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JP2007121276A - 基板およびその製造方法 - Google Patents

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JP2007121276A
JP2007121276A JP2006257829A JP2006257829A JP2007121276A JP 2007121276 A JP2007121276 A JP 2007121276A JP 2006257829 A JP2006257829 A JP 2006257829A JP 2006257829 A JP2006257829 A JP 2006257829A JP 2007121276 A JP2007121276 A JP 2007121276A
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JP2006257829A
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Shingo Hiramatsu
紳吾 平松
Kiban Tei
基晩 鄭
Tomoko Hatahira
智子 畠平
Onori Kanamori
大典 金森
Shunichi Kuroda
俊一 黒田
Katsuyuki Tanizawa
克行 谷澤
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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Abstract

【課題】微量物質の検出、センシングにおいて重要な、基板上に抗体が抗原認識能を保った状態で高密度に整列固定可能な抗体整列用基板やFc融合タンパク質が活性を保った状態で高密度に整列固定可能なFc融合タンパク質整列用基板を提供する。
【解決手段】自己組織化能力を有するタンパク質と脂質2重膜の複合体による被覆が基板上に形成され、該タンパク質がFc領域結合部位を持つ基板を用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、抗体整列用基板、Fc融合タンパク質整列用基板、センシング基板などの特定の物質を他の物質と区別して選択的にセンシングすることのできる基板に関する。
近年、特定の物質を他の物質と区別して選択的にセンシングする研究が盛んに行われている。特に、生体内や環境中に極微量に存在するタンパク質や核酸あるいは化合物等を特異的かつ高感度にセンシングすることは疾患の早期診断や環境ホルモンの計測など医学や環境、食品検査、生命科学分野などにおいて切実に要求されており、物質の特異的な検出(センシング)方法や測定感度向上のための研究が盛んに行われている。
微量物質のセンシング方法としては大別すると、目的とする物質を直接もしくは基板上に固層化した抗体などを介して捕捉し、補足した目的物質を抗原抗体反応などを利用して蛍光や発色、発光などにより検出する方法と、あるいは物質との結合を直接感知する表面プラズモン共鳴法(SPR:SurfacePlasmon Resonance)や水晶振動子法(QCM:Quartz Crystal Microbalance)、二面偏波式干渉法(DPI:Dual Polarization Interferometer)、エリプソメトリー(Ellipspometry)等によるセンシング方法がある。
SPRやQCM、DPIにおいて、目的とする物質を捕捉・認識可能な抗体やFc融合タンパク質を基板上に結合させる手法が用いられている。SPRは金属(誘導体)界面に局在しながら界面に沿って伝搬する電磁波である表面プラズモンを利用し、物質が結合したときの金属表面での電荷密度波の変化を測定することで物質の結合力や量を測定する方法である。QCMは電極上に吸着した質量に比例して基本振動数が減少することを利用し、ナノグラムレベルで物質の結合量や結合と解離の速度が測定できる方法である(非特許文献1参照)。
基板上に固層化もしくは結合する抗体やFc融合タンパク質の方向を整列させ、目的とする物質を認識できるように固層化もしくは結合させることはセンシングの感度を高めるために重要な要素であるが、抗体やFc融合タンパク質の方向を整列させることは容易でなく、抗体の種類や基板の種類、溶液のイオン強度やpH等様々な要因の影響を受けることが知られている(非特許文献2参照)。抗体の方向を整列させて基板上に固層化もしくは結合させるには、多大な労力により最適な条件を抗体やFc融合タンパク質ごとに見つけ出す必要がある上、抗体やFc融合タンパク質の種類や純度、状態によっては不可能なこともある。このため、複数種類の抗体やFc融合タンパク質を個別に整列させた抗体アレイやFc融合タンパク質アレイを作製することは極めて困難であった。さらに、物理的吸着によって基板(固相)に吸着、不溶化した抗体は、センシングの過程の洗浄工程で少しずつ脱落し、さらに界面活性剤を含む溶液を用いる洗浄工程で多量に脱落することが知られている(非特許文献3参照)。
基板上に抗体の方向を整列させて固定する目的で、基板上の官能基と抗体上の特異的官能基とを反応させることにより抗体の方向を制御する方法が開示されている(特許文献1)。この方法では、抗体分子の一部分のみに特異的な官能基を作製するため、予め全ての官能基を化学反応により保護しなければならず、さらに抗体分子の一部を酵素により欠損させることや、還元剤によるジスルフィド結合の解離を行う必要もある。こうした過程は、抗体の抗原認識能や抗原結合能などの機能が変化もしくは低下する危険性があり、センシングの感度や精度の低下の原因となる。
さらに、基板上に固層化もしくは結合された抗体の密度もセンシングには重要な因子であり、目的物質の抗体による捕捉率は、単位面積あたりに固層化もしくは結合された抗体の量に依存する。
また、微量物質のセンシングにおいては非特異的なシグナルがセンシング精度を低下させる大きな要因となる。特に基板への非特異的な吸着や相互作用はSPRやQCM、DPIにおいて目的物質の検出や相互作用の検出において重大な問題となる。基板への目的物質の非特異的相互作用を防止する目的で、アルブミンやカゼインを含む溶液でブロッキング、コーティングすることが行われているが、非特異的相互作用を完全に防止するには不充分である。
基板を有機薄膜で被覆し、有機薄膜上の複数箇所に抗体を固定したアレイについて開示されており、抗体の固定にアダプターや親和性タグを用いる手法も同時に開示されている(特許文献2参照)。しかし微量物質のセンシングにおいて重要な単位面積あたりに結合もしくは固層化された抗体量を増加させる手法、すなわち抗体の高密度な整列固定を可能にすることは達成されておらず、非特異的相互作用を防止する手法も開示されていない。
また、ワクシニアウイルス由来ケモカイン結合タンパク質をFc融合タンパク質として発現させ、表面プラズモンセンサーによりリガンドとの相互作用を検出した例が知られている(非特許文献4参照)。Fc融合タンパク質を高密度で整列固定する手法は開示されていない。
一方、粒子形成能を有するB型肝炎ウィルス表面抗原タンパク質が自己組織化によって細胞内の脂質2重膜を取り込みながら形成された中空ナノ粒子が知られており、該中空ナノ粒子の表面に抗体を提示した例が知られているが(特許文献3参照)、組織特異的な薬剤の運搬、導入すなわちドラッグデリバリーシステムに関するものであり、基板によるセンシングに関するものではない。
このように、基板上に抗体が抗原認識能を保った状態で高密度に整列固定され、かつ基板への非特異的吸着の少ない基板を開発した例はない。
また、基板上にFc融合タンパク質が活性を保った状態で高密度に整列固定され、かつ基板への非特異的吸着の少ない基板を開発した例はない。
大島ら著、ポストシーケンスタンパク質実験法3、東京化学同人、2002年、p115−137. ジョン アール クラウザー(John R. Crowther)著、メソッヅ イン モレキュラー バイオロジー149 ジ イライサ ガイドブック(Methods in Molecular Biology The ELISA Guidebook)、ヒューマナ プレス(HUMANA PRESS)、2001年、p297−299 石川 榮治 著、生化学実験法48、学会出版センター、2003年、p51、p60 ブルース ティー シート(Bruce T. Seet)ら 著、プロシーディングス オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンシーズ オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ(Proceedings of National Academy of Sciences of The United States of America)、2001年、p9008−9013 特開平10−182693 特表2002−520618 特開2004−002313
以上のような状況に鑑み、本発明では、基板上に抗体が抗原認識能を保った状態で高密度に整列固定可能な抗体整列用基板や、Fc融合タンパク質が活性を保った状態で高密度に整列固定可能なFc融合タンパク質整列用基板を提供し、さらに基板上に抗体が抗原認識能を保った状態で高密度に整列固定化され、かつ基板への非特異的吸着の少ないセンシング基板を提供することや、Fc融合タンパク質が活性を保った状態で高密度に整列固定され、かつ基板への非特異的吸着の少ないFc融合タンパク質整列用基板を提供することを課題とした。
本発明者らは、上記課題を解決する手法を鋭意検討した結果、自己組織化能力を有するタンパク質と脂質2重膜の複合体による被覆が基板上に形成され、該タンパク質がFc領域結合部位を持つ基板により、課題が達成できることを見いだした。
本発明の基板は所望の抗体を抗原認識能を保ったまま高密度で整列固定可能な汎用的な基板である。また、これに抗体を結合させたセンシング基板は目的物質の捕捉率や検出感度が高く、かつ非特異的吸着の少ないセンシング基板である。例えばこのセンシング基板上でELISAなどの免疫検出反応を行うことで、目的物質の特異的な高感度検出が可能になる。またSPRやQCM、DPIなどの基板として用いることで、目的物質の特異的な高感度検出が可能になる。
また、本発明の基板は、例えば、所望のFc融合タンパク質を活性を保ったまま高密度で整列固定可能な汎用的な基板であり、これにFc融合タンパク質を結合させたセンシング基板は目的物質の捕捉率や相互作用による検出感度が高く、かつ非特異的吸着の少ないセンシング基板である。例えばこのセンシング基板上で目的とする物質を結合、捕捉、相互作用させ、この目的とする物質を抗体などを用いたELISAなどの免疫検出反応を行うことで、目的物質の特異的な高感度検出が可能になる。またSPRやQCM、DPIなどの基板として用いることで、目的物質の相互作用を特異的にかつ高感度に検出することが可能になる。
この発明におけるその他の用語や概念は、発明の実施形態の説明や実施例において詳しく規定する。また、この発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学および分子生物学的技術はSambrook and Maniatis, 「Molecular Cloning−A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M. et al., 「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995等に記載されている。
本発明は、「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体による被覆が基板上に形成され、該タンパク質が「Fc領域結合部位」を持つ基板である。
本発明において「自己組織化能力を有するタンパク質」とは、疎水的相互作用などのタンパク質間相互作用により自己集合する性質をもつタンパク質である。タンパク質間相互作用により自己集合する性質をもつタンパク質であることは、タンパク質が溶解した溶液の温度やpH、塩濃度や溶媒を変化させることでタンパク質どうしで多量体を形成することにより確認することができる。
さらに、自己組織化する能力を有することは、自己組織化の過程で、他の夾雑タンパク質を排除することを示し、これはセンシングの精度を向上させる上で重要な性質である。
「自己組織化能力を有するタンパク質」としては、種々のウィルスから得られるウィルス粒子構成タンパク質などのウイルス由来タンパク質を適用することができる。具体的には、B型肝炎ウィルス(HepatitisB Virus:HBV)やC型肝炎ウィルス(Hepatitis C Virus)、Micro virus、phagevirus、adeno virus、hepadna virus、Parvo virus、papova virus、Retro virus、 Reovirus、Corona virus、カイコ細胞質多角体病ウイルス(Bombyx mori cytoplasmic polyhedrosis virus)、カリシウイルス、ノロウイルス、サポウイルスなどの構成タンパク質や膜タンパク質、表面抗原タンパク質、または多角体タンパク質等が例示される。
「自己組織化能力を有するタンパク質」は、例えば、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、ウィルス、ファージ、細菌類、菌類等に由来する天然タンパク質や遺伝子工学的に組み替えられたタンパク質、種々の合成タンパク質等である。「自己組織化能力を有するタンパク質」は、好ましくは、ウイルス由来タンパク質、更に好ましくは肝炎ウイルス由来のタンパク質、更に好ましくはB型肝炎ウイルス由来のタンパク質が用いられる。最も好ましくはB型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質が用いられる。このとき、自己組織能が失われない限りにおいて、種々の変異を持つ変異体であってもよく、preS領域のアミノ酸の一部を欠失させることにより、ナノサイズの粒子の生産量や安定性を高めることができる。
本発明における「自己組織化能力を有するタンパク質」は、「Fc領域結合部位」を有している。「Fc領域結合部位」は「自己組織化能力を有するタンパク質」と疎水的に結合していてもよく、化学結合などにより共有的に結合していても良い。好ましくは融合タンパク質として「自己組織化能力を有するタンパク質」に融合していることが好ましい。また融合の部位は、自己組織化能を失わない限りにおいて、N末端からC末端までの全ての場所に存在し得る。
本発明におけるFc領域とは、抗体をパパインで消化して得られる抗原認識能を持たないフラグメントであり、一般に抗体のCH2とCH3領域を含む、抗体のH鎖のC末端フラグメントの2量体を示す。
本発明における「Fc領域結合部位」は、抗体の抗原認識部位以外の領域と結合もしくは相互作用し得るポリペプチドであり、好ましくはFcレセプター、Protein A、Protein G、Protein A/G、protein Lのいずれかの全長もしくは一部であり、より好ましくはprotein AもしくはProtein Gの持つ「Fc領域結合部位」もしくはその変異体である。
本発明の基板は、好ましくは、脂質2重膜を挟んだ反対側に、「Fc領域結合部位」を有する。本発明の基板は、好ましくは、「Fc領域結合部位」が、ZZタグである。
「自己組織化能力を有するタンパク質」が「Fc領域結合部位」を有することにより、所望の抗体やFc融合タンパク質を整列固定したセンシング基板を簡便に作製することが可能となる。すなわち、数ある抗体やFc融合タンパク質のうち、所望の抗体やFc融合タンパク質のみを整列固定化できる汎用性の高い「抗体整列用基板」や「Fc融合タンパク質整列用基板」を提供することが可能となる。さらに好ましくはZ領域と呼ばれるprotein Aのもつ「Fc領域結合部位」がタンデムにならんだZZ領域(ZZタグ)と呼ばれるポリペプチドもしくはその変異体であり、次のような繰返し配列もしくはその変異体である。VDNKFNKEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPKVDNKFNKEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNAFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPK。
本発明の基板は、好ましくは、同一基板上の異なる位置に、複数のFc融合タンパク質が結合している。
本発明の基板は、好ましくは、「自己組織化能力を有するタンパク質」に、Fc融合タンパク質が結合している。本発明の基板は、好ましくは、「自己組織化能力を有するタンパク質」とFc融合タンパク質との結合が、共有結合である。本発明の基板は、好ましくは、「自己組織化能力を有するタンパク質」が、Fc融合タンパク質のFc領域と架橋剤により結合している。
本発明における「自己組織化能力を有するタンパク質」とFc融合タンパク質との結合様式、および、「自己組織化能力を有するタンパク質」とFc領域との結合様式は、Fc融合タンパク質の活性が失われない限りにおいてとくに制限はなく、イオン結合、疎水結合、水素結合、金属結合、あるいはジスルフィド結合などの共有結合等、あるいはこれらの組み合わせで合って良い。「自己組織化能力を有するタンパク質」とFc融合タンパク質との結合様式は、好ましくはセンシング過程での抗体やFc融合タンパク質の脱落を防止する目的から、共有結合であることが好ましく、さらに好ましくは架橋剤による共有結合である。
本発明におけるFc融合タンパク質とはFc領域を持つタンパク質を示し、抗体を含む。また、Fc領域と任意のタンパク質との融合タンパク質も含む。本発明の基板は、好ましくは、Fc融合タンパク質が抗体である。
本発明において抗体とは、天然に産生されるか、または全体的にもしくは部分的に合成され産生されるかのいずれかの免疫グロブリンを意味する。抗原認識能を維持するその全ての誘導体や変異体も含まれる。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであり得る。好ましくはFc領域を持つ抗体であり、さらに好ましくはFcレセプター、protein A、Protein G、Protein A/G、protein Lのいずれかと結合し得る抗体を示す。
本発明における「自己組織化能力を有するタンパク質」と抗体との結合様式は、抗体の抗原認識能が失われない限り、とくに制限はなく、イオン結合、疎水結合、水素結合、金属結合、あるいはジスルフィド結合などの共有結合等、あるいはこれらの組み合わせであって良い。
Fc融合タンパク質を構成する任意のタンパク質にとくに制限はなく、膜タンパク質や可溶性タンパク質などが挙げられる。具体的にはサイトカインレセプターや成長因子レセプター、ホルモンレセプター、神経伝達物質レセプター、カテコールアミンレセプター、オータコイドレセプター、ダイオキシンレセプター、ケモカインレセプター、Gタンパク質共役受容体などのレセプター分子が挙げられる。またタンパク質もしくはペプチドからなるリガンドもしくはアゴニスト、アンタゴニスト等も挙げられる。また、細胞接着分子/細胞付着分子もFc融合タンパク質を構成する任意のタンパク質の一つの例である。膜タンパク質の場合、細胞外ドメインが任意のタンパク質として好適に用いられる。
本発明における架橋剤とは、「自己組織化能力を有するタンパク質」と抗体やFc融合タンパク質とを共有結合させる働きをするものを示し、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、水酸基などを利用して結合させるための試薬が市販されており、抗体の抗原認識能が失われない、もしくはFc融合タンパク質の活性が失われない限りにおいて、特に制限はない。架橋剤は、「自己組織化能力を有するタンパク質」の持つ「Fc領域結合部位」に対して、弱い結合や相互作用を示す種類の抗体やFc融合タンパク質であっても強固に結合させることが可能となる。さらに、センシングの工程での洗浄作業で抗体やFc融合タンパク質が脱落することを防止することができる。架橋剤として、例えば臭化シアン化合物、カルボジイミド基を持つ化合物、アルデヒド基を持つ化合物、イミドエステル基を持つ化合物、マレイミド基を持つ化合物、N-ヒドロキシサクシイミドエステル基を持つ化合物、ハロアセチル基を持つ化合物、ピリジルジスルフィド基を持つ化合物、アリルアザイド化合物などが単独もしくは組み合わせて用いられる。好ましくは、抗原認識能や活性の低下を引き起こしにくい穏やかな条件下で一級アミンとのみ反応することから、イミドエステル基を持つ化合物が持いられ、さらに好ましくはDMA(Dimethyl adipimidate)化合物、DMP(Dimethyl pimelimidate)化合物、DMS(Dimethyl suberimidate)化合物、DMBP(Dimethyl 3,3’−dithiobispropionimidate)化合物が用いられる。
本発明におけるFc融合タンパク質の作製方法にとくに制限はなく、Fc融合タンパク質の一種である抗体は、生物個体や細胞から得ることも可能であるし、その他のFc融合タンパク質は遺伝子組換えの手法を用いた生物個体や細胞から得ることも可能であるし、無細胞合成などの手法により得ることも可能である。好ましくは動物もしくは昆虫細胞を用いて発現、精製することにより得ることができる。このとき用いる細胞やベクター、発現方法に特に制限はなく、細胞の内外を問わずFc融合タンパク質が発現しさせすれば良い。発現の方法の一例として、任意のタンパク質をコードする遺伝子をInvivoGen社製pFUSE-Fcベクターへ連結し、動物細胞へ導入することにより作製することが可能である。ベクターの種類により、ヒト、マウス、ラビットIgGのFc領域との融合タンパクを作製することが可能である。もしくはProtein Expression and Purification 14, 120-124, 1998に記載の手法を用いることも可能である。すなわち抗体のCH2・CH3領域を含む遺伝子領域をPCR等により取得し、任意のタンパク質をコードする遺伝子および適切なプロモーターおよびポリA付加部位を連結し、細胞に導入後で発現させることにより任意のタンパク質がFc領域に融合したタンパク質を作製することが可能である。発現の際に細胞外への分泌を促すための領域が付加されていても良い。
作製されたFc融合タンパク質を、単離・精製するための方法に特に限定はなく、通常のタンパク質の精製方法を用いることができる。例えば、シリカゲル担体、イオン交換性担体、ゲル濾過担体、キレート性担体、色素担持担体等を用いたクロマトグラフィーや、限外濾過、ゲル濾過、透析、塩析等による脱塩、濃縮を組み合わせることによって精製し単離することができる。また、抗体Fc領域との結合能を持つプロテインAやプロテインGを用いたアフィニティクロマトグラフィーによる精製を用いても良い。同様に、抗IgG抗体を用いたアフィニティクロマトグラフィーによる精製を用いても良い。また、任意のタンパク質と相互作用を持つタンパク質などの物質を固定したアフィニティクロマトグラフィーによる精製を用いても良い。
本発明において脂質2重膜とは、2枚の脂質の層からなっており、それぞれの層の中で、両親媒性脂質の極性の頭が親水系の溶媒と接触しており、非極性の炭化水素の部分が2重層の内部を向いているものをいう。脂質2重膜の例としては、細胞膜や核膜、小胞体膜、ゴルジ体膜、液胞膜のような生細胞における生体膜、または人工的に作製したリポソーム等が挙げられる。中でも小胞体膜由来の脂質2重膜がより好ましい。脂質2重膜としては、真核生物、例えば、動物細胞、植物細胞、真菌細胞、昆虫細胞など由来のものが好ましく、特に好ましくは酵母由来の脂質2重膜が用いられる。
本発明において、脂質2重膜は、好ましくは、5〜20nmの厚さである。
本発明における複合体とは、2種類以上の物質が複合して一体となった物質を示す。より具体的には、少なくとも「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜が複合して一体となった物質を示す。
本発明において、「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体の形状としては、「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体の、基板上での方向性の制御が不要なことから、「ナノサイズの粒子」であることが好ましい。
本発明において「ナノサイズの粒子」とは20〜500nm、更に好ましくは50〜200nm、好ましくは80〜150nmの直径を持つ粒子であり、好ましくは内部に中空の空間を持つ中空ナノ粒子であり、その空間は必ずしも気体系の空間である必要はなく、溶液系の空間であってもよい。
粒子構造でない場合とは、脂質2重膜に「自己組織化能力を有するタンパク質」が埋め込まれた、タンパク質と脂質2重膜を主要な構成成分とする複合体を示し、粒子構造と同様に、抗体やFc融合タンパク質を高密度で整列固定することが可能であり、さらに非特異的吸着や相互作用を抑制し、センシングの精度を向上させることも粒子構造のときと同様に可能である。
粒子構造でない「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体は、真核生物細胞から直接得ることも可能であり、また、ナノサイズの粒子を温度変化や湿度変化、圧力変化や超音波処理、界面活性剤処理などにより粒子の構造変化を引き起こすことで得ることも可能である。
粒子構造の複合体は、基板上においてドーム状、エンボス状、ブロック状などの構造に変化し得る。
「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体を生産する生物種にとくに制限はなく、真核生物、原核生物いずれによる生産であっても良いが、自己組織化能力を高めるため、真核生物による生産が好ましく、さらに好ましくは酵母細胞による生産である。生物種は、ウイルス、ファージなどの感染工程を含むことや、組換え体も含まれる。
基板上での複合体の方向性を制御する目的で、「自己組織化能力を有するタンパク質」が「基板結合タグ」を有することが好ましい。「基板結合タグ」は基板への結合を強固にする働きや、「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体による被覆の方向性を制御する役割を持っている。「基板結合タグ」の機能により、「抗体整列用基板」へ整列した抗体の方向性を制御することや、「Fc融合タンパク質整列用基板」へ整列したFc融合タンパク質の方向性を制御することができ、結果として、例えば、「センシング基板」を用いたセンシングの感度および精度向上につながる。「基板結合タグ」の一例として、基板が金属を含む場合、ニッケルなど金属二価カチオンへの結合能を持つポリヒスチジンタグや、他の金属結合タンパク質ドメイン、金属イオン結合性タンパク質ドメインなどが挙げられる。基板が樹脂などの場合、疎水的なアミノ酸を60%以上含む6アミノ酸以上のポリペプチドからなるドメインなどが「基板結合タグ」として挙げることができる。好ましくは、立体障害の低さから、少なくとも4残基以上の連続したヒスチジンからなるポリヒスチジンタグが好適に用いられる。
また、抗体やFc融合タンパク質との結合が損なわれない限りにおいて「自己組織化能力を有するタンパク質」中の「基板結合タグ」の位置に特に制限はないが、好ましくは「Fc領域結合部位」であるZZタグと、脂質2重膜を挟んだ反対側にあることが望ましく、さらに好ましくは「自己組織化能力を有するタンパク質」中の第1番目の膜貫通領域と第2番目の膜貫通領域の間もしくは第3番目の膜貫通領域よりC末端側である。
複合体の形状が粒子構造でない場合、基板上での複合体の方向性を制御する目的で、「自己組織化能力を有するタンパク質」が「基板結合抗体」の認識部位を有していても良い。
本発明の自己組織化能力を有するタンパク質と脂質2重膜の複合体は、自己組織化能力を有するタンパク質が脂質2重膜を取りこみながら形成した複合体であることが好ましい。
「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体は、主にタンパク質と脂質、糖を主要な構成成分とし、そのうち主要な成分はタンパク質である。タンパク質が自己組織化する能力を有することは、抗体やFc融合タンパク質を高密度で整列する上で重要な性質である。さらに、脂質2重膜を取りこむことで、非特異的吸着や相互作用を抑制し、センシングの精度を向上させることもできる。
本発明において抗体の変異体もしくはFc融合タンパク質の変異体、「自己組織化能力を有するタンパク質」の変異体、「Fc領域結合部位」の変異体もしくはZZタグの変異体とはこれらタンパク質に遺伝子工学的に点、あるいは複数のアミノ酸置換を起こしたもの、またはタンパク質の全長から一部を削り取るか、新しくタンパク質配列を付け加えたもの、さらには核酸・糖・脂質・化合物等によってタンパク質の一部に修飾を施したものであって変異を起こす前の抗体と同一の物質を認識する能力を持つ変異体、Fc融合タンパク質と同一の活性を持つ変異体、「自己組織化能力を有するタンパク質」と同様に脂質2重膜を取りこんで自己組織化によりナノサイズの粒子を形成する能力を有する変異体、または「Fc領域結合部位」やZZタグと同様にFc領域と相互作用する能力を有する変異体を示す。このような変異体を作製するには該タンパク質を発現する遺伝子を含む環状プラスミド上でアミノ酸の欠失、置換若しくは付加を行うためのプライマーとQuikChange site−directed mutagenesis kit、またはQuikChange multi site−directed mutagenesis kit、またはQuikChange XL site−directed mutagenesis kit(STRATAGENE社)等の変異を起こすためのキットを用いて12〜18サイクルのPCRを行い、その産物を制限酵素DpnIで切断し、大腸菌に形質転換することにより可能である。さらに、ランダム変異導入法、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、またはポリメラーゼ連鎖増幅法(PCR)を単独または適宜組み合わせて行うことができる。例えば亜硫酸水素ナトリウムを用いた化学的な処理によりシトシン塩基をウラシル塩基に置換する方法や、マンガンを含む反応液中でPCRを行い、DNA合成時のヌクレオチドの取り込みの正確性を低くする方法、部位特異的変異導入のための市販されている各種キットを用いることもできる。例えばSambrook等編[Molecular Cloning-A Laboratory Manual、第2版]Cold Spring Harbor Laboratory、1989、村松正實編[ラボマニュアル遺伝子工学]丸善株式会社、1988、エールリッヒ、HE.編[PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用]ストックトンプレス、1989等の成書に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができる。また、核酸・糖・脂質・化合物等によってタンパク質の一部に修飾を施したものとして具体的にはリン酸化酵素によるタンパク質中のセリン、またはスレオニン残基のリン酸化、糖鎖付加酵素によるアスパラギン、またはセリン、またはスレオニン残基の糖鎖付加、または還元・アルキル試薬によるシステイン残基の還元・アルキル化のようなものを例示することができ、これらのものを作製するにはタンパク質にリン酸、または糖鎖等を混ぜて、リン酸化酵素や糖鎖付加酵素を加え、その酵素が働く最適な条件(温度、pH、塩濃度等)を維持したり、タンパク質の入った溶液に還元剤であるジチオツレイトールやメルカプトエタノール等を終濃度で5mM濃度になるように入れ、温度60℃付近、pH中性以上で1時間反応させ、更にアルキル化剤として5〜15mM濃度のヨードアセトアミドを加え室温で1時間以上反応させることにより可能である。もちろん例示した上記の修飾以外にもタンパク質に対する様々な修飾が考えられることは言うまでもない。
複合体は基板上に予め固定された「基板結合抗体」を介し、「基板結合抗体」の認識部位を基板側にして基板と結合させることが可能である。こうして「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体の基板上での方向性を制御することが可能となる。
本発明では、「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体が、「基板結合抗体」を介して基板と結合していことが好ましい。
「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体は、「自己組織化能力を有するタンパク質」を酵母や動物細胞、昆虫細胞などの真核生物細胞で発現させることにより、脂質2重膜を取りこみながら形成させることが可能である。
本発明における基板とは、その素材において、金属、プラスチック、有機・無機高分子材料であれば特に限定されないが、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、テフロン、PVDF、セルロース、シリコン、マイカー、ポリメチルペンテン(PMPまたはTPX(登録商標))、ポリスチレン(PSt)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリアクリルアミド、ポリイミド等の樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダガラス、ホウ酸ガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス類およびその複合体、金、白金、アルミナ、クロム、亜鉛、鉛、鉄、ステンレススチール、タンタル、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタン等の金属およびその複合体や酸化物、セラミックスおよびその複合体、天然ゴムやラテックスゴム等の複合体、アガロースやデキストラン、セルロース、キチン、キトサンなど多糖類の複合体などが好ましく用いられる。
また、基板の表面の全体、または少なくともセンシングが行われる部分がこれらによってコーティングされているものが好ましい。これらの基板材料を複数組み合わせて用いることもできる。例えば、ガラス基板を金属で被覆した組み合わせや樹脂基板の表面を金属でコーティングした基板などが好ましく用いられる。また、本発明の基板は、センシングを容易にするため、表面を親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコールなど)によりコーティングやグラフトなどの処理を行ったものや疎水化したもの、ラジカル化したもの、これら基板をタンパク質やDNAなどの核酸または糖などでコーティング、修飾、処理した状態のものも含む。
また、基板はその表面において、デキストランやアビジンなどの修飾が行われていても良い、チオールアルカン基やアミノ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシル基などの官能基が存在していても良い。
本発明における基板の形状や大きさに特に制限はなく、数ミリ角のチップ状であってもよく、直径がナノメーターからミリメーターまでのビーズ状や球状であってもよく、96穴マルチウェルプレートや384穴マルチウェルプレート、1536穴マルチウェルプレート状の形状であっても良い。また、複数の目的とする物質を測定可能にする目的で、二種類以上の複数の抗体やFc融合タンパク質が、それぞれ別の部位に結合しているような、アレイ状の「センシング基板」であっても良い。本発明における基板の形状は、球形が特に好ましい。
本発明において、基板は、好ましくは、基板上に「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体による被覆を形成し、次いでFc融合タンパク質と架橋剤の混合物を作用させることにより、「自己組織化能力を有するタンパク質」とFc融合タンパク質を架橋剤により結合させて作製される。
本発明の基板は、好ましくは、「Fc融合タンパク質整列用基板」である。
本発明における「Fc融合タンパク質整列用基板」とは、基板上に「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体による被覆が形成されており、Fc融合タンパク質を整列可能な基板であり、Fc融合タンパク質を高密度に整列固定可能で、かつ非特異的な吸着の少ない基板である。この「Fc融合タンパク質整列用基板」にFc融合タンパク質を結合させることで、目的とする物質を検出するための「センシング基板」となる。また、本発明における「Fc融合タンパク質整列用基板」は、Fc領域を持つ抗体を結合させることが可能であることから、抗体を整列固定するための「抗体整列用基板」でもある。
本発明の基板は、好ましくは、抗体整列用基板である。
本発明における「抗体整列用基板」とは、基板上に「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体による被覆が形成されており、抗体を整列可能な基板であり、抗体を高密度に整列固定可能で、かつ非特異的な吸着の少ない基板である。この「抗体整列用基板」に抗体を結合させることで、目的とする物質を検出するための「センシング基板」となる。
本発明の基板は、好ましくは、「センシング基板」である。
本発明におけるセンシングとは、目的とする物質をセンシング基板上の抗体やFc融合タンパク質を介して捕捉・結合・相互作用させ、その目的物質を抗原抗体反応などを利用して蛍光や発色、発光、吸光、放射線強度などにより検出する方法よるセンシング方法を示す。これらの一例として、EIA(Enzymeimmunoassay 酵素免疫検定法)、ELISA(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay 固相酵素免疫検定法)、RIA(Radioimmunossay 放射線免疫検定法)、FIA(Fluorescenceimmunoassay 蛍光免疫検定法)、FLISA(Fluorescence−Linked Immunosorbent Assay 固相蛍光免疫検定法)、ELISPOT(Enzyme−Linked Immuno−Spot)、免疫沈降法などが挙げられ、目的に応じて、直接抗体法、間接抗体法、競合法、二抗体サンドイッチ法などが選択される。あるいは物質との結合や相互作用を直接感知する表面プラズモン共鳴法(SPR:Surface Plasmon Resonance)や水晶振動子法(QCM:Quartz Crystal Microbalance)、二面偏波式干渉法(DPI:Dual Polarization Interferometer)等によるセンシング方法も本発明におけるセンシングに含まれる。
本発明の「センシング基板」では、脂質2重膜による被覆が基板上に形成されることにより、センシングの目的とする物質以外の物質が基板に非特異的に吸着・相互作用することを抑制し、センシングノイズを低下させる効果やセンシングの精度を向上させることができる。また、センシングの目的とする物質が抗体やFc融合タンパク質を介さず直接基板と吸着・相互作用することを抑制する働きにより、センシングノイズ抑制の効果を持つ。さらに、脂質2重膜と共に被覆を形成する「自己組織化能力を有するタンパク質」に共有結合している抗体やFc融合タンパク質が、直接基板と接触することによる抗体やFc融合タンパク質の失活や抗原認識能の低下を抑制する効果を持つ。
本発明において、「センシング基板」を作製する手順に特に制限はなく、「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体による被覆を予め基板上に形成させた「抗体整列用基板」もしくは「Fc融合タンパク質整列用基板」を作製し、これに抗体やFc融合タンパク質もしくは抗体と架橋剤の混合溶液もしくはFc融合タンパク質と架橋剤の混合溶液を作用させることにより作製しても良い。もしくは、「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体に、予め抗体もしくは抗体と架橋剤の混合溶液もしくはFc融合タンパク質もしくはFc融合タンパク質と架橋剤の混合溶液を作用させたものを基板に添加し作製しても良い。また、脂質2重膜を取りこんで「ナノサイズの粒子」を形成している「自己組織化能力を有するタンパク質」を用い、同様に被覆を予め基板上に形成させた「抗体整列用基板」もしくは「Fc融合タンパク質整列用基板」を作製し、これに抗体もしくは抗体と架橋剤の混合溶液もしくはFc融合タンパク質もしくはFc融合タンパク質と架橋剤の混合溶液を作用させることにより作製しても良い。もしくは脂質2重膜を取りこんで「ナノサイズの粒子」を形成している「自己組織化能力を有するタンパク質」に予め抗体もしくは抗体と架橋剤の混合溶液もしくはFc融合タンパク質もしくはFc融合タンパク質と架橋剤の混合溶液を作用させたものを基板に添加し作製しても良い。本発明において、「センシング基板」を作製する際には、余分なもしくは未反応の架橋剤を失活もしくは除去する工程を含むことが望ましい。また、「自己組織化能力を有するタンパク質」と抗体もしくはFc融合タンパク質との結合性を高めるために、溶液のpH、塩濃度、イオン強度、界面活性剤、温度などを変化させても良い。
本発明における基板の利用の一例として、目的とする物質との相互作用を直接検出できるSPRやQCM、DPIに基板を用いることを挙げることができる。
以下、添付した図面と実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
図1に、「自己組織化能力を有するタンパク質」(2)と脂質2重膜(3)の複合体による被覆が基板(1)上に形成され、該タンパク質が「Fc領域結合部位」(4)を持つ「抗体整列用基板」および「Fc融合タンパク質整列用基板」の様態の一例を示す。
図2に、「自己組織化能力を有するタンパク質」(2)と脂質2重膜(3)の複合体による被覆が基板(1)上に形成され、該タンパク質に抗体(5)が結合してなる「センシング基板」の様態の一例を示す。
図3に、「自己組織化能力を有するタンパク質」(2)と脂質2重膜(3)の複合体による被覆が基板(1)上に形成され、該タンパク質に抗体(5)が架橋剤(6)により共有結合してなる「センシング基板」の様態の一例を示す。
図4に、「センシング基板」が目的とする物質(7)を吸着・結合した様態の一例を示す。
図5に、「自己組織化能力を有するタンパク質」(2)が、脂質2重膜(3)を取りこんで「ナノサイズの粒子」(8)を形成し、これが基板(1)上に被覆を形成した「抗体整列用基板」をなし、(2)のもつ「Fc領域結合部位」(4)が抗体(5)と架橋剤(6)により共有結合した「センシング基板」を形成し、目的とする物質(7)を吸着・結合した様態の一例を示す。
図6に、「自己組織化能力を有するタンパク質」(2)が、「Fc領域結合部位」であるZZタグ(4)と「基板結合タグ」(9)とを膜貫通領域を挟んだ部位に有しており、「基板結合タグ」を介して基板(1)と結合している「抗体整列用基板」および「Fc融合タンパク質整列用基板」の様態の一例を示す。「基板結合タグ」が脂質2重膜(3)を挟んだ反対側にあり、かつ「自己組織化能力を有するタンパク質」中の第1番目の膜貫通領域と第2番目の膜貫通領域の間に存在していることを示す図である。この「抗体整列用基板」に抗体を整列固定化することにより、「センシング基板」を作製することが可能であり、「Fc融合タンパク質整列用基板」にFc融合タンパク質を整列固定化することにより、「センシング基板」を作製することも可能である。
図7に、「自己組織化能力を有するタンパク質」(2)が、「Fc領域結合部位」であるZZタグ(4)と「基板結合タグ」(9)とを膜貫通領域を挟んだ部位に有しており、基板結合タグを介して基板(1)と結合している「抗体整列用基板」および「Fc融合タンパク質整列用基板」の様態の一例を示す。「基板結合タグ」が脂質2重膜(3)を挟んだ反対側にあり、かつ「自己組織化能力を有するタンパク質」中の第3番目の膜貫通領域よりC末端側に存在していることを示す図である。この「抗体整列用基板」に抗体を整列固定化することにより、「センシング基板」を作製することが可能であり、「Fc融合タンパク質整列用基板」にFc融合タンパク質を整列固定化することにより、「センシング基板」を作製することも可能である。
図8に、センシングの手順の一例を示した。「自己組織化能力を有するタンパク質」と脂質2重膜の複合体、もしくは「自己組織化能力を有するタンパク質」が脂質2重膜を取りこんで形成した「ナノサイズの粒子」のいずれかを基板上に作用させ被覆を形成し、「抗体整列用基板」を形成させる。次いで抗体と架橋剤の混合物を作用させることにより、該タンパク質と抗体を架橋剤により結合させる「センシング基板」の作製方法を示しており、夾雑物を含むサンプル中から、目的とする物質のみを特異的に吸着・結合することが可能である。
図9に、「自己組織化能力を有するタンパク質」(2)と脂質2重膜(3)の複合体による被覆が基板(1)上に形成され、該タンパク質にFc融合タンパク質(10)が結合してなる「センシング基板」の様態の一例を示す。
図10に、「自己組織化能力を有するタンパク質」(2)と脂質2重膜(3)の複合体による被覆が基板(1)上に形成され、該タンパク質にFc融合タンパク質(10)が架橋剤(6)により共有結合してなる「センシング基板」の様態の一例を示す。
図11に、「センシング基板」がFc融合タンパク質(10)と相互作用する物質(11)と相互作用・吸着・結合した様態の一例を示す。
図12に、「自己組織化能力を有するタンパク質」(2)が、脂質2重膜(3)を取りこんで「ナノサイズの粒子」(8)を形成し、これが基板(1)上に被覆を形成した「Fc融合タンパク質整列用基板」をなし、「自己組織化能力を有するタンパク質」(2)のもつ「Fc領域結合部位」(4)がFc融合タンパク質(10)と架橋剤(6)により共有結合した「センシング基板」を形成し、Fc融合タンパク質(10)と相互作用する物質(11)とが相互作用・吸着・結合した様態の一例を示す。
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
参考例に示すとおり、遺伝子組換え酵母で前記HBV表面抗原Lタンパク質(B型肝炎ウィルス表面抗原タンパク質)を発現させることにより、発現されたHBV表面抗原Lタンパク質から酵母小胞体由来の脂質2重膜に多数の同タンパク質が埋め込まれた短径約20nm、長径約150nmの楕円状のナノ粒子が形成されることが知られている(J. Bio. Chem., Vol.267, No.3, 1953-1961, 1992)。このような粒子は、HBVゲノムや他のHBVタンパク質を全く含まないので、ウィルスとしては機能せず、人体への安全性は極めて高い。さらに、クローン化することで均一な品質の「自己組織化能力を有するタンパク質」と「脂質2重膜」の複合体を常に生産可能であり、またハンドリングしやすい酵母などを生産系として利用できるため、生産性や生産コストの面でも優れている。
参考例1
(遺伝子組換え酵母によるZZタグを付加したナノサイズの粒子(ZZナノ粒子)の発現)
特開2004−002313号公報実施例記載の方法に基づいて、ZZタグをもつナノサイズの粒子を作製した。
実施例1
(表面プラズモンセンサーによる抗体整列用基板の作製とセンシング基板の作製)
金蒸着ガラス基板(日本レーザ電子株式会社製)を設置したNanoSensor(日本レーザ電子株式会社製)に、開始後約50秒後にPBSで希釈した参考例1で作製のZZナノ粒子(20μg/ml)をおよそ1μl/秒の流速で作用させ、ZZナノ粒子を基板に吸着させた(図13の51)。約700秒後にPBSで洗浄を開始し(図13の52)、約1000秒後にBSA(20μg/ml)をおよそ1μl/秒の流速で添加し始め(図13の53)、基板への吸着が起きないことを確認した。PBSで洗浄(図13の54)後、Protein Aとの結合性を持たないChicken IgG(20μg/ml)をおよそ1μl/秒の流速で約1500秒後から添加し(図13の55)、ZZタグや基板への非特異的吸着が起きないことを確認した。PBSで洗浄(図13の56)後、Protein Aとの結合性を持つMouse IgG(20μg/ml)をおよそ1μl/秒の流速で約2400秒後から添加し(図13の57)、ZZタグと結合、相互作用することを確認した。このように特異的に抗体を整列可能なFc融合タンパク質整列用基板すなわち抗体整列用基板を作製した。さらにPBSで洗浄(図13の58)後、抗体がBSAには反応せず(図13の59)、PBSで洗浄(図13の60)後の約3900秒後に添加した抗原を特異的に認識することを確認した(図13の61)。さらに約4600秒後にPBSで洗浄し(図13の62)、シグナルが低下しないことを確認した。このように目的とする物質を特異的に検出可能なセンシング基板を作製した。また、操作の過程において共鳴角は安定しており、本発明の基板は安定であることがわかる。
一方、金蒸着ガラス基板に直接Mouse IgG(20μg/ml)をおよそ1μl/秒の流速で添加(図14の71)し、PBSで洗浄した場合(図14の72)、BSA(20μg/ml)の添加により、基板への非特異的な吸着による非シグナルが検出された(図14の73)。このため、その後の抗原の添加によるシグナル(図14の75)のうち、非特異的なシグナル分を判定、除去することができず、真のシグナルを測定することができない。
実施例2
(表面プラズモンセンサーによるセンシング基板の作製と、架橋剤による抗体の固定化)
実施例1と同様に、金蒸着ガラス基板を設置したNanoSensorに、測定開始約300秒後、0.2M Triethanolamine 緩衝液 pH8.3で希釈した参考例1で作製のZZナノ粒子(20μg/ml)をおよそ1μl/秒の流速で作用させ、ZZナノ粒子を基板に吸着させた(図15の81)。測定開始約950秒後、Triethanolamine緩衝液で洗浄(図15の82)し、次いで約1800秒後、Mouse IgG(20μg/ml)をおよそ1μl/秒の流速で添加し、ZZタグに抗体を結合させた(図15の83)。約3100秒後Triethanolamine緩衝液で未結合の抗体を洗浄(図15の84)し、約3800秒後、0.2M Monoethanolamine 緩衝液 pH8.0をおよそ1μl/秒の流速で作用させた(図15の85)。約4500秒後に50mM Tris−HCl pH8.0(図15の86)、約5200秒後にPBS(図15の87)で洗浄した。こうした溶液のpHや塩濃度の変化に対して、共鳴角の変化は安定しており、基板上に形成された自己組織化能力を有するタンパク質と脂質2重膜の複合体による被覆は安定であることがわかる。約6000秒後にBSA(20μg/ml)をおよそ1μl/秒の流速で添加し始め(図15の88)、基板への吸着が起きないことを確認した。PBSで洗浄(図15の89)後、約7200秒後に添加した抗原を特異的に認識することを確認した(図15の90)。さらに約8300秒後にPBSで洗浄し(図15の91)、シグナルが低下しないことを確認した。約9000秒後に0.2M Triethanolamine緩衝液を作用させ(図15の92)、次いで9700秒後に、Mouse IgG(20μg/ml)を添加した。このときZZタグと抗体との相互作用による大きなシグナルが検出された(図15の93)こと、また10400秒後のTriethanolamine緩衝液での洗浄によるシグナルの低減(図15の94)から、ZZタグと抗体との結合に、改良の余地があることが分かる。
ZZタグと抗体との結合を、架橋剤により改良した結果を図15のもう一方のグラフで示す。測定開始約400秒後、0.2M Triethanolamine 緩衝液 pH8.3で希釈した参考例1で作製のZZナノ粒子(20μg/ml)をおよそ1μl/秒の流速で作用させ、同様にZZナノ粒子を基板に吸着させた(図15の101)。測定開始約1100秒後、Triethanolamine緩衝液で洗浄(図15の102)し、次いで約1900秒後、直前に混合したMouse IgG(20μg/ml)と架橋剤DMP(6.6mg/ml)の混合溶液をおよそ1μl/秒の流速で添加し、ZZタグに抗体を結合させた(図15の103)。約3200秒後Triethanolamine緩衝液で未結合の抗体を洗浄(図15の104)したところ、架橋剤を用いない場合と比較してより多量の抗体が結合していることが分かる。約3900秒後、0.2M Monoethanolamine 緩衝液 pH8.0をおよそ1μl/秒の流速で作用させた(図15の105)。約4600秒後に50mM Tris−HCl pH8.0(図15の106)、約5300秒後にPBS(図15の107)で洗浄した。こうした溶液のpHや塩濃度の変化に対して、架橋剤を用いない場合と比較して多量に結合した抗体は、脱落や欠落することなく基板に結合していることが分かる。約6100秒後にBSA(20μg/ml)をおよそ1μl/秒の流速で添加し始め(図15の108)、基板への吸着が起きないことを確認した。PBSで洗浄(図15の109)後、約7300秒後に添加した抗原を特異的に認識することを確認した(図15の110)。このときセンシングのシグナルは、架橋剤を用いない場合と比較しても3倍以上に向上したことから、架橋剤によりより多量の抗体を結合させることの効果がわかる。さらに約8300秒後にPBSで洗浄し(図15の111)、シグナルが低下しないことを確認した。約8900秒後に0.2M Triethanolamine緩衝液を作用させ(図15の112)、次いで9600秒後に、Mouse IgG(20μg/ml)を添加した(図15の113)。このときZZタグと抗体との相互作用によるシグナルは架橋剤を用いない場合と比較して小さいことから、抗体と結合していないZZタグの数が減少していることがわかる。しかし10300秒後のTriethanolamine緩衝液での洗浄によるシグナルの低減(図15の114)からも、ZZタグと抗体との結合に、若干の改良の余地があることが分かる。また、測定終了後のレゾナンスカーブを測定した結果、本発明の抗体整列用基板およびFc融合タンパク質整列用基板、センシング基板においては、レゾナンスカーブの乱れが観察されず、本センシング基板ならびに抗体整列用基板およびFc融合タンパク質整列用基板の安定性が分かる(図16、図17)。
実施例3
(樹脂表面へのZZナノ粒子の結合によるZZナノ粒子の基板化)
樹脂基板であるImmobilizer Amino(ナルジェ ヌンク インターナショナル株式会社製)プレートおよび金蒸着ガラス基板(日本レーザ電子株式会社製)に参考例に記載の方法で作製したZZナノ粒子溶液(22.5μg/ml)をそれぞれ100μlを加え、加湿条件下で2時間室温にて静置し、基板にZZナノ粒子を結合させた。反応前後のタンパク質濃度をBCAアッセイにより定量、結合反応前のタンパク質濃度を100として比較した(図18)。また、電気泳動後、タンパク質を染色した(図18)。
実施例4
(ポリスチレンマイクロビーズ上へのZZナノ粒子の基板化)
Polybead Polystyrene 25.0 micron microspheres(ポリサイエンス社の商品)75μlをPBSで3回洗浄した後、7.5μlずつ10ロットに分注した。これらのビーズを214〜0.214μg/mlまでの濃度の異なるZZナノ粒子溶液またはPBS100μlに2ロットずつ懸濁し、ボルテックスミキサーを用いて室温で3時間撹拌した。上清を捨てた後、ビーズを4倍希釈ブロックエース(1ml)に懸濁し、これをローテーターを用いて室温で1時間撹拌した。ビーズをPBS−T(1ml)で3回洗浄した後に、抗human IL−8抗体溶液(10μg/ml,100μl)に懸濁し、ローテーターを用いて4℃で終夜撹拌した。ビーズをPBS−T(1ml)で3回洗浄した。各濃度のZZナノ粒子を基板化したビーズのうち1ロットは、BSAを含むPBS−T溶液に、もう1ロットはこの溶液で希釈したhuman IL−8(1ng/ml,100μl)に懸濁し、ローテーターを用いて室温で1時間撹拌した。ビーズをPBS−T(1ml)で3回洗浄した。ビーズをHRP標識抗human IL−8抗体(8.2μg/ml,100μl)に懸濁し、ローテーターを用いて室温で1時間撹拌した。ビーズをPBS−T(1ml)で3回洗浄した。
各ビーズを0.1M Tris・HCl(pH7.5)750μlに懸濁し、懸濁液25μlずつをマイクロプレートのウエルに分注した。各ウエルにAmplexred(26μg/ml),40μMHの2:1混合液を加えて発色させ、590nmの蛍光強度(ex:530nm)を測定した(図19)。
ZZ粒子の濃度に依存してIL−8添加時のシグナルが増大した。ノイズとなるIL−8を加えていないときの蛍光強度も増大しているものの、ZZナノ粒子の高濃度のときにS/N比は向上している。
実施例5
(ポリスチレン製プレートを不溶化固相としたセンシング基板の作製と該基板を用いたELISA)
ポリスチレン製96穴イムノプレート(グライナー社製)に、参考例で作製したZZナノ粒子溶液(約0.02mg/mL)を1ウェルあたり100μL注ぎ、室温で1時間静置した。ZZナノ粒子溶液を除去した後、3%(w/v)BSAを1ウェルあたり200μL注ぎ、室温で1時間静置した。PBS−T(0.05%Tween20添加PhosphateBufferSaline)200μLで5回洗浄し、基板を完成させた。
得られたZZナノ粒子吸着センシング基板に、抗IL−8マウス1次抗体溶液(0μg/mLまたは10μg/mL)を1ウェルあたり100μL注ぎ、4℃で一晩静置した。PBS−T200μLで5回洗浄した後、IL−8抗原溶液(0ng/mLまたは1ng/mL)を1ウェルあたり100μL注ぎ、室温で1時間静置した。PBS−T200μLで5回洗浄した後、HRP標識抗IL−8Fab化マウス2次抗体溶液(1μg/mL)を1ウェルあたり100μL注ぎ、室温で1時間静置した後、PBS−T200μLで5回洗浄した。TMB(3,3‘,5,5’−tetramethybenxidine)溶液と過酸化水素溶液を1ウェルあたり各50μLを注いでHRPと15分間反応させた後、2N硫酸100μLを添加して反応を止めた。
反応停止後、分光光度計(サーモラボシステム社製、マルチスキャンスペクトラム)を用いて450nmにおける吸収を測定したところ、10μg/mL1次抗体を固相化し、1ng/mL抗原溶液を作用させたウェルでは、450nmにおける発色が観測された(図20)。ZZタグとの相互作用により基板に結合した1次抗体を介して、抗原抗体反応が起こっていることが示唆された。
一方、1次抗体を固相化せず(0μg/mL)、10ng/mL抗原溶液を作用させたウェルでは450nmにおける発色は観測されなかった。このことから、抗原の非特異的吸着が起こっていないことが判明した。また、1次抗体を固相化せず(0μg/mL)、抗原も作用させなかった(0ng/mL)ウェルでも、発色は検出されなかった。このことから、Fab化二次抗体の非特異吸着が起こっていないことが判明した。以上の結果より、ZZタグとの相互作用により基板に結合した1次抗体を介して、抗原抗体反応が起こっていることが示唆された。
図1は、「抗体整列用基板」の様態の一例を示す図である。 図2は、「センシング基板」の様態の一例を示す図である。 図3は、「センシング基板」の様態の一例を示す図である。 図4は、「センシング基板」が目的とする物質を吸着・結合した様態の一例を示す図である。 図5は、「Fc領域結合部位」が抗体と架橋剤により共有結合した「センシング基板」の様態の一例を示す図である。 図6は、「抗体整列用基板」の様態の一例を示す図である。 図7は、「抗体整列用基板」の様態の一例を示す図である。 図8は、「センシング基板」の作製とセンシングの方法の一例を示す図である。 図9は、「センシング基板」の様態の一例を示す図である。 図10は、「センシング基板」の様態の一例を示す図である。 図11は、「センシング基板」がFc融合タンパク質と相互作用する物質と相互作用・吸着・結合した様態の一例を示す図である。 図12は、Fc融合タンパク質と相互作用する物質とが相互作用・吸着・結合した様態の一例を示す図である。 図13は、「Fc融合タンパク質整列用基板」および「センシング基板」作製と分析の過程を、表面プラズモンセンサーによる共鳴角の変化と時間によりプロットした図である。 図14は、金蒸着基板に抗体を吸着させ、センシングを行った結果を表面プラズモンセンサーによる共鳴角の変化と時間によりプロットした図である。 図15は、「Fc融合タンパク質整列用基板」および「センシング基板」作製と分析の過程を、表面プラズモンセンサーによる共鳴角の変化量と時間によりプロットした図である。もう一方、架橋剤を用いたときの「Fc融合タンパク質整列用基板」および「センシング基板」作製と分析の過程を、表面プラズモンセンサーによる共鳴角の変化量と時間によりプロットした図である。 図16は、図15の架橋剤を含まない分析において、測定開始前および測定終了後のレゾナンスカーブを示す。 図17は、図15の架橋剤を用いた分析において、測定開始前および測定終了後のレゾナンスカーブを示す。 図18は、金蒸着ガラス基板およびイモビライザーアミノプレート表面へのZZナノ粒子の結合を、タンパク質濃度と電気泳動により確認した図である。 図19は、ポリスチレンビーズ上でZZ粒子による基板を形成し、IL−8の測定を行った結果を示した図である。 図20は、ポリスチレン製プレートを不溶化固相としたセンシング基板の作製と該基板を用いたELISAの結果を示す図である。
符号の説明
1 基板
2 自己組織化能力を有するタンパク質
3 脂質2重膜
4 Fc領域結合部位
5 抗体
6 架橋剤
7 目的とする物質(目的物質)
8 ナノサイズの粒子
9 基板結合タグ
10 Fc融合タンパク質
11 Fc融合タンパク質と相互作用する物質

Claims (20)

  1. 自己組織化能力を有するタンパク質と脂質2重膜の複合体による被覆が基板上に形成され、該タンパク質がFc領域結合部位を持つ基板。
  2. 自己組織化能力を有するタンパク質と脂質2重膜の複合体が、ナノサイズの粒子である請求項1記載の基板。
  3. 自己組織化能力を有するタンパク質と脂質2重膜の複合体が、自己組織化能力を有するタンパク質が脂質2重膜を取りこみながら形成した複合体である請求項1または2に記載の基板。
  4. 自己組織化能力を有するタンパク質と脂質2重膜の複合体が、基板結合タグを介して基板と結合している請求項1から3のいずれかに記載の基板。
  5. 基板結合タグが、ポリヒスチジンタグである請求項4に記載の基板。
  6. 自己組織化能力を有するタンパク質と脂質2重膜の複合体が、基板結合抗体を介して基板と結合している請求項1から5のいずれかに記載の基板。
  7. Fc領域結合部位が、ZZタグである請求項1から6のいずれかに記載の基板。
  8. 同一基板上の異なる位置に、複数のFc融合タンパク質が結合している請求項1から7のいずれかに記載の基板。
  9. 自己組織化能力を有するタンパク質に、Fc融合タンパク質が結合している請求項1から8のいずれかに記載の基板。
  10. 自己組織化能力を有するタンパク質とFc融合タンパク質との結合が、共有結合である請求項9に記載の基板。
  11. 自己組織化能力を有するタンパク質が、Fc融合タンパク質のFc領域と架橋剤により結合している請求項9または10に記載の基板。
  12. 自己組織化能力を有するタンパク質と脂質2重膜の複合体が、真核生物により生産される請求項1から11のいずれかに記載の基板。
  13. 自己組織化能力を有するタンパク質が、ウイルス由来タンパク質である請求項1から12のいずれかに記載の基板。
  14. Fc融合タンパク質が抗体である請求項8から13のいずれかに記載の基板。
  15. 基板が球形である請求項1から14のいずれかに記載の基板。
  16. センシング基板である請求項8から15のいずれかに記載の基板。
  17. タンパク質整列用基板である請求項1から7のいずれかに記載の基板。
  18. 請求項1から17のいずれかに記載の基板を用いるセンシング方法。
  19. 基板上に自己組織化能力を有するタンパク質と脂質2重膜の複合体による被覆を形成し、次いでFc融合タンパク質と架橋剤の混合物を作用させることにより、自己組織化能力を有するタンパク質とFc融合タンパク質を架橋剤により結合させる請求項8から16のいずれかに記載の基板の作製方法。
  20. 自己組織化能力を有するタンパク質とFc融合タンパク質を、架橋剤により共有結合させる請求項8から16のいずれかに記載の基板の作製方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010096677A (ja) * 2008-10-17 2010-04-30 Toray Ind Inc 抗体/抗原結合能を有する高感度免疫学測定用ナノ粒子
JP2010164513A (ja) * 2009-01-19 2010-07-29 Fujifilm Corp 抗体固定基板、並びに該抗体固定基板の製造方法及び利用
JP2023019886A (ja) * 2021-07-30 2023-02-09 西川計測株式会社 検出キット及び検出方法

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