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JP2007291565A - 皮革様シート - Google Patents

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JP2007291565A
JP2007291565A JP2006121484A JP2006121484A JP2007291565A JP 2007291565 A JP2007291565 A JP 2007291565A JP 2006121484 A JP2006121484 A JP 2006121484A JP 2006121484 A JP2006121484 A JP 2006121484A JP 2007291565 A JP2007291565 A JP 2007291565A
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JP2006121484A
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Fumihiro Yamaguchi
史洋 山口
Yoshiki Nobuto
芳樹 延藤
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

【課題】 繊維質基材からなる皮革様シートに関して、手袋用素材としても用いることが可能な柔軟でフィット感に優れる制振性素材を提供する。
【解決手段】 少なくとも1個のビニル芳香族モノマーからなる数平均分子量が2500〜40000のブロック(A)とイソプレン、ブタジエンもしくはイソプレン−ブタジエンからなり3,4結合および1,2結合含有量が30%以上である数平均分子量が10000〜200000のブロック(B)とから構成される数平均分子量が30000〜300000のブロック共重合体またはその水添物が、繊維質基材の少なくとも内部に存在していることを特徴とする皮革様シート。
【選択図】なし

Description

本発明は、衝撃吸収を目的として用いられる制振性を有する皮革様シート、とりわけスポーツ、工作作業時などに保護具として着用される際にフィット感、柔軟性が求められる手袋等に使用される皮革様シートに関するものである。
近年、消費者の高級志向化が進み、多くの商品において静粛性が大きなセールスポイントとなってきている。このため、各種の制振材料が提案されてきている。例えば、各種のプラスティックやエラストマーの制振性能を高めるために、ビニル芳香族モノマーとイソプレン、ブタジエンもしくはイソプレン−ブタジエンからなるブロック共重合体をブレンドして用いられることが知られている。ポリプロピレン、ABS樹脂等の場合には、ビニル芳香族モノマーとイソプレン、ブタジエンもしくはイソプレン−ブタジエンからなるブロック共重合体との親和性が良いことから2成分系のブレンドで目的を達成できる場合が多々あった。
しかしながら、これらの技術は、自動車、OA機器、家庭用電化製品等に求められる制振性能は付与できるものの、人体が受ける衝撃を吸収するための着用素材としては柔軟性が全くないため不適当なものであった。
また、イソプレン、ブタジエンもしくはイソプレン−ブタジエンからなるブロック共重合体を繊維化して制振性能を有する織編物も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、共重合体からなる繊維は従来の繊維と比して硬く、これから得られる織編物も柔軟性に劣るため、やはり手袋などの柔軟でフィット感を要求される用途には適さないものであった。
また、本発明者らは、極細繊維の繊維間空隙に、オレフィン系エラストマーもしくはビニル芳香族エラストマーからなる保持体と油状物質からなる配合物を充填させることで、天然皮革調のタッチと柔軟な風合いを両立しうる繊維状シートを提案してきた(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、保持体としてオレフィン系エラストマーを使用した場合には、混合物を充填しない場合と比して制振性能は向上せず、また、ビニル芳香族エラストマーを用いた場合においても発現する制振性能向上は微小であり、更なる改善が求められていた。
特開平6−240512号公報(第2頁、第1欄、第39行−第48行) 特開2004−44068号公報(第3頁、第24行−第44行)
本発明は、繊維質基材からなる皮革様シートに関して、手袋用素材としても用いることが可能な柔軟でフィット感に優れる制振性素材を提供することを課題とする。
上記課題を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ね、以下に示す皮革様シートを見出した。すなわち本発明は、少なくとも1個のビニル芳香族モノマーからなる数平均分子量が2500〜40000のブロック(A)とイソプレン、ブタジエンもしくはイソプレン−ブタジエンからなり3,4結合および1,2結合含有量が30%以上である数平均分子量が10000〜200000のブロック(B)とから構成される数平均分子量が30000〜300000のブロック共重合体またはその水添物が、繊維質基材の少なくとも内部に存在していることを特徴とする皮革様シートである。
そして、好ましくは、ブロック(B)中の3,4結合および1,2結合含有量が50%以上である皮革様シートであり、さらに好ましくは、繊維質基材を構成する繊維が0.3dtex以下の極細繊維である皮革様シートであり、繊維が極細繊維束状繊維であり、また繊維質基材が、繊維絡合不織布とその内部に含浸された弾性重合体からなる皮革様シートである。
また、ブロック共重合体またはその水添物が、30℃における粘度が50〜10000mPa・sの油状物質の保持体として繊維質基材の少なくとも内部に存在していることが好ましく、保持体と油状物質との質量比が下式(1)を満足することがより好ましい。
0 ≦ W1/W2 ≦ 3 ・・・ 式(1)
ただし、 W1:油状物質の質量[g]
W2:ブロック共重合体またはその水添物の質量[g]
そして、上記皮革様シートからなるスエード調皮革様シートであり、また上記皮革様シートからなる銀付調皮革様シートである。
加えて上記皮革様シートを一部として縫製してなる手袋である。
本発明の皮革様シートは、優れた制振性能を有しつつも天然皮革と柔らかな風合いとフィット感に優れたものである。そして、本発明の皮革様シートからなるスエード調皮革様シートおよび銀付調皮革様シートは、靴、衣料、手袋、あるいは鞄やインテリア等あらゆる用途に適したものである。特に、柔軟性、フィット感に優れる点から手袋への応用に有用である。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
まず、本発明で使用する繊維質基材について説明する。これは公知の繊維質基材が使用でき特に限定されるものではない。例えば編織布、不織布、編織布、またはそれらに弾性重合体を含浸したもの、繊維絡合不織布、またはそれに高分子弾性体を含浸したもの、極細繊維絡合不織布、極細繊維束状繊維絡合不織布、またはそれらに弾性重合体を含浸したもの等公知の繊維質基材を用いることができる。
そして、0.3dtex以下の繊維からなる極細繊維絡合不織布、特に極細繊維束状繊維絡合不織布に弾性重合体が含浸されてなる繊維質基材を用いることが天然皮革調の柔軟性を有する点で好ましい。より好ましくは0.1〜0.0001dtexの範囲である。0.3dtexを越えて太くなると、皮革様シートとした場合に風合いが硬くなり易く、スエード調皮革様シートとした場合には、外観品位が低下する傾向がある。また0.0001dtex未満では、繊維の破断強力が低下し、さらに充分な発色性が得られない場合がある。
極細繊維の製造方法としては、溶融状態で相溶性を有しておらず、溶解性または分解性の異なる2種類以上のポリマーを使用して混合紡糸法、海島型複合紡糸法等により海島構造繊維を製造する方法、複合紡糸法により分割型複合繊維を製造する方法等により極細繊維発生型繊維を得たのち、その一部(例えば海成分)を抽出除去または分解除去して極細繊維とする方法、あるいは分割型複合繊維の異種ポリマー同士の界面を剥離させて極細繊維とする方法等が代表例として挙げられる。これらの方法以外に、溶融紡糸ノズルから繊維形成性ポリマーを吐出した直後に高速気体で吹き飛ばし繊維を細くする、いわゆるメルトブロー法などの方法を用いることもできる。しかしながら、繊維太さの管理や極細繊維の品質安定性から、上記極細繊維発生型繊維を経由する方法が好ましい。
本発明の極細繊維を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、さらにこれらを主体とする共重合ポリエステル等の芳香族ポリエステル類や、ナイロン−6,ナイロン−66,ナイロン−610等のポリアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類などが挙げられる。なかでも、上記芳香族ポリエステル類やポリアミド類が、天然皮革調の人工皮革が得られること、さらに染色性も優れていることから好ましい。またこれらの樹脂には、紡糸の際の安定性を損なわない範囲でカーボンブラックで代表される顔料、染料等の着色剤や紫外線防止剤等で代表される公知の安定剤等が添加されていてもよい。
また極細繊維発生型繊維を構成する抽出除去または分解除去される樹脂成分の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリル系モノマー共重合体、スチレン−エチレン共重合体、熱可塑性ポリビニルアルコール系共重合体および共重合ポリエステル等のポリマーから選ばれた少なくとも1種のポリマーが挙げられる。なかでも、ポリエチレン、ポリスチレンまたは熱可塑性ポリビニルアルコール系共重合体またはこれらを主体とする共重合体等が抽出の容易さあるいは環境に配慮可能な点で好ましい。
上記極細繊維または極細繊維発生型繊維からなる絡合不織布とその内部に弾性重合体が含浸された繊維質基材を形成する方法としては、公知の方法が用いられる。例えば、極細繊維発生型繊維からなる絡合不織布を製造する工程、それらの繊維絡合不織布に弾性重合体溶液または分散液を含浸し凝固する工程、極細繊維発生型繊維を極細繊維に変性する工程を順次行うことにより達成できる。もちろん極細繊維に変性する工程と弾性重合体溶液または分散液を含浸・凝固させる工程を逆転させてもよい。
極細繊維発生型繊維を用いて繊維絡合不織布を製造する方法としては、極細繊維発生型繊維を従来公知の方法により、紡糸、延伸、熱固定、捲縮、カット等の処理を行って同繊維のステープルを作製し、かかるステープルをカードで解繊し、あるいは同繊維のフィラメントをウェーバーでランダムウェブまたはクロスラップウェブを形成し、得られたウェブを必要に応じて積層し、所望の重さにする方法が挙げられる。この際のウェブの重さは目的とする最終的な用途分野に応じて適宜選択され、一般的に100〜3000g/mの範囲が好ましい。また低コスト化などの目的で、必要とする質量の約2倍の繊維絡合不織布に弾性重合体溶液を含浸・凝固させた後にバンドナイフなどにより厚さ方向に分割することにより、効率よく1度に2枚の繊維質基材を製造することもできる。
ウェブの積層に次いで、公知の方法、たとえばニードルパンチング法や高圧水流噴射法等を用いて絡合処理を施して繊維絡合不織布を形成する。ニードルパンチング法の場合には、使用針の形状やウェブの厚みにより異なるが、一般的には200〜2500パンチ/cmの範囲の条件で設定するのがよい。
繊維絡合不織布は、弾性重合体の付与処理に先立って、必要に応じて熱プレスなどの公知の方法により表面の平滑化処理を行うこともできる。繊維絡合不織布を構成する繊維が、たとえばポリエチレンを海成分とし、ポリエステルやポリアミドを島成分とする海島構造繊維である場合には、熱プレスにより海成分のポリエチレンを融着させ、繊維同士を接着固定することによりきわめて表面平滑性に優れた繊維絡合不織布とすることが出来る。また繊維絡合不織布を構成する繊維が一成分を溶解除去して極細繊維に変性することのできる海島構造繊維でない場合には、含浸させる弾性重合体が繊維に固着して風合いが硬くなることを防止するために、弾性重合体の含浸処理に先立ってポリビニルアルコールなどの仮充填物質で繊維表面を覆っておき、弾性重合体を付与した後に仮充填物質を除去することが好ましい。また1成分を溶解除去又は分解除去することにより極細繊維とすることができる海島構造繊維の場合にも、繊維絡合不織布の段階で上記仮充填物質を付与して多成分繊維の表面を覆い弾性重合体を付与した後に仮充填物質を除去することにより、より一層柔軟なシートとすることができる。そしてこのように海島構造繊維等で代表される極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させることが好ましい。
次に繊維絡合不織布に含浸させる弾性重合体としては、天然ゴム、スチレンーブタジエン共重合体、アクリロニトリルーブタジエン共重合体、ポリウレタンエラストマー、その他の合成ゴム或いはこれらの混合物等公知の樹脂を用いることが可能である。中でも風合いが優れる点からポリウレタンエラストマーが好ましく用いられる。好ましいポリウレタン樹脂としては、ソフトセグメントとして、ジオールとジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とを反応させて得られるポリエステル系ジオール、ポリラクトン系ジオール、ポリカーボネート系ジオール、ポリエーテル系ジオール、およびポリエーテルエステル系ジオール等からなる群から選ばれた数平均分子量が500〜5000の少なくとも1種類のポリマージオールを使用し、これとジイソシアネート化合物と低分子鎖伸長剤とを反応させて得られる、いわゆるセグメント化ポリウレタンが挙げられる。
ソフトセグメントを構成する上記ポリマージオールの合成に用いられるジオール化合物としては、耐久性あるいは皮革様の風合いの点で炭素数6以上10以下の脂肪族化合物が好ましく、たとえば、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどが挙げられる。またジカルボン酸の代表例としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
ポリマージオールの数平均分子量が500未満の場合には、柔軟性に欠け、天然皮革様の風合いが得られないため好ましくない。またポリマージオールの数平均分子量が5000を越える場合には、ウレタン基濃度が減少するため柔軟性及び耐久性、耐熱性、耐加水分解性においてバランスのとれた皮革様シートが得られにくい。ジイソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の芳香族、脂肪族、脂環族系のジイソシアネート化合物が挙げられる。
また低分子鎖伸長剤としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、N−メチルジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミンなどの分子量が300以下の活性水素原子を2個有する低分子化合物が挙げられる。
ポリウレタンの合成方法としては、ワンショット法であっても、プレポリマー法であってもよい。
また必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でポリウレタンには、凝固調節剤、安定剤などを添加してもよく、更に他のポリマーを併用しても構わない。さらに、カーボンブラックで代表される顔料や染料などの着色剤を添加してもよい。
繊維絡合不織布にポリウレタンを含有させる方法については特に限定されないが、風合いのバランスの点から繊維絡合不織布にジメチルホルムアミド等で代表されるポリウレタンの良溶媒で希釈するポリウレタン溶液、あるいはポリウレタンの水分散液を直接含浸させ、必要によりマングルで絞る方法や、ポリウレタン溶液、あるいはポリウレタンの水分散液をコーターでコーティングしながらしみ込ませる方法などが好ましい。含浸させたポリウレタン液を湿式凝固又は乾式凝固させることによりポリウレタンを繊維絡合不織布に含有させるが、特に天然皮革様の風合いや触感が得られることから湿式凝固法が好ましい。そして、天然皮革様の柔軟な風合いの点から、繊維質基材を構成する繊維とポリウレタンとの質量比率は、30/70〜90/10の範囲が好ましく、更に好ましくは35/65〜80/20の範囲内である。この範囲より繊維の比率が低くなりすぎると、最終製品である皮革様シートがゴムライクな風合いとなりやすく、繊維の比率が高くなりすぎると機械物性が低下傾向となり、本発明のブロック共重合体またはその水添物の付与量が少ない場合、風合が低下する場合がある。
海島構造繊維を用いた場合には、繊維絡合不織布にポリウレタンを含浸した後に、ポリウレタン及び極細繊維発生型繊維の島成分に対しては、非溶剤でかつ極細繊維発生型繊維の海成分に対しては溶剤または分解剤として働く液体で処理することにより極細繊維発生型繊維を極細繊維束状繊維に変成し、極細繊維束状繊維絡合不織布とポリウレタンからなる繊維質基材とする。もちろん、ポリウレタンを含浸するに先立って、極細繊維発生型繊維を極細繊維束に変成する方法を用いて繊維質基材とすることもできる。また剥離性の分割型複合繊維を用いた場合には、剥離を促進する液で処理することにより繊維構成ポリマーの界面で剥離させ、極細繊維束とする方法も可能である。
そして、得られた繊維質基材は、そのままの状態で使用することも可能であるし、少なくとも片面が起毛されたスエード調繊維質基材や高分子弾性体で該繊維質基材が被覆された銀付調繊維質基材とする公知の仕上げ技術で表面加工を施して使用することによってスエード調皮革様シートや銀付調皮革様シートとすることも可能である。得られた極細繊維の絡合不織布とポリウレタンからなる繊維質基材の起毛は、サンドペーパーや針布によるバフ、整毛等で代表される公知の方法により行うことができる。起毛する毛羽長は、ブロック共重合体またはその水添物を充填させた後の外観に影響するため、バフや整毛の条件、例えばバフに用いるサンドペーパーの番手や研削速度や押し当てる圧力等を選択することにより毛羽長を調整する。立毛はシートの片面の全面に存在していても、あるいは両面とも全面に存在していても、あるいは片面あるいは両面の一部にスポット状に存在していてもよい。
また、得られた繊維質基材は所望の色に染色して用いることも可能である。染色方法は編織布または不織布を染める公知の染色方法が使用でき、特に限定されるものではない。また使用染料は公知の染料を用いれば良く、一例として繊維質基材の立毛部の樹脂がポリエステルであれば分散染料、ポリアミドであれば酸性染料、硫化染料、建染染料、アクリルであればカチオン染料等を用いれば良い。また染色機はサーキュラー、ウインス、ダッシュライン、ワッシャー染色機、タイコ染色機、連続染色機等の公知の染色機が用いることができ、特に限定されるものではない。
次に、繊維質基材内部に充填されるブロック共重合体について説明する。本発明において用いられる芳香族ビニルモノマーからなるブロック(A)の成分は、その具体例としてスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられるが、最も好ましいのはスチレンである。
ビニル芳香族モノマーからなるブロック(A)の数平均分子量は2500〜40000の範囲である。分子量が2500より小さい場合には組成物としての性能が低下し、40000を越えると溶融粘度が高くなり過ぎ、十分な性能を有する組成物が得られない。
また、ブロック(A)のブロック共重合体中での割合は、5〜50質量%の範囲のものが好ましい。この割合が5%より小さいとブロック共重合体の機械的性質が不十分となりやすく、逆に50%を越えると粘度が著しく高くなるため混合等の加工性が困難となりやすい。また、制振性能も低下する傾向がある。
また、本発明において用いられるブロック(B)を構成する成分としてはイソプレン、ブタジエンもしくはイソプレン−ブタジエンからなることが好ましく、イソプレン−ブタジエンを用いる場合のモノマー単位はランダム、テーパードもしくはブロックとすることができる。
本発明の目的である、制振性の付与は、繊維質基材内部に充填されているブロック共重合体のブロック(B)中に、3,4結合および1,2結合があることで初めてその効果が発現し、この3,4結合および1,2結合含有量(以下、これらを総称してビニル結合含有量ということがある)は30%以上(100%でも良い)であるが必要であり、50%以上であることが好ましい。ビニル結合含有量が30%より少ない場合には、通常の使用温度領域で十分な制振性能が得られない。
また、ブロック共重合体のブロック(B)の数平均分子量は、10000〜200000の範囲にあることを要する。分子量が10000より小さい場合には、弾性的性質が低下する。また、200000より大きい場合には、流動性不良となる。
このブロック共重合体は、粘弾性測定により得られるtanδ(損失正接)の主分散のピーク温度が−10℃以上であることが好ましく、−10℃よりも低い温度にピークがある場合には通常の温度領域で十分な制振性能が得られないことがある。
本発明において用いられるブロック共重合体の数平均分子量は、30000〜300000の範囲にあることが必要である。分子量が30000より小さいとブロック共重合体自体の破断強度、伸度等の機械的性質が低下するため、好ましくない。また、300000を越えると加工性が悪くなり、十分な性能を有する組成物が得られない。この観点からブロック共重合体の分子量はより好ましくは80000〜250000の範囲にあるのがよい。
また、ブロック共重合体は、A(BA)n、(AB)nで示されるブロック形態のものが好適に用いられる。ここで、Aは芳香族ビニルモノマーからなるブロック(A)を示し、Bはイソプレン、ブタジエンまたはイソプレン−ブタジエンからなるブロック(B)を示し、nは1以上の整数であり、好ましくは10以下である。このうち、A−B−Aの形態の物が最も好ましく用いられる。
本発明においてブロック共重合体は次の種々の方法により得られる。
まず、ブロック共重合体の製造は、(イ)アルキルリチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族モノマーを、続いてイソプレン、ブタジエンまたはイソプレン−ブタジエンを逐次重合させる方法、(ロ)ビニル芳香族モノマー続いてイソプレン、ブタジエンまたはイソプレン−ブタジエンを重合し、これをカップリングによりカップリングする方法、あるいは(ハ)ジリチウム化合物を開始剤としてイソプレン、ブタジエンまたはイソプレン−ブタジエン、続いてビニル芳香族モノマーを逐次重合させる方法等が挙げられる。
アルキルリチウム化合物の例としてはアルキル残基の炭素数が1〜10のアルキル化合物が挙げられるが、特にメチルリチウム、エチルリチウム、ペンチルリチウム、ブチルリチウムが好ましい。カップリング剤としてはジクロロメタン、ジブロムメタン、ジクロロエタン、ジブロムエタン、ジブロムベンゼン等が用いられる。ジリチウム化合物の例としてはナフタレンジリチウム、ジチオヘキシルベンゼン等が挙げられる。使用量は求める分子量により決定される性質のものであるが、重合に用いられる全モノマー100質量部に対し、概ね開始剤0.01〜0.2質量部、カップリング剤を用いる場合には0.04〜0.8質量部程度の範囲で用いられる。
イソプレン、ブタジエンまたはイソプレン−ブタジエン部分が、ビニル結合含有量を30%以上のミクロ構造を有するようにするためには、イソプレン、ブタジエンまたはイソプレン−ブタジエンの重合の際に共触媒としてルイス塩基が用いられる。ルイス塩基の例としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、トリエチルアミン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルモルホリン等のアミン系化合物等が挙げられる。これらのルイス塩基の使用量は重合開始剤のリチウムのモル数に対して概ね0.1〜1000倍の範囲で用いられる。
重合の際には、制御を容易にするために溶媒を使用するのが好ましい。溶媒としては重合開始剤に対し不活性な有機溶媒が用いられる。特に炭素数が6〜12の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましく用いられる。その例としてはヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン等が挙げられる。
重合はいずれの重合法による場合にも0〜80℃の温度範囲で、0.5〜50時間の範囲で行われる。
ブロック共重合体は公知の方法により水添され、該ブロック共重合体の水添物とすることができる。水添反応は水添触媒および反応に不活性な溶媒に溶解した状態で公知の水添触媒により分子状態の水素を反応させる方法が好ましく用いられる。使用される触媒としては、ラネーニッケル、あるいはPt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、硅藻土等の担体に担持させたもの等の不均一触媒、または遷移金属とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物等の組み合わせからなるチーグラー系の触媒等が用いられる。反応は、水素圧が常圧ないし200kg/cm2 、反応温度が常温ないし250℃、反応時間が0.1ないし100時間の範囲で行われる。反応後のブロック共重合体は、反応液をメタノール等により凝固させた後、加熱あるいは減圧乾燥させるか、反応液を沸騰水中に注ぎ溶媒を共沸させ除去した後、加熱あるいは減圧乾燥することにより得られる。
水添率は要求される物性のレベルによって決定されるが、耐熱性及び耐候性を重視する場合、50%以上、好ましくは70%以上に水添するのが良い。水素添加ブロック共重合体におけるブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の含有量は、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、核磁気共鳴法等により決定することができる。また上記の2種類のブロック以外に本発明を損なわない範囲で他のモノマーがブロック状にまたはランダムに共重合されていてもよい。
さらに、本発明で用いるブロック共重合体を構成する樹脂に関しては、本発明の趣旨を損なわない限り、分子鎖中または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を含有していてもよい。
本発明の皮革様シートに対して柔軟性や天然皮革調の風合いを付与するために、上記で得られたブロック共重合体またはその水添物に油状物質を配合し油状物質の保持体とすることが有効である。
このようにブロック共重合体またはその水添物に配合される油状物質としては、30℃における粘度が50〜10000mPa・sの液状物質である必要があり、常温において水とは実質的に相溶性がなく相分離する物質が用いられる。粘度が50mPa・s未満の場合には、基材に塗布した後に油状物質の移行が発生する。また10000mPa・sを越える場合には、保持体となるブロック共重合体またはその水添物と混ざらないため不適である。
油状物質の種類の具体例としては、パラフィン系またはナフテン系のプロセスオイル、ホワイトオイル、ミネラルオイル、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン、シリコンオイル、植物油、芳香油などが挙げられ、これらは単独または混合して用いられる。中でもパラフィン系プロセスオイルが天然皮革のオイル感に類似する点で好ましい。
本発明において、油状物質の質量(W1)と保持体となるブロック共重合体またはその水添物の質量(W2)との質量比は、0≦W1/W2≦3が好ましい。この質量比が3を越える場合には、油状物質の移行が起こりやすい。より好ましくは、0≦W1/W2≦1の範囲である。
本発明においては、保持体の種類及び分子量と、油状物質の種類と2種以上の油状物質を混合使用する場合の質量比、そして保持体と油状物質の割合、及び繊維質基材内部への付与量を変更することにより、所望の天然皮革の柔軟性と充実感およびフィット感に優れ、衝撃吸収等の制振性を付与することが可能である。
ブロック共重合体もしくは油状物質を配合したブロック共重合体を繊維質基材内部へ付与する方法としては、例えば、これらのブロック共重合体を良溶剤に溶解した溶液を作製して繊維質基材に含浸し、溶剤を除去し固着する方法がある。しかしながら、これらのブロック共重合体を水分散液にして繊維質基材に含浸、乾燥処理し固着する方法を、環境面および含浸した場合に連続的な皮膜形成がされにくく、天然皮革並みの柔軟性に優れ、充実感のある風合いに仕上がるといった品質上の観点から、選択する必要がある。
次に、ブロック共重合体もしくは油状物質を配合したブロック共重合体を水分散液とする方法について説明する。ブロック共重合体もしくは油状物質を配合したブロック共重合を乳化配合する方法については特に限定されることはないが、例えば、以下の方法を挙げることができる。
(手法1)ブロック共重合体(、油状物質)及び炭化水素系溶媒からなる混合溶液を、乳化剤を溶解した水中に投入し、高剪断力下、混合乳化する方法、
(手法2)ブロック共重合体(、油状物質)及び炭化水素系溶媒からなる混合溶液に乳化剤を混合し、次いで水を添加し、撹拌・転相し、必要に応じて、高剪断力下で、乳化する方法、
(手法3)ブロック共重合体(、油状物質)及び炭化水素系溶媒からなる混合溶液、乳化剤、及び水を一括して添加し、撹拌・転相し、必要に応じて、高剪断力下で、乳化する方法。
本発明に用いられる炭化水素系溶媒としては、特に制限されることはなく、具体的に、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルシクロヘキサン、デカリン、炭素数C8留分の芳香族溶媒、炭素数C8留分の芳香族溶媒を核水素化した溶媒、炭素数C9留分の芳香族溶媒、炭素数C9留分の芳香族溶媒を核水素化した溶媒、炭素数C10留分の芳香族溶媒を核水素化した溶媒およびこれらの混合物などの炭素数10以下の炭化水素系溶媒が例示される。これらのうち、低価格で溶解性が優れているトルエン、キシレンが好ましい。また、自然環境の保護並びに作業環境安全性や人体に対する安全性の観点からは、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの非芳香族系溶媒が好ましい。上記溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合せて使用することもできる。
これらのうち、(手法2)及び(手法3)の転相乳化する方法(以下、「転相乳化法」という)がブロック共重合体の粒径が一定水準以下の乳化分散液が得られる点から好ましい。混合乳化や転相乳化は、ホモミキサー、ホモジナイザー、フリミックス、ナノマイザー、キャビトロン、ラインミキサー、万能攪拌機、ボトムリボン翼式撹拌装置等の当該分野で慣用されている公知の乳化装置を使用することができる。また、連続的に製造する場合は、ラインミキサーにより効率良く生産する方法が好ましく、一方、バッチ式で製造する場合は、コンデンサとボトムリボン翼式撹拌装置を具備した製造装置により簡便に生産する方法が好ましい。
乳化時の温度は、特に限定されるものではなく、通常、10℃〜200℃程度、好ましくは20〜150℃程度、さらに好ましくは25〜100℃程度の範囲である。
このようにして得られた炭化水素系溶媒を含有する乳化分散液は、例えば、80〜100℃、常圧〜300kPaの条件下で水と共沸させることにより炭化水素系溶媒を除去することができる。
用いる乳化剤の種類によっては有機溶媒を留去する際、発泡のため脱溶媒に長時間を要し、更に発泡が激しい場合は留去が困難になるおそれがあるため抑泡剤・消泡剤を添加することが推奨される。上記の抑泡剤・消泡剤としては、特に制限されることはなく、例えば、アマイド系、シリカ・シリコーン系、シリコーン系、ワックス系等の抑泡剤・消泡剤が挙げられる。かかる抑泡剤・消泡剤としては、具体的に、SNデフォーマー477、SNデフォーマー475−L、SNデフォーマー5013、SNデフォーマー5016(以上サンノプコ(株)製)等が例示される。その添加量は、乳化分散液の質量を基準として、0.01〜0.5質量%程度、好ましくは0.02〜0.3質量%程度である。
さらに必要に応じて水分を留去又は添加して所望の固形分濃度に調製した本発明のブロック共重合体水性乳化分散液を得ることができる。かかる固形分濃度としては、通常、10〜90%程度、好ましくは20〜60%程度である。
このようにして得られるブロック共重合体乳化物中の分散状態、即ち粒子径(メジアン径)は、通常、0.05〜50μm、好ましくは0.1〜30μm程度の範囲である。0.05μm未満だと、粘度が高く取り扱いが困難になり、50μmを越えると機械的安定性(攪拌やポンプ移送時の剪断力に対する安定性)や静置安定性が低下する傾向が見られる。
こうして得られたブロック共重合体を繊維質基材内部へ付与することにより、天然皮革並みの風合いと衝撃吸収性に優れた制振性を有する皮革様シートを得ることができる。ブロック共重合体を前述の繊維質基材の内部に付与する方法としては、マングルでの含浸―搾液方法、コーティング方法、スプレー方法等が挙げられ、中でもマングルでの含浸―搾液方法が容易性、制御性と安定性とのバランスから好ましく用いられる。ここでいうマングルでの含浸−搾液方法とは、所望の固形分濃度に調整したブロック共重合体の水分散液を繊維質基材内部に浸透させた後、マングルを用いて所望の搾液率となるよう加圧搾液したのち、乾燥機中で乾燥させるものである。繊維質基材内部に付与する順序としては特に限定されるものではないが、染色処理を実施する繊維質基材を使用する場合染色後に処理する方が染色中のブロック共重合体成分の脱離が少なく工程管理がしやすい点で好ましい。
また、本発明の繊維質基材と前述のブロック共重合体の比率は繊維質基材に対して5〜80質量%の範囲が天然皮革調の柔軟性および風合いの点から好ましく、10〜50質量%がより好ましい。5質量%未満の場合、制振性が充分発現しなくなる傾向があり、80質量%を越えた場合皮革様シートの風合いが硬くなる傾向がある。
実施例
次に、本発明を具体的な実施例で説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。そして実施例中の部は断りのない限り質量に関するものである。
各物性は下記のようにして求めた。
(i)極細繊維の繊維径
繊維断面を電子顕微鏡で撮影し、その写真から任意に選び出した50本の極細繊維の繊維径をノギスを使って測定しその平均値から算出した。
(ii)厚さ
JIS L1096に従って、240g/cm荷重時の厚さを測定した。
(iii)分子量
GPC測定により決定した。
(iv)重合体中のミクロ分子構造
NMRスペクトルを測定し、4.8ppm(3,4結合)、5.8ppm(1,2結合)のピークと、5.3ppm(1,4結合)のピークの強度から、下式(2)によりビニル結合量(%)を求めた。
ビニル結合量(%)=[(P1+P2)/(P1+P2+P3)]×100
・・・式(2)
ただし P1:4.8ppm(3,4結合)のピーク強度
P2:5.8ppm(1,2結合)のピーク強度
P3:5.3ppm(1,4結合)のピーク強度
(v)水添率
水添反応前後のブロック共重合体のヨウ素価を測定し、その比より算出した。
(vi)tanδ
レオバイブロン(オリエンテック社製)により粘弾性スペクトルを測定して求めた。また、ブロック共重合体の制振性能の指標として、25℃でのtanδの値を求めた。この値が大きいほど、常温付近での制振性能が良いことを示す。
(vii)水性乳化分散液の粘度
東機産業(株)製BL型粘度計を使用して測定した。
(viii)乳化物の粒径(メジアン径)
(株)堀場製作所製 レーザー散乱・回折粒度分布計LA−910を用いて測定した。
(ix)水性乳化分散液の固形分濃度(%)
水性乳化分散液をシャーレに取り、105℃で2時間乾燥し、固形分の重量を求め、下式(3)から固形分濃度(%)を求めた。
固形分濃度(%)=[W1/W2]×100 ・・・式(3)
ただし W1:蒸発乾燥後の重量(g)
W2:サンプル採取量(g)
(x)皮革様シートの制振性能
15cm角の皮革様シート試料をストーンテーブル上にのせ、30cmの高さから鉄球(重さ30g 直径2cm)を自由落下させ、跳ね返り高さを5回測定し、その平均値を用いて下式(4)から制振性を算出した。
制振性能値(%) = 100×(H1−H2)/H1 ・・・式(4)
ただし、H1(cm):鉄球を落下させる高さ(=30cm)
H2(cm):鉄球が跳ね返った高さ
繊維質基材の製造例
ナイロン−6とポリエチレンをチップの状態で50:50の重量比で混合して押出機により溶融紡糸を行い、ポリエチレンが海成分でナイロン−6が島成分となっている海島構造繊維を紡糸し、延伸、捲縮、カットして、4dtex、51mm長のステープルを作製し、ウェーバーでクロスラップを作りニードルパンチング機を用いて700パンチ/cmのニードルパンチングを施して繊維絡合不織布を得た。この不織布に、平均分子量2000のポリ3メチルペンタンアジペートジオールとポリエチレングリコールをソフトセグメント用のポリマージオールとするポリウレタン樹脂のジメチルホルムアミド(以下DMFと略すこともある)溶液を含浸し、湿式凝固させた後、繊維の海成分であるポリエチレンをパークロルエチレンで抽出し、目付200g/m、厚み0.6mm、ポリウレタン樹脂と繊維の比率が40/60の繊維質基材1を得た。得られた繊維質基材1のナイロン極細繊維の繊度は、平均で0.006dtexであった。得られた繊維質基材1の片面をサンドペーパーにてバフして該ナイロン極細繊維からなる立毛表面を有した立毛繊維質基材を得た。さらにこの立毛繊維室基材をサーキュラー染色機を用いて次の条件で染色すると茶色の立毛を有する繊維質基材が得られた。得られた繊維質基材の制振性能値は、11%であった。
染色条件
染料:Lanacron Brown S−GR(Ciba−Geigy(株)製) 5%owf
Irgalan Yellow GRL(Ciba−Geigy(株)製) 2%owf
浴比: 1:30
染色温度: 90℃
ブロック共重合体合成例(1)
乾燥した窒素で置換された耐圧反応器中で、溶媒としてシクロヘキサン、重合触媒としてn−ブチルリチウム、ビニル化剤としてTMEDAを用い、スチレンモノマー、イソプレンモノマー、スチレンモノマーの順に添加して重合し、A−B−A型ブロック共重合体(1)を得た。得られたブロック共重合体(1)をシクロヘキサン中で、水添触媒としてPb−Cを用い、水素圧20kg/cmで水添反応を行い、水添ブロック共重合体(1)を得た。表1に水添ブロック共重合体(1)の分子特性を示す。
ブロック共重合体合成例(2)
ブロック共重合体合成例(1)において、ビニル化剤としてTMEDAを用いなかった以外は、ブロック共重合体合成例(1)と同様の操作を行い、水添ブロック共重合体(2)を得た。表1に水添ブロック共重合体(2)の分子特性を示す。
水添ブロック共重合体の水分散液の調整例(1)
ホモミキサーを備えた乳化釜に、水 1119g及びドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン塩71gを入れ、90℃まで昇温した。次にブロック共重合体合成例(1)で得られた水添ブロック共重合体(1)75gをトルエン750gに溶解した溶液を添加し、ホモミキサーの翼周速8m/sで90℃で5分間攪拌混合し予備乳化を行った。次いで、この予備乳化液を90℃、50MPaでホモジナイザー処理後、冷却し、トルエン含有乳化分散液1961gを得た。得られたトルエン含有乳化分散液、及び消泡剤1.0gをコンデンサ、デカンター、滴下ロートを備えた5L四つ口フラスコに入れ、常圧下、プロペラ攪拌しながら昇温し、共沸してくる水と同重量の水を補充しながらトルエンを留去した。ガスクロマトグラフィーにて乳化分散液中のトルエン含有量が500ppmになった時点で加熱を中止し、室温まで冷却して水分散液(1)を得た。得られた水分散液(1)は、不揮発分45%、メジアン径0.62μmであった。
ブロック共重合体の水分散液の調整例(2)
水添ブロック共重合体(1)75gおよびパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名「ダイアナプロセスオイルPW−90」)75gをトルエン750gに溶解した以外は、ブロック共重合体の水分散液の調整例(1)と同様の操作を行い、水分散液(2)を得た。得られた水分散液(2)は、不揮発分55%、メジアン径0.66μmであった。
ブロック共重合体の水分散液の調整例(3)
水添ブロック共重合体(1)のかわりに水添ブロック共重合体(2)を用いた以外は、ブロック共重合体の水分散液の調整例(1)と同様の操作を行い、水分散液(4)を得た。得られた水分散液(2)は、不揮発分42%、メジアン径0.61μmであった。
ブロック共重合体の水分散液の調整例(4)
水添ブロック共重合体(1)のかわりに水添ブロック共重合体(2)を用いた以外は、ブロック共重合体の水分散液の調整例(2)と同様の操作を行い、水分散液(4)を得た。得られた水分散液(4)は、不揮発分55%、メジアン径0.68μmであった。
ブロック共重合体の水分散液の調整例(1)にて得られた水分散液(1)を固形分濃度が30%となるように水で希釈し、繊維質基材製造例にて得られた茶色に染色された立毛繊維質基材にマングルを用いて含浸し、搾液率を70%にして60℃の乾燥機にて乾燥することによって皮革様シート全体の重量に対しブロック共重合体の重量比率が20%のスエード調皮革様シートAを得た。得られたスエード調皮革様シートAは、天然皮革様の充実感および柔軟性を兼ね備えたものであった。また、得られたスエード調皮革様シートAの制振性能値は89%であり、優れた制振性能を有していることがわかった。得られたスエード調皮革様シートAを掌用部材となるように縫製して野球用手袋を作製し、10人のモニターにより100発の打撃試験を行ったところ、10人中8人がフィット性に優れ、打撃時の衝撃はブロック共重合体を含浸していないものに比べ感じないと評価した。
水分散液(1)の代わりに水分散液(2)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、皮革様シートBを得た。得られたスエード調皮革様シートBは、しっとりと落ち着いた外観と感触を有していた。得られたスエード調皮革様シートBの制振性能値は92%であり、優れた制振性能を有していることがわかった。得られたスエード調皮革様シートBを掌用部材となるように縫製して野球用手袋を作製し、10人のモニターにより100発の打撃試験を行ったところ、10人中8人がフィット性に優れ、打撃時の衝撃はブロック共重合体を含浸していないものに比べ感じないと評価した。
ブロック共重合体の水分散液の調整例(1)にて得られた水分散液(1)を固形分濃度が30%となるように水で希釈し、繊維質基材製造例にて得られた繊維質基材1にマングルを用いて含浸し、搾液率を70%にして60℃の乾燥機にて乾燥することによって皮革様シート全体の重量に対しブロック共重合体の重量比率が20%の皮革様シート基体を得た。次にポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートから重合して得られたポリウレタンを主体とするポリウレタンに、カーボンブラックを加えて黒色に調色したポリウレタン組成物溶液を離型紙上に塗布、乾燥して厚さ15ミクロンの被膜を得た。そして、その上に、接着層として2液型ポリウレタン、ポリイソシアネート硬化剤、アミン系触媒、溶剤からなる混合液を固形分で20g/m2塗布、乾燥し、乾燥直後の粘着性を有する状態で先に得られた皮革様シート基体にプレスして貼合せた。その後、60℃で48時間放置してから離型紙を剥がして銀付き銀付調の外観を有する皮革様シートCを得た。得られた銀付調皮革様シートCの制振性能値は90%であり、優れた制振性能を有していることがわかった。得られた銀付調皮革様シートCを掌用部材となるように縫製して野球用手袋を作製し、10人のモニターにより100発の打撃試験を行ったところ、10人中8人がフィット性に優れ、打撃時の衝撃はブロック共重合体を含浸していないものに比べ感じないと評価した。
比較例1
水分散液(1)の代わりに水分散液(3)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、スエード調皮革様シートDを得た。得られたスエード調皮革様シートDは、未処理の立毛繊維質基材と比して風合いがやや風合いが硬くなっていた上に、制振性能値は19%であり、制振性能も発現しないものであった。得られたスエード調皮革様シートDを掌用部材となるように縫製して野球用手袋を作製し、10人のモニターにより100発の打撃試験を行ったところ、10人中7人が実施例に用いたシートに比べ打撃時に強い衝撃を感じると評価した。
比較例2
水分散液(1)の代わりに水分散液(4)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、スエード調皮革様シートEを得た。得られたスエード調皮革様シートEは、しっとりと落ち着いた外観と感触を有していたが、制振性能値は20%であり、制振性能はほとんど発現しないものであった。得られたスエード調皮革様シートEを掌用部材となるように縫製して野球用手袋を作製し、10人のモニターにより100発の打撃試験を行ったところ、10人中6人が打撃時に強い衝撃を感じると評価した。
比較例3
水分散液(1)を用いない以外は、実施例1と同様の操作を行い、スエード調皮革様シートFを得た。得られたスエード調皮革様シートFを掌用部材となるように縫製して野球用手袋を作製し、10人のモニターにより100発の打撃試験を行ったところ、10人中9人が打撃時に強い衝撃を感じると評価した。
Figure 2007291565

Claims (10)

  1. 少なくとも1個のビニル芳香族モノマーからなる数平均分子量が2500〜40000のブロック(A)とイソプレン、ブタジエンもしくはイソプレン−ブタジエンからなり3,4結合および1,2結合含有量が30%以上である数平均分子量が10000〜200000のブロック(B)とから構成される数平均分子量が30000〜300000のブロック共重合体またはその水添物が、繊維質基材の少なくとも内部に存在していることを特徴とする皮革様シート。
  2. ブロック(B)中の3,4結合および1,2結合含有量が50%以上である請求項1に記載の皮革様シート。
  3. 繊維質基材を構成する繊維が0.3dtex以下の極細繊維である請求項1または2に記載の皮革様シート。
  4. 繊維質基材が繊維絡合不織布とその内部に含浸された弾性重合体からなる請求項1〜3いずれか1項に記載の皮革様シート。
  5. ブロック共重合体またはその水添物が、30℃における粘度が50〜10000mPa・sの油状物質の保持体として繊維質基材の少なくとも内部に存在している請求項1〜4いずれか1項に記載の皮革様シート。
  6. 保持体と油状物質との質量比が下式(1)を満足する請求項5に記載の皮革様シート。
    0 ≦ W1/W2 ≦ 3 ・・・ 式(1)
    ただし、 W1:油状物質の質量[g]
    W2:ブロック共重合体またはその水添物の質量[g]
  7. 繊維質基材を構成する繊維が極細繊維束状繊維である請求項1〜6いずれか1項に記載の皮革様シート。
  8. 請求項1〜7いずれか1項に記載の皮革様シートからなるスエード調皮革様シート。
  9. 請求項1〜7いずれか1項に記載の皮革様シートからなる銀付調皮革様シート。
  10. 請求項1〜9いずれか1項に記載の皮革様シートを一部として縫製してなる手袋。
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