上述のように、例えばSIPプロトコルは、アプリケーション層でのシグナリングプロセスを提供するものであり、各IP電話のアドレス登録処理や、セッションの確立に関わる処理が通信回線で種々生起される。DAMA方式の衛星通信において、IP電話を子局に接続して、子局間での衛星を介した音声通信を行う際に、このような各種処理のために通信回線が頻繁に使用されることとなり、通信回線の音声及びデータ通信の利用効率が低下するという問題点がある。また、IP電話による音声通信を行うためには、プロトコル制御のためのサーバ装置(SIPにおいては、一般にSIPサーバと呼ばれるサーバ装置)が必要となり、このサーバ装置の配置とその配置によって生じる各サーバ間での通信やサーバへ入出力する処理パケットの錯綜が、衛星を介した通信回線の利用効率を低下させないよう検討しておかなければならないという課題があった。
この発明は、上記のような問題点または課題を解決するためになされたもので、DAMA方式の衛星通信回線において、子局に接続されたIP電話による通信を行う際に、IP電話のアドレス登録処理や発着呼処理等を行うことができる衛星通信方法、子局、親局及び管理局を得ることを目的とする。
請求項1の発明に係る衛星通信方法は、衛星を経由するCSC回線により子局から回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当て、上記子局と相手子局との間で衛星通信を行う回線割当型の衛星通信方法において、上記子局に接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出す呼出信号に基づき、上記子局から上記親局へ上記CSC回線により送信する呼出制御信号を生成し、この呼出制御信号を受信した上記親局において上記相手IP電話のアドレス情報を検索し、上記子局へ上記CSC回線により応答信号を送信するものである。
請求項2の発明に係る子局は、衛星を経由するCSC回線により回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当てられて、相手子局との間で衛星通信を行う子局において、接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出す呼出信号に基づき、上記親局へ送信する呼出制御信号を生成する衛星GW装置と、上記CSC回線により上記呼出制御信号を上記親局へ送信する衛星通信装置とを備えたものである。
請求項3の発明に係る子局は、衛星を経由するCSC回線により回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当てられて、相手子局との間で衛星通信を行う子局において、接続されたIP電話を含む端末装置群からの受信データから、その受信データが上記IP電話からの呼出信号であることを判別する判別手段、この判別手段により呼出信号であることを判別したときに、上記CSC回線により送信される呼出制御信号を生成するメッセージ処理手段を有する衛星GW装置と、上記CSC回線により上記呼出制御信号を上記親局へ送信する衛星通信装置とを備えたこものである。
請求項4の発明に係る親局は、衛星を経由するCSC回線により子局から送信される回線割当要求に基づき、上記子局と相手子局との間で行う衛星通信の通信回線を割り当てる親局において、上記子局に接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出す呼出信号に基づき上記子局から送信される呼出制御信号を上記CSC回線により受信する親局衛星通信装置と、この親局衛星通信装置により受信した呼出制御信号に基づき、上記相手IP電話のアドレス情報を検索する検索手段とを備え、検索結果に基づき生成する応答信号を上記子局へ上記CSC回線により送信するものである。
請求項5の発明に係る衛星通信方法は、衛星を経由するCSC回線により子局から回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当て、上記子局と相手子局との間で衛星通信を行う回線割当型の衛星通信方法において、上記子局に接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出すSIPプロトコルによるインバイトメッセージに基づき、上記子局から上記親局へ上記CSC回線により送信するインバイト制御信号を生成し、上記親局のSIPサーバ装置により、上記相手IP電話のIPアドレスを検索し、検索結果に基づく応答信号を上記CSC回線により上記子局へ送信するものである。
請求項6の発明に係る子局は、衛星を経由するCSC回線により回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当てられて、相手子局との間で衛星通信を行う子局において、接続されたIP電話を含む端末装置群からの受信データから、その受信データが上記IP電話からのSIPプロトコルによるインバイトメッセージであることを判別する判別手段、この判別手段によりSIPプロトコルによるインバイトメッセージであることを判別したときに、上記CSC回線により送信するインバイト制御信号を生成するメッセージ処理手段を有する衛星GW装置と、上記CSC回線により上記インバイト制御信号を上記親局へ送信する衛星通信装置とを備えたものである。
請求項7の発明に係る親局は、衛星を経由するCSC回線により子局から送信される回線割当要求に基づき、上記子局と相手子局との間で行う衛星通信の通信回線を割り当てる親局において、上記子局に接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出すSIPプロトコルによるインバイトメッセージに基づき上記子局から送信されるインバイト制御信号を上記CSC回線により受信する親局衛星通信装置と、上記相手IP電話のIPアドレスが登録されたロケーションサーバ、上記インバイト制御信号に基づき上記ロケーションサーバに上記相手IP電話のアドレスを問い合わせ、上記ロケーションサーバからの検索結果に基づき応答メッセージを生成するリダイレクトサーバを有するSIPサーバ装置と、上記SIPサーバ装置からの応答メッセージに基づき上記子局へ上記CSC回線により送信する応答信号を生成するメッセージ処理手段とを備えたものである。
請求項8の発明に係る衛星通信方法は、衛星を経由するCSC回線により子局から回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当て、上記子局と相手子局との間で衛星通信を行う回線割当型の衛星通信方法において、上記子局に接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出す呼出信号に基づき、上記CSC回線及び上記通信回線とは別に設けた制御回線により上記子局から上記親局へ送信する呼出制御信号を生成し、この呼出制御信号を受信した上記親局において上記相手IP電話のアドレス情報を検索し、上記子局へ上記制御回線により応答信号を送信するものである。
請求項9の発明に係る子局は、衛星を経由するCSC回線により回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当てられて、相手子局との間で衛星通信を行う子局において、接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出す呼出信号に基づき、上記親局へ送信する呼出制御信号を生成する衛星GW装置と、上記CSC回線及び上記通信回線とは別に設けた制御回線により上記呼出制御信号を上記親局へ送信する衛星通信装置とを備えたものである。
請求項10の発明に係る親局は、衛星を経由するCSC回線により子局から送信される回線割当要求に基づき、上記子局と相手子局との間で行う衛星通信の通信回線を割り当てる親局において、上記子局に接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出す呼出信号に基づき上記子局から送信される呼出制御信号を上記CSC回線及び上記通信回線とは別に設けた制御回線により受信する親局衛星通信装置と、この親局衛星通信装置により受信した呼出制御信号に基づき、上記相手IP電話のアドレス情報を検索する検索手段とを備え、検索結果に基づき生成する応答信号を上記子局へ上記制御回線により送信するものである。
請求項11の発明に係る衛星通信方法は、衛星を経由する第1のCSC回線により子局から回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当てて上記子局と相手子局との間で衛星通信を行い、上記子局を含む子局グループに設けた管理局から衛星を経由する第2のCSC回線により信号を送信して上記子局グループに含まれる子局を管理する衛星通信方法において、上記子局に接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出す呼出信号に基づき、上記子局から上記管理局へ上記第2のCSC回線により送信する呼出制御信号を生成し、この呼出制御信号を受信した上記管理局において上記相手IP電話のアドレス情報を検索し、上記子局へ上記第2のCSC回線により応答信号を送信するものである。
請求項12の発明に係る子局は、衛星を経由する第1のCSC回線により回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当てられて相手子局との間で衛星通信を行い、自局を含む子局グループに設けられ、上記子局グループに含まれる子局を管理する管理局からの信号を、衛星を経由する第2のCSC回線により受信する子局において、接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出す呼出信号に基づき、上記管理局へ送信する呼出制御信号を生成する衛星GW装置と、上記第2のCSC回線により上記呼出制御信号を上記制御局へ送信する衛星通信装置とを備えたものである。
請求項13の発明に係る子局は、衛星を経由する第1のCSC回線により回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当てられて相手子局との間で衛星通信を行い、自局を含む子局グループに設けられ、上記子局グループに含まれる子局を管理する管理局からの信号を、衛星を経由する第2のCSC回線により受信する子局において、接続されたIP電話を含む端末装置群からの受信データから、その受信データが上記IP電話からの呼出信号であることを判別する判別手段、この判別手段により呼出信号であることを判別したときに、上記第2のCSC回線により送信される呼出制御信号を生成するメッセージ処理手段を有する衛星GW装置と、上記第2のCSC回線により上記呼出制御信号を上記管理局へ送信する衛星通信装置とを備えたものである。
請求項14の発明に係る管理局は、衛星を経由する第1のCSC回線により子局から回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当てて上記子局と相手子局との間で衛星通信が行われ、衛星を経由する第2のCSC回線により信号を送信して上記子局を含む子局グループに含まれる子局を管理する管理局において、上記子局に接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出す呼出信号に基づき上記子局から送信される呼出制御信号を上記第2のCSC回線により受信する管理局衛星通信装置と、この管理局衛星通信装置により受信した呼出制御信号に基づき、上記相手IP電話のアドレス情報を検索する検索手段とを備え、検索結果に基づき生成する応答信号を上記子局へ上記第2のCSC回線により送信するものである。
請求項15の発明に係る衛星通信方法は、衛星を経由する第1のCSC回線により子局から回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当てて上記子局と相手子局との間で衛星通信を行い、上記子局を含む子局グループに設けた管理局から衛星を経由する第2のCSC回線により信号を送信して上記子局グループに含まれる子局を管理する衛星通信方法において、上記子局に接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出すSIPプロトコルによるインバイトメッセージに基づき、上記子局から上記管理局へ上記第2のCSC回線により送信するインバイト制御信号を生成し、上記管理局のSIPサーバ装置により、上記相手IP電話のIPアドレスを検索し、検索結果に基づく応答信号を上記第2のCSC回線により上記子局へ送信するものである。
請求項16の発明に係る子局は、衛星を経由する第1のCSC回線により回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当てられて相手子局との間で衛星通信を行い、自局を含む子局グループに設けられ、上記子局グループに含まれる子局を管理する管理局からの信号を、衛星を経由する第2のCSC回線により受信する子局において、接続されたIP電話を含む端末装置群からの受信データから、その受信データが上記IP電話からのSIPプロトコルによるインバイトメッセージであることを判別する判別手段、この判別手段によりSIPプロトコルによるインバイトメッセージであることを判別したときに、上記第2のCSC回線により送信するインバイト制御信号を生成するメッセージ処理手段を有する衛星GW装置と、上記第2のCSC回線により上記インバイト制御信号を上記管理局へ送信する衛星通信装置とを備えたものである。
請求項17の発明に係る管理局は、衛星を経由する第1のCSC回線により子局から回線割り当てを要求し、親局により通信回線を割り当てて上記子局と相手子局との間で衛星通信が行われ、衛星を経由する第2のCSC回線により管理信号を送信して上記子局を含む子局グループに含まれる子局を管理する管理局において、上記子局に接続されたIP電話から上記相手子局に接続された相手IP電話を呼び出すSIPプロトコルによるインバイトメッセージに基づき上記子局から送信されるインバイト制御信号を上記第2のCSC回線により受信する管理局衛星通信装置と、上記相手IP電話のIPアドレスが登録されたロケーションサーバ、上記インバイト制御信号に基づき上記ロケーションサーバに上記相手IP電話のアドレスを問い合わせ、上記ロケーションサーバからの検索結果に基づき応答メッセージを生成するリダイレクトサーバを有するSIPサーバ装置と、上記SIPサーバ装置からの応答メッセージに基づき上記子局へ上記第2のCSC回線により送信する応答信号を生成するメッセージ処理手段とを備えたものである。
請求項1乃至請求項4に記載の発明によれば、子局に接続されたIP電話からの呼出信号に基づき、子局はCSC回線により呼出制御信号を送信し、親局はCSC回線により呼出制御信号を受信して、相手IP電話のアドレス情報を検索し、CSC回線により応答信号を子局へ送信するので、通信回線を割り当てることなく、音声通信開始時のIP電話の呼出信号に対する処理を行うことができる。
請求項5乃至請求項7に記載の発明によれば、子局に接続されたIP電話からのSIPプロトコルによるインバイトメッセージに基づき、子局はCSC回線により相手IP電話のインバイト制御信号を送信し、親局はCSC回線によりインバイト制御信号を受信し、SIPサーバ装置により相手IP電話のIPアドレスを検索し、検索結果に基づく応答信号をCSC回線により子局へ送信するので、通信回線を割り当てることなく、SIPプロトコル制御に従うIP電話について、音声通信開始時のIP電話のインバイトメッセージに対する処理を行うことができる。
請求項8乃至請求項10に記載の発明によれば、子局に接続されたIP電話からの呼出信号に基づき、子局はCSC回線及び通信回線とは別に設けた制御回線により呼出制御信号を送信し、親局は当該制御回線により呼出制御信号を受信して、相手IP電話のアドレス情報を検索し、当該制御回線により応答信号を子局へ送信するので、CSC回線でのDAMA回線制御機能の低下や通信回線での通信効率の低下を防止することができる。
請求項11乃至請求項14に記載の発明によれば、子局に接続されたIP電話からの呼出信号に基づき、子局は第2のCSC回線により呼出制御信号を送信し、管理局は第2のCSC回線により呼出制御信号を受信して相手IP電話のアドレス情報を検索し、第2のCSC回線により応答信号を子局へ送信するので、通信回線を割り当てることなく、音声通信開始時のIP電話の呼出信号に対する処理を行うことができる。
請求項15乃至請求項17に記載の発明によれば、子局に接続されたIP電話からのSIPプロトコルによるインバイトメッセージに基づき、子局は第2のCSC回線により相手IP電話のインバイト制御信号を送信し、管理局は第2のCSC回線によりインバイト制御信号を受信し、SIPサーバ装置により相手IP電話のIPアドレスを検索し、検索結果に基づく応答信号を第2のCSC回線により子局へ送信するので、てIP電話のアドレス情報をロケーションサーバに登録するので、通信回線を割り当てることなく、SIPプロトコル制御に従うIP電話について、音声通信開始時のIP電話のインバイトメッセージに対する処理を行うことができる。
実施の形態1
この発明の実施の形態1に係る衛星通信方法、子局及び親局を図1乃至図11を用いて説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係る衛星通信システムの構成を表す構成図である。図1において、1は親局、2は子局、3は通信衛星であり、4は子局2から親局1へ通信衛星3を介して制御信号を送信する上りCSC回線であり、5は親局1から子局2へ通信衛星3を介して制御信号を送信する下りCSC回線である。この上りCSC回線4により、子局2から通信回線の割り当てを要求する回線割当要求信号を親局1へ送信し、親局1において子局間の通信回線6を割り当てる。割り当てられた通信回線6の回線情報は、下りCSC回線5により回線割当応答信号として親局1から子局2および通信相手となる他の子局2へ送信される。この回線割当応答信号を受信した子局2と相手子局2との間で通信衛星3を介した通信回線6により通信が行われる。この通信回線6は親局1と子局2との間の通信においても回線割り当てされるものである。図2は、使用する回線の周波数軸上での配置を表す模式図である。図2に示すように、使用する回線は、上りCSC回線4、下りCSC回線5及び複数の通信回線6であり、上りCSC回線4及び下りCSC回線5は固定的に割り当てており、複数の通信回線6は、衛星通信システムに割り当てられた周波数帯域において、上述のように子局2からの要求に基づき親局1によって適宜割り当てられるものである。上りCSC回線4及び下りCSC回線5は元々DAMA方式を成立させる制御用の回線であり、この回線において後述するIP電話による音声通信のための各種処理信号を送受信すると回線が混雑し、本来のDAMA制御が十分に機能しなくなることも予測し得る。その場合には、IP電話による音声通信のための各種処理信号は、上りCSC回線4及び下りCSC回線5の代わりに、CSC回線及び通信回線とは別に、子局1および親局2間に上り及び下り制御回線(図2には図示しない。)を設け、この制御回線において送受信するようにしてもよい。
次に親局1及び子局2の構成について説明する。図3はこの発明の実施の形態1に係る子局及び親局の構成を表す構成図である。図3に示す親局1において、7は通信衛星3との間で無線波の送受信、変復調及び信号処理を行う親局衛星通信装置、8はDAMA回線制御及びSIP処理を行う回線制御装置、9はSIPサーバ装置である。親局衛星通信装置7において、10は通信衛星3との間で電波の送受信を行う送受信機であり、信号の周波数変換や増幅等を行う。11は送受信する制御信号を変復調するCSC回線変復調部であり、PSK(位相シフト変復調)等の各種変復調方式に基づき、制御信号を変復調する。12は送信信号のフレーム処理及び誤り訂正符号処理、受信信号の誤り訂正処理及びフレーム処理を行う信号処理部である。回線制御装置8において、13はDAMA方式の回線制御を行うDAMA回線制御部であり、上りCSC回線4により子局2から受信する制御信号による制御処理、及び下りCSC回線5により子局2へ送信する制御信号の生成を行う。14は子局2からの制御信号がSIPメッセージである場合に、SIPメッセージに基づく処理を行うSIPメッセージ処理部である。SIPサーバ装置9において、15は子局2からのRegister(レジスター:登録)メッセージを受け付けるレジストラサーバ、16はレジストラサーバ15からの登録情報を記録するロケーションサーバ、17は子局2からのInviteメッセージに対し、ロケーションサーバ16に着信側情報を問い合わせ、着信側情報を発信側に知らせるメッセージを生成するリダイレクトサーバである。
図3に示す子局2および接続される装置の構成について説明する。18はIP端末、19はIP電話であり、IP端末18は他の子局2に接続されるIP端末18との間で主としてデータ通信を行うための装置であり、IP電話19は他の子局2に接続されるIP電話19との間で主として音声通信を行う装置である。このIP端末18とIP電話19はインターネットプロトコルに従うパケット通信が行える装置であり、IP端末18には音声通信機能を持たせることも可能であり、そのようなIP端末18の音声通信機能は本発明にいうIP電話に含まれるものとする。また、子局2はインタフェース装置20(以下、I/F20と記載する。)を介して、外部の他ネットワーク22とも接続され、この接続には、一般にプロキシサーバ21を経由する。図3に示す子局2において、23は通信衛星3との間で無線波の送受信、変復調及び信号処理を行う衛星通信装置、24はIP端末18やIP電話19による通信を子局2の衛星通信装置23を介して行うために、データや音声データの伝送処理を行う衛星ゲートウェイ装置(以下、衛星GW装置と記載する。)である。衛星通信装置23において、25は通信衛星3との間で電波の送受信を行う送受信機であり、信号の周波数変換や増幅等を行う。26は送受信する制御信号を変復調するCSC回線変復調部であり、PSK(位相シフト変復調)等の各種変復調方式に基づき、制御信号を変復調する。27は送受信する通信信号を変復調する通信回線変復調部であり、PSK(位相シフト変復調)等の各種変復調方式に基づき、通信信号を変復調する。28は送信信号のフレーム処理及び誤り訂正符号処理、受信信号の誤り訂正処理及びフレーム処理を行う信号処理部である。29はCSC回線変復調部26により受信した回線割当応答信号に基づき通信回線変復調部27の送受信周波数や帯域の制御を行う制御部である。衛星GW装置24において、30はIP端末18やIP電話19による通信における伝送データの識別を行い、衛星通信装置23と、IP端末18及びIP電話19との間で伝送データの受け渡しを行う伝送制御部であり、31は伝送されるデータがSIPプロトコルによるメッセージである場合に、そのメッセージ処理を行うSIP処理部である。32はSIP処理部31にて処理するSIPメッセージに含まれるIP電話19の識別情報を記憶する識別情報記憶部である。
図3に示す構成は、IP電話の処理がSIPプロトコルにより行われる例について示すものであるが、同種のIP電話用通信処理を行うプロトコルに代替することができ、例えば、図3に示す、SIPサーバ装置9は、その代替されるプロトコルの実行に用いられるサーバ装置でよく、また親局1内のSIPメッセージ処理部14及び子局2内のSIP処理部31はそれぞれ、代替されるプロトコルにおいて、SIPメッセージ処理部14及びSIP処理部31と同様な処理を行うものとすればよい。
図3に図示しないが、親局1の親局衛星通信装置7内には、子局2の衛星通信装置23内の通信回線変復調部27に相当する回路部が、親局1内には、子局2の衛星GW装置24に相当する装置があり、親局1に接続されるIP端末やIP電話、またインタフェースを介した他のネットワークの装置が親局1を利用して、通信衛星を介した通信回線6により、複数の子局に接続されたIP端末等との間で通信が行えるものである。この親局1において、IP端末等に提供される機能を果たす回路及び装置は、子局1に該当するものであると考えればよい。
この親局1及び子局2の動作について、まず子局に接続されたIP端末18間での通信衛星3を介したデータ通信を行う場合の動作を説明する。伝送制御部30は複数のIP端末18からなる端末装置群からの伝送データをバッファリングしながら信号処理部28へ伝送しており、伝送制御部30と信号処理部28へ伝送できる伝送データ量は、衛星通信装置23に割り当てられた通信回線の帯域幅に依存する。子局2は相手子局2とのデータ通信が必要になると、親局1に対して回線割当要求信号を上りCSC回線4により送信する。この回線割当要求信号は相手子局を特定する情報を含むものであり、伝送制御部30にて生成され、信号処理部28で信号処理されてCSC回線変復調部26により変調され、送受信機25により送信される。親局1は上りCSC回線4をモニタしており、回線割当要求信号を受信復調し、信号処理して再生する。親局2の信号処理部12により再生されたDAMA回線制御部13に入力され、DAMA回線制御部13はシステム専用帯域(通信システムに与えられる使用できる周波数帯域のこと)中の空き領域を検索し、空き領域に通信回線を割り当て、その中心周波数と帯域幅の情報、及び当該回線割当要求をした子局2と相手子局2とを特定する情報を含む回線割当応答信号を生成し、信号処理部12へ出力する。回線割当応答信号は、信号処理部12により信号処理され、CSC回線変復調部11により変調され、送受信機10から下りCSC回線5により送信される。子局2と相手子局2は、下りCSC回線5をモニタしており、回線割当応答信号を受信すると、これを復調し再生して割り当てられた中心周波数と帯域幅に通信回線変復調部29を設定して子局間での通信を行う。ここで割り当てられる通信回線は子局2から相手子局2への送信回線、相手子局2から子局2への送信回線である。子局2間での通信が終了すると、子局2の伝送制御部20にて通信終了信号が生成されて、上りCSC回線4により親局2へ送信され、親局2は割り当てていた通信回線を開放し、システム専用帯域中の空き領域とする。子局2間での通信は1対のIP端末18間で行われる場合だけでなく、当該子局2間で複数対のIP端末18間で行われる場合もあり、IP端末18の対の増減によりデータ伝送量が増減する。データ伝送量が増減した場合には、子局2の伝送制御部30により帯域変更要求信号を生成して上りCSC回線4により送信し、親局2にて帯域変更要求信号を受信して、DAMA回線制御部13にて通信回線の再割り当てを行うようにしてもよい。親局2のDAMA回線制御部13は回線再割当応答信号を生成して下りCSC回線5により送信し、これを受信した子局2及び相手子局2は通信周波数帯域を変更する。このような通信回線の再割り当てによって、システム専用帯域の柔軟な運用が行えるものである。なお、親局1が子局2との間で通信を開始する場合の回線割当は、直接親局1のDAMA回線制御部13で行い、回線割当応答信号を相手子局2へ下りCSC回線5により送信すればよい。
次に、この親局1及び子局2の動作について、子局に接続されたIP電話19間での通信衛星3を介した音声通信を行う場合の動作を説明する。音声通信を行うためのプロトコルがSIPである場合を例にとって説明するが、他のIP電話通信用のプロトコルについても同様な動作となる。図4はIP電話19の登録処理を表す処理シーケンス図である。IP電話19が音声通信を行うためには、IP電話19からの登録信号に対する処理を行う必要があり、以下ではSIPプロトコルによるRegisterメッセージがIP電話19から発せられた場合の処理を例にとり説明する。まず、IP電話19を子局2に接続したときに静的若しくは動的に割り当てられるIPアドレスを親局1のSIPサーバ装置9に登録する必要がある。図4において、ステップS1により、IP電話19は接続された状態で、登録信号であるSIPメッセージのRegisterメッセージを送信する。このRegisterメッセージには、IP電話19のSIP URI(Uniform Resource Identifier)と現IPアドレスが含まれている。衛星GW装置24内の伝送制御部30は、トランスポート層で伝送されてくるデータ中から、上記のIP電話19が発したSIPメッセージを識別し、SIP処理部31へ転送する。この識別方法の一例として、トランスポート層のプロトコルによるパケット記述内容(IPアドレスやポート番号等の内容)により識別する方法が考えられる。即ち、IP電話19が発するRegisterメッセージの宛先アドレスやポート番号が特定の値(例えば、親局1内のSIPサーバ装置9のIPアドレス、子局2のIPアドレスや、マルチキャストアドレス等)を示していることに基づいて、この特定の値を検知することにより、SIPメッセージであると識別できる。また、SIPメッセージは、一般にリクエスト行、ステータス行、ヘッダー部、空行、ボディ部により構成されており、リクエスト行やヘッダー部等に記述されるSIPプロトコル特有の記述、例えば、RegisterやInvite、SIPバージョン等の記述を検知することにより、SIPメッセージであることを識別するようにしても良く、伝送制御装置30は、種々の方法により、IP端末18及びIP電話19からなる端末装置群から伝送されてくるパケットのうち、IP電話19からのパケットがSIPメッセージであることを識別するようにすることができる。SIP処理部31は、伝送制御装置30から転送されたRegisterメッセージについて、その内容のリクエスト行に記述された“Register”を検知し、このリクエストに対応する登録要求信号を生成するとともに、その後のSIPメッセージの処理に必要となる情報(SIP URI、ドメイン名、プロキシサーバのIPアドレス、子局内でのIP電話の通し番号等の情報)を識別情報記憶部32へ出力する。SIP処理部31が生成した登録要求信号は、伝送制御装置30に入力される。この際、登録要求信号は、上りCSC回線4を用いて親局1へ送信する制御信号として扱われる。伝送制御装置30は、登録要求信号を制御信号として信号処理部28へ出力し、信号処理部28は、登録要求信号をCSC回線変復調26へ出力する。登録要求信号は、CSC回線変復調部26により変調され送受信機25により周波数変換及び増幅され、図4に示すステップS2において、上りCSC回線4により通信衛星3を介して親局1へ送信される。親局2の親局衛星通信装置7は、上りCSC回線4により登録要求信号を受信すると復調等の処理を行った後、ステップS3により回線制御装置8へ入力する。回線制御装置8内のDAMA回線制御部13は、制御信号である登録要求信号の信号識別に基づきSIPメッセージに関する制御信号であることを識別し、その登録要求信号をSIPメッセージ処理部14へ出力する。SIPメッセージ処理部14は登録要求信号に基づき、SIPプロトコルによるRegisterメッセージを再生し、ステップS4によりSIPサーバ装置9内のレジストラサーバ15へ出力し、レジストラサーバ15は再生されたRegisterメッセージに基づき、ロケーションサーバ16に子局2のIP電話19のSIP URIとIPアドレスを登録させる。子局2の衛星GW装置24がIP電話の登録削除を行う場合、又はSIPプロトコルによる登録削除メッセージを衛星GW装置24が受信した場合にも、上りCSC回線4を介して登録削除要求信号を送信し、親局1にて該当する登録情報を削除する。
子局2のSIP処理部31が生成する登録要求信号は、上記のように上りCSC回線4により送信されるが、通常、上りCSC回線4は複数の子局2からの制御信号を受け付ける共通回線として割り当てられており、制御信号を数多く受け付けるためにデータ長が短い。上りCSC回線4における1の制御信号に許されるデータ長がRegisterメッセージ長より十分に長い場合には、SIP処理部31はRegisterメッセージをデータ部とし所定の信号識別等のヘッダ情報を付加して制御信号を生成すればよい。一方、上りCSC回線4における1の制御信号に許されるデータ長がRegisterメッセージ長より短く、1の制御信号で送信できない場合には、SIP処理部31は登録内容ごとに分けて登録要求信号を生成するようにすればよく、この手法について説明する。SIP URIは、例えばaaa@example1.co.jpのような形態をとっており、これを2つに分解し、@の後段部分(ドメイン名)と@の前段部分(ユーザ名)とを分けて登録要求信号を生成する。図5はIP電話19のドメイン名に関する登録要求信号の一例を示す模式図である。図5に示す登録要求信号の書式では、送信元IDに子局IDを、信号識別に制御信号の識別符号(ドメイン名の登録要求信号であることを示す識別符号)を記述する。さらに、信号長、IP電話19の子局2における通し番号、子局番号、及びIP電話19のドメイン名を記述する。図6はIP電話19のユーザ名及びIPアドレスに関する登録要求信号の一例を示す模式図である。図6に示す登録要求信号の書式では、送信元IDに子局IDを、信号識別に制御信号の識別符号(ユーザ名及びIPアドレスの登録要求信号であることを示す識別符号)を記述する。さらに、信号長、IP電話19の省略名、IP電話19の現IPアドレス、有効期限、IP電話19のユーザ名を記述する。IP電話の省略名は、子局番号とIP電話の通し番号によりなる。図7はIP電話が経由するプロキシサーバのIPアドレスに関する登録要求信号の一例を示す模式図である。IP電話19がプロキシサーバ21に接続される他のネットワーク22上に位置している場合にはプロキシサーバのIPアドレスを登録する必要がある。なお、I/F20はプロキシサーバ21と子局2との入出力を管理しており、例えば、衛星通信システムへのアクセス許可管理などを行うものである。図7に示す登録要求信号の書式では、送信元IDに子局IDを、信号識別に制御信号の識別符号(プロキシサーバのIPアドレスの登録要求信号であることを示す識別符号)を記述する。さらに、信号長、子局番号、プロキシサーバのIPアドレス、ドメイン名を記述する。
親局1のSIPメッセージ処理部14において、図5乃至図7の登録要求信号を受け取り、Registerメッセージを再生する。再生するRegisterメッセージは、元々のRegisterメッセージに、子局番号とその子局におけるIP電話の通し番号を付加するようにしてもよい。再生されたRegisterメッセージに基づき、ロケーションサーバにIP電話19のSIP URI及びIPアドレス等の情報を登録する。図8乃至図10は、アドレス検索が容易となるように複数のリストに登録情報を配したものである。図8はIP電話の省略名、ドメイン名、子局番号による登録リストを表すリスト表であり、図9はあるドメイン名に属するSIP URI(@の前段部分)、IPアドレス、有効期限、子局番号による登録リストを表すリスト表であり、図10はドメイン名、子局番号、プロキシサーバのIPアドレスによる登録リストを表すリスト表である。ロケーションサーバ16に、このようなリスト表を設けることにより、その後のInviteメッセージに対する相手先IPアドレスの検索する際に、まずドメイン名が登録されているかどうかを図8に示すリスト表から検索し、ドメイン名がリストに挙がっている場合には、図9に示すドメイン名対応のリスト中のSIP URI(@の前段部分)により、IPアドレスと子局番号とを検索できる。また、図9のリスト中に記述された有効期限に基づき、この有効期限を経過した登録情報を削除することにより、存在しなくなったIP電話の登録情報が保持されつづけることを防ぐ。なお、SIPメッセージ処理部14において再生するRegisterメッセージに子局番号とその子局におけるIP電話の通し番号を付加することができない場合(換言すれば、ロケーションサーバ16に子局番号とIP電話の通し番号を登録しない場合)には、SIPメッセージ処理部14において、IPアドレス又はSIP URIと、子局番号とその子局におけるIP電話の通し番号とを対応づけるリストを作成しておいてもよい。
ロケーションサーバ16にてIP電話19のSIP URI、IPアドレス等の情報の登録が完了すると、図4に示すステップS5により応答メッセージ(メッセージの内容は、例えば処理ステータスにおいて記述される200 OKなどである。)を返信する。回線制御装置2のSIPメッセージ処理部14は応答メッセージに基づき、下りCSC回線5により送信する登録応答信号を生成する。この登録応答信号は、応答メッセージの内容のほか、子局番号とIP電話の通し番号(或いは省略名)を含めておくことにより、送信相手となる子局2と接続されたIP電話19が特定される。登録応答信号はDAMA制御回線部13を介して、ステップS6により親局衛星通信装置7へ入力され、ステップS7において下りCSC回線5により通信衛星3を介して子局2へ送信される。子局2の衛星通信装置23により受信復調した登録応答信号は、衛星GW装置24へ入力され、SIP処理部31において、SIPプロトコルによる応答メッセージを生成し、ステップS8によりIP電話19へ返信する。
親局1に接続されるIP電話19がRegisterメッセージを発する場合には、上記のようなCSC回線を通じた登録処理の必要はなく、伝送制御部30に相当する回路部からSIPメッセージ処理部14へRegisterメッセージを転送し、そのメッセージをレジストラサーバ15へ入力すればよい。応答メッセージは逆の経路をたどる。
以上のように、IP電話19のアドレス等の登録処理を上りCSC回線4及び下りCSC回線5によって行うことにより、親局1と子局2との間で通信回線6を割り当てることなく、或いは既に割り当てられている親局1と子局2との間で通信回線6の伝送量を増加させることなく、SIPプロトコルによるIP電話のアドレス登録を行うことができる。また、IP電話19や他のネットワーク22に接続された端末において、衛星通信向けの特殊な信号を生成して送信したり、受信信号に対する特殊な処理を行う必要がないので、衛星通信系である子局2とIP電話19等の地上ネットワークとの親和性を高めることができる。
先にも述べたとおり、上りCSC回線4及び下りCSC回線5は元々DAMA方式を成立させる制御用の回線であり、この回線においてIP電話による音声通信のための各種処理信号を送受信すると回線が混雑し、本来のDAMA制御が十分に機能しなくなることも予測し得る。その場合には、IP電話による音声通信のための各種処理信号は、上りCSC回線4及び下りCSC回線5の代わりに、CSC回線及び通信回線とは別に設けた子局1および親局2間の上り及び下り制御回線(図2には図示しないが、上りCSC回線4及び下りCSC回線5に相当する。)を設け、この制御回線により送受信するようにしてもよい。このような制御回線を設けることよって、CSC回線および通信回線においてIP電話の接続処理が大量に発生しDAMAの回線制御機能が損なわれて通信効率が低下することを防止することができる。
次に、IP電話19から相手IP電話19を特定した呼出信号が発せられた場合の処理について説明する。このIP電話19から発せられる呼出信号に対する処理のうち、以下ではSIPプロトコルによるInviteメッセージが発せられた場合の処理を例にとり説明する。図11はInviteメッセージに対する処理を表す処理シーケンス図である。ステップS9によりIP電話19の操作者が相手先をダイヤルすると、IP電話19にて呼出信号であるInviteメッセージが生成され、ステップS10により衛星GW装置24内の伝送制御部30へ送信される。この段階でのInviteメッセージは、相手IP電話19のIPアドレスは不明であるため、親局1内のSIPサーバ装置9のIPアドレスや子局2のIPアドレス、或いはマルチキャストアドレス等の特定のアドレス宛てに設定されている。伝送制御部30はRegisterメッセージの場合と同様に、InviteメッセージについてもSIPメッセージであることを識別し、SIP処理部31へ転送する。即ち、Inviteメッセージの宛先が特定のアドレスやポート番号等を示していることを検知してSIPメッセージであることを識別したり、Inviteメッセージ中のSIPプロトコル特有の記述、例えば、Invite、SIPバージョン等の記述を検知することにより、SIPメッセージであることを識別するようにしても良い。SIP処理部31は、伝送制御部30から転送されたInviteメッセージについて、その内容のリクエスト行に記述された“Invite”を検知し、Inviteメッセージの内容を上りCSC回線4により送信するためにCSC回線フォーマットの制御信号であるインバイト制御信号を生成するとともに、その後のSIPメッセージの処理に必要となる情報(発呼したIP電話19のSIP URI、ドメイン名、プロキシサーバのIPアドレス、子局内でのIP電話19の通し番号、相手IP電話のSIP URI、問合せ番号等の情報)を識別情報記憶部32へ出力する。一般にIP電話19から出力される呼出信号に対して、本発明では、この呼出信号を親局1へ上りCSC回線4により送信するために、呼出信号に基づき上りCSC回線4の制御信号フォーマットによる呼出制御信号を生成するものとし、上記のインバイト制御信号は、SIPプロトコルである場合の呼出制御信号の一形式にあたる。インバイト制御信号は、自局の子局ID、信号識別、信号長、自局の子局番号、問合せ番号、相手IP電話19のSIP URIを含むものとする。問合せ番号はインバイト制御信号を子局2において特定する一連番号とする。SIP URIのデータ長が上りCSC回線4において1の制御信号に許されるデータ長より長い場合には、SIP URIを@の前後で分割してインバイト制御信号を生成すれば良く、これはRegisterメッセージに対応する登録要求信号をSIP処理部31が生成する場合の手法と同様である。インバイト制御信号は伝送制御部30、信号処理部28、CSC回線変復調部26を経由して送受信機25から、図11に示すステップS11において、上りCSC回線4により送信される。
親局衛星通信装置7は上りCSC回線4によりインバイト制御信号を受信し、これを復調および信号処理して、ステップS12により、回線制御装置8へ出力する。回線制御装置8内のSIPメッセージ処理部14はインバイト制御信号に基づき相手IP電話19のSIP URIを含むInviteメッセージを生成し、ステップS13によりSIPサーバ装置9内のリダイレクトサーバ17へ出力する。リダイレクトサーバ17はInviteメッセージを受けて、ロケーションサーバ16へ相手IP電話19のSIP URIに対応するIPアドレス、その相手子局19が接続されている子局番号及び相手IP電話19の通し番号を検索するように照会する。ロケーションサーバ16は、図8乃至図10に示したような登録リストをもとに、相手IP電話19のIPアドレス、子局番号、通し番号をリダイレクトサーバ17へ返答し、リダイレクトサーバ17は、相手IP電話19のIPアドレス、接続される子局番号、通し番号を含む応答メッセージを生成して、図11に示すステップS14により、SIPメッセージ処理部14へ出力する。SIPメッセージ処理部14は、リダイレクトサーバ17からの応答メッセージに基づき、応答信号を生成し、ステップS15により、親局衛星通信装置7へ出力する。応答信号は、子局番号、問合せ番号(先のアドレス問合せ信号に記述されていたもの)、相手IP電話19のIPアドレス、接続される子局番号、通し番号を含むものとする。なお、SIPメッセージ処理部14において、IPアドレス又はSIP URIと、子局番号及びその子局におけるIP電話の通し番号とを対応づけるリストを作成している場合には、SIPメッセージ処理部14は、ロケーションサーバ16から相手IP電話19のIPアドレスが返信され、SIPメッセージ処理部14におけるリストにより相手IP電話19の子局番号と通し番号を検索し、アドレス応答信号を生成する。親局衛星通信装置7は生成された応答信号を、図11に示すステップS16において、下りCSC回線5により送信する。
親局1の回線制御装置13は、この応答信号によって、近時に子局間でのIP電話19による音声通信が開始されることが判明するので、回線割当要求信号を子局2から受信していない状態において、インバイト制御信号を発した子局2と相手IP電話が所属する相手子局2との間の通信回線の割り当てを行い、図4に示すステップS17により、親局衛星通信装置7へ回線割当応答信号を出力する。親局衛星通信装置7は、ステップS18において、回線割当応答信号を下りCSC回線5により、インバイト制御信号を発した子局と相手IP電話が所属する子局へ送信する。このステップS18による回線割当応答信号の送信を、ステップS16によるアドレス応答信号の送信に引き続き直後に行うことにより、IP電話19間の音声通信をより速やかに開始することが可能となる。回線割当応答信号をステップS18により受信した子局2及び相手子局2は、割り当てられた通信回線を通信回線変復調部27に設定する(ステップS19)。
一方、ステップS16において、下りCSC回線4により応答信号を受信した子局2では、SIP処理部31により応答信号に基づくSIPプロトコルによる応答メッセージを生成する。応答メッセージは、SIPプロトコルによる応答コードに基づき、例えば応答コード300番台のリダイレクト応答とする。このリダイレクト応答には、アドレス応答信号により取得した相手IP電話のIPアドレスが記述される。SIP処理部31は応答メッセージを伝送制御部30へ出力し、伝送制御部30は、ステップS20により応答メッセージを発呼したIP電話19へ送信する。
ステップS20により応答メッセージを受信したIP電話19は、リダイレクト応答の内容に基づき、相手IP電話19のIPアドレスを指定する再度のInviteメッセージを生成し、ステップS21により、子局2の衛星GW装置24へ送信する。衛星GW装置24において、Inviteメッセージに記述されたIPアドレスを伝送制御部30において検出し、SIP処理部31は識別情報記憶部32へそのIPアドレスに対応する子局番号を検索する。検索により得られる子局番号に基づき伝送制御部30はその子局番号あての伝送データとして、Inviteメッセージを信号処理部28へ出力する。信号処理部28はInviteメッセージをフレーム処理等行って通信回線変復調部27へ出力し、通信回線変復調部27はステップS19において設定された通信回線における変調処理を行い、送受信機25からInviteメッセージを、ステップS22において、通信回線6により送信する。Inviteメッセージを通信回線6により受信した相手子局2においては、Inviteメッセージに記述される相手IP電話19のIPアドレス又はSIP URIにより接続されたIP電話19を特定し、InviteメッセージをステップS23により該当するIP電話19へ送信する。ステップS23によりInviteメッセージを受信した相手IP電話19においては、呼び出し音が発せられ、また、応答コードの100番台にあたるRinging暫定応答や、200番台の成功応答が生成されて、発呼したIP電話19へ返信される。これらの応答メッセージやその後のIP電話間の音声通話信号の伝送は、ステップS19で設定された子局間の通信回線6により行われる。
以上のように、最初に生起されたInviteメッセージに伴ないインバイト制御信号を子局2にて生成し、CSC回線により子局2から親局1へ送信することによって、親局1と子局2との間で通信回線6を割り当てることなく、或いは既に割り当てられている親局1と子局2との間で通信回線6の伝送量を増加させることなく、SIPプロトコルによるIP電話のインバイトメッセージに対するIPアドレス解決やその応答処理を行うことができる。また、IP電話19や他のネットワーク22に接続された端末において、衛星通信向けの特殊な信号を生成して送信したり、受信信号に対する特殊な処理を行う必要がないので、衛星通信系である子局2とIP電話19等の地上ネットワークとの親和性を高めることができる。
また、IP電話による音声通信のための各種処理信号は、上りCSC回線4及び下りCSC回線5の代わりに、CSC回線及び通信回線とは別に設けた子局1および親局2間の上り及び下り制御回線(図2には図示しないが、上りCSC回線4及び下りCSC回線5に相当する。)を設け、この制御回線により送受信するようにしてもよく、上記のInviteメッセージに対するInvite制御信号及び応答信号をこの制御回線により子局2と親局1との間で送受信することにより、CSC回線および通信回線においてIP電話の接続処理が大量に発生しDAMAの回線制御機能が損なわれて通信効率が低下することを防止することができる。
実施の形態2
この発明の実施の形態2に係る衛星通信方法、子局、親局及び管理局を図12乃至図17を用いて説明する。図12はこの発明の実施の形態2に係る衛星通信システムの構成を表す構成図である。図12において、33は複数の子局2を含む子局グループであり、34は子局グループに含まれる各子局2を管理する管理局である。35は親局1と子局2との間で回線割当要求信号や回線割当応答信号などの制御信号を通信衛星3を経由して送受信するための第1のCSC回線であり、子局2から親局1へ送信するための第1の上りCSC回線と、親局1から子局2へ送信するための第1の下りCSC回線とにより構成する。この第1のCSC回線35は、実施の形態1において説明した上りCSC回線4及び下りCSC回線5により構成されるCSC回線に相当するものである。第1の上りCSC回線により、子局2から通信回線の割り当てを要求する回線割当要求信号を親局1へ送信し、親局1において子局間の通信回線6を割り当て、割り当てられた通信回線6の回線情報は、第1の下りCSC回線により回線割当応答信号として親局1から子局2および通信相手となる他の子局2へ送信される。この回線割当応答信号を受信した子局2と相手子局2との間で通信衛星3を介した通信回線6により通信が行われる。36は管理局34と子局グループ33に含まれる子局2との間で制御信号や情報信号などの信号を送受信するための第2のCSC回線である(制御信号及び情報信号を送受信する場合と、制御信号または情報信号の一方のみを送受信する場合とがあり、これは管制局34が子局2をどのように管理するかについてのシステム要求に基づく。)。図13は使用する回線の周波数軸上での配置を表す模式図である。使用する回線は、第1のCSC回線35、第2のCSC回線36及び複数の通信回線6である。第1のCSC回線35は第1の上りCSC回線35a及び第1の下りCSC回線35bよりなり、第2のCSC回線36は第2の上りCSC回線36a及び第2の下りCSC回線36bよりなる。第1のCSC回線35及び第2のCSC回線36は固定的に割り当てられており、複数の通信回線6は衛星通信システムに割り当てられた周波数帯域において、上述のように子局2からの要求に基づき親局1によって適宜割り当てられるものである。第1のCSC回線35は、主としてDAMA方式の通信回線割り当てを成立させる制御用の回線である。第2のCSC回線36は、子局グループ33に含まれる子局2を管理局34により管理する信号用の回線であるが、実施の形態2においては、この第2のCSC回線36により、子局2と管理局34との間でIP電話による音声通信のための各種処理信号を送受信するようにする。
次にこの発明の実施の形態2に係る子局2、管理局34及び親局1の構成について図14及び図15を用いて説明する。図14はこの発明の実施の形態2に係る子局及び管理局の構成を表す構成図である。図14に示す管理局34において、37は通信衛星3との間で信号の送受信、変復調及び信号処理を行う管理局衛星通信装置、38は子局グループ33に属する子局2の管理及びSIP処理を行う管理装置である。管理局衛星通信装置37における送受信機10、CSC回線変復調部11及び信号処理部12は図3において同一符号を付した部分に相当し、管理局通信装置37は第2のCSC回線36により通信衛星3との間で信号の送受信を行うものとする。管理装置38において、39は子局グループ33に属する子局2の管理のための処理を行う管理部であり、子局2への制御信号や情報信号を生成し管理局衛星通信装置37へ出力し、管理局衛星通信装置37から入力される子局2の応答信号に基づき子局2の管理を行う。また、管理部39はIP電話による音声通信のための各種処理信号に基づく制御信号を信号処理部12とSIPメッセージ処理部14との間にあって入出力する。一方、子局2の衛星通信装置23は、通信回線6、第1のCSC回線35及び第2のCSC回線36により、通信衛星を介した信号の送受信を行い、衛星通信装置23内のCSC回線変復調部26は、親局1との間の第1のCSC回線35と、管理局34との間の第2のCSC回線36との両方において送受信する制御信号や情報信号を変復調し、送受信機25と信号処理部28との間で信号を入出力する。図15はこの発明の実施の形態2に係る親局の構成を表す構成図である。図15において、40はDAMA回線制御を行う回線制御装置であり、回線制御装置40内には、DAMA方式の回線制御を行うDAMA回線制御部13を備える。図14及び図15に示す管理局34と親局1とは各種通信端末が接続された一子局として動作するために図14に示す子局の構成をさらに備えるものであってもよい。なお、図14及び図15について本実施の形態においてとくに説明するもののほか、図14及び図15において図3と同一の符号を付した部分及び回路は、図3におけるそれらの部分及び回路と同一又は相当する部分及び回路を示す。また、図14に示す構成は、IP電話の処理がSIPプロトコルにより行われる例について示すものであるが、同種のIP電話用通信処理を行うプロトコルに代替することができ、例えば、図14に示すSIPサーバ装置9は、その代替されるプロトコルの実行に用いられるサーバ装置でよく、また管理局34内のSIPメッセージ処理部14及び子局2内のSIP処理部31はそれぞれ、代替されるプロトコルにおいて、SIPメッセージ処理部14及びSIP処理部31と同様な処理を行うものとすればよい。
親局1及び子局2の動作について、子局に接続されたIP端末18間での通信衛星3を介したデータ通信を行う場合の動作を説明する。伝送制御部30は複数のIP端末18からなる端末装置群からの伝送データをバッファリングしながら信号処理部28へ伝送しており、伝送制御部30と信号処理部28へ伝送できる伝送データ量は、衛星通信装置23に割り当てられた通信回線の帯域幅に依存する。子局2は相手子局2とのデータ通信が必要になると、親局1に対して回線割当要求信号を第1の上りCSC回線35aにより送信する。この回線割当要求信号は相手子局を特定する情報を含むものであり、伝送制御部30にて生成され、信号処理部28で信号処理されてCSC回線変復調部26により変調され、送受信機25により送信される。親局1は第1の上りCSC回線35aをモニタしており、回線割当要求信号を受信復調し、信号処理して再生する。親局2の信号処理部12により再生された回線割当要求信号はDAMA回線制御部13に入力され、DAMA回線制御部13はシステム専用帯域(通信システムに与えられる使用できる周波数帯域のこと)中の空き領域を検索し、空き領域に通信回線を割り当て、その中心周波数と帯域幅の情報、及び当該回線割当要求をした子局2と相手子局2とを特定する情報を含む回線割当応答信号を生成し、信号処理部12へ出力する。回線割当応答信号は、信号処理部12により信号処理され、CSC回線変復調部11により変調され、送受信機10から第1の下りCSC回線35bにより送信される。子局2と相手子局2は、第1の下りCSC回線35bをモニタしており、回線割当応答信号を受信すると、これを復調し再生して割り当てられた中心周波数と帯域幅に通信回線変復調部27を設定して子局間での通信を行う。ここで割り当てられる通信回線は子局2から相手子局2への送信回線、相手子局2から子局2への送信回線である。子局2間での通信が終了すると、子局2の伝送制御部30にて通信終了信号が生成されて、第1の上りCSC回線35aにより親局2へ送信され、親局2は割り当てていた通信回線を開放し、システム専用帯域中の空き領域とする。子局2間での通信は1対のIP端末18間で行われる場合だけでなく、当該子局2間で複数対のIP端末18間で行われる場合もあり、IP端末18の対の増減によりデータ伝送量が増減する。データ伝送量が増減した場合には、子局2の伝送制御部30により帯域変更要求信号を生成して第1の上りCSC回線35aにより送信し、親局2にて帯域変更要求信号を受信して、DAMA回線制御部13にて通信回線の再割り当てを行うようにしてもよい。親局2のDAMA回線制御部13は回線再割当応答信号を生成して第1の下りCSC回線35bにより送信し、これを受信した子局2及び相手子局2は通信周波数帯域を変更する。このような通信回線の再割り当てによって、システム専用帯域の柔軟な運用が行えるものである。なお、親局1が子局2との間で通信を開始する場合の回線割当は、直接親局1のDAMA回線制御部13で行い、回線割当応答信号を相手子局2へ第1の下りCSC回線35bにより送信すればよい。
次に、管理局34及び子局2の動作について、管理局34が子局グループ33に含まれる子局2を管理する処理について説明する。管理局34は第2のCSC回線36により子局グループ33に属する子局2との間で制御信号や情報信号等の信号を送受信して子局グループ33に含まれる子局2の管理を行う。この第2のCSC回線36により管理局34が送信する制御信号には、ヘルスチェック信号や故障モニタ信号、強制回線接続信号、強制回線切断信号等がある。ヘルスチェック信号は子局2が正常動作しているかどうかについて子局2からの応答を促す制御信号であり、このヘルスチェック信号を第2の下りCSC回線36bにより受信した子局2は、ヘルスチェック応答信号であることを示す信号識別、子局ID、子局番号、正常動作中であるか否かを示す符号等を含む応答信号を生成して、第2の上りCSC回線回線36aにより通信衛星3を介して管理局34へ送信する。管理局34では、このヘルスチェック応答信号を受信して、子局グループ33内の各子局2が正常動作しているかどうかを管理部39にて管理する。故障モニタ信号は、子局2内に故障箇所があるかどうかについて子局2からの応答を促す制御信号である。また、強制回線接続信号は、子局グループ33内の特定の子局間での通信回線接続を促す制御信号であり、強制回線切断信号は、子局グループ33内の特定の子局間で接続中の通信回線を切断するよう促す制御信号である。管理局34が第2の下りCSC回線36bにより送信する強制回線接続信号や強制回線切断信号を受信した子局2は、第1の上りCSC回線35aにより親局1へ回線割当要求信号や通信終了信号を送信する。管理局34が第2のCSC回線36により送信する情報信号には、子局グループ33に含まれる子局2が受信して有効に利用することができる種々の情報が含まれる。このような情報には、例えば、気象情報や災害情報、交通情報などの情報のほか、その子局グループ33が作成された目的に応じて各子局が共有するような情報などが考えられる。管理局34から子局グループ33内の各子局2へ送信する通達なども情報信号に含まれる。管理局34から第2の下りCSC回線36bにより送信される情報信号に対して、これを受信した子局2が応答信号を送信する場合と送信しない場合があり、これはその情報信号の性質により決まる。情報信号が子局2によって確かに受信されたことを管理局34にて確認する必要がある場合には、その情報信号に対する受領応答信号を子局2において生成し、第2の上りCSC回線36aにより管理局34へ送信し、この受領応答信号を受信した管理局34内の管理部39にて、子局グループ33に含まれる各子局2における情報信号の受領の有無を管理する。
次に、管理局34及び子局2の動作について、子局に接続されたIP電話19間での通信衛星3を介した音声通信を行う場合の動作を説明する。音声通信を行うためのプロトコルがSIPである場合を例にとって説明するが、他のIP電話通信用のプロトコルについても同様な動作となる。図16はIP電話19の登録処理を表す処理シーケンス図である。IP電話19が音声通信を行うためには、IP電話19からの登録信号に対する処理を行う必要があり、以下ではSIPプロトコルによるRegisterメッセージがIP電話19から発せられた場合の処理を例にとり説明する。まず、IP電話19を子局2に接続したときに静的若しくは動的に割り当てられるIPアドレスを管理局34のSIPサーバ装置9に登録する必要がある。図16において、ステップS24により、IP電話19は接続された状態で、登録信号であるSIPメッセージのRegisterメッセージを送信する。このRegisterメッセージには、IP電話19のSIP URIと現IPアドレスが含まれている。衛星GW装置24内の伝送制御部30は、トランスポート層で伝送されてくるデータ中から、上記のIP電話19が発したSIPメッセージを識別し、SIP処理部31へ転送する。この識別方法については実施の形態1において説明しているので、ここでの説明は省略する。SIP処理部31は、伝送制御装置30から転送されたRegisterメッセージについて、その内容のリクエスト行に記述された“Register”を検知し、このリクエストに対応する登録要求信号を生成するとともに、その後のSIPメッセージの処理に必要となる情報(SIP URI、ドメイン名、プロキシサーバのIPアドレス、子局内でのIP電話の通し番号等の情報)を識別情報記憶部32へ出力する。SIP処理部31が生成した登録要求信号は、伝送制御装置30に入力される。この際、登録要求信号は、第2の上りCSC回線36aを用いて管理局34へ送信する制御信号として扱われる。伝送制御装置30は、登録要求信号を制御信号として信号処理部28へ出力し、信号処理部28は、登録要求信号をCSC回線変復調26へ出力する。登録要求信号は、CSC回線変復調部26により変調され送受信機25により周波数変換及び増幅され、図16に示すステップS25において、第2の上りCSC回線36aにより通信衛星3を介して管理局34へ送信される。管理局34の管理局衛星通信装置37は、第2の上りCSC回線36aにより登録要求信号を受信すると復調等の処理を行った後、ステップS26により管理装置38へ入力する。管理装置38内の管理部39は、制御信号である登録要求信号の信号識別に基づきSIPメッセージに関する制御信号であることを識別し、その登録要求信号をSIPメッセージ処理部14へ出力する。SIPメッセージ処理部14は登録要求信号に基づき、SIPプロトコルによるRegisterメッセージを再生し、ステップS27によりSIPサーバ装置9内のレジストラサーバ15へ出力し、レジストラサーバ15は再生されたRegisterメッセージに基づき、ロケーションサーバ16に子局2のIP電話19のSIP URIとIPアドレスを登録させる。子局2の衛星GW装置24がIP電話の登録削除を行う場合、又はSIPプロトコルによる登録削除メッセージを衛星GW装置24が受信した場合にも、第2の上りCSC回線36aを介して登録削除要求信号を送信し、管理局34にて該当する登録情報を削除する。
子局2のSIP処理部31が生成する登録要求信号は、上記のように第2の上りCSC回線36aにより送信されるが、通常、第2の上りCSC回線36aは複数の子局2からの応答信号等を受け付ける共通回線として割り当てられており、応答信号等を数多く受け付けるためにデータ長が短い。第2の上りCSC回線36aにおける1の応答信号等に許されるデータ長がRegisterメッセージ長より十分に長い場合には、SIP処理部31はRegisterメッセージをデータ部とし所定の信号識別等のヘッダ情報を付加して登録要求信号を生成すればよい。一方、第2の上りCSC回線36aにおける1の応答信号に許されるデータ長がRegisterメッセージ長より短く、1の登録要求信号で送信できない場合には、SIP処理部31は登録内容ごとに分けて登録要求信号を生成するようにすればよく、この手法については実施の形態1において説明したとおりであり、ここでの説明を省略する。
管理局34のSIPメッセージ処理部14は、図16に示すステップ26により登録要求信号を受け取り、Registerメッセージを再生する。レジストラサーバ15は再生されたRegisterメッセージに基づき、ロケーションサーバ16にIP電話19のSIP URI及びIPアドレス等の情報を登録する。ロケーションサーバ16やSIPメッセージ処理部14での登録内容については、実施の形態1において説明しているので説明を省略する。
ロケーションサーバ16にてIP電話19のSIP URI、IPアドレス等の情報の登録が完了すると、図16に示すステップS28により応答メッセージ(メッセージの内容は、例えば処理ステータスにおいて記述される200 OKなどである。)を返信する。管理装置38のSIPメッセージ処理部14は応答メッセージに基づき、第2の下りCSC回線36bにより送信する登録応答信号を生成する。この登録応答信号は、応答メッセージの内容のほか、子局番号とIP電話の通し番号(或いは省略名)を含めておくことにより、送信相手となる子局2と接続されたIP電話19が特定される。登録応答信号は管理部39を介して、ステップS29により管理局衛星通信装置37へ入力され、ステップS30において第2の下りCSC回線36bにより通信衛星3を介して子局2へ送信される。子局2の衛星通信装置23により受信復調した登録応答信号は、衛星GW装置24へ入力され、SIP処理部31において、SIPプロトコルによる応答メッセージを生成し、ステップS31によりIP電話19へ返信する。
管理局34に接続されるIP電話19がRegisterメッセージを発する場合には、上記のようなCSC回線を通じた登録処理の必要はなく、伝送制御部30に相当する回路部からSIPメッセージ処理部14へRegisterメッセージを転送し、そのメッセージをレジストラサーバ15へ入力すればよい。応答メッセージは逆の経路をたどる。
以上のように、IP電話19のアドレス等の登録処理を第2の上りCSC回線36a及び第2の下りCSC回線36bによって行うことにより、管理局34や親局1と子局2との間で通信回線6を割り当てることなく、或いは既に割り当てられている管理局34や親局1と子局2との間での通信回線6の伝送量を増加させることなく、SIPプロトコルによるIP電話のアドレス登録を行うことができる。また、親局1が使用する第1のCSC回線35での制御信号を増大させることなく、SIPプロトコルによるIP電話のアドレス登録を行うことができる。IP電話19や他のネットワーク22に接続された端末において、衛星通信向けの特殊な信号を生成して送信したり、受信信号に対する特殊な処理を行う必要がないので、衛星通信系である子局2とIP電話19等の地上ネットワークとの親和性を高めることができる。
管理局34は、上記のように自局が管理する子局グループ33内の子局2に接続されたIP電話19の登録を通信衛星3を介して行うが、他の管理局34に登録されている他の子局グループ33の子局2に接続されたIP電話19の登録内容を、他の管理局34からの連絡を受けて登録してもよく、このような他の管理局34からの登録内容の連絡は、通信衛星3を介した通信回線や、別途設けられる有線通信経路(例えばインターネットなど)を介して行うことができる。他の子局グループ33に含まれる子局2に接続されたIP電話19の登録内容を管理局34が有することにより、IP電話19が音声通信できる相手IP電話の範囲を広げることができる。
次に、IP電話19から相手IP電話19を特定した呼出信号が発せられた場合の処理について説明する。このIP電話19から発せられる呼出信号に対する処理のうち、以下ではSIPプロトコルによるInviteメッセージが発せられた場合の処理を例にとり説明する。図17はInviteメッセージに対する処理を表す処理シーケンス図である。ステップS32によりIP電話19の操作者が相手先をダイヤルすると、IP電話19にて呼出信号であるInviteメッセージが生成され、ステップS33により衛星GW装置24内の伝送制御部30へ送信される。この段階でのInviteメッセージは、相手IP電話19のIPアドレスは不明であるため、管理局34内のSIPサーバ装置9のIPアドレスや子局2のIPアドレス、或いはマルチキャストアドレス等の特定のアドレス宛てに設定されている。伝送制御部30はRegisterメッセージの場合と同様に、InviteメッセージについてもSIPメッセージであることを識別し、SIP処理部31へ転送する。即ち、Inviteメッセージの宛先が特定のアドレスやポート番号等を示していることを検知してSIPメッセージであることを識別したり、Inviteメッセージ中のSIPプロトコル特有の記述、例えば、Invite、SIPバージョン等の記述を検知することにより、SIPメッセージであることを識別するようにしても良い。SIP処理部31は、伝送制御部30から転送されたInviteメッセージについて、その内容のリクエスト行に記述された“Invite”を検知し、Inviteメッセージの内容を第2の上りCSC回線36aにより送信するためにCSC回線フォーマットの制御信号であるインバイト制御信号を生成するとともに、その後のSIPメッセージの処理に必要となる情報(発呼したIP電話19のSIP URI、ドメイン名、プロキシサーバのIPアドレス、子局内でのIP電話19の通し番号、相手IP電話のSIP URI、問合せ番号等の情報)を識別情報記憶部32へ出力する。一般にIP電話19から出力される呼出信号に対して、本発明では、この呼出信号を管理局34へ第2の上りCSC回線36aにより送信するために、呼出信号に基づき第2の上りCSC回線36aの信号フォーマットによる呼出制御信号を生成するものとし、上記のインバイト制御信号は、SIPプロトコルである場合の呼出制御信号の一形式にあたる。インバイト制御信号は、自局の子局ID、信号識別、信号長、自局の子局番号、問合せ番号、相手IP電話19のSIP URIを含むものとする。問合せ番号はインバイト制御信号を子局2において特定する一連番号とする。SIP URIのデータ長が第2の上りCSC回線36aにおいて1の応答信号等に許されるデータ長より長い場合には、SIP URIを@の前後で分割してインバイト制御信号を生成すれば良く、これはRegisterメッセージに対応する登録要求信号をSIP処理部31が生成する場合の手法と同様である。インバイト制御信号は伝送制御部30、信号処理部28、CSC回線変復調部26を経由して送受信機25から、図17に示すステップS34において、第2の上りCSC回線36aにより送信される。
管理局衛星通信装置37は第2の上りCSC回線36aによりインバイト制御信号を受信し、これを復調および信号処理して、ステップS35により、管理装置38へ出力する。管理装置38内のSIPメッセージ処理部14はインバイト制御信号に基づき相手IP電話19のSIP URIを含むInviteメッセージを生成し、ステップS36によりSIPサーバ装置9内のリダイレクトサーバ17へ出力する。リダイレクトサーバ17はInviteメッセージを受けて、ロケーションサーバ16へ相手IP電話19のSIP URIに対応するIPアドレス、その相手子局19が接続されている子局番号及び相手IP電話19の通し番号を検索するように照会する。ロケーションサーバ16は、図8乃至図10に示したような登録リストをもとに、相手IP電話19のIPアドレス、子局番号、通し番号をリダイレクトサーバ17へ返答し、リダイレクトサーバ17は、相手IP電話19のIPアドレス、接続される子局番号、通し番号を含む応答メッセージを生成して、図17に示すステップS37により、SIPメッセージ処理部14へ出力する。SIPメッセージ処理部14は、リダイレクトサーバ17からの応答メッセージに基づき、応答信号を生成し、ステップS38により、管理局衛星通信装置37へ出力する。応答信号は、子局番号、問合せ番号(先のアドレス問合せ信号に記述されていたもの)、相手IP電話19のIPアドレス、接続される子局番号、通し番号を含むものとする。なお、SIPメッセージ処理部14において、IPアドレス又はSIP URIと、子局番号及びその子局におけるIP電話の通し番号とを対応づけるリストを作成している場合には、SIPメッセージ処理部14は、ロケーションサーバ16から相手IP電話19のIPアドレスが返信され、SIPメッセージ処理部14におけるリストにより相手IP電話19の子局番号と通し番号を検索し、アドレス応答信号を生成する。管理局衛星通信装置37は生成された応答信号を、図17に示すステップS39において、第2の下りCSC回線36bにより送信する。
ステップS39において、第2の下りCSC回線36bにより応答信号を受信した子局2では、SIP処理部31により応答信号に基づくSIPプロトコルによる応答メッセージを生成する。応答メッセージは、SIPプロトコルによる応答コードに基づき、例えば応答コード300番台のリダイレクト応答とする。このリダイレクト応答には、アドレス応答信号により取得した相手IP電話のIPアドレスが記述される。SIP処理部31は応答メッセージを伝送制御部30へ出力し、伝送制御部30は、ステップS40により応答メッセージを発呼したIP電話19へ送信する。
ステップS40により応答メッセージを受信したIP電話19は、リダイレクト応答の内容に基づき、相手IP電話19のIPアドレスを指定する再度のInviteメッセージを生成し、ステップS41により、子局2の衛星GW装置24へ送信する。衛星GW装置24において、Inviteメッセージに記述されたIPアドレスを伝送制御部30において検出し、SIP処理部31は識別情報記憶部32へそのIPアドレスに対応する子局番号を検索する。検索により得られる子局番号に基づき、伝送制御部30はその子局番号あての伝送データとして、Inviteメッセージを信号処理部28へ出力するとともに、親局1への当該子局番号を有する子局を相手子局とする回線割当要求信号を出力する。回線割当要求信号は、第1の上りCSC回線36aにより、ステップS42において送信される。親局1内ではステップS43により回線割当要求信号を回線制御装置8に伝送し、回線制御装置8にて回線割り当てを行って回線割当応答信号を生成し、ステップS44により親局衛星通信装置7へ出力する。親局衛星通信装置7は回線割当要求を送信した子局2と相手子局2へ、回線割当応答信号をステップS45において送信する。この回線割当応答信号を受信した子局2と相手子局2は、通信回線変復調部27を割り当てられた通信回線の回線情報に設定し、ステップS46により子局間での通信衛星3を介した通信を開始する。
この子局間での通信開始ののち、子局2の信号処理部28はステップS41により受信したInviteメッセージをフレーム処理等行って通信回線変復調部27へ出力し、通信回線変復調部27は設定された通信回線における変調処理を行い、送受信機25からInviteメッセージを、ステップS47において、通信回線6により送信する。Inviteメッセージを通信回線6により受信した相手子局2においては、Inviteメッセージに記述される相手IP電話19のIPアドレス又はSIP URIにより接続されたIP電話19を特定し、InviteメッセージをステップS48により該当するIP電話19へ送信する。ステップS48によりInviteメッセージを受信した相手IP電話19においては、呼び出し音が発せられ、また、応答コードの100番台にあたるRinging暫定応答や、200番台の成功応答が生成されて、発呼したIP電話19へ返信される。これらの応答メッセージやその後のIP電話間の音声通話信号の伝送は、ステップS46で設定された子局間の通信回線6により行われる。
なお、子局2の伝送制御部30は、ステップS39で受信した応答信号によって、近時に子局間でのIP電話19による音声通信が開始されることが判明するので、IP電話19からのInviteメッセージをステップS41により受信する前に、相手子局を特定した回線割当要求信号を生成して親局1へ送信してもよい。
以上のように、最初に生起されたInviteメッセージに伴ないインバイト制御信号を子局2にて生成し、第2のCSC回線により子局2から管理局34へ送信することによって、親局1や管理局34と子局2との間で通信回線6を割り当てることなく、或いは既に割り当てられている親局1や管理局34と子局2との間での通信回線6の伝送量を増加させることなく、SIPプロトコルによるIP電話のインバイトメッセージに対するIPアドレス解決やその応答処理を行うことができる。また、親局1が使用する第1のCSC回線35での制御信号を増大させることなく、SIPプロトコルによるIP電話のインバイトメッセージに対するIPアドレス解決やその応答処理を行うことができる。また、IP電話19や他のネットワーク22に接続された端末において、衛星通信向けの特殊な信号を生成して送信したり、受信信号に対する特殊な処理を行う必要がないので、衛星通信系である子局2とIP電話19等の地上ネットワークとの親和性を高めることができる。
また、管理局34が上記のように自局が管理する子局グループ33以外の他の子局グループ33内の子局2に接続されたIP電話19の登録情報を登録している場合にも、同様の手順によって、Inviteメッセージに対するIPアドレス解決やその応答処理を行うことができ、複数の子局グループ上で、子局に接続されたIP電話19間での音声通信を可能とすることができる。