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JP2008231266A - ポリプロピレン組成物およびその成形体 - Google Patents

ポリプロピレン組成物およびその成形体 Download PDF

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JP2008231266A
JP2008231266A JP2007073538A JP2007073538A JP2008231266A JP 2008231266 A JP2008231266 A JP 2008231266A JP 2007073538 A JP2007073538 A JP 2007073538A JP 2007073538 A JP2007073538 A JP 2007073538A JP 2008231266 A JP2008231266 A JP 2008231266A
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Yasuo Sato
康雄 佐藤
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Mitsui Chemicals Inc
Prime Polymer Co Ltd
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Mitsui Chemicals Inc
Prime Polymer Co Ltd
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Abstract

【課題】本発明は、従来公知のポリプロピレン組成物と比較して剛性、耐衝撃性に優れ、かつ破断伸びに優れた新規なポリプロピレン組成物、並びに該ポリプロピレン組成物から得られる成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン[A]と、特定要件を満たすエチレンと炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン系重合体[
B]とを含み、ポリプロピレン[A]と、エチレン系重合体[B]との重量比([A]:[B])が99:1〜55:45の範囲内にあることを特徴としている。
【選択図】なし

Description

本発明は、エチレン系重合体を含むポリプロピレン組成物およびその成形体に関する。詳しくは、本発明は、特定のエチレン系重合体を含み、破断伸び等の機械的特性に優れたポリプロピレン組成物およびその成形体に関する。
ポリプロピレンからなる成形品は、剛性、耐熱性、表面光沢性などに優れており、広い用途に使用されている。しかしながらポリプロピレンは、通常結晶性であり、耐衝撃性に劣るため用途が限定されるという問題点があった。
ポリプロピレンの耐衝撃性を向上させるには、従来、ポリプロピレンに、ポリエチレンを配合したり、あるいはエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体などのゴム状物質を配合していた。特に、エチレン・1-オクテン共重合体はポリプロピレンの耐衝撃性、曲げ強度、破断伸びなど改質性能に優れているため、エチレン・1-オクテン共重合体が配合されたポリプロピレン組成物はさまざまな用途に使用されている。
例えば特許文献1には、ポリプロピレンと特徴的な流動特性、及び分子量分布を有する実質的に線状なエチレン・1-オクテン共重合体とのポリプロピレン組成物が開示されている。このポリプロピレン組成物は、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れているとの記載はあるものの、エチレン・1-オクテン共重合体の重要な特性値の一つである組成分布と、ポリプロピレン組成物の機械的特性との関係については検討されていない。
ポリプロピレン組成物の機械的特性向上に対する要求は高まっており、剛性、耐衝撃性、破断伸びの更なる改良が望まれている。
特表平8−501343号公報
本発明は、従来公知のポリプロピレン組成物と比較して剛性、耐衝撃性に優れ、かつ破断伸びに優れた新規なポリプロピレン組成物、並びに該ポリプロピレン組成物から得られる成形体を提供することを課題としている。
本発明者は、上記のような状況に鑑み研究した結果、ポリプロピレンと、特定のMFR範囲、および特定の密度範囲を満たし、分子量分布が特定の範囲を満たし、温度上昇溶離分別(TREF)によって規定されるH/Wと密度とが特定の関係を満たし、好ましくは[η]とMFRとが特定の関係を満たす、特定のα−オレフィンを有するエチレン系重合体
とからなるポリプロピレン組成物が、剛性、耐衝撃性に優れ、かつ破断伸び、耐低温脆化特性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン[A]と、下記要件[1]
〜[5]を同時に満たすエチレン系重合体[B]とを含み、ポリプロピレン[A]と、エチ
レン系重合体[B]との重量比([A]:[B])が99:1〜55:45の範囲内にあることを特徴としている。
[1]エチレンと炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合体である。
[2]190℃における2.16 kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.10〜100 g/10分の範囲
である。
[3] 密度(D)が860〜905 kg/m3の範囲である。
[4] GPCで測定した重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.50以上3.00以下の範囲である。
[5] 温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピーク強度の強いピークの高さ(H)と、該ピークの1/2の高さにおける幅(W)との比(H/W)と密度(D
)とが、要件[2]のMFR値に応じて、下記関係式(Eq-1)〜(Eq-3)のいずれかを満たす。
[0.10≦MFR≦1.00の場合]
0.0163×D−14.00 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.66 … (Eq-1)
[1.00<MFR≦10.0の場合]
0.0163×D−14.02 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.68 … (Eq-2)
[10.0<MFR≦100の場合]
0.0163×D−14.10 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.76 … (Eq-3)
このような本発明のポリプロピレン組成物は、エチレン系重合体[B]が、さらに下記要件[6]を満たすことが好ましい。
[6]135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と、190℃における2.16 kg荷重でのメルトフローレート(MFR)とが下記関係式(Eq-4)を満たす。
−0.21×Log10MFR+0.16 ≦ Log10[η] ≦ −0.21×Log10MFR+0.31 … (Eq-4)
本発明のポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン[A]と、エチレン系重合体[B]との合計100重量部に対して、5〜50重量部の充填剤[C]を含むことが好ましい。
本発明の成形体は、前記本発明のポリプロピレン組成物から得られることを特徴としている。
本発明によれば、剛性、耐衝撃性に優れ、かつ、破断伸びにも優れた成形体を製造することができるポリプロピレン組成物、ならびにこれらの特性を有する成形体を提供することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
ポリプロピレン組成物
本発明のポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン[A]と、特定のエチレン系重合体[B]とを含有する。
<ポリプロピレン[A]>
本発明で用いられるポリプロピレン[A]としては、プロピレンの単独重合体、またはプロピレン以外のオレフィンから誘導される構成単位を10モル%以下の量で含有するプロピレン・α−オレフィン共重合体が挙げられる。
このようなプロピレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、たとえば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサドデセン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、ジエチル-1-ブテン、トリメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジメチル-1-ペンテン、メチルエチル-1-ペンテン、ジエチル-1-ヘキセン、トリメチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン
、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ヘプテン、ジメチルオクテン、エチル-1-オ
クテン、メチル-1-ノネン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノル
ボルナンなどが挙げられる。
本発明に係るポリプロピレン[A]として用いられる、プロピレンとこれらオレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。またプロピレン・α−オレフィン共重合体は、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、ビニルシク
ロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンの単独重合体または共重合体を、触媒に予備重合し、次いでこの予備重合触媒にプロピレンを重合させることにより得られるものであってもよい。
このようなポリプロピレン[A]は、種々の方法により製造することができるが、通常の立体規則性触媒を用いて製造することができる。具体的には、固体状チタン触媒成分と有機金属化合物触媒成分とさらに必要に応じて電子供与体とから形成される重合触媒を用いて、プロピレンを単独で、または必要に応じてα−オレフィンとともに(共)重合することにより好適に製造することができる。ここで(共)重合は、従来公知の条件により行うことができる。
この方法で重合触媒の成分として使用される固体状チタン触媒成分としては、三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を、比表面積が100m2 /g以上の担体に担持してなるチタン触媒成分、あるいはマグネシウム、ハロゲン、電子供与体(好ましくは芳香族カルボン酸エステルまたはアルキル基含有エーテル)およびチタンを必須成分とし、比表面積が100m2 /g以上の担体に担持されたチタン触媒成分が挙げられる。特に後者の担体付触媒成分を用いて製造したポリプロピレンが好適である。
また有機金属化合物触媒成分としては、有機アルミニウム化合物が好ましく、有機アルミニウム化合物としては具体的に、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライドなどが挙げられる。なお有機アルミニウム化合物は、使用するチタン触媒成分の種類に合わせて適宜選択することができる。
電子供与体としては、窒素原子、リン原子、硫黄原子、ケイ素原子あるいはホウ素原子などを有する有機化合物を使用することができ、好ましくは上記のような原子を有するエステル化合物およびエーテル化合物などが挙げられる。
このような重合触媒は、さらに共粉砕等の手法により活性化されてもよい。また上述のようにオレフィンが前重合(予備重合)されていてもよい。
また、本発明で用いられるポリプロピレン[A]は、公知のメタロセン触媒あるいはその他の触媒の存在下に(共)重合して得られたものであってもよい。
本発明で用いられるポリプロピレン[A]は、ASTM−D1238に準拠して、230℃、2160g荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が、0.1〜200g/10分、好ましくは、0.3〜100g/10分、より好ましくは0.5〜50g/10分であるのが望ましい。
本発明では、ポリプロピレン[A]として、プロピレン単独重合体が特に好ましく用いられる。
上記のようなMFRを有するポリプロピレン[A]を含むポリプロピレン組成物は、成形時の流動性に優れ、大型成形品の成形も容易である。なおメルトフローレートが上記よりも大きいポリプロピレンを含有するポリプロピレン組成物から得られる成形体は、衝撃強度に劣る場合がある。
また、ポリプロピレン[A]の密度は、0.89〜0.91g/cm3であることが望
ましい。
上記ポリプロピレン[A]は2種以上併用することもできる。
<エチレン系重合体[B]>
本発明に係るエチレン系重合体[B]は、以下の要件[1]〜[5]をすべて満たし、好ましくは以下の要件[1]〜[6]をすべて満たす。
[1] エチレンと炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合体である。
[2] 190℃における2.16 kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.10〜100 g/10分の範
囲である。
[3] 密度(D)が860〜905 kg/m3の範囲である。
[4] GPCで測定した重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.50以上3.00以下の範囲である。
[5] 温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピーク強度の強いピークの高さ(H)と、該ピークの1/2の高さにおける幅(W)との比(H/W)と密度(D
)とが、上記要件[2]のMFR値に応じて、下記関係式(Eq-1)〜(Eq-3)のいずれかを満たす。[0.10≦MFR≦1.00の場合]
0.0163×D−14.00 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.66 … (Eq-1)
[1.00<MFR≦10.0の場合]
0.0163×D−14.02 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.68 … (Eq-2)
[10.0<MFR≦100の場合]
0.0163×D−14.10 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.76 … (Eq-3)
[6] 135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と、190℃における2.16 kg荷重
でのメルトフローレート(MFR)とが下記関係式(Eq-4)を満たす。
−0.21×Log10MFR+0.16 ≦ Log10[η] ≦ −0.21×Log10MFR+0.31 … (Eq-4)
以下、各要件についてさらに詳しく説明する。
・要件[1]
本発明に係るエチレン系重合体[B]は、エチレンと炭素数4〜10のα-オレフィン
との共重合体であり、好ましくはエチレンと炭素数6〜10のα−オレフィン、より好ましくはエチレンと4-メチル-1-ペンテンもしくは炭素数8のα−オレフィン、さらに好ま
しくはエチレンと炭素数8のα−オレフィンとの共重合体である。本発明に係るエチレン系重合体[B]は、エチレンと、炭素数4〜10のα−オレフィンの1種との共重合体であることが好ましいが、エチレンと、炭素数4〜10のα−オレフィンの2種以上との共重合体であってもよい。エチレンとの共重合に用いられる炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなど
が挙げられる。α−オレフィンの炭素数が4〜10の場合、耐衝撃性に優れる。
エチレン系重合体[B]中のα-オレフィンの種類は、通常10 mmφの試料管中で約200 mgのエチレン系重合体を1 mlのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた試料の13C-NMRスペクトルを、温度120℃、周波数25.05 MHz、スペクトル幅1500 Hz、パルス繰返し時間4.2秒、45°パルス幅6μsecの測定条件下で測定して同定することができる。
エチレン系重合体[B]中のα−オレフィン含量は、要件[3]に係る所望の密度に応
じて適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、エチレンから導かれる単位を、通常82〜95モル%、好ましくは84〜92.5モル%の量で、α−オレフィンから導かれる単位を、通常5.0〜18モル%、好ましくは7.5〜16モル%の量で含有していることが望ましい。
・要件[2]
本発明に係るエチレン系重合体[B]は、190℃における2.16 kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.10〜100 g/10分の範囲であり、好ましくは0.50〜10.0 g/10分、より
好ましくは0.80〜6.00 g/10分の範囲である。
エチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)が0.10 g/10分以上であると、せん断
粘度が高すぎず成形性が良好である。また、メルトフローレート(MFR)が100 g/10分以下であると、耐衝撃性が良好である。
メルトフローレート(MFR)は、分子量に強く依存しており、メルトフローレート(MFR)が小さいほど分子量は大きく、メルトフローレート(MFR)が大きいほど分子量は小さ
くなる傾向がある。また、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Kazuo Soga, KODANSHA"CATALYTIC OLEFIN POLYMERIZATION",p376(1990))。このため、水素/エチレンを増減させることで、本発明の要件[2]の上限ないし下限のメルトフローレート(MFR)を有するエチレン系重合体を製造することが可能である。
本発明において、メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238-89に従い、190℃、2.16 kg荷重の条件下で測定された値である。
・要件[3]
本発明に係るエチレン系重合体[B]は、密度(D)が860〜905 kg/m3の範囲にあり、
好ましくは865〜895kg/m3、より好ましくは865〜885kg/m3、さらに好ましくは865〜880
kg/m3の範囲にある。
密度(D)が905 kg/m3以下の場合、耐衝撃性が良好である。
密度はエチレン系重合体のα-オレフィン含量に依存しており、α-オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α-オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン系
重合体中のα-オレフィン含量は、重合系内におけるα−オレフィンとエチレンとの組成
比(α-オレフィン/エチレン)により決定されることが知られている(例えばWalter Kaminsky, Makromol.Chem. 193, p.606(1992))。このため、α−オレフィン/エチレンを
増減させることで、本発明の要件[3]の上限ないし下限の密度を有するエチレン系重合体
を製造することが可能である。
密度(D)は、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間
、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100 kg/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg/cm2の条件にてプレス成形した厚さ0.5mmのプレスシートを測定サンプ
ルとし、密度勾配管で測定して求められる。
・要件[4]
本発明に係るエチレン系重合体[B]は、GPCで測定した重量平均分子量と数平均分子
量との比(Mw/Mn)が1.50以上3.00以下の範囲であり、好ましくは1.50以上2.50以下、さ
らに好ましくは1.50以上2.20以下、特に好ましくは1.60以上2.00以下の範囲にある。
Mw/Mnが1.50以上の場合、得られるエチレン系重合体とポリプロピレンとの分
散性が良好であるため破断伸びに優れ、Mw/Mnが3.00以下の場合、極めて分子量
の小さい成分が存在しないため、耐衝撃性が良好である。
本発明において、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)はウォーターズ社製GPC-150Cを用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6-HT及びTSKgel
GMH6-HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600 mmであり、カラム温度は
140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0 ml /分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試
料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチ
レンは、分子量がMw≦1000およびMw≧4×106 については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106 についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。分子量計算は、ユニバーサル校正して、ポリエチレンに換算した値である。
・要件[5]
本発明に係るエチレン系重合体[B]は、温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピーク強度の強いピークの高さ(H)と、該ピークの1/2の高さにおける幅(W)との比(H/W)と密度(D)とが、上記要件[2]のMFR値、すなわち190℃における2.16 kg荷重でのメルトフローレートに応じて、下記関係式(Eq-1)〜(Eq-3)のいずれ
かを満たす。
[0.10≦MFR≦1.00の場合]
0.0163×D−14.00 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.66 … (Eq-1)
[1.00<MFR≦10.0の場合]
0.0163×D−14.02 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.68 … (Eq-2)
[10.0<MFR≦100の場合]
0.0163×D−14.10 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.76 … (Eq-3)
好ましくは、下記関係式(Eq-1')〜(Eq-3')を満たす。
[0.10≦MFR≦1.00の場合]
0.0163×D−13.94 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.71 … (Eq-1')
[1.00<MFR≦10.0の場合]
0.0163×D−13.96 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.73 … (Eq-2')
[10.0<MFR≦100の場合]
0.0163×D−14.04 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.81 … (Eq-3')
より好ましくは、下記関係式(Eq-1'')〜(Eq-3'')を満たす。
[0.10≦MFR≦1.00の場合]
0.0163×D−13.87 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.75 … (Eq-1'')
[1.00<MFR≦10.0の場合]
0.0163×D−13.89 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.77 … (Eq-2'')
[10.0<MFR≦100の場合]
0.0163×D−13.97 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.85 … (Eq-3'')
温度上昇溶離分別(TREF)では、α−オレフィン含量の多い成分ほど低温にて溶出し、α−オレフィン含量の少ない成分ほど高温にて溶出する。H/Wは温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピーク強度の強いピークの高さ(H)と、最
もピーク強度の強いピークの1/2の高さにおける幅(W)との比で表されるので、同等の
密度のエチレン系重合体で比較した場合、H/Wが大きいほどα-オレフィンは均一に分子
鎖中に導入されており、組成分布は狭くなる。
このため、Log10(H/W)が、
0.10≦MFR≦1.00の場合に0.0163×D−14.00以上、1.00<MFR≦10.0の場合に0.0163×D
−14.02以上、10.0≦MFR≦100の場合に0.0163×D−14.10以上になると、剛性、耐衝撃性
に優れる。0.10≦MFR≦1.00の場合、0.0163×D−13.66以下、1.0
0<MFR≦10.0の場合、0.0163×D−13.68以下、10.0≦MFR≦100の場合
に0.0163×D−13.76以下になると、エチレン系重合体[B]とポリプロピレン[A]との分散性が向上するため破断伸びに優れる。
H/Wは得られるエチレン系重合体の組成分布に強く依存しており、この組成分布は触媒の活性点が均一になれば狭くなり、不均一になれば広くなることが知られている。触媒活
性点の均一性を支配する因子の一つとして、助触媒作用を持つ化合物として添加される化合物(後述のB成分)と主触媒として添加される架橋メタロセン化合物(後述のA成分、)とのモル比([B成分]/[A成分])が挙げられる。 [B成分]/[A成分]を増減させることで
、本発明の要件[5]の上限ないし下限のH/Wを有するエチレン系重合体を製造することが
可能である。
なお、本発明において、H/Wは以下のようにして決定した。
まず、温度上昇溶離分別(TREF)による溶出曲線を、三菱油化社製クロス分別クロマトグラフ装置CFCT-150A型を用いて以下のようにして測定した。測定サンプルを溶媒(o-ジクロロベンゼン)を用い、濃度が4 mg/mlとなるように、140℃で溶解し、これを測定装
置内のサンプルループ内に注入する。試料溶液は、TREF分離カラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された装置付属のステンレス製カラム、容量は0.88 ml、配管容量は0.07 ml)に0.4 ml注入される。次に、試料溶液を1℃/minの速度で140℃から0℃の温度まで冷却し、不活性担体にコーティングさせる。このとき、高結晶性成分から低結晶性成分の順で不活性担体表面にポリマー層が形成される。TREF分離カラムが0℃で更に30分間保持
された後、0℃の温度で溶解している成分2 mlが、1 ml/分の流速でTREF分離カラムからSEC分離カラム(昭和電工社製 Shodex AT-806MS×3本)へ注入される。SEC分離カ
ラム内で分子サイズでの分別が行われている間に、TREF分離カラムでは次の溶出温度(5
℃)に昇温され、その温度に約30分間保持される。溶出温度は以下の温度で段階的に昇温される。
[溶出温度]0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79、82,85,88、91,94,97,100,102,120,140℃
各温度で溶出した成分の分子量を測定し、汎用較正曲線を使用して、ポリエチレン換算分子量を求めた。SEC温度は140℃であり、データサンプリング時間は0.50 秒である。SEC分離カラムを通過した試料溶液は、赤外分光光度計でポリマーの濃度に比例する吸光度が測定され(波長3.42μm,2924 cm-1)、各溶出温度区分のクロマトグラムが得られる。内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのベースラインを引き、演算処理される。各クロマトグラムの面積が積分され、積分溶出曲線が計算される。また、この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が計算される。
次に、得られた微分溶出曲線の作図を、横軸に溶出温度を100℃当たり89.3 mm、縦軸に微分量(全積分溶出量を1.0に規格し、1℃の変化量を微分量とした)0.1当たり76.5 mmで行い、この微分溶出曲線のピーク高さ(mm)を1/2高さの幅(mm)で除した値をH/Wとした。
・要件[6]
本発明に係るエチレン系重合体[B]は、好ましくは、135℃デカリン中で測定した極
限粘度[η](dl/g)と、190℃における2.16 kg荷重でのメルトフローレート(MFR)と
が下記関係式(Eq-4)を満たす。
−0.21×Log10MFR+0.16 ≦ Log10[η] ≦ −0.21×Log10MFR+0.31 … (Eq-4)
この極限粘度([η])とメルトフローレート(MFR)との関係は、分子鎖中の長鎖分岐
構造に強く支配されることが知られている(例えば白山健三,高分子化学,Vol.28, No.310, pp156-160(1971))。同じメルトフローレート(MFR)のエチレン系重合体で比較した場合、長鎖分岐が導入されると溶液中での分子鎖の広がりが小さくなるため、極限粘度([η])は小さくなる。Log10[η]が(−0.21×Log10MFR+0.26)以上の場合、分子鎖中に
多くの長鎖分岐が存在せず、その結果、長い緩和時間を持つ成分が存在しないため、成形収縮率が小さい。
従って要件[6]については、該エチレン系重合体とポリプロピレンとの組成物を成形体
用途に展開する場合に、どのような特性を求めるかによって好ましい態様が二分される。すなわち、エチレンとともに共重合反応に供されるα-オレフィンに起因する短鎖分岐(
例えば、α-オレフィンとして1-ブテンを用いる場合は、エチル基が短鎖分岐として導入
される。)が主なる分岐構造であり、末端にビニル基を有するマクロモノマーを経由して生成する長鎖分岐構造をほとんど含有しないエチレン系重合体(以下、「短鎖分岐型エチレン系重合体」と略称する場合がある。)を所望する場合には、好ましくは要件[6]とし
てさらに下記関係式(Eq-4a)で表される範囲を満たすエチレン系重合体が好適である。
−0.21×Log10MFR+0.26 ≦ Log10[η] ≦ −0.21×Log10MFR+0.31 … (Eq-4a)
一方で、マクロモノマーを経由して生成する長鎖分岐構造含有量を少量含有するエチレン系重合体(以下、「長鎖分岐型エチレン系重合体」と略称する場合がある。)を所望する場合は、好ましくは要件[6]としてさらに下記関係式(Eq-4b)で表される範囲を満たすエチレン系重合体が好適である。短鎖分岐型エチレン系重合体と比較すると、長鎖分岐型エチレン系重合体の溶融体は、低せん断速度領域での粘度が高く、且つ高せん断速度領域での粘度が低いため、良成形加工性が求められる分野に好んで応用することができる。
−0.21×Log10MFR+0.16 ≦ Log10[η] < −0.21×Log10MFR+0.26 … (Eq-4b)
後述の実施例のような配位重合の場合、エチレン系重合体中の長鎖分岐構造は、β-水
素脱離反応により生成した末端ビニル基を有する分子鎖(マクロモノマー)が、再挿入することにより生成すると考えられている。このため、溶液中のマクロモノマー濃度とエチレン濃度との比([マクロモノマー]/[エチレン])を増減させることで、エチレン系重合体中の長鎖分岐量は増減し、その結果、本発明の要件[6]の上限ないし下限の極限粘
度[η]を有するエチレン系重合体を製造することが可能である。一般的に[マクロモノマー]/[エチレン]が高いとエチレン系重合体中の長鎖分岐量は増加し、[マクロモノマー]/[エチレン]が低いとエチレン系重合体中の長鎖分岐量は低下する。溶液中の[マクロモノマー]/[エチレン]を増減させる手法としては、具体的には以下の1)〜4)の条件のいずれか1つ以上を制御するような方法が挙げられる。
1)重合温度
重合温度が高いほどβ-水素脱離反応は起こりやすくなる。そのため、重合温度を高く
すれば、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系重合体中の長鎖分岐量は増加する。
2)ポリマー濃度
溶液中のポリマー濃度を高くすれば、相対的にマクロモノマー濃度も高くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系重合体中の長鎖分岐量は増加する。
3)エチレン転化率
エチレン転化率を高くすれば、溶液中のエチレン濃度が低くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系重合体中の長鎖分岐量は増加する。
4)溶媒種
重合溶媒を低沸点の溶媒にすると、溶液中のエチレン濃度が低くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系重合体中の長鎖分岐量は増加する。
また、上記1)〜4)の他にも、β-水素脱離反応を制御する以外にAlへの連鎖移動反応
等を制御することによって[マクロモノマー]/[エチレン])を増減させ、エチレン系重合体中の長鎖分岐量を変化させることもできる。
なお、本発明において、極限粘度〔[η](dl/g)〕はデカリン溶媒を用い、以下のよ
うに測定した。エチレン系重合体約20 mgをデカリン15 mlに溶解し、135℃のオイルバス
中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5 ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外
挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求める。すなわち、極限粘度[η]は下記式で表
される。
[η]=lim(ηsp/C)…(C→0)
本発明に係るエチレン系重合体[B]は、13C−NMRスペクトルにより算出されたメチレン連鎖数比において、2個のメチレン連鎖数比(n=2)と4個のメチレン連鎖数比(n=4)との和が1.0%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.2%以下である。
メチレン連鎖数比とは、エチレン系重合体主鎖中において隣接した2個の3級炭素原子間に存在するメチレン基の連鎖数の比である。エチレン系重合体中のα-オレフィンの結
合方向が規則的になると、2個のメチレン連鎖、及び4個のメチレン連鎖が減少する(例えば特公平6-820)。そのため、2個のメチレン連鎖数比(n=2)と4個のメチレ
ン連鎖数比(n=4)との和が1.0%以下の場合、エチレン系重合体中のα-オレフィンの結合方向が規則的である。
メチレン連鎖数比は13C-NMRスペクトルにより下記のように算出された。測定は日本電
子(株)社製EX400型核磁気共鳴装置(13C:100MHz)を用い、積算回数5000回にて測定した
。なお、化学シフト基準として主鎖メチレンのピーク(d+d+:29.73ppm)を用いた。直径5mmの市販のNMR測定石英ガラス管中に、エチレン系重合体65mgと和光純薬工業(株)社製特
級o-ジクロルベンゼン:ACROS社製ベンゼン-d6=4:1(体積比)の混合液0.6mLを入れ、120
℃にて加熱、均一分散させたものを測定試料とした。NMRスペクトルの帰属は、Losio,S. et al. Macromolecules,2006,39,8920.に準じて行った。メチレン連鎖数比は、Randall,J.C. Macromolecules,1978,11,33-36.に記載の方法に準じ、主鎖メチレンシグナルaa,ab,bb,bg,gg,gdの積分値より算出した。
・エチレン系重合体[B]の製造方法
上述のような特性を満たす本発明に係るエチレン系重合体[B]は、どのような方法で調製されてもよく、その製造方法を特に限定するものではないが、例えば、以下の(A)成分と、(B)成分とを含むオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと、炭素数4〜10のα-オレフィンから選ばれる1種以上とを含むモノマーを、120〜300℃の温度で溶
媒の共存下で溶液重合(以下の説明では、「高温溶液重合」と呼ぶ場合がある。)することによって製造することができる。
(A)下記一般式[I]で表される架橋型メタロセン化合物。
(B)(b-1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b-2)前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および
(b-3)有機アルミニウム化合物
とから選ばれる少なくとも1種以上の化合物(助触媒と呼ぶ場合がある)。
また、本発明に係るエチレン系重合体[B]は、上述した要件[1]〜[5]、好ましくは要件[1]〜[6]を満たす限り上記製造方法には何ら限定されるものではない。例えば一般式[I]とは異なる構造のメタロセン化合物を使用して製造しても良いし、前記(B)成分とは異なる助触媒を使用してもよいし、公知の二種類以上のエチレン系重合体を反応器ブレンドや物理ブレンド等の手法によって調製してもよい。
Figure 2008231266
(上記一般式[I]において、Mは遷移金属を表し、pは遷移金属の原子価を表し、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれは水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、R1およびR2は同一でも異なっていてもよいMに配位したπ電子共役配位子を表し、そしてQは2個のπ電子共役配位子R1とR2とを架橋する2価の基を表す。)
一般式[I]中、Mで表される遷移金属としては、たとえば、Zr、Ti、Hf、V、Nb、Taお
よびCrが挙げられ、好ましい遷移金属はZr、TiまたはHfであり、さらに好ましい遷移金属はZrまたはHfである。
一般式[I]中、R1およびR2で表されるπ電子共役配位子としては、η-シクロペンタジエニル構造、η-ベンゼン構造、η-シクロヘプタトリエニル構造、およびη-シクロオク
タテトラエン構造を有する配位子が挙げられ、特に好ましい配位子はη-シクロペンタジ
エニル構造を有する配位子である。η-シクロペンタジエニル構造を有する配位子として
、たとえば、シクロペンタジエニル基、インデニル基、水素化インデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子、アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシなどの炭化水素基、トリアルキルシリル基などの炭化水素基含有シリル基、鎖状または環状アルキレン基などでさらに置換されていてもよい。
一般式[I]中、Qで表されるR1とR2とを架橋する基は、2価の基であれば特に限定され
ないが、たとえば、直鎖または分枝鎖アルキレン基、非置換または置換シクロアルキレン基、アルキリデン基、非置換または置換シクロアルキリデン基、非置換または置換フェニレン基、シリレン基、ジアルキル置換シリレン基、ゲルミル基、ジアルキル置換ゲルミル基などが挙げられる。
後述する実施例においては、上記一般式[I]を満たすメタロセン化合物としてジ(p-
トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレ
ニル)ジルコニウムジクロリドに代表されるメタロセン錯体を用いているが、本発明に関
わるメタロセン化合物はこれに何ら限定されるものではない。
次に前記したメタロセン化合物(A)を、本発明のエチレン系重合体を製造するための
重合触媒成分として使用する際の好ましい実施態様について説明する。
メタロセン化合物(A)を含むメタロセン系触媒を、エチレン系重合体を製造するため
のオレフィン重合触媒として用いる場合、重合触媒は上述のように、(A)前記一般式[I]で表されるメタロセン化合物、並びに(B)(b-1) 有機アルミニウムオキシ化合物、(b-2) 前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および(b-3)有機
アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物から構成されるのが好ましい。ここで、触媒成分(B)としては、重合活性と生成オレフィン重合体の性状の視点から、
次の[c1]〜[c4]のいずれかが好ましく用いられる。
[c1] (b-1)有機アルミニウムオキシ化合物のみ、
[c2] (b-1)有機アルミニウムオキシ化合物と(b-3)有機アルミニウム化合物、
[c3] (b-2)前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物と(b-3)有
機アルミニウム化合物、
[c4] (b-1)有機アルミニウムオキシ化合物と(b-2)前記メタロセン化合物(A)と反応し
てイオン対を形成する化合物。
ただし、(A)成分として、一般式[I]においてQがシリレン基であるメタロセン化合
物を用いる場合は、(B)成分としては、(b-2)前記メタロセン化合物(A)と反応してイ
オン対を形成する化合物が使用されることはなく、従って、上記の好ましい(B)成分; [c1]〜[c4]においても、[c1]と[c2]のみが採用される。
以下、(B)成分を構成しうる各成分について具体的に説明する。
(b-1) 有機アルミニウムオキシ化合物
有機アルミニウムオキシ化合物(b-1)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま
使用できる。具体的には、下記一般式[II]および/または一般式[III]
Figure 2008231266
(式[II]または[III]中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。)
で代表される化合物を挙げることができ、特にRがメチル基であるメチルアルミノキサン
でnが3以上、好ましくは10以上のものが利用される。(一般式[II]または[III]にお
いてRがメチル基である有機アルミニウムオキシ化合物を、以下「メチルアルミノキサン
」と呼ぶ場合がある。)
メチルアルミノキサンは、その入手容易性と重合活性の高さからポリオレフィン業界で多用されてきた有機アルミニウムオキシ化合物であるが、飽和炭化水素に溶解し難いことから、止む無く環境負荷が大きなトルエンやベンゼン等の芳香族炭化水素溶液として用いられてきた経緯がある。このような背景下、飽和炭化水素に溶解するメチルアルミノキサン類縁体が開発されている。このような類縁体としては下記一般式[IV]のような修飾メチルアルミノキサンを例示できる。本発明においては、有機アルミニウムオキシ化合物(b-1)として、このような修飾メチルアルミノキサンも包含する。
Figure 2008231266
(式[IV]中、Rは炭素数2〜20の炭化水素基、m、nは2以上の整数を示す。)
前記一般式[IV]で表わされる修飾メチルアルミノキサンは、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製され(例えば、US4960878やUS5041584等に製造法が開示)、東ソー・ファインケム社等メーカーからトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製された、Rがイソブチル基で
あるものがMMAO、TMAOといった商品名で商業生産されている(例えば、「東ソー研究・技術報告」第47巻55(2003)参照)。しかし、MMAOやTMAOを飽和炭化水素溶液の形態で、本願発明の高温溶液重合法の技術的範囲外で重合しても、メチルアルミノキサンを超える活性を達成できないことを本願出願人は確認している。本発明に関わる高温溶液重合法によれば、前記一般式[IV]で示される修飾アルミノキサンの飽和炭化水素溶液を用いた場合でも高い重合活性を発現する。
なお本発明に関わる高温溶液重合においては、有機アルミニウムオキシ化合物(b-1)と
して、特開平2-78687号公報に例示されているベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ
化合物も適用できる。
さらに、本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(b-1)としては、下記一般
式[V]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる
Figure 2008231266
(式[V]中、Rcは炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。

なお、上述した(b-1)有機アルミニウムオキシ化合物中には若干の有機アルミニウム化
合物が混入していても差し支えない。
(b-2) メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(b-2)(以下、「イオン
性化合物」と略称する場合がある。)としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、イオン性化合物(b-2)
としては、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
本発明において、好ましく採用されるイオン性化合物(b-2)は、下記一般式[VI]で
表される化合物である。
Figure 2008231266
式[VI]中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アン
モニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。Rf〜Riは、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基である。
前記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N, N-ジメチルアニリニウム
カチオン、N, N-ジエチルアニリニウムカチオン、N, N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN, N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカ
チオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
上記のうち、Re+としては、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ま
しく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N, N-ジメチルアニリニウムカチオン、N, N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
カルベニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、具体的には、トリフェニルカ
ルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフル
オロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができる。
アンモニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、トリアルキル置換アンモニウ
ム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩などを挙げることができる。
トリアルキル置換アンモニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、具体的には
、たとえばトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(4-トリ
フルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(o-トリル)
ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタ
フルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフ
ェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどが挙げられる。
N, N-ジアルキルアニリニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、具体的には、たとえばN, N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、 N, N-ジメチルアニリニ
ウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、 N, N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N, N-ジエチルアニリニウムテトラ
フェニルボレート、N, N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボ
レート、 N, N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N, N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N, N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどが挙げられる。
その他のイオン性化合物(b-2)としては、本出願人によって開示(特開2004-51676号
公報)されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
上記のイオン性化合物(b-2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いること
もできる。
(b-3) 有機アルミニウム化合物
オレフィン重合触媒を形成する(b-3)有機アルミニウム化合物としては、例えば下記
一般式[VII]で表される有機アルミニウム化合物、下記一般式[VIII]で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物などを挙げることができる。
Ra mAl(ORb)nHpXq … [VII]
(式[VII]中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
上記一般式[VII]で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチル
アルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアル
ミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;一般式(i-C4H9)xAly(C5H10)z (式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)などで表されるイソプレニルア
ルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;一般式Ra 2.5Al(ORb)0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアル
キルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド
、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
M2AlRa 4 … [VIII]
(式[VIII]中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。このような化合物としては、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4 などを例示することができる。
また、上記一般式[VII]で表される化合物に類似する化合物も使用することができ、
例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物
を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2などを挙げることができる。
入手容易性の点から、(b-3)有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウ
ム、トリイソブチルアルミニウムが好ましく用いられる。
重合
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、例えば触媒成分(A)
および触媒成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法を例示することができる。
上記方法においては、各触媒成分の2つ以上が予め接触されていてもよい。
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンと炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合を行い、本発明のエチレン系重合体を製造する場合、触媒成分(A)は、反応
容積1リットル当り、通常10-9〜10-1モル、好ましくは10-8〜10-2モルになるような量で
用いられる。
成分(b-1)は、成分(b-1)と、成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(b-1)/M]が通
常0.01〜5,000、好ましくは0.05〜2,000となるような量で用いられる。成分(b-2)は、成
分(b-2)中のアルミニウム原子と、成分(A)中の全遷移金属(M)とのモル比[(b-2)/M]が、通常10〜5,000、好ましくは20〜2,000となるような量で用いられる。成分(b-3)は、成分(b-3)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b-3)/M]が、通常1〜10000、好ましくは1〜5000となるような量で用いられる。
本発明に係る高温溶液重合では、上述のようなメタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合を行うことによって、コモノマー含量が高く、組成分布が狭く、分子量分布が狭いエチレン系重合体を効率よく製造できる。ここで、エチレンと、炭素数4〜10のα-オレフィンとの仕込みモル比は通常、エチレン:α-オレフ
ィン=10:90〜99.9:0.1、好ましくはエチレン:α-オレフィン=30:70〜99.9:0.1、さ
らに好ましくはエチレン:α-オレフィン=50:50〜99.9:0.1である。
炭素数4〜10のα-オレフィンとしては、直鎖状または分岐状のα-オレフィン、例えば
プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メ
チル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどを挙げることができる。本発明の高温溶液重合において使用できるα-オレフィンは極性基含有
オレフィンも包含する。極性基含有オレフィンとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸などのα,β-不飽和カルボン酸類、およびこれらのナ
トリウム塩等の金属塩類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのα,β-不飽和カルボン酸エステル類
;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどの不飽和グリシジル類などを挙げることができる。また、ビニルシクロヘキサン、ジエンまたはポリエン;芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o, p-ジメチルスチレン、メトキ
シスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン類;および3- フ
ェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルスチレンなどを反応系に共存させ
て高温溶液重合を進めることも可能である。以上述べたα-オレフィンの中では、1-ブテ
ン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましく用いられる。また本
発明に関わる高温溶液重合方法においては、炭素原子数が4〜10、好ましくは3〜20の環状オレフィン類、たとえばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-
ノルボルネンなどを併用してもよい。
本発明に関わる「溶液重合」とは、ポリマーの融点以上の温度で後述する不活性炭化水素溶媒中にポリマーが溶解した状態で重合を行う方法の総称である。本発明に関わる溶液重合における、重合温度は通常120℃〜300℃、好ましくは130℃〜250℃、更に好ましくは130℃〜200℃であり、前記したように、本明細書では「高温溶液重合」ともいう。
本発明に関わる高温溶液重合においては、重合温度が120℃に満たない場合、その重合
活性は極端に低下するので生産性の点で実用的でない。また、120℃以上の重合温度領域
では温度が高くなるに従い、重合時の溶液粘度が低下し、重合熱の除熱も容易となり、得られるオレフィン重合体の高分子量化が達成できる。しかし、重合温度が300℃を超える
と、得られるポリマーが劣化が起こる場合があるので好ましくない。また本発明に関わる高温溶液重合において好ましく製造されるエチレン系重合体の性状の視点からは、重合温度が120〜200℃の領域において、フィルム等多くの産業分野で好適に用いられる、後述のエチレン系重合体を効率良く生産できるのである。重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ
圧、好ましくは常圧〜8MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以
上に分けて行うことも可能である。得られるエチレン系重合体の分子量は、本発明の範囲内において、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する触媒成分(B)の量により調節することもできる。水素を添加
する場合、その量は生成するエチレン系重合体1kgあたり0.001〜5,000NL程度が適当であ
る。
本発明に関わる高温溶液重合において用いられる溶媒は通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50℃〜200℃の飽和炭化水素である。具体的には、
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられる。なおベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類やエチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も本発明の高温溶液重合に関わる「不活性炭化水素溶媒」の範疇に入り、その使用を制限するものではない。前記したように、本発明に係る高温溶液重合においては、従来繁用されてきた芳香族炭化水素溶解タイプの有機アルミニウムオキシ化合物のみならず、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水
素に溶解するMMAOのような修飾メチルアルミノキサンを使用できる。この結果、溶液重合用の溶媒として脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素を採用すれば、重合系内や生成するエチレン系重合体中に芳香族炭化水素が混入する可能性をほぼ完全に排除することが可能となった。すなわち、本発明に関わる高温溶液重合方法は、環境負荷を軽減化でき人体健康への影響を最小化できるという特徴も有するのである。
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン系重合体粒子および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施されるのが好ましい。
<任意成分>
本発明のポリプロピレン組成物は、上述のポリプロピレン[A]と、エチレン系重合体[B]のみから構成されることも好ましいが、ポリプロピレン[A]およびエチレン系重合体[B]に加えて、充填剤[C]やその他の添加剤などの任意成分を含有してもよい。
・充填剤[C]
本発明において、充填剤[C]としては、たとえば、微粉末タルクなどのタルク、カオリナイト、焼成クレー、バイロフィライト、セリサイト、ウォラスナイトなどの天然珪酸または珪酸塩、沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、酸化亜鉛、亜鉛華、酸化マグネシウムなどの酸化物、含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸などの合成珪酸または珪酸塩で代表される粉末状充填剤、マイカなどのフレーク状充填剤、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セビオライト、PMF(Processed Mineral Fiber)、ゾノト
ライト、チタン酸カリ、エレスタダイト、ガラス繊維などの繊維状充填剤、ガラスバルン、フライアッシュバルンなどのバルン状充填剤などの無機充填剤、ハイスチレン類、リグニン、再ゴムなどの有機充填剤が挙げられる。このような充填剤[C]は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
本発明では、充填剤[C]が無機充填剤であることが好ましく、これらのうちタルクが特に好ましい。タルクとしては、レーザー解析法で測定した平均粒径が1〜10μm、好ましくは2〜6μmのものが望ましい。
このような充填剤[C]は、所望の性状に応じて種類、量を選択すればよく、特に限定されるものではないが、ポリプロピレン[A]と、エチレン系重合体[B]との合計100重量部に対して、好ましくは5〜50重量部、より好ましくは5〜20重量部程度の範囲で用いられるのが望ましい。
・その他の添加剤
本発明のポリプロピレン組成物は、必要に応じて、充填剤以外の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。その他の添加剤としては、たとえば、耐熱安定剤、芳香族カルボン酸アルミニウム塩、芳香族リン酸エステル塩、ジベンジリデンソルビトールなどの核剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物などの流れ性改良剤、耐光安定剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、ウェルド強度改良剤などの添加剤、さらには他の重合体たとえばポリエチレン(PE)、上記組成以外のプロピレン・エチレンランダム共重合体(EPR)などが挙げられる。このような添加剤は、ポリプロピレン組成物100重量中、0.0001重量部〜10重量部の量で用いることができる。
<ポリプロピレン組成物の製造>
本発明のポリプロピレン組成物は、上述のポリプロピレン[A]と、エチレン系重合体[B]と、必要に応じて充填剤[C]などの任意成分を、公知の方法で混合して製造することができる。製造には、例えば下記のような方法を採用することができる。
[1] ポリプロピレン[A]とエチレン系重合体[B]とを押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドする方法。
[2] ポリプロピレン[A]とエチレン系重合体[B]とを適当な良溶媒(例えば、ヘキサン,ヘプタン,デカン,シクロヘキサン,ベンゼン,トルエン及びキシレン等の炭化水素溶
媒)溶解し、次いで溶媒を除去する方法。
[3] ポリプロピレン[A]とエチレン系重合体[B]とを適当な良溶媒にそれぞれ別個に溶解した溶液を調製した後混合し、次いで溶媒を除去する方法。
[4] 上記[1]から[3]を組み合わせて行う方法。
具体的には、例えば、ポリプロピレン[A]、エチレン系重合体[B]および必要に応じて充填剤[C]などの任意成分を、同時に、または逐次的にたとえばヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー等に装入して、混練した後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法が挙げられる。各成分、および必要により配合する添加剤などの混合順序は任意であり、同時に混合してもよいし、一部成分を混合した後他の成分を混合するというような多段階の混合方法を採用することもできる。これらのうちでも、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練性能に優れた装置を使用すると、各成分がより均一に分散された高品質のポリプロピレン組成物を得ることができて好ましい。
成形体
本発明のポリプロピレン組成物は、公知の方法で成形加工することにより、剛性、耐衝撃性に優れ、かつ破断伸び、耐低温脆化特性に優れた成形体とすることができる。
本発明のポリプロピレン組成物は、各種成形体の製造に好適に用いることができ、従来公知のポリオレフィン用途に広く用いることができるが、成形体としては具体的には、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の熱成形方法により得られる成形体が挙げられる。特に、本発明のポリプロピレン組成物が充填剤を含有する場合には、自動車外装用部品などの自動車部品、例えばバンパー、オーバーフェンダー、サイドモール、ロッカーモール、インストルメンタルパネル、フェンダー、トリム、ドアーパネル、ホイールカバー、サイドプロテクター、コンソールボックス、コラムカバーなどの内装、外装部品の成形により好ましく使用することができる。
本発明の成形体は、例えば押出成形体である場合、その形状および製品種類は特に限定されないが、例えばシート、フィルム(未延伸)、パイプ、ホース、電線被覆などが挙げられ、特にシート、フィルムなどが好ましい。
射出成形体は、従来公知の射出成形装置を用いて公知の条件を採用して、ポリプロピレン組成物を種々の形状に射出成形して製造することができる。本発明に係るポリプロピレン組成物からなる射出成形体は耐白化性、耐衝撃性、剛性などに優れており、自動車内装材、自動車用外装材、家電製品のハウジング、容器など幅広く用いることができる。射出成形体は、たとえば、前記ポリプロピレン組成物を、射出シリンダー又は射出プランジャーを3本以上、好ましくは4〜6本有し、かつゲート数が3点以上である射出成形機を用いて、型締圧力1000〜2000ton、好ましくは1400〜1800tonにて成形することにより得ることができる。
ブロー成形体は、従来公知のブロー成形装置を用いて公知の条件を採用して、ポリプロピレン組成物をブロー成形することにより製造することができる。
押出ブロー成形では、上記ポリプロピレン組成物を樹脂温度160℃〜300℃の溶融状態でダイより押出してチューブ状パリソンを形成し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、樹脂温度130℃〜300℃で金型に着装することにより中空成形体を製造することができる。
押出成形する際には、従来公知の押出装置および成形条件を採用することができ、例えば単軸スクリュー押出機、混練押出機、ラム押出機、ギヤ押出機などを用いて、溶融したポリプロピレン組成物を含む熱可塑性組成物をTダイなどから押出すことによりシートまたはフィルム(未延伸)などに成形することができるまた、射出ブロー成形では、上記ポリプロピレン組成物を含む熱可塑性組成物を樹脂温度100℃〜300℃でパリソン金型に射出してパリソンを成形し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、樹脂温度120℃〜300℃で金型に着装することにより中空成形体を製造することができる。延伸(ブロー)倍率は、縦方向に1.1〜1.8倍、横方向に1.3〜2.5倍であるであることが望ましい。
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<物性評価>
以下の実施例において、各性状の測定および評価は、次の方法により行った。
α-オレフィン含量
α-オレフィン含量は、13C-NMR測定により、上述した方法にて求めた。
溶融張力(MT
溶融張力(MT)は、溶融されたポリマーを一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定される。測定には東洋精機製作所製、MT測定機を用いた。条件は樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15 mm/分、巻取り速度10〜20 m/
分、ノズル径2.095mmφ、ノズル長さ8 mmで行なった。
融点(Tm)
融点(Tm)は、PERKIN ELMER社製Pyris 1を用い、以下のように測定した。測定に用い
た試料は、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100 kg/cm2、冷却温度 20℃、冷却時間5分間、冷
却圧力100 kg/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2 mmにプレス成形することで調製し
た。測定サンプル約5 mgをアルミパンに詰め、窒素雰囲気下(窒素:20 ml/min)で(1)
〜(3)の温度プロファイルにて測定を実施した。
(1) 30℃から10℃/分で200℃まで昇温
(2) 200℃で5分間保持したのち20℃/分で30℃まで降温
(3) 30℃から10℃/分で200℃まで昇温
この(3)の測定で得られた吸熱曲線における最大ピークの温度を融点(Tm)とした。
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、Z平均分子量と重量平均分子量との比(Mz/Mw)
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、重量平均分子量と
数平均分子量との比(Mw/Mn)、Z平均分子量と重量平均分子量との比(Mz/Mw)は、ウ
ォーターズ社製GPC-150Cを用い、前記した方法にて測定した。
ピーク温度
溶出量(積分値)、ピーク温度は、上述の三菱油化社製クロス分別クロマトグラフ装置CFCT-150A型を用いて測定した温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線より
求めた。ピーク温度は温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピーク強度の強いピークの溶出温度である。
MFR-230
MFR-230は、ASTM D1238(230℃、荷重21.2N)に従って測定した。
降伏強度(YS)、破断伸び(EL)
降伏強度(YS)、破断伸び(EL)はJIS K7162に従って、以下の条件で測定した。
[試験条件]
測定温度:23℃
試験片:5.00mm(幅)×1.99mm(厚さ)
試験速度:20.0mm/min.
チャック間距離:58mm
曲げ強度(FS)、曲げ弾性率(FM)
曲げ強度(FS)、曲げ弾性率(FM)はJIS K7171に従って、以下の条件で測定した。
[試験条件]
測定温度:23℃
試験片:10.00mm(幅)×3.93mm(厚さ)
試験速度:2.00mm/min.
スパン間距離:64.0mm
シャルピー衝撃値(0℃)、シャルピー衝撃値(-30℃)
シャルピー衝撃値(0℃)、シャルピー衝撃値(-30℃)はJIS K7111に従って、以下の
条件で測定した。
[試験条件]
測定温度:0℃、-30℃
試験片:7.97mm(幅)×3.93mm(厚さ)
ノッチは機械加工
メチレン連鎖数比
13C-NMRスペクトルを、日本電子(株)社製EX400型核磁気共鳴装置(13C:100MHz)を用い、積算回数5000回にて測定した。化学シフト基準としては、主鎖メチレンのピーク(d+d+:29.73ppm)を用いた。直径5mmの市販のNMR測定石英ガラス管中に、エチレン系重合体65mgと和光純薬工業(株)社製特級o-ジクロルベンゼン:ACROS社製ベンゼン-d6=4:1(体積比)の混合液0.6mLを入れ、120℃にて加熱、均一分散させたものを測定試料とした。NMRスペ
クトルの帰属は、Losio,S. et al. Macromolecules,2006,39,8920.に準じて行った。メチレン連鎖数比は、Randall,J.C. Macromolecules,1978,11,33-36.に記載の方法に準じ、主鎖メチレンシグナルaa,ab,bb,bg,gg,gdの積分値より算出して、メチレン連鎖数の割合(
%)を求めた。
・使用原料
<ポリプロピレン[A]>
ポリプロピレン[A-1]
(株)プライムポリマー社より市販されているポリプロピレン(商品名:J739E)を用い
た。
<エチレン系重合体[B]>
製造例1(エチレン系重合体[B−1]の製造)
[触媒合成]
(i)ジ(p-トリル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒド
ロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(i-1)シクロペンタジエニル(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジ-p-トリルメタンの合成
磁気攪拌子、三方コックおよび滴下漏斗を備えた300 ml二口フラスコを充分に窒素置換した後、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレン2.98 g(7.71 mmol)を入れ、脱
水テトラヒドロフラン60 mLを加えて無色透明の溶液とした。氷水浴で冷やしながら、1.56 mol/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液5.2 mL(8.1 mmol)を徐々に加えた後、窒
素雰囲気下室温で7時間攪拌して橙色溶液を得た。メタノール/ドライアイス浴で冷やしながら、予め脱水テトラヒドロフラン30 mLに溶解させた6,6-ジ-p-トリルフルベン2.40 g(9.27 mmol)を滴下漏斗を用いて20分間かけて徐々に加えた。その後室温まで徐々に昇
温し、窒素雰囲気下室温で21時間攪拌して暗赤色溶液を得た。飽和塩化アンモニウム水溶液100 mLを徐々に加え、続いてジエチルエーテル100 mLを加えた。得られた二層の溶液を300 mLの分液漏斗に移して数回振った後、無色透明の水層を除いた。続いて、得られた有機層を水100 mLで2回、飽和食塩水100 mLで1回洗い、無水硫酸マグネシウムで30分間乾燥した。固体を濾別し、ロータリーエバポレータで溶媒を留去して得た固体をヘキサンで洗浄して、白色固体としてシクロペンタジエニル(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフル
オレニル)ジ-p-トリルメタンを得た。収量は3.55 g(5.50 mmol,収率71.3 %)であった
。シクロペンタジエニル(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジ-p-トリル
メタンの同定は、1H-NMRスペクトルおよびFD-MSスペクトルで行った。以下にその測定結
果を示す。
1H-NMRスペクトル(270 MHz, CDCl3):d/ppm 0.8-1.7(m, Me(OMOHDBFlu), 24H), 2.1-2.4(br, CH2(OMOHDBFlu), 8H), 2.7-3.1(br, CH2(Cp), 1H), 5.2-5.4(m, CH(9-OMOHDBFlu),
1H), 5.8-6.5(br, Cp, 4H), 6.7-7.5(br, Ar(OMOHDBFlu) & Ar(p-tol), 10H), 7.29(s, Ar(OMOHDBFlu), 2H)
FD-MSスペクトル:M/z 644(M+)
(i-2)ジ(p-トリル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドの合成
滴下漏斗、磁気攪拌子を備えた100 mLギルダールフラスコを充分に窒素置換した後、シクロペンタジエニル(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジ-p-トリルメタ
ン1.10 g(1.56 mmol)を入れ、脱水ジエチルエーテル30 mLを加えて無色透明の溶液とした。氷水浴で冷やしながら、1.56 mol/Lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液2.1 mL(3.30 mmol)を徐々に加えた後、窒素雰囲気下室温で20時間攪拌して赤色の固体と赤色の溶液からなるスラリーを得た。メタノール/ドライアイス浴で冷やしながら四塩化ジルコニウム・テトラヒドロフラン錯体(1:2)0.552 g(1.46 mmol)を加えた後、室温まで徐々に昇温し、窒素雰囲気下室温で24時間攪拌して赤桃色の固体と赤色の溶液からなるスラリーを得た。減圧下で溶媒を留去して得られた赤色の固体をヘキサンで洗浄し、続いてジクロロメタンで抽出して赤色の溶液を得た。この溶液の溶媒を減圧下で留去し、赤桃色固体としてジ(p-トリル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒ
ドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを得た。収量は0.825 g(1.02 mmol
,収率70.2 %)であった。ジ(p-トリル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オ
クタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドの同定は、1H-NMRスペクトルおよびFD-MSスペクトルで行った。以下にその測定結果を示す。
1H-NMRスペクトル(270 MHz, CDCl3):d/ppm 0.82(s, Me(OMOHDBFlu), 6H), 0.93(s, Me(OMOHDBFlu), 6H), 1.40(s, Me(OMOHDBFlu), 6H), 1.46(s, Me(OMOHDBFlu), 6H), 1.5-1.7(m, CH2(OMOHDBFlu), 8H), 2.32(s, Me, 6H), 5.53(t, J=2.6 Hz, Cp, 2H), 6.17(s, Ar(OMOHDBFlu), 2H), 6.25(t, J=2.6 Hz, Cp, 2H), 7.1-7.3(m, Ar(p-tol), 4H), 7.6-7.8(m, Ar(p-tol), 4H), 8.03(s, Ar(Flu), 2H)
FD-MSスペクトル:M/z 804(M+)
[重合]
内容積1Lの液満の完全攪拌混合型重合槽内に、脱水n-ヘキサンを1.0 L/hr、n-ヘ
キサンに溶解させたジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオク
タヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(上記合成法で合成)を0.49 μmol/hr、メチルアルミノキサン(TMAO-341:東ソー・ファインケム社製)のn-ヘキサン溶液をAl量で0.243 mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を2.0 mmol/hr、エチレンを94 g/hr、脱水1-オクテンを422 g/hr、水素を0.0 NL/hrの割合となる
様に連続的に供給した。かつ重合槽内の圧力が全圧3.8 MPa-Gとなる様に重合槽より重合
溶液を連続的に抜き出し、重合温度150 ℃、滞留時間0.5 hrの条件で重合を行った。重合槽から連続的に抜き出された重合溶液に失活剤としてメタノールを少量添加し、重合溶液回収ドラムに移液し、ドラムにて未反応エチレンを除去した。その後、重合溶液をメタノールの中に入れてポリマーを析出させた後、耐熱安定剤としてIrganox1076(チバスペシ
ャリティケミカルズ社製)0.05重量%を加え、N2流通下で真空乾燥器にて200 ℃で、0.5
時間乾燥し、エチレン系共重合体[B-1]を90 g/hrで得た(第1表参照)。該試料を用いて物性測定を行った結果を表2に示す。
製造例2,3(エチレン系重合体[B−2]、[B−3]の製造)
[重合]
エチレン系重合体[B-1]の製造方法において、重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、エチレン系重合体[B-1]の製造方法と同様にしてエチレン系重合体[B-2]、エチレン系重合体[B-3]を得た。得られたエチレン系重合体の物性測定結果を表2に示す。
Figure 2008231266
Figure 2008231266
<タルク[C]>
タルク[C−1]
松村産業社より市販されているタルク(商品名:ホワイトフィラー5000PJ)を用いた。
[実施例1]
ポリプロピレン[A]、エチレン系重合体[B-1]、及びタルク[C]を表3に記した重量比でドライブレンドした後、耐熱安定剤としてIrganox1076(チバスペシャリティケミカ
ルズ社製)0.1重量%、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)0.1重量%を加え、テクノベル社製の押出機(品番:KZW15TW)を用い、設定温度190℃、スクリュー回転数500rpm、フィータ゛ー回転数80rpmの条件にて溶融混練した後、ストランド状に
押出し、カッターにてペレット化することでポリプロピレン組成物を得た。このポリプロピレン組成物を、東芝機械社製の射出成形機(品番:EC40NII)を用い、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、射出圧力100Mpaの条件にて射出成形試験片を成形した。得られた成形品の物性を表3に示す。
[実施例2]
エチレン系重合体[B-1]をエチレン系重合体[B-2]変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を製造した。得られた成形品の物性を表3に示す。
[実施例3]
エチレン系重合体[B-1]をエチレン系重合体[B-3]変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を製造した。得られた成形品の物性を表3に示す。
Figure 2008231266
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、従来公知の種々の成形方法により成形が可能で、各種成形体の製造に好適に使用できる。本発明に係る成形体は、フィルム、シート、容器、日用品、自動車内外装用部品などの用途に好適である。

Claims (4)

  1. ポリプロピレン[A]と、下記要件[1]〜[5]を同時に満たすエチレン系重合体[B]とを含み、ポリプロピレン[A]と、エチレン系重合体[B]との重量比([A]:[B])が99:1〜55:45の範囲内にあることを特徴とするポリプロピレン組成物;
    [1] エチレンと炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合体である。
    [2] 190℃における2.16 kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.10〜100 g/10分の範
    囲である。
    [3] 密度(D)が860〜905 kg/m3の範囲である。
    [4] GPCで測定した重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.50以上3.00以下の範囲である。
    [5] 温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピーク強度の強いピークの高さ(H)と、該ピークの1/2の高さにおける幅(W)との比(H/W)と密度(D
    )とが、要件[2]のMFR値に応じて、下記関係式(Eq-1)〜(Eq-3)のいずれかを満たす。
    [0.10≦MFR≦1.00の場合]
    0.0163×D−14.00 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.66 … (Eq-1)
    [1.00<MFR≦10.0の場合]
    0.0163×D−14.02 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.68 … (Eq-2)
    [10.0<MFR≦100の場合]
    0.0163×D−14.10 ≦ Log10(H/W) ≦ 0.0163×D−13.76 … (Eq-3)
  2. エチレン系重合体[B]が、さらに下記要件[6]を満たすことを特徴とする請求項1に
    記載のポリプロピレン組成物;
    [6] 135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と、190℃における2.16 kg荷重
    でのメルトフローレート(MFR)とが下記関係式(Eq-4)を満たす。
    −0.21×Log10MFR+0.16 ≦ Log10[η] ≦ −0.21×Log10MFR+0.31 … (Eq-4)
  3. ポリプロピレン[A]と、エチレン系重合体[B]との合計100重量部に対して、5
    〜50重量部の充填剤[C]を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のポリプロピレン組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン組成物から得られる成形体。
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