まず、本発明に関する実験について説明する。図1に示すように、ガラス基板1上にアルミニウムを蒸着することによって、p[μm]のピッチで移動方向に配列された複数の電極21、22、23・・・からなる電極バターン2を形成し、その上に保護層3として厚み約3[μm]、体積抵抗率約1010[Ω・cm]の樹脂コートを施したものを形成してトナー担持体としての基板4を構成し、この基板4の上には、帯電させたトナー層5を形成する。
このトナー層5は、基板4に対して図示しない2成分現像器によってベタ画像を薄層に現像することによって形成した。トナーはポリエステル系の粒径約6[μm]のものを使い、基板4上に薄層に形成された状態でのトナーの帯電量は約−22[μC/g]であった。この状態のトナー層5に対して、図2に示すように、奇数番目の電極21、23・・・の集合体である奇数番目電極群に交流電源6から交流電圧を印加する一方で、偶数番目の電極22・・・の集合体である偶数番目電極群に前記交流電圧とは逆位相の交流電圧を印加すると、トナー5は奇数番目電極群21、23・・・と偶数番目電極群22・・・を往復するような運動を行う。この現象を以下、フレア(あるいはフレア現象)と呼ぶ。また、フレア現象を引き起こしている状態をフレア状態という。
電極21、22、23・・・のピッチがそれぞれ50、100、200及び400[μm]である4種類の基板4を用いて、交流電源6から電極21、22、23・・・間に印加する交流電圧のプラス側ピーク値とマイナス側ピーク値との差分の絶対値であるVmax[V]を何点かに振りながら(変えながら)、フレアの活性度を高速度カメラで観察したところ、図3に示すような結果を得た。因みに、電極21、22、23・・・の幅と、電極21、22、23・・・の隣同士の距離は、電極21、22、23・・・のピッチの1/2となるようにした。
ここで、フレアの活性度とは、基板4の表面に張り付いて動かないトナーの様子を観察することで約5段階の官能評価により求められたものである。図3から、Vmaxやpの値に関わらず、Vmax[V]/p[μm]によってフレアの活性度がほぼ一義的に得られることが確認できる。そして、Vmax[V]/p[μm]>1の時にフレアが活性化し始めて、Vmax[V]/p[μm]>3ではフレアが完全に活性化していることが分かる。
また、基板4表面の電気的特性の影響を調べるために、基板4の表層3の体積抵抗率を何点か振って(変えて)、同様にフレア活性度を確認した。表層3に用いた材料はシリコーン系樹脂であり、そこに分散されるカーボン微粒子の量を変更することにより、107〜1014[Ω・cm]の体積抵抗率の保護層(厚みは約5[μm])3を形成した。代表的なものとして、電極21、22、23・・・のピッチが50[μm]のものを使って、上述と同様の実験をしたところ、図4に示す結果を得た。
この結果から、表層3の体積抵抗率が109〜1012[Ω・cm]の範囲にあることが適正であることが確認できる。これは、体積抵抗率が非常に高い表層3を用いると、飛翔を繰り返すトナーと表層3との摩擦によって基板4の表面が帯電したままになってしまう。そして、この帯電により、基板の表面電位が変動して、現像に寄与するバイアスを不安定にしてしまう。また、逆にあまりに表層3の導電性が高いと、電極21、22、23・・・間で電荷のリーク(ショート)が発生してしまうために、効率的なバイアス効果が得られなくなるからである。表層3は、基板4の表面に蓄積した電荷が電極群21、22、23・・・にうまく逃げられるように、適当な抵抗率(体積抵抗率で109〜1012[Ω・cm])となっている必要がある。なお、この体積抵抗率の最適範囲は、図2に示す装置を具備する実験設備を用いた実験によって得られたものである。図2に示す装置に代えて、図11に示す現像ローラ(詳細は後述する)を備える現像装置の場合には、最適範囲が前述のものと変わってくることもある。このような場合には、その現像装置における体積抵抗率の最適範囲を実験によって調べた上で、適切な体積抵抗率に調整することが望ましい。
本発明者らは、基板4の表面の摩擦帯電特性の影響を調べるために、表層3をシリコーン系樹脂及びフッ素系樹脂の2種類として上記と同様なフレア活性度観察を行った。表層3は、カーボン微粒子を微量分散させることにより、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂のいずれのコート層としても体積抵抗率を1011〜1012[Ω・cm]とした。交流電源6から電極21、22、23・・・に交番バイアスを印加してフレア活性度を観察すると、表層3がシリコーン系樹脂の場合は長時間フレア状態を維持していたが、表層3がフッ素系樹脂の場合は直ぐにフレアが消滅しトナーが基板4に張り付いたままとなってしまった。
上記観察後に、基板4上のトナーの帯電量を測定したところ、表層3がシリコーン系樹脂の場合には基板4上のトナーの帯電量は初期に比べて若干の低下がみられただけであったが、表層3がフッ素系樹脂の場合には基板4上のトナーの帯電量はトナーの電荷がほとんど無くなっていた。試しに、帯電していないトナーをそれぞれの表層3の表面に擦り付けてみたところ、表層3がシリコーン系樹脂の場合にはトナーが正規の極性の摩擦電荷を得られたのに対し、表層3がフッ素系樹脂の場合にはほとんど摩擦電荷を得られないばかりか若干逆の極性となっていた。つまり、フレア現象は、トナーと基板4の表面とが無数回衝突するプロセスであるため、表層3の材料はトナーの電荷を奪ってしまうものではなく、トナーに正規の電荷を与えられる材質であることが好ましいことが理解できる。これは材料の摩擦帯電系列に習うものであり、表層3の材料としては、例えばガラス系のものや、2成分現像剤のキャリアコートに使用されている材料を用いることが好ましい。
次に、図5に示すような系での実験結果について説明する。基板Aはアルミニウムからなる基板7の上に厚み約20[μm]の樹脂層(これは感光体を想定したもの)8を形成することで構成する。基板7は接地し、樹脂層8にはベタ画像相当の0.4[mg/cm2]のトナー層9を形成する。このトナー層9は図示しない2成分現像器によって樹脂層8に対してベタ現像をすることで形成したものである。
この基板Aに間隔d[μm]で対向するように基板Bを設置する。この基板Bは上記基板4と同様に構成され、表層3は以降の作業によってここに転移するトナーの量を光学的な測定装置(反射光濃度測定器)によって計測しやすいように白色のコート層とする。図3から、Vmax[V]/p[μm]=4であればいずれの条件でも安定なフレアを形成できるので、Vmax[V]/p[μm]=4となる4種の条件を用いて、基板Bへのトナー転移量の現像ギャップ(d[μm])依存性を調べると、図6に示すような結果が得られた。図6のグラフの縦軸は、基板Bにおける表層3の光学濃度増加量を示しており、表層3にトナーが全く付着していない状態では、光学濃度増加量が0となる。同グラフにおいて、光学濃度増加量が0よりも大きくなっている結果が含まれているが、これは基板Aの樹脂層8に付着していたトナー層9における一部のトナーが基板B上に形成される電界の影響を受けてトナー層9から基板Bの表層3に転移したためである。このような転移が発生すると、重ね合わせ現像において、先行する現像時に潜像担持体(例えば感光体)上に形成されたトナー層のトナーが、後続の現像時に後続色の現像装置内に転移して混色を引き起こしてしまう。また、先行する現像で得られた潜像担持体上の画像を乱してしまう。かかる混色や画像の乱れを回避し得るのは、同グラフにおいて光学濃度増加量が0となっている条件である。そして、同グラフにより、かかる条件は、ピッチ間距離pが現像ギャップdより小さいこと、すなわちp<dであることがわかる。
これは、トナー担持体(基板B)上に形成される電界カーテンの影響が、潜像担持体(基板A)上の静電潜像電場やトナー像に対して及ばない条件であると考えることができる。このような条件のもとでは、例えば1200dpiや2400dpiの孤立ドットをスキャベンジなしで正確に現像できるばかりでなく、上述したように、潜像担持体(基板A)上でのトナー像重ねのような作像プロセスを利用する際にも、先に潜像担持体上に形成されているトナー像を乱すこと無く、且つ、現像装置内のトナーの混色を招くことも無く、非常に高画質なトナー像重ねを実現することができる。
ところで、従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像装置には、2成分現像方式や1成分現像方式などがある。2成分現像方式は、高速現像に非常に適しており、現在の中速や高速の画像形成装置の主流方式である。この2成分現像方式では、高画質を狙うためには、潜像担持体上の静電潜像との接触部における現像剤の状態を非常に緻密にする必要がある。そのために、現在はキャリア粒子の小径化が進んでおり、商用レベルでは30μm程度のキャリアも使われ始めている。
1成分現像方式は、機構が小型軽量になることから、現在の低速の画像形成装置の主流方式である。この1成分現像方式では、現像ローラ等の現像剤担持体の表面に担持したトナーをホッピングさせずに現像に用いる。具体的には、現像ローラ上にトナー薄層を形成するために、ブレードやローラなどのトナー規制部材を現像ローラ上のトナーに当接させ、そのときに現像ローラやトナー規制部材とトナーとの摩擦によってトナーは帯電される。現像ローラ上に薄層に形成された帯電トナー層は、現像部に運ばれて潜像担持体上の静電潜像を現像する。ここでの1成分現像方式には大きく分けて接触型と非接触型があり、前者は現像ローラと潜像担持体とが接触するものであり、後者は現像ローラと潜像担持体とが非接触であるものである。
上記2成分現像方式と1成分現像方式との欠点を補い合うべく、特開平3−100575号公報に記載のものなどのように2成分現像方式と1成分現像方式とをハイブリッド化したハイブリッド化方式も幾つか提案されている。
高解像度の微小均一ドットを現像する方法としては、例えば特開平3−113474号公報に記載の方式がある。この方式は、上記ハイブリッド化方式に対して、現像部に高周波バイアスを印加したワイヤを設置することにより、現像部でのトナークラウド化を行い、高解像度のドット現像性を実現するものである。
また、特開平3−21967号公報(特許文献1)には、最も効率良く、且つ安定なトナークラウドを形成するために、回転ローラ上に電界カーテンを形成する方法が提案されている。
また、進行波電界による電界カーテンで現像剤を搬送する現像装置が特開2003−15419号公報に記載されている。また、現像ローラの周面上にほぼ1層のキャリアをほぼ均等に吸着する複数の磁極を有する現像装置が特開平9−269661号公報に記載されている。また、特開2003−84560号公報には、非磁性トナーを担持する現像剤担持体表面に、絶縁部を介して周期的な導電性電極パターンを設け、該電極に所定のバイアス電位を与えることで現像剤担持体表面近傍に電界勾配を発生せしめ、前記現像剤担持体上に前記非磁性トナーを付着搬送させる現像装置が記載されている。
従来の2成分現像方式では、高画質化に対する要求が益々高まっており、必要とされる画素のドットサイズ自身が現状のキャリア粒子径と同等もしくはそれよりも小さい必要があるために、孤立ドットの再現性という意味では更にキャリア粒子を小さくする必要がある。しかし、キャリア径を小さくしていくと、キャリア粒子の透磁率が低下するために、現像ローラからのキャリア離脱が生じやすくなり、離脱したキャリア粒子が潜像担持体に付着した場合には、キャリア付着そのものによる画像欠陥が生じるだけでなく、それを起点として潜像担持体に傷をつけてしまうなどいろいろな副作用が生じる。
このキャリア離脱を防止するために、材料面からキャリア粒子の透磁率を上げる試みや、現像ローラに内包されるマグネットの磁力を強くする試みが進められているが、低コスト化及び高画質化との兼ね合いの中で開発は困難を極めている。また、小型化の煽りを受けて、現像ローラは益々小径化の一途をたどっていることからも、キャリア離脱を完全に抑止できるような強力な磁場構成を有した現像ローラ設計が困難となっている。
そもそも2成分現像方式は、磁気ブラシと呼ばれる2成分現像剤の穂を静電潜像に対して擦り付けるようにしてトナー像を形成するプロセスであるために、どうしても穂の不均一性によって、孤立ドットの現像性にムラが生じやすい。現像ローラと潜像担持体との間に交番電界を形成することで画質の向上は可能であるが、現像剤の穂のムラといった根本的な画像ムラを完全に消滅させることは困難である。
また、潜像担持体上の現像されたトナー像を転写する工程や、転写後に潜像担持体上に残存するトナーをクリーニングする工程において、転写効率やクリーニング効率を向上させるためには、潜像担持体とトナーとの非静電的付着力を極力下げる必要がある。潜像担持体とトナーとの非静電的付着力を下げる方法としては、潜像担持体表面の摩擦係数を下げることが効果的であることが知られているが、この場合、2成分現像剤の穂が滑らかに現像部をすり抜けてしまうために現像効率やドット再現性が非常に悪くなってしまう。
1成分現像方式では、トナー規制部材により薄層化された現像ローラ上のトナー層は、現像ローラ上に十分に圧接されてしまっているために、現像部での電場に対するトナー応答性が非常に悪い。よって、通常は高画質を得るために、現像ローラと潜像担持体との間に強力な交番電場を形成するのが主流であるが、この交番電場の形成をもってしても静電潜像に対して一定量のトナーを安定して現像することは困難であり、高解像度の微小ドットを均一に現像することは難しい。また、この1成分現像方式は、現像ローラへのトナー薄層形成時にトナーに対して非常に大きなストレスをかけてしまうため、現像装置内を循環するトナーの劣化が非常に早い。トナーの劣化に連れて、現像ローラへのトナー薄層形成の工程でもムラなどが生じやすくなり、1成分現像方式は一般には高速や高耐久の画像形成装置としては向かない。
ハイブリッド化方式(特開平3−100575号公報)では、現像装置そのものの大きさや部品点数は増えてしまうものの、幾つかの課題は克服される。しかし、現像部においてはやはり1成分現像方式と同様の問題があり、つまり高解像度の微小均一ドットを現像することには難が残る。
特開平3−113474号公報に記載の方式は、高安定且つ高画質な現像が実現できるものと考えられるが、現像装置の構成が複雑になる。
また、特開平3−21967号公報(特許文献1)に記載の方法は、小型且つ高画質の現像を得るには非常に優れたものと解釈できるが、本発明者らが鋭意研究した結果、理想的な高画質を得るためには、形成する電界カーテンや現像などの条件を限定しなくてはならないことが発見された。すなわち、適正な条件から外れた条件で作像を行ってしまうと、全く効果が得られないばかりか、返って粗悪な画質を提供してしまうことになる。また、この方式はトナー担持体上でホッピングするトナーをトナー担持体の表面移動によって現像領域まで搬送するものであるが、トナー担持体を表面移動させずに、ホッピングよる移動のみによってトナーを現像領域まで搬送する特開2002−341656号公報に記載の方式でも、同様のことが言える。
また、潜像担持体に第一のトナー像が形成され、その上に順次に第二のトナー像、第三のトナー像を形成していくような作像プロセスにおいては、先に潜像担持体上に形成されているトナー像を乱さないような現像方式でなくてはいけない。非接触一成分現像方式や、3−113474号公報に記載のトナークラウド現像方式を用いることで、潜像担持体上に順次に各色トナーを形成していくことは可能であるが、いずれの方式も、潜像担持体と現像ローラとの間には交番電界が形成されてしまうために、潜像担持体上に先に形成されたトナー像からトナーの一部が引き剥がされて現像装置に入り込んでしまう。これによって、潜像担持体上の画像が乱されてしまうばかりでなく、現像装置内のトナーが混色するという問題も生じてしまう。これらは高画質画像を得るには致命的であり、この問題を解決する方法としては潜像担持体と現像ローラとの間には交番電場を形成しない方法で、クラウド現像を実現する必要がある。
このようなクラウド現像を実現できる方法としては、先に挙げた特開平3−21967号公報(特許文献1)や特開2002−341656号公報に記載の方式が有効と考えられるが、これらに関しては先にも述べた通り、適当な条件の元で利用しないと全く効果が無い。具体的には、条件が不適切であると、トナーをクラウド化させることができなくなる。更には、トナーをクラウド化させたとしても、重ね合わせ現像においては、先行する現像で得られた潜像担持体上のトナー層中のトナーを後続色の現像装置内に転移させ、画像の乱れや混色を引き起こしてしまう。
そこで、本実施形態に係る画像形成装置においては、上述した実験の結果に鑑みて、Vmax[V]/p[μm]>1という条件を具備させている。かかる構成では、トナーを確実にクラウド化せしめることができる。よって、本実施形態によれば、従来技術よりも高画質を実現でき、且つより小型にできる。
なお、特開2002−341656号公報に記載の方式などの様に、トナー担持体の機械的な駆動を無くし、3相以上の交互電場によってトナーを静電的に搬送し現像する方法においても、上記条件を具備させることで、トナーを確実にクラウド化せしめることが可能であると考えられる。しかしながら、同公報に記載の方法によれば、何かのきっかけで静電搬送できなくなったトナーを起点として、搬送基板上にトナーが堆積してしまい、結果として機能しなくなる問題を抱えてしまう。このような問題を解決すべく、例えば特開2004−286837号公報に記載の方式のように固定搬送基板とその表面を移動するトナー担持体の組合せのような構造も提案されているが、機構が非常に複雑になってしまう。これに対し、本画像形成装置のように、トナーをホッピングによって電極間で往復移動させながら、トナー担持体の表面移動によって現像領域に搬送する方式では、前述のようなトナーの堆積や機構の複雑化を回避することができる。
図7は、本発明の実施形態に係る画像形成装置におけるトナー担持体の代表例を示すものである。このトナー担持体31は、回転ローラ形状に形成したもので、移動方向にp[μm]のピッチで配列されて空間周期的に配置された複数の電極41、42、43・・・からなる電極バターンにおける奇数番目の電極の集合体である奇数番目電極群を束ねた電極軸40Aと、偶数番目の電極の集合体である偶数番目電極群を束ねた電極軸40Bを回転軸として回転することができる。それぞれの電極軸40A、40Bには、図示しない電極ブラシ等によって交流電源からバイアス電位として交流電圧が印加される。この交流電圧は、図15に示されるように、上述の奇数番目電極群を束ねた電極軸(40A)に印加される矩形波状のA相パルス電圧と、偶数番目電極群を束ねた電極軸(40B)に印加される矩形波状のB相パルス電圧とからなる。これらA相パルス電圧、B相パルス電圧は、図示のように互いに逆位相になっており、単位時間あたりにおける平均電位は互いに同じである。なお、図16に示すように、一方の電極軸に周波数fの矩形波状のパルス電圧を印加する一方で、もう一方の電極軸には、前記パルス電圧の平均電位となる直流電圧を印加しても、逆位相のパルス電圧を採用する場合と同様に、フレア現象を生起せしめることが可能である。
上記トナー担持体31は、図8(a)に示すように、絶縁体であるアクリル樹脂の円筒51に軸穴52を設け、図8(b)に示すようにステンレス製の電極軸40A、40Bを円筒51の軸穴52に圧入して電極軸40A、40Bを奇数番目電極群41、43・・・、偶数番目電極群42・・・にそれぞれ接続する。次に、図9(a)〜(e)に示す各工程でパターン電極を形成する。図9はトナー担持ローラ31の表面を回転軸に沿った方向に見た図である。図9(a)に示す工程では、図8に示す工程よって得られたローラ51の表面を外周旋削によって平滑に仕上げる。図9(b)に示す工程では、溝のピッチが100[μm]、溝幅が50[μm]となるように溝53の切削を行う。図9(c)に示す工程では、溝切削を行ったローラ51に無電解ニッケル54のメッキを施し、図9(d)に示す工程では、無電解ニッケル54のメッキを施したローラ31の外周を旋削して不要な導体膜を取り除く。この時点で電極41、42、43・・・が溝53の部分に互いに絶縁して形成される。その後、ローラ51にシリコーン系樹脂をコーティングすることでローラ51の表面を平滑にし、同時に表面保護層(厚み約5[μm]、体積抵抗率約1010[Ω・cm])55を形成してトナー担持ローラ31を製作した。図10は、トナー担持ローラ31を平面状に展開した状態を示す。
このトナー担持ローラ31は、上記基板4と同様に、保護層55上に薄いトナー層が形成される。そして、電極軸40A、40Bに対して図15に示した交流電圧がバイアス電位として図示しない交流電源から電極ブラシ等を経て印加されると、トナーは奇数番目電極群41、43・・・と偶数番目電極群42・・・を往復するような運動(フレア)を行う。交流電源から電極41、42、43・・・間に印加する交流電圧のプラス側ピーク値とマイナス側ピーク値との差分の絶対値をVmax[V]とし、Vmax[V]/p[μm]>1の時にフレアが活性化し始めて、Vmax[V]/p[μm]>3ではフレアが完全に活性化している。また、トナー担持体31は、上記基板4と同様に、表層55の体積抵抗率が109〜1012[Ω・cm]の範囲にあることが適正であり、表層55がシリコーン系樹脂である。表層55の材料は、上述のように、トナーとの摩擦でトナーに正規の電荷を与えられる材質であることが好ましく、例えばガラス系のものや、2成分現像剤のキャリアコートに使用されている材料を用いることが好ましい。pは現像ギャップdより小さいこと、すなわちp<dに設定される。
なお、先に示した図7においては、各電極をトナー担持ローラ31の端面まで延在させて、その端面において電極軸40A又は40Bに接続した例を示している。これに対し、図10に示した例では、トナー担持ローラ31の軸線方向の両端部に、金属製のフランジ状の電極軸40A及び40Bを設け、これらフランジ状の電極軸40A及び40Bと各電極の長手方向の一端とを接続した例を示している。
図11は、トナーと磁性キャリアとを含有する2成分現像剤を用いてホッピング方式の現像を行う画像形成装置を示す概略構成図である。この画像形成装置は上記トナー担持ローラ31を利用した現像装置を有するものである。トナー担持ローラ31に対しては、通常の2成分現像器56により2成分現像剤の穂が当接されている。具体的には、粒径50[μm]の磁性キャリア粉と粒径約6[μm]のポリエステルトナーを重量比で7〜8[wt%]混合させた2成分現像剤を、2成分現像器56の永久磁石を内包するマグネットスリーブ57によってトナー担持ローラ31まで搬送し、そこでトナーの一部がマグネットスリーブ57とトナー担持ローラ31との間に印加される直流バイアス電位によってトナー担持ローラ31に転移する。トナー担持ローラ31に転移したトナーは、トナー担持体31上でフレアを形成しながら、トナー担持体31が図示しない駆動部により回転駆動されることで潜像担持体58との対向部に搬送され、トナー担持ローラ31表面の平均電位と潜像担持体58電位との差によって潜像担持体58上の静電潜像に付着することで該静電潜像を現像してトナー像を形成する。なお、電極軸40A、40B間には交流電源59から電極ブラシ等によってバイアス電位として交流電圧が印加され、奇数番目電極群41、43・・・と偶数番目電極群42・・・との間に時間周期的な電位差が形成される。
現像に寄与しなかった不要なトナーは現像部から再びマグネットスリーブ57に戻ってくる。フレアが形成されているので、トナー担持ローラ31に対するトナーの付着力は非常に低く、トナー担持ローラ31によって現像部から戻ってきたトナーは、マグネットスリーブ57の回転に追随した2成分現像剤の穂によって容易に掻き取られたり馴らされたりする。これを繰り返すことによって、トナー担持ローラ31上には常にほぼ一定量のトナーフレアが形成されることになる。2成分現像器56は、容器60内の2成分現像剤63を攪拌しながら搬送して循環させ、マグネットスリーブ57がその2成分現像剤の一部をトナー担持ローラ31まで搬送すると共に現像部から現像に寄与しなかった不要なトナーを戻す。
潜像担持体58としては、厚み13[μm]の有機感光体を使用し、1200dpiのレーザ書き込み系を利用して潜像を形成する場合について以下に説明する。感光体58は、図示しない駆動部により回転駆動されて帯電装置により一様に帯電され、露光手段としてのレーザ書き込み系により露光されて静電潜像が形成される。この場合、感光体58の帯電電位は−300〜−500[V]とし、ベタ部での書き込み電位が0〜−50[V]となるような条件で静電潜像を形成する。
この静電潜像は、トナー担持体31上でフレアを形成するトナーにより現像されてトナー像となる。この時、帯電量が約−22[μC/g]で粒径が6[μm]であるトナーを使って、地汚れが無く、ベタ部の埋まりも良く、且つ1200dpiの1ドットが再現できるように条件を設定したところ、トナー担持体31と感光体58とのギャップは約500[μm]、トナー担持体31の奇数番目電極群と偶数番目電極群には、−400[V]と0[V]のそれぞれをピークに持つ各瞬間瞬間における平均電位が−200[V]の交流バイアスを、5[kHz]の周波数で交流電源59から印加することで実現した(奇数番目電極群と偶数番目電極群で交流バイアスの位相を互いに逆位相とした)。
トナー担持体31上のトナー像は給紙装置から給送されてきた記録紙等の記録媒体へ転写手段により転写され、その記録媒体は定着装置によりトナー像が定着されて外部へ排出される。
トナー担持ローラ31上に過剰なトナーが乗っていると、トナーの電荷によって電界カーテンがシールドされてしまいフレアが形成できなくなるので、トナー担持ローラ31上に乗っている単位面積当りのトナー量は0.2[mg/cm2]となるように、マグネットスリーブ57とトナー担持ローラ31との間には電源から約200[V]の直流バイアスが印加されている。ちなみに、フレアによるトナーの拡散効果があるので、マグネットスリーブ57からトナー担持ローラ31へのトナー転移には多少のムラがあっても問題なく、マグネットスリーブ57とトナー担持ローラ31との間には上記直流バイアスにACバイアスを重畳するような工夫は特に必要なく、また、2成分現像剤の穂を厳格に均一にするような工夫も特に必要ない。
一方、感光体58上のベタ画像として必要とされるトナー量が0.4[mg/cm2]であることから、現像部でのトナー枯渇が生じないように、トナー担持ローラ31の移動速度は、感光体58の移動速度の2倍以上にする必要があり、ここでは感光体58の移動速度の2.5倍としている。トナー担持ローラ31の移動方向と感光体58の移動方向は、図11に示すように同じ向きでも良いが、逆向きでも良い。マグネットスリーブ57とトナー担持ローラ31の移動方向は、戻りトナーの掻き取り効果を得るために、図11のように逆向きであるのが好ましい。
以上の系によって、感光体58の線速300[mm/s]の元で、ベタ部の埋まり性、1200dpiドット再現性、に優れた地汚れの無い高画質現像を実現できることが確認された。
図12は、2成分現像剤を用いてホッピング方式の現像を行う画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。この画像形成装置の2成分現像器56は、図11の画像形成装置に具備されていたマグネットスリーブ57を有しておらず、トナー担持ローラ31に対するトナー供給を2成分現像剤のカスケード現像現象によって行う。現像器56は単純なカスケードを利用してトナー担持ローラ31に薄いトナー層を形成するため、トナー担持ローラ31へのトナー転移率が図11に示す実施形態に比べて低下するが、その分トナー担持ローラ31の回転速度を高くすることにより、感光体58への現像速度に対応することができる。マグネットスリーブを具備していない2成分現像器56及びトナー担持ローラ31を備える現像装置は、実質的に従来の2成分現像器と同サイズとなるため、図11に示した装置よりも小型である。しかも、図11に示した装置と同様に、高画質の作像エンジンを構成することが可能である。
図13は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。この画像形成装置は、2成分現像剤を用いる2成分現像器(56)の代りに、トナーのみからなる1成分現像剤を用いる現像器64を採用している点が、図11や図12に示した画像形成装置と異なっている。現像器64はトナー担持ローラ31に対してトナーを転位させてトナー担持ローラ31上に薄いトナー層を形成する。この現像器64は、容器65内のトナー66を循環パドル67で攪拌して循環させながらトナー担持ローラ31に供給する。回転駆動によって表面を無端移動させるトナー担持体としてのトナー担持ローラ31は、供給されたトナー66を表面に担持した後、規制部材であり且つ可撓性部材であるメータリングブレード68との当接位置に進入させる。そして、この当接位置は、トナー担持ローラ31上でのトナー層の厚みを規制するトナー厚み規制位置となっており、ここに進入したトナー層は厚みが規制されることで、均一な厚みとなる。これにより、トナー担持ローラ31の表面上には、一定厚に規制された薄いトナー層が形成される。
メータリングブレード68としては、薄板やフィルムなどの可撓性部材であって且つ厚み方向の弾性変形を生じない部材からなるものが用いられている。そして、このメータリングブレード68は、図示しないブラケットなどの支持手段によって片持ち支持されており、自由端側をトナー担持ローラ31に当接させている。かかる構成では、トナー担持ローラ31の表面移動方向と直交する方向(図紙面に直交する方向)において、メータリングブレード68の支持端の全領域を支持手段によって支持している。このため、軸受けによって両端の領域しか支持することができないローラに比べて、中央の撓みを抑えることができる。しかも、メータリングブレード68は、厚み方向の弾性変形を生じない部材からなるので、厚み方向の弾性変形によるトナーの厚みムラを回避する。これらの結果、発泡ウレタン製のローラを用いる構成で生じていた、ローラの厚み方向の弾性変形に起因するトナーの厚みムラと、ローラの軸線方向の撓みに起因するトナーの厚みムラとの両方を解消することができる。よって、従来に比べて、トナー担持ローラ31の表面上におけるトナーの厚みムラによる現像濃度ムラを抑えることができる。
本実施形態に係る画像形成装置においては、トナーとして、母材樹脂(トナーの主成分)がポリエステル又はスチレンアクリルからなり、且つ正規帯電極性がマイナス極性(負極性)であるものを用いている。そして、感光体58の一様帯電部(地肌部)と潜像部とを共にトナーの正規帯電極性と同極性(本例ではマイナス極性)にし、且つ地肌部よりも電位を減衰せしめた潜像部に対してトナーを選択的に付着させるいわゆる反転現像を行うようになっている。
規制部材たるメータリングブレード68としては、トナー担持体たるトナー担持ローラ31の表面上のトナーとの摺擦に伴ってトナーの正規帯電極性側(本例ではマイナス側)への摩擦帯電を促す材料からなるもの、を用いている。即ち、トナーの方がメータリングブレード68よりも摩擦帯電系列上でマイナス側に位置しているのである。このような関係を実現し得るメータリングブレード68の材料としては、シリコーン、ナイロン、メラミン樹脂、アクリル樹脂、PVA、ウレタンなどの有機材料を例示することができる。また、第四級アンモニウム塩やニグシロン系染料などでもよい。更には、これまでに例示した材料の2つ以上を混合した材料でもよい。
このようなメータリングブレード68を具備する本画像形成装置においては、トナー担持ローラ31の表面上のトナーとの摺擦に伴ってトナーの正規帯電極性側への摩擦帯電を促す。これにより、帯電不良のトナーを現像領域に搬送してしまうことによる画質の劣化を抑えることができる。
なお、トナー担持ローラ31としては、先に図1に示したように、保護層3を具備するものを用いている。そして、トナー担持ローラ31の表面上でホッピングするトナーと摺擦するこの保護層3についても、トナーとの摺擦に伴ってトナーの正規帯電極性側への摩擦帯電を促す材料からなるもの、を用いている。かかる構成では、保護層3との摺擦に伴うトナーの正規帯電極性とは逆極性側への摩擦帯電を回避する。これにより、トナー担持ローラ31の表面上でのホッピングに伴うトナーの帯電量(正規帯電極性)の低下を抑えることで、トナーのホッピング不良による現像不良の発生を抑えることができる。
また、トナーとして、正規帯電極性がプラス極性(正極性)であるものを用いてもよい。この場合には、メータリングブレード68や保護層3として、トナーとの摺擦に伴ってトナーのプラス極性側への摩擦帯電を促す材料からなるものを用いればよい。
また、トナーの帯電系列とは、トナー母材樹脂(粒子)にシリカ、酸化チタンなどの外添剤を添加したトナー全体としての帯電系列を意味する。帯電系列における序列については、次のようにして調べることが可能である。即ち、トナーを表面保護層上で所定時間だけメータリングブレード68又は保護層3に摺擦せしめた後、そのトナーを吸引して採取する。そして、採取したトナーの帯電量をエレクトロメータで測定する。この測定結果がトナーの負極性への帯電量増加を示すものであれば、トナーの方がメータリングブレード68又は保護層3よりもマイナス側の帯電系列となる。また、測定結果がトナーの正極性への帯電量増加を示すものであれば、トナーの方がプラス側の帯電系列となる。
また、保護層3と電極との間に中間層を設けてもよい。この場合、中間層として、Ti、Sn、Fe、Cu、Cr、Ni、Zn、Mg、Al、TiO2、SnO2、Fe2O3、Fe3O4、CuO、Cr2O3、NiO、ZnO、MgO、Al2O3等の導電性の材料からなるものを用いることも可能である。
本実施形態に係る画像形成装置においては、先に図7や図8(b)に示したように、トナー担持ローラ31の複数の電極をそれぞれ、トナー担持ローラ31の回転位置にかかわらず、電極軸40A又は電極軸40Bに摺擦させ続けている。そして、これにより、トナー担持ローラ31の表面上において、無端移動方向(回転方向)の全周に渡ってホッピング用の電界を形成するようにしている。かかる構成では、トナー担持ローラ31の表面上のトナーを、メータリングブレード68によるトナー厚み規制位置から現像領域に至るまでの過程でホッピングさせ続けて、そのトナーのフレア状態を維持することができる。
本発明者らは、これまで説明してきた実施形態に係る画像形成装置と同様の構成のプリンタ試験機を用意した。但し、この試験機においては、実施形態に係る画像形成装置とは異なり、トナー担持ローラ31の複数の電極をトナー担持ローラ31の所定の回転位置に移動させたときにだけ、電極軸40A又は電極軸40Bに接触させるようにしている。この所定の回転位置としては、次に列記する3通りを採用した。
(1)実験番号1:現像領域に対向する回転位置
(2)実験番号2:トナー厚み規制位置に対向する回転位置、及び現像領域に対向する回転位置
(3)実験番号3:トナー厚み規制位置に対向する回転位置から、現像領域に対向する回転位置に至るまでの全領域
これら3通りの条件について、それぞれ、プリンタ試験機にてテスト画像をプリントして、トナー帯電量分布、トナー帯電量収束性、及び地汚れの有無を評価した。トナー帯電量分布については、次のようにして評価した。即ち、テストプリント中にプリント動作(トナー担持ローラ31の回転駆動)を一時停止して、トナー担持ローラ31の周面における全領域のうち、現像領域に進入する直前の領域にあるトナーを採取する。そして、そのトナーに含まれる個々のトナー粒子についてそれぞれ周知の技術によって帯電量を測定して帯電量分布を分析した。そして、その帯電量のバラツキが比較的大きい場合、中程度である場合、比較的小さい場合を、大、中、小として評価した。
また、トナー帯電量の収束性については、帯電量分布の標準偏差にあたる帯電量範囲を分析し、その範囲が比較的小さい場合、中程度である場合、比較的大きい場合を○、△、×として評価した。トナーはある程度まで摩擦帯電すると、それ以降、摩擦されても帯電量を上昇させなくなるため、帯電量の収束性が良好なほど(標準偏差にあたる帯電量範囲が狭くなるほど)、トナーが十分に摩擦帯電せしめられたことになる。
また、地汚れの有無については、テストプリント中に試験機を一時停止させた後、感光体58の地肌部に対して粘着性透明テープを貼り付け及び引き剥がしを行って、地肌部に付着しているトナーを粘着性透明テープに転移させた。そして、テープに転移したトナー量に基づいて、◎(転移トナー無し)、○(転移トナーが僅かにあるが視認できないレベル)、△(転移トナーが視認されるレベル)、×(転移トナーが目立ってしまうレベル)の4段階で評価した。
表1に示すように、実験番号1では、トナー帯電量分布が比較的大きく(大)、且つトナー帯電量収束性が比較的小さく(×)なった。これは、現像領域に搬送されるトナーの中に、まだ十分に帯電していないトナーが含まれていることを示している。このため、表1に示すように、帯電不良のトナーによる地汚れが発生している(×)。これに対し、実験番号2では、実験番号1に比べてトナー帯電量分布、トナー帯電量収束性及び地汚れが改善されている。但し、トナー帯電量収束性がまだ十分でないため、感光体58の地肌部に付着してしまうトナーが僅かに認められた。一方、実験番号3では、トナー帯電量分布、トナー帯電量収束性ともに最良の結果が得られたため、地汚れが全く発生しなかった。これらのことから、トナー担持ローラ31の表面上のトナーは、規制位置と現像領域との間でホッピングする過程で、トナー担持ローラ31の保護層3と摺擦して摩擦帯電が促されることがわかった。
よって、本実施形態に係る画像形成装置のように、トナー担持ローラ31の表面上において、無端移動方向の全周に渡ってホッピング用の電界を形成することで、規制位置と現像領域との間でトナーの摩擦帯電を促して、トナーの帯電不良による地汚れの発生を抑えることができる。
次に、実施形態に係る画像形成装置に、より特徴的な構成を付加した各実施例の画像形成装置について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各実施例に係る画像形成装置の構成は、実施形態と同様である。
[第1実施例]
本発明者らは、上述のプリンタ試験機に搭載するメータリングブレード68として、非導電性の材料からなるものと、導電性の材料からなるものとの2種類を用意した。そして、これらを個別に搭載した条件にて、それぞれテスト画像を所定枚数だけ連続プリントした後、メータリングブレード68に対するトナーの固着性について、×(一見して固着が認められる)、○(よく目を凝らすと僅かに固着している箇所が認められる)、◎(固着が全く認められない)の3段階で評価した。この結果を次の表2に示す。
表2の実験番号5と6との比較からわかるように、メータリングブレード68として導電性のものを用いた場合には、非導電性のものを用いる場合に比べて、ブレードに対するトナー固着を抑えることができている。これは、導電性のメータリングブレード68では、トナーとの摺擦に伴うカウンターチャージ(トナーとは逆極性側への帯電)を起こさないのに対し、非導電性のものではカウンターチャージによってトナーを静電的に付着させてしまうからだと考えられる。なお、実験番号4では、導電性のメータリングブレード68を用いているにもかかわらず、トナーの固着の評価結果が×になっている。これは、規制位置にホッピング電界を形成していない、即ち、規制位置でトナー担持ローラ31の表面上のトナーをホッピングさせていないことにより、トナーの固着を助長してしまったためと考えられる。換言すれば、規制位置でホッピング電界を形成することで、トナーを規制部材の表面から引き剥がす静電気力を定期的に発生させて、トナーの規制部材への固着を抑えることができるのである。
そこで、第1実施例に係る画像形成装置においては、メータリングブレード68として、導電性材料からなるものを用いることで、メータリングブレード68に対するトナーの固着を抑えている。なお、実施形態で説明したように、ホッピング電界については、トナー担持ローラ31の全周に渡って形成している。よって、規制位置でトナーをホッピングさせることによっても、メータリングブレード68に対するトナーの固着を抑えている。
[第2実施例]
図14は、第2実施例に係る画像形成装置を示す概略構成図である。この画像形成装置は、図13に示した現像器64及びトナー担持ローラ31を具備する現像装置と同じ構成の現像装置を複数備えている。これら現像装置は、互いに異なる色のトナーによって現像を行うものであり、ベルト状の有機感光体69上に各色のトナー像を重ねて現像する。感光体としてのベルト状の有機感光体69は、図示しない2つのローラに掛け渡され、図示しない駆動部により回転駆動される。
有機感光体69の左側には、複数色、例えばブラック、イエロー、シアン、マゼンタの画像をそれぞれ形成する複数の画像形成手段としての作像装置70K、70Y、70C、70Mが配列されている。感光体69は、まず、作像装置70Kにて帯電装置71Kにより一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置により、ブラックの画像データで変調された光ビーム72Kによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が図13に示した現像器64及びトナー担持ローラ31を具備する現像装置と同じ構成の現像装置73Kにより現像されてブラックのトナー像となる。その後、有機感光体69は除電器74Kにより除電されて次の画像形成に備える。
次いで、有機感光体69は、作像装置70Yにて帯電装置71Yにより一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置により、イエローの画像データで変調された光ビーム72Yによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が図13に示した現像器64及びトナー担持ローラ31を具備する現像装置と同じ構成の現像装置73Yにより現像されて上記ブラックのトナー像と重なるイエローのトナー像となる。その後、有機感光体69は除電器74Yにより除電されて次の画像形成に備える。
次に、有機感光体69は、作像装置70Cにて帯電装置71Cにより一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置により、シアンの画像データで変調された光ビーム72Cによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が図13に示した現像器64及びトナー担持ローラ31を具備する現像装置と同じ構成の現像装置73Cにより現像されて上記ブラックのトナー像及び上記イエローのトナー像と重なるシアンのトナー像となる。その後、有機感光体69は除電器74Cにより除電されて次の画像形成に備える。
次に、有機感光体69は、作像装置70Mにて帯電装置71Mにより一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置により、マゼンタの画像データで変調された光ビーム72Mによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が図13に示した現像器64及びトナー担持ローラ31を具備する現像装置と同じ構成の現像装置73Mにより現像されて上記ブラックのトナー像、上記イエローのトナー像及び上記シアンのトナー像と重なるマゼンタのトナー像となることでフルカラー画像が形成される。
一方、図示しない給紙装置から記録紙等の記録媒体が給送され、この記録媒体は電源から転写バイアスが印加される転写手段としての転写ローラ75により感光体69上のフルカラー画像が転写される。フルカラー画像が転写された記録媒体は、定着装置76によりフルカラー画像が定着され、外部へ排出される。感光体69は、フルカラー画像転写後にクリーニング手段としてのクリーナ77により残留トナー等が除去される。
この画像形成装置では、同一の有機感光体69上に4色分の書き込みを行うので、通常の4連タンデム方式と比較すると、原理的に位置ズレがほとんど発生せず、感光体上で色重ねができて位置ズレのない高画質のフルカラー画像を得ることができる。
なお、この画像形成装置においては、上述した実験の結果に鑑みて、Vmax[V]/p[μm]>1という条件に加えて、p[μm]<d[μm]という条件も具備させている。かかる構成では、上述したように、有機感光体69上に一度形成されたトナー像に対しては全く影響を与えることが無く、しかも、有機感光体69上に形成された先行色のトナー層を後続色の現像装置内に転移させることもない。よって、スキャベンジや混色などの問題が一切無く、高画質な作像プロセスを長期的に渡り安定して行うことができる。
これまで、互いに隣り合う2つの電極の間でトナーを往復移動させるようにホッピングせしめてフレア現象を得ながら、トナー担持体の表面移動によってトナーを現像領域まで搬送する画像形成装置の実施形態について説明してきたが、次のような画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。即ち、特開2002−341656号公報に記載の方式のように、トナー担持体において、ある電極の上からこれに隣り合う電極の上に向けてのホッピングを、トナー担持体の一端側から他端側に向かう方向で繰り返して行わせることで、トナーを現像領域に向けて搬送する画像形成装置である。また、このようなホッピングによるトナーの移動と、トナー担持体の表面移動との両方によってトナーを現像領域に向けて搬送する画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。