プッシュスイッチ装置に対しては、操作体の押圧される側が発光して見える照光を行いやすくすることが要望されている。前述した従来のプッシュスイッチ装置において、ハウジングに設けられた回転体の回転軸、回転体、カムフォロワおよび操作体のそれぞれの形状や配置は、その要望を実現することが考慮されていない。
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、操作体の押圧される側が発光して見える照光を行いやすくすることができるプッシュスイッチ装置を提供することにある。
前述の目的を達成するための本発明は次のものである。
〔1〕 本発明は、ハウジングと、このハウジング内に回転可能に設けられた回転体と、この回転体の回転角度の変化に伴い信号を生起させる検知手段と、前記ハウジングに対し前記回転体の回転軸線方向に直線運動が可能で前記回転軸線周りの回転が不能に設けられた操作体と、前記回転体と前記操作体の間に介在し前記回転体と一体的に回転可能に結合した状態で前記回転軸線方向に直線運動可能なカムフォロワを含み、前記操作体の押圧操作に連動させて前記回転体を一方向に所定角度だけ回転させるラチェット機構とを備えたプッシュスイッチ装置であって、前記ハウジングには前記回転軸線方向に沿って延びる軸部が立設されており、前記回転体には前記回転軸線方向に貫通する第1貫通孔が設けられ、前記カムフォロワには前記回転軸線方向に貫通する第2貫通孔が設けられ、前記操作体には前記回転軸線方向に貫通する第3貫通孔が設けられ、これらの第1〜第3貫通孔が前記軸部に挿通されており、前記軸部に導光路が設けられたことを特徴とする。
この「〔1〕」に記載の本発明において、操作体の押圧される側の端部とは反対側の導光路の一端に入射された光は、導光路の他端、すなわち、操作体の押圧される側の端部から放射される。これにより、操作体の押圧される側は発光して見える。つまり、「〔1〕」に記載の本発明によれば、操作体の押圧される側の照光の光源を、導光路の一端に光を入射させることができる位置に配置するだけで、操作体の押圧される側が発光して見える照光を行うことができる。したがって、操作体の押圧される側が発光して見える照光が行いやすい。
〔2〕 本発明は「〔1〕」に記載の発明において、前記導光路が前記軸部に設けられた貫通孔部により形成されたことを特徴とする。
この「〔2〕」に記載の本発明によれば、貫通孔部内に照光の光源を配置して導光路外への光の漏れを低減でき、したがって、照光の明るさを確保しやすい。
〔3〕 本発明は「〔1〕」または「〔2〕」に記載の発明において、前記ラチェット機構は、前記カムフォロワを前記回転軸線方向における初期位置側に向かって付勢する復帰バネと、前記操作体の前記回転体側に設けられ、前記回転軸線方向の起伏が円環状に連なる第1冠状部と、前記カムフォロワに設けられ前記第1冠状部に対向して位置し、この第1冠状部に噛合い可能な第2冠状部と、前記第2冠状部よりも外周側に設けられたカム部と、前記ハウジングの内面に形成され前記カム部をガイドして前記操作体の押圧操作に連動する前記カムフォロワの動作を規定するガイド部とを備え、前記ガイド部は、前記カムフォロワの周囲に複数断続的に設けられて前記カム部と係合する回転阻止部と、隣合う前記回転阻止部間に設けられた回転ガイド部と、この回転ガイド部の途中に設けられて前記カム部と係合する復帰阻止部とを有し、前記回転阻止部は、前記カムフォロワの初期位置から前記復帰バネの復元力に抗した移動、および、前記復帰バネによる前記カムフォロワの初期位置への復帰を許可するとともに、前記回転軸線方向の所定範囲において前記カム部を係止することにより前記カムフォロワの回転を阻止する形状に形成され、前記回転ガイド部は、前記カム部から伝達された前記復帰バネの復元力を前記一方向の力に変換して前記カム部に付与する形状に形成され、前記復帰阻止部は、前記復帰バネの復元力に抗する方向の前記カムフォロワの移動を許可するとともに、前記カムフォロワの前記一方向の回転および初期位置への復帰を前記カム部を係止することにより阻止する形状に形成されたことを特徴とする。
この「〔3〕」に記載の本発明の動作について、操作体がカムフォロワの上側に位置するようにハウジングの姿勢を保持して操作体を操作する場合を例に挙げ説明する。
カムフォロワが初期位置に位置する状態は、カムフォロワのカム部が回転阻止部に係止されることによりカムフォロワの回転が阻止された状態であるとともに、復帰バネの復元力に抗したカムフォロワの下方向への移動が許可された状態である。操作体の下方向への移動は、復帰バネの復元力がカムフォロワを介して操作体に付与されることにより抑制された状態になっている。なお、この状態では第1冠状部と第2冠状部は噛合ってはいない。
ユーザーが操作体に復帰バネの復元力よりも大きな押圧力を付与すると、操作体の第1冠状部によりカムフォロワの第2冠状部が押圧されることによって、操作体とカムフォロワが一体的に復帰バネを押し縮めながら回転体に近づく方向に移動する。この結果、カムフォロワは回転軸線方向の所定範囲外に移動し、これに伴ってカム部が回転阻止部から離脱し、これによりカムフォロワの回転が許可される。第2冠状部が復帰バネの復元力により第1冠状部に押し付けられているので、カムフォロワは第2冠状部が第1冠状部に噛合うまで一方向に回転する。これに伴って、カム部は回転軸線方向において回転ガイド部と重なる位置に移動する。
第1冠状部に第2冠状部が噛合った後、ユーザーが操作体に対する押圧力の付与を止めると、カムフォロワは復帰バネの復元力により押し戻され、これによりカム部が回動ガイド部に押し付けられる。このとき、回動ガイド部は、カム部から伝達された復帰バネの復元力を一方向の力に変換してカム部に付与し、これによりカム部はカムフォロワを一方向に回転させながら復帰阻止部まで移動する。カム部が復帰阻止部に達すると、カムフォロワの回転は停止し、初期位置にも復帰しなくなる。操作体は回転軸線方向において第1冠状部,第2冠状部,復帰バネを介してカムフォロワと一体的に移動するので、カムフォロワが初期位置に復帰しなくなったことに伴い、カムフォロワが初期位置に位置しているときよりも回転体に近い位置、すなわち押圧操作前よりも低い位置に操作体が停止する。
このように「〔3〕」に記載の本発明によれば、操作体の回転軸線方向における停止位置を、カムフォロワが初期位置に位置したときと、カムフォロワの初期位置への復帰が復帰阻止部により阻止されたときとで、異ならせることができる。
また、回転体はカムフォロワと一体的に回転するので、カム部が回転阻止部に係止されるときの回転体の回転角度と、カム部が復帰阻止部に係止されるときの回転体の回転角度とで、検知手段の状態を異なるものに設定すれば、それらの検知手段の状態の違いを、操作体の回転軸線方向における停止位置の違いにより判別することができる。
〔4〕 本発明は「〔3〕」に記載の発明において、前記カム部は、前記第2冠状部よりも外周側に突出した突起部からなり、前記回転阻止部は、前記回転軸線方向に延び前記回転体側に開口して前記カム部が挿入可能な溝からなり、前記回転ガイド部は、隣合う前記回転阻止部のうちの一方の前記回転阻止部の開口端から延び、前記回転軸線周りの円周方向において前記回転体から離れる方向に傾斜した第1斜面と、この第1斜面側から他方の前記回転阻止部の開口端まで延び前記第1斜面と同方向に傾斜した第2斜面とを有し、前記復帰阻止部は、前記第1斜面と前記第2斜面との間に形成された段差部からなることを特徴とする。
この「〔4〕」に記載の発明によれば、カム部、回転阻止部、回転ガイド部および復帰阻止部を容易に設けることができ、かつ、確実に機能させることができる。
〔5〕 本発明は「〔4〕」に記載の発明において、前記第1斜面と前記段差部間には前記カム部を挿入可能な凹部が設けられ、この凹部は、前記復帰阻止部と、前記一方向と逆方向への前記カム部の回転を阻止する逆転阻止部を形成していることを特徴とする。
この「〔5〕」に記載の本発明において、逆転阻止部はカム部を係止してカムフォロワが回転ガイド部によるガイド方向(一方向)と逆方向に回転するのを防止する。これにより回転体の逆方向への回転を防止して、検知手段が操作体の回転軸線方向における停止位置に対応しない状態となることを防止することができる。
〔6〕 本発明は「〔1〕」〜「〔5〕」のいずれか1に記載の発明において、前記操作体は、前記第3貫通孔を形成する第1筒状部と、この第1筒状部の外周側で前記第1冠状部が設けられた第2筒状部とを有し、これら第1筒状部と第2筒状部の間に、前記回転体側と反対側に壁部を有する筒状空間を形成し、前記第2筒状部の内周側に前記カムフォロワが前記回転体側から挿入され、前記第1筒状部が前記カムフォロワの前記第2貫通孔に挿入され、前記筒状空間の前記操作体と前記カムフォロワとの間には、前記復帰バネよりもバネ荷重の小さい緩衝バネが配置されたことを特徴とする。
この「〔6〕」に記載の本発明において、緩衝バネは操作体とカムフォロワの間で緩衝を行い、操作体とカムフォロワ間で生じる例えば第1冠状部と第2冠状部とが噛合う際の衝撃音を低減する。また、操作体のカムフォロワに対するガタつきを防止することができる。これらにより、プッシュスイッチ装置の品位を向上させることができる。
〔7〕 本発明は「〔6〕」に記載の発明において、前記復帰バネと前記緩衝バネは、前記回転軸線方向に並んで配置されたことを特徴とする。
この「〔7〕」に記載の本発明によれば、回転軸線周りの円の径方向におけるプッシュスイッチ装置の寸法が短縮しやすくなる。
〔8〕 本発明は「〔3〕」に記載の発明において、前記カムフォロワは、前記復帰バネによる前記カムフォロワの初期位置への復帰が前記復帰阻止部により阻止されたロック状態において、前記回転体から離れる方向の前記操作体の移動を、前記操作体に設けられた係止部を係止することにより阻止する離間阻止部を有することを特徴とする。
この「〔8〕」に記載の本発明において、離間阻止部はロック状態において、回転体から離れる方向の操作体の移動を阻止する。これにより、前述の「〔3」に記載の発明のように、操作体がカムフォロワの上側に位置するようにハウジングの姿勢が保持されていなくても、例えば、操作体がカムフォロワの下側に位置するようにハウジングの姿勢が保持されていても、ロック状態における操作体の位置を、カムフォロワが初期位置に位置しているときよりも回転体に近い位置に保持することができる。つまり、操作体の回転軸線方向の停止位置を、カムフォロワが初期位置に位置したときと、カムフォロワの初期位置への復帰が復帰阻止部により阻止されたときとで、ハウジングの姿勢に関係なく、異ならせることができる。
〔9〕 本発明は「〔6〕」または「〔7〕」に記載の発明において、前記第1筒状部の先端側は外方に突出する突出部が設けられ、前記カムフォロワには、前記回転体から離れる方向への前記操作体の移動を、前記突出部を係止することにより阻止する離間阻止部が形成されたことを特徴とする。
この「〔9〕」に記載の本発明によれば、第1筒状部の回転体側の端部に設けられた突出部と、カムフォロワに形成された離間阻止部とからなる簡単な構成によって、操作体の回転軸線方向の停止位置を、カムフォロワが初期位置に位置したときと、カムフォロワの初期位置への復帰が復帰阻止部により阻止されたときとで、ハウジングの姿勢に関係なく、異ならせることができる。
〔10〕 本発明は「〔1〕」〜「〔9〕」のいずれか1に記載の発明において、前記カムフォロワは、前記回転体とのスプライン結合によって、前記回転体と一体的に回転可能に結合した状態で前記回転軸線方向に直線運動可能になっていて、前記スプラン結合は、前記カムフォロワの前記第2冠状部の一部を切り欠いて形成され前記回転軸線方向に延びて前記回転体側で開口したスリットと、前記回転体に突出して形成され前記スリットに挿入された挿入部とによって構成されたことを特徴とする。
この「〔10〕」に記載の本発明において、カムフォロワの第2冠状部の一部を切り欠いてスリットが形成されているので、カムフォロワと回転体とのスプライン結合個所を第2冠状部よりも外周側に出ずに配置できる。これにより、回転軸線周りの円の径方向におけるプッシュスイッチ装置の寸法が短縮しやすくなる。
〔11〕 本発明は「〔1〕」〜「〔10〕」のいずれか1に記載の発明において、前記検知手段は、前記回転体に一体的に回転可能に設けられた可動接点と、前記ハウジングに対して固定され前記可動接点と接離する固定接点とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、前述したように、操作体の押圧される側の照光の光源を、導光路の一端に光を入射させることができる位置に配置するだけで、操作体の押圧される側が発光して見える照光を行うことができき、したがって、操作体の押圧される側が発光して見える照光を行いやすくすることができるプッシュスイッチ装置を提供できる。
本発明の一実施形態に係るプッシュスイッチ装置について図を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るプッシュスイッチ装置の斜視図である。図2は図1に示されたプッシュスイッチ装置の正面図である。図3は図1に示されたプッシュスイッチ装置の上面図である。図4は図1に示されたプッシュスイッチ装置が基板に設置された状態の側面図である。
これらの図1〜図4に示すように、本実施形態に係るプッシュスイッチ装置1は、上面視矩形状のハウジング2を備えている。このハウジング2の上端面からは、上面視円環状で合成樹脂製の操作体30が突出している。ハウジング2の下部からは、良導電性の第1〜第4外部端子21A〜21Dが突出している。これらの第1〜第4外部端子21A〜21Dは電気機器等に設けられた回路基板90の4つの孔90a,90b等に挿入された状態で半田付けされ、プッシュスイッチ装置1はその回路基板90を介して電源に接続された状態となる。
図5は図1に示されたプッシュスイッチ装置の分解斜視図である。図6は図1に示されたプッシュスイッチ装置の縦断面を拡大して示す図であって、(a)は図2のVIa−VIa断面図、(b)は同図2のVIb−VIb断面図である。図7は図1に示されたプッシュスイッチ装置に備えられたウエハ単体を拡大して示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。図8は図1に示されたプッシュスイッチ装置に備えられた回転体単体を拡大して示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。図9は図1に示されたプッシュスイッチ装置に備えられたハウジング単体を拡大して示す図であり、(a)は上面図、(b)は下面図、(c)は(a)のc−c断面図である。図10は図1に示されたプッシュスイッチ装置に備えられた操作体単体を拡大して示す図であり、(a)上面図、(b)側面図および(c)下面図である。図11は図1に示されたプッシュスイッチ装置に備えられたカムフォロワ単体を拡大して示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。図12は図1に示されたプッシュスイッチ装置に備えられたラチェット機構に含まれる(a)ハウジングのガイド部、(b)操作体の第1冠状部および(c)カムフォロワの第2冠状部を展開し拡大して示す図である。
図5,図6に示すように、ハウジング2は、ハウジング本体3とウエハ4とが結合したものである。ハウジング本体3は樹脂成形品であり、ハウジング2の上端面とハウジング2の正面、背面、左側面および右側面の大部分とを形成している。ウエハ4も樹脂成形品であり、ハウジング2の下部を形成している。
図7に示すように、ウエハ4の底部4aには、ハウジング2内で露出する良導電性の第1〜第5固定接点22A〜22Eが図7の右回りに、第1固定接点22A、第2固定接点22B、第4固定接点22D、第3固定接点22C、第5固定接点22Eの順番で円周状に配列されている。第1固定接点22Aは第1,第2外部端子21A,21Bと一体に形成されている。第2固定接点22Bおよび第3固定接点22Cは第3外部端子21Cと一体に形成されている。第4固定接点22Dおよび第5固定接点22Eは、第4外部端子21Dと一体に形成されている。これら第1〜第5固定接点22A〜22Eおよび第1〜第4外部端子21A〜21Dは、ウエハ4にインサート成形により設けられている。
図5,6に示すように、ウエハ4の中央には、軸部としての円筒軸部4bが操作体30の方向(上方向)に突出して形成されている。この円筒軸部4bは合成樹脂製の回転体10の第1貫通孔82に挿入されている。図8に示すように、回転体10は基部を成す円板部11と、この円板部11の中央に前記第1貫通孔82を形成している円筒部12とを有する。円筒部12と第1貫通孔82の寸法関係は回転体10の円筒軸部4b周りの回転を可能にするものであるとともに、その回転の際に回転体10は第1貫通孔82を形成する円筒部12の内周面の位置で、ウエハ4の円筒軸部4bの外周面によりガイドされるよう設定されている。
図8(b),(c)に示すように、回転体10の円板部11の下面には、下方向に突起した嵌合突起11a,11bが第1貫通孔82を挟んで回転体10の径方向に並んで形成されている。この嵌合突起11a,11bは、図5に示す導電性摺動体23の嵌合孔23a,23bと嵌合している。導電性摺動体23は上面視形状が円環状に形成された良導電性部材であり、回転体10の円板部11と同心に配置されている。この導電性摺動体23は、その径方向に対向して配置され下方向に突起した1対の第1,第2可動接点24a,24bを有する。第1,第2可動接点24a,24bは、回転体10の回転に伴い前出のウエハ4の底部4aに弾性的に接している。第1,第2可動接点24a,24bと第1〜第5固定接点22A〜22Eとの位置関係は、第1,第2可動接点24a,24bが第1〜第5固定接点22A〜22E上を回転することによって、次の第1〜第8状態が順次形成されるように設定されている。
第1状態は、第1可動接点24aが第1固定接点22Aに接し第2可動接点24bが第2固定接点22Bに接して第1,第2固定接点22A,22B間が導電性摺動体23を介して導通する状態である。第2状態は、第1可動接点24aが第1固定接点22Aに接し第2可動接点24bが第4固定接点22Dに接して第1,第4固定接点22A,22D間が導電性摺動体23を介して導通する状態である。第3状態は、第1可動接点24aが第1固定接点22Aに接し第2可動接点24bが第3固定接点22Cに接して第1,第3固定接点22A,22D間が導電性摺動体23を介して導通する状態である。第4状態は、第1可動接点24aが第1固定接点22Aに接し第2可動接点24bが第5固定接点22Eに接して第1,第5固定接点22A,22E間が導電性摺動体23を介して導通する状態である。第5状態は、第2可動接点24bが第1固定接点22Aに接し第1可動接点24aが第2固定接点22Bに接して第1,第2固定接点22A,22B間が導電性摺動体23を介して導通する状態である。第6状態は、第2可動接点24bが第1固定接点22Aに接し第1可動接点24aが第4固定接点22Dに接して第1,第4固定接点22A,22D間が導電性摺動体23を介して導通する状態である。第7状態は、第2可動接点24bが第1固定接点22Aに接し第1可動接点24aが第3固定接点22Cに接して第1,第3固定接点22A,22D間が導電性摺動体23を介して導通する状態である。第8状態は、第2可動接点24bが第1固定接点22Aに接し第1可動接点24aが第5固定接点22Eに接して第1,第5固定接点22A,22E間が導電性摺動体23を介して導通する状態である。
これら第1〜第8状態が第1,第2可動接点24a,24bと第1〜第5固定接点22A〜22Eによって形成されることから分かるように、第1,第2可動接点24a,24bは回転体10に一体的に回転可能に設けられた被検知部であり、第1〜第5固定接点22A〜22Eはハウジング2に対して固定され被検知部を検知する検知部である。つまり、第1,第2可動接点24a,24bと第1〜第5固定接点22A〜22Eは、回転体10の回転角度の変化に伴って電気信号を生起させる検知手段20を構成している。
図6示すように、ハウジング本体3には、回転軸線100方向(上下方向)に貫通した孔3aが形成されている。この孔3aは、ウエハ4の円筒軸部4bと同心円となっている。操作体30は孔3aに挿入されることによって回転体10の回転軸線100方向に配置されているとともに、孔3aが形成されるハウジング本体3の内周面にガイドされることによって、ハウジング2に対し回転軸線100方向に直線運動が可能になっている。
操作体30およびハウジング本体3には、操作体30をハウジング2に対し回転体10の回転軸線100方向に直線運動が可能で回転軸線100周りの回転が不能にする回転阻止構造が形成されている。その回転阻止構造は、ハウジング本体3の孔3aの円筒面が形成される内周面に形成され回転軸線100方向に延びた溝からなる回転阻止部52(図9(b),(c),図12(a)に示す)と、操作体30の外周面に外方に突出して形成され、回転阻止部52に挿入されたガイド突起34(図10に示す)とからなる。回転阻止部52とガイド突起34の組合せは、回転軸線100周りの円周方向において等間隔に4つ設けられている。
図5,6に示すように、回転体10と操作体30の間にはカムフォロワ41が介在している。このカムフォロワ41は、図11に示すように、中央に円形の第2貫通孔83が形成された円環部42と、この円環部42から回転体10の円板部11の方向(下方向)に延びた1対の湾曲板部43A,43Bとを有する。円環部42の第2貫通孔83の中心は、回転体10の回転軸線100上に配置されている。1対の湾曲板部43A,43Bは、円環部42の外縁に沿って円弧状に湾曲していて円環部42の径方向に対向している。
図10,図12(b)に示すように、操作体30の回転体10の基部である円板部11側の端部、すなわち下端部には、回転軸線100方向の起伏が操作体30の円周方向に沿って円弧状に連なることとして円環状に連続した第1冠状部45が形成されている。図11,図12(c)に示すように、カムフォロワ41の1対の湾曲板部43A,43Bの外周側には、第1冠状部45に対向して位置し、この第1冠状部45に噛合い可能な第2冠状部47が形成されている。第1冠状部45の起伏を形成する山形歯46は、操作体30の円周方向において回転体10の円板部11から離れる方向(上方向)に傾斜する第1斜面46aと、同方向において回転体10の円板部11に近づく方向(下方向)に傾斜する第2斜面46bとを有する。第1斜面46aは第2斜面46bよりも長く緩やかな勾配に設定されている。第2冠状部47の起伏を形成する山形歯48は、操作体30の円周方向において回転体10の円板部11から離れる方向に傾斜する第1斜面48aと、同方向において回転体10の円板部11に近づく方向に傾斜する第2斜面48bとを有する。第1斜面48aは第2斜面48bよりも長く緩やかな勾配に設定されている。第1冠状部45の第1斜面46aと第2冠状部47の第1斜面48aとは、円周方向においてほぼ同じ長さ寸法に設定されている。第1冠状部45の第2斜面46bと第2冠状部47の第2斜面48bとも、円周方向においてほぼ同じ長さ寸法に設定されている。第2冠状部47の山形歯48の頂部48cは円周方向に丸みを帯びている。
カムフォロワ41は回転体10とスプライン結合していることによって、回転軸線100周りでの回転体10との一体的な回転が可能になっているとともに、回転体10に対し回転軸線100方向に直線運動が可能になっている。そのスプラン結合は、カムフォロワ41の1対の湾曲板部43A,43Bにおける第2冠状部47の内周側に形成され、回転軸線100方向に延びて回転体10の円板部11側で開口した1対のスリット44A,44Bと、回転体10に突出して形成されスリット44A,44Bに挿入された例えば1対の湾曲板部43A,43Bとほぼ同じような湾曲板状の1対の挿入部13A,13Bとによって実現されている。
図5,6に示すように、回転体10の円板部11とカムフォロワ41の円環部42との間には、カムフォロワ41を回転軸線100方向で初期位置(図6に示す位置)の方向に付勢する復帰バネ49が設けられている。この復帰バネ49は、円筒軸部4bが挿入された状態で、カムフォロワ41の1対の湾曲板部43A,43Bの内周側に位置している。
カムフォロワ41の第2冠状部47よりも外周側としての外周面には、カム部50が外方に突出して形成されている。ハウジング2の孔3aの内周面には、カム部50をガイドして操作体30の押圧操作に連動するカムフォロワ41の動作を規定するガイド部51が形成されている。このガイド部51は、図12(a)に示すように、操作体30のガイド突起34が挿入された前出の回転阻止部52を、カムフォロワ41の周囲に複数断続的に設けられてカム部50と係合する回転阻止部として含むとともに、隣合う回転阻止部52間に設けられた回転ガイド部53と、この回転ガイド部53に設けられてカム部50と係合する復帰阻止部54aとを有する。
カム部50をガイドする回転阻止部としての回転阻止部52は、回転軸線100方向に延びていることに加えて、回転体10の円板部11側に開口している。カム部50は、回転軸線100周りの円周方向の長さ寸法が操作体30のガイド突起34とほぼ同じに設定されて、回転阻止部52に挿入されている。これにより、回転阻止部52は、カムフォロワ41の初期位置からの復帰バネ49の復元力に抗した移動、および、復帰バネ49によるカムフォロワ41の初期位置への復帰を許可するとともに、回転軸線100方向の所定範囲においてカムフォロワ41の回転を阻止する。
回転ガイド部53は、隣合う回転阻止部52の開口部52a間に形成されていて、隣合う回転阻止部52のうちの一方の回転阻止部52から延びた第1斜面53aと、この第1斜面53a側から他方の回転阻止部52まで延びた第2斜面53bとを有する。これら第1,第2斜面53a,53bは、回転軸線100周りの円周方向において回転体10から離れる方向に傾斜している。この傾斜により、回転ガイド部53は、カム部50から伝達された復帰バネ49の復元力を一方向の力に変換してカム部50に付与するようになっている。なお、本実施形態では第1斜面53aに比べて第2斜面53bの方が傾斜が急になっている。また、回転体10の円板部11と反対側のカム部50の面は、第1斜面53aと同方向でほぼ同角度に傾斜した斜面となっている。なお、カム部50の位置は、ガイド部51の位置と共に適宜設定される。
復帰阻止部54aは、第1,第2斜面53a,53bの間に形成された段差部からなり、カム部50を係止することにより、カムフォロワ41の一方向の回転と初期位置への復帰を阻止するようになっている。この復帰阻止部54aは、カムフォロワ41の一方向の回転と初期位置への復帰を阻止することによって、復帰バネ49によるカムフォロワ41の初期位置への復帰を阻止し、ロック状態を形成する。
回転ガイド部53の円周方向における中央には、カム部50が挿入可能な凹部54が形成されている。この凹部54の底部と前記一方向の回転側に位置する壁部とで前出の復帰阻止部54aを形成し、この復帰阻止部54aの壁部に対して凹部54の回転軸線100周りの同心円上で一方向と逆方向に位置する壁部にて、逆方向へのカム部50の回転を阻止する逆転阻止部54bとを形成している。
ハウジング本体3のガイド部51と、操作体30の第1冠状部45と、カムフォロワ41と、復帰バネ49は、操作体30の押圧操作に連動させて回転体10を一方向に所定角度だけ回転させるラチェット機構40を構成している。
図6に示すように、操作体30には、回転軸線100方向に貫通した第3貫通孔84が形成されている。この第3貫通孔84は、操作体30の押圧される側の端部に形成された穴84aと、この穴84a側から回転体10の方向に延びた第1筒状部31に囲まれる空間84bと、穴84aの底部に形成され第1筒状部31の内側の空間84bと穴84aとを連通させている開口部84cとから構成されている。これら穴84a、空間84bおよび開口部84cのそれぞれの上面視形状はすべて、図3に示すように回転軸線100周りの円形である。第1筒状部31には、図6に示すように円筒軸部4bが挿入されている。
図6,図10(c)に示すように、操作体30は、第1筒状部31の外周側に、この第1筒状部31よりも回転体10円板部11側に延びた第2筒状部32を有する。この第2筒状部32と第1筒状部31の間には、回転体10の円板部11側と反対側の端部に壁部を有する筒状空間33が形成されている。第2筒状部32の内周側には、カムフォロワ41が回転体10側から挿入され、第1筒状部31がカムフォロワ41の第2貫通孔83に挿入されている。そのとき、筒状空間33内にカムフォロワ41の円環部42が位置する。そして、筒状空間33において、操作体30とカムフォロワ41の円環部42との間には、復帰バネ49よりもバネ荷重の小さい緩衝バネ60が配置されている。この緩衝バネ60と復帰バネ49は、カムフォロワ41の円環部42を挟んで回転軸線100方向に並んでいる。なお、操作体30の第2筒状部32に前出の第1冠状部45が設けられている。
図6に示すように、操作体30の第1筒状部31の回転体10の円板部11側の端部には係止部である第1筒状部31の外周側に突出する上面視円環状の突出部71が設けられている。この突出部71は、第1筒状部31の外径寸法よりも大きな外径寸法の円環部材70(図5参照)の外縁部により形成されている。円環部材70は第1筒状部31がカムフォロワ41の第2貫通孔83に挿入された状態で、第1筒状部31回転体10の円板部11側の端部に取り付けられる。カムフォロワ41の第2貫通孔83の縁部には、突出部71を係止することにより回転体10から離れる方向への操作体30の移動を阻止する離間阻止部72が形成されている。この離間阻止部72は、円環部42から回転体10の円板部11の方向(図6の下方向)に突出し、第2貫通孔83の縁部に沿った円環状をなしている。離間阻止部72の回転体10の円板部11の方向の突出量は、復帰バネ49によるカムフォロワ41の初期位置への復帰が復帰阻止部54aにより阻止されたロック状態において、回転体10の円板部11から離れる方向(図6の上方向)の操作体30の移動を阻止するよう設定されている。
同図6に示すように、回転体10の第1貫通孔82、カムフォロワ41の第2貫通孔83および操作体30の第3貫通孔84の中心はすべて回転軸線100上に位置する。また、ウエハ4の底部4aの中央には、ハウジング2の外部と円筒軸部4bの貫通孔部としての内側の空間とを連通させている貫通孔部を成す開口部81が形成されている。つまり、プッシュスイッチ装置1の中央には、第1〜第3貫通孔82〜84を通じてハウジング2の下面の中央から操作体30の押圧される側の端部まで延びた柱状空間からなる導光路80が形成されている。この導光路80はLED等の光源(図示していない)が挿入可能な寸法に設定されている。
プッシュスイッチ装置1の動作の一例を、前出の図6および図7(a)と、図13〜図17を用いて説明する。図13はプッシュロック操作時およびプッシュリリース操作時における操作体の位置の変化の流れを示す図であって、(a)は操作体が初期位置に位置した状態を示す正面図、(b)は操作体が限界位置まで押圧操作された状態を示す正面図、(c)は操作体が復帰を阻止された状態を示す正面図である。図14は図13(b)に示した状態におけるプッシュスイッチ装置の縦断面であって、(a)は図6(a)に対応する断面図、(b)は図6(b)に対応する断面図である。図15は図13(c)に示した状態におけるプッシュスイッチ装置の縦断面図であって、(a)は図6(a)に対応する断面図、(b)は図6(b)に対応する断面図である。図16はプッシュロック操作時のラチェット機構におけるカム部の動作を、ハウジングのガイド部、操作体の第1冠状部およびカムフォロワの第2冠状部を展開して示す図である。図17はプッシュリリース操作時のラチェット機構におけるカム部の動作を、ハウジングのガイド部、操作体の第1冠状部およびカムフォロワの第2冠状部を展開して示す図である。
〔プッシュロック操作時〕
はじめに、プッシュロック操作、すなわちカムフォロワ41を初期位置よりも回転体10の円板部11側の位置にロックするための操作体30の押圧操作の際の、プッシュスイッチ装置1の動作について説明する。
カムフォロワ41が図6に示す初期位置に位置した状態では、図16(1)に示すようにカムフォロワ41のカム部50が回転阻止部52内に位置しているので、カム部50が回転阻止部52により係止されてカムフォロワ41の回転は阻止されているとともに、復帰バネ49の復元力に抗したカムフォロワ41の移動は許可されている。また、回転体10の円板部11の方向(下方向)への操作体30の移動は、復帰バネ49の復元力がカムフォロワ41を介して操作体30に付与されることによって抑制されるため、操作体30はガイド突起34が回転規制部52の上端部に当接して図6に示す初期位置に保持されている。このとき、図13(a)に示すように操作体30はハウジング2に対し突出量Aだけ突出した状態である。
また、カムフォロワ41の回転が回転阻止部52により阻止された状態では、カムフォロワ41にスプライン結合している回転体10も回転を阻止されている。このとき、図7(a)に示す第1,第2固定接点22A,22Bのそれぞれは、導電性摺動体23の第1,第2可動接点24a,24bのそれぞれに接触された第1状態となっている。
図13(a)に示す操作体30に対し、ユーザーが復帰バネ49の復元力よりも大きな押圧力を付与すると、操作体30の第1冠状部45によりカムフォロワ41の第2冠状部47が押圧されることによって、操作体30とカムフォロワ41が一体的に復帰バネ49を押し縮めながら回転体10の円板部11に近づく方向に移動する。この結果、カムフォロワ41は回転軸線100方向の所定範囲外に移動し、これに伴い、図16(2)に示すようにカム部50が回転阻止部52から回転体10の円板部11の方向に離脱して、カムフォロワ41の回転が許可された状態となる。
この状態において、復帰バネ49の復元力によりカムフォロワ41の第2冠状部47は第1冠状部45に押し付けられているので、第1冠状部45の山形歯46の第1斜面46aから第2冠状部47の山形歯48の第1斜面48aに、一方向(図16の右方向)の力が作用する。これにより、図16(3)に示すように第2冠状部47の山形歯48の第1斜面48aは、カムフォロワ41を一方向に回転させながら、第1冠状部45の山形歯46の第1斜面46aに沿って移動する。この結果、第1冠状部45に第2冠状部47が噛合う。これに伴い、カム部50は回転軸線100の方向において回転ガイド部53の第1斜面53aと重なる位置まで移動する。
第1冠状部45と第2冠状部47が噛合った後、ユーザーは操作体30とカムフォロワ41をさらに回転体10の円板部11に近づく方向に押し動かす。これに伴い、図16(4)に示すようにカム部50は第1斜面53aから離れる方向に移動する。カムフォロワ41の回転体10の円板部11に近づく方向の移動が進行すると、最終的には、図14に示すように、カムフォロワ41の第2冠状部47側の端部が回転体10の円板部11に達して、この円板部11により操作体30とカムフォロワ41との回転体10の円板部11に近づく方向の移動が阻止された状態、すなわち、操作体30が限界位置まで押圧操作された状態となる。このとき、図13(b)に示すように操作体30はハウジング2から突出量Bだけ突出した状態となる。
この状態でユーザーが操作体30に対する押圧力の付与を止めると、カムフォロワ41は復帰バネ49の復元力により操作体30を押し戻しながら、回転体10の円板部11から離れる方向に移動する。これにより図16(5)に示すようにカム部50が第1斜面53aに達する。このとき、カム部50の回転体10の円板部11と反対側の面が復帰バネ49の復元力により第1斜面53aに押し付けられているので、第1斜面53aからカム部50に一方向の力が作用する。この結果、図16(6)に示すようにカム部50はカムフォロワ41を一方向に回転させながら、第1斜面53aに沿って移動する。このカム部50の移動に伴い、カムフォロワ41の第2冠状部47の山形歯48は、その第2斜面48bで第1冠状部45の山形歯46の第2斜面46bを押圧することによって操作体30を回転体10の円板部11から離れる方向に移動させながら一方向に移動し、これにより、山形歯48の頂部48cが山形歯46の頂部46cを乗り越えた状態となる。この山形歯48の移動は頂部48cの丸みにより円滑に行われる。
カム部50は一方向に移動した結果、図16(7)に示すように凹部54に嵌る。カム部50が凹部54に嵌った状態では、カム部50の一方向の移動と初期位置への復帰を復帰阻止部54aがカム部50を係止して阻止し、カム部50の一方向と逆方向(図16の左方向)の移動を逆転阻止部54bがカム部50を係止して阻止する。これにより、カムフォロワ41は初期位置への復帰が阻止されたロック状態となる。これに伴い、操作体30は初期位置よりも回転体10の円板部11に近い位置に停止し、図13(c)に示すようにハウジング2から突出量C(B<C<A)だけ突出した状態になる。
前述のようにして回転阻止部52から凹部54までのカム部50の移動に伴ってカムフォロワ41が一方向に回転する間、回転体10はカムフォロワ41と一体的に回転する。そして、カムフォロワ41がロック状態となったとき、図7(a)に示す第1,第4固定接点22A,22Dのそれぞれが、導電性摺動体23の第1,第2可動接点24a,24bのそれぞれに接触された第2状態となっている。
また、ロック状態において、図15に示すようにカムフォロワ41の離間阻止部72は、第1筒状部31の突出部71を係止して回転体10の円板部11から離れる方向への操作体30の移動を阻止する。これにより、操作体30がカムフォロワ41の上側に位置するようにハウジング2の姿勢が保持されていなくても、例えば、操作体30がカムフォロワ41の下側に位置するようにハウジング2の姿勢が保持されていても、操作体30はカムフォロワ41が初期位置に位置しているときよりも回転体10の円板部11に近い位置、すなわち、ハウジング2から突出量Cだけ突出した状態に保持される。
〔プッシュリリース操作時〕
次に、プッシュリリース操作、すなわち前述のロック状態を解除するための操作体30の押圧操作の際の、プッシュスイッチ装置1の動作について説明する。
ロック状態においては、図13(c)に示すように、操作体30はハウジング2から突出量Cだけ突出した状態である。また、図17(1)(前出の図16(1)と同じ図)に示すように、カムフォロワ41のカム部50が凹部54に嵌った状態であるとともに、第1冠状部45に第2冠状部47が噛合っていない状態である。なお、本実施形態では、第1冠状部45と第2冠状部47とは隙間を有している。
図13(c)に示す操作体30に対し、ユーザーが復帰バネ49の復元力よりも大きな押圧力を付与すると、図17(2)に示すように、操作体30の第1冠状部45によりカムフォロワ41の第2冠状部47が押圧されることによって、操作体30とカムフォロワ41が一体的に復帰バネ49を押し縮めながら回転体10の円板部11に近づく方向に移動する。これにより、図17(3)に示すようにカム部50は凹部54から回転体10の円板部11の方向に離脱して、カムフォロワ41の一方向の回転が許可された状態となる。
この状態において、復帰バネ49の復元力によりカムフォロワ41の第2冠状部47は第1冠状部45に押し付けられているので、第1冠状部45の山形歯46の第1斜面46aから第2冠状部47の山形歯48の第1斜面48aに、一方向(図17の右方向)の力が作用する。これにより、図17(4)に示すように第2冠状部47の山形歯48の第1斜面48aは、カムフォロワ41を一方向に回転させながら、第1冠状部45の山形歯46の第1斜面46aに沿って移動する。この結果、第1冠状部45に第2冠状部47が噛合う。これに伴い、カム部50は回転軸線100の方向において回転ガイド部53の第2斜面53bと重なる位置まで移動する。
第1冠状部45と第2冠状部47が噛合った後、ユーザーは操作体30とカムフォロワ41をさらに回転体10の円板部11に近づく方向に押し動かす。これに伴い、図17(5)に示すようにカム部50は第2斜面53bから離れる方向に移動する。カムフォロワ41の回転体10の円板部11に近づく方向の移動が進行すると、最終的には、図14に示すように、カムフォロワ41の第2冠状部47側の端部が回転体10の円板部11に達して、この円板部11により操作体30とカムフォロワ41の回転体10の円板部11に近づく方向の移動が阻止された状態、すなわち、操作体30が限界位置まで押圧操作された状態となる。このとき、図13(b)に示すように操作体30はハウジング2から突出量Bだけ突出した状態となる。
この状態でユーザーが操作体30に対する押圧力の付与を止めると、カムフォロワ41は復帰バネ49の復元力により操作体30を押し戻しながら、回転体10の円板部11から離れる方向に移動する。これにより図17(6)に示すようにカム部50が第2斜面53bに達する。このとき、カム部50が復帰バネ49の復元力により第2斜面53bに押し付けられているので、第2斜面53bからカム部50に一方向の力が作用する。この結果、カム部50はカムフォロワ41を一方向に回転させながら第2斜面53bに沿って移動し(なお、本実施形態では第2斜面53bが第1斜面53aより急斜面のため、カム部50の角部が接して移動している。)、図17(7)に示すように、前述のロック状態になる前に位置していた回転阻止部52と隣合う回転阻止部52に入り込む。このカム部50の移動に伴い、カムフォロワ41の第2冠状部47の山形歯48は、その第2斜面48bで第1冠状部45の山形歯46の第2斜面46bを押圧することによって操作体30を回転体10から離れる方向に移動させながら一方向に移動し、これにより山形歯48の頂部48cが山形歯46の頂部46cを乗り越えた状態となる。この山形歯48の移動は頂部48cの丸みにより円滑に行われる。
カム部50が回転阻止部52に入り込むと、カムフォロワ41の初期位置への復帰が許可され、カムフォロワ41は図17(8)に示すようにカム部50の位置で回転阻止部52にガイドされながら、また、操作体30を押し動かしながら、復帰バネ49の復元に伴って初期位置に復帰する。これにより、操作体30は初期位置、すなわち、図13(a)に示すようにハウジング2から突出量Aだけ突出した状態に戻る。
前述のように凹部54から回転阻止部52までのカム部50の移動に伴ってカムフォロワ41が一方向に回転する間、回転体10はカムフォロワ41と一体的に回転している。そして、カムフォロワ41がロック状態から初期位置に復帰したとき、図7(a)に示す第1,第3固定接点22A,22Cのそれぞれが、導電性摺動体23の第1,第2可動接点24a,24bのそれぞれに接触された第3状態となっている。前述の操作を繰り返すことによって、前述の第4〜第8状態となる。
本実施形態に係るプッシュスイッチ装置1によれば次の効果を得られる。
プッシュスイッチ装置1は、ハウジング2の下面の中央から操作体30の押圧される側の端部まで延びた貫通孔部としての柱状空間からなる導光路80を有するので、ハウジング2の下面の中央から導光路80の一端に入射された光は、導光路80の他端、すなわち操作体30の押圧操作される側の端部の穴84aから放射され、これにより操作体30の押圧される側が発光して見える。つまり、プッシュスイッチ装置1によれば、操作体30の押圧される側の照光の光源を、導光路80の一端に光を入射させることができる位置に配置するだけで、操作体30の押圧される側が発光して見える照光を行うことができる。したがって、操作体30の押圧される側の照光が行いやすい。
プッシュスイッチ装置1において、導光路80はLED等の光源が挿入可能な寸法に設定されている。これにより、導光路80内に照光の光源を配置して導光路80外への光の漏れを低減でき、したがって、照光の明るさを確保しやすい。
プッシュスイッチ装置1において、第1固定接点22Aと第2固定接点22Bまたは第3固定接点22Cとが導電性摺動体23を介して導通している検知手段20の第1,第3,第5,第7状態と、第1固定接点22Aと第4固定接点22Dまたは第5固定接点22Eとが導電性摺動体23を介して導通している検知手段20の第2,第4,第6,第8状態とを、回転軸線100方向における操作体30の停止位置の違い、すなわちハウジング2からの操作体30の突出量Aと突出量Cとにより判別することができる。
プッシュスイッチ装置1において、カム部50はカムフォロワ41に形成された突起部からなり、回転阻止部52は回転軸線100方向に延び回転体10の円板部11側に開口した直線状の溝からなる。回転ガイド部53は第1斜面53aと第2斜面53bとを有する。復帰阻止部54aおよび逆転阻止部54bは段差部からなる。これらカム部50、回転阻止部52、回転ガイド部53および復帰阻止部54aは樹脂成形により容易に設けることができ、かつ、確実に機能させることができる。
プッシュスイッチ装置1において、逆転阻止部54bはカム部50を係止してカムフォロワ41が一方向と逆方向に回転するのを防止する。これにより回転体10の逆方向への回転を防止して、検知手段20の状態が操作体30の回転軸線100方向における停止位置(突出量)に対応しない状態となることを防止することができる。
プッシュスイッチ装置1において、緩衝バネ60は操作体30とカムフォロワ41との間で緩衝を行い、操作体30とカムフォロワ41間で生じる例えば第1冠状部45と第2冠状部47とが噛合う際の衝撃音を低減する。また、操作体30のカムフォロワ41に対するガタつきを防止することができる。これらにより、プッシュスイッチ装置1の品位を向上させることができる。
プッシュスイッチ装置1は、復帰バネ49と緩衝バネ60は回転軸線100方向に並んで配置されているので、回転軸線100周りの円の径方向におけるプッシュスイッチ装置1の寸法が短縮しやすい。
プッシュスイッチ装置1において、離間阻止部72は、復帰バネ49によるカムフォロワ41の初期位置への復帰が復帰阻止部54aにより阻止された状態(ロック状態)において、回転体10の円板部11から離れる方向の操作体30の移動を阻止する。これにより、操作体30がカムフォロワ41の上側に位置するようにハウジング2の姿勢が保持されていなくても、例えば、操作体30がカムフォロワ41の下側に位置するようにハウジング2の姿勢が保持されていても、ロック状態における操作体30の停止位置を、カムフォロワ41が初期位置に位置しているときよりも回転体10の円板部11に近い位置に保持することができる。つまり、操作体30の回転軸線100方向における停止位置、すなわちハウジング2からの操作体30の突出量を、カムフォロワ41が初期位置に位置したときと、カムフォロワ41の初期位置への復帰が復帰阻止部54aにより阻止されたときとで、ハウジング2の姿勢に関係なく、異ならせることができる。
プッシュスイッチ装置1は、第1筒状部31の回転体10の円板部11側の端部に設けられた突出部71と、カムフォロワ41の第2貫通孔83の縁部に形成された離間阻止部72とからなる簡単な構成によって、カムフォロワ41が初期位置に位置したときと、カムフォロワ41の初期位置への復帰が復帰阻止部54aにより阻止されたときとで、ハウジング2の姿勢に関係なく、操作体30の回転軸線100方向の位置を異ならせることができる。
プッシュスイッチ装置1は、スリット44A,44Bはカムフォロワ41の第2冠状部47の内周側に形成されているので、カムフォロワ41と回転体10とのスプライン結合個所を、第2冠状部47よりも内側に配置できる。これにより、回転軸線100周りの円の径方向におけるプッシュスイッチ装置1の寸法が短縮しやすい。
本発明は前述の実施形態に限定されるものではく、次のように構成されていてもよい。
前述の実施形態に係るプッシュスイッチ装置1において、導光路80はその全体が貫通孔部としての柱状空間からなるが、本発明は導光路をそれに限定するものではない。導光路は操作体30の穴84aや円筒軸部4bの内側に透光性樹脂が充填されたものであってもよい。また、軸部としての円筒軸部4bを、全体が透光性樹脂からなる中実の円柱軸部に替えてもよい。
前述の実施形態に係るプッシュスイッチ装置1において、回転ガイド部53には逆転阻止部54bが形成されているが、カム部50の一方向と逆方向の移動を第1斜面53aの勾配を大きくすることによって抑制し、逆転阻止部54bを省いてもよい。
前述の実施形態に係るプッシュスイッチ装置1において、突出部71は、第1筒状部31が第2貫通孔83に挿入された後に、第1筒状部31の回転体10の円板部11側の端部に取り付けられた円環部材70により形成されているが、本発明は突出部をそれに限定しない。径方向に対向する1対以上の板バネ部を第1筒状部31の回転体10の円板部11側の端部から回転体10の円板部11の方向に延設し、これらの板バネ部の先端に爪を設けて、これらの爪を第2貫通孔83にスナップインさせ、これらの爪を突出部として機能させてもよい。また、突出部71が設けられる第1筒状部31と第2筒状部32との長さが第2筒状部32の方が回転体10側に延びて長いが、長さ関係は特にこれに限るものではなく、例えば同じであってもよい。
前述の実施形態に係るプッシュスイッチ装置1において、検知手段20の被検知部として第1,第2可動接点24a,24bを備え、検知部として第1〜第5固定接点22A〜22Eを備えているが、本発明は検知手段をそれに限定しない。被検知部は磁石からなり、検知部は磁気検知素子であってもよい。
前述の実施形態に係るプッシュスイッチ装置1は、ハウジング2に対し回転体10の回転軸線100方向に操作体30の直線運動を可能にするとともに回転軸線100周りの操作体30の回転を不能にする回転阻止構造として、ハウジング2に設けられた回転阻止部52と、操作体30(第2筒状部32)の外周面に設けられたガイド突起34とを備えている。本発明は操作体の回転阻止構造をそれに限定するものではない。他の例としては、円筒軸部4bの外周面に回転軸線100方向に延びた溝を形成し、第1筒状部31の内周面にガイド突起を形成し、このガイド突起を溝に挿入したものがある。また、前述の実施形態においてハウジング2側と操作体30側とで回転阻止部52とガイド突起34との凹凸の関係を逆転させたものや、前記他の例におけるハウジング2側と操作体30側との溝とガイド突起との凹凸の関係を逆転させたものであってもよい。前述の実施形態に係るプッシュスイッチ装置1は、第1冠状部45を円環状に連続しており、第2冠状部47を一部切り欠いて円弧状に連ねているが、第1冠状部45を一部切り欠いて円弧状に連ねるようにし、第2冠状部47を円環状に連続してもよく、カムフォロア41が一方向に回転し、回転体10も一方向に回転するような構成であれがよい。また、復帰バネ49の一端部を円板部11に当接してカムフォロア41を初期位置に付勢しているが、例えば円筒軸部4bの外周側に受部を設けて、その受部に復帰バネ49の一端部を当接させてもよく、前述の実施形態に限定されるものではない。