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JP2007315752A - 肝線維化ステージの判定方法 - Google Patents

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JP2007315752A JP2004236743A JP2004236743A JP2007315752A JP 2007315752 A JP2007315752 A JP 2007315752A JP 2004236743 A JP2004236743 A JP 2004236743A JP 2004236743 A JP2004236743 A JP 2004236743A JP 2007315752 A JP2007315752 A JP 2007315752A
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liver fibrosis
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protein
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Shuhei Nishiguchi
修平 西口
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Abstract

【課題】肝線維化ステージを正確に判定できる新規な方法を提供する。
【解決手段】患者の体液又は組織中の、配列番号1〜60のいずれかの塩基配列を有する遺伝子群より選ばれる1または2種以上の遺伝子、または前記塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有する遺伝子の発現量を測定し、該測定値に基いて肝線維化ステージを判定する。
【選択図】なし

Description

本発明は、肝臓の線維化過程において発現レベルが変動する遺伝子の発現量、または該遺伝子にコードされるタンパク質の量を測定することによる、肝線維化ステージの詳細なる判定方法、該方法に用いる検査試薬ならびに新規肝線維化症抑制剤およびそのスクリーニング方法に関する。
肝線維化においては肝臓中に異常な線維構造が生じ、進展と共に線維構造が拡大し、最終的には肝実質細胞が中心となり構成される肝葉構造が線維により囲まれた結節が全体に生じる。肝に流入する血液は毛細血管により肝全体に行き渡り、また毛細血管が集合して肝より流出する。この状態が肝の健康維持と肝機能が発揮され体全体が維持される基本であるが、線維構造による結節が生じると、この血流が肝細部に行き渡らなくなり肝機能が十分発揮されなくなる。この結果、全身の健康が維持できなくなり、疲労感、倦怠感が生じ、場合によっては腹水が生じたり、血中アンモニア濃度が上昇する結果、脳症を引き起こしたりする。また、肝自体が受ける酸化ストレス、傷害と修復の繰り返し、少なくなった肝細胞での機能維持に必要となる過剰な肝細胞活動の亢進等が原因となって肝癌の発生頻度が上昇する。以上が肝線維化の推移である。
肝線維化は主としてウイルス感染が原因となる。特にC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスが原因である場合が多い。ウイルス感染が引きおこす炎症は免疫反応で沈静化されるが、ウイルスは完全に消去されない場合が多く、再びウイルスが増殖し炎症が起きる。この繰り返しが何年も継続する。ウイルスが感染しておきる炎症を急性肝炎、ウイルスが排除できずに炎症が継続する場合を慢性肝炎、肝炎により肝線維化が生じて線維構造が増大し、結節が生じたり、線維構造による全身障害がおきてくる状態を肝硬変という病名で呼んでいる。肝炎はウイルス感染ばかりでなく、長期にわたる飲酒や薬物投与によっても生じる。脂肪が肝に蓄積する脂肪肝から線維化が生じる場合もある。急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変と病状が増悪することと、肝線維化の進行とはよく一致している。
肝線維化の診断は、少量の肝臓組織を体外から刺した針で採取し、この組織検査により肝線維化度を判定する、いわゆる肝生体検査(略して肝生検)により行われる。線維化度合いは線維化進行に合わせてF1,2,3,4と分類され、F4は肝硬変に相当する(犬山分類といわれる慢性肝炎の肝組織学的基準における線維化の程度によるステージング:参考資料:肝蔵病学 clinical Science 医学書院 p331〜332、 第19回犬山シンポジウム、犬山シンポジウム記録刊行会編、中外医学社、 p142〜188)。肝線維化は一般に数十年をかけて次第にF1からF4へ進行する、大変ゆっくりした病気進行である。患者の負担から何度も行なえない肝生検で、長期に渡る肝線維化過程を診断するのであるから、肝生検の診断が的確に病状をとらえることが要求される。このように肝生検は肝線維化診断の基本となる手段であるが3つの問題がある。1)肝生検の判定工程においては組織標本をつくり、病理学的検査を行なうが、検査する人の主観が診断を左右する。F1から4のステージ分類は診断する人や施設が変わると同一サンプルでもステージが異なって診断される場合が少なくない。2)病理学的検査は肉眼的におこなわれる為にF1,2,3,4の4段階に分類することが限界で、線維化の進展を連続した数値化することができない。発癌の危険性が増加するのはF3とF4の中間にあるといわれており、F3とF4の間を連続的に線維化進展を数値化することが望まれている。3)肝生検は主として線維を染色により識別し、その状態から線維化の程度を診断する。肝細胞の活動の結果としての線維を見て判断しており、ウイルスがすでに除去されて肝臓での線維化活動が沈静化された状態とこれから肝臓中の細胞が活性化し、線維を産生したり、肝臓の活動が障害を受けている状態などを識別すること
が出来ない。これから線維化が進展する方向に向かうのか、すでに沈静化されているのかを診断する必要がある。
これら3つの問題点に加えるに、以下の問題点は肝生検に代わる肝線維化診断法開発の必要性を示唆している。肝生検は肝に傷をつけるために患者への負担が大きく、危険を伴う。入院を伴い、患者のみならず医師の負担も大きい。肝生検の実施は最小限の実施にとどめられており、同一患者に何度も肝生検することや線維化が軽度であることが予想される場合は通常行なわれないため、十分な診断が出来ない。また肝生検は肝全体のごく一部を切り出して診断するために、サンプリングした場所により診断が左右される。画像診断を見ながら、サンプリングは行われるがサンプリングによる誤差は免れない。
そこで、これら問題点を解決した肝線維化診断法が望まれている。肝生検に代わる診断として、血清中のマーカーを測定する方法がある。線維の成分であるヒアルロン酸やコラーゲンあるいはそのフラグメントの測定などが用いられている(非特許文献1〜5)。
線維由来の血清マーカーとして用いられているヒアルロン酸、は、肝線維化に対応して血清中濃度が上昇するが、肝線維化状態を反映するばかりでなく、肝の炎症状態でも血清中濃度が変動するため、線維化のみを判定することが難しい(非特許文献6、7)。また、血清中コラーゲン(typeIII collagen, typeIV collagenなどあるいはそのフラグメント)やlaminin量は肝硬変と正常肝を区別することは出来るが、肝線維化の初期のステージ進行を診断することが出来ない。肝線維化初期は明確な自覚症状が無い場合も多く、F4以降、すなわち肝硬変になって、自覚症状が出てから肝線維化が発見されることが通例である。F4以降は線維化を改善することが難しく、肝癌に進展して死亡する確率が極めて高くなる。超音波やNMRを用いる画像診断によっては線維構造の検出は困難であり、線維化の診断に適用できていない。
また、特許文献1は、肝線維化マーカーとしてlumican, glypican3を含む多数の肝線維化マーカー(表4)を開示しているが、これらのマーカーの発現増加と肝線維化のステージ(F1,2,3,4)のいずれが対応するか否か、更に、これらのマーカーが肝におけるいかなる細胞の活動を反映しているかが不明なこともあり、肝線維化ステージの検査方法、とりわけ初期における検査方法は未だ確立していないといえる。
一方、肝線維化の進展を抑制したり、すでに存在する線維を減少させる治療薬は存在しない。また肝線維化に伴って起きる種々の症状や新たな疾患の発生リスクを抑制する薬剤に関しても殆ど無い。肝線維化は長期かかって形成される疾患であり、発見されたときは治療困難となっていることが薬剤開発を困難にしており、その線維化過程をモニターする手段が限られていることはこれら医薬の開発を困難なものにしている大きな原因である。
また、臓器の線維化症は肝蔵に限らず、血管、肺、膵臓、腎臓とあらゆる臓器に生じる。その発症の機序は必ずしも明確でないが、モノサイト系細胞(肝ではクッパー細胞)の活性化、これにより誘導される星細胞(肝では肝星細胞)の活性化と線維の生産、両者から影響される実質細胞(肝では肝実質細胞)の障害、臓器全体への影響という疾患の進行過程はいずれの臓器の線維化症でも共通と考えられている。これら線維化症に対する検査・診断や治療薬の開発は肝線維化症と同様の問題点をかかえている。
Flisiak R Maxwell et al,Hepatogastroenterology, 2002 49(47), 1369-72 Castera L Hartmann DJ, J Hepatol, 2000, 23(3),412-8 Hirayama C et al, J Gastroenterol, 1996 31(2),242-8, Montalto G et al, Presse Med. 1996, 20,25(2),59-62 Schneider M. et al, Hepatogastroenterology, 1989, 36(6), 506-10,, TaoJ et al World J Gastroenterol. 2003 9(11):2497-500 Cai WM et al, Zhonghua Gan Zang Bing Za Zhi, 2003 11(1): 23-5 Shirai H et al, FEBS Letters 399, 1-8, 1996 特開2003-259877号公報
肝線維化の各ステージに伴って発現が変動して、肝線維化の検査・診断の指標となりうる遺伝子又はタンパク質は知られておらず、それらの変動を指標とする肝線維化ステージの判定方法も知られていない。また、一方で、これらの遺伝子を標的としてその発現を変動させたり、遺伝子産物であるタンパク質の機能を抑制または促進して正常の状態に回復させたりする薬剤のスクリーニング方法が望まれている。
従って、本発明の課題は、肝線維化過程において発現が上昇又は低下する遺伝子あるいはタンパク質を用いる肝線維化ステージの判定方法及び検査試薬、肝線維化過程において発現が上昇又は低下する遺伝子あるいはタンパク質の発現や活性を制御する化合物のスクリーニング方法、肝線維化において発現が上昇又は低下する遺伝子あるいはタンパク質を制御する肝線維化の抑制剤などを提供することにある。
そこで、本発明者らは、従来は人の経験にのみ頼ってきた生体検査サンプルの組織学的検査では出来ない正確な肝線維化ステージの判定に使用できる客観的マーカーを得ることに加えて、さらに2つの手段により、診断精度を向上させることを考えた。
第一は、肝線維化ステージをよく反映する客観的マーカーを複数発見し、これらを組合わせることによりさらに診断精度を向上させることである。臨床に即した多数のマーカーを発見する為に、まずラット肝線維化モデルの肝線維化進行過程における肝臓の遺伝子発現をgene chipで網羅的に測定して肝線維化マーカー遺伝子を多数同定した。さらにこれらの変動遺伝子について、定量的PCR法を用いて、肝線維化患者の各線維化ステージの肝生検サンプルでの遺伝子発現変動を測定するという2ステップの方法をとった。患者の同意をとり、倫理委員会の同意を得て、測定に供することが出来る生検サンプルは極めて少量であるために、ここから質のよいRNAを十分量調製することは容易ではなく、gene chipで測定することは極めて困難である。そこでラット肝線維化モデルで前もって候補遺伝子を測定し、候補を厳選することにより、極めて少量のRNAより有効な肝線維化マーカーを数多く同定することを試みた。多数の肝線維化マーカーがえられれば、これらを組合わせることにより肝線維化ステージを正確に判別することが可能になり、また肝線維化ステージを現状より細密なステージ分類が可能になる。さらに、発癌の危険性が大きく増大するステージ判定も、精密に判定できる。
第2に、単に肝線維化に伴い増減する指標として用いるだけでなく、各マーカーの挙動を解釈し診断するためには、各マーカーの細胞特異性の情報など生体内での意味付けを与えることが重要である点に着目した。上記のようにして選択した遺伝子に各細胞特異性の情報を付加し、肝線維化過程で起きている現象を推定することにより、肝線維化進行過程での肝で生じている現象を把握し精密な検査を可能とすることが出来る。線維化がこれからさらに進展するのか、すでに終息したのかも推定することができる。
これらの診断を可能にすべく、鋭意検討を行った。
その結果、肝線維化のステージ毎に発現量が顕著に異なる遺伝子を見出した。本発明者らは、これらの遺伝子又はコードされるタンパク質の量を測定することで肝線維化ステージを正確に判定でき、さらに、これらの遺伝子又はタンパク質を利用することで新規な肝線維化の抑制剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)患者の組織又は体液中の、配列番号1〜60のそれぞれの塩基配列にコードされるタンパク質からなる群から選ばれる1種または2種以上のタンパク質もしくは該タンパク質と実質的に同一のタンパク質若しくはそれらの部分ペプチドの濃度を測定する工程と、該測定値に基いて肝線維化ステージを判定する工程を含む、肝線維化ステージの判定方法。
(2)前記タンパク質または部分ペプチドの濃度の測定を、同一患者の複数の時点において行う、(1)の判定方法。
(3)前記タンパク質または部分ペプチドの患者における濃度を、健常人における濃度と比較することにより肝線維化ステージを判定する、(1)の判定方法。
(4)前記タンパク質又は部分ペプチド濃度の測定を、ウエスタンブロット法、エンザイムイムノアッセイ法、ラジオイムノアッセイ法、液体クロマトグラフィー法及びドットブロット法からなる群より選択される測定方法により行うことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかの判定方法。
(5)患者の体液又は組織中の、配列番号1〜60のそれぞれの塩基配列を有する遺伝子からなる群より選ばれる1または2種以上の遺伝子、または該塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有する遺伝子の発現量を測定する工程と、該測定値に基いて肝線維化ステージを判定する工程を含む、肝線維化ステージの判定方法。
(6)前記遺伝子群から選択される4種類以上の遺伝子の発現量を測定し、各遺伝子の発現量の組み合わせに基いて肝線維化ステージを判定する、(5)の判定方法。
(7)患者の組織が、肝臓由来の組織である、(5)または(6)の判定方法。
(8)前記遺伝子の発現量の測定を、遺伝子チップを用いる方法、RT-PCR法、ノーザンブロット法のいずれかの方法により行う、(5)〜(7)のいずれかの判定方法。
(9)肝培養細胞に薬剤候補物質を添加し、配列番号1〜60のそれぞれの塩基配列及び該塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有する遺伝子からなる群から選ばれる1種又は2種以上の遺伝子の前記細胞内での発現量、または、前記遺伝子によってコードされるタンパク質の前記細胞内の量もしくは前記細胞から分泌される量を測定することにより、前記遺伝子の発現量または前記タンパク質の量を変動させる物質をスクリーニングする、肝線維化抑制剤のスクリーニング方法。
(10)配列番号1〜60のいずれかの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質若しくはその部分ペプチドから選ばれる少なくとも1種類を含む、肝線維化抑制剤のスクリーニング用キット。
(11)配列番号1〜60のいずれかの塩基配列又はその部分配列に相補的若しくは実質的に相補的な塩基配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有してなる肝線維化抑制剤。
(12)配列番号1〜60のいずれかの塩基配列の部分配列を有するセンス鎖及び該センス鎖に相補的な配列を有する相補鎖からなる2本鎖RNAを含有してなる肝線維化抑制剤。
(13)配列番号1〜60のいずれかの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドに対する抗体を含有してなる肝線維化抑制剤。
(14)配列番号1〜60のいずれかの塩基配列又はその部分配列を有するDNAを含むベクターを含有してなる肝線維化抑制のための遺伝子治療用組成物。
(15)配列番号1〜60のいずれかの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質若しくはその部分ペプチドに対する抗体を含有してなる肝線維化検査用試薬。
(16)配列番号1〜60のいずれかの塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列もしくはその部分配列に相補的な配列を有するプローブ、または前記塩基配列を有する遺伝子を増幅するためのプライマーを含有してなる肝線維化検査用試薬。
本発明の診断方法により、肝線維化の状況(下記に示すFステージの段階)を客観的に判定でき、4段階の分類よりさらに細かい分類が可能となる。またマーカーに附属する細胞特異性の情報により単にステージの如何なる段階であるかばかりでなく、炎症が拡大する方向にあるのか、終息する方向にあるのか、線維化が拡大する方向にあるのか、終息する方向にあるのか、発癌の危険性が増大する方向にあるのかその危険性は無いのか等、今まで不可能であった診断を可能とした。
一方、血清タンパク質マーカーを用いれば、患者の負担が軽減され、容易に診断することが可能となる。患者への負担が少なくなることは、自覚症状が無い、肝線維化初期の段階は特に有効である。また、治療すべき患者の早期発見につながる。更に、血清タンパク質マーカーを用いた診断方法は、経時的な診断をも可能にするため、線維化の進行あるいは回復状況のモニターが可能となり、治療の有効性判断、治療法の選択、病後の予測、回復の可能性予測等にも有用である。
さらには、線維量以外に肝線維化症の症状に連動する肝の異常を示す血清タンパク質マーカー、たとえば肝の代謝機能の変化を示す血清タンパク質マーカーを用いることにより、代謝機能変化を調べることが可能となった。これは患者の自覚症状と関連するばかりでなく、肝癌発生のリスクを示す場合もあり、極めて有用である。
また、本発明で得られた肝疾患に関する遺伝子マーカーは単にマーカーとして意義があるばかりでなく、肝線維化症の進行の原因であり、疾患がおよぼす種々の症状の原因や将来発生する可能性のある新たな疾患のリスクファクターと考えられ、さらに肝線維化症に限らず他の臓器の線維化症や肝臓での他の疾患に関連することが予想されるため極めて有用である。
<1>本発明の肝線維化ステージの判定方法
本発明の判定方法においては、まず、肝線維化の過程で発現の変動する遺伝子の発現量、または該遺伝子によってコードされるタンパク質量を測定する。
発現量測定の対象とする遺伝子としては、本発明において肝線維化との関連が明らかとなった配列番号1〜60で表される塩基配列を有する遺伝子を使用することができる。具体的には、以下の遺伝子である。なお、各遺伝子については、ヒト遺伝子のGenBankのAccession番号も示した。
配列番号1:arachidonate 5-lipoxygenase-activating protein(ALOX5AP) NM_001629
配列番号2:calgranulin A NM_002964
配列番号3:FAS Antigen (TNF superfamily member 6) NM_001066
配列番号4:IL1 beta NM_000576
配列番号5:interleukin 1 receptor antagonist(IL1RN) NM_000577
配列番号6:lysozyme NM_000239
配列番号7:natural killer cell proteinase 1(NK cell proteinase 1) NM_004131
配列番号8:TGF beta NM_000660
配列番号9:TGF beta 3 NM_003239
配列番号10:TNF-alpha NM_000594
配列番号11:biglycan NM_001711
配列番号12:collagen, type I, alpha 1(COL1A1) NM_000088
配列番号13:collagen, type III, alpha 1(COL3A1) NM_000090
配列番号14:collagen, typeIV, alpha 1(COL4A1) NM_001845
配列番号15:decorin NM_001920
配列番号16:endothelial differentiation, lysophosphatidic acid G-protein-coupled
receptor2(EDG2) NM_001401
配列番号17:follistatin NM_006350
配列番号18:glypican 3 NM_004484
配列番号19:hyaluronan-mediated motility receptor(HMMR) NM_012484
配列番号20:lectin galactose binding soluble 1(LGALS1) NM_002305
配列番号21:lumican NM_002345
配列番号22:lysyl oxidase NM_002317
配列番号23:lysyl oxidase-like 1 NM_005576
配列番号24:matrix Gla protein NM_000900
配列番号25:matrix metalloproteinase 2(MMP2) NM_004530
配列番号26:proline 4-hydroxylase alpha polypeptide I(P4HA1) NM_000917
配列番号27:Plasminogen activator inhibitor-1(PAI1) NM_000602
配列番号28:pleiotrophin NM_002825
配列番号29:prion NM_000311
配列番号30:sialoprotein NM_000582
配列番号31:transgelin NM_003186
配列番号32:tropomyosin 1 NM_000366
配列番号33:betaine-homocysteine methyltransferase(BHMT) NM_001713
配列番号34:cystathionine-beta-synthase(CBS) NM_000071
配列番号35:cysteine dioxygenase, type I(CDOI) NM_001801
配列番号36:C/EBPbeta(CEBPB) NM_005194
配列番号37:cystathionase (cystathionine gamma-lyase)(CTH) NM_001902
配列番号38:cysteinyl leukotriene receptor 2(CYSLTR2) NM_020377
配列番号39:defensin beta 1 NM_005218
配列番号40:glutathione S-transferase A1(GSTA1) NM_145740
配列番号41:Inhibitor of DNA binding 1, helix-loop-helix protein (splice variation)(ID1) NM_002165
配列番号42:IGF1 NM_000618
配列番号43:interleukin 6 receptor(IL6R) NM_000565
配列番号44:lipopolysaccharide binding protein(LBP) NM_004139
配列番号45:methionine adenosyltransferase I, alpha(MAT1A) NM_000429
配列番号46:methionine adenosyltransferase II, beta(MAT2B) NM_013283
配列番号47:5-methyltetrahydrofolate-homocysteine methyltransferase(MTR) NM_000254
配列番号48:glutathione reductase(GSR) NM_000637
配列番号49:leukotriene A4 hydrolase (LTA4H) NM_000895
配列番号50:JunB NM_002229
配列番号51:cysteinyl leukotriene receptor 1(CYSLTR1) NM_006639
配列番号52:leukotriene B4 receptor 2(LTB4R2) NM_019839
配列番号53:leukotriene C4 synthase(LTC4S) NM_000897
配列番号54:DNA (cytosine-5-)-methyltransferase 1(DNMT1) NM_001379
配列番号55:S-adenosylhomocysteine hydrolase(AHCY) NM_000687
配列番号56:glutamate-cysteine ligase, catalytic subunit(GCLC) NM_001498
配列番号57:gamma-glutamyltransferase 1(GGT1) NM_005265
配列番号58:Hepatocyte nuclear factor 6(HNF6) NM_004498
配列番号59:c-met(MET) NM_000245
配列番号60:endothelial differentiation, sphingolipid G-protein-coupled receptor5(EDG5) NM_004230
なお、ヒトでは、人種や民族の違いなどによって遺伝子配列に多型や変異が生じることがあるため、本発明の判定方法において発現量測定の対象とする遺伝子は、各配列番号で
示される塩基配列と実質的に同一の配列を有する遺伝子であってもよい。ここで、「実質的に同一」とは、例えば、上記塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズする遺伝子を挙げることができる。ストリンジェントな条件としては、例えば、60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度で、1回より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。
本発明の判定方法においては、上記遺伝子のうち、1種類の遺伝子の発現量を測定してもよいし、2種以上の遺伝子の発現量を測定してもよい。
発現量の測定は、例えば、患者の組織や体液からRNA(全RNAまたはmRNA)を単離し、cDNAを合成したのちに、PCR法やDNAチップで測定する方法や、生検により得られた組織を用いてin situ染色する方法、RNAを用いてノーザンブロット法などを用いて行うことができる。ここで、患者の組織としては肝生検の際に得られる肝臓由来の組織、肝より血中に離脱した肝由来細胞、各種血球などが挙げられ、体液としては、血液、リンパ液、細胞間浸潤液、尿、涙、唾液などが挙げられる。この中でも組織は肝生検で得られる組織が好ましく、体液は血液が好ましい。
本発明においては、選択された遺伝子の発現量に基づいて肝線維化ステージを検査・診断することができる。判定の基礎とする発現量は、各遺伝子の発現量の絶対値であってもよいが、肝線維化過程で変動しにくい遺伝子(グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)など)の発現量で標準化した相対値であってもよい。
肝臓の線維化度合いは線維化進行に合わせてF1,2,3,4と分類され、F4は肝硬変に相当する(犬山分類といわれる慢性肝炎の肝組織学的基準における線維化の程度によるステージング:参考資料:肝蔵病学 clinical Science 医学書院 p331〜332、 第19回犬山シンポジウム、犬山シンポジウム記録刊行会編、中外医学社、 p142〜188)。
したがって、本発明の判定方法では、この中のどのステージに分類されるかを判定することができる。ただし、必ずしもF1~F4の分類には制限されず、これに相当する分類やさらに細分化された分類を使用して判定してもよい。
本発明の判定方法では、同一患者において経時的に発現量の測定を行い、その発現量の変動に基づいてステージの変動を判定してもよい。すなわち、上記遺伝子はそれぞれ、ステージによって発現量が変動するため、選択した遺伝子の発現量の変動に基づいてステージの変動を判定することができる。例えば、biglycan遺伝子(配列番号11)の場合、F1とF2の間で有意に変動するので、同一患者のbiglycan遺伝子の発現量を逐次測定し、変動した場合に、肝線維化がF1からF2に進行したと判定することができる。
また、1回の測定結果からステージを判定することもできる。例えば、各遺伝子について、あらかじめ、各ステージにおける発現量を数値化しておき、測定値がどのステージに当てはまるかを調べることにより、ステージの判定ができる。例えば、表8や表9を参考にして判定することができる。
さらに、測定結果を健常人における値(正常値)と比較することによって判定を行ってもよい。上記遺伝子はいずれも発現量が健常人と比較して有意に減少または増加しているため、健常人の値との比較によりステージ判定が可能である。
本発明の判定方法においては、さらに、上記遺伝子のうちの複数の遺伝子、好ましくは3種類以上、より好ましくは4種類以上の遺伝子の測定値を組み合わせることにより線維化ステージを判定してもよい。複数の遺伝子を組み合わせることにより、より正確な判定が可能である。
例えば、以下のような方法が挙げられる。
すなわち、まず、選択された複数の遺伝子の発現量と各線維化ステージの間の相関を示す、線形判別関数などの関数を構築する。ついで、各遺伝子の発現量の測定値を該関数に当てはめてステージごとの値を算出し、その計算値を比較することにより患者の線維化がどのステージにあるかを判定することができる。なお、遺伝子の発現量と各線維化ステージの間の相関を示す関数は通常の統計学的手法において使用される関数を用いることができる。
線形判別関数によって導かれた判定に有効な組合わせの例を表11〜13に示す。
本発明の判定方法においては、さらに、肝臓が活動期にあるか否かについて判定を行ってもよい。すなわち、上記遺伝子の中には急性炎症で増加する遺伝子が存在し(表2参照)、該遺伝子の発現量が増加する場合は、肝臓が活動期にあるということが判定できる。
本発明の判定方法においては、さらに、各遺伝子が肝臓のどの種類の細胞に由来するかの情報に基づく判定を行ってもよい。すなわち、クッパー細胞はサイトカイン等を産生し、炎症を誘導する役割の中心となる。星細胞は、サイトカインを産生するとともに、線維化の原因である細胞外マトリクスを産生する役割の中心となる。肝実質細胞は肝蔵機能の中心的役割を持ち、この機能が障害は患者の何らかの身体的異常とつながる。
したがって、たとえばクッパー細胞の炎症に関するサイトカイン遺伝子発現が上昇していれば、炎症が進んでいることが推測され、星細胞の細胞外マトリクス遺伝子発現が上昇していれば線維化が進行していることが予測され、肝実質細胞のメチオニン代謝酵素系遺伝子発現が低下していれば、患者の発癌リスクが上昇していることが予測される。これらの各細胞の機能とあわせて、肝線維化ステージの診断が可能となる。
各遺伝子がどの細胞に由来するかについて表2にまとめた。
なお、上記の遺伝子は肝線維化症に限らず、肝線維化を伴う各種肝疾患における線維化程度の判定にも用いることが出来る。
例えば、
1、肝線維化から肝癌にいたる変化の把握:肝癌を発生させる素地の進展速度の予測、回復速度の予測
2、劇症肝炎時の肝再生力の把握:予後予測、治療選択
3、ウイルス性肝炎におけるインターフェロン治療の有効性予測
4、脂肪肝からNASH(非ウイルス性、非アルコール性肝硬変)への進展予測
などの診断に用いることが可能である。
線維化マーカー遺伝子の発現増加又は減少は、その産物であるタンパク質の発現増加又は減少と概ね比例する。細胞外へ分泌されるタンパク質は当然血清中の当該タンパク質の濃度に反映される。分泌されないタンパク質でも肝細胞の破壊により血清中へもれ出て、血清中タンパク質濃度に反映される。
したがって、本発明の判定方法においては、上記遺伝子にコードされるタンパク質の量を測定し、該測定値に基づいて線維化の判定を行うこともできる。
配列番号1〜60のそれぞれの塩基配列にコードされるタンパク質のアミノ酸配列情報は、上述したGenBankのAccession番号を参照することで入手できる。ただし、タンパク質のアミノ酸配列には人種の違いなどによって置換等が生じることがあるので、本発明の判定方法において測定対象とするタンパク質は、上記タンパク質と実質的に同一のタンパク質であってもよい。ここで、実質的に同一のタンパク質とは、上記塩基配列にコードされるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、付加された配列を有するタンパク質などをいう。なお、数個とは、2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個をいう。また、タンパク質は生体内でプロセシングを受けることがあるので、本発明において定量するタンパク質は上記タンパク質の部分ペプチドであってもよい
タンパク質を定量する場合、抗体を用いた免疫化学的検出法、例えば、エンザイムイムノアッセイ(ELISA)法、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、や抗体チップ(ガラスなどの単体に抗体を高密度にはったプロテインチップ)を用いる方法、ウエスタンブロット法、組織切片の免疫染色による方法などを用いることができる。また、マススペクトル(MS)分析検出法を用いることも出来る。例えばチップ上あるいはカラムなどで分画後、チップ上あるいはカラムからの溶出液中のタンパク質をMSで分子量測定する方法による。さらに、液体クロマトグラフィー法やドットブロット法を採用することもできる。
一例として、患者血清を試料に用い、血清中のタンパク質量を定量する方法について述べる。
まず、マーカー遺伝子のタンパク配列をデータベースより引き出し、タンパク質表面に向いていると予測される配列や後記の投与動物でタンパク質配列が異なる部分を含むペプチド配列を選択する。具体的には、Accelrys社製タンパク質立体構造予測ソフトウエアーInsightII等でタンパク質表面に存在するペプチド部分を予測し(非特許文献8)、ペプチド配列を選択することが出来る。この選択されたペプチドをペプチド合成機などを用いて合成する。このペプチド混合物をウサギやマウスなどの動物に投与してペプチドに対する特異抗体を作製する。異なる配列のペプチド混合物を違った個体に投与して、異なる認識部位を持つ抗体を作製するとELISA用のプレート作製が可能となり、サンドイッチ法を用いることが出来る。これにより、ELISAの特異性を向上させることができるが、一種類の抗体でもELISAを実施することができる。これら抗体を用いてELISA用のプレートを作製する。抗体ができればELISAに限らす種々の免疫染色により検出できる。たとえば前述の抗体チップである。
血清を直接あるいは血清アルブミンなどの多量存在タンパク質を除く操作をした後に質量分析機(MS)で対象のタンパク質を定量することができる。MSを用いると、完全長のタンパク質ばかりでなく、そのフラグメントも定量することができる。
タンパク質に基く肝線維化ステージの判定は、上記の遺伝子発現量の判定と同様にして行うことができる。
<2>本発明の肝線維化検査用試薬
本発明の検査用試薬は本発明の判定方法に用いることのできる試薬である。遺伝子の発現量を測定する試薬としては、例えば、配列番号1〜60のいずれかの塩基配列(またはその相同配列またはそれらの一部)を有する遺伝子群より選ばれる1又は2種以上の遺伝子を検出するためのプローブ、または該遺伝子を増幅するためのプライマーを含む試薬が挙げられる。この場合、さらに、遺伝子増幅用の酵素、ハイブリダイゼーション用バッファーなどを含んでいてもよい。
また、本発明の検査用試薬は、上記遺伝子のうち複数の遺伝子を担持したDNAチップであってもよい。
一方、タンパク質量を測定する試薬としては、例えば、配列番号1〜60の塩基配列にコードされるタンパク質のうちの1または2以上のタンパク質を検出するための抗体を含む試薬が挙げられる。この場合、さらに2次抗体などを含むものであってもよい。
また、配列番号1〜60の塩基配列にコードされるタンパク質のうちの1または2以上のタンパク質が担持されたプロテインチップであってもよい。
<3>本発明の肝線維化抑制剤
本発明の肝線維化抑制剤としては、配列番号1〜60の塩基配列のうちの1または2以上の塩基配列の一部に相補的な塩基配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む肝線維化抑制剤が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドはホスホロチオエートな
どにより修飾されたものであってもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは特に制限されないが、15〜20merが好ましい。本発明の肝線維化抑制剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドがリポソームなどに包含されるものであってもよい。本発明の肝線維化抑制剤の投与量は患者の症状などによっても異なるが、5 mg/kg/日〜30mg/kg/日が好ましく、10〜20mg/kg/dayがより好ましい。
本発明の肝線維化抑制剤は、配列番号1〜60のいずれかの塩基配列の部分配列を有するセンス鎖及び該センス鎖に相補的な配列を有する相補鎖からなる2本鎖RNAを含有するものであってもよい。このような2本鎖RNAは、RNAi(RNA interference:RNA干渉)と呼ばれる作用により遺伝子発現を抑制することによって肝線維化を抑制することができる。
さらに、本発明の肝線維化抑制剤は、配列番号1〜60のいずれかの塩基配列又はその部分配列を有するDNAを含むベクターを含有してなる肝線維化抑制のための遺伝子治療用組成物であってもよい。ベクターとしては、アデノウイルスベクターやレトロウイルスベクターなどを用いることができる。
本発明の肝線維化抑制剤はまた、配列番号1〜60で表される塩基配列によってコードされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質若しくはその部分ペプチドに対する抗体を含有するものであってもよい。タンパク質はこれをコードする遺伝子を発現ベクターに組み込んで、リポソームやウイルス粒子の形で遺伝子導入し、導入された生体内細胞でタンパク質として発現させてもよい。抗体はモノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよい。さらに、F(ab’)2化抗体やF(ab’)化抗体であってもよい。抗体は通常の抗体作製法によって得ることができる。
<4>肝線維化抑制剤のスクリーニング方法
肝線維化に伴い発現変動する遺伝子は全て創薬ターゲットとなりうる。即ち、表3に示される肝線維化に正相関を示すマーカー遺伝子又は当該遺伝子産物については、この発現を抑制する方向に働く薬剤を選択することにより肝線維化抑制剤をスクリーニングすることができる。例えば、クッパー細胞、肝星細胞または肝実質細胞などの肝培養細胞に薬剤を添加し、PCRで該細胞内の発現遺伝子変動を測定したり、培養細胞上清のタンパク量をELISAで測定したりする方法等を用いてドラッグスクリーニングを実施することにより、当該遺伝子又は遺伝子産物の発現を抑制し、肝線維化を抑制する薬剤を選択することが可能である。
一方、表3において肝線維化に負の相関を示す遺伝子又は遺伝子産物については、この発現を増強する方向に働く薬剤を選択することにより肝線維化抑制剤をスクリーニングすることができる。例えば、クッパー細胞、肝星細胞または肝実質細胞などの肝培養細胞に薬剤を添加し、PCRで該細胞内の遺伝子発現変動を測定したり、培養細胞上清のタンパク量をELISAで測定したりする方法等を用いて、ドラッグスクリーニングを実施することにより、当該遺伝子又は遺伝子産物の発現を増強し、肝線維化を抑制する薬剤を選択することが可能である。
なお、本発明のスクリーニング方法によって選択される薬剤は、低分子化合物、ペプチド、天然物などのいずれであってもよい。
本発明はさらに、上記スクリーニング方法において用いることのできるスクリーニングキットを提供する。スクリーニングキットとしては、上記遺伝子の発現量を測定するための試薬又はタンパク質量を測定するための試薬を含むキットなどが挙げられる。
具体的には、含硫アミノ酸代謝関連酵素(表1、配列番号38-49)の異常は、循環器疾患のリスクファクターとなるホモシステインの血中濃度を上昇させることが知られており、また、メチル基ドナーとして重要なS-アデノシルメチオニンのメチル基転移反応の低下を招きDNAの低メチレーションをまねくことが知られている。DNAの低メチレーションは発癌のリスクファクターと言われている。したがって、含硫アミノ酸代謝関連酵素発現の正常
化は創薬ターゲットとなる。
JunB、CEBPB (c/EBPbeta)、IL6R (interleukin 6 receptor)、MET (c-met)、ID1 (Inhibitor of DNA binding 1)、IGF1は肝再生に関与しており、これらの発現が異常となることは肝線維化において肝再生が抑制されていることを意味する。肝再生の抑制が肝線維化症の原因の一つであると考えられており、これら遺伝子の発現を正常化することは肝線維化症の治療につながる。
CYSLTR2 (Cysteinyl leukotriene receptor 2)、LTB4R2 (leukotriene B4 receptor 2)はロイコトリエンの作用に関連し、炎症反応に関連する。これら遺伝子発現を正常化すること又はこれらのリガンドーレセプターのシグナル伝達を正常化することは肝線維化症の治療につながる。
倫理委員会の承認を受け、患者の同意を得て実際入手できる肝生検組織は組織検査の残渣、即ち直径1mm X 長さ1から2mm程度の量である。遺伝子発現を網羅的に測定するには不十分であるために、前もってラットの肝線維化モデルで候補遺伝子を選択し、候補遺伝子に関して、臨床サンプルを測定した。このラットモデルで候補遺伝子を選択するにあたっていくつかの工夫を行なった。1)ラット肝線維化モデルにおいて肝臓を肝炎症期(線維化誘発薬剤DMN投与時)の肝臓と薬剤の影響がなくなる1週間後の肝臓を経時的に採取し、肝臓全体からRNAを調整してgene chipで網羅的遺伝子発現変動を測定した。線維化に伴い発現変動するが肝炎症期で変動しない遺伝子と肝炎症期のみで変動する遺伝子とに分類した。2)肝線維化症は主として肝臓を構成する肝細胞、星細胞、クッパー細胞の3種の細胞が関係して病状が進行する。ラット肝線維化モデルの肝線維化進行にともなって、経時的に肝臓を採取し、さらに採取肝臓から肝細胞、星細胞、クッパー細胞をそれぞれ分離して遺伝子発現を網羅的に測定し、肝線維化に伴い発現変動する遺伝子の中で、各細胞に特異的な(他の細胞での発現が10%以下)遺伝子を細胞特異的マーカーとした。1)で選択した遺伝子が如何なる細胞特異性であるかの情報を付与した。
1.DMN (dimethylnitrosamine)肝線維化モデルラットの作製及び遺伝子発現量解析
肝炎から線維化が進行して肝硬変に到る過程のモデルとしてよく用いられるDMN投与ラットモデルを用いて、肝における遺伝子発現の経時的変化をGene chipで解析した。
DMNモデルラットの作製および肝の遺伝子発現測定は以下のように行った。
1-1)ラットの飼育
CRJ社:(SD)IGSラット6週齢を使用した。飼育条件は温度23±3℃、湿度50±20%、明期7:00〜19:00にて、CRF-1(オリエンタル酵母)と水の自由摂取により飼育を行った。
購入後5日間の検疫期間の後、体重が等しくなるように群分けを行い6週齢ラットに週3回4週間、DMN 10mg/2ml/kgを腹腔内投与した。DMN投与量は投与日の9:00に測定した体重に基づき換算して決定した。投与スケジュールを表1に示す。
Figure 2007315752
1-2)肝臓の摘出
ラットからの肝臓摘出は以下のように行った。
0、4、7、14、21、28日目の各ラットについてエーテル麻酔下開腹して放血屠殺し肝臓を摘出し、クランプで約5mmの厚さに圧縮して液体窒素で凍結し-80度で保存した。
1-3)gene chip測定
1-3-1)全RNAの精製
ラット肝臓1グラムに対し、10mlのISOGEN(日本ジーン)を加え、ホモジェナイズした。得られたホモジネートを遠心し、上清を回収した。この上清に、加えたISOGEN1mlにつき200μlのクロロホルムを加え、軽く撹拌した。室温に2分放置後、15000回転、4℃で10分間遠心分離し、水層を新しい遠心チューブに移した。この水層に、それと等量の2-プロパノールを加え、室温に5分放置後、15000回転、4℃で15分間遠心した。上清を捨て、沈殿したペレットに70%エタノールを加え、15000回転、4℃で15分間遠心後、70%エタノールを除去することにより、ペレットをリンスした。リンスしたペレットを室温で5分間乾燥させ、これにDEPC(ジエチルピロカーボネート)処理水を加え、ペレットを溶解させた。こうして得られた全RNA画分が精製されたことを、1%アガロースゲル電気泳動により確認した。
Gene Chip測定はAffymetrix社のgene chipと測定装置を用いた。Gene Chipによる遺伝子発現解析は、Affymetrix社が推奨するプロトコールに準拠して行った。以下に手順を示す。
1-3-2)プローブ合成
(i)二本鎖cDNA合成
まず、調製した全RNAから、Gibco BRL社製のSUPERSCRIPT Choice Systemを用い、二本鎖cDNA合成を行った。全RNA 15μg、T7-(dT)24 primer 100pmolをDEPC処理水に溶解し、11μlとした。70℃で10分間反応後、氷冷し、5×1st strand cDNA buffer (Gibco BRL社製) 4μl、0.1×DTT(ジチオスレイトール、Gibco BRL社製)2μl、10mM dNTP mix(Gibco BRL社製)1μlを加え、42℃、2分間保温した。これに逆転写酵素(Superscript II RT)2μgを加えた後、42℃で1時間反応させた。
前記反応液に、DEPC処理水、5×2nd strand reaction buffer 30μl、10mM dNTP 3μl、DNAリガーゼ 10U/μl 1μl、DNAポリメラーゼI 10U/μl 4μl、RNaseH 2U/μlを加えて混合した後、16℃で2時間反応させた。この後、T4 DNAポリメラーゼ 5U/μl 2μlを加え、16℃で5分反応させた。これに、0.5M EDTA 10μlを加えた。この反応液に等量の(フェノール:クロロホルム=1:1)溶液を加え、これらが入ったチューブを上下に振って混ぜ合わせた。この混合液を、15000rpm、4℃で10分間遠心分離し、水層を新しい遠心チューブに移した。この水層に、3Mの酢酸ナトリウムを1/10量、100%エタノールを3倍量加え、よく混合した。-80℃で10分放置したのち、15000rpm、4℃で10分間遠心した。沈殿したペレットを70%エタノールで2回リンスし、室温で5分間乾燥した後、DEPC処理水を12μl加えた。
(ii)ビオチン標識cRNAプローブの合成
次に上記で合成した二本鎖cDNAから、Enzo社製Bio Array High Yield RNA Transcript Labeling Kitを使用して、ビオチン標識cRNAプローブを合成した。二本鎖cDNA 5μl、DEPC処理水 17μl、10×HY buffer 4μl、10×ビオチン標識リボヌクレオチド(Biotin labeled ribonucleotides)4μl、10×DTT 4μl、10×RNase inhibitor mix 4μl、20×T7 RNAポリメラーゼ2μlを混合し、37℃で4時間反応させた。
次に、上記のようにして合成したビオチン標識cRNAプローブ溶液から、未反応のBiotin
labeled ribonucleotidesを、Qiagen社製RNeasyを使用して除いた。ビオチン標識cRNAプローブ溶液に、DEPC処理水160μlを加え、RLT buffer 700μlを混合し、ついで100%エタノール500μlを加え、よく混合した。この溶液を、700μlずつRNeasy mini spin columnに加え、8000rpmで15秒間遠心した。溶出液を、再度RNeasy mini spin columnに加え、80
00rpmで15秒間遠心した。次に、RPE buffer 500μlをRNeasy mini spin columnに加え、8000rpmで15秒間遠心した。再度RPE buffer 500μlをRNeasy mini spin columnに加え、15000rpmで2分間遠心した。
上記のようにしてビオチン標識cRNAプローブを吸着させ、洗浄したRNeasy mini spin columnを、新しい遠心チューブに移した。このRNeasy mini spin columnにDEPC処理水30μlを加え、室温で1分間放置した。8000rpmで15秒間遠心し、精製されたビオチン標識cRNAプローブ溶液を溶出させた。
次に、精製されたビオチン標識cRNAプローブ溶液の断片化を行った。ビオチン標識cRNAプローブ溶液、5×Fragmentation buffer(最終溶液量の1/5量を加える)を混合して、ビオチン標識cRNAプローブ濃度が0.5μg/μlとなるよう調整し、94℃で35分間反応させた。1%アガロースゲル電気泳動を行い、プローブがおおよそ100塩基前後の長さに断片化されているのを確認した。
1-3-3)ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションは、まずテストチップ(TEST2 Chip)で断片化ビオチン標識cRNAプローブの出来を評価し、問題がないことを確認した後に本試験を行った。本試験には、ラットチップ(RG-U34A)を用いた。このラットチップセットには、計7000種のラット既知遺伝子が含まれている。テストチップ、ラットチップセットのいずれも、以下の手順でハイブリダイゼーションを行った。
断片化ビオチン標識cRNAプローブ 60μg、コントロールoligonucleotied B2(5nM)12μl、100×control cRNA カクテル 12μl、ニシン精子DNA(10mg/ml)12μl、アセチル化BSA(50mg/mg)12μl、2×MESハイブリダイゼーションバッファー600μlを加え、DEPC処理水で1200μlに調整した(以下、「ハイブリダイゼーションカクテル」と呼ぶ)。ハイブリダイゼーションカクテルを99℃、5分加熱して熱変性を行い、45℃に5分間置いた後、15000rpm、室温で5分間遠心した。上清を、テストチップ(TEST2 Chip)では80μl、ラットチップ(RG-U34A,)では200μl分取し、ハイブリダイゼーションに使用した。
Genechipを室温にもどし、1×MES buffer(Test2 chipは80μl、ラットチップセットは200μl)、45℃で10分、60rpmでプレハイブリダイゼーションを行った。次に、プレハイブリダイゼーション液を除去し、前記の熱変性させたハイブリダイゼーションカクテルを添加し、45℃、16時間、60rpmでハイブリダイゼーションを行った。
1-3-4)洗浄、染色及びスキャニング
Gene chipからハイブリダイゼーションカクテルを除去し、non stringent wash bufferを入れ、Fluidic station(Affymetrix社製)にて洗浄及び染色を行った。洗浄及び染色は、Test2 ChipではFluidic stationのMini_euk1プロトコールに従い、ラットチップではEukGE-WS2プロトコールに従って行った。洗浄及び染色終了後、スキャナーにてチップのスキャニングを行い、画像データを取り込んだ。
1-3-5)データ解析
ハイブリダイゼーションのデータ解析は、Affymetrix社の解析ソフトMicroArraySuite 5.0によって行った。各遺伝子の発現量は、全遺伝子の発現の平均値を100とし、それに対する相対値(Average Differences)で表した。表中、ジーンチッププローブセット名は、affymetrix社によって命名された、各遺伝子に対応する管理用背番号である。ユニジーンはGenBankに登録されたDNA配列を、遺伝子(転写産物)種ごと、及び生物種ごとにまとめたものである。
2.ラットモデル解析から肝線維化マーカー候補および肝炎症マーカーの選択:
正常ラット肝の遺伝子発現に対して発現変動している遺伝子を急性期に発現変動する遺伝子、慢性期に発現変動する遺伝子、両方の期で発現変動する遺伝子に分類した。
表1に示すように、実験開始1,2,3日目にDMNを連続投与するが、4日目の肝を急
性炎症期のサンプルとした。5日、6日、7日と休薬し、7日の肝を慢性炎症期のサンプルとした。実験開始1週間後、8日から再び8、9、10日とDMNを投与し、11日、12日、13日、14日と休薬し、14日の肝を慢性炎症期のサンプルとした。同様に投与と休薬を繰り返し、21日、28日の肝を慢性炎症期のサンプルとした。急性炎症期に発現変動する遺伝子は臨床では肝炎の活動期に対応し、慢性炎症期に発現変動する遺伝子は臨床では非活動期の肝炎または肝硬変に対応すると考えた。
急性炎症期(活動期)/慢性炎症期(非活動期)に特徴的マーカー遺伝子選択は以下のように行った。
DMN投与肝線維化モデルラットのGene Chip解析データを用いて、DMN投与0日目から28日目までの経時的発現変動が(1)少なくとも1点以上でPresent(PresentとはMicroArray Suite 5.0により統計的有意な発現値であることを示す。信頼性が低い場合はAbsentと判定した。)、かつ、(2)0日目と比べて1.5倍以上発現変動する遺伝子を抽出した。続いて、GeneSpringソフトウェアのK-meansクラスタリング法を用いることにより、特徴的な10種類の変動パターンを作成し、その変動パターンに相関の高い遺伝子を抽出した。この処理によって、投与4日目のみで発現変動している遺伝子クラスター(急性炎症期特徴的マーカー遺伝子)、投与4日目と後期の両方で発現変動している遺伝子クラスター(急性炎症期および慢性炎症期いずれにも発現変動するマーカー遺伝子)、後期のみで発現変動している遺伝子クラスター(慢性炎症期特徴的マーカー遺伝子)に分類を行った。
3.ラットモデル解析から得た肝線維化マーカー候補および肝炎症マーカー候補の細胞特異性情報の付与:
上記同様にDMN肝線維化モデルを作成し、0日(正常)、4日、7日、14日、21日、28日にそれぞれ、摘出肝から、クッパー細胞、肝星細胞、肝実質細胞を分離した。分離法を以下に示す。これら分離方法は各細胞を分離する一般的な方法で、大部分の細胞は目的の細胞であるが、多少他の細胞が混入している可能性は否定できない。よって下記分離法に従って分離した細胞画分をクッパー細胞、肝星細胞、肝実質細胞と定義する。
3-1)ラット肝臓からの各細胞分離手順
・DMN投与肝線維化モデルラットより、投与0、4、7、14、21、28日目に各細胞(クッパー細胞、肝実質細胞、肝星細胞)の分離を行った。
3-1-1)クッパー細胞の分離
肝コラゲナーゼ灌流法により肝臓細胞を分散し回収してHANKs液に懸濁した。50gで1min遠心後の上清について、さらにエルトリエーター遠心機(日立CR21EZ)を用いて遠心分離を行い、回転数3250rpmで流量40ml/minから50ml/minで分離されるクッパー細胞画分を回収した。RPMI164010%FCS培地に懸濁し、細胞密度を105 cells/mlとして、6穴平底プレートに播種した。37℃のCO2インキュベーター内で1.5〜2 hr培養してプレートに接着。培地を除きISOGEN 1mlを加えてクッパー細胞RNAを回収した。
3-1-2)肝実質細胞
クッパー細胞を分離する時に、肝コラゲナーゼ灌流後の遠心で得られる沈殿に肝実質細胞が含まれる。そこでこの沈殿にHANKSを50ml添加してピペッティングによる洗い操作を行い、50gで1min遠心して沈殿を回収した。このHANKsの洗い操作を5回繰り返した。最後の遠心後の沈殿100ulにISOGEN 1mlを加えて肝実質細胞のRNAを回収した。
3-1-3)肝星細胞
コラゲナーゼ灌流法により肝臓細胞を分散し、Nicodenz溶液に重層して平衡密度勾配遠心を行い、肝星細胞画分を回収した。細胞密度を105 cells/mlに調整して6穴平底プレートに播種し、37℃のCO2インキュベーター内で1.5〜2 hr培養してプレートに接着させた。
ISOGEN 1mlを加えて肝星細胞のRNAを回収した。
3-2) 細胞特異的マーカー:
3-2-1)各細胞特異的遺伝子抽出のためのGene Chipデータ解析
各細胞別Gene Chipデータに対して、以下の条件を全て満たす遺伝子を各細胞特異的発現遺伝子とした。
(1)各時点のうち1点以上で発現量がPresentとコールされている。各時点のうち1点以上で、他の細胞よりも10倍以上の発現量の差をもつ。
(2)各時点のうち1点以上で、0日目と比較して2倍以上発現量が変動する。
肝線維化過程で変動する遺伝子をさらに細胞特異的に分類した。
3-3-)ラットモデルから肝線維化症における診断マーカー候補の選択:
上記の解析結果から、急性炎症期に特徴的発現変動遺伝子、慢性炎症期に特徴的発現変動遺伝子、線維化進行に伴い次第に発現増加する細胞外マトリクス、その成分およびその生成に関連する分子と考えられる遺伝子などを診断マーカーとして選択し、また肝線維化症抑制剤のターゲットとして有望と思われる遺伝子を選択した。選択した遺伝子に対して、種々の情報を付加したリストを表2に示す。炎症期分類のAは急性炎症で増加、Cは慢性炎症で増加、ACは両方で増加する遺伝子を示す。Refseqでは、各遺伝子のGenBankの登録番号を示した。
Figure 2007315752

Figure 2007315752
表2のリストの中で以下に示す遺伝子は既に肝線維化マーカーとしての報告があり、ポジティブコントロールとして取り上げた。TGF-beta 1とTGF-beta 3はファミリー関係にあるTGF-beta 1の線維化マーカーとしての記述多くある(Flisiak R et al Hepatogastroenterology 2002, 49(47), 1369-72, 2002, Lu LG et al World J Gastroenterol, 9(11), 2574-8,2003)TGF beta 3はbeta 1のファミリーではあるが違う分子であり、異なる役割を持つ報告がある(Seong J et al,Int J Radiat Oncol Biol Phys. , 46(3):639-43., 2000)。TGF-beta3 の臨床的肝線維化マーカーとしての意義を示した報告は無い。 proline-4-hydroxylaseは肝線維化マーカーとして有効でないという報告が少なくないが(Mazzoran L et al, Eur J Gastroenterol Hepatol., 10(2):125-31, 1998,、Fabris C et al, Ann Clin Biochem, 34 ( Pt 2):151-5, 1997.)、肝線維化診断マーカーとしの有用性を示す報告もある(Okabe K. et al,Rinsho Byori. 1992 Dec;40(12):1258-64、Leonardi S et
al, Med Pediatr Oncol, 41(1), 17-20,2003)。 COL1A1(collagen type I alpha 1)に関しては線維化マーカーとしてC末端プロペプチドの検出(コラーゲンは細胞外分泌直後にN末端とC末端からプロペプチドが切り取られる)を用いた報告が多いが診断マーカーとしての有効性の報告は多くない。複合マーカーとしての有用性がしめされている(Lin DY, Dig Dis Sci. 40(1):21-7、1995)。COL3A1(collagen type III alpha 1)に関しては線維化マーカーとしてN末端プロペプチドの検出を用いた報告があり( Lu LG et al
World J Gastroenterol, 9(11), 2574-8,2003、Leonardi S et al, Med Pediatr Oncol,
41(1), 17-20,2003)臨床診断に用いられている。 COL4A1(collagen type IV alpha 1)は線維化マーカー複合指標の一部として(Lu LG et al World J Gastroenterol, 9(11), 2574-8,2003)線維化初期の線維化マーカーとしての有用性の記述があり、臨床診断にもちいられている。(Matsumoto E et al, Acta Pathol Jpn, 39(4), 217-23, 1989), MMP2(matrix metalloproteinase 2)は肝線維化マーカーとしての可能性が報告されているBoeker KH et al、Clin Chim Acta. 316,:71-81, 2002J, Kobayashi H et al, Pediatr Surg. 37(7):1030-3., 2002)。
4, 臨床サンプルの測定
次に、上記で選択された遺伝子について、臨床から得たヒトの肝生検サンプルでの遺伝子発現を測定した。肝生検サンプルは線維化の程度を表すF1,2,3,4の分類と活動期の程度をあらわす活動期としてA1, A2 , 非活動期としてA0の分類がなされている(これらの分類は一施設の病理所見で判定された)。各Fステージそれぞれ16、8、7、6人、計37サンプルを測定した。
4-1)RNAの抽出
ISOGEN1ml中に保存された生検サンプルを攪拌して200μlのクロロホルムを加え、軽く撹拌した。室温に2分放置後、15000回転、4℃で10分間遠心分離し、水層を新しい遠心チューブに移した。この水層に、それと等量の2-プロパノールを加え、室温に5分放置後、15000回転、4℃で15分間遠心した。上清を捨て、沈殿したペレットに70%エタノールを加え、15000回転、4℃で15分間遠心後、70%エタノールを除去することにより、ペレットをリンスした。リンスしたペレットを室温で5分間乾燥させ、これにDEPC(ジエチルピロカーボネート)処理水を加え、ペレットを溶解させた。
4-2)cDNA合成
ABI社のHigh-capacity cDNA Archive kitを用いた。プロトコールは説明書に従った。
10×RT Buffer 10μl、NTP 4ul、random primer 10μl、Multiscribe RT 5μl、RNaseOUT
2.5μl、DEPC water 18.5μl、RNA(1μg) 50μlを混合して、25℃で10min反応し、さらに37℃で120min反応した。
4-3)遺伝子発現解析
TaqMan MGB probeを用いて定量的PCRを行った。
各遺伝子について、20×Target Assay Mix、cDNA template、2×Taqman Universal Master Mix 12.5ulを調製し、PCR反応を行った。反応条件は、50℃2min→95℃10min→(95℃15sec→60℃1min)×40サイクルとした。また、各遺伝子の発現量は、Gapdh遺伝子の発現を1000としたときの倍率で示した。
4-4) t-検定による線維化ステージ進行の判定マーカー選択
それぞれの臨床マーカー候補遺伝子について、全検体の遺伝子発現値を各線維化ステージ群ごとに分類し、各群間の有意差検定を行った。解析対象に臨床ですでに肝線維化マーカーとして用いられているマーカーもふくまれるが、肝線維化ステージ間の詳細な判別する目的で検討された例はないので、これらも含めて解析した。2標本のt- 検定を行い、危険率p<0.05を有意差ありと判定した。各Fステージ間で有意差がつく遺伝子に関して臨床サンプル解析をまとめた(表3)。各遺伝子の略称は上述したとおりである。
Figure 2007315752
またFステージ間で有意差があった遺伝子に関して、各FステージごとにAステージ(急性炎症)とのピアソン相関係数を算出した。Aステージと相関に低い遺伝子を表4に、相関の高い遺伝子を表5に示した。
Figure 2007315752
Figure 2007315752
表3,4,5に示した結果から、F1とF2、F2とF3,F3とF4を判別することの出来るマーカーを表6にまとめた。同時にAステージ(活動期)の影響の受けやすさを表6に表示した。活動期の影響を受けにくいマーカー遺伝子がより有用である。Fステージ間の進行を判定する遺伝子マーカー(表6)は生検サンプルまたは血清を用いた診断をする際に、ステージ進行を判定するに用いることができる。ステージ間の更に詳細な分類を行うに有用と考えられる。
Figure 2007315752
以上より、線維化の初期変動(F1からF2への変動)を判定するマーカーとして、lysozyme、TGF beta、TGF beta 3、TNF-alpha、Biglycan、COL3A1、Decorin、EDG2、lysyl oxidase-like 1 、pleiotrophin、 prion、transgelin、MTR、CYSLTR2、ID 1、JunB、
を用いることができる。特に、TNF-alpha、Decorin、pleiotrophin、は活動期の影響を受けにくいことがわかった。
また、線維化の中期変動(F2からF3への変動)を判定するマーカーとして、lumican、P4HA1、PAI1、Prion、BHMT、GSTA1、IGF1、MAT1A、MAT2B、AHCY、LTB4R2、MET、を用いることができる。特にBHMT、MAT2B、LTB4R2、は活動期の影響を受けにくいことがわかった
さらに、線維化の後期変動を判定するマーカー(F3からF4への変動)として、P4HA1、prionを用いることができることがわかった。
4-5) t-検定による線維化ステージ判定マーカーの選択
それぞれの臨床マーカー候補遺伝子について、全検体の遺伝子発現値を各線維化ステージ群ごとに分類し、各群間の有意差検定を行った。解析対象に臨床ですでに肝線維化マーカーとして用いられているマーカーもふくまれるが、肝線維化ステージ間の詳細な判別する目的で検討された例はないので、これらも含めて解析した。2標本のt- 検定を行い、危険率p<0.05を有意差ありと判定した。
以下の群間の有意差を検定した。
1、肝線維化初期ステージとそれ以外のステージを判別する(F1とF2,3,4)
2、肝線維化中期ステージとそれ以外のステージを判別する(F2,3とF1,4)
3、肝線維化後期ステージとそれ以外のステージを判別する(F4とF1,2,3)
4、肝線維化ステージの前半と後半を判別する(F1,2とF3,4)
各判別に用いることの出来る有意差を持つ遺伝子マーカーを表7に示した。
Figure 2007315752

Figure 2007315752
以上をまとめると、以下のことがわかった。
肝線維化初期ステージとそれ以外のステージを判別するマーカーとして、IL1 beta、lysozyme、TGF beta、TGF beta 3、TNF-alpha、Biglycan、COL3A1、COL4A1、decorin 、EDG2、Glypican 3、Lumican、lysyl oxidase 、lysyl oxidase-like 1 、matrix Gla protein 、MMP2、pleiotrophin 、sialoprotein、transgelin、tropomyosin 1、AHCY、defensin
beta 1、GSTA1、IGF1、IL6R、を用いることができる。
肝線維化中期ステージとそれ以外のステージを判別するマーカーとして、calgranulin A、IL1 beta、Lysozyme、TGF beta、COL4A1、Transgelin、JunB、を用いることができる。
肝線維化後期ステージとそれ以外のステージを判別するマーカーとして、Biglycan、decorin 、Glypican 3、tropomyosin 1、CEBPB、defensin beta 1、GSTA1、MAT1A、を用いることができる。
肝線維化ステージの前半と後半を判別するマーカーとして、biglycan、COL1A1、COL3A1、COL4A1、decorin 、Glypican 3、Lumican、lysyl oxidase 、lysyl oxidase-like 1 、MMP2、P4HA1、PAI1、Prion、Sialoprotein、AHCY、BHMT、CBS、CDO1、CEBPB、GSTA1、IGF1、IL6R、MAT1A、MAT2B、LTB4R2、MET、を用いることができる。
表6および7に示した判別マーカーに細胞特異性の情報を付加した。クッパー細胞は線維化初期ステージの炎症活動を表すマーカーが特徴的である。肝星細胞は全線維化ステージわたって次第に増加するマーカーが多いことが特徴である。これは肝星細胞が線維を産生する中心的細胞であることを示している。初期マーカーは存在せず、肝星細胞が初期炎症の結果活性化されることを示している。中期に増加し、増殖分化が定常状態になると発現が低下する遺伝子群が中期マーカーとして、増殖分化が定常状態となってから発現増加する後期マーカーとして特徴的マーカーが存在する。これらはステージ分類に重要な意味をもつ。肝実質細胞ではクッパー細胞や肝星細胞の活動の影響を受けて、遺伝子発現が変動すると考えると、初期、中期、後期および全線維化ステージを表すマーカーが均等に分散していることは理にかなっている。各ステージに特異的マーカーはステージ分類に有効である。
例えば、一連の含硫アミノ酸代謝関連酵素であるBHMT、CBS、CDO1、GSTA1、MAT1A、MAT2B、MTR、AHCYをコードする遺伝子の発現が線維化ステージ前半から後半へ以降する時期にほぼ同調して発現低下することは特筆される。肝線維化において血中メチオニンが上昇することが報告されているが、これら代謝酵素の活性低下と関連すると思われる。含硫アミノ酸代謝関連酵素は線維化ステージ進行に連動する重要な診断マーカーである。
JunB、CEBPB (c/EBPbeta)、IL6R (interleukin 6 receptor)、MET (c-met)、ID1 (Inhibitor of DNA binding 1)、IGF1は肝再生に関与しており、線維化過程でこれら発現が低下することは、肝再生の抑制を意味しており、肝再生阻害に関する意味あるマーカーである。
このようにマーカーの細胞特異性と線維化ステージ特異性双方を考慮すると各マーカーを用いた肝線維化過程の肝の状態をより詳細に診断を下すことができる。
実際にステージ判別するに際し用いる具体的閾値を表8および9に示した。この値はABI PRISM 7700 Sequence Detectorにより、TaqMan MGB probeを用いて測定し、Gapdh遺伝子発現を1000とした場合の相対値として表示した数値である。測定装置、測定プローブが異なると、数値が変化するために標準物質(対応mRNA)を用いた補正が必要となる。
Figure 2007315752

Figure 2007315752
Figure 2007315752

Figure 2007315752
4-6) 複合マーカーによる肝線維化ステージの判定
これらマーカーは単独で用いる場合と、いくつかのマーカーを組み合わせで用いる場合があるが、前者は簡便に診断を下すに有効であり、後者はより詳細に診断を下すに有効で
ある。単独ではステージ判断が困難でも、いくつかのマーカーを組み合わせることによりステージ判断を正確にすることができる。
4-4), 4-5)で用いた単独マーカー選択を目的とした統計解析法とは別の、複数マーカーを用いて線維化ステージ判別式を作るに適した統計解析法を採用した。対象とするマーカー遺伝子は表1に示す全遺伝子を用いた。解析対象に臨床ですでに肝線維化マーカーとして用いられているマーカーもふくまれるが、複合指標として肝線維化ステージの詳細な判別する目的で検討された例はないので、これらマーカーも含めた解析を行った。
複数のマーカーによる線維化ステージを予測する判別式をつくるために、多群の線形判別法を用いた。線形判別関数の導出は,得られた観測値 と各群の平均との間のマハラノビスの汎距離が,最小となるような群に判別しようという考え方に基づいた。統計パッケージのSASにより、総計37肝生検サンプルの62遺伝子について、最大5遺伝子までの組み合わせたマーカーによる線形判別式の予測式を計算し、肝線維化ステージを予測できる遺伝子を探した。
判別分析の目的は、初期標本に基づいて線形判別関数を構築し、将来観測されるデータがどの群(つまり、肝線維化のどのステージ)に属するものであるかを予測することである。そこで、得られた複合マーカーにより、線形判別関数を構築した場合、将来新たに観察されたデータに対して判別を行ったときの正答率を推定するに、実際上よく使われている交差検証法(Cross-validation method)を用いた(SASの標準機能により計算を行った)。
交差検証法で80%以上の正答率が得られた遺伝子の一覧は表10に示した(番号は順位ではない)。
Figure 2007315752
複合マーカーとそれらを用いて構築した線形判別関数の交差検証法済みの正答率80%以上の例として、表11に示した。これらのマーカーを用いてステージ判別する場合の判別関数を記するが、これは一例で、表10に示すマーカーの組み合わせで種々の判別関数を作ることが出来る。また、本特許と異なる測定方法を用いて発現のデータが得られた場合、あるいはデータの測定単位が異なる場合、線形判別関数の係数をそのまま使うではなく、観測データに対して、一般に使われているデータの基準化を行い、係数の修正が必要である。その場合、係数が異なるものの、以上の計算で得られた複合マーカーによる予測正答率は保証されている。
Figure 2007315752
例えば、prion, glypican 3, Pai I, transgelinの4遺伝子で線形判別関数を構築した場合、本研究のデータから、4ステージの判別関数は以下のように計算され、
Stage1の判別関数= -9.9704 + Glypican 3の発現量×0.00409 + transgelinの発現量×0.02573 + Pai Iの発現量×(-0.0457) + Prionの発現量×1.13351。
Stage2の判別関数= -21.178 + Glypican 3の発現量×0.00724 + transgelinの発現量×0.06036 + Pai Iの発現量×(-0.0881) + Prionの発現量×1.6362。
Stage3の判別関数= -7.6521 + Glypican 3の発現量×0.00513 + transgelinの発現量×0.07092 + Pai Iの発現量×0.05417 + Prionの発現量×0.71611。
Stage4の判別関数= -13.056 + Glypican 3の発現量×0.05668 + transgelinの発現量×(-0.0057) + Pai Iの発現量×(-0.047) + Prionの発現量×1.14014
この四つのマーカーの観測値をそれぞれの式に代入した結果、一番大きい判別値が得られたステージは肝線維化のステージと判断する。
次に、各細胞特異的遺伝子に限定して、同様に解析をおこなった。クッパー細胞特異的遺伝子(10種)、肝星細胞特異的遺伝子(22遺伝子)、肝実質細胞(15遺伝子)を対象として解析した。クッパー細胞および肝実質細胞特異的遺伝子に限定すると、高い正答率が得られないが、肝星細胞特異的遺伝子に限定すると、高い正答率が得られた。肝星細胞特異的遺伝子に限定した場合で、交差検証法で70%以上の正答率を与える遺伝子の一覧は表12に示した。複合マーカーとしてそれらを用いて構築した線形判別関数の交差検証法済みの正答率の例として、表13に示した。
Figure 2007315752
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Figure 2007315752

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Figure 2007315752

Figure 2007315752

Figure 2007315752

Figure 2007315752
星細胞特異的遺伝子に限定して判別式をつくると、限定しない解析(表10)に比べ、正答率が高いマーカーの組み合わせを数多く作ることができた。これは線維産生の中心である肝星細胞が肝線維化ステージと直接、深く関わっていること示している。肝星細胞特異的マーカーを複数用いれば、現在の肝線維化のステージ判定だけでなく、これから線維化が進展する方向にあるのか、線維化は終息に向かうのかを判定できる点も有益である。

Claims (16)

  1. 患者の組織又は体液中の、配列番号1〜60のそれぞれの塩基配列にコードされるタンパク質からなる群から選ばれる1種または2種以上のタンパク質もしくは該タンパク質と実質的に同一のタンパク質若しくはそれらの部分ペプチドの濃度を測定する工程と、該測定値に基いて肝線維化ステージを判定する工程を含む、肝線維化ステージの判定方法。
  2. 前記タンパク質または部分ペプチドの濃度の測定を、同一患者の複数の時点において行うことを特徴とする、請求項1記載の判定方法。
  3. 前記タンパク質または部分ペプチドの患者における濃度を、健常人における濃度と比較することにより肝線維化ステージを判定する、請求項1記載の判定方法。
  4. 前記タンパク質又は部分ペプチド濃度の測定を、ウエスタンブロット法、エンザイムイムノアッセイ法、ラジオイムノアッセイ法、液体クロマトグラフィー法及びドットブロット法からなる群より選択される測定方法により行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の判定方法。
  5. 患者の体液又は組織中の、配列番号1〜60のそれぞれの塩基配列を有する遺伝子からなる群より選ばれる1または2種以上の遺伝子、または該塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有する遺伝子の発現量を測定する工程と、該測定値に基いて肝線維化ステージを判定する工程を含む、肝線維化ステージの判定方法。
  6. 前記遺伝子群から選択される4種類以上の遺伝子の発現量を測定し、選択された遺伝子の発現量の組み合わせに基いて肝線維化ステージを判定する、請求項5に記載の判定方法。
  7. 患者の組織が、肝臓由来の組織である、請求項5または6に記載の判定方法。
  8. 前記遺伝子の発現量の測定を、遺伝子チップを用いる方法、RT-PCR法、ノーザンブロット法のいずれかの方法により行う、請求項5〜7のいずれか一項に記載の判定方法。
  9. 肝培養細胞に薬剤候補物質を添加し、配列番号1〜60のそれぞれの塩基配列および該塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有する遺伝子からなる群から選ばれる1種又は2種以上の遺伝子の前記細胞内での発現量、または、前記遺伝子によってコードされるタンパク質の前記細胞内の量もしくは前記細胞から分泌される量を測定することにより、前記遺伝子の発現量または前記タンパク質の量を変動させる物質をスクリーニングする、肝線維化抑制剤のスクリーニング方法。
  10. 配列番号1〜60のいずれかの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質若しくはその部分ペプチドから選ばれる少なくとも1種類を含む、肝線維化抑制剤のスクリーニング用キット。
  11. 配列番号1〜60のいずれかの塩基配列又はその部分配列に相補的若しくは実質的に相補的な塩基配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有してなる肝線維化抑制剤。
  12. 配列番号1〜60のいずれかの塩基配列の部分配列を有するセンス鎖及び該センス鎖に相補的な配列を有する相補鎖からなる2本鎖RNAを含有してなる肝線維化抑制剤。
  13. 配列番号1〜60のいずれかの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドに対する抗体を含有してなる肝線維化抑制剤。
  14. 配列番号1〜60のいずれかの塩基配列又はその部分配列を有するDNAを含むベクターを含有してなる肝線維化抑制のための遺伝子治療用組成物。
  15. 配列番号1〜60のいずれかの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質若しくはその部分ペプチドに対する抗体を含有してなる肝線維化検査用試薬。
  16. 配列番号1〜60のいずれかの塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列もしくはその部分配列に相補的な配列を有するプローブ、または前記塩基配列を有する遺伝子を増幅するためのプライマーを含有してなる肝線維化検査用試薬。
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