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JP2009022866A - 鉄砒素化合物合成装置 - Google Patents

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JP2009022866A JP2007187886A JP2007187886A JP2009022866A JP 2009022866 A JP2009022866 A JP 2009022866A JP 2007187886 A JP2007187886 A JP 2007187886A JP 2007187886 A JP2007187886 A JP 2007187886A JP 2009022866 A JP2009022866 A JP 2009022866A
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Abstract

【課題】砒素含有液から結晶性の良好なスコロダイト型鉄砒素化合物を合成するための「鉄砒素反応」を効率的に行うことが可能な反応装置を提供する。
【解決手段】砒素液が収容される容器であって、収容された砒素液の上部に気相空間が形成され、その気相空間に酸素が供給されるようになっている反応容器と、反応容器に収容された砒素液を撹拌する撹拌機構と、反応容器に収容された砒素液を定常的に前記気相空間にまき散らして、その気相空間中を飛行させ、飛行後の液を気相空間の下に収容されている砒素液の中に戻す循環機構を備える、鉄砒素化合物合成装置。
【選択図】図2

Description

本発明は、砒素を含有する水溶液から、砒素が極めて溶出しにくいスコロダイト型の鉄砒素化合物を合成するのに適した鉄砒素化合物合成装置に関する。
非鉄製錬においては、各種製錬中間物が発生したり、様々な形態の製錬原料となり得るものが存在したりする。これらの製錬中間物や製錬原料には有価金属が含まれているが、一方で砒素などの環境上好ましくない元素が含まれている。砒素の処理法としては、溶液中の砒素を、亜砒酸と鉄、カルシウムなどと組み合わせて砒素化合物中に固定する手法が提唱されている。その砒素化合物を沈殿生成させ、これを分離除去するためには、ろ過を行う必要があるが、その砒素化合物の状態によって、ろ過性が大きく左右される。砒素化合物がゲル状のときは、ろ過性は極めて悪くなり、工業的な処理が困難となる。つまり、生成される砒素化合物の状態は、砒素処理の生産性を左右する重要な因子となる。
沈殿除去された砒素化合物は保管または廃棄されるが、その化合物から砒素が再び溶け出す現象(溶出)が抑えられることも重要である。砒素の溶出量が少ない砒素化合物としてスコロダイト(FeAsO4・2H2O)の形態が知られている。したがって、ろ過に適したスコロダイトを形成させることにより、砒素の処理が飛躍的に改善される。しかしながら、産業界で発生する砒素含有溶液には、有価な金属やその他の元素が多元的に共存しており、また、前述のろ過性の問題をクリアする必要があることから、工業的規模で砒素をスコロダイトとして安定に回収することは必ずしも容易でない。
特開昭54−160590号公報
発明者らは詳細な研究を重ね、砒素含有溶液から、ろ過性が良く、かつ砒素の溶出が極めて少ない安定したスコロダイト型結晶を高い回収率で合成する手法を見出すに至り、特願2006−321575などにおいて開示した。その手法とは、5価の砒素イオンと2価の鉄イオンを含む水溶液を被処理液として、酸素によって鉄砒素化合物の析出反応を進行させ、液のpHが1.2以下の範囲で析出を終了させるというものである。反応終了時のpHを1.2以下に厳しく管理することにより、ろ過性の良いコンパクトなスコロダイト型鉄砒素化合物を合成することが可能となり、その鉄砒素化合物に固定された砒素は極めて溶出しにくい状態で保管または堆積することができる。
特願2006−321575に開示したように、砒素液から、ろ過性の良いスコロダイト型鉄砒素化合物が合成される反応は、下記(1)式のようなものである。
2H3AsO4+2FeSO4+1/2O2 +3H2O → 2(FeAsO4・2H2O)+2H2SO4 ……(1)
ここではFe源として硫酸鉄を使用した場合の反応式を例示した。
「砒素液」は5価の砒素が溶解している溶液であるが、本明細書では、反応開始前の被処理液だけでなく、反応の進行に伴って生成していく鉄砒素化合物が含有されているスラリー状の液も含めて「砒素液」と呼んでいる。
図1に、このような鉄砒素反応を進行させるために使用できる従来一般的な反応装置の構成を模式的に示す。反応容器11の中には砒素液12が収容され、その液中にはガス導入管13から酸素含有ガスが吹き込まれるようになっている。砒素液12は撹拌羽根14によって強撹拌できるようになっている。容器壁面16の内側にはバッフル26が設けられることもある。液は反応容器11の内部または外部に設けられたヒーターによって加温され、オープン系では100℃以下、例えば70〜100℃の液温にて反応を進行させることができる。また、オートクレーブなどの耐圧容器を使用したクローズ系では、例えば100超え〜200℃の温度で反応を進行させることができる。反応容器11は、オープン系で実験室的に実施する場合にはガラスビーカーが使用できるが、クローズ系で実施する場合や、工業的規模で実施する場合はステンレス鋼などの耐久性の高い容器を使用することができる。オープン系の方が一般に設備コストは少なくて済む。
砒素液12を撹拌羽根14によって強撹拌すると容器壁面16付近では液面17が多少上昇する。前記(1)式の反応が進行すると酸素が消費されるので、ガス導入管13からは(1)式の反応が進行可能な量の酸素を供給する。酸素含有ガスとしては大気を使用することもできるが、純酸素を使用する方が酸素と砒素液との混合が効率良く行える。
(1)式の反応が生じるためには、酸素が液中に「溶存酸素」として溶解することが必要である。ガス導入管13から液中に気体として供給された酸素は、全てが直ちに液中に溶解するわけではなく、多くは気相空間21に抜け出してしまう。そのため、鉄砒素反応で消費されるより多量の酸素を液中に供給しなければならない。オープン系では、ガス排出口18などから酸素が外界に逃げてしまい、無駄が多くなる。
砒素液12中に供給された酸素をできるだけ迅速に液中に溶解させるには、強撹拌することが有効である。液中に吹き込まれた気滴は、撹拌により分断、微細化され、気液界面が増大することにより、気滴中の酸素の溶解が速くなる。一方、液中に吹き込む気滴を微細化する別の手段として、細孔径のノズルを用いる方法が考えられる。例えば、ガス導入管13の先端に多孔質のノズルを取り付けることにより、酸素を微細な気滴の状態で直接砒素液12の中に吹き込むことができる。ところが、実際にこのようなノズルを使用して実験してみると、鉄砒素化合物がノズルに析出し、ノズルが詰まり易いことが判明した。
このようなことから、図1のような従来一般的な構成の反応装置で(1)式の鉄砒素反応を十分に進行させるには、液を強撹拌することが避けられない状況にある。しかし、工業的規模の反応容器において砒素液をあまり強く撹拌することは、装置の損耗を早め、操業上の問題も多い。また、いくら強撹拌を行っても、導入された酸素を効率良く溶解させるには限界があり、更なる効果的な手法の開発が望まれるところである。
本発明は、特願2006−321575などに開示した鉄砒素反応をより効率的に行うことが可能な鉄砒素化合物合成装置を提供するものである。
上記目的は、酸素と砒素含有液との混合方法を工夫することによって達成された。
すなわち本発明では、
(i)砒素液が収容される容器であって、収容された砒素液の上部に気相空間が形成され、その気相空間に酸素が供給されるようになっている反応容器と、
(ii)反応容器に収容された砒素液を撹拌する撹拌機構と、
(iii)反応容器に収容された砒素液を液滴の状態にして、前記気相空間中を飛行させ、飛行後の液を気相空間の下に収容されている砒素液の中に戻す循環機構、
を備える鉄砒素化合物合成装置が提供される。
また、上記(iii)の部分を下記(iii)’の構成とした発明が提供される。
(iii)’反応容器に収容された砒素液を定常的に前記気相空間にまき散らして、その気相空間中を飛行させ、飛行後の液を気相空間の下に収容されている砒素液の中に戻す循環機構
砒素液を気相空間中に飛行させる手法として、砒素液に機械的外力を付与する回転羽根を採用することができる。特に、反応容器に収容された砒素液を移送して気相空間内に放出させる管路と、その管路から放出された砒素液を気相空間にまき散らすための回転羽根を備えたものが好適な対象となる。気相空間中を飛行した液は、その少なくとも一部が容器壁面または容器壁面の内側に設けられたバッフルを伝って気相空間の下に収容されている砒素液の中に戻るようにすることができる。
本発明によれば、酸素と砒素液との混合が効率良く行われるので、気相空間中を液が飛行する機構を設けない一般的な反応装置を用いた場合に比べ、砒素の沈殿率を同程度とするなら、反応時間を短縮すること、あるいは砒素液の撹拌力を低減させることができる。したがって本発明は、鉄砒素化合物の工業的な合成に適している。
図2に、本発明の鉄砒素化合物合成装置の構成の一例を模式的に示す。反応容器11の内部には砒素液12が収容され、その上部には気相空間21が形成されるようになっている。反応容器11に収容された砒素液12はポンプ23の動力によって管路22を通って移送され、気相空間21の内部に放出される。放出された砒素液がぶつかる位置に回転羽根24が回転しており、その砒素液は回転羽根24から付与された外力によって分断され、気相空間21内を飛行する。飛行している砒素液25は、その後、飛行した砒素液の少なくとも一部は容器壁面16または容器壁面16の内側に設けられたバッフル26を伝って流れ落ち、気相空間21の下に収容されている砒素液12の中へ戻るようになっている。この場合、ポンプ23を介した管路22と、回転羽根24と、容器壁面16またはバッフル26によって「循環機構」が形成されている。
気相空間21には酸素が供給されることが必要であるが、その手段として、図2の例ではガス導入管13から砒素液12中に酸素が供給され、余剰の酸素が液面17から気相空間21の方に供給されるようになっている。ガス導入管13の先端を気相空間21の領域に設けても良いが、反応容器11に収容された砒素液12中での鉄砒素反応を効率良く進行させるためには、砒素液12中へ酸素を導入する方が好ましい。砒素液12を撹拌するために、図1の場合と同様に撹拌羽根14のような撹拌機構が設けられており、また、液は反応容器11の内部または外部に設けられたヒーターによって加温できるようになっている。
管路22は、実験室的にはガラス管やシリコーンチューブなどで構成すればよいが、工業的にはステンレス鋼管等の耐久性のあるパイプを使用することが好ましい。バッフル(邪魔板)26はステンレス鋼板等で構成すればよい。反応容器11については図1で説明した従来一般的な材料で作られたものが利用できる。また、オープン系、クローズ系いずれでも実施することができる。オープン系では100℃以下、例えば70〜100℃の液温にて反応を進行させることができ、オートクレーブなどの耐圧容器を使用したクローズ系では例えば100超え〜200℃の液温で反応を進行させることができる点も、図1の従来の反応装置を用いた場合と基本的に同じである。
図2に示したような本発明の鉄砒素化合物合成装置を用いると、図1に示したような従来の反応装置を用いた場合に比べ、気相空間を介して砒素液を循環させる「循環機構」の有無以外の条件を同じにしたときの砒素の沈殿率が、特に反応開始後の比較的早い段階において大きく向上する。そのメカニズムについては未解明の部分が多いが、現時点で以下のようなことが考えられる。すなわち、本発明の鉄砒素化合物合成装置で「循環機構」を利用した場合には、気相空間21を飛行している砒素液25は、比表面積の大きい状態(例えば液敵状)に分断されており、その周囲が酸素含有ガスに囲まれた状態で気相空間21中を飛行する。さらに一部の液は飛行後に容器壁面16あるいはバッフル26を伝って流れているときに、液表面が気相空間21に存在する酸素に曝される。このため、飛行中の砒素液や、容器壁面16あるいはバッフル26を伝って流れている砒素液には気相空間21の酸素が速やかに取り込まれ、その酸素との間で新たな鉄砒素反応(例えば前記(1)式)が起こり、気相空間21の下に収容されている砒素液12の中に戻るまでの短い時間にスコロダイトの核晶が形成されると考えられる。そして、循環して戻ってきた砒素液から、気相空間21の下に収容されている砒素液12の中にスコロダイトの核晶が供給され、これが、砒素液12中での鉄砒素反応を従来より効率良く進行させるように機能しているものと推察される。なお、本発明でいう「飛行」とは、液が気相空間21内に放たれた状態で当該空間内をある時間移動することをいうが、単純に落下させるような場合でも、気相空間21内の酸素が液中に取り込まれるような態様の落下は「飛行」に該当する。
砒素液が定常的に循環している状態において、反応容器11中に占める気相空間21の体積は、その下に収容されている砒素液12の体積の1.0倍以上を確保することが望ましく、1.5倍以上とすることがより好ましい。気相空間21の体積を大きくすることで砒素液の平均的な飛行時間および容器壁面16またはバッフル26を伝って流れる時間を長くすることができ、気相空間21の下に収容されている砒素液12中に供給されるスコロダイト核晶の量を増大させることができる。ここで、オープン系において容器の上部全体を開放しているときは、容器の平均的な上端位置を気相空間21の上端として気相空間21の体積を算出すればよい。
図2の例では回転羽根24によって砒素液は気相空間21内にまき散らされるが、そのような回転羽根24を使う代わりに、撹拌羽根14を用いて砒素液を気相空間にまき散らすことも可能である。すなわち、撹拌羽根14の上端が撹拌中の液面17の近傍に位置するか、あるいは気相空間21側に少し露出するようにすれば、反応容器11に収容されている砒素液12を撹拌羽根14の回転によって直接気相空間21にまき散らすことができ、ポンプ23や管路22を設けることなく前述の「循環機構」を実現することができる。また、撹拌羽根14と同軸に、砒素液12をまき散らしやすい形状の羽根を追加する方法も有効である。ただ、かなり特殊な羽根の形状を採用しない限り、通常は撹拌羽根14の回転を速くしなけれれば気相空間の高い位置まで砒素液を飛ばすことは難しく、結局、強撹拌のデメリット(上述)が解消されない。したがって、撹拌を少しでも緩くしたい場合は、図2に示すような回転羽根等を用いた「循環機構」を採用することが好ましい。なお、飛行している砒素液25は必ずしも液滴にまで分断されていなくてもよい。すなわち、連続的につながった状態で飛行していても、気相空間21内の酸素を取り込むことが可能であれば構わない。ただし、できるだけ比表面積の大きい液滴の状態で飛行させる方が効果的である。
本発明の鉄砒素化合物合成装置で処理する砒素液(被処理液)としては、特願2006−321575に開示したように、非鉄製錬等で発生する種々のものに由来した砒素液が対象となる。5価の砒素の濃度が15g/L以上であることが望ましく、20g/L以上であることがより好ましい。初期の砒素濃度が高い方が、処理する際に一度にできる砒素の処理量が増大するため生産性が向上する。
鉄源としては2価の鉄イオンが必要である。例えば硫酸塩、硝酸塩、塩化物などが利用できるが、中でも硫酸第1鉄7水和物はチタン製錬の副産物として多量に発生し、それをそのまま使用できるメリットがある。
鉄と砒素の比率はスコロダイト(FeAsO4・2H2O)のモル比に概ね等しいか、あるいは鉄を若干過剰にしておく。具体的にはFe/As比率はモル比で0.9以上とする必要があり、1.0〜1.7程度とすることが望ましい。1.5±0.2というように管理目標を定めても構わない。
反応に供する段階で、被処理液のpHを2.0以下とすることが好ましい。pHが2.0より高くても、反応が進行するとpHが低下するので、最終的にpHが1.2以下に下がれば、途中の過程で非晶質ゲルが生じても、最終的に結晶質のスコロダイトに変化させることが可能である。しかし、反応中のpHが高いと非晶質ゲルの生成量が多くなり、場合によっては撹拌が困難になるので、反応前pHを2.0以下とすることは極めて有効である。必要に応じてpHを調整するために酸を添加する。酸は 塩酸、硝酸、硫酸のどれを用いても構わないが、添加した鉄塩から供給される陰イオンと同種の陰イオンを含む酸を使用することがより好ましい。鉄塩として硫酸塩を用いる場合、硫酸によってpHを調整するのが通常である。
被処理液中に存在する鉄、砒素以外の金属元素としては、結晶性の良いコンパクトなスコロダイト型化合物が生成される限り、種々の元素の混入が許容される。例えば、ナトリウム、カリウム、銅、亜鉛、マンガン、マグネシウムの1種以上を合計1〜150g/Lの濃度で含むものが採用できる。この場合、砒素、鉄、ナトリウム、カリウム、銅、亜鉛、マンガン、マグネシウム以外の金属元素の混入が排除されるわけではないが、それらは極少量(不可避的不純物レベル)であることが望ましい。
反応後の液のpHは、前述のように1.2以下になっていることが重要である。これよりpHが高いと非晶質が多量に残留する。反応後pHは1.16以下であることがより好ましく、1.0以下であること、あるいはさらに1.0より小さいことが一層好ましい。
反応後の液は固液分離される。回収された固形分は、砒素がおよそ30質量%、鉄もおよそ30質量%、残りは酸化物としての酸素、水素からなる化合物を主体としたものである。この鉄砒素化合物はスコロダイト型の結晶であり、砒素の溶出が顕著に抑止され、極めて減容されており、保管や廃棄に有用である。また、他の砒素を利用する産業において原料となる可能性がある。
《比較例1》
ここでは実験のため、原料物質には全て試薬を用いた。砒素は、試薬(和光純薬工業製)の砒素溶液でAs=500g/L(5価)の溶液を純水で希釈して使用した。鉄塩は、試薬(和光純薬工業製)の硫酸第1鉄・7水和物FeSO4・7H2Oを用いた。これらの物質と純水を混合して、砒素濃度50g/L、鉄濃度55.91g/Lの砒素液(被処理液)0.7Lを調製した。この液を容量2Lのガラス製ビーカー(反応容器に相当)に移し、2段タービン撹拌羽根をセットした。また、バッフル(邪魔板)を4枚をセットした。この反応装置は図1に示したものと同様の構成を有する。
液を回転数500rpmで撹拌しながら95℃になるよう加熱した。そして、種晶として95℃の鉄砒素反応で別途合成したスコロダイトを50g/Lに相当する量、すなわち35g添加した。その後、液の温度を95℃に保持したまま、撹拌しながら純度99%の酸素ガスを容器内の液中に吹き込んだ。酸素ガス流量は1.0L/minとした。酸素ガス吹き込み開始から3時間、撹拌状態、温度、ガス流量を保持した。種晶添加前の時点、酸素を添加する前の時点(反応時間0h)、および酸素添加開始後1時間毎の時点で液をサンプリングし、pH、ORPを測定した。測定後の液は容器へ戻した。
酸素吹き込み開始から3時間の時点では、まだ鉄砒素反応が進行途上の段階であるが、ここでは反応の進行の程度を後述の実施例と比較するために、未反応の砒素が残っている時点で反応を止めた。この所定時間の反応を終えた液(スラリー)について、温度が70℃に低下したのち、ろ過面積0.01m2のアドバンテック製(東洋ろ紙株式会社)加圧ろ過器(型番:KST−142)を用いてろ過(固液分離)した。ろ過に当たって加圧ガスとして空気を使用し、加圧力(ゲージ圧)は0.4MPaにした。そのときのろ過時間を測定することで単位面積あたりのろ過速度を求めた。ろ過した后液は滴定による酸濃度(FA=Free Acid)の測定および組成分析に供した。ろ過した固形分はウェットケーキであり、これをパルプ濃度100g/Lで純水で1時間リパルプ洗浄したのち再びろ過した。リパルプ洗浄時の撹拌強度は2段タービンディスク、500rpm、バッフル4枚にして行なった。ろ過温度は30℃とした。ろ過時間は上記のろ過とほぼ同じであった。
洗浄・ろ過の終わった固形分を60℃で18時間乾燥した。乾燥前後の重量を測定することで水分値を算出した。乾燥した固形分について、粒度分布、比表面積、比重、圧縮密度、XRDによる回折パターンを測定した。
粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製;LA−500)を用いて測定し、平均粒子径および粒径5μm以下の粒子の割合を調べた。
比表面積は、ユアサアイオニクス製モノソーブを用いてN2ガス吸着法(BET1点法)により求めた。
比重は、Beckman式比重測定により求めた。
圧縮密度は、1トン成形による固形分のかさ密度を測定して求めた。
X線回折パターンの測定は、リガクRINT−2500を用いて、Cu−Kα、管電圧40kV、管電流300mA、走査速度0.01°/sec、走査角度2θ=5°から85°、シンチレーションカウンター使用の条件で行った。
結果を表1〜4に示す(以下の各例において同様)。
得られた固形分は水分値が10%以下と非常に低く、コンパクトな形で砒素を析出させることができた(以下の各例において同じ)。X線回折パターンから、この物質は結晶質のスコロダイトであることを確認された(この点も以下の各例において同じ)。砒素濃度50g/L、95℃、撹拌500rpm、反応3時間の条件で、砒素の沈殿率は40%となった。
《実施例1》
比較例1と同様の操作を実施した。ただし、ここでは図2に示したものと同様の構成を有する鉄砒素化合物合成装置を使用した。すなわち、容量2Lのガラス製ビーカー(反応容器に相当)に収容された砒素液を、ガラス棒を使用したローラーポンプで吸引し、ガラス管およびシリコーンチューブを用いて構成した管路の中を移送し、気相空間内で管路から放出させるとともに、その放出された砒素液を回転する1段タービンディスク(直径35mm)にぶつけることによって、気相空間に定常的にまき散らし、気相空間中を飛行した液滴の大部分はバッフルを伝って気相空間の下に収容されている砒素液の中に戻るようにした。気相空間を介した液の循環量は140mL/minとした。このような「循環機構」を設けたこと以外、比較例1と同じ条件で実験を行った。酸素の供給方法、供給速度も比較例1と同じであり、液中に吹き込まれた酸素ガスは、その液中で消費される分を除き、液面から上部の気相空間に供給されるようになっている。
砒素濃度50g/L、95℃、撹拌500rpm、気相空間を介した循環140mL/min、反応3時間の条件で、砒素の沈殿率は48.7%となった。比較例1との対比から、気相空間を介して砒素液を循環させる機構を付加することにより、スコロダイトをより効率的に生成させることができた。
《実施例2》
気相空間を介した液の循環量を140mL/minから380mL/minに増大させたことを除き、実施例1と同条件で実験を行った。
その結果、砒素の沈殿率は52.1%に向上した。
《比較例2》
液の撹拌速度を500rpmから200rpmに低下させたことを除き、比較例1と同条件で実験を行った。
その結果、砒素の沈殿率は2.7%であり、鉄砒素反応の進行が非常に遅くなってしまったことがわかる。
《比較例3》
反応時間を3時間から5時間に長くしたことを除き、比較例2と同条件で実験を行った。
その結果、砒素の沈殿率は11.6%となった。鉄砒素反応は多少起こっているが、その反応速度は非常に遅いことがわかる。
《比較例4》
反応時間を5時間から7時間に長くしたことを除き、比較例3と同条件で実験を行った。
その結果、砒素の沈殿率は18.7%となった。この場合も、鉄砒素反応は多少起こっているが、その反応速度は非常に遅いことに変わりない。
《実施例3》
液の撹拌速度を500rpmから200rpmに低下させ、また反応容器を容量5Lのガラス製ビーカーに変えたことを除き、実施例2と同条件で実験を行った。
その結果、砒素の沈殿率は29.1%であった。実施例2との対比では、撹拌速度を低下させたことにより反応効率が低下した。ただし、比較例2との対比において、砒素の沈殿率は2.7%から29.1%に飛躍的に向上した。撹拌速度が低いときには、気相空間を介した液の循環を加えることにより、鉄砒素反応の進行を促進させる顕著な改善効果が得られた。
《実施例4》
反応時間を3時間から5時間に長くしたことを除き、実施例3と同条件で実験を行った。
その結果、砒素の沈殿率は50.0%に向上した。比較例3の11.6%と比べると、気相空間を介した液の循環を加えることによる効果が極めて大きいことがわかる。
《実施例5》
反応時間を5時間から7時間に長くしたことを除き、実施例4と同条件で実験を行った。
その結果、砒素の沈殿率は58.0%に向上した。比較例4の18.7%と比べると、この場合も気相空間を介した液の循環を加えることによる効果が極めて大きいことがわかる。
Figure 2009022866
Figure 2009022866
Figure 2009022866
Figure 2009022866
鉄砒素化合物を合成することができる従来一般的な反応装置の構成を模式的に示した図。 本発明の鉄砒素化合物合成装置の構成を模式的に示した図。
符号の説明
11 反応容器
12 砒素液
13 ガス導入管
14 撹拌羽根
16 容器壁面
17 液面
18 ガス排出口
21 気相空間
22 管路
23 ポンプ
24 回転羽根
25 飛行している砒素液
26 バッフル

Claims (5)

  1. 砒素液が収容される容器であって、収容された砒素液の上部に気相空間が形成され、その気相空間に酸素が供給されるようになっている反応容器と、
    反応容器に収容された砒素液を撹拌する撹拌機構と、
    反応容器に収容された砒素液を液滴の状態にして、前記気相空間中を飛行させ、飛行後の液を気相空間の下に収容されている砒素液の中に戻す循環機構、
    を備える鉄砒素化合物合成装置。
  2. 砒素液が収容される容器であって、収容された砒素液の上部に気相空間が形成され、その気相空間に酸素が供給されるようになっている反応容器と、
    反応容器に収容された砒素液を撹拌する撹拌機構と、
    反応容器に収容された砒素液を定常的に前記気相空間にまき散らして、その気相空間中を飛行させ、飛行後の液を気相空間の下に収容されている砒素液の中に戻す循環機構、
    を備える鉄砒素化合物合成装置。
  3. 前記循環機構は、砒素液に機械的外力を付与する回転羽根によって砒素液を気相空間にまき散らすものである請求項1または2に記載の鉄砒素化合物合成装置。
  4. 前記循環機構は、反応容器に収容された砒素液を移送して気相空間内に放出させる管路と、その管路から放出された砒素液を気相空間にまき散らすための回転羽根を備えたものである請求項1または2に記載の鉄砒素化合物合成装置。
  5. 前記循環機構は、気相空間中を飛行した液の少なくとも一部が容器壁面または容器壁面の内側に設けられたバッフルを伝って気相空間の下に収容されている砒素液の中に戻るようにしたものである請求項1〜4のいずれかに記載の鉄砒素化合物合成装置。
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