオニンシンターゼ、ビタミンB12依存性メチオニンシンターゼ(metH遺伝子の産物)およびビタミンB12非依存性メチオニンシンターゼ(metE遺伝子の産物)がこの機能を果たすことができる。メチオニンのメチル基は、ポリグルタミン酸テールを有するまたは有さないメチル-テトラヒドロ葉酸(メチル-THF)より供与され、このメチル-テトラヒドロ葉酸(メチル-THF)はmetF遺伝子産物による触媒反応でのメチレン-THFの還元により形成される。metK遺伝子によりコードされるS-アデノシルメチオニンシンターゼは、メチオニンおよびATPからのSAMの形成に関与する。
加えて、システインは、トランススルフレーション経路によるメチオニン生合成において硫黄供与体として用いられ得る。細菌では、システインは、セリンからスルフィドまたはチオ硫酸塩の硫黄原子を組み込むことにより合成される。cysK遺伝子の遺伝子産物(O-アセチルセリン(チオール)-リアーゼAまたはCysK)は、O-アセチルセリンおよびスルフィドからシステインを合成し、一方、cysM遺伝子の遺伝子産物(O-アセチルセリン(チオール)-リアーゼBまたはCysM)は、システインの合成にスルフィドの代わりにチオ硫酸塩を利用する。
硫黄の究極の源が硫酸塩である場合、システインおよびメチオニン生合成(methioine biosynthesis)で硫酸塩をスルフィドに還元するには一連の酵素が必要である。通常、硫酸塩は、cysZ(硫酸イオン(sulfate)トランスポーター)またはcysPなどの遺伝子によりコードされる輸送タンパク質の助けを借りて、細胞によって取り込まれる。硫酸塩は、cysD(硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット2)遺伝子およびcysN(硫酸アデニルトランスフェラーゼサブユニット1(sulfate adenyltransferase subunit 1))遺伝子の産物により活性化されて、アデノシル-ホスホ-硫酸(APSとも呼ばれる)が生成する。一部の生物では、アデノシル-ホスホ-硫酸(adenosyl-phopsho-sulfate)は、その後、さらなる段階でアデノシル-ホスホ-硫酸-キナーゼ活性を有するタンパク質により活性化されて、ホスホアデノシル-ホスホ-硫酸(PAPSと呼ばれる)が生じ、このホスホアデノシル-ホスホ-硫酸は、続いて、cysH遺伝子によりコードされる酵素PAPS-レダクターゼにより還元されるということが報告されている。また、APSがAPS-レダクターゼ酵素により直接還元され、亜硫酸塩が生じることもある。
C glutamicumでは、アデノシル-ホスホ硫酸キナーゼ活性の活性を有するタンパク質をコードする遺伝子はまだ確認されていないため、アデノシル-ホスホ硫酸またはホスホアデニリル-ホスホ-硫酸がcysH遺伝子によりコードされる酵素の基質であるかどうかははっきりしないままである。還元段階の産物は亜硫酸塩であり、この亜硫酸塩は、さらに、遺伝子cysI(亜硫酸レダクターゼサブユニット1)およびcysJ(亜硫酸レダクターゼサブユニット2)によりコードされる亜硫酸レダクターゼ酵素の活性により還元される。
システイン生合成の前駆体は、通常、セリンから誘導され、このセリンは、セリン-アセチルトランスフェラーゼ(serine-acteyl transferase)(遺伝子cysEによりコードされる)の活性によりO-アセチルセリンに変換される。O-アセチル-セリンおよびスルフィドは、cysK遺伝子によりコードされる酵素O-アセチルセリン(チオール)-リアーゼAの基質としての役割を果たす。硫黄源としてのチオ硫酸塩について言えば、ある特定の生物(大腸菌およびネズミチフス菌(S typhimurium)など)では、O-アセチル-セリンおよびチオ硫酸塩を用いて、スルホシステインを生成する2番目のシステインシンターゼが記載されている(例えば、Neidhardt FC ed. ASM Press Washington (1996)参照)。2番目のシステインシンターゼ酵素をコードする遺伝子はcysMと呼ばれ(O-アセチルセリン(チオール)-リアーゼA)、C. glutamicumでも見られる。
表1aでは、メチオニン生合成経路における様々な酵素とそれらの酵素をコードするその対応する遺伝子を記載する。表1bでは、システイン生合成経路における様々な酵素とそれらの酵素をコードするその対応する遺伝子を記載する。表1cでは、メチオニン生合成に直接または間接的に影響を及ぼす追加のタンパク質および酵素とその対応する遺伝子を記載する。便宜目的で、本明細書における特徴である遺伝子には、それぞれ、コード文字を割り当てている。対応する酵素をコードする遺伝子の名前が、本明細書において記載される名前と異なる微生物もあることは理解される。
Figure 2009501550
Figure 2009501550
Figure 2009501550
メチオニン生産を増加させるために改変し得る遺伝子の典型的な組合せを表IIに示す。しかしながら、組合せがメチオニン生産の強化をもたらす限り、遺伝子の任意の組合せを改変してよいということは理解される。
Figure 2009501550
本発明に包含される組換え微生物は、メチオニン生産の増加をもたらす内在性遺伝子の改変を含むように、例えば、ある特定の遺伝子の発現を増加させるか、または発現を低下させる遺伝子に改変を導入することにより、遺伝子操作し得る。また、組換え微生物は、かかる微生物に導入される異種遺伝子によりコードされる酵素/タンパク質を発現するようにも遺伝子操作し得る。いくつかの実施形態では、組換え微生物は、ある特定の酵素/タンパク質の組合せの発現を改変するように遺伝子操作され、この場合、かかる組合せは、該組合せの不在下でのメチオニン生産と比べて増加したメチオニン生産をもたらす。好適な酵素/タンパク質の組合せの発現は、例えば、内在性遺伝子の発現を改変すること、および/または異種遺伝子を該微生物に導入することにより実現させることができる。
以下の表IIIには、C. glutamicumから単離された様々な遺伝子とそれらによりコードされるタンパク質のGenbank受託番号を示しており、ここでの、遺伝子の様々な組合せは改変することができ、結果として、メチオニン生産の強化がもたらされる。
Figure 2009501550
いくつかの実施形態では、本発明に包含されるメチオニン生産微生物は、askfbr;homfbr;metX;metY;metB;metH;metE;metF;およびzwfから選択される任意の2つの遺伝子、または任意の3つの遺伝子、または任意の4つの遺伝子、または任意の5つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含む。本発明はさらに、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される任意の6つの遺伝子のそれぞれにおける遺伝子改変を含む遺伝子改変を含む微生物を特徴とする。加えて、本発明は、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される任意の7つの遺伝子のそれぞれ、または任意の8つの遺伝子のそれぞれ、または9つの遺伝子に遺伝子改変を含む微生物を特徴とする。
改変される可能性のある様々な遺伝子の考えられる組合せの数は、例えば、次の式:
Figure 2009501550
(式中、nは改変される可能性のある遺伝子の総数であり、rは微生物において改変される遺伝子の数である。)
に基づいて計算することができる。従って、改変される可能性のあるaskfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される任意の2つの遺伝子の考えられる組合せの数は、以下のとおり計算することができる:
Figure 2009501550
同様に、改変される可能性のあるaskfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される任意の5つの遺伝子の可能な組合せの数は、以下のとおり計算することができる:
Figure 2009501550
よって、上記の式に基づき、改変される可能性のあるaskfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される任意の5つの遺伝子、または任意の6つの遺伝子、または任意の7つの遺伝子、または任意の8つの遺伝子、または9つの遺伝子の考えられる組合せの数は、それぞれ、126、84、36、9、および1である。
同様に、本明細書において記載されるあらゆる改変遺伝子の考えられる組合せの数は、上記の式に基づいて容易に決めることができる。
本明細書において、表現「メチオニンフィードバックに対する非感受性」とは、メチオニンの存在下では有意の(高い)レベルで酵素的に機能する能力を有し、メチオニンの不在下ではその活性の少なくとも20%である比活性を有する酵素を指す。メチオニンフィードバックに対して非感受性である酵素は、例えば、1〜10μM、10〜100μM、または100μM〜1mMのメチオニンの存在下で十分に機能し得る。いくつかの実施形態では、目的の酵素は、1〜10mM、10〜100mMメチオニンの濃度で、またはさらに高い濃度で機能する能力を有する。また、天然の状態では、他のアミノ酸、例えば、トレオニンおよびリジンによるフィードバック阻害に対して感受性であるメチオニン生合成酵素もある。本発明は、少なくとも部分的には、メチオニンの生産をもたらすメチオニン生合成経路または方法に関与する、例えば、AskfbrおよびHomfbrなどのメチオニン、リジン、および/またはトレオニンフィードバック非感受性酵素を特徴とする。
いくつかの実施形態では、本明細書における特徴である微生物は、コリネバクテリウム属に属する。他の実施形態では、微生物はCorynebacterium glutamicumである。さらに他の実施形態では、微生物は、グラム陰性菌(例えば、大腸菌または関連腸内細菌)、グラム陽性菌(例えば、枯草菌または関連バチルス属)、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエまたは関連酵母株)、および古細菌から選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微生物は、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つのメチオニン生合成酵素の調節解除を有する。他の実施形態では、本明細書に記載の微生物は、少なくとも6つのメチオニン生合成酵素の調節解除を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微生物は、少なくとも7つまたはそれ以上のメチオニン生合成酵素の調節解除を有する。本明細書において、用語「調節解除(deregulation)」とは、親または野生型対応微生物のレベルおよび/または特異的活性に対する、生合成酵素のレベルおよび/または活性の増加、またはレベルおよび/または活性の低下、または完全喪失のいずれかを指す。いくつかの実施形態では、「調節解除された」生合成酵素は、本明細書において記載されるように、改変された遺伝子によりコードされる。例えば、「調節解除された」生合成酵素は、例えば、該酵素をコードする内在性遺伝子を改変することによって、または該酵素を生産する微生物に異種遺伝子を導入することによって生産し得る。
他の実施形態では、本明細書に記載の微生物は、調節解除された、システイン生合成経路の2つ以上、または3つ以上、または4つ以上、または5つ以上、または6つ以上の酵素を有する。さらに他の実施形態では、本明細書に記載の微生物は、調節解除された、メチオニン生合成経路の2つ以上の酵素とシステイン生合成経路の2つ以上の酵素を有する。例えば、いくつかの実施形態では、組換え微生物は、調節解除された、メチオニン生合成経路の5つ以上の酵素とシステイン生合成経路の6つ以上の酵素を含む。さらに、メチオニン生合成経路および/またはシステイン生合成経路における遺伝子に直接または間接的に影響を及ぼす酵素/タンパク質を調節解除することもでき、例えば、レベルおよび/または活性を低下させ、結果として、メチオニン生産を増加させることもできる。例えば、いくつかの実施形態では、組換え微生物は、少なくとも2つの遺伝子に遺伝子改変を含み、この場合、かかる改変は、該遺伝子によりコードされる、APSホスファターゼ;シスタチオニンβシンターゼ(Cystationine beta-synthase)(逆経路)、ホモセリンキナーゼ、硫黄代謝のTetR型転写調節因子、D-メチオニン結合リポプロテイン、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、S-アデノシルメチオニンシンターゼ、およびトレオニンデヒドラターゼから選択される少なくとも2つのタンパク質の調節解除をもたらす。
いくつかの実施形態では、本発明は、遺伝子的に改変された微生物を用いてメチオニンを生産する新規の改善された方法を特徴とし、該微生物は、該微生物が遺伝子改変の不在下で生産されるメチオニンと比べて、増加したレベルでメチオニンを生産する能力を有するように、メチオニン生合成経路が操作されている。
本明細書に記載の新規の改善された方法は、調節解除された、メチオニン生合成経路の少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも7つ、または少なくとも8つまたはそれ以上の酵素を含む微生物においてメチオニンを生産する方法であって、かかる調節解除を受けない微生物と比べて、増加したレベルでメチオニンが生産されるような方法を含む。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微生物は、5つ以上の遺伝子において、該遺伝子によりコードされる5つ以上の酵素の調節解除をもたらす遺伝子改変を含み、この場合、該酵素は、アスパラギン酸キナーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンアセチルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ-シンセターゼ、O-アセチルホモセリンスルフヒドララーゼ、O-スクシニルホモセリンスルフイドララーゼ(O-succinylhomoserine sulfydralase)、ビタミンB12依存性メチオニンシンターゼ、N5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸レダクターゼ、S-アデノシルメチオニンシンターゼ、シスタチオニンβ-リアーゼ、ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ、およびビタミンB12非依存性メチオニンシンターゼから選択される。
本明細書に記載のメチオニン生産増加方法はまた、システイン生合成経路における遺伝子に遺伝子改変を有する微生物を作出する方法であって、該遺伝子改変の不在下でのレベルと比べて、増加したレベルでメチオニンが生産されるような方法を含む。
例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微生物は、2つ以上、または3つ以上、または4つ以上、または5つ以上、または6つ以上、または7つ以上の遺伝子において、該遺伝子によりコードされる酵素の調節解除をもたらす遺伝子改変を含み、この場合、該酵素は、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット2、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1、シスタチオニンβシンセターゼ、APSキナーゼ、APSレダクターゼ、PAPSレダクターゼ、亜硫酸レダクターゼサブユニット1、亜硫酸レダクターゼサブユニット2、補助的役割の亜硫酸還元、硫酸イオントランスポーター、セリンO-アセチルトランスフェラーゼ、O-アセチルセリン(チオール)-リアーゼA、ウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼ、APSホスファターゼ、およびγシスタチオナーゼから選択される。いくつかの実施形態では、組換え微生物は、システイン生合成経路(the cysteine biosynethetic pathway)の6つの調節解除された酵素を含む。
本明細書に記載の方法は、本明細書において記載され、および/または増加したメチオニン生産をもたらすように培養される、微生物、例えば、組換え微生物、ならびにベクターおよび遺伝子(例えば、野生型遺伝子および/または突然変異遺伝子)を特徴とする。
用語「組換え微生物」とは、その由来となる天然に存在する微生物と比べて、改変された、変更された、または異なる遺伝子型および/または表現型を示すように、例えば、in vitroでのDNA操作技術または古典的なin vivoでの遺伝子工学を用いて、遺伝学的に改変、変更、または操作されている(例えば、遺伝子操作されている)、微生物(例えば、細菌、酵母細胞、菌類細胞など)(例えば、遺伝子改変が微生物のコード核酸配列に影響を及ぼす場合)を指す。
本明細書に記載の「組換え微生物」は、ask、hom、metX、metB、metC、metY、metH、metE、metF、cysE、cysK、cysM、cysD、cysA、cysN、cysH、cysI、cysJ、cysX、cysZ、cysC、cysG、zwf、pyc、fprA、およびasdから選択される少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも7つ、または少なくとも8つ、または少なくとも9つ、または少なくとも10、または少なくとも11、または少なくとも12、または少なくとも13、または少なくとも14、または少なくとも15、または少なくとも16、または少なくとも17、または少なくとも18、または少なくとも19、または少なくとも20、または少なくとも21、または少なくとも22、または少なくとも23、または少なくとも24、または少なくとも25の遺伝子、または26の全ての遺伝子に遺伝子改変を含むように遺伝子操作されていてよく、この場合、該遺伝子改変は該遺伝子の過剰発現を引き起こす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の「組換え微生物」は、metK、metQ、cysY、cysQ、hsk、mcbR、pepCK、およびilvAから選択される少なくとも2つの遺伝子、または少なくとも3つの遺伝子、または少なくとも4つの遺伝子、または少なくとも5つの遺伝子、または少なくとも6つの遺伝子、または少なくとも7つの遺伝子、または少なくとも8つの遺伝子に遺伝子改変を含むように遺伝子操作されていてよく、この場合、該遺伝子改変は該遺伝子の発現の低下をもたらす。他の実施形態では、実施形態、「組換え微生物」は、一部の遺伝子における、該遺伝子の発現を増加させる遺伝子改変と、他の遺伝子における、かかる遺伝子の発現を低下させる遺伝子改変を含み、結果として、該組換え微生物による増加したメチオニン生産をもたらす。
当業者ならば、遺伝子を増加したレベルで発現している微生物は、遺伝子の増加した発現のない微生物と比べて、増加したレベルおよび/または活性で結果として得られる遺伝子産物を生産するということは分かるであろう。同様に、遺伝子の低下した発現を含む微生物は、該遺伝子の低下した発現のない微生物と比べて、低下したレベルおよび/または活性で結果として得られる遺伝子産物を生産する。
本明細書において、用語「組換え微生物」とは、メチオニンが増加したレベルで生産されるように調節解除された、メチオニン生合成経路の少なくとも2つの酵素および/またはシステイン生合成経路の少なくとも2つの酵素を有するように、操作されている(例えば、遺伝子操作されている)または改変されている微生物も指す。いくつかの実施形態では、組換え微生物は、メチオニンが増加したレベルで生産されるように調節解除された、メチオニン生合成経路の少なくとも5つの酵素とシステイン生合成経路の少なくとも6つの酵素を含む。かかる微生物の改変または操作は、本明細書において記載されているか、または当技術分野で公知である任意の方法に従って行うことができ、その方法には、限定されるものではないが、生合成経路酵素をコードする遺伝子の改変が含まれる。
酵素またはタンパク質に関して用いられる、用語「調節解除された」または「操作された」は、本明細書において交換可能に用いられ、例えば、対応する野生型または天然に存在する酵素またはタンパク質と比べて、酵素の少なくとも1つの上流もしくは下流前駆体もしくは中間体、基質、または産物を通るフラックスのレベルまたは速度が改変または変更されるように、活性がまたはレベルが改変または変更されている酵素またはタンパク質を指す。「操作された」酵素(例えば、「操作された」生合成酵素)は、例えば、対応する野生型または天然に存在する酵素と比べて、酵素の少なくとも1つの上流もしくは下流前駆体、基質、または産物が改変または変更される(例えば、前駆体、基質、および/または産物の改変または変更のレベル、割合など)ように、発現、生産、もしくは活性が改変または変更されている酵素を含む。「操作された」酵素はまた、1以上の産物または中間体による阻害、例えば、フィードバック阻害に対する耐性が強化されているものも含む。例えば、(例えば、メチオニンの存在下で)効果的に、酵素的に機能する能力を有する酵素。
用語「過剰発現する」、「過剰発現すること」、「過剰発現される」、および「過剰発現」とは、微生物の遺伝子改変操作前に、または遺伝学的に改変されていない比較微生物で存在するよりも高いレベルでの、遺伝子産物(例えば、メチオニン生合成酵素または硫酸還元経路の酵素またはシステイン生合成酵素)の発現を指す。いくつかの実施形態では、微生物を、非改変微生物により生産されるか、または改変されていない比較微生物でのものと比べて、増加したレベルで遺伝子産物を発現するように遺伝子的に改変することができる(例えば、遺伝子操作することができる)。遺伝子改変としては、限定されるものではないが、特定の遺伝子の発現に関連する調節配列もしくは部位を(例えば、強力なプロモーター、誘導プロモーター、もしくは多重プロモーターを付加することにより、または発現が構成的であるように、調節配列を除去することにより)改変もしくは変更すること、特定の遺伝子の染色体上の位置を変更すること、特定の遺伝子に隣接した核酸配列(リボソーム結合部位または転写ターミネーターなど)を改変すること、特定の遺伝子のコピー数を増加させること、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳に関与するタンパク質(例えば、調節タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写活性化因子など)を変更すること、または当技術分野ではルーチンの、特定の遺伝子の発現を調節解除するいずれの他の従来の手段(限定されるものではないが、例えば、レプレッサータンパク質の発現をブロックするための、アンチセンス核酸分子の使用)、および/または遺伝子変異性を高め、例えば、適応進化を加速するミューテーター対立遺伝子、例えば、細菌対立遺伝子の使用など)も含まれる。
いくつかの実施形態では、微生物は、非改変微生物または改変されていない比較微生物による遺伝子産物の発現レベルと比べて、増加したまたはより低いレベルで遺伝子産物を発現するように、物理的にまたは環境的に改変することができる。例えば、微生物は、転写および/または翻訳が促進または増加されるように、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳を増加させるとして知られているまたは考えられている薬剤で処理することができるし、またはそのような薬剤の存在下で培養することができる。あるいは、微生物は、転写および/または翻訳が促進または増加されるように、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳を増加させるように選択された温度で培養することができる。
用語「調節解除する」、「調節解除された」、および「調節解除」とは、微生物における少なくとも1つの遺伝子の改変または変更を指し、ここで、該改変または変更は、該改変または変更の不在下でのメチオニン生産と比べて、該微生物におけるメチオニン生産の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、改変または変更される遺伝子は、微生物における生合成酵素のレベルまたは活性が改変または変更されるように、生合成経路における酵素をコードする。いくつかの実施形態では、生合成経路における酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子は、該酵素のレベルまたは活性が、その非改変または野生型遺伝子の存在下でのレベルと比べて、促進または増加されるように、改変または変更される。他の実施形態では、生合成経路における酵素をコードする少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つの遺伝子は、該遺伝子によりコードされる酵素のレベルまたは活性が、その非改変または野生型遺伝子の存在下でのレベルと比べて、低下または低減するように、改変または変更される。いくつかの実施形態では、前記生合成経路はメチオニン生合成経路である。他の実施形態では、前記生合成経路はシステイン生合成経路である。調節解除はまた、例えば、フィードバック耐性である、またはより高いまたはより低い特異的活性を有する酵素を得るために、1つ以上の遺伝子のコード領域を改変することも含む。また、調節解除は、メチオニンおよび/またはシステイン生合成経路における遺伝子の発現を調節する転写因子(例えば、活性化因子、レプレッサー)をコードする遺伝子の遺伝子改変をさらに包含する。
表現「調節解除された経路」とは、少なくとも1つの生合成酵素のレベルまたは活性が改変または変更されるように、生合成経路における酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が改変または変更された生合成経路を指す。表現「調節解除された経路」とは、2つ以上の遺伝子が改変または変更されており、結果として、その対応する遺伝子産物/酵素のレベルおよび/または活性を改変している生合成経路を含む。一部のケースでは、微生物における経路を「調節解除する」(例えば、所与の生合成経路における2つ以上の遺伝子を同時に調節解除する)能力は、2つ以上の酵素(例えば、2つまたは3つの生合成酵素)が「オペロン」と呼ばれる遺伝物質の隣接領域に互いに隣接して存在する遺伝子によりコードされるという微生物における特定の現象によって生じる。他のケースでは、経路を調節解除するために、一連の逐次操作段階において多数の遺伝子が調節解除される。
用語「オペロン」とは、1つ以上の、好ましくは少なくとも2つの、構造遺伝子(例えば、酵素、例えば、生合成酵素をコードする遺伝子)に関連する、プロモーター、場合によっては、調節エレメントを含む遺伝物質の協調ユニットを指す。構造遺伝子の発現は、例えば、調節エレメントへの調節タンパク質の結合により、または抗転写終結により、協調的に調節することができる。構造遺伝子は、構造タンパク質の全てをコードする単一mRNAを与えるように転写させることができる。用語「オペロン」とは、所望により、少なくとも1つの遺伝子またはORFの5’末端または3’末端のいずれかにおいて配列が重複している、少なくとも2つの隣接する遺伝子またはORFを含む。用語「オペロン」とは、1つ以上の隣接する遺伝子またはORF(例えば、酵素、例えば、生合成酵素をコードする構造遺伝子)に関連する、プロモーター、場合によっては、調節エレメントを含む遺伝子発現の協調ユニットを含む。遺伝子の発現は、例えば、調節エレメントへの調節タンパク質の結合により、または抗転写終結により、協調的に調節することができる。オペロンの遺伝子(例えば、構造遺伝子)は、タンパク質の全てをコードする単一mRNAを与えるように転写させることができる。オペロンに含まれる遺伝子の協調的調節により、単一プロモーターおよび/または調節エレメントを改変または変更することによってオペロンによりコードされる各遺伝子産物の改変または変更をもたらし得る。調節エレメントの改変または変更としては、限定されるものではないが、内因性プロモーターおよび/または調節エレメントを除去すること、強力なプロモーター、誘導プロモーター、もしくは多重プロモーターを付加すること、または遺伝子産物の発現が変更されるように、調節配列を除去すること、オペロンの染色体上の位置を変更すること、オペロンに隣接したもしくはオペロン内の核酸配列(リボソーム結合部位など)、コドン使用頻度を改変すること、オペロンのコピー数を増加させること、オペロンの転写および/またはオペロンの遺伝子産物の翻訳に関与するタンパク質(例えば、調節タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写活性化因子など)を変更すること、または当技術分野ではルーチンの、遺伝子の発現を調節解除するいずれの他の従来の手段(限定されるものではないが、例えば、リプレッサータンパク質の発現をブロックするための、アンチセンス核酸分子の使用など)も含まれる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、細菌由来の遺伝子または遺伝子産物を過剰発現するように遺伝子操作されている。用語「細菌由来の」および「細菌から誘導された」とは、細菌において自然に見つけられる遺伝子、または細菌遺伝子によりコードされる遺伝子産物を指す。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、ask、hom、metX、metY、metB、metH、metE、metF、zwf、metC、fprA、cysE、cysK、cysM、cysD、cysH、cysA、cysN、cysI、cysJ、cysX、cysZ、cysC、cysG、pyc、およびasdから選択される任意の2つの遺伝子の組合せ、または任意の3つの遺伝子の組合せ、または任意の4つの遺伝子の組合せ、または任意の5つの遺伝子の組合せ、または任意の6つの遺伝子の組合せ、または任意の7つの遺伝子の組合せ、または任意の8つの遺伝子の組合せ、または任意の9つの遺伝子の組合せ、または任意の10の遺伝子の組合せ、または任意の11の遺伝子の組合せ、または任意の12の遺伝子の組合せ、または任意の13の遺伝子の組合せ、または任意の14の遺伝子の組合せ、または任意の15の遺伝子の組合せ、または任意の16の遺伝子の組合せ、または任意の17の遺伝子の組合せ、または任意の18の遺伝子の組合せ、または任意の19の遺伝子の組合せ、または任意の20の遺伝子の組合せ、または任意の21の遺伝子の組合せ、または任意の22の遺伝子の組合せ、または任意の23の遺伝子の組合せ、または任意の24の遺伝子の組合せ、または任意の25の遺伝子の組合せ、または任意の26の遺伝子の組合せにおける各遺伝子に遺伝子改変を含み、この場合、該遺伝子改変は該組合せにおける該遺伝子の過剰発現をもたらす。他の実施形態では、本明細書に記載の微生物は、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される任意の2つ、または任意の3つ、または任意の4つ、または任意の5つ、または任意の6つ、または任意の7つ、または任意の8つ、または9つ全ての遺伝子の組合せに遺伝子改変を含み、この場合、該遺伝子改変は該遺伝子の過剰発現を引き起こす。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微生物は、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される任意の5つの遺伝子の組合せに遺伝子改変を含み、この場合、該遺伝子改変は該任意の5つの遺伝子の過剰発現または構成的発現を引き起こす。本発明に包含される微生物は、さらに、as
kfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される任意の6つの遺伝子、または任意の7つの遺伝子、または任意の8つの遺伝子、または任意の9つの遺伝子に遺伝子改変(この場合、該遺伝子改変は、該任意の6つの遺伝子、または任意の7つの遺伝子、または任意の8つの遺伝子、または任意の9つの遺伝子の過剰発現を引き起こす)を含む微生物を含む。また、本明細書に記載の微生物は、mcbR、hsk、pepCK、metK、およびmetQから選択される遺伝子の2つ以上、またはそれらの任意の組合せに遺伝子改変(この場合、該遺伝子改変は該遺伝子の発現の低下をもたらす)を有する微生物も包含する。低下した発現には、遺伝子によりコードされる遺伝子産物(例えば、mRNAおよび/またはタンパク質)の発現を低減させることおよび/またはその活性(例えば、改変された遺伝子によりコードされるタンパク質の酵素活性)を低下させること、または遺伝子産物生産されないように、該遺伝子を欠失/突然変異させることのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、微生物は、メチオニン生産に好都合である2つ以上の遺伝子(例えば、askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwf)の過剰発現と、発現をしないか、および/または発現を低減させることがメチオニン生産に有益である1つ以上の遺伝子(例えば、mcbR、hsk、pepCK、metK、およびmetQ)の発現の低下の両方を含む。
本明細書において、用語「遺伝子」とは、生物において、遺伝子間DNA(すなわち、該遺伝子に天然でフランキングし、および/または生物の染色体DNAにおける遺伝子を分離する介在またはスペーサーDNA)によりもう1つの遺伝子または他の遺伝子から分離される核酸分子(例えば、DNA分子またはそのセグメント)を含む。また、遺伝子は、もう1つの遺伝子と少し重複してよく(例えば、第1の遺伝子の3’末端は第2の遺伝子の5’末端と重複している)、それらの重複遺伝子は、遺伝子間DNAにより他の遺伝子から分離される。遺伝子は、酵素もしくは別のタンパク質分子の合成を命令することがあるし(例えば、遺伝子はコード配列、例えば、タンパク質をコードする隣接するオープンリーディングフレーム(ORF)を含み得る)、またはそれ自体が生物において機能することもある。生物における遺伝子は、オペロンにおいてクラスター化され得、本明細書において定義されるとおり、該オペロンは、遺伝子間DNAにより他の遺伝子および/またはオペロンから分離されている。本明細書において、「単離された遺伝子」とは、該遺伝子が得られた生物の染色体DNAにおいて該遺伝子に天然でフランキングする配列を本質的に含まない(すなわち、第2のまたは別個のタンパク質をコードする隣接するコード配列、隣接する構造配列などを含まない)、所望により、5’および3’調節配列、例えば、プロモーター配列および/またはターミネーター配列を含む遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、単離された遺伝子は、主に、タンパク質についてのコード配列(例えば、コリネバクテリウム属タンパク質をコードする配列)を含む。他の実施形態では、単離された遺伝子は、タンパク質について(例えば、コリネバクテリウム属タンパク質について)のコード配列と、該遺伝子が得られた生物の染色体DNAの隣接する5’および/または3’調節配列(例えば、隣接する5’および/または3’コリネバクテリウム属調節配列)とを含む。いくつかの実施形態では、単離された遺伝子は、該遺伝子が得られた生物の染色体DNAにおいて該遺伝子に天然でフランキングする、約10kb未満、5kb、2kb、1kb、0.5kb、0.2kb、0.1kb、50bp、25bp、10bp、またはそれより小さいbpのヌクレオチド配列を含む。
本明細書において同義的に用いられる、用語「改変された遺伝子」、「遺伝子改変」、「改変を有する遺伝子」、および「突然変異遺伝子」とは、該改変された遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質がその野生型核酸分子または遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質とは異なる活性を示すように、少なくとも1つの改変(例えば、置換、挿入、欠失)を含むヌクレオチド配列を有する遺伝子を指す。いくつかの実施形態では、改変を有する遺伝子または突然変異遺伝子は、その野生型遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質と比べて、例えば、同じような条件下で測定またはアッセイした(例えば、同じ温度で、および/または阻害化合物について同じ濃度で培養された微生物においてアッセイした)場合には、増加したレベルまたは増加した活性を有するポリペプチドまたはタンパク質をコードする。他の実施形態では、改変を有する遺伝子または突然変異遺伝子は、その野生型遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質と比べて、同じような条件下で測定またはアッセイした場合には、より低いレベルまたは低下した活性を有するポリペプチドまたはタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、改変を有する遺伝子または突然変異遺伝子は、その野生型対応微生物によりコードされるタンパク質またはポリペプチドをコードしない。用語「改変された遺伝子」、「突然変異遺伝子」、「改変を有する遺伝子」、および「遺伝子改変」はまた、遺伝子発現の増加、低下、または欠如をもたらす、遺伝子の調節配列における変更、または異種配列(限定されるものではないが、プロモーターおよび/またはエンハンサーを含む)との調節配列の置換も含む。
本明細書において、用語「増加した活性」および「増加した酵素活性」とは、野生型核酸分子または遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質のものよりも少なくとも5%高い、または少なくとも5〜10%高い、または少なくとも10〜25%高い、または少なくとも25〜50%高い、または少なくとも50〜75%高い、または少なくとも75〜100%高い活性を指す。中間の値〜上記の値の範囲、例えば、75〜85%、85〜90%、90〜95%もまた、本明細書に包含されるものである。本明細書において、「増加した活性」および「増加した酵素活性」とは、その野生型遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質の活性よりも少なくとも1.25倍、または少なくとも1.5倍、または少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも4倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍、または少なくとも20倍、または少なくとも50倍、または少なくとも100倍高い活性も含む。
活性は、特定の目的タンパク質の活性を測定するための、周知のいずれのアッセイによっても決定することができる。活性は、例えば、粗細胞抽出物中の、または細胞もしくは微生物から単離もしくは精製されたタンパク質の活性を測定することにより、直接測定またはアッセイすることができる。あるいは、細胞もしくは微生物内でまたは細胞外培地において、活性を測定またはアッセイすることもできる。例えば、突然変異体についてのアッセイは、微生物、例えば、酵素が温度感受性である突然変異微生物において該突然変異遺伝子または改変された遺伝子を発現させ、該突然変異遺伝子を、酵素活性に関する温度感受性(Ts)突然変異体を補完(相補)する能力についてアッセイすることにより行うことができる。「増加した酵素活性」をコードする突然変異遺伝子または改変された遺伝子は、例えば、対応する野生型遺伝子より効果的にTs突然変異体を補完するものであり得る
「低下した酵素活性」をコードする突然変異遺伝子または改変された遺伝子は、例えば、対応する野生型遺伝子より低い効果でTs突然変異体を補完するものである。
理論に拘束されることを望むものではないが、当業者ならば、核酸または遺伝子配列中のただ1つの置換(例えば、その対応するアミノ酸配列におけるアミノ酸変化をコードする塩基置換)でさえも、コードされるポリペプチドまたはタンパク質の活性に、その対応する野生型ポリペプチドまたはタンパク質と比べて劇的な影響を与え得るということは分かるであろう。突然変異遺伝子または改変された遺伝子(例えば、突然変異ポリペプチドもしくはタンパク質または調節解除されたポリペプチドもしくはタンパク質をコードするもの)は、本明細書において定義されるとおり、突然変異遺伝子または改変された遺伝子が、所望により、該突然変異遺伝子を発現し、または突然変異タンパク質またはポリペプチドを生産する微生物(すなわち、突然変異微生物または組換え微生物)において、その野生型遺伝子を発現する対応する微生物と比べて、異なるまたは別個の表現型として識別可能な、改変されたレベルまたは活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードするという点において、タンパク質をコードする核酸または遺伝子と容易に区別できる。一方、突然変異遺伝子によりコードされるタンパク質は、所望により、微生物において生産される場合に、その野生型遺伝子を発現する対応する微生物と比べて表現型では識別できない、同一または実質的に類似の活性を有し得る。よって、相同体と突然変異体を区別するのに役立つのは、例えば、核酸分子間、遺伝子間、タンパク質間、またはポリペプチド間の配列同一性の程度だけではなく、むしろ、相同体と突然変異体を区別するのは、コードされたタンパク質またはポリペプチドのレベルまたは活性である。相同体は、例えば、低い配列同一性(例えば、30〜50%配列同一性)を共有し、実質的に等価な機能活性をなお有し、突然変異体は、例えば、99%配列同一性を共有し、劇的に異なるまたは改変された機能活性をなお有する。
いくつかの実施形態では、突然変異を有する遺伝子または突然変異遺伝子は、その野生型遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質と比べて、例えば、同じような条件下でアッセイした(例えば、同じ温度でまたは同じ濃度の阻害剤の存在下で培養された微生物においてアッセイした)場合には、低下したまたは増加した活性を有するポリペプチドまたはタンパク質をコードする。突然変異遺伝子はまた、ポリペプチドをコードし得ず、またその野生型ポリペプチドの生産のレベルが低下することもある。
本明細書において、用語「低下した活性」および「低下した酵素活性」とは、野生型核酸分子または遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質のものよりも少なくとも5%低い、または少なくとも5〜10%低い、または少なくとも10〜25%低い、または少なくとも25〜50%、または少なくとも50〜75%、または少なくとも75〜100%低い活性を指す。中間の値〜上記の値の範囲、例えば、75〜85%、85〜90%、90〜95%もまた、本明細書に包含されるものである。本明細書において、「低下した活性」または「低下した酵素活性」とは、欠失または「ノックアウト」されている活性(例えば、野生型核酸分子または遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはタンパク質のものよりもおよそ100%低い活性)も含み得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、アスパラギン酸キナーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンアセチルトランスフェラーゼ、O-スクシニルホモセリンスルフィヒドララーゼ(O-Succinylhomoserine sulfyhydralase)、シスタチオニンγシンターゼ(Cystationine γ synthase)、シスタチオニンβ-リアーゼ、O-アセチルホモセリンスルフヒドララーゼ、ビタミンB12依存性メチオニンシンターゼ、ビタミンB12非依存性メチオニンシンターゼ、N5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、S-アデノシルメチオニンシンターゼ、メチオニン取り込み(methionie import)タンパク質、NADP-フェレドキシンレダクターゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、シスタチオニンβシンセターゼ、亜硫酸レダクターゼ(サブユニット1または2もしくは両方)、セリンアセチルトランスフェラーゼ、O-アセチルセリン(チオール)-リアーゼA、硫酸アデニリルトランスフェラーゼ(サブユニット1または2もしくは両方)、ホスホアデノシンホスホ硫酸レダクターゼ、γ-シスタチオナーゼ、APSキナーゼ、APSレダクターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホモセリンキナーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼ、APSホスファターゼ、硫酸イオントランスポーター、補助的役割の亜硫酸還元(Accesory role sulfite reduction)、トレオニンデヒドロゲナーゼ、硫黄代謝のTetR型転写調節因子、およびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼから選択される少なくとも2つのタンパク質、または少なくとも3つのタンパク質、または少なくとも4つのタンパク質、または少なくとも5つのタンパク質、または少なくとも6つのタンパク質、または少なくとも7つのタンパク質、または少なくとも8つのタンパク質、または少なくとも9つのタンパク質、または少なくとも10のタンパク質、または少なくとも10のタンパク質、または少なくとも11のタンパク質、または少なくとも12のタンパク質、または少なくとも13のタンパク質、または少なくとも14のタンパク質、または少なくとも15のタンパク質、または少なくとも16のタンパク
質、または少なくとも17のタンパク質、または少なくとも18のタンパク質、または少なくとも19のタンパク質、または少なくとも20のタンパク質、または少なくとも21のタンパク質、または少なくとも22のタンパク質、または少なくとも23のタンパク質、または少なくとも24のタンパク質、または少なくとも25のタンパク質、または少なくとも26のタンパク質、または少なくとも27のタンパク質、または少なくとも28のタンパク質、または少なくとも29のタンパク質、または少なくとも30のタンパク質、または少なくとも31のタンパク質、または少なくとも32のタンパク質、または少なくとも33のタンパク質、または少なくとも34のタンパク質の調節解除を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、アスパラギン酸キナーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンアセチルトランスフェラーゼ、O-スクシニルホモセリンスルフィヒドララーゼ、ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγシンターゼ(Cystationine γ synthase)、シスタチオニンβ-リアーゼ、O-アセチルホモセリンスルフヒドララーゼ、ビタミンB12依存性メチオニンシンターゼ、ビタミンB12非依存性メチオニンシンターゼ、N5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、NADP-フェレドキシンレダクターゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、亜硫酸レダクターゼ(サブユニット1または2もしくは両方)、セリンO-アセチルトランスフェラーゼ、O-アセチルセリン(チオール)-リアーゼA、硫酸アデニリルトランスフェラーゼ(サブユニット1または2もしくは両方)、APSキナーゼ、APSレダクターゼ、ホスホアデノシンホスホ硫酸レダクターゼ、γ-シスタチオナーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼ、硫酸イオントランスポーター、補助的役割の亜硫酸還元、およびピルビン酸デカルボキシラーゼから選択される2つ以上、または3つ以上、または4つ以上、または5つ以上、または6つ以上、または7つ以上、または8つ以上、または9つ以上、または10以上、または11以上、または12以上、または13以上、または14以上、または15以上、または16以上、または17以上、または18以上、または19以上、または20以上、または21以上の、または22以上、または23以上、または24以上、または25以上、または26以上、または27以上の調節解除されたタンパク質を含み、この場合、該調節解除されたタンパク質は、該タンパク質の野生型対応微生物を含む、または該タンパク質を発現しない微生物における発現または活性と比べて、より高いレベルで発現され、および/またはより高い活性を有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、メチオニン取り込みタンパク質、S-アデノシルメチオニンシンターゼ、シスタチオニンβシンセターゼ、APSホスフェート(APS phosphates)、ホモセリンキナーゼ、硫黄代謝のTetR型転写調節因子、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、およびトレオニンデヒドラターゼから選択される2つ以上の調節解除されたタンパク質を含み、この場合、該2つ以上の調節解除されたタンパク質は、該タンパク質の野生型対応物を含む微生物における発現または活性と比べて、より低いレベルで発現され、および/またはより低下した活性を有する。
調節解除されたタンパク質は、その野生型タンパク質のレベルより高いレベルで発現され得、および/またはその野生型タンパク質と比べて、より高い活性を有するということは理解される。また、調節解除されたタンパク質は、その野生型タンパク質のレベルより低いレベルで発現され得、および/またはその野生型タンパク質と比べて、より低いもしくは低下した活性を有する。一部の場合では、調節解除されたタンパク質は構成的に発現され、他の場合では、調節解除されたタンパク質は全く発現されないか、またはその酵素活性を失った。いくつかの実施形態では、調節解除されるタンパク質は、メチオニン生合成経路における酵素である。他の実施形態では、調節解除されるタンパク質は、システイン生合成経路における酵素である。さらに他の実施形態では、調節解除されるタンパク質は、メチオニン生合成経路および/またはシステイン生合成経路における遺伝子の転写リプレッサーまたはアクチベーターである。場合によっては、タンパク質は、そのタンパク質がフィードバック耐性であるように、調節解除される。調節解除されたタンパク質は、通常、微生物における遺伝子的に改変または変更された遺伝子により発現される。
本明細書に記載の組換え微生物は、2つ以上、または3つ以上、または4つ以上、または5つ以上、または6つ以上、または7つ以上、または8つ以上、または9つ以上、または10以上、または11以上、または12以上のタンパク質、または13以上、または14以上、または15以上、または16以上、または17以上、または18以上、または19以上、または20以上、または21以上、または22以上、または23以上、または24以上、または25以上、または26以上、または27以上、または28以上、または29以上、または30以上、または31以上、または32以上、または33以上、または34以上のタンパク質を、遺伝学的に変更または改変されていない微生物において生産されるタンパク質のレベルより高いまたは低いレベルで発現するように、遺伝学的に変更または改変されている微生物を包含する。例えば、いくつかの実施形態では、組換え微生物は、遺伝学的に変更または改変されていない微生物におけるタンパク質の活性より高いまたは低い活性(例えば、酵素活性)を有する5つ以上のタンパク質を生産する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、例えば、改変されている遺伝子の組合せを含み、この場合、生産されるメチオニンのレベルは、該組合せにおける遺伝子改変それぞれの存在下で生産されるメチオニンレベルの合計より高い(すなわち、遺伝子の組合せの改変はメチオニン生産により大きな相加または相乗効果を与える)。例えば、本発明に包含される微生物は、2つ以上の改変された遺伝子を含む微生物(この場合、生産されるメチオニンのレベルは、改変された遺伝子それぞれの存在下で生産されるメチオニンのレベルの合計より高い)を含む。よって、本明細書に記載の様々な遺伝子の任意の組み合わせについては、例えば、2つ以上、または3つ以上、または5つ以上、または6つ以上、または7つ以上、または8つ以上、または9つ以上、または10以上の遺伝子を改変する相乗作用が評価され得る。いくつかの実施形態では、改変された遺伝子の組合せを含む微生物は、メチオニンを、例えば、改変された遺伝子それぞれの存在下で、または改変の不在下で生産されるメチオニンレベルの合計よりも少なくとも1〜2%高い、または少なくとも3〜5%高い、または少なくとも5〜10%高い、または少なくとも10〜20%高い、または少なくとも20〜30%高い、または少なくとも30〜40%高い、または少なくとも40〜50%高い、または少なくとも50〜60%高い、または少なくとも60〜70%高い、または少なくとも70〜80%高い、または少なくとも80〜90%高い、または少なくとも90〜95%高いレベルで生産する。
いくつかの実施形態では、改変された遺伝子の組合せを含む微生物により生産されるメチオニンのレベルは、改変された遺伝子それぞれの存在下で、または改変の不在下で生産されるメチオニンのレベルの合計よりも少なくとも2倍、または少なくとも2.5倍、または少なくとも3倍、または少なくとも3.5倍、または少なくとも4倍、または少なくとも4.5倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍、または少なくとも15倍、または少なくとも20倍、または少なくとも25倍、または少なくとも30倍、または少なくとも35倍、または少なくとも40倍、または少なくとも45倍、または少なくとも50倍、または少なくとも100倍高い。
さらに他の実施形態では、適した発酵条件で改変された遺伝子の組合せを含む微生物によって生産されるメチオニンの量は、改変された遺伝子それぞれの存在下で、または遺伝子改変の不在下で微生物によって生産される量の合計に比べて、1リットル当たり少なくとも5g、または少なくとも7g、または少なくとも8g、または少なくとも9g、または少なくとも10g、または少なくとも11g、または少なくとも12g、または少なくとも13g、または少なくとも14g、または少なくとも15g、または少なくとも16g、または少なくとも17g、または少なくとも18g、または少なくとも19g、または少なくとも20g、または少なくとも25g、または少なくとも30g、または少なくとも40g、または少なくとも50g多い。
本明細書に記載の微生物によって生産されるメチオニンのレベルは、本明細書に記載の1以上のアッセイを用いて容易に測定することができる。
いくつかの実施形態では、本発明に包含される「組換え微生物」は、調節解除されたシステイン生合成経路を有する。表現「調節解除されたシステイン生合成経路を有する微生物」とは、システイン生合成経路の酵素をコードする少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも7つ、または少なくとも8つ、または少なくとも9つ、または少なくとも10、または少なくとも11、または少なくとも12、または少なくとも13の遺伝子に改変または変更を有するか、またはシステイン生合成経路の酵素をコードする遺伝子を含むオペロンに改変または変更を有する微生物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の調節解除されたシステイン生合成経路を有する微生物は、cysJ、cysA、cysE、cysK、cysM、cysD、cysI、cysN、cysG、cysC、cysX、cysZ、およびcysHから選択される少なくとも2つの遺伝子に、該遺伝子が過剰発現されるように、遺伝子改変を含むよう遺伝子操作される。いくつかの実施形態では、調節解除されたシステイン生合成経路を有する微生物は、cysQおよび/またはcysYに遺伝子改変を含み、結果として、1つまたは両方の遺伝子の発現を低下させるように、遺伝子操作される。さらに他の実施形態では、調節解除されたシステイン生合成経路を有する組換え微生物はcysJ、cysA、cysE、cysK、cysM、cysD、cysI、cysN、cysG、cysC、cysY、cysX、cysZ、cysH、およびcysQから選択される少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つの遺伝子における遺伝子改変の組合せを含む。
本明細書におけるさらなる特徴となるのが突然変異微生物である。本明細書において、用語「突然変異微生物」とは、突然変異遺伝子もしくは改変された遺伝子または該微生物によって通常もしくは本来発現されるタンパク質を発現するように遺伝子操作されている組換え微生物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、突然変異微生物は、該微生物が改変された、変更された、または異なる表現型を示すように、突然変異遺伝子またはタンパク質を発現する。他の実施形態では、突然変異微生物は、遺伝子が欠失する(すなわち、該遺伝子によりコードされるタンパク質は生産されない)ように改変または操作される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物は、グラム陽性生物(例えば、該微生物を取り囲むグラム陽性の壁が存在するために、塩基性色素、例えば、クリスタルバイオレットを保持する微生物)である。他の実施形態では、組換え微生物は、バチルス属、コリネバクテリウム、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、およびストレプトミセス属から選択される属に属する微生物である。さらに他の実施形態では、組換え微生物は、コリネバクテリウムに属し、いくつかの実施形態では、組換え微生物は、Cornyebacterium glutamicumから選択される。
いくつかの実施形態では、組換え微生物は、グラム陰性(塩基性色素を排除する)生物である。他の実施形態では、組換え微生物は、サルモネラ属(Salmonella)、エシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、セラチア属(Serratia)、およびプロテウス属(Proteus)から選択される属に属する微生物である。さらに他の実施形態では、組換え微生物は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、カンジダ属(Candida)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)などから選択されるような酵母(例えば、S. セレビシエ)、または古細菌である。
本発明に包含される重要な態様は、メチオニンが生産されるように、好適な条件下で本明細書に記載の組換え微生物を培養することを含む。用語「培養すること」とは、本明細書に記載の生存微生物を維持および/または増殖すること(例えば、培養物または菌株を維持および/または増殖すること)を含む。1つの実施形態では、本発明の微生物は液体培地で培養される。いくつかの実施形態では、微生物は液体培地で培養される。他の実施形態では、微生物は固体培地または半固体培地で培養される。さらに他の実施形態では、微生物は、該微生物の維持および/または増殖に不可欠または有益な栄養源(例えば、炭素源または炭素基質、例えば、複合炭水化物(ビーンまたはグレインミールなど)、デンプン、糖、糖アルコール、炭化水素、油、脂肪、脂肪酸、有機酸、およびアルコール;窒素源、例えば、穀類、豆類、および塊茎由来の植物性タンパク質、ペプトン、ペプチド、およびアミノ酸、動物源(例えば、肉類、乳汁、および動物副産物(ペプトン、肉エキス、およびカゼイン加水分解物など))由来のタンパク質、ペプチド、およびアミノ酸;無機窒素源、例えば、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、およびリン酸アンモニウム;リン源、例えば、リン酸、そのナトリウムおよびカリウム塩;微量元素、例えば、マグネシウム、鉄、マンガン、カルシウム、銅、亜鉛、ホウ素、ニッケル、モリブデン、および/またはコバルト塩;ならびに増殖因子(例えば、アミノ酸、ビタミン、増殖促進物質など))を含む培地(例えば、滅菌液体培地)で培養される。
一部の場合では、本明細書に記載の微生物は制御されたpH下で培養される。用語「制御されたpH」とは、メチオニンの生産をもたらす任意のpHを含む。いくつかの実施形態では、微生物はpH約7で培養される。他の実施形態では、微生物はpH6.0〜8.5間で培養される。望ましいpHは、当業者に公知の様々な方法により維持し得る。
また、一部の場合では、本明細書に記載の微生物は、制御された通気下で培養される。用語「制御された通気」とは、メチオニンの生産をもたらす十分な通気(例えば、酸素)を含む。いくつかの実施形態では、通気は、培養物中の酸素レベルを調節することにより、例えば、培養培地に溶解する酸素の量を調節することにより、制御される。例えば、培養物の通気は、培養物を攪拌することにより制御され得る。攪拌は、プロペラまたは類似の機械攪拌装置によって、培養容器(例えば、発酵槽)を回転または振盪することによりまたは様々なポンプ装置により与え得る。通気は、滅菌空気または酸素を培地に(例えば、発酵混合物に)通すことによってもさらに制御し得る。また、微生物は、(例えば、消泡剤を添加することにより)過剰に起泡することなく培養される。
加えて、本明細書に記載の微生物は、制御された温度下でも培養され得る。用語「制御された温度」とは、メチオニンの生産をもたらす任意の温度を含む。いくつかの実施形態では、制御された温度は、特定の温度、例えば、15℃〜95℃間、15℃〜70℃間、20℃〜55℃間、30℃〜45℃間、または30℃〜50℃間、または28℃〜37℃間に設定される。
微生物は、液体培地で培養(例えば、維持および/または増殖)することができ、好ましくは、従来の培養方法、例えば、静置培養、実験管培養、振盪培養(例えば、回転振盪培養、振盪フラスコ培養など)、通気スピナー培養、または発酵により、連続的にまたは間欠的にいずれかで培養される。いくつかの実施形態では、微生物は振盪フラスコで培養される。さらに他の実施形態では、微生物は(例えば、発酵法において)発酵槽で培養される。発酵法としては、限定されるものではないが、発酵のバッチ、供給バッチ(fed batch)、および連続方法が含まれる。用語「バッチ処理」および「バッチ発酵」とは、培地の組成、栄養源、補足添加剤などが発酵開始時に設定され、発酵中には変更を行わない閉鎖系を指すが、培地の過度の酸性化および/または微生物の死滅を防ぐためにpHおよび酸素濃度のような因子を制御しようと試みてもよい。用語「供給バッチ処理」および「供給バッチ」発酵とは、発酵の進行とともに1つ以上の基質または補給物を添加する(例えば、徐々にまたは連続的に添加する)という例外を含む、バッチ発酵を指す。用語「連続処理」および「連続発酵」とは、規定の発酵培地が発酵槽に連続的に添加され、例えば、所望の産物(例えば、メチオニン)を回収するために、同量の、使用済みまたは「馴化」培地が同時に除去される系を指す。このような処理は様々なものが開発されており、当技術分野で周知である。
本明細書に記載の微生物は、メチオニンを生産させるために、連続的にもしくはバッチ式で、または供給バッチ処理もしくは反復供給バッチ処理で培養してよい。既知培養方法の概要は、Chmiel(Bioprozelitechnik 1. Einfiihrung in die Bioverfahrenstechnik (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))による教本またはStorhas(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))による教本に見つけることができる。用いる培養培地は、適当な方法により特定の菌株の要求を満たさなければならない。様々な微生物についての培養培地の説明は、the American Society for Bacteriology (Washington D. C, USA, 1981)のハンドブック「Manual of Methods for General Bacteriology」に記載されている。
表現「所望の化合物(例えば、メチオニン)が生産されるような条件下で培養すること」および「好適な条件」とは、所望の化合物の生産を得るのに、または生産されている特定の化合物の望ましい収率を得るのに適当または十分な条件(例えば、温度、圧力、pH、期間など)下で微生物を維持および/または増殖することを指す。例えば、微生物は、好適な条件下でメチオニンの望ましい量を生産するのに十分な時間の間培養される。いくつかの実施形態では、微生物は、最大メチオニン生産に実質的に達成するのに十分な時間の間培養される。いくつかの実施形態では、微生物は約12〜24時間培養される。他の実施形態では、微生物は、約24〜36時間、約36〜48時間、約48〜72時間、約72〜96時間、約96〜120時間、約120〜144時間、または144時間より長い期間の間培養される。さらに他の実施形態では、培養は、メチオニンの望ましい生産収量を達成するのに十分な時間の間継続され、例えば、微生物は、少なくとも約7〜10g/l、または少なくとも10〜15g/l、または少なくとも約15〜20g/l、または少なくとも約20〜25g/l、または少なくとも約25〜30g/l、または少なくとも約30〜35g/l、または少なくとも約35〜40g/l、または少なくとも約40〜50g/l メチオニンが生産されるように培養される。いくつかの実施形態では、本発明に包含される組換え微生物によって生産されるメチオニンの量は、少なくとも16g/lである。さらに他の実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物によって好適な発酵条件下で生産されるメチオニンの量は、少なくとも17g/lである。さらに他の実施形態では、微生物は、メチオニンの好ましい収率、例えば、上記範囲内の収率が、約24時間内、約36時間内、約48時間内、約72時間内、または約96時間内にもたらされるような条件下で培養される。
本明細書に記載の方法は、所望の化合物(例えば、メチオニン)を回収する段階をさらに含み得る。用語、所望の化合物(例えば、メチオニン)を「回収すること」とは、培養培地から化合物を抽出、採取、単離、または精製することを指す。化合物の回収は、当技術分野で公知の任意の従来の単離または精製方法に従って行うことができ、それらの方法としては、限定されるものではないが、遠心分離、蒸発、従来の樹脂(例えば、陰イオンもしくは陽イオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂など)を用いた処理、従来の吸着剤を用いた処理(例えば、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナなど)、pHの変更、溶媒抽出(例えば、従来の溶媒、例えば、アルコール、酢酸エチル、ヘキサンなどを用いる)、透析、濾過、濃縮、結晶化、再結晶、pH調整、凍結乾燥などが含まれる。例えば、メチオニンは、まず、培養物から微生物を除去することにより、培養培地から回収することができる。
いくつかの実施形態では、メチオニンは、メチオニンが他の成分を実質的に含まない(例えば、培地成分および/または発酵副産物を含まない)ように、「抽出される」、「単離される」、または「精製される」。表現「他の成分を実質的に含まない」とは、所望の化合物、例えば、メチオニンの調製物であって、メチオニンが生産される培養物の培地成分または発酵副産物からメチオニンが分離されている(例えば、精製または部分的に精製されて)調製物を指す。いくつかの実施形態では、調製物は、メチオニンが(乾燥重量で)約80%を上回っており(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約20%未満であり)、またはメチオニンが約90%を上回っており(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約10%未満であり)、またはメチオニンが約95%を上回っており(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約5%未満であり)、またはメチオニンが約98〜99%を上回っている(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約1〜2%未満である)。
代替実施形態では、例えば、微生物が生物学的に無害(例えば、安全)であるときには、メチオニンは微生物から精製されない。例えば、全培養物(または培養上清)を産物(例えば、未精製産物)の供給源として用いることができる。1つの実施形態では、前記培養物(または培養上清)はそのまま用いられる。もう1つの実施形態では、前記培養物(または培養上清)は濃縮される。さらにもう1つの実施形態では、前記培養物(または培養上清)は乾燥または凍結乾燥される。
本発明は、本明細書に記載の様々な組換え微生物を特徴とする生体内変換プロセスをさらに包含する。用語「生体内変換プロセス」とは、本明細書において「生物変換プロセス」とも呼ばれ、適当な基質および/または中間化合物の所望の産物(例えば、メチオニン)への生産(例えば、形質転換または変換)をもたらす生体内プロセスを含む。
生体内変換反応に用いられる微生物および/または酵素は、それらが、それらの対象とする機能(例えば、所望の化合物の生産)を果たすことを可能にする形態で存在する。かかる微生物は、全細胞であってよく、または望ましい最終結果を得るのに必要な細胞の一部(例えば、遺伝子および/または酵素)のみであってもよい。これらの微生物は、懸濁(例えば、緩衝液または培地などの適当な溶液中へ)、洗い流し(例えば、微生物を培養する培地の洗い流し)、アセトン乾燥、固定化(例えば、ポリアクリルアミドゲルまたはκ-カラギーナンを用いる固定化、または合成支持体、例えば、ビーズ、マトリックスなどの上への固定化)、定着、架橋、または易透化(例えば、膜および/または壁を易透化した結果として、化合物、例えば、基質、中間体、または産物が該膜または壁をより容易に通過できるようになる)することができる。
本発明は、さらに、本明細書に記載の遺伝子(例えば、単離された遺伝子)(例えば、Corynebacterium glutamicum遺伝子、さらに詳しくはCorynebacterium glutamicumメチオニン生合成遺伝子およびCorynebacterium glutamicumシステイン生合成遺伝子などのコリネバクテリウム属遺伝子を含む)を含む組換え核酸分子(例えば、組換えDNA分子)を包含する。用語「組換え核酸分子」とは、該組換え核酸分子が(例えば、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、または置換により)誘導された本来の(native)または天然の核酸分子とヌクレオチド配列が異なるように、改変、変更、または操作されている核酸分子(例えば、DNA分子)を指す。いくつかの実施形態では、組換え核酸分子(例えば、組換えDNA分子)は、調節配列に機能しうる形で連結された単離された遺伝子を含む。表現「調節配列に機能しうる形で連結された」とは、目的の遺伝子のヌクレオチド配列が、該遺伝子の発現(例えば、強化された発現、増加された発現、構成的発現、基本的発現、減弱された発現、低減された発現、または抑制された発現)、例えば、該遺伝子によりコードされる遺伝子産物の発現(例えば、本明細書において定義されるとおりに、組換え核酸分子を組換えベクターに含め、それを微生物に導入する場合)を可能にする方法で調節配列に連結されるということを意味する。
用語「異種核酸」とは、本明細書において、微生物に一般には存在しない核酸配列を指すために用いられる。かかる核酸配列はまた、微生物に存在するが、該核酸配列が該微生物において通常見られる遺伝領域には存在しない核酸配列も含む。同様に、用語「異種遺伝子」は、野生型微生物には存在しない遺伝子を含み得る。異種核酸および異種遺伝子は、一般に、組換え核酸分子を含む。異種核酸または異種遺伝子は、(例えば、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、または置換による)改変を含んでいても、含んでいなくてもよい。
また、本明細書に記載の様々な遺伝子およびタンパク質の相同体も本発明に包含される。遺伝子に関連して、「相同体」とは、遺伝子の少なくとも一部に対して、またはその相補鎖もしくはその一部と実質的に同一であるヌクレオチド配列を指す(ただし、該ヌクレオチド配列が、該遺伝子(該相同体は該遺伝子の相同体である)によりコードされるタンパク質と実質的に同じ活性/機能を有するタンパク質をコードする場合)。本明細書に記載の遺伝子の相同体は、推定相同体と、遺伝子またはそれらによりコードされるタンパク質の配列(例えば、Corynebacterium glutamicum遺伝子ask、hom、metX、metY、metB、metH、metE、metF、zwf、metC、metK、metQ、cysJ、cysE、cysK、cysM、cysD、cysH、cysA、mcbR、hsk、およびpepCKのヌクレオチド配列、またはそれらの相補鎖)についての、アミノ酸またはヌクレオチド配列間の同一性パーセントにより同定することができる。同一性パーセントは、例えば、目視検査によりまたは当技術分野で公知であるか、もしくは本明細書に記載されている様々なコンピュータープログラムを用いることにより決定してもよい。例えば、2つのヌクレオチド配列の同一性パーセントは、Devereuxら(1984)(Nucl. Acids. Res., 12:387、University of Wisconsin Genetics Computer Group (UWGCG)から入手可能)により記載されているGAPコンピュータープログラムを用いて配列情報を比較することにより決定することができる。また、同一性パーセントは、(Tatusovaら(1999)(FEMS Microbiol. Lett., 174:247)により記載されているBasic Local Alignment Search Tool(BLAST(商標))プログラム)を用いて2つのヌクレオチド配列をアライメントすることによっても決定することができる。例えば、BLAST(商標)プログラムを用いたヌクレオチド配列アライメントの場合、デフォルト設定は以下のとおりである:マッチに対するリワードは2であり、ミスマッチに対するペナルティーは-2であり、開始ギャップおよび伸長ギャップペナルティーはそれぞれ5および2であり、ギャップ×ドロップオフは50であり、期待値は10であり、ワードサイズは11であり、フィルターはオフである。
本明細書において, 用語「相同性」および「相同の」とは、理論上共通の遺伝的祖先を有するタンパク質を表すために限定されず、遺伝学的に無関係である可能性があるにもかかわらず、類似の機能を果たし、および/または類似の構造を有するように進化したタンパク質を含む。本明細書に記載の様々なタンパク質の機能的相同性はまた、相同体である、その対応するタンパク質の活性を有するタンパク質も包含する。機能的相同性を有するタンパク質の場合、それらのタンパク質がそれらのアミノ酸配列において顕著な同一性を有することが必要なのではなく、むしろ、機能的相同性を有するタンパク質は、類似または同一の活性、例えば、酵素活性を有することによってそのように定義される。同様に、構造的相同性を有するタンパク質は、類似の三次(または四次)構造を有するものと定義され、それらをコードする遺伝子についてのアミノ酸同一性または核酸同一性は必ずしも必要ではない。ある特定の状況において、構造的相同体は、タンパク質の活性部位または結合部位においてのみ構造的相同性を維持するタンパク質を含む場合がある。
構造的および機能的相同性に加えて、本発明は、本明細書に記載の様々なタンパク質および酵素とアミノ酸同一性(amino acid identitiy)を有するタンパク質をさらに包含する。2つのアミノ酸配列の同一性パーセントを決定するために、それらの配列を最適に比較できるようにアライメントする(例えば、一方のタンパク質のアミノ酸配列に、もう一方のタンパク質のアミノ酸配列と最適にアライメントするために、ギャップを導入することができる)。その後、対応するアミノ酸位置のアミノ酸残基を比較する。一方の配列におけるある位置に、もう一方の配列におけるその対応する位置と同じアミノ酸残基が存在する場合には、それらの分子はその位置において同一である。その2つの配列間の同一性パーセントは、それらの配列が共有する同一位置数の関数である(すなわち、%同一性=同一位置数/位置の総数×100)。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の分子の核酸およびアミノ酸配列は、本明細書に記載の核酸またはアミノ酸配列とハイブリダイズするか、あるいは本明細書に記載の核酸またはアミノ酸配列と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一であるヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を含む。
改善または変更された特徴を有する酵素を作り出すための、本明細書に記載のタンパク質の遺伝子工学に有用な技術もまた、本明細書において記載される。例えば、タンパク質が増加または低下した基質結合親和性を有するように、タンパク質を改変するためには、当技術分野で利用可能な教示で十分対応できる。また、増加または低下した酵素速度を有するタンパク質を設計することもまた有利であり得、当技術分野における教示で対応できる。特に、多機能酵素の場合、タンパク質の様々な活性を、特定の状況下で最適に機能するように、個別に微調整することも有用であり得る。さらに、フィードバック阻害(例えば、メチオニンによる)に対する酵素の感受性を変調する能力は、負または正のフィードバックに関与する可能性があるメチオニンまたは他の補因子の結合または配位に関わるアミノ酸を選択的に変化させることによって果たし得る。さらに、遺伝子工学には、転写および翻訳の両方のレベルでの発現調節に関連する事象を包含する。例えば、完全または部分的なオペロンをクローニングおよび発現に用いる場合、遺伝子の調節配列、例えば、プロモーター配列またはエンハンサー配列が望ましいレベルの転写を得るように、それらを変更してよい。
本明細書に記載のあらゆる遺伝子の「相同体」も、該相同体によってコードされるタンパク質の活性により同定することができる。例えば、かかる相同体は、遺伝子(該相同体は該遺伝子の相同体である)の突然変異を補完することができる。
用語「調節配列」とは、他の核酸配列(すなわち、遺伝子)の発現に影響を及ぼす(例えば、モジュレートまたは調節する)核酸配列を指す。いくつかの実施形態では、調節配列は、特定の目的遺伝子に対して、自然界で、例えば、本来の位置および/または配向で見られる該調節配列および目的遺伝子で観察されるのと類似もしくは同一の位置および/または配向で組換え核酸分子に含まれる。例えば、目的遺伝子は、天然生物において該目的の遺伝子に付随または隣接する調節配列に機能しうる形で連結された(例えば、「本来の」調節配列(例えば、「本来の」プロモーター)に機能しうる形で連結された)組換え核酸分子に含めることができる。また、目的遺伝子を、天然生物における別の(例えば、異なる)遺伝子に付随または隣接する調節配列に機能しうる形で連結された組換え核酸分子に含めてもよい。あるいは、目的遺伝子を、別の生物由来の調節配列に機能しうる形で連結された組換え核酸分子に含めてもよい。例えば、他の微生物由来の調節配列(例えば、他の細菌調節配列、バクテリオファージ調節配列など)は、特定の目的遺伝子に機能しうる形で連結することができる。
1つの実施形態では、調節配列は、非本来のまたは非天然の配列(例えば、改変、突然変異、置換、誘導体化、欠失されている配列(化学合成された配列を含む))である。調節配列の例は、プロモーター、エンハンサー、終結シグナル、抗終結シグナル、および他の発現制御エレメント(例えば、リプレッサーもしくはインデューサーが結合する配列、ならびに/または、例えば、転写されたmRNAにおける転写および/または翻訳調節タンパク質の結合部位)を含む。そのような調節配列は、例えば、Sambrook, J., Fritsh, E. F., およびManiatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989、ならびにPatek, M.ら, (2003) Journal of Biotechnology 104:311-323に記載されている。調節配列には、微生物におけるヌクレオチド配列の構成的発現を命令するもの(例えば、構成的プロモーターおよび強力な構成的プロモーター)、微生物におけるヌクレオチド配列の誘導性発現を命令するもの(例えば、誘導プロモーター、例えば、キシロース誘導プロモーター)、および微生物におけるヌクレオチド配列の発現を減弱または抑制するもの(例えば、減弱シグナルまたはリプレッサー 配列)が含まれる。調節配列を除去または欠失させることにより目的遺伝子の発現を調節することも本発明の範囲に含まれる。例えば、目的遺伝子の発現が強化されるように、転写の負の調節に関与する配列を除去することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え核酸分子は、プロモーターまたはプロモーター配列に機能しうる形で連結された少なくとも1つの細菌遺伝子産物(例えば、メチオニン生合成酵素)をコードする核酸配列または遺伝子を含む。本明細書における特徴であるプロモーターとしては、限定されるものではないが、コリネバクテリウム属プロモーターおよび/またはバクテリオファージプロモーター(例えば、コリネバクテリウム属または他の細菌を感染させるバクテリオファージ)が含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、プロモーターは、コリネバクテリウム属プロモーター、例えば、強力なコリネバクテリウム属プロモーター(例えば、コリネバクテリウム属における生化学的ハウスキーピング遺伝子に関連するプロモーター)である。他の実施形態では、プロモーターは、バクテリオファージプロモーターである。さらなるプロモーター(グラム陽性微生物に用いる場合)としては、限定されるものではないが、スーパーオキシドジスムターゼ、groEL、groES、伸長因子 Tu、amy、およびSPO1プロモーター(P15およびP26など)が含まれる。プロモーター(グラム陰性微生物に用いる場合)の例としては、限定されるものではないが、cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIQ、T1、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ-PR、またはλ-PLが含まれる。
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、1つのターミネーター配列または複数のターミネーター配列(例えば、転写ターミネーター配列)を含む。用語「ターミネーター配列」とは、mRNAの転写を終結させる働きをする調節配列を含む。ターミネーター配列(またはタンデム転写ターミネーター)は、さらに、mRNAを(例えば、mRNAに構造を加えることにより)、例えば、ヌクレアーゼから、安定させる働きをする。
いくつかの実施形態では、組換え核酸分子は、前記配列を含有するベクターの検出を可能にする配列(すなわち、検出および/または選択マーカー)、例えば、抗生物質耐性配列をコードする、または栄養要求性突然変異を克服する遺伝子、例えば、trpC、薬物マーカー、蛍光マーカー、および/または比色マーカー(例えば、lacZ/β-ガラクトシダーゼ)を含む。さらに他の実施形態では、組換え核酸分子は、人工リボソーム結合部位(RBS)または人工RBSに転写される配列を含む。用語「人工リボソーム結合部位(RBS)」とは、リボソームが(例えば、翻訳を開始するために)結合する、本来のRBS(例えば、天然に存在する遺伝子において見られるRBS)とは少なくとも1つのヌクレオチドが異なっている、mRNA分子内の(例えば、DNA内でコードされる)部位を含む。好ましい人工RBSとしては、その本来のRBS(例えば、目的遺伝子の本来のRBSと、約1-2、3-4、5-6、7-8、9-10、11-12、13-15、またはそれ以上のヌクレオチドが異なっている約5-6、7-8、9-10、11-12、13-14、15-16、17-18、19-20、21-22、23-24、25-26、27-28、29-30、またはそれ以上のヌクレオチドが含まれる。
さらに、本明細書に記載の核酸分子(例えば、遺伝子、または該遺伝子を含む組換え核酸分子)を含むベクター(例えば、組換えプラスミドおよびバクテリオファージ)も本発明に包含される。用語「組換えベクター」とは、該組換えベクターが、該組換えベクターが誘導された非変性または天然核酸分子に含まれているものよりも、より多い、より少ない、または異なる核酸配列を含むように、改変、変更、または操作されているベクター(例えば、プラスミド、ファージ、ファスミド、ウイルス、コスミド、フォスミド、または他の精製核酸ベクター)を含む。例えば、組換えベクターは、本明細書において定義されるとおり、調節配列、例えば、プロモーター配列、ターミネーター配列、および/または人工リボソーム結合部位(RBS)に機能しうる形で連結された、生合成酵素コード遺伝子、または該遺伝子を含む組換え核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、組換えベクターは、細菌における複製を促進する配列(例えば、複製促進配列)を含む。いくつかの実施形態では、複製促進配列は、大腸菌またはC. glutamicumで機能する。他の実施形態では、複製促進配列は、限定されるものではないが、pBR322、pACYC177、pACYC184、およびpSC101を含むプラスミド由来である。
いくつかの実施形態では、本発明の組換えベクターは抗生物質耐性配列を含む。用語「抗生物質耐性配列」とは、宿主生物(例えば、コリネバクテリウム属)において抗生物質耐性を促進または付与する配列を含む。いくつかの実施形態では、抗生物質耐性配列は、cat(クロラムフェニコール耐性)配列、tet(テトラサイクリン耐性)配列、erm(エリスロマイシン耐性)配列、neo(ネオマイシン耐性)配列、kan(カナマイシン耐性)配列、およびspec(スペクチノマイシン耐性)配列から選択される。組換えベクターは、相同組換え配列(例えば、目的の遺伝子の宿主生物染色体への組換えを可能にするように設計された配列)をさらに含み得る。当業者ならば、遺伝子操作する微生物の選択、所望の遺伝子産物の発現レベルなどの因子に応じて、ベクターの設計を調整することができることはさらに分かるであろう。
本明細書において、「キャンベルイン(Campbell in)」とは、完全環状二本鎖DNA分子(例えば、プラスミド)が単一相同組換え事象(クロスイン(cross in)事象)により染色体に組み込まれている、該環状DNA分子の第1DNA配列と相同である染色体の第1DNA配列への、該環状DNA分子の線形バージョンの挿入を効果的にもたらす、原形(original)宿主細胞の形質転換体を指す。「キャンベルインされた(campbelled in)」とは、「キャンベルイン」形質転換体の染色体に組み込まれている線形DNA配列を指す。「キャンベルイン」は、第1相同DNA配列の重複を含み、その各コピーは相同組換えの乗り換え点(crossover point)のコピーを含み、それを包囲している。この名前は、この種の組換えを最初に提示したProfessor Alan Campbellから来ている。
本明細書において、「キャンベルアウト(Campbell out)」とは、第2相同組換え事象(クロスアウト(cross out)事象)が、「キャンベルドイン」DNAの挿入された線形DNAに含まれる第2DNA配列と、該線形インサートの該第2DNA配列と相同である、染色体起源の第2DNA配列との間に起こった「キャンベルイン」形質転換体に由来する細胞を指し、該第2組換え事象は、組み込まれたDNA配列の一部の欠失(廃棄)をもたらすが、重要なことには、原形宿主細胞と比べて、「キャンベルアウト」細胞が染色体において1以上の意図的変化(例えば、一塩基置換、多塩基置換、異種遺伝子もしくはDNA配列の挿入、相同遺伝子もしくは改変相同遺伝子の1または複数のさらなるコピーの挿入、またはこれらの前記例の2以上を含むDNA配列の挿入)を含むように、染色体に、該組み込まれたキャンベルインされたDNAの一部(これはわずか単一の塩基であり得る)を残しもする。
「キャンベルアウト」細胞または菌株は、必ずではないが、通常、「キャンベルインされた」DNA配列の一部(廃棄することが望まれる部分)に含まれる遺伝子(例えば、約5%〜10%スクロースの存在下で増殖させている細胞で発現させると死をもたらす枯草菌sacB遺伝子)に対する対抗選択により得られる。対抗選択を用いても用いなくとも、所望の「キャンベルアウト」細胞は、任意のスクリーニング可能な表現型、例えば、限定されるものではないが、コロニーの形態、コロニーの色、抗生物質耐性の有無、ポリメラーゼ連鎖反応による特定のDNA配列の有無、栄養要求性の有無、酵素の有無、コロニーの核酸ハイブリダイゼーション、抗体スクリーニングなどを用いる、所望の細胞についてのスクリーニングにより得ることができ、または同定することができる。用語「キャンベルイン」および「キャンベルアウト」は、上記の方法または工程を指して、様々な時制において動詞としても用いることができる。
「キャンベルイン」または「キャンベルアウト」をもたらす相同組換え事象は、相同DNA配列内のDNA塩基の範囲にわたって起こる可能性があり、該相同配列はこの範囲の少なくとも一部では互いに同一であると思われることから、通常、交差事象が起こった場所を厳密に特定することはできないということは理解される。言い換えれば、どの配列がもともと、挿入されたDNAのものであって、どれがもともと、染色体DNAのものであったかは正確に特定することはできない。さらに、第1相同DNA配列と第2相同DNA配列は、通常、部分的非相同性の領域により分離され、この非相同性領域は「キャンベルアウト」細胞の染色体に付着したままである。
実際的には、C. glutamicumにおいて、典型的な第1および第2相同DNA配列は少なくとも約200塩基対長であり、最大数千塩基対長であり得るが、より短いまたはより長い配列を用いて進めることもできる。例えば、第1および第2相同配列の長さは約500〜2000塩基に及んでよく、「キャンベルイン」からの「キャンベルアウト」の獲得は、第1および第2相同配列がほぼ同じ長さであるように、好ましくは、差が200塩基対未満であるように、最も好ましくは、塩基対において2つの配列のうちの短い方が長い方の長さの少なくとも70% であるように、計画することによって容易になる。
本発明を次の実施例によりさらに例示的に説明するが、その実施例を限定と解釈してはならない。本願を通じて引用された全ての参照文献、特許、および公開特許出願の内容は、参照により本明細書に組み入れる。
実施例1: M2014株の作製
C. glutamicum株 ATCC 13032を、DNA A(pH273とも呼ばれる)(配列番号1)で形質転換し、「キャンベルインし」て、「キャンベルイン」株を得た。図2は、プラスミド pH273の概略図を示す。この「キャンベルイン」株を、次いで、「キャンベルアウトし」て、フィードバック耐性ホモセリンデヒドロゲナーゼ酵素をコードする遺伝子(homfbr)を含む「キャンベルアウト」株M440を得た。この結果として生じるホモセリンデヒドロゲナーゼタンパク質は、S393がF393に変化したアミノ酸変化を含んだ(Hsdh S393Fと呼ばれる)。
この株M440を、続いて、DNA B(pH373とも呼ばれる)(配列番号2)で形質転換して、「キャンベルイン」株を得た。図3は、プラスミド pH373の概略図を示す。この「キャンベルイン」株を、さらに、「キャンベルアウトし」て、フィードバック耐性アスパラギン酸キナーゼ酵素をコードする遺伝子(Askfbr)(lysCによりコードされる)を含む「キャンベルアウト」株、M603を得た。この結果として生じるアスパラギン酸キナーゼタンパク質では、T311がI311に変化していた(LysC T311Iと呼ばれる)。
株M603は約17.4mMリジンを生産するが、一方、ATCC13032株では測定可能な量のリジンが生産されないということが分かった。加えて、表IIIに要約されるように、ATCC13032株では測定可能な量が生産されないのに対して、M603株は約0.5mMホモセリンを生産した。
Figure 2009501550
株M603を、DNA C(pH304とも呼ばれ、この概略図は図4に示される)(配列番号3)で形質転換して、「キャンベルイン」株を得た。この「キャンベルイン」株を、次いで、「キャンベルアウトし」て、「キャンベルアウト」株、M690を得た。このM690株は、metH遺伝子の上流にPgroESプロモーターを含んだ(P497 metHと呼ばれる)。P497プロモーターの配列は配列番号4に示される。以下で表IVに示されるように、このM690株は約77.2mMリジンおよび約41.6mMホモセリンを生産した。
Figure 2009501550
M690株は、続いて、以下のとおりに突然変異を起こさせた。BHI培地(BECTON DICKINSON)でで増殖させたM603の一晩培養物を、50mMクエン酸バッファー pH5.5で洗浄し、N-メチル-N-ニトロソグアニジン(50mMクエン酸塩 pH5.5中10mg/ml)を用いて30℃で20分間処理した。処理後、それらの細胞を、再度、50mMクエン酸バッファー pH5.5で洗浄し、以下の成分を含有する培地にプレーティングした:(記載した量は全て、500ml培地に対して算出したものである)10g (NH4)2SO4; 0.5g KH2PO4; 0.5g K2HPO4; 0.125g MgSO4*7H2O; 21g MOPS; 50mg CaCl2; 15mg プロトカテク酸; 0.5mg ビオチン; 1mg チアミン; および5g/l D,L-エチオニン(SIGMA CHEMICALS, CATALOG #E5139)(KOHを用いてpH7.0に調整した)。加えて、この培地には、10g/l FeSO4*7H2O; 1g/l MnSO4*H2O; 0.1g/l ZnSO4*7H2O; 0.02g/l CuSO4; および0.002g/l NiCl2*6H2O(全てを0.1M HClに溶かした)からなる微量金属溶液0.5mlを含めた。最終培地を濾過滅菌し、その培地に、40mlの滅菌50%グルコース溶液(40ml)および滅菌寒天を、終濃度1.5%まで添加した。この最終寒天含有培地を寒天プレートに注ぎ、最少エチオニン培地と表示を付けた。突然変異を起こさせた菌株をそのプレート(最少エチオニン)に塗布し、30℃で3〜7日間インキュベートした。その培地で増殖させたクローンを単離し、同じ最少エチオニン培地に再ストリークした。いくつかのクローンをメチオニン生産解析用に選択した。
メチオニン生産は、以下のとおり解析した。菌株をCM-寒天培地において30℃で2日間増殖させた。この培地は、10g/l D-グルコース、2.5g/l NaCl; 2g/l 尿素; 10g/l Bacto Peptone(DIFCO); 5g/l 酵母抽出物(DIFCO); 5g/l Beef Extract(DIFCO); 22g/l Agar(DIFCO): を含有し、約121℃で20分間オートクレーブ処理したものとした。
菌株を増殖させた後、細胞を擦り取り、0.15M NaClに再懸濁した。本培養では、擦り取った細胞の懸濁液を開始OD 600nmにおいて、0.5g 固体およびオートクレーブ処理したCaCO3(RIEDEL DE HAEN)とともに、約1.5〜10mlの培地II(下記参照)に添加し、それらの細胞を、オービタルシェイキングプラットフォームにおいて30℃で約200rpmにて、100mlバッフルなし振盪フラスコ中で72時間インキュベートした。培地IIは、40g/l スクロース; 60g/l 糖蜜の全糖(糖含量について算出); 10g/l (NH4)2SO4; 0.4g/l MgSO4 *7H2O; 0.6g/l KH2PO4; 0.3mg/l チアミン*HCl; 1mg/l ビオチン; 2mg/l FeSO4; および2mg/l MnSO4を含有した。この培地は、NH4OHを用いてpH7.8に調整し、約121℃で約20分間オートクレーブ処理した)。オートクレーブ処理し、冷却した後に、ビタミンB12(シアノコバラミン(cyanocobalamine))(SIGMA CHEMICALS)を濾過滅菌ストック溶液(200μg/ml)で、終濃度100μg/lまで添加した。
この培地からサンプルを採取し、アミノ酸含量についてアッセイした。生産された、メチオニンなどのアミノ酸を、Agilent社のアミノ酸法を用いて、Agilent 1100シリーズLCシステムHPLC.(AGILENT)において決定した。サンプルをオルト−フタルアルデヒド(ortho-pthalaldehyde)でプレカラム誘導体化することで、Hypersil AA-カラム(AGILENT)での分離後に生産されたアミノ酸の定量が可能となった。
M690において少なくとも2倍のメチオニン力価を示したクローンを単離した。そのような1つのクローンをさらなる実験に用い、そのクローンをMl179と名付け、2005年5月18日にDSMZ strain collectionに菌株番号DSM 17322として寄託した。以下で表Vに要約されるように、この菌株によるアミノ酸生産を、株M690によるものと比較した。
Figure 2009501550
株M1179を、DNA F(pH399とも呼ばれ、この概略図は図5に示される)(配列番号5)で形質転換して、「キャンベルイン」株を得た。この「キャンベルイン」株を、続いて、「キャンベルアウトし」て、株M1494を得た。この菌株は、ホモセリンキナーゼの遺伝子に突然変異を含み、この突然変異は、この結果として生じるホモセリンキナーゼ酵素におけるT190からA190へのアミノ酸変化をもたらす(HskT190Aと呼ばれる)。以下で表VIに要約されるように、株M1494によるアミノ酸生産を、株M1197による生産と比較した。
Figure 2009501550
株M1494を、DNA D(pH484とも呼ばれ、この概略図は図6に示される)(配列番号6)で形質転換して、「キャンベルイン」株を得た。この「キャンベルイン」株を、続いて、「キャンベルアウトし」て、M1990株を得た。このM1990株は、groES-プロモーターとEFTU(延長因子 Tu)-プロモーターの両方を用いてmetY対立遺伝子を過剰発現する(P497 P1284 metYと呼ばれる)。P497 P1284プロモーターの配列は配列番号7に記載される。以下で表VIIに要約されるように、株M1494によるアミノ酸生産を、株M1990による生産と比較した。
Figure 2009501550
株M1990を、DNA E(pH491とも呼ばれ、この概略図は図7に示される)(配列番号8)で形質転換して、「キャンベルイン」株を得た。この「キャンベルイン」株を、次いで、「キャンベルアウトし」て、「キャンベルアウト」株M2014を得た。このM2014株は、スーパーオキシドジスムターゼプロモーターを用いてmetA対立遺伝子を過剰発現する(P3119 metAと呼ばれる)。P3119プロモーターの配列は配列番号9に記載される。以下で表VIIIに要約されるように、株M2014によるアミノ酸生産を、株M2014による生産と比較した。
Figure 2009501550
実施例2: M2014におけるmetFの発現の強化
メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(MetF)は、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸の5-メチルテトラヒドロ葉酸(5-MTF)への還元を触媒する。5-MTFは、ホモシステインがメチオニンにメチル化される際のメチル供与体であり、MetEまたはMetH酵素のいずれかがこのメチル化を触媒する。メチオニン生合成におけるこの最終段階は、5-MTFの供給が不十分である場合に制限される可能性があるため、metF遺伝子を構成的発現用に改変した。metFの本来のプロモーターをgroESプロモーター(P497)(配列番号4)と置き換え、それをC. glutamicum株M2014のbioAD遺伝子座に導入した。
C. glutamicum metF遺伝子をPCRにより得、それをプラスミド pOM35のXbaI部位とBamHI部位の間に連結し、pOM62(配列番号10)を得た。pOM62プラスミドの概略図は図8に記載される。まず、カナマイシン耐性形質転換体について選択し(キャンベルインし)、その後、sacB対抗選択を用いて組込みプラスミド骨格を欠失したカナマイシン感受性派生株を単離する(キャンベルアウトする)ことにより、P497 metFカセットをM2014のbioAD染色体遺伝子座に導入した。得られたコロニーをPCRによりスクリーニングして、bioAD遺伝子座にP497 metFカセットを有するM2014の派生株を見つけた。そのような1つのC. glutamicum分離株をOM41と名付けた。
メチオニンおよび他のアミノ酸の生産についてアッセイするため、実施例3に記載のとおり、株M2014については2連で、株OM41については4連で、振盪フラスコ培養物を標準的な糖蜜培地で増殖させた。表IXに示されるように、株OM41は、M2014株よりも高いレベルでメチオニンを生産した。
Figure 2009501550
実施例3: 振盪フラスコ実験およびHPLCアッセイ
菌株を2連または4連で、標準的な糖蜜培地を用いて振盪フラスコ実験を実施した。糖蜜培地は、1lの培地の場合: 40gグルコース; 60g糖蜜; 20g (NH4)2SO4; 0.4g MgSO4*7H2O; 0.6g KH2PO4; 10g酵母抽出物(DIFCO); 5mlの400mMトレオニン; 2mg FeSO4.7H2O; 2mgのMnSO4.H2O; および50g CaCO3(Riedel-de Haen)を含有し、ddH2Oで容量にした。pHは20% NH4OHを用いてpH7.8に調整し、(CaCO3を懸濁状態に保つために)連続攪拌した培地20mlを250mlバッフル付のBellco社製振盪フラスコに入れ、それらのフラスコを20分間オートクレーブ処理した。オートクレーブ処理した後、基礎培地1lにつき4mlの「4B溶液」(または80μl/フラスコ)を添加した。この「4B溶液」は、1lにつき: 0.25gの塩酸チアミン(ビタミンB1)、50mgのシアノコバラミン(ビタミンB12)、25mgビオチン、1.25g塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)を含有し、それを12.5mM KPO4、pH7.0を用いて緩衝化して、ビオチンを溶かし、それを濾過滅菌した。培養物は、Bioshieldペーパーで覆い、それを輪ゴムで固定したバッフル付フラスコ内で、New Brunswick Scientific社製フロアシェーカーにより28℃または30℃、200または300rpmで48時間増殖させた。サンプルは、24時間および/または48時間の時点で採取した。遠心分離した後、上清を等量の60%アセトニトリルで希釈し、その後、Centricon 0.45μMスピンカラムを用いてその溶液を膜濾過することにより細胞を除去した。この濾液を、HPLCを用いて、メチオニン、グリシンとホモセリン、O-アセチルホモセリン、トレオニン、イソロイシン、リジン、および他の表示アミノ酸の濃度についてアッセイした。
HPLCアッセイでは、濾過した上清を0.45μMで濾過した1mM Na2EDTAで1:100希釈し、この溶液1μlをホウ酸バッファー(80mM NaBO3、2.5mM EDTA、pH10.2)中のOPA試薬(AGILENT)を用いて誘導体化し、G1321A蛍光検出器(AGILENT)を備えたAgilent 1100シリーズHPLCで実施する200x4.1mm Hypersil 5μ AA-ODSカラムに注入した。励起波長は338nmであり、モニタリングした発光波長は425nmであった。アミノ酸標準溶液をクロマトグラフに付し、それを用いて、様々なアミノ酸についての保持時間および標準ピーク面積を決定した。計器制御、データ収集およびデータ操作には、Agilentにより提供される付属のソフトウェアパッケージ、Chem Stationを用いた。ハードウェアは、Microsoft Service Pack(SP6a)でアップデート済みのMicrosoft ウィンドウズ(登録商標)NT 4.0に対応するHP Pentium(登録商標) 4コンピューターであった。
実施例4: メチオニン生産を増加させる、M2014およびOM41におけるMetAおよびMetZ活性の強化
株M2014およびOM41を、P497 metZ、P3119 metAカセットを含む複製プラスミド pH357(この概略図は図9に示される)(配列番号11)で形質転換した。この結果として生じる株(M2014(H357)およびOM41(H357)と名付けた)をそれらの親株と比較して、metZおよび/またはmetAの追加発現がメチオニン生産に有益であるかどうかを確認した。両方の菌株において、H357プラスミドが存在することでメチオニン生産が改善した。表Xに示されるように、標準的な糖蜜培地では、OM41(H357)のメチオニン力価はOM41のものよりもおよそ75%高く、追加のMetAおよび/またはMetZ活性がメチオニン力価の増加に有益である(0.8g/lに対して1.4g/l)ことが示された。さらに、培地に1%酵母抽出物(YE)を添加することにより力価がさらに30〜40%増加した。
Figure 2009501550
実施例5: メチオニン生産の増加をもたらす、M2014のpepCK遺伝子座へのP 497 hom fbr カセットの組込み
フィードバック耐性ホモセリンデヒドロゲナーゼ遺伝子(homfbr)はM2014の染色体に存在する。しかしながら、この遺伝子は発現に、メチオニンにより抑制されることが報告されているその本来のプロモーターを用いる。(Rey D. A. ら, J. Molecular Microbiology. 56:871-887 (2005))。McbRによる調節を受けないhom遺伝子を含有するM2014株を得るために、プラスミドpH410(配列番号12)由来のP497 homfbrカセット(この概略図は図10に示される)を、キャンベルインし、キャンベルアウトすることにより、M2014のpepCK遺伝子座に挿入し、続いて、PCRにより確認した。この結果として生じる株をOM224と名付けた。
上記のとおり、M2014およびOM224において標準的な振盪フラスコ実験を実施した。表XIに示されるように、OM224は、M2014と比べて、グリシンとホモセリン(Gly+Hse)、O-アセチルホモセリン(O-AcHse)、およびメチオニンについて力価の増加を示したが、リジン力価では、M2014と比べて、低下が起こった。アミノ酸はg/lで測定した。
Figure 2009501550
上記の実施例2に記載のように、プラスミドpOM62を用いて、P497 metFカセットをOM224株のbioAD遺伝子座に組み込み、結果として、株OM89を得た。続いて、野生型酵素と比べて大幅に低下した活性を有する酵素をコードする突然変異SAMシンターゼ遺伝子、metK*(C94A)(Reczkowski, R. S.およびG. D. Markham, J. Biol. Chem., 270:18484-18490 (1995))をMetK本来の遺伝子座に組み込むことにより、OM89をさらに変更した。MetK活性が低くなることによりS-アデノシルメチオニンの生産が減少するであろうことは予想された。プラスミドpH295(配列番号13)(この概略図は図11に示される)を、OM89についてキャンベルインし、キャンベルアウトして、OM89の野生型metKをmetK*と置き換え、株OM99を得た。このmetK*対立遺伝子は、OM99の染色体から誘導されるPCR産物にPshAI制限部位を導入するため、同定することが可能である。このOM99株を、次に、P497 metZカセットおよびP3119 metAカセットを有する複製プラスミドH357で形質転換して、株OM99(H357)を得た。
OM89、OM99、OM99(H357)、および親株において標準的な振盪フラスコ実験を実施した。表XIIに示されるように、OM41およびOM224はそれぞれ、それらの親株であるM2014よりも約20%多いメチオニンを生産した。OM89は、この実験ではM2014と同様の機能を示した。metK*遺伝子をOM89に組み込むことで(株OM99)、メチオニン力価がその親株よりも増加するように思われた。最後に、OM99(H357)では1.7g/lメチオニンの力価、親株OM99に対して約70%の増加が生じた。アミノ酸は全てg/lで測定した。
Figure 2009501550
OM99(H357)株はまた、ベンチスケール発酵でも好結果を収め、約78時間後8.5g/lのメチオニンを生産した(実施例11参照)。
実施例6: メチオニン生産を増加させる、M2014のmcbRの欠失
RXA00655欠失を有するプラスミドpH429(配列番号14)(この概略図は図12に示される)を用いて、組込みと切除によりC. glutamicumにmcbR欠失を導入した。(WO 2004/050694 A1参照)。プラスミドpH429をM2014株に形質転換し、カナマイシン耐性について選択した(キャンベルイン)。sacB対抗選択を用いて、切除により組み込まれたプラスミドを欠失したと思われる、この形質転換株のカナマイシン感受性派生株を単離した(キャンベルアウト)。この形質転換株より、小コロニーとそれより大きなコロニーを形成するカナマイシン感受性派生株を得た。どちらのサイズのコロニーもPCRによりスクリーニングして、mcbR欠失の存在を検出した。大きい方のコロニーにはその欠失はなく、一方、小さい方のコロニーの60〜70%には予想されたmcbR欠失があった。
単一コロニーについて最初の分離株をBHIプレートにストリークすると、極小コロニーと小コロニーが混合して現れた。この極小コロニーをBHIに再ストリークすると、この場合も極小コロニーと小コロニーが混合して現れた。この小コロニーをBHIに再ストリークすると、そのコロニーのサイズは通常小さく、均一であった。小単一コロニーの2つの分離株をOM403-4およびOM403-8と名付け、さらなる実験のためにこれらの分離株を選択した。
振盪フラスコ実験(表XIII)は、OM403-8が親M2014の場合のメチオニン量の少なくとも2倍で生産することを示した。この株はまた、M2014の場合の5分の1に満たないリジン量を生産し、これらのことからアスパラギン酸セミアルデヒドからホモセリンへの炭素フラックスの分岐が示唆された。3つめの明らかな違いは、OM403によるイソロイシンの蓄積においてM2014と比べて10倍を越える増加があったことであった。培養物は標準的な糖蜜培地で48時間増殖させた。
Figure 2009501550
さらに、表XIVに示されるように、OM403によるO-アセチルホモセリンの蓄積においてM2014と比べて15倍を越える減少があった。この結果についての最もふさわしい説明は、M2014において蓄積するO-アセチルホモセリンの大部分OM403においてメチオニン、ホモシステイン、およびイソロイシンに変換されているということである。培養物は標準的な糖蜜培地で48時間増殖させた。
Figure 2009501550
OM403バックグラウンドにおけるホモシステインのメチオニンへの変換を改善するために、OM403-8を複製プラスミドで形質転換した。この複製プラスミドはC. glutamicumにおいてmetH(pH170)(プラスミドpH170の概略図は図13および配列番号15の配列に記載される)遺伝子またはmetE(pH447)(プラスミドpH447の概略図は図14および配列番号16の配列に記載される)遺伝子の過剰発現を引き起こす。この新規菌株(それぞれOM418およびOM419)は、振盪フラスコ実験においてOM403-8よりも多くのメチオニンを生産した(表XV)。
Figure 2009501550
培養物は25μg/mlカナマイシンを添加したまたは添加しない標準的な糖蜜培地で48時間増殖させた。これらの菌株を発酵槽内で検証し、この場合、OM419はOM403-8よりも著しく多くのメチオニンを生産した。
実施例7: メチオニン生産を増加させる、OM419におけるmetF発現の増加
OM403-8におけるmetF発現を増加させるために、本来のmetFプロモーターを大腸菌ファージλPRプロモーターと置き換えた。これは、プラスミドpOM427(配列番号17)を用いてキャンベルインし、キャンベルアウトする標準的な技術を用いて行われた。この結果として生じる株(OM428-2と名付けた)をmetE発現ベクターH447で形質転換した。得られた株(OM448と名付けた)の4つの分離株を、OM403-8およびOM428-2とともに、振盪フラスコアッセイによりメチオニン生産についてアッセイした。表XVIに示されるこの実験の結果より、OM428-2およびOM448の4つ全ての分離株がOM403-8よりも著しく多くのメチオニンを生産し、OM448の4つの分離株の1つの分離株だけがOM428-2よりも多くのメチオニンを生産したことが示される。
Figure 2009501550
実施例8: 調節解除された硫酸還元経路を有する微生物の作製
プラスミドpOM423(配列番号18)を用いて、調節解除された硫酸還元経路を有する菌株を作製した。プラスミドpOM423の概略図は図16に示される。具体的には、大腸菌ファージλ PLおよびPR広域プロモーター構築物(E. coli phage lambda PL and PR divergent promoter construct)を用いて、本来の硫酸還元レギュロン広域プロモーターを置き換えた。株OM41をpOM423で形質転換し、カナマイシン耐性について選択した(キャンベルイン)。sacB対抗選択後、形質転換体からカナマイシン感受性誘導体を単離した(キャンベルアウト)。これらを、続いて、PCRにより解析して、硫酸還元レギュロンのプロモーター構造を決定した。PL-PR広域プロモーターを有する分離株をOM429と名付けた。OM429の4つの分離株を、DTNBストリップ実験を用いて硫酸還元についてアッセイし、振盪フラスコアッセイによりメチオニン生産ついてアッセイした。DTNBストリップ実験を用いて相対的スルフィド生産を評価するために、1枚の濾紙をエルマン試薬(DTNB)の溶液中に浸漬し、菌株の振盪フラスコ培養物上に浮かべて、48時間検証した。増殖中の培養物により生産された硫化水素によりDTNBが還元を受け、発生したH2Sの量にほぼ比例した黄色い色付きが生じる。そのため、生じた色の強度を用いて、様々な菌株の相対的硫酸還元活性のおおよその推定を得ることができる。これらの結果(表XVII)より、4つの分離株のうちの2つの分離株が相対的に高いレベルの硫酸還元を示したことが示される。これらの同じ2つの分離株はまた、最大レベルのメチオニンも生産した。培養物は標準的な糖蜜培地で48時間増殖させた。
Figure 2009501550
実施例9. メチオニン取り込みを減少させるmetQ発現の減少
OM403-8におけるメチオニンの取り込みを減少させるために、metQ遺伝子のプロモーターおよび5'部分を欠失させた。metQ遺伝子は、メチオニン取り込み複合体のサブユニットをコードし、そのサブユニットはその複合体が機能するのに必要である。これは、プラスミドpH449(この概略図は図15に示される)(配列番号19)を用いてキャンベルインし、キャンベルアウトする標準的な技術を用いて行われた。この結果として生じる株(OM456-2と名付けた)をmetE発現ベクターH447またはmetF発現プラスミドpOM436(配列番号20)で形質転換した。得られた株(それぞれOM464およびOM465と名付けた)のそれぞれ4つの分離株を、OM403-8およびOM456-2とともに、振盪フラスコアッセイによりメチオニン生産についてアッセイした。これらの結果(表XVIII)より、OM456-2がOM403-8よりも少し多くのメチオニンを生産し、OM464およびOM465の4つ全ての分離株がOM403-8よりも多くのメチオニンを生産したことが示される。培養物は標準的な糖蜜培地で48時間増殖させた。
Figure 2009501550
実施例10. OM469およびOM508の構築
metQの欠失やmetFの調節解除それぞれによりメチオニン生産が改善することから、OM469と呼ばれる、両方の特徴を有する株を構築した。OM469は、株OM456-2から、野生型metFプロモーターをファージλ PRプロモーターと置き換えることにより構築した。これは、プラスミドpOM427(配列番号17)を用いてキャンベルインし、キャンベルアウトする標準的な技術を用いて行われた。OM469の4つの分離株を振盪フラスコ培養アッセイによりメチオニン生産についてアッセイし、この場合、表XIXに示されるように、それらの全てがOM456-2よりも多くのメチオニンを生産した。
Figure 2009501550
培養物は2mMトレオニンを含有する標準的な糖蜜培地で48時間増殖させた。
株OM508を構築するために、株OM469-2を複製プラスミドpH357(配列番号11)で形質転換した。OM508の4つの分離株を振盪フラスコ培養アッセイによりメチオニン生産についてアッセイした。表XXに示されるように、4つの分離株のうちの3つの分離株はOM469よりも少ないメチオニンを生産し、その分離株の1つはOM469-2とほぼ同じ量のメチオニンを生産した。4つ全ての分離株はOM469-2よりも少ないグルコースを消費することから、グルコース1モル当たりのメチオニン収量がより高いことが示唆される。
Figure 2009501550
実施例11: 7.5lのNBS BioFlo 110ジャー内での発酵
5リットルの作業容積を有する7リットルのNew Brunswick Scientific (NBS)社製BioFloジャー内で供給バッチ発酵を行った。実験M111用の滅菌バッチ培地には:2.0lに対して糖蜜 150g/l; グルコース 10g/l; Difco社製酵母抽出物 10g/l; (NH4)2SO4 30g/l; MgSO4*7H2O 1g/l; KH2PO4*3H2O 5g/l; Mazu DF204C 1.5g/l(消泡試薬); 25mMトレオニン; 25mg/l カナマイシン; 1X Met Minerals; 1X Met Vitamins; およびdH20を含めた。この培地に、BHI-10(10g/lグルコースを添加したBecton Dickinson Brain-Heart Infusion medium)中28℃で18時間増殖させたOM99(H357)接種材料150mlを添加した。1X Met Mineralsは、終濃度、10mg/l FeSO4*7H2O、10mg/l MnSO4*H20、1mg/l H3BO3*4H20、2mg/l ZnSO4*7H2O、0.25mg/l CuSO4、および0.02mg/l Na2MoO4*2H2Oである。1X Met Vitaminsは、ビオチンを溶解するために12.5mMリン酸カリウム、pH7.0を含有する250X濾過滅菌ストックの、終濃度、6mg/lニコチン酸、9.2mg/lチアミン、0.8mg/lビオチン、0.4mg/lピリドキサール、および0.4mg/lシアノコバラミン(ビタミンB12)である。
発酵には、12.5mMトレオニンおよび12.5mMイソロイシンの400mlを32時間にわたって一定速度で供給した。別のグルコースフィードは、dH20中にグルコース750g/l、MgSO4*7H2O 2g/l、(NH4)2SO4 20g/l、および10X Met Vitaminsを含有した。OM99(H357)の発酵には、グルコース供給とアミノ酸フ供給を別々に供給し、初期グルコースレベルが10g/lまで下がったときに両方の供給は開始された。
糖蜜およびグルコース中のバッチ初期炭水化物は、接種後の最初の16〜24時間で消費された。細胞による初期グルコース消費後、ビタミン、硫酸マグネシウム、および硫酸アンモニウムを含有する上記のグルコース溶液を供給することによりグルコース濃度を10〜15g/l間に維持した。
攪拌は、200〜300rpmに初期設定した。溶存酸素濃度が25%に下がると、コンピューター制御により溶存酸素濃度が20±5%[pO2]に維持されるように、攪拌速度が自動調整される。ハードウェアにより達成可能な最大攪拌速度は1200rpmであった。1200rpmが溶存酸素レベルを20±5%[pO2]に維持するのに十分でない場合には、空気源に純酸素をパルスした。発酵はpH7.0±0.1および28℃±0.5℃に維持した。コンピューター制御およびデータ記録は、New Brunswick Scientific社製Biocommand ソフトウェアを用いた。
発酵M111では、72時間内に8.5g/lメチオニン、そして96時間内に11.5g/lメチオニンが生産された。96時間の時点で、リジンは16.5g/lであり、O-アセチルホモセリンは8.5g/lであった。よって、メチオニンに変換されるならば、メチオニン生産をさらに20g/l増加させ得る前駆体のプールが存在する。
実施例12: OM448-1のフェドバッチ発酵、発酵M190
OM448-1を、実施例11に記載のとおり発酵させたが、実験M190用の次の初期バッチ培地で開始した。1.5lに対して糖蜜 150g/l、グルコース 10g/l、Difco社製酵母抽出物 20g/l、(NH4)2SO4 30g/l、MgSO4*7H2O 1g/l、KH2PO4*3H2O 12g/l、HySoyT 20g/l、Mazu DF204C 1.5g/l、25mMトレオニン、25mg/lカナマイシン、1X Met Minerals、10X Met Vitamins、およびdH20。この培地に、BHySoy-10(10g/lグルコースおよび10g/l HySoyを添加したBecton Dickinson Brain-Heart Infusion medium)中30℃で24時間増殖させたOM448-2接種材料500mlを添加して、開始量2lを作製した。
発酵には、30mMトレオニン400mlを12.5ml/時間の速度で供給した。別のグルコースフィードは、グルコース750g/l、MgSO4*7H2O 2g/l、(NH4)2SO4 30g/l、1X Met Minerals、および25X Met Vitaminsを含有した。
上記培地でのOM448-2の発酵では、72時間内に16.6g/lメチオニン、そして76時間内に17.1g/lメチオニンが生産された。
実施例13: OM508-4のフェドバッチ発酵、発酵実験M322
OM508-4を、実施例11に記載のとおり発酵させたが、実験M322用の次の初期バッチ培地で開始した:1.5lに対して糖蜜 150g/l、Difco社製酵母抽出物 20g/l、(NH4)2SO4 30g/l、MgSO4*7H2O 1g/l、KH2PO4*3H2O 20g/l、HySoyT 20g/l、Mazu DF204C 1.5g/l、トレオニン 6g/l、セリン 10g/l、25mg/lカナマイシン、1X Met Minerals、バッチビタミン、およびdH20。初期バッチ培地にビタミンを添加して、終濃度15mg/lニコチン酸、23mg/lチアミン、2mg/lビオチン、1mg/lピリドキサール、および1mg/lシアノコバラミンを得た。この培地1.5Lに、BHySoy-15(15g/lグルコースおよび10g/l HySoyを添加したBecton Dickinson Brain-Heart Infusion medium)中30℃で24時間増殖させたOM508-4接種材料500mlを添加して、開始量2lを作製した。
供給は、グルコース750g/l、MgSO4*7H2O 2g/l、(NH4)2SO4 40g/l、セリン10g/l、トレオニン3.6g/l、1X Met Minerals、および供給ビタミンを含有した。
グルコース供給にビタミンを添加して、供給溶液中、終濃度75mg/lニコチン酸、115mg/lチアミン、10mg/lビオチン、5mg/lピリドキサール、および5mg/lシアノコバラミンを得た。上記培地でのOM508-4の発酵では、56時間内に25.8g/lメチオニンが生産された。
本明細書は、本明細書によって参照により組み入れる、本明細書内に引用された参照文献の教示に照らすことで最も完全に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明に包含される実施形態を例示するものであり、その範囲を限定するものと解釈してはならない。当業者ならば、多くの他の実施形態が本発明に包含されるということは容易に分かる。引用された全ての刊行物および特許、ならびに本明細書に記載の受託番号またはデータベース参照番号により確認される配列は、参照によりそのまま組み入れる。参照により組み入れる材料が本明細書と矛盾または相反する場合に限り、本明細書はかかる材料よりも優先される。本明細書におけるいかなる参照文献の引用も、かかる参照文献が本発明の先行技術であるということの承認ではない。
特に断りのない限り、特許請求の範囲も含め、本明細書において用いられる成分、細胞培養、処理条件などの量を表す全ての数は、あらゆる場合において、「約」という語で修飾されると理解されるべきである。従って、そうではないとの指示がない限り、数値パラメーターは近似値であり、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変えることができる。特に断りのない限り、一連の要素の前に置いている用語「少なくとも」とは、その一連のものに含まれる各要素を指すと理解されるべきである。
当業者ならば、ルーチン実験を用いる程度で、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態の多くの均等物を理解し、または確認することができるであろう。かかる均等物は特許請求の範囲に包含されるものとする。
本明細書に記載の微生物において利用されるメチオニン生合成経路の概略図である。 pH273ベクターの概略図である。 pH373ベクターの概略図である。 pH304ベクターの概略図である。 pH399ベクターの概略図である。 pH484ベクターの概略図である。 pH491ベクターの概略図である。 プラスミドpOM62の概略図である。 pH357ベクターの概略図である。 pH410ベクターの概略図である。 pH295ベクターの概略図である。 pH429ベクターの概略図である。 pH170ベクターの概略図である。 pH447ベクターの概略図である。 pH449ベクターの概略図である。 プラスミドpOM423の概略図である。

Claims (22)

  1. askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される少なくとも5つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含む組換え微生物であって、該遺伝子改変が該少なくとも5つの遺伝子の過剰発現を引き起こし、結果として、該少なくとも5つの遺伝子における該遺伝子改変の不在下で生産されるメチオニンと比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす、組換え微生物。
  2. askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される少なくとも8つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含む組換え微生物であって、該遺伝子改変が該少なくとも8つの遺伝子の過剰発現を引き起こし、結果として、該少なくとも8つの遺伝子における該遺伝子改変の不在下で生産されるメチオニンと比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす、組換え微生物。
  3. (a)askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される少なくとも5つの遺伝子のそれぞれにおける、結果として、該少なくとも5つの遺伝子のそれぞれの過剰発現をもたらす遺伝子改変;および
    (b)mcbR、hsk、metQ、metK、およびpepCKから選択される少なくとも1つの遺伝子における、結果として、該少なくとも1つの遺伝子の低下した発現をもたらす遺伝子改変;
    の組合せを含む組換え微生物であって、
    該微生物が、該組合せの不在下で生産されるメチオニンと比べて、増加したレベルのメチオニンを生産する、組換え微生物。
  4. (a)askfbr、homfbr、metH、およびaskfbr、homfbr、metEからなる群から選択される遺伝子のそれぞれにおける、結果として、該遺伝子のそれぞれの過剰発現をもたらす遺伝子改変;および
    (b)mcbRおよびhskのそれぞれにおける、結果として、mcbRおよびhskの低下した発現をもたらす遺伝子改変;
    の組合せを含む組換え微生物であって
    該微生物が、該組合せの不在下で生産されるメチオニンと比べて、増加したレベルのメチオニンを生産する、組換え微生物。
  5. (a)askfbr、homfbr、metX、metY、metF、metH、metE、およびaskfbr、homfbr、metX、metY、metF、metEからなる群から選択される少なくとも6つの遺伝子のそれぞれにおける、結果として、該少なくとも6つの遺伝子のそれぞれの過剰発現をもたらす遺伝子改変;
    (b)mcbRおよびhskのそれぞれにおける、結果として、mcbRおよびhskの低下した発現をもたらす遺伝子改変;
    の組合せを含む組換え微生物であって
    該微生物が,該組合せの不在下で生産されるメチオニンと比べて、増加したレベルのメチオニンを生産する、組換え微生物。
  6. (a)askfbr、homfbr、metX、metY、metF、metE、およびaskfbr、homfbr、metX、metY、metF、metH、metEからなる群から選択される少なくとも6つの遺伝子のそれぞれにおける、結果として、該少なくとも6つの遺伝子のそれぞれの過剰発現をもたらす遺伝子改変;
    (b)mcbRおよびhskのそれぞれにおける、結果として、mcbRおよびhskの低下した発現をもたらす遺伝子改変;ならびに
    (c)エチオニン耐性突然変異;
    の組合せを含む組換え微生物であって
    該微生物が好適な条件下で少なくとも16g/lメチオニンを生産する、組換え微生物。
  7. ask、hom、metX、metY、metB、metH、metE、metF、metC、zwf、frpA、pyc、asd、cysE、cysK、cysM、cysZ、cysC、cysG、cysN、cysD、cysH、cysJ、cysA、cysI、およびcysXから選択される少なくとも8つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含む組換え微生物であって、該遺伝子改変が該少なくとも8つの遺伝子の過剰発現を引き起こし、結果として、該遺伝子改変の不在下で生産されるメチオニンと比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす、組換え微生物。
  8. (a)ask、hom、metX、metY、metB、metH、metE、metF、metC、zwfから選択される少なくとも5つの遺伝子のそれぞれにおける、該少なくとも5つの遺伝子の過剰発現を引き起こす遺伝子改変;および
    (b)cysM、cysA、cysZ、cysC、cysG、cysJ、cysE、cysK、cysN、cysD、cysH、cysI、およびcysXから選択される少なくとも6つの遺伝子のそれぞれにおける、該少なくとも6つの遺伝子の過剰発現を引き起こす遺伝子改変;
    の組合せを含む組換え微生物であって、
    結果として、該組合せの不在下で生産されるメチオニンと比べて、該微生物による増加したメチオニン生産をもたらす、組換え微生物。
  9. (a)askfbr、homfbr、metX、metY、metB、metH、metE、metF、およびzwfから選択される少なくとも5つの遺伝子のそれぞれにおける、該少なくとも5つの遺伝子の過剰発現を引き起こす遺伝子改変;
    (b)mcbR、hsk、metQ、metK、およびpepCKから選択される少なくとも1つの遺伝子のそれぞれにおける、該少なくとも1つの遺伝子の過剰発現を引き起こす遺伝子改変;
    の組合せを含む組換え微生物であって
    前記組合せが好適な条件下で少なくとも8g/lのメチオニン生産をもたらす、組換え微生物。
  10. グラム陽性である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組換え微生物。
  11. グラム陰性である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組換え微生物。
  12. バチルス属、コリネバクテリウム属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、およびストレプトミセス属から選択される属に属する微生物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組換え微生物。
  13. コリネバクテリウム属に属する微生物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組換え微生物。
  14. コリネバクテリウム・グルタミカム(Cornyebacterium glutamicum)に属する微生物である、請求項13に記載の組換え微生物。
  15. 株M2014、M1119、M1494、M1990、OM41、OM224、OM89、OM99、OM99(H357)、OM403、OM418、OM419、OM428、OM429、OM448、OM456、OM464、OM469、OM465、およびOM508、またはそれらの派生株から選択される、請求項1〜9に記載の組換え微生物。
  16. DSMZ受託番号DSM17322として寄託されている、組換え微生物。
  17. アスパラギン酸キナーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンアセチルトランスフェラーゼ、ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ-シンターゼ、シスタチオニンβ-リアーゼ、O-アセチルホモセリンスルフヒドララーゼ、O-スクシニルホモセリンスルフヒドララーゼ、ビタミンB12依存性メチオニンシンターゼ、ビタミンB12非依存性メチオニンシンターゼ、N5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット2、APSキナーゼ、APSレダクターゼ、ホスホアデノシンホスホ硫酸レダクターゼ、NADP-フェレドキシンレダクターゼ、亜硫酸レダクターゼサブユニット1、亜硫酸レダクターゼサブユニット2、硫酸イオントランスポーター、セリンO-アセチルトランスフェラーゼ、O-アセチルセリン(チオール)-リアーゼA、ウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、およびアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼから選択される少なくとも5つのタンパク質の調節解除を含む組換え微生物であって、
    該調節解除が該少なくとも5つのタンパク質の過剰発現を含み、結果として、好適な条件下で少なくとも8g/lの量でメチオニンの生産をもたらす、組換え微生物。
  18. メチオニンを生産する方法であって、メチオニンが少なくとも8g/lの量で生産されるような条件下で、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換え微生物を培養することを含む、方法。
  19. メチオニンを生産する方法であって、
    (a)メチオニンが生産されるような条件下で、ask、hom、metX、metY、metB、metC、metH、metE、metF、metK、ilvA、metQ、fprA、asd、cysD、cysN、cysC、pyc、cysH、cysI、cysY、cysX、cysZ、cysE、cysK、cysG、zwf、hsk、mcbR、およびpepCKから選択される少なくとも8つの遺伝子のそれぞれに遺伝子改変を含むコリネバクテリウム株を培養すること;および
    (b)該メチオニンを回収すること
    を含む、前記方法。
  20. 前記コリネバクテリウム属株がCorynebacterium glutamicumから誘導される、請求項19に記載の方法。
  21. メチオニンが培養物1L当たり少なくとも16gの量で生産される、請求項19に記載の方法。
  22. メチオニンが培養物1L当たり少なくとも25gの量で生産される、請求項19に記載の方法。
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