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JP2007146316A - 気相法炭素繊維の製造方法 - Google Patents

気相法炭素繊維の製造方法 Download PDF

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JP2007146316A JP2005340414A JP2005340414A JP2007146316A JP 2007146316 A JP2007146316 A JP 2007146316A JP 2005340414 A JP2005340414 A JP 2005340414A JP 2005340414 A JP2005340414 A JP 2005340414A JP 2007146316 A JP2007146316 A JP 2007146316A
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毅 大久保
Keigi Tan
佳義 単
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Abstract

【課題】微細炭素繊維を製造する際に、反応炉壁内に付着する炭素質スケールを容易に燃焼除去することができ、経済的であり、かつ収率良く製造することのできる、微細炭素繊維の製造方法およびこれに用いられる反応炉を提供することを課題とする。
【解決手段】有機化合物の熱分解による気相法炭素繊維の製造方法であって、反応炉内の炭素繊維成長区間の壁面に、アモルファスカーボンを選択的に形成させた後、炭素繊維の製造を行うことを特徴とする気相法炭素繊維の製造方法、及びその製造方法に使用される反応炉を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、気相法炭素繊維の製造方法およびこれに用いられる反応炉に関し、特に、高品質な微細炭素繊維を収率良く製造することができ、比較的低温で炭素質スケールを燃焼することができ、生産効率が向上した製造方法およびこれに用いられる反応炉に関するものである。
炭素繊維は、従来より、その優れた力学特性や高い導電性などの特性を有するため、各種複合材料に用いられている。
一方、近年においては、各種材料に一段と高い機能性が求められるようになっており、樹脂、セラミックス、金属等の固体材料からなるマトリックスの特性を損なわずに電気特性、機械的特性、熱特性等の物性を大きく改良できる添加剤が求められており、また、燃料油、潤滑剤等の液体の物性を向上する添加剤等も求められている。
ところで、炭素繊維としては、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも記する。)に代表されるカーボンナノ構造体などの微細炭素繊維が、近年開発され、各種の分野において注目を集めている。
カーボンナノ構造体を構成するグラファイト層は、通常では、規則正しい六員環配列構造を有し、その特異な電気的性質とともに、化学的、機械的および熱的に安定した性質を持つ物質である。従って、このような微細炭素繊維は単体として、あるいは、例えば、各種樹脂、セラミックス、金属等の固体材料、あるいは燃料油、潤滑剤等の液体材料中に分散配合して複合体とすることにより、優れた特性を発揮することができるためである。
このような微細炭素繊維の製造方法としては、反応炉内で有機化合物を熱分解し、生成した炭素を繊維状に成長させることによって、微細な炭素繊維を一工程で得ることのできる気相成長方法が、比較的生産効率の高い方法として工業的に実用化されている。
気相法による炭素繊維の製造は、代表的には、例えば、遷移金属超微粒子を触媒とし、この触媒とキャリヤーガス及び炭化水素等の有機化合物を液体または気体状で反応炉に導入し、有機化合物を反応炉内で熱分解し、前記触媒粒子ないしその凝集物を核として炭素を再凝固させ微細な繊維状に成長されることにより行われる。
従来、このような気相法炭素繊維の製造方法において用いられる反応炉は、一般に耐熱性のセラミックス等によって構成されているものであり、その製造工程においては、炭素繊維は通常反応炉の壁面に析出し、さらに先に析出した繊維上に新たに繊維が析出するので最後には炉内が繊維で閉塞するようになる。従ってその前に炭素繊維を間欠的に掻き取り、連続運転を可能なようにしている。この掻き取り装置として例えば、特許文献1に示されるような装置が知られている。
有機化合物の熱分解による気相法炭素繊維の製造方法では、上記したように遷移金属の微粒子が触媒として用いられ、その微粒子が繊維の先端に存在しているが、その他に繊維成長の核を構成しない遷移金属の微粒子が金属粒あるいは化合物等となるものも存在する。また有機化合物の炭素も繊維化せず炭化物等となるのもあり、これらの金属等と炭化物等が混在した炭素質スケールが炉壁面に次第に蓄積されてくる。
従って、例えば、特許文献1に示すような掻き取り装置を用いて、反応炉壁面に付着し炭素繊維を物理的に剥離回収した場合に、上記したような炭素質スケールが、製品中に混在することとなり、炭素繊維の純度が低下してしまうこととなり問題であった。また、壁面に付着した炭素繊維を剥離回収する際に、炭素繊維が損傷を受けたり繊維同士が絡まり合ってしまうといった問題も生じていた。また、炭素質スケールは硬く、かつ壁面に固着しているので物理的に除去することは容易でなく、さらに、このスケールは伝熱を妨げるのみならず、量が多くなると掻き取り装置の操作に支障を来すものであった。
このような観点から、特許文献2には、気相法炭素繊維の製造法において、所定時間運転後反応を停止し、反応炉内に不活性ガスを導入し、次いで酸素含有ガスを導入して反応炉壁に固着した炭素質スケールを燃焼除去する気相法炭素繊維の製造法が示されている。
この方法によれば、ある程度効率よく炭素質スケールを除去することは可能となるものの、炭素繊維が反応炉壁面に析出するものであるため、炭素質スケールの燃焼に高温が必要であり、また炭素繊維製品への炭素質スケールの混入は避けられないものであった。
実公平1−21980号公報 特開平8−60445号公報
従って、本発明は、高品質な微細炭素繊維を効率的に、経済的観点より有利に、かつ収率良く製造することのできる製造方法およびこれに用いられる反応炉を提供することを課題とする。
本発明は、有機化合物の熱分解による気相法炭素繊維の製造方法であって、反応炉内の炭素繊維成長区間の壁面(以下、反応炉の内壁面という)に、アモルファスカーボンを選択的に形成させた後、炭素繊維の製造を行うことを特徴とする気相法炭素繊維(以下、炭素繊維構造体ということもある)の製造方法を提供する。
また、本発明は、有機化合物の熱分解による気相法炭素繊維の製造に用いられる反応炉であって、反応炉の内壁面が、アモルファスカーボンを選択的に形成させる層(以下、アモルファスカーボン形成促進層という)を有することを特徴とする気相法炭素繊維製造用反応炉を提供する。
本発明において、「反応炉の内壁面に、アモルファスカーボンを選択的に形成させる」とは、X線回折で観測されるアモルファスカーボンに帰属される20〜30°のシグナル強度とグラファイトの101面に帰属される42°のシグナル強度の比から求められるアモルファスカーボンの含有量が30質量%以上であることを意味する。アモルファスカーボンの含有量の測定方法については後に詳述する。
本発明においては、有機化合物の熱分解による気相法炭素繊維の製造方法において、炭素繊維の製造に先立ち、応炉の内壁面にアモルファスカーボンを選択的に形成させるので、その製造時に、炭素繊維は、主として反応炉の内部空間内にて成長し、反応炉内壁面への析出を抑制する。反応炉の内壁面には炭素質スケールの付着は生じるものの、反応炉の内壁面と炭素質スケールとが接触する面(部位)において、アモルファスカーボンが存在する。このように、本発明においては、反応炉の内壁面への炭素質スケールの付着はある程度不可避ではあるが、反応炉の内壁面と炭素質スケールが接触する面(部位)において、アモルファスカーボンが存在することにより、反応炉の内壁面に付着した炭素質スケールを容易に燃焼除去することができる。さらに、炭素質スケールの除去のために反応炉を停止、冷却することなく、炭素繊維製造と炭素質スケールの燃焼除去を連続的に行うことができるため、冷却による反応炉内壁の損傷も避けることができ、炉寿命も延長化できるものである。
以下、本発明を好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
〔反応炉〕
本発明において、先ず反応炉の内壁面にアモルファスカーボンを選択的に形成させる。
この場合において、反応炉の内壁面はアモルファスカーボンを選択的に形成させることができる層を有することが好ましい。反応炉内の炭素繊維成長区間とは、反応炉内において気相成長により実質的に炭素繊維が成長している領域を意味し、本来的に炉壁面に炭素質物質の付着があまり見られない、反応炉内の原料ガス供給口の近傍部や出口近傍部までもは、必ずしもこのような材料にて構成する必要はないのであるが、もちろん、これらの部位を含めて、反応炉内の全壁面をこのような材料により構成することは可能である。特に限定されるわけではなく、また、その製造条件等によっても左右されるが、例えば、炭素繊維製造反応時において、炉内の温度分布にて700〜1600℃程度の温度領域を囲繞する部位の壁面は、少なくともこのような材料にて構成することが望ましい。
アモルファスカーボンを選択的に形成させる層に使用される材料としては、このような特性を発揮する材料であれば特に限定されるものではないが、例えば、(0001)の結晶方位面を有する6H型SiCを用いることができる(ここで、「6H型」のHは結晶型が六方形であることを示し、6は原子積層が6層で一周期である結晶構造を示すものである)。この場合において、反応炉の内壁面にアモルファスカーボンをできるだけ多く形成させるとの観点より、アモルファスカーボン形成促進層(例えば、セラミックス)中、(0001)の結晶方位面を有する6H型SiCの含有量は30〜100質量%であることが好ましい。
SiC単結晶は物理的、化学的に安定で、しかも高温、放射線に耐える素材であり、しかも、(0001)の結晶方位面を有する6H型SiCは比較的容易に入手可能である。例えば、炭化珪素研磨材を工業的に製造するときに副産物として得られる不定形の6H型炭化珪素単結晶を整形、研磨し、面判定後、必要に応じて、ふっ酸等による酸洗浄の後、乾燥させて用いることができる。
なお、アモルファスカーボンを選択的に形成させための、反応炉のアモルファスカーボン形成促進層は、反応炉の内壁面の極表面領域のみで十分であるので、例えば、基板となるSiC、SiN、WC、BN、アルミナ、グラファイト等の材質の表面に(0001)の結晶方位面を有する6H型SiC多結晶体薄膜を、例えば、厚さ1〜20μmm、より好ましくは、例えば、厚さ5〜20μm程度に、スプレー、浸漬、塗工などのコーティング等により形成させても良い。さらにこの表面にエキシマーレーザ光(波長 300 nm以下、照射エネルギー 200 mJ以上)を照射することで、当該結晶薄膜表面を改質し、アモルファスカーボンの選択的な形成を容易とすることができる。
なお、6H型SiCの(0001)面には、面極性として、炭素面と、珪素面とがあるが、このうち、珪素面の方が望ましい。炭素面または珪素面は、公知のように、例えば水蒸気酸化あるいは溶融アルカリエッチングによる面判定法により判定することができる。
本発明において反応炉は、横型でも可能であるが、反応炉の内部空間内で形成した炭素繊維を自然落下させることができる点で縦型の方が好ましい。
反応炉は、好ましくは、生成した炭素繊維を垂直方向に落下させるため、円柱軸が垂直(円柱軸が重力と同方向)に配置された円柱形である。また、反応炉には燃焼した炭素質スケールを剥離除去する際に、機械的振動を与える手段を具備することが好ましい。
〔反応炉の内壁面へのアモルファスカーボンの選択的な形成〕
本工程を行う場合において、原料有機化合物として、例えばトルエン、アセチレン、メタン等の炭化水素やエタノール等のアルコール類を使用することができ、この原料有機化合物はガス状にて140〜200℃の反応炉内へ供給される。キャリアー(雰囲気)ガスとしてアルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガスが使用される。
このようにして、上記したような反応炉の内壁面へ選択的にアモルファスカーボンの層が形成される。
なお、アモルファスカーボン層の厚さとして、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜200μm、より好ましくは5〜100μmとすれば本発明の所望の効果が得られる。
〔気相法による炭素繊維の成長反応〕
本発明において、前記したような反応炉の内壁面へのアモルファスカーボンの選択的な形成の後に、反応炉内で炭素繊維を成長させる方法は例えばつぎのとおりである。
原料有機化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、一酸化炭素(CO)、エタノール等のアルコール類などが使用できる。特に限定されるわけではないが、本発明に係る繊維構造体を得る上においては、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることが好ましい。なお、本明細書において述べる「少なくとも2つ以上の炭素化合物」とは、必ずしも原料有機化合物として2種以上のものを使用するというものではなく、原料有機化合物としては1種のものを使用した場合であっても、繊維構造体の合成反応過程において、例えば、トルエンやキシレンの水素脱アルキル化(hydrodealkylation)などのような反応を生じて、その後の熱分解反応系においては分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物となっているような態様も含むものである。
なお、熱分解反応系において炭素源としてこのように2種以上の炭素化合物を存在させた場合、それぞれの炭素化合物の分解温度は、炭素化合物の種類のみでなく、原料ガス中の各炭素化合物のガス分圧ないしモル比によっても変動するものであるため、原料ガス中における2種以上の炭素化合物の組成比を調整することにより、炭素化合物として比較的多くの組み合わせを用いることができる。
例えば、メタン、エタン、プロパン類、ブタン類、ペンタン類、へキサン類、ヘプタン類、シクロプロパン、シクロヘキサンなどといったアルカンないしシクロアルカン、特に炭素数1〜7程度のアルカン;エチレン、プロピレン、ブチレン類、ペンテン類、ヘプテン類、シクロペンテンなどといったアルケンないしシクロオレフィン、特に炭素数1〜7程度のアルケン;アセチレン、プロピン等のアルキン、特に炭素数1〜7程度のアルキン;ベンゼン、トルエン、スチレン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、インデン、フェナントレン等の芳香族ないし複素芳香族炭化水素、特に炭素数6〜18程度の芳香族ないし複素芳香族炭化水素、メタノール、エタノール等のアルコール類、特に炭素数1〜7程度のアルコール類;その他、一酸化炭素、ケトン類、エーテル類等の中から選択した2種以上の炭素化合物を、所期の熱分解反応温度域において異なる分解温度を発揮できるようにガス分圧を調整し、組み合わせて用いること、および/または所定の温度領域における滞留時間を調整することで可能であり、その混合比を最適化することで効率よく本発明に係る炭素繊維構造体を製造することができる。
このような2種以上の炭素化合物の組み合わせのうち、例えば、メタンとベンゼンとの組み合わせにおいては、メタン/ベンゼンのモル比が、1〜600、より好ましくは1.1〜200、さらに好ましくは3〜100とすることが望ましい。なお、この値は、反応炉の入り口におけるガス組成比であり、例えば、炭素源の1つとしてトルエンを使用する場合には、反応炉内でトルエンが100%分解して、メタンおよびベンゼンが1:1で生じることを考慮して、不足分のメタンを別途供給するようにすれば良い。例えば、メタン/ベンゼンのモル比を3とする場合には、トルエン1モルに対し、メタン2モルを添加すれば良い。なお、このようなトルエンに対して添加するメタンとしては、必ずしも新鮮なメタンを別途用意する方法のみならず、当該反応炉より排出される排ガス中に含まれる未反応のメタンを循環使用することにより用いることも可能である。
このような範囲内の組成比とすることで、炭素繊維部および粒状部のいずれもが十分を発達した構造を有する炭素繊維構造体(好ましい炭素繊維構造体については後の項にて詳述する)を得ることが可能となる。
なお、雰囲気ガスには、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガスや水素を用いることができる。
また、触媒としては、鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物の混合物を使用する。
炭素繊維構造体の合成は、通常行われている炭化水素等のCVD法を用い、原料となる炭化水素および触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等をキャリアガスとして、本発明に係る反応炉、すなわち、上述したように反応炉のアモルファスカーボン形成促進層を、アモルファスカーボンが選択的に形成する材料、例えば、(0001)の結晶方位面を有する6H型SiCを含有する材料にて構成してなる反応炉内に導入し、800〜1300℃の温度で熱分解する。これにより、外径が15〜100nmの繊維相互が、前記触媒の粒子を核として成長した粒状体によって結合した疎な三次元構造を有する炭素繊維構造体が複数集まった数cmから数十センチの大きさの集合体を合成する。
原料となる炭化水素の熱分解反応は、主として触媒粒子ないしこれを核として成長した粒状体表面において生じ、分解によって生じた炭素の再結晶化が当該触媒粒子ないし粒状体より一定方向に進むことで、繊維状に成長する。しかしながら、本発明に係る炭素繊維構造体を得る上においては、このような熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させる、例えば上記したように炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることで、一次元的方向にのみ炭素物質を成長させることなく、粒状体を中心として三次元的に炭素物質を成長させる。もちろん、このような三次元的な炭素繊維の成長は、熱分解速度と成長速度とのバランスにのみ依存するものではなく、触媒粒子の結晶面選択性、反応炉内における滞留時間、炉内温度分布等によっても影響を受け、また、前記熱分解反応と成長速度とのバランスは、上記したような炭素源の種類のみならず、反応温度およびガス温度等によっても影響受けるが、概して、上記したような熱分解速度よりも成長速度の方が速いと、炭素物質は繊維状に成長し、一方、成長速度よりも熱分解速度の方が速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向に成長する。従って、熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させることで、上記したような炭素物質の成長方向を一定方向とすることなく、制御下に多方向として、本発明に係るような三次元構造を形成することができるものである。なお、生成する炭素繊維構造体において、繊維相互が粒状体により結合された前記したような三次元構造を容易に形成する上では、触媒等の組成、反応炉内における滞留時間、反応温度、およびガス温度等を最適化することが望ましい。
なお、当該炭素繊維構造体を効率良く製造する方法としては、上記したような分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物を最適な混合比にて用いるアプローチ以外に、反応炉に供給される原料ガスに、その供給口近傍において乱流を生じさせるアプローチを挙げることができる。ここでいう乱流とは、激しく乱れた流れであり、渦巻いて流れるような流れをいう。
反応炉においては、原料ガスが、その供給口より反応炉内へ導入された直後において、原料混合ガス中の触媒としての遷移金属化合物の分解により金属触媒微粒子が形成されるが、これは、次のような段階を経てもたらされる。すなわち、まず、遷移金属化合物が分解され金属原子となり、次いで、複数個、例えば、約100原子程度の金属原子の衝突によりクラスター生成が起こる。この生成したクラスターの段階では、微細炭素繊維の触媒として作用せず、生成したクラスター同士が衝突により更に集合し、約3nm〜10nm程度の金属の結晶性粒子に成長して、微細炭素繊維の製造用の金属触媒微粒子として利用されることとなる。
この触媒形成過程において、上記したように激しい乱流による渦流が存在すると、ブラウン運動のみの金属原子又はクラスター同士の衝突と比してより激しい衝突が可能となり、単位時間あたりの衝突回数の増加によって金属触媒微粒子が短時間に高収率で得られ、又、渦流によって濃度、温度等が均一化されることにより粒子のサイズの揃った金属触媒微粒子を得ることができる。さらに、金属触媒微粒子が形成される過程で、渦流による激しい衝突により金属の結晶性粒子が多数集合した金属触媒微粒子の集合体を形成する。このようにして金属触媒微粒子が速やかに生成されるため、炭素化合物の分解が促進されて、十分な炭素物質が供給されることになり、前記集合体の各々の金属触媒微粒子を核として放射状に微細炭素繊維が成長し、一方で、前記したように一部の炭素化合物の熱分解速度が炭素物質の成長速度よりも速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向にも成長し、前記集合体の周りに粒状部を形成し、所期の三次元構造を有する炭素繊維構造体を効率よく形成する。なお、前記金属触媒微粒子の集合体中には、他の触媒微粒子よりも活性の低いないしは反応途中で失活してしまった触媒微粒子も一部に含まれていることも考えられ、集合体として凝集するより以前にこのような触媒微粒子の表面に成長していた、あるいは集合体となった後にこのような触媒微粒子を核として成長した非繊維状ないしはごく短い繊維状の炭素物質層が、集合体の周縁位置に存在することで、本発明に係る炭素繊維構造体の粒状部を形成しているものとも思われる。
反応炉の原料ガス供給口近傍において、原料ガスの流れに乱流を生じさせる具体的手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、原料ガス供給口より反応炉内に導出される原料ガスの流れに干渉し得る位置に、何らかの衝突部を設ける等の手段を採ることができる。前記衝突部の形状としては、何ら限定されるものではなく、衝突部を起点として発生した渦流によって十分な乱流が反応炉内に形成されるものであれば良いが、例えば、各種形状の邪魔板、パドル、テーパ管、傘状体等を単独であるいは複数組み合わせて1ないし複数個配置するといった形態を採択することができる。
〔炭素質スケールの燃焼除去〕
本発明の製造方法においては、上記したような条件下において、反応炉内において、炭素繊維の製造が行われる。
そして、一定時間、例えば、5分〜2時間程度経過して、反応炉の内壁内に予め形成させたアモルファスカーボンの層の上に生成した炭素質スケールの堆積量が所定量となったら、反応炉への原料ガスの供給を停止し、また、キャリアガスとして水素ガスを用いていた場合には、これを窒素、アルゴン等の不活性ガスに切換える。この雰囲気調整を効率よく行なうには、反応炉にできるだけ近い位置に遮断弁を設けるとよい。炉内が十分に不活性ガスで置換されたら、次に空気、酸素富化空気等の酸素含有ガスを、炉内に導入する。反応炉は、700〜1600℃と高温状態のままになっているので、燃焼温度の低いアモルファスカーボン(空気中での燃焼開始温度約300℃)を反応炉内壁面側に含む炭素質スケールは、反応炉壁面より容易に燃焼除去される。そして、燃焼ガスは例えば炉の上部から排出する。なお、この際反応炉内に残存している、生成した炭素繊維は燃焼温度が高い(空気中での燃焼開始温度約450℃)ため、このような燃焼処理によっても燃焼することはない。このようにして、炭素質スケールの除去処理が終了したら、逆の手順で、酸素含有ガスの導入を停止し、不活性ガスに切り替え、十分に不活性ガスに切り替えられた後、キャリアガスとしての水素ガスを流すとともに原料ガスの供給を再開して、以前と同様の炭素繊維製造工程を再開する。そして、これ以降、これらの操作を交互に繰り返すことで,長期間連続して、反応炉の閉塞を起こすことなく、炭素繊維を製造することができるものとなる。
〔好ましい炭素繊維構造体〕
本発明に係る気相法炭素繊維の製造方法は、得られる炭素繊維の純度を向上させることができるものであるため、気相法によって得られるものである限り、いかなる炭素繊維の形態のものに対しても、好適に応用することができ、例えば、その一実施形態においては、炭素繊維として、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維の製造においても好適に用いられることができる。本発明の炭素繊維の製造方法を、このような炭素繊維構造体の製造方法に適用した場合、例えば、その炭素繊維(炭素繊維構造体ともいう)の収率が40%以上、より好ましくは60%以上となる。
本発明の製造方法によって得られた炭素繊維構造体は、例えば、図1に示すSEM写真または図2に示すTEM写真に見られるように、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有することを特徴とする炭素繊維構造体である。
本発明の製造方法によって得られた炭素繊維構造体を構成する炭素繊維の外径を、15〜100nmの範囲とした場合に、本発明の製造方法によって得られた炭素繊維構造体を800〜1300℃で加熱し、ついで2400〜3000℃で高温熱処理して得られた炭素繊維構造体(以下、アニールされた炭素繊維構造体という)は、特に高い導電性を示すため、及び樹脂等のマトリックスへ改質剤、添加剤として配される炭素繊維構造体として適当であるため好ましい。なお、本発明の製造方法によって得られた炭素繊維構造体を構成する炭素繊維の外径としては特に、20〜70nmの範囲内にあることが、より望ましい。この外径範囲のもので、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層したもの、すなわち多層であるものは、曲がりにくく、弾性、すなわち変形後も元の形状に戻ろうとする性質が付与されるため、炭素繊維構造体が一旦圧縮された後においても、樹脂等のマトリックスに配された後において、疎な構造を採りやすくなる。
そして、本発明の製造方法により得られた炭素繊維構造体においては、このような所定外径を有する微細炭素繊維が3次元ネットワーク状に存在するが、これら炭素繊維は、当該炭素繊維の成長過程において形成された粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しているものである。このように、微細炭素繊維同士が単に絡合しているものではなく、粒状部において相互に強固に結合されているものであることから、樹脂等のマトリックス中に配した場合に当該構造体が炭素繊維単体として分散されることなく、嵩高な構造体のままマトリックス中に分散配合されることができる。また、当該炭素繊維構造体においては、当該炭素繊維の成長過程において形成された粒状部によって炭素繊維同士が互いに結合されていることから、その構造体自体の電気的特性等も非常に優れたものであり、例えば、一定圧縮密度において測定した電気抵抗値は、微細炭素繊維の単なる絡合体、あるいは微細炭素繊維同士の接合点を当該炭素繊維合成後に炭素質物質ないしその炭化物によって付着させてなる構造体等の値と比較して、非常に低い値を示し、マトリックス中に分散配合された場合に、良好な導電パスを形成できることができる。
なお、本願明細書において、粒状部から炭素繊維が「延出する」するとは、粒状部と炭素繊維とが他の結着剤(炭素質のものを含む)によって、単に見かけ上で繋がっているような状態をさすものではなく、上記したように炭素結晶構造的な結合によって繋がっている状態を主として意味するものである。
本発明の製造方法によって得られた炭素繊維構造体における粒状部の粒径は、図2に示すように、前記微細炭素繊維の外径よりも大きいことが望ましい。具体的には、例えば、前記微細炭素繊維の外径の1.3〜250倍、より好ましくは1.5〜100倍、さらに好ましくは2.0〜25倍である。なお、前記値は平均値である。このように炭素繊維相互の結合点である粒状部の粒径が微細炭素繊維外径の1.3倍以上と十分に大きなものであると、当該粒状部より延出する炭素繊維に対して高い結合力がもたらされ、樹脂等のマトリックス中に当該炭素繊維構造体を配した場合に、ある程度のせん弾力を加えた場合であっても、3次元ネットワーク構造を保持したままマトリックス中に分散させることができる。一方、粒状部の大きさが微細炭素繊維の外径の250倍以下の場合には、炭素繊維構造体の繊維状の特性が損なわれず、例えば、各種マトリックス中への添加剤、配合剤として適当なものとなるために望ましい。なお、本明細書でいう「粒状部の粒径」とは、炭素繊維相互の結合点である粒状部を1つの粒子とみなして測定した値である。
その粒状部の具体的な粒径は、炭素繊維構造体の大きさ、炭素繊維構造体中の微細炭素繊維の外径にも左右されるが、例えば、平均値で20〜5000nm、より好ましくは25〜2000nm、さらに好ましくは30〜500nm程度である。
さらにこの粒状部は、前記したように炭素繊維の成長過程において形成されるものであるため、比較的球状に近い形状を有しており、その円形度は、平均値で0.2〜1、好ましくは0.5〜0.99、より好ましくは0.7〜0.98程度である。
加えて、この粒状部は、前記したように炭素繊維の成長過程において形成されるものであって、例えば、微細炭素繊維同士の接合点を当該炭素繊維合成後に炭素質物質ないしその炭化物によって付着させてなる構造体等と比較して、当該粒状部における、炭素繊維同士の結合は非常に強固なものであり、炭素繊維構造体における炭素繊維の破断が生じるような条件下においても、この粒状部(結合部)は安定に保持される。具体的には例えば、後述する実施例において示すように、当該炭素繊維構造体を液状媒体中に分散させ、これに一定出力で所定周波数の超音波をかけて、炭素繊維の平均長がほぼ半減する程度の負荷条件としても、該粒状部の平均粒径の変化率は、10%未満、より好ましくは5%未満であって、粒状部、すなわち、繊維同士の結合部は、安定に保持されているものである。
また、当該炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜100μm、より好ましくは60〜90μm程度であることが望ましい。ここで面積基準の円相当平均径とは、炭素繊維構造体の外形を電子顕微鏡などを用いて撮影し、この撮影画像において、各炭素繊維構造体の輪郭を、適当な画像解析ソフトウェア、例えばWinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化したものである。
複合化される樹脂等のマトリックス材の種類によっても左右されるため、全ての場合において適用されるわけではないが、この円相当平均径は、樹脂等のマトリックス中に配合された場合における当該炭素繊維構造体の最長の長さを決める要因となるものであり、概して、円相当平均径が50〜100μmの場合に、例えば、マトリックス中へ混練等によって配合する際に大きな粘度上昇が起こらず、混合分散性、及び成形性が良好であるあるためである。
また上記したように、当該炭素繊維構造体は、3次元ネットワーク状に存在する炭素繊維が粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しているが、1つの炭素繊維構造体において、炭素繊維を結合する粒状部が複数個存在して3次元ネットワークを形成している場合、隣接する粒状部間の平均距離は、例えば、0.5〜300μm、より好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜50μm程度となる。なお、この隣接する粒状部間の距離は、1つの粒状体の中心部からこれに隣接する粒状部の中心部までの距離を測定したものである。粒状体間の平均距離が、0.5〜300μmの場合に、炭素繊維が3次元ネットワーク状に十分に発展した形態となるため、例えば、マトリックス中に分散配合された場合に、良好な導電パスを形成し得るため好ましい。、一方、平均距離が300μm以下の場合に、マトリックス中に分散配合させる際に、粘性を高くさせず、炭素繊維構造体のマトリックスに対する分散性が低下しないため好ましい。さらに、当該炭素繊維構造体は、上記したように、3次元ネットワーク状に存在する炭素繊維が粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しており、このため当該構造体は炭素繊維が疎に存在した嵩高な構造を有するが、具体的には、例えば、その嵩密度が0.0001〜0.05g/cm、より好ましくは0.001〜0.02g/cmであることが望ましい。嵩密度が0.05g/cm以下の場合に、少量添加によって、樹脂等のマトリックスの物性を改善することができるためである。
なお、前述した各物性値および以下の実施例において示す各物性値の測定方法はつぎのとおりである。
<面積基準の円相当平均径>
まず、炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真において、炭素繊維構造体の輪郭が明瞭なもののみを対象とし、炭素繊維構造体が崩れているようなものは輪郭が不明瞭であるために対象としなかった。1視野で対象とできる炭素繊維構造体(60〜80個程度)はすべて用い、3視野で約200個の炭素繊維構造体を対象とした。対象とされた各炭素繊維構造体の輪郭を、画像解析ソフトウェア WinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化した。
<嵩密度の測定>
内径70mmで分散板付透明円筒に1g粉体を充填し、圧力0.1Mpa、容量1.3リットルの空気を分散板下部から送り粉体を吹出し、自然沈降させる。5回吹出した時点で沈降後の粉体層の高さを測定する。このとき測定箇所は6箇所とることとし、6箇所の平均を求めた後、嵩密度を算出した。
<粒状部の平均粒径、円形度、微細炭素繊維との比>
面積基準の円相当平均径の測定と同様に、まず、炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真において、炭素繊維構造体の輪郭が明瞭なもののみを対象とし、炭素繊維構造体が崩れているようなものは輪郭が不明瞭であるために対象としなかった。1視野で対象とできる炭素繊維構造体(60〜80個程度)はすべて用い、3視野で約200個の炭素繊維構造体を対象とした。
対象とされた各炭素繊維構造体において、炭素繊維相互の結合点である粒状部を1つの粒子とみなして、その輪郭を、画像解析ソフトウェア WinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各粒状部の円相当径を計算し、これを平均化して粒状部の平均粒径とした。また、円形度(R)は、前記画像解析ソフトウェアを用いて測定した輪郭内の面積(A)と、各粒状部の実測の輪郭長さ(L)より、次式により各粒状部の円形度を求めこれを平均化した。
R=A*4π/L2
さらに、対象とされた各炭素繊維構造体における微細炭素繊維の外径を求め、これと前記各炭素繊維構造体の粒状部の円相当径から、各炭素繊維構造体における粒状部の大きさを微細炭素繊維との比として求め、これを平均化した。
<粒状部の間の平均距離>
面積基準の円相当平均径の測定と同様に、まず、炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真において、炭素繊維構造体の輪郭が明瞭なもののみを対象とし、炭素繊維構造体が崩れているようなものは輪郭が不明瞭であるために対象としなかった。1視野で対象とできる炭素繊維構造体(60〜80個程度)はすべて用い、3視野で約200個の炭素繊維構造体を対象とした。
対象とされた各炭素繊維構造体において、粒状部が微細炭素繊維によって結ばれている箇所を全て探し出し、このように微細炭素繊維によって結ばれる隣接する粒状部間の距離(一端の粒状体の中心部から他端の粒状体の中心部までを含めた微細炭素繊維の長さ)をそれぞれ測定し、これを平均化した。
<アモルファスカーボンの含有量の定量>
粉末X線回折装置(JDX3532、日本電子社製)を用いて、Cu管球で40kV、30mAで発生させたKα線で予めアモルファスカーボンとグラファイトの混合物の質量比と、その混合物のアモルファスカーボンに帰属される20〜30°のシグナル強度とグラファイトの101面に帰属される42°のシグナル強度の比の関係の検量線を作成し、アモルファスカーボンの含有量の定量を行った。
検量線から求めた。
<炭酸ガス濃度>
炭酸ガス濃度計(富士エレクトリック社製、Type ZFP9DB11-Z)を用いて計測した。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
平均粒径が50μmの6H (0001)のSiC 5質量部、イットリア 2質量部、アルミナ 3質量部、2質量%ポリエチレングリコール水溶液 100質量部からなる懸濁液を調製した。東芝セラミック社製炭化珪素 セラシック(同社商標)からなるCNT(カーボンナノチューブ)製造用反応炉の内壁にこの懸濁液を噴霧し、風乾後アルゴン中1800℃にて焼成し6H (0001)のSiCで内壁がコーティングされた反応炉を得た。このコーティング層の厚みは10μmであった。この反応炉内温度を140℃に保ち、そこへアセチレンを100g/minにてヘリウムガスと共に10分間供給し反応炉内壁にアモルファスカーボン層を形成させた。この生成物のX線回折から求めたアモルファスカーボンの割合は64質量%であった。
次いでCVD法によって、トルエンを原料として微細炭素繊維を合成した。
この炭素繊維構造体を製造する際に用いられた反応炉の概略構成を図3に示す。図3に示すように、反応炉1は、その上端部に、上記したようなトルエン、触媒および水素ガスからなる原料混合ガスを反応炉1内へ導入する導入ノズル2を有しているが、さらにこの導入ノズル2の外側方には、円筒状の衝突部3が設けられている。この衝突部3は、導入ノズル2の下端に位置する原料ガス供給口4より反応炉内に導出される原料ガスの流れに干渉し得るものとされている。この実施例において用いられた反応炉1では、導入ノズル2の内径a、反応炉1の内径b、筒状の衝突部3の内径c、反応炉1の上端から原料混合ガス導入口4までの距離d、原料混合ガス導入口4から衝突部3の下端までの距離e、原料混合ガス導入口4から反応炉1の下端までの距離をfとすると、各々の寸法比は、おおよそa:b:c:d:e:f=1.0:3.6:1.8:3.2:2.0:21.0に形成されていた。また、反応炉への原料ガス導入速度は、1850NL/min、圧力は1.03atmとした。なお、図中、符号5は、上述したような、反応炉内壁に形成された6H (0001)のSiC層、すなわちアモルファスカーボン形成促進層を示すものである。
このような反応炉を用い、触媒としてフェロセン及びチオフェンの混合物を使用し、水素ガスの還元雰囲気で気相成長を行った。トルエン、触媒を水素ガスとともに380℃に加熱し、反応炉に供給し、1250℃で熱分解して、炭素繊維構造体を得た。10時間の連続運転を行い、反応炉を落下してくる生成炭素繊維構造体を回収したところ63kgの炭素繊維構造体を得た。
その後、炉内温度を維持したまま原料混合ガスの反応炉内への供給を停止し、反応炉内雰囲気を、窒素ガスを導入して置換し、炉内の水素ガス濃度が0.01%以下となったところで窒素ガスを空気に切換え、炉内に送入して、炉内の空焼きによる炭素質スケール除去を600℃にて行なった。この工程の終点は排気炭酸ガス濃度が初期の12%から40分後に0.1%になったことで判定した。スケール質は大部分が反応炉から剥離し、塊状のまま反応炉下部の回収器により排出された。
その後、空気を窒素ガスに換えて炉内に導入し、炉内の酸素濃度が0.01%以下になったところで窒素ガスの導入を停止し、再び、アセチレン供給から始まる同様の操作を繰り返し連続的に炭素繊維構造体を製造した。
なお、2サイクル目以降の製造工程において得られた炭素繊維構造体もその量は、1サイクル目と有意差はなく、かついずれのサイクルにおいてもその純度は高く、炭素繊維以外の炭素質物質の混入割合は、0.5%以下であった。従って本発明による気相法炭素繊維の製造方法ではスケール除去時間が著しく短縮され、かつその際の温度が低いため炭素繊維の製造効率と純度が比較的に向上した。
このようにして得られた炭素繊維構造体をトルエン中に分散して電子顕微鏡用試料調製後に観察したSEMおよびTEM写真を図1、2に示す。
(実施例2)
実施例1の手順に従い6H (0001)のSiC薄膜を反応炉内壁に形成させ、そこへArFエキシマーレーザーを40mWのピーク強度にて2時間かけて内壁全面を照射、掃引した。トルエンを用い、反応炉内温度を160℃とすること以外は実施例1の手順に従いアモルファスカーボン層を堆積させた。この堆積物のX線回折から求めたアモルファスカーボンの割合は94質量%であった。
次いで反応炉からの排ガスの一部を循環ガスとして使用し、この循環ガス中に含まれるメタン等の炭素化合物を、新鮮なトルエンと共に、炭素源として使用して、CVD法により微細炭素繊維を合成した。合成は、触媒としてフェロセン及びチオフェンの混合物を使用し、水素ガスの還元雰囲気で行った。新鮮な原料ガスとして、トルエン、触媒を水素ガスとともに予熱炉にて380℃に加熱した。一方、反応炉の下端より取り出された排ガスの一部を循環ガスとし、その温度を380℃に調整した上で、前記した新鮮な原料ガスの供給路途中にて混合して、反応炉に供給した。
なお、使用した循環ガスにおける組成比は、体積基準のモル比でCH 7.5%、C 0.3%、C 0.7%、C 0.1%、CO 0.3%、N 3.5%、H 87.6%であり、新鮮な原料ガスとの混合によって、反応炉へ供給される原料ガス中におけるメタンとベンゼンとの混合モル比CH/C(なお、新鮮な原料ガス中のトルエンは予熱炉での加熱によって、CH:C=1:1に100%分解したものとして考慮した。)が、3.44となるように、混合流量を調整された。
なお、最終的な原料ガス中には、混合される循環ガス中に含まれていた、C、CおよびCOも炭素化合物として当然に含まれているが、これらの成分は、いずれもごく微量であり、実質的に炭素源としては無視できるものであった。
そして、実施例1と同様に、反応炉において、1250℃で熱分解して、炭素繊維構造体を得た。
なお、この炭素繊維構造体を製造する際に用いられた反応炉の構成は、円筒状の衝突部3がないこと以外は、図3に示す構成と同様のものであり、反応炉1の内壁面全面は、合成例1のものと同様に(0001)の方位面を有する6H型SiCを用いた。また反応炉への原料ガス導入速度は、実施例1と同様に、1850NL/min、圧力は1.03atmとした。
このような反応炉を用い、約10時間の連続運転を行い、反応炉を落下してくる生成炭素繊維構造体を回収したところ約69kgの炭素繊維構造体を得た。
その後、炉内温度を維持したまま原料混合ガスの反応炉内への供給を停止し、反応炉内雰囲気を、窒素ガスを導入して置換し、炉内の水素ガス濃度が0.01%以下となったところで窒素ガスを空気に切換え、炉内に送入して、炉内の空焼きによるスケール除去を800℃にて行なった。この工程の終点は排気炭酸ガス濃度が初期の12%から、25分後に0.1%になったことで判定した。スケール質は大部分が反応炉から剥離し、塊状のまま反応炉下部の回収器により排出された。
その後、空気を窒素ガスに換えて炉内に導入し、炉内の酸素濃度が0.01%以下になったところで窒素ガスの導入を停止し、再び、トルエン供給から始まる同様の操作を繰り返し連続的に炭素繊維構造体を製造した。
なお、2サイクル目以降の製造工程において得られた炭素繊維構造体もその量は、1サイクル目と有意差はなく、かついずれのサイクルにおいてもその純度は高く、炭素繊維以外の炭素質物質の混入割合は、0.4質量%以下であった。従って本発明による気相法炭素繊維の製造方法ではスケール除去時間が著しく短縮され、かつその際の温度が低いため炭素繊維の製造効率と純度が比較的に向上した。
比較例1
6H (0001)のSiCによる反応炉内壁のコーティング、およびアモルファスカーボン形成をしないこと以外は、実施例1と同じ方法に従い炭素繊維構造体を製造した。炭酸ガス濃度が0.01%以下になるまで要した空焼き工程時間は、12時間と長時間であり、炭素繊維構造体製造の効率を著しく低下させた。
さらに炭素繊維の繰り返し製造において、二回目以降からは炭素繊維以外の炭素質物質の混入割合が約6%であり、純度を著しく低下させた。
本発明の実施例1において得られた炭素繊維構造体のSEM写真である。 本発明の実施例1において得られた炭素繊維構造体のTEM写真である。 本発明の実施例1の炭素繊維構の製造に用いた反応炉の概略構成を示す図面である。
符号の説明
1 反応炉
2 導入ノズル
4 原料ガス供給口
5 アモルファスカーボン形成促進層
a 導入ノズルの内径
b 反応炉の内径
c 衝突部の内径
d 反応炉の上端から原料混合ガス導入口までの距離
e 原料混合ガス導入口から衝突部の下端までの距離
f 原料混合ガス導入口から反応炉の下端までの距離

Claims (12)

  1. 有機化合物の熱分解による気相法炭素繊維の製造方法であって、反応炉内の少なくとも炭素繊維成長区間の壁面(以下、反応炉の内壁面という)に、アモルファスカーボンを選択的に形成させた後、炭素繊維の製造を行うことを特徴とする気相法炭素繊維の製造方法。
  2. 反応炉の内壁面材(以下、反応炉の内壁面材という)が、反応炉の内壁面にアモルファスカーボンを選択的に形成させる層(以下、アモルファスカーボン形成促進層という)を有するものである請求項1に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
  3. アモルファスカーボン形成促進層が、(0001)の結晶方位面を有する6H型SiCを含有するものである請求項2に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
  4. アモルファスカーボン形成促進層中の(0001)の結晶方位面を有する6H型SiCの含有量が30〜100質量%である請求項3に記載の気相法炭素繊維の製造方法。
  5. 所定時間経過毎に、原料ガスの供給を停止して炭素繊維製造工程を停止させ、反応炉内に800〜1200℃にて酸素含有ガスを導入し、反応炉内壁面に付着した、アモルファスカーボンを含む炭素質スケール(以下、炭素質スケールという)を燃焼し、剥離除去する請求項1〜4のいずれか1つに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
  6. 燃焼した炭素質スケールを剥離除去する際に、機械的振動を与える請求項5記載の気相法炭素繊維の製造方法。
  7. 反応炉が、円柱軸が垂直に配置された円柱形である請求項1〜6のいずれか1つに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
  8. 炭素繊維が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体である請求項1〜7のいずれか1つに記載の気相法炭素繊維の製造方法。
  9. 有機化合物の熱分解による気相法炭素繊維の製造に用いられる反応炉であって、当該反応炉内の少なくとも炭素繊維成長区間の壁面(以下、反応炉の内壁面という)が、アモルファスカーボンを選択的に形成させる層(以下、アモルファスカーボン形成促進層という)を有することを特徴とする気相法炭素繊維製造用反応炉。
  10. アモルファスカーボン形成促進層が(0001)の結晶方位面を有する6H型SiCを含有する請求項9に記載の反応炉。
  11. アモルファスカーボン形成促進層中の(0001)の結晶方位面を有する6H型SiCの含有量が30〜100質量%である請求項10に記載の反応炉。
  12. 反応炉の円柱軸が垂直に配置された円柱形である請求項9〜11のいずれか1つに記載の反応炉。
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