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JP2006257580A - 炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体および炭素繊維前駆体繊維、炭素繊維の製造方法 - Google Patents

炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体および炭素繊維前駆体繊維、炭素繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
生産性、プロセス性を損なうことなく、引張強度、引張弾性率の優れた炭素繊維を製造する方法を提供すること。
【解決手段】
極限粘度が1.2〜2.2、耐炎化処理時の酸化深さDが3.6〜6.0μmかつ示差走査熱量計により測定される湿熱下融点Tmが180〜190℃である炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、引張強度および引張弾性率に優れた炭素繊維の製造方法に関するものである。更には、前記した高性能な炭素繊維を製造するのに好適な炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体および炭素繊維前駆体繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、その優れた力学特性および電気特性からさまざまな用途に利用されている。近年では、従来のゴルフクラブや釣竿などのスポーツ用途、航空機用途に加え、自動車部材、CNGタンク、建造物の耐震補強、船舶部材などいわゆる一般産業用途への展開が進み、それに伴い、求められる力学特性のレベルも高まっている。例えば航空機用途では、軽量化のため構造部材の多くが炭素繊維強化プラスチックに置き換えられつつあり、引張強度と引張弾性率が高いレベルで両立した炭素繊維が求められている。
炭素繊維は、工業的にはポリアクリロニトリルなどの前駆体繊維を200〜300℃の空気中で熱処理する耐炎化工程、300〜3000℃の不活性雰囲気中で熱処理する炭化工程を経て製造される。一般に、炭化時の最高温度を高くするほど引張弾性率は高くできるものの、引張強度は1500℃付近で極大となり、さらに高温の領域では、著しい低下が見られ、いわゆるトレードオフの関係となる。炭化温度の制御以外で、引張強度、引張弾性率の両方を高める技術について、これまでいくつかの提案がなされている。
例えば、用いる重合体の共重合成分を制御することにより、炭素繊維前駆体繊維の酸素透過性を向上させ、耐炎化繊維内の酸素濃度分布を均一に制御し、得られる炭素繊維の引張強度および引張弾性率を向上させる技術が提案されている(特許文献1)。本技術によれば、確かに相対的には、引張強度、引張弾性率の向上効果が認められるものの、その強度レベルは5.1GPaと低く、現在の要求レベルを満足するものではない。しかも、本技術では、酸素透過性を高めるために1.5%を超える多くの共重合成分を用いており、得られる炭素繊維前駆体繊維の耐熱性が低下してしまうという問題があった。耐熱性の低下は、製糸の乾燥熱処理工程やスチーム延伸工程、耐炎化、炭化といった焼成工程における単繊維同士の接着発生の増加を誘起し、得られる炭素繊維の強度レベルを低下させるのである。
一方、用いる重合体の極限粘度を高め、かつ炭素繊維前駆体繊維の繊度を小さくすることで、緻密性を向上させ、高い引張強度、引張弾性率を持つ炭素繊維を製造する技術が提案されている(特許文献2)。本技術では、引張強度9GPa、引張弾性率360GPaと非常に高い力学物性を実現しているものの、用いる重合体の極限粘度を高めることは、(1)重合体のゲル化が生じやすくなり重合体の安定性低下、(2)製糸における延伸性低下、につながり、また、炭素繊維前駆体繊維の繊度を小さくすることは、(3)可紡性の低下、(4)生産性の低下、につながるという多くの問題点があり、工業的に低コストで実現できる技術とは言えないのである。
特開平2−84505号公報 特開平11−241230号公報
本発明の課題は、生産性、プロセス性を損なうことなく、引張強度、引張弾性率が共に優れた炭素繊維を製造する方法を提供することにある。
かかる本発明の目的を達成するために、本発明は次の構成を有する。
すなわち、極限粘度が1.2〜2.2、耐炎化処理時の酸化深さDが3.6〜6.0μmかつ示差走査熱量計(以下、DSC)により測定される湿熱下融点Tmが180〜190℃である炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体である。
また、前記した炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体を湿式または乾湿式法により紡糸し、乾燥熱処理後、スチーム延伸する炭素繊維前駆体繊維を製造する方法において、乾燥熱処理温度Td(℃)スチーム延伸温度Ts(℃)、および該重合体のDSCにより測定される湿熱下融点Tm(℃)が下記式を満たす炭素繊維前駆体繊維の製造方法である。
(Tm―30)≦Td≦(Tm−10)
(Tm―50)≦Ts≦(Tm−30)
さらには、前記した方法により製造される炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の空気中において延伸比0.90〜1.20で延伸しながら耐炎化した後、300〜800℃の不活性雰囲気中において延伸比1.00〜1.30で延伸しながら予備炭化し、1000〜2000℃の不活性雰囲気中において延伸比0.97〜1.10で延伸しながら炭化する炭素繊維の製造方法である。
本発明によれば、生産性、プロセス性を損なうことなく、焼成工程での高延伸を実現でき、それにより引張強度、引張弾性率さらには圧縮強度に優れた炭素繊維を低コストで製造できる。

本発明者らは、用いる重合体の極限粘度、酸素透過性および耐熱性を特定の範囲に制御することで、安定性よく、つづく製糸工程および焼成工程における高い延伸性を同時に実現できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、用いる重合体の極限粘度を特定範囲とすることにより、原液安定性に優れた重合体とすることができ、用いる重合体の酸化深さDで表される酸素透過性を特定範囲とすることにより、均一な耐炎化構造が得られ、それにより焼成工程における延伸性を向上でき、用いる重合体の湿熱下融点Tmで表される耐熱性を特定範囲とすることで、製糸工程における乾燥熱処理、スチーム延伸処理を、単繊維間の接着なく効率的に行うことができるのである。
まず、本発明の炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体について説明する。
本発明の炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体は、極限粘度が1.2〜2.2、耐炎化処理時の酸化深さDが3.6〜6.0μmかつDSCにより測定される湿熱下融点Tmが180〜190℃である。
本発明における炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体の極限粘度は、原液安定性の観点から、1.2〜2.2の範囲とすることが必須である。極限粘度が1.2を下回る様な低分子量になると、可紡性が低下し、また、極限粘度が2.2を超える様な高分子量になるとゲル化し易くなり、安定した紡糸が困難となる。該極限粘度は1.4〜2.0がより好ましく、1.5〜1.9がさらに好ましい。極限粘度は、重合時のモノマー濃度、重合開始剤や連鎖移動剤の量などにより制御することができる。
本発明において、極限粘度とはジメチルフォルムアミドを溶媒とし、オストワルド粘度計を用い、25℃で測定した比粘度をもとに算出した極限粘度のことをいう。具体的には、以下のような手順で測定する。予め120℃で2時間熱処理し絶乾した炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体150mgを、25℃において50mlのチオシアン酸ナトリウム0.1mol/リットル添加ジメチルフォルムアミドに溶解する。得られた溶液を25℃に温調し、予め25℃に温調してあるオストワルド粘度計を用いて標線間の落下時間を1/100秒の精度で測定し、その時間をt(秒)とする。同様に、炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体を溶解していないチオシアン酸ナトリウム0.1mol/リットル添加ジメチルフォルムアミドについても測定し、その落下時間をt0(秒)とする。次式を用いて極限粘度[η]を算出する。
[η]={(1+1.32×ηsp)^(1/2)―1}/0.198
ηsp=(t/t0)−1
該重合体の、耐炎化処理時の酸化深さDは、焼成工程における延伸性を向上させる観点から、3.6〜6.0μmであることが必須であり、より好ましくは3.8〜5.8μm、さらに好ましくは4.0〜5.5μmである。酸化深さDが3.6μmを下回ると、つづく予備炭化および炭化工程における延伸性を向上させる効果が明確に発揮されず、得られる炭素繊維の引張強度、引張弾性率を向上させることができない。一方、6μmを超えると、耐炎化工程における酸化反応が過剰に進み、つづく予備炭化および炭化工程での延伸性低下、得られる炭素繊維の収率低下のおそれがある。
耐炎化処理時の酸化深さDは次のようにして定義、測定される。まず、重合体をジメチルスルホキシド、ジメチルフォルムアミドなどのポリアクリロニトリルが可溶な溶媒に、重量濃度で25%となるよう溶解し、次に該溶液をガラス板上にキャストして、一定の厚みになるように塗布する。次に、重合体溶液を塗布したガラス板を、熱風乾燥機等を用いて、空気中120℃で6時間乾燥し、溶媒を蒸発させて、厚み20〜40μmのフィルムとする。得られたフィルムを、熱風乾燥機等を用いて、空気中240℃で60分、さらに空気中250℃で60分熱処理し、耐炎化処理を行う。得られた耐炎化フィルムを樹脂包埋した上で研磨し、そのフィルム表面に対して垂直な断面を光学顕微鏡を用いて倍率800倍で観察する。断面において酸化が進んだ部分は暗い層として、進んでいない部分は明るい層として観察されるので、フィルム表面から、暗い層と明るい層の境界までの距離を少なくとも5点計測し、その算術平均を酸化深さD(μm)とする。
本発明の炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体のDSCにより測定される湿熱下融点Tmは、得られる炭素繊維前駆体繊維の耐熱性、ひいては、製糸工程におけるスチーム延伸性を向上させる目的から、180〜190℃が必須であり、より好ましくは182〜189℃、さらに好ましくは184〜188℃である。湿熱下融点Tmが180℃を下回ると、単繊維間の接着が顕著となり、製糸工程における乾燥およびスチーム延伸処理時の温度を低下させなくてはならず、より長時間の処理が必要となり、結果として生産性の低下、得られる炭素繊維の品位、力学物性の低下が生じる。190℃を超えると、スチーム延伸の際に、より高温すなわちより高圧力のスチームが必要となり、その高圧力による繊維の破断が顕著となるため、結果として生産性の低下、得られる炭素繊維の品位、力学物性の低下が生じる。
湿熱下融点Tmは次のように定義、測定する。まず重合体を粉砕し、長径0.5mm以下の粉体とする。該粉体を5mg精秤し、耐圧2MPa以上の密閉可能なDSC用サンプルパンに、5mgの純水とともに密封する。10℃/分の昇温速度で、室温から220℃までDSC測定し、150〜200℃付近に現れる吸熱ピークの頂点に対応する温度を湿熱下融点Tm(℃)とする。
本発明の炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体は、動的粘弾性測定により求められるガラス転移点Tgが60〜75℃であることが好ましい。ガラス転移点Tgは、非晶部の運動性を示す指標であり、Tgが高いほど非晶部の運動性が低いことを意味する。該Tgが60℃を下回ると耐熱性が低下し、そのためスチーム延伸性が低下することがあり、75℃を超えると分子間の抵抗が大きくなり、結果としてスチーム延伸性の低下、ひいては生産性の低下および得られる炭素繊維の品位、力学物性低下を招くおそれがあるので、好ましくない。ガラス転移点Tgは、より好ましくは62〜73℃であり、さらに好ましくは64℃〜70℃である。
ガラス転移点Tgは次のように定義、測定する。まず、前記した酸化深さDの測定と同様の方法でフィルムを作製する。該フィルムを用いて、動的粘弾性測定を行う。測定は、0.2Hzの正弦波で引張荷重を加えながら、昇温速度10℃/分で室温から200℃まで行う。荷重および振幅は、可能な限り塑性変形が生じないように調整することが好ましい。得られたデータから損失弾性率E”を求め、そのピークに相当する温度をガラス転移点Tg(℃)とする。
本発明における炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体は、得られる炭素繊維前駆体繊維の耐熱性や緻密性の観点からアクリロニトリルが95mol%以上からなることが好ましく、より好ましくは98.5mol%以上、さらに好ましくは99.0mol%以上である。該アクリロニトリル量は、得られる炭素繊維前駆体繊維の耐熱性を高める目的からは高い方が好ましいが、酸化深さDを本発明に規定する特定値とするためには、後述するような共重合成分を加えることが好ましいため、99.9mol%以下とするのが良い。
本発明の炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体は、前記した極限粘度、酸化深さD、湿熱下融点Tmを満足すれば、共重合成分、分子量分布、立体規則性などに制約は無い。前記した耐炎化時の酸化深さDを向上させるために、大きい側鎖を持つビニルモノマーを共重合することにより、酸素透過性を高めることが有効な手段として挙げられる。湿熱下融点は該ビニルモノマーの共重合量が多くなるほど低下する傾向にあり、共重合量を変えることにより制御することができる。
前記した耐炎化時の酸化深さDと湿熱下融点Tmを同時に満足するためには、酸素透過性向上効果の高い共重合成分を必要最小量共重合することが好ましい。より具体的には、モル体積が100〜400cm/molであるビニルモノマーを0.1〜1.0mol%共重合することが好ましい。ここで、モル体積とは、分子量を20℃における比重で割った値であり、モノマーのかさ高さに対応するパラメータである。このモル体積が大きいほど、酸素透過性向上効果を大きくできるものの、400cm/molを超えると、アクリロニトリルに対する重合性の低下や、得られる炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の緻密性の低下、また耐炎化時に酸化が進みすぎることによる収率の低下が顕著となる場合がある。該モル体積は、より好ましくは140〜350cm/molであり、さらに好ましくは180〜300cm/molである。
前記したモル体積が100〜400cm/molであるビニルモノマーの共重合量は、0.1mol%を下回ると、明確な酸素透過性向上効果が得にくくなる。一方、多いほど酸素透過性は高まるものの、湿熱下融点Tmが低下するため、1.0mol%を超えない範囲とすることが好ましい。
前記したモル体積が100〜400cm/molであるビニルモノマーとしては、アクリロニトリルに対する重合性、工業的な入手のしやすさから、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルを好ましく用いることができる。より具体的には、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセリンモノアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートを好ましく例示できる。製糸の延伸性を向上させる観点からは、これらの化合物には側鎖中に分岐が少ないことが好ましい。その観点からは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセリンモノアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレートをより好ましく例示できる。さらに好ましくは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレートを例示できる。
本発明において、炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体の酸素透過性を効率良く向上させ、湿熱下融点との両立を図るためには、前記したモル体積が100〜400cm/molであるビニルモノマーが、重合体中に均一に存在していることが好ましい。重合体中における共重合成分の均一性は、重合方法、選択する共重合成分のアクリロニトリルに対する反応性、共重合成分の重合時の添加方法、例えば逐次的添加などにより制御することができる。中でも、アクリロニトリルに対する反応性比r1が0.4〜3であるビニルモノマーを選択し、ラジカル重合により重合体を製造することが、工業的に容易であり好ましい。反応性比r1は、アクリロニトリル同士の連鎖成長反応速度定数をk11、アクリロニトリルラジカル末端と共重合成分との連鎖成長反応速度定数をk12とすると、次式で定義される。
r1=k11/k12
r1は、重合時にアクリロニトリルユニットの次にアクリロニトリルが重合されるか、他の共重合成分が重合されるかの確率を表す指数であり、1に近いほど等確率となり、共重合量を反映した均一な共重合体が得られることを示す。本発明において、反応性比r1が0.4を下回ったり、3を上回ると、共重合成分が共重合体中において偏って重合されるため、共重合量に対して得られる実質的な酸素透過性向上効果が十分ではないことがあり、好ましくない。
アクリロニトリルに対する反応性比r1は、実験的に求める方法、および計算により推算する方法がある。前者については、線形化法、直線交差法、曲線合致法などがあり、たとえば高分子学会編「共重合1反応解析」、初版、株式会社培風館社、1975年6月20日、p.59〜68に記載されている方法に従い求めることができる。後者については、いわゆるアルフレイ−プライス(Alfrey−Price)のQ値、e値を用いて算出する方法であり、共重合成分のQ値、e値をそれぞれQc、ecとすると次式を用いて算出することができる。
r1=(0.48/Qc)×EXP(―1.23×(1.23−ec)
また、多くのビニルモノマーについての反応性比r1、Alfrey−PriceのQ値、e値は、J.Brandrup、E.H. Immergut、E.A. Grulke著、「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」、(米国)、第4版、ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley & Sons Inc)、1999年、p.II/181〜II/319などにまとめられており、参照することもできる。
アクリロニトリルに対する反応性比r1が0.4〜3であるビニルモノマーの具体例としては、アクリル酸のエステルを好ましいものとして挙げることができる。より具体的には、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレートなどを挙げることができる。
本発明において、炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体は、共重合体としての耐炎化促進成分を0.1〜1.0mol%含むことが好ましい。耐炎化促進成分としては、カルボキシル基またはアミド基を一つ以上有するものが、好ましく例示できる。耐炎化促進成分の共重合量を多くするほど耐炎化反応が促進され、短時間で耐炎化処理でき、生産性を高める目的から好ましい。しかし一方で、該共重合量が多くなるほど、湿熱下融点Tmが低下したり、発熱速度が大きくなり暴走反応の危険が生じることがあるため、1.0mol%を超えない範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.5mol%、さらに好ましくは0.2〜0.4mol%である。
該耐炎化促進成分の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが好ましく例示できる。湿熱下融点Tmの低下を防止するという目的からは、耐炎化促進効果の高いモノマーを少量用いることが好ましく、アミド基よりもカルボキシル基を有する耐炎化促進成分を用いることが好ましい。また含有されるアミド基、カルボキシル基の数については1つよりも2つ以上であることがより好ましく、その観点からは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸がより好ましく、イタコン酸、マレイン酸、メサコン酸がさらに好ましく挙げられる。
湿熱下融点の低下を防止するという目的からは、アクリロニトリル以外の共重合成分のトータル量は5mol%を超えないことが好ましく、より好ましくは1.5mol%、さらに好ましくは1.0mol%を超えない範囲とすることがよい。
本発明における炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体を製造する重合方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の重合方法を選択することができるが、共重合成分を均一に重合する目的からは、溶液重合を用いることが好ましい。
溶液重合で行う場合の溶液としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリルが可溶な溶媒を用いるのが好ましい。中でも、溶解性の観点から、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
次に、本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維前駆体繊維は、前記した本発明の炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体を用いて製造する。該重合体をジメチルスルホキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリルが可溶な溶媒に溶解し、紡糸原液とする。溶液重合を用いる場合、重合に用いる溶媒と紡糸溶媒を同じものにしておくと、得られた重合体を分離し紡糸溶媒に再溶解する工程が不要となり好ましい。紡糸原液中の該重合体の濃度は、原液安定性の観点から、10〜40重量%であることが好ましい。
かかる紡糸原液を紡糸する前に目開き1μm以下のフィルターに通し、ポリマー原料および各工程において混入した不純物を除去することが高強度な炭素繊維を得るためには好ましい。
紡糸原液を、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる。得られる炭素繊維前駆体繊維の緻密性を高め、また得られる炭素繊維の力学物性を高める目的からは、乾湿式紡糸法を用いることが、より好ましい。
本発明において、前記凝固浴には、紡糸原液の溶媒として用いたジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの溶媒と、いわゆる凝固促進成分を含ませることが好ましい。凝固促進成分としては、前記重合体を溶解せず、かつ紡糸原液に用いる溶媒と相溶性があるものが使用できる。具体的には、水を使用するのが好ましい。
凝固浴中に導入して糸条を凝固せしめた後、水洗工程、浴中延伸工程、油剤付与工程、乾燥熱処理工程、スチーム延伸工程を経て、炭素繊維前駆体繊維が得られる。
ただし、凝固後の糸条は、水洗工程を省略して直接浴中延伸を行っても良いし、溶媒を水洗工程により除去した後に浴中延伸を行っても良い。
かかる浴中延伸は、通常、30〜98℃に温調された単一又は複数の延伸浴中で行うことが好ましい。延伸倍率は、1〜5倍であることが好ましく、2〜4倍であることがより好ましい。
浴中延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する目的から、糸条にシリコーン等からなる油剤を付与することが好ましい。かかるシリコーン油剤は、変性されたシリコーンを用いることが好ましく、耐熱性の高いアミノ変性シリコーンを含有するものを用いることがより好ましい。
前記した、水洗工程、浴中延伸工程、油剤付与工程の後、乾燥熱処理およびスチーム延伸を行うことにより、炭素繊維前駆体繊維を製造する。かかる乾燥熱処理およびスチーム延伸においては、炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体のDSCにより測定される湿熱下融点をTm(℃)とすると、乾燥熱処理温度Td(℃)およびスチーム延伸温度Ts(℃)を下記式の範囲内に設定することが好ましい。
(Tm―30)≦Td≦(Tm−10)
(Tm―50)≦Ts≦(Tm−30)
また、より好ましくは、
(Tm―20)≦Td≦(Tm−10)
(Tm―40)≦Ts≦(Tm−30)
である。一般に、ポリアクリロニトリルは乾熱下では融点を示さないものの、水が共存していると、その融点が降下することが知られている。乾燥熱処理およびスチーム延伸は、水共存下で行われるため、その処理温度が、用いる炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体の湿熱下融点Tmを上回ると融解がおき、プロセス性、得られる炭素繊維前駆体繊維または炭素繊維の力学物性が低下することがあり、好ましくない。また、前記したように、用いる炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体の共重合成分やその共重合量によって、湿熱下融点Tmは変化するため、そのTmに合わせて、乾燥熱処理温度Tdおよびスチーム延伸温度Tsを設定することが、高い引張強度、高い引張弾性率を持つ炭素繊維を生産性よく得るために、重要である。
また、一方で乾燥熱処理温度Tdが高いほど、乾燥効率、得られる炭素繊維前駆体繊維の緻密性を高める目的から有利であり、また、スチーム延伸温度Tsが高いほど、可塑化が進みやすく延伸性向上に有利である。このことから、前記範囲でTdおよびTsを制御することにより、本発明の炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体のポテンシャルを最大限に引き出すことができるのである。
本発明において、スチーム延伸工程における延伸倍率は、生産性および得られる炭素繊維の力学物性の観点から3倍以上、より好ましくは4倍以上、さらに好ましくは5倍以上であるのがよい。
本発明において、炭素繊維前駆体繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.5〜1.5dtex、より好ましくは0.55〜1.0dtex、さらに好ましくは0.6〜0.8dtexであることが良い。該単繊維繊度が0.5dtexを下回ると、可紡性の低下、ローラー、ガイドとの接触による糸切れ発生などにより、製糸工程および焼成工程のプロセス安定性が低下することがある。一方、1.5dtexを超えると耐炎化後の各単繊維における内外構造差が大きくなり、つづく炭化工程でのプロセス性低下や、得られる炭素繊維の引張強度、引張弾性率が低下することがあり、好ましくない。
また、本発明において、炭素繊維前駆体繊維の1糸条当たりのフィラメント数は、好ましくは1,000〜3,000,000、より好ましくは12,000〜3,000,000、さらに好ましくは24,000〜2,500,000、最も好ましくは36,000〜2,000,000であるのが良い。該フィラメント数は、生産性の向上の目的からは、1,000以上で多い方が好ましいが、3,000,000を超えると束内部まで均一に耐炎化処理できないことがあり、好ましくない。
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維は、前記した本発明の炭素繊維前駆体繊維を200〜300℃の空気中において延伸比0.90〜1.20で延伸しながら耐炎化した後、300〜800℃の不活性雰囲気中において延伸比1.00〜1.30で延伸しながら予備炭化し、1000〜2000℃の不活性雰囲気中において延伸比0.97〜1.10で延伸しながら炭化して製造することが好ましい。
本発明において、耐炎化する際の延伸比は、0.90〜1.20が好ましく、より好ましくは0.95〜1.15、さらに好ましくは0.97〜1.10である。該延伸比は0.90を下回ると、得られる耐炎化繊維の配向度が不十分となり、また得られる炭素繊維の力学物性が低下することがある。また、該延伸比が1.20を超えると、毛羽発生、糸切れ発生によりプロセス性が低下することがある。
本発明において、耐炎化の処理時間は、10〜100分の範囲で適宜選択することができるが、得られる耐炎化繊維の比重が1.3〜1.38の範囲となるよう設定することが、つづく予備炭化工程のプロセス性、および得られる炭素繊維の力学物性向上の目的から好ましい。
本発明において、予備炭化工程、炭化工程、黒鉛化工程は不活性雰囲気中で行うが、用いるガスとしては、窒素、アルゴン、キセノンなどが好ましく例示でき、経済的な観点からは窒素を好ましく用いることができる。
本発明において、予備炭化工程における温度は300〜800℃が好ましく、その範囲における昇温速度は500℃/分以下に設定することが好ましい。
本発明において、予備炭化を行う際の延伸比は1.00〜1.30が好ましく、より好ましくは1.05〜1.25、さらに好ましくは1.08〜1.20である。該延伸比は1.00を下回ると、得られる予備炭化繊維の配向度が不十分となり、炭素繊維の力学物性が低下することがある。また、該延伸比が1.30を超えると、毛羽発生、糸切れ発生によりプロセス性が低下することがある。
本発明において、炭化工程における温度は1000〜2000℃が好ましく、その最高温度は、所望する炭素繊維の力学物性に応じて適宜設定するのがよい。一般に該炭化工程の最高温度が高いほど、得られる炭素繊維の引張弾性率が高くなるものの、引張強度は1500℃付近で極大となる。引張強度と引張弾性率の両方を高めるという目的からは、該炭化の最高温度は1200〜1700℃がより好ましく、1300〜1600℃であるのがさらに好ましい。
本発明において、炭化を行う際の延伸比は0.970〜1.100が好ましく、より好ましくは0.975〜1.005、さらに好ましくは0.980〜1.000である。該延伸比は0.970を下回ると、得られる炭素繊維の配向度や緻密性が不十分となり、力学物性が低下することがある。また、該延伸比が1.10を超えると、毛羽発生、糸切れ発生によりプロセス性が低下することがある。
引き続き、上述の方法で得られた炭素繊維を不活性雰囲気中、2,000〜3,000℃で延伸比1.000〜1.200で延伸しながら黒鉛化することによって、より高い弾性率を有した黒鉛化繊維とすることもできる。
本発明において、黒鉛化を行う際の延伸比は、より好ましくは1.005〜1.150、さらに好ましくは1.010〜0.1.100である。該延伸比は1.000を下回ると、得られる黒鉛化繊維の配向度や緻密性が不十分となり、力学物性が低下することがある。また、該延伸比が1.200を超えると、毛羽発生、糸切れ発生によりプロセス性が低下することがある。
得られた炭素繊維、黒鉛化繊維はその表面改質のため、電解処理することができる。電解処理に用いる電解液には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸性溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムといったアルカリ又はそれらの塩を水溶液として使用することができる。ここで、電解処理に要する電気量は、適用する炭素繊維、黒鉛化繊維の炭化度に応じて適宜選択することができる。
かかる電解処理により、得られる複合材料において炭素繊維、黒鉛繊維とマトリックスとの接着性が適正化でき、接着が強すぎることによる複合材料のブリトルな破壊や、繊維方向の引張強度が低下する問題や、繊維方向における引張強度は高いものの、樹脂との接着性に劣り、非繊維方向における強度特性が発現しないといった問題が解消され、得られる複合材料において、繊維方向と非繊維方向の両方向にバランスのとれた強度特性が発現されるようになる。
かかる電解処理の後、得られる炭素繊維、黒鉛化繊維に集束性を付与するため、サイジング処理をすることもできる。サイジング剤には、使用する樹脂の種類に応じて、樹脂との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
本発明において、適宜条件設定することにより、ストランド引張強度が6.5GPa以上、ストランド弾性率が330GPa以上である力学物性に優れた炭素繊維が得られる。ストランド引張強度が6.7GPa以上、ストランド弾性率が340GPa以上がより好ましく、ストランド引張強度が7.0GPa以上、ストランド弾性率が350GPa以上がさらに好ましい。
また、本発明において、適宜条件設定することにより、ストランド引張強度が6GPa以上、ストランド弾性率が400GPa以上である力学物性に優れた黒鉛化繊維が得られる。
本発明により得られる炭素繊維および黒鉛化繊維は、引張強度が高く、引張弾性率が高い(すなわち高伸度)であり、また、相対的に低い焼成温度で高い弾性率が得られるため、同時に高い圧縮強度を発現することができる。従って、プリプレグとしてオートクレーブ成形、織物などのプリフォームとしてレジントランスファーモールディングで成形、フィラメントワインディングで成形するなど種々の成型法により、航空機部材、圧力容器部材、自動車部材、釣り竿、ゴルフシャフトなどのスポーツ部材として、好適に用いることができる。
本発明をより具体的に説明する。なお、実施例で用いた各種物性値の測定方法は以下に記載の方法によるものである。
<極限粘度>
予め120℃で2時間熱処理し絶乾した炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体150mgを、25℃において50mlのチオシアン酸ナトリウム0.1mol/リットル添加ジメチルフォルムアミド(いずれも和光純薬社製特級)に溶解した。得られた溶液を、25℃に温調し、予め25℃に温調してあるオストワルド粘度計を用いて標線間の落下時間を1/100秒の精度で測定し、その時間をt(秒)とした。同様に、炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体を溶解していないチオシアン酸ナトリウム0.1mol/リットル添加ジメチルフォルムアミドについても測定し、その落下時間をt0(秒)とした。次式を用いて極限粘度[η]を算出した。
[η]={(1+1.32×ηsp)^(1/2)―1}/0.198
ηsp=(t/t0)−1
<耐炎化処理時の酸化深さD>
測定に供する重合体を、ジメチルスルホキシドに重量濃度で25%となるよう溶解し、次に該溶液をガラス板上にキャストして、ベーカー式アプリケーターを用いて約80μmの厚みになるように塗布した。次に、重合体溶液を塗布したガラス板を、熱風乾燥機を用いて空気中120℃で6時間乾燥し、ジメチルスルホキシドを蒸発させて、厚み約20μmのフィルムとした。得られたフィルムを、熱風乾燥機を用いて、空気中240℃で60分、さらに空気中250℃で60分熱処理し、耐炎化処理を行った。得られた耐炎化フィルムを樹脂包埋した上で研磨し、そのフィルム表面に対して垂直な断面を光学顕微鏡を用いて倍率800倍で観察し、写真撮影した。断面において酸化が進んだ部分は暗い層として、進んでいない部分は明るい層として観察されるので、フィルム表面から、暗い層と明るい層の境界までの距離を、写真上で5点計測し、その算術平均を酸化深さD(μm)とした。
<湿熱下融点Tm>
測定に供する重合体を、液体窒素中で凍結粉砕した後、目開き0.5mmの篩いを通し粉体を得た。該粉体を5mg精秤し、メトラー社製DSC用中圧パンME29990(耐圧2MPa)に、5mgの純水とともに密封した。ブルカー社製DSC3100SAを用いて、10℃/分の昇温速度で、室温から220℃までDSC測定し、150〜200℃付近に現れる吸熱ピークの頂点に対応する温度を読み取り、湿熱下融点Tm(℃)とした。
<ガラス転移点Tg>
前記した酸化深さDの測定と同様の方法でフィルムを作製した。該フィルムを幅3mmの短冊状に切り、厚みおよび幅を正確に測定した後、試長間が20mmとなるように動的粘弾性測定装置にセットした。測定はブルカー・エイエックスエス社製TMA4010SAの粘弾性測定モードを用いて行った。最低荷重3g、最高荷重6g、周波数0.2Hzの正弦波で引張荷重を加えながら、昇温速度10℃/分で、室温から200℃まで昇温しながら測定を行った。得られたデータから損失弾性率E”を求め、そのピークに相当する温度を読み取り、ガラス転移点Tg(℃)とした。
<耐炎化繊維比重>
JIS R7601(1986)記載の方法に従った。試薬はエタノール(和光純薬社製特級)を精製せずに用いた。1.0〜1.5gの繊維を採取し、熱風乾燥機を用い、空気中120℃で2時間絶乾した。絶乾質量A(g)を測定した後、比重既知(比重ρ)のエタノールに含浸し、エタノール中の繊維質量B(g)を測定し、次式、繊維比重=(A×ρ)/(A−B)により繊維比重Dを求めた。
<炭素繊維のストランド引張強度及びストランド引張弾性率>
JIS R7601(1986)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求めた。
ここで、測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、ユニオンカーバイド(株)製、”BAKELITE(登録商標)”ERL4221(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維に含浸させ、130℃、30分熱処理し硬化させて作製した。また、ストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の算術平均値を、その炭素繊維の引張強度、引張弾性率とした。
[実施例1〜8、比較例1〜4]
表1に示した組成からなる共重合体成分をジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤としてラジカル重合し、極限粘度1.5〜1.6の炭素繊維前駆体繊維用共重合体を得た。得られた重合体について、酸化深さD(μm)、湿熱下融点Tm(℃)、およびガラス転移点Tg(℃)を測定した。
該重合体の濃度が、ジメチルスルホキシド中、25重量%となるよう調製した後、アンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことで、イタコン酸を中和しつつ、アンモニウム基をポリアクリロニトリル系共重合体に導入し、紡糸原液を作製した。得られた紡糸原液を、目開き0.5μmのフィルター通過後、40℃で、単孔の直径0.15mm、孔数6,000の紡糸口金を用い、一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過させた後、3℃にコントロールした35重量%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条とした。この凝固糸条を、常法により水洗した後、温水中で3.5倍に延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与して単繊維繊度2.6dtexの浴中延伸糸を得た。この浴中延伸糸を、165℃に加熱したローラーを用いて乾燥熱処理を行い、次に145℃の加圧スチーム中にて延伸倍率を0.1倍ずつ変えながら糸切れの有無を測定し、糸切れの発生しない最大倍率をスチーム延伸性(倍)とした。併せて前記条件において、加圧スチーム中で3.7倍延伸し、全延伸倍率13倍、単繊維繊度0.7dtex、フィラメント数6,000の炭素繊維前駆体繊維を得た。
得られた炭素繊維前駆体繊維を4本合糸し、トータルフィラメント数24,000とした上で、240〜260℃の空気中において延伸比1.0で延伸しながらで耐炎化処理し、比重1.35の耐炎化繊維を得た。
続いて300〜700℃の窒素雰囲気中において、延伸比1.15で延伸しながら予備炭化処理を行い、さらに最高温度1500℃の窒素雰囲気中において、延伸比を0.99に設定して炭化処理を行い、比重1.80〜1.83の炭素繊維を得た。この際、炭化工程の出側において、走行中の糸条の毛羽数を長さ30mに亘って目視により計測し、その1m当たりの毛羽数を炭化毛羽個数(個/m)とした。また、得られた炭素繊維について、ストランド引張強度およびストランド引張弾性率を測定した。
得られた結果を表2および表3に示す。
酸化深さDが大きい重合体を用いるほど、炭化毛羽個数が少なく、焼成におけるプロセス性が良好で、得られる炭素繊維の物性も良好であった。また、湿熱下融点Tmが低いものは、製糸におけるスチーム延伸性が低下し、炭化毛羽個数、得られる炭素繊維のストランド引張強度、ストランド引張弾性率も低下することがわかった。
[実施例9〜12]
製糸の乾燥熱処理温度Tdおよびスチーム延伸温度Tsを、表4のように変更した他は、実施例7と同様にして、製糸、焼成、評価を行った。
得られた結果を表4に併せて示す。
乾燥熱処理温度Tdおよびスチーム延伸温度Tsによって、プロセス性および得られる炭素繊維のストランド引張強度、ストランド引張弾性率が変化し、特定の範囲で最適化できることがわかった。
Figure 2006257580
Figure 2006257580
Figure 2006257580
Figure 2006257580

Claims (7)

  1. 極限粘度が1.2〜2.2、耐炎化処理時の酸化深さDが3.6〜6.0μmかつ示差走査熱量計により測定される湿熱下融点Tmが180〜190℃である炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体。
  2. 動的粘弾性測定より求められるガラス転移点Tgが60〜75℃である請求項1記載の炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体。
  3. モル体積が100〜400cm/molであるビニルモノマーを0.1〜1.0mol%共重合してなる請求項1または請求項2記載の炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体。
  4. 請求項3記載のビニルモノマーのアクリロニトリルに対する反応性比r1が0.4〜3であり、ラジカル重合により重合される請求項3に記載の炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体を湿式または乾湿式紡糸法により紡糸し、乾燥熱処理後、スチーム延伸する炭素繊維前駆体繊維を製造する方法において、乾燥熱処理温度Td(℃)、スチーム延伸温度Ts(℃)および該重合体の示差走査熱量計により測定される湿熱下融点Tm(℃)が下記式を満たす炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
    (Tm―30)≦Td≦(Tm−10)
    (Tm―50)≦Ts≦(Tm−30)
  6. 請求項5に記載の方法により製造される炭素繊維前駆体繊維を200〜300℃の空気中において延伸比0.90〜1.20で延伸しながら耐炎化した後、300〜800℃の不活性雰囲気中において延伸比1.00〜1.30で延伸しながら予備炭化し、1000〜2000℃の不活性雰囲気中において延伸比0.97〜1.10で延伸しながら炭化する炭素繊維の製造方法。
  7. 請求項6に記載の方法により製造される炭素繊維を2000〜3000℃の不活性雰囲気中において、延伸比1.00〜1.20で延伸しながら黒鉛化する黒鉛化繊維の製造方法。
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