提案されている半導体装置の製造方法においては、NH3プラズマ処理を行った後、半導体ウェハ310を反応室314内から搬出する際に、平板電極316への高周波電力の印加を中止していた。平板電極316に高周波電力を印加した状態で半導体ウェハ310を反応室314内から搬出した場合には、プラズマ318が乱れて異常放電が起こり、パーティクルが大量に発生する虞があるためである。このため、提案されている半導体装置の製造方法においては、反応室314内から半導体ウェハ310を搬出する前に、平板電極316への高周波電力の印加を中止し、反応室314内にプラズマ318が存在していない状態で、反応室314内から半導体ウェハ310を搬出していた。提案されている半導体装置の製造方法においては、半導体ウェハ310上に多数のパーティクルが付着してしまう場合があった。
本願発明者は鋭意検討した結果、反応室内にプラズマを存在させた状態で、反応室内への半導体ウェハの搬入、プラズマ処理、及び反応室内からの半導体ウェハの搬出を行うことに想到した。プラズマはパーティクルを捕捉する機能を有している。本願発明によれば、プラズマによりパーティクルが捕捉された状態で、反応室内への半導体ウェハの搬入、プラズマ処理、及び反応室内からの半導体ウェハの搬出が行われるため、半導体ウェハ上にパーティクルが付着するのを防止することが可能となる。
[一実施形態]
本発明の第1実施形態による半導体装置の製造方法を図1乃至図18を用いて説明する。 [半導体製造装置]
本実施形態による半導体装置の製造方法を説明するに先立って、本実施形態においてプラズマ処理を行う際に用いられる半導体製造装置について図1及び図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態において用いられる半導体製造装置を示す概略図である。
半導体製造装置2としては、例えばHDP−CVD(High Density Plasma Chemical Vapor Deposition、高密度プラズマ化学気相堆積)装置を用いることができる。より具体的には、誘導結合型プラズマ(Inductively Coupled Plasma、ICP)CVD装置を用いることができる。
図1に示すように、プラズマ処理を行う際に用いられる半導体製造装置2は、半導体ウェハ(半導体基板)10が搬入されるロードロック室202と、半導体ウェハ10を搬送するロボット204が内部に設けられた真空搬送室206と、半導体ウェハ10に対してプラズマ処理が行われるプラズマ発生室208と、半導体ウェハ10が搬出されるロードロック室210とを有している。なお、ロードロック室210に半導体ウェハ10を搬入することも可能である。また、ロードロック室202から半導体ウェハ10を搬出することも可能である。
ロードロック室202,210、真空搬送室206及びプラズマ発生室208には、ロードロック室202,210、真空搬送室206及びプラズマ発生室208をそれぞれ真空排気するための配管212が設けられている。
プラズマ発生室208に設けられた反応室(チャンバ)214には、反応室214内に所定のガスを導入するためのガスユニット216が接続されている。
ガスユニット216と反応室214との間の配管219には、バルブ220が設けられている。
図2は、本実施形態において用いられる半導体製造装置のプラズマ発生室を示す概略図である。
図2に示すように、例えばアルミニウムより成る反応室(チャンバ)214内には、例えば酸化アルミニウム(アルミナ)より成るサセプタ215が設けられている。サセプタ215は、半導体ウェハ10を載置するためのものである。サセプタ215には、バイアスとしての低周波電力を印加することが可能になっており、サセプタ215にバイアスを印加すると、サセプタ215を介して半導体ウェハ10にバイアスが印加されることとなる。反応室214の外側には、反応室214内にプラズマを生成するためのコイル(電極)216が設けられている。コイル216に高周波電力を印加すると、反応室214内に導入されたガスが励起され、これにより反応室214内にプラズマが生成される。そして、バイアスとしての低周波電力をサセプタ215に印加すると、プラズマ218が半導体ウェハ10上に照射される。
本実施形態では、プラズマ処理を行う際に用いる半導体製造装置2として誘導結合型プラズマCVD装置が用いられるため、半導体ウェハ10から比較的離れた位置にプラズマ218が生成される。このため、本実施形態では、反応室214内にプラズマ218が生成されている状態を維持したまま、反応室214内への半導体ウェハ10の搬入、プラズマ処理及び反応室214からの半導体ウェハ10の搬出を行うことが可能である。本実施形態によれば、プラズマ218によりパーティクル(図示せず)が捕捉されている状態で反応室214内への半導体ウェハ10の搬入、プラズマ処理及び反応室214からの半導体ウェハ10の搬出が行われるため、パーティクルが半導体ウェハ10の表面に付着するのを防止することが可能となる。
なお、ここでは、プラズマ処理を行う際に用いる半導体製造装置2として誘導結合型プラズマCVD装置を用いる場合を例に説明したが、プラズマ処理を行う際に用いる半導体製造装置は誘導結合型プラズマCVD装置に限定されるものではない。半導体ウェハ10から比較的に離れた位置にプラズマが生成される半導体製造装置を、プラズマ処理を行う際に適宜用いることができる。
(半導体装置の製造方法)
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法を図3乃至図18を用いて説明する。図3乃至図14は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
まず、図3(a)に示すように、例えばシリコンより成る半導体基板(半導体ウェハ)10に、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法により、素子領域を画定する素子分離領域12を形成する。
なお、素子分離領域12の形成方法はSTI法に限定されるものではない。例えばLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)法により素子分離領域12を形成してもよい。
次に、イオン注入法により、半導体基板10内にドーパント不純物を導入することにより、例えばP型のウェル14を適宜形成する。
次に、例えば熱酸化法により、素子領域上に膜厚10nmのゲート絶縁膜16を形成する。
次に、例えばCVD法により、膜厚180nmのポリシリコン膜18を形成する。かかるポリシリコン膜18は、ゲート電極等となるものである。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、ポリシリコン膜18をパターニングする。こうして、ポリシリコン膜より成るゲート電極18が形成される。
次に、ゲート電極18をマスクとし、イオン注入法により、ゲート電極18の両側の半導体基板10内に例えばN型のドーパント不純物を導入する。これにより、エクステンションソース/ドレインの浅い領域を構成するエクステンション領域20が形成される。
次に、全面に、例えばCVD法により、膜厚100nmのシリコン酸化膜を形成する。
次に、シリコン酸化膜を異方性エッチングする。こうして、ゲート電極18の側壁部分に、シリコン酸化膜より成るサイドウォール絶縁膜22が形成される。
次に、サイドウォール絶縁膜22が形成されたゲート電極18をマスクとし、イオン注入法により、ゲート電極18の両側の半導体基板10内にN型のドーパント不純物を導入する。これにより、エクステンションソース/ドレインの深い領域を構成する不純物拡散層24が形成される。エクステンション領域20と深い不純物拡散層24とによりソース/ドレイン拡散層26が構成される。
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、コバルト等より成る高融点金属層(図示せず)を形成する。
次に、熱処理を行うことにより、半導体基板10の表層部と高融点金属層とを反応させるとともに、ゲート電極18の上部と高融点金属層とを反応させる。
次に、未反応の高融点金属層を例えばウエットエッチングにより除去する。
こうして、ソース/ドレイン拡散層26上にコバルトシリサイドより成るソース/ドレイン電極28aが形成される。また、ゲート電極18の上部にコバルトシリサイドより成るシリサイド層28bが形成される。
こうして、図3(a)に示すように、ゲート電極18とソース/ドレイン拡散層26とを有するトランジスタ30が形成される。
次に、全面に、例えばプラズマCVD法により、例えば膜厚100nmのSiONより成る絶縁膜(カバー膜)32を形成する。
次に、全面に、例えばプラズマTEOSCVD法により、例えば膜厚1.1μmのシリコン酸化膜より成る層間絶縁膜34を形成する。
次に、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学的機械的研磨)法により、層間絶縁膜34の表面を平坦化する。こうして、例えば膜厚800nmの層間絶縁膜が形成される(図3(b)参照)。
次に、図3(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用い、ソース/ドレイン電極28aに達するコンタクトホール36を形成する。
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚30nmのTi膜を形成する。
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚50nmのTiN膜を形成する。これらTi膜とTiN膜とにより密着層38が構成される。
次に、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚300nmのタングステン膜40を形成する(図4(a)参照)。
次に、例えばCMP法により、層間絶縁膜34の表面が露出するまでタングステン膜40及び密着層38を研磨する。こうして、コンタクトホール36内に、タングステン膜より成る導体プラグ40が埋め込まれる。タングステン膜40及び密着層38を研磨する際には、タングステン膜40及び密着層38が過度に研磨され、図4(b)に示すように、導体プラグ40の上面の高さが層間絶縁膜34の上面の高さより低くなる。かかる場合には、導体プラグ40が埋め込まれた箇所に凹部42が形成されることとなる。かかる凹部42の深さは、例えば20nm程度である。
次に、図1及び図2を用いて上述した半導体製造装置2を用意する。
次に、半導体製造装置2(図1及び図2参照)の反応室214内に、Arガスを導入する。Arガスの流量は、例えば100sccm程度とする。
また、半導体基板10を、外部からロードロック室202を介して真空搬送室206内に搬入する。なお、ロードロック室210を介して半導体基板10を真空搬送室206内に搬入することも可能である。
次に、反応室214内にプラズマを生成するための高周波電力を、半導体製造装置2のプラズマ発生室208に設けられたコイル(電極)216に印加する。コイル216に印加する高周波電力は、例えば13.56MHz、1000Wとする。成膜室214内の圧力は、例えば15mTorrとする。こうして、反応室214内においてArガスが励起され、Arプラズマが反応室214内に生成される。
次に、コイル216への高周波電力の印加を中断することなく、半導体基板10を真空搬送室206内から反応室214内に搬入する。即ち、Arプラズマが反応室214内に生成されている状態で、半導体基板10を反応室214内に搬入する。成膜室214内にプラズマ218が生成されている状態で半導体基板10を反応室214内に搬入するため、パーティクルがプラズマ218により捕捉されている状態で半導体基板10が反応室214内に搬入されることとなり、半導体基板10へのパーティクルの付着が防止される。
次に、コイル216への高周波電力の印加を中断することなく、反応室214内にNH3(アンモニア)ガスを導入する。NH3ガスの流量は、200sccm程度とする。また、反応室214内へのArガスの導入を中止する。コイル216に印加する高周波電力は、例えば1000Wのまま維持する。また、反応室214内の圧力は、例えば15mTorrのまま維持する。コイル216への高周波電力の印加を中断しないため、パーティクルがプラズマ218により捕捉されている状態が維持され、半導体基板10へのパーティクルの付着が防止される。
次に、コイル216への高周波電力の印加を中断することなく、バイアスとしての低周波電力を、サセプタ215を介して半導体基板10に印加する。かかるバイアスは、半導体基板10上にNH3プラズマが十分に照射されるようにするためのものである。バイアスとして印加する低周波電力の周波数は、例えば4MHz程度とする。こうして、図4(c)に示すように、NH3ガスを用いて発生させたプラズマ(NH3プラズマ)が、半導体基板10上に形成された層間絶縁膜34の表面に照射される(NH3プラズマ処理)。本実施形態において、NH3プラズマ処理を行うのは、層間絶縁膜34の表面の酸素原子をNH基に結合させることにより、後工程で層間絶縁膜34上にTi膜44を形成する際に、Ti原子が層間絶縁膜34の表面の酸素原子により捕捉されるのを防止するためである。コイル216への高周波電力の印加が維持されているため、プラズマ218によりパーティクルが捕捉されている状態が維持され、半導体基板10へのパーティクルの付着が防止される。
図15は、バイアスとして印加する低周波電力とシリコン酸化膜のエッチング量との関係を示すグラフである。図15における横軸はバイアスとして印加する低周波電力の大きさを示しており、図15における縦軸はシリコン酸化膜のエッチング量を示している。バイアスの印加時間は、3分間とした。また、バイアスとして印加する低周波電力の大きさは、500Wとした。
図15から分かるように、バイアスとして印加する低周波電力が大きくなるに伴って、シリコン酸化膜のエッチング量が大きくなる。即ち、バイアスとして印加する低周波電力を大きくするに伴って、NH3プラズマ処理の効果が大きくなる。
バイアスとして印加する低周波電力をあまりに大きくした場合には、シリコン酸化膜が過度にエッチングされ、表面の平坦性が得られなくなる。従って、シリコン酸化膜が適度にエッチングされ、シリコン酸化膜が過度にエッチングされないように、バイアスの大きさを設定することが望ましい。
図16は、バイアスとして印加する低周波電力の大きさとTi膜における(002)配向のピークの積分強度との関係を示すグラフである。図16における横軸は、バイアスとして印加する低周波電力の大きさを示している。図16における縦軸は、X線回折(XRD、X-ray Diffraction)装置を用いてロッキングカーブ法により測定された、Ti膜における(002)配向のピークの積分強度を示している。試料としては、半導体基板上に形成されたシリコン酸化膜の表面に対してNH3プラズマ処理を行い、かかるシリコン酸化膜上にTi膜を形成したものを用いた。図16において●印を用いて示したプロットは、半導体ウェハの中心部についての測定結果であり、図16において▲印を用いて示したプロットは、半導体ウェハの上端部についての測定結果である。
図16から分かるように、バイアスとして印加する低周波電力の大きさが大きくなるに伴ってTi膜の結晶性が向上し、バイアスとして印加する低周波電力の大きさが過度に大きくなるとTi膜の結晶性が劣化する。
層間絶縁膜34が過度にエッチングされるのを防止するとともに、結晶性の良好な膜を層間絶縁膜34上に形成することを可能にすべく、本実施形態では、バイアスとして半導体基板10に印加する低周波電力の大きさを50W程度とする。
図17は、NH3プラズマによる処理時間とIr膜の結晶性との関係を示すグラフである。図17における横軸は、NH3プラズマによる処理時間を示している。図17における縦軸は、X線回折装置を用いてロッキングカーブ法により測定された、Ir膜における(111)配向のピークの半値幅を示している。試料としては、半導体基板上に形成されたシリコン酸化膜の表面に対してNH3プラズマ処理を行い、かかるシリコン酸化膜上にTi膜を形成し、かかるTi膜を窒化することによりTiN膜を形成し、かかるTiN膜上に窒化チタンアルミニウム(TiAlN)膜を形成し、かかるTiAlN膜上にイリジウム(Ir)膜を形成したものを用いた。図17において●印を用いて示したプロットは、半導体ウェハの中心部についての測定結果であり、図17において▲印を用いて示したプロットは、半導体ウェハの上端部についての測定結果である。
NH3プラズマ処理を行わなかった場合、即ち、NH3プラズマによる処理時間が0秒の場合と、NH3プラズマ処理を行った場合とを比較すると、NH3プラズマ処理を行った場合には、Ir膜における(111)配向のピークの半値幅が著しく小さくなっている。このことは、NH3プラズマ処理を行うことにより、Ir膜の結晶性が極めて良好になることを意味している。
また、NH3プラズマ処理の時間を長くするに伴って、Ir膜における(111)配向のピークの半値幅が小さくなっている。このことは、NH3プラズマ処理の時間を長くするに伴って、Ir膜の結晶性が向上することを意味する。
図17から分かるように、180秒程度のNH3プラズマ処理を行えばIr膜の結晶性を十分に向上し得るため、本実施形態では、NH3プラズマ処理の時間を例えば180秒程度とする。
ところで、層間絶縁膜34の表面にNH3プラズマを照射している際に反応室214内にArガスを導入した場合には、Arにより層間絶縁膜34の表面がエッチングされてしまう。この場合には、後工程において、良質なTi膜44を層間絶縁膜34上に形成することが困難となる。このため、本実施形態では、NH3プラズマ処理を行っている際には、反応室214内にArガスを導入しない。
次に、半導体製造装置2のコイル216への高周波電力の印加を中断することなく、半導体基板10へのバイアスの印加を中止する。半導体基板10へのバイアスの印加を中止することにより、NH3プラズマ処理が終了することとなる。コイル216への高周波電圧の印加が維持されているため、NH3プラズマによりパーティクルが捕捉されている状態が維持され、半導体基板へのパーティクルの付着が防止される。
次に、コイル216への高周波電力の印加を中断することなく、反応室214内にArガスを導入する。Arガスの流量は、例えば100sccm程度とする。また、反応室214内へのNH3ガスの導入を中止する。コイル216に印加する高周波電力は、例えば13.56MHz、1000Wとする。成膜室214内の圧力は、例えば15mTorrとする。こうして、Arガスが励起され、Arプラズマが反応室214内に生成される。コイル216への高周波電力の印加が維持されているため、プラズマ218によりパーティクルが捕捉されている状態が維持され、半導体基板10へのパーティクルの付着が防止される。
次に、コイル216への高周波電力の印加を中断することなく、半導体基板10を反応室214内から真空搬送室206内へと搬出する。即ち、Arプラズマが反応室214内に生成されている状態で、半導体基板10を反応室214内から搬出する。反応室214内にプラズマ218が生成されている状態で半導体基板10を反応室214内から搬出するため、パーティクルがプラズマ218により捕捉されている状態で半導体基板10が反応室214内から搬出されることとなり、半導体基板10へのパーティクルの付着が防止される。
この後、真空搬送室206内の半導体基板10を、ロードロック室210を介して半導体製造装置2の外部に搬出する。なお、ロードロック室202を介して半導体基板10を半導体製造装置2の外部に搬出することも可能である。
こうして、プラズマ218によりパーティクルが捕捉されている状態で、半導体基板10の反応室214内への搬入、NH3プラズマ処理、半導体基板10の反応室214内からの搬出が行われるため、半導体基板10上へのパーティクルの付着を防止しつつ、半導体基板10上に形成された層間絶縁膜34に対してNH3プラズマ処理を行うことができる。
次に、全面に、例えばPVD(物理蒸着、Physical Vapor Deposition)装置を用い、例えばDCスパッタリング法により、膜厚20nmのTi膜44を形成する(図5(a)参照)。Ti膜44は、自己配向性の強い物質より成る膜(自己配向膜)である。なお、本明細書中において自己配向性とは、下地の結晶性にかかわらず、自ずから所定の方向に配向する性質のことである。また、自己配向膜とは、下地の結晶性にかかわらず、自ずから所定の方向に配向する膜のことである。層間絶縁膜34の表面が上記のように処理されているため、層間絶縁膜34上に堆積されたTi原子は酸素原子により捕捉されることなく、層間絶縁膜34の表面を自在に移動することができる。このため、c軸方向に強く自己配向された結晶性の良好なTi膜44が層間絶縁膜34上に形成される。
Ti膜44を形成する際の条件は、例えば以下の通りとする。成膜室144内の圧力は、0.3Paとする。成膜室214以内の雰囲気は、例えばAr雰囲気とする。基板温度は、例えば150℃とする。供給するDCパワーは、例えば1.4kWとする。DCパワーを供給する時間は、例えば14秒とする。
次に、例えばRTA(Rapid Thermal Annealing)法により、窒素雰囲気中にて熱処理を行う。熱処理温度は、例えば650℃とする。窒素ガスの流量は、例えば10slm(standard liter/min)とする。熱処理時間は、例えば120秒とする。この熱処理により、上述したTi膜44がTiN膜46となる(図5(b)参照)。ここで、Ti膜を窒化してTiN46膜を形成するのは、Ti膜44は酸化されやすい一方、TiN膜46は酸化されにくい膜、即ち、耐酸化性を有する膜であるためである。c軸方向に強く自己配向されたTi膜44を窒化するため、結晶性の良好なTiN膜(下地層)46が形成される。かかるTiN膜46は、後工程で形成される酸素バリア膜54の結晶性を良好にするとともに、かかる酸素バリア膜54と層間絶縁膜34との密着性を確保するためのものである。
なお、ここでは、TiN膜より成る下地層46を形成する場合を例に説明したが、かかる下地層46はTiN膜に限定されるものではない。酸素バリア膜54の結晶性を向上させるとともに、かかる酸素バリア膜54と層間絶縁膜34との密着性を確保し得る材料を、下地層46として適宜形成することができる。
次に、CMP法により、下地層46の表面を研磨する。こうして、表面が平坦化されたTiN膜(平坦化層)46が形成される(図5(c)参照)。本実施形態において、下地層46の表面を平坦化するのは、平坦化された下地層46上には、配向性の良好な膜を形成することが可能なためである。
なお、研磨により平坦化された下地層46の表面には、酸化物より成る変質層(図示せず)が存在している。
次に、図1及び図2を用いて上述した半導体製造装置2を用意する。
次に、半導体製造装置2の反応室214内に、Arガスを導入する。Arガスの流量は、例えば100sccm程度とする。
また、半導体基板10を、外部からロードロック室202を介して真空搬送室206内に搬入する。なお、ロードロック室210を介して半導体基板10を真空搬送室206内に搬入することも可能である。
次に、反応室214内にプラズマを生成するための高周波電力を、半導体製造装置2のプラズマ発生室208に設けられたコイル216に印加する。コイル216に印加する高周波電力は、例えば13.56MHz、1000Wとする。反応室214内の圧力は、例えば15mTorrとする。こうして、高周波電力によりArガスが反応室214内に励起され、Arプラズマが反応室214内に生成される。
次に、コイル216への高周波電力の印加を中断することなく、半導体基板10を反応室214内に搬入する。即ち、Arプラズマが反応室214内に生成されている状態で、半導体基板10を反応室214内に搬入する。成膜室214内にプラズマが生成されている状態で半導体基板10を反応室214内に搬入するため、パーティクルがプラズマ218により捕捉されている状態で半導体基板10が反応室214内に搬入され、半導体基板10へのパーティクルの付着が防止される。
次に、コイル216への高周波電力の印加を中断することなく、反応室214内にNH3ガスを導入する。NH3ガスの流量は、200sccm程度とする。また、反応室214内へのArガスの導入を中止する。コイル216に印加する高周波電力は、1000Wのまま維持する。また、反応室214内の圧力は、15mTorrのまま維持する。コイルへの高周波電力の印加を中断しないため、パーティクルがプラズマ218により捕捉されている状態が維持され、半導体基板10へのパーティクルの付着が防止される。
次に、コイル216への高周波電力の印加を中断することなく、バイアスとしての低周波電力を半導体基板10に印加する。かかるバイアスは、半導体基板10上にNH3プラズマが効率よく照射されるようにするためのものである。バイアスとして半導体基板10に印加する低周波電力は、例えば4MHz、50W程度とする。こうして、図6(a)に示すように、NH3ガスを用いて発生させたプラズマ(NH3プラズマ)が、半導体基板10上に形成された平坦化層(下地層)46の表面に照射される(NH3プラズマ処理)。NH3プラズマ処理の時間は、例えば3分間程度とする。本実施形態において、NH3プラズマ処理を行うのは、平坦化層46の表面に存在している変質層(図示せず)を除去し、後工程において平坦化層46上に良質な膜を生成することを可能とするためである。コイル216への高周波電力の印加が維持されているため、プラズマ218によりパーティクルが捕捉されている状態が維持され、半導体基板10へのパーティクルの付着が防止される。
次に、コイル216への高周波電力の印加を中断することなく、半導体基板10へのバイアスの印加を中止する。半導体基板10へのバイアスの印加を中止することにより、NH3プラズマ処理が終了することとなる。コイル216への高周波電力の印加が維持されているため、プラズマ218によりパーティクルが捕捉されている状態が維持され、半導体基板10へのパーティクルの付着が防止される。
次に、コイル216への高周波電力の印加を中断することなく、反応室214内にArガスを導入する。Arガスの流量は、例えば100sccm程度とする。また、反応室214内へのNH3ガスの導入を中止する。コイル216に印加する高周波電力は、例えば13.56MHz、1000Wとする。成膜室214内の圧力は、例えば15mTorrとする。こうして、反応室214内においてArガスが励起され、Arプラズマが反応室214内に生成される。コイル216への高周波電力の印加が維持されているため、プラズマ218によりパーティクルが捕捉されている状態が維持され、半導体基板10へのパーティクルの付着が防止される。
次に、コイル216への高周波電力の印加を中断することなく、半導体基板10を反応室214内から真空搬送室206内へと搬出する。即ち、Arプラズマが反応室214内に生成されている状態で、半導体基板10を反応室214内から搬出する。反応室214内にプラズマが生成されている状態で半導体基板10を反応室214内から搬出するため、パーティクルがプラズマ218により捕捉されている状態で半導体基板10が反応室214内から搬出されることとなり、半導体基板10へのパーティクルの付着が防止される。
この後、真空搬送室206内の半導体基板10を、ロードロック室210を介して半導体製造装置2の外部に搬出する。なお、ロードロック室202を介して半導体基板10を半導体製造装置2の外部に搬出することも可能である。
こうして、プラズマ218によりパーティクルが捕捉されている状態で、半導体基板10の反応室214内への搬入、NH3プラズマ処理、半導体基板10の反応室214内からの搬出が行われるため、半導体基板10上へのパーティクルの付着を防止しつつ、半導体基板10上に形成された平坦化層46に対してNH3プラズマ処理を行うことができる。
次に、全面に、例えばPVD装置を用い、DCスパッタリング法により、膜厚20nmのTi膜48を形成する。Ti膜48は、上述したように、自己配向性の強い物質より成る膜(自己配向膜)である。平坦化層46の表面から酸化物より成る変質層(図示せず)が除去されているため、平坦化層46上に堆積されたTi原子は酸素原子により捕捉されることなく、平坦化層46の表面を自在に移動することができる。このため、c軸方向に強く自己配向された結晶性の良好なTi膜48が平坦化層46上に形成される。Ti膜48を形成する際の条件は、例えば以下の通りとする。成膜室内の圧力は、0.3Paとする。成膜室内の雰囲気は、例えばAr雰囲気とする。基板温度は、例えば150℃とする。供給するDCパワーは、例えば1.4kWとする。DCパワーを供給する時間は、例えば14秒とする。
図18は、平坦化層に対してNH3プラズマ処理を行った場合とNH3プラズマ処理を行わなかった場合のIr膜の結晶性の評価結果を示すグラフである。図18における横軸は、ウェハ番号を示している。図18における縦軸は、X線回折装置を用いてロッキングカーブ法により測定された、Ir膜における(111)配向のピークの積分強度を示している。試料としては、TiN膜より成る平坦化層の表面に対してNH3プラズマ処理を行い、かかる平坦化層上にTi膜を形成し、かかるTi膜を窒化することによりTiN膜を形成し、かかるTiN膜上にTiAlN膜を形成し、かかる窒化チタンアルミニウム上にIr膜を形成したものを用いた。測定箇所は、半導体ウェハの中心とした。ウェハ番号1〜15については、平坦化層に対してNH3プラズマ処理を行った。一方、ウェハ番号16〜19については、平坦化層に対してNH3プラズマ処理を行わなかった。
図18から分かるように、ウェハ番号16〜19の場合、即ち、平坦化層に対してNH3プラズマ処理を行わなかった場合には、Ir膜における(111)配向のピークの積分強度は比較的小さい。
これに対し、ウェハ番号1〜15の場合、即ち、平坦化層に対してNH3プラズマ処理を行った場合には、Ir膜における(111)配向のピークの積分強度は比較的大きい。
これらのことから、平坦化層に対してNH3プラズマ処理を行うことにより、後工程において良好な結晶性を有する膜を形成しうることが分かる。
次に、例えばRTA法により、窒素雰囲気中にて熱処理を行う。熱処理温度は、例えば650℃とする。窒素ガスの流量は、例えば10slmとする。熱処理時間は、例えば120秒とする。この熱処理により、上述したTi膜48がTiN膜50となる(図6(c)参照)。ここで、Ti膜48を窒化してTiN膜50を形成するのは、Ti膜48は酸化されやすい一方、TiN膜50は酸化されにくい膜、即ち、耐酸化性を有する膜であるためである。c軸方向に強く自己配向されたTi膜48を窒化するため、結晶性の良好なTiN膜50が形成される。かかるTiN膜50は、後工程で形成される酸素バリア膜54の結晶性を向上させるためのものである。
こうして、TiN膜46とTiN膜50とから成る密着層(導電膜)52が形成される(図7(a)参照)
なお、ここでは、TiN膜より成る密着層52を形成する場合を例に説明したが、かかる密着層52はTiN膜に限定されるものではない。酸素バリア膜54の結晶性を向上させるとともに、かかる酸素バリア膜54と層間絶縁膜34との密着性を向上させ得る材料を、密着層52の材料として適宜用いることができる。
次に、図7(b)に示すように、全面に、スパッタリング法により、例えば膜厚100nmのTiAlNより成る導電性の酸素バリア膜(酸素拡散防止膜、導電膜)54を形成する。かかる酸素バリア膜54は、後工程において導体プラグ40の上面が酸化されるのを防止するためのものである。
酸素バリア膜54を形成する際の条件は、例えば以下の通りとする。即ち、ターゲットとしては、TiAl合金より成るターゲットを用いる。成膜室(チャンバ)内の雰囲気は、Arガスと窒素ガスとの混合ガスより成る雰囲気とする。成膜室内に導入するArガスの流量は、例えば40sccmとする。成膜室内に導入する窒素ガスの流量は、例えば10sccmとする。基板温度は、例えば400℃とする。スパッタパワーは、例えば1kWとする。
次に、図7(c)に示すように、例えばスパッタリング法により、例えば貴金属より成る導電膜56を形成する。より具体的には、かかる導電膜56として、例えばイリジウム(Ir)膜を形成する。導電膜56の膜厚は、例えば100nm程度とする。
こうして、密着層52と、酸素バリア膜54と、導電膜56とにより、下部電極となる積層膜58が形成される。
次に、図8(a)に示すように、全面に、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、有機金属化学気相堆積)法により、キャパシタ誘電体膜64の一部となる第1層目のPbZrXTi1−XO3膜(PZT膜)60を形成する。PZT膜60は、Pbを含むペロブスカイト型の結晶構造を有する強誘電体膜である。PZT膜60をMOCVD法により形成する際には、Pb、Zr、Tiの各液体原料を気化することにより原料ガスを生成し、かかる原料ガスを用いてPZT膜60を形成する。第1層目のPZT膜60の膜厚は、例えば5nm程度とする。PZT膜60を形成する際の基板温度は、例えば620℃とする。成膜室内の圧力は、5Torrとする。第1層目のPZT膜60を形成する際には、比較的低い酸素分圧でPZT膜を成膜する。比較的低い酸素分圧で第1層目のPZT膜60を成膜するのは、比較的低い酸素分圧で成膜することにより、PZT膜の結晶性が良好となり、<111>方向に配向させることができるためである。
次に、図8(b)に示すように、全面に、例えばMOCVD法により、キャパシタ誘電体膜64の一部となる第2層目のPZT膜62を形成する。第2層目のPZT膜62の膜厚は、例えば115nm程度とする。第2層目のPZT膜62の組成と1層目のPZT膜60の組成は、例えば同じとする。第2層目のPZT膜62を形成する際には、比較的高い酸素分圧でPZT膜62を成膜する。第2層目のPZT膜62を比較的低い酸素分圧で成膜すると、PZT膜62中の酸素欠損が多くなり、リーク電流が大きくなってしまうためである。
こうして、第1層目のPZT膜60と第2層目のPZT膜62とが積層されて成る総膜厚が120nm程度のキャパシタ誘電体膜64が形成される(図8(c)参照)。
次に、図9(a)に示すように、全面に、例えばスパッタリング法により、キャパシタ80の上部電極72の一部となる第1層目の酸化イリジウム(IrOX)膜66を形成する。ここで、酸化イリジウム膜66を形成するのは、酸化イリジウム膜66は水素の拡散を防止する水素バリア膜(水素拡散防止膜)として機能し得るためである。上部電極72の一部として酸化イリジウム膜66を用いることにより、水素がキャパシタ誘電体膜64に達するのを防止することが可能となり、ひいてはキャパシタ誘電体膜64が水素により還元されるのを防止することが可能となる。酸化イリジウム膜(IrOX膜)66における酸素の組成比Xは、例えば1.3〜1.9程度とする。酸化イリジウム膜66の膜厚は、例えば50nm程度とする。第1層目の酸化イリジウム膜66を形成する際には、比較的低い酸素分圧で酸化イリジウム膜66を形成する。
なお、ここでは、キャパシタ80の上部電極72を構成する第1層目の導電膜66として酸化イリジウム膜を形成する場合を例に説明したが、キャパシタ80の上部電極72を構成する第1層目の導電膜66は酸化イリジウム膜に限定されるものではなく、例えばSrRuO3(SRO)膜を形成してもよい。SRO膜も、酸化イリジウム膜と同様に、水素の拡散を防止する水素バリア膜として機能し得る。
次に、ArガスとO2ガスとの混合ガス雰囲気中にて、急速熱処理を行う。かかる混合ガス雰囲気における酸素の濃度は、例えば1%程度とする。熱処理条件は、例えば以下の通りとする。昇温速度は、例えば70℃/秒程度とする。保持温度は、例えば725℃程度とする。保持時間は、例えば60秒程度とする。酸素を含む混合ガス雰囲気中にて熱処理を行うため、キャパシタ誘電体膜64中の酸素欠陥に酸素が補充されるのみならず、キャパシタ誘電体膜64を緻密化させることが可能となる。
なお、キャパシタ80の上部電極72の一部を構成する酸化イリジウム膜66を形成した後に、かかる熱処理を行うのは以下のような理由によるものである。
即ち、酸化イリジウム膜66を形成する前にかかる熱処理を行った場合には、キャパシタ誘電体膜64中に存在する気泡が一箇所に集中してしまい、キャパシタ誘電体膜64にピンホールが生じてしまう場合がある。これに対し、キャパシタ誘電体膜64上に酸化イリジウム膜66を形成した後に熱処理を行った場合には、キャパシタ誘電体膜64の表面の荒れが防止され、キャパシタ誘電体膜64と酸化イリジウム膜66との界面が非常に平坦になる。即ち、キャパシタ誘電体膜64と酸化イリジウム膜66との界面における欠陥を十分に低減することが可能となる。しかも、酸化イリジウム膜66は、キャパシタ誘電体膜中からのPbやPbOが脱離を防止する機能を有する。このような理由により、酸化イリジウム膜66を形成した後に、キャパシタ誘電体膜64に対するかかる熱処理を行う。
次に、図9(b)に示すように、全面に、例えばスパッタリング法により、上部電極72の一部となる第2層目の酸化イリジウム膜68を形成する。第2層目の酸化イリジウム膜68の膜厚は、例えば100nm程度とする。第2層目の酸化イリジウム膜68を形成する際には、酸化イリジウム膜68の組成が化学量論的組成であるIrO2となるように、比較的高い酸素分圧で酸化イリジウム膜68を形成する。ここで、化学量論的組成の酸化イリジウム膜68を形成するのは、かかる化学量論的組成の酸化イリジウム膜68は、水素に対する触媒作用を有するIr金属成分が比較的少なく、水素の拡散を防止する水素バリア膜としての機能が極めて高いためである。
こうして、酸素の組成が比較的低い酸化イリジウム膜(IrOX)膜66上に、化学量論的組成の酸化イリジウム膜(IrO2)膜68が形成される。
次に、図9(c)に示すように、全面に、例えばスパッタリング法により、イリジウム膜70を形成する。イリジウム膜70の膜厚は、例えば100nm程度とする。かかるイリジウム膜70は、上部電極72と導体プラグ100との間で良好なコンタクトを確保するための導電性向上膜として機能する。
こうして、第1層目の酸化イリジウム膜(第1の導電膜)66と、第2層目の酸化イリジウム膜(第2の導電膜)68と、イリジウム膜(第3の導電膜)70とにより、上部電極となる積層膜72が形成される。
次に、図10(a)に示すように、全面に、スパッタリング法により、膜厚200nmのTiN膜74を形成する。かかるTiN膜74は、上部電極72、キャパシタ誘電体膜64、下部電極58をパターニングする際に用いられるハードマスク78の一部を構成するものである。
次に、全面に、TEOSガスを用いたCVD法により、膜厚700nmのシリコン酸化膜76を形成する。かかるシリコン酸化膜76は、TiN膜74と相俟って、上部電極72、キャパシタ誘電体膜64及び下部電極58をパターニングする際に用いられるハードマスク78の一部となるものである。
次に、図10(b)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用い、シリコン酸化膜76をキャパシタ80の平面形状にパターニングする。
次に、シリコン酸化膜76をマスクとしてTiN膜74をパターニングする。こうして、TiN膜74とシリコン酸化膜76とから成るハードマスク78が形成される。
次に、ハードマスク78をマスクとして、プラズマエッチング法により、第3の導電膜70、第2の導電膜68、第1の導電膜66、キャパシタ誘電体膜64、導電膜56、酸素バリア膜54及び密着層52をパターニングする。これにより、密着層52と酸素バリア膜54と導電膜56とから成る下部電極58が形成される。また、例えばPZT膜より成るキャパシタ誘電体膜64が形成される。また、第1の導電膜66と第2の導電膜68と第3の導電膜70とから成る上部電極72が形成される。下部電極58とキャパシタ誘電体膜64と上部電極72とによりキャパシタ80が構成される(図11(a)参照)。
次に、全面に、例えばバッチ式のCVD装置を用い、ALD(Atomic Layer Deposition、原子層堆積)法により、水素の拡散を防止する水素バリア膜(水素拡散防止膜)86の一部となる第1の酸化アルミニウム膜82を形成する(図11(b)参照)。第1の酸化アルミニウム膜82をALD法により形成するのは、ステップカバレージの良好な酸化アルミニウム膜82を形成することが可能なためである。第1の酸化アルミニウム膜82の膜厚は、数原子層分の膜厚から10nm程度とする。ここでは、第1の酸化アルミニウム膜82の膜厚を、2nm程度とする。第1の酸化アルミニウム膜82を形成する際の成膜温度は、例えば250℃とする。
次に、酸素雰囲気中にて、熱処理を行う(酸素アニール)。熱処理温度は例えば600℃とし、熱処理時間は例えば60分とする。かかる熱処理は、キャパシタ誘電体膜64中から水分を除去するとともに、キャパシタ誘電体膜64中に酸素を供給するためのものである。この際、キャパシタ誘電体膜64からのPbの脱離が第1の酸化アルミニウム膜82により防止され、キャパシタ80の疲労特性の劣化が防止される。第1の酸化アルミニウム膜82の膜厚が比較的薄いため、キャパシタ誘電体膜82中の水分の蒸発が第1の酸化アルミニウム膜82により妨げられることはない。
なお、ここでは、酸素雰囲気中にて熱処理を行う場合を例に説明したが、オゾンを含む雰囲気中にて熱処理を行ってもよい。
次に、全面に、例えばバッチ式のCVD装置を用い、ALD法により、水素を拡散する水素バリア膜86の一部となる第2の酸化アルミニウム膜84を形成する。第2の酸化アルミニウム膜84をALD法により形成するのは、ステップカバレージの良好な酸化アルミニウム膜84を形成することが可能なためである。第2の酸化アルミニウム膜84の膜厚は、例えば38nm程度とする。第2の酸化アルミニウム膜84を形成する際の成膜温度は、例えば250℃とする。こうして、第1の酸化アルミニウム膜82と第2の酸化アルミニウム膜84とにより水素バリア膜(保護膜)86が形成される(図11(c)参照)。
次に、酸素とオゾンとを含む雰囲気中にて、熱処理を行う。熱処理温度は例えば500℃とし、熱処理時間は例えば30分とし、チャンバ内の圧力は例えば133Pa程度とする。この熱処理により、第1の酸化アルミニウム膜82と第2の酸化アルミニウム膜84とから成る水素バリア膜(保護膜)86が緻密化される。キャパシタ誘電体膜64中の水分を除去するための熱処理が予め行われているため、キャパシタ80内に水分がこもってしまうことはなく、キャパシタ誘電体膜64が劣化してしまうことはない。
次に、全面に、例えばプラズマTEOSCVD法により、例えば膜厚1500〜2500nmのシリコン酸化膜より成る層間絶縁膜88を形成する。
次に、例えばCMP法により、層間絶縁膜88の表面を平坦化する(図12(a)参照)。平坦化された後において上部電極72上に存在する層間絶縁膜88の膜厚は、例えば300nm程度とする。
次に、N2Oガスを用いて発生させたプラズマ雰囲気にて、熱処理を行う。この熱処理は、層間絶縁膜88中の水分を除去するためのものである。
次に、図12(b)に示すように、全面に、例えば高周波スパッタリング法により、酸化アルミニウム膜90を形成する。かかる酸化アルミニウム膜90は、水素の拡散を防止する水素バリア膜として機能するものである。水素バリア膜90の膜厚は、例えば50nm程度とする。かかる水素バリア膜90を形成する際には、平坦な層間絶縁膜88上に水素バリア膜90を形成するため、ステップカバレージを考慮してALD法を用いる必要はなく、スパッタリング法を用いることが可能である。
なお、水素バリア膜90のエッチングを容易化するために、ALD法により水素バリア膜90を比較的薄く形成してもよい。例えば膜厚30nm程度の水素バリア膜90をALD法により形成してもよい。
次に、図13(a)に示すように、全面に、例えばプラズマTEOSCVD法により、層間絶縁膜92を形成する。層間絶縁膜92としては、例えば膜厚200nmのシリコン酸化膜を形成する。かかる層間絶縁膜92は、オーバーエッチングにより水素バリア膜90がエッチングされるのを防止するとともに、配線102の信頼性を確保するためのものである。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、層間絶縁膜92、水素バリア膜90、層間絶縁膜88、水素バリア膜84、水素バリア膜82に、上部電極72に達するコンタクトホール96を形成する。
次に、酸素雰囲気中にて熱処理を行う。この熱処理は、キャパシタ誘電体膜64に酸素を供給し、キャパシタ80の電気的特性を回復するためのものである。熱処理を行う際の基板温度は、例えば500℃とする。熱処理時間は、例えば60分とする。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、層間絶縁膜92、水素バリア膜90、層間絶縁膜88、水素バリア膜84、水素バリア膜82に、導体プラグ40に達するコンタクトホール94を形成する(図13(b)参照)。
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、膜厚100nmのTiN膜98を形成する。こうして、TiN膜より成る密着層98が形成される。
次に、全面に、例えばCVD法により、タングステン膜100を形成する。タングステン膜100の膜厚は、コンタクトホール94,96内をタングステン膜100により埋め込むことが可能な膜厚とする。
次に、例えばCMP法により、層間絶縁膜92の表面が露出するまで、タングステン膜100及び密着層98を研磨する。こうして、コンタクトホール94,96内に、タングステンより成る導体プラグ100が埋め込まれる(図14(a)参照)。
次に、例えばスパッタ法により、膜厚60nmのTi膜、膜厚30nmのTiN膜、膜厚400nmのAlCu合金膜、膜厚5nmのTi膜、及び、膜厚70nmのTiN膜を順次成膜する。こうして、Ti膜、TiN膜、AlCu合金膜、Ti膜及びTiN膜より成る積層膜が形成される。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、積層膜をパターニングする。こうして、積層膜より成る配線(第1金属配線層)102が形成される(図14(b)参照)。
この後、配線102が形成された層間絶縁膜92上に、更に、層間絶縁膜(図示せず)、導体プラグ(図示せず)、配線(図示せず)等を複数層に亘って形成する。最上層には、シリコン酸化膜及びSiN膜より成るカバー膜(図示せず)を形成する。
こうして、本実施形態による半導体装置が製造される。
(評価結果)
次に、本実施形態による半導体装置の評価結果を図19乃至図27を用いて説明する。図19乃至図27は、半導体ウェハ上に付着したパーティクルを示す平面図である。
図19(a)乃至図23(c)は、本実施形態による半導体装置の製造方法の場合、即ち、プラズマ218によりパーティクルが捕捉されている状態で、半導体基板10の反応室214内への搬入、NH3プラズマ処理、半導体基板10の反応室214内からの搬出を行った場合を示している。NH3プラズマ処理を行う際に用いる半導体製造装置としては、図1及び図2を用いて上述した半導体製造装置2を用いた。
図24(a)乃至図25(b)は、比較例による半導体装置の製造方法の場合、即ち、プラズマが生成されていない状態で半導体基板10の反応室内への搬入を行い、この後、NH3プラズマ処理を行い、この後、プラズマの生成を中止した後に半導体基板10の反応室214内からの搬出を行った場合を示している。NH3プラズマ処理を行う際には、図28に示すような平行平板型のCVD装置を用いた。
図26(a)乃至図27(b)は、NH3プラズマ処理を行わなかった場合を示している。
半導体ウェハ10としては、8インチの半導体ウェハを用いた。また、半導体ウェハ10のノッチ104の位置は、図19乃至図27における紙面下側である。また、半導体ウェハ10上に付着したパーティクル106を観測する際には、暗視野光学式欠陥検査装置を用いた。
図26(a)に示す試料において観測されたパーティクルは7個であり、図26(b)に示す試料において観測されたパーティクルは10個であり、図26(c)に示す試料において観測されたパーティクルは4個であり、図27(a)に示す試料において観測されたパーティクルは4個であり、図27(b)に示す試料において観測されたパーティクルは15個である。
このことから分かるように、NH3プラズマ処理を行わない場合には、半導体ウェハ10上に多数のパーティクル106が付着することはない。
これに対し、図24(a)に示す試料において観測されたパーティクルは2575個であり、図24(b)に示す試料において観測されたパーティクルは615個であり、図24(c)に示す試料において観測されたパーティクルは485個であり、図25(a)に示す試料において観測されたパーティクルは441個であり、図25(b)に示す試料において観測されたパーティクルは18個であった。
このことから分かるように、従来の半導体装置の製造方法の場合、即ち、プラズマ218が生成されていない状態で半導体基板10の反応室214内への搬入を行い、この後、NH3プラズマ処理を行い、この後、プラズマ218の生成を中止した後に半導体基板10の反応室214内からの搬出を行った場合には、多数のパーティクル106が半導体ウェハ10上に付着する場合がある。
一方、図19(a)に示す試料において観測されたパーティクルは19個であり、図19(b)に示す試料において観測されたパーティクルは6個であり、図19(c)に示す試料において観測されたパーティクルは11個であり、図20(a)に示す試料において観測されたパーティクルは16個であり、図20(b)に示す試料において観測されたパーティクルは7個であり、図20(c)に示す試料において観測されたパーティクルは10個であり、図21(a)に示す試料において観測されたパーティクルは6個であり、図21(b)に示す試料において確認されたパーティクルは9個であり、図21(c)に示す試料において確認されたパーティクルは8個であり、図22(a)に示す試料において確認されたパーティクルは5個であり、図22(b)に示す試料において確認されたパーティクルは3個であり、図22(c)に示す試料において確認されたパーティクルは14個であり、図23(a)に示す試料において確認されたパーティクルは3個であり、図23(b)に示す試料において確認されたパーティクルは3個であり、図23(c)に示す試料において確認されたパーティクルは3個であった。
このことから分かるように、本実施形態による半導体装置の製造方法の場合、即ち、プラズマ218によりパーティクルが捕捉されている状態で、半導体基板10の反応室214内への搬入、NH3プラズマ処理、半導体基板10の反応室214内からの搬出を行った場合には、半導体ウェハ10上に付着するパーティクル106を著しく少なくすることが可能となる。
このように、本実施形態によれば、プラズマによりパーティクルが捕捉されている状態で、半導体基板の反応室内への搬入、NH3プラズマ処理、半導体基板の反応室内からの搬出が行われるため、半導体基板上へのパーティクルの付着を防止しつつ、NH3プラズマ処理を行うことができる。本実施形態によれば、半導体基板上へのパーティクルの付着を防止しつつ、良好な結晶性を有する膜を成膜し得るため、電気的特性が良好で、信頼性が極めて高いキャパシタを有する半導体装置を提供することが可能となる。
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、NH3プラズマ処理を行う際に用いる半導体製造装置として、HDP−CVD装置、より具体的には、誘導結合型プラズマCVD装置を用いる場合を例に説明したが、NH3プラズマ処理を行う際に用いる半導体製造装置はHDP−CVD装置に限定されるものではない。反応室214内にプラズマを生成した状態で半導体基板10の搬入、搬出を行うことが可能な半導体製造装置を広く用いることができる。より具体的には、半導体基板10から比較的離れた位置にプラズマを生成することが可能な誘導結合型の半導体製造装置を広く用いることができる。例えば、電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)プラズマCVD装置、ヘリコン波プラズマCVD装置等を、NH3プラズマ処理を行う際に用いる半導体製造装置として用いることが可能である。
また、上記実施形態では、NH3ガスを用いて発生させたプラズマを層間絶縁膜34の表面に照射することにより、層間絶縁膜34の表面を処理する場合を例に説明したが、かかるプラズマは、NH3ガスを用いて発生させたプラズマに限定されるものではない。分子中に窒素と水素とを含むガスを用いてプラズマを生成し、かかるプラズマを層間絶縁膜34の表面に照射すればよい。例えば、ヒドラジン(N2H4)ガスを用いて発生させたプラズマを層間絶縁膜34の表面に照射することにより、層間絶縁膜34の表面を処理してもよい。また、窒素と水素との混合ガスを用いて発生させたプラズマを層間絶縁膜34の表面に照射することにより、層間絶縁膜34の表面を処理してもよい。
また、上記実施形態では、NH3ガスを用いて発生させたプラズマを平坦化層46の表面に照射することにより、平坦化層46の表面に存在する変質層を除去する場合を例に説明したが、かかるプラズマは、NH3ガスを用いて発生させたプラズマに限定されるものではない。分子中に窒素と水素とを含むガスを用いてプラズマを生成し、かかるプラズマを平坦化層46の表面に照射すればよい。例えば、ヒドラジン(N2H4)ガスを用いて発生させたプラズマを平坦化層46の表面に照射することにより、平坦化層46の表面に存在する変質層を除去してもよい。また、窒素と水素との混合ガスを用いて発生させたプラズマを平坦化層46の表面に照射することにより、平坦化層46の表面に存在する変質層を除去してもよい。
また、上記実施形態では、酸素バリア膜48の材料としてTiAlNを用いる場合を例に説明したが、酸素バリア膜48の材料はTiAlNに限定されるものではない。酸素の拡散を防止し得る導電体を酸素バリア膜48の材料として適宜用いることができる。例えば、TiAlON、TaAlN又はTaAlON等を酸素バリア膜48の材料として用いてもよい。
また、上記実施形態では、キャパシタ誘電体膜64としてPZT膜を形成する場合を例に説明したが、キャパシタ誘電体膜64はPZT膜に限定されるものではない。本発明の原理は、Pb若しくはBiを含む強誘電体、又は、Pb若しくはBiを含む高誘電体をキャパシタ誘電体膜64の材料として用いる場合に広く適用することが可能である。例えば、キャパシタ誘電体膜64として、例えばSrBi2Ta2O9膜(SBT膜)を形成してもよい。SBT膜は、Biを含むビスマス層状構造の強誘電体膜である。また、PZTにLaが添加された材料より成るPbLa(Zr,Ti)O3膜(PLZT膜)をキャパシタ誘電体膜64として形成してもよい。また、PZTにLa、Ca、Sr又はSiの少なくともいずれかが添加された材料をキャパシタ誘電体膜64の材料として用いてもよい。また、BiLaO3膜(BLT膜)、SrBi2(Ta,Nb)2O9膜(SBTN膜)、Bi4Ti3O9膜、(Bi,La)4Ti3O12膜、BiFeO3膜、SrBi4Ti4O15膜、又は(Bi1−XRX)Ti3O12膜(Rは希土類元素)等をキャパシタ誘電体膜64として形成してもよい。また、(Pb,Ba,Sr)TiO3等をキャパシタ誘電体膜64として用いてもよい。これらは、Pbを含む高誘電体膜である。また、(Bi,Sr)TiO3等をキャパシタ誘電体膜64として用いてもよい。これらは、Biを含む高誘電体膜である。