JP2009143368A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】タイヤのグリップが失われ始めることを運転者に感知させることができると共に、タイヤのグリップ限界に近づいたときに運転者の切増し操舵を抑制する。
【解決手段】ステア判定部48で車両がアンダーステア状態であるか否かを判定し、グリップロス度検出部23で、SAT検出値SATdとSAT推定値SATpとに基づいて、タイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度gを検出する。また、アクティブリターン補償部40で、車速Vx、操舵角δ及び舵角速度ωhに基づいて操舵補助電流指令値Irefに対するアクティブリターン補償値HRを算出する。そして、補償値補正部24で、車両がアンダーステア状態であるときに、グリップロス度gに基づいてアクティブリターン補償値HRを補正する。
【選択図】図2
【解決手段】ステア判定部48で車両がアンダーステア状態であるか否かを判定し、グリップロス度検出部23で、SAT検出値SATdとSAT推定値SATpとに基づいて、タイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度gを検出する。また、アクティブリターン補償部40で、車速Vx、操舵角δ及び舵角速度ωhに基づいて操舵補助電流指令値Irefに対するアクティブリターン補償値HRを算出する。そして、補償値補正部24で、車両がアンダーステア状態であるときに、グリップロス度gに基づいてアクティブリターン補償値HRを補正する。
【選択図】図2
Description
本発明は、転舵輪を転舵するステアリング機構に対し、電動モータにより操舵補助力を付与するようにした電動パワーステアリング装置に関し、特に、タイヤのグリップ力が失われた場合であっても、車両挙動を安定させることの可能な電動パワーステアリング装置に関する。
従来、ステアリング装置として、運転者がステアリングホイールを操舵する際に発生する操舵トルクに応じて電動モータを駆動することにより、ステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置が普及している。
また、このような電動パワーステアリング装置において、横力利用率を算出し、その横力利用率の値に基づいて通常の操舵補助トルク指令値を補正することで、操舵安定性を向上させるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、このような電動パワーステアリング装置において、横力利用率を算出し、その横力利用率の値に基づいて通常の操舵補助トルク指令値を補正することで、操舵安定性を向上させるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、操舵性能の向上やコーナリング時の車両の挙動を安定させるために、車両に取り付けられた車輪を中立に戻そうとするトルクであるセルフアライニングトルクを求めて操舵制御に用いたもの、さらにタイヤのグリップ状態を考慮して操舵制御を行うようにした電動パワーステアリング装置も提案されている。
このタイヤのグリップ状態を算出する方法としては、例えば規範ヨーレートと実ヨーレートとの偏差をタイヤのグリップ状態相当の値として用いたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許第3730341号明細書
特開2006−264392号公報
このタイヤのグリップ状態を算出する方法としては、例えば規範ヨーレートと実ヨーレートとの偏差をタイヤのグリップ状態相当の値として用いたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置にあっては、横力利用率の算出においてタイヤの特性を考慮していないため、ロバスト性が低いと共に精度が悪い。
また、上記特許文献2に記載の電動パワーステアリング装置のように、規範ヨーレートと実ヨーレートとの偏差をグリップ状態相当の値として用いた場合、これらヨーレートの偏差は、グリップ状態を表すものの、実際のグリップ状態との誤差は比較的大きく、正確なタイヤのグリップ力を検出することはできない。
また、上記特許文献2に記載の電動パワーステアリング装置のように、規範ヨーレートと実ヨーレートとの偏差をグリップ状態相当の値として用いた場合、これらヨーレートの偏差は、グリップ状態を表すものの、実際のグリップ状態との誤差は比較的大きく、正確なタイヤのグリップ力を検出することはできない。
さらに、タイヤのグリップ力が限界に近づくと、電流指令値を減少させるように補正することで操舵反力を大きくし、運転者の切増し操舵を抑制するようにしているので、タイヤのグリップ力が限界に近づいて操舵反力が小さくなる際に、制御特性によっては、タイヤのグリップ限界を感知できるような熟練運転者にとってはタイヤのグリップ限界を感知しにくく、効果的に切増し操舵を抑制できない。
そこで、本発明は、タイヤのグリップが失われ始めることを運転者に感知させることができると共に、タイヤのグリップ限界に近づいたときに運転者の切増し操舵を抑制することができる電動パワーステアリング装置を提供することを課題としている。
上記課題を解決するために、請求項1に係る電動パワーステアリング装置は、転舵輪を転舵するステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記ステアリング機構に操舵補助力を付与する電動モータと、前記操舵トルクに基づいて操舵補助電流指令値を演算し、演算した操舵補助電流指令値に基づいて前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動パワーステアリング装置であって、
車両のアンダーステア状態を判定するステア状態判定手段と、タイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度を検出するグリップロス度検出手段と、前記操舵補助電流指令値に対してアクティブリターン補償を行うことで、ハンドルを中立に戻すハンドル戻し制御を行うアクティブリターン補償手段と、前記ステア状態判定手段でアンダーステア状態であると判定したとき、前記グリップロス度検出手段で検出したグリップロス度に基づいて前記アクティブリターン補償手段のアクティブリターン補償値を補正する補償値補正手段とを備えたことを特徴としている。
車両のアンダーステア状態を判定するステア状態判定手段と、タイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度を検出するグリップロス度検出手段と、前記操舵補助電流指令値に対してアクティブリターン補償を行うことで、ハンドルを中立に戻すハンドル戻し制御を行うアクティブリターン補償手段と、前記ステア状態判定手段でアンダーステア状態であると判定したとき、前記グリップロス度検出手段で検出したグリップロス度に基づいて前記アクティブリターン補償手段のアクティブリターン補償値を補正する補償値補正手段とを備えたことを特徴としている。
また、請求項2に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1に係る発明において、前記補償値補正手段は、前記ステア状態判定手段でアンダーステア状態であると判定しており、前記グリップロス度が第1の閾値よりも大きく且つ第2の閾値以下であるときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値を減少補正するように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1に係る発明において、前記補償値補正手段は、前記ステア状態判定手段でアンダーステア状態であると判定しており、前記グリップロス度が第1の閾値よりも大きく且つ第2の閾値以下であるときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値に1以下のゲインを乗算して減少補正するように構成されていることを特徴としている。
また、請求項4に係る電動パワーステアリング装置は、請求項2又は3に係る発明において、前記補償値補正手段は、前記ステア状態判定手段でアンダーステア状態であると判定しており、前記グリップロス度が前記第2の閾値を超えているときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値を増加補正するように構成されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項5に係る電動パワーステアリング装置は、請求項2又は3に係る発明において、前記補償値補正手段は、前記ステア状態判定手段でアンダーステア状態であると判定しており、前記グリップロス度が前記第2の閾値を超えているときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値に1を超えるゲインを乗算して増加補正するように構成されていることを特徴としている。
また、請求項6に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1〜5の何れか1項に係る発明において、前記転舵輪側に発生するセルフアライニングトルクを検出するセルフアライニングトルク検出手段と、車両の横力を検出する横力検出手段と、該横力検出手段で検出した横力に基づいてセルフアライニングトルクを推定するセルフアライニングトルク推定手段とを備え、前記グリップロス度検出手段は、前記セルフアライニングトルク検出手段で検出したセルフアライニングトルク検出値と、前記セルフアライニングトルク推定手段で推定したセルフアライニングトルク推定値とに基づいてグリップロス度を検出するように構成されていることを特徴としている。
本発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、車両がアンダーステア状態であるときに、操舵トルクに基づいて算出した電動モータの電流指令値をアクティブリターン補償するアクティブリターン補償手段のアクティブリターン補償値を、タイヤのグリップロス度に基づいて補正し、補正して得た操舵補助指令値に基づいて電動モータを駆動制御するため、操舵補助指令値を直接補正する場合と比較して、運転者にリニアな反力感を伝えることができるという効果が得られる。
また、運転者が切増し操舵を行って、グリップロス度が所定範囲になったときに、アクティブリターン補償値を減少させることにより、操舵反力を減少させて、運転者にアンダーステア状態となってタイヤのグリップ力が失われ始めている状態であることを感知させることができるという効果が得られる。
さらに、タイヤのグリップ力が限界に近づいて、グリップロス度が所定範囲以上になったときに、アクティブリターン補償値を増加補正することにより、操舵反力を増加させて運転者の切増し操舵を抑制することができるという効果が得られる。
さらに、タイヤのグリップ力が限界に近づいて、グリップロス度が所定範囲以上になったときに、アクティブリターン補償値を増加補正することにより、操舵反力を増加させて運転者の切増し操舵を抑制することができるという効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、符号SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aと、この入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。このステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
図1は、本発明の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、符号SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aと、この入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。このステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
そして、出力軸2bに伝達された操舵力は、2つのヨーク4a,4bとこれらを連結する十字連結部4cとで構成されるユニバーサルジョイント4を介して中間シャフト5に伝達され、さらに、2つのヨーク6a,6bとこれらを連結する十字連結部6cとで構成されるユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。
このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ機構8を介して左右のタイロッド9に伝達され、これらタイロッド9によって左右の転舵輪WL,WRを転舵させる。ここで、ステアリングギヤ機構8は、ギヤハウジング8a内に、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8bとこのピニオン8bに噛合するラック軸8cとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8bに伝達された回転運動をラック軸8cで車幅方向の直進運動に変換して、タイロッド9に伝達する。
このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ機構8を介して左右のタイロッド9に伝達され、これらタイロッド9によって左右の転舵輪WL,WRを転舵させる。ここで、ステアリングギヤ機構8は、ギヤハウジング8a内に、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8bとこのピニオン8bに噛合するラック軸8cとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8bに伝達された回転運動をラック軸8cで車幅方向の直進運動に変換して、タイロッド9に伝達する。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速ギヤ11と、この減速ギヤ11に連結された操舵補助力を発生する例えばブラシレスモータで構成される電動モータ12とを備えている。
また、減速ギヤ11のステアリングホイール1側に連接されたハウジング13内には、操舵トルクセンサ14が配設されている。この操舵トルクセンサ14は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を磁気変化や抵抗変化として検出し、それを電気信号に変換するように構成されている。
また、減速ギヤ11のステアリングホイール1側に連接されたハウジング13内には、操舵トルクセンサ14が配設されている。この操舵トルクセンサ14は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を磁気変化や抵抗変化として検出し、それを電気信号に変換するように構成されている。
そして、操舵トルクセンサ14から出力される操舵トルク検出値Tは、図2に示すように、例えばマイクロコンピュータで構成されるコントローラ15に入力される。このコントローラ15には、トルク検出値Tの他に車速センサ16で検出した車速検出値Vx、操舵角センサ18で検出した操舵角δ、電動モータ12に流れるモータ電流Ia〜Ic及びレゾルバ、エンコーダ等で構成される回転角センサ17で検出した電動モータ12の回転角θmも入力されている。
このコントローラ15では、入力されるトルク検出値T及び車速検出値Vxに応じた操舵補助力を電動モータ12で発生させる操舵補助電流指令値Irefを算出し、算出した操舵補助電流指令値Irefに対して、回転角θmに基づいて算出するモータ角速度ωm及びモータ角加速度αmに基づいた収斂性補償、慣性補償、セルフアライニングトルク補償や、アクティブリターン補償等、各種補償処理を行ってd−q軸指令値に変換する。
そして、これらd−q軸指令値を2相/3相変換してモータ電流指令値Iaref〜Icrefを算出し、算出したモータ電流指令値Iaref〜Icrefに基づいて電動モータ12に流れる電流Ia〜Icをフィードバック制御して、電動モータ12を駆動制御する。
すなわち、コントローラ15は、操舵トルクT及び車速Vxに基づいて操舵補助電流指令値Irefを演算する操舵補助電流指令値演算部21と、この操舵補助電流指令値演算部21で算出した操舵補助電流指令値Irefを補償する指令値補償部22と、タイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度gを検出するグリップロス度検出手段としてのグリップロス度検出部23と、このグリップロス度検出部23で検出したグリップロス度gに基づいて指令値補償部22のアクティブリターン補償値を補正する補償値補正手段としての補償値補正部24と、指令値補償部22で補償した補償後操舵補助電流指令値Iref′に基づいてd−q軸電流指令値を算出するd−q軸電流指令値演算部25と、このd−q軸電流指令値演算部25から出力されるd−q軸指令値を2相/3相変換してモータ電流指令値Iaref〜Icrefを算出する2相/3相変換部26と、この2相/3相変換部26から出力されるモータ電流指令値Iaref〜Icrefに基づいてモータ電流Ia〜Icを生成するモータ電流制御部27とで構成されている。
操舵補助電流指令値演算部21は、操舵トルクT及び車速Vxをもとに図3に示す操舵補助電流指令値算出マップを参照して電流指令値となる操舵補助電流指令値Irefを算出する。
この操舵補助電流指令値算出マップは、図3に示すように、横軸に操舵トルクTをとり、縦軸に操舵補助電流指令値Irefをとると共に、車速Vxをパラメータとした放物線状の曲線で表される特性線図で構成され、操舵トルクTが"0"からその近傍の設定値Ts1までの間は操舵補助電流指令値Irefが"0"を維持し、操舵トルクTが設定値Ts1を超えると最初は操舵補助指令値Irefが操舵トルクTの増加に対して比較的緩やかに増加するが、さらに操舵トルクTが増加すると、その増加に対して操舵補助電流指令値Irefが急峻に増加するように設定され、この特性曲線が車速の増加に従って傾きが小さくなるように設定されている。
この操舵補助電流指令値算出マップは、図3に示すように、横軸に操舵トルクTをとり、縦軸に操舵補助電流指令値Irefをとると共に、車速Vxをパラメータとした放物線状の曲線で表される特性線図で構成され、操舵トルクTが"0"からその近傍の設定値Ts1までの間は操舵補助電流指令値Irefが"0"を維持し、操舵トルクTが設定値Ts1を超えると最初は操舵補助指令値Irefが操舵トルクTの増加に対して比較的緩やかに増加するが、さらに操舵トルクTが増加すると、その増加に対して操舵補助電流指令値Irefが急峻に増加するように設定され、この特性曲線が車速の増加に従って傾きが小さくなるように設定されている。
指令値補償部22は、回転角センサ17で検出されるモータ回転角θmを微分してモータ角速度ωmを算出する角速度演算部31と、この角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωmを微分してモータ角加速度αmを算出する角加速度演算部32と、角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωmに基づいてヨーレートの収斂性を補償する収斂性補償部33と、角加速度演算部32で算出されたモータ角加速度αmに基づいて電動モータ12の慣性により発生するトルク相当分を補償して、慣性感又は制御応答性の悪化を防止する慣性補償部34と、転舵輪側に発生するセルフアライニングトルク(SAT)を検出するSAT検出部35と、車速Vx、操舵角δ及び操舵速度ωhに基づいて、ハンドル戻し制御を行うためのアクティブリターン補償値HRを算出するアクティブリターン補償部40と、を備えている。
ここで、収斂性補償部33は、車速センサ16で検出した車速Vx及び角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωmが入力され、車両のヨーレートの収斂性を改善するためにステアリングホイール1が振れ回る動作に対して、ブレーキをかけるように、モータ角速度ωmに車速Vxに応じて変更される収斂性制御ゲインKvを乗じて収斂性補償値Icを算出する。
また、SAT検出部35は、操舵トルクT、角速度ωm、角加速度αm及び操舵補助電流指令値演算部21で算出した操舵補助電流指令値Irefが入力され、これらに基づいてセルフアライニングトルクSATを演算する。
このセルフアライニングトルクSATを算出する原理は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を図4に示して説明する。
このセルフアライニングトルクSATを算出する原理は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を図4に示して説明する。
すなわち、ドライバがステアリングホイール1を操舵することによって操舵トルクTが発生し、その操舵トルクTに従って電動モータ12がアシストトルクTmを発生する。その結果、車輪Wが転舵され、反力としてセルフアライニングトルクSATが発生する。また、その際、電動モータ12の慣性J及び摩擦(静摩擦)Frによってステアリングホイール1の操舵の抵抗となるトルクが生じる。これらの力の釣り合いを考えると、下記(1)式のような運動方程式が得られる。
J・αm+ Fr・sign(ωm) + SAT = Tm + T …(1)
ここで、上記(1)式を初期値ゼロとしてラプラス変換し、セルフアライニングトルクSATについて解くと下記(2)式が得られる。
SAT(s) = Tm(s) + T(s) − J・αm(s) − Fr・sign(ωm(s)) …(2)
上記(2)式から分かるように、電動モータ12の慣性J及び静摩擦Frを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ωm、モータ角加速度αm、アシストトルクTm及び操舵トルクTよりセルフアライニングトルクSATを検出することができる。SAT検出部35は、このセルフアライニングトルク検出値をSATdとして出力する。ここで、アシストトルクTmは操舵補助電流指令値Irefに比例するので、アシストトルクTmに代えて操舵補助電流指令値Irefを適用する。
ここで、上記(1)式を初期値ゼロとしてラプラス変換し、セルフアライニングトルクSATについて解くと下記(2)式が得られる。
SAT(s) = Tm(s) + T(s) − J・αm(s) − Fr・sign(ωm(s)) …(2)
上記(2)式から分かるように、電動モータ12の慣性J及び静摩擦Frを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ωm、モータ角加速度αm、アシストトルクTm及び操舵トルクTよりセルフアライニングトルクSATを検出することができる。SAT検出部35は、このセルフアライニングトルク検出値をSATdとして出力する。ここで、アシストトルクTmは操舵補助電流指令値Irefに比例するので、アシストトルクTmに代えて操舵補助電流指令値Irefを適用する。
また、グリップロス度検出部23は、前述した指令値補償部22のSAT検出部35から入力されるセルフアライニングトルク検出値SATdとセルフアライニングトルクを推定するSAT推定部41から入力されるセルフアライニングトルク推定値SATpとに基づいてタイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度gを算出する。
ここで、SAT推定部41でセルフアライニングトルク推定値SATpを推定する原理は、以下の通りである。
ここで、SAT推定部41でセルフアライニングトルク推定値SATpを推定する原理は、以下の通りである。
タイヤが横滑りしながら転動する車両運動の様子をモデル化したものを、図5及び図6に示す。
図5では、タイヤが接地面全体において発生する横力はトレッド部の横方向への変形面積(斜線部)となり、セルフアライニングトルクSATがスリップ角を減少させる方向に働く様子を示している。また、図6は、横力の着力点(接地面の中心点)がタイヤの中心線より後方にあることを示している。そして、ニューマチックトレールとキャスタトレールとの加算値がトレールとなる。
図5では、タイヤが接地面全体において発生する横力はトレッド部の横方向への変形面積(斜線部)となり、セルフアライニングトルクSATがスリップ角を減少させる方向に働く様子を示している。また、図6は、横力の着力点(接地面の中心点)がタイヤの中心線より後方にあることを示している。そして、ニューマチックトレールとキャスタトレールとの加算値がトレールとなる。
図5及び図6より、セルフアライニングトルクSATは横力Fyとトレールとの積(横力Fy×トレール)であることがわかる。すなわち、トレールをεnとすると、セルフアライニングトルクSATは次式(3)で算出することができる。なお、この(3)式で算出されるセルフアライニングトルクを、セルフアライニングトルクの推定値SATpとする。
SATp=εn・Fy ……(3)
なお、重心から後輪までの距離をL2(固定値)、車両重量をm、横加速度をGy、車両慣性モーメントをMo、ヨーレートγの微分値をdγ/dt、ホイールベースをLとしたとき、横力Fyは次式(4)により算出することができる。
Fy=(L2・m・Gy+Mo・dγ/dt)/L ……(4)
一方、図7は横力FyとセルフアライニングトルクSATの特性をスリップ角に対して示す特性図であり、横力FyとSATとはスリップ角に対して非線形な特性となっている。そして、SATは横力Fy×トレールεnであり、キャスタトレールは固定値であることから、セルフアライニングトルクSATの横力Fyに対する非線形特性はニューマチックトレールの変化を直接表すことになる。また、セルフアライニングトルクSATの横力に対する特性は、図6における滑り域が増大し、ニューマチックトレールが減少することによって生じる。
なお、重心から後輪までの距離をL2(固定値)、車両重量をm、横加速度をGy、車両慣性モーメントをMo、ヨーレートγの微分値をdγ/dt、ホイールベースをLとしたとき、横力Fyは次式(4)により算出することができる。
Fy=(L2・m・Gy+Mo・dγ/dt)/L ……(4)
一方、図7は横力FyとセルフアライニングトルクSATの特性をスリップ角に対して示す特性図であり、横力FyとSATとはスリップ角に対して非線形な特性となっている。そして、SATは横力Fy×トレールεnであり、キャスタトレールは固定値であることから、セルフアライニングトルクSATの横力Fyに対する非線形特性はニューマチックトレールの変化を直接表すことになる。また、セルフアライニングトルクSATの横力に対する特性は、図6における滑り域が増大し、ニューマチックトレールが減少することによって生じる。
さらに、セルフアライニングトルクSATは横力Fyとトレールεnとの積であり、線形領域では滑り域は増加せず、ニューマチックトレールは一定値であることから、線形領域でのニューマチックトレールとキャスタトレールとの和、つまりトレールεnで横力FyをセルフアライニングトルクSATの次元に合わせてセルフアライニングトルク推定値SATpとして図示すると図8のようになる。
ここで、ニューマチックトレールが一定であれば、セルフアライニングトルク検出値SATdとセルフアライニングトルク推定値SATpとは同じ軌跡を辿るが、滑り域が増大してニューマチックトレールが減少するとセルフアライニングトルク検出値SATdとセルフアライニングトルク推定値SATpとに差が生じる。この差はグリップが失われた度合を表し、これを本実施形態では「グリップロス度」とする。上記(2)式で算出されたセルフアライニングトルク検出値SATdと、上記(3)式で算出されたセルフアライニングトルク推定値SATpとを次式(5)により比較する。
g=SATp−SATd ……(5)
この(5)式で算出されるgがグリップロス度であり、このグリップロス度gにより車両におけるタイヤのグリップ力が失われた度合を推定することができる。
図8は、セルフアライニングトルク検出値SATdとセルフアライニングトルク推定値SATp(トレールεn×横力Fy)とを比較して示す特性図であり、スリップ角が大きくなるにしたがって、セルフアライニングトルクSATが失われる様子を示しており、上記(5)式から算出されるセルフアライニングトルク検出値SATdとセルフアライニングトルク推定値SATpとの差をグリップロス度g(図中網かけ部)として示している。
この(5)式で算出されるgがグリップロス度であり、このグリップロス度gにより車両におけるタイヤのグリップ力が失われた度合を推定することができる。
図8は、セルフアライニングトルク検出値SATdとセルフアライニングトルク推定値SATp(トレールεn×横力Fy)とを比較して示す特性図であり、スリップ角が大きくなるにしたがって、セルフアライニングトルクSATが失われる様子を示しており、上記(5)式から算出されるセルフアライニングトルク検出値SATdとセルフアライニングトルク推定値SATpとの差をグリップロス度g(図中網かけ部)として示している。
このため、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ42と車両の横加速度を検出する横加速度センサ43とを設け、これらヨーレートセンサ42で検出したヨーレートγと横加速度センサ43で検出した横加速度Gyとを横力検出部44へ入力し、この横力検出部44で前記(4)式の演算を行って横力Fyを算出する。また、算出した横力FyをSAT推定部41に入力し、このSAT推定部41で前記(3)式の演算を行うことにより、セルフアライニングトルク推定値SATpを算出する。
そして、SAT検出部35で検出したセルフアライニングトルク検出値SATdとSAT推定部41で推定したセルフアライニングトルク推定値SATpとをグリップロス度検出部23に入力し、このグリップロス度検出部23で前記(5)式の演算を行うことにより、タイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度gを算出し、算出したグリップロス度gを補償値補正部24に入力する。
補償値補正部24は、グリップロス度検出部23で検出したグリップロス度gが入力される補償ゲイン算出部51と、この補償ゲイン算出部51でグリップロス度gに基づいて算出される補償ゲインK、及び補償ゲインK=1の固定値の何れか一方を選択する選択部52と、選択部52で選択した最終的な補償ゲインKを後述するアクティブリターン補償部40で算出されるアクティブリターン補償値HRに乗算し、その結果を補正アクティブリターン補償値HR´として出力する乗算器53とを備えている。
ここで、選択部52は、後述するステア判定部48からアンダーステア判定信号Sが入力されていないときには、切換スイッチ52aが実線で示す状態となって補償ゲインK=1を選択し、アンダーステア判定信号Sが入力されると、切換スイッチ52aが破線で示す状態へ切り換わり、補償ゲイン算出部51で算出した補償ゲインKを選択して上記乗算器53に出力するようになっている。
補償ゲイン算出部51は、入力されるグリップロス度gをもとに、図9に示すゲイン算出マップを参照してアクティブリターン補償値HRを補正するための補償ゲインKを算出する。
ここで、ゲイン算出マップは、図9に示すように、グリップロス度gが正値である場合には、グリップロス度gが0から第1の閾値Th1までの間で補償ゲインKが“1”となり、グリップロス度gが第1の閾値Th1を超えると補償ゲインKが“1”からグリップロス度gの増加に応じて減少し、第1の閾値Th1より僅かに大きい閾値Th1′で補償ゲインKが“1”より小さい所定値Kaに達し、その後、グリップロス度gが第2の閾値Th2に達するまでは補償ゲインKが所定値Kaを維持し、グリップロス度gが第2の閾値Th2を超えるとグリップロス度gの増加に応じて比較的急な傾きで補償ゲインKが“1”を超えて増加するように特性線が設定されている。
ここで、ゲイン算出マップは、図9に示すように、グリップロス度gが正値である場合には、グリップロス度gが0から第1の閾値Th1までの間で補償ゲインKが“1”となり、グリップロス度gが第1の閾値Th1を超えると補償ゲインKが“1”からグリップロス度gの増加に応じて減少し、第1の閾値Th1より僅かに大きい閾値Th1′で補償ゲインKが“1”より小さい所定値Kaに達し、その後、グリップロス度gが第2の閾値Th2に達するまでは補償ゲインKが所定値Kaを維持し、グリップロス度gが第2の閾値Th2を超えるとグリップロス度gの増加に応じて比較的急な傾きで補償ゲインKが“1”を超えて増加するように特性線が設定されている。
また、グリップロス度gが負値である場合も、0から第1の閾値−Th1までの間で補償ゲインKが“1”を維持し、第1の閾値−Th1から閾値−Th1′までの間で補償ゲインKが所定値Kaまで低下し、その後第2の閾値−Th2までの間で補償ゲインKが所定値Kaを維持し、第2の閾値−Th2を超えると、グリップロス度gの絶対値の増加に応じて比較的急な傾きで補償ゲインKが“1”を超えて増加するように特性線が設定されている。
ステア判定部48は、車速Vx、操舵角δ及びヨーレートγが入力されて、車両のアンダーステア状態を判定する。ここでは、車速Vx及び操舵角δに基づいて規範ヨーレートγ0を算出し、その規範ヨーレートγ0とヨーレートセンサ42で検出した実ヨーレートγとを比較を行うことにより、車両がアンダーステア状態にあるか否かを判定する。
先ず、車速Vx及び操舵角δに基づいて、次式(6)をもとに規範ヨーレートγ0を算出する。
先ず、車速Vx及び操舵角δに基づいて、次式(6)をもとに規範ヨーレートγ0を算出する。
γ0=1/(1+Ts)・1/(1+AVx2)・Vxδ/Lα …(6)
ここで、Tは時定数、sはラプラス演算子、Aはスタビリティファクタ、Lはホイールベース(L=Lf+Lr)、αはステアリングレシオであり、スタビリティファクタAは次式(7)をもとに求める。
A=−m/(2L2)・(Lf・Kf−Lr・Kr)/(Kf・Kr) …(7)
ここで、mは車両重量、Lfは車両重心点と前輪車輪間との距離、Lrは車両重心点と後輪車輪間との距離、Kfは前輪タイヤのコーナリングパワー、Krは後輪タイヤのコーナリングパワーである。
ここで、Tは時定数、sはラプラス演算子、Aはスタビリティファクタ、Lはホイールベース(L=Lf+Lr)、αはステアリングレシオであり、スタビリティファクタAは次式(7)をもとに求める。
A=−m/(2L2)・(Lf・Kf−Lr・Kr)/(Kf・Kr) …(7)
ここで、mは車両重量、Lfは車両重心点と前輪車輪間との距離、Lrは車両重心点と後輪車輪間との距離、Kfは前輪タイヤのコーナリングパワー、Krは後輪タイヤのコーナリングパワーである。
そして、上記(6)式及び(7)式をもとに算出した規範ヨーレートγ0の絶対値と、実ヨーレートγの絶対値との比較を行い、|γ|−|γ0|<0であるときに、車両がアンダーステア状態にあると判定し、選択部52に対してアンダーステア判定信号Sを出力する。一方、|γ|−|γ0|≧0であるときには、選択部52に対するアンダーステア判定信号Sの出力を停止する。
このような構成により、車両がアンダーステア状態であるときには、選択部52で、補償ゲイン算出部51で算出される補償ゲインKが選択され、車両がアンダーステア状態でないときには、選択部52で、補償ゲインK=1が選択されることになる。
また、アクティブリターン補償部40は、車速センサ16で検出した車速Vxと、操舵角センサ18で検出した操舵角δと、操舵角δを微分した微分値である舵角速度ωhとに基づいて、アクティブリターン補償値HRを算出する。
また、アクティブリターン補償部40は、車速センサ16で検出した車速Vxと、操舵角センサ18で検出した操舵角δと、操舵角δを微分した微分値である舵角速度ωhとに基づいて、アクティブリターン補償値HRを算出する。
なお、舵角速度ωhは、角速度演算部31で演算したモータ角速度ωm、或いは舵角速度センサを設け、その舵角速度センサの検出値を利用することもできる。
一般に、自動車の操舵ハンドルは、セルフアライニングトルクによって中立点に戻ろうとするが、電動パワーステアリング装置においては、操舵補助用のモータの回転を、減速ギヤを介して舵取り機構に伝達しているため、モータの慣性モーメントや減速ギヤの摩擦等が影響し、特に低速走行時における操舵ハンドルの戻りが悪くなる。そのため、特に低速走行時には、操舵ハンドルを中立点に戻すようにモータを制御する必要がある。この制御は、一般にハンドル戻し制御(アクティブリターン)と呼ばれる。
このアクティブリターン補償部40は、操舵補助電流指令値Irefに対して印加するハンドル戻し制御信号として、アクティブリターン補償値HRを出力するものである。
一般に、自動車の操舵ハンドルは、セルフアライニングトルクによって中立点に戻ろうとするが、電動パワーステアリング装置においては、操舵補助用のモータの回転を、減速ギヤを介して舵取り機構に伝達しているため、モータの慣性モーメントや減速ギヤの摩擦等が影響し、特に低速走行時における操舵ハンドルの戻りが悪くなる。そのため、特に低速走行時には、操舵ハンドルを中立点に戻すようにモータを制御する必要がある。この制御は、一般にハンドル戻し制御(アクティブリターン)と呼ばれる。
このアクティブリターン補償部40は、操舵補助電流指令値Irefに対して印加するハンドル戻し制御信号として、アクティブリターン補償値HRを出力するものである。
図10は、アクティブリターン補償部40の構成を示すブロック図である。
この図10に示すように、アクティブリターン補償部40は、操舵角δに基づいて所定関数でハンドル戻し基本電流値Irを出力するハンドル戻し基本電流回路40aと、車速Vxを入力して所定関数により車速Vxに応じた車速感応ゲインGvを出力する車速感応ゲイン出力回路40bと、舵角速度ωhを入力して所定関数により舵角速度ωhに応じた舵角速度感応ゲインGωを出力する舵角速度感応ゲイン出力回路40cと、ハンドル戻し基本電流回路40aからのハンドル戻し基本電流値Irとゲイン回路40bからの車速感応ゲインGvとを乗算し、その結果Irvを出力する乗算器40dと、乗算器40dからの出力Irvと舵角速度感応ゲインGωとを乗算し、アクティブリターン補償値HRを出力する乗算器40eとで構成されている。
この図10に示すように、アクティブリターン補償部40は、操舵角δに基づいて所定関数でハンドル戻し基本電流値Irを出力するハンドル戻し基本電流回路40aと、車速Vxを入力して所定関数により車速Vxに応じた車速感応ゲインGvを出力する車速感応ゲイン出力回路40bと、舵角速度ωhを入力して所定関数により舵角速度ωhに応じた舵角速度感応ゲインGωを出力する舵角速度感応ゲイン出力回路40cと、ハンドル戻し基本電流回路40aからのハンドル戻し基本電流値Irとゲイン回路40bからの車速感応ゲインGvとを乗算し、その結果Irvを出力する乗算器40dと、乗算器40dからの出力Irvと舵角速度感応ゲインGωとを乗算し、アクティブリターン補償値HRを出力する乗算器40eとで構成されている。
すなわち、ハンドル戻し基本電流値Irは、操舵角δに応じて算出され、このハンドル戻し基本電流値Irが、車速感応ゲインGvによって車速Vxが大きいほど小さく補正されると共に、舵角速度感応ゲインGωによって舵角速度ωhが大きいほど小さく補正される。
これにより、低速走行時にはアクティブリターン補償値HRを比較的大きく算出して、ハンドル戻りを確実に行うと共に、高い舵角速度でハンドルが戻される際にはアクティブリターン補償値HRを比較的小さく算出して、収斂性への悪影響を排除するなど、確実なハンドル戻しと収斂性制御とのバランスを考慮したハンドル戻し制御を行うことができる。
これにより、低速走行時にはアクティブリターン補償値HRを比較的大きく算出して、ハンドル戻りを確実に行うと共に、高い舵角速度でハンドルが戻される際にはアクティブリターン補償値HRを比較的小さく算出して、収斂性への悪影響を排除するなど、確実なハンドル戻しと収斂性制御とのバランスを考慮したハンドル戻し制御を行うことができる。
なお、車速Vx=0の据え切りでは、ハンドル戻し基本電流値Ir=0とし、ハンドル戻し制御は行わないものとする。
そして、慣性補償部34で算出された慣性補償値Iiと、アクティブリターン補償部40で算出されたアクティブリターン補償値HRを補償値補正部24で補正した補正アクティブリターン補償値HR´とが加算器37で加算され、この加算器37の加算出力と収斂性補償部33で算出された収斂性補償値Icとが加算器38で加算されて指令補償値Icomが算出される。
そして、慣性補償部34で算出された慣性補償値Iiと、アクティブリターン補償部40で算出されたアクティブリターン補償値HRを補償値補正部24で補正した補正アクティブリターン補償値HR´とが加算器37で加算され、この加算器37の加算出力と収斂性補償部33で算出された収斂性補償値Icとが加算器38で加算されて指令補償値Icomが算出される。
こうして算出された指令補償値Icomが操舵補助電流指令値演算部21から出力される操舵補助電流指令値Irefに加算器39で加算されて、補償後電流指令値Iref′が算出され、この補償後電流指令値Iref′がd−q軸電流指令値演算部25に出力される。
d−q軸電流指令値演算部25は、補償後操舵補助トルク指令値Iref′とモータ角速度ωmとに基づいてd軸電流指令値Idrefを算出するd軸電流指令値算出部61と、電気角変換部30から入力される電気角θe及びモータ角速度ωmに基づいてd−q軸誘起電圧モデルEMF(Electromotive Force)のd軸EMF成分ed(θ)及びq軸EMF成分eq(θ)を算出する誘起電圧モデル算出部62と、この誘起電圧モデル算出部62から出力されるd軸EMF成分ed(θ)及びq軸EMF成分eq(θ)とd軸電流指令値算出部61から出力されるd軸電流指令値Idrefと補償後操舵補助電流指令値Iref′とモータ角速度ωmとに基づいてq軸電流指令値Iqrefを算出するq軸電流指令値算出部63とを備えている。
d−q軸電流指令値演算部25は、補償後操舵補助トルク指令値Iref′とモータ角速度ωmとに基づいてd軸電流指令値Idrefを算出するd軸電流指令値算出部61と、電気角変換部30から入力される電気角θe及びモータ角速度ωmに基づいてd−q軸誘起電圧モデルEMF(Electromotive Force)のd軸EMF成分ed(θ)及びq軸EMF成分eq(θ)を算出する誘起電圧モデル算出部62と、この誘起電圧モデル算出部62から出力されるd軸EMF成分ed(θ)及びq軸EMF成分eq(θ)とd軸電流指令値算出部61から出力されるd軸電流指令値Idrefと補償後操舵補助電流指令値Iref′とモータ角速度ωmとに基づいてq軸電流指令値Iqrefを算出するq軸電流指令値算出部63とを備えている。
そして、d軸電流指令値算出部61で算出されたd軸電流指令値Idref及びq軸電流指令値算出部63で算出されたq軸電流指令値Iqrefが2相/3相変換部26に供給される。
この2相/3相変換部26では、入力されるd軸電流指令値Idref及びq軸電流指令値Iqrefを電気角変換部30から入力される電気角θeに基づいて2相/3相変換して3相モータ電流指令値Iaref、Ibref及びIcrefを算出し、算出したモータ電流指令値Iaref、Ibref及びIcrefをモータ電流制御部27に出力する。
この2相/3相変換部26では、入力されるd軸電流指令値Idref及びq軸電流指令値Iqrefを電気角変換部30から入力される電気角θeに基づいて2相/3相変換して3相モータ電流指令値Iaref、Ibref及びIcrefを算出し、算出したモータ電流指令値Iaref、Ibref及びIcrefをモータ電流制御部27に出力する。
モータ電流制御部27は、電動モータ12の3相コイルに供給されるモータ電流Ia、Ib及びIcを検出するモータ電流検出部70と、2相/3相変換部26から入力されるモータ電流指令値Iaref,Ibref及びIcrefからモータ電流検出部70で検出したモータ電流Ia、Ib及びIcを個別に減算して各相電流偏差ΔIa、ΔIb及びΔIcを求める減算器71a、71b及び71cと、求めた各相電流偏差ΔIa、ΔIb及びΔIcに対して比例積分制御を行って電圧指令値Va、Vb及びVcを算出する電流制御部72と、この電流制御部72から出力される電圧指令値Va、Vb及びVcに基づいてデューティ演算を行って電動モータ12の各相のデューティ比を算出してパルス幅変調(PWM)信号となるインバータ制御信号を形成するパルス幅変調制御部73と、このパルス幅変調制御部73から出力されるインバータ制御信号に基づいて3相モータ電流Ia、Ib及びIcを形成して電動モータ5に出力するインバータ74とを備えている。
次に、コントローラ15での動作を図11のフローチャートを参照して説明する。
まず、トルクセンサ14からの操舵トルクT、車速センサ16からの車速Vx、回転センサ17からのモータ回転角θm、操舵角センサ18からの操舵角δ、ヨーレートセンサ42からのヨーレートγ、横加速度センサ43からの横加速度Gyを読込む(ステップS1)。
まず、トルクセンサ14からの操舵トルクT、車速センサ16からの車速Vx、回転センサ17からのモータ回転角θm、操舵角センサ18からの操舵角δ、ヨーレートセンサ42からのヨーレートγ、横加速度センサ43からの横加速度Gyを読込む(ステップS1)。
次いで、入力した操舵トルクT及び車速Vxに基づき図3に示す操舵補助電流指令値算出マップを参照して操舵トルクT及び車速Vxに応じた操舵補助電流指令値Irefを算出する(ステップS2)。また、回転センサ17からのモータ回転角θmに基づいて角速度演算部31において電動モータ12の角速度ωmを演算し、角加速度演算部32において角加速度αmを演算する(ステップS3)。
次いで、操舵トルクT、操舵補助電流指令値Iref、モータ角速度ωm及びモータ角加速度αmをもとに、前記(2)式の演算を行ってセルフアライニングトルク検出値SATdを検出する(ステップS4)。
さらに、ヨーレートγ、横加速度Gyをもとに、前記(4)式の演算を行って横力Fyを算出し、算出した横力Fyとトレールεnとに基づいて前記(3)式の演算を行うことにより、セルフアライニングトルク推定値SATpを推定し(ステップS5)、SAT検出値SATd及びSAT推定値SATpの偏差からグリップロス度gを検出する(ステップS6)。
さらに、ヨーレートγ、横加速度Gyをもとに、前記(4)式の演算を行って横力Fyを算出し、算出した横力Fyとトレールεnとに基づいて前記(3)式の演算を行うことにより、セルフアライニングトルク推定値SATpを推定し(ステップS5)、SAT検出値SATd及びSAT推定値SATpの偏差からグリップロス度gを検出する(ステップS6)。
続いて、車速Vx、操舵角δ及び舵角速度ωhをもとに、図10に示す処理を施してアクティブリターン補償値HRを算出する(ステップS7)。
また、車速Vx及び操舵角δに基づいて前記(6)式の演算を行って規範ヨーレートγ0を算出し、算出した規範ヨーレートγ0の絶対値と実ヨーレートγの絶対値とを比較することにより、車両がアンダーステア状態にあるか否かを判定する(ステップS8)。
また、車速Vx及び操舵角δに基づいて前記(6)式の演算を行って規範ヨーレートγ0を算出し、算出した規範ヨーレートγ0の絶対値と実ヨーレートγの絶対値とを比較することにより、車両がアンダーステア状態にあるか否かを判定する(ステップS8)。
その判定結果により、車両がアンダーステア状態であると判定したときには、上記グリップロス度gに基づき、図9に示す補償ゲイン算出マップを参照してアクティブリターン補償値HRを補正するための補償ゲインKを算出し、アンダーステア状態でないと判定したときには補償ゲインKを“1”とする(ステップS9)。そして、その補償ゲインKをアクティブリターン補償値HRに乗算して補正アクティブリターン補償値HR′を算出する(ステップS10)。
次いで、モータ角速度ωmに基づいてヨーレートの収斂性を補償する収斂性補償値Icを算出すると共に、モータ角加速度αmに基づいて電動モータ12の慣性により発生するトルク相当分を補償して慣性感又は制御応答性の悪化を防止する慣性補償値Iiを算出し(ステップS11)、収斂性補償値Ic及び慣性補償値Iiを加算すると共に、補正アクティブリターン補償値HR´を減算して補償値Icomを算出する(ステップS12)。
こうして算出した補償値Icomを操舵補助電流指令値Irefに加算して、補償後操舵補助電流指令値Iref′を算出する(ステップS13)。
そして、算出した補償後操舵補助電流指令値Iref′に基づいてd軸電流指令値Idrefを算出すると共に、q軸電流指令値Iqrefを算出し(ステップS14)、次いでd軸電流指令値Idref及びq軸電流指令値Iqrefを電気角θeに基づいて2相/3相変換して3相モータ電流Iaref、Ibref及びIcrefを算出する(ステップS15)。
そして、算出した補償後操舵補助電流指令値Iref′に基づいてd軸電流指令値Idrefを算出すると共に、q軸電流指令値Iqrefを算出し(ステップS14)、次いでd軸電流指令値Idref及びq軸電流指令値Iqrefを電気角θeに基づいて2相/3相変換して3相モータ電流Iaref、Ibref及びIcrefを算出する(ステップS15)。
次いで、3相モータ電流指令値Iaref、Ibref及びIcrefからモータ電流検出部70で検出したモータ電流Ia、Ib及びIcを減算して電流偏差ΔIa、ΔIb及びΔIcを算出し(ステップS16)、PI電流制御部72で算出した電流偏差ΔIa、ΔIb及びΔIcに対してPI制御処理を行って電圧指令値Va、Vb及びVcを算出する(ステップS17)。
最後に、算出電圧指令値Va、Vb及びVcをパルス幅変調してパルス幅変調信号を形成し、形成したパルス幅変調信号をインバータ74に出力する(ステップS18)。
これにより、インバータ74から3相のモータ駆動電流Ia、Ib及びIcが電動モータ12に出力され、電動モータ12が駆動制御されることにより、操舵トルクT及び車速Vxに応じた最適な操舵補助力を発生し、この操舵補助力を、減速ギヤ11を介してステアリングシャフト2に伝達する。
これにより、インバータ74から3相のモータ駆動電流Ia、Ib及びIcが電動モータ12に出力され、電動モータ12が駆動制御されることにより、操舵トルクT及び車速Vxに応じた最適な操舵補助力を発生し、この操舵補助力を、減速ギヤ11を介してステアリングシャフト2に伝達する。
したがって、車両がアンダーステア状態で、図9に示すように、グリップロスが生じていないかグリップロス度gが不感帯幅となる−Th1≦g≦+Th1内の値である場合には、補償ゲインKが“1”に設定され、この補償ゲインKが、乗算器52でアクティブリターン補償部40から出力されるアクティブリターン補償値HRに乗算されるので、アクティブリターン補償値HRがそのまま補正アクティブリターン補償値HR′として加算器37に入力される。
このため、指令値補償部22で、通常の収斂性補償値Ic、慣性補償値Ii及び補正アクティブリターン補償値HR´が算出され、収斂性補償値Ic及び慣性補償値Iiが加算されると共に、補正アクティブリターン補償値HR´が減算されて補償値Icomが算出される。そして、これが操舵補助電流指令値演算部21で算出された操舵補助電流指令値Irefに加算されて操舵状態に最適な指令値補償が行われ、運転者のステアリングホイール1の操舵操作を的確に補助することができる。
車両がアンダーステア状態であり、且つ−Th1≦g≦+Th1である状態から、グリップロス度gの絶対値が第1の閾値Th1を超えて増加すると、第2の閾値Th2未満であるときには、補償ゲイン算出部51で“1”より小さい補償ゲインKが算出される。そして、この補償ゲインKが選択部52で選択され、乗算器53で、アクティブリターン補償部40で算出されるアクティブリターン補償値HRに乗算される。
このため、アクティブリターン補償値HRが減少補正されて補正アクティブリターン補償値HR′となって、アクティブリターン補償が抑制されることになる。これにより、操舵反力を減少させて、操舵力を軽くするので、運転者にアンダーステア状態となってタイヤのグリップ力が失われ始めている状態であることを確実に感知させることができる。
この状態から、グリップロス度gの絶対値が第2の閾値Th2以上となると、補償ゲイン算出部51で算出される補償ゲインKがグリップロス度gの増加に応じて“1”を超えて増加し、この補償ゲインKが選択部52で選択されると共に、乗算器53で、アクティブリターン補償部40で算出されるアクティブリターン補償値HRに乗算される。
この状態から、グリップロス度gの絶対値が第2の閾値Th2以上となると、補償ゲイン算出部51で算出される補償ゲインKがグリップロス度gの増加に応じて“1”を超えて増加し、この補償ゲインKが選択部52で選択されると共に、乗算器53で、アクティブリターン補償部40で算出されるアクティブリターン補償値HRに乗算される。
したがって、乗算器52の出力である補正アクティブリターン補償値HR′は、補正前のアクティブリターン補償値HRより大きな値となる。その結果、操舵反力を増加させて、操舵力を重くすることになり、運転者のステアリングホイールの切り増し操舵を抑制させることができるので、グリップ力が失われた状態で切り増ししすぎることに起因して車両挙動が不安定となることを抑制することができる。
また、ここでは、操舵トルクT、アシストトルクTm、電動モータ12の角速度ωm及び角加速度αmに基づいて検出したSAT検出値SATdと、車両に発生する横力Fyに基づいて推定したSAT推定値SATpとの偏差からグリップロス度gを算出している。ここで、タイヤのグリップ力が失われた場合、これに対するセルフアライニングトルクの応答性は、グリップ力が失われたことに対するヨーレートの応答性に比較して速い。
したがって、セルフアライニングトルクを用いてグリップロス度を算出することによって、ヨーレートを用いてグリップロス度を算出する場合に比較してより早い段階で、グリップロス度の変化を検出することができる。よって、セルフアライニングトルクを用いてグリップロス度を算出することにより、グリップ状況をより高精度に検出することができる。
そのため、このようにして検出したグリップ状況にしたがって操舵補助電流指令値Irefを補正し、操舵補助力を低減することによって、より的確に操舵補助力を発生させることができる。また、グリップロス度に応じて切り増しし過ぎることを回避することができるので、グリップ力が失われることに起因して車両挙動が不安定となることを抑制することができ、車両走行安定性を向上させることができる。
さらに、アクティブリターン補償値を補正することにより、操舵補助指令値を直接補正する場合に比較して、運転者にリニアな反力感を伝えることができる。
また、車両がアンダーステア状態であっても、上述のようにグリップロス度が不感帯幅内の値である場合には、アクティブリターン補償値の補正は行わないので、グリップロスが発生していないか比較的グリップロスが小さく悪影響を及ぼすことのない状況であるにもかかわらず操舵補助力が抑制され、十分な操舵補助力が発生されないことに起因して運転者に違和感を与えることを回避することができる。
また、車両がアンダーステア状態であっても、上述のようにグリップロス度が不感帯幅内の値である場合には、アクティブリターン補償値の補正は行わないので、グリップロスが発生していないか比較的グリップロスが小さく悪影響を及ぼすことのない状況であるにもかかわらず操舵補助力が抑制され、十分な操舵補助力が発生されないことに起因して運転者に違和感を与えることを回避することができる。
またさらに、車両がオーバーステア状態である場合など、グリップロスが発生していても車両挙動に悪影響を与えることのない状況である場合には、アクティブリターン補償値の補正は行わないので、十分な操舵補助力を発生させて運転者に違和感のない操舵補助制御を行うことができる。
ここで、操舵トルクセンサ14が操舵トルク検出手段に対応し、図11の処理が制御手段に対応し、このうちステップS2の処理が操舵補助電流指令値演算部21に対応し、ステップS4の処理がSAT検出部35(セルフアライニングトルク検出手段)に対応し、ステップS5の処理がSAT推定部41(セルフアライニングトルク推定手段)に対応し、ステップS6の処理がグリップロス度検出部23(グリップロス度検出手段)に対応し、ステップS7の処理がアクティブリターン補償部40(アクティブリターン補償手段)に対応し、ステップS8の処理がステア判定部48(ステア状態判定手段)に対応し、ステップS9及びS10の処理が補償値補正部24(補償値補正手段)に対応し、ステップS3、S4、S7、S10〜S13の処理が指令値補償部22に対応している。
ここで、操舵トルクセンサ14が操舵トルク検出手段に対応し、図11の処理が制御手段に対応し、このうちステップS2の処理が操舵補助電流指令値演算部21に対応し、ステップS4の処理がSAT検出部35(セルフアライニングトルク検出手段)に対応し、ステップS5の処理がSAT推定部41(セルフアライニングトルク推定手段)に対応し、ステップS6の処理がグリップロス度検出部23(グリップロス度検出手段)に対応し、ステップS7の処理がアクティブリターン補償部40(アクティブリターン補償手段)に対応し、ステップS8の処理がステア判定部48(ステア状態判定手段)に対応し、ステップS9及びS10の処理が補償値補正部24(補償値補正手段)に対応し、ステップS3、S4、S7、S10〜S13の処理が指令値補償部22に対応している。
また、ステップS14の処理がd−q軸電流指令値演算部25に対応し、ステップS15の処理が2相/3相変換部26に対応し、ステップS16の処理が減算器71a〜71cに対応し、ステップS17の処理がPI電流制御部72に対応し、ステップS18の処理がパルス幅変調部73に対応している。
なお、上記実施形態においては、補償ゲイン算出部51でグリップロス度gに基づいて補償ゲインKを算出する補償ゲイン算出マップの特性線を、図9に示すように線形に設定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、車両特性に合わせて設定してもよい。例えば、閾値Th1´から閾値Th2までの間の特性を所定値で固定しないようにしたり、ゲインを負にするなど、特性線自体を非線形に設定したりしてもよい。
なお、上記実施形態においては、補償ゲイン算出部51でグリップロス度gに基づいて補償ゲインKを算出する補償ゲイン算出マップの特性線を、図9に示すように線形に設定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、車両特性に合わせて設定してもよい。例えば、閾値Th1´から閾値Th2までの間の特性を所定値で固定しないようにしたり、ゲインを負にするなど、特性線自体を非線形に設定したりしてもよい。
また、上記実施形態においては、車両の横加速度Gyを横加速度センサ43で検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ステアリング機構SMの操舵角と車速Vxとに基づいて横加速度Gyを推定するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態においては、ヨーレートγ、横加速度Gy及び車両運動モデルに基づいて横力Fyを推定し、この横力Fyに基づいて実際に車両に作用するセルフアライニングトルクを推定する場合について説明したが、ハブ等に横力センサを設け、この横力センサで直接横力を検出し、これを用いてセルフアライニングトルク推定値SATpを算出してもよい。
さらに、上記実施形態においては、ヨーレートγ、横加速度Gy及び車両運動モデルに基づいて横力Fyを推定し、この横力Fyに基づいて実際に車両に作用するセルフアライニングトルクを推定する場合について説明したが、ハブ等に横力センサを設け、この横力センサで直接横力を検出し、これを用いてセルフアライニングトルク推定値SATpを算出してもよい。
また、横力Fyを用いずに、水平面における車両運動モデルと、車速Vx及び操舵角δとを用いてセルフアライニングトルクを推定してもよい。
ヨーレートγとスリップ角βと車速Vxと操舵角δとの関係は、次式(8)及び(9)で表すことができる。
mVx・(dβ/dt)=−{mVx+[(Kf・Lf−Kr・Lr)/Vx]}・γ−(Kf+Kr)・β+Kf・δ/n ……(8)
I・(dγ/dt)=−[(Kf・Lf2+Kr・Lr2)/Vx]・γ+(−Kf・Lf+Kr・Lr)・β+Kf・Lf・δ/n ……(9)
なお、(8)及び(9)式中の、Iは車両重心を通るZ軸回りの慣性モーメント、nはオーバーオールステアリングギア比、δ/nは前輪実舵角、βは車体重心のスリップ角である。
ヨーレートγとスリップ角βと車速Vxと操舵角δとの関係は、次式(8)及び(9)で表すことができる。
mVx・(dβ/dt)=−{mVx+[(Kf・Lf−Kr・Lr)/Vx]}・γ−(Kf+Kr)・β+Kf・δ/n ……(8)
I・(dγ/dt)=−[(Kf・Lf2+Kr・Lr2)/Vx]・γ+(−Kf・Lf+Kr・Lr)・β+Kf・Lf・δ/n ……(9)
なお、(8)及び(9)式中の、Iは車両重心を通るZ軸回りの慣性モーメント、nはオーバーオールステアリングギア比、δ/nは前輪実舵角、βは車体重心のスリップ角である。
セルフアライニングトルクはヨーレートγとスリップ角βの関数として表すことができることから、ヨーレートγとスリップ角βとを車速Vxと操舵角δとの関数として整理すれば、セルフアライニングトルク推定値SATpを求めることができる。車速Vxと操舵角δよりセルフアライニングトルク推定値SATpを求める場合には、横力検出部44を削除し、車速センサ16で検出した車速Vxと操舵角センサ18で検出した操舵角δとをSAT推定部41に入力し、このSAT推定部41で、図12の特性図にしたがってSAT推定値SATpを算出すればよい。
さらに、上記実施形態においては、SAT検出部35で、モータ角速度ωm、モータ角加速度αm、操舵トルクT及び操舵補助電流指令値Irefに基づいてSAT検出値SATdを検出する場合について説明したが、操舵補助電流指令値Irefに代えて、モータ電流検出部70で検出したモータ電流Ia〜Icを3相/2相変換してq軸電流Iqを算出し、このq軸電流Iqとモータ角加速度αmとに基づいて下記(10)式の演算を行って算出したモータアシストトルクTmaを適用するようにしてもよい。
Tma= Kt・Iq−Jm・αm ……(10)
ここで、Ktはモータのトルク定数、Jmはモータのロータ部の慣性モーメントである。
この他、電動モータ12の出力軸、減速ギヤ11の入出力軸等のトルク伝達軸に磁歪式トルクセンサなどのトルクセンサを配設し、このトルクセンサで検出したモータアシストトルクTmaを適用するようにしてもよい。
ここで、Ktはモータのトルク定数、Jmはモータのロータ部の慣性モーメントである。
この他、電動モータ12の出力軸、減速ギヤ11の入出力軸等のトルク伝達軸に磁歪式トルクセンサなどのトルクセンサを配設し、このトルクセンサで検出したモータアシストトルクTmaを適用するようにしてもよい。
さらにまた、上記実施形態においては、ステアリングシャフトに減速機構を介して電動モータを連結したコラム形式の電動パワーステアリング装置に本発明を適用した場合について説明したが、ステアリングギヤ機構に減速機構を介して電動モータを連結するピニオン形式の電動パワーステアリング装置やラック軸に減速機を介して電動モータを連結するラック形式の電動パワーステアリング装置にも本発明を適用することができる。
なおさらに、上記実施形態においては、本発明をブラシレスモータに適用した場合について説明したが、ブラシ付きモータに適用することもできる。この場合、例えば、モータの逆起電力からモータ角速度ωmを推定すればよい。
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、12…電動モータ、14…操舵トルクセンサ、15…コントローラ、17…回転センサ、16…車速センサ、18…操舵角センサ、21…操舵補助電流指令値演算部、22…指令値補償部、23…グリップロス検出部、24…補償値補正部、25…d−q軸電流指令値演算部、26…モータ電流制御部、35…SAT検出部、40…アクティブリターン補償部、40a…ハンドル戻し基本電流回路、40b…車速感応ゲイン出力回路、40c…舵角速度感応ゲイン出力回路、41…SAT推定部、42…ヨーレートセンサ、43…横加速度センサ、44…横力検出部、48…ステア判定部、51…補償ゲイン算出部、52…選択部、53…乗算器
Claims (6)
- 転舵輪を転舵するステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記ステアリング機構に操舵補助力を付与する電動モータと、前記操舵トルクに基づいて操舵補助電流指令値を演算し、演算した操舵補助電流指令値に基づいて前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動パワーステアリング装置であって、
車両のアンダーステア状態を判定するステア状態判定手段と、タイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度を検出するグリップロス度検出手段と、前記操舵補助電流指令値に対してアクティブリターン補償を行うことで、ハンドルを中立に戻すハンドル戻し制御を行うアクティブリターン補償手段と、前記ステア状態判定手段でアンダーステア状態であると判定したとき、前記グリップロス度検出手段で検出したグリップロス度に基づいて前記アクティブリターン補償手段のアクティブリターン補償値を補正する補償値補正手段とを備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記補償値補正手段は、前記ステア状態判定手段でアンダーステア状態であると判定しており、前記グリップロス度が第1の閾値よりも大きく且つ第2の閾値以下であるときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値を減少補正するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記補償値補正手段は、前記ステア状態判定手段でアンダーステア状態であると判定しており、前記グリップロス度が第1の閾値よりも大きく且つ第2の閾値以下であるときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値に1以下のゲインを乗算して減少補正するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記補償値補正手段は、前記ステア状態判定手段でアンダーステア状態であると判定しており、前記グリップロス度が前記第2の閾値を超えているときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値を増加補正するように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記補償値補正手段は、前記ステア状態判定手段でアンダーステア状態であると判定しており、前記グリップロス度が前記第2の閾値を超えているときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値に1を超えるゲインを乗算して増加補正するように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記転舵輪側に発生するセルフアライニングトルクを検出するセルフアライニングトルク検出手段と、車両の横力を検出する横力検出手段と、該横力検出手段で検出した横力に基づいてセルフアライニングトルクを推定するセルフアライニングトルク推定手段とを備え、前記グリップロス度検出手段は、前記セルフアライニングトルク検出手段で検出したセルフアライニングトルク検出値と、前記セルフアライニングトルク推定手段で推定したセルフアライニングトルク推定値とに基づいてグリップロス度を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007322231A JP2009143368A (ja) | 2007-12-13 | 2007-12-13 | 電動パワーステアリング装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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ID=40914534
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2015170559A1 (ja) * | 2014-05-08 | 2015-11-12 | 日本精工株式会社 | 電動パワーステアリング装置 |
CN114919653A (zh) * | 2022-06-16 | 2022-08-19 | 上汽通用五菱汽车股份有限公司 | 车辆控制方法、车辆及计算机可读存储介质 |
-
2007
- 2007-12-13 JP JP2007322231A patent/JP2009143368A/ja active Pending
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US9771097B2 (en) | 2014-05-08 | 2017-09-26 | Nsk Ltd. | Electric power steering apparatus |
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