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JP2009268381A - 癌特異的酢酸代謝を標的とした癌バイオマーカー・検査方法・治療剤 - Google Patents

癌特異的酢酸代謝を標的とした癌バイオマーカー・検査方法・治療剤 Download PDF

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JP2009268381A
JP2009268381A JP2008120023A JP2008120023A JP2009268381A JP 2009268381 A JP2009268381 A JP 2009268381A JP 2008120023 A JP2008120023 A JP 2008120023A JP 2008120023 A JP2008120023 A JP 2008120023A JP 2009268381 A JP2009268381 A JP 2009268381A
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cancer
coa synthetase
acetyl
gene
nucleic acid
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JP2008120023A
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Inventor
Yukie Yoshii
幸恵 吉井
Yasuhisa Fujibayashi
康久 藤林
Takako Furukawa
高子 古川
Yasushi Kiyono
泰 清野
Tetsuya Mori
哲也 森
Yutaka Yoshii
裕 吉井
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University of Fukui NUC
Original Assignee
University of Fukui NUC
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Abstract

【課題】新規癌特異的代謝経路を探索するとともに、これを標的とした癌診断のための検査方法、治療剤、そのスクリーニング方法および治療評価の方法の提供。
【解決手段】個体から採取した試料における、アセチルCoAシンセターゼ2の発現量または低酸素条件下での酢酸産生量を測定することを含む、該個体が癌に罹患しているか否かを判定する方法。個体における、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現またはその産物の活性を抑制することによる、癌の治療方法。アセチルCoAシンセターゼ2発現細胞に被験物質を接触させ、該細胞における、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を測定すること、および被験物質を接触させていない対照細胞と比較してアセチルCoAシンセターゼ2の発現または活性を抑制した物質を、癌を治療しうる物質として選択することを含む、癌を治療する物質のスクリーニング方法。治療中または治療を受けた癌患者から経時的に採取した癌部位を含む試料における、アセチルCoAシンセターゼ2の発現の推移を評価することを含む、癌患者に対する抗癌治療効果の評価方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、癌特異的酢酸代謝またはアセチルCoAシンセターゼ2をコードする遺伝子を標的とした癌の治療剤、治療剤のスクリーニング方法、検査方法、および治療評価方法に関する。
癌細胞は、一般に解糖系が亢進し、これにより優先的にエネルギーを得ている。そのため、糖代謝の亢進は、癌細胞のよいバイオマーカーになってきた。例えば、18F標識2−fluoro−2−deoxyglucose(FDG)を用いた陽電子断層撮影(FDG−PET)は、有用な癌細胞の診断法として確立している。(非特許文献1,2)。しかし、糖代謝を指標とした癌細胞の鑑別では、糖代謝の活発な正常細胞や炎症細胞と見分けがつかない、一部の組織の癌では鑑別が困難であるなどの欠点があった(非特許文献3)。
Israel, O. et al. J Nucl Med 45, 2045−2051 (2004) Dang, C.V. & Semenza, G.L. Trends in biochemical sciences 24, 68−72 (1999) 寺内隆司ら: PET検診の適応と限界. コンセンサス癌治療 2006 VOL.5 NO.3 へるす出版
本発明の目的は、新規癌特異的代謝経路を探索するとともに、これを標的とした癌診断のための検査方法、治療剤、そのスクリーニング方法および治療評価の方法について提供することである。
本発明者らは、癌細胞において細胞質性アセチルCoAシンセターゼ2(以下、「Acss2」と略記することもある)によって触媒される特異的酢酸代謝経路が亢進していることを見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
[1]個体から採取した試料における、アセチルCoAシンセターゼ2の発現量を測定することを含む、該個体が癌に罹患しているか否かを判定する方法
[2]下記(a)または(b):
(a)アセチルCoAシンセターゼ2の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
(b)アセチルCoAシンセターゼ2を特異的に認識する抗体
を用いて発現量を測定することを特徴とする、上記[1]の方法
[3]治療中または治療を受けた癌患者から経時的に採取した癌部位を含む試料における、アセチルCoAシンセターゼ2の発現の推移を評価することを含む、癌患者に対する抗癌治療効果の評価方法
[4]下記(a)または(b):
(a)アセチルCoAシンセターゼ2の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
(b)アセチルCoAシンセターゼ2を特異的に認識する抗体
を含有してなる、個体が癌に罹患しているか否かを判定するための剤
[5]個体から採取した試料の、酢酸産生量を測定することを含む、該個体が癌に罹患しているか否かを判定する方法
[6]低酸素条件下での酢酸産生量が測定される、上記[5]の方法
[7]下記(a)、(b)または(c):
(a)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸
(b)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するsiRNA
(c)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸またはsiRNAを生成し得る発現ベクター
のいずれかを含有してなる、癌の治療剤
[8]アセチルCoAシンセターゼ2発現細胞に被験物質を接触させること、該細胞におけるアセチルCoAシンセターゼ2の発現を測定すること、および被験物質を接触させていない対照細胞と比較してアセチルCoAシンセターゼ2の発現を抑制した物質を、癌を治療しうる物質として選択することを含む、癌を治療し得る物質のスクリーニング方法
[9]アセチルCoAシンセターゼ2に被験物質を接触させること、アセチルCoAシンセターゼ2の活性を測定すること、および被験物質を接触させていない場合と比較して、アセチルCoAシンセターゼ2の活性を抑制した物質を、癌を治療し得る物質として選択することを含む、癌を治療し得る物質のスクリーニング方法
[10]個体の細胞が取り込む放射性標識された酢酸量を測定することを含む、癌の判定方法
[11]放射性標識された酢酸を含む、癌細胞検出用試薬
等を提供する。
癌特異的なアセチルCoAシンセターゼ2の発現変動を調べることにより、迅速かつ簡便な癌の診断が可能となる。特に、癌特異的なアセチルCoAシンセターゼ2は、低酸素条件下においては発現レベルが正常細胞と比較して顕著に異なるので、癌の判定がより容易に行える。さらに、癌におけるアセチルCoAシンセターゼ2の発現を制御することにより、癌の治療が可能となる。また、この遺伝子もしくはその発現産物を用いて該遺伝子の発現もしくは該産物の活性を制御する物質を選択ことにより、癌に対する新規治療薬の探索が可能となる。あるいはまた、アセチルCoAシンセターゼ2の発現をモニタリングすることにより、癌に対する治療効果の評価が可能となる。
本発明は、個体から採取した試料における、アセチルCoAシンセターゼ2の発現量を測定することを含む、該個体が癌に罹患しているか否かを判定する方法に関する。本発明の判定方法において発現量が測定されるアセチルCoAシンセターゼ2は、ATP+acetate+CoA⇔AMP+diphosphate+acetyl−CoAの反応を触媒し、細胞質における酢酸代謝に関与することが知られている。そのアセチルCoAシンセターゼ2のヒトヌクレオチド配列(アミノ酸配列)は、GenBankにアクセッション番号NM_001076552[配列番号1に対応](NP_001070020[配列番号2に対応])およびNM_018677[配列番号3に対応](NP_061147[配列番号4に対応])として、そのマウスヌクレオチド配列はアクセッション番号NM_019811[配列番号5に対応](NP_062785[配列番号6に対応])として登録されている。
本明細書中、癌の種類は特に限定されないが、例えば、癌としては、肺癌、皮膚癌、大腸癌、および乳癌が挙げられる。本発明の判定方法は上記の癌に好適に用いられる。
本発明の判定方法が適用できる個体は、特に制限されないが、例えば、癌に罹患しているおそれがある個体、もしくは罹患していることが疑われる個体、あるいは現に癌に罹患している個体、例えば、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物が挙げられる。好ましくは、ヒトである。
本発明の判定方法に用いられる試料としては、被験対象である上記個体から採取されるものであって、検出対象である遺伝子産物(例、RNA、蛋白質、その分解産物など)を含有し得る細胞または細胞を含有する組織等であれば特に制限されない。例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織、骨格筋などが挙げられる。
個体から採取した試料におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現は、該試料からRNA(例:全RNA、mRNA)画分を調製し、該画分中に含まれるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の転写産物を検出することにより調べることができる。RNA画分の調製は、グアニジン−CsCl超遠心法、AGPC法など公知の手法を用いて行うことができるが、市販のRNA抽出用キット(例:RNeasy Mini Kit; QIAGEN製等)を用いて、微量試料から迅速且つ簡便に高純度の全RNAを調製することができる。RNA画分中のアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の転写産物を検出する手段としては、例えば、ハイブリダイゼーション(ノーザンブロット、ドットブロット、DNAチップ解析等)を用いる方法、あるいはPCR(RT−PCR、競合PCR、リアルタイムPCR等)を用いる方法などが挙げられる。微量試料から迅速且つ簡便に定量性よくアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現変動を検出できる点で競合PCRやリアルタイムPCRなどの定量的PCR法が好ましい。
ノーザンブロットまたはドットブロットハイブリダイゼーションによる場合、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の検出は、例えば、アセチルCoAシンセターゼ2の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブを用いて行うことができる。1つの好ましい態様においては、本発明の判定方法に用いられる核酸プローブは、配列番号1、3または5のいずれかで表されるヌクレオチド配列に含まれる、約15塩基以上、好ましくは約18〜約500塩基、より好ましくは約18〜約200塩基、いっそう好ましくは約18〜約50塩基の連続したヌクレオチド配列またはその相補配列をふくむポリヌクレオチドである。該核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。好ましくはDNAが挙げられる。また、プローブとして用いられる核酸は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、アンチセンス鎖を用いることができる。
また、本発明の判定方法に用いられる核酸プローブは、配列番号1、3または5のいずれかで表されるヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。ストリンジェントな条件としては、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)中45℃でのハイブリダイゼーション反応の後、0.2×SSC/0.1% SDS中65℃での一回以上の洗浄などが挙げられる。当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができる。核酸プローブの長さは、通常約15塩基以上、好ましくは約18〜約500塩基、より好ましくは約18〜約200塩基、更に好ましくは約18〜約50塩基である。
アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を検出し得るプローブとして機能する核酸は、該遺伝子の転写産物の一部もしくは全部を増幅し得る後述するプライマーセットを用い、個体(例:ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット等)のあらゆる細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など]もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織、骨格筋など]由来のcDNAもしくはゲノムDNAを鋳型としてPCR法によって所望の長さの核酸を増幅するか、前記した細胞・組織由来のcDNAもしくはゲノムDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション等により上記アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子もしくはcDNAをクローニングし、必要に応じて制限酵素等を用いて適当な長さの断片とすることにより取得することができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(前述)に記載の方法などに従って行なうことができる。あるいは、該核酸は、配列番号1、3または5のいずれかに示される塩基配列情報に基づいて、該塩基配列および/またはその相補鎖配列の一部もしくは全部を市販のDNA/RNA自動合成機等を用いて化学的に合成することによっても得ることができる。また、シリコンやガラス等の固相上で該核酸を直接in situ(on chip)合成することにより、該核酸が固相化されたチップを作成することもできる。
アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の転写産物の一部もしくは全部を増幅し得るプライマーとして機能する核酸は、配列番号1、3または5のいずれかに示される塩基配列情報に基づいて、該塩基配列およびその相補鎖配列の一部を市販のDNA/RNA自動合成機等を用いて化学的に合成することによって得ることができる。
該核酸は、標的核酸の検出・定量を可能とするために、標識剤により標識されていることが好ましい。標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔32P〕、〔H〕、〔14C〕などが用いられる。酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、プローブと標識剤との結合にビオチン−(ストレプト)アビジンを用いることもできる。
ノーザンハイブリダイゼーションによる場合は、上記のようにして調製したRNA画分をゲル電気泳動にて分離した後、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフロリド等のメンブレンに転写し、上記のようにして調製された標識プローブを含むハイブリダイゼーション緩衝液中、特異的にハイブリダイゼーションさせた後、適当な方法でメンブレンに結合した標識量をバンド毎に測定することにより、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現量を測定することができる。ドットブロットの場合も、RNA画分をスポットしたメンブレンを同様にハイブリダイゼーション反応に付し、スポットの標識量を測定することにより、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現量を測定することができる。
DNAチップ解析による場合、例えば、上記のようにして調製したRNA画分から、逆転写反応によりT7プロモーター等の適当なプロモーターを導入したcDNAを合成し、さらにRNAポリメラーゼを用いてcRNAを合成する(この時ビオチンなどで標識したモノヌクレオチドを基質として用いることにより、標識されたcRNAが得られる)。この標識cRNAを、上記したプローブを固相化したチップと接触させてハイブリダイゼーション反応させ、固相上の各プローブに結合した標識量を測定することにより、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現量を測定することができる。
別の好ましい実施態様によれば、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を測定する方法として定量的PCR法が用いられる。定量的PCRとしては、例えば、競合PCRやリアルタイムPCRなどがある。
PCRにおいてプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドのセットとしては、例えば、アセチルCoAシンセターゼ2の転写産物を特異的に検出し得る核酸プライマーを挙げることができる。1つの好ましい態様においては、本発明の判定方法に用いられる核酸プライマーとしては、例えば、配列番号1、3または5のいずれかに示されるヌクレオチド配列に含まれる、約15塩基以上、好ましくは約15〜約50塩基、より好ましくは約15〜約30塩基、いっそう好ましくは約15〜約25塩基の連続したヌクレオチド配列の長さを有し、約100bp〜数kbpのDNA断片を増幅するようにデザインされたポリヌクレオチド(センス鎖)配列に相補的なポリヌクレオチド、及び前記のポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド(アンチセンス鎖)にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドのオリゴヌクレオチドのセットが挙げられる。
競合RT−PCRとは、目的のDNAを増幅し得るプライマーのセットにより増幅され得る既知量の他の鋳型核酸をcompetitorとして反応液中に共存させて競合的に増幅反応を起こさせ、増幅産物の量を比較することにより、目的DNAの量を算出する方法をいう。したがって、競合RT−PCRによる場合、上記したプライマーセットに加えて、該プライマーセットで増幅でき、増幅後に標的核酸(すなわち、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の転写産物)の増幅産物と区別することができる(例えば、増幅サイズが異なる、制限酵素処理断片の泳動パターンが異なるなど)既知量のcompetitor核酸が用いられる。標的核酸とcompetitor核酸とはプライマーを奪い合って増幅が競合的に起こるので、増幅産物の量比が元の鋳型の量比を反映することになる。competitor核酸はDNAでもRNAでもよい。DNAの場合、上記のようにして調製されるRNA画分から逆転写反応によりcDNAを合成した後に、上記プライマーセットおよびcompetitorの共存下でPCRを行えばよく、RNAの場合は、RNA画分にcompetitorを添加して逆転写反応を行い、さらに上記プライマーセットを添加してPCRを実施すればよい。後者の場合、逆転写反応の効率も考慮に入れているので、元のmRNAの絶対量を推定することができる。
一方、リアルタイムPCRは、蛍光試薬を用いて増幅量をリアルタイムでモニタリングする方法であり、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化した装置を必要とする。このような装置は市販されている。用いる蛍光試薬によりいくつかの方法があり、例えば、インターカレンター法、TaqManTMプローブ法、Molecular Beacon法等が挙げられる。いずれも、上記のようにして調製されるRNA画分から逆転写反応によりcDNAを合成した後に、上記プライマーセットとSYBR Green I、エチジウムブロマイド等の二本鎖DNAに結合することにより蛍光を発する試薬(インターカレーター)、上記プローブとして用いることができる核酸(但し、該核酸は増幅領域内で標的核酸にハイブリダイズする)の両端をそれぞれ蛍光物質(例:FAM、HEX、TET、FITC等)および消光物質(例:TAMRA、DABCYL等)で修飾したもの(TaqManTMプローブまたはMolecular Beaconプローブ)などの蛍光試薬(プローブ)とを、それぞれPCR反応系に添加するというものである。インターカレーターは合成された二本鎖DNAに結合して励起光の照射により蛍光を発するので、蛍光強度を測定することにより増幅産物の生成量をモニタリングすることができ、それによって元の鋳型cDNA量を推定することができる。TaqManTMプローブは両端を蛍光物質と消光物質をそれぞれで修飾した、標的核酸の増幅領域にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドであり、アニーリング時に標的核酸にハイブリダイズするが消光物質の存在により蛍光を発せず、伸長反応時にDNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性により分解されて蛍光物質が遊離することにより蛍光を発する。従って、蛍光強度を測定することにより増幅産物の生成量をモニタリングすることができ、それによって元の鋳型cDNA量を推定することができる。Molecular Beaconプローブは両端を蛍光物質と消光物質をそれぞれで修飾した、標的核酸の増幅領域にハイブリダイズし得るとともにヘアピン型二次構造をとり得るオリゴヌクレオチドであり、ヘアピン構造をとっている時は消光物質の存在により蛍光を発せず、アニーリング時に標的核酸にハイブリダイズして蛍光物質と消光物質との距離が広がることにより蛍光を発する。従って、蛍光強度を測定することにより増幅産物の生成量をモニタリングすることができ、それによって元の鋳型cDNA量を推定することができる。リアルタイムRT−PCRは、PCRの増幅量をリアルタイムでモニタリングできるので、電気泳動が不要で、より迅速にアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を解析可能である。
あるいは、個体から採取した試料におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現は、該試料から蛋白質画分を調製し、該画分中に含まれる該遺伝子の翻訳産物(即ち、アセチルCoAシンセターゼ2)を検出することにより調べることができる。アセチルCoAシンセターゼ2の検出は、アセチルCoAシンセターゼ2を特異的に認識する抗体を用いて、免疫学的測定法(例:ELISA、FIA、RIA、ウェスタンブロット等)によって行うこともできるし、アセチルCoAシンセターゼ2の有する酢酸代謝活性を、公知の手法を用いて測定することによっても行い得る。あるいはまた、アセチルCoAシンセターゼ2の検出は、MALDI−TOFMS等の質量分析法を用いても行うことができる。
アセチルCoAシンセターゼ2を特異的に認識する抗体は、アセチルCoAシンセターゼ2ポリペプチドやその抗原性を有する部分ペプチド、具体的には、配列番号2、4または6のいずれかに示されるペプチド配列の全部またはエピトープに当たる部分を有する部分ペプチドを免疫原として用い、既存の一般的な製造方法によって製造することができる。本明細書において、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)等の天然型抗体、遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体、およびこれらの結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又はこれらの結合性断片である。結合性断片とは、特異的結合活性を有する前述の抗体の一部分の領域を意味し、具体的には例えばF(ab’)、Fab’、Fab、Fv、sFv、dsFv、sdAb等が挙げられる(Exp. Opin. Ther. Patents, Vol.6, No.5, p.441−456, 1996)。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくは、IgG又はIgMであり、精製の容易性等を考慮するとより好ましくはIgGである。
個々の免疫学的測定法を本発明の検査方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてアセチルCoAシンセターゼ2の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。例えば、入江寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
本発明の判定方法は、上記手法により、癌と相関して発現が変動するアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現量を測定することによって、個体が癌に罹患しているか否かの判定を行う。後述の実施例に示すように、癌細胞では正常細胞よりもアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現レベルが高い。従って、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現レベルと個体の癌罹患率との間には正の相関関係があり、該遺伝子の発現レベルが高いほど、癌である確率が高いと判定することができる。
例えば、癌に罹患していないことが確認されている個体(ネガティブコントロール)及び、癌に罹患していると臨床医的に判断されている個体(ポジティブコントロール)から正常細胞(組織)および癌細胞(組織)を摘出し、対象個体から摘出された癌と疑われる細胞(組織)におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現レベルがポジティブコントロール及びネガティブコントロールのそれと比較される。あるいは、試料におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現レベルと臨床的に癌であると判断された率との相関図をあらかじめ作成しておき、対象個体から摘出された癌におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現レベルをその相関図と比較してもよい。発現レベルの比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
そして、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現レベルの比較結果より、測定対象のアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現レベルが相対的に高い場合には、癌である確率が相対的に高いと判定することができる。逆に、測定対象のアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現レベルが相対的に低い場合には、癌である確率が相対的に低いと判定することができる。
上記癌の判定方法を、癌に対する治療を施された患者や癌治療薬候補化合物を投与された実験動物(例、サル、イヌ、ラット、マウス等)に適用することにより、治療効果の評価を行うことができる。即ち、治療中または治療を受けた癌患者から経時的に採取した癌部位を含む試料におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現をそれぞれ測定・比較し、治療前と比較して治療後のアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現増加が抑制される傾向を示せば、治療効果が認められると判定することができる。
本発明はまた、上記本発明の判定方法において好ましく使用され得る、癌を判定するための剤を提供する。該判定するための剤は、上記した(a)または(b):
(a)アセチルCoAシンセターゼ2の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
(b)アセチルCoAシンセターゼ2を特異的に認識する抗体
を含有してなる。該判定するための剤が2以上の上記核酸および/または抗体を含む場合、各核酸または抗体は互いにアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の塩基配列上の異なる部分を特異的に認識、またはアセチルCoAシンセターゼ2の異なるエピトープを特異的に認識し得るものである。
本発明の剤が前記(a)の核酸を含有する試薬を構成として含む場合、該核酸としては、本発明の判定方法において前記したプローブ用核酸もしくはプライマー用オリゴヌクレオチドが挙げられる。
アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を検出し得る核酸は、乾燥した状態もしくはアルコール沈澱の状態で、固体として提供することもできるし、水もしくは適当な緩衝液(例:TE緩衝液等)中に溶解した状態で提供することもできる。標識プローブとして用いられる場合、該核酸は予め上記のいずれかの標識物質で標識した状態で提供することもできるし、標識物質とそれぞれ別個に提供され、用時標識して用いることもできる。
あるいは、該核酸は、適当な固相に固定化された状態で提供することもできる。固相としては、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフロリド等が挙げられるが、これらに限定されない。また、固定化手段としては、予め核酸にアミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入しておき、一方、固相上にも該核酸と反応し得る官能基(例:アルデヒド基、アミノ基、SH基、ストレプトアビジンなど)を導入し、両官能基間の共有結合で固相と核酸を架橋したり、ポリアニオン性の核酸に対して、固相をポリカチオンコーティングして静電結合を利用して核酸を固定化するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。
該判定するための剤に含有される核酸は、同一の方法(例:ノーザンブロット、ドットブロット、DNAアレイ技術、定量RT−PCR等)によりアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を検出し得るように構築されていることが特に好ましい。
本発明の剤が前記(b)の抗体を含有する試薬を構成として含む場合、該抗体としては、本発明の判定方法において前記した抗体が挙げられる。
本発明の剤を構成する試薬は、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を検出し得る核酸や抗体に加えて、該遺伝子の発現を検出するための反応において必要な他の物質であって、共存状態で保存することにより反応に悪影響を及ぼさない物質をさらに含有することができる。あるいは、該試薬は、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を検出するための反応において必要な他の物質を含有する別個の試薬とともに提供されてもよい。例えば、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を検出するための反応がPCRの場合、当該他の物質としては、例えば、反応緩衝液、dNTPs、耐熱性DNAポリメラーゼ等が挙げられる。競合PCRやリアルタイムPCRを用いる場合は、competitor核酸や蛍光試薬(上記インターカレーターや蛍光プローブ等)などをさらに含むことができる。また、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を検出するための反応が抗原抗体反応の場合、当該他の物質としては、例えば、反応緩衝液、compeptitor抗体、標識された二次抗体(例えば、一次抗体がウサギ抗ヒトアセチルCoAシンセターゼ2抗体の場合、ペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼ等で標識されたマウス抗ウサギIgGなど)、ブロッキング液等が挙げられる。
本発明はまた、個体から採取した試料の、酢酸産生量を測定することを含む、該個体が癌に罹患しているか否かを判定する方法に関する。本発明の判定方法が適用できる個体および試料は、上記と同様である。
個体から採取した試料の酢酸産生量は、例えば、試料を培地中で培養することにより、培地中に放出された酢酸を定量することにより調べることができる。酢酸量の測定には、薄層クロマトグラフィー(TLC,Thin Layer Chromatography)や高速液体クロマトグラフィー(HPLC,High Performance Liquid Chromatography)を用いるなどの公知の方法を用いて行うことができるが、市販の定量用キット(例:F−kit; R−Biopharm AG製等)を用いて、迅速且つ簡便に酢酸量を定量することができる。
癌特異的酢酸代謝は、単に、癌細胞において正常細胞と比較して代謝量が変動するというだけでなく、例えば、個体から採取した癌細胞と正常細胞を低酸素条件下に置くことにより、酢酸産生量の推移に顕著な相違が認められることを特徴とする。具体的には、後述の実施例で示されるように、低酸素条件下において、癌細胞において常酸素条件下よりも酢酸産生量が増大するため、癌細胞と正常細胞との酢酸産生量の差は、低酸素条件下でより大きくなる。従って、本発明の方法において、低酸素条件下で酢酸産生量を測定することにより、より明確に個体が癌に罹患しているか否かを判定することが出来る。ここで「常酸素条件」とは、大気酸素濃度に近い条件をいう。実施例では、COインキュベーターを用いて作成した95% 空気、5% CO(20% O2, 74% N2, 5% COに相当)の条件を常酸素条件とした。また「低酸素条件」とは、酸素濃度が常酸素条件より低濃度である状態(例えば20%を下まわる濃度、好ましくは、1.0−1.5%)である条件をいう。実施例では、Personal Multi Gas Incubator (Astec)を用いて作成した1.2% O2、93.8% N2、5% COの条件を低酸素条件とした。
本発明の判定方法は、上記手法により、癌と相関して発現が変動する酢酸産生量を測定することによって、個体が癌に罹患しているか否かの判定を行う。上記の通り、癌細胞では正常細胞よりも酢酸産生量が多い。従って、酢酸産生量と個体の癌罹患率との間には正の相関関係があり、酢酸産生量が多いほど、癌である確率が高いと判定することができる。
例えば、癌に罹患していないことが確認されている個体(ネガティブコントロール)及び、癌に罹患していると臨床医的に判断されている個体(ポジティブコントロール)から正常細胞(組織)および癌細胞(組織)を摘出し、対象個体から摘出された癌と疑われる細胞(組織)における酢酸産生量がポジティブコントロール及びネガティブコントロールのそれと比較される。あるいは、癌における酢酸産生量と臨床的に癌であると判断される率との相関図をあらかじめ作成しておき、対象個体から摘出された癌における酢酸産生量をその相関図と比較してもよい。発現レベルの比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
そして、酢酸産生量の比較結果より、測定対象の酢酸産生量が相対的に高い場合には、癌である確率が相対的に高いと判定することができる。逆に、測定対象の酢酸産生量が相対的に低い場合には、癌である確率が相対的に低いと判定することができる。
前述のとおり、本発明のアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子は、癌細胞と正常細胞との間で、遺伝子発現の推移に顕著な相違が認められる。したがって、これらの遺伝子は単なる癌の診断マーカーではなく、癌の有望な治療ターゲット候補でもある。
すなわち、本発明はまた、個体における、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現またはその産物の活性を抑制することによる、癌の治療方法を提供する。
具体的には、上記方法は、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現またはそれらの産物の活性を抑制する物質の有効量を、癌の治療を必要とする個体に投与することを含む。したがって、本発明はまた、下記(a)、(b)または(c):
(a)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸
(b)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するsiRNA
(c)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸またはsiRNAを生成し得る発現ベクター
のいずれかを含有してなる、癌の治療剤を提供する。
(a)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸
本発明における、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸とは、該mRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸であって、標的mRNAと特異的かつ安定した二重鎖を形成して結合することにより、蛋白質合成を抑制する機能を有するものである。ここで「実質的に相補的である」とは、塩基配列間で約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相補性を有することをいう。1つの好ましい態様においては、本発明におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸は、以下のいずれかのヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである:
(1)配列番号1、3または5のいずれかで表されるヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列
(2)転写後プロセッシングにより前記(1)のヌクレオチド配列を生じる初期転写産物のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列
(3)15ヌクレオチド配列以上の前記(1)または(2)の部分配列であるヌクレオチド配列
アンチセンス核酸は、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリデオキシリボヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリリボヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販の蛋白質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、α−アノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオシドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、またはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
上記の通り、アンチセンス核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。アンチセンス核酸がDNAの場合、標的RNAとアンチセンスDNAとによって形成されるRNA:DNAハイブリッドは、内在性RNase Hに認識されて標的RNAの選択的な分解を引き起こすことができる。したがって、RNase Hによる分解を指向するアンチセンスDNAの場合、標的配列は、mRNA中の配列だけでなく、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の初期翻訳産物におけるイントロン領域の配列であってもよい。ヒトやマウスにおいてはアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の染色体上の位置が明らかとなっているので、該遺伝子が存在する領域のゲノム配列と、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のcDNA(もしくはEST)塩基配列とをBLAST、FASTA等のホモロジー検索プログラムを用いて比較して、イントロン配列を決定することができる。
本発明のアンチセンス核酸の標的領域は、該アンチセンス核酸がハイブリダイズすることにより、結果としてアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物である蛋白質への翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、これら蛋白質をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約10塩基程度、長いものでmRNAもしくは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性、細胞内移行性の問題等を考慮すれば、約10〜約40塩基、特に約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいが、それに限定されない。具体的には、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどが、アンチセンス核酸の好ましい標的領域として選択しうるが、それらに限定されない。
アンチセンス核酸中の標的mRNAとハイブリダイズする部分のヌクレオチド配列は、標的配列の塩基組成によっても異なるが、生理的条件下でアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAとハイブリダイズし得るために、標的配列の相補配列に対して通常約90%以上(好ましくは95%以上、最も好ましくは100%)の同一性を有するものである。ヌクレオチド配列における同一性は、例えば相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST−2(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(ギャップオープン=5;ギャップエクステンション=2;x_ドロップオフ=50;期待値=10;フィルタリング=ON)にて計算することができる。
さらに、本発明のアンチセンス核酸は、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAや初期転写産物とハイブリダイズして蛋白質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるこれらの遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAへの転写を阻害し得るもの(アンチジーン)であってもよい。
アンチセンス核酸を構成するヌクレオチド分子は、天然型のDNAもしくはRNAでもよいが、安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を含むことができる。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンス核酸を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、−OR(Rは、例えばCH(2’−O−Me)、CHCHOCH(2’−O−MOE)、CHCHNHC(NH)NH、CHCONHCH、CHCHCN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。
RNAの糖部のコンフォーメーションはC2’−endo(S型)とC3’−endo(N型)の2つが支配的であり、一本鎖RNAではこの両者の平衡として存在するが、二本鎖を形成するとN型に固定される。したがって、標的RNAに対して強い結合能を付与するために、2’酸素と4’炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したRNA誘導体であるBNA(LNA)(Imanishi, T. et al., Chem. Commun., 1653−9, 2002; Jepsen, J.S. et al., Oligonucleotides, 14, 130−46, 2004)やENA(Morita, K. et al., Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids, 22, 1619−21, 2003)もまた、好ましく用いられ得る。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。また、上記した各種修飾を含むアンチセンス核酸も、いずれも自体公知の手法により、化学的に合成することができる。
(b)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するsiRNA
短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、この現象が動物細胞でも広く起こることが確認されて以来[Nature, 411(6836): 494−498 (2001)]、リボザイムの代替技術として汎用されている。siRNAは標的となるmRNAの塩基配列情報に基づいて、市販のソフトウェア(例:RNAi Designer; Invitrogen)を用いて適宜設計することができる。
siRNAは、代表的には、標的遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列又はその部分配列(以下、標的ヌクレオチド配列)と相補的な配列を有するRNAとその相補鎖からなる二本鎖オリゴRNAである。また、ヘアピンループ部分を介して、標的ヌクレオチド配列に相補的な配列(第1の配列)と、その相補配列(第2の配列)とが連結された一本鎖RNAであって、ヘアピンループ型の構造をとることにより、第1の配列が第2の配列と2本鎖構造を形成するRNA(small hairpin RNA: shRNA)もsiRNAの好ましい態様の1つである。本発明のsiRNAの好ましい1つの態様としては、配列番号7,9,11および13のいずれかに示されるヌクレオチド配列(前記配列はshRNAとしての配列である)を含むポリヌクレオチドが挙げられ、それぞれ、配列番号8,10,12および14に記載のヌクレオチド配列をRNAi効果のための標的配列とするものである。従って、更に好ましい本発明のsiRNAは、配列番号8,10,12および14のいずれかに示されるヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチドを含むポリヌクレオチドが挙げられる。なお、配列番号7〜14に示されるRNA配列は便宜上、DNAとして記載している。
siRNAに含まれる、標的ヌクレオチド配列と相補的な部分の長さは、通常、約15塩基以上、好ましくは18塩基以上、より好ましくは約20塩基以上(代表的には約21〜23塩基長)の長さであるが、RNA干渉を引き起こすことが出来る限り、特に限定されない。siRNAが23塩基よりも長い場合には、該siRNAは細胞内で分解されて、約20塩基前後のsiRNAを生じるので、理論的には標的ヌクレオチド配列と相補的な部分の長さの上限は、標的遺伝子のmRNA(成熟mRNAもしくは初期転写産物)のヌクレオチド配列の全長である。しかし、合成の容易さや抗原性の問題等を考慮すると、該相補部分の長さは、例えば約200塩基以下、好ましくは約50塩基以下、より好ましくは約30塩基以下である。即ち、該相補部分の長さは、例えば約15塩基以上、好ましくは約18〜約200塩基、より好ましくは約20〜約50塩基、更に好ましくは約20〜約30塩基である。
また、siRNAの全長も、通常、約18塩基以上、例えば約20塩基以上(代表的には約21〜23塩基長)の長さであるが、RNA干渉を引き起こすことが出来る限り、特に限定されず、理論的にはsiRNAの長さの上限はない。しかし、合成の容易さや抗原性の問題等を考慮すると、siRNAの長さは、例えば約200塩基以下、好ましくは約50塩基以下、より好ましくは約30塩基以下である。即ち、siRNAの長さは、例えば約18塩基以上、好ましくは約18〜約200塩基、より好ましくは約20〜約50塩基、更に好ましくは約20〜約30塩基である。なお、shRNAの長さは、二本鎖構造をとった場合の二本鎖部分の長さとして示すものとする。
標的ヌクレオチド配列と、siRNAに含まれるそれに相補的な配列とは、完全に相補的であることが好ましい。しかし、siRNAの中央から外れた位置についての塩基の変異(少なくとも90%以上、好ましくは95%以上の同一性の範囲内であり得る)については、完全にRNA干渉による切断活性がなくなるのではなく、部分的な活性が残存し得る。他方、siRNAの中央部の塩基の変異は影響が大きく、RNA干渉によるmRNAの切断活性が極度に低下し得る。
siRNAは、5’又は3’末端に塩基対を形成しない、付加的な塩基を有していてもよい。該付加的塩基の長さは、通常5塩基以下である。該付加的塩基は、DNAでもRNAでもよいが、DNAを用いるとsiRNAの安定性を向上させることができる。このような付加的塩基の配列としては、例えばug−3’、uu−3’、tg−3’、tt−3’、ggg−3’、guuu−3’、gttt−3’、ttttt−3’、uuuuu−3’などの配列が挙げられるが、これに限定されるものではない。
shRNAのヘアピンループのループ部分の長さは、RNA干渉を引き起こすことが出来る限り、特に限定されないが、通常、5〜25塩基程度である。該ループ部分のヌクレオチド配列は、ループを形成することができ、且つ、shRNAがRNA干渉を引き起こすことができる限り、特に限定されない。
上述のポリヌクレオチドは、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNA配列(例えば配列番号1、3または5のいずれかで表されるヌクレオチド配列)や染色体DNA配列に基づいて標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的なヌクレオチド配列を合成することにより調製できる。siRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製できる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後リガーゼでライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製できる。また、siRNAの前駆体となるショートヘアピンRNA(shRNA)を合成し、これをダイサー(dicer)を用いて切断することにより調製することもできる。
(c)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸またはsiRNAを生成し得る発現ベクター
本発明の治療剤は、上述の(a)または(b)から選択されるいずれかのポリヌクレオチドを発現し得る(コードする)発現ベクターを有効成分とすることもできる。1つの好ましい態様においては、本発明におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸またはsiRNAを生成し得る発現ベクターは、以下のいずれかのヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターである;
(1)配列番号1、3または5のいずれかで表されるヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列
(2)転写後プロセッシングにより前記(1)のヌクレオチド配列を生じる初期転写産物のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列
(3)15ヌクレオチド配列以上の前記(1)または(2)の部分配列であるヌクレオチド配列
(4)配列番号8,10,12および14のいずれかに示されるヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列
当該発現ベクターにおいては、上述のポリヌクレオチド又はそれをコードする核酸(好ましくはDNA)が、投与対象である個体(好ましくはヒト)の細胞(例えば、癌細胞)内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターに機能的に連結されている。
使用されるプロモーターは、投与対象である個体の細胞内で機能し得るものであれば特に制限はない。プロモーターとしては、polI系プロモーター、polII系プロモーター、polIII系プロモーター等を使用することができる。具体的には、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR等のウイルスプロモーター、β−アクチン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成蛋白質遺伝子プロモーター、並びにtRNAプロモーター等のRNAプロモーター等が用いられる。
siRNAの発現を意図する場合には、プロモーターとしてpolIII系プロモーターを使用することが好ましい。polIII系プロモーターとしては、例えば、U6プロモーター、H1プロモーター、tRNAプロモーター等を挙げることができる。
本発明の発現ベクターは、好ましくは上述のポリヌクレオチド又はそれをコードする核酸の下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有する。さらに、形質転換細胞選択のための選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含有することもできる。
本発明において発現ベクターに使用されるベクターの種類は特に制限されないが、ヒト等の哺乳動物への投与に好適なベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルスベクターが挙げられる。このうち、アデノウイルスは、遺伝子導入効率が極めて高く、非分裂細胞にも導入可能である等の利点を有する。但し、導入遺伝子の宿主染色体への組込みは極めて稀であるので、遺伝子発現は一過性で通常約4週間程度しか持続しない。治療効果の持続性を考慮すれば、比較的遺伝子導入効率が高く、非分裂細胞にも導入可能で、且つ逆位末端繰り返し配列(ITR)を介して染色体に組み込まれ得るアデノ随伴ウイルスの使用もまた好ましい。
アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸の他の好ましい例としては、該mRNAをコード領域の内部で特異的に切断し得るリボザイムが挙げられる。「リボザイム」とは、狭義には、核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子 mRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572−5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780−2788 (2001)]。
アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸は、リポソーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療に適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
これらの核酸の蛋白質発現阻害活性は、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子を導入した形質転換体、生体内や生体外の遺伝子発現系、または生体内や生体外の蛋白質翻訳系を用いて調べることができる。
本発明におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を抑制する物質は、上記のようなアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に限定されず、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子蛋白質の産生を直接的または間接的に阻害する限り、低分子化合物などの他の物質であってもよい。そのような物質は、例えば、後述する本発明のスクリーニング方法により取得することができる。
本発明において「アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物の活性を抑制する物質」とは、いったん機能的に産生されたアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物の生理機能を抑制する限り、いかなるものであってもよい。具体的には、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物の活性を抑制する物質として、例えば、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物である蛋白質に対する中和抗体が挙げられる。該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。これらの抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
好ましい一実施態様において、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物に対する抗体はヒトを投与対象とする医薬品として使用されることから、該抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス−ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、常法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、ヒト−ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生マウスやファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。
別の好ましい態様においては、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物の活性を阻害する物質は、該産物に対してアンタゴニスト活性を示す低分子化合物である。そのような化合物は、例えば、後述する本発明のスクリーニング法を用いて取得することができる。
本発明のアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸、siRNA、またはアンチセンス核酸もしくはsiRNAを生成し得る核酸(前記「本発明のアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸、siRNA、またはアンチセンス核酸もしくはsiRNAを生成し得る核酸」を以下においては「本発明のアンチセンス核酸等」と略記することがある)、またはアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物に対する中和抗体、もしくはアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物に対してアンタゴニスト活性を示す低分子化合物を含有する医薬は低毒性であり、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは他の哺乳動物(例、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。
本発明のアンチセンス核酸等を上記癌の治療剤などの医薬として使用する場合、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。即ち、本発明の治療剤を、単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどの適当な哺乳動物細胞用の発現ベクターに機能可能な態様で挿入した後、常套手段に従って製剤化することができる。該核酸は、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することができる。あるいは、エアロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記核酸を単独またはリポソームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下等に投与してもよい。
本発明のアンチセンス核酸等、またはアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物に対する中和抗体、もしくはアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物に対してアンタゴニスト活性を示す低分子化合物を含有する医薬は、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、本発明のアンチセンス核酸等、中和抗体もしくは低分子化合物またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明のアンチセンス核酸等、中和抗体もしくは低分子化合物またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記アンチセンス核酸等、中和抗体または低分子化合物を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されてもよい。
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。本発明の本発明のアンチセンス核酸等、中和抗体または低分子化合物は、例えば、投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mg含有されていることが好ましい。
本発明の本発明のアンチセンス核酸等、中和抗体または低分子化合物を含有する上記医薬または動物薬の投与量は、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、成人の癌患者の場合、本発明のアンチセンス核酸を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
なお、前記した各組成物は、本発明の本発明のアンチセンス核酸等、中和抗体または低分子化合物との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
上述の通り、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現またはその産物の活性を抑制することにより、癌を治療し得る可能性がある。
したがって、本発明はまた、アセチルCoAシンセターゼ2発現細胞に被験物質を接触させ、該細胞における、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を測定すること、および被験物質を接触させていない対照細胞と比較してアセチルCoAシンセターゼ2の発現を抑制した物質を、癌を治療しうる物質として選択することを含む、癌を治療する物質のスクリーニング方法を提供する。
アセチルCoAシンセターゼ2発現細胞は、該細胞自体またはそれを含む任意のもの(例、血液、組織、臓器等)であれば特に制限はない。血液、組織、臓器等は、それらを生体から単離して培養してもよいし、あるいは生体自体に被験物質を投与し、一定時間経過後にそれら生体試料を単離してもよい。
被験物質としては、例えば蛋白質、ペプチド、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これらの物質は新規なものであってもよいし、公知のものであってもよい。
被験物質の上記細胞との接触は、単離した細胞・組織等を用いる場合は、例えば、該細胞・組織等の培養に適した培地(例えば、約5〜20%の胎仔ウシ血清を含む最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地、F12培地など)や各種緩衝液(例えば、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液など)の中に被験物質を添加して、細胞を一定時間インキュベートすることにより実施することができる。添加される被験物質の濃度は化合物の種類(溶解度、毒性等)により異なるが、例えば、約0.1nM〜約100nMの範囲で適宜選択される。インキュベート時間としては、例えば、約10分〜約24時間が挙げられる。
アセチルCoAシンセターゼ2発現細胞におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現量は、前記した本発明の検査用キットに含まれる試薬を用いるなどして、本発明の検査方法と同様にして測定することができる。
例えば、上記スクリーニング法において、被験物質の存在下におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現量(mRNA量または蛋白質量)が、被験物質の非存在下における発現量に比べて、有意に阻害された場合、該被験物質を癌治療効果を有する物質の候補として選択することができる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現抑制物質(遊離体であっても塩の形態であってもよい)を、癌を発症した個体に投与して、その症状の改善の有無を調べることにより、実際の癌治療効果の有無を確認することができる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる物質を癌の治療剤として使用する場合、上記アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現もしくはその産物の活性を抑制するいずれかの物質と同様に製剤化することができ、同様の投与経路および投与量で、ヒトまたは他の哺乳動物に対して、経口的にまたは非経口的に投与することができる。
本発明はまた、アセチルCoAシンセターゼ2発現細胞に被験物質を接触させ、該細胞における、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物の活性を測定すること、および被験物質を接触させていない対照細胞と比較してアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物の活性を抑制した物質を、癌を治療しうる物質として選択することを含む、癌を治療する物質のスクリーニング方法を提供する。本方法において用いられる細胞、被験物質の種類、被験物質と細胞との接触の態様などは、上記したアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現を指標とする方法と同様である。
上記のスクリーニング方法におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物の活性の測定は、各蛋白質に応じて自体公知の方法を適宜選択して実施することができる。例えば、遺伝子産物と相互作用してその生理活性を発揮させる物質(例、リガンド)が公知である場合、標識した該物質の共存下、固相化したアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物に被験物質を接触させ、固液分離した後、固相に結合した標識量を測定することにより、該リガンド物質と競合的に該遺伝子産物に結合する物質(例、アゴニスト、アンタゴニスト)や、該遺伝子産物と該リガンド物質との結合性を変化させる物質を選択することができる。該遺伝子産物の生理活性(例、酵素活性など)を同時に測定することにより、該リガンド物質と競合的に該遺伝子産物に結合する物質がアゴニストであるかアンタゴニストであるかを同定することができる。
例えば、上記のスクリーニング方法において、被験物質の存在下におけるアセチルCoAシンセターゼ2遺伝子産物の活性が、被験物質の非存在下における活性に比べて、有意に阻害された場合に、該被験物質を、癌治療効果を有する物質の候補として選択することができる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる、アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の活性抑制物質(遊離体であっても塩の形態であってもよい)は、癌を発症した個体に投与して、その症状の改善の有無を調べることにより、実際の癌治療効果の有無を確認することができる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる物質を癌の治療剤として使用する場合、上記アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子の発現もしくはその産物の活性を抑制するいずれかの物質と同様に製剤化することができ、同様の投与経路および投与量で、ヒトまたは他の哺乳動物に対して、経口的にまたは非経口的に投与することができる。
本発明のアセチルCoAシンセターゼ2はまた、一般に酢酸を細胞内に固定する酵素として知られる一方、ATP+acetate+CoA⇔AMP+diphosphate+acetyl−CoAという可逆反応を触媒することから、癌において正常細胞と比較して、酢酸の取り込み量が増大する。そこで本発明はまた、個体の細胞が取り込む放射性標識された酢酸量を測定することを含む、癌の判定方法に関する。
本発明の判定方法の対象となる個体は、特に制限されないが、例えば、癌に罹患しているおそれがある個体、もしくは罹患していることが疑われる個体、あるいは現に癌に罹患している個体、例えば、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物が挙げられる。好ましくは、ヒトである。
本発明の判定方法に用いられる細胞としては、癌に罹患しているおそれがある個体、もしくは罹患していることが疑われる個体、あるいは現に癌に罹患している個体の癌細胞または癌細胞を含む組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織、骨格筋またはそれらの細胞などが挙げられる。また、それらの細胞は、個体から採取されても、そのまま生体内に残っていてもよく、即ち、in vitroまたはin vivoで本発明の方法が適用されてもよい。本発明の判定方法が適用できる癌は特に限定されないが、例えば肺癌、皮膚癌、大腸癌および乳癌が挙げられ、好ましく適用できる。
放射性標識される酢酸中の放射性同位元素としては、例えば、[H]、[18O]、[11C]、[14C]などが用いられるが、好ましくは、[11C]、[14C]が挙げられる。また、[18F]で標識した[18F]フルオロ酢酸も用いられる。
本発明の判定方法としては、陽電子放出断層写真法(PET)、単一光子放出計算断層写真法(SPECT)、陽電子を放出しない核種([H],[14C]等)の場合、液体シンチレーションカウンター・γカウンターが挙げられるが、酸素や炭素といった身体を構成している元素を標識した放射性薬剤を用いるため、生理学的生化学的機能を反映することができる点から、好ましくは陽電子放出断層写真法(PET)が挙げられる。
本発明の判定方法は、上記手法により、癌と相関して発現が変動する細胞の酢酸の取り込み量を測定することによって、個体が癌に罹患しているか否かの判定を行う。後述の実施例に示すように、癌細胞では正常細胞よりも酢酸の取り込みレベルが高い。従って、上記判定は、酢酸の取り込みレベルと個体の癌罹患率との間には正の相関関係があり、酢酸の取り込みレベルが高いほど、癌である確率が高いと判定することができる。
例えば、癌に罹患した、または癌であることを疑われるヒトに、放射性標識された酢酸を投与する。陽電子放出断層写真法(PET)により、特定の箇所における酢酸の取り込みレベルが周囲の正常細胞(組織)と比較し、映像等に出力された結果から癌であるか否かを判定することができる。取り込みレベルの比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
そして、酢酸の取り込みレベルの比較結果より、測定対象の酢酸の取り込みレベルが相対的に高い場合には、癌である確率が相対的に高いと判定することができる。逆に、測定対象の酢酸の取り込みレベルが相対的に低い(周辺の正常組織と同程度のレベルである)場合には、癌である確率が相対的に低いと判定することができる。
本発明はまた、上記本発明の判定方法において好ましく使用され得る、放射性標識された酢酸を含む、癌細胞検出用試薬を提供する。
該試薬は、放射性標識された酢酸に加えて、該酢酸を検出するための反応において必要な他の物質であって、共存状態で保存することにより反応に悪影響を及ぼさない物質をさらに含有することができる。例えば、医薬用の担体として、アスコルビン酸等の安定化剤、酸、塩基等のpH調整剤、リン酸緩衝液等の緩衝剤、または生理食塩液等の等張剤等を利用することができる。あるいは、該試薬は、該酢酸を検出するための反応において必要な他の物質を含有する別個の試薬とともに提供されてもよい。
本発明の検出試薬は、静脈注射による投与が最適であるが、その他一般的な非経口的手段(例えば、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与など)によって投与が可能である。その投与量は、患者の体重、年齢、性別及び検出装置に代表される測定機器等の諸条件によって適宜決められる。一般的に、成人患者の場合、放射能として10MBq〜25MBq、好ましくは15MBq〜20MBqの範囲である。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1 癌細胞の代謝特性
マウス由来癌細胞(lung carcinoma, LLC1(LLC); melanoma, B16; colon carcinoma, Colon−26(Colon); mammary carcinoma, C127I)およびコントロールとして正常細胞(fibroblast, BALB/3T3 clone A31(3T3))を用いて、その代謝産物の測定を行った。まず、24−well plateを用い、1wellあたり5×10細胞を1mLのDulbedcco’s modified Eagle’s(DME)培地(10% Fetal bovine serum, antibiotics添加)中、常酸素条件下(CO培養庫, 5% CO in air, 37℃)で、24h前培養した。その後、新たなDME培地に入れ替え、常酸素条件下および低酸素条件下(Personal Multi Gas Incubator[Astec], 1.2% O, 93.8% N, and 5% CO)で24h培養した。培養培地を回収し、イオンクロマトグラフィー法[ion chromatography(Shimadzu); ICSep ION−300 ion−exclusion column(300×7.8mm i.d., Transgenomic); flow rate 0.4mL/min; temperature 70℃; eluent 0.0085N HSO; ultraviolet detector(Shimadzu)210nm]を用い、有機酸や糖の含有をおおまかに確認した後、F−kit(R−Biopharm AG)を用いて、代謝物の定量解析を行った。
結果を図1に示す。癌細胞は、正常細胞に比べ、多く酢酸を産生することが明らかになった。また、癌細胞は、低酸素条件下におかれると、さらに多くの酢酸を産生することが示された。一方、正常細胞は、低酸素条件下でほとんど酢酸を産生しなかった。
実施例2 癌細胞の遺伝子発現解析
実施例1の手順と同様に、常酸素条件下および低酸素条件下で培養した細胞(LLC, B16, Colon, C127I, 3T3)(1−6×10 cells)を回収し、Micro−to−Midi total RNA purification system(Invitrogen Life Technology)を用いてRNAの精製を行った。これを用い、リアルタイム定量RT−PCR法を用いて遺伝子の発現解析を行った。解析には、comparative C method を用い、内部標準にはβ−actinを用いた。また、反応は、ABI PRISM 7000 sequence detection system(Applied Biosystems)を用いて行い、反応試薬にはTaqman One−Step RT−PCR Master Mix reagentsおよびTaqman gene expression assays(Applied Biosystems)を用いた。
結果を図2に示す。様々な酢酸代謝に関係が予想される酵素の遺伝子発現を調べたところ、細胞質性のacetyl−coenzyme A(CoA) synthetase 2は癌細胞では高発現で、さらに低酸素下で発現が向上することが明らかとなった。その発現パターンは、酢酸産生のパターンと類似していた。
実施例3 癌細胞の酢酸産生におけるAcss2の役割
癌細胞(LLC, B16, Colon, C127I)においてAcss2が酢酸産生に寄与しているのか調べる目的で、Acss2の抑制実験を行った。まず、細胞内で安定なRNA干渉(RNAi)を起こさせるために、Mission lentiviral transduction particles(SHVRS−NM 019811; Sigma)を用いて遺伝子導入を行い、Acss2ノックダウン癌細胞株を作成した。Acss2に対するshRNAとしては、配列表7,9,11および13に記載の配列からなるshRNAを用いた。また、コントロールにはNon−targeting shRNA(SHC002V, Sigma)を用いた。Puromycinを用い、安定導入癌細胞をselectionした。リアルタイム定量RT−PCR法を用いてAcss2の遺伝子発現の抑制を確認した。各shRNAは、いずれもAcss2に対する抑制効果を示したが、細胞種によって、抑制効果が異なった。具体的には、LLCは配列番号9、B16は配列番号11、Colonは配列番号13、C127Iは配列番号7に記載の配列からなるshRNAに高い抑制効果が見られた。こうして得られたRNAi細胞株について、実施例1の方法に従い、酢酸産生を調べた。
結果を図3に示す。Acss2をノックダウンされた全ての癌細胞株では、Acss2の遺伝子発現が抑制され、それに伴い酢酸産生が減少することが明らかとなった。Acss2は、一般に酢酸を細胞内に固定する酵素であると考えられてきたが、酵素学的には、[ATP+acetate+CoA⇔AMP+diphosphate+acetyl−CoA]という可逆反応を触媒することも報告されている。本実施例から、癌細胞において、acetyl−CoAをacetateに変換するAcss2の逆反応、つまり酢酸エネルギー産生反応が見られることが明らかとなった。
実施例4 癌細胞の低酸素生存におけるAcss2の役割−Acss2 RNAiの癌低酸素生存抑制効果−
実施例3において作成したRNAi細胞株を用い、低酸素生存に関わるAcss2の役割を検討した。まず、24−well plateを用い、1wellあたり5×10細胞を1mL DME培地中に播き、24h常酸素条件下で培養した。その後、培地を交換し、低酸素条件に移した(0day)。その後、1日おきにあらかじめ低酸素処理したDME培地に交換し、7日間培養を行った。細胞は、1日おきにtrypan blue dye−exclusion methodにより細胞数を計測した。また、細胞の形態および生死を確認する目的でtwo−colour fluorescence cell−viability assayを行った(ToxCount, Active Motif)。
結果を図4に示す。Acss2 RNAi細胞株では、コントロールRNAi株に比べて低酸素生存期間が短縮した。このことは、Acss2による酢酸代謝が、癌細胞の低酸素生存に有利に働いていることを示す。また、Acss2の遺伝子ノックダウンが癌の低酸素生存に対し抑制効果があることを示している。なお、常酸素条件で培養した際は、細胞増殖に大きな違いは見られなかった。
実施例5 Acss2の腫瘍増殖における役割−Acss2 RNAiの腫瘍増殖抑制効果−
実施例3において作成したRNAi癌細胞株をヌードマウスに植える移植実験を行った。実験には6週齢BALB/c Slc−nu/nu male nude mice(Japan SLC)を用いた。マウス大腿部皮下にPBSに懸濁したRNAi癌細胞[8×10(Colon)または1×10(LLC, B16, C127I)]をそれぞれ移植した。腫瘍サイズは3日おきに12日間測定した。腫瘍体積(mm)は(長径)×(短径)×(6/π)として求めた。なお、動物実験は、福井大学動物実験指針に従って行った。
結果を図5に示す。調べた全ての細胞株で、Acss2 RNAi細胞の腫瘍増殖は、Control RNAi細胞よりも遅かった。このことは、Acss2による酢酸代謝が腫瘍増殖に重要であることを示している。また、Acss2の遺伝子抑制が腫瘍増殖抑制に効果があることを示している。
実施例6 Acss2の酢酸トレーサー取り込みへの寄与
実施例3の結果から、癌細胞においてAcss2が高発現し、その可逆性を利用した特異的な酢酸代謝経路が存在することが明らかになった。このことは、Acss2が正反応と逆反応の動的平衡を制御する可逆的酵素であることを意味する。こうしたことから、発明者らは、放射性酢酸トレーサーの取り込みをみることで、癌細胞におけるAcss2の発現の亢進をモニターできるのではないかと考えた。そこで、[14C]酢酸の癌細胞への取り込みとそれに対するAcss2の寄与について検討した。まず、細胞を24−well plateに播き、24h前培養した。このとき、増殖速度を考慮し、1wellあたりLLC,B16,Colonは5×10細胞、C127Iは8×10細胞、3T3は1×10細胞とした。RNAi細胞は、1×10細胞播種した。細胞は、37kBq[14C]酢酸添加DME培地に交換後1h常酸素下で培養した。一方、低酸素条件下の実験では、前培養後にさらに2hまたは6h低酸素処理を施した後、37kBq[14C]酢酸添加培地に交換後、1h低酸素下で培養した。その後、それぞれにつき培地を除去し、氷冷したPBSで2回洗った後、0.5ml 0.2N NaOHを加え、2h室温で細胞を溶解させた。これに9.5mL ACSII(Amersham)を加え、液体シンチレーションカウンター(LSC−5000, Aloka)を用いて放射能を測定した。
その結果、放射性酢酸トレーサーの取り込みパターンは、Acss2の発現パターンとほぼ一致していた(図6)。また、Acss2 RNAi細胞では、放射性酢酸トレーサーの取り込みが減少していた(図7,8)。このことから、Acss2は放射性酢酸トレーサーの取り込みにも関与することが明らかとなった。これは、放射性酢酸トレーサーを用いることで、Acss2の発現および癌特異的酢酸代謝の活性をモニターすることができることを意味している。放射性トレーサーは、一般に微量な集積でも検出が可能である。そのため、放射性トレーサーは、癌特異的酢酸代謝の検出・画像化に有用である。
本発明の判定方法は、迅速簡便な癌診断、特に、低酸素条件で容易に判断できる癌診断のための判定方法として、また、癌の治療に対する治療効果のモニタリング手段として有用である。また、本発明のAcss2遺伝子の発現/その産物の活性抑制物質は、癌治療薬の有望な候補となり得る。さらに、本発明のスクリーニング方法は、新規な癌治療薬の探索に有用である。
マウス由来各種癌細胞および正常細胞を用いて、常酸素および低酸素条件下において、培地中の酢酸量をイオンクロマトグラフィーにより定量解析した図である。 マウス由来各種癌細胞および正常細胞を用いて、常酸素および低酸素条件下において、酢酸代謝に関係が予想される各種遺伝子の発現量をリアルタイム定量RT−PCR法により定量解析した図である。図中、左のカラムからそれぞれ、Acss2、Acot、Aldhに対応する。Acss2, アセチルCoAシンセターゼ2;Acot, アルデヒドデヒドロゲナーゼ;Aldh, アセチルCoAヒドラーゼ マウス由来各種癌細胞のAcss2ノックダウン細胞株を用いて、Acss2遺伝子の発現量をリアルタイム定量RT−PCR法、および培地中の酢酸産生量をイオンクロマトグラフィーにより定量解析した図である。図中、左カラムがControl RNAi、右カラムがAcss2 RNAiに対応する。* P<0.01; ** P<0.005; *** P<0.001 a)マウス由来各種癌細胞のAcss2ノックダウン細胞株を用いて、低酸素条件下において、生存細胞数を1日おきに計測した結果を表す図である。* P<0.005; ** P<0.001; ↓ 形態観察を実施した時期 b)a)の細胞の形態観察および生死を確認するためにtwo−colour fluorescence cell−viability assayを行った結果の図である。 マウス由来各種癌細胞のAcss2ノックダウン細胞株をBALB/c Slc−nu/nu male nude miceに移植し、3日おきに腫瘍サイズを測定した結果を示す図である。* P<0.03; ** P<0.02; *** P<0.01 マウス由来各種癌細胞および正常細胞を用いて、常酸素および低酸素条件下において、37kBq[14C]酢酸の取り込みを液体シンチレーションカウンターにより測定した図である。* P<0.02; ** P<0.01; *** P<0.001 vs 3T3 Normoxia マウス由来各種癌細胞(LLC, B16)のAcss2ノックダウン細胞株を用いて、常酸素および低酸素条件下において、37kBq[14C]酢酸の取り込みを液体シンチレーションカウンターにより測定した図である。* P<0.01; ** P<0.001; *** P<0.0001 マウス由来各種癌細胞(Colon, C127I)のAcss2ノックダウン細胞株を用いて、常酸素および低酸素条件下において、37kBq[14C]酢酸の取り込みを液体シンチレーションカウンターにより測定した図である。* P<0.01; ** P<0.001; *** P<0.0001

Claims (11)

  1. 個体から採取した試料における、アセチルCoAシンセターゼ2の発現量を測定することを含む、該個体が癌に罹患しているか否かを判定する方法。
  2. 下記(a)または(b):
    (a)アセチルCoAシンセターゼ2の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
    (b)アセチルCoAシンセターゼ2を特異的に認識する抗体
    を用いて発現量を測定することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 治療中または治療を受けた癌患者から経時的に採取した癌部位を含む試料における、アセチルCoAシンセターゼ2の発現の推移を評価することを含む、癌患者に対する抗癌治療効果の評価方法。
  4. 下記(a)または(b):
    (a)アセチルCoAシンセターゼ2の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
    (b)アセチルCoAシンセターゼ2を特異的に認識する抗体
    を含有してなる、個体が癌に罹患しているか否かを判定するための剤。
  5. 個体から採取した試料の、酢酸産生量を測定することを含む、該個体が癌に罹患しているか否かを判定する方法。
  6. 低酸素条件下での酢酸産生量が測定される、請求項5記載の方法。
  7. 下記(a)、(b)または(c):
    (a)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸
    (b)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するsiRNA
    (c)アセチルCoAシンセターゼ2遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸またはsiRNAを生成し得る発現ベクター
    のいずれかを含有してなる、癌の治療剤。
  8. アセチルCoAシンセターゼ2発現細胞に被験物質を接触させること、該細胞におけるアセチルCoAシンセターゼ2の発現を測定すること、および被験物質を接触させていない対照細胞と比較してアセチルCoAシンセターゼ2の発現を抑制した物質を、癌を治療しうる物質として選択することを含む、癌を治療し得る物質のスクリーニング方法。
  9. アセチルCoAシンセターゼ2に被験物質を接触させること、アセチルCoAシンセターゼ2の活性を測定すること、および被験物質を接触させていない場合と比較して、アセチルCoAシンセターゼ2の活性を抑制した物質を、癌を治療し得る物質として選択することを含む、癌を治療し得る物質のスクリーニング方法。
  10. 個体の細胞が取り込む放射性標識された酢酸量を測定することを含む、癌の判定方法。
  11. 放射性標識された酢酸を含む、癌細胞検出用試薬。
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