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JP2008238392A - 切削工具 - Google Patents

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JP2008238392A
JP2008238392A JP2008018912A JP2008018912A JP2008238392A JP 2008238392 A JP2008238392 A JP 2008238392A JP 2008018912 A JP2008018912 A JP 2008018912A JP 2008018912 A JP2008018912 A JP 2008018912A JP 2008238392 A JP2008238392 A JP 2008238392A
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JP2008018912A
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Sakahito Tanibuchi
栄仁 谷渕
Hirochika Ishii
博規 石井
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Kyocera Corp
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Kyocera Corp
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Abstract

【課題】 耐摩耗性と耐欠損性を兼ね備えた切削工具を提供する。
【解決手段】 本発明の切削工具は、周期表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる群より選ばれる1種以上であり、炭窒化チタンまたは炭化タングステンのいずれか一方を少なくとも必須とする成分からなる硬質相1および鉄族金属を主成分とする結合相3を有する母材と、前記母材の表面に形成された被覆層とを備える切削工具であって、前記母材の表面において、前記硬質相部分は平滑面部2となるよう加工されているとともに、前記結合相3が除去されて形成された凹部4が存在する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば、スローアウェイチップ、ドリル、エンドミル等として有用な切削工具に関するものであり、詳しくは、硬質合金からなる母材の表面を被覆層で被覆してなる切削工具に関する。
例えば、炭窒化チタン(TiCN)や炭化タングステン(WC)を主体とする硬質相と、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等の鉄族金属の結合相とからなる硬質合金(WC−Co系合金など)、もしくはWC−Co系などの硬質合金に周期表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物等の固溶相を分散せしめてなる硬質合金は、従来から、切削工具に適した材料として知られている。そして、さらにその硬度を補強する目的で、上記硬質合金からなる母材の表面に、該硬質合金よりも高硬度の硬質膜からなる被覆層を形成した切削工具が汎用されている。
ところが、硬質合金である母材の表面に被覆層を形成する場合、焼成された硬質合金の焼き肌面に直接被覆層を形成すると、硬質合金表面に焼結により不可避的に発生する脱炭層や金属富化層などの異質層が存在することや、その表面粗さが大きいことが起因して、母材に対する被覆層の付着性が低下し、切削時に膜剥離が生じてしまうという問題が起こる。また、用途に応じた形状を作製するために母材を機械加工で研削した際に、研削屑の付着、クラックの発生、硬質相と結合相との界面欠陥などにより母材表面に生じる加工変質層も、被覆層との密着性を低下させる原因となる。母材と被覆層との剥離が生じると、耐摩耗性が低下し、切削工具としての寿命が短くなる。
そこで、硬質合金の表面に被覆層を形成するにあたり、硬質合金母材の表面に予め何らかの加工を施して、硬質合金母材に対する被覆層の付着性を向上させる方法が提案されている。例えば、硬質合金母材の少なくとも刃先を含む表面の平均表面粗さRaをブラシ研磨によって特定範囲とすることにより、硬質膜の付着性を向上させた超硬合金(特許文献1)や、特定の電解液中で電解研磨することにより、硬質合金母材表面の硬質相に機械加工によるクラックが存在しないようにした焼結合金(特許文献2)などである。
特開平6−108253号公報 特開2000−212743号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の硬質合金によれば、被覆層の密着性は改善され、耐摩耗性の向上は期待できるものの、靭性は不充分であり、耐欠損性に関しては満足しうるレベルにはなかった。その原因としては、所望の平均表面粗さRaとなるように、もしくは母材表面の硬質相にクラックが存在しないように、ブラシ研磨加工や電解研磨加工を行なった場合、母材表面全体が凹凸のない滑らかな状態となるために、その上に被覆層として硬質膜を形成する際、結晶粒子(柱状結晶)は膜の成長方向と同じ方向に揃って配列されることが考えられる。つまり、結晶が様々な方向に成長していると、コーティング後の冷却時に生じる収縮が様々な方向に発生し、熱応力が分散されて高靭性化が図れる。しかし、結晶配列が揃っていると、同じ方向にしか収縮することができなくなり、冷却過程で発生する熱応力は分散、緩和されることなく、靭性が低下するのである。また、結晶が様々な方向に成長していると、結晶の成長がその過程で互いに淘汰されることがなく、マイクロボイドの発生を防ぐことができるので、高硬度化が図れる。その反面、後述するようなマイクロボイドにより生じる応力緩和は得られず、靭性は低くなる傾向になる。
ところで、硬質合金の表面処理としては、エッチング加工が知られている。エッチング加工により被覆層を形成する前の母材表面を処理した場合、エッチング液が表面の結合相(例えばコバルト)を腐食し、硬質相(例えば炭化タングステン)の粒子と粒子の間に僅かな隙間ができる。この隙間に被覆層がある程度は入り込むために、母材に対する被覆層の付着力に関しては優れた効果が期待できる。しかし、このような僅かな隙間は、被覆層をコーティングしても完全に充填されることはないので、母材と被覆層との界面に比較的大きなボイドを生じさせることになる。その結果、切削時に該ボイドに被削材が侵入して異常摩耗を発生させるという問題を招く。
他方、硬質合金の表面処理として、ブラスト加工も知られている。被覆層を形成する前に母材表面をブラスト加工した場合、母材の表面は荒らされ、凹凸が設けられることになるため、柱状結晶の成長は様々な方向に成長し、結晶成長が止まる部分が多くなる。その結果、マイクロボイドが大量に生じて低硬度化が起こり、耐摩耗性が低下する。また、硬質相(例えば炭化タングステン)のエッジ部では、被覆層として形成される膜の結晶が大きな角度で成長する(換言すると、結晶の成長角度αが大きくなる)ため、該結晶が粗粒化することとなり、これによっても低硬度化が生じる。さらに、ブラスト加工によれば、母材表面は硬質相(例えば炭化タングステン)粒子が脱粒して面が荒れた状態になるため、膜生成時に凹凸部に未成膜部が生じて、膜の密着性が低下するという問題も起こる。また、サンドブラストは衝撃力が大きいため、ブラスト加工時に硬質相が脱粒するおそれもある。
本発明の課題は、優れた耐摩耗性と耐欠損性とを兼ね備えた切削工具を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、硬質相と結合相とからなる硬質合金母材表面に、硬質相からなる平滑面部と、結合相または結合相および硬質相とからなる表面を有する凹部と、を備えることで、高硬度化と高靭性化を両立させることができ、ひいては優れた耐摩耗性と耐欠損性を発揮させることが可能になることを見出した。つまり、平滑面部においては、被覆層を形成する際に、柱状結晶が真直ぐに揃って成長して、マイクロボイドのない膜領域が形成されることとなり、該領域が高硬度化に寄与する。他方、凹部においては、被覆層を形成する際に、大きな傾きをもって成長した結晶同士がぶつかって互いに淘汰される結果、マイクロボイドが形成された膜領域が形成されることとなる。このマイクロボイドが形成される膜領域が存在することにより、クラックが進行してきた場合にも、クラック先端の応力場においてマイクロボイドがマイクロクラックとして作用し、応力集中が緩和されてクラックの進展を抑制でき、高靭性化が図れる。本発明は、このような知見により完成したものである。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)硬質相および該硬質相を結合する結合相を有する母材と、前記母材の表面に形成された被覆層とを備える切削工具であって、前記母材の表面は、硬質相からなる平滑面部と、結合相または結合相および硬質相からなる表面を有する凹部とから構成されていることを特徴とする切削工具。
(2)前記硬質相は、周期表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる群より選ばれる1種以上であり、炭窒化チタンまたは炭化タングステンのいずれか一方を少なくとも必須とする成分からなる請求項(1)に記載の切削工具。
(3)前記結合相は、鉄族金属を主成分とする請求項(1)または(2)に記載の切削工具。
(4)周期表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる群より選ばれる1種以上であり、炭窒化チタンまたは炭化タングステンのいずれか一方を少なくとも必須とする成分からなる硬質相および鉄族金属を主成分とする結合相を有する母材と、前記母材の表面に形成された被覆層とを備える切削工具であって、前記母材の表面において、前記硬質相部分は平滑になるよう加工されているとともに前記硬質相からなる平滑面部と、前記結合相が少なくとも一部除去されて形成された凹部が存在することを特徴とする切削工具。
(5)前記凹部の表面の少なくとも一部には前記結合相が存在している、前記(4)に記載の切削工具。
(6)前記凹部は、その幅方向における両端が硬質相で挟まれてなる少なくとも1本の溝状に形成されている、前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の切削工具。
(7)前記凹部の深さは平均0.1〜2μmである、前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の切削工具。
(8)前記硬質合金母材と前記被覆層の厚み方向に直交する平面における長さ20μmの中に3〜40個の凹部が存在する、前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の切削工具。
(9)前記被覆層の厚みが0.5〜20μmである、前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の切削工具。
本発明によれば、硬質合金母材の表面を被覆する被覆層における残留応力が最適化されているので、被覆層が剥離しにくいことは勿論、高硬度であると同時に高靭性であり、優れた耐摩耗性と耐欠損性とを兼ね備えた切削工具を提供することができる、という効果がある。
本発明の切削工具は、硬質相と該硬質相を結合する結合相とからなる硬質合金母材の表面が硬質膜で被覆されたものである。
前記硬質相を構成する成分は、一般に硬質合金における硬質相に用いられる原料であれば、特に制限されることはない。例えば、好ましい態様としては、前記硬質相を構成する成分は、周期表の4、5、6族金属(例えば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Mo、Crなど)の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる群より選ばれる1種以上であり、炭窒化チタンおよび炭化タングステンのうちいずれか一方を少なくとも必須とするのがよい。これらの炭化物、窒化物、炭窒化物等のさらなる具体例については、特に制限されない。
他方、前記結合相を構成する成分も、一般に硬質合金における結合相に用いられる原料であり、前記硬質相よりも高硬度を有するものであれば、特に制限されることはない。例えば、好ましい態様としては、前記結合相を構成する成分は、鉄族金属(例えば、Co、Niなど)を主成分とするものであればよい。この鉄族金属等のさらなる具体例については、特に制限されない。
なお、硬質相および結合相の硬度は、ナノインデンテーション法等によって測定することができる。微粒超硬など、相を構成する粒子の粒径が非常に小さく上記方法による測定が困難な場合は、WDS等の元素分析によって相の組成を同定することで、相の硬度を見積もることも可能である。
前記硬質合金母材において、硬質相は全体積中85〜92体積%、結合相は8〜15体積%の割合で存在するのがよい。
前記硬質合金母材は、通常、硬質相および結合相を構成する各原料粉末を所定の割合で混合し、成形したものを1350〜1550℃程度の真空雰囲気中で焼成することにより得られる。
前記硬質合金母材の表面は、前述した硬質相からなる平滑面部を備えていることが重要である。換言すれば、前記硬質合金母材の表面においては、前記硬質相の部分は平滑になるよう表面処理されていることが重要である。本発明においては、母材表面の硬質相(例えばWC)の部分を平滑にすることにより、被覆層を形成する際に、硬質相上においては柱状結晶が真直ぐに揃って成長することになる。その結果、この領域においてはマイクロボイドが生じることもなく、高硬度化が可能になる。
前記硬質合金母材の表面は、さらに、結合相または結合相および硬質相からなる表面を有する凹部をも備えていることが重要である。換言すれば、前記硬質合金母材の表面においては、さらに、前記結合相が除去されて形成された凹部が存在することが重要である。すなわち、被覆層を形成する際に、この凹部内においても被覆層が成膜されるのであるが、その部分の柱状結晶は集束するように成長する。そのため、成長した結晶同士がぶつかって互いに淘汰され、マイクロボイド(ここでは、数10nmのレベルのボイド)が形成される。このようなマイクロボイドが形成された膜領域では、クラックが進行してきた場合、クラック先端の応力場においてマイクロボイドがマイクロクラックとして作用し、応力集中が緩和されることで、クラックの進展を抑制できる。その結果、この領域においては、残留応力が緩和され、高靭性化が図られ、耐欠損性が向上する、という利点が得られる。
本発明における硬質合金母材の表面について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の切削工具を厚み方向に切断したときの硬質合金母材のみを模式的に表した断面図である。図1で示されている母材は硬質相1と結合相3とから構成されている。そして、母材表面(上部側)のうち硬質相1が占める部分は、平滑になるように加工された平滑面部2になっており、母材表面(上部側)のうち結合相3が占める部分では、該結合相3が除去されて凹部4が形成されている。このように、本発明においては、硬質合金母材表面の平滑面部2は、全て硬質相1で構成されていることが好ましく、この平滑面部2以外の部分は、凹部4になっていることが好ましい。
なお、ここでいう平滑面部2を構成する硬質相1は、上述した成分からなる1種の相に限らず、上述した成分からなる2種以上の相を含んでなるものであっても良い。
なお、凹部4の表面は、図1では結合相3のみで構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、図1においてもそうであるように、凹部内側面部の表面よりの部分では硬質相1との間に存在する結合相3が非常に薄くなっているため、母材の表面処理によってはこの部分も削り取られ、凹部表面の一部に硬質相1が露出することもある。
また、ここでいう『硬質相1からなる平滑面部2』および『結合相3または結合相3および硬質相1からなる凹部4』とは、平滑面部2および凹部4が、各々、実質的に前記相からなるものをいう。すなわち、平滑面部2および凹部4のいずれにも、製造上不可避的な相、例えば、η相や加工によって生じる酸化物等からなる相などを含むものであっても構わない。
このように、本発明においては、硬質合金母材表面の硬質相部分は、平滑に表面処理されることにより、高硬度化した被覆層が形成される領域となり、一方、硬質合金母材表面で結合相が存在する部分は、該結合相が少なくとも一部除去されて凹部が形成されることにより、高靭性化した被覆層が形成される領域となる。つまり、本発明の切削工具は、その被覆層において高硬度化した領域と高靭性化した領域とが混在しているので、相反する両方の優れた特性を保持するものとなり、その結果、優れた耐摩耗性と耐欠損性を両立して発現させることが可能となる。
しかも、本発明において存在する前述のマイクロボイドは、非常に小さいボイドであるので、耐摩耗性に影響を及ぼすおそれもない。また、本発明においては、硬質合金母材表面に存在する凹部によって、凹凸によるアンカー効果も得られるので、被覆層と母材との密着性も高い。
前述したように、本発明における硬質合金母材表面に存在する凹部は、その表面が結合相または結合相および硬質相からなるのであるが、これは換言すれば、前記凹部の表面の少なくとも一部に結合相が存在しているということでもある。特に、前記凹部の表面のううち少なくとも底面部が、前記結合相からなることがより好ましい。これにより、前記凹部の靭性が高まる。更には、前記凹部の表面は、前記結合相のみからなることがより好ましい。このような構成により、前記凹部の表面に、硬質相と結合相との境界が生じることがなく、界面欠陥などにより母材表面に加工変質層が形成されることを抑制することができる。その結果、被覆層との密着性が高まる。
前記凹部の窪み部分の形状は、特に限定されない。例えば、前記凹部は、その両端が硬質相で挟まれてなる少なくとも1本の溝状に形成されていてもよく、さらに複数の溝状凹部が網目状に形成されていてもよい。
前記凹部の深さは平均0.1〜2μmであることが好ましい。前記凹部の平均深さが前記範囲であると、被覆層を被覆したときに適度なマイクロボイドが形成され、高靭性化を図ることができると同時に、凹部上に成膜された被覆層の強度も充分に保持させることができ、凹部を起点として発生しうる剥離やチッピングを回避することができる。なお、凹部の深さの平均とは、母材表面に存在する全ての凹部の平均であるが、便宜上、前記硬質合金母材と前記被覆層の厚み方向に直交する平面における長さ20μmの中に存在する凹部の平均を以って、前記平均深さとしてもよい。
前記凹部は、前記硬質合金母材と前記被覆層の厚み方向に直交する平面における長さ20μmの中に3〜40個、好ましくは10〜30個が存在することが好ましい。この凹部の個数が前記範囲であると、被覆層を被覆したときに適度なマイクロボイドが形成され、高靭性化を図ることができると同時に、凹部上に成膜された被覆層の強度も充分に保持させることができ、凹部を起点として発生しうる剥離やチッピングを回避することができる。
なお、上記凹部の深さおよび数の測定は、例えば、切削工具の面と略垂直な断面、すなわち硬質合金母材と被覆層の厚み方向に対し略平行な断面をとり、その断面を走査電子顕微鏡(SEM)また透過電子顕微鏡(TEM)を用いて5000倍〜20000倍の倍率で観察し、硬質合金母材と被覆層の厚み方向に直交する平面における長さ20μmの中にある凹部の数と深さを測定することにより行うことができる。
前記硬質相部分を平滑になるよう表面処理する手段としては、例えば、ブラシ研磨加工が好ましく挙げられる。ブラシ研磨加工で用いるブラシとしては、毛足が長いものが好ましい。具体的には、カップブラシ、ホイールブラシ、ロールブラシ等のブラシが好ましく用いられる。ブラシ研磨加工を行う際には、ダイヤモンドの砥粒を使用することが一般的だが、炭化珪素(SiC)からなる砥粒を用いると、研磨加工によって生じる研磨傷が低減され、より平滑な加工面状態となるので好ましい。また、平滑な加工面を得るためには、砥粒の番手を#400以上とするのが好ましく、特に、加工効率を上げるためには、#500〜#2000の砥粒を使用することがよい。
前記結合相を除去して凹部を形成する手段としては、前記ブラシ研磨加工により母材表面全体を平滑にしたのち、ショットブラスト加工を施すことが好ましい。このショットブラスト加工を行なうにあたり、硬質相(例えば、WC)よりも柔らかい砥粒を使用することによって、硬質相の部分ではブラシ研磨で形成された平滑さをそのまま維持させながら、結合相(例えばCo)の部分を除去して凹部形状を形成することができる。このようにして形成された凹部の形状は、例えばエッチング加工で形成される凹部に比べ、底面部が丸みを帯びており、かつ、非常に浅く形成されており、エッチング加工のように内部まで深く削られた形状とはならない。それによって、前述した結晶と結晶との成長間の淘汰が起こりやすく、ひいては靭性を向上させやすくなるのである。
なお、砥粒の硬度は、粉体の硬度を測定する種々の測定方法によって測定することができ、硬度の単位も、測定方法によって、ブリネル硬度(HB)、ビッカース硬度(HV)等適宜選択し得る。
前記ショットブラスト加工は、砥粒をエアー等とともに噴射して加工する乾式で行ってもよいし、砥粒を液体(溶媒)と同時に噴射して加工する湿式で行ってもよい。用いる砥粒としては、一般的に加工で使用されている砥粒、具体的には、例えば、酸化アルミニウム(Al)、炭化珪素(SiC)、ダイヤモンドといった砥粒が使用可能であるが、結合相のみをショットブラストにて除去させるために、酸化クロム(Cr)、酸化ジルコニウム(ZrO)など、比較的硬度が低く比重が大きいものが好ましい。また、ショットブラストを湿式で行う際には、溶媒として、一般的な湿式ブラストで使用されている溶媒、例えば水などを用いることができる。ショットブラスト加工を行う際の条件としては、一般的な加工よりも弱めの条件、詳しくは、噴射圧を0.1〜0.7MPa、噴射角度を30〜60°、被加工物と噴射ノズルとの距離を2〜5cm、砥粒の番手を#360〜#1000とするのがよい。
前記硬質合金母材の表面に形成される被覆層は、特に制限されるものではなく、例えば、炭化チタン(TiC)、炭窒化チタン(TiCN)、窒化チタン(TiN)、窒化アルミニウムチタン(TiAlN)、酸化アルミニウム(Al)などの周期表の4、5、6族金属およびAlの炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物から選ばれる1種以上を単層または複数層形成したものから構成される。
前記被覆層の厚みは0.5〜20μmであることが好ましく、より好ましくは、1〜5μmであるのがよい。
0.5μm以上とすることで、十分な耐摩耗性を確保するとともに、本発明の微小凹部による硬質層の結晶の成長方向を一部分だけ複雑に変化させて硬質層の強度を向上させる効果を十分に得ることができ、また、20μm以下とすることで、硬質層の靭性の低下、硬質層の剥離および、凹部による硬質層の結晶の成長方向を複雑に変化させた部分が大きくなりすぎて硬質層の強度が低下することを抑えることができる。
前記被覆層は、化学気相成長法(CVD法)や、スパッタリング法、イオンプレーティング法、蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)など、従来公知の方法によって形成することができる。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.5μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%、平均粒径1.5μmの炭化チタン(TiC)粉末を0.5質量%、炭化タンタル(TaC)粉末を1質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMA120412)に成形した。その後、脱バインダ処理を施し、0.01Paの真空中、1500℃で1時間保持し焼成して硬質合金母材を作製した。
次に、この母材の表面に、表1に示す荒加工と仕上加工とを順次施した。各加工の条件等は、表2に示す通りである。その後、各加工を施した母材の表面に、化学蒸着法にて、
窒化チタン(TiN)層、柱状晶炭窒化チタン(TiCN)層、酸化アルミニウム(Al)層からなる硬質膜(総膜厚12.0μm)を形成して、切削工具を作製した。
窒化チタン(TiN)層の成膜条件は、成膜温度880℃、圧力200mbar、四塩化チタン(TiCl)が1.5vol%、窒素(N)が20vol%、残りが水素(H)である。
中温化学蒸着法による柱状晶炭窒化チタン(TiCN)層の成膜条件は、成膜温度860℃、圧力90mbar、四塩化チタン(TiCl)が1.5vol%、アセトニトリル(CHCN)が0.6vol%、窒素(N)が30vol%、残りが水素(H)である。
酸化アルミニウム(Al)層の成膜条件は、成膜温度1010℃、圧力90mbar、三塩化アルミニウム(AlCl)が1.6vol%、二酸化炭素(CO)が3.5vol%、硫化水素(HS)が0.1vol%、残りが水素(H)である。
各層の厚みについては、基体側から窒化チタン(TiN)層(0.3μm厚み)−柱状結晶からなる炭窒化チタン(TiCN)層(8.0μm厚み)−粒状結晶からなる炭窒化チタン(TiCN)層(0.1μm厚み)−炭酸窒化チタン(TiCNO)層(0.1μm厚み)−酸化アルミニウム(Al)層(3.0μm厚み)−窒化チタン(TiN)層(0.5μm厚み)の順に成膜した。
得られた各切削工具について、硬質合金母材と被覆層の厚み方向に切断し、その断面を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて10000倍の倍率で観察したところ、硬質相からなる平滑面部の有無、凹部の有無およびその表面における結合相の有無、切断面(硬質合金母材と被覆層の厚み方向)に直交する平面における長さ20μmの中にある凹部の状態(個数および平均深さ)は、表1に示す通りであった。
なお、表1中のNo.1(本発明の範囲内)と、No.8(本発明の範囲外)においては、荒加工および仕上加工を施した後、硬質膜を形成する前に、走査電子顕微鏡(SEM)写真を3000倍の倍率で撮影した。No.1(本発明の範囲内)の電子顕微鏡写真を図2に、No.8(本発明の範囲外)の電子顕微鏡写真を図3に、それぞれ示す。
Figure 2008238392
Figure 2008238392
上記切削工具を用い、下記の条件により、連続切削試験および強断続切削試験を行い、連続切削試験にて耐摩耗性を、強断続切削試験にて耐欠損性をそれぞれ評価した。この切削試験の結果を表3に示す。
(連続切削試験条件)
被削材 :SCM435
工具形状:CNMG120408
切削速度:300m/分
送り速度:0.3mm/rev
切り込み:2mm
切削時間:20分
切削液 :エマルジョン15%+水85%混合液
評価項目:顕微鏡にて切刃を観察し、フランク摩耗量・先端摩耗量を測定
(強断続切削試験条件)
被削材 :SCM440 4本溝入材
工具形状:CNMG120408
切削速度:300m/分
送り速度:0.4mm/rev
切り込み:2mm
切削液 :エマルジョン15%+水85%混合液
評価項目:欠損に至る衝撃回数
Figure 2008238392
本発明の切削工具を厚み方向に切断したときの硬質合金母材のみを模式的に示す断面図である。 表1中のNo.1の試料を得るに際し、加工(荒加工および仕上加工)を施した後の母材表面の電子顕微鏡写真である。 表1中のNo.8の試料を得るに際し、加工(荒加工および仕上加工)を施した後の母材表面の電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1:硬質相
2:平滑面部
3:結合相
4:凹部

Claims (9)

  1. 硬質相および該硬質相を結合する結合相を有する母材と、前記母材の表面に形成された被覆層とを備える切削工具であって、
    前記母材の表面は、硬質相からなる平滑面部と、結合相または結合相および硬質相からなる表面を有する凹部とから構成されていることを特徴とする切削工具。
  2. 前記硬質相は、周期表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる群より選ばれる1種以上であり、炭窒化チタンまたは炭化タングステンのいずれか一方を少なくとも必須とする成分からなる請求項1に記載の切削工具。
  3. 前記結合相は、鉄族金属を主成分とする請求項1または請求項2に記載の切削工具。
  4. 周期表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる群より選ばれる1種以上であり、炭窒化チタンまたは炭化タングステンのいずれか一方を少なくとも必須とする成分からなる硬質相および鉄族金属を主成分とする結合相を有する母材と、前記母材の表面に形成された被覆層とを備える切削工具であって、
    前記母材の表面において、平滑になるよう加工されているとともに前記硬質相からなる平滑面部と、前記結合相が少なくとも一部除去されて形成された凹部と、が存在することを特徴とする切削工具。
  5. 前記凹部の表面の少なくとも一部には前記結合相が存在している、請求項4に記載の切削工具。
  6. 前記凹部は、その幅方向における両端が硬質相で挟まれてなる少なくとも1本の溝状に形成されている、請求項1乃至5のいずれかに記載の切削工具。
  7. 前記凹部の深さは平均0.1〜2μmである、請求項1乃至6のいずれかに記載の切削工具。
  8. 前記母材と前記被覆層の厚み方向に直交する平面における長さ20μmの中に3〜40個の凹部が存在する、請求項1乃至7のいずれかに記載の切削工具。
  9. 前記被覆層の厚みが0.5〜20μmである、請求項1乃至8のいずれかに記載の切削工具。
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